機能素子およびその製造方法、流体吐出装置、並びに印刷装置
【課題】安定した流体噴射特性を確実に得られるようにすべく、壁体形成の際の形状ばらつきを小さく抑えることのできる機能素子を提供する。
【解決手段】中空構造部分15を形成するための開口18と、その開口18を封止する封止膜19と、その封止膜12上に形成される壁体23とを具備し、前記封止膜19が上面部19aと傾斜を有した側壁部19bとを備えてなる機能素子において、前記壁体23の両側面の間の幅が、前記上面部19aの形成幅よりも狭く、または前記上面部19aと前記側壁部19bとを含む前記封止膜19の最大形成幅よりも所定値以上広くなるように、当該壁体23を形成する。
【解決手段】中空構造部分15を形成するための開口18と、その開口18を封止する封止膜19と、その封止膜12上に形成される壁体23とを具備し、前記封止膜19が上面部19aと傾斜を有した側壁部19bとを備えてなる機能素子において、前記壁体23の両側面の間の幅が、前記上面部19aの形成幅よりも狭く、または前記上面部19aと前記側壁部19bとを含む前記封止膜19の最大形成幅よりも所定値以上広くなるように、当該壁体23を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空構造部分を有した機能素子およびその製造方法、並びに、その機能素子を用いて構成された流体吐出装置および印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄膜形成技術により形成される、中空構造部分を有した機能素子が利用されつつある。「薄膜形成技術」とは、例えば半導体製造プロセスにてシリコン半導体基板に微細加工を施す際に用いられるもののように、蒸着、スパッタ、エッチング等を行って薄膜を形成するための技術をいう。また、「中空構造部分を有した機能素子」とは、中空構造部分の内部素子またはその構造部分の内面若しくは表面が、入力信号に対して何らかの応答を示すように構成された素子のことをいい、中空構造部分に何らかの気体、液体または固体が注入されている場合も含む。中空構造部分は、完全に密閉されている場合と、一部開放されている場合とがある。このような機能素子の一例としては、いわゆるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)が知られている。
【0003】
ここで、中空構造部分を有した機能素子が用いられる一具体例として、プリンタやファクシミリ等の印刷装置を構成するインクジェットヘッド(流体吐出装置)を例に挙げ、その構成について簡単に説明する。インクジェットヘッドは、インク液を吐出するノズルと、このノズルに連通するインク液の流路と、この流路内のインク液を加圧するアクチュエータとを備え、アクチュエータを駆動することでインク液に対する加圧を行ってノズルからインクを吐出させるようにしたものである。従来、このインクジェットヘッドを構成するアクチュエータとして、中空構造部分を有した機能素子を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。詳しくは、例えば図11に示すように、インク液の流路の一部を中空構造部分51の存在によって変形可能な振動板52によって形成するとともに、この振動板52に対向して個別電極53を配設し、振動板52と個別電極53との間に電界を印加することで静電力を発生させて振動板52を変形させ、これにより液室54内の圧力や体積を変化させることによってノズル55からインク液を吐出させるのである。
【0004】
このような機能素子において、振動板52が変形(振動)するために必要となる中空構造部分51は、一般に、いわゆる犠牲層エッチングを行うことによって形成される。そのためには犠牲層をエッチングするための開口56が必要となるが、インクジェットヘッドのようにインク液(液体)を取り扱う場合には、その液体の中空構造部分51への流入を防止するために開口56が封止膜57によって封止される。そして、封止膜57は、振動板52の振動特性に影響を及ぼさないようにすべく、その形成範囲が開口56の近傍に留まるようなパターニングがされる。また、振動板52の上方に位置する液室54の側壁を構成する流路壁(壁体)58についても、振動板52の振動特性に影響を及ぼさないようにすべく、封止膜57上に重ねて形成される。
【0005】
【特許文献1】特許第2854876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したインクジェットヘッドのように微量の流体を吐出させる流体吐出装置においては、安定した流体噴射特性を得るために、インク液等の吐出流体に対する加圧が行われる液室54内の抵抗値の安定化、すなわち吐出流体の流路を構成する壁体58の形状ばらつきを小さく抑えることが非常に重要である。
【0007】
このことから、壁体58の形成にあたっては、薄膜形成技術により形成する場合であっても、シリコン等の母材をエッチングにより削ることで形成するのではなく、壁体58を感光性材料、例えば感光性樹脂または感光性ガラスで形成することによってエッチング工程を不要とし、エッチング幅およびエッチング深さのばらつきを除外し、これによりこのパラメータによる流路抵抗値のばらつきを無くすことが考えられる。
【0008】
ところが、壁体58の下方に位置する封止膜57は、例えば公知のリソグラフィ技術を利用してパターニングされるが、例えば図12に示すように、そのパターニングによって形成される側壁が傾斜θを有した側壁面となってしまい、その断面形状が上面部から下方に向かって広がる台形状に形成されることが考えられる。また、断面形状が上面部から下方に向かって狭くなる台形状に形成されることも考えられる。つまり、封止膜57は、上面部と傾斜θを有した側壁部とを備えた断面台形状に形成されるのである。
【0009】
したがって、壁体58を感光性材料とする場合には、例えば図13に示すように、その感光性材料を露光する際に露光用マスク59を通過した光が、封止膜57の側壁部で乱反射を起こしてしまうおそれがある。このような露光光の乱反射は、その影響が壁体58の形成に及んでしまい、その結果壁体58の形状が大きくばらついて、安定した流体噴射特性を得ることが困難になる要因となる。
【0010】
そこで、本発明は、安定した流体噴射特性を確実に得られるようにすべく、壁体形成の際の形状ばらつきを小さく抑えることのできる機能素子およびその製造方法、流体吐出装置、並びに印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するための案出された機能素子である。すなわち、中空構造部分を形成するための開口と、当該開口を封止する封止膜と、当該封止膜上に形成される壁体とを具備し、前記封止膜が上面部と傾斜を有した側壁部とを備えてなる機能素子において、前記壁体は、その両側面の間の幅が、前記上面部の形成幅よりも狭く、または前記上面部と前記側壁部とを含む前記封止膜の最大形成幅よりも所定値以上広く形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明は、上記目的を達成するための案出された機能素子の製造方法である。すなわち、中空構造部分を形成するための開口と、当該開口を封止する封止膜と、当該封止膜上に形成される壁体とを具備し、前記封止膜が上面部と傾斜を有した側壁部とを備えてなる機能素子の製造方法において、前記壁体の両側面の間の幅が、前記上面部の形成幅よりも狭く、または前記上面部と前記側壁部とを含む前記封止膜の最大形成幅よりも所定値以上広くなるように、当該壁体を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記目的を達成するための案出された流体吐出装置である。すなわち、中空構造部分を形成するための開口と、当該開口を封止する封止膜と、当該封止膜上に形成される壁体とを具備するとともに、前記封止膜が上面部と傾斜を有した側壁部とを備えてなる機能素子を用いて構成された流体吐出装置において、前記壁体は、その両側面の間の幅が、前記上面部の形成幅よりも狭く、または前記上面部と前記側壁部とを含む前記封止膜の最大形成幅よりも所定値以上広く形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明は、上記目的を達成するための案出された印刷装置である。すなわち、中空構造部分を形成するための開口と、当該開口を封止する封止膜と、当該封止膜上に形成される壁体とを具備するとともに、前記封止膜が上面部と傾斜を有した側壁部とを備えてなる機能素子を、流体吐出装置として用いて構成された印刷装置において、前記壁体は、その両側面の間の幅が、前記上面部の形成幅よりも狭く、または前記上面部と前記側壁部とを含む前記封止膜の最大形成幅よりも所定値以上広く形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
上記構成の機能素子、上記手順の機能素子の製造方法、上記構成の流体吐出装置、および上記構成の印刷装置において、「上面部の形成幅」とは、上面部と傾斜を有した側壁部とを備えて断面台形状に形成された封止膜(例えば図12参照)における上面部の形成幅、すなわち台形状における上辺の距離(例えば図12中におけるA参照)をいう。また、「上面部と側壁部とを含む最大形成幅」とは、その台形状における長辺の距離(例えば図12中におけるB参照)をいう。この長辺は、封止膜が上面部から下方に向かって広がる台形状の場合にはその台形下辺が該当するが、封止膜が上面部から下方に向かって狭くなる台形状の場合にはその台形上辺が該当することになる。なお、上辺と下辺が同一の場合には、どちらを長辺としても構わない。さらに、「所定値」とは、壁体の形成材料や壁体形成時の露光光強度等といった形成条件に基づいて予め設定された値をいい、例えば壁体の形成材料中にて露光光に対する反射光の強度が減衰し得る距離値がこれに相当する。
したがって、封止膜上に形成される壁体の両側面の間の幅が、上面部の形成幅よりも狭く、または上面部と側壁部とを含む最大形成幅よりも所定値以上広く形成されていれば、壁体の両側面が側壁部を避けて配置されることになる。つまり、その壁体の形成時に例えば感光性材料への露光を利用する場合であっても、その露光光の側壁部での乱反射の影響が壁体の形成に及んでしまうことがない。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、封止膜が傾斜を有した側壁部を備えていても、その側壁部を避けて壁体の両側面が配置されるので、その側壁部で露光光が乱反射する影響が壁体の形成に及んでしまうことがなく、壁体を形成する際の形状ばらつきを小さく抑えられる。したがって、例えばその壁体により吐出流体の流路を構成した場合には、流路抵抗ばらつきを低減できることとなる。つまり、流体吐出装置に用いれば、安定した流体噴射特性が得られるようになり、吐出対象流体の吐出方向むらに起因する印画むらや、吐出対象流体の吐出速度ばらつきに起因する印画むら等を低減することが可能となる。また、圧電、静電方式の振動板の振動面上まで流路壁が乗り上げてしまうと振幅を大幅に低減することになり、吐出速度が低下する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づき本発明に係る機能素子およびその製造方法、流体吐出装置、並びに印刷装置について説明する。
【0018】
〔流体吐出装置および印刷装置の説明〕
はじめに、機能素子の説明に先立ち、その機能素子を用いて構成された流体吐出装置および印刷装置について説明する。
【0019】
先ず、印刷装置について説明する。印刷装置としては、その一例として、インクジェットプリンタ装置が知られている。図1は、インクジェットプリンタ装置の概要を示す説明図である。インクジェットプリンタ装置は、インクを細かい粒状にして用紙に吐出することで、写真画質の印刷物を高速で印刷出力するものである。このようなインクジェットプリンタ装置には、大別すると、シリアルヘッド方式のものと、ラインヘッド方式のものとがある。
【0020】
シリアルヘッド方式のものでは、図1(a)に示すように、印刷対象物である用紙1をその主走査方向に送るローラ2と、その用紙1の副走査方向に移動可能なキャリッジ3に搭載されたインクジェットヘッド4とを備えている。そして、用紙1およびキャリッジ3を移動させつつ、インクジェットヘッド4が用紙1にインクを吐出することで、印刷出力を行うようになっている。
一方、ラインヘッド方式のものでは、図1(b)に示すように、用紙1をその主走査方向に送るローラ2と、その用紙1の副走査方向に沿ってインクの吐出口がライン状に配されたインクジェットヘッド5とを備えている。そして、用紙1を移動させつつ、インクジェットヘッド5の各吐出口から用紙1にインクを吐出することで、印刷出力を行うようになっている。
なお、上述したインクジェットプリンタ装置の構成は、印刷装置の一例であり、流体を吐出させるヘッド部と印刷対象物の相対位置を変化させることで印刷を行うことができれば、この構成にはこだわらない。
【0021】
ところで、インクジェットプリンタ装置に対しては、シリアルヘッドまたはラインヘッドのいずれの方式であっても、さらに高い画質を高速に印刷するというニーズに対応するため、消費電力を増加させず、吐出性能を落とさずに、さらに画素数の高密度化を実現することが求められている。このような要求に応えるべく、インクジェットプリンタ装置の中には、静電MEMS方式によるインクジェットヘッド4,5を用いて構成されたものがある。静電MEMS方式によるものでは、インクジェットヘッド4,5が、中空構造部分を有した機能素子を用いて構成されており、その機能素子における振動を圧力印加手段として利用することで、用紙1へのインクの吐出を行うようになっている。なお、インクジェットプリンタ装置におけるインクジェットヘッド4,5以外の構成要素については、公知技術により実現すればよいため、ここではその説明を省略する。
【0022】
続いて、インクジェットプリンタ装置に用いられるインクジェットヘッド、すなわち機能素子を用いて構成される流体吐出装置の一具体例について説明する。ただし、ここでは、シリアルヘッド方式とラインヘッド方式との別に関係なく、機能素子を用いて構成された流体吐出装置としてのインクジェットヘッドの要部についてのみ説明する。図2〜5は本発明に係る流体吐出装置の要部構成の一例を示す模式図であり、図2はその斜視図、図3はその平面図、図4,5はその側断面図である。
【0023】
図2に示すように、ここで説明するインクジェットヘッドは、大別すると、微小流体駆動部10と、流体供給部20とを備えている。このうち、微小流体駆動部10は、静電気力により駆動(振動)される複数の振動板11を高密度に並列配置してなるものである。一方、流体供給部20は、各振動板11上に対応する位置に配され、流体であるインク液21が溜められる圧力室(いわゆるキャビティ)22と、その圧力室22を形成するための外壁となる流路壁23およびノズル板24と、圧力室22内のインク液21を外部に吐出するための吐出部(いわゆるノズル)25と、を備えてなるものである。
【0024】
また、微小流体駆動部10は、図3〜5に示すように、基板12上に、導電性物質薄膜からなる共通の基板側電極13が形成され、その基板側電極13の表面に絶縁膜14が形成され、この基板側電極13に対向するように中空構造の空間(以下「中空構造部分」という)15を挟んで各々独立に駆動される複数の振動板側電極16および振動板11が一体かつ並列に配置され、さらに各振動板11を両持ち梁で支持するように支柱17aが基板12上に形成されて、構成されたものである。
【0025】
このうち、基板12は、例えばシリコン基板12a上にシリコン酸化膜等による絶縁膜12bを形成したものを用いることが考えられるが、その他にも、ガリウム砒素(GaAs)等の半導体基板上に絶縁膜を形成したものや、石英基板を含むガラス基板のように絶縁性を有したものを用いるようにしてもよい。
【0026】
基板側電極13は、例えば不純物をドーピングした多結晶シリコン膜で形成することが考えられるが、金属膜(例えばPt、Ti、Al、Au、Cr、Ni、Cu等の蒸着膜)やITO(Indium Tin Oxide)膜等で形成されたものであってもよい。また、振動板側電極16についても同様に、不純物ドープの多結晶シリコン膜、金属膜、ITO膜等で形成すればよい。
【0027】
振動板11は、絶縁膜で形成されたものであるが、特に高い反発力が得られるシリコン窒化膜(SiN膜)で形成するのが好ましい。ただし、振動板11は、SiN膜の上面および下面にシリコン酸化膜が形成されて、実質的にこれらの各膜の積層によって構成される。また、振動板11は、例えば短冊状に形成され、その両側に長手方向に沿って夫々所定間隔(支柱間ピッチ)を置いて形成された複数の支柱17aによって支持されている。この所定間隔は2μm以上、10μm以下が好ましく、5μm程度が最適である。そして、並列配置されたうちの隣り合う振動板11は、支柱17aを介して連続して形成され、かつ、支柱17aも振動板11と同じ材料で一体に形成されている。したがって、振動板11と基板側電極13間の空間を構成する中空構造部分15は、並列する複数の振動板11の間で連通していることになり、また密閉空間になるように形成されたものとなる。
【0028】
また、各振動板11の支柱17aの近傍、具体的には例えば一つの振動板11の長手方向に沿う各支柱17a間には、中空構造部分15を形成するための犠牲層エッチングを行う際に利用する開口18が形成される。開口18の大きさは、小さいほど閉塞し易いことから、□2μm以下とすることが考えられるが、犠牲層エッチングがドライエッチングの場合であれば、□0.5μmでも十分である。
【0029】
この開口18は、犠牲層エッチングの後には、封止膜19によって閉塞される。封止膜19については、その詳細を後述する。
【0030】
なお、振動板11には、絶縁膜を介して振動板側電極16が接合されており、しかもその振動板11の折曲された下面凹部内に挿入されるように振動板側電極16が配設されているものとする。また、振動板11の下方には、当該振動板11が薄く形成された場合の反発力を高めるべく、支柱(いわゆるアンカー)17aと合わせて、その中央部直下近傍に補助支柱(いわゆるポスト)17bを形成してもよい。
【0031】
このような微小流体駆動部10に対し、流体供給部20は、その微小流体駆動部10における各振動板11の振動特性に影響を及ぼさない位置、具体的には開口18を閉塞する封止膜19上に流路壁23が位置するように配設される。この流路壁23の位置については、その詳細を後述する。
【0032】
このような微小流体駆動部10および流体供給部20によって、インクジェットヘッドが構成されているのである。なお、微小流体駆動部10上に配設された流体供給部20の圧力室22には、その圧力室22内へのインク液21の供給を行うために、図示せぬ流体供給路が連通しているものとする。
【0033】
ここで、以上のような構成のインクジェットヘッドにおける処理動作を説明する。インクジェットヘッドでは、微小流体駆動部10における基板側電極13と振動板側電極16との間に所要の電圧を印加すると、図6(a)に示すように、各電極間に静電引力が発生して、振動板側電極16と一体な振動板11が基板側電極13の側に撓む。逆に、基板側電極13と振動板側電極16との間への電圧印加を開放すると、図6(b)に示すように、振動板11が静電引力から開放され、自身の復元力により減衰振動する。この振動板11の上下振動に伴う流体供給部20における圧力室22の容積変動で、インクジェットヘッドでは、圧力室22内のインク液21がノズル25から外部に吐出され、また圧力室22内へ流体供給路を通じてインク液21が供給されるのである。
【0034】
このとき、振動板11が基板側電極13の側に撓むと、中空構造部分15が閉空間であるため、その中空構造部分15内の空気は圧縮されて、振動板11の撓みを阻害しようとする。ところが、振動板11が支柱17a、補助支柱17a等による支持構造であれば、隣接する振動板11の下の中空構造部分15内に圧縮された空気を逃がすことができ、結果として十分に振動板11を撓ませることが可能となる。
【0035】
〔機能素子の説明〕
次に、以上のような構成のインクジェットヘッドにおいて用いられる機能素子、すなわち本発明に係る機能素子について、さらに詳しく説明する。機能素子は、既に説明したように、中空構造部分を有した素子の全てを含むが、その一例としてインクジェットヘッドにおいて用いられるもの、すなわち図7に示すようなものがある。図7は、本発明に係る機能素子の概略構成の一例を示す説明図である。
【0036】
図例のように、ここで説明する機能素子は、中空構造部分15を有することによって、その中空構造部分15を覆う層が振動板11を構成することになり、基板側電極13に電圧を印加して当該振動板11を振動させ得るようになるのである。
【0037】
中空構造部分15は、犠牲層エッチングによって形成されたものである。すなわち、中空構造部分15が形成される箇所に犠牲層となるエッチング層を積層し、さらにそのエッチング層の表面に開口18を持つ耐エッチング層を積層し、その開口18からエッチング層をエッチングして除去した後に、当該除去に利用した開口18を封止することで形成されたものである。このとき、エッチングされる犠牲層としては、エッチャントによって犠牲層以外の層の構成材料との選択比が取れるものを選択する。ただし、中空構造部分15の形成は、必ずしも犠牲層エッチングに限定されることはなく、他の公知の形成方法を用いても構わない。
【0038】
開口18は、その形成箇所に封止膜19が成膜されることによって封止されている。この封止膜19による開口18の封止は、蒸着、スパッタまたはPECVD(plasma-enhanced chemical vapor deposition)のいずれかによって行うことが考えられる。また、封止膜19の形成材料としては、成形加工の容易さから、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、銅(Cu)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、コバルト(Co)、タンタル(Ta)、白金(Pt)、金(Au)、タングステン(W)、ケイ素(Si)等の金属類やその合金類、SiO2等の酸化膜、または窒化膜等が挙げられるが、予め成形したセラミックや樹脂等を接合して用いることもできる。
【0039】
ただし、封止膜19は、振動板11の振動特性に影響を及ぼさないようにすべく、その形成範囲が開口18の近傍に留まるようなパターニングがされているものとする。このパターニングは、振動板11との選択比の問題とドライエッチングでもかまわないが、ドライエッチングによる振動板11の破壊を防ぐため、例えば公知のウェットエッチングプロセスを利用して行うことが好ましい。したがって、封止膜19の形成材料も、ウェットエッチングプロセスによって成形可能な金属を選択する。
【0040】
ところで、封止膜19のパターニングをウェットエッチングプロセスを利用して行うと、通常、そのパターニングによって形成される封止膜19の側壁部19bは、傾斜角θを伴う。すなわち、封止膜19は、上面部19aと傾斜θを有した側壁部19bとを備えており、その断面が台形状に形成される。なお、台形状は、上面部19aから下方に向かって広がるものであっても、また上面部19aから下方に向かって狭くなるものであってもよい。
【0041】
そして、この封止膜19の上には、圧力室22を構成する流路壁(壁体)23が形成されている。この壁体23についても、振動板11の振動特性に影響を及ぼさないようにすべく、封止膜19上に重ねて形成されるようなパターニングがされているものとする。このことから、壁体23は、例えば感光性樹脂または感光性ガラスといった感光性材料によって形成されているものとする。これは、エッチング処理では側壁面を垂直に近い形状に成形したりばらつきを抑えることが非常に困難であるのに対して、感光性材料を用いれば、エッチング処理が不要となり、エッチング幅およびエッチング深さのばらつきを除外し得るからである。
【0042】
ところで、壁体23を感光性材料によって形成する場合には、その感光性材料を露光する際に露光用マスクを通過した光が、封止膜の側壁部(傾斜面)で乱反射を起こしてしまうおそれがある(例えば図13参照)。このような露光光の乱反射は、その影響が壁体23の形成に及んでしまい、その結果壁体23の形状が大きくばらついて、安定した流体噴射特性を得ることが困難になる要因となる。
【0043】
このことから、壁体23は、例えば図7(a)に示すように、その両側面の間の幅が、封止膜19における上面部19aの形成幅よりも狭く形成されているものとする。ここで、「上面部19aの形成幅」とは、台形状に形成された封止膜19における当該台形上辺の距離をいう(図中A参照)。つまり、壁体23の両側面の間の幅を「C」とすると、A>Cとなっている。
【0044】
また、壁体23は、例えば図7(b)に示すように、その両側面の間の幅が、封止膜19における上面部19aと側壁部19bとを含む最大形成幅よりも所定値以上広く形成されていてもよい。ここで、「上面部19aと側壁部19bとを含む最大形成幅」とは、台形状に形成された封止膜19における当該台形長辺の距離をいう(図中B参照)。この長辺は、封止膜19が上面部19aから下方に向かって広がる台形状の場合にはその台形下辺が該当するが、封止膜19が上面部19aから下方に向かって狭くなる台形状の場合にはその台形上辺が該当することになる。なお、上辺と下辺が同一の場合には、どちらを長辺としても構わない。さらに、「所定値」とは、壁体23の形成材料や壁体形成時の露光光強度等といった形成条件に基づいて予め設定された値をいい、例えば壁体の形成材料中にて露光光に対する反射光の強度が減衰し得る距離値がこれに相当する(図中D参照)。具体的には、実験等を通じて得た経験則に基づき、D≧1μm、好ましくはD=3μm程度とすることが考えられる。
【0045】
このように、壁体23は、その両側面の間の幅が、上面部19aの形成幅よりも狭く形成されているか、または上面部19aと側壁部19bとを含む最大形成幅よりも所定値以上広く形成されているかの、いずれかとなっている。つまり、壁体23は、その両側の壁面のいずれも、封止膜19の側壁部19bを避けて配置されている。そのため、壁体23が感光性材料によって形成されていても、その壁体23の形成時に用いる露光光の側壁部19bでの乱反射の影響が、その壁体23の形成に及んでしまうことがなく、壁体23を形成する際の形状ばらつきを小さく抑えられるようになる。
【0046】
したがって、壁体23が圧力室22を構成する場合であっても、その圧力室22内におけるインク液21への抵抗ばらつきを低減することができ、その結果ノズル25から外部に吐出するインク液21について安定した流体噴射特性が得られるようになる。つまり、本実施形態で説明した機能素子を用いてインクジェットヘッドを構成すれば、インク液21の吐出方向むらに起因する印画むらや、インク液21の吐出速度ばらつきに起因する印画むら等を低減して、安定した流体噴射特性を確実に得られるようになる。
【0047】
〔機能素子の製造方法の説明〕
次に、以上のように構成された機能素子の製造方法について説明する。ただし、ここでは、主に、中空構造部分15、封止膜19および壁体23の形成の手順について説明する。図8は、本発明に係る機能素子の製造方法の概要を示す説明図である。
【0048】
機能素子の製造にあたっては、先ず、図8(a)に示すように、振動板11に形成された開口18からの犠牲層エッチングにより中空構造部分15を形成する。ただし、犠牲層エッチングではなく、他の公知の形成方法を用いても構わない。なお、振動板11の膜厚は、犠牲層をエッチングしたことによって生じる撓みや応力、封止膜19を形成することで生じる撓みや応力等を考慮して決定しているものとする。
【0049】
中空構造部分15を形成した後は、続いて、封止膜19を形成する。すなわち、図8(b)に示すように、振動板11の上に、蒸着、スパッタまたはPECVDによって封止膜19の形成材料を成膜した後、図8(c)に示すように、その成膜された層19′に対して例えばウェットエッチングプロセスを利用したパターニングを行い、封止膜19を形成する。
【0050】
この封止膜19の上には、図8(d)に示すように、外気や流体等の侵入を防止するためのカバー層31を成膜してもよい。カバー層31で封止膜19を覆えば、その封止膜19による開口18の封止が、より一層確実なものとなるからである。このようなカバー層31としては、耐湿性等に優れており、流体等の侵入を防止する上で有効となるプラズマシリコン窒化(PE−SiN)膜が考えられる。ただし、カバー層31は、必ずしも必須ではなく、成膜しなくてもよい。また、成膜する場合であっても、カバー層31は、必ずしもPE−SiN膜のような単層のものである必要はなく、複層のものであっても構わない。
【0051】
その後は、壁体23を形成する。すなわち、図8(e)に示すように、封止膜19がパターニングされた振動板11の上、またはこれらを覆うカバー層31の上に、壁体23の形成材料である感光性材料の層23′を成膜する。そして、この層23′に対して、図示せぬ露光用マスクを用い、その露光用マスクを通過する光のみ層23′に照射する。これにより、図8(f)に示すように、壁体23がパターニングされて形成されることになる。
【0052】
ただし、このときに用いる露光用マスクは、そのマスクパターンが以下のように設定されている。すなわち、壁体23の両側面の間の幅が、封止膜19の上面部19aの形成幅よりも狭いか、または封止膜19の上面部19aと側壁部19bとを含む最大形成幅よりも所定値以上広いかのいずれかとなるように、マスクパターンが設定されている。
なお、カバー層31が形成されている場合には、そのカバー層31の膜厚も考慮されるものとする。すなわち、図9の機能素子の概略構成の他の例の説明図に示すように、壁体23の両側面の間の幅が、封止膜19をカバー層31で覆った後における当該カバー層31の上面部の形成幅よりも狭いか、または封止膜19をカバー層31で覆った後における当該カバー層31の最大形成幅よりも所定値以上広いかのいずれかとなるようにする。
【0053】
このような露光用マスクを用いて壁体23をパターニングすることで、そのパターニングの際の露光光が封止膜19の側壁部19b、またはこれを覆うカバー層31で乱反射を起こしても、その影響が壁体23の形成に及んでしまうのを回避し得るようになる。つまり、側壁部19bの傾斜角θの影響をほぼ無くした状態で壁体23を形成することができる。しかも、その形成を感光性材料に対する露光によって行うので、母材を削るエッチング処理の場合とは異なり、側壁面を垂直に近い形状に成形したり、その形成ばらつきを抑えることが、非常に容易となる。
なお、露光用マスクの寸法以外でも、フォーカス、露光量などの露光パラメータにより壁体23の両側面の間の幅は調整可能である。
【0054】
そして、壁体23を形成した後は、図8(g)に示すように、その壁体23上にノズル板24を形成する。このノズル板24は、予めノズル25となる孔をあけた膜を接合することで形成すればよい。また、感光性材料で壁体23を形成する際に露光を行い、その現像を行う前にノズル板24となる膜をCVDやスパッタリング等を用いて形成し、ノズル25となる孔を形成した後に現像を行うことで形成するようにしても構わない。
以上のような手順を経て、機能素子が構成されることになる。
【0055】
〔機能素子の他の例についての説明〕
次に、本発明に係る機能素子の他の実施の形態について説明する。図10は、本発明に係る機能素子の概略構成のさらに他の例を示す説明図である。
【0056】
上述したように、封止膜19上に形成される壁体23は、圧力室22を構成するものであるが、その高さを低くすると流体抵抗値が増加し吐出効率が下がる。このことから、壁体23の高さは、吐出効率の低下を回避すべく、50μm以上とすることが好ましい。ところが、50μm以上の高さでは、封止膜19上に壁体23を形成するのにあたり、十分安定となるような密着面積を確保することが困難になることも考えられる。したがって、壁体23については、少ない密着面積でも十分安定となるように、封止膜19との密着性を向上させることが必要となる。
また、壁体23の材料と封止膜19あるいは振動板11の熱膨張係数の差が大きいと壁体23と封止膜19aの界面に過大な応力が発生し、剥離を生じる。この対策として両者の密着性を向上させることは重要である。
【0057】
このことから、ここで説明する機能素子は、封止膜19の上面部19aに凹凸が形成されている。そして、その凹凸上に壁体23が配設されるようにする。
【0058】
具体的には、例えば図10(a)に示すように、封止膜19自体に凹凸19cを形成することが考えられる。このような凹凸19cは、2種類以上の露光用マスクを使用し、封止膜19のエッチング(パターニング)の際に段階的なエッチングを行うことで、形成することができる。また、ドライエッチング等によって表面を荒らすことで形成することもできる。さらには、Alを厚くスパッタリングすることで自然に凹凸19cを形成したり、Al−Si、Al−CuなどAlに加えられた不純物をたとえばXeF2、発煙硝酸などにより選択的にエッチングすることで凹凸19cが形成出来る。あるいは酸化等の方法で表面を少量だけ変質させて当該変質層の膜厚を不均一にしエッチャントの選択によってその不均一さを顕著にすることで凹凸19cを形成したり、あるいはSiO2膜の表面に電子線等で選択的に高エネルギーを与えて膜を成長させることで凹凸19cを形成したり、あるいは成膜時の温度条件等を調節して表面を荒らすことで凹凸19cを形成してもよい。
【0059】
また、封止膜19自体を凹凸19cにするのではなく、例えば図10(b)に示すように、封止膜19の上面部19aに凹凸を有する凹凸膜32を接合することによって、封止膜19上の凹凸を形成することも考えられる。このような凹凸膜32は、オーバーコート膜をエッチングすることによって形成することができる。
【0060】
さらには、例えば図10(c)に示すように、封止膜19の下に予め凹凸部33を形成しておくことによって、その封止膜19上の凹凸を形成することも考えられる。このような凹凸部33は、犠牲層エッチングを行う前に予め形成しておけばよい。また、凹凸部33が犠牲層と同じ材質であるか、若しくは犠牲層エッチングのエッチャントでエッチングされる材料あれば、犠牲層エッチングと同時に形成することができる。また、犠牲層エッチング後であっても、ドライエッチング等によって犠牲層内部への影響を最小限に留めたまま形成することができる。ウェットエッチングであっても、真空雰囲気下での乾燥等といった十分な後処理を行うことで、犠牲層エッチング後の形成が可能となる。
【0061】
以上のような凹凸は、封止膜19がカバー層31で覆われている場合、すなわち封止膜19と壁体23との間にカバー層31が介在している場合には、そのカバー層31の上面側に形成されているものとする。詳しくは、封止膜19の下、封止膜19の上面部19aまたはカバー層31の上面のいずれかに凹凸が形成されており、その結果カバー層31の上面側に凹凸が形成されているものとする。
【0062】
このような凹凸が封止膜19の上面側、またはカバー層31が介在する場合にはそのカバー層31の上面側に形成されていれば、その凹凸の存在によって、壁体23を形成する際の密着性が向上することになる。したがって、壁体23を50μm以上の高さで形成する場合であっても、少ない密着面積でも十分安定となるような密着性を得ることができ、異種材料間の熱膨張係数差に起因する剥離の防止が可能となり、これに起因するインクジェットヘッドを構成した際のインク液21の吐出効率低下の防止を実現することが可能となるのである。
【0063】
このことは、特に、壁体23の両側面の間の幅が封止膜19の上面部19aの形成幅よりも狭く形成されている場合に有効である。壁体23の幅が上面部19aの形成幅よりも狭いと、十分安定となるような密着面積を確保することがより一層困難であり、また封止膜19の側壁部19bがズレ発生防止等の寄与することもないからである。つまり、封止膜19またはカバー層31の上面側に凹凸が形成されていれば、壁体23の幅が上面部19aの形成幅よりも狭くても、十分安定となるような密着性を得ることができ、ノズル25の挟ピッチ化への対応も容易となる。
【0064】
なお、本実施形態では本発明について好適な具体例を挙げて説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
例えば、封止膜19の膜種/膜厚/形成方法、壁体23の膜種/膜厚/形成方法、凹凸の膜種/膜厚/形成方法等は、本実施形態で説明した内容に限定されることはなく、適宜変更が可能である。
【0065】
また、本発明は、中空構造部分を有した機能素子およびその製造方法、並びに、その機能素子を用いて構成された流体吐出装置および印刷装置についてであれば、広く適用することが可能であり、本実施形態で説明したインクジェットプリンタ装置やインクジェットヘッド等に限定されるものではない。すなわち、本発明に係る機能素子は、インクジェットヘッドを始めとする流体吐出装置だけでなく、マイクロポンプ、μTAS(Micro Total Analysis Systems)、DNAチップ、熱拡散装置、その他、周波数フィルタ、各種センサやリレーを始めとするスイッチ等としても用いらることができる。さらに、その他にも、中空構造部分を有したものであれば、半導体素子、共振器、振動子、FBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)、SAW(弾性表面波)フィルタ、ジャイロセンサ、液晶素子、有機電界発光素子、抵抗素子、リレー素子、LED(Light Emitting Diode)、レーザ素子、FED(Field Emission Display)等の光源素子、スピーカ素子、ダイアフラム型センサ(例えば、マイク、圧力センサ)、流路、管、撮像素子等であっても、本発明を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】インクジェットプリンタ装置の概要を示す説明図である。
【図2】本発明に係る流体吐出装置の要部構成の一例を模式的に示す斜視図である。
【図3】本発明に係る流体吐出装置の要部構成の一例を模式的に示す平面図である。
【図4】本発明に係る流体吐出装置の要部構成の一例を模式的に示す側断面図(その1)であり、図3におけるA−A断面を示す図である。
【図5】本発明に係る流体吐出装置の要部構成の一例を模式的に示す側断面図(その2)であり、図3におけるB−B断面を示す図である。
【図6】本発明に係る流体吐出装置における処理動作の概要を模式的に示す説明図である。
【図7】本発明に係る機能素子の概略構成の一例を示す説明図である。
【図8】本発明に係る機能素子の製造方法の概要を示す説明図である。
【図9】本発明に係る機能素子の概略構成の他の例を示す説明図である。
【図10】本発明に係る機能素子の概略構成のさらに他の例を示す説明図である。
【図11】従来における機能素子の概略構成の一例を示す説明図である。
【図12】従来における機能素子の封止膜の形成例を示す説明図である。
【図13】従来の機能素子の流露形成時におけるハレーションの発生原理を示す説明図である。
【符号の説明】
【0067】
1…用紙、2…ローラ、3…キャリッジ、4,5…インクジェットヘッド、10…微小流体駆動部、11…振動板、12…基板、13基板側電極、14…絶縁膜、15…中空構造部分、16…振動板側電極、17a…支柱(アンカー)、17b…補助支柱(ポスト)、18…開口、19…封止膜、19a…上面部、19b…側壁部、19c…凹凸、20…流体供給部、21…インク液、22…圧力室(キャビティ)、23…流路壁(壁体)、31…カバー層、32…凹凸膜、33…凹凸膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空構造部分を有した機能素子およびその製造方法、並びに、その機能素子を用いて構成された流体吐出装置および印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄膜形成技術により形成される、中空構造部分を有した機能素子が利用されつつある。「薄膜形成技術」とは、例えば半導体製造プロセスにてシリコン半導体基板に微細加工を施す際に用いられるもののように、蒸着、スパッタ、エッチング等を行って薄膜を形成するための技術をいう。また、「中空構造部分を有した機能素子」とは、中空構造部分の内部素子またはその構造部分の内面若しくは表面が、入力信号に対して何らかの応答を示すように構成された素子のことをいい、中空構造部分に何らかの気体、液体または固体が注入されている場合も含む。中空構造部分は、完全に密閉されている場合と、一部開放されている場合とがある。このような機能素子の一例としては、いわゆるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)が知られている。
【0003】
ここで、中空構造部分を有した機能素子が用いられる一具体例として、プリンタやファクシミリ等の印刷装置を構成するインクジェットヘッド(流体吐出装置)を例に挙げ、その構成について簡単に説明する。インクジェットヘッドは、インク液を吐出するノズルと、このノズルに連通するインク液の流路と、この流路内のインク液を加圧するアクチュエータとを備え、アクチュエータを駆動することでインク液に対する加圧を行ってノズルからインクを吐出させるようにしたものである。従来、このインクジェットヘッドを構成するアクチュエータとして、中空構造部分を有した機能素子を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。詳しくは、例えば図11に示すように、インク液の流路の一部を中空構造部分51の存在によって変形可能な振動板52によって形成するとともに、この振動板52に対向して個別電極53を配設し、振動板52と個別電極53との間に電界を印加することで静電力を発生させて振動板52を変形させ、これにより液室54内の圧力や体積を変化させることによってノズル55からインク液を吐出させるのである。
【0004】
このような機能素子において、振動板52が変形(振動)するために必要となる中空構造部分51は、一般に、いわゆる犠牲層エッチングを行うことによって形成される。そのためには犠牲層をエッチングするための開口56が必要となるが、インクジェットヘッドのようにインク液(液体)を取り扱う場合には、その液体の中空構造部分51への流入を防止するために開口56が封止膜57によって封止される。そして、封止膜57は、振動板52の振動特性に影響を及ぼさないようにすべく、その形成範囲が開口56の近傍に留まるようなパターニングがされる。また、振動板52の上方に位置する液室54の側壁を構成する流路壁(壁体)58についても、振動板52の振動特性に影響を及ぼさないようにすべく、封止膜57上に重ねて形成される。
【0005】
【特許文献1】特許第2854876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したインクジェットヘッドのように微量の流体を吐出させる流体吐出装置においては、安定した流体噴射特性を得るために、インク液等の吐出流体に対する加圧が行われる液室54内の抵抗値の安定化、すなわち吐出流体の流路を構成する壁体58の形状ばらつきを小さく抑えることが非常に重要である。
【0007】
このことから、壁体58の形成にあたっては、薄膜形成技術により形成する場合であっても、シリコン等の母材をエッチングにより削ることで形成するのではなく、壁体58を感光性材料、例えば感光性樹脂または感光性ガラスで形成することによってエッチング工程を不要とし、エッチング幅およびエッチング深さのばらつきを除外し、これによりこのパラメータによる流路抵抗値のばらつきを無くすことが考えられる。
【0008】
ところが、壁体58の下方に位置する封止膜57は、例えば公知のリソグラフィ技術を利用してパターニングされるが、例えば図12に示すように、そのパターニングによって形成される側壁が傾斜θを有した側壁面となってしまい、その断面形状が上面部から下方に向かって広がる台形状に形成されることが考えられる。また、断面形状が上面部から下方に向かって狭くなる台形状に形成されることも考えられる。つまり、封止膜57は、上面部と傾斜θを有した側壁部とを備えた断面台形状に形成されるのである。
【0009】
したがって、壁体58を感光性材料とする場合には、例えば図13に示すように、その感光性材料を露光する際に露光用マスク59を通過した光が、封止膜57の側壁部で乱反射を起こしてしまうおそれがある。このような露光光の乱反射は、その影響が壁体58の形成に及んでしまい、その結果壁体58の形状が大きくばらついて、安定した流体噴射特性を得ることが困難になる要因となる。
【0010】
そこで、本発明は、安定した流体噴射特性を確実に得られるようにすべく、壁体形成の際の形状ばらつきを小さく抑えることのできる機能素子およびその製造方法、流体吐出装置、並びに印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するための案出された機能素子である。すなわち、中空構造部分を形成するための開口と、当該開口を封止する封止膜と、当該封止膜上に形成される壁体とを具備し、前記封止膜が上面部と傾斜を有した側壁部とを備えてなる機能素子において、前記壁体は、その両側面の間の幅が、前記上面部の形成幅よりも狭く、または前記上面部と前記側壁部とを含む前記封止膜の最大形成幅よりも所定値以上広く形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明は、上記目的を達成するための案出された機能素子の製造方法である。すなわち、中空構造部分を形成するための開口と、当該開口を封止する封止膜と、当該封止膜上に形成される壁体とを具備し、前記封止膜が上面部と傾斜を有した側壁部とを備えてなる機能素子の製造方法において、前記壁体の両側面の間の幅が、前記上面部の形成幅よりも狭く、または前記上面部と前記側壁部とを含む前記封止膜の最大形成幅よりも所定値以上広くなるように、当該壁体を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記目的を達成するための案出された流体吐出装置である。すなわち、中空構造部分を形成するための開口と、当該開口を封止する封止膜と、当該封止膜上に形成される壁体とを具備するとともに、前記封止膜が上面部と傾斜を有した側壁部とを備えてなる機能素子を用いて構成された流体吐出装置において、前記壁体は、その両側面の間の幅が、前記上面部の形成幅よりも狭く、または前記上面部と前記側壁部とを含む前記封止膜の最大形成幅よりも所定値以上広く形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明は、上記目的を達成するための案出された印刷装置である。すなわち、中空構造部分を形成するための開口と、当該開口を封止する封止膜と、当該封止膜上に形成される壁体とを具備するとともに、前記封止膜が上面部と傾斜を有した側壁部とを備えてなる機能素子を、流体吐出装置として用いて構成された印刷装置において、前記壁体は、その両側面の間の幅が、前記上面部の形成幅よりも狭く、または前記上面部と前記側壁部とを含む前記封止膜の最大形成幅よりも所定値以上広く形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
上記構成の機能素子、上記手順の機能素子の製造方法、上記構成の流体吐出装置、および上記構成の印刷装置において、「上面部の形成幅」とは、上面部と傾斜を有した側壁部とを備えて断面台形状に形成された封止膜(例えば図12参照)における上面部の形成幅、すなわち台形状における上辺の距離(例えば図12中におけるA参照)をいう。また、「上面部と側壁部とを含む最大形成幅」とは、その台形状における長辺の距離(例えば図12中におけるB参照)をいう。この長辺は、封止膜が上面部から下方に向かって広がる台形状の場合にはその台形下辺が該当するが、封止膜が上面部から下方に向かって狭くなる台形状の場合にはその台形上辺が該当することになる。なお、上辺と下辺が同一の場合には、どちらを長辺としても構わない。さらに、「所定値」とは、壁体の形成材料や壁体形成時の露光光強度等といった形成条件に基づいて予め設定された値をいい、例えば壁体の形成材料中にて露光光に対する反射光の強度が減衰し得る距離値がこれに相当する。
したがって、封止膜上に形成される壁体の両側面の間の幅が、上面部の形成幅よりも狭く、または上面部と側壁部とを含む最大形成幅よりも所定値以上広く形成されていれば、壁体の両側面が側壁部を避けて配置されることになる。つまり、その壁体の形成時に例えば感光性材料への露光を利用する場合であっても、その露光光の側壁部での乱反射の影響が壁体の形成に及んでしまうことがない。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、封止膜が傾斜を有した側壁部を備えていても、その側壁部を避けて壁体の両側面が配置されるので、その側壁部で露光光が乱反射する影響が壁体の形成に及んでしまうことがなく、壁体を形成する際の形状ばらつきを小さく抑えられる。したがって、例えばその壁体により吐出流体の流路を構成した場合には、流路抵抗ばらつきを低減できることとなる。つまり、流体吐出装置に用いれば、安定した流体噴射特性が得られるようになり、吐出対象流体の吐出方向むらに起因する印画むらや、吐出対象流体の吐出速度ばらつきに起因する印画むら等を低減することが可能となる。また、圧電、静電方式の振動板の振動面上まで流路壁が乗り上げてしまうと振幅を大幅に低減することになり、吐出速度が低下する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づき本発明に係る機能素子およびその製造方法、流体吐出装置、並びに印刷装置について説明する。
【0018】
〔流体吐出装置および印刷装置の説明〕
はじめに、機能素子の説明に先立ち、その機能素子を用いて構成された流体吐出装置および印刷装置について説明する。
【0019】
先ず、印刷装置について説明する。印刷装置としては、その一例として、インクジェットプリンタ装置が知られている。図1は、インクジェットプリンタ装置の概要を示す説明図である。インクジェットプリンタ装置は、インクを細かい粒状にして用紙に吐出することで、写真画質の印刷物を高速で印刷出力するものである。このようなインクジェットプリンタ装置には、大別すると、シリアルヘッド方式のものと、ラインヘッド方式のものとがある。
【0020】
シリアルヘッド方式のものでは、図1(a)に示すように、印刷対象物である用紙1をその主走査方向に送るローラ2と、その用紙1の副走査方向に移動可能なキャリッジ3に搭載されたインクジェットヘッド4とを備えている。そして、用紙1およびキャリッジ3を移動させつつ、インクジェットヘッド4が用紙1にインクを吐出することで、印刷出力を行うようになっている。
一方、ラインヘッド方式のものでは、図1(b)に示すように、用紙1をその主走査方向に送るローラ2と、その用紙1の副走査方向に沿ってインクの吐出口がライン状に配されたインクジェットヘッド5とを備えている。そして、用紙1を移動させつつ、インクジェットヘッド5の各吐出口から用紙1にインクを吐出することで、印刷出力を行うようになっている。
なお、上述したインクジェットプリンタ装置の構成は、印刷装置の一例であり、流体を吐出させるヘッド部と印刷対象物の相対位置を変化させることで印刷を行うことができれば、この構成にはこだわらない。
【0021】
ところで、インクジェットプリンタ装置に対しては、シリアルヘッドまたはラインヘッドのいずれの方式であっても、さらに高い画質を高速に印刷するというニーズに対応するため、消費電力を増加させず、吐出性能を落とさずに、さらに画素数の高密度化を実現することが求められている。このような要求に応えるべく、インクジェットプリンタ装置の中には、静電MEMS方式によるインクジェットヘッド4,5を用いて構成されたものがある。静電MEMS方式によるものでは、インクジェットヘッド4,5が、中空構造部分を有した機能素子を用いて構成されており、その機能素子における振動を圧力印加手段として利用することで、用紙1へのインクの吐出を行うようになっている。なお、インクジェットプリンタ装置におけるインクジェットヘッド4,5以外の構成要素については、公知技術により実現すればよいため、ここではその説明を省略する。
【0022】
続いて、インクジェットプリンタ装置に用いられるインクジェットヘッド、すなわち機能素子を用いて構成される流体吐出装置の一具体例について説明する。ただし、ここでは、シリアルヘッド方式とラインヘッド方式との別に関係なく、機能素子を用いて構成された流体吐出装置としてのインクジェットヘッドの要部についてのみ説明する。図2〜5は本発明に係る流体吐出装置の要部構成の一例を示す模式図であり、図2はその斜視図、図3はその平面図、図4,5はその側断面図である。
【0023】
図2に示すように、ここで説明するインクジェットヘッドは、大別すると、微小流体駆動部10と、流体供給部20とを備えている。このうち、微小流体駆動部10は、静電気力により駆動(振動)される複数の振動板11を高密度に並列配置してなるものである。一方、流体供給部20は、各振動板11上に対応する位置に配され、流体であるインク液21が溜められる圧力室(いわゆるキャビティ)22と、その圧力室22を形成するための外壁となる流路壁23およびノズル板24と、圧力室22内のインク液21を外部に吐出するための吐出部(いわゆるノズル)25と、を備えてなるものである。
【0024】
また、微小流体駆動部10は、図3〜5に示すように、基板12上に、導電性物質薄膜からなる共通の基板側電極13が形成され、その基板側電極13の表面に絶縁膜14が形成され、この基板側電極13に対向するように中空構造の空間(以下「中空構造部分」という)15を挟んで各々独立に駆動される複数の振動板側電極16および振動板11が一体かつ並列に配置され、さらに各振動板11を両持ち梁で支持するように支柱17aが基板12上に形成されて、構成されたものである。
【0025】
このうち、基板12は、例えばシリコン基板12a上にシリコン酸化膜等による絶縁膜12bを形成したものを用いることが考えられるが、その他にも、ガリウム砒素(GaAs)等の半導体基板上に絶縁膜を形成したものや、石英基板を含むガラス基板のように絶縁性を有したものを用いるようにしてもよい。
【0026】
基板側電極13は、例えば不純物をドーピングした多結晶シリコン膜で形成することが考えられるが、金属膜(例えばPt、Ti、Al、Au、Cr、Ni、Cu等の蒸着膜)やITO(Indium Tin Oxide)膜等で形成されたものであってもよい。また、振動板側電極16についても同様に、不純物ドープの多結晶シリコン膜、金属膜、ITO膜等で形成すればよい。
【0027】
振動板11は、絶縁膜で形成されたものであるが、特に高い反発力が得られるシリコン窒化膜(SiN膜)で形成するのが好ましい。ただし、振動板11は、SiN膜の上面および下面にシリコン酸化膜が形成されて、実質的にこれらの各膜の積層によって構成される。また、振動板11は、例えば短冊状に形成され、その両側に長手方向に沿って夫々所定間隔(支柱間ピッチ)を置いて形成された複数の支柱17aによって支持されている。この所定間隔は2μm以上、10μm以下が好ましく、5μm程度が最適である。そして、並列配置されたうちの隣り合う振動板11は、支柱17aを介して連続して形成され、かつ、支柱17aも振動板11と同じ材料で一体に形成されている。したがって、振動板11と基板側電極13間の空間を構成する中空構造部分15は、並列する複数の振動板11の間で連通していることになり、また密閉空間になるように形成されたものとなる。
【0028】
また、各振動板11の支柱17aの近傍、具体的には例えば一つの振動板11の長手方向に沿う各支柱17a間には、中空構造部分15を形成するための犠牲層エッチングを行う際に利用する開口18が形成される。開口18の大きさは、小さいほど閉塞し易いことから、□2μm以下とすることが考えられるが、犠牲層エッチングがドライエッチングの場合であれば、□0.5μmでも十分である。
【0029】
この開口18は、犠牲層エッチングの後には、封止膜19によって閉塞される。封止膜19については、その詳細を後述する。
【0030】
なお、振動板11には、絶縁膜を介して振動板側電極16が接合されており、しかもその振動板11の折曲された下面凹部内に挿入されるように振動板側電極16が配設されているものとする。また、振動板11の下方には、当該振動板11が薄く形成された場合の反発力を高めるべく、支柱(いわゆるアンカー)17aと合わせて、その中央部直下近傍に補助支柱(いわゆるポスト)17bを形成してもよい。
【0031】
このような微小流体駆動部10に対し、流体供給部20は、その微小流体駆動部10における各振動板11の振動特性に影響を及ぼさない位置、具体的には開口18を閉塞する封止膜19上に流路壁23が位置するように配設される。この流路壁23の位置については、その詳細を後述する。
【0032】
このような微小流体駆動部10および流体供給部20によって、インクジェットヘッドが構成されているのである。なお、微小流体駆動部10上に配設された流体供給部20の圧力室22には、その圧力室22内へのインク液21の供給を行うために、図示せぬ流体供給路が連通しているものとする。
【0033】
ここで、以上のような構成のインクジェットヘッドにおける処理動作を説明する。インクジェットヘッドでは、微小流体駆動部10における基板側電極13と振動板側電極16との間に所要の電圧を印加すると、図6(a)に示すように、各電極間に静電引力が発生して、振動板側電極16と一体な振動板11が基板側電極13の側に撓む。逆に、基板側電極13と振動板側電極16との間への電圧印加を開放すると、図6(b)に示すように、振動板11が静電引力から開放され、自身の復元力により減衰振動する。この振動板11の上下振動に伴う流体供給部20における圧力室22の容積変動で、インクジェットヘッドでは、圧力室22内のインク液21がノズル25から外部に吐出され、また圧力室22内へ流体供給路を通じてインク液21が供給されるのである。
【0034】
このとき、振動板11が基板側電極13の側に撓むと、中空構造部分15が閉空間であるため、その中空構造部分15内の空気は圧縮されて、振動板11の撓みを阻害しようとする。ところが、振動板11が支柱17a、補助支柱17a等による支持構造であれば、隣接する振動板11の下の中空構造部分15内に圧縮された空気を逃がすことができ、結果として十分に振動板11を撓ませることが可能となる。
【0035】
〔機能素子の説明〕
次に、以上のような構成のインクジェットヘッドにおいて用いられる機能素子、すなわち本発明に係る機能素子について、さらに詳しく説明する。機能素子は、既に説明したように、中空構造部分を有した素子の全てを含むが、その一例としてインクジェットヘッドにおいて用いられるもの、すなわち図7に示すようなものがある。図7は、本発明に係る機能素子の概略構成の一例を示す説明図である。
【0036】
図例のように、ここで説明する機能素子は、中空構造部分15を有することによって、その中空構造部分15を覆う層が振動板11を構成することになり、基板側電極13に電圧を印加して当該振動板11を振動させ得るようになるのである。
【0037】
中空構造部分15は、犠牲層エッチングによって形成されたものである。すなわち、中空構造部分15が形成される箇所に犠牲層となるエッチング層を積層し、さらにそのエッチング層の表面に開口18を持つ耐エッチング層を積層し、その開口18からエッチング層をエッチングして除去した後に、当該除去に利用した開口18を封止することで形成されたものである。このとき、エッチングされる犠牲層としては、エッチャントによって犠牲層以外の層の構成材料との選択比が取れるものを選択する。ただし、中空構造部分15の形成は、必ずしも犠牲層エッチングに限定されることはなく、他の公知の形成方法を用いても構わない。
【0038】
開口18は、その形成箇所に封止膜19が成膜されることによって封止されている。この封止膜19による開口18の封止は、蒸着、スパッタまたはPECVD(plasma-enhanced chemical vapor deposition)のいずれかによって行うことが考えられる。また、封止膜19の形成材料としては、成形加工の容易さから、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、銅(Cu)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、コバルト(Co)、タンタル(Ta)、白金(Pt)、金(Au)、タングステン(W)、ケイ素(Si)等の金属類やその合金類、SiO2等の酸化膜、または窒化膜等が挙げられるが、予め成形したセラミックや樹脂等を接合して用いることもできる。
【0039】
ただし、封止膜19は、振動板11の振動特性に影響を及ぼさないようにすべく、その形成範囲が開口18の近傍に留まるようなパターニングがされているものとする。このパターニングは、振動板11との選択比の問題とドライエッチングでもかまわないが、ドライエッチングによる振動板11の破壊を防ぐため、例えば公知のウェットエッチングプロセスを利用して行うことが好ましい。したがって、封止膜19の形成材料も、ウェットエッチングプロセスによって成形可能な金属を選択する。
【0040】
ところで、封止膜19のパターニングをウェットエッチングプロセスを利用して行うと、通常、そのパターニングによって形成される封止膜19の側壁部19bは、傾斜角θを伴う。すなわち、封止膜19は、上面部19aと傾斜θを有した側壁部19bとを備えており、その断面が台形状に形成される。なお、台形状は、上面部19aから下方に向かって広がるものであっても、また上面部19aから下方に向かって狭くなるものであってもよい。
【0041】
そして、この封止膜19の上には、圧力室22を構成する流路壁(壁体)23が形成されている。この壁体23についても、振動板11の振動特性に影響を及ぼさないようにすべく、封止膜19上に重ねて形成されるようなパターニングがされているものとする。このことから、壁体23は、例えば感光性樹脂または感光性ガラスといった感光性材料によって形成されているものとする。これは、エッチング処理では側壁面を垂直に近い形状に成形したりばらつきを抑えることが非常に困難であるのに対して、感光性材料を用いれば、エッチング処理が不要となり、エッチング幅およびエッチング深さのばらつきを除外し得るからである。
【0042】
ところで、壁体23を感光性材料によって形成する場合には、その感光性材料を露光する際に露光用マスクを通過した光が、封止膜の側壁部(傾斜面)で乱反射を起こしてしまうおそれがある(例えば図13参照)。このような露光光の乱反射は、その影響が壁体23の形成に及んでしまい、その結果壁体23の形状が大きくばらついて、安定した流体噴射特性を得ることが困難になる要因となる。
【0043】
このことから、壁体23は、例えば図7(a)に示すように、その両側面の間の幅が、封止膜19における上面部19aの形成幅よりも狭く形成されているものとする。ここで、「上面部19aの形成幅」とは、台形状に形成された封止膜19における当該台形上辺の距離をいう(図中A参照)。つまり、壁体23の両側面の間の幅を「C」とすると、A>Cとなっている。
【0044】
また、壁体23は、例えば図7(b)に示すように、その両側面の間の幅が、封止膜19における上面部19aと側壁部19bとを含む最大形成幅よりも所定値以上広く形成されていてもよい。ここで、「上面部19aと側壁部19bとを含む最大形成幅」とは、台形状に形成された封止膜19における当該台形長辺の距離をいう(図中B参照)。この長辺は、封止膜19が上面部19aから下方に向かって広がる台形状の場合にはその台形下辺が該当するが、封止膜19が上面部19aから下方に向かって狭くなる台形状の場合にはその台形上辺が該当することになる。なお、上辺と下辺が同一の場合には、どちらを長辺としても構わない。さらに、「所定値」とは、壁体23の形成材料や壁体形成時の露光光強度等といった形成条件に基づいて予め設定された値をいい、例えば壁体の形成材料中にて露光光に対する反射光の強度が減衰し得る距離値がこれに相当する(図中D参照)。具体的には、実験等を通じて得た経験則に基づき、D≧1μm、好ましくはD=3μm程度とすることが考えられる。
【0045】
このように、壁体23は、その両側面の間の幅が、上面部19aの形成幅よりも狭く形成されているか、または上面部19aと側壁部19bとを含む最大形成幅よりも所定値以上広く形成されているかの、いずれかとなっている。つまり、壁体23は、その両側の壁面のいずれも、封止膜19の側壁部19bを避けて配置されている。そのため、壁体23が感光性材料によって形成されていても、その壁体23の形成時に用いる露光光の側壁部19bでの乱反射の影響が、その壁体23の形成に及んでしまうことがなく、壁体23を形成する際の形状ばらつきを小さく抑えられるようになる。
【0046】
したがって、壁体23が圧力室22を構成する場合であっても、その圧力室22内におけるインク液21への抵抗ばらつきを低減することができ、その結果ノズル25から外部に吐出するインク液21について安定した流体噴射特性が得られるようになる。つまり、本実施形態で説明した機能素子を用いてインクジェットヘッドを構成すれば、インク液21の吐出方向むらに起因する印画むらや、インク液21の吐出速度ばらつきに起因する印画むら等を低減して、安定した流体噴射特性を確実に得られるようになる。
【0047】
〔機能素子の製造方法の説明〕
次に、以上のように構成された機能素子の製造方法について説明する。ただし、ここでは、主に、中空構造部分15、封止膜19および壁体23の形成の手順について説明する。図8は、本発明に係る機能素子の製造方法の概要を示す説明図である。
【0048】
機能素子の製造にあたっては、先ず、図8(a)に示すように、振動板11に形成された開口18からの犠牲層エッチングにより中空構造部分15を形成する。ただし、犠牲層エッチングではなく、他の公知の形成方法を用いても構わない。なお、振動板11の膜厚は、犠牲層をエッチングしたことによって生じる撓みや応力、封止膜19を形成することで生じる撓みや応力等を考慮して決定しているものとする。
【0049】
中空構造部分15を形成した後は、続いて、封止膜19を形成する。すなわち、図8(b)に示すように、振動板11の上に、蒸着、スパッタまたはPECVDによって封止膜19の形成材料を成膜した後、図8(c)に示すように、その成膜された層19′に対して例えばウェットエッチングプロセスを利用したパターニングを行い、封止膜19を形成する。
【0050】
この封止膜19の上には、図8(d)に示すように、外気や流体等の侵入を防止するためのカバー層31を成膜してもよい。カバー層31で封止膜19を覆えば、その封止膜19による開口18の封止が、より一層確実なものとなるからである。このようなカバー層31としては、耐湿性等に優れており、流体等の侵入を防止する上で有効となるプラズマシリコン窒化(PE−SiN)膜が考えられる。ただし、カバー層31は、必ずしも必須ではなく、成膜しなくてもよい。また、成膜する場合であっても、カバー層31は、必ずしもPE−SiN膜のような単層のものである必要はなく、複層のものであっても構わない。
【0051】
その後は、壁体23を形成する。すなわち、図8(e)に示すように、封止膜19がパターニングされた振動板11の上、またはこれらを覆うカバー層31の上に、壁体23の形成材料である感光性材料の層23′を成膜する。そして、この層23′に対して、図示せぬ露光用マスクを用い、その露光用マスクを通過する光のみ層23′に照射する。これにより、図8(f)に示すように、壁体23がパターニングされて形成されることになる。
【0052】
ただし、このときに用いる露光用マスクは、そのマスクパターンが以下のように設定されている。すなわち、壁体23の両側面の間の幅が、封止膜19の上面部19aの形成幅よりも狭いか、または封止膜19の上面部19aと側壁部19bとを含む最大形成幅よりも所定値以上広いかのいずれかとなるように、マスクパターンが設定されている。
なお、カバー層31が形成されている場合には、そのカバー層31の膜厚も考慮されるものとする。すなわち、図9の機能素子の概略構成の他の例の説明図に示すように、壁体23の両側面の間の幅が、封止膜19をカバー層31で覆った後における当該カバー層31の上面部の形成幅よりも狭いか、または封止膜19をカバー層31で覆った後における当該カバー層31の最大形成幅よりも所定値以上広いかのいずれかとなるようにする。
【0053】
このような露光用マスクを用いて壁体23をパターニングすることで、そのパターニングの際の露光光が封止膜19の側壁部19b、またはこれを覆うカバー層31で乱反射を起こしても、その影響が壁体23の形成に及んでしまうのを回避し得るようになる。つまり、側壁部19bの傾斜角θの影響をほぼ無くした状態で壁体23を形成することができる。しかも、その形成を感光性材料に対する露光によって行うので、母材を削るエッチング処理の場合とは異なり、側壁面を垂直に近い形状に成形したり、その形成ばらつきを抑えることが、非常に容易となる。
なお、露光用マスクの寸法以外でも、フォーカス、露光量などの露光パラメータにより壁体23の両側面の間の幅は調整可能である。
【0054】
そして、壁体23を形成した後は、図8(g)に示すように、その壁体23上にノズル板24を形成する。このノズル板24は、予めノズル25となる孔をあけた膜を接合することで形成すればよい。また、感光性材料で壁体23を形成する際に露光を行い、その現像を行う前にノズル板24となる膜をCVDやスパッタリング等を用いて形成し、ノズル25となる孔を形成した後に現像を行うことで形成するようにしても構わない。
以上のような手順を経て、機能素子が構成されることになる。
【0055】
〔機能素子の他の例についての説明〕
次に、本発明に係る機能素子の他の実施の形態について説明する。図10は、本発明に係る機能素子の概略構成のさらに他の例を示す説明図である。
【0056】
上述したように、封止膜19上に形成される壁体23は、圧力室22を構成するものであるが、その高さを低くすると流体抵抗値が増加し吐出効率が下がる。このことから、壁体23の高さは、吐出効率の低下を回避すべく、50μm以上とすることが好ましい。ところが、50μm以上の高さでは、封止膜19上に壁体23を形成するのにあたり、十分安定となるような密着面積を確保することが困難になることも考えられる。したがって、壁体23については、少ない密着面積でも十分安定となるように、封止膜19との密着性を向上させることが必要となる。
また、壁体23の材料と封止膜19あるいは振動板11の熱膨張係数の差が大きいと壁体23と封止膜19aの界面に過大な応力が発生し、剥離を生じる。この対策として両者の密着性を向上させることは重要である。
【0057】
このことから、ここで説明する機能素子は、封止膜19の上面部19aに凹凸が形成されている。そして、その凹凸上に壁体23が配設されるようにする。
【0058】
具体的には、例えば図10(a)に示すように、封止膜19自体に凹凸19cを形成することが考えられる。このような凹凸19cは、2種類以上の露光用マスクを使用し、封止膜19のエッチング(パターニング)の際に段階的なエッチングを行うことで、形成することができる。また、ドライエッチング等によって表面を荒らすことで形成することもできる。さらには、Alを厚くスパッタリングすることで自然に凹凸19cを形成したり、Al−Si、Al−CuなどAlに加えられた不純物をたとえばXeF2、発煙硝酸などにより選択的にエッチングすることで凹凸19cが形成出来る。あるいは酸化等の方法で表面を少量だけ変質させて当該変質層の膜厚を不均一にしエッチャントの選択によってその不均一さを顕著にすることで凹凸19cを形成したり、あるいはSiO2膜の表面に電子線等で選択的に高エネルギーを与えて膜を成長させることで凹凸19cを形成したり、あるいは成膜時の温度条件等を調節して表面を荒らすことで凹凸19cを形成してもよい。
【0059】
また、封止膜19自体を凹凸19cにするのではなく、例えば図10(b)に示すように、封止膜19の上面部19aに凹凸を有する凹凸膜32を接合することによって、封止膜19上の凹凸を形成することも考えられる。このような凹凸膜32は、オーバーコート膜をエッチングすることによって形成することができる。
【0060】
さらには、例えば図10(c)に示すように、封止膜19の下に予め凹凸部33を形成しておくことによって、その封止膜19上の凹凸を形成することも考えられる。このような凹凸部33は、犠牲層エッチングを行う前に予め形成しておけばよい。また、凹凸部33が犠牲層と同じ材質であるか、若しくは犠牲層エッチングのエッチャントでエッチングされる材料あれば、犠牲層エッチングと同時に形成することができる。また、犠牲層エッチング後であっても、ドライエッチング等によって犠牲層内部への影響を最小限に留めたまま形成することができる。ウェットエッチングであっても、真空雰囲気下での乾燥等といった十分な後処理を行うことで、犠牲層エッチング後の形成が可能となる。
【0061】
以上のような凹凸は、封止膜19がカバー層31で覆われている場合、すなわち封止膜19と壁体23との間にカバー層31が介在している場合には、そのカバー層31の上面側に形成されているものとする。詳しくは、封止膜19の下、封止膜19の上面部19aまたはカバー層31の上面のいずれかに凹凸が形成されており、その結果カバー層31の上面側に凹凸が形成されているものとする。
【0062】
このような凹凸が封止膜19の上面側、またはカバー層31が介在する場合にはそのカバー層31の上面側に形成されていれば、その凹凸の存在によって、壁体23を形成する際の密着性が向上することになる。したがって、壁体23を50μm以上の高さで形成する場合であっても、少ない密着面積でも十分安定となるような密着性を得ることができ、異種材料間の熱膨張係数差に起因する剥離の防止が可能となり、これに起因するインクジェットヘッドを構成した際のインク液21の吐出効率低下の防止を実現することが可能となるのである。
【0063】
このことは、特に、壁体23の両側面の間の幅が封止膜19の上面部19aの形成幅よりも狭く形成されている場合に有効である。壁体23の幅が上面部19aの形成幅よりも狭いと、十分安定となるような密着面積を確保することがより一層困難であり、また封止膜19の側壁部19bがズレ発生防止等の寄与することもないからである。つまり、封止膜19またはカバー層31の上面側に凹凸が形成されていれば、壁体23の幅が上面部19aの形成幅よりも狭くても、十分安定となるような密着性を得ることができ、ノズル25の挟ピッチ化への対応も容易となる。
【0064】
なお、本実施形態では本発明について好適な具体例を挙げて説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
例えば、封止膜19の膜種/膜厚/形成方法、壁体23の膜種/膜厚/形成方法、凹凸の膜種/膜厚/形成方法等は、本実施形態で説明した内容に限定されることはなく、適宜変更が可能である。
【0065】
また、本発明は、中空構造部分を有した機能素子およびその製造方法、並びに、その機能素子を用いて構成された流体吐出装置および印刷装置についてであれば、広く適用することが可能であり、本実施形態で説明したインクジェットプリンタ装置やインクジェットヘッド等に限定されるものではない。すなわち、本発明に係る機能素子は、インクジェットヘッドを始めとする流体吐出装置だけでなく、マイクロポンプ、μTAS(Micro Total Analysis Systems)、DNAチップ、熱拡散装置、その他、周波数フィルタ、各種センサやリレーを始めとするスイッチ等としても用いらることができる。さらに、その他にも、中空構造部分を有したものであれば、半導体素子、共振器、振動子、FBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)、SAW(弾性表面波)フィルタ、ジャイロセンサ、液晶素子、有機電界発光素子、抵抗素子、リレー素子、LED(Light Emitting Diode)、レーザ素子、FED(Field Emission Display)等の光源素子、スピーカ素子、ダイアフラム型センサ(例えば、マイク、圧力センサ)、流路、管、撮像素子等であっても、本発明を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】インクジェットプリンタ装置の概要を示す説明図である。
【図2】本発明に係る流体吐出装置の要部構成の一例を模式的に示す斜視図である。
【図3】本発明に係る流体吐出装置の要部構成の一例を模式的に示す平面図である。
【図4】本発明に係る流体吐出装置の要部構成の一例を模式的に示す側断面図(その1)であり、図3におけるA−A断面を示す図である。
【図5】本発明に係る流体吐出装置の要部構成の一例を模式的に示す側断面図(その2)であり、図3におけるB−B断面を示す図である。
【図6】本発明に係る流体吐出装置における処理動作の概要を模式的に示す説明図である。
【図7】本発明に係る機能素子の概略構成の一例を示す説明図である。
【図8】本発明に係る機能素子の製造方法の概要を示す説明図である。
【図9】本発明に係る機能素子の概略構成の他の例を示す説明図である。
【図10】本発明に係る機能素子の概略構成のさらに他の例を示す説明図である。
【図11】従来における機能素子の概略構成の一例を示す説明図である。
【図12】従来における機能素子の封止膜の形成例を示す説明図である。
【図13】従来の機能素子の流露形成時におけるハレーションの発生原理を示す説明図である。
【符号の説明】
【0067】
1…用紙、2…ローラ、3…キャリッジ、4,5…インクジェットヘッド、10…微小流体駆動部、11…振動板、12…基板、13基板側電極、14…絶縁膜、15…中空構造部分、16…振動板側電極、17a…支柱(アンカー)、17b…補助支柱(ポスト)、18…開口、19…封止膜、19a…上面部、19b…側壁部、19c…凹凸、20…流体供給部、21…インク液、22…圧力室(キャビティ)、23…流路壁(壁体)、31…カバー層、32…凹凸膜、33…凹凸膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空構造部分を形成するための開口と、当該開口を封止する封止膜と、当該封止膜上に形成される壁体とを具備し、前記封止膜が上面部と傾斜を有した側壁部とを備えてなる機能素子において、
前記壁体は、その両側面の間の幅が、前記上面部の形成幅よりも狭く、または前記上面部と前記側壁部とを含む前記封止膜の最大形成幅よりも所定値以上広く形成されている
ことを特徴とする機能素子。
【請求項2】
前記上面部が凹凸を有しているとともに当該凹凸上に前記壁体が形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の機能素子。
【請求項3】
前記封止膜と前記壁体との間に単層または複層のカバー層が形成されているとともに、
前記壁体は、その両側面の間の幅が、前記カバー層の上面部の形成幅よりも狭く、または前記カバー層の最大形成幅よりも所定値以上広く形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の機能素子。
【請求項4】
前記上面部の上に積層される前記カバー層の上面側が凹凸を有しているとともに当該凹凸上に前記壁体が形成されている
ことを特徴とする請求項3記載の機能素子。
【請求項5】
中空構造部分を形成するための開口と、当該開口を封止する封止膜と、当該封止膜上に形成される壁体とを具備し、前記封止膜が上面部と傾斜を有した側壁部とを備えてなる機能素子の製造方法において、
前記壁体の両側面の間の幅が、前記上面部の形成幅よりも狭く、または前記上面部と前記側壁部とを含む前記封止膜の最大形成幅よりも所定値以上広くなるように、当該壁体を形成する工程
を含むことを特徴とする機能素子の製造方法。
【請求項6】
前記上面部に凹凸を形成する工程
を含むことを特徴とする請求項5記載の機能素子の製造方法。
【請求項7】
前記封止膜と前記壁体との間に単層または複層のカバー層を形成する工程を含むとともに、
前記壁体を形成する工程では、前記壁体の両側面の間の幅が、前記カバー層の上面部の形成幅よりも狭く、または前記カバー層の最大形成幅よりも所定値以上広くなるように、当該壁体を形成する
ことを特徴とする請求項5記載の機能素子の製造方法。
【請求項8】
前記上面部の上に積層される前記カバー層の上面側に凹凸を形成する工程
を含むことを特徴とする請求項7記載の機能素子の製造方法。
【請求項9】
中空構造部分を形成するための開口と、当該開口を封止する封止膜と、当該封止膜上に形成される壁体とを具備するとともに、前記封止膜が上面部と傾斜を有した側壁部とを備えてなる機能素子を用いて構成された流体吐出装置において、
前記壁体は、その両側面の間の幅が、前記上面部の形成幅よりも狭く、または前記上面部と前記側壁部とを含む前記封止膜の最大形成幅よりも所定値以上広く形成されている
ことを特徴とする流体吐出装置。
【請求項10】
前記上面部が凹凸を有しているとともに当該凹凸上に前記壁体が形成されている
ことを特徴とする請求項9記載の流体吐出装置。
【請求項11】
前記封止膜と前記壁体との間に単層または複層のカバー層が形成されているとともに、
前記壁体は、その両側面の間の幅が、前記カバー層の上面部の形成幅よりも狭く、または前記カバー層の最大形成幅よりも所定値以上広く形成されている
ことを特徴とする請求項9記載の流体吐出装置。
【請求項12】
前記上面部の上に積層される前記カバー層の上面側が凹凸を有しているとともに当該凹凸上に前記壁体が形成されている
ことを特徴とする請求項11記載の流体吐出装置。
【請求項13】
中空構造部分を形成するための開口と、当該開口を封止する封止膜と、当該封止膜上に形成される壁体とを具備するとともに、前記封止膜が上面部と傾斜を有した側壁部とを備えてなる機能素子を、流体吐出装置として用いて構成された印刷装置において、
前記壁体は、その両側面の間の幅が、前記上面部の形成幅よりも狭く、または前記上面部と前記側壁部とを含む前記封止膜の最大形成幅よりも所定値以上広く形成されている
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項14】
前記上面部が凹凸を有しているとともに当該凹凸上に前記壁体が形成されている
ことを特徴とする請求項13記載の印刷装置。
【請求項15】
前記封止膜と前記壁体との間に単層または複層のカバー層が形成されているとともに、
前記壁体は、その両側面の間の幅が、前記カバー層の上面部の形成幅よりも狭く、または前記カバー層の最大形成幅よりも所定値以上広く形成されている
ことを特徴とする請求項13記載の印刷装置。
【請求項16】
前記上面部の上に積層される前記カバー層の上面側が凹凸を有しているとともに当該凹凸上に前記壁体が形成されている
ことを特徴とする請求項15記載の印刷装置。
【請求項1】
中空構造部分を形成するための開口と、当該開口を封止する封止膜と、当該封止膜上に形成される壁体とを具備し、前記封止膜が上面部と傾斜を有した側壁部とを備えてなる機能素子において、
前記壁体は、その両側面の間の幅が、前記上面部の形成幅よりも狭く、または前記上面部と前記側壁部とを含む前記封止膜の最大形成幅よりも所定値以上広く形成されている
ことを特徴とする機能素子。
【請求項2】
前記上面部が凹凸を有しているとともに当該凹凸上に前記壁体が形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の機能素子。
【請求項3】
前記封止膜と前記壁体との間に単層または複層のカバー層が形成されているとともに、
前記壁体は、その両側面の間の幅が、前記カバー層の上面部の形成幅よりも狭く、または前記カバー層の最大形成幅よりも所定値以上広く形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の機能素子。
【請求項4】
前記上面部の上に積層される前記カバー層の上面側が凹凸を有しているとともに当該凹凸上に前記壁体が形成されている
ことを特徴とする請求項3記載の機能素子。
【請求項5】
中空構造部分を形成するための開口と、当該開口を封止する封止膜と、当該封止膜上に形成される壁体とを具備し、前記封止膜が上面部と傾斜を有した側壁部とを備えてなる機能素子の製造方法において、
前記壁体の両側面の間の幅が、前記上面部の形成幅よりも狭く、または前記上面部と前記側壁部とを含む前記封止膜の最大形成幅よりも所定値以上広くなるように、当該壁体を形成する工程
を含むことを特徴とする機能素子の製造方法。
【請求項6】
前記上面部に凹凸を形成する工程
を含むことを特徴とする請求項5記載の機能素子の製造方法。
【請求項7】
前記封止膜と前記壁体との間に単層または複層のカバー層を形成する工程を含むとともに、
前記壁体を形成する工程では、前記壁体の両側面の間の幅が、前記カバー層の上面部の形成幅よりも狭く、または前記カバー層の最大形成幅よりも所定値以上広くなるように、当該壁体を形成する
ことを特徴とする請求項5記載の機能素子の製造方法。
【請求項8】
前記上面部の上に積層される前記カバー層の上面側に凹凸を形成する工程
を含むことを特徴とする請求項7記載の機能素子の製造方法。
【請求項9】
中空構造部分を形成するための開口と、当該開口を封止する封止膜と、当該封止膜上に形成される壁体とを具備するとともに、前記封止膜が上面部と傾斜を有した側壁部とを備えてなる機能素子を用いて構成された流体吐出装置において、
前記壁体は、その両側面の間の幅が、前記上面部の形成幅よりも狭く、または前記上面部と前記側壁部とを含む前記封止膜の最大形成幅よりも所定値以上広く形成されている
ことを特徴とする流体吐出装置。
【請求項10】
前記上面部が凹凸を有しているとともに当該凹凸上に前記壁体が形成されている
ことを特徴とする請求項9記載の流体吐出装置。
【請求項11】
前記封止膜と前記壁体との間に単層または複層のカバー層が形成されているとともに、
前記壁体は、その両側面の間の幅が、前記カバー層の上面部の形成幅よりも狭く、または前記カバー層の最大形成幅よりも所定値以上広く形成されている
ことを特徴とする請求項9記載の流体吐出装置。
【請求項12】
前記上面部の上に積層される前記カバー層の上面側が凹凸を有しているとともに当該凹凸上に前記壁体が形成されている
ことを特徴とする請求項11記載の流体吐出装置。
【請求項13】
中空構造部分を形成するための開口と、当該開口を封止する封止膜と、当該封止膜上に形成される壁体とを具備するとともに、前記封止膜が上面部と傾斜を有した側壁部とを備えてなる機能素子を、流体吐出装置として用いて構成された印刷装置において、
前記壁体は、その両側面の間の幅が、前記上面部の形成幅よりも狭く、または前記上面部と前記側壁部とを含む前記封止膜の最大形成幅よりも所定値以上広く形成されている
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項14】
前記上面部が凹凸を有しているとともに当該凹凸上に前記壁体が形成されている
ことを特徴とする請求項13記載の印刷装置。
【請求項15】
前記封止膜と前記壁体との間に単層または複層のカバー層が形成されているとともに、
前記壁体は、その両側面の間の幅が、前記カバー層の上面部の形成幅よりも狭く、または前記カバー層の最大形成幅よりも所定値以上広く形成されている
ことを特徴とする請求項13記載の印刷装置。
【請求項16】
前記上面部の上に積層される前記カバー層の上面側が凹凸を有しているとともに当該凹凸上に前記壁体が形成されている
ことを特徴とする請求項15記載の印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−56001(P2006−56001A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−236927(P2004−236927)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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