説明

樹脂組成物、プリプレグおよび金属箔張り積層板

【課題】 難燃性を維持しつつ、電気特性、吸湿後の耐熱性などを低下させることなく、従来から問題となっている成形性や銅箔ピール強度を向上させた高多層、高周波用プリント配線板用のビニル化合物をベースとした樹脂組成物およびこれを用いたプリプレグ、金属箔張り積層板および樹脂シートを提供する。
【解決手段】 ポリフェニレンエーテル骨格を有する2官能性フェニレンエーテルオリゴマーの末端ビニル化合物(a)、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(b)、ビスフェノールAシアン酸エステル樹脂(c)、臭素化難燃剤(d)および無機充填剤(e)を含有する樹脂組成物。更には該樹脂組成物とガラス織布からなるプリプレグ、該プリプレグを少なくとも1枚以上重ね、その片面もしくは両面に金属箔を配して積層成形して得られる金属箔張り積層板および金属箔またはフィルム上に塗工して得られる樹脂シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形性、電気特性、ピール強度、難燃性、吸湿後の耐熱性に優れた樹脂組成物およびこれを用いたプリプレグ、金属箔張り積層板に関するものであり、鉛フリーはんだリフロー対応、高周波、高多層用途のプリント配線板用として、マザーボード用、更には半導体チップを搭載した半導体プラスチックパッケージ用等に好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューター,サーバーをはじめとする情報端末機器およびインターネットルーター,光通信などの通信機器は、大容量の情報を高速で処理することが要求され、電気信号の高速化・高周波化が進んでいる。それに伴い、これらに用いられるプリント配線板用の積層板は高周波への要求に対応するため、低誘電率化・誘電正接化、特に低誘電正接化が求められている。これら要求に対応するため、従来、高周波用途の積層板には、フッ素樹脂やシアン酸エステル樹脂(例えば特許文献1参照)、ポリフェニレンエーテル樹脂(例えば特許文献2参照)、スチレンを主としたビニル化合物(特許文献3参照)などが知られている。高周波用途の高多層板において使用されるシアン酸エステル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ビニル化合物を使用した材料は、樹脂が堅く脆いためドリル加工時、スルーホール壁面にクラックが発生したり、樹脂の分子量が大きいため成形性に問題があった。またこれら樹脂はその非極性のため銅箔接着力が不足するという問題があった。(例えば特許文献3、4参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−120173号公報
【特許文献2】特開2005−112981号公報
【特許文献3】特開2005−89636号公報
【特許文献4】特開平6−207096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、難燃性を維持しつつ、電気特性、吸湿後の耐熱性などを低下させることなく、従来から問題となっている成形性や銅箔ピール強度を向上させた高多層、高周波用プリント配線板用のビニル化合物をベースとした樹脂組成物およびこれを用いたプリプレグ、金属箔張り積層板および樹脂シートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、これらの課題を解決するため、鋭意検討した結果、特定のポリフェニレンエーテル骨格を有する2官能性フェニレンエーテルオリゴマーの末端ビニル化合物に2種の特定のシアン酸エステル樹脂を配合した樹脂組成物が、臭素化難燃剤、無機充填剤を併用することで、難燃性を維持し、吸湿後の耐熱性、電気特性を低下させることなく、成形性とピール強度を共に向上させられることを見出し、本発明に到達した。即ち本発明は、ポリフェニレンエーテル骨格を有する2官能性フェニレンエーテルオリゴマーの末端ビニル化合物(a)、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(b)、ビスフェノールAシアン酸エステル樹脂(c)、臭素化難燃剤(d)および無機充填剤(e)を含有する樹脂組成物である。更に該樹脂組成物とガラス織布(f)からなるプリプレグであり、該プリプレグを少なくとも1枚以上重ね、その片面もしくは両面に金属箔を配して積層成形して得られる金属箔張り積層板であり、金属箔またはフィルム上に塗工して得られる樹脂シートである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の樹脂組成物から得られるプリプレグ、金属箔張り積層板を使用したプリント配線板は、難燃性、吸湿後の耐熱性、電気特性などの特性を低下させることなく、成形性とピール強度を共に向上させたことから、高多層・高周波対応のプリント配線板材料に好適であり、工業的な実用性は極めて高いものである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明に使用される一般式(1)で表されるビニル化合物(a)とは、一般式(1)において、-(O-X-O)-は、一般式(2)または一般式(3)で定義される構造からなり、R1,R2,R3,R7,R8は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基であり、R4,R5,R6,R9,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基であり、-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基であり、-(Y-O)-は、一般式(4)で定義される1種類の構造または一般式(4)で定義される2種類以上の構造がランダムに配列したものであり、R17,R18は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基であり、R19,R20は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基であり、a,bは、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示すビニル化合物であれば、特に限定されない。また、本発明の樹脂組成物には、構造の異なる2種類以上のビニル化合物(a)が混合されていてもよい。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【0008】
一般式(3)における-A-としては、例えば、メチレン、エチリデン、1-メチルエチリデン、1,1-プロピリデン、1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)、1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)、シクロヘキシリデン、フェニルメチレン、ナフチルメチレン、1-フェニルエチリデン、等の2価の有機基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0009】
本発明におけるビニル化合物(a)のなかでは、R1,R2,R3,R7,R8,R17,R18が炭素数3以下のアルキル基であり、R4,R5,R6,R9,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16,R19,R20が水素原子または炭素数3以下のアルキル基であるビニル化合物が好ましく、特に一般式(2)または一般式(3)で表される-(O-X-O)-が、式(6)、一般式(7)または一般式(8)であり、一般式(4)で表される-(Y-O)-が一般式(9)、一般式(10)または一般式(9)と一般式(10)がランダムに配列した構造を有するビニル化合物であることがより好ましい。
【化5】

【化6】

(式中、R11,R12,R13,R14は、同一でも異なってもよく、水素原子またはメチル基である。-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である)
【化7】

(-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である)
【化8】

【化9】

【0010】
ビニル化合物(a)のGPC法によるポリスチレン換算の数平均分子量は500〜3,000の範囲が好ましい。数平均分子量が500未満では、塗膜状にした際にべたつきが出やすく、また、3000を超えると、溶剤への溶解性が低下する。これらのビニル化合物の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、2官能フェノール化合物と1官能フェノール化合物を酸化カップリングさせて得られる2官能フェニレンエーテルオリゴマーの末端フェノール性水酸基をビニルベンジルエーテル化することで製造することができる。
【0011】
2官能フェニレンエーテルオリゴマーは、例えば、2官能フェノール化合物、1官能フェノール化合物および触媒を溶剤に溶解させた後、加熱攪拌下で酸素を吹き込むことで製造することができる。2官能フェノール化合物としては、例えば、2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチル-(1,1’-ビフェノール)-4,4’-ジオール、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-ジヒドロキシフェニルメタン、4,4’-ジヒドロキシ-2,2’-ジフェニルプロパン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。1官能フェノール化合物としては、2,6-ジメチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。触媒としては、例えば、CuCl、CuBr、CuI、CuCl2、CuBr2等の銅塩類とジ-n-ブチルアミン、n-ブチルジメチルアミン、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン、ピリジン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、ピペリジン、イミダゾール等のアミン類を組合せたものが使用できるが、これらに限定されるものではない。溶剤としては、例えば、トルエン、メタノール、メチルエチルケトン、キシレン、等が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
2官能フェニレンエーテルオリゴマーの末端フェノール水酸基をビニルベンジルエーテル化する方法としては、例えば、2官能フェニレンエーテルオリゴマーとビニルベンジルクロライドを溶剤に溶解させ、加熱攪拌下で塩基を添加して反応させた後、樹脂を固形化することで製造できる。ビニルベンジルクロライドとしては、o-ビニルベンジルクロライド、m-ビニルベンジルクロライド、p-ビニルベンジルクロライド、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキサイド、ナトリウムエトキサイド、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。反応後に余った塩基を中和するために酸を使用することもできる。酸としては、例えば、塩酸、硫酸、りん酸、ホウ酸、硝酸、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、塩化メチレン、クロロホルム等が使用できるが、これらに限定されるものではない。固形化の方法としては、溶剤をエバポレーションし乾固させる方法、反応液を貧溶剤と混合し再沈殿させる方法、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
ビニル化合物(a)の配合量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100重量部に対し、30〜95重量部が好ましく、50〜80重量部が特に好ましい。この範囲外では電気特性や反応性の問題がある。
【0014】
本発明において使用されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(b)は、一般式(5)で示されるシアン酸エステル樹脂及びそのプレポリマーであれば特に限定されない。ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(b)の配合量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100重量部に対し、2〜15重量部が好ましく、3〜10重量部が特に好ましい。この範囲外では吸湿後の耐熱性やピール強度の低下、反応性の問題が生じる場合がある。一般式(5)で示されるシアン酸エステル樹脂(b)は、α-ナフトールあるいはβ-ナフトール等のナフトール類とp-キシリレングリコール、α,α’-ジメトキシ-p-キシレン、1,4-ジ(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ベンゼン等との反応により得られるナフトールアラルキル樹脂とシアン酸とを縮合させて得られるものであり、その製法は特に限定されず、シアン酸エステル合成として現存するいかなる方法で製造してもよい。具体的に例示すると、一般式(11)で示されるナフトールアラルキル樹脂とハロゲン化シアンを不活性有機溶剤中で、塩基性化合物存在下反応させることにより得ることができる。また、同様なナフトールアラルキル樹脂と塩基性化合物による塩を、水を含有する溶液中にて形成させ、その後、ハロゲン化シアンと2相系界面反応を行い、合成する方法を採ることもできる。
【化10】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、nは平均値として1から10である。)
【化11】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、nは平均値として1から10である。)
【0015】
本発明において使用されるビスフェノールAシアン酸エステル樹脂(c)とは、ビスフェノールAの2個のフェノール性水酸基をシアン酸エステル基にしたものであり、プレポリマー化したものも含まれる。ビスフェノールAシアン酸エステル樹脂(c)の配合量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100重量部に対し、2〜15重量部の範囲が好ましく、3〜10重量部の範囲が特に好ましい。この範囲外では吸湿後の耐熱性やピール強度の低下、反応性の問題が生じる場合がある。
【0016】
本発明において使用される臭素化難燃剤(d)は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する臭素原子含有化合物またはポリカーボネート構造を有する臭素原子含有オリゴマーであれば特に限定されない。具体的には、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化ポリカーボネートオリゴマーなどが例示され、1種あるいは2種類以上を適宜混合して使用することも可能である。臭素化ポリカーボネートオリゴマーの分子量は特に限定されないが、重量平均分子量で 500〜3000のものが好適である。臭素化難燃剤(d)の配合量は特に限定はないが、樹脂組成物中の樹脂固形分100重量部に対し、5〜35重量部の範囲が好ましく、10〜30重量部の範囲が特に好適である。上記範囲の下限値未満ではピール強度の低下、また難燃性が不足し、上限値を超えると耐熱性、電気特性の低下が大きくなるなどの問題が生じる場合がある。
【0017】
本発明において使用される無機充填剤(e)は積層板用途において一般に使用されるものであれば適用可能である。具体的には、天然シリカ、溶融シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、中空シリカ等のシリカ類、酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛等のモリブデン化合物、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、アルミナ、クレー、カオリン、タルク、焼成クレー、焼成カオリン、焼成タルク、マイカ、ガラス短繊維(EガラスやDガラスなどのガラス微粉末類)、中空ガラスなどが挙げられ、1種もしくは2種以上を適宜組み合わせて使用することも可能である。使用する無機充填剤(e)の平均粒子径(D50)は特に限定されないが、分散性を考慮すると平均粒子径(D50)が0.1〜3μmのメソポーラスシリカ、球状溶融シリカ、球状合成シリカ、中空球状シリカ等が好ましい物として挙げられる。平均粒径が(D50)0.1〜3μmの範囲外では、成形時の流れ特性や小径ドリルビットの使用時の折損などの問題が生じ場合がある。無機充填剤の配合量は、特に限定はないが、樹脂組成物中の樹脂固形分100重量部に対し、10〜150重量部の範囲が好ましく、20〜100重量部の範囲が特に好適である。無機充填剤(e)の配合量が多すぎると成形性が低下することがあることから、100重量部以下が特に好ましい。平均粒子径(D50)は次のようにして測定した。レーザー回折式粒度分布計により、水分散媒中に所定量投入された粉体の粒度分布を測定、小さい粒子から体積積算し、全体積の50%に達した時の粒子の径を平均粒子径(D50)とした。
【0018】
無機充填剤(e)とともに、シランカップリング剤や湿潤分散剤を併用することも可能である。これらのシランカップリング剤としては、一般に無機物の表面処理に使用されているシランカップリング剤であれば、特に限定されるものではない。具体例としては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン系、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシシラン系、γ-メタアクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのビニルシラン系、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩などのカチオニックシラン系、フェニルシラン系などが挙げられ、1種もしくは2種以上を適宜組み合わせて使用することも可能である。
【0019】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じ硬化速度を適宜調節するために硬化促進剤を併用することも可能である。これらはビニル化合物(a)、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(b)、ビスフェノールAシアン酸エステル樹脂(c)、臭素化エポキシ樹脂の硬化促進剤として一般に使用されるものであれば、特に限定されるものではない。これらの具体例としては、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル等の有機金属塩類、イミダゾール類及びその誘導体、第3級アミン類等、またラジカル重合開始剤等が挙げられる。
【0020】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じ架橋型硬化剤を添加することも可能である。樹脂組成物の流動性を高め、銅箔引き剥がし強度を向上する効果があり、架橋型硬化剤としては、特にポリフェニレンエーテル骨格を有する2官能性フェニレンエーテルオリゴマーの末端ビニル化合物との相溶性が良好なものが用いられる。具体的には、ジビニルベンゼンやジビニルナフタレンやジビニルビフェニルなどの多官能ビニル化合物、フェノールとビニルベンジルクロライドの反応から合成されるビニルベンジルエーテル系化合物、スチレンモノマー, フェノールとアリルクロライドの反応から合成されるアリルエーテル系化合物などが挙げられる。さらにトリアルケニルイソシアヌレートなどが良好である。特に相溶性が良好なトリアルケニルイソシアヌレートが良く、なかでも具体的にはトリアリルイソシアヌレート(TAIC) やトリアリルシアヌレート(TAC) が好ましい。これらは、成形性に優れ、銅箔引き剥がし強度に優れた積層板を得ることができるからである。
【0021】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じシランカップリング剤を添加することも可能である。一般的なシランカップリング剤であれば、特に限定されるものではない。具体例としては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン系、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシシラン系、γ-メタアクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのビニルシラン系、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩などのカチオニックシラン系、フェニルシラン系などが挙げられ、1種もしくは2種以上を適宜組み合わせて使用することも可能である。
【0022】
本発明の樹脂組成物には、保存安定性を増すために、重合禁止剤を添加することもできる。重合禁止剤は一般に広知のものが使用でき、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、クロラニル、トリメチルキノン等のキノン類および芳香族ジオール類、ジ-t-ブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。
【0023】
本発明の樹脂組成物には、所期の特性が損なわれない範囲において、他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂及びそのオリゴマー、エラストマー類などの種々の高分子化合物、他の難燃性化合物、添加剤などの併用も可能である。これらは一般に使用されているものであれば、特に限定されるものではない。例えば、難燃性の化合物では、4,4’-ジブロモビフェニルなどの臭素化合物、リン酸エステル、リン酸メラミン、リン含有エポキシ樹脂、メラミンやベンゾグアナミンなどの窒素化合物、オキサジン環含有化合物、シリコン系化合物等が挙げられる。添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤等、所望に応じて適宜組み合わせて使用することも可能である。
【0024】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、有機溶剤に溶解した樹脂組成物の溶液として用いることが可能である。この有機溶剤としては、ビニル化合物(a)、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(b)、ビスフェノールAシアン酸エステル樹脂(c)および臭素化難燃剤(d)の混合物を溶解するものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の極性溶剤類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤類等が例示され、単独或いは2種以上混合して用いられる。
【0025】
本発明において使用されるガラス織布(f)は、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Tガラス、NEガラス、クォーツ、液晶ポリエステル等の織布が挙げられる。織布の厚みは特に限定されないが、0.01〜0.2mmの範囲の積層板用途に使用されるもので、特に超開繊処理や目詰め処理を施した織布が、寸法安定性の面から好適である。またエポキシシラン処理、アミノシラン処理などのシランカップリング剤などで表面処理したガラス織布は吸湿耐熱性の面から好適に使用される。また液晶ポリエステル織布は、電気特性の面から好適に使用される。
【0026】
本発明のプリプレグの製造方法は、上記の樹脂組成物とガラス織布(f)とを組み合わせてプリプレグを製造する方法であれば、特に限定されない。具体的には、本発明の樹脂組成物の溶液をガラス織布(f)に含浸させ、例えば130〜180℃、3〜20分程度乾燥させてBステージとし、無機充填剤を(e)含めた樹脂量30〜90重量%程度のプリプレグを作成する。
【0027】
本発明の金属箔張り積層板は、上述のプリプレグを用いて積層成形したものである。具体的には、このプリプレグを所定枚数重ね、その片面もしくは両面に銅箔を配置して、例えば温度180〜220℃、加熱時間100〜300分、面圧20〜40kg/cm2で積層成形し、銅箔張り積層板とする。使用する銅箔の厚みは、特に限定はないが、好適には3〜35μmの電解銅箔を使用する。電解銅箔は一般に積層板用途に使用されるものであれば特に限定されないが、高周波領域での導体損失を考慮し、マット面の粗さが小さい電解銅箔が好適である。また多層板の製造方法としては、例えば、本発明のプリプレグ1枚の両面に、35μmの銅箔を配置して、上記条件にて積層形成した後、内層回路を形成し、この回路に黒化処理を実施して、内層回路板とする。この内層回路板と本発明のプリプレグを交互に1枚ずつ配置し、最外層に銅箔を配置して、上記条件にて、好ましくは真空下に積層成形して多層板とする。
【0028】
本発明の樹脂シートは、上記の樹脂組成物の溶液を基材に塗布し乾燥して得られる。必要に応じ、基材を剥離またはエッチングしても良い。基材としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体フィルム、ならびにこれらのフィルムの表面に離型剤を塗布した離型フィルム、ポリイミドフィルム、等の有機系のフィルム基材、銅箔、アルミ箔等の導体箔、ガラス板、SUS板、FRP等の板状の基材が挙げられる。塗布する方法としては、例えば、樹脂組成物の溶液をバーコーター、ダイコーター、ドクターブレード、ベーカーアプリケーター等で基材上に塗布し、溶剤を乾燥する方法が挙げられる。
【0029】
溶剤を乾燥する際の乾燥条件は特に制限はないが、低温であると樹脂組成物中に溶剤が残り易く、高温であると樹脂組成物の硬化が進行することから、20℃〜150℃の温度で1〜90分間乾燥するのが好ましい。樹脂層の厚みは樹脂組成物溶液の濃度と塗布厚みにより調整することができるが、塗布厚みが厚くなると乾燥時に溶剤が残り易くなることから、0.1〜500μmが好ましい。
【0030】
本発明の樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁層、半導体パッケージ用材料として用いることができる。例えば、基材として銅箔を用いて本発明の硬化性樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を塗布し乾燥することで樹脂付き銅箔としたり、基材として剥離可能なプラスチックフィルムを用いて本発明の硬化性樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を塗布し乾燥することでビルドアップ用フィルム、ドライフィルムソルダーレジスト、ダイアタッチフィルムとすることができる。溶剤は20℃〜150℃の温度で1〜90分間加熱することで乾燥できる。また、硬化性樹脂組成物は溶剤を乾燥しただけの未硬化の状態で使用することもできるし、必要に応じて半硬化の状態にして使用することもできる。
【実施例】
【0031】
以下に、実施例および比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
合成例1
(2官能フェニレンエーテルオリゴマーの合成)
攪拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板のついた12Lの縦長反応器にCuBr29.36g(42.1mmol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン1.81g(10.5mmol)、n-ブチルジメチルアミン67.77g(671.0mmol)、トルエン 2,600gを仕込み、反応温度40℃にて攪拌を行い、あらかじめ2,300gのメタノールに溶解させた2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチル-(1,1’-ビフェノール)-4,4’-ジオール 129.32g(0.48mol)、2,6-ジメチルフェノール878.4g(7.2mol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン1.22g(7.2mmol)、n-ブチルジメチルアミン26.35g(260.9mmol)の混合溶液を、窒素と空気とを混合して酸素濃度8%に調整した混合ガスを5.2 L/minの流速でバブリングを行いながら230分かけて滴下し、攪拌を行った。滴下終了後、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム48.06g(126.4mmol)を溶解した水1,500gを加え、反応を停止した。水層と有機層を分液し、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで50wt%に濃縮し、2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体(樹脂「A」)のトルエン溶液を1981g得た。樹脂「A」の数平均分子量は1975、重量平均分子量は3514、水酸基当量が990であった。
(ビニル化合物の合成)
攪拌装置、温度計、還流管を備えた反応器に樹脂「A」のトルエン溶液833.40g、ビニルベンジルクロライド(商品名CMS-P;セイミケミカル(株)製)76.7g、塩化メチレン1600g、ベンジルジメチルアミン6.2g、純水199.5g、30.5wt% NaOH水溶液83.6gを仕込み、反応温度40℃で攪拌を行った。24時間攪拌を行った後、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで濃縮し、メタノール中へ滴下して固形化を行い、濾過により固体を回収、真空乾燥してビニル化合物「B」450.1gを得た。ビニル化合物「B」の数平均分子量は2250、重量平均分子量は3920、ビニル基当量は1189g/ビニル基であった。
【0033】
合成例2
(2官能フェニレンエーテルオリゴマーの合成)
攪拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板のついた12Lの縦長反応器にCuBr23.88g(17.4mmol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン0.75g(4.4mmol)、n-ブチルジメチルアミン28.04g(277.6mmol)、トルエン 2,600gを仕込み、反応温度40℃にて攪拌を行い、あらかじめ2,300gのメタノールに溶解させた2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチル-(1,1’-ビフェノール)-4,4’-ジオール 129.3g(0.48mol)、2,6-ジメチルフェノール233.7g(1.92mol)、2,3,6-トリメチルフェノール 64.9g(0.48mol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン0.51g(2.9mmol)、n-ブチルジメチルアミン10.90g(108.0mmol)の混合溶液を、窒素と空気とを混合して酸素濃度8%に調整した混合ガスを5.2 L/minの流速でバブリングを行いながら230分かけて滴下し、攪拌を行った。滴下終了後、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム19.89g(52.3mmol)を溶解した水1,500gを加え、反応を停止した。水層と有機層を分液し、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで50wt%に濃縮し、2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体(樹脂「C」)のトルエン溶液を836.5g得た。樹脂「C」の数平均分子量は986、重量平均分子量は1,530、水酸基当量が471であった。
(ビニル化合物の合成)
攪拌装置、温度計、還流管を備えた反応器に樹脂「C」のトルエン溶液836.5g、ビニルベンジルクロライド(商品名CMS-P;セイミケミカル(株)製)162.6g、塩化メチレン1600g、ベンジルジメチルアミン12.95g、純水420g、30.5wt% NaOH水溶液178.0gを仕込み、反応温度40℃で攪拌を行った。24時間攪拌を行った後、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで濃縮し、メタノール中へ滴下して固形化を行い、濾過により固体を回収、真空乾燥してビニル化合物「D」503.5gを得た。ビニル化合物「D」の数平均分子量は1187、重量平均分子量は1675、ビニル基当量は590g/ビニル基であった。
【0034】
合成例3
(α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂の合成)
【化12】

式(12)で表されるα−ナフトールアラルキル樹脂(SN485、OH基当量:219g/eq.軟化点:86℃、新日鐵化学(株)製) 103g(OH基0.47モル)をクロロホルム 500mlに溶解後、トリエチルアミン 0.7モルを添加混合し、これを 0.93モルの塩化シアンのクロロホルム溶液 300gに、-10℃で1.5時間かけて滴下し、30分撹拌した後、更に 0.1モルのトリエチルアミンとクロロホルム 30gの混合溶液を滴下し、30分撹拌して反応を完結させた。生成するトリエチルアミンの塩酸塩を濾別した後、得られた濾液を 0.1N塩酸 500mlで洗浄した後、水 500mlでの洗浄を4回繰り返した。ついで、クロロホルム/水混合溶液のクロロホルム層を分液処理により抽出、クロロホルム溶液に硫酸ナトリウムを添加し脱水処理を行った。硫酸ナトリウムを濾別した後、75℃でエバポレートし、更に90℃で減圧脱気することにより、褐色固形の式(13)で表されるα−ナフトールアラルキル型のシアン酸エステル樹脂を得た。赤外吸収スペクトルにおいて、2264cm-1付近にシアン酸エステル基の吸収を確認した。また、13C-NMR及び1H-NMRにより、OH基からOCN基への転化率が、99%以上である事を確認した。
【化13】

【0035】
合成例4
(α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂の合成)
α−ナフトールアラルキル樹脂(SN485、OH基当量:219g/eq.軟化点:86℃、新日鐵化学(株)製)の代わりにα−ナフトールアラルキル樹脂(SN4105、OH基当量:226g/eq.軟化点:105℃、新日鐵化学(株)製) 102g(OH基0.45モル)を使用し、塩化シアンの使用量を0.90モルとした以外は合成法1と同様の手法にて合成した。OH基からOCN基への転化率は、99%以上であった。
【0036】
(実施例1)
合成例2で得たビニル化合物「D」(数平均分子量1187、ビニル基当量は590g/ビニル基)70重量部、合成例4で得たナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:244g/eq.)10重量部、臭素化ポリカーボネート樹脂(FR53、臭素含有率58%、三菱ガス化学(株)製)15重量部、ビスフェノールAシアン酸エステル樹脂(CA210,三菱ガス化学(株)製)5重量部、球状シリカ(SC2050、平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製)50重量部、ジ-t-ブチルヒドロキシトルエン(川口化学工業(株)製)0.1重量部を混合し、メチルエチルケトンで固形分65%に希釈しワニスを得た。この得られたワニスの保存安定性評価結果を表1に示す。
【0037】
(実施例2)
合成例2で得たビニル化合物「D」(数平均分子量1187、ビニル基当量は590g/ビニル基)70重量部、合成例4で得たナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:244g/eq.)10重量部、臭素化ポリカーボネート樹脂(FR53、臭素含有率58%、三菱ガス化学(株)製)15重量部、ビスフェノールAシアン酸エステル樹脂(CA210,三菱ガス化学(株)製)5重量部、球状シリカ(SC2050、平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製)50重量部、を混合し、メチルエチルケトンで固形分65%に希釈しワニスを得た。この得られたワニスの保存安定性評価結果を表1に示す。また、この得られたワニスを厚さ0.08mm(IPC No.-#3313)のEガラスクロスに含浸塗工し、160℃で8分加熱乾燥して、樹脂量55重量%のプリプレグを得た。この55重量%のプリプレグ8枚を重ねた両面に18μm銅箔(3EC-III、三井金属鉱業(株)製)を配置し、圧力30kg/cm2、温度210℃で150分間真空プレスを行い、厚さ0.8mmの18μm銅張り積層板を得た。得られた銅張り積層板の物性値を表2に示す。
【0038】
(実施例3)
合成例2で得たビニル化合物「D」(数平均分子量1187、ビニル基当量は590g/ビニル基)68重量部、合成例4で得たナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:244g/eq.)9重量部、臭素化ポリカーボネート樹脂(FR53、臭素含有率58%、三菱ガス化学(株)製)12重量部、ビスフェノールAシアン酸エステル樹脂(CA210,三菱ガス化学(株)製)4重量部、臭素化ノボラック型エポキシ樹脂(BREN-S、臭素含有率35.5%、日本化薬(株)製)3重量部、臭素化ビスフェノールAエポキシ樹脂(1123P、臭素含有率23%、大日本インキ化学工業(株)製)4重量部、球状シリカ(SC2050、平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製)50重量部をメチルエチルケトンで固形分65%に希釈しワニスを得た。このワニスを使用する以外は実施例2と同様に行い、銅張り積層板を得た。得られた銅張り積層板の物性値を表2に示す。
【0039】
(実施例4)
合成例1で得たビニル化合物「B」(数平均分子量2250、ビニル基当量は1189g/ビニル基)68重量部、合成例4で得たナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:244g/eq.)9重量部、臭素化ポリカーボネート樹脂(FR53、臭素含有率58%、三菱ガス化学(株)製)12重量部、ビスフェノールAシアン酸エステル樹脂(CA210,三菱ガス化学(株)製)4重量部、臭素化ノボラック型エポキシ樹脂(BREN-S、臭素含有率35.5%、日本化薬(株)製)3重量部、臭素化ビスフェノールAエポキシ樹脂(1123P、臭素含有率23%、大日本インキ化学工業(株)製)4重量部、球状シリカ(SC2050、平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製)100重量部をメチルエチルケトンで固形分65%に希釈しワニスを得た。このワニスを使用する以外は実施例2と同様に行い、銅張り積層板を得た。得られた銅張り積層板の物性値を表2に示す。
【0040】
(実施例5)
合成例2で得たビニル化合物「D」(数平均分子量1187、ビニル基当量は590g/ビニル基)68重量部、合成例3で得たナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:237g/eq.)9重量部、臭素化ポリカーボネート樹脂(FR53、臭素含有率58%、三菱ガス化学(株)製)12重量部、ビスフェノールAシアン酸エステル樹脂(CA210,三菱ガス化学(株)製)4重量部、臭素化ノボラック型エポキシ樹脂(BREN-S、臭素含有率35.5%、日本化薬(株)製)3重量部、臭素化ビスフェノールAエポキシ樹脂(1123P、臭素含有率23%、大日本インキ化学工業(株)製)4重量部、球状シリカ(SC2050、平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製)50重量部をメチルエチルケトンで固形分65%に希釈しワニスを得た。このワニスを使用する以外は実施例2と同様に行い、銅張り積層板を得た。得られた銅張り積層板の物性値を表2に示す。
【0041】
(実施例6)
合成例2で得たビニル化合物「D」(数平均分子量1187、ビニル基当量は590g/ビニル基)68重量部、合成例4で得たナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:244g/eq.)4重量部、臭素化ポリカーボネート樹脂(FR53,臭素含有率58%、三菱ガス化学(株)製)12重量部、ビスフェノールAシアン酸エステル樹脂(CA210,三菱ガス化学(株)製)9重量部、臭素化ノボラック型エポキシ樹脂(BREN-S、臭素含有率35.5%、日本化薬(株)製)3重量部、臭素化ビスフェノールAエポキシ樹脂(1123P、臭素含有率23%、大日本インキ化学工業(株)製)4重量部、球状シリカ(SC2050、平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製)50重量部をメチルエチルケトンで固形分65%に希釈しワニスを得た。このワニスを使用する以外は実施例2と同様に行い、銅張り積層板を得た。得られた銅張り積層板の物性値を表2に示す。
【0042】
(実施例7)
合成例2で得たビニル化合物「D」(数平均分子量1187、ビニル基当量は590g/ビニル基)68重量部、合成例4で得たナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:244g/eq.)9重量部、臭素化ポリカーボネート樹脂(FR53,臭素含有率58%、三菱ガス化学(株)製)12重量部、ビスフェノールAシアン酸エステル樹脂(CA210,三菱ガス化学(株)製)4重量部、臭素化ノボラック型エポキシ樹脂(BREN-S、臭素含有率35.5%、日本化薬(株)製)3重量部、臭素化ビスフェノールAエポキシ樹脂(1123P、臭素含有率23%、大日本インキ化学工業(株)製)4重量部、球状シリカ(SC2050、平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製)50重量部をメチルエチルケトンで固形分65%に希釈しワニスを得た。さらに攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに秤量し、固形分濃度が20重量%となるようにメチルエチルケトンを加えて60℃に加熱して1時間攪拌し樹脂組成物の溶液を調整した。この得られた樹脂組成物の溶液を5℃の保冷庫で2週間保管した後、この調整した溶液をドクターブレード(隙間200μm)で、18μm電解銅箔(3EC-HTE:三井金属鉱業(株)製)のマット面上に塗布、室温で10分風乾後、送風乾燥機で50℃、20分乾燥して、樹脂層の厚み約15μmの銅箔付き樹脂シートを得た。次に、この銅箔付き樹脂シートをエッチングされた厚さ0.8mmコア材(CCL-EL190T、三菱ガス化学(株)製)の上下に配置し、圧力30kg/cm2、温度210℃で150分間真空プレスを行い、厚さ0.85mmの樹脂シート付き18μm銅張り積層板を得た。得られた銅張り積層板の物性値を表2に示す。
【0043】
(比較例1)
合成例2で得たビニル化合物「D」(数平均分子量1187、ビニル基当量は590g/ビニル基)70重量部、合成例4で得たナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:244g/eq.)15重量部、臭素化ポリカーボネート樹脂(FR53、臭素含有率58%、三菱ガス化学(株)製)15重量部、球状シリカ(SC2050、平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製)50重量部を混合し、メチルエチルケトンで固形分65%に希釈しワニスを得た。このワニスを使用する以外は実施例2と同様に行い、銅張積層板を得た。得られた銅張り積層板の物性値を表3に示す。
【0044】
(比較例2)
合成例2で得たビニル化合物「D」(数平均分子量1187、ビニル基当量は590g/ビニル基)68重量部、合成例4で得たナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:244g/eq.)9重量部、臭素化ポリカーボネート樹脂(FR53、臭素含有率58%、三菱ガス化学(株)製)12重量部、ビスフェノールM型シアン酸エステル樹脂(HF−7、Shanghai Huifeng Technical &Business Co.,LTD製)4重量部、臭素化ノボラック型エポキシ樹脂(BREN-S、臭素含有率35.5%、日本化薬(株)製)3重量部、臭素化ビスフェノールAエポキシ樹脂(1123P、臭素含有率23%、大日本インキ化学工業(株)製)4重量部、球状シリカ(SC2050、平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製)50重量部をメチルエチルケトンで固形分65%に希釈しワニスを得た。このワニスを使用する以外は実施例2と同様に行い、銅張積層板を得た。得られた銅張り積層板の物性値を表3に示す。
【0045】
(比較例3)
合成例2で得たビニル化合物「D」(数平均分子量1187、ビニル基当量は590g/ビニル基)68重量部、合成例4で得たナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:244g/eq.)9重量部、臭素化ポリカーボネート樹脂(FR53、臭素含有率58%、三菱ガス化学(株)製)12重量部、ジシクロペンタジエン型シアン酸エステル樹脂(HF−3、Shanghai Huifeng Technical &Business Co.,LTD製) 4重量部、臭素化ノボラック型エポキシ樹脂(BREN-S、臭素含有率35.5%、日本化薬(株)製)3重量部、臭素化ビスフェノールAエポキシ樹脂(1123P、臭素含有率23%、大日本インキ化学工業(株)製)4重量部、球状シリカ(SC2050、平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製)50重量部をメチルエチルケトンで固形分65%に希釈しワニスを得た。このワニスを使用する以外は実施例2と同様に行い、銅張積層板を得た。得られた銅張り積層板の物性値を表3に示す。
【0046】
(比較例4)
合成例2で得たビニル化合物「D」(数平均分子量1187、ビニル基当量は590g/ビニル基)68重量部、合成例4で得たナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:244g/eq.)9重量部、臭素化ポリカーボネート樹脂(FR53、臭素含有率58%、三菱ガス化学(株)製)12重量部、フェノールノボラック型シアン酸エステル樹脂(PT-30、LONZA Co.,LTD製) 4重量部、臭素化ノボラック型エポキシ樹脂(BREN-S、臭素含有率35.5%、日本化薬(株)製)3重量部、臭素化ビスフェノールAエポキシ樹脂(1123P、臭素含有率23%、大日本インキ化学工業(株)製)4重量部、球状シリカ(SC2050、平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製)50重量部をメチルエチルケトンで固形分65%に希釈しワニスを得た。このワニスを使用する以外は実施例2と同様に行い、銅張積層板を得た。得られた銅張り積層板の物性値を表3に示す。
【0047】
(比較例5)
合成例2で得たビニル化合物「D」(数平均分子量1187、ビニル基当量は590g/ビニル基)66重量部、臭素化ポリカーボネート樹脂(FR53、臭素含有率58%、三菱ガス化学(株)製)12重量部、ビスフェノールAシアン酸エステル樹脂(CA210,三菱ガス化学(株)製)15重量部、臭素化ノボラック型エポキシ樹脂(BREN-S、臭素含有率35.5%、日本化薬(株)製)3重量部、臭素化ビスフェノールAエポキシ樹脂(1123P、臭素含有率23%、大日本インキ化学工業(株)製)4重量部、球状シリカ(SC2050、平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製)50重量部をメチルエチルケトンで固形分65%に希釈しワニスを得た。このワニスを使用する以外は実施例2と同様に行い、銅張り積層板を得た。得られた銅張り積層板の物性値を表3に示す。
【0048】
(比較例6)
合成例2で得たビニル化合物「D」(数平均分子量1187、ビニル基当量は590g/ビニル基)66重量部、ビスフェノールM型シアン酸エステル樹脂(HF−7、Shanghai Huifeng Technical &Business Co.,LTD製)15重量部、臭素化ポリカーボネート樹脂(FR53、臭素含有率58%、三菱ガス化学(株)製)12重量部、臭素化ノボラック型エポキシ樹脂(BREN-S、臭素含有率35.5%、日本化薬(株)製)3重量部、臭素化ビスフェノールAエポキシ樹脂(1123P、臭素含有率23%、大日本インキ化学工業(株)製)4重量部、球状シリカ(SC2050、平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製)50重量部をメチルエチルケトンで固形分65%に希釈しワニスを得た。このワニスを使用する以外は実施例2と同様に行い、銅張り積層板を得た。得られた銅張り積層板の物性値を表3に示す。
【0049】
(比較例7)
合成例2で得たビニル化合物「D」(数平均分子量1187、ビニル基当量は590g/ビニル基)68重量部、ジシクロペンタジエン型シアン酸エステル樹脂(HF−3、Shanghai Huifeng Technical &Business Co.,LTD製)4重量部、ビスフェノールAシアン酸エステル樹脂(CA210,三菱ガス化学(株)製)9重量部、臭素化ポリカーボネート樹脂(FR53、臭素含有率58%、三菱ガス化学(株)製)12重量部、臭素化ノボラック型エポキシ樹脂(BREN-S、臭素含有率35.5%、日本化薬(株)製)3重量部、臭素化ビスフェノールAエポキシ樹脂(1123P、臭素含有率23%、大日本インキ化学工業(株)製)4重量部、球状シリカ(SC2050、平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製)50重量部をメチルエチルケトンで固形分65%に希釈しワニスを得た。このワニスを使用する以外は実施例2と同様に行い、銅張積層板を得た。得られた銅張り積層板の物性値を表3に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
(測定方法)
1) 数平均分子量及び重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた。試料のGPC曲線と分子量校正曲線よりデータ処理を行った。分子量校正曲線は、標準ポリスチレンの分子量と溶出時間の関係を次の式に近似して得た。 LogM = A0X3+ A1X2 + A2X + A3 + A4/X2(ここでM:分子量、X:溶出時間−19(分)、A:係数である。)
2) 水酸基当量は、2,6-ジメチルフェノールを標準物質とし、溶剤に乾燥ジクロロメタンを使用してIR分析(液セル法;セル長=1mm)を行い、3,600cm-1の吸収強度より求めた。
3) ビニル基当量は、1-オクテンを標準物質とし、溶剤に二硫化炭素を使用してIR分析(液セル法:セル長=1mm)を行い、910 cm-1の吸収強度より求めた。
4) シアネート当量は、赤外吸収スペクトルにおいて、2264cm-1付近のシアン酸エステル基の吸収を確認後、13C-NMR及び1H-NMRにより、構造を同定し、OH基からOCN基への転化率を測定。その転化率をもとに評価に使用したナフトールアラルキル樹脂のOH当量から算出。
5) ワニス保存安定性
ワニス作製直後と室温(25℃)で4週間放置後に、ワニスのGPC法による測定を実施。チャート中に、高分子量体の生成を示すピークが現れた場合を有、現れなかった場合を無とした。
6) 成形性(樹脂流れ)
プレス成形後、端部4辺から最大に流れ出た樹脂の長さをスケールにて測定し、その長さが5mm以上を(○)、5mm未満を不合格(×)とした。
7) ピール強度
JIS C6481に準じて、18μm銅箔付きの試験片(30mm×150mm×0.8mm)用い、銅箔の引き剥がし強度を測定し、2回測定した平均値が0.7kg/cm以上を合格(○)、0.7kg/cm未満を不合格(×)とした。(n=2)
8) 誘電正接
厚さ0.8mm銅張り積層板の銅箔を除去した試験片を使用し、空洞共振器摂動法(Agilent 8722ES,アジレントテクノロジー製)にて10GHzの誘電正接を測定。(n=1)
9) 吸湿耐熱性
厚さ約0.8mm 18μm銅箔付き積層板の銅箔をエッチングした5cmx5cmのサンプル(n=4)を115℃で20時間乾燥した後、プレッシャークッカー試験器(平山製作所製 PC-3型)で121℃、2気圧で3時間処理後、260℃の半田浴に30秒浸漬し、膨れ有無を目視観察し、異常なし:(○)、膨れ発生:(×)とした。
10) 耐燃性 : UL94垂直試験法に準じて測定(n=5)
【0054】
以上の結果から、本発明に係る樹脂組成物として、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂とビスフェノールAシアン酸エステル樹脂という2種の特定のシアン酸エステル樹脂を組み合わせることにより、成形性、ピール強度、吸湿耐熱性をバランス良く満たすことが可能となる。上記2種を含め、シアン酸エステル樹脂1種類のみが含有されている比較例1、5および6、また上記2種以外の組み合わせとして2種のシアン酸エステル樹脂の含有された比較例2、3、4および7においては、成形性、ピール強度、吸湿耐熱性のいずれかの悪化が見られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるビニル化合物(a)、一般式(5)で表されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(b)、ビスフェノールAシアン酸エステル樹脂(c)、臭素化難燃剤(d)および無機充填剤(e)を含む樹脂組成物。
【化1】

(式中、-(O-X-O)-は、一般式(2)または一般式(3)で定義される構造からなる。-(Y-O)-は、一般式(4)で定義され、1種類の構造または2種類以上の構造がランダムに配列している。a,bは、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。樹脂組成物には、構造の異なる2種類以上のビニル化合物(a)が混合されていてもよい。)
【化2】

(R1,R2,R3,R7,R8は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R4,R5,R6は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【化3】

(R9,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化4】

(R17,R18は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R19,R20は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【化5】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、nは平均値として1から10である。)
【請求項2】
ビニル化合物(a)が、-(O-X-O)-が一般式(6)、一般式(7)または一般式(8)であり、-(Y-O)-が一般式(9)または一般式(10)あるいは一般式(9)と一般式(10)がランダムに配列した構造を有するビニル化合物である請求項1記載の樹脂組成物。
【化6】

【化7】

(式中、R11,R12,R13,R14は、同一または異なってもよく水素原子またはメチル基である。-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化8】

(-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化9】

【化10】

【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載の樹脂組成物とガラス織布(f)からなるプリプレグ。
【請求項4】
請求項3に記載のプリプレグを少なくとも1枚以上重ね、その片面もしくは両面に金属箔を配して積層成形して得られる金属箔張り積層板。
【請求項5】
請求項1〜2のいずれかに記載の樹脂組成物の溶液を金属箔又はフィルムの表面に塗工、乾燥させて成ることを特徴とする樹脂シート。

【公開番号】特開2010−138366(P2010−138366A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89273(P2009−89273)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】