説明

樹脂成形品の成形方法及び成形装置

【課題】 成形型の型動作に基づくキャビティの増大による発泡性樹脂の発泡を図りつつ、成形型内壁に対するブロー成形体の追従性が低下することを防止する樹脂成形品の成形方法を提供する。
【解決手段】 成形型4内のブロー成形体41内に溶融発泡性樹脂70を供給し、その後、成形型4の型動作に基づきキャビティ27を増大させて、溶融発泡性樹脂70による発泡に基づきブロー成形体41を膨張させる。この成形型4の型動作に基づいてキャビティ27を増大させる前までに、ブロー成形体41のうち、成形型4の型動作に基づいてキャビティ27を増大させる際に延伸される部分の肉厚を他の部分の肉厚に比して薄くして、延性、追従性を高め、ブロー成形体41を成形型4の内壁に的確に追従させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の成形方法及び成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品の成形方法には、特許文献1に示すように、予備成形体としてのチューブ状のパリソンを成形型のキャビティ内に取り込んでブロー成形を行うことにより中空のブロー成形体を形成し、そのブロー成形体内に、エア抜きしながら発泡性ビーズを充填すると共にスチームを供給して、発泡溶着するものが知られている。このものによれば、樹脂成形品の表層部がブロー成形体(膜)となり、樹脂成形品の表面性(平滑性)、強度等を安定して高めることができる。
【0003】
一方、樹脂成形品の成形方法として、発泡を促進すると共に樹脂成形品の体積を増大するべく、キャビティへの発泡性樹脂の充填後、成形型の型動作(可動型の移動)に基づいてキャビティを増大するもの(いわゆるコアバック)が提案されている。この成形方法を前述の成形方法に適用すれば、表層部の表面性、強度等を高めると共に体積の増大(調整)を図ることができる樹脂成形品を得ることができる。
【特許文献1】特開2004−284149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記成形方法においては、一般に、成形型の型動作方向を向くキャビティの断面積がコアバックの前後を通じて一定に維持されると共に、そのコアバック前において、キャビティ内壁全体に対してブロー成形体が押し付けられて、成形型により当該ブロー成形体の冷却が始まっており(延性低下)、ブロー成形体は、特に、コアバックに伴って新たに現れるキャビティ内壁付近(可動型内壁の周縁部前方)において延伸されようとするものの、直ちに、緊張状態(膨張抑制状態)となる。このため、成形型の型動作に基づくキャビティの増大による発泡性樹脂の発泡が抑制されると共に、成形型内壁、特に可動型内壁の周縁部付近に対するブロー成形体の追従性が低下する傾向にある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その第1の技術的課題は、成形型の型動作に基づくキャビティの増大による発泡性樹脂の発泡を図りつつ、成形型内壁に対するブロー成形体の追従性が低下することを防止する樹脂成形品の成形方法を提供することにある。
第2の技術的課題は、上記樹脂成形品の成形方法に使用される成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記第1の技術的課題を達成するために本発明(請求項1に係る発明)においては、
溶融非発泡性樹脂を用いて形成されたチューブ状の予備成形体を垂下させ、該予備成形体を成形型のキャビティ内に取り込んでブロー成形を行うことにより中空のブロー成形体を形成し、該成形型内のブロー成形体内に溶融発泡性樹脂を供給し、その後、前記成形型の型動作に基づいて前記キャビティを増大させることにより、前記溶融発泡性樹脂の発泡に基づき前記ブロー成形体を膨張させる樹脂成形品の成形方法であって、
前記ブロー成形体のうち、前記成形型の型動作に基づいて前記キャビティを増大させる際に延伸力が作用する部分の肉厚を、少なくとも該成形型の型動作に基づいて該キャビティを増大させる前までに、該ブロー成形体の他の部分の肉厚に比して薄肉化する構成としてある。
【0007】
上述の構成により、キャビティを増大させる際に延伸力が作用する部分の肉厚を薄肉化して、その延伸力が作用する部分の延性、追従性等をさらに高めることができる。
【0008】
請求項1の好ましい態様として、前記ブロー成形体のうち、前記延伸力が作用する部分の肉厚を薄肉化することが、前記予備成形体の垂下時に、該予備成形体の成形機を利用して、該予備成形体のうち、前記ブロー成形体において延伸力が作用する部分に相当する部分を該予備成形体の他の部分に比して薄肉化することである構成を採ることができる(請求項2対応)。この構成により、予備成形体にブロー成形体の薄肉化部に相当するものを形成しておくことによって、複雑になる傾向にある成形型側の構造、制御を、さらに複雑化することを防止できる。
【0009】
請求項1の好ましい態様として、前記ブロー成形体のうち、前記延伸力が作用する部分の肉厚を薄肉化することが、ブロー成形時に、前記成形型を利用して、前記予備成形体のうち、前記ブロー成形体において延伸力が作用する部分に相当する部分を該予備成形体の他の部分に比して薄肉化することである構成を採ることができる(請求項3対応)。この構成により、予備成形体の成形機を複雑化しないようにできることは勿論、ブロー成形体の薄肉化部を、成形型内で予備成形体をセットした状態で形成できることになり、ブロー成形体のうち、前記延伸力が作用する部分(位置)に薄肉化部を的確に形成できる。
【0010】
請求項1の好ましい態様として、前記成形型が、第1型、第2型、第3型を、その順に直列的に備え、前記第1型が、前記キャビティを形成するための凹所を、その開口を前記第2,第3型側に向けた状態で有し、前記第2型が、前記第1、第2,第3型の配設方向に向けて貫通すると共にその開口が前記第1型の凹所に対応して臨む貫通孔を有し、前記第3型が、前記第2型の貫通孔内に摺動可能に嵌合されて該貫通孔内への進入量を減少させることにより前記キャビティを増大させる突出部を有していて、前記ブロー成形体のうち、薄肉化された薄肉化部を、前記第2型と前記第3型の突出部との境界付近に位置させる構成を採ることができる(請求項4対応)。この構成により、具体的な上記成形型の下でも、前記請求項1に係る作用効果を得ることができる。
【0011】
請求項1の好ましい態様として、前記溶融発泡性樹脂に補強繊維が含まれている構成を採ることができる(請求項5対応)。この構成により、型開き時に、補強繊維が立上がって、成形品が膨張(見かけ上の体積が増加)することになり(スプリングバック現象)、この現象により溶融発泡性樹脂の発泡を促進することができる。
【0012】
請求項1の好ましい態様として、前記溶融発泡性樹脂が、樹脂中に物理発泡剤が混ぜ合わされたものである構成を採ることができる(請求項6対応)。この構成により、成形品内部の発泡セル径を小さくすることができる。
【0013】
請求項1の好ましい態様として、前記物理発泡剤が超臨界流体である構成を採ることができる(請求項7対応)。この構成により、超臨界流体の性質を利用して、成形品内部の発泡セル径を、より小さくすることができる。
【0014】
前記第2の技術的課題を達成するために本発明(請求項8に係る発明)においては、
溶融非発泡性樹脂を用いてチューブ状の予備成形体を形成し該チューブ状の予備成形体を垂下させる予備成形体成形機と、該予備成形体成形機により形成された予備成形体をキャビティ内に取り込んで該予備成形体を中空のブロー成形体として所定の形状に型付ける成形型と、該成形型内のブロー成形体内に溶融発泡性樹脂を供給する溶融発泡性樹脂供給手段と、を備え、前記成形型が、前記溶融発泡性樹脂供給手段が該成形型内のブロー成形体内に溶融発泡性樹脂を供給開始した後、型動作に基づき前記キャビティを増大させるように設定されている樹脂成形品の成形装置において、
前記予備成形体を薄肉化する薄肉化形成構造が備えられ、
前記薄肉化形成構造が、前記ブロー成形体のうち、前記成形型の型動作に基づいて前記キャビティを増大させる際に延伸力が作用する部分の肉厚を、少なくとも該成形型の型動作に基づいて該キャビティを増大させる前までに、該ブロー成形体の他の部分の肉厚に比して薄肉化するように設定されている構成とされている。この構成によれば、当該装置を用いることにより前記請求項1に係る成形方法を使用できる。
【0015】
前記第2の技術的課題を達成するために本発明(請求項9に係る発明)においては、
溶融非発泡性樹脂を用いてチューブ状の予備成形体を形成し該チューブ状の予備成形体を垂下させる予備成形体成形機と、該予備成形体成形機により形成された予備成形体をキャビティ内に取り込んで該予備成形体を中空のブロー成形体として所定の形状に型付ける成形型と、該成形型内のブロー成形体内に溶融発泡性樹脂を供給する溶融発泡性樹脂供給手段と、を備え、前記成形型が、前記溶融発泡性樹脂供給手段が該成形型内のブロー成形体内に溶融発泡性樹脂を供給開始した後、型動作に基づき前記キャビティを増大させるように設定されている樹脂成形品の成形装置において、
前記予備成形体成形機が、前記予備成形体の垂下時に、該予備成形体に該予備成形体の他の部分に比して薄肉化する薄肉化部を形成するように設定され、
前記薄肉化部が、前記予備成形体のうち、前記成形型の型動作に基づいて前記キャビティを増大させる際に前記ブロー成形体に延伸力が作用する部分に相当する部分に位置するように設定されている構成としてある。この構成により、予備成形体の成形に際して、その予備成形体に薄肉化部を形成できることになり、この薄肉化部を有する予備成形体を用いてブロー成形を行った後、成形型の型動作に基づくキャビティの増大を行えば、発泡性樹脂の発泡を図りつつ、成形型内壁に対するブロー成形体の追従性が低下することを防止できる。
【0016】
請求項8,9の好ましい態様として、前記成形型が、第1型、第2型、第3型を、その順に直列的に備えており、前記第1型が、前記キャビティを形成するための凹所を、その開口を前記第2,第3型側に向けた状態で有しており、前記第2型が、前記第1、第2,第3型の配設方向に向けて貫通すると共にその開口が前記第1型の凹所に対応して臨む貫通孔を有しており、前記第3型が、前記第2型の貫通孔内に摺動可能に嵌合されて該貫通孔内への進入量を減少させることにより前記キャビティを増大させる突出部を有しており、前記ブロー成形体が、その薄肉化部が前記第2型と前記第3型の突出部との境界付近に位置されるように設定されている構成を採ることができる(請求項10対応)。この構成により、より具体的な成形型の下で、前記請求項8,9と同様の作用効果を得ることができる。
【0017】
前記第2の技術的課題を達成するために本発明(請求項11に係る発明)においては、
溶融非発泡性樹脂を用いてチューブ状の予備成形体を形成し該チューブ状の予備成形体を垂下させる予備成形体成形機と、該予備成形体成形機により形成された予備成形体をキャビティ内に取り込んで該予備成形体を中空のブロー成形体として所定の形状に型付ける成形型と、該成形型内のブロー成形体内に溶融発泡性樹脂を供給する溶融発泡性樹脂供給手段と、を備え、前記成形型が、前記溶融発泡性樹脂供給手段が該成形型内のブロー成形体内に溶融発泡性樹脂を供給開始した後、型動作に基づき前記キャビティを増大させるように設定されている樹脂成形品の成形装置において、
前記成形型が、第1型、第2型、第3型を、その順に直列的に備えており、
前記第1型が、前記キャビティを形成するための凹所を、その開口を前記第2,第3型側に向けた状態で有しており、
前記第2型が、前記第1、第2,第3型の配設方向に向けて貫通すると共に、その一端側開口が前記第1型の凹所に対応して臨み、その他端側の内径がその一端側の内径よりも縮径されている貫通孔を有しており、
前記第3型が、前記第2型における貫通孔の他端側内に摺動可能に嵌合されていると共に、その先端部が該貫通孔の一端側にも進入されて該先端部と該貫通孔の一端側内面との間に環状溝を形成する突出部を有している構成としてある。この構成により、ブロー成形時に、予備成形体を環状溝に押し込んでブロー成形体に薄肉化部を形成できることになり、この薄肉化部を有するブロー成形体を用いた状態の下で、成形型の型動作に基づくキャビティの増大を行えば、発泡性樹脂の発泡を図りつつ、成形型内壁に対するブロー成形体の追従性が低下することを防止できる。
また、貫通孔の一端側内に第3型の突出部が突出して、ブロー成形体に引っ込み部分を形成できることから、その引っ込み部分を、型動作に基づきキャビティを増大させる際に、余裕代として機能させることができる。
【0018】
請求項11の好ましい態様として、前記環状溝に、ブロー成形時に該環状溝内の圧力を低下させる吸引装置が接続されている構成を採ることができる(請求項12対応)。この構成により、環状溝内での予備成形体の薄肉化を促進して、ブロー成形体が薄肉化部を確実に有するようにできる。
【0019】
請求項11の好ましい態様として、前記ブロー成形体が、その薄肉化部が前記第2型と前記第3型の突出部との境界付近に位置されるように設定されている構成を採ることができる(請求項13対応)。この構成により、より具体的な成形型の下で、前記請求項11と同様の作用効果を得ることができる。
【0020】
請求項8,9,11の好ましい態様として、請求項14,15に記載の構成を採ることができる。この構成により、前記請求項6,7と同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明における請求項1に係る発明によれば、成形型の型動作に基づくキャビティの増大による発泡性樹脂の発泡を図りつつ、成形型内壁に対するブロー成形体の追従性が低下することを防止できる樹脂成形品の成形方法を提供できる。
【0022】
本発明における請求項8に係る発明によれば、請求項1に係る樹脂成形品の成形方法に使用される成形装置を提供できる。また、請求項9に係る発明によれば、請求項2に係る樹脂成形品の成形方法に使用される成形装置を提供できる。さらに、請求項11に係る発明によれば、請求項3に係る樹脂成形品の成形方法に使用される成形装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
先ず、本実施形態に係る成形装置1について説明する。成形装置1は、図1に示すように、溶融非発泡性樹脂としての溶融ソリッド樹脂(例えばポリプロピレン)をチューブ状に予備成形して軟化状態の予備成形体(以下、パリソンと称す)2として下方に押し出すパリソン押出機3と、該パリソン押出機3から垂下したパリソン2を所定の形状に型付ける成形型4と、成形型4内部に形成されて溶融発泡性樹脂70を前記パリソン2内に導く樹脂供給構造5と、前記樹脂供給構造5に溶融発泡性樹脂70を送り出す樹脂供給装置7(溶融発泡性樹脂供給手段)と、を備えている。
【0024】
前記パリソン押出機3は、図1,図2に示すように、アキュムレータヘッド9を備えており、その下部にはダイ10が設けられている。このダイ10には、上下方向(肉厚方向)に貫通する中央孔11が形成されており、その中央孔11内にはコア12が配置されている。このコア12には、コアロッド13が連結されており、そのコアロッド13は、アキュムレータヘッド9内部を貫通して上方に延び、その上端部は、アキュムレータヘッド9上方のシリンダ装置(図外の固定部材に固定)14に連結されている。コア12外周面とダイ10の中央孔11内周面とは環状の押し出し孔15を形成しており、その押し出し孔15の環状幅は、前記シリンダ装置14の駆動調整により、調整、設定される。
アキュムレータヘッド9内部には、前記環状の押し出し孔15に連なるようにして環状の材料貯留部16が形成されている。この材料貯留部16には、材料供給機17が接続されており、その材料供給機17により非発泡性樹脂としてのソリッド樹脂(例えばポリプロピレン)が材料貯留部16に供給されることになっている。また、アキュムレータヘッド9の内部には、材料貯留部16の上側において、環状通路18が形成されており、その環状通路18は材料貯留部16に連なっている。この環状通路18には、リングプランジャ19が摺動可能に嵌合されており、そのリングプランジャ19は、材料貯留部16内に供給されるソリッド樹脂を環状の押し出し孔15に向けて押し出すべく、アキュムレータヘッド9上方に配置されるシリンダ装置(図外の固定部材に固定)20により上下方向に駆動されることになっている。
【0025】
本実施形態においては、前記コア12の外周面に、図3〜図5に示すように、薄肉化形成構造として一対の突部91が設けられている。この一対の突部91は、コア12の周方向に所定間隔離間した状態で上下方向に延びており、その各突部91の先端面とダイ10の中央孔11内周面との間隔は、コア12外周面の他の部分とダイ10の中央孔11内周面との間隔に比して短くされている(図4参照)。これにより、パリソン押出機3からチューブ状に押し出されるパリソン2には、図6に示すように、2本の縦薄肉化部(溝)Yが、前記一対の突部91と同じ間隔をもって上下方向に延びるように形成され、その各縦薄肉化部Yの肉厚は、パリソン2における他の部分の肉厚に比して薄くされる。また、このパリソン2には、図6に示すように、2本の横薄肉化部Xが形成されている。この2本の横薄肉化部Xは、上下方向に所定間隔、離間した状態で、パリソン2の周方向に延びており、その各横薄肉化部Xは、図7に示すように、パリソン2における縦薄肉化部Y以外の他の部分に比して薄くなっている。この横薄肉化部Xは、コア12の上下動に基づく環状の押し出し孔15の環状幅の間隔調整(薄肉化形成構造)により形成される。このような各横薄肉化部X及び各縦薄肉化部Y(図1等において、これら薄肉化部の代表符号としてTを用いる)は、パリソン2において、後述の第1可動型22と第2可動型23の突出部23bとの境界位置付近に位置できるように形成されており、この場合、図6で斜線で囲んだ領域Sは、後述する第2可動型23における突出部23b先端面に当接する面(コアバック領域面)を示す。
【0026】
前記成形型4は、図1に示すように、固定型(第1型)21と、第1可動型(第2型)22と、第2可動型(第3型)23とを備えている。固定型21は、図1,図8に示すように、厚板状に形成されており、その内面21aは、水平方向を向く平坦面として形成されている。この内面21aは、正面視矩形形状に形成されており、その内面21aには、キャビティ27を構成するための正面視四角形状の凹所21Aが、その内面21aの外形を縮小した状態で開口されている。この固定型21Aには、ブローピン挿入孔29が形成されている。ブローピン挿入孔29は、固定型21の上部に上下方向に延びるようにして形成されており、そのブローピン挿入孔29により固定型21の凹所21Aと外部とが連通されている。このブローピン挿入孔29にはブローピン30(軸心延び方向に通路形成のもの)が摺動可能に挿入されており、そのブローピン30は、図示を略す駆動装置により、凹所21A内に進入状態となる進入位置と、凹所21A内から退出する退出位置とをとり得ることになっている。このブローピン30には、図示を略す圧縮エア源と大気とが切換装置(図示略)を介して連なっており、その切換装置の切換により、ブローピン30は、圧縮エアを供給する機能、エア抜き(自然排気)機能を選択的に発揮することになっている。この場合、自然排気に換えて強制排気を行うようにしてもよい。
【0027】
前記第1可動型22は、図1,図9に示すように、前記固定型21に対応して厚板状に形成されている。この第1可動型22の内面22a及び背面22bは、平坦面とした状態で水平方向に向けられている。この第1可動型22は、その内面22aが固定型21の内面21aに対向させた状態で配置されており、その第1可動型22は、図示を略す駆動機構により、固定型21に対して接近・離間動可能となっている。この第1可動型22には、その肉厚方向(図1中、左右方向)に延びるようにして貫通孔22Aが形成されている。この貫通孔22Aは、その開口が、軸心延び方向全長に亘って、固定型21における凹所21A開口に対応した正面視矩形形状に形成されており、その一端側開口(図1中、右端側開口)は固定型21の凹所21Aの開口に対応して臨み、その他端側開口(図1中、左端側開口)は第2可動型23に臨んでいる。
【0028】
前記第2可動型23は、図1,図9に示すように、前記第1可動型22の背面22b側に配置されて、図示を略す駆動機構により、該第1可動型22に対して接近、離間動できることになっている。この第2可動型23は、本体部23aと、その本体部23aの内面から突出する突出部23bとにより構成されている。本体部23aは、第1可動型22に対応して、正面視四角形状の厚板状体として形成されており、その内面は、水平方向に向けられている。突出部23bは、第1可動型22の貫通孔22Aに対応した正面視形状(矩形形状)をもって本体部23a内面から突出されており、その突出部23bは、貫通孔22Bに摺動可能に嵌合されている。この突出部22bは、第2可動型23の内面が第1可動型22の背面22bに当接されているとき、その突出部23bの先端面が第1可動型22の内面22aと面一となるように設定されている(図1参照)。
【0029】
この成形型4においては、型開きに際して、図1に示すように、第1,第2可動型22,23が、互いに当接した状態で固定型21から離間され、キャビティ27に前述のパリソン2をセットした状態でそのキャビティ27を増大(コアバック)するに際しては、第1可動型22と固定型21とでパリソン2を挟持した状態で、第2可動型23の突出部23bが型開き方向に一定量だけ移動される。その詳細については、本件成形方法の説明において行う。
【0030】
前記樹脂供給構造5は、図1,図10,図11に示すように、樹脂供給通路32と、シャッタ弁33と、プランジャ34とを備えている。樹脂供給通路32は、固定型21の略中心よりも下方位置において、該固定型21の厚み方向に延びており、その樹脂供給通路32は、固定型21の外面とその凹所21Aの底面との間を貫通している。具体的には、この樹脂供給通路32は、凹所21Aの底面から内部側に一定距離延びる大径部35と、その大径部35に段付き孔として連なる中径部36と、その中径部36の内周面に一端が開口し他端が本体部23a外面に開口する小径部37と、を備えている。
【0031】
前記シャッタ弁33は、前記大径部35に対して進退動可能に設けられている。このシャッタ弁33は、中径部36との隣接位置において、駆動装置38により駆動されることになっており、シャッタ弁33が大径部35内に進入したときには、大径部35と中径部36との連通が遮断され、シャッタ弁33が大径部35から退出したときには、大径部35と中径部36とが連通することになっている。前記プランジャ34は、中径部36内に摺動可能に嵌合されている。プランジャ34は、駆動装置47(図10参照)により、大径部35に近い前進位置と、前進位置よりも本体部23a外面側の後退位置とをとり得るようになっており、前進位置では、プランジャ34の側面により小径部37の一端開口が閉塞され、後退位置では、中径部36と小径部37とが連通されることになっている。
【0032】
前記樹脂供給装置(スクリュシリンダ式)7は、図1に示すように、前記固定型21の樹脂供給通路32に接続されている。この樹脂供給装置7は、既存の機能(加温、加圧機能等)に基づき、溶融発泡性樹脂(熱可塑性樹脂)70を固定型21の樹脂供給通路32に供給(射出)することになっており、その溶融発泡性樹脂70を供給するために、樹脂供給装置7には、樹脂39と、成形時に気化する物理発泡剤とが供給されることになっている。樹脂39としては、ポリプロピレン等が用いられており、本実施形態においては、その樹脂中に、さらに補強繊維として長繊維が混入されている。物理発泡剤としては、超微細発泡成形を行うべく、超臨界流体が用いられており、その超臨界流体は、超臨界流体ユニット40から樹脂供給装置7に供給されることになっている。具体的には、その超臨界流体としては、超臨界状態(臨界圧力及び臨界温度を超えた状態)のCO2又はN2等が用いられており、その超臨界流体は、その性質(液体としての粘度と溶解力、気体としての激しい分子運動を併せ持つ性質)を利用すべく、樹脂供給装置7において上記樹脂39中に混ぜ合わされる。この樹脂供給装置7による溶融発泡性樹脂70の供給タイミングは、前記シャッタ弁33の駆動装置38及びプランジャ34の駆動装置47を制御することにより行われる。詳細は、本件成形方法の説明において行う。
【0033】
次に、本件成形方法について、前記成形装置1を用いつつ説明する。
【0034】
先ず、図1に示すように、パリソン2が型開き状態の成形型4間に垂下される。このとき、成形型4の型開きについては、第1可動型22の貫通孔に第2可動型23の突出部23bが嵌合され、それらは、固定型21に対して水平方向に一定長さだけ、離間された状態とされる。パリソン2については、パリソン押出機3を用いてダイ10から下方に向けて円筒状にして押し出されるが、このパリソン2には、前述したように、横薄肉化部X及び縦薄肉化部Yが形成されており(図6参照)、これら薄肉化部T(図1等においては、X,Yの代表符号Tを用いると共に、その存在位置を一点鎖線円をもって示す)は、図1に示すように、パリソン2が型開き状態の成形型4間に垂下されたとき、第1可動型22と第2可動型23の突出部23bとの境界位置付近に位置される。
【0035】
パリソン2が型開き状態の成形型4間に垂下されると、図12に示すように、第1可動型22及び第2可動型23が固定型21に向けて移動されて型閉じが行われ、その型閉じ状態で、ブロー成形が行われる。この型閉じにおいては、パリソン2の上下端部が第1可動型22と固定型21とに挟持され、これにより、そのパリソン2の上下端部が閉じられると共に、パリソン2の大部分がキャビティ27内に収納される。ブロー成形においては、上記型閉じ後、ブローピン30の先端部がキャビティ27内におけるパリソン2内に貫通することにより進入され、そのブローピン30を利用して圧縮エアがパリソン2内に供給される。この圧縮エアの供給により、パリソン2は、膨らまされて、型閉じ状態のキャビティ27内面に押し付けられ、これにより、ブロー成形体41が成形される(ブロー賦形)。
【0036】
このブロー成形に伴い、ブロー成形体41が略形成される時点を捉えて、図11,図13に示すように、シャッタ弁33が開かれる。ブロー成形に伴い、パリソン2の一部が薄肉化しつつ樹脂供給通路32の大径部35に入り込むことを利用し、その大径部35内のパリソン2を、シャッタ弁33による支えをなくして、パリソン2内の圧縮エアの作用に基づき破断するためである。この場合、シャッタ弁33の開弁動作は、例えばブローピン30による圧縮エアの供給開始時点から所定時間が経過したことを捉える(計測する)等して行われる。
【0037】
前記ブロー成形体41が成形されると(具体的にはシャッタ弁33の開弁時点)、図13に示すように、そのブロー成形体41内に前記樹脂供給装置7から溶融発泡性樹脂70が射出される。この溶融発泡性樹脂70の射出においては、それに先立ち、ブローピン30への圧縮エアの供給が停止されると共に、ブローピン30が成形型4内(キャビティ27内)から退出される。ブローピン30を成形型4内から退出させるのは、ブローピン30をエア抜き手段としても利用するためである。すなわち、ブロー成形体41を形成した後においては、溶融発泡性樹脂70の射出に伴いブロー成形体41内のエアを抜かなければ、ブロー成形体41内に溶融発泡性樹脂70を円滑に充填できないことから、ブローピン30をエア抜き手段として的確に利用すべく、射出される溶融発泡性樹脂70に埋め込まれないようにしているのである。このため、ブロー成形体41内への溶融発泡性樹脂70の射出に先立ち、ブローピン30の先端部が、ブロー成形体41内からブローピン挿入孔29内へと退出され、ブロー成形体41内への溶融発泡性樹脂70の射出の開始に伴い、ブロー成形体41の貫通孔(ブローピン30が貫通していた孔)、ブローピン挿入孔29内のブローピン30を利用して、ブロー成形体41内のエア抜きが行われる。また、ブロー成形体41内への溶融発泡性樹脂70の射出に際しては、樹脂供給通路32における中径部36内のプランジャ34が後退動され、小径部37と中径部36とが連通される。これにより、小径部37、中径部36及び大径部35が連通状態となり、それらを介して高い圧力の溶融発泡性樹脂70がブロー成形体41内に射出される。このとき、キャビティ27内の圧力が臨界圧力よりも低いことから、ブロー成形体41内に供給される発泡性樹脂は、その供給に伴い、その中に含まれる超臨界流体に基づき発泡される。
尚、ブロー成形体41内への樹脂供給装置7による溶融発泡性樹脂70の射出は、ブロー成形体41内が溶融発泡性樹脂70で充填されたことをもって停止されるが、この停止判断は、ブロー成形体41内の圧力状態、溶融発泡性樹脂70の射出量等、各種情報を用いて判断される。
【0038】
前記ブロー成形体41内の発泡性樹脂が、充填状態ないしはその充填前の所定状態(発泡性樹脂の射出開始時点を含む)に至ると、コアバックさせるべく、図14に示すように、第1可動型22と固定型21とがブロー成形体41(パリソン2)の上下端部を挟持した状態において、第2可動型23が第1可動型22から所定長さだけ離間される。これにより、第2可動型23の突出部23bは、第1可動型22の貫通孔22A内を後退することになり、それまで突出部23bが占めていた体積は、新たなキャビティ27容積として増大される。これに伴い、発泡性樹脂70は、超臨界流体に基づき、キャビティ27の増大分がさらに発泡して、その体積が増大することになり、それを受けて、ブロー成形体41は、第2可動型23の突出部23bの後退に追従して膨張しようとする。しかし、このとき、ブロー成形体41のうち、第2可動型23の突出部23bと第1可動型22との境界付近に位置する部分に、延伸力(引き延ばす力)が作用するものの、ブロー成形体41は、第1,第2可動型22,23により冷却され始めていて、その延性が低下すると共に緊張状態になろうとしており、ブロー成形体41は、第2可動型23の突出部23bの後退に追従して膨張しずらい状況にある。しかし、本実施形態においては、ブロー成形体41のうち、第2可動型23の突出部23bと第1可動型22との境界付近に位置する部分は、薄肉化部(X,Y)Tとされて、その部分の延性、追従性等を高められており、発泡性樹脂70の発泡に基づく力(延伸力に変換されるものも含む)により、ブロー成形体は、図14に示すように、第2可動型23の突出部23bの後退に追従して膨張し、最終的には、第2可動型23のの突出部23b先端面及び貫通孔22Aの一端側内面に押し付けられる(ブロー成形体の追従性低下防止)。
この場合、コアバック前のキャビティ27内においては、図15に示すように、長繊維43が樹脂流動に基づき該流動方向に略沿って強制的に配向されているが、コアバックに伴って、その長繊維43の内部応力が解放される。このため、長繊維43は、図16に示すように、その配向が緩和され立上がって、成形品が膨張(見かけ上の体積が増加)することになる(スプリングバック現象)。この現象が発泡性樹脂70の発泡を促進することになる。
【0039】
この後、コアバックの動作が終了して、キャビティ27内における発泡性樹脂の発泡に基づくブロー成形体41の膨張が終了すると、ブロー成形体41及びその内部の発泡性樹脂の硬化を待ち、成形型4から成形品が脱型される。
【0040】
図17〜図22は第2実施形態、図23,図24は第3実施形態、図25〜図27は第4実施形態、図28〜図30は第5実施形態、図31は第6実施形態、図32は第7実施形態を示す。この各実施形態において、前記第1実施形態と同一構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0041】
図17〜図22に示す第2実施形態は、パリソン2に薄肉化部(X,Y)Tを形成せず、ブロー成形時に成形型4を利用して、ブロー成形体41に薄肉化部Tを形成するものを示している。
【0042】
すなわち、この第2実施形態においては、ブロー成形時にブロー成形体41に薄肉化部Tを形成するべく、成形型4のうち、第1,第2可動型22,23の構造のみが、前記第1実施形態と若干、異なるものとされ、他の構成要素であるパリソン押出機3、樹脂供給構造5、樹脂供給装置7については、前記第1実施形態と同一構造のものが用いられている。ただ、パリソン押出機3に関しては、パリソン2を形成するに際して、パリソン2に薄肉化部X,Yを形成せず、略均等肉厚のものが押出されるように設定されている。以下、具体的に説明する。
【0043】
第2実施形態においても、第1可動型22は、貫通孔22Aを有しているが、その貫通孔22Aは、図17に示すように、段付き孔とされている。この段付き貫通孔22Aは、第1可動型22の内面側(右面側)から背面側(左面側)に向けて順に、大径部22Aaと、その大径部22Aaよりも縮径された縮径部22Abとを有しており、大径部22Aaは、貫通孔22Aの一端側において固定型21における凹所21A開口に対応して臨み、縮径部22Abは、貫通孔22Aの他端側(第1可動型22の背面側)から外部に開口されている。
一方、第2可動型23の突出部23bは、図17,図18に示すように、上記貫通孔22Aにおける縮径部22Abに摺動可能に嵌合され、その突出部22bは、第2可動型23の内面が第1可動型22の背面22bに当接されているとき、貫通孔22Aにおける大径部22Aa内に突出した状態で入り込むことになっている。このため、突出部22bの先端部外周面と貫通孔22Aにおける大径部22Aaとの間には、比較的細幅の環状溝22Acが形成されることになっている。尚、本実施形態においては、突出部23bの先端面23btが大径部22Aa内にとどまるように設定されている。
【0044】
第2実施形態においては、上記成形装置1を用いて次のようにして成形が行われる。
【0045】
先ず、図17に示すように、パリソン2が型開き状態の成形型4間に垂下されるが、このとき、第2可動型23の突出部23bは第1可動型22の大径部22Aa内に突出されている。また、パリソン2は、ソリッド樹脂をパリソン押出機3によりダイ10から下方に円筒状に押し出すことにより形成されるが、このとき、パリソン2の肉厚は略均等肉厚とされる。
【0046】
パリソン2が型開き状態の成形型4間に垂下されると、図19に示すように、第1可動型22及び第2可動型23が固定型21に向けて移動されて型閉じが行われ、その型閉じ状態で、ブロー成形が行われる。このブロー成形においては、パリソン2が、圧縮エアに基づきキャビティ27の内壁に押し付けられることになるが(ブロー賦形)、このとき、環状溝22Acに対向して配置されたパリソン2部分は、図20に示すように、圧縮エアにより、環状溝22Ac内部に向けて押し込まれる。この圧縮エアによる押し込みにより、その押し込み部分は、環状溝22Ac内壁に沿って引き延ばされ、その押し込み部分は薄肉化部Tとなる。この場合、環状溝22Acが比較的細幅とされて、圧縮エアの作用力が押し込み部分に局部的に作用することになっており、その押し込み部分は、円滑に薄肉化する。このとき、薄肉化をさらに促進するために、第1可動型22に、図19の仮想線で示すように、エア抜き通路95を環状溝22Acに連通するように形成すると共に、そのエア抜き通路95に真空装置96を接続して、その真空装置96により、環状溝22Ac内のエアを吸引するようにしてもよい。
【0047】
またこのとき同時に、第2可動型23の突出部23bの先端部が、第1可動型22の大径部22Aa内において、その大径部22Aaと縮径部22Abとの段部内面から突出していることから、パリソン2は、大径部22Aa内において、第2可動型23の突出部23bの先端部に沿うように押し付けられる。このため、ブロー成形体41は、その第2可動型23の突出部先端面23btの範囲で、その突出部23bが存在する側における他の範囲よりも内方側に引っ込み、ブロー成形体41には、引っ込み部分41aが形成される(図19,図20参照)。
【0048】
ブロー成形体41が成形されると、図21に示すように、ブロー成形体41内に前記樹脂供給装置7から溶融発泡性樹脂70が射出される。そして、ブロー成形体41内の発泡性樹脂が、充填状態ないしはその充填前の所定状態(発泡性樹脂の射出開始時点を含む)に至ると、コアバックさせるべく、図22に示すように、第1可動型22と固定型21とがブロー成形体41(パリソン2)の上下端部を挟持した状態において、第2可動型23は第1可動型22から所定長さだけ離間され、第2可動型23の突出部23bは、その先端面23btが第1可動型22における貫通孔22Aの段部内面と面一になるまで退出される。これにより、それまで突出部23bが占めていた体積が新たなキャビティ27容積として増大され、これに伴い、発泡性樹脂70は、超臨界流体に基づき、キャビティ27の増大分がさらに発泡し、その体積が増大することになる。これに基づき、ブロー成形体41は膨張することになるが、このブロー成形体41の膨張においては、ブロー成形体41のうち、第2可動型23の突出部23bと第1可動型22との境界付近に位置する部分が薄肉化部Tとされて、その延性、追従性等を高められていること、ブロー成形体41の引っ込み部分41aが余裕代(伸び代)として機能することが、その膨張を円滑に進行させる。このため、ブロー成形体41は、第2可動型23の突出部23bの退出に追従して膨張し、最終的には、突出部先端面23bt、大径部22Aaと縮径部22Abとの段差面、大径部22Aa内面に押し付けられる(図22参照)。
【0049】
この後、コアバックの動作が終了して、キャビティ27内における発泡性樹脂の発泡に基づくブロー成形体41の膨張が終了すると、前記第1実施形態同様、ブロー成形体41及びその内部の発泡性樹脂の硬化を待ち、成形型4から成形品が脱型される。
【0050】
図23,図24に示す第3実施形態においては、ブロー成形に際しての圧縮エアの供給、発泡性樹脂の射出に際してのエア抜きの変形例を示す。この第3実施形態においては、ブローピン30に関して、前記第1実施形態と同様の構成となっているが、ブローピン30は、圧縮エアの供給にのみ用いられ、エア抜きには用いられず、エア抜きに際しては、ブローピン30は、ブローピン挿入孔29に退出するだけとされる(進退動に関しては第1実施形態と同じ)。一方、エア抜きのために、第2可動型23の内部にエア排出機構51が設けられている。エア排出機構51は、作動室52と、作動室52内と大気とを連通するエア排出路53と、作動室52とキャビティ27内とを連通する複数の貫通孔54と、作動室52内に配設される穴あけ部材55とを備えている。穴あけ部材55は、図示を略す駆動機構により作動室52を摺動する摺動部56と、その摺動部56から突出する先細形状の複数の穴あけピン57とを備えており、ブロー成形のときには、図23に示すように、摺動部56がエア排出路53の開口を閉塞して、エアの排出を行わない一方、複数の穴あけピン57は、複数の貫通孔54及びブロー成形体41を貫通することになる。ブロー成形を終えて発泡性樹脂の射出が行われるときには、図24に示すように、穴あけ部材55は後退動することになり、摺動部56はエア排出路53の開口を開き、複数の穴あけピン57は、ブロー成形体41から退出する。これにより、ブロー成形体41内とエア排出路53とが連通することになり、発泡性樹脂の射出に伴い、ブロー成形体41内のエアはエア排出路53を介して外部に排出される。図24中、矢印は、エアの排出流れを示す。
【0051】
図25〜図27に示す第4実施形態は、エア抜き孔58を成形型4(固定型21、第1可動型22)に予め形成したものを示す。固定型21及び第1可動型22の上部合わせ面に、断面半円状の凹所59a,59bがそれぞれ形成されており、両者21,22を突き合わせたとき、協動してエア抜き孔58が形成されることになっている。この成形型4を使用するに際しては、成形型4の型開き状態において、前記エア抜き孔58に嵌合可能なピン60を、その軸心方向を上下方向に向けて前述のパリソン押出機のダイ(図示略)に支持する(図25においては、ピンのみを示し、ダイ等との支持関係については、図示を略す)。その上で、パリソン2を押出し、ピン60がパリソン上部を貫通した状態にし、その状態で、第1,第2可動型22,23を固定型21に向けて移動して、第1可動型22と固定型21とでパリソン2を挟持すると共に、ピン60を、第1可動型22と固定型21とにより形成されるエア抜き孔58に嵌合された状態とする。これにより、成形型4に予めエア抜き孔58が形成されていても、それがピン60により閉塞されるため、エア抜き孔58部分の成形を含めブロー成形が適切且つ確実に行われる(図26参照)。ブロー成形後、発泡性樹脂をブロー成形体41内に射出するに際しては、それに先立ち、ピン60がエア抜き孔58から抜かれる。これにより、発泡性樹脂の射出に伴い、ブロー成形体41内のエアは排出され、発泡性樹脂は円滑にブロー成形体41内に充填される(図27参照)。勿論、ピン60をブローピンとしても利用することができる。
【0052】
図28〜図30に示す第5実施形態も、エア抜き孔58を成形型4に予め形成したものを示す。成形型4に、エア抜き孔58として、キャビティ27に連なる第1の孔61と、その第1の孔61に連なってその第1の孔61を大気に連通させる複数の第2の孔62とが形成されており、複数の第2の孔62にはピン63がそれぞれ挿入されている。このような成形型4を使用する場合には、成形型4(第1,第2可動型22,23)でパリソン2を挟持した後、ピン63をさらに深く挿入してパリソン2を貫通させると共に、各第2の孔62を閉塞する。その上で、ブロー成形を行えば、各第2の孔62が閉塞されていることから、ブロー成形は適切に行われ、ブロー成形体41が得られる(図29参照)。ブロー成形後、発泡性樹脂をブロー成形体41内に射出するに際しては、それに先立ち、ピン63が各第2の孔62から抜かれる。これにより、発泡性樹脂の射出に伴い、ブロー成形体41内のエアは排出され、発泡性樹脂は円滑にブロー成形体41内に充填される(図30参照)。
【0053】
図31に示す第6実施形態は、ブロー成形体41内に発泡性樹脂を射出するための破断孔の形成方法を示す。この第6実施形態においては、樹脂供給通路32として、大径部35が省かれ、中径部36が固定型21の突出部23bの先端面から外部に開口されており、その開口は、樹脂供給装置7からの発泡性樹脂の供給が行われない状態において、プランジャ34により閉塞されている。またこのとき、小径部37の開口もプランジャ34の側面により閉塞されている。一方、固定型21の突出部23bの先端面には、筒部(円筒部)64が突出するようにして設けられており、その筒部64は、その内部に中径部36の開口が臨むように配置されている。これにより、パリソン2をキャビティ27内に収納後、パリソン2内に圧縮エアを供給すれば(ブロー成形)、パリソン2の一部が筒部64内に入り込むと共にその入り込んだ部分は薄肉化する。この後、プランジャ34を、図31中、矢印方向に後退させれば、筒部64内に入り込んだパリソン2は、支えられるものがなくなることから、パリソン2内の圧縮エアの圧力に基づき破断することになり、パリソン2、すなわち、ブロー成形体41に破断孔が形成されることになる。このとき同時に、プランジャ34は、小径部37の開口を開くことになり、発泡性樹脂が、中径部36、破断孔を経てブロー成形体41内に入り込む。このように、この実施形態においては、プランジャ34だけで、ブロー成形体41の破断孔の形成と、発泡性樹脂の供給、停止とを行えることになり、第1実施形態のようにシャッタ弁33を設ける必要がなくなる。
【0054】
図32に示す第7実施形態は、前記第6実施形態の変形例を示す。この第7実施形態においては、プランジャ34の先端面が尖った形状とされ、樹脂供給装置7からの発泡性樹脂の供給が行われない状態においては、筒部64よりも前方に突出している。これにより、プランジャ34の後退量(筒部64内に入り込むパリソン2部分の変位量)を長くして、パリソン2(ブロー成形体41)を破断し易くすることができる。この場合、樹脂供給装置7からの発泡性樹脂の供給は、プランジャ34の尖った部分が小径部37に臨んだとき開始される。
【0055】
各実施形態において成形される成形品は、自動車用、建築資材用、家電用、日用雑貨用等の広い用途に用いることができ、その各用途において、当該成形品は、補強を初めとして、断熱、遮音、防振、衝撃吸収等の機能を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】第1実施形態に係る全体構成図。
【図2】第1実施形態に係るパリソン押出機下部を示す拡大縦断面図。
【図3】図1のX3−X3線拡大断面図。
【図4】図3の要部拡大図。
【図5】第1実施形態に係るコアを示す斜視図。
【図6】第1実施形態において形成されるパリソンを示す斜視図。
【図7】図6におけるA部分の縦断面図。
【図8】第1実施形態に係る固定型を内面側から見た図。
【図9】第1実施形態に係る第1可動型及び第2可動型を内面側から見た図。
【図10】第1実施形態に係る樹脂供給構造を説明する説明図。
【図11】第1実施形態に係る樹脂供給構造におけるブロー成形体の一部破断工程を説明する説明図。
【図12】第1実施形態に係るブロー成形工程を説明する説明図。
【図13】ブロー成形体内へ発泡性樹脂の射出する第1実施形態に係る射出工程を説明する説明図。
【図14】第1実施形態に係るコアバックが行われた状態を示す説明図。
【図15】コアバック前のブロー成形体及びその内部の長繊維の状態を示す説明図。
【図16】コアバック後のブロー成形体及びその内部の長繊維の状態を示す説明図。
【図17】第2実施形態に係る全体構成図。
【図18】第2実施形態に係る第1可動型及び第2可動型を内面側から見た図。
【図19】第2実施形態に係るブロー成形工程を説明する説明図。
【図20】第2実施形態に係るブロー成形工程における薄肉化部及び引っ込み部分の形成について説明する説明図。
【図21】ブロー成形体内へ発泡性樹脂の射出する第2実施形態に係る射出工程を説明する説明図。
【図22】第2実施形態に係るコアバックが行われた状態を示す説明図。
【図23】第3実施形態を示す説明図。
【図24】図23からの動作状態を示す図。
【図25】第4実施形態を示す説明図。
【図26】第4実施形態におけるブロー成形時の状態を示す説明図。
【図27】第4実施形態における発泡性樹脂の射出時の状態を示す説明図。
【図28】第5実施形態を示す説明図。
【図29】第5実施形態におけるブロー成形時の状態を示す説明図。
【図30】第5実施形態における発泡性樹脂の射出時の状態を示す説明図。
【図31】第6実施形態を示す説明図。
【図32】第7実施形態を示す説明図。
【符号の説明】
【0057】
1 成形装置
2 パリソン(予備成形体)
3 パリソン押出機(予備成形体成形機)
4 成形型
7 樹脂供給装置(溶融発泡性樹脂供給手段)
21 固定型(第1型)
21A 固定型の凹所
22 第1可動型(第2型)
22A 貫通孔
22Aa 大径部(貫通孔の一端側内径)
22Ab 縮径部(貫通孔の他端側内径)
22Ac 環状溝
23 第2可動型(第3型)
23b 突出部
23bt 突出部先端面
27 キャビティ
41 ブロー成形体
45 溶融ソリッド樹脂(溶融非発泡性樹脂)
70 溶融発泡性樹脂
91 突部
96 真空装置
X(T) 横薄肉化部
Y(T) 縦薄肉化部






【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融非発泡性樹脂を用いて形成されたチューブ状の予備成形体を垂下させ、該予備成形体を成形型のキャビティ内に取り込んでブロー成形を行うことにより中空のブロー成形体を形成し、該成形型内のブロー成形体内に溶融発泡性樹脂を供給し、その後、前記成形型の型動作に基づいて前記キャビティを増大させることにより、前記溶融発泡性樹脂の発泡に基づき前記ブロー成形体を膨張させる樹脂成形品の成形方法であって、
前記ブロー成形体のうち、前記成形型の型動作に基づいて前記キャビティを増大させる際に延伸力が作用する部分の肉厚を、少なくとも該成形型の型動作に基づいて該キャビティを増大させる前までに、該ブロー成形体の他の部分の肉厚に比して薄肉化する、
ことを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記ブロー成形体のうち、前記延伸力が作用する部分の肉厚を薄肉化することが、前記予備成形体の垂下時に、該予備成形体の成形機を利用して、該予備成形体のうち、前記ブロー成形体において延伸力が作用する部分に相当する部分を該予備成形体の他の部分に比して薄肉化することである、
ことを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記ブロー成形体のうち、前記延伸力が作用する部分の肉厚を薄肉化することが、ブロー成形時に、前記成形型を利用して、前記予備成形体のうち、前記ブロー成形体において延伸力が作用する部分に相当する部分を該予備成形体の他の部分に比して薄肉化することである、
ことを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、
前記成形型が、第1型、第2型、第3型を、その順に直列的に備え、
前記第1型が、前記キャビティを形成するための凹所を、その開口を前記第2,第3型側に向けた状態で有し、
前記第2型が、前記第1、第2,第3型の配設方向に向けて貫通すると共にその開口が前記第1型の凹所に対応して臨む貫通孔を有し、
前記第3型が、前記第2型の貫通孔内に摺動可能に嵌合されて該貫通孔内への進入量を減少させることにより前記キャビティを増大させる突出部を有していて、
前記ブロー成形体のうち、薄肉化された薄肉化部を、前記第2型と前記第3型の突出部との境界付近に位置させる、
ことを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、
前記溶融発泡性樹脂に補強繊維が含まれている、
ことを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、
前記溶融発泡性樹脂が、樹脂中に物理発泡剤が混ぜ合わされたものである、
ことを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記物理発泡剤が超臨界流体である、
ことを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項8】
溶融非発泡性樹脂を用いてチューブ状の予備成形体を形成し該チューブ状の予備成形体を垂下させる予備成形体成形機と、該予備成形体成形機により形成された予備成形体をキャビティ内に取り込んで該予備成形体を中空のブロー成形体として所定の形状に型付ける成形型と、該成形型内のブロー成形体内に溶融発泡性樹脂を供給する溶融発泡性樹脂供給手段と、を備え、前記成形型が、前記溶融発泡性樹脂供給手段が該成形型内のブロー成形体内に溶融発泡性樹脂を供給開始した後、型動作に基づき前記キャビティを増大させるように設定されている樹脂成形品の成形装置において、
前記予備成形体を薄肉化する薄肉化形成構造が備えられ、
前記薄肉化形成構造が、前記ブロー成形体のうち、前記成形型の型動作に基づいて前記キャビティを増大させる際に延伸力が作用する部分の肉厚を、少なくとも該成形型の型動作に基づいて該キャビティを増大させる前までに、該ブロー成形体の他の部分の肉厚に比して薄肉化するように設定されている、
ことを特徴とする樹脂成形品の成形装置。
【請求項9】
溶融非発泡性樹脂を用いてチューブ状の予備成形体を形成し該チューブ状の予備成形体を垂下させる予備成形体成形機と、該予備成形体成形機により形成された予備成形体をキャビティ内に取り込んで該予備成形体を中空のブロー成形体として所定の形状に型付ける成形型と、該成形型内のブロー成形体内に溶融発泡性樹脂を供給する溶融発泡性樹脂供給手段と、を備え、前記成形型が、前記溶融発泡性樹脂供給手段が該成形型内のブロー成形体内に溶融発泡性樹脂を供給開始した後、型動作に基づき前記キャビティを増大させるように設定されている樹脂成形品の成形装置において、
前記予備成形体成形機が、前記予備成形体の垂下時に、該予備成形体に該予備成形体の他の部分に比して薄肉化する薄肉化部を形成するように設定され、
前記薄肉化部が、前記予備成形体のうち、前記成形型の型動作に基づいて前記キャビティを増大させる際に前記ブロー成形体に延伸力が作用する部分に相当する部分に位置するように設定されている、
ことを特徴とする樹脂成形品の成形装置。
【請求項10】
請求項8又は9において、
前記成形型が、第1型、第2型、第3型を、その順に直列的に備えており、
前記第1型が、前記キャビティを形成するための凹所を、その開口を前記第2,第3型側に向けた状態で有しており、
前記第2型が、前記第1、第2,第3型の配設方向に向けて貫通すると共にその開口が前記第1型の凹所に対応して臨む貫通孔を有しており、
前記第3型が、前記第2型の貫通孔内に摺動可能に嵌合されて該貫通孔内への進入量を減少させることにより前記キャビティを増大させる突出部を有しており、
前記ブロー成形体が、その薄肉化部が前記第2型と前記第3型の突出部との境界付近に位置されるように設定されている、
ことを特徴とする樹脂成形品の成形装置。
【請求項11】
溶融非発泡性樹脂を用いてチューブ状の予備成形体を形成し該チューブ状の予備成形体を垂下させる予備成形体成形機と、該予備成形体成形機により形成された予備成形体をキャビティ内に取り込んで該予備成形体を中空のブロー成形体として所定の形状に型付ける成形型と、該成形型内のブロー成形体内に溶融発泡性樹脂を供給する溶融発泡性樹脂供給手段と、を備え、前記成形型が、前記溶融発泡性樹脂供給手段が該成形型内のブロー成形体内に溶融発泡性樹脂を供給開始した後、型動作に基づき前記キャビティを増大させるように設定されている樹脂成形品の成形装置において、
前記成形型が、第1型、第2型、第3型を、その順に直列的に備えており、
前記第1型が、前記キャビティを形成するための凹所を、その開口を前記第2,第3型側に向けた状態で有しており、
前記第2型が、前記第1、第2,第3型の配設方向に向けて貫通すると共に、その一端側開口が前記第1型の凹所に対応して臨み、その他端側の内径がその一端側の内径よりも縮径されている貫通孔を有しており、
前記第3型が、前記第2型における貫通孔の他端側内に摺動可能に嵌合されていると共に、その先端部が該貫通孔の一端側にも進入されて該先端部と該貫通孔の一端側内面との間に環状溝を形成する突出部を有している、
ことを特徴とする樹脂成形品の成形装置。
【請求項12】
請求項11において、
前記環状溝に、ブロー成形時に該環状溝内の圧力を低下させる吸引装置が接続されている、
ことを特徴とする樹脂成形品の成形装置。
【請求項13】
請求項11において、
前記ブロー成形体が、その薄肉化部が前記第2型と前記第3型の突出部との境界付近に位置されるように設定されている、
ことを特徴とする樹脂成形品の成形装置。
【請求項14】
請求項8〜13のいずれか1項において、
前記溶融発泡性樹脂供給手段が、前記溶融発泡性樹脂として、樹脂中に物理発泡剤が混ぜ合わされたものを供給するように設定されている、
ことを特徴とする樹脂成形品の成形装置。
【請求項15】
請求項14において、
前記物理発泡剤が超臨界流体である、
ことを特徴とする樹脂成形品の成形装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2008−238712(P2008−238712A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84983(P2007−84983)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】