説明

構造的環境保護コーティング

【課題】ガスタービンエンジンのタービン、燃焼器、およびオーグメンタ部を含む、都合の悪い熱環境で使用される部品(10)の表面上の環境保護コーティングとして使用するのに適切なコーティング(24)を提供すること。
【解決手段】コーティング(24)は、超合金材料でできた基板(22)の上に被着されたコーティングシステム(20)内で使用される。コーティング(24)は、超合金基板(22)の表面に接触し、超合金材料の50%より大きい引張強度を有するコーティング材料でできている。コーティング材料は主に、白金、ロジウム、パラジウム、およびイリジウムからなる群から選択された少なくとも1つの金属であり、コーティング(24)を上に被着させる部品(10)の強度にかなり貢献するのに十分な強度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジンの都合の悪い熱環境などの高温環境に曝された部品を保護するのに使用されるタイプのコーティングに関する。より詳細には、本発明は、保護する部品の構造的特性にかなり貢献することが可能である保護コーティングを対象としている。
【背景技術】
【0002】
酸化および熱腐食作用による損傷を受けやすいタービン、燃焼器、およびオーグメンタ部の特定の部品は普通、環境コーティング、および適宜断熱コーティング(TBC)によって保護されており、この場合環境コーティングは、TBCと組み合わせて、TBCシステムと呼ぶことができるものを形成する結合コートと呼ばれる。環境コーティングおよびTBC結合コートはしばしば、耐酸化アルミニウム含有合金、またはそのアルミニウム含有率により高温で強い付着性連続酸化アルミニウム層(アルミナスケール)をゆっくり成長させる合金でできている。この熱成長酸化物(TGO)により、酸化および熱腐食からの保護が行なわれ、結合コートの場合、TBCとの化学結合が促進される。しかし、熱膨張不一致が金属結合コート、アルミナスケールおよび重畳セラミックTBCの間に存在し、このような不一致によって生じた剥離応力は、結合コートとアルミナスケールの間のインターフェイス、またはアルミナスケールとTBCの間のインターフェイスで形成される亀裂の結果としてTBC破砕が生じる可能性がある点まで時間をかけて次第に増加する。より詳細には、コーティングシステム性能および寿命は、結合コート上のTGOの成長により生じる応力、セラミックTBCと金属結合コートの間の熱膨張不一致による応力、(不純物の分離、粗さ、酸化物タイプおよびその他によって影響される)TGOインターフェイスの耐破損性、および結合コート/TGOインターフェイスのしわにつながる結合コートの時間に依存したおよび時間に依存しない塑性変形を含む要因に依存するように決められた。したがって、TBCコーティングシステム内の進歩は、上記強度関連の要因によってその後影響される、酸化物破砕の最初の例を遅らせるのと共に一部考えられている。
【0003】
環境コーティングおよびTBC結合コートとしては幅広い使用において、MCrAlXオーバーレイコーティング(ここで、Mは鉄、コバルトおよび/またはニッケルであり、Xはイットリウムまたは他の希土元素である)などの合金、および主にベータ相ニッケルアルミナイドおよび白金変性ニッケルアルミナイド(PtAl)であるアルミニウム合金を含有する拡散コーティングが挙げられる。合金相を含有する金属固溶体である上記MCrAlXオーバーレイコーティングと対照的に、NiAlベータ相は約25から約60原子%アルミニウムを含有するニッケルアルミニウム合成物内に存在する合金化合物である。TBC寿命は、耐環境性だけでなく、その結合コートの強度に左右されるので、より高い強度を示すことが可能な結合コートが開発され、その顕著な例としては、共通の譲受人に譲渡されたNagaraj他の米国特許第5,975,852号、Rigney他の第6,153,313号、Daroliaの第6,255,001号、Darolia他の第6,291,084号、Pfaendtner他の第6,620,524号、およびDrolia他の第6,682,827号に開示された(拡散コーティングと反対の)ベータ相NiAlオーバーレイコーティングが挙げられる。(ジルコニウムおよび/またはハフニウムなどの)反応元素および/または(クロムなどの)他の合金化構成要素を含有することが好ましいこれらの合金オーバーレイコーティングは、セラミックTBCの耐接着および破砕性を改善することが示されている。ベータ相NiAlオーバーレイコーティング中のジルコニウムおよびハフニウムなどの反応元素の存在が、主にベータ相NiAlマトリックスの固溶体によって、耐環境性を良くすると共に、コーティングを強化することが示されている。
【0004】
上記に加えて、ガンマ相(γ−Ni)およびガンマプライム相(γρ−NiAl)の両方を含有するように、NiAlPtdeできた環境コーティングおよびTBC結合コートの適切性が、Gleeson他の米国特許出願公開第2004/0229075号で報告されている。Gleeson他の文献によって評価されたNiAlPt合成物は、約23原子%未満(約9重量%以下)のアルミニウムと、約10から30原子%(約28から63重量%)の間の白金と、適宜制限された追加量の反応元素とを含有していた。
【0005】
MCrAlXオーバーレイコーティングおよび拡散コーティング内での添加物としての使用の他に、またGleeson他などの合金オーバーレイコーティング内の主成分として、白金、およびロジウムおよびパラジウムなどの他の白金族金属(PGM)が従来の結合コートの代替品として考えられていた。例えば、共通の譲受人に譲渡されたNagaraj他の米国特許第5,427,866号は、基板上への白金、ロジウム、またはパラジウムの薄い保護層(最大約0.001インチ(約25マイクロメートル))の被着と、基板内へ保護層の少なくとも一部を拡散させることと、その後拡散した保護層に直接セラミック層を被着させることを開示している。Nagaraj他によると、従来の結合コートの除去によりコーティングした物体の重量が少なくなり、有害な二次反応帯(SRZ)が基板表面内に形成される可能性が少なくなる。
【0006】
上記利点があるが、環境コーティングおよび結合コートの使用に対する欠点がある。例えば、コーティングされた部品の最大設計温度は普通、(TBC破砕の場合)その環境コーティングまたは結合コートの最大許容温度によって制限される。低融点帯はまた、このようなコーティングとその下にある超合金基板の間に形成される傾向があり、さらに部品の高温能力が制限される。別の欠点は、環境コーティングおよび結合コートを形成するのに使用される材料は、保護する部品を形成するニッケルおよびコバルト系超合金と比べて、比較的弱いことである。その結果、これらのコーティングは、超合金基板によって支持されなければならない死荷重と考えられ、これはこのような部品が動作する高い重力領域によってその影響が大きく増加される場合、タービンブレードなどの回転エーロフォイル応用例に特に有害である。その結果、エーロフォイル部品は、コーティングの重量を担持するのに十分強いように設計されていなければならず、しばしば別の追加の重量的な不利益を生じる。
【0007】
上記を鑑みて、環境コーティングおよび結合コート用の材料および過程における既存の進歩があっても、改良型の環境コーティングおよびTBCシステムを開発する現在進行中のかなりの努力がある。
【特許文献1】米国特許第5,975,852号
【特許文献2】米国特許第6,153,313号
【特許文献3】米国特許第6,255,001号
【特許文献4】米国特許第6,291,084号
【特許文献5】米国特許第6,620,524号
【特許文献6】米国特許第6,682,827号
【特許文献7】米国特許出願公開第2004/0229075号
【特許文献8】米国特許第5,427,866号
【特許文献9】米国特許第6,586,115号
【特許文献10】米国特許第6,686,060号
【特許文献11】米国特許第6,808,799号
【特許文献12】米国特許第6,890,668号
【特許文献13】米国特許出願第10/063,962号
【特許文献14】米国特許第6,025,078号
【特許文献15】米国特許第5,660,885号
【特許文献16】米国特許第5,683,825号
【特許文献17】米国特許第5,871,820号
【特許文献18】米国特許第5,914,189号
【特許文献19】米国特許第6,627,323号
【特許文献20】米国特許第6,720,038号
【特許文献21】米国特許出願第10/707,197号
【特許文献22】米国特許出願第10/708,020号
【特許文献23】米国特許第6306524号
【特許文献24】米国特許第6720088号
【特許文献25】米国特許第6746782号
【特許文献26】米国特許第6921586号
【特許文献27】米国特許第6933052号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は概して、ガスタービンエンジンのタービン、燃焼器、およびオーグメンタ部を含む、都合の悪い熱環境で使用される部品の表面上の環境保護コーティングとして使用するのに適切なコーティングを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このようなコーティングは、部品の最外表面を形成する環境コーティングと、TBCを部品に接着する結合コートとを含む。本発明は特に、コーティングが上に被着される部品の強度にコーティングが寄与することができるように、引張または破裂強度に関して測定されたような十分な強度を備えたコーティングを対象としている。
【0010】
本発明によると、コーティングは超合金材料でできている基板上に被着されたコーティングシステムで使用されている。コーティングは、超合金基板の表面上にあり、それに接触し、約900℃から約1150℃の範囲内などの、超合金基板の最大動作温度に対応する温度で超合金材料の50%より大きい引張強度を有するコーティング材料でできている。本発明によると、コーティング材料は主に、白金、ロジウム、パラジウム、およびイリジウムからなる群から選択された少なくとも1つの金属である。コーティング材料はまた、さらにコーティングを強化することが可能な元素と、コーティングの耐環境性および熱(拡散)安定性を大きくすることが可能な元素とを含有していることが好ましい。
【0011】
本発明のコーティングは、環境コーティング、およびTBC用結合コートとして有用にする望ましい環境特性および機械的特性を有する。特に、主に白金、ロジウム、パラジウム、および/またはイリジウムである結果、コーティングは保護する超合金基板より大きな耐酸化性を示す。従来の環境コーティングおよび結合コートとは対照的に、コーティングはまた十分な強度を示し、それによって例えば、超合金基板およびコーティングの組合せは、コーティングおよび基板の組合せ厚さが全体的に基板の超合金によってできている場合に存在する強度の少なくとも90%の組合せ強度を示すことができる。コーティングの強度はさらに、1つまたは複数の遷移元素(特に、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、タンタル、ニオブ、クロム、タングステン、モリブデン、レニウム、および/またはルテニウム)の追加によって助長することができる。加えて、コーティングの耐環境性および熱(拡散)安定性は、アルミニウム、クロム、および/またはニッケルの追加で助長することができる。
【0012】
本発明の他の目的および利点は、以下の詳細な説明により良く理解されるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は普通、比較的高温を特徴とする環境内で動作する部品に適用可能であり、それによって厳しい熱応力および熱サイクルにさらされる。このような部品の顕著な例としては、ガスタービンの高圧および低圧タービンノズルおよびブレード、シュラウド、燃焼器ライナ、およびオーグメンタハードウェアが挙げられる。ガスタービンエンジンの回転エーロフォイル部品などの高い重力加速度に耐えなければならない部品には、特に利益がある。このような例の1つは、図1に示す高圧タービンブレード10である。ブレード10は、ガスタービンエンジンの動作中に熱い燃焼ガスが向かうエーロフォイル12を備えている。エーロフォイル12は、ブレード10内の通路を通した冷却空気の流れを可能にするように中空であり、その結果、エーロフォイル12の外部は全体的に外表面が酸化、腐食、および浸食による厳しい攻撃にさらされ、内表面が冷却空気流に接触する壁面によって画定されている。エーロフォイル12は、ブレード10の根元部16に形成された蟻継ぎ14でタービンディスク(図示せず)に固定されている。本発明の利点を図1に示す高圧タービンブレード10を参照して説明するが、本発明の教示は普通、部品を環境から保護するのにコーティングシステムを上で使用することができるあらゆる部品に適用可能である。
【0014】
図2は、本発明の範囲内のタイプのTBCシステム20を略図的に示す。図示するように、コーティングシステム20は、金属コーティング24でブレード10の外壁22に結合されたセラミック層、または遮熱コーティング(TBC)26を備えており、金属コーティングはTBC26への結合コートとして働いているが、TBCを省き、コーティング24を環境コーティングとして使用することは本発明の範囲内である。ブレード10、したがって壁面22も、ニッケル系超合金などの超合金でできていることが好ましいが、壁面22は別の超合金材料でできていることも予測できる。一般に、ブレード10などの応用例では、適切な超合金は、タービン10の最大動作温度、例えば、約1100℃以上で、少なくとも350MPaの引張強度、および少なくとも100MPaの100時間破裂強度を示す。
【0015】
図2に示す耐歪み柱状粒子構造を得るため、TBC26は電子ビーム物理的気相成長法(EBPVD)などの物理的気相成長法(PVD)によって被着されるが、非柱状粒子構造を生じる溶射過程を含む他の被着技術を使用することができる。TBC26用の好ましい材料はイットリア安定化ジルコニア(YSZ)であり、適切な構成は約3から約20重量%のイットリア(3〜20%YSZ)であるが、イットリア、非安定化ジルコニア、および他の酸化物によって安定化されたジルコニアなどの他のセラミック材料を使用することができる。顕著なTBC26用の代替材料は、7%YSZより低い熱伝導性係数(低k)を有するように形成されたものを含み、その顕著な例は、共通の譲受人に譲渡されたRigney他の米国特許第6,586,115号と、Bruce他の米国特許第6,686,060号と、Darolia他の米国特許第6,808,799号と、Bruce他の米国特許第6,890,668号と、共通の譲受人に譲渡された米国特許出願第10/063,962号と、Rickerbyの米国特許第6,025,078号とに開示されている。さらに他の適切なTBC26用セラミック材料としては、CMAS(カルシア、マグネシア、アルミナおよびシリカの共晶)などの化合物による汚染からの破砕に耐えるものが挙げられる。例えば、TBCはCMASよりかなり高い融点を有する化合物を形成するように溶融CMASと相互作用することが可能な材料で形成することができ、それによってCMASと材料の反応生成物はTBCを溶融および浸透しない。耐CMSコーティングの例としては、共通の譲受人に譲渡された米国特許第5,660,885号、第5,683,825号、第5,871,820号、第5,914,189号、第6,627,323号、第6,720,038号、および第6,890,668号に記載されたアルミナ、アルミナ含有YSZ、およびハフニア系セラミックが挙げられ、これらの耐CMASコーティング材料に関する開示は参照として本明細書に援用する。TBC用の他の潜在的なセラミック材料としては、7%YSZより優れた耐侵食性および/または耐衝撃性を有するように形成されたものが挙げられる。このような材料の例としては、上記耐CMAS材料のあるもの、特に米国特許第5,683,825号および第6,720,038号で報告されたようなアルミナが挙げられる。他の耐侵食および耐衝撃合成物としては、共通の譲受人に譲渡された米国特許出願第10/707,197号および第10/708,020号に開示されたような低気孔率YSZと、共通の譲受人に譲渡された米国特許出願第10/708,020号に開示されたような完全安定化ジルコニア(例えば、17%YSZより大きい)と、化学変性ジルコニア系セラミックとが挙げられる。TBC26は、普通は約100から約300マイクロメートルで、下にある壁面22およびブレード10に所要の熱保護を提供するのに十分な厚さに被着される。
【0016】
従来技術のTBCシステムと同様に、コーティング24の重要な役割は、ガスタービンエンジン内の酸化環境に曝された場合に、エーロフォイル壁面22を環境的に保護することである。従来の結合コートの機能は、酸化アルミニウム表面層(アルミナスケール)がそこから成長してTBCの付着を促進させるアルミニウムのリザーバを提供することであった。これに対して、本発明のコーティング24がアルミニウムを多少含有している場合、コーティングの拡散および酸化挙動を変更する(しかし、必ずしもコーティング24上にアルミナスケールを形成しない)ことが低い合金化レベルで存在している。代わりに、コーティング24は主に白金、ロジウム、パラジウム、および/またはイリジウムである。コーティング24はさらに、コーティング24の強度をさらに促進する、および/またはコーティング24の耐環境性および熱(拡散)安定性を増すように、限られた合金化追加を含むことができる。より詳細には、コーティング24の強度は、クロム、タングステン、モリブデン、レニウム、および/またはルテニウムなどの固溶体強化剤の追加、および/またはジルコニウム、ハフニウム、タンタル、チタン、およびニオブなどの沈殿強化剤で促進させることができる。最後に、耐環境性および熱(拡散)安定性を助長するように、クロム、アルミニウム、および/またはニッケルをコーティング24に追加することができる。
【0017】
本発明の好ましい一態様によると、コーティング24は、少なくとも60重量%の白金、ロジウム、パラジウム、イリジウム、またはその組合せ、適宜20重量%未満のニッケルおよびクロムの組合せ、適宜15重量%未満のアルミニウム、適宜10重量%未満の組み合わせた他の合金化成分、および付随する不純物を含有している。もしあれば、適宜の成分の好ましい量は、少なくとも5重量%のニッケルおよびクロムの組合せと、少なくとも2重量%のアルミニウムと、少なくとも2重量%の組み合わせた他の合金化成分である。コーティング24に特に適切な合金は、ロジウムと、ジルコニウムと、白金、ルテニウム、およびパラジウムの少なくとも1つとを含有すると考えられている。その(1つまたは複数の)主な白金族金属(PGM)成分の優れた耐酸化性および耐腐食性により、コーティング24は従来の環境コーティングおよび結合コート材料と対比して、(図2に示すように)外表面上に極めて少ない酸化物スケールを成長させる傾向がある。代わりに、あらゆる熱成長酸化物(TGO)スケールは普通、コーティング24内に存在する可能性がある少ない合金化成分、とりわけアルミニウム、クロム、およびニッケルに原因がある。ブレード10の寿命全体を通して成長し続ける比較的厚い酸化物スケールがないので、本発明はTBC26の破砕がTBCシステム20内の熱拡張不一致に原因がある酸化物スケールの亀裂および破砕から起こる可能性を防ぐ。
【0018】
本発明の重要な態様によると、耐酸化性に加えて、上記範囲内の好ましい合成物を備えたコーティング24は、ブレード10が曝される温度(例えば、約900℃から約1150℃)で、好ましくは1000℃以上などの多くの超合金の機械的特性が顕著に減少する傾向がある温度で、下にある壁面22の超合金の50%より大きい強度(引張強度および/または破裂強度)を特徴としている。例として、約60重量%のロジウム、約25重量%のパラジウム、約10重量%の白金、および約3重量%のジルコニウムを含有するロジウム―パラジウム―白金合金でできているコーティング24は、約1200℃で160MPa以上の引張強度が可能である。別の例として、約91重量%のロジウム、約2重量%のルテニウム、および約7重量%のジルコニウムを含有するロジウム合金でできたコーティング24は、約1200℃で260MPa以上の引張強度が可能である。これに対して、拡散アルミナイド(ニッケルおよび白金変性ニッケルアルミナイド)、MCrAlXオーバーレイ、およびNiAlオーバーレイなどの従来の環境コーティングおよび結合コートは、普通は約1100℃でそれぞれ約30MPa、20MPa、および70MPaを超えない引張強度を有し、したがって全体的に、普通は図1のブレード10などの回転ガスタービンエンジン部品を形成するのに使用される約20%未満の超合金である。その結果、ブレード10などの回転タービン部品は従来、これらのコーティングからの構造的貢献なしで環境コーティングおよび結合コートを担持および支持するのに十分な強度を有するように設計されているが、本コーティング24はブレード10の強度に構造的に貢献することが可能であることが好ましい。
【0019】
特定の構成により、その後の熱処理を行なっても行なわなくても、様々な蒸着過程を使用してコーティング24を被着させることができる。例えば、コーティング24は、めっき技術、イオンプラズマ蒸着、または溶射を使用して被着させることができる。コーティング24内の応力を解放するため、蒸着の後に、約1000℃から約1200℃の温度で約1時間から約4時間熱処理を行なうことができる。コーティング24に適切な最小厚さは、下にある壁面22に適当なレベルの環境保護を与えるため、約10マイクロメートルである。少なくとも25マイクロメートル以上、より詳細には約35マイクロメートルから約125マイクロメートルまでの厚さが、タービンブレードの応用例に好ましいと考えられている。
【0020】
(図2でコーティング24の下に拡散帯30が存在することにより一部証明された)コーティング24を形成するのに使用される蒸着過程および熱処理中の一部の相互拡散の傾向により、コーティング24は、意図したコーティング成分で被着されなかった最大約20重量%の元素を含有することができる。ニッケル、タンタル、タングステン、レニウム、アルミニウム、モリブデン、コバルトなどの元素はしばしば、超合金合成物中に存在し、コーティング過程に関連し、超合金成分が接触することが多い高温で簡単に拡散する傾向がある。本発明のコーティング24に関連する拡散帯30は、コーティング24の主成分の融点が高いことにより、普通は従来のアルミニウム系環境コーティングおよび結合コートに存在し有害である低融点領域がない傾向がある。相互拡散を抑制し、それによってコーティング24の成分をより良く調節するため、コーティング24を被着させる前に、拡散バリアコーティングを基板22に被着させることができる。特に適切な拡散バリアコーティングの例は、共通の譲受人に譲渡された米国特許第6306524号、第6720088号、第6746782号、第6921586号、および第6933052号に開示されたルテニウム含有コーティングである。
【0021】
本発明の利点を図示するのを助けるため、従来の環境コーティングおよび本発明のコーティング24で得られる異なる結果を対比させるように以下のことが意図されている。この目的で、約500マイクロメートルの厚さが、約125マイクロメートルの厚さを有するコーティング(環境コーティングまたは結合コート)によって保護された壁面に対して仮定される。このような壁面対コーティング比率が図2に示されている。第1のシナリオでは、コーティングはMCrAlYまたはPtAlなどの従来の結合コート材料であり、壁面を形成する超合金の約20%の強度を有する。その結果、壁面およびコーティングの組合せは、壁面+コーティングの厚さ全体が超合金でできている場合に得られる強度の(100%x500+20%x125)/(500+125)=84%の初期結合強度を有する。酸化によるコーティングの損失の後に、壁面およびコーティングの元の組合せが壁面まで、したがって80%の相対強度まで小さくなる。
【0022】
コーティングが、壁面(22)を形成する超合金の約60%の強度を有する本発明のコーティング24である第1の実施例では、壁面およびコーティングの組合せは、壁面+コーティングの厚さ全体が超合金でできている場合に得られる強度の(100%x500+60%x125)/(500x125)=92%の結合相対強度を有する。本発明の好ましいコーティング材料の耐酸化性および耐腐食性によりコーティングの厚さに対する損失が極めて低いまたはごく僅かなレベルまで小さくなるので、壁面およびコーティングの組合せは実質的にその元の強度を維持する。
【0023】
本発明に対応する第2の実施例では、コーティングは壁面を形成する超合金の100%の強度を有し、この場合壁面およびコーティングの組合せは1005の超合金に相当する結合強度を有する。また、壁面およびコーティングの結合強度の低下は、本発明の好ましいコーティング材料の耐酸化性および耐腐食性により最小限である。
【0024】
上記分析により、壁面22の厚さを小さくすることができ、さらに従来の環境コーティングおよび結合コート材料で可能なものと同じ、またはそれより大きい結合壁面+コーティング強度を達成することができることが分かるだろう。その結果、所望の場合、本発明のコーティング24は、保護する壁面に応じてより大きな厚さに、例えば上記実施例の壁面厚さの25%より大きく被着させることができる。別の方法では、より薄い壁面部を利用して、材料費用および重量を少なくすることができる。
【0025】
本発明は好ましい実施形態に関して説明したが、他の形態を当業者が採用することができることは明らかである。したがって、本発明の範囲は頭記の特許請求の範囲によってのみ制限されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】高圧タービンブレードの断面図である。
【図2】線2−2に沿った図1のブレードの断面図であり、本発明の実施形態によるブレード上の遮熱コーティングシステムを示す。
【符号の説明】
【0027】
10 高圧タービンブレード
12 エーロフォイル
14 蟻継ぎ
16 根元部
20 TBCシステム
22 外壁
24 金属コーティング
26 遮熱コーティング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超合金材料でできた基板(22)上のコーティングシステム(20)であって、コーティングシステム(20)は基板(22)の表面上にあり、表面と接触する、環境保護コーティング(24)を含み、該環境保護コーティング(24)は、900℃から1150℃の温度で前記超合金材料の50%より大きい引張強度を有するコーティング材料でできており、該コーティング材料は主に白金、ロジウム、パラジウム、およびイリジウムからなる群から選択された少なくとも1つの金属であることを特徴とするコーティングシステム(20)。
【請求項2】
前記コーティング材料は、少なくとも60重量%の白金、ロジウム、パラジウム、イリジウム、またはその組合せを含有することを特徴とする、請求項1記載のコーティングシステム(20)。
【請求項3】
前記コーティング材料はさらに、少なくとも2重量%で、15重量%未満のアルミニウムを含有することを特徴とする、請求項1または2記載のコーティングシステム(20)。
【請求項4】
前記コーティング材料はさらに、少なくとも5重量%で、20重量%未満のニッケルおよびクロムを組み合わせて含有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項記載のコーティングシステム(20)。
【請求項5】
前記コーティング材料はさらに、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、チタン、ニオブ、タングステン、モリブデン、レニウム、およびルテニウムの少なくとも1つを、少なくとも2重量%で、10重量%未満の結合量で含有することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項記載のコーティングシステム(20)。
【請求項6】
前記コーティング材料は基本的に、60重量%のロジウム、25重量%のパラジウム、10重量%の白金、および3重量%のジルコニウムからなることを特徴とする、請求項1記載のコーティングシステム(20)。
【請求項7】
前記コーティング材料は基本的に、91重量%のロジウム、2重量%のルテニウム、および7重量%のジルコニウムからなることを特徴とする、請求項1記載のコーティングシステム(20)。
【請求項8】
前記環境保護コーティング(24)は、少なくとも35マイクロメートルの厚さを有することを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項記載のコーティングシステム(20)。
【請求項9】
前記環境保護コーティング(24)に付着された遮熱コーティング層(26)をさらに備える、請求項1乃至8のいずれか1項記載のコーティングシステム(20)。
【請求項10】
前記基板(22)は、ガスタービンエンジンのエーロフォイル部品(10)であることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1項記載のコーティングシステム(20)。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−146297(P2007−146297A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−319611(P2006−319611)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】