説明

樹脂成形複合体及び電子写真画像形成装置のカートリッジ

【課題】 カートリッジの品質を損なうことなく、環境負荷の低減を達成すること。
【解決手段】シール把手部材15に特定の分解性プラスチックを用いたことを特徴とする電子写真画像形成装置のカートリッジ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザープリンタや複写機等の電子写真方式を採用する電子写真画像形成装置本体に着脱自在なカートリッジにおいて、前記カートリッジを電子写真画像形成装置本体に装着する際、取り除く部材に分解性プラスチックを用いたカートリッジに関する。
【0002】
ここで、電子写真画像形成装置とは、電子写真画像形成方式を用いて記録媒体に画像を形成するものである。そして、電子写真画像形成装置の例としては、例えば、電子写真複写機、電子写真プリンタ(例えば、レーザービームプリンタ、LEDプリンタ等)、ファクシミリ装置及びワードプロセッサ等が含まれる。
【背景技術】
【0003】
従来、電子写真画像形成プロセスを用いた画像形成装置においては、電子写真感光体および前記電子写真感光体に作用するプロセス手段や現像装置等を一体的にカートリッジ化して、このカートリッジを画像形成装置本体に着脱可能とするプロセスカートリッジ方式が採用されている。このプロセスカートリッジ方式によれば、装置のメンテナンスをサービスマンによらずにユーザー自身で行なうことができるので、格段に操作性を向上させることができた。そこでこのプロセスカートリッジ方式は、画像形成装置において広く用いられている。
【0004】
このような現像装置やプロセスカートリッジでは、現像剤(トナー)を収容した現像剤容器(トナー容器)と、現像剤担持体(現像ローラ)および現像剤規制部材(現像ブレード)などを保持する現像容器を接合し、トナー容器の、現像容器へのトナー供給部となる開口部を現像剤封止用のシール部材(トナーシール)で封止し、使用開始までの間トナーが現像容器へ流入しないようにするものが提案されている。そして、ユーザーは使用開始時にプロセスカートリッジに設けられているシール把手(プルタブ)を引き、シール把手に固定されているトナーシールを取り外してからプロセスカートリッジを画像形成装置本体に装着する。
【0005】
前記プロセスカートリッジを構成している各部材には、容器類をはじめ、駆動伝達手段となるギア、現像剤を現像剤収納容器内に封止するシール部材、及び前記シール部材を固定し、ユーザーが使用前に引き抜くシール把手部材等、多くの合成プラスチック材料が使用されている。このように、近年合成プラスチックの特徴である、軽量、耐腐食性、大量生産が可能、安価なことにより金属材料等の代替も含めその使用量は、年々増加傾向にある。その使用量の増加にともない、環境対応が当然のことながら重要となってきている。
【0006】
前述環境対応の一貫として、電子写真画像形成装置のカートリッジにおいては、カートリッジの製造メーカーが使用済みカートリッジの回収を行い、特許文献1等に記載のように分解・再生を実施したり、材料ごとに分解する工程を経て、合成プラスチックは、破砕、洗浄、リペレット等の工程を経て再度枠体材料として使用している。
【0007】
また、特許文献2等に記載のように、環境負荷の低減に寄与する分解性プラスチックの採用検討、及びそれに伴う材料開発等盛んに行なわれている。
【0008】
【特許文献1】特許第3103547号明細書
【特許文献2】特許第3145776号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記のようにカートリッジ製造メーカーが回収をすることができなかった部材例えば本発明の一つとなる。
【0010】
現像剤収納容器内に現像剤を封止するシール部材を固定し、ユーザーが使用前に引き抜く把手部材(従来はポリプロピレン等)に分解性プラスチックを採用するにあたっては、従来使用されていたポリプロピレン等が有する機能(たとえば、ヒンジ特性、成形性、他材料との相溶性など)が要求される。分解性プラスチックは、化学合成系、天然物利用系、微生物産生系に分類されるが、その中でも多数種存在し、おのおの特徴や課題を有している。
【0011】
従って、本発明の目的は、カートリッジの機能、品質を損なうことなく、環境負荷の低減を達成することであり、具体例としてはカートリッジを電子写真画像形成装置本体に装着する際、取り除く部材(例えば、シール部材を固定し、ユーザーが使用前に引き抜く把手部材等)において、本発明の分解性プラスチック材料を、発明の手順(成形手順)で使用することにより、下記の両立を実現することである。
【0012】
製品機能
トナー容器、または現像容器、または軸受部材、またはサイドカバーとシール把手とを、互いに相溶性の低い材料による2色成形で分離可能に一体成形することにより、部品点数の削減と組立工程数等の削減を可能とするとともに、トナー容器、または現像容器、または軸受部材、またはサイドカバーとシール把手の結合状態の最適化を図り、シール把手を分離するのに必要な力を低減させながら、輸送時の振動などによるシール把手の脱落を防止する。またユーザーが保持しやすい弾性(やわらかさ度合い)及びヒンジ特性を有している。また、通常の放置環境温度であれば前記製品機能を損なうことがない。
【0013】
耐環境性
焼却における燃焼カロリーが少なく、焼却処理に優れ、万が一自然界に放置されたとしても半永久的に放置された状態になることはない材料を用いたカートリッジを構成する部材を採用する。(たとえば現像剤収納容器内に現像剤を封止するシール部材を固定し、ユーザーが使用前に引き抜く把手部材)
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は以下の本発明によって達成される。
【0015】
本出願に係る第1の発明は、組成の異なる少なくとも2種類の樹脂材料で形成された第一の樹脂成形体と第二の樹脂成形体とを有する樹脂成形体であり、該樹脂成形体が、該第一の樹脂成形体と該第二の樹脂成形体とに分離可能に一体成形されている樹脂成形複合体であり、
第一の樹脂成形体がスチレン系樹脂組成物で形成されており、
第二の樹脂成形体がポリブチレンサクシネート系樹脂を少なくとも含む分解性プラスチックで形成されていることを特徴とする樹脂成形複合体である。
【0016】
本出願に係る第2の発明は、第二の樹脂成形体が、前記ポリブチレンサクシネート系樹脂とポリ乳酸系樹脂を配合している分解性プラスチックで形成されてことを特徴とする第1の発明に記載の樹脂成形複合体である。
【0017】
本出願に係る第3の発明は、第一の樹脂成形体がスチレン系樹脂組成物で形成されており、
第二の樹脂成形体が前記第一の樹脂成形体の曲げ弾性率よりも低い曲げ弾性率のポリブチレンサクシネート系樹脂を少なくとも含む分解性プラスチックで形成されていることを特徴とする第1の発明又は第2の発明に記載の樹脂成形複合体である。
【0018】
本出願に係る第4の発明は、第一の樹脂成形体がスチレン系樹脂組成物で形成されており、
第二の樹脂成形体が前記第一の樹脂成形体の成形収縮率よりも大きい成形収縮率のポリブチレンサクシネート系樹脂を少なくとも含む分解性プラスチックで形成されていることを特徴とする第1の発明乃至第3の発明いずれかに記載の樹脂成形複合体である。
【0019】
本出願に係る第5の発明は、第一の樹脂成形体がスチレン系樹脂組成物で形成されており、
第二の樹脂成形体が前記第一の樹脂成形体の成形温度よりも低い成形温度のポリブチレンサクシネート系樹脂を少なくとも含む分解性プラスチックで形成されていることを特徴とする第1の発明乃至第4の発明いずれかに記載の樹脂成形複合体である。
【0020】
本出願に係る第6の発明は、スチレン系樹脂組成物で形成されている第一の樹脂成形体を成形し、その後にポリブチレンサクシネート系樹脂組成物を少なくとも含む分解性プラスチックで形成されている第二の樹脂成形体を成形したことを特徴とする第1の発明乃至第5の発明いずれかに記載の樹脂成形複合体である。
【0021】
本出願に係る第7の発明は、前記スチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂とゴム状重合体との混合物、又は、スチレン系樹脂とゴム状共重合体との混合物であることを特徴とする第1の発明に記載の樹脂成形複合体である。
【0022】
本出願に係る第8の発明は、電子写真画像形成装置本体に装着されるカートリッジであり、
該カートリッジは、枠体及びカートリッジを電子写真画像形成装置本体に装着する際に取り除く部材を少なくとも有し、
該枠体の一部または全てが、スチレン系樹脂組成物もしくはオレフィン系樹脂組成物で形成されており、
該部材が、ポリブチレンサクシネート系樹脂を少なくとも含む分解性プラスチックで形成されており、
該枠体と該部材が分離可能であることを特徴とするカートリッジである。
【0023】
本出願に係る第9の発明は、電子写真画像形成装置本体に装着されるカートリッジであり、
該カートリッジは、現像剤を収納する現像剤収納枠体及び該現像剤収納枠体の現像剤供給開口を封止しているシール部材を引き抜くための把手を少なくとも有し、
該現像剤収納枠体の一部または全てが、スチレン系樹脂組成物もしくはオレフィン系樹脂組成物で形成されており、
該把手が、ポリブチレンサクシネート系樹脂を少なくとも含む分解性プラスチックで形成されており、
該現像剤収納枠体と該把手が分離可能であることを特徴とするカートリッジである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の分解プラスチック材料を、発明の手順(成形手順)で使用することにより、製品機能と対環境性の両立を実現することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に実施の形態を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
【0026】
本発明は、電子写真画像形成装置のカートリッジ及び現像剤収納容器ユニットの例えば現像剤収納容器と、ユーザーが使用開始時に取り外す部材(例えば、シール把手)において特定の分解性プラスチックを、特定の範囲において他の分解性プラスチックとブレンドし一体成形可能にしたことが特徴である。
【0027】
本発明で使用する分解性プラスチックは、通常の使用環境下では従来の合成プラスチックと同等の特性及び使用状態でよく、廃棄環境下、例えば、埋め立てられることで土壌微生物存在下におかれることで初めて分解が進行するものである。
【0028】
これらのプラスチックは、生分解により最終的には乳酸、こはく酸など、生体のエネルギー変換反応の基本的なものの一つであるTCA回路(クエン酸を介して有機物の完全酸化を行う代謝回路)の構成物質や、簡単な有機酸、二酸化炭素及び水に変化し、無害化する。よって、このような分解性プラスチックによりカートリッジを構成する部材を製造すれば、前記部材が万が一自然界に放置されたとしても、何らかの手段を施すこと無く、そして何ら環境に対して悪影響を及ぼすこと無く、自然に分解消失させることが可能となる。
【0029】
このような生分解性樹脂は、通常、微生物発酵もしくは合成により生成され、このうち後者の合成により生成されるものとしては、本発明で採用した、ポリブチレンサクシネート(ポリブチレンスクシネート)系樹脂やポリ乳酸樹脂等が用いられている。ここで、ポリブチレンサクシネート系樹脂とは、ポリブチレンサクシネートを主成分とし、ポリブチレンサクシネートの他に必要に応じて副成分としてアジピン酸、ポリエチレングリコール等を配合したものをいう。
【0030】
以下に本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0031】
〔プロセスカートリッジ及び装置本体の説明〕
図1に本発明に係るプロセスカートリッジの斜視図、図2に本発明に係るプロセスカートリッジの主断面図、図3に本発明に係る電子写真画像形成装置(以下、画像形成装置という)の主断面図を図示する。
【0032】
このプロセスカートリッジは、像担持体と、像担持体に作用するプロセス手段を備えたものである。ここでプロセス手段としては、例えば、像担持体の表面を帯電させる帯電手段、像担持体にトナー像を形成する現像装置、像担持体表面に残留したトナーを除去するためのクリーニング手段がある。
【0033】
本実施形態のカートリッジは、この画像形成装置Aは図3に示すように、光学系1から画像情報に基づいたレーザー光像を照射して像担持体である感光ドラム7に現像剤(以下トナーという)像を形成する。そして前記トナー像の形成と同期して被記録材2を給紙カセット3aからピックアップローラ3b及び給送ローラ(搬送ローラ)3c、搬送ローラ3d、レジストローラ3e等からなる搬送手段3で搬送し、且つプロセスカートリッジBとしてカートリッジ化された画像形成部において前記感光ドラム7に形成したトナー像を転写手段としての転写ローラ4に電圧印加することによって被記録材2に転写し、その被記録材2をガイド板(搬送ガイド)3fでガイドして定着手段5へと搬送する。
【0034】
この定着手段5は駆動ローラ5c及びヒータ5aを内蔵する定着ローラ5bからなり、通過する記録媒体2(被記録材)に熱及び圧力を加えてトナー像を被記録材2に定着する。その後被記録材2を排出ローラ対3g、3h、3iで搬送し、反転搬送路を通して排出部(排出トレイ)6へと排出する如く構成している。尚、この画像形成装置Aはフラッパ3k及び排出ローラ3mでもって装置本体14側方へ排紙も可能である。
【0035】
前記画像形成部を構成するプロセスカートリッジBは、図3に示すように、像担持体である感光ドラム7を回転してその表面を帯電手段(帯電ローラ)8によって一様に帯電し、前記光学系1からの光像を露光開口部1eを介して感光ドラム7に露光して潜像を形成し、現像手段9で前記潜像に応じたトナー像を形成することにより可視像化する。そして前記転写ローラ4でトナー像を被記録材2に転写した後は、クリーニング手段10によって感光ドラム7に残留したトナーを除去するように構成している。
【0036】
尚、前記プロセスカートリッジBはトナー溜め等を有する第一枠体であるトナー枠体11と、現像ローラ9c等を有する第二枠体である現像枠体12と、感光ドラム7やクリーニング手段10等を有する第三枠体であるクリーニング枠体13とによって構成している。
【0037】
次に前記画像形成装置A及びこれに装填するプロセスカートリッジBの各部の構成について詳細に説明する。
【0038】
〔プロセスカートリッジ〕
プロセスカートリッジBは、像担持体である感光ドラム7を回転してその表面を帯電手段8によって一様に帯電し、画像形成装置Aの光学系1からの光像を露光開口部1eを介して感光ドラム7に露光して潜像を形成し、現像手段9の有するトナー規制部材である現像ブレードは9dにより現像ローラ9c上に形成された均一なトナー層を感光ドラム7に前記潜像に応じたトナー像とすることにより可視像化する。そして転写ローラ4でトナー像を被記録材2に転写した後は、クリーニング手段10によって感光ドラム7に残留したトナーを除去するよう構成している。
【0039】
前記クリーニング手段10は感光ドラム7に接する弾性クリーニングブレード10aで感光ドラム7上に転写後残留したトナーを掻き取り、廃トナー溜め10bへ貯留するものである。
【0040】
〔プロセスカートリッジの装着〕
図3に示すようにプロセスカートリッジBの装着方向Xから見てプロセスカートリッジBの長手方向の両側には、図示せぬ位置決めガイドとその後方に姿勢決めガイドが設けられている。一方、装置本体14の上面にヒンジ35aで枢着された開閉カバー35を上方へ向って開く(図示矢印の上方を向いた向き)と、画像形成装置本体(以下装置本体という)14の内部の左右壁にガイドレールを有するガイド部材(不図示)が配設してあり、前記位置決めガイド、姿勢決めガイドをこのガイドレールに挿入してプロセスカートリッジBは装置本体14内の所定位置へ挿入される。プロセスカートリッジBの取り出しは上記と逆である。
【0041】
本発明の実施形態であるトナー枠体及びトナーシール及びシール把手について以下に説明する。
【0042】
〔トナー枠体及びトナーシール及びシール把手〕
前記のような一体化されたプロセスカートリッジにおいて、現像手段9は現像ローラ9c、現像ブレード9d等を支持する現像枠体12と、トナーtを収容するトナー枠体11の2つに別れて構成されている。
【0043】
図1〜4に示すように現像枠体12とトナー枠体11の結合には、現像枠体12もしくはトナー枠体11の一方に開口長手方向の上下にほぼ平行に一本ずつ存在する溶着リブ(不図示)を設け、この溶着リブの根本の突条をトナー枠体11の不図示の条溝嵌入し、超音波溶着により枠体同士を結合及び固定している。また、図4のJ部H−H断面の図5(a)(b)及び図5(b)のC部拡大図(c)に示すように、現像枠体12の長手方向の両端部には帯状のスポンジ64が両面接着テープ等で固定してあり、このスポンジがトナー枠体11の長手方向の両端部に当接し、その弾性により容器形状にならい現像枠体12とトナー枠体11が密着し現像手段9の側面からトナーtが漏れることを防止している。
【0044】
新品のプロセスカートリッジの場合、トナー枠体11には中のトナーtが現像枠体12に侵入するのを防ぐシール部材52(トナーシール)をヒートシール方式により溶着固定しており、ユーザーが使用前に前記シール部材52を引き剥がしてから装置本体14内に装着する。
【0045】
このシール部材52は、図4、5に示すようにトナー枠体11の開口部11mの周縁に貼り付けられ長手方向一端52bで折り返されて前記開口部周縁に貼り付けられ前記開口部を封止するシール部材52の部分に重ねられ、現像枠体12に固定したスポンジ64とトナー枠体11間を通って、更には図1に示すように現像器サイドカバー27の中を通って該現像器サイドカバー27のシール引き出し開口部27aを通って外部へ引き出される。
【0046】
前記シール部材52は、両面接着テープ等の接着剤(不図示)でトナー枠体11と一体となったシール引き抜き部材である把手15に固定される。
【0047】
また、図4のJ部に示すシール部材52とシール把手15の形態が、図6(a),K−K断面の図6(c)の場合もある。
【0048】
シール部材52がトナー枠体11の長手方向の端部11jに形成された空洞部41hを通って外部へ引き出される。前記空洞部41hには滑り性がよくかつ柔軟性をもつ材質、例えばゴム部材やエラストマーなどでつくられたキャップ部材63が挿入されている。
【0049】
シール部材52の端部52aの接着層側52mをシール把手15裏面の部位60aにトナー枠体11への貼り付け方法と同様ヒートシール方式により固定(60a1部)されている。後述するが本発明の材料及び前記構成を用いることにより、両面テープ等別の接着部材が不要となる。図5の構成の場合は、シール部材52の非接着層側52nがシール把手15の表面の部位60b側で固定する必要があるため、両面テープ等の固定部材が必要となる。
【0050】
シール部材52はトナー枠体11の空洞部41hの壁面とキャップ部材63の間に挟まれキャップ部材の弾性によりシール部材52が引き抜かれる際、シール部材52に付着したトナーを掻き取ると同時に現像手段9の側面から、トナーtが漏れることを防止している。前記シール部材52と把手15の構成においてユーザーがプロセスカートリッジBを購入後、始めて電子写真画像形成装置に装着する際、取除く部材として把手15を持ちシール部材52を引き出すとトナー枠体11は開封され、現像枠体12へのトナーの供給が可能となる。
【0051】
本発明である、前記把手15とトナー枠体11との結合は、シール把手15は図5に示す矢印Aの方向に引いたときのみトナー枠体11からの分離が可能であり、矢印B方向に対しては抗することができる構成及び結合状態である必要がある。
【0052】
具体的な結合部の構成を図5(c)を用いて説明すると、トナー枠体11の長手方向の端部11jに突形状部11kを設け、シール把手15が、突形状部11kを挟持または抱合する形で覆うように形成されている。また、突形状部11kにはアンダーカット部41q(M>m)が設けてあり、シール把手15が輸送時などの振動や衝撃で容易に脱落してしまわないようになっている。
【0053】
また、結合状態を良好に(図5の(b)に示す矢印Aの方向に引いたときのみトナー枠体11からの分離が可能)するため、及び対環境性を良好にするために本実施の形態において、シール把手15の材質には分解性プラスチックを用いており、その処方はポリブチレンサクシネート(PBS)80質量%とポリ乳酸(PLA)20質量%のブレンド材を採用している。
【0054】
シール把手15の材質は図7に示す『シール把手に採用エリア』内であれば、前述ポリブチレンサクシネート(PBS)とポリ乳酸(PLA)のブレンド比率はかまわない。
【0055】
図5(c)、図7を用いてシール把手として必要機能である各項目を満足する様に選定した、生産方法及び材料処方(材料のブレンド比率とした経緯)について以下に詳細に述べる。
【0056】
(1)シール把手15の材質はトナー枠体11の材質より収縮率の大きな樹脂材料を使用する。また、トナー枠体11の成形後にシール把手15を成形することで、シール把手15の成形時の収縮により、シール把手15がトナー枠体11の突形状部11kに密着するようになっている。
【0057】
収縮率について
トナー枠体11の材質であるHIPSは0.6%のため
シール把手15の材質はPBS:PLAを50:50〜100:0でブレンドした
収縮率0.73〜1.22%である。
【0058】
(2)シール把手15の材質は、トナー枠体11の材質の成形温度よりも低い成形温度のものとしている。これにより、トナー枠体11の成形後にシール把手15を成形する際、シール把手15の成形温度(樹脂温度)で、トナー枠体11の突形状部11k表面11k1が、熱のダメージを受け溶融し、微少な凹凸面を形成し、その状態でシール把手と一体化し引張り強度が上がってしまうことを防ぐことができる。
【0059】
成形温度
トナー枠体11の材質であるHIPSは210℃のため
シール把手15の材質はPBS:PLAを0:100〜100:0でブレンドした
成形温度170〜190℃である。
【0060】
(3)シール把手15の材質は、トナー枠体11の材質の曲げ弾性率よりも低い曲げ弾性率のものとしている。これにより、シール把手15を引き抜く際、トナー枠体11の突形状部11kを挟み込んでいる部位15aが変形することで、トナー枠体11の突形状部11kもしくはその周囲の部位の、変形及び破損を防ぐことができる。
【0061】
曲げ弾性率
トナー枠体11の材質であるHIPSは2100MPaのため
シール把手15の材質はPBS:PLAを50:50〜100:0でブレンドした
曲げ弾性率2000〜670MPaである。
【0062】
(4)なお本実施の形態において、トナー枠体11には、安価でかつ流動性が良い
スチレン系樹脂組成物の中の、ゴム変性スチレン系材料であるHIPS(ハイインパクトポリスチレン)を用いている。よってシール把手15に用いる樹脂材料は、前記トナー枠体11に使用しているHIPSと相溶性が低くユーザーが容易に分離可能である必要がある。
【0063】
HIPSとの分離強度(引き抜き強度)
従来使用していた材質であるPPは60Nのため
シール把手15の材質はPBS:PLAを75:25〜100:0でブレンドした
分離強度55〜21Nである。
【0064】
(5)また、シール把手15は、カートリッジ製造メーカーが回収及び材料リサイクルを行なうことが困難な部品であるため、万が一自然界に放置されたり、燃やされても環境負荷が低い材料を使用することが求められている。
【0065】
耐環境性(分解性プラスチックか/燃焼カロリーは)
従来使用していた材質であるPPは分解しない
シール把手15の材質はPBS、PLAともに分解性プラスチック
【0066】
本発明に用いた分解性プラスチックの燃焼カロリーを従来使用してきた材料のそれと比較した(表1)。表1から明らかであるように、燃焼カロリーが約1/2となっていることがわかる。
【0067】
【表1】

【0068】
(6)また、図6(b)のシール把手裏面の部位60aでのシール把手15とトナーシール52との貼り付け方法は、トナーシール52をトナー枠体11へ貼り付ける方法と同様、ヒートシール方式を用いる。(両面テープ等を使用せずにすむため)よって、シール把手15の材質はトナーシール52の接着層52mとのヒートシール性が求められる。
【0069】
ヒートシール性
従来使用していた材質であるPPは比較的弱い。(実使用では問題ないレベル)
シール把手15の材質はPBSは比較的弱い。(実使用では問題ないレベル)
PLAは優れている。のでPLAのブレンド比率が多くなると良好となる。
【0070】
(7)シール把手15の材質は、通常の放置環境温度内では、前記製品機能を損なうことがないことが求められる。
【0071】
温度環境(高温、高湿)
従来使用していた材質であるPPは問題なし
シール把手15の材質はPBSは分解速度が比較的早い。(実際には問題ないレベル)
PLAは分解速度が遅い特徴をもつ。のでPLAのブレンド比率が多くなると良好となる。
【0072】
更に、図6に示すようにシール把手15には、ユーザーがシール部材52を引き抜く際、動作を行ないやすいようにリング形状をしており、指を入れるための穴15dが設けられている。
【0073】
本発明の材料は従来使用してきたPP同様、ヒンジ特性(繰り返し性)が良好のため、シール把手15の短手方向には薄肉部15b、15cが設けられており、プロセスカートリッジを出荷、輸送などのため梱包する際には、この薄肉部15b、15cからシール把手15を折り曲げることができるようになっている。このように変形できるようにすることにより、シール把手15の引き抜きやすさを損なうことなく、梱包部材を小さくすることができる。
【0074】
本発明は、プロセスカートリッジだけでなく、画像形成装置に現像剤(トナー)のみを補給する方式(以下、トナーカートリッジ)にも適用できる。
【0075】
本発明における第二の実施形態として、トナーカートリッジ及びトナーカートリッジ受け入れ装置としての画像形成装置について、図を用いて説明する。まず、画像形成装置の全体構成について説明し、次にトナーカートリッジについて説明する。
【0076】
〔画像形成装置の全体構成〕
図8は画像形成装置Eの全体構成説明図である。図8において、65は原稿読取装置であり、原稿台ガラス65aに載置した原稿に対し、照明ランプ65bで光照射すると共に、ランプ65b及び走査ミラー65cを走査し、原稿からの反射光を前記ミラー65c及び反射ミラー65d,65e,65f、更には合焦及び変倍機能を有するレンズ65gを介して像担持体である感光体ドラム66へ照射して静電潜像を形成する。
【0077】
感光体ドラム66は表面に感光層を有し、メインモータ67によって画像形成動作に応じて図8の矢印方向へ回転可能である。この感光体ドラム66の周囲には帯電装置68、現像装置69、転写装置70及びクリーニング装置71が配置してある。そして回転する感光体ドラム66の表面を帯電装置68で一様に帯電すると共に、前記原稿読取装置65からの露光によって静電潜像を形成し、現像装置69で前記静電潜像に現像剤(以下『トナー』という)を転移させてトナー像を形成する。
【0078】
前記現像装置69は、現像室69a内のトナーをトナー送り部材69bによって固定磁石を内蔵した現像スリーブ69cに送り出し、現像スリーブ69cを回転させると共に、現像ブレード69dによって摩擦帯電電荷を付与したトナー層を現像スリーブ69cの表面に形成し、そのトナーを前記潜像に応じて感光体ドラム66へ転移させることによってトナー像を形成して可視像化するものである。
【0079】
そして前記トナー像を搬送装置72で搬送する記録媒体73に、転写装置70の電圧印加によって転写する。この転写装置70は転写帯電器70aと分離帯電器70bとを有しており、転写帯電器70aによってトナーと逆極性の電圧を印加することにより、搬送された記録媒体73にトナー像を転写し、転写後の記録媒体73に対して分離帯電器70bで電圧印加して感光体ドラム66から分離する。
【0080】
トナー像を記録媒体73に転写した後に感光体ドラム66の表面に残留したトナーは、クリーニングブレード71aで掻き落とし、回収トナー溜め71bへ回収するクリーニング装置71によって除去する。
【0081】
一方、搬送装置72は、装置本体の下方に上下カセット72a1,72a2が装着してあり、それぞれのカセット72a1,72a2に収容した記録媒体73がピックアップローラ72b1,72b2によって一枚ずつレジストローラ対72cへ供給可能となっている。前記カセット72a1,72a2又は手差しトレイ72dから供給された記録媒体73は、前記感光体ドラム66による画像形成動作と同期して回転するレジストローラ対72cにより搬送され、転写装置70の位置で前述したようにトナー像が転写される。
【0082】
そして像転写後の記録媒体73を搬送ベルト72eにより、駆動ローラ74a及びヒータを内蔵した加熱押圧ローラ74bからなる定着装置74へ搬送し、この定着手段74で熱及び圧力を印加して転写像を定着し、排出ローラ対72fによって装置外へ排出する。
【0083】
尚、この実施例に係る画像形成装置は、原稿ガラス65aの上部に原稿自動給送装置75が装着してあり、複数枚の原稿を自動的に一枚毎に分離給送可能にしている。尚、この原稿自動給送装置75の構成は、公知であるために具体的な説明は省略する。
【0084】
〔トナーカートリッジ〕(図9)
次にトナーカートリッジFの構成について説明する。このトナーカートリッジFは、トナーカートリッジ装着手段となる現像装置69のカートリッジ装着部69eに装着し、そのまま据え置いてトナーを使いきるまで徐々に現像室69aへトナーを補給する。
【0085】
トナーカートリッジFは図9に示すように、現像剤収納枠体である容器本体76、フランジ77,撹拌部材(不図示)、ハンドル部材79、フィルム状のシール部材80、シール部材を引き剥がす把手81を有する。
【0086】
前記容器本体76は、図9aに示すように、円筒状の部材であり、その長手に伸びるスリット上の開口部76aを設けている。
【0087】
前記容器本体76を構成する材質としては熱可塑性樹脂が最も好適で、精度が出し易く、且つ比較的安価であり、しかも落下衝撃にも強いことから耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)も好ましく利用出来る。
【0088】
熱可塑性樹脂で容器本体76を製造する方法としては、射出成型を利用することが挙げられる。押出成型より寸法精度が向上し、フィルム状のシール部材80のヒートシールのホットメルト接着等の熱履歴によって変形することもない。
【0089】
本発明の実施形態である、トナーカートリッジFのシール部材80及びシール部材を固定している把手81について以下に説明する。
【0090】
(シール部材80)
トナーカートリッジFの開口部76aはシール部材80で封止される。このシール部材80はユーザーがトナーカートリッジFを画像形成装置Eに装着する際に取り除く部材である。
【0091】
シール部材80は、図9に示すように、容器本体76の開口部76aの周縁に貼り付けられ、長手方向一端80aで折り返され、開口部76a周縁に貼り付けられ前記開口部76aを封止するシール部材80の部分80bの上に重ねられる。
【0092】
シール部材80を容器本体76に接着する方法としては、熱板溶着、インパルスシール、超音波溶着、高周波溶着等が利用出来る。
【0093】
(把手81)
前記シール部材80の端部80cは、容器本体76と分離可能に一体成形した把手81に固定してある。
【0094】
把手81には、ユーザーが取り除く際に指をかける穴部81aがある。把手81は、容器本体76に分離自在に一体成形されているため、把手81をトナーカートリッジFに固定する部材が不要であり、組立工程も減らすことができる。
【0095】
シール部材80の把手81への固定方法は、両面テープ等の接着材を使用したり、超音波溶着等任意の方法で利用できる。本実施系では、両面テープにより固定した。
【0096】
把手81と容器本体76との結合について説明する。
【0097】
把手18は図9に示す矢印Bの方向に引いたときのみ容器本体76からの分離が可能であり、図9中矢印C方向の力に対しては分離しないような構成及び結合状態である必要がある。
【0098】
具体的な結合部の構成は、図9bに示すように、容器本体76の長手方向の端部76bに突形状部76Cを設け、把手81が、突形状部76cを抱合する形で覆うように形成されている。
【0099】
また、図9cに示すL−L断面図ように、突形状部76Cにはアンダーカット部76d(M>m)が設けてあり、把手81が輸送時などの振動や衝撃で容易に脱落してしまわないようになっている。
【0100】
また、結合時は物流時に容易に脱落しないよう、適度な結合状態を保ち、ユーザーが図9に示す矢印Bの方向に引いたときのみ容器本体76からの分離を可能にすること、及び対環境性を良好にすることの両立を達成するために、本実施の形態において、把手81の材質には分解性プラスチックを用いており、その処方はポリブチレンサクシネート(PBS)80質量%とポリ乳酸(PLA)20質量%のブレンド材を採用している。
【0101】
容器本体76と把手81の具体的な成形方法は、容器本体76を成形温度210℃で成形した後に、170〜190℃の成形温度にて把手81を成形する。
【0102】
容器本体76の材質であるHIPSの収縮率は0.6%であり、把手81の材質の収縮率は約1.1%であり、容器本体76の成形後に把手81を成形することで、把手81の成形時の収縮により把手81が容器本体76の突状部76Cに密着しやすくなり、適度な結合状態を維持できる。
【0103】
また、ユーザーが容易に分離可能であるためには把手81の材質と、容器本体76の材質との相溶性が低い必要がある。実際に、トナーカートリッジFの形状において、従来使用していた材質であるPPを用いた把手81の引き抜き強度を測定したところ53Nであったのに対し、本発明の材質を用いた把手81では20Nであった。
【0104】
容器本体76の材質であるHIPSの曲げ弾性率は2100MPaであり、把手81の曲げ弾性率は700Mpaであり、これにより、把手81を引き抜く際、容器本体76の突形状部76cを挟み込んでいる部位81bが変形することで、容器本体76の突形状部76cもしくはその周囲の部位の、変形及び破損を防ぐことができる。
【0105】
また、把手81は、トナーカートリッジ製造メーカーが回収及び材料リサイクルを行なうことが困難な部品であるため、万が一自然界に放置されたり、燃やされても環境負荷が低い材料を使用することが求められている。
【0106】
耐環境性(分解性プラスチックか/燃焼カロリーは)
従来使用していた材質であるPPは分解しない
把手81の材質はPBS、PLAともに分解性プラスチック
【0107】
本発明に用いた分解性プラスチックの燃焼カロリーを従来使用してきた材料のそれと比較した(表1)。前記表1から明らかであるように、燃焼カロリーが約1/2となっていることがわかる。
【0108】
〔トナーカートリッジFの装着〕
トナーカートリッジFの装着手順について説明する。
【0109】
装着する場合には画像形成装置Eのサイドカバー(不図示)を開け、現像装置69のカートリッジ装着部69eから使用済みトナーカートリッジFを抜き取った後、複写機に新しいトナーカートリッジFの開口部76cが上方を向くようにしてカートリッジ装着部69eに図9に示す矢印A方向に挿入する。
【0110】
次にトナーカートリッジFに一体成形されている把手81の穴部81aに手をかけて図9に示すB方向に引張ると、把手81は容器本体76から分離され、更に引いて前記開口部76aを塞いでいるシール部材80が引き剥される。
【0111】
そして前記サイドカバー(不図示)を閉じてトナーカートリッジ画像形成装置Eのカートリッジ装着部69eには、現像室69aと連痛している開口部(不図示)があるが、開口部76aが現像室69aの開口部と一致するように、トナーカートリッジFを略90度回転してセットする。それにより、トナーカートリッジF内のトナーが画像形成装置Eの現像室69aに補給可能となる。
【0112】
〔トナーカートリッジG〕
本発明における第三の実施形態であるトナーカートリッジGについて説明する。
【0113】
(トナーカートリッジG)
トナーカートリッジGは、図10に示すように、トナー収納枠体であるトナーボトル83 、フランジ84,トナー搬送部材(不図示)、封止部材86からなる。
【0114】
図10aに示すように、トナーボトル83先端の一端面には、本実施形態では円筒状とされるトナー補給開口部(以下、開口部83aという)が設けてあり、開口部83aは、その先端開口83bが封止部材86により封止された状態にある。
【0115】
トナーボトル83は、円筒の内径精度及び高精度に出すことが好ましい。そのためには、トナーボトル83を構成する材質としては、熱可塑性樹脂が最も好適で、中でもスチレン系樹脂組成物であるアクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合体(ABS)、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)、及びオレフィン系樹脂組成物である低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)が生産性及び機械的特性及びコスト(安価)の面から好ましく利用でき、本実施系では、HIPSを用いた。
【0116】
なお、封止部材86は、トナーボトル83と画像形成装置との係止状態(トナー搬送・排出が可能な状態)を確立するための係止部材としての機能、さらに、画像形成装置からトナー搬送・排出のための回転駆動力を受ける駆動力受け部材としての機能を備えている。
【0117】
次に、本発明の実施形態である、トナーカートリッジGの保護部材87について説明する。
【0118】
(保護部材87)
図11に示すように、トナーボトル83には、開口部83aを覆う、保護部材87が取り付けられている。なお、トナーボトル83を実際に画像形成装置に装着する際は、ユーザーは前記保護部材87を取り外してから挿入する。
【0119】
保護部材87はドーム形状に形成され、開口部83a近傍を覆うように、トナーボトル83にネジ係合により取り付けられる。
【0120】
トナーボトル83と保護部材87との係合はネジ係合だけでなく、爪止め、圧入等の手段が利用できる。トナーボトル83と保護部材87との係合は、物流、落下時による衝撃に対しても強固に係合状態を維持し、ユーザーが画像形成装置に装着する際に取り外すときは力をかけなくても容易に外すことができることが必要である。
【0121】
また保護部材87の外周面には保護部材87を外すときに回しやすいように保持リブ87aを設けているため、ユーザーがこの保護部材87を回して外す際、容易に外すことができる。
【0122】
保護部材87の内部には、図11aに示すように封止部材86の浮き、外れを防止するための、位置規制手段としての円筒状の浮き防止部87bが設けてある。この浮き防止部87bは物流時の落下、振動などにより封止部材86が開口部83aから浮いたり、抜けたりすることを防止することができ、物流時、落下時のトナー漏れを防止することができる。
【0123】
また、本実施形態においては保護部材87が緩衝機能を果たしていることから、従来は梱包箱に同梱されていた発泡スチロールやパルプモールド等の緩衝部材が不要であり、梱包箱に直接トナーカートリッジGを入れるだけでよく、この点からの環境負荷の軽減が達成できる。
【0124】
上述したように、保護部材87は、封止部材86の浮き、外れ防止の保護作用と、周壁部87Cで外部からの衝撃を緩衝する緩衝作用の両立を達成するため、適度な弾性を必要とする。
【0125】
本発明の目的である、環境負荷低減とカートリッジの品質、機能維持の両立を達成するため、本実施形態では、ポリブチレンサクシネート(PBS)95質量%とポリ乳酸(PLA)5質量%のブレンド材を採用している。製造方法としては、射出成形が好ましい。
【0126】
尚そのブレンド材の曲げ弾性率は700MPaであり、物流時、落下時等の様々な衝撃力を受けても、衝撃力を吸収するが、すぐに弾性で形状が元に戻り、保護部材87が破壊することなく、封止部材86が保護される。
【0127】
また、保護部材87は、カートリッジ製造メーカーが回収及び材料リサイクルを行なうことが困難な部品であるため、万が一自然界に放置されたり、燃やされても環境負荷が低い材料を使用することが求められている。
【0128】
耐環境性(分解性プラスチックか/燃焼カロリーは)
従来使用していた材質であるPEは分解しない
保護部材81の材質はPBS、PLAともに分解性プラスチック
【0129】
本発明に用いた分解性プラスチックの燃焼カロリーを従来使用してきた材料のそれと比較した(表2)。表2から明らかであるように、燃焼カロリーが約1/2となっていることがわかる。
【0130】
【表2】

【0131】
ポリブチレンサクシネート(PBS)とポリ乳酸(PLA)のブレンド比率は、その弾性率の80:20〜100:0の間であれば、緩衝作用と保護作用の両立を達成できる。
【0132】
前記内容に関して補足すると、HIPS(ハイインパクトポリスチレン)としては、平均粒子径0.5〜3.0μmのゴム状重合体或いはゴム状共重合体を混合したものを用いることが好ましい。これは、混合するゴム状重合体或いは共重合体の平均粒子径が小さいと、前記カートリッジ部品を成形する際に、成形時の外観不良(たとえば、スリキズ)が発生しやすくなり、逆に平均粒子径が大きいと、トナーシール部材52の溶着性(ヒートシール性)が低下してしまう傾向にあるためである。ゴム状重合体或いはゴム状共重合体としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−イソプレン共重合体、天然ゴム及びエチレン−プロピレン共重合体からなるグループから選択される重合体が好ましく用いられる。
【0133】
本発明で使用するPBS系樹脂は、下記式(1)のように少なくとも1,4ブタンジオール、コハク酸を含む樹脂である。
【0134】
【化1】

【0135】
また、この反応において、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、無水コハク酸あるいは、そのジメチルエステル等の低級アルコールエステルや、多塩基酸(または酸無水物)なども併用することも可能である。特にこの中では、生分解性のコントロールのために、アジピン酸を添加するのが一般的に知られている。
【0136】
また、本発明のPBSの結晶化度をコントロールするために3官能以上の多価アルコール(たとえば、トリメチロールプロパン、グリセリン、及びペンタエリトリットからなる群から選ばれる少なくとも1種類以上の3官能または4官能多価アルコール等)・クエン酸あるいは酒石酸のような3官能以上の多価カルボン酸(またはその無水物等)を一部使用しても良い。
【0137】
本発明において、使用するポリブチレンサクシネート樹脂の、GPCによる分子量分布は、東ソー(株)製、SC−8010システムを用いて次の条件で測定されたものである。
【0138】
まず、40℃のヒートチャンバ中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてクロロホルムを毎分1mlの流速で流し、試料のクロロホルム溶解液を約100μl注入して測定する。
【0139】
試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線用の標準ポリスチレン試料としては、東ソー社製の、分子量が102〜107程度のものを用い、10点標準ポリスチレン試料を用いて検量線を作成した。
【0140】
検出器にはRI(屈折率)検出器を用い、カラムとしては、shodex K−800D、K−805L×2本を用いて測定を行った。
【0141】
試料は以下のようにして作製する。
【0142】
試料をクロロホルムに入れ、数時間放置した後、十分振とうしクロロホルムとよく混ぜ(試料の合一体がなくなるまで)、更に12時間以上静置する。このときクロロホルム中への試料の放置時間が24時間以上となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.45μm)を通過させたものを、GPCの測定試料とした。試料濃度は、樹脂成分が0.1質量/mlとなるように調整を行った。
【0143】
上記条件により、測定れたPBS樹脂の分子量は、数平均分子量(Mn)=15000、重量平均分子量(Mw)=130000、Mw/Mn=8.6であった。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】本発明の実施の形態におけるプロセスカートリッジの構成概略を示す斜視図。
【図2】本発明の実施の形態におけるプロセスカートリッジの構成概略を示す断面図。
【図3】本発明の実施の形態におけるカートリッジをセットした電子写真画像形成装置本体の主断面概略図。
【図4】本発明の実施の形態におけるプロセスカートリッジの現像剤収納ユニットを示す斜視図。
【図5】本発明の実施の形態におけるプロセスカートリッジのシール把手とシール部材及びトナー枠体の構成を示す断面図。(第一の実施形態)
【図6】本発明の実施の形態におけるプロセスカートリッジのシール把手とシール部材及びトナー枠体の構成を示す断面図。(第一の実施形態の類似形態)
【図7】本発明の実施の形態におけるシール把手として必要機能及び各項目を満足する様に選定した材料処方(材料のブレンド比率とした経緯)の説明図。
【図8】第二の実施形態におけるトナーカートリッジFの受け入れ装置としての画像形成装置の説明図。
【図9】第二の実施形態におけるトナーカートリッジFの構成概略図。
【図9a】第二の実施形態におけるトナーカートリッジFの容器本体の構成を示す斜視図。
【図9b】第二の実施形態におけるトナーカートリッジFの容器本体の構成を示す斜視図。
【図9c】第二の実施形態におけるトナーカートリッジFの容器本体および把手の構成を示す斜視図。
【図10】第三の実施形態におけるトナーカートリッジGの構成概略図。
【図10a】第三の実施形態におけるトナーカートリッジGのトナーボトルの構成を示す斜視図。
【図11】第三の実施形態におけるトナーカートリッジGのトナーボトルと保護部材の構成を示す斜視図。
【図11a】第三の実施形態におけるトナーカートリッジGの容器本体と保護部材の構成を示す断面斜視図。
【符号の説明】
【0145】
1 光学系
1a レーザーダイオード
1b ポリゴンミラー
1c レンズ
1d 反射ミラー
1e 露光開口部
2 被記録材
3 搬送手段
3a 給紙カセット
3b ピックアップローラ
3c 搬送ローラ対(給送ローラ)
3d 搬送ローラ対
3e レジストローラ対
3f 搬送ガイド(ガイド板)
3g、3h、3i 排出ローラ対
3j 反転経路
3k フラッパ
3m 排出ローラ対
4 転写ローラ
5 定着手段
5a ヒータ
5b 定着ローラ
5c 駆動ローラ
6 排出トレイ(排出部)
7 感光ドラム
8 帯電ローラ(帯電手段)
9 現像手段
9b トナー送り部材
9c 現像ローラ
9d 現像ブレード
10 クリーニング手段
10a 弾性クリーニングブレード
10b トナー溜
11 トナー枠体
11j 長手方向の端部
11k 突形状部
11k1 突形状部表面
11m 開口部
12 現像枠体
12i 長手方向端部
13 クリーニング枠体
14 画像形成装置本体
15 トナーシール把手
15a 挟み込んでいる部位
15b 薄肉部
15c 薄肉部
15d 指を入れるための穴
27 現像器サイドカバー
27a シール引き出し開口部
35 開閉部材(開閉カバー)
35a ヒンジ
41h 空洞部
41q アンダーカット部
52 トナーシール(シール部材)
52b 長手方向の一端
52m 接着層
52n 非接着層
60a シール把手裏面の部位
60a1 固定部
60b シール把手表面の部位
63 キャップ部材
64 スポンジ
65 原稿読取装置
65a 原稿台ガラス
65b 照明ランプ
65c〜65f ミラー
65g レンズ
66 感光体ドラム
67 メインモータ
68 帯電装置
69 現像装置
69a トナー収容部
69b トナー送り部材
69c 現像スリーブ
69d 現像ブレード
69e カートリッジ装着部
69f 開口部
70 転写装置
70a 転写帯電器
70b 分離帯電器
71 クリーニング手段
71a クリーニングブレード
71b 回収トナー溜め
72 搬送装置
72a1,72a2 カセット
72b1,72b2 ピックアップローラ
72c レジストローラ
72d 手差しトレイ
72e 搬送ベルト
72f 排出ローラ
73 記録媒体
74 定着装置
74a 駆動ローラ
74b 加熱押圧ローラ
75 原稿自動給送装置
76 容器本体
76a 開口部
76b 長手方向端部
76c 突形状部
76d アンダーカット部
77 フランジ
79 ハンドル部材
80 シール部材
80a シール部材の長手方向一端部
80b 開口部を封止する部分
80c シール部材の端部
81 把手
81a 穴部
81b 容器本体の突形状部を挟み込んでいる部位
82 サイドカバー
83 トナーボトル
83a 開口部
83b 先端開口
84 フランジ
86 封止部材
87 保護部材
87a 保持リブ
87b 浮き防止部
87c 周壁部
A レーザービームプリンタ(画像形成装置)
B プロセスカートリッジ
C クリーニングユニット
D 現像ユニット
E 画像形成装置
F トナーカートリッジ(第二の実施形態)
G トナーカートリッジ(第三の実施形態)
H 断面を切る部位
K 断面を切る部位
L 断面を切る部位
X プロセスカートリッジの装着方向
t トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成の異なる少なくとも2種類の樹脂材料で形成された第一の樹脂成形体と第二の樹脂成形体とを有する樹脂成形複合体であり、該樹脂成形複合体が、該第一の樹脂成形体と該第二の樹脂成形体とに分離可能に一体成形されている樹脂成形複合体であり、
第一の樹脂成形体がスチレン系樹脂組成物で形成されており、
第二の樹脂成形体がポリブチレンサクシネート系樹脂を少なくとも含む分解性プラスチックで形成されていることを特徴とする樹脂成形複合体。
【請求項2】
第二の樹脂成形体が、前記ポリブチレンサクシネート系樹脂とポリ乳酸系樹脂を配合している分解性プラスチックで形成されてことを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形複合体。
【請求項3】
第一の樹脂成形体がスチレン系樹脂組成物で形成されており、
第二の樹脂成形体が前記第一の樹脂成形体の曲げ弾性率よりも低い曲げ弾性率のポリブチレンサクシネート系樹脂を少なくとも含む分解性プラスチックで形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂成形複合体。
【請求項4】
第一の樹脂成形体がスチレン系樹脂組成物で形成されており、
第二の樹脂成形体が前記第一の樹脂成形体の成形収縮率よりも大きい成形収縮率のポリブチレンサクシネート系樹脂を少なくとも含む分解性プラスチックで形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の樹脂成形複合体。
【請求項5】
第一の樹脂成形体がスチレン系樹脂組成物で形成されており、
第二の樹脂成形体が前記第一の樹脂成形体の成形温度よりも低い成形温度のポリブチレンサクシネート系樹脂を少なくとも含む分解性プラスチックで形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の樹脂成形複合体。
【請求項6】
スチレン系樹脂組成物で形成されている第一の樹脂成形体を成形し、その後にポリブチレンサクシネート系樹脂組成物を少なくとも含む分解性プラスチックで形成されている第二の樹脂成形体を成形したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の樹脂成形複合体。
【請求項7】
前記スチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂とゴム状重合体との混合物、又は、スチレン系樹脂とゴム状共重合体との混合物であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形複合体。
【請求項8】
電子写真画像形成装置本体に装着されるカートリッジであり、
該カートリッジは、枠体及びカートリッジを電子写真画像形成装置本体に装着する際に取り除く部材を少なくとも有し、
該枠体の一部または全てが、スチレン系樹脂組成物もしくはオレフィン系樹脂組成物で形成されており、
該部材が、ポリブチレンサクシネート系樹脂を少なくとも含む分解性プラスチックで形成されており、
該枠体と該部材が分離可能であることを特徴とするカートリッジ。
【請求項9】
電子写真画像形成装置本体に装着されるカートリッジであり、
該カートリッジは、現像剤を収納する現像剤収納枠体及び該現像剤収納枠体の現像剤供給開口を封止しているシール部材を引き抜くための把手を少なくとも有し、
該現像剤収納枠体の一部または全てが、スチレン系樹脂組成物もしくはオレフィン系樹脂組成物で形成されており、
該把手が、ポリブチレンサクシネート系樹脂を少なくとも含む分解性プラスチックで形成されており、
該現像剤収納枠体と該把手が分離可能であることを特徴とするカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図10】
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【図10a】
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【図11】
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【図11a】
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【公開番号】特開2006−208898(P2006−208898A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22672(P2005−22672)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】