説明

樹脂成形品の成形方法及び成形装置

【課題】ブロー成形体の膨張が妨げられることを抑制することができる樹脂成形品の成形方法及び成形装置を提供する。
【解決手段】パリソンをブロー成形して形成される中空のブロー成形体23の内部に発泡性樹脂31を注入した後に、成形型10のキャビティの容積を拡大させるように成形型のコア部13を移動し、前記発泡性樹脂の発泡を促進させて前記ブロー成形体を膨張させるようにした樹脂成形品の成形において、前記コア部を移動して前記ブロー成形体を膨張させる際に、前記ブロー成形体の延伸される部分23aに対応する前記成形型の型面部14bから前記ブロー成形体の延伸される部分に気体を噴射して、前記ブロー成形体の延伸される部分に対応する成形型の型面部とブロー成形体の延伸される部分との間に空間部16aを形成することにより、前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱が抑制されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の成形方法及び成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用部品など種々の工業用部品においては、軽量性や断熱性等の優れた特性を有する発泡樹脂成形品が広く使用されている。しかし、発泡性樹脂を成形型内に注入し発泡成形させた樹脂成形品においては、成形品の最表面であるスキン層において形成された気泡が破泡して、外観不良等の問題を引き起こす場合がある。
【0003】
これに対し、発泡性樹脂からなる樹脂成形品の表面性を向上させるものとして、成形型内に溶融状態の樹脂からなるパリソンを垂下させた後に、パリソンを成形型で挟み込んで空気等の気体を吹き込み成形させるようにした中空成形(所謂ブロー成形)と発泡成形とを組み合わせた樹脂成形品の成形方法が知られている。例えば特許文献1には、熱可塑性樹脂発泡層を有するパリソンをブロー成形してなる中空成形体の内部に熱可塑性樹脂発泡体片を充填して、該発泡体片を加熱して該発泡体片を相互に融着させた表皮付発泡成形体及びその製造方法が開示されている。
【0004】
また、発泡性樹脂を用いた樹脂成形品の成形方法としては、樹脂に発泡剤を含有させた発泡性樹脂を固定型と可動型とでなる一対の成形型のキャビティ内に注入した後に、可動型を型開き方向に移動させてキャビティの容積を拡大することにより、発泡性樹脂の発泡を促進させるようにした成形方法(所謂コアバック法)も知られている。
【特許文献1】特開2004ー284149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、パリソンをブロー成形してなるブロー成形体の内部に発泡性樹脂を注入し、該発泡性樹脂の発泡をコアバック法によって促進させるようにした樹脂成形品の成形においては、成形型のキャビティの容積を拡大させるように成形型のコア部を移動し、発泡性樹脂の発泡を促進させブロー成形体を膨張させる際に、ブロー成形体の延伸される部分が成形型によって冷却されて伸びず、ブロー成形体の膨張が妨げられる場合がある。かかる場合には、例えばコア部のキャビティ面周縁部に位置するコーナ部などにおいて、コア部の移動に完全に追従して樹脂成形品が成形されず、外観不良等の問題を引き起こし得る。
【0006】
そこで、この発明は、前記技術的課題に鑑みてなされたものであり、発泡性樹脂の発泡を促進させてブロー成形体を膨張させることができるとともに、ブロー成形体の膨張に伴ってブロー成形体の延伸される部分が成形型によって冷却されブロー成形体の膨張が妨げられることを抑制することができる樹脂成形品の成形方法及び成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本願の請求項1に係る樹脂成形品の成形方法は、ソリッド樹脂からなるパリソンを型開きした成形型内に垂下させ、前記パリソンを挟んで前記成形型を型閉めした後に前記パリソンをブロー成形して中空のブロー成形体を形成し、該ブロー成形体の形成後に前記ブロー成形体内に発泡性樹脂を注入し、該発泡性樹脂の注入後に、前記成形型のキャビティの容積を拡大させるように前記成形型のコア部を所定量移動させることにより、前記発泡性樹脂の発泡を促進させて前記ブロー成形体を膨張させるようにした樹脂成形品の成形方法であって、前記コア部を移動して前記ブロー成形体を膨張させる際に、前記ブロー成形体の膨張に伴って前記ブロー成形体の延伸される部分から前記ブロー成形体の延伸される部分に対応する前記成形型の型面部へ熱が伝わることを抑制する伝熱抑制手段を講じて、前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱が抑制されていることを特徴としたものである。
【0008】
また、本願の請求項2に係る発明方法は、請求項1に係る発明方法において、前記パリソンを挟んで前記成形型を型閉めする型閉め時から前記成形型のコア部を所定量移動させたコア移動終了時までの間、前記伝熱抑制手段を講じて、前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱が抑制されていることを特徴としたものである。
【0009】
更に、本願の請求項3に係る発明方法は、請求項1又は2に係る発明方法において、前記成形型のコア部を所定量移動させたコア移動終了時から前記樹脂成形品が前記成形型から取り出される成形品脱型時までの間において、前記伝熱抑制手段によって前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱が抑制される伝熱抑制状態を、前記コア部を移動して前記ブロー成形体を膨張させる際に前記伝熱抑制手段によって前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱が抑制される伝熱抑制状態より緩和させることを特徴としたものである。
【0010】
また更に、本願の請求項4に係る発明方法は、請求項3に係る発明方法において、前記伝熱抑制手段は、前記ブロー成形体の延伸される部分に対応する前記成形型の型面部から前記ブロー成形体の延伸される部分へ気体を噴射する気体噴射手段であり、前記コア部を移動して前記ブロー成形体を膨張させる際に、前記気体噴射手段によって所定噴射量の気体が噴射され、前記ブロー成形体の延伸される部分と前記ブロー成形体の延伸される部分に対応する前記成形型の型面部との間に空間部が形成されることにより、前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱が抑制され、前記コア移動終了時から前記成形品脱型時までの間において、前記気体噴射手段によって噴射される前記気体の噴射量が、前記所定噴射量より低減される、あるいはゼロにされることにより、前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱が抑制される伝熱抑制状態を、前記コア部を移動して前記ブロー成形体を膨張させる際における前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱が抑制される伝熱抑制状態より緩和させることを特徴としたものである。
【0011】
また更に、本願の請求項5に係る発明方法は、請求項1〜4の何れか一に係る発明方法において、前記発泡性樹脂に、該発泡性樹脂を補強する補強繊維が含有されていることを特徴としたものである。
【0012】
また更に、本願の請求項6に係る発明方法は、請求項1〜5の何れか一に係る発明方法において、前記発泡性樹脂に、物理発泡剤が含有されていることを特徴としたものである。
【0013】
また更に、本願の請求項7に係る発明方法は、請求項6に係る発明方法において、前記物理発泡剤が、超臨界状態の流体であることを特徴としたものである。
【0014】
また更に、本願の請求項8に係る樹脂成形品の成形装置は、開閉可能な成形型と、型開きされた前記成形型内にソリッド樹脂からなるパリソンを押し出す押出ヘッドと、前記パリソンを挟んで前記成形型を型閉めした後に前記パリソン内に加圧流体を供給し中空のブロー成形体を形成する加圧流体供給手段と、前記ブロー成形体内に発泡性樹脂を注入する注入手段と、前記成形型のキャビティの容積を拡大させるように前記成形型のコア部を移動させるコア移動手段とを備え、前記ブロー成形体の内部に前記発泡性樹脂を注入した後に、前記成形型のキャビティの容積を拡大させるように前記コア部を移動し、前記発泡性樹脂の発泡を促進させて前記ブロー成形体を膨張させるようにした樹脂成形品の成形装置であって、前記ブロー成形体の膨張に伴って前記ブロー成形体の延伸される部分から前記ブロー成形体の延伸される部分に対応する前記成形型の型面部へ熱が伝わることを抑制する伝熱抑制手段を備え、前記伝熱抑制手段は、前記コア部を移動して前記ブロー成形体を膨張させる際に、前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱を抑制することを特徴としたものである。
【0015】
また更に、本願の請求項9に係る発明は、請求項8に係る発明において、前記伝熱抑制手段は、前記パリソンを挟んで前記成形型を型閉めする型閉め時から前記成形型のコア部を所定量移動させたコア移動終了時までの間、前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱を抑制することを特徴としたものである。
【0016】
また更に、本願の請求項10に係る発明は、請求項8又は9に係る発明において、前記伝熱抑制手段の作動を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記成形型のコア部を所定量移動させたコア移動終了時から前記樹脂成形品が前記成形型から取り出される成形品脱型時までの間において、前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱を抑制する伝熱抑制状態を、前記コア部を移動して前記ブロー成形体を膨張させる際における前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱を抑制する伝熱抑制状態より緩和させるように前記伝熱抑制手段の作動を制御することを特徴としたものである。
【0017】
また更に、本願の請求項11に係る発明は、請求項10に係る発明において、前記伝熱抑制手段は、前記ブロー成形体の延伸される部分に対応する前記成形型の型面部から前記ブロー成形体の延伸される部分へ気体を噴射する気体噴射手段であり、前記制御手段は、前記コア部を移動して前記ブロー成形体を膨張させる際に、所定噴射量の気体を噴射し、前記ブロー成形体の延伸される部分と前記ブロー成形体の延伸される部分に対応する前記成形型の型面部との間に空間部を形成して前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱を抑制し、前記コア移動終了時から前記成形品脱型時までの間において、前記ブロー成形体へ噴射する前記気体の噴射量を、前記所定噴射量より低減させ、あるいはゼロにし、前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱を抑制する伝熱抑制状態を、前記コア部を移動して前記ブロー成形体を膨張させる際における前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱を抑制する伝熱抑制状態より緩和させるように前記気体噴射手段の作動を制御することを特徴としたものである。
【0018】
また更に、本願の請求項12に係る発明は、請求項8〜11の何れか一に係る発明において、前記成形型は、固定型と可動型とを有し、前記固定型及び前記可動型の何れか一方の型は、前記成形型を型閉めする際に前記固定型及び前記可動型の他方の型と型閉めするとともに前記成形型の前記コア部の外周に位置する外周部と、前記成形型のキャビティの容積を拡大させるように前記外周部に対し移動可能な前記コア部とを備え、前記伝熱抑制手段は、前記ブロー成形体の膨張に伴って前記ブロー成形体の延伸される部分に対応する前記外周部の型面部に設けられていることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0019】
本願の請求項1に係る樹脂成形品の成形方法によれば、発泡性樹脂の発泡を促進させてブロー成形体を膨張させることができるとともに、ブロー成形体の膨張に伴ってブロー成形体の延伸される部分が成形型によって冷却されブロー成形体の膨張が妨げられることを抑制することができ、表面性及び物性に優れた樹脂成形品を容易に且つ確実に成形することができる。
【0020】
また、本願の請求項2に係る発明方法によれば、成形型のコア部を移動させる前においても、ブロー成形体の膨張に伴ってブロー成形体の延伸される部分が冷却されることを抑制することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0021】
更に、本願の請求項3に係る発明方法によれば、樹脂成形品を成形した後に樹脂成形品の冷却を促進させることができ、樹脂成形品を成形する成形サイクルタイムを短縮させることが可能である。
【0022】
また更に、本願の請求項4に係る発明方法によれば、伝熱抑制手段は、成形型の型面部からブロー成形体へ気体を噴射する気体噴射手段であり、該気体噴射手段から気体を噴射することでブロー成形体から成形型への伝熱が抑制されることにより、比較的簡単な手段によって前記効果を得ることができる。
【0023】
また更に、本願の請求項5に係る発明方法によれば、発泡性樹脂に含有された補強繊維のスプリングバック現象によって発泡性樹脂の発泡をさらに促進させることが可能である。補強繊維が含有された発泡性樹脂を用いて成形される樹脂成形品において、樹脂成形品の表面に補強繊維が露出して表面外観を悪化させることがなく、前記効果をより有効に奏することができる。
【0024】
また更に、本願の請求項6に係る発明方法によれば、発泡性樹脂に、物理発泡剤が含有されていることにより、発泡セル径の微細な樹脂成形品を成形することができ、樹脂成形品において曲げ剛性等の物性をさらに向上させることができる。
【0025】
また更に、本願の請求項7に係る発明方法によれば、物理発泡剤が、超臨界状態の流体であることにより、さらに微細な発泡セルを有する樹脂成形品を成形することができ、前記効果をさらに有効に奏することができる。
【0026】
また更に、本願の請求項8に係る樹脂成形品の成形装置によれば、発泡性樹脂の発泡を促進させてブロー成形体を膨張させることができるとともに、ブロー成形体の膨張に伴ってブロー成形体の延伸される部分が成形型によって冷却されブロー成形体の膨張が妨げられることを抑制することができ、表面性及び物性に優れた樹脂成形品を容易に且つ確実に成形することができる。
【0027】
また更に、本願の請求項9に係る発明によれば、成形型のコア部を移動させる前においても、ブロー成形体の膨張に伴ってブロー成形体の延伸される部分が冷却されることを抑制することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0028】
また更に、本願の請求項10に係る発明によれば、樹脂成形品を成形した後に樹脂成形品の冷却を促進させることができ、樹脂成形品を成形する成形サイクルタイムを短縮させることが可能である。
【0029】
また更に、本願の請求項11に係る発明によれば、伝熱抑制手段は、成形型の型面部からブロー成形体へ気体を噴射する気体噴射手段であり、該気体噴射手段から気体を噴射することでブロー成形体から成形型への伝熱が抑制されることにより、比較的簡単な手段によって前記効果を得ることができる。
【0030】
また更に、本願の請求項12に係る発明によれば、成形型の構造やその駆動機構等を複雑化させることなく、比較的簡単な構造によって、前記効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る樹脂成形品の成形装置の成形型及び押出ヘッドを示す断面説明図である。前記成形装置1は、図1に示すように、開閉可能に設けられる成形型10と、加熱溶融した第1の樹脂をパリソン20として押し出す押出ヘッド21と、成形型10内に加圧流体を供給する加圧流体供給手段としてのブローピン25とを備えている。また、前記成形装置1は、後述する図4に示すように、成形型10内に第2の樹脂に発泡剤を含有させた発泡性樹脂を注入する注入手段としての射出装置30を備えている。
【0032】
成形型10は、固定型11と可動型12とによって構成され、固定型11と可動型12とを型閉めすることにより、成形型10内に樹脂成形品の所望形状に応じたキャビティ16が形成される。可動型12は、コア部13と、該コア部13と組み合わせられる外周部14とを備えている。
【0033】
図2は、前記可動型を模式的に示す斜視図であり、図2では、外周部14に対してコア部13が型開き方向に移動された状態を示している。図2に示すように、可動型12のコア部13は、略平板状に形成される板状部13aから四角状に突出する突出部13bを備えており、成形型10の型開閉方向に垂直な方向において突出部13bの外周に、該突出部13bの外周形状に応じて四角枠状に形成された外周部14が嵌め合わせられている。
【0034】
可動型12は、固定型11に対してコア部13と外周部14とが一体的に型開閉方向に移動可能に構成されるとともに、固定型11と可動型12とを型閉めした後に、可動型12の外周部14と固定型11とを型閉めした状態において、成形型10のキャビティ16の容積を拡大させるように可動型12のコア部13のみを型開き方向に移動可能に構成されている。
【0035】
また、成形装置1は、例えば空気(エア)等の気体を成形型10内に噴射する気体噴射装置(不図示)を備えており、該気体噴射装置から成形型10内に気体を噴射するための噴射経路14aが、可動型12の外周部14に設けられている。噴射経路14aには、その内部に無数の小さな穴を有する多孔部材15が設けられている。この多孔部材15は、外周部14の型面部14bに凹状に成形された凹部14cに配設され、外周部14の型面部14bの一部を構成している。これにより、前記気体噴射装置から噴射される気体は、噴射経路14a及び多孔部材15を通じて成形型10内に噴射されるようになっている。なお、多孔部材15としては、例えば焼結部材等を用いることが可能である。
【0036】
ブローピン25は、加圧流体供給源(不図示)から供給される加圧流体として圧縮空気などの加圧気体を成形型10内に供給して、成形型10内を所定の圧力に保持することができるようになっている。また、ブローピン25は、該ブローピン25を成形型10内に挿入した状態で成形型10内の空気を排気できるようになっている。成形型10の固定型11には、ブローピン25を挿通させるための挿通孔26が設けられ、ブローピン25は、挿通孔26内で進退動可能に構成されている。
【0037】
射出装置30は、発泡性樹脂31を成形型10内に注入するものであり、第2の樹脂32を混練溶融させるシリンダ33を備えている。シリンダ33の内部にはスクリュー34が備えられ、スクリュー34の後端には、スクリュー駆動機構及び射出機構(共に不図示)が連結されている。
【0038】
射出装置30では、シリンダ33の周囲に設けられた加熱ヒータ(不図示)とスクリュー34とによって、シリンダ33に投入された第2の樹脂32を順次加熱するとともに混練溶融させる。そして、混練溶融された第2の樹脂32に対し、二酸化炭素又は窒素等の不活性ガスを含むボンベ35から超臨界流体発生装置36を介して超臨界状態にされた前記不活性ガスが、超臨界流体注入装置37によって注入される。これにより、第2の樹脂32に発泡剤を含有させた発泡性樹脂31が形成される。
【0039】
発泡性樹脂31は、スクリュー34が前記スクリュー駆動機構によって回転されるとともに前記射出機構によって射出されることによって成形型10内に注入される。成形型10、具体的には固定型11には、射出装置30のノズル38に連通され、発泡性樹脂31を成形型10内に注入するための注入経路17が設けられている。
【0040】
また、成形装置1は、該成形装置1を総合的に制御する制御ユニット(不図示)を備えており、この制御ユニットは、成形型10の開閉駆動、成形型10のコア部13の型開き方向への移動機構、押出ヘッド21のパリソン押出機構、ブローピン25の作動機構、ブローピン25からの加圧流体供給機構、射出装置30の発泡性樹脂31の注入機構、前記気体噴射装置からの気体噴射機構等の制御を行う。
【0041】
前記制御ユニットには、タイマ(不図示)が備えられ、後述する図10に示すように、前記制御ユニットは、パリソン20が垂下されるときからの時間に応じて、エア噴射タイミングを調整するとともにエア噴射量を制御する。なお、前記制御ユニットは、例えばマイクロコンピュータを主要部として構成されている。
【0042】
次に、前記成形装置1を用いた樹脂成形品の成形について説明する。
先ず、成形型10が型開きされた状態において、押出ヘッド21から成形型10内に、加熱溶融された第1の樹脂からなるパリソン20が円筒状に垂下される。なお、第1の樹脂としては、例えば熱可塑性樹脂等の非発泡のソリッド樹脂を用いることができる。
【0043】
そして、固定型11に対して可動型12のコア部13と外周部14とが一体的に型閉め方向に移動されて成形型10が型閉めされ、パリソン20の上端側及び下端側が固定型11と可動型12の外周部14とによって挟み込まれる。これにより、パリソン20の内部の空間が閉じられてパリソン20の内部に空間部22が形成される。そして、その後にパリソン20の空間部22内にブローピン25を介して加圧気体が供給される。
【0044】
図3は、前記成形型内に位置するパリソンに加圧気体が供給された状態を示す概略説明図である。ブローピン25が前進させられ、ブローピン25によってパリソン20の内部の空間部22に加圧気体が供給され、パリソン20がブロー成形される。パリソン20は、その内部の空間が膨張して、固定型11のキャビティ面11aと可動型12のコア部13のキャビティ面13cと可動型12の外周部14の型面部14bとに応じた中空のブロー成形体23が成形される。
【0045】
図4は、前記成形型内に発泡性樹脂が注入される状態を示す概略説明図である。成形型10内に垂下されたパリソン20がブロー成形されると、次に、ブロー成形体23内の空間部22に、射出装置30から第2の樹脂32に超臨界状態の流体を含有させた発泡性樹脂31が注入される。なお、第2の樹脂としては、例えばポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂などを用いることができる。
【0046】
射出装置30からブロー成形体23内の空間部22への発泡性樹脂31の注入機構について、図5〜図7を参照して説明する。
図5〜図7は、射出装置30からブロー成形体23内の空間部22へ発泡性樹脂31が注入される工程を順に表しており、図4のA部について示している。図5は、前記注入経路に設けられた第1の弁体及び第2の弁体が閉じた状態を示す説明図、図6は、前記注入経路に設けられた前記第1の弁体が開き前記第2の弁体が閉じた状態を示す説明図、図7は、前記注入経路に設けられた前記第1の弁体及び前記第2の弁体が開いた状態を示す説明図である。
【0047】
図5に示すように、固定型11に設けられる注入経路17は、キャビティ面11aに形成される凹部11bと連通され、該凹部11bの底側に第1の弁体51が備えられている。第1の弁体51は、ロッド52を介して駆動シリンダ53に連結され、駆動シリンダ53を作動させることにより上下方向に移動可能に構成されている。注入経路17は、この第1の弁体51が上方へ移動されることで閉じられる。また、注入経路17には、該注入経路17を開閉し、水平方向に移動可能に構成される第2の弁体54が備えられている。流入経路17では、第1の弁体51及び第2の弁体54が開いた状態において、発泡性樹脂31が成形型10内に注入可能となる。
【0048】
第1の弁体51及び第2の弁体54がそれぞれ注入経路17を閉じた状態で、パリソン20内の空間部22に加圧気体が供給されてパリソン20がキャビティ面11aに押し付けられる際には、凹部11bにおいても、その表面にパリソン20が断面コ字状に押し付けられるが、この部分ではパリソン20の厚さが薄く成形される。
【0049】
そして、図6に示すように、駆動シリンダ53を作動させて第1の弁体51を下方側へ移動させた後に、ブローピン25を介して加圧気体が供給され空間部22の圧力が高められると、凹部11b内に断面コ字状に成形されたパリソン20が、その底部20aにおいて開口させられる。
【0050】
次に、第2の弁体54が注入経路17を開くように移動され、空間部22と注入経路17とが連通された後に、図7に示すように、発泡性樹脂31が、射出装置30から空間部22内に注入される。なお、図5〜図7は、パリソン20がブロー成形されて形成される中空のブロー成形体23の内部への発泡性樹脂の注入の一例を示したものであり、その他の好適な手段によって発泡性樹脂31を注入するようにしてもよい。
【0051】
このようにして、発泡性樹脂31がブロー成形体23内に注入される際には、発泡性樹脂31の注入に伴って、ブロー成形体23の空間部22内の空気がブローピン25を通じて排出される。ブロー成形体23内に発泡性樹脂31が充填されると、ブローピン25が後退させられ、次に、固定型11と可動型12の外周部14とを型閉めした状態で、成形型10のキャビティ16の容積を拡大させるように成形型10のコア部13のみを型開き方向に移動させる。
【0052】
図8は、前記成形型内に注入された発泡性樹脂が発泡成形された状態を示す概略説明図である。この図に示すように、成形装置1では、成形型10のキャビティ16の容積を拡大するように、成形型10のコア部13が型開き方向に、すなわち矢印X1の方向に所定量移動されることにより、発泡性樹脂31の発泡が促進されブロー成形体23が膨張される。そして、溶融状態にある発泡性樹脂31が冷却されて固化し、ブロー成形体23の内部に発泡性樹脂31を注入して発泡させるようにした樹脂成形品24が成形される。
【0053】
このように、ブロー成形体23の内部に発泡性樹脂31を注入した後に、成形型10のキャビティ16の容積を拡大するように成形型10のコア部13を型開き方向に移動させて樹脂成形品24を成形する場合、ブロー成形体23が成形型10によって冷却され、コア部13を型開き方向に移動させる際にブロー成形体23が型開き方向に延伸されず、ブロー成形体23の膨張が妨げられて、例えばコア部13のキャビティ面周縁部に位置するコーナ部などにおいて、コア部の移動に追従して成形されず、外観不良等の問題が生じる場合があるが、本実施形態では、ブロー成形体23から成形型10へ熱が伝わることを抑制することで、かかる問題を回避する。
【0054】
図9は、図8のB部について前記成形型のコア部が型開き方向に移動される状態を示す断面説明図である。成形型10のキャビティ16の容積を増大させるように成形型10のコア部13を型開き方向に移動させる際には、ブロー成形体23が型開き方向に膨張され、コア部13のキャビティ面13cに、具体的にはキャビティ面13cの周縁部13d近傍に位置するブロー成形体23が延伸させられる。
【0055】
成形装置1では、成形型10のコア部13を移動してブロー成形体23を膨張させる際に、前記気体噴射装置から噴射経路14a及び多孔部材15を通じて成形型10内に所定噴射量の気体が噴射されており、ブロー成形体23の膨張に伴ってブロー成形体23の延伸される部分23aとブロー成形体23の延伸される部分23aに対応する成形型10の型面部14b、具体的にはブロー成形体23の延伸される部分23aに対向する成形型10の型面部14bとの間に空間部16aが形成され、この空間部16aによって、ブロー成形体23が膨張される際にブロー成形体23から成形型10への伝熱が抑制されている。
【0056】
前記制御ユニットは、コア部13を移動してブロー成形体23を膨張させる際に、ブロー成形体23の延伸される部分23aに対応する成形型10の型面部14aから前記ブロー成形体の延伸される部分23aへ所定噴射量の気体を噴射し、ブロー成形体23から成形型10への伝熱を抑制するように前記気体噴射装置の作動を制御する。
【0057】
成形型10のコア部13が型開き方向に所定量移動されると、次に、ブロー成形体23と外周部13との間に形成された空間部16aをなくするように、前記気体噴射手段から噴射される気体の噴射量が、コア部13を移動させる際における前記所定噴射量より次第に低減され、最終的には気体噴射量がゼロにされ、ブロー成形体23から成形型10への伝熱を抑制する伝熱抑制状態を、コア部13を移動させる際におけるブロー成形体23から成形型10への伝熱を抑制する伝熱抑制状態より緩和させる。そして、ブロー成形体23及び発泡性樹脂31が成形型によって冷却されて固化し、樹脂成形品24が成形される。
【0058】
前記制御ユニットは、成形型10のコア部13を所定量移動させたコア移動終了時から樹脂成形品24が成形型10から取り出される成形品脱型時までの間において、ブロー成形体23へ噴射する気体の噴射量を、コア部13を移動させる際における前記所定噴射量より低減させる、あるいはゼロにさせるように前記気体噴射装置の作動を制御する。
【0059】
なお、コア移動終了時から成形品脱型時までの間における前記気体噴射装置の制御については、ブロー成形体23へ噴射する気体の噴射量を、コア移動終了時から成形品脱型時まで前記所定噴射量より低減させる、あるいはゼロにさせるようにしても、コア移動終了時から成形品脱型時までの間の少なくとも一部の期間において前記所定噴射量より低減させる、あるいはゼロにさせるようにしてもよい。
【0060】
また、噴射経路14aに設けられる多孔部材15は、成形型10のコア部13が型開き方向に移動される際に多孔部材15を通じてブロー成形体23の延伸される部分23aに気体を噴射するために、成形型10の型開き方向においてブロー成形体23の延伸される部分23aを覆うような大きさで形成されている。
【0061】
図10は、前記気体噴射装置のエア噴射タイミングを示すパターン図である。この図に示すように、前記気体噴射装置では、前記制御ユニットによって成形型10内に気体を噴射するエア噴射タイミングが制御される。成形型10のコア部13を型開き方向に所定量移動(コアバック)してブロー成形体23を膨張させる際には、成形型10内に気体が噴射される。
【0062】
このように、成形型10のコア部13を型開き方向に移動してブロー成形体23を膨張させる際に、前記気体噴射装置によってブロー成形体23の延伸される部分23aに対応する成形型10の型面部14bからブロー成形体23の延伸される部分23aに所定噴射量の気体を噴射して、成形型10の型面部14bとブロー成形体23との間に空間部16aを形成することで、ブロー成形体23の延伸させる部分23aが冷却固化されることを抑制することができ、ブロー成形体23の延展性を維持することができる。
【0063】
また、図10に示すように、コア部13の型開き方向への移動前においても前記気体噴射装置によってブロー成形体23の延伸される部分23aに対応する成形型10の型面部14bからブロー成形体23の延伸される部分23aに気体が噴射される。すなわち、パリソン20を挟んで成形型10を型閉めする型閉め時から、パリソン20がブロー成形され、そのブロー成形体23の内部に発泡性樹脂31が注入され、その後に成形型10のコア部13を型開き方向に移動させたコア移動終了時まで、前記気体噴射装置によって所定噴射量の気体が噴射されている。
【0064】
このように、成形型10の型閉め時からコア部13を移動したコア移動終了時までの間、前記気体噴射装置によって気体が噴射されることで、コア部13を型開き方向に移動させる前においても、ブロー成形体23の膨張に伴ってブロー成形体23の延伸される部分23aが冷却固化されることを抑制することができる。
【0065】
一方、コア移動終了時から、成形型10が型開きされた後に樹脂成形品24が成形型10から取り出される成形品脱型時までの間においては、前記気体噴射装置によってブロー成形体23へ噴射される気体の噴射量が、前記所定噴射量より次第に低減され、最終的に気体の噴射量がゼロにされて気体の噴射が停止される。
【0066】
このように、コア移動終了時から成形品脱型時までの間において、ブロー成形体23へ噴射する気体の噴射量を、前記所定噴射量より低減させ、あるいはゼロにし、コア部13を移動してブロー成形体23を膨張させる際におけるブロー成形体23から成形型10への伝熱を抑制する伝熱抑制状態を緩和させることにより、樹脂成形品を成形した後に樹脂成形品の冷却を促進させることができ、樹脂成形品を成形する成形サイクルタイムを短縮させることが可能である。
【0067】
また、パリソン20が成形型10内に垂下される際には、前記気体噴射手段によって成形型10の型面部14bからブロー成形体23の延伸される部分23aへの気体の噴射が停止させられている。図10では、型閉じ時からブロー成形時におけるエア噴射タイミング調整域が示されているが、このエア噴射タイミング調整域は、樹脂の温度特性、樹脂温度、成形型の温度などに応じて、その調整域内でエア噴射タイミングが調整可能であることを示している。コア移動終了後におけるエア噴射タイミング調整域についても、この調整域内でエア噴射タイミングが調整可能であることを示しており、その調整域内でエア噴射量を徐々に低減し停止させる。
【0068】
第1の実施形態に係る成形装置1では、パリソン20の空間部22に発泡性樹脂31を注入する際に、空間部22内の空気がブローピン25を通じて排出されているが、空間部22を規定するパリソン20に、空間部22内の気体を排出する気体排出用穴を設けるようにしてもよい。
【0069】
図11は、本発明の第2の実施形態に係る樹脂成形品の成形装置において、該成形装置の成形型内に位置するパリソンに加圧気体が供給された状態を示す概略説明図であり、図12は、前記成形装置の成形型内に発泡性樹脂が注入される状態を示す概略説明図である。なお、これらの図では、前述した成形装置1と同様の構成を備え、同様の作用をなすものについては同一符号を付し、それ以上の説明は省略する。
【0070】
第2の実施形態に係る成形装置では、図11に示すように、成形型60が型閉じされた状態において、固定型11のキャビティ面11aと可動型12のコア部13のキャビティ面13cと可動型12の外周部14の型面部14bとによって形成される空間内に突出するようにピン61が固定型11に設けられている。このピン61は、その先端側が先細り形状に形成され、その後端側が可動プレート62に取り付けられている。該可動プレート62は、例えば駆動シリンダ等によって、前記空間に対して進退動可能に構成されている。
【0071】
また、成形型60では、キャビティ面11a、13c及び型面部14bによって形成される空間内の気体を排出するための排気経路64が固定型11に形成されており、この排気経路64は、可動プレート62を前進させることで閉じられ、可動プレート61を後退させることで開かれるようになっている。
【0072】
前記のように、パリソン20の空間部22に加圧気体が供給されてパリソン20がキャビティ面11aに押し付けられる際には、図12に示すように、パリソン20にピン61が刺さった状態でパリソン20がキャビティ面11aに押し付けられ、パリソン20には、ピン61によって気体排出穴20bが形成される。
【0073】
そして、発泡性樹脂31が空間部22内に注入される際には、図12に示すように、ブローピン25を後退させるとともに可動プレート62を後退させる。これにより、発泡性樹脂31の注入に伴って、空間部22内の気体が、気体排出穴20bから排気経路64を通じて排出させることができる。
【0074】
なお、本実施形態では、発泡剤として超臨界状態にある流体を用いているが、その他の物理発泡材、あるいは化学発泡剤を使用することも可能である。また、前記成形装置1では、ブロー成形体23の延伸される部分23aからブロー成形体23の延伸される部分23aに対応する成形型10の型面部14bへ熱が伝わることを抑制する伝熱抑制手段として、外周部14に設けられた前記気体噴射手段、噴射経路14a及び多孔部材15とからなる気体噴射手段を用い、比較的簡単な手段によってブロー成形体23から成形型10への伝熱を抑制しているが、コア部13を移動してブロー成形体23を膨張させる際に、ブロー成形体23の延伸される部分23aから該部分23aに対応する成形型の型面部へ熱が伝わることを抑制するその他の伝熱抑制手段を講じて、ブロー成形体23から成形型への伝熱を抑制するようにしてもよい。
【0075】
図13は、本発明の第3の実施形態に係る樹脂成形品の成形装置において、該成形装置の成形型の要部を示す断面説明図である。なお、図13では、前述した成形装置1の成形型10と同様の構成を備え、同様の作用をなすものについては、同一符号を付し、それ以上の説明は省略する。
【0076】
第3の実施形態に係る成形装置では、前記伝熱抑制手段として、成形装置1の前記気体噴射手段に代え、成形型70の外周部74に、ブロー成形体23から成形型10へ熱が伝わることを抑制するための断熱部材75が配設されている。この断熱部材75は、外周部74の型面部74aに凹状に形成された凹部74bに配設され、外周部74の型面部74aの一部を構成している。なお、断熱部材75は、例えばセラミックなどの断熱性を有する材料から形成される。
【0077】
前記のように、可動型72のコア部13が型開き方向に、すなわち矢印X2に示す方向に移動され、ブロー成形体23が膨張される際には、コア部13のキャビティ面13c、具体的にはキャビティ面13cの周縁部13d近傍に位置するブロー成形体23が延伸させられるが、このブロー成形体23の延伸される部分23aの外周には、断熱部材75が配設されている。
【0078】
このように、ブロー成形体23の延伸される部分23aに対応して成形型10に断熱部材75を設けることにより、ブロー成形体23の延伸される部分23aが冷却固化されることを抑制することができる。なお、ブロー成形体23の延伸される部分23aに対応して外周部74の型面部74aに断熱部材を貼りつけるようにしてもよい。
【0079】
図14は、本発明の第4の実施形態に係る樹脂成形品の成形装置において、該成形装置の成形型の要部を示す断面説明図である。なお、図14では、前述した成形装置1の成形型10と同様の構成を備え、同様の作用をなすものについては、同一符号を付し、それ以上の説明は省略する。
【0080】
第4の実施形態に係る成形装置では、前記伝熱抑制手段として、成形装置1の前記気体噴射手段に代え、ブロー成形体23を形成する第1の樹脂より断熱性の高い第3の樹脂85を成形型80内に注入する注入装置86を備え、成形型80の外周部84には、注入装置86から第3の樹脂85を注入するための注入経路84aが設けられている。
【0081】
前記のように、可動型82のコア部13が型開き方向に、すなわち矢印X3に示す方向に移動され、ブロー成形体23が膨張される際には、コア部13のキャビティ面13c、具体的にはキャビティ面13cの周縁部13d近傍に位置するブロー成形体23が延伸させられるが、注入装置86によってブロー成形体23の延伸される部分23aとブロー成形体23の延伸される部分23aに対応する外周部84の型面部84bとの間にブロー成形体23の膨張を妨げないように比較的低い圧力で第3の樹脂85が注入される。なお、この注入装置92の作動は、前記制御ユニットによって制御される。
【0082】
このように、ブロー成形体23の延伸される部分23aとブロー成形体23の延伸される部分23aに対応する成形型80の型面部84bとの間に断熱性の高い第3の樹脂85を注入することで、ブロー成形体23の延伸される部分23aが冷却固化されることを抑制することができる。
【0083】
なお、第4の実施形態に係る成形装置では、成形型80のコア部13を型開き方向に移動してブロー成形体23を膨張させる際に、ブロー成形体23の膨張に伴ってブロー成形体23の延伸される部分23aとブロー成形体23の延伸される部分23aに対応する成形型80の型面部84bとの間に第3の樹脂85を注入して、ブロー成形体23から成形型80への伝熱が抑制されているが、ブロー成形体23の膨張に伴ってブロー成形体23の延伸される部分23aを断熱性の高い樹脂で形成するようにしてもよい。
【0084】
第1の樹脂と、該第1の樹脂より断熱性の高い第3の樹脂とを含有する樹脂材料を用い、この樹脂材料を溶融状態にしてパリソンとして押出ヘッドから押し出す際に、前記パリソンからなるブロー成形体内に発泡性樹脂を注入した後に成形型のコア部を移動させて前記ブロー成形体を膨張させるときに前記ブロー成形体の延伸される部分が前記第3の樹脂から形成されるように、前記パリソンの所定部分に第3の樹脂を含有させるようにすることで、前記ブロー成形体の延伸される部分を断熱性の高い樹脂で形成するようにしてもよい。
【0085】
これにより、前記パリソンがブロー成形され、そのブロー成形体内に発泡性樹脂が注入された後に成形型のコア部を型開き方向に所定量移動させ、発泡性樹脂の発泡を促進させてブロー成形体を膨張させる際に、ブロー成形体の延伸される部分から成形型への伝熱を抑制することができる。
【0086】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、樹脂成形品24を成形する上で、成形型10のコア部13を移動してブロー成形体23を膨張させる際に、ブロー成形体23から成形型10への伝熱を抑制する伝熱抑制手段を講じることにより、発泡性樹脂31の発泡を促進させてブロー成形体23を膨張させることができるとともに、ブロー成形体23の膨張に伴ってブロー成形体23の延伸される部分23aが成形型10によって冷却されブロー成形体の膨張が妨げられることを抑制することができ、表面性及び物性に優れた樹脂成形品を容易に且つ確実に成形することができる。
【0087】
また、成形型10の型閉め時からコア部13を移動したコア移動終了時までの間、前記伝熱抑制手段を講じることにより、成形型10のコア部13を型開き方向に移動させる前においても、ブロー成形体23の膨張に伴ってブロー成形体23の延伸される部分23aが冷却されることを抑制することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0088】
更に、発泡性樹脂31に、物理発泡剤が含有されていることにより、発泡セル径の微細な樹脂成形品を成形することができ、樹脂成形品において曲げ剛性等の物性をさらに向上させることができる。
【0089】
また更に、物理発泡剤が、超臨界状態の流体であることにより、さらに微細な発泡セルを有する樹脂成形品を成形することができ、前記効果をさらに有効に奏することができる。
【0090】
また更に、本実施形態に係る成形装置1では、成形型の構造やその駆動機構等を複雑化させることなく、比較的簡単な構造によって、前記効果を得ることができる。
【0091】
なお、樹脂成形品24の成形に際し、発泡性樹脂31にさらに、該発泡性樹脂31を補強する補強繊維を含有させるようにしてもよい。このように、発泡性樹脂31に補強繊維を含有させることで、繊維のスプリングバック現象によって発泡性樹脂の発泡をさらに促進させることが可能である。補強繊維が含有された発泡性樹脂を用いて成形する場合においても、樹脂成形品の表面に補強繊維が露出して表面外観を悪化させることがなく、表面性の良好な樹脂成形品を得ることができる。
【0092】
本実施形態では、成形型10のコア部13が型開き方向に移動してブロー成形体23を膨張させ、ブロー成形体23の延伸される部分23aに対向する外周部14の型面部14bに伝熱抑制手段が設けられているが、成形型のキャビティの容積を拡大するように成形型のコア部を移動してブロー成形体を膨張させる際に、該コア部の移動に伴ってブロー成形体の延伸される部分に対応する成形型の型面部に前記伝熱抑制手段を設けたその他の成形型を用いることが可能である。
【0093】
以上のように、本発明は、例示された実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、ブロー成形体の内部に発泡性樹脂を注入し発泡させるようにした樹脂成形品の成形に関するものであり、例えば車体に組みつけられるトランクボードなどの樹脂成形品の成形に好適に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る樹脂成形品の成形装置の成形型及び押出ヘッドを示す断面説明図である。
【図2】前記可動型を模式的に示す斜視図である。
【図3】前記成形型内に位置するパリソンに加圧気体が供給された状態を示す概略説明図である。
【図4】前記成形型内に発泡性樹脂が注入される状態を示す概略説明図である。
【図5】前記注入経路に設けられた第1の弁体及び第2の弁体が閉じた状態を示す説明図である。
【図6】前記注入経路に設けられた前記第1の弁体が開き前記第2の弁体が閉じた状態を示す説明図である。
【図7】前記注入経路に設けられた前記第1の弁体及び前記第2の弁体が開いた状態を示す説明図である。
【図8】前記成形型内に注入された発泡性樹脂が発泡成形された状態を示す概略説明図である。
【図9】図8のB部について前記成形型のコア部が型開き方向に移動される状態を示す断面説明図である。
【図10】前記気体噴射装置のエア噴射タイミングを示すパターン図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る樹脂成形品の成形装置において、該成形装置の成形型内に位置するパリソンに加圧気体が供給された状態を示す概略説明図である。
【図12】前記成形装置の成形型内に発泡性樹脂が注入される状態を示す概略説明図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る樹脂成形品の成形装置において、該成形装置の成形型の要部を示す断面説明図である。
【図14】本発明の第4の実施形態に係る樹脂成形品の成形装置において、該成形装置の成形型の要部を示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0096】
1 成形装置
10、60、70、80 成形型
11 固定型
12、72、82 可動型
13 コア部
14、74、84 外周部
16 キャビティ
16a 空間部
20 パリソン
21 押出ヘッド
23 ブロー成形体
24 樹脂成形品
25 ブローピン
30 射出装置
31 発泡性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソリッド樹脂からなるパリソンを型開きした成形型内に垂下させ、前記パリソンを挟んで前記成形型を型閉めした後に前記パリソンをブロー成形して中空のブロー成形体を形成し、該ブロー成形体の形成後に前記ブロー成形体内に発泡性樹脂を注入し、該発泡性樹脂の注入後に、前記成形型のキャビティの容積を拡大させるように前記成形型のコア部を所定量移動させることにより、前記発泡性樹脂の発泡を促進させて前記ブロー成形体を膨張させるようにした樹脂成形品の成形方法であって、
前記コア部を移動して前記ブロー成形体を膨張させる際に、前記ブロー成形体の膨張に伴って前記ブロー成形体の延伸される部分から前記ブロー成形体の延伸される部分に対応する前記成形型の型面部へ熱が伝わることを抑制する伝熱抑制手段を講じて、前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱が抑制されている、
ことを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項2】
前記パリソンを挟んで前記成形型を型閉めする型閉め時から前記成形型のコア部を所定量移動させたコア移動終了時までの間、前記伝熱抑制手段を講じて、前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱が抑制されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項3】
前記成形型のコア部を所定量移動させたコア移動終了時から前記樹脂成形品が前記成形型から取り出される成形品脱型時までの間において、前記伝熱抑制手段によって前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱が抑制される伝熱抑制状態を、前記コア部を移動して前記ブロー成形体を膨張させる際に前記伝熱抑制手段によって前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱が抑制される伝熱抑制状態より緩和させることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項4】
前記伝熱抑制手段は、前記ブロー成形体の延伸される部分に対応する前記成形型の型面部から前記ブロー成形体の延伸される部分へ気体を噴射する気体噴射手段であり、
前記コア部を移動して前記ブロー成形体を膨張させる際に、前記気体噴射手段によって所定噴射量の気体が噴射され、前記ブロー成形体の延伸される部分と前記ブロー成形体の延伸される部分に対応する前記成形型の型面部との間に空間部が形成されることにより、前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱が抑制され、
前記コア移動終了時から前記成形品脱型時までの間において、前記気体噴射手段によって噴射される前記気体の噴射量が、前記所定噴射量より低減される、あるいはゼロにされることにより、前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱が抑制される伝熱抑制状態を、前記コア部を移動して前記ブロー成形体を膨張させる際における前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱が抑制される伝熱抑制状態より緩和させる、
ことを特徴とする請求項3に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項5】
前記発泡性樹脂に、該発泡性樹脂を補強する補強繊維が含有されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項6】
前記発泡性樹脂に、物理発泡剤が含有されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項7】
前記物理発泡剤が、超臨界状態の流体であることを特徴とする請求項6に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項8】
開閉可能な成形型と、型開きされた前記成形型内にソリッド樹脂からなるパリソンを押し出す押出ヘッドと、前記パリソンを挟んで前記成形型を型閉めした後に前記パリソン内に加圧流体を供給し中空のブロー成形体を形成する加圧流体供給手段と、前記ブロー成形体内に発泡性樹脂を注入する注入手段と、前記成形型のキャビティの容積を拡大させるように前記成形型のコア部を移動させるコア移動手段とを備え、前記ブロー成形体の内部に前記発泡性樹脂を注入した後に、前記成形型のキャビティの容積を拡大させるように前記コア部を移動し、前記発泡性樹脂の発泡を促進させて前記ブロー成形体を膨張させる樹脂成形品の成形装置であって、
前記ブロー成形体の膨張に伴って前記ブロー成形体の延伸される部分から前記ブロー成形体の延伸される部分に対応する前記成形型の型面部へ熱が伝わることを抑制する伝熱抑制手段を備え、
前記伝熱抑制手段は、前記コア部を移動して前記ブロー成形体を膨張させる際に、前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱を抑制する、
ことを特徴とする樹脂成形品の成形装置。
【請求項9】
前記伝熱抑制手段は、前記パリソンを挟んで前記成形型を型閉めする型閉め時から前記成形型のコア部を所定量移動させたコア移動終了時までの間、前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱を抑制することを特徴とする請求項8に記載の樹脂成形品の成形装置。
【請求項10】
前記伝熱抑制手段の作動を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記成形型のコア部を所定量移動させたコア移動終了時から前記樹脂成形品が前記成形型から取り出される成形品脱型時までの間において、前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱を抑制する伝熱抑制状態を、前記コア部を移動して前記ブロー成形体を膨張させる際における前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱を抑制する伝熱抑制状態より緩和させるように前記伝熱抑制手段の作動を制御する、
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の樹脂成形品の成形装置。
【請求項11】
前記伝熱抑制手段は、前記ブロー成形体の延伸される部分に対応する前記成形型の型面部から前記ブロー成形体の延伸される部分へ気体を噴射する気体噴射手段であり、
前記制御手段は、前記コア部を移動して前記ブロー成形体を膨張させる際に、所定噴射量の気体を噴射し、前記ブロー成形体の延伸される部分と前記ブロー成形体の延伸される部分に対応する前記成形型の型面部との間に空間部を形成して前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱を抑制し、前記コア移動終了時から前記成形品脱型時までの間において、前記ブロー成形体へ噴射する前記気体の噴射量を、前記所定噴射量より低減させ、あるいはゼロにし、前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱を抑制する伝熱抑制状態を、前記コア部を移動して前記ブロー成形体を膨張させる際における前記ブロー成形体から前記成形型への伝熱を抑制する伝熱抑制状態より緩和させるように前記気体噴射手段の作動を制御する、
ことを特徴とする請求項10に記載の樹脂成形品の成形装置。
【請求項12】
前記成形型は、固定型と可動型とを有し、
前記固定型及び前記可動型の何れか一方の型は、前記成形型を型閉めする際に前記固定型及び前記可動型の他方の型と型閉めするとともに前記成形型の前記コア部の外周に位置する外周部と、前記成形型のキャビティの容積を拡大させるように前記外周部に対し移動可能な前記コア部とを備え、
前記伝熱抑制手段は、前記ブロー成形体の膨張に伴って前記ブロー成形体の延伸される部分に対応する前記外周部の型面部に設けられている、
ことを特徴とする請求項8〜11の何れか一に記載の樹脂成形品の成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−173817(P2008−173817A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8057(P2007−8057)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】