説明

樹脂組成物、Bステージフィルム、積層フィルム、プリプレグ、多層プリント配線板、及び多層プリント配線板の製造方法

【課題】Bステージフィルム又は硬化物層の厚さを均一にすることができ、更に硬化後の硬化物の表面を粗化処理したときに、粗化処理された表面の表面粗さを小さくすることができ、かつ硬化物と金属層との接着強度を高くすることができる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る樹脂組成物は、ビスフェノールS型エポキシ樹脂と、シアネートエステル樹脂と、硬化促進剤と、重量平均分子量が5000以上である高分子量成分と、無機充填剤とを含む。上記ビスフェノールS型エポキシ樹脂100重量部に対して、上記シアネートエステル樹脂の含有量は15〜45重量部である。上記樹脂組成物中の上記無機充填剤を除く全成分の合計100重量%中、上記高分子量成分の含有量は0.4〜5重量%である。上記樹脂組成物100重量%中、上記無機充填剤の含有量は10〜85重量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、積層板及びプリント配線板等の電子部品において、絶縁層を形成するために用いられる樹脂組成物、並びにBステージフィルム、積層フィルム、プリプレグ、多層プリント配線板、及び多層プリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層板及びプリント配線板等の電子部品において、絶縁層を形成するために、様々な樹脂組成物が用いられている。多層プリント配線板では、配線密度が高くなる傾向があり、更に絶縁層の層数も増加する傾向がある。絶縁層の多層化に伴って、絶縁層間の電気的な接続は、ビアホール又はスルーホールに導電材料を導入することにより行われている。また、プリント配線板を得る際には、バンプ接続と呼ばれる接続方法を用いて、基板上の端子と、これに対応する多数の端子とが導電性粒子等により接続されている。
【0003】
上記樹脂組成物の一例として、下記の特許文献1には、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂用硬化剤と、フェノキシ樹脂及びポリビニルアセタール樹脂の内の少なくとも一方と、リン含有ベンゾオキサジン化合物とを含む樹脂組成物が開示されている。ここでは、樹脂組成物を硬化させた硬化物を粗化処理すると、粗化面の粗度が比較的小さいにもかかわらず、該粗化面がめっき導体に対して高い密着力を示し、かつ難燃性に優れた絶縁層が得られることが記載されている。
【0004】
また、特許文献1では、リン含有ンベンゾオキサジン化合物を用いない場合には、絶縁層とめっき導体とのピール強度は比較的高いものの、難燃性が低く、粗度も大きくなることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2009/038166 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、樹脂組成物を硬化させた硬化物を粗化処理したときに、粗化処理された表面の粗度が大きい場合、充分な絶縁性を確保するために絶縁層の厚さを厚くして対応することが一般的である。
【0007】
特許文献1には、樹脂組成物が上記組成を有することにより粗度が小さくなることが記載されているものの、Bステージフィルム又は絶縁層の厚さを均一にすることが困難なことがある。Bステージフィルム又は絶縁層の厚さが不均一であると、充分な絶縁性を確保するために、Bステージフィルム又は絶縁層の厚さを厚くする必要がある。絶縁層の厚さを厚くすると、絶縁層の多層化に対応できないことがある。
【0008】
本発明の目的は、Bステージフィルム又は硬化物層の厚さを均一にすることができ、更に硬化後の硬化物の表面を粗化処理したときに、粗化処理された表面の表面粗さを小さくすることができ、かつ硬化物と金属層との接着強度を高くすることができる樹脂組成物、並びにBステージフィルム、積層フィルム、プリプレグ、多層プリント配線板、及び多層プリント配線板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の広い局面によれば、ビスフェノールS型エポキシ樹脂と、シアネートエステル樹脂と、硬化促進剤と、重量平均分子量が5000以上である高分子量成分と、無機充填剤とを含み、上記ビスフェノールS型エポキシ樹脂100重量部に対して、上記シアネートエステル樹脂の含有量が15〜45重量部であり、樹脂組成物中の上記無機充填剤を除く全成分の合計100重量%中、上記高分子量成分の含有量が0.4〜5重量%であり、樹脂組成物100重量%中、上記無機充填剤の含有量が10〜85重量%である、樹脂組成物が提供される。
【0010】
本発明に係る樹脂組成物は、リン含有ベンゾオキサジン化合物を含まないか、又は樹脂組成物中の不揮発成分100重量%中、リン含有ベンゾオキサジン化合物の含有量が2重量%未満であることが好ましい。本発明に係る樹脂組成物は、リン含有ベンゾオキサジン化合物を含まないことが好ましい。
【0011】
本発明に係る樹脂組成物のある特定の局面では、上記高分子量成分は、ポリビニルアセタール樹脂及びフェノキシ樹脂の内の少なくとも1種を含む。
【0012】
本発明に係るBステージフィルムは、本発明に従って構成された樹脂組成物をフィルム状にすることにより得られるBステージフィルムである。
【0013】
本発明に係る積層フィルムは、本発明に従って構成されたBステージフィルムと、該Bステージフィルムの一方の面に積層された基材とを備える。
【0014】
本発明に係るプリプレグは、本発明に従って構成された樹脂組成物と、該樹脂組成物を内部に含浸している繊維状基材とを備える。
【0015】
本発明に係る多層プリント配線板は、回路基板と、該回路基板上に積層された硬化物層とを備えており、上記硬化物層が、本発明に従って構成された樹脂組成物又は該樹脂組成物をフィルム状にしたBステージフィルムにより形成されている。
【0016】
本発明に係る多層プリント配線板のある特定の局面では、上記硬化物層上に積層された金属層がさらに備えられており、上記硬化物層の表面が粗化処理されており、硬化物層の粗化処理された表面に上記金属層が積層されている。
【0017】
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法は、回路基板と、該回路基板上に積層された硬化物層と、該硬化物層上に積層された金属層とを備える多層プリント配線板の製造方法であって、回路基板上に、本発明に従って構成された樹脂組成物又は該樹脂組成物をフィルム状にしたBステージフィルムを用いて、硬化物層を形成する工程と、粗化液を用いて上記硬化物層の表面を粗化処理する工程と、上記硬化物層の粗化処理された表面に金属層を形成する工程とを備える。
【0018】
また、本発明に係る多層プリント配線板の製造方法は、回路基板と、該回路基板上に積層された硬化物層と、該硬化物層上に積層された金属層とを備える多層プリント配線板の製造方法であって、回路基板上に、本発明に従って構成された積層フィルムを用いて、該積層フィルムのBステージフィルムにより硬化物層を形成する工程と、該硬化物層を形成する前又は後に、上記積層フィルムの基材を除去する工程と、粗化液を用いて上記硬化物層の表面を粗化処理する工程と、上記硬化物層の粗化処理された表面に金属層を形成する工程とを備える。
【0019】
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法のある特定の局面では、上記硬化物層を形成する工程が、回路基板上に、上記積層フィルムを上記Bステージフィルム側から積層し、ロールラミネーターを用いて加圧した後、平行平板プレス式加熱プレス機を用いて加熱及び加圧し、硬化物層を形成する工程である。
【0020】
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法の他の特定の局面では、ロールラミネーターを用いて加圧した後、かつ平行平板プレス式加熱プレス機を用いて加熱及び加圧する前に、又はロールラミネーターを用いて加圧した後、かつ平行平板プレス式加熱プレス機を用いて加熱及び加圧した後に、上記基材を除去する。
【0021】
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法の別の特定の局面では、上記粗化液として、過マンガン酸溶液が用いられる。
【0022】
本発明に係る多層プリント配線板の製造方法の別の特定の局面では、上記粗化処理の前に、硬化物層の表面を膨潤処理する工程がさらに備えられる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る樹脂組成物は、ビスフェノールS型エポキシ樹脂と、シアネートエステル樹脂と、硬化促進剤と、重量平均分子量が5000以上である高分子量成分と、無機充填剤とを含み、上記ビスフェノールS型エポキシ樹脂100重量部に対して、上記シアネートエステル樹脂の含有量が15〜45重量部であり、樹脂組成物中の上記無機充填剤を除く全成分の合計100重量%中、上記高分子量成分の含有量が0.4〜5重量%であり、樹脂組成物100重量%中、上記無機充填剤の含有量が10〜85重量%であるので、硬化後の硬化物の表面を粗化処理したときに、粗化処理された表面の表面粗さを小さくすることができ、かつ硬化物と金属層との接着強度を高くすることができる。さらに、本発明に係る樹脂組成物は上記組成を有するので、特に上記高分子量成分によって、Bステージフィルム又は硬化物層の厚さを均一にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本願発明者らは、ビスフェノールS型エポキシ樹脂と、シアネートエステル樹脂と、硬化促進剤と、重量平均分子量が5000以上である高分子量成分と、無機充填剤とを含み、上記ビスフェノールS型エポキシ樹脂100重量部に対して、上記シアネートエステル樹脂の含有量が15〜45重量部であり、樹脂組成物中の上記無機充填剤を除く全成分の合計100重量%中、上記高分子量成分の含有量が0.4〜5重量%であり、樹脂組成物100重量%中、上記無機充填剤の含有量が10〜85重量%である組成の採用により、硬化後の硬化物の表面を粗化処理したときに、粗化処理された表面の表面粗さを小さくすることができ、かつ硬化物と金属層との接着強度を高くすることができることを見出した。特にエポキシ樹脂とシアネートエステル樹脂との併用により、硬化物の粗化処理された表面の表面粗さを小さくすることができ、かつ硬化物と金属層との接着強度を高くすることができる。
【0025】
さらに、本願発明者らは、上記組成の採用により、特に上記高分子量成分によって、Bステージフィルム又は硬化物層の厚さを均一にすることができることを見出した。Bステージフィルムの厚さが均一であると、硬化物層の厚さを均一にすることができる。硬化物層の厚さが均一であると、硬化物層が多層に積層されても、接続端子を有する面の平坦性が高くなり、接続信頼性を高めることができる。本発明では、例えば、樹脂組成物の組成に由来して、硬化物層に過度な凹凸が生じ難く、硬化物層の厚みを均一にすることができる。
【0026】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0027】
(樹脂組成物)
本発明に係る樹脂組成物は、ビスフェノールS型エポキシ樹脂と、シアネートエステル樹脂と、硬化促進剤と、重量平均分子量が5000以上である高分子量成分と、無機充填剤とを含む。
【0028】
[ビスフェノールS型エポキシ樹脂]
本発明に係る樹脂組成物に含まれているビスフェノールS型樹脂は、特に限定されない。該ビスフェノールS型エポキシ樹脂は従来公知である。ビスフェノールS型エポキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0029】
上記ビスフェノールS型エポキシ樹脂の市販品としては、DIC社製の「EXA−1514」及び「EXA−1517」、並びにJER社製の「YL7487」及び「YL7459」等が挙げられる。
【0030】
[シアネートエステル樹脂]
本発明に係る樹脂組成物に含まれているシアネートエステル樹脂は、特に限定されない。シアネートエステル樹脂は、硬化剤である。シアネートエステル樹脂は従来公知である。シアネートエステル樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0031】
上記シアネートエステル樹脂としては、ノボラック型シアネート樹脂及びビスフェノール型シアネート樹脂等が挙げられる。上記ビスフェノール型シアネート樹脂としては、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂及びテトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等が挙げられる。
【0032】
上記シアネート化合物の市販品としては、フェノールノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製「PT−30」及び「PT−60」)、並びにビスフェノールAジシアネートがトリアジン化され、三量体とされたプレポリマー(ロンザジャパン社製「BA230」)等が挙げられる。
【0033】
上記ビスフェノールSエポキシ樹脂100重量部に対して、上記シアネートエステル樹脂の含有量は15〜45重量部である。上記ビスフェノールS型エポキシ樹脂100重量部に対して、上記シアネートエステル樹脂の含有量は、好ましくは20重量部以上、好ましくは38重量部以下である。上記シアネートエステル樹脂の含有量が上記下限値以上であると、ガラス転移温度以外のガラス領域で、硬化物の熱線膨張係数を低くすることができ、硬化物の歪み量を小さくすることができる。上記シアネートエステル樹脂の含有量が上記上限値以下であると、硬化物が脆くなり難く、更に粗化処理により硬化物の表面により一層微細な凹凸を形成できる。
【0034】
[高分子量成分]
本発明に係る樹脂組成物に含まれている高分子量成分は、重量平均分子量が5000以上であれば特に限定されない。上記高分子量成分は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0035】
上記高分子量成分としては、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ゴム成分及び有機フィラー等が挙げられる。
【0036】
上記高分子量成分は、ポリビニルアセタール樹脂及びフェノキシ樹脂の内の少なくとも1種を含むことが好ましく、ポリビニルアセタール樹脂及びフェノキシ樹脂の内の少なくとも1種であることがより好ましい。ポリビニルアセタール樹脂又はフェノキシ樹脂の使用により、Bステージフィルム又は硬化物層の厚さをより一層均一にすることができる。本発明に係る樹脂組成物がフェノキシ樹脂を含む場合には、該フェノキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記フェノキシ樹脂は従来公知である。
【0037】
上記フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールS型骨格、ビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、フェノール骨格、ビフェノール骨格又はナフタレン骨格などの骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。上記フェノキシ樹脂の重量平均分子量は5000以上であり、好ましくは300000以下である。
【0038】
上記フェノキシ樹脂の市販品としては、東都化成社製の「YP50」、「YP55」及び「YP70」、並びにジャパンエポキシレジン社製の「1256B40」、「4250」、「4256H40」、「4275」、「YX6954BH30」及び「YX8100BH3」等が挙げられる。
【0039】
本発明に係る樹脂組成物がポリビニルアセタール樹脂を含む場合には、該ポリビニルアセタール樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記ポリビニルアセタール樹脂は従来公知である。上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルブチラール樹脂であることが好ましい。
【0040】
上記ポリビニルアセタール樹脂の市販品としては、エスレックBLシリーズ、エスレックBXシリーズ、エスレックBMシリーズ、エスレックBHシリーズ及びエスレックKSシリーズ(以上いずれも積水化学工業社製)等が挙げられる。
【0041】
本発明に係る樹脂組成物がゴム成分を含む場合には、該ゴム成分は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記ゴム成分として、従来公知のゴム成分を用いることができる。上記ゴム成分としては、アクリルゴム、ニトリルゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム及びスチレン−ブタジエンゴム等が挙げられる。
【0042】
上記ゴム成分の市販品としては、タフテックHシリーズ、タフテックMシリーズ及びタフテックPシリーズ(以上いずれも旭化成社製)等が挙げられる。
【0043】
上記高分子量成分の重量平均分子量は5000以上である。上記高分子量成分の重量平均分子量の上限は特に限定されない。上記高分子量成分の重量平均分子量は、好ましくは10000以上である。上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での値である。
【0044】
上記樹脂組成物中の上記無機充填剤を除く全成分の合計100重量%中、上記高分子量成分の含有量は0.4〜5重量%である。樹脂組成物中の上記無機充填剤を除く全成分の合計100重量%中、上記高分子量成分の含有量は、好ましくは0.7重量%以上、好ましくは2.5重量%以下である。上記高分子量成分の含有量が上記下限値以上であると、Bステージフィルム及び硬化物層の厚さをより一層均一にすることができる。例えば、樹脂組成物のキャスト時の製膜性を高めることができる。上記高分子量成分の含有量が上記上限値以下であると、硬化物の熱線膨張係数を低くすることができ、硬化物の歪み量を小さくすることができる。さらに、上記高分子量成分の含有量が上記上限値以下であると、粗化処理により硬化物の表面に微細な凹凸を形成でき、かつ硬化物と金属層との接着強度をより一層高めることができる。なお、上記高分子量成分は、Bステージフィルムの厚さの均一性に大きく影響する成分である。また、上記高分子量成分の含有量が多いほど、硬化物と金属層との接着強度が低くなる傾向がある。
【0045】
[硬化促進剤]
本発明に係る樹脂組成物に含まれている硬化促進剤は、特に限定されない。該硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0046】
上記硬化促進剤としては、イミダゾール化合物、リン化合物、アミン化合物及び有機金属化合物等が挙げられる。ビスフェノールS型エポキシ樹脂とシアネートエステル樹脂との反応における硬化性を高め、更に樹脂組成物又はBステージフィルムの常温でのポットライフを長くする観点からは、イミダゾール化合物が好ましい。
【0047】
樹脂組成物中の上記無機充填剤を除く全成分の合計100重量%中、上記硬化促進剤の含有量は0.0005〜5重量%であることが好ましい。樹脂組成物中の上記無機充填剤を除く全成分の合計の合計100重量%中、上記硬化促進剤の含有量は、より好ましくは0.02重量%以上、より好ましくは2重量%以下である。上記硬化促進剤の含有量が上記下限値以上であると、硬化むらを抑制してかつ適度な硬化時間で、樹脂組成物又はBステージフィルムを均一に硬化させることができる。上記硬化促進剤の含有量が上記上限値以下であると、樹脂組成物又はBステージフィルムの常温でのポットライフを長くすることができる。
【0048】
[無機充填剤]
本発明に係る樹脂組成物に含まれている無機充填剤は特に限定されない。該無機充填剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0049】
上記無機充填剤としては、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、タルク、クレイ、マイカ、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム等が挙げられる。なかでも、硬化物の粗化処理された表面の表面粗さをより一層小さくし、かつ硬化物と金属層の接着強度をより一層高める観点からは、シリカが好ましく、溶融シリカがより好ましい。無機充填剤は、シリカ粒子であることが好ましい。
【0050】
シリカの形状は特に限定されない。シリカの形状としては、例えば球状又は不定形状等が挙げられる。粗化処理の際に、シリカがより一層脱離しやすいため、シリカは略球状であることが好ましく、真球状であることがより好ましい。
【0051】
上記シリカとしては、天然シリカ原料を粉砕して得られる結晶性シリカ、天然シリカ原料を火炎溶融し、粉砕して得られる破砕溶融シリカ、天然シリカ原料を火炎溶融、粉砕及び火炎溶融して得られる球状溶融シリカ、フュームドシリカ(アエロジル)、及びゾルゲル法シリカなどの合成シリカ等が挙げられる。
【0052】
上記無機充填剤及びシリカは、溶剤に分散された状態でスラリーとして用いられてよい。シリカを含むシリカスラリーを用いた場合には、樹脂組成物の製造の際に、作業性及び生産性を高めることができる。
【0053】
上記無機充填剤の平均粒子径は、0.1〜20μmであることが好ましい。上記無機充填剤の平均粒子径は、より好ましくは0.2μm以上、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは2μm以下である。平均粒子径が異なる2種以上の無機充填剤を用いてもよい。
【0054】
上記平均粒子径として、50%となるメディアン径(d50)の値を採用できる。上記平均粒子径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定できる。
【0055】
上記充填剤は、カップリング剤により表面処理されていてもよい。上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、アミノシラン、イミダゾールシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
【0056】
上記樹脂組成物100重量%中、上記無機充填剤の含有量は10〜85重量%である。上記樹脂組成物100重量%中、上記無機充填剤の含有量は、好ましくは30重量%以上、好ましくは75重量%以下である。上記無機充填剤の含有量が上記下限値以上及び上限値以下であると、硬化物の粗化処理された表面の表面粗さをより一層小さくすることができ、かつ硬化物と金属層との接着強度をより一層高めることができる。
【0057】
[他の成分]
本発明に係る樹脂組成物は、リン含有ベンゾオキサジン化合物を含まないか、又は樹脂組成物中の不揮発成分100重量%中、リン含有ベンゾオキサジン化合物の含有量が2重量%未満であることが好ましい。本発明に係る樹脂組成物は、リン含有ベンゾオキサジン化合物を含まないことが好ましい。樹脂組成物中の不揮発成分100重量%中、リン含有ベンゾオキサジン化合物の含有量が2重量%を超えると、Bステージフィルム及び硬化物層の厚みが不均一になる。樹脂組成物中の不揮発成分100重量%中、リン含有ベンゾオキサジン化合物の含有量が2重量%未満であれば、好ましくは1重量%以下であれば、Bステージフィルム及び硬化物層の厚みをより一層均一にすることができる。上記樹脂組成物がベンゾオキサジン化合物を含まない場合には、Bステージフィルム及び硬化物層の厚みを顕著に均一にすることができる。
【0058】
本発明に係る樹脂組成物は、ビスフェノールS型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を含んでいてもよい。ビスフェノールS型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂としては、アダマンタン構造を有するエポキシ樹脂、ナフタレン構造を有するエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂、アントラセン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールA構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールF構造を有するエポキシ樹脂及びノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ノボラック型エポキシ樹脂は、繰返し構造を有するエポキシ樹脂である。該繰返し構造は、例えばビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビフェノール骨格、ナフタレン骨格又はジシクロペンタジエン骨格を有する構造等が挙げられる。
【0059】
ビスフェノールS型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂が含まれる場合には、ビスフェノールS型エポキシ樹脂100重量部に対して、ビスフェノールS型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂の含有量は、好ましくは30重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。ビスフェノールS型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂の含有量が上記上限値以下であると、ある程度長時間、粗化処理しても、硬化物の粗化処理された表面の凹凸を小さい状態に保つことができる。
【0060】
本発明に係る樹脂組成物は、上記シアネートエステル樹脂以外の硬化剤をさらに含んでいてもよい。該硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0061】
上記硬化剤としては、フェノール化合物、活性エステル化合物、アミン化合物、酸無水物及びジシアンジアミド等が挙げられる。
【0062】
上記活性エステル化合物の具体例としては、ジ(α−ナフチル)イソフタレート等が挙げられる。上記活性エステル化合物の市販品としては、DIC社製「EXB−9451」、「EXB−9451−65T」、「EXB−9460S」、及び「EXB−9460S−65T」等が挙げられる。
【0063】
本発明に係る樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。該熱可塑性樹脂としては、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルサルホン、ポリサルホン及び可溶性熱可塑性ポリイミド等が挙げられる。
【0064】
熱可塑性樹脂が含まれる場合には、樹脂組成物中の無機充填剤を除く全成分100重量%中、熱可塑性樹脂の含有量は0.1〜10重量%であることが好ましい。
【0065】
本発明に係る樹脂組成物は、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤及び消泡剤などを含んでいてもよい。
【0066】
(Bステージフィルム及び積層フィルム)
本発明に係る樹脂組成物が溶剤を含む場合には、該樹脂組成物は、樹脂組成物中の大部分の溶剤を揮発させて用いられることが好ましい。溶剤を揮発させるために、熱による硬化が進行し過ぎない程度に、加熱乾燥すればよい。溶剤を含む樹脂組成物を、例えば90〜180℃で10〜120分間乾燥させることにより、ハンドリング性が良好なBステージフィルムを得ることができる。
【0067】
上記Bステージフィルムは、上記樹脂組成物をフィルム状にすることにより得られる。例えば、Bステージフィルムを得るために、上記樹脂組成物はフィルム状に成形される。
【0068】
上述のような、乾燥工程により得ることができる、ハンドリング性が良好なフィルム状の樹脂組成物をBステージフィルムと称する。更に、ハンドリング性をより一層高めるために、完全硬化に至らない範囲で半硬化状態とされたフィルム状の樹脂組成物もBステージフィルムと称する。
【0069】
上記Bステージフィルムは、半硬化状態にある半硬化物である。半硬化物は、完全に硬化しておらず、硬化がさらに進行され得る。
【0070】
本発明に係る樹脂組成物をフィルム状に成形する方法としては、例えば、押出機を用いて、樹脂組成物を溶融混練し、押出した後、Tダイ又はサーキュラーダイ等により、フィルム状に成形する押出成形法、樹脂組成物を有機溶剤等の溶剤に溶解又は分散させた後、キャスティングしてフィルム状に成形するキャスティング成形法、並びに従来公知のその他のフィルム成形法等が挙げられる。なかでも、薄型化に対応できるので、押出成形法又はキャスティング成形法が好ましい。フィルムには、シートが含まれる。
【0071】
上記Bステージフィルムの固形分100重量部に対して、上記溶剤の含有量の好ましい下限は0.01重量部、より好ましい下限は0.3重量部、好ましい上限は6重量部、より好ましい上限は3重量部である。上記溶剤の含有量が上記範囲内である場合には、Bステージフィルムの表面の粘着性が高くなりすぎず、ハンドリング性を高めることができる。さらに、Bステージフィルムを他の部材に積層した場合に、表面の平坦性を高めることができる。
【0072】
樹脂組成物をフィルム状にし、得られたBステージフィルムを回路の絶縁層として用いる場合、Bステージフィルム及び絶縁層である硬化物層の厚さは、回路を形成する導体層の厚さ以上であることが好ましい。Bステージフィルム及び硬化物層の厚さは、好ましくは5μm以上、好ましくは200μm以下である。
【0073】
本発明に係る樹脂組成物は、Bステージフィルムと、該Bステージフィルムの一方の面に積層された基材とを備える積層フィルムを形成するために好適に用いることができる。積層フィルムにおけるBステージフィルムが、本発明に係る樹脂組成物により形成される。
【0074】
上記積層フィルムにおける上記基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリブチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルムなどのオレフィン樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、並びに銅箔及びアルミニウム箔などの金属箔等が挙げられる。上記基材の表面は、必要に応じて、離型処理されていてもよい。
【0075】
(プリプレグ)
本発明に係る樹脂組成物は、基材に含浸され、プリプレグとされてもよい。該プリプレグは、上記樹脂組成物と、該樹脂組成物を内部に含浸している繊維状基材とを備えることが好ましい。
【0076】
上記基材又は繊維状基材としては、例えば金属、ガラス、カーボン、アラミド、ポリエステル又は芳香族ポリエステル等により形成された織布又は不織布、並びにフッ素系樹脂又はポリエステル系樹脂等により形成された多孔質膜等が挙げられる。
【0077】
(銅張り積層板)
本発明に係る樹脂組成物は、銅張り積層板を得るために好適に用いられる。上記銅張り積層板の一例として、銅箔と、該銅箔の一方の面に積層されたBステージフィルムとを備える銅張り積層板が挙げられる。この銅張り積層板のBステージフィルムが、本発明に係る樹脂組成物により形成される。
【0078】
上記銅張り積層板の上記銅箔の厚さは特に限定されない。上記銅箔の厚さは、1〜50μmの範囲内であることが好ましい。また、Bステージフィルムを硬化した硬化物層と銅箔との接着強度を高めるために、上記銅箔は微細な凹凸を表面に有することが好ましい。凹凸の形成方法は特に限定されない。上記凹凸の形成方法としては、公知の薬液を用いた処理による形成方法等が挙げられる。
【0079】
(多層基板及びプリント基板(多層プリント配線板))
上記樹脂組成物、Bステージフィルム、積層フィルム及びプリプレグは、多層基板又はプリント基板などを得るために好適に用いられ、多層プリント配線板を得るためにより好適に用いられる。
【0080】
上記多層プリント配線板の一例として、回路基板と、該回路基板上に積層された硬化物層とを備える多層プリント配線板が挙げられる。多層プリント配線板は、例えば、2層以上の硬化物層を有する。該プリント配線板における硬化物層が、上記樹脂組成物又は該樹脂組成物をフィルム状にしたBステージフィルムにより形成されている。具体的には、上記硬化物層は、上記樹脂組成物又はBステージフィルムを硬化又は予備硬化させることにより形成される。上記硬化物層には、硬化がさらに進行され得る予備硬化物層も含まれる。上記硬化物層は、絶縁層である。上記硬化物層は、一般的に回路基板の回路が設けられた表面に積層される。
【0081】
上記硬化物層の上記回路基板側とは反対側の表面は、粗化処理されていることが好ましい。粗化処理方法は、従来公知の粗化処理方法を用いることができ特に限定されない。上記硬化物層の表面は、粗化処理の前に膨潤処理されていてもよい。
【0082】
上記硬化物層の表面に微細な凹凸を形成するために、上記硬化物層(予備硬化物層)は粗化処理されることが好ましい。粗化処理の前に、硬化物層は膨潤処理されることが好ましい。硬化物層は、粗化処理される前に、膨潤処理されており、さらに粗化処理の後に硬化されていることが好ましい。ただし、硬化物層は、必ずしも膨潤処理されなくてもよい。
【0083】
上記膨潤処理の方法としては、例えば、硫酸、又はエチレングリコールなどを主成分とする化合物の水溶液又は有機溶媒分散溶液などにより、硬化物層を処理する方法が用いられる。具体的には、例えば、上記膨潤処理は、40重量%エチレングリコール水溶液等を用いて、処理温度30〜85℃で1〜20分間、硬化物層を処理することにより行なわれる。上記膨潤処理の温度は50〜85℃の範囲内であることが好ましい。上記膨潤処理の温度が低すぎると、粗化処理に長時間を要し、更に硬化物層と金属層との接着強度が低くなる傾向がある。
【0084】
粗化処理の前に、硬化物層の表面を膨潤処理することが好ましい。これにより硬化物層の粗化処理された表面の表面粗さをより一層小さくすることができ、かつ硬化物層と金属層との接着強度をより一層高めることができる。膨潤処理には、硫酸を用いることが好ましい。
【0085】
上記粗化処理には、粗化液が用いられる。粗化液としては、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物などの化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。硬化物層の粗化処理された表面の表面粗さをより一層小さくし、硬化物層と金属層との接着強度をより一層高める観点からは、粗化処理には、過マンガン酸溶液が好適に用いられる。
【0086】
上記マンガン化合物としては、過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウム等が挙げられる。上記クロム化合物としては、重クロム酸カリウム又は無水クロム酸カリウム等が挙げられる。上記過硫酸化合物としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム又は過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0087】
上記粗化処理の方法は特に限定されない。上記粗化処理の方法として、例えば、30〜90g/L過マンガン酸又は過マンガン酸塩溶液及び30〜90g/L水酸化ナトリウム溶液を用いて、処理温度30〜85℃及び1〜10分間の条件で、1回又は2回、予備硬化物を処理する方法が好適である。上記粗化処理の温度は50〜85℃の範囲内であることが好ましい。
【0088】
上記のようにして得られた硬化物層の粗化処理された表面の算術平均粗さRaは0.3μm以下であり、かつ十点平均粗さRzは3.0μm以下であることが好ましい。上記粗化処理された表面の算術平均粗さRaは0.2μm以下であることがより好ましい。上記粗化処理された表面の十点平均粗さRzは、2.0μm以下であることがより好ましい。上記算術平均粗さRaが大きすぎると、硬化体の表面に配線が形成された場合に、該配線における電気信号の伝送速度を高速化できないことがある。上記十点平均粗さRzが大きすぎると、硬化体の表面に配線が形成された場合に、該配線における電気信号の伝送速度を高速化できないことがある。算術平均粗さRa及び十点平均粗さRzは、JIS B0601−1994に準拠した測定法により求めることができる。
【0089】
また、上記硬化物層の粗化処理された表面には、金属層が積層されることが好ましい。上記多層プリント配線板は、上記硬化物層の粗化処理された表面に積層された金属層をさらに備えることが好ましい。該金属層は、銅めっき層であることが好ましい。
【0090】
また、上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板上に積層された硬化物層と、該硬化物層の上記回路基板側とは反対側の表面に積層された銅箔とを備える回路基板が挙げられる。上記硬化物層及び上記銅箔が、銅箔と該銅箔の一方の面に積層されたBステージフィルムとを備える銅張り積層板を用いて、上記Bステージフィルムを硬化させることにより形成されていることが好ましい。さらに、上記銅箔はエッチング処理されており、銅回路であることが好ましい。
【0091】
(積層方法)
以下、上記Bステージフィルム又は積層フィルムを、銅張積層板、多層基板又はプリント配線板などの基板上に積層する方法について説明する。
【0092】
上記基板に対して、片面又は両面にBステージフィルムを積層できる。上記基板とBステージフィルムとを積層する方法は、公知の方法を用いることができ、特に限定されない。例えば、回路基板上に、上記Bステージフィルムを積層し、好ましくは上記積層フィルムをBステージフィルム側から積層し、加圧式ラミネーターを用いて加圧する。このとき、加熱してもよく、加熱しなくてよい。次に、平行平板プレス式加熱プレス機を用いて、回路基板とBステージフィルム又は積層フィルムとを加熱及び加圧する。加熱及び加圧により、Bステージフィルムを硬化(予備硬化を含む)させて、硬化物層を形成してもよい。上記加熱の温度及び上記加圧の圧力は適宜変更することができ、特に限定されない。上記加熱の温度の好ましい下限は60℃、より好ましい下限は80℃、好ましい上限は220℃、より好ましい上限は180℃である。上記加圧の圧力の好ましい下限は0.1MPa、より好ましい下限は0.3MPa、好ましい上限は10MPa、より好ましい上限は6MPaである。
【0093】
より具体的な積層方法としては、例えば、ロールラミネーターを用いて、ロール径60mm及びロール周速0.1〜10m/分の速度の条件で、ロール温度を20〜200℃とし、1〜6MPaの圧力で加圧しながら、上記Bステージフィルムを回路基板に積層するか、又は上記積層フィルムをBステージフィルム側から回路基板上に積層する。
【0094】
上記Bステージフィルム又は上記積層フィルムを回路基板に積層した後、160〜200℃で20分〜180分間加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理により、Bステージフィルムを硬化(予備硬化を含む)させて、硬化物層を形成することができる。基材は、硬化物層を形成する前に除去してもよく、硬化物層を形成した後に除去してもよい。
【0095】
このような条件で積層した後に、上記粗化処理を行うことで、硬化物層の表面に微細な凹凸を形成できる。
【0096】
必要に応じて、ロールラミネート後に平行平板加熱プレス機を行い、硬化物層の表面の平滑性を高めてもよい。例えば、平行平板加熱プレス機を用いて、厚さ1mmのステンレス板で、回路基板とBステージフィルム又は積層フィルムとの積層体を加熱及び加圧する。プレス板の温度は80〜200℃程度であり、プレスの圧力は0.1〜10Mpa程度である。
【0097】
なお、加熱加圧式ロールラミネーターなどの加圧式ラミネーター、及び平行平板加熱プレス機などのプレス機として、市販の装置を使用できる。ロールラミネーターによる積層は、真空状態で行うことが好ましい。ロールラミネーターのロールの材質は、表面が軟質なゴムロールや、表面が硬質な金属ロールなどから適宜選択できる。平行平板加熱プレス機の平板の材質は、硬質な金属である。
【0098】
ロールラミネーターのロールと上記回路基板、Bステージフィルム又は積層フィルムとの間、あるいは平行平板加熱プレス機の平板と上記回路基板、Bステージフィルム又は積層フィルムとの間には、離型機能を有するフィルム、例えばアルミ箔、銅箔、ポリエステル樹脂フィルム、フッ素樹脂系フィルムなどを用いることができる。
【0099】
回路基板とBステージフィルム又は積層フィルムとの密着性を高める目的で、ゴムシートなどの柔軟性を有する材料を用いることができる。
【0100】
硬化物層を形成する工程は、回路基板上に、上記積層フィルムを上記Bステージフィルム側から積層し、ロールラミネーターを用いて加圧した後、平行平板プレス式加熱プレス機を用いて加熱及び加圧し、硬化物層を形成する工程であることが好ましい。また、硬化物層を形成する工程は、回路基板上に、上記積層フィルムを上記Bステージフィルム側から積層し、ロールラミネーターを用いて加圧した後、平行平板プレス式加熱プレス機を用いて加熱及び加圧し、硬化物層を形成する工程であり、ロールラミネーターを用いて加圧した後、かつ平行平板プレス式加熱プレス機を用いて加熱及び加圧する前に、又はロールラミネーターを用いて加圧した後、かつ平行平板プレス式加熱プレス機を用いて加熱及び加圧した後に、上記基材を除去することが好ましい。
【0101】
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0102】
(実施例1)
シリカスラリー(アドマテックス社製、溶融シリカ(「SC2050」:平均粒子径0.5μm)70重量%と、ジメチルホルムアルデヒド30重量%)97.1gと、シアネート化合物溶液(ビスフェノールAジシアネートがトリアジン化され、三量体とされたプレポリマー、ロンザジャパン社製「BA230S75」、固形分75重量%、メチルエチルケトン25重量%)8.5gと、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(DIC社製、EXA−1517)25.0gと、積水化学社製、エスレックKS−1、分子量約2.7万(カタログ値)0.3gと、イミダゾール化合物(四国化成社製「C11Z−A」)0.3gとを混合し、均一な溶液となるまで常温で攪拌し、樹脂組成物ワニスを得た。
【0103】
離型処理された透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(リンテック社製「PET5011 550」、厚み50μm)を用意した。このPETフィルム上にアプリケーターを用いて、乾燥後の厚みが50μmとなるように、得られた樹脂組成物ワニスを塗工した。次に、100℃のギアオーブン内で12分間乾燥して、縦200mm×横200mm×厚み50μmのBステージフィルムの未硬化物とポリエチレンテレフタレートフィルムとからなる積層フィルムを作製した。
【0104】
(評価)
(1)算術平均粗粗さRa、十点平均粗さRz及びピール強度(接着強度)
[硬化物Bの作製]
得られた積層フィルムを、Bステージフィルムの未硬化物が、ガラスエポキシ基板(FR−4、品番「CS−3665」、利昌工業社製)側となるようにセットした。積層フィルムとガラスエポキシ基板とを、ダイヤフラムが60℃に加熱された真空加圧式熱ラミネーターを用いて、0.5MPaで加圧し、積層した。
【0105】
次に、積層フィルムとガラスエポキシ基板とを、150℃に加熱した平行平板加熱プレス機を用いて、減圧下で0.5MPaで60分間、加熱及び加圧し、Bステージフィルムを予備硬化させ、一次硬化物を含む積層体を得た。その後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がし、ガラスエポキシ基板と一次硬化物との積層体を得た。その後、一次硬化物を、下記の(a)膨潤処理をした後、下記の(b)過マンガン酸塩処理すなわち粗化処理をし、さらに下記の(c)銅めっき処理をした。
【0106】
(a)膨潤処理:
60℃の膨潤液(スウェリングディップセキュリガントP、アトテックジャパン社製)に、上記積層体を入れて、15分間揺動させた。その後、純水で洗浄した。
【0107】
(b)過マンガン酸塩処理:
80℃の過マンガン酸カリウム(コンセントレートコンパクトCP、アトテックジャパン社製)粗化水溶液に、上記積層体を入れて、15分間揺動させ、ガラスエポキシ基板上に粗化処理された硬化物を得た。得られた硬化物を、23℃の洗浄液(リダクションセキュリガントP、アトテックジャパン社製)により2分間洗浄した後、純粋でさらに洗浄し、粗化処理された硬化物Aを得た。
【0108】
120℃のギアオーブン中で1時間乾燥し、室温23℃で冷却した後、JIS B0601−1994に準拠して、硬化物Aの粗化処理された表面の算術平均粗さRa及び十点平均粗さRzを測定した。
【0109】
(c)銅めっき処理:
次に、ガラスエポキシ基板上の粗化処理された硬化物Aに、無電解銅めっき及び電解銅めっき処理を以下の手順で行った。
【0110】
硬化物Aの表面を、55℃のアルカリクリーナ(クリーナーセキュリガント902)で5分間処理し、脱脂洗浄した。洗浄後、上記硬化物を23℃のプリディップ液(プリディップネオガントB)で2分間処理した。その後、上記硬化物を40℃のアクチベーター液(アクチベーターネオガント834)で5分間処理し、パラジウム触媒を付けた。次に、30℃の還元液(リデューサーネオガントWA)により、硬化物を5分間処理した。
【0111】
次に、上記硬化物を化学銅液(ベーシックプリントガントMSK−DK、カッパープリントガントMSK、スタビライザープリントガントMSK)に入れ、無電解めっきをめっき厚さが0.5μm程度になるまで実施した。無電解めっき後に、残留している水素ガスを除去するため、120℃の温度で30分間アニールをかけた。無電解めっきの工程までのすべての工程は、ビーカースケールで処理液を1Lとし、硬化物を揺動させながら実施した。
【0112】
次に、無電解めっき処理された硬化物に、電解めっきをめっき厚さが25μmとなるまで実施した。電気銅めっきとして硫酸銅(リデューサーCu)を用いて、0.6A/cmの電流を流した。銅めっき処理後、硬化物を180℃で1時間加熱し、硬化させ、銅めっき層が形成された硬化物Bを得た。
【0113】
[ピール強度の測定方法]
上記銅めっき層が形成された硬化物Bの銅めっき層の表面に10mm幅に切り欠きを入れた。その後、引張試験機(商品名「オートグラフ」、島津製作所社製)を用いて、クロスヘッド速度5mm/分の条件で、銅めっき層と硬化体との接着強度を測定し、得られた測定値をピール強度とした。
【0114】
(2)最低溶融粘度
積層フィルムからポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がし、Bステージフィルムを170℃のギアオーブン内で1時間加熱して、一次硬化物を作製した。
【0115】
得られた一次硬化物を、3mm×25mmの大きさに裁断した。DMA(セイコーインスツルメンツ社製「DMA/DMS6100」)を用いて、周波数1Hz、歪22%、昇温速度5℃/分の条件で、裁断された一次硬化物を25℃から190℃まで昇温し、最低溶融粘度を測定した。
【0116】
(3)厚みの均一性(埋め込み性)
銅張り積層板(厚さ150μmのガラスエポキシ基板と厚さ25μmの銅箔との積層体)に、直径150μm及び深さ50μmの25個の穴を、直線上にかつ隣接する穴の中心の間隔が500μmになるように開けて、穴開き基板を得た。
【0117】
穴開き基板上に上記積層フィルムをBステージフィルム側から重ねて、名機製作所製真空加圧式ラミネーター機(型番MVLP−500)を用い、ラミネート圧0.4MPaで20秒、プレス圧力0.8MPaで20秒、ラミネート及びプレスの温度90℃で加熱加圧した。常温で冷却した後、ポリエチレンテレフタレート製フィルムを剥離した。このようにして、穴開き基板上にBステージフィルムの未硬化物が積層されている積層体を得た。
【0118】
得られた積層体において、穴開き基板の穴がない部分に対応する未硬化物部分を標準として、穴開き基板の穴がある部分に対応する未硬化物部分の上面の凹みの程度を測定した。なお、凹凸の計測は、表面粗さ計(商品名「SJ−301」、ミツトヨ社製)により行った。
【0119】
穴開き基板の穴がある部分に対応する未硬化物部分25箇所中、凹みが無い箇所と、凹みがあるものの、穴の中心線上の凹みの深さが1μm以内である箇所との合計数T1を数えて、埋め込み性1を下記の判定基準で判定した。合計数T1が多いほど、穴に対する埋め込み性が優れていることを示す。
【0120】
[埋め込み性1の判定基準]
A:合計数T1が25
B:合計数T1が23〜24
C:合計数T1が20〜22
D:合計数T1が0〜19
【0121】
銅張り積層板(厚さ150μmのガラスエポキシ基板と厚さ25μmの銅箔との積層体)を用意した。銅箔をエッチング処理し、L/Sが50μm/50μm及び長さが1cmである銅パターンを26本作製し、凹凸基板を得た。
【0122】
凹凸基板上に上記積層フィルムをBステージフィルム側から重ねて、名機製作所製真空加圧式ラミネーター機(型番MVLP−500)を用い、ラミネート圧0.4MPaで20秒、プレス圧力0.8MPaで20秒、ラミネート及びプレスの温度90℃で加熱加圧した。常温で冷却した後、ポリエチレンテレフタレート製フィルムを剥離した。このようにして、凹凸基板上にBステージフィルムの未硬化物が積層されている積層体を得た。
【0123】
得られた積層体において、凹凸基板の銅パターンがある部分に対応する未硬化物部分を標準として、凹凸基板の銅パターン間の銅パターンがない部分に対応する未硬化物部分の上面の凹みの程度を測定した。なお、凹凸の計測は、表面粗さ計(商品名「SJ−301」、ミツトヨ社製)により行った。
【0124】
凹凸基板の銅パターンがない部分に対応する未硬化物部分25箇所中、凹みが無い箇所と、凹みがあるものの、銅パターン間の中央線上の凹みの深さが1μm以内である箇所との合計数T2を数えて、埋め込み性2を下記の判定基準で判定した。合計数T2が多いほど、凹凸に対する埋め込み性が優れていることを示す。
【0125】
[埋め込み性2の判定基準]
A:合計数T2が25
B:合計数T2が23〜24
C:合計数T2が20〜22
D:合計数T2が0〜19
【0126】
実施例1で得られた積層フィルムを用いた上記評価結果に関しては、算術平均粗さRaは50nm、十点平均粗さRzは800nm、接着強度は0.8N/cm、最低溶融粘度は10Pa・s以下、埋め込み性1は「A」、埋め込み性2は「A」であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスフェノールS型エポキシ樹脂と、シアネートエステル樹脂と、硬化促進剤と、重量平均分子量が5000以上である高分子量成分と、無機充填剤とを含み、
前記ビスフェノールS型エポキシ樹脂100重量部に対して、前記シアネートエステル樹脂の含有量が15〜45重量部であり、
樹脂組成物中の前記無機充填剤を除く全成分の合計100重量%中、前記高分子量成分の含有量が0.4〜5重量%であり、
樹脂組成物100重量%中、前記無機充填剤の含有量が10〜85重量%である、樹脂組成物。
【請求項2】
リン含有ベンゾオキサジン化合物を含まないか、又は樹脂組成物中の不揮発成分100重量%中、リン含有ベンゾオキサジン化合物の含有量が2重量%未満である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
リン含有ベンゾオキサジン化合物を含まない、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記高分子量成分が、ポリビニルアセタール樹脂及びフェノキシ樹脂の内の少なくとも1種を含む、請求項1〜3のいずれか1項に樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物をフィルム状にすることにより得られるBステージフィルム。
【請求項6】
請求項5に記載のBステージフィルムと、
前記Bステージフィルムの一方の面に積層された基材とを備える、積層フィルム。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物と、
前記樹脂組成物を内部に含浸している繊維状基材とを備える、プリプレグ。
【請求項8】
回路基板と、
前記回路基板上に積層された硬化物層とを備え、
前記硬化物層が、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物又は該樹脂組成物をフィルム状にしたBステージフィルムにより形成されている、多層プリント配線板。
【請求項9】
前記硬化物層上に積層された金属層をさらに備え、
前記硬化物層の表面が粗化処理されており、前記硬化物層の粗化処理された表面に前記金属層が積層されている、請求項8に記載の多層プリント配線板。
【請求項10】
回路基板と、該回路基板上に積層された硬化物層と、該硬化物層上に積層された金属層とを備える多層プリント配線板の製造方法であって、
回路基板上に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物又は該樹脂組成物をフィルム状にしたBステージフィルムを用いて、硬化物層を形成する工程と、
粗化液を用いて硬化物層の表面を粗化処理する工程と、
硬化物層の粗化処理された表面に金属層を形成する工程とを備える、多層プリント配線板の製造方法。
【請求項11】
回路基板と、該回路基板上に積層された硬化物層と、該硬化物層上に積層された金属層とを備える多層プリント配線板の製造方法であって、
回路基板上に、請求項6に記載の積層フィルムを用いて、該積層フィルムのBステージフィルムにより硬化物層を形成する工程と、
前記硬化物層を形成する前又は後に、前記積層フィルムの基材を除去する工程と、
粗化液を用いて硬化物層の表面を粗化処理する工程と、
硬化物層の粗化処理された表面に金属層を形成する工程とを備える、多層プリント配線板の製造方法。
【請求項12】
前記硬化物層を形成する工程が、回路基板上に、前記積層フィルムを前記Bステージフィルム側から積層し、ロールラミネーターを用いて加圧した後、平行平板プレス式加熱プレス機を用いて加熱及び加圧し、硬化物層を形成する工程である、請求項11に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項13】
ロールラミネーターを用いて加圧した後、かつ平行平板プレス式加熱プレス機を用いて加熱及び加圧する前に、又はロールラミネーターを用いて加圧した後、かつ平行平板プレス式加熱プレス機を用いて加熱及び加圧した後に、前記基材を除去する、請求項12に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項14】
前記粗化液として、過マンガン酸溶液を用いる、請求項10〜13のいずれか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項15】
前記粗化処理の前に、硬化物層の表面を膨潤処理する工程をさらに備える、請求項10〜14のいずれか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。

【公開番号】特開2011−213794(P2011−213794A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81286(P2010−81286)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】