正確に位置決めされたナノウィスカおよびナノウィスカアレイ、およびそれらを作成する方法
ナノエンジニアリングを用いた構造であって、基板上に所定の空間配置でおよそ1000以上のナノウィスカのアレイを有し、例えばフォトニックバンドギャップアレイなどに用いられ、各ナノウィスカは所定のサイトから、そのナノウィスカと最隣接ウィスカとの距離のおよそ20%以内に位置する。アレイの形成に際し、触媒物質塊のアレイを基板上に位置決めし、熱を加えかつ気体状の物質を導入して各塊から触媒シード粒子を生成し、触媒シード粒子から所定物質のナノウィスカをエピタキシャルに成長させ、その際各塊は融解したときに基板表面との界面をほぼ同一のまま維持し、塊を前記表面を横切って移動させる力は基板表面におけるぬれ界面を介しての保持力よりも小さい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は米国仮出願第60/459,989号(2003年4月4日出願)、第60/472,721号(2003年5月23日出願)、第60/512,771号(2003年10月21日出願)および第60/524,891号(2003年11月26日出願)に基づく優先権を主張するものであり、これらの出願の全体を引用によって本願に取り入れる。
【0002】
本発明は概括的には、ナノテクノロジー技術によって製造する構造およびデバイスに関するものである。より詳しくは、本発明は、少なくとも1つの要素を含み、該要素は実質的に1次元的な形態であってその幅即ち径においてナノメートルサイズであり、いわゆる気相−液相−固相(VLS)メカニズムによって製造される要素を含んだ構造およびデバイスに関わるものである。本明細書においては、このような要素をナノウィスカと称する。
【背景技術】
【0003】
ナノテクノロジーは多様な分野に渡っており、ナノエンジニアリング分野を包含する。ナノエンジニアリングとはナノスケールの工学技術を実践するものと解することができる。これは原子スケールの微小デバイスからマイクロスコピック(顕微鏡的)スケールなどのより大きなスケールまでのサイズに渡る構造であってもよい。一般にこのような構造はナノ構造体を含む。一般的にはナノ構造体とは、少なくとも2つの次元方向においておよそ1μmより小さい寸法(即ちナノメートル寸法)を持つデバイスである。通常は、厚さが1μmより小さい1以上の層からなる層状構造または原料素材はナノ構造体とはされない。このように、ナノ構造体という語は、独立したあるいは孤立した構造体であって、2つの次元方向においておよそ1μm以下の寸法であり、より大きな構造体とは異なる機能および用途を有し、ある程度大きな構造体、例えばマイクロオーダーの大きさの構造体を製造する従来の工程とは異なる方法で作製される構造体を意味する。従って、ナノ構造体という分類を厳密に規定する大きさについての数値上の境界は特にないが、このナノ構造体という語は当業者には明らかなものとして理解されるある一つの分類となっている。多くの場合ナノ構造体を特徴づける上記少なくとも2つの次元方向の寸法の上限は、およそ500nmである。技術分野によっては、少なくとも2つの次元方向においておよそ100nm程度以下の寸法を有する構造体と解釈される場合もある。それぞれの分野において当業者は意図された寸法を理解している。上に述べたように、本出願において「ナノ構造」あるいは「ナノウィスカ」とは、細長い構造体であって少なくとも2つの幅方向においておよそ1μm以下の寸法を指すものとする。
【0004】
ナノ構造は1次元的なナノ要素であって、実質的に1次元的な形体を有し、幅即ち径がナノメートルサイズであって、一般にナノウィスカ、ナノロッド、ナノワイヤ、ナノチューブなどとして知られるナノ要素を包含する。
【0005】
ナノウィスカに関しては、いわゆるVLS(気相−液相−固相)機構による、基板(基体substrate)上でのウィスカ形成プロセスがよく知られている。基板上に置いた触媒粒子(例えば、多くの場合金粒子)をなんらかの気体の存在下で加熱し、メルト(融解物melt)を形成する。ピラー(柱状体・鉱柱)がメルトの下に生成して行き、メルトはピラーの頂部で上昇する。結果として、固化した粒子メルトが頂部に乗った状態の所望物質のウィスカが得られる。(E.I Givargizov, Current Topics in Material Science, Vol. 1, pp79-145, North Holland Publishing Company, 1978を参照されたい。)このようなウィスカのサイズはマイクロメートルのレンジにある。
【0006】
成長するウィスカの頂部にある触媒粒子の存在によって触媒作用を受けるウィスカ成長は、従来VSL(気相−液相−固相プロセス)と呼ばれてきたが、ウィスカ成長のための触媒として有効に作用するためには、触媒物質は必ずしも液体状態である必要はないことがわかってきた。触媒粒子がその融点以下の温度にあり、固体状態にあると推測される場合であっても、ウィスカを形成するための物質は粒子ウィスカ間の境界に到達し、ウィスカの成長に寄与することを示唆する少なくともいくつかの証拠がある。このような状態の下で、ウィスカ成長に際してその先端に添加される成長物質、例えば原子は、固体の触媒粒子を介して、あるいは固体触媒粒子の表面に沿って、成長温度にあるウィスカの成長端に拡散することができるのかもしれない。特定の温度環境、触媒物質の組成、目的とするウィスカの組成、そしてウィスカ成長に関係する他の条件などの下での正確な機構がどんなものであれ、触媒粒子によって触媒作用を受けるウィスカの伸張という全体的な効果は明らかに同一である。本出願においては、「VLSプロセス」「VLS機構」その他の同等の用語は、ナノウィスカ成長がその成長端に接触する液体または固体の粒子によって触媒作用を受けるすべての触媒過程を含むものとする。
【0007】
PCT国際出願公報WO01/84238の図15および図16には、エアロゾル(噴霧)によるナノメートルサイズの粒子を基板上にデポジットし、これら粒子をシード(種子)としてフィラメント即ちナノウィスカを生成する方法が開示されている。
【0008】
本明細書では、ナノウィスカという語はナノメートルサイズの幅即ち径(一般的には横断寸法)を有する1次元的なナノ要素であって、いわゆるVLS機構によって形成されるものを意味するものとする。ナノウィスカは当業界で「ナノワイヤ」とも呼ばれ、また文脈によっては単に「ワイヤ」とも呼ばれる。本願においてこれら用語を用いる場合「ナノウィスカ」という語と同じである。
【0009】
ナノウィスカ技術を現今の半導体部品技術と融合させるために、基板上の選定された位置にウィスカを位置決めすることが望ましい。
【0010】
ナノウィスカ成長についていくつかの実験的研究がなされているが、最も重要なものHiruma達の報告である。彼らはIII−V族ナノウィスカをIII−V族基板上に有機金属気相蒸着法(MOCVD)により成長させた(K. Hiruma, et al., J. Appl. Phys. 74, page 3162 (1993); K. Hiruma, et al., J.Appl. Phys, 77, page 447 (1995); K. Hiruma, et al., IEICE Trans. Electron. E77C, page 1420 (1994); K. Hiruma, et al., J. Crystal Growth 163, pages 226 - 231 (1996)を参照)。彼らの方法は、薄いAuフィルムをアニールしてシード粒子を作ることを利用している。このようにして、彼らは均一なウィスカ幅分布を実現し、その平均サイズをAu層の厚さおよび該層をナノ粒子に変化させる方法によって制御することができた。この手法では、サイズと表面被覆率(surface coverage)を別々に制御することは困難である。
【0011】
文献Sato et al. Appl. Phys. Lett. 66(2), 9 January 1995は、4つのナノウィスカを成長させる試みを開示している。この方法では、ナノウィスカの位置即ちサイトをSiO2マスクを用いて予め決める。その後マスクを取り去って成長を始めた。その結果は、エレクトロニクス/フォトニクス部品の用途のためにナノウィスカが十分正確に位置決めされた構造を製造するものとしては不十分なものであった。その理由の1つはナノウィスカ成長場所を正確に局在化することができなかったことであり、これはシード粒子を形成するのに薄膜を利用したことによる。そしてまた、4つのナノウィスカからなる構造を、多くの用途で必要とされる多数のナノウィスカへと拡張することができなかった。
【0012】
米国特許第5,332,910号は複数の半導体ロッドが半導体ロッドから発せられる光の整数分の一に等しい間隔で配列されたものからなるマイクロキャビティレーザーを開示している。1つの実施形態ではナノウィスカが成長する基板にシードを形成するために収斂されたイオンビームを用いている。別の実施形態ではSiO2マスクにエッチングされた孔にナノウィスカをMOCVDによって成長させている。
【0013】
特に興味深い要素はフォトニックバンドギャップアレイである。これは基板内の多数の要素(突起でも孔でもよい)のアレイを含み、周囲の媒体とは異なる屈折力をもたらす。選択領域MOVPE成長(SA−MOVPE)を用いて2次元フォトニックバンドギャップ構造が生成されているが、こうした構造は応用対象が限られているように思われる。(Akabori et al. Phsica E13, pp 446-450, March 2002を参照)。
【0014】
カーボンナノチューブからフォトニックバンドギャップ構造を形成する研究もなされており、自己組織化ナノスフィアリソグラフィやオプティカルリソグラフィを用いて単シード(single-seeded)アレイが合成されている。(K. Kempa et al., Letters, Vol. 3, No. 1, pp 13-18, 19, November 2002)。しかし、屈折率の異なる領域を形成するのにチューブは理想的な構造ではない。
【0015】
同時係属中の米国特許出願第10/613,071号(2003年7月7日出願、その内容を本引用によって本願に取り入れる)、および同時係属中の国際出願PCT/GB2003/002929において、フォトニックバンドギャップ構造に適したナノウィスカアレイの製造方法が記載されている。
【0016】
(発明の概要)
概括的に言えば、本発明は、所定のサイトに所定の寸法公差以内の位置精度を以て位置する少なくとも1つのナノウィスカからなるナノテクノロジーあるいはナノエンジニアリングを用いた構造であって、エレクトロニクス・フォトニクス部品において十分使用できるものを含む。
【0017】
本発明はまた、ナノエンジニアリングを用いた構造であって、所定の空間配置で配置された多数のナノウィスカアレイを含み、ナノウィスカは配置内において、所定の寸法公差内で所定サイトに配置されている構造からなる。
本発明はまた、ナノエンジニアリングを用いた構造であって、所定の空間配置で配置された多数のナノウィスカアレイを含み、ナノウィスカは配置内において、所定の寸法公差内で所定サイトに配置されている構造からなる。本発明において、「アレイ」とはおよそ1000の1次元ナノ要素からなるアセンブリを意味し、すべての場合において、アレイはそのような要素を500以上含み、一般的には106以上含んでもよい。
【0018】
本発明のこのような構造は、例えばフォトニックバンドギャップ構造、電界放出ディスプレイなどのディスプレイ、多くのプローブ/センサを有する電子医療デバイス、メモリ回路など所定位置に数多くの要素を有するエレクトロニクス/フォトニクス要素など多くの用途がある。例えばフォトニック/電子回路のように1つ以上のナノウィスカが用いられ、ナノウィスカを回路の隣接する部分に対して極めて正確に位置決めする必要のある場合において、本発明はそのような位置決めのメカニズムを提供する。
【0019】
本発明はまたそのような構造を製造する方法を提供する。
【0020】
少なくとも一好適実施例において、本発明は基板上に少なくとも1つのナノウィスカを備える構造を製造する方法であって、
所定物質からなる基板の表面上の所定の位置に、少なくとも1つの触媒物質の塊を供給することと、
基板をアニールして表面酸化物を除去すると共に、前記塊のおのおのからそれぞれ触媒シード粒子を形成することと、
VLSプロセス(上に定義したもの)によってそれぞれの触媒シード粒子からエピタキシャルに、所定物質のナノウィスカを成長させるように、熱を加え、かつ少なくとも1つの物質を気体の状態で導入することと、からなり、
ナノウィスカを所定位置からの所定の位置公差内に維持するように、アニールおよびナノウィスカ成長条件を制御する製造方法を提供する。
【0021】
アニール工程により表面酸化物を除去する。この酸化物層は、塊に対して自由原子ボンドを有する完全な結晶表面とは異なるぬれ特性(wetting behavior)を与える。完全な結晶表面は遙かに良好な触媒塊のぬれ性を有するので、塊は固着する。ほこりやその他の変動により自然酸化物の除去が不均一であれば、ナノウィスカ成長を予期できない仕方で妨げる場合がある。本発明によれば、アニール工程がナノウィスカの正確な位置決めに重要な役割を果たすことが見出された。触媒塊がその所定サイト(位置)から移動可能であることが、アレイ内におけるナノウィスカの正確な位置決めを阻害する1つの原因であることが見出された。移動の防止において検討すべき点の1つに触媒塊からの触媒シード粒子の生成がある。アニール工程において、触媒塊は融解し、基板との間に界面を形成するが、その間に基板物質が吸着され触媒物質と合金となって触媒シード粒子を形成する。吸着される物質が多いほど、また合金が共晶組成に近づくほど、以降のナノウィスカ形成のための過飽和状態がより早く達成される。触媒塊が融解するとき、形成される界面(これは基本的に表面張力「ぬれ」(surface tension “wetting”)により判断される)が、塊をその初期位置に保持し、また界面を横切っての原子の十分な拡散を許容する表面積を与える。ぬれが不十分であれば、塊は小さな界面しかもたないボール状となりがちであって、該ボールが表面を急速に移動してしまうおそれがある。また、ぬれ効果が行き過ぎると、塊が表面に広がり、断片化や予期できない場所でのウィスカ成長を生じさせるおそれがある。
【0022】
この問題に関して多くのパラメータが関与している。例えば、酸化物を除去し基板表面を清浄なものとするために温度を十分高くすべきであるが、他方で塊が基板物質を過度に吸収し、表面へ「食い込む」ほど温度を高くしてはならない。特にIII−V族またはII―VI族の半導体物質の場合、VまたはVI族元素の基板からの蒸発が起こり、多くの自由原子ボンドを生成して塊の移動に寄与する可能性がある。蒸発を防止するために、適度なVまたはVI族物質を含んだ雰囲気内でアニールを行ってもよい。
【0023】
別の重要な考慮点は、触媒塊の初期形状と物質構成である。触媒塊はその初期構成において触媒物質が異なる領域を含んでいてもよい、即ち例えば、金の領域と例えばインジウムなどの触媒物質と合金を形成し、ナノウィスカ成長のための過飽和状態をもたらすことを補助する物質の領域である。これにより、シード粒子を形成する際に触媒塊が基板物質と合金を形成する必要性が減少し、それによって塊の安定性および移動させる力に対する抵抗が増加する。所望により、触媒物質/合金形成物質/触媒物質というサンドイッチ状の層を用いてもよい。
【0024】
触媒塊の形状に関しては、融解した際に基板との間の位置と面積に関してほぼ同一の界面を維持する形状が最適な形状の1つであることが見出された。この場合、塊は触媒シード粒子に変化した際に、当初の位置に「固着する」傾向があり、広がることがなく、基板表面上での移動を引き起こすような接触面積の減少が起きることもない。純粋な触媒物質塊の好適な形状は径:高さ比が3:1のディスク形状であり、この場合融解して理論的に完全な半球形になった場合同一の界面面積を与える。実際には、比が10:1〜2:1の間にあれば申し分ないことが見出された。しかし、合金を形成する物質を含む触媒塊の場合、遙かに高い比、例えば50:1でも問題ないことが見出された。これは触媒塊が基板表面と相互作用する必要が少ないからである。一般的に、触媒塊から触媒シード粒子が形成される間、基板表面とのぬれ界面の保持力が表面を横切って塊を移動させる力に抗しなければならない。
【0025】
従って本発明はその第1の態様において、基板上に少なくとも1つのナノウィスカを備える構造を製造する方法であって、
所定の物質の基板を提供し、かつ該基板表面上の所定の位置に少なくとも1つの触媒物質塊を提供することと、
前記塊の各々からそれぞれ触媒シード粒子を生成し、かつVSLプロセス(上に定義したもの)により触媒シード粒子からエピタキシャルに所定物質のナノウィスカを成長させるように、熱を加え、かつ少なくとも1つの物質を気体状態で導入することと、からなり、
前記塊のそれぞれは、触媒シード粒子の形成中に塊を前記表面を横切って移動させようとする力が基板表面上のぬれた界面を介した保持力よりも小さくなるようになされているような方法を提供する。
【0026】
また別の態様において、本発明はナノエンジニアリングを用いた構造であって、所定物質の基板と、該基板表面の所定の位置に形成された少なくとも1つの触媒物質の塊とを有し、前記塊のそれぞれは加熱し融解してそれ以降のナノウィスカ成長のための触媒シード粒子を形成する際に、基板との間にぬれ界面が形成され、前記表面を横切って塊を移動させようとする力が該ぬれ界面によってもたらされる塊をその所定位置に保持する力よりも小さくなるようになされているナノウィスカ構造を提供する。
【0027】
触媒物質塊の初期形成は、電子ビームリソグラフィ・リフトオフプロセス、またはコストの面から好適である、塊をその所定の位置に限定するスタンプを用いたナノインプリントリソグラフィにより行ってもよい。
【0028】
本発明により、正確な位置決めを決定する1つの要因はナノウィスカの核形成が起こる時間であることが見出された。「核形成」とはVLS法によるエピタキシャル成長の開始を意味し、その際熱を加えることにより、ナノウィスカ物質の原子が触媒粒子内に吸着されて合金を形成し、過飽和状態が成立すると、成長サイトにおいて触媒シード粒子と基板との間にナノウィスカが生成し始める。一端この核形成段階が達成されると、ナノウィスカがその成長サイトから移動する確率は大きく低減する。本発明によれば、この核形成時間が移動性の特性時間よりも小さくなるべきであることが見出された。この基板上での触媒塊の移動性の「特性時間」は、当然、塊および基板の物質組成に依存する。更に温度にも依存する。これは温度が高いほど触媒塊および基板表面および成長サイト周囲の気体および蒸気はより活動的になり、これが移動傾向を強めるからである。移動性はまた成長サイトに気体の状態で導入される物質の量にも依存する。これはもしそうした物質が不十分であれば、あるいはまた2つの気体状物質(例えばIII族を含む物質とV族を含む物質)との間に不均衡があれば、移動が生じうるからである。更に移動性は基板表面の状態、および成長プロセスに容易に介入しうる基板物質の量にも依存する。「特性時間」は触媒塊が所定距離移動するのに要する時間と表現してもよい。例えば、この距離は望まれる所定の成長サイトからの移動許容量(公差)の最大値としてもよい。また塊の寸法に関連づけて定義してもよく、例えば塊がそれ自身の径に等しい距離移動するのに要する時間としてもよい。または、この距離を最近隣成長サイト間の距離に対する割合、例えば10%などの所望の位置決め精度を表す距離としてもよい。
【0029】
本発明はまた、基板上に少なくとも1つのナノウィスカを備える構造を製造する方法であって、
所定物質の基板を提供することと、
該基板表面上の所定の位置に少なくとも1つの触媒物質塊を提供することと、
VLSプロセスによってそれぞれの触媒シード粒子からエピタキシャルに、所定物質のナノウィスカを成長させるように、熱を加え、かつ少なくとも1つの物質を気体の状態で導入することと、からなり、
前記所定位置におけるナノウィスカの成長核形成に要する時間が基板表面上でのそれぞれの塊の移動性の特性時間よりも小さくなり、ナノウィスカを前記所定位置からの所定の位置公差内に維持するようにナノウィスカの成長条件を制御するような方法を提供する。
【0030】
一般にナノウィスカはIII−V族化合物であり、インジウム、ガリウムなどのIII族金属を含む基板上に成長する。しかし本発明はIII−V族化合物に限られず、II−VI族(例えばCdSe)およびIV族半導体(Si、Ge)を包含する。
【0031】
基板物質およびナノウィスカ物質に関して言えば、これらは一般に同一ではないが、十分な成長を達成するために、それら物質の間に何らかの関係がある場合もある。例えば、基板がシリコンやゲルマニウムのようなIV族物質であるとき、ナノウィスカもIV族物質としてもよい。ナノウィスカがIII−V族物質またはII−VI族物質であるとき、基板をIII族あるいはII族金属を含むまたはこれら金属からなる物質としてもよい。このように例えばナノウィスカがインジウムリンである場合には、基板をインジウムまたはガリウムを含む物質としてもよい。
【0032】
更に各サイトの周囲において、1つ以上の気体状のナノウィスカ物質元素の活動を制御してナノウィスカの成長を制御してもよい。例えばIII−V半導体化合物を成長させる場合、リンやヒ素のようなV族物質の活動を制御することが好ましい。この更なる元素がガス状態でナノウィスカサイトの周囲に存在しかつ過度の活動性を有すると、反応の均衡を保つためにより多くのIII族物質を供給すべく、触媒物質がIII族物質を「探し求めて」基板表面上を移動することを強いられる場合がある。同様に、V族物質の活動が弱すぎると、適切なナノウィスカ成長が行われない。MOVPEプロセスにおいては、有機金属分子の分解が成長サイト付近で生ずる。これは反応温度および気体体積が精密に制御されることを意味する。しかしCBEの場合、V族分子の分解は成長サイトから離れた分解セル内で生ずるので、成長温度および気体流量により多くの選択の自由がある。
【0033】
本発明によれば、前記プロセスによって製造される構造は、所定の空間配置で配置された多くのナノウィスカアレイからなり、ナノウィスカは所定のサイトに所定の寸法公差以内での配列において配置される。特に後述の実施例7に例示するように、極めて高い精度を達成しうることが見出されている。典型的には、基板上に位置決めされたナノウィスカアレイ内におけるナノウィスカの実際の位置のターゲットサイトからのずれは、アレイ内において隣接するナノウィスカのターゲットサイト間の距離のおよそ3.6%以下である。
【0034】
好適には実際の位置のずれはアレイ内において隣接するナノウィスカのターゲットサイト間の距離のおよそ1%以下である。
【0035】
別の観点から見れば、本発明において個々のナノウィスカのターゲット位置からのずれはウィスカ径以下、好適には径の半分以下、より好適には径の20%以下、更に好適には径の1%以下、更に好適には径の0.5%以下とすることができる。
【0036】
本発明によれば、ナノウィスカアレイを極めて高精度な幾何学的構造として製造され、各ナノウィスカはそのターゲット位置即ち決められた位置に極めて近く配置される。これにより、多くのナノウィスカを非常に正確に位置決めして用いる必要のある構造にアレイを利用することができる。このような構造は例えば、複雑な電気回路、ディスプレイシステム、フォトニックバンドギャップアレイなどを含む。このような構造の例は我々の同時係属中の米国特許出願第10/613,071号(2003年7月7日出願)に開示されている。当該出願を引用により本明細書に取り入れる。
【0037】
フォトニックバンドギャップ(PBG)アレイの特定の応用において、予め定められた位置、即ち決められた周期性を有する格子点においてナノウィスカの規則的な幾何学構造が必要とされる。周期性はPBGによって受容される放射の波長に依存するが、典型的にはナノウィスカはその軸が理想的には最近隣距離が約1マイクロメートルの格子点に位置するように配置される。このようなフォトニックバンドギャップアレイにおけるナノウィスカの径は、一般にPBG格子周期の10乃至20%の範囲とすべきである。従って、このようなアレイにおけるナノウィスカの径は一般に100ナノメートルのオーダー、例えば100〜200ナノメートルとすべきである。アレイ内の個々のナノウィスカの格子点からの位置ずれの公差許容できる位置ずれはPBG格子周期の5%程度とすべきであり、これは即ち1マイクロメートルの格子に対して約50ナノメートルである。
【0038】
本発明はVLS法によりナノウィスカをエピタキシャル成長させるすべての方法に応用することができる。特に好適なエピタキシャル成長プロセスはMOVPE(MOCVD)である。もう一つの好適なエピタキシャル成長法は化学ビームエピタキシー(CBE)であり、この方法では有機金属分子を、分子が成長基板に向かうビームとなるように低圧力とした反応チャンバ内に導入する。このような手法は同時継続中の米国特許出願第10/613,071号(2003年7月7日出願)に詳しく説明されている。その内容をこの引用により本明細書に取り入れる。CBEを用いた場合、正確に位置決めされたナノウィスカを実現するための適切な成長条件を確立することがより難しくなる。
【0039】
成長時に触媒塊の基板表面上での移動を制御する方法としては、適切な不活性物質のマスクを用いるのが好適である。マスクは基板および触媒塊を完全に覆う層として形成してもよい。熱を加えると触媒塊はマスク物質を浸透してナノウィスカ成長を許容する。または、マスクに開口を設け、各開口に触媒塊を収容してもよい。これは例えばリソグラフィ技術を用いて実行することができる。
【0040】
本発明の別の態様において、基板上に少なくとも1つのナノウィスカを備える構造を製造する方法であって、
基板を提供することと、
該基板表面上に少なくとも1つの触媒物質塊を提供し、その際、各塊は基板上のそれぞれの所定位置に配置することと、
基板表面にマスクを提供することと、
化学ビームエピタキシーおよびVLSプロセス(上に定義したもの)によって、それぞれの触媒シード粒子を介して、所定物質のナノウィスカを、その高さおよび径および位置を制御して成長させるように、熱を加え、かつ少なくとも1つの物質を気体の状態で導入し、その際前記マスクが触媒塊の横移動と基板表面上での成長の両方を抑制することと、からなる方法を提供する。
【0041】
開口を設けたマスクを使用する場合には、開口内に形成された触媒塊のその所定位置からの移動を制限するように、開口を十分小さい大きさに限定することが望ましい。一般的に、マスクの制作中に開口を設けたマスクを形成し、それから開口内に触媒物質をデポジットする。触媒塊は十分な厚さを有することが望ましく(通例高さ:直径比1:3が望ましい)、触媒塊を加熱してシード粒子を形成する最初の工程において、通常融解された状態であるシード粒子がマスクの縁部から粒子自身の径よりも短い距離となるような厚さであることが望ましい。マスクの縁部はシード粒子に対する物理的な(mechanicalな)障壁を形成し、かつ触媒物質はその表面張力特性からマスクを「ぬらす」ことがないので、触媒塊を所定の位置に効果的に束縛する。この束縛により、基板表面における触媒塊の移動度が、マスクがない場合に比べてかなり減少することは明らかである。
【0042】
本発明のまた別の態様において、ナノエンジニアリングを用いた構造であって、基板上の少なくとも1つのナノウィスカと、所定物質の基板と、基板上にあり所定の場所に所定の径で設けられた少なくとも1つの開口を有する別の物質からなるマスクと、該各開口から延びるナノウィスカとを有し、各ナノウィスカの基板表面における基部は各開口を画成するマスクの縁部からおよそナノウィスカの径より小さい距離にある構造を提供する。
【0043】
本発明の別の実施形態において、詳細を同時継続中の我々の米国特許出願第10/613,071号(2003年7月7日出願)に説明しているCBEプロセスを用いて製造されるフォトニックバンドギャップアレイあるいはフォトニック結晶において、後に説明するように、3次元フォトニックバンドギャップアレイ構造であって、アレイの各ナノウィスカが異なる屈折率を有する2つの物質が交互に並ぶ一連のセグメントとして形成される構造が提供される。
【0044】
また別の実施形態において、フォトニック結晶の各ナノウィスカは異なる物質のセグメントを有して形成され、それらセグメントの間にシャープなヘテロ接合を有し、LEDとして機能しうるナノウィスカ内の量子ドットを提供する。適切な接点に接続することにより、少なくとも1つのLED構造が起動され、フォトニック結晶構造のそれ以外の部分を透過する光を発する光源となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明の好適な実施例を添付図面を参照して説明する。
【0046】
上記のように本発明は基板上の少なくとも1つのナノウィスカを含む構造を形成する方法であって、ナノウィスカをVLS法によって成長させる方法を提供する。ナノウィスカの必要とされる位置決め精度を達成するために、触媒シード粒子を基板上に正確に位置させなければならず、かつ基板上の触媒粒子が占める位置においてナノウィスカが成長を始める前に、触媒シード粒子が有意の距離動いてはならない。本発明のある実施形態では基板表面に形成されたマスク上の開口内に触媒シード粒子を形成し、ウィスカ成長が始まる時に、触媒シード粒子をマスクの開口内に閉じこめる。別の実施形態では、触媒シード粒子を基板表面の所定の位置に配列し、そして粒子を融解して、その際の条件を、気体として供給されるナノウィスカを形成するためのの先駆物質が触媒粒子と融解合金(molten alloy)を形成し、基板表面で結晶化してナノウィスカ成長の核を与えるような条件となるようにする。温度、触媒粒子の組成、酸化物の表面被覆率などの核形成および成長の諸条件を、触媒シード粒子の形成の間、融解粒子塊が基板用面を移動するようになす力が、触媒粒子と基板表面のぬれ界面によってもたらされる保持力よりも小さくなるように調節する。
【0047】
従って、上に示すように本発明の方法の1つの実施形態において、表面の酸化物を除去するアニール工程を実施する。表面酸化物層は融解触媒金属塊によるぬれ性に関して、自由原子ボンドを有する完全結晶表面とは異なる表面特性を有する。完全な結晶表面は遙かに良好な触媒塊のぬれ性を有し、触媒粒子を基板表面の固定された位置に保持する傾向のある表面力を提供する。ほこりやその他の変動により、自然酸化物が不均一に除去されると、そのことがナノウィスカの位置と成長に予期できない仕方で干渉する。本発明の少なくとも1つの実施形態において、アニール工程がナノウィスカの正確な位置決めにおいて重要な役割を演じていることが見出された。アレイ内のナノウィスカの正確な位置決めの1つの障害は触媒塊がその所定のサイトから移動することであることが見出された。移動の防止に際しての問題とすべきことの1つは触媒塊からの触媒シード粒子の形成である。アニール工程において、触媒塊は融解し基板との界面(interface)を形成し、該界面を介して基板物質の原子が吸着され触媒物質と合金を形成し、これによって触媒シード粒子を形成する。吸着される物質が多いほど、そして該合金の組成が共晶(eutectic)組成に近いほど、以降のナノウィスカ成長のための過飽和状態がより早く実現される。触媒塊が融解するとき、形成される界面(これは表面張力「ぬれ」の考慮により決定される)が、塊をその初期位置に保持し、かつ基板―触媒粒子境界を横切っての原子の十分な拡散を許容するような表面領域をもたらすことが望ましい。ぬれが不十分であると、塊が1つのボールを形成し、小さな界面しか持たず、このボールが表面を横切って急速に移動するおそれが大きい。また、ぬれ効果が過度になると、塊は表面を横切って広がる可能性があり、断片化およびナノウィスカが予期できない位置に成長するおそれが大きい。
【0048】
この問題には多くのパラメータが関わっている。例えば、温度は酸化物を除去し清浄な基板表面をもたらすよう高くすべきであり、かつ塊が基板物質を吸着しすぎないように、そして表面に「食い込ま」ないようにするために、それほど高くしてはならない。特にIII−V族やII−VI族半導体物質の場合、V族またはVI族元素の基板からの蒸発が起こり、塊の移動に寄与する多くの自由原子ボンドを生成する可能性がある。蒸発を防止するために、アニールを適度なV族またはVI族物質を含んだ雰囲気内で行ってもよい。
【0049】
更に、触媒塊の初期の形と物質構成を考慮することが重要である。塊はその初期構成において、金などの触媒物質の領域と、該触媒物質と合金をなす例えばインジウムのような物質の領域とからなり、ナノウィスカ成長のための過飽和状態の成立を助けてもよい。これにより、シード粒子の形成に際して塊が基板物質と合金を形成する必要性が低減され、従って、塊の安定性と移動力に対する抵抗が増加する。好適には、触媒物質/合金形成物質/触媒物質というサンドウィッチ式の層構成が用いられる。
【0050】
塊の形については、融解した際に基板との界面の位置および形をほぼ同一に維持するような形が最適であることが見出された。こうすることによって、塊はそれが触媒シード粒子に変化したときに、元の位置に「固着」する傾向があり、広がることがなく、また基板表面を横切る移動を引き起こすような接触面積の減少を起こすこともない。純粋な触媒物質塊の好適な形状は、直径と高さの比が3:1であるようなディスク形状であり、この形は融解して理論的に完全な半球形になったときに、同一の界面面積をもたらす。実際には、10:1〜2:1の範囲の比であれば許容できることが見出された。しかし合金を形成する物質領域を含んだ触媒塊の場合には、かなり高い比である例えば50:1まで許容できることが見出された。これは触媒塊が基板表面と相互作用する必要が少なくなるからである。一般的に言って、触媒塊から触媒シード粒子が形成される間、基板表面とのぬれ界面の保持力は、表面を横切っての塊の移動を引き起こす力に抗するものであるべきである。
【0051】
特に、諸成長条件が触媒粒子の移動に及ぼす様々影響を考慮すると、所定の位置におけるナノウィスカの成長核形成に要する時間が基板表面上におけるそれぞれの塊の移動の特性時間よりも短くなり、該ナノウィスカを上記所定の位置からの所定の位置公差内に保つように、ナノウィスカ成長条件を好適に制御することが好ましい。
【0052】
以上の議論に鑑みて、当業者は触媒が基板表面を横切って移動する傾向を最小化するような条件を選ぶには、多くの実験的パラメータあるいはファクタが関係していることを理解するだろう。しかし、前記の開示の教示するところにより、当業者は基板表面上における触媒粒子の所望の安定性を達成するような適切な条件を選択することができるであろう。そのような条件は、触媒粒子を表面を横切って移動させる力が基板表面上のぬれ界面の保持力よりも小さくなることを確実なものとし、かつ成長核形成に要する時間が基板表面上の触媒粒子あるいは触媒塊の移動の特性時間よりも短くなることを確実なものとする条件を含む。
【0053】
以上に概括的に述べたように、本発明の方法は基板表面の所定の点に正確に位置決めされた1つ以上のナノウィスカを提供することができる。このような正確さを、非常に多くのナノウィスカを含むアレイ(「ナノエンジニアリングを用いた構造体」)に拡張することも可能であり、互いに対しておよび/または表面上の基準点に対して正確に位置決めされた106以上のナノウィスカアレイにまでさえ拡張可能である。
【0054】
ある実際の実施形態において要求される正確さは、その用途の特定の要請や用いられるナノウィスカまたはナノウィスカアレイの大きさによって異なる。当業者は触媒粒子となる物質のナノ塊の初期の位置決めが、そのような小さな対象物を形成し操作することの困難さに伴う制約を受けることを理解するだろう。従って、当業界で従来行われており、またここに説明する例でも採用されているリソグラフィ技術によって実現しうる精度は、レジスト層の物理的・化学的性質、特定のパターン露光装置の解像度などが課す制約を受ける。例えば、500nmオーダーの寸法の諸形状を有するパターンであれば比較的容易に作成できるが、20nmオーダーの寸法の諸形状を作成し、かつ基板上に正確に位置決めするのは非常に難しい。
【0055】
ナノスケールで作成された特定の構造を分析することもまた困難であり、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)などの利用可能な観察機器の解像度により制約される。
【0056】
しかし本発明によれば、本発明のプロセスにより形成されたナノウィスカの基板表面上での位置を正確に制御することが可能であり、与えられた用途の要求する精度を達成する。例えば、比較的形の大きい、例えば200nm乃至500nm(またはそれ以上)の形のナノウィスカを準備する場合、ナノウィスカ自体のサイズのばらつきが、それらが基板上に位置決めされる際の精度よりも大きくなるかもしれない。しかし、例えば20nm程度の小さなナノウィスカの場合は、位置精度は触媒粒子を基板表面上で位置決めする(例えばリソグラフィ技術により)際の精度によって制約されるであろう。
【0057】
いずれの場合にも本発明の方法によれば、ナノウィスカを基板表面上で位置決めする際の正確さを、触媒塊の正確な位置決めによって達成することができ、かつこれが成長過程において大きく劣化することがない。
【0058】
ナノウィスカを基板表面上で位置決めする際の精度を、ナノウィスカ自体の直径で定義してもよい。このような定義は、複数のナノウィスカがあってそれらの間隔が比較的近く、即ち隣り合うナノウィスカの間隔がそれらの直径数個分である場合に有用である。このような基準の下で、本発明によれば、隣接するナノウィスカ間の距離が所定の距離をウィスカ直径のおよそ20%以上ずれることのないようにナノウィスカを位置決めする。好適にはこのずれをナノウィスカ直径のおよそ10%より小さくし、より好適にはウィスカ直径のおよそ5%以下とする。
【0059】
ナノウィスカとナノウィスカアレイを規定する精度を、上の説明では所定の寸法からずれる割合に基づいて説明してきた。これはこうした定義が特定の実際の用途において、概して有用だからである。更にこうした所定の寸法からのずれの割合による定義は、例えばリソグラフィ技術による触媒粒子の位置決めにおける精度の欠如や、粒子の位置を測定し、それら位置の所定の基準点からのずれを解析する技法における精度の欠如を考慮したものであってもよい。従って、ある特定の実施形態において直線的な寸法について定義される精度は別の実施形態において定義される精度と異なっているかも知れない。いずれにせよ、ナノウィスカの位置の所定の基準点からのずれは、ナノウィスカ数個分よりも小さくすることが可能であり、これは例えばおよそ20nmより小さく、好適にはおよそ10nmより小さく、最も好適にはおよそ5nm程度以下とする。
【0060】
前に述べたように、触媒シード粒子は成長するナノウィスカに取り入れられる元素を含んでいてもよく、これは触媒金属と合金を形成する。例えば触媒粒子は金触媒粒子に何らかの割合でIII族元素またはV族元素を含んだ合金であってよい。基板表面にデポジットされた触媒塊が純粋な物質である場合、例えば純金である場合、または触媒金属と成長物質の不完全に飽和した合金である場合には、触媒粒子は当初基板に作用し、基板からいくらかの成長物質を溶け出させて完全に飽和した合金を形成する場合もある。基板からの物質の溶出は等方的に進まないかもしれないので、ナノウィスカの触媒作用を受けた成長が始まる前に触媒粒子がその初期位置からある程度移動してしまう可能性がある。このような移動により、基板上におけるナノウィスカの位置決め精度は明らかに劣化する。従って、プロセスの加熱成長段階を開始する前に、基板表面上にデポジットされた触媒塊に少なくとも幾分かの成長物質を取り込ませることが好ましい。これは例えば少なくとも1つの触媒金属層、例えば金の層とナノウィスカを形成する成長物質の層、即ち例えばIII−V族化合物の層とを有する層状の触媒塊をデポジットすることにより実現することができる。プロセスの成長工程を始めるときに、触媒金属と成長物質とは直ちに合金を形成し、それにより触媒粒子が基板に化学的に作用する傾向を最小化する。明らかに、幾分かの成長物質を取り入れることにより、触媒粒子が基板に化学的に作用する傾向が低減される。しかし、基板がある場所で局所的に溶解することが、例えばナノウィスカの基部においてより完全なインターフェイスをもたらすために、好ましいということを考慮していないわけではないが、デポジットされる触媒塊に少なくとも完全に飽和した合金を形成するように十分な量の成長物質を取り入れることが一般的に好ましい。
【0061】
本発明の好適な実施形態を、シングルワイヤ制御(single-wire control)を用いた垂直ナノウィスカアレイを合成するためのリソグラフィ製造方法について説明する。電子線リソグラフィ(EBL)および金属リフトオフを用いて金ディスクパターンを画成し、アニールにより成長触媒ナノ粒子へと変成させた。その後、有機金属気相エピタキシーを用いてナノウィスカを成長させた。
【実施例1】
【0062】
サンプルはN型のInP(111)Bウエハから作成した。この(111)B基板配向を選択したのは、その好適なワイヤ成長方向が(111)Bであることがよく知られているからである。これらのサンプルを、スピナ上でアセトンとイソプロパノル(IPA)で清浄にした。そしてそれらをポリメチルメタクリレート(PMMA)のフォトレジストでコーティングし、標準的なEBL手法を用いてディスクパターンをレジスト層に転写した。メチルイソブチルケトン(MIBK)内で現像処理し、IPA内で洗浄した後、サンプルを酸素プラズマで処理して、露光エリアに残存するレジストを除去した。プラズマ処理後に4%のフッ化水素酸内で20秒間エッチングして、表面酸化物を除去した。そしてサンプルを直ちに真空チャンバ内に移送し、熱蒸発により金膜をデポジットした(厚さは17〜45nmm径は125nm)。厚さを水晶振動子モニタを用いて測定した。熱アセトン内で10分、その後熱IPA内で5分のフォトレジスト層の溶解による金属リフトオフを行うことにより、図1(a)に示す構造体が得られた。その後サンプルを層流MOVPEリアクタ・セルに搬入し、グラファイトサセプタ上に載置した。気圧100ミリバール(10kPa)のもとで、6l/minの水素キャリアガス流を用いた。モル分率1.5×10−2の一定の亜リン酸塩流をリアクタ・セルに供給し、成長に先立ってサンプルを580℃で10分間アニールした。このステップの間に、酸化物が脱着され、基板表面上の金ディスクはInP基板と合金を形成する。そして温度を400℃に下げ、リアクタ・セル内にトリメチルインジウム(TMI)を導入して、ナノウィスカの成長が始まった。TMIのモル分率は3×10−6〜6×10−6とし、2500〜5000のV/III(PH3/TMI)比となった。成長時間によってワイヤ長が決まるが、成長時間は典型的には8分とした。図1(b)は(a)の成長後の構造を示している。ワイヤの径は頂部で140nm基部で200nmである。サンプルの特徴観察(characterization)をJSM6400F電界放射型走査電子顕微鏡を15kVで動作させて行った。成長前後の走査型電子顕微鏡写真(SEM)を比較することにより、ナノウィスカが基本的に触媒粒子の位置に成長したことがわかる。
【実施例2】
【0063】
この実施例はナノインプリントリソグラフィ(NIL)に基づくものである。NILは多くの面で電子線リソグラフィ(EBL)と比肩しうる結果をもたらすことができるが、そのコストはかなり低く、かつスループットはかなり高い。NILを用いてInP基板に成長触媒金粒子を用いてパターン形成した。その後、有機金属気相エピタキシー(MOVPE)システム内で気相−液相−固相(VLS)成長により垂直に整列したInPナノウィスカの成長が行われた。選択した物質はInPであったが、この方法は他のIII−V族物質に対しても同等の有効性を有する。ここでは(111)B基板配向とした。これはナノウィスカの好適な成長方向が<111>Bであるためであり、垂直に整列したアレイが望ましいからである。
【0064】
1インチのSiウエハ上にEBLとドライエッチングにより、ナノインプリントプロセスのためのスタンプを形成した。ZEP520A7/PMMA950Kのからなる2層レジストを使用し、それを35kVにおいて、プローブ電流10pAで露光した。レジストの現像後、30nmのクロムを熱蒸発させ熱したMicrodeposit RemoverS−1165 (Shipley社)内でリフトオフさせた。そして金属層をエッチング用マスクとして用いて、スタンプの形態学的構造を形成した。SF6/O2内での反応性イオンエッチングを用いて高さ300nmの構造を生成した。これは原子間力顕微鏡(AFM)によって測定した。コラム(柱状体)は最隣接距離1マイクロメートルの六角形パターンに配列される。残存するCrはウェットエッチングによって除去した。そして窒素雰囲気内で、トリデカフルオロ−(1,1,2,2)−テトラハイドロオクチルトリクロロシランの単層蒸着により、スタンプに固着防止処理を施した。使用後のスタンプの走査型電子顕微鏡写真(SEM)像を図2に示す。
【0065】
基板を触媒金ドットによってパターン形成するために、インプリントを用い、その後金属蒸発およびリフトオフを行った。リフトオフ層(LOL)およびPMMAの2層レジスト方式を用いた。始めに200nmのLOLおよびPMMAの2層レジスト方式膜をスピンコーティングし、180℃で弱焼結した(soft-baked)。その上に100nmのPMMA50kを蒸着し焼結した。インプリントは220℃、50バールで3分間行った。そしてサンプルを酸素プラズマ中で12秒間5ミリバールでアッシングし、その後MF319内で現像した。現像剤はLOL層を等方的に溶解し、良好な金属リフトオフに必要とされるアンダーカットプロファイルを形成する。そしてサンプルを酸素プラズマで12秒間5ミリバールで簡単に処理し、インプラントした領域から残存レジストを除去した。プラズマ処理後、サンプルを4%のフッ化水素酸内でエッチングして表面酸化物を除去した。その後サンプルを直ちに真空チャンバに移送して、40nmの金の膜を熱蒸発によって蒸着した。そしてRemoverS−1165内のホットプレート上において金属リフトオフを行った。
【0066】
その後、層流MOVPEシステムを用い、サンプルをRF加熱したグラファイト・サセプタ上に載置して、NILによって輪郭付けしたサンプル上にナノウィスカを成長させた。気圧100ミリバール(10kPa)のもとで、6l/minの水素キャリアガス流を用いた。モル分率1.5×10−2の一定の亜リン酸塩流をリアクタ・セルに供給し、成長に先立ってサンプルを580℃で10分間アニールした。このステップの間に、酸化物が脱着され、基板表面上の金ディスクはInP基板と合金を形成する。そして温度を400℃に下げ、リアクタ・セル内にトリメチルインジウム(TMI)を導入して、ナノウィスカの成長が始まった。TMIモル分率は3×10−6とし、成長時間は16分とした。サンプルの特徴観察(characterization)をJSM6400F電界放射型走査電子顕微鏡を15kVで動作させて行った。
【0067】
リソグラフィ法は設計に大きな自由度をもたらし、様々な用途の多くの異なるパターン形成を可能にする。異なるワイヤ密度と異なるワイヤ径を有する2つの構造を図3および4に示す。これは本発明の第1の実施形態を構成する。図3には高密度アレイの走査型電子顕微鏡(SEM)像が示されている。この8×8μm2アレイは最隣接距離が250nmの六角形のユニットセルからなる。触媒粒子は直径45nm、厚さ17nmの金ディスクからなる。厚さ−直径比の重要性については後で述べる。成長後、得られたワイヤは長さがおよそ3μmで頂部の径が50nmである。これに対し基部の径は(重い「脚」の直ぐ上の実際にワイヤがスタートするところで測定している)より大きく、およそ10nmである。図の入れ子部分は個々のワイヤの形状を示している。
【0068】
図4に示す構造はフォトニック結晶のフィールドにおけるパターンである。フォトニック結晶では電磁波が誘電率の周期的な変調を経験し、それによりフォトニックバンドギャップが生ずる。これは半導体における電子的バンドギャップと類比的なものである。このことは2次元のフォトニック結晶では、ある波長の電磁波は平面内を伝播することができないことを意味する。しかし、フォトニック結晶内の欠陥により、バンドギャップ内に電磁モードが許容され、これらの欠陥を巧みに処理することにより、光の流れを制御し、レーザキャビティや導波管などを実現することができる。図4はナノワイヤを利用したフォトニック結晶構造の例を示している。このパターンは空気中における高屈折率の柱状体からなり、非常に大きなフォトニックバンドギャップを有するハニカム格子を形成している。ワイヤ間距離を500nm、ワイヤ径を140nmに選定した。これを誘電率11.4について計算すると、およそ500nmの波長領域のフォトニックバンドギャップを与える。リソグラフィ的な手法の性質として、図3に示すように、いくつかのワイヤの径を変えることにより、あるいはまたあるいくつかのワイヤを全く無くすことにより、フォトニック格子(photonic lattice)に欠陥を導入することが容易にできる。成長前の金ディスクの径を125nm、厚さを47nmとすることにより、成長後のワイヤ頂部の径は140nm付近となった。これは所望の値である。ワイヤ長はおよそ1μmであった。
【0069】
理想的なアレイ成長のためには、シード粒子の形状、成長中のガス流および温度などのパラメータを最適化しなければならない。各金ドットから単一の垂直ナノワイヤを生成する能力はシード粒子の形状に強く依存することが見出された。図5は厚さ17nmで異なる径を有するディスクから得られた結果を示している。図の左から成長前のディスク径はそれぞれおよそ50、100、200、400、800nmである、一般的な傾向は明らかである。即ち、薄いディスクは壊れて分離し多くの小さな触媒粒子を形成し、他方で厚さ対直径比が大きいものほど安定である。経験的に厚さ対直径比がおよそ1/3のものが良い結果をもたらす(これはディスクがアニール中にその径を代えることなく融解半球に変化するという非常に単純なモデルと一致する)。図5においてアスペクト比は一番左側の構造体に対して最適化されているが、左から2番目の構造体で1/6のアスペクト比を有するものもよい結果となっており、これはある程度のトレランスがあることを示している。反対側の端のものは非常に高い厚さ対直径比を有しているが、これは、より柱状に近い構造体がアニール中に半球形に変化したときに、サイト(位置)制御上の問題を引き起こすものと推測される。例えばフォトニック結晶への利用などで、同一構造体内で非常に異なる径のワイヤを形成したいときには、各ワイヤ径に最適化されたアスペクト比を得るためには、複数のEBLパターニングおよび金属蒸発が必要となるかもしれない。触媒粒子は金と合金形成過程で基板から取り入れられたある量のインジウムとからなる。第1の近似として、ワイヤ形はこの触媒粒子の径として定義される。しかし{110}側面において互いに競合する成長メカニズムにより、これは頂部径に対してしか成立しない。従来の研究でも報告されているように、基部は多くの場合より大きくなり、ワイヤのテーパが観察される。テーパは温度が高いほど顕著となる。従って、ロッド状のワイヤに対しては、低い成長温度が好ましい。図3および4に示す構造は、少ない割合ではあるが不要な欠陥を含んでいる。このような欠陥は望ましくない位置において核形成し成長したナノウィスカ即ちワイヤや、成長途中で成長方向が変わった(キンクした)ワイヤによって引き起こされる。温度とV族/III族比とがワイヤがキンクの傾向に影響することが観察された。V族/III族比については両極端を観察することができた。即ち、低いV族/III族比は頻繁なワイヤキンクを引き起こし、他方で高いV族/III族比はワイヤ核形成およびワイヤ成長速度の低さに関連する問題を引き起こした。V族/III族比を一定に保った場合、ワイヤキンクの問題は温度が低い場合により大きくなる。これは以前に報告されている結果と一致する。従って、高アスペクト比のロッド状ワイヤ即ちナノウィスカを形成しようとする場合、テーパ効果を最小化する低温度とキンクを防止する高温度との間で妥協点を見つけなければならない。InPに基づくこれらの構造に対して、温度400℃が適していることを見出した。製造パラメータを更に最適化して、このような欠陥の存在を最小化するか、あるい完全に排除すべきである。
【0070】
この例は図3および図4に示すように、垂直InPナノウィスカの非常に均一なアレイの合成の実例となっている。ワイヤは別々の触媒金粒子をシードとしており、本方法により、ワイヤの位置と直径と長さとを制御している。このような製造方法は、特定の用途のための構成ブロックとしてのナノウィスカにとって重要である。ナノワイヤデバイスのアレイを利用した用途として、2次元フォトニック結晶およびナノワイヤカソードを有するFED(電界放出ディスプレイ)の製造がある。直立したワイヤに接点を形成する技術と組み合わせて、単一ナノワイヤ要素(SETやRTDなど)を組み合わせてより複雑なデバイスを形成することができる。
【0071】
この例は、アレイ内において高い位置精度を達成するMOVPE(MOCVD)プロセスの利用を例示している。MOVPEプロセスにより、TMI蒸気分子として存在するインジウムがナノウィスカ成長サイトに比較的多数存在する。これは反応チャンバ内の気圧が比較的高い(10ミリバール)からである。もう一つのファクタは動作温度である。基板表面にバルク成長があまり発生しないように、MOVPEの動作温度は比較的低いおよそ400℃に選定する。しかし、TMIの分解後に解放されたインジウムイオンは成長サイトまで長い距離を移動する場合がある。
【0072】
また別のファクタはホスフィンが成長サイトで分解した際に生ずるリンイオンの活動である。動作温度は、この活動が成長サイトに存在するインジウムの量に均衡し、触媒粒子がその所定サイトから移動することによってより多くのインジウムを集めるよう強いることなく成長を維持するように選定される。
【0073】
本発明による別のナノウィスカ成長プロセスは化学ビーム成長法(CBE)であり、これは本願出願人による同時係属中の米国特許出願第10/613,071号(2003年7月7日出願)に記載されている。化学ビーム成長法においては、反応チャンバ内の圧力が、MOVPEの場合に比べて数桁異なり、かなり小さくなってる。また基本的に1種類のビーム物質即ちTMIと気体のリンを用いてインジウムリンを生成している。分子を含むリンは成長サイトから離れて分解する。このためプロセスの制御が容易である。なぜなら動作温度とリンの活動とを切り離すことが可能であり、触媒粒子の位置精度を維持することが可能だからである。
【0074】
マスクを使用の有無を問わず、基板上にデポジットされた塊の初期形状が、その塊から形成される触媒粒子の正確な位置決めにとって重要であることがわかっている。図6は理想的な場合を示しており、融解した塊は当初の塊と正確に同じ表面積を占めている。図6(a)はディスクとして形成された金触媒を示し、図6は融解したディスクが完全な半球となったものを示している。金の小滴が基板から物質を吸収することを無視して計算すると、基板との界面において融解した小滴が元のディスクと同一の直径を維持するためには、金の直径を厚さの3倍にすればよいことがわかる。プライムのない量は加熱前を表し、プライムを付けたものは加熱後を表すものとする。tは金の厚さ、rは半径である。体積VとV’とは同一であると仮定する。
V=V’
πr2×t=4πr3/3・2
t=2r/3 即ち d=3t
実際には、d:tの比が12:1と2:1の間であれば、満足な結果が得られることが解っている。
【0075】
CBEプロセスにおいて動作パラメータを正確に精度良く制御すればナノウィスカアレイ内において正確に位置決めされたナノウィスカを形成することができるが、本発明の第2の実施例による別の好適な方法では、基板表面上にマスクを配置する。このマスクは2つの機能を持ち、その第1は表面上におけるバルク成長を防止することである、第2は触媒粒子の移動を抑制することである。本発明のマスクはエピ・マスクと名付けられる(エピタキシー抑制部)。
【0076】
続いて図7を参照すると、(111)面を有するガリウムヒ素基板20上にエピ・マスク22が形成されている。これは二酸化珪素などの無機物質としてもよく、または市場で手に入る様々な種類の有機高分子物質としてもよい。
【0077】
図7(b)に示すように、フォトレジスト物質24を層22に塗布し、例えば電子ビームを用いてこれにパターンを描く。そしてフォトレジスト物質をエッチングし、図7(c)に示す所定パターンを形成する。即ちフォトレジストおよびその下層のエピ・マスクに開口が形成され、ナノウィスカ成長のための所定サイトが画成される。
【0078】
続いて、図7(d)に示すように所定厚さの金の層が30に塗布される。その後のエッチング工程によりフォトレジスト層24とその上の金30が除去され、各サイトの開口30内に所定深さ(開口幅の3分の1)の金が存在するエピ・マスク22が残る(図7(e))。
【0079】
図7(e)に示す基板に適切な洗浄を施した後、図7(f)に示すCBE反応チャンバ34に送る。基板を20をヒータ38に接続された金属サンプルホルダ36に設置する。チャンバ周囲のリング49に液体窒素を満たして、クライオシュラウドとする。また。真空ポンプ42が設けられている。
【0080】
液相のTMIn、TBPソース44、46が恒温槽に蓄えられ、液体ソースの温度を制御することにより、液体蒸気の分圧を制御する。蒸気は複合パイプ48を経てソースインジェクタ50に供給される。ソースインジェクタ50はチャンバ内に分子ビームを安定かつ一定の強度で噴射する。III族物質は基板表面で分解する、即ちガリウムである。これに対し、V族のリンを含む物質は成長チャンバに噴射される前にインジェクタ内の高温で分解する。これらのインジェクタは分解セル(cracking cell)と呼ばれ、その温度は900℃程度に保たれる。ソースビームは熱せられた基板表面に直接衝突する。このとき分子は基板表面から十分な熱エネルギを得て、原子を表面に残してその3つのアルキルラジカルすべてに分離するか、または分離しない状態もしくは部分的に分離した状態で散乱される。これらの過程のどちらが支配的となるかは基板の温度と分子の入射流量に依存する。高温では、この成長速度は脱着となりサイトをブロックする。
【0081】
マスク22を設けることにより、アニール工程とナノウィスカ成長工程の不均衡が基板表面で金触媒シード粒子が移動を引き起こすことが防止される。シード粒子が形成されたとき、粒子のマスク開口縁部からの距離はナノウィスカの直径よりも小さくなる。これは最終的に得られるナノウィスカについても同様にあてはまる。
【実施例3】
【0082】
図8に示すように、厚さ27nmの窒化ケイ素マスクをInP基板上に形成した。リソグラフィプロセスにより、マスクに円形の開口を形成した。金触媒粒子をマスク内の円形開口に形成した。金触媒粒子からナノウィスカを成長させた。ナノウィスカはマスク開口の縁部との間に狭い隙間を残して、マスク開口をほぼ満たした。
【実施例4】
【0083】
GaAs基板上に金触媒粒子を形成した。粒子を形成する直前に、蒸着により構造全体上に薄い酸化物SiOxを形成し、基板上での金粒子の移動を制限した。その結果を図9(a)および図9(b)の2つのサンプルに示す。これらは製造方法と熱処理に関しては同一である。違いは図9(a)の例では薄い(7nm)SiOx酸化物層を形成した点のみである。この酸化物はSiOソースから熱蒸発させた。サンプル上の酸化物がSiOとなるかSiO2となるかは蒸発チャンバ内の真空条件に依存する。図からわかるように、薄い酸化物はサンプルの振る舞いを大きく変える。三角形の形成は見られるが、移動ははるかに少ない。酸化物の下ではメルトが表面に沿って移動する。元のディスクが見えるが、これは酸化物が金ディスクの上にシェルを形成していることを示している。被覆酸化物があっても、ウィスカ成長は滞りなく行われた。このことは、酸化物が成長温度(典型的にはおよそ550℃)において除去されることを意味する。
【実施例5】
【0084】
−InAs(100)基板
Au−In混合物において、451℃で38.4%のInに共晶点(eutectic point)がある。この組成をサンプル上に45nmの膜厚で蒸着した。AuとInは同時に共には蒸着しない。従って、Au−In−Auのようにサンドイッチしたものを用いた。各膜厚は14:17:14nmである。比較のために純粋な金としたものも作成した。これらのサンプルを455℃で20分間加熱し、図10(a)および図10(b)に示す結果を得た。図10(a)はAu−In−Auのサンドイッチの場合を示し、図10(b)は純粋な金の場合を示す。Inを含んだサンプルは表面上に小滴を形成し、その際基板からInを取り入れる必要がないように思われる。純粋な金の場合はInを取り込む必要があり、小滴は基板内に掘り進んでいる。従って、基板上に小滴が形成されるのではなく、小滴の頂部はほとんど表面と同じ高さになっている。小滴は結晶の対称性に倣う。正方形、そして時には長方形の形状は(100)面の四角形形状から理解できる。経験的な法則として、諸形状のサイズが小さいほど、より結晶の対称性に倣う傾向がある。最大の構造が多分に丸いままであったのに対し、最小のものはほぼ完全な四角形となった。AuとInを混合したサンプルの方が良い結果であったが、純粋な金のサンプルも、位置決めを考慮すれば非常によい結果をとなった。このことは、位置決めを考慮すると(100)面が(111)よりもより適しているか、またはInAsがGaAsよりもより適した物質である、ということを意味している。
【実施例6】
【0085】
−GaAs(111)B上のAu−In−Auサンドイッチ
GaAs基板上のAu−In−Auサンドイッチを用いた。GaAs(111)基板を用いた。これはこのシステムのウィスカ優先成長方向が(111)であるからである。上記サンプルに14nmのAu:17nmのIn:14nmのAuからなる厚さ45nmの金属膜を蒸着した。このサンプルを450℃で15分間加熱した。図11(a)および図11(b)は触媒粒子が問題なく位置決めされていることを示している。この実施形態ではInは小滴であってもよく、基板から多くのGaを吸着することがない。450℃程度の温度はInAsの成長に適した温度範囲に十分入っている。我々のシステムではInAsウィスカの通常の成長温度は410〜460℃である。
【0086】
図12には、3次元フォトニックバンドギャップ構造を提供するための本発明の第3の実施形態を示している。図7を参照して上に説明した第2実施形態のプロセスを用いて各ナノウィスカ成長サイトに金触媒塊101を供給する。結果を図12(a)に示す。ここでシリコン基板100は111上面を有する。シリコンナノウィスカのセグメント102を成長させるために、CBEプロセスを用いて成長を開始させる。所定時間後、反応チャンバ内に噴射される分子ビームの構成要素を素早く切り替え、シリコンセグメントの上にナノウィスカのゲルマニウムセグメント104の成長を誘起する。1つのナノウィスカ内において異なる物質を突然にヘテロ接合を形成するプロセスについては、本出願人による同時継続中の米国特許出願第10/613,071(2003年7月7日出願)に詳しく説明されている。
【0087】
結果として示されているものは、交互に並ぶ多くのゲルマニウムとシリコンのセグメントからなるナノウィスカである。なお別の方法として、ゲルマニウムの代わりにアルミニウムを用いてもよい。その後ナノウィスカを酸化雰囲気内で加熱し、シリコンとゲルマニウムをそれぞれの酸化物である、二酸化ケイ素と酸化ゲルマニウムに変化させる。また、アルミニウムを用いた場合にはアルミニウム酸化物(サファイア)に変化させる。図12(b)に示すように得られるナノウィスカはその長さに沿って異なる屈折率を有する領域106、108を有する。領域106、108の長さは調節することができ、3次元フォトニックバンドギャップ構造が得られる。該構造において、ナノウィスカのサイト位置が2次元以内のバンドギャップ特性を与え、ナノウィスカの長さに沿った屈折率の変化がフォトニックバンドギャップ構造の第3の次元を与える。
【0088】
第4の実施形態では、図13(a)および図13(b)に、フォトニックバンドギャップアレイを形成し、該アレイを通して光を透過するための光源を一体化したナノエンジニアリングで形成された構造を示している。図7を参照して上に説明した第2実施形態のプロセスを用いて、各ナノウィスカ成長サイトに金触媒塊101を供給する。結果を図13(a)に示す。ここでインジウムリンの基板130の上には金触媒粒子132が形成されている。InPナノウィスカのセグメント134を成長させるべく、CBEプロセスを用いて成長を開始させる。所定時間後、反応チャンバ内に噴射される分子ビームの構成要素を素早く切り替え、InPセグメントの上にナノウィスカのインジウムヒ素セグメント136の成長を誘起する。そしてInAsセグメント136の上に更なるInPセグメント138を成長させる。1つのナノウィスカ内において異なる物質を突然にヘテロ接合を形成するプロセスについては、本出願人による同時継続中の米国特許出願第10/613,071(2003年7月7日出願)に詳しく説明されている。その後アレイを透明マトリックス媒体140内に封入する。
【0089】
図13(b)に示すように、極小LED量子ドット構造が結果としていられる。ウィスカアレイから選択されたウィスカ150は、インジウムヒ素からなる内側領域136の両側に、インジウムリンからなるアノードおよびカソード外側領域134、138を有し、量子井戸を形成している。領域134、138はそれぞれ金属化領域152、154として形成されたアノードおよびカソード電気接点に接続されている。格子整合(lattice matching)と不整合応力の解放が必要とされ、所定の波長しか許容されない平面状デバイスと異なり、本実施形態においてはLEDの波長が完全に可変である点が重要である。これは所望の発光波長を得るべく、ダイオードを形成する物質をどのような所望の組成とすることもできるからである。
【0090】
図14はナノインプリントリソグラフィのスタンプとして用いる本発明の第5の実施例を示す。基板300上には、各サイト304に、実施例1として説明したプロセスによりナノウィスカアレイ302が形成されている(一部のナノウィスカのみを明示的に図示している)。ナノウィスカはグループ化され、パターン304を形成するように配列されており、NILプロセスに応用した場合に必要とされるナノ構造を形成する。ナノウィスカの長さは所望であれば、1マイクロメートル以上とすることができ、これにより任意の深さのナノ構造の形成を可能とする。
【実施例7】
【0091】
この実施例は本発明のナノウィスカアレイ製造の際に可能な精度を例示する。
【0092】
図15は本発明に従って作成されたナノウィスカアレイの平面図であり、ナノウィスカは一辺が1μmの六角形に配列されている。
【0093】
図16は図15に示すアレイの一部の拡大図であり、このような画像を解析するコンピュータプログラムによって得られるナノウィスカの位置を、個々のナノウィスカについて求め、その位置を十字60のような十字で示している。図16にはまた、コンピュータプログラムで生成した格子グリッドの諸点の位置(ナノウィスカのターゲット位置)を例えば十字62のような点として示している。グリッド点の位置と個々のナノウィスカの位置をコンピュータプログラムで求めた後に、格子点と実際の位置点との差を各ナノウィスカについて生成した。図17はそれらの差をヒストグラムプロットとして表している。図17に示す図に基づいて求めた、コンピュータで生成した格子グリッドからの実際の位置のずれの平均値は36nmであり、標準偏差は23nmであった。図示の構造に対して、これらの結果を格子パラメータ(=六角形セルの一辺)と比較すれば、平均ずれ量の割合は3.6%、標準偏差の割合は2.3%となる。また、ほとんどすべてのナノウィスカについて、各ウィスカのターゲット位置からのずれはウィスカの径よりも小さく、実際のところほとんどの場合、ウィスカ径の半分より小さく、多くのウィスカはそのターゲット位置からのずれが径の20%より小さく、また径の1%乃至5%でさえあり、あるいは実質的にターゲット位置と一致(ずれが0.5%以下)する。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】(a)は本発明の実施例1のSEM顕微鏡画像であり、フォトニックバンドギャップアレイを生成する際の成長前の1つの六角形セルを示す。およそ直径125nm厚さ45nmの金ドットが基板表面上に観察できる。(b)は(a)と同じ構造の成長後を示す。ワイヤは頂部径140nm、基部径200nmであり、長さは約1μmである(視線角度45度)。
【図2】本発明の実施例2に用いられるNILスタンプの斜め方向から見たSEM顕微鏡画像である。スタンプはCrをSF6O2内でのエッチング用のマスクとして用いて1インチのSiウエハから製造されたものである。各コラムは高さ300nm頂部径約200nmで、コラムは最隣接距離1μmの六角形パターンで配列されている。
【図3】本発明の実施例1によって製造された本発明の第1の実施形態による細いワイヤの高密度アレイのSEM像である。ワイヤは長さ3μm、頂部径50nmであり基部の径はそれより大きい。本図において主画像は45度の角度、入れ子画像は20度の角度から撮られたものである。
【図4】(a)はナノワイヤハニカム格子構造の上面図であり、(b)は同構造を45度から見た図である。欠陥エンジニアリング(defect engineering)の可能性を利用してウェーブガイドのような構造を形成したものである。
【図5】金ドットの厚さを17nmに固定し、異なる厚さ対高さ比を有する金ドットから成長させたナノワイヤを示す図である。元のドットの径は左からそれぞれ、50、200、200、400,800ナノメートルである。
【図6】(a)は本発明による、触媒シード粒子を形成するために融解させる前の触媒物質塊を示す図であり、(b)は触媒シード粒子を形成するために融解させた後の触媒物質塊を示す図である。
【図7】(a)〜(e)は本発明の第2の実施形態による、マスクの開口内において基板上に触媒粒子を形成し、その後CBEプロセスによってナノウィスカを成長させる際の工程を示す図である。(f)はCBEチャンバを模式的に示す図である。
【図8】本発明の実施例3のSEM像であり、上方から片側に傾けて撮像された、触媒シード粒子を位置決めするためのマスクの使用を示す図である。
【図9】本発明の実施例4のSEM像であり、(a)はGaAs(111)Bに45nmのAuを載せたものを7nmのSiOxで覆い、450℃で15分間加熱したものを示し、(b)はGaAs(111)Bに45nmのAuを載せたものを、450℃で15分間加熱したものを示す。
【図10】本発明の実施例5のSEM像であり、(a)はInAs(80)に45nmのAu−IN−Auのサンドイッチを載せたものを、450℃で20分間加熱したものを示し、(b)は左の例と同じであるが、純粋な金を用いている。
【図11】本発明の実施例6のSEM像であり、(a)はGaAs(91)に45nmのAu−IN−大きめのAuのサンドイッチを載せたものを、450℃で15分間加熱したものを示し、(b)はより大きい形成物をクローズアップで示す図である。元のディスク径は2μmであり、これはd(径)=48t(厚さ)の形状を意味する。
【図12】3次元フォトニックバンドギャップ構造を形成するための本発明の第3の実施形態を示す図である。
【図13】フォトニックバンドギャップ構造中にLED光源を形成するための本発明の第4の実施例を示す図である。
【図14】NILスタンプとして用いられる本発明の第6の実施形態を示す図である。
【図15】本発明により作成されたナノウィスカアレイの平面図であり、大きなアレイを形成するナノウィスカの正確な位置決めを示す。
【図16】図15のアレイの拡大平面図であり、格子点の位置と共に実際のナノウィスカ位置が示されている。
【図17】図16に示した格子点からのナノウィスカの実際の位置のずれを示すヒストグラムである。
【技術分野】
【0001】
本出願は米国仮出願第60/459,989号(2003年4月4日出願)、第60/472,721号(2003年5月23日出願)、第60/512,771号(2003年10月21日出願)および第60/524,891号(2003年11月26日出願)に基づく優先権を主張するものであり、これらの出願の全体を引用によって本願に取り入れる。
【0002】
本発明は概括的には、ナノテクノロジー技術によって製造する構造およびデバイスに関するものである。より詳しくは、本発明は、少なくとも1つの要素を含み、該要素は実質的に1次元的な形態であってその幅即ち径においてナノメートルサイズであり、いわゆる気相−液相−固相(VLS)メカニズムによって製造される要素を含んだ構造およびデバイスに関わるものである。本明細書においては、このような要素をナノウィスカと称する。
【背景技術】
【0003】
ナノテクノロジーは多様な分野に渡っており、ナノエンジニアリング分野を包含する。ナノエンジニアリングとはナノスケールの工学技術を実践するものと解することができる。これは原子スケールの微小デバイスからマイクロスコピック(顕微鏡的)スケールなどのより大きなスケールまでのサイズに渡る構造であってもよい。一般にこのような構造はナノ構造体を含む。一般的にはナノ構造体とは、少なくとも2つの次元方向においておよそ1μmより小さい寸法(即ちナノメートル寸法)を持つデバイスである。通常は、厚さが1μmより小さい1以上の層からなる層状構造または原料素材はナノ構造体とはされない。このように、ナノ構造体という語は、独立したあるいは孤立した構造体であって、2つの次元方向においておよそ1μm以下の寸法であり、より大きな構造体とは異なる機能および用途を有し、ある程度大きな構造体、例えばマイクロオーダーの大きさの構造体を製造する従来の工程とは異なる方法で作製される構造体を意味する。従って、ナノ構造体という分類を厳密に規定する大きさについての数値上の境界は特にないが、このナノ構造体という語は当業者には明らかなものとして理解されるある一つの分類となっている。多くの場合ナノ構造体を特徴づける上記少なくとも2つの次元方向の寸法の上限は、およそ500nmである。技術分野によっては、少なくとも2つの次元方向においておよそ100nm程度以下の寸法を有する構造体と解釈される場合もある。それぞれの分野において当業者は意図された寸法を理解している。上に述べたように、本出願において「ナノ構造」あるいは「ナノウィスカ」とは、細長い構造体であって少なくとも2つの幅方向においておよそ1μm以下の寸法を指すものとする。
【0004】
ナノ構造は1次元的なナノ要素であって、実質的に1次元的な形体を有し、幅即ち径がナノメートルサイズであって、一般にナノウィスカ、ナノロッド、ナノワイヤ、ナノチューブなどとして知られるナノ要素を包含する。
【0005】
ナノウィスカに関しては、いわゆるVLS(気相−液相−固相)機構による、基板(基体substrate)上でのウィスカ形成プロセスがよく知られている。基板上に置いた触媒粒子(例えば、多くの場合金粒子)をなんらかの気体の存在下で加熱し、メルト(融解物melt)を形成する。ピラー(柱状体・鉱柱)がメルトの下に生成して行き、メルトはピラーの頂部で上昇する。結果として、固化した粒子メルトが頂部に乗った状態の所望物質のウィスカが得られる。(E.I Givargizov, Current Topics in Material Science, Vol. 1, pp79-145, North Holland Publishing Company, 1978を参照されたい。)このようなウィスカのサイズはマイクロメートルのレンジにある。
【0006】
成長するウィスカの頂部にある触媒粒子の存在によって触媒作用を受けるウィスカ成長は、従来VSL(気相−液相−固相プロセス)と呼ばれてきたが、ウィスカ成長のための触媒として有効に作用するためには、触媒物質は必ずしも液体状態である必要はないことがわかってきた。触媒粒子がその融点以下の温度にあり、固体状態にあると推測される場合であっても、ウィスカを形成するための物質は粒子ウィスカ間の境界に到達し、ウィスカの成長に寄与することを示唆する少なくともいくつかの証拠がある。このような状態の下で、ウィスカ成長に際してその先端に添加される成長物質、例えば原子は、固体の触媒粒子を介して、あるいは固体触媒粒子の表面に沿って、成長温度にあるウィスカの成長端に拡散することができるのかもしれない。特定の温度環境、触媒物質の組成、目的とするウィスカの組成、そしてウィスカ成長に関係する他の条件などの下での正確な機構がどんなものであれ、触媒粒子によって触媒作用を受けるウィスカの伸張という全体的な効果は明らかに同一である。本出願においては、「VLSプロセス」「VLS機構」その他の同等の用語は、ナノウィスカ成長がその成長端に接触する液体または固体の粒子によって触媒作用を受けるすべての触媒過程を含むものとする。
【0007】
PCT国際出願公報WO01/84238の図15および図16には、エアロゾル(噴霧)によるナノメートルサイズの粒子を基板上にデポジットし、これら粒子をシード(種子)としてフィラメント即ちナノウィスカを生成する方法が開示されている。
【0008】
本明細書では、ナノウィスカという語はナノメートルサイズの幅即ち径(一般的には横断寸法)を有する1次元的なナノ要素であって、いわゆるVLS機構によって形成されるものを意味するものとする。ナノウィスカは当業界で「ナノワイヤ」とも呼ばれ、また文脈によっては単に「ワイヤ」とも呼ばれる。本願においてこれら用語を用いる場合「ナノウィスカ」という語と同じである。
【0009】
ナノウィスカ技術を現今の半導体部品技術と融合させるために、基板上の選定された位置にウィスカを位置決めすることが望ましい。
【0010】
ナノウィスカ成長についていくつかの実験的研究がなされているが、最も重要なものHiruma達の報告である。彼らはIII−V族ナノウィスカをIII−V族基板上に有機金属気相蒸着法(MOCVD)により成長させた(K. Hiruma, et al., J. Appl. Phys. 74, page 3162 (1993); K. Hiruma, et al., J.Appl. Phys, 77, page 447 (1995); K. Hiruma, et al., IEICE Trans. Electron. E77C, page 1420 (1994); K. Hiruma, et al., J. Crystal Growth 163, pages 226 - 231 (1996)を参照)。彼らの方法は、薄いAuフィルムをアニールしてシード粒子を作ることを利用している。このようにして、彼らは均一なウィスカ幅分布を実現し、その平均サイズをAu層の厚さおよび該層をナノ粒子に変化させる方法によって制御することができた。この手法では、サイズと表面被覆率(surface coverage)を別々に制御することは困難である。
【0011】
文献Sato et al. Appl. Phys. Lett. 66(2), 9 January 1995は、4つのナノウィスカを成長させる試みを開示している。この方法では、ナノウィスカの位置即ちサイトをSiO2マスクを用いて予め決める。その後マスクを取り去って成長を始めた。その結果は、エレクトロニクス/フォトニクス部品の用途のためにナノウィスカが十分正確に位置決めされた構造を製造するものとしては不十分なものであった。その理由の1つはナノウィスカ成長場所を正確に局在化することができなかったことであり、これはシード粒子を形成するのに薄膜を利用したことによる。そしてまた、4つのナノウィスカからなる構造を、多くの用途で必要とされる多数のナノウィスカへと拡張することができなかった。
【0012】
米国特許第5,332,910号は複数の半導体ロッドが半導体ロッドから発せられる光の整数分の一に等しい間隔で配列されたものからなるマイクロキャビティレーザーを開示している。1つの実施形態ではナノウィスカが成長する基板にシードを形成するために収斂されたイオンビームを用いている。別の実施形態ではSiO2マスクにエッチングされた孔にナノウィスカをMOCVDによって成長させている。
【0013】
特に興味深い要素はフォトニックバンドギャップアレイである。これは基板内の多数の要素(突起でも孔でもよい)のアレイを含み、周囲の媒体とは異なる屈折力をもたらす。選択領域MOVPE成長(SA−MOVPE)を用いて2次元フォトニックバンドギャップ構造が生成されているが、こうした構造は応用対象が限られているように思われる。(Akabori et al. Phsica E13, pp 446-450, March 2002を参照)。
【0014】
カーボンナノチューブからフォトニックバンドギャップ構造を形成する研究もなされており、自己組織化ナノスフィアリソグラフィやオプティカルリソグラフィを用いて単シード(single-seeded)アレイが合成されている。(K. Kempa et al., Letters, Vol. 3, No. 1, pp 13-18, 19, November 2002)。しかし、屈折率の異なる領域を形成するのにチューブは理想的な構造ではない。
【0015】
同時係属中の米国特許出願第10/613,071号(2003年7月7日出願、その内容を本引用によって本願に取り入れる)、および同時係属中の国際出願PCT/GB2003/002929において、フォトニックバンドギャップ構造に適したナノウィスカアレイの製造方法が記載されている。
【0016】
(発明の概要)
概括的に言えば、本発明は、所定のサイトに所定の寸法公差以内の位置精度を以て位置する少なくとも1つのナノウィスカからなるナノテクノロジーあるいはナノエンジニアリングを用いた構造であって、エレクトロニクス・フォトニクス部品において十分使用できるものを含む。
【0017】
本発明はまた、ナノエンジニアリングを用いた構造であって、所定の空間配置で配置された多数のナノウィスカアレイを含み、ナノウィスカは配置内において、所定の寸法公差内で所定サイトに配置されている構造からなる。
本発明はまた、ナノエンジニアリングを用いた構造であって、所定の空間配置で配置された多数のナノウィスカアレイを含み、ナノウィスカは配置内において、所定の寸法公差内で所定サイトに配置されている構造からなる。本発明において、「アレイ」とはおよそ1000の1次元ナノ要素からなるアセンブリを意味し、すべての場合において、アレイはそのような要素を500以上含み、一般的には106以上含んでもよい。
【0018】
本発明のこのような構造は、例えばフォトニックバンドギャップ構造、電界放出ディスプレイなどのディスプレイ、多くのプローブ/センサを有する電子医療デバイス、メモリ回路など所定位置に数多くの要素を有するエレクトロニクス/フォトニクス要素など多くの用途がある。例えばフォトニック/電子回路のように1つ以上のナノウィスカが用いられ、ナノウィスカを回路の隣接する部分に対して極めて正確に位置決めする必要のある場合において、本発明はそのような位置決めのメカニズムを提供する。
【0019】
本発明はまたそのような構造を製造する方法を提供する。
【0020】
少なくとも一好適実施例において、本発明は基板上に少なくとも1つのナノウィスカを備える構造を製造する方法であって、
所定物質からなる基板の表面上の所定の位置に、少なくとも1つの触媒物質の塊を供給することと、
基板をアニールして表面酸化物を除去すると共に、前記塊のおのおのからそれぞれ触媒シード粒子を形成することと、
VLSプロセス(上に定義したもの)によってそれぞれの触媒シード粒子からエピタキシャルに、所定物質のナノウィスカを成長させるように、熱を加え、かつ少なくとも1つの物質を気体の状態で導入することと、からなり、
ナノウィスカを所定位置からの所定の位置公差内に維持するように、アニールおよびナノウィスカ成長条件を制御する製造方法を提供する。
【0021】
アニール工程により表面酸化物を除去する。この酸化物層は、塊に対して自由原子ボンドを有する完全な結晶表面とは異なるぬれ特性(wetting behavior)を与える。完全な結晶表面は遙かに良好な触媒塊のぬれ性を有するので、塊は固着する。ほこりやその他の変動により自然酸化物の除去が不均一であれば、ナノウィスカ成長を予期できない仕方で妨げる場合がある。本発明によれば、アニール工程がナノウィスカの正確な位置決めに重要な役割を果たすことが見出された。触媒塊がその所定サイト(位置)から移動可能であることが、アレイ内におけるナノウィスカの正確な位置決めを阻害する1つの原因であることが見出された。移動の防止において検討すべき点の1つに触媒塊からの触媒シード粒子の生成がある。アニール工程において、触媒塊は融解し、基板との間に界面を形成するが、その間に基板物質が吸着され触媒物質と合金となって触媒シード粒子を形成する。吸着される物質が多いほど、また合金が共晶組成に近づくほど、以降のナノウィスカ形成のための過飽和状態がより早く達成される。触媒塊が融解するとき、形成される界面(これは基本的に表面張力「ぬれ」(surface tension “wetting”)により判断される)が、塊をその初期位置に保持し、また界面を横切っての原子の十分な拡散を許容する表面積を与える。ぬれが不十分であれば、塊は小さな界面しかもたないボール状となりがちであって、該ボールが表面を急速に移動してしまうおそれがある。また、ぬれ効果が行き過ぎると、塊が表面に広がり、断片化や予期できない場所でのウィスカ成長を生じさせるおそれがある。
【0022】
この問題に関して多くのパラメータが関与している。例えば、酸化物を除去し基板表面を清浄なものとするために温度を十分高くすべきであるが、他方で塊が基板物質を過度に吸収し、表面へ「食い込む」ほど温度を高くしてはならない。特にIII−V族またはII―VI族の半導体物質の場合、VまたはVI族元素の基板からの蒸発が起こり、多くの自由原子ボンドを生成して塊の移動に寄与する可能性がある。蒸発を防止するために、適度なVまたはVI族物質を含んだ雰囲気内でアニールを行ってもよい。
【0023】
別の重要な考慮点は、触媒塊の初期形状と物質構成である。触媒塊はその初期構成において触媒物質が異なる領域を含んでいてもよい、即ち例えば、金の領域と例えばインジウムなどの触媒物質と合金を形成し、ナノウィスカ成長のための過飽和状態をもたらすことを補助する物質の領域である。これにより、シード粒子を形成する際に触媒塊が基板物質と合金を形成する必要性が減少し、それによって塊の安定性および移動させる力に対する抵抗が増加する。所望により、触媒物質/合金形成物質/触媒物質というサンドイッチ状の層を用いてもよい。
【0024】
触媒塊の形状に関しては、融解した際に基板との間の位置と面積に関してほぼ同一の界面を維持する形状が最適な形状の1つであることが見出された。この場合、塊は触媒シード粒子に変化した際に、当初の位置に「固着する」傾向があり、広がることがなく、基板表面上での移動を引き起こすような接触面積の減少が起きることもない。純粋な触媒物質塊の好適な形状は径:高さ比が3:1のディスク形状であり、この場合融解して理論的に完全な半球形になった場合同一の界面面積を与える。実際には、比が10:1〜2:1の間にあれば申し分ないことが見出された。しかし、合金を形成する物質を含む触媒塊の場合、遙かに高い比、例えば50:1でも問題ないことが見出された。これは触媒塊が基板表面と相互作用する必要が少ないからである。一般的に、触媒塊から触媒シード粒子が形成される間、基板表面とのぬれ界面の保持力が表面を横切って塊を移動させる力に抗しなければならない。
【0025】
従って本発明はその第1の態様において、基板上に少なくとも1つのナノウィスカを備える構造を製造する方法であって、
所定の物質の基板を提供し、かつ該基板表面上の所定の位置に少なくとも1つの触媒物質塊を提供することと、
前記塊の各々からそれぞれ触媒シード粒子を生成し、かつVSLプロセス(上に定義したもの)により触媒シード粒子からエピタキシャルに所定物質のナノウィスカを成長させるように、熱を加え、かつ少なくとも1つの物質を気体状態で導入することと、からなり、
前記塊のそれぞれは、触媒シード粒子の形成中に塊を前記表面を横切って移動させようとする力が基板表面上のぬれた界面を介した保持力よりも小さくなるようになされているような方法を提供する。
【0026】
また別の態様において、本発明はナノエンジニアリングを用いた構造であって、所定物質の基板と、該基板表面の所定の位置に形成された少なくとも1つの触媒物質の塊とを有し、前記塊のそれぞれは加熱し融解してそれ以降のナノウィスカ成長のための触媒シード粒子を形成する際に、基板との間にぬれ界面が形成され、前記表面を横切って塊を移動させようとする力が該ぬれ界面によってもたらされる塊をその所定位置に保持する力よりも小さくなるようになされているナノウィスカ構造を提供する。
【0027】
触媒物質塊の初期形成は、電子ビームリソグラフィ・リフトオフプロセス、またはコストの面から好適である、塊をその所定の位置に限定するスタンプを用いたナノインプリントリソグラフィにより行ってもよい。
【0028】
本発明により、正確な位置決めを決定する1つの要因はナノウィスカの核形成が起こる時間であることが見出された。「核形成」とはVLS法によるエピタキシャル成長の開始を意味し、その際熱を加えることにより、ナノウィスカ物質の原子が触媒粒子内に吸着されて合金を形成し、過飽和状態が成立すると、成長サイトにおいて触媒シード粒子と基板との間にナノウィスカが生成し始める。一端この核形成段階が達成されると、ナノウィスカがその成長サイトから移動する確率は大きく低減する。本発明によれば、この核形成時間が移動性の特性時間よりも小さくなるべきであることが見出された。この基板上での触媒塊の移動性の「特性時間」は、当然、塊および基板の物質組成に依存する。更に温度にも依存する。これは温度が高いほど触媒塊および基板表面および成長サイト周囲の気体および蒸気はより活動的になり、これが移動傾向を強めるからである。移動性はまた成長サイトに気体の状態で導入される物質の量にも依存する。これはもしそうした物質が不十分であれば、あるいはまた2つの気体状物質(例えばIII族を含む物質とV族を含む物質)との間に不均衡があれば、移動が生じうるからである。更に移動性は基板表面の状態、および成長プロセスに容易に介入しうる基板物質の量にも依存する。「特性時間」は触媒塊が所定距離移動するのに要する時間と表現してもよい。例えば、この距離は望まれる所定の成長サイトからの移動許容量(公差)の最大値としてもよい。また塊の寸法に関連づけて定義してもよく、例えば塊がそれ自身の径に等しい距離移動するのに要する時間としてもよい。または、この距離を最近隣成長サイト間の距離に対する割合、例えば10%などの所望の位置決め精度を表す距離としてもよい。
【0029】
本発明はまた、基板上に少なくとも1つのナノウィスカを備える構造を製造する方法であって、
所定物質の基板を提供することと、
該基板表面上の所定の位置に少なくとも1つの触媒物質塊を提供することと、
VLSプロセスによってそれぞれの触媒シード粒子からエピタキシャルに、所定物質のナノウィスカを成長させるように、熱を加え、かつ少なくとも1つの物質を気体の状態で導入することと、からなり、
前記所定位置におけるナノウィスカの成長核形成に要する時間が基板表面上でのそれぞれの塊の移動性の特性時間よりも小さくなり、ナノウィスカを前記所定位置からの所定の位置公差内に維持するようにナノウィスカの成長条件を制御するような方法を提供する。
【0030】
一般にナノウィスカはIII−V族化合物であり、インジウム、ガリウムなどのIII族金属を含む基板上に成長する。しかし本発明はIII−V族化合物に限られず、II−VI族(例えばCdSe)およびIV族半導体(Si、Ge)を包含する。
【0031】
基板物質およびナノウィスカ物質に関して言えば、これらは一般に同一ではないが、十分な成長を達成するために、それら物質の間に何らかの関係がある場合もある。例えば、基板がシリコンやゲルマニウムのようなIV族物質であるとき、ナノウィスカもIV族物質としてもよい。ナノウィスカがIII−V族物質またはII−VI族物質であるとき、基板をIII族あるいはII族金属を含むまたはこれら金属からなる物質としてもよい。このように例えばナノウィスカがインジウムリンである場合には、基板をインジウムまたはガリウムを含む物質としてもよい。
【0032】
更に各サイトの周囲において、1つ以上の気体状のナノウィスカ物質元素の活動を制御してナノウィスカの成長を制御してもよい。例えばIII−V半導体化合物を成長させる場合、リンやヒ素のようなV族物質の活動を制御することが好ましい。この更なる元素がガス状態でナノウィスカサイトの周囲に存在しかつ過度の活動性を有すると、反応の均衡を保つためにより多くのIII族物質を供給すべく、触媒物質がIII族物質を「探し求めて」基板表面上を移動することを強いられる場合がある。同様に、V族物質の活動が弱すぎると、適切なナノウィスカ成長が行われない。MOVPEプロセスにおいては、有機金属分子の分解が成長サイト付近で生ずる。これは反応温度および気体体積が精密に制御されることを意味する。しかしCBEの場合、V族分子の分解は成長サイトから離れた分解セル内で生ずるので、成長温度および気体流量により多くの選択の自由がある。
【0033】
本発明によれば、前記プロセスによって製造される構造は、所定の空間配置で配置された多くのナノウィスカアレイからなり、ナノウィスカは所定のサイトに所定の寸法公差以内での配列において配置される。特に後述の実施例7に例示するように、極めて高い精度を達成しうることが見出されている。典型的には、基板上に位置決めされたナノウィスカアレイ内におけるナノウィスカの実際の位置のターゲットサイトからのずれは、アレイ内において隣接するナノウィスカのターゲットサイト間の距離のおよそ3.6%以下である。
【0034】
好適には実際の位置のずれはアレイ内において隣接するナノウィスカのターゲットサイト間の距離のおよそ1%以下である。
【0035】
別の観点から見れば、本発明において個々のナノウィスカのターゲット位置からのずれはウィスカ径以下、好適には径の半分以下、より好適には径の20%以下、更に好適には径の1%以下、更に好適には径の0.5%以下とすることができる。
【0036】
本発明によれば、ナノウィスカアレイを極めて高精度な幾何学的構造として製造され、各ナノウィスカはそのターゲット位置即ち決められた位置に極めて近く配置される。これにより、多くのナノウィスカを非常に正確に位置決めして用いる必要のある構造にアレイを利用することができる。このような構造は例えば、複雑な電気回路、ディスプレイシステム、フォトニックバンドギャップアレイなどを含む。このような構造の例は我々の同時係属中の米国特許出願第10/613,071号(2003年7月7日出願)に開示されている。当該出願を引用により本明細書に取り入れる。
【0037】
フォトニックバンドギャップ(PBG)アレイの特定の応用において、予め定められた位置、即ち決められた周期性を有する格子点においてナノウィスカの規則的な幾何学構造が必要とされる。周期性はPBGによって受容される放射の波長に依存するが、典型的にはナノウィスカはその軸が理想的には最近隣距離が約1マイクロメートルの格子点に位置するように配置される。このようなフォトニックバンドギャップアレイにおけるナノウィスカの径は、一般にPBG格子周期の10乃至20%の範囲とすべきである。従って、このようなアレイにおけるナノウィスカの径は一般に100ナノメートルのオーダー、例えば100〜200ナノメートルとすべきである。アレイ内の個々のナノウィスカの格子点からの位置ずれの公差許容できる位置ずれはPBG格子周期の5%程度とすべきであり、これは即ち1マイクロメートルの格子に対して約50ナノメートルである。
【0038】
本発明はVLS法によりナノウィスカをエピタキシャル成長させるすべての方法に応用することができる。特に好適なエピタキシャル成長プロセスはMOVPE(MOCVD)である。もう一つの好適なエピタキシャル成長法は化学ビームエピタキシー(CBE)であり、この方法では有機金属分子を、分子が成長基板に向かうビームとなるように低圧力とした反応チャンバ内に導入する。このような手法は同時継続中の米国特許出願第10/613,071号(2003年7月7日出願)に詳しく説明されている。その内容をこの引用により本明細書に取り入れる。CBEを用いた場合、正確に位置決めされたナノウィスカを実現するための適切な成長条件を確立することがより難しくなる。
【0039】
成長時に触媒塊の基板表面上での移動を制御する方法としては、適切な不活性物質のマスクを用いるのが好適である。マスクは基板および触媒塊を完全に覆う層として形成してもよい。熱を加えると触媒塊はマスク物質を浸透してナノウィスカ成長を許容する。または、マスクに開口を設け、各開口に触媒塊を収容してもよい。これは例えばリソグラフィ技術を用いて実行することができる。
【0040】
本発明の別の態様において、基板上に少なくとも1つのナノウィスカを備える構造を製造する方法であって、
基板を提供することと、
該基板表面上に少なくとも1つの触媒物質塊を提供し、その際、各塊は基板上のそれぞれの所定位置に配置することと、
基板表面にマスクを提供することと、
化学ビームエピタキシーおよびVLSプロセス(上に定義したもの)によって、それぞれの触媒シード粒子を介して、所定物質のナノウィスカを、その高さおよび径および位置を制御して成長させるように、熱を加え、かつ少なくとも1つの物質を気体の状態で導入し、その際前記マスクが触媒塊の横移動と基板表面上での成長の両方を抑制することと、からなる方法を提供する。
【0041】
開口を設けたマスクを使用する場合には、開口内に形成された触媒塊のその所定位置からの移動を制限するように、開口を十分小さい大きさに限定することが望ましい。一般的に、マスクの制作中に開口を設けたマスクを形成し、それから開口内に触媒物質をデポジットする。触媒塊は十分な厚さを有することが望ましく(通例高さ:直径比1:3が望ましい)、触媒塊を加熱してシード粒子を形成する最初の工程において、通常融解された状態であるシード粒子がマスクの縁部から粒子自身の径よりも短い距離となるような厚さであることが望ましい。マスクの縁部はシード粒子に対する物理的な(mechanicalな)障壁を形成し、かつ触媒物質はその表面張力特性からマスクを「ぬらす」ことがないので、触媒塊を所定の位置に効果的に束縛する。この束縛により、基板表面における触媒塊の移動度が、マスクがない場合に比べてかなり減少することは明らかである。
【0042】
本発明のまた別の態様において、ナノエンジニアリングを用いた構造であって、基板上の少なくとも1つのナノウィスカと、所定物質の基板と、基板上にあり所定の場所に所定の径で設けられた少なくとも1つの開口を有する別の物質からなるマスクと、該各開口から延びるナノウィスカとを有し、各ナノウィスカの基板表面における基部は各開口を画成するマスクの縁部からおよそナノウィスカの径より小さい距離にある構造を提供する。
【0043】
本発明の別の実施形態において、詳細を同時継続中の我々の米国特許出願第10/613,071号(2003年7月7日出願)に説明しているCBEプロセスを用いて製造されるフォトニックバンドギャップアレイあるいはフォトニック結晶において、後に説明するように、3次元フォトニックバンドギャップアレイ構造であって、アレイの各ナノウィスカが異なる屈折率を有する2つの物質が交互に並ぶ一連のセグメントとして形成される構造が提供される。
【0044】
また別の実施形態において、フォトニック結晶の各ナノウィスカは異なる物質のセグメントを有して形成され、それらセグメントの間にシャープなヘテロ接合を有し、LEDとして機能しうるナノウィスカ内の量子ドットを提供する。適切な接点に接続することにより、少なくとも1つのLED構造が起動され、フォトニック結晶構造のそれ以外の部分を透過する光を発する光源となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明の好適な実施例を添付図面を参照して説明する。
【0046】
上記のように本発明は基板上の少なくとも1つのナノウィスカを含む構造を形成する方法であって、ナノウィスカをVLS法によって成長させる方法を提供する。ナノウィスカの必要とされる位置決め精度を達成するために、触媒シード粒子を基板上に正確に位置させなければならず、かつ基板上の触媒粒子が占める位置においてナノウィスカが成長を始める前に、触媒シード粒子が有意の距離動いてはならない。本発明のある実施形態では基板表面に形成されたマスク上の開口内に触媒シード粒子を形成し、ウィスカ成長が始まる時に、触媒シード粒子をマスクの開口内に閉じこめる。別の実施形態では、触媒シード粒子を基板表面の所定の位置に配列し、そして粒子を融解して、その際の条件を、気体として供給されるナノウィスカを形成するためのの先駆物質が触媒粒子と融解合金(molten alloy)を形成し、基板表面で結晶化してナノウィスカ成長の核を与えるような条件となるようにする。温度、触媒粒子の組成、酸化物の表面被覆率などの核形成および成長の諸条件を、触媒シード粒子の形成の間、融解粒子塊が基板用面を移動するようになす力が、触媒粒子と基板表面のぬれ界面によってもたらされる保持力よりも小さくなるように調節する。
【0047】
従って、上に示すように本発明の方法の1つの実施形態において、表面の酸化物を除去するアニール工程を実施する。表面酸化物層は融解触媒金属塊によるぬれ性に関して、自由原子ボンドを有する完全結晶表面とは異なる表面特性を有する。完全な結晶表面は遙かに良好な触媒塊のぬれ性を有し、触媒粒子を基板表面の固定された位置に保持する傾向のある表面力を提供する。ほこりやその他の変動により、自然酸化物が不均一に除去されると、そのことがナノウィスカの位置と成長に予期できない仕方で干渉する。本発明の少なくとも1つの実施形態において、アニール工程がナノウィスカの正確な位置決めにおいて重要な役割を演じていることが見出された。アレイ内のナノウィスカの正確な位置決めの1つの障害は触媒塊がその所定のサイトから移動することであることが見出された。移動の防止に際しての問題とすべきことの1つは触媒塊からの触媒シード粒子の形成である。アニール工程において、触媒塊は融解し基板との界面(interface)を形成し、該界面を介して基板物質の原子が吸着され触媒物質と合金を形成し、これによって触媒シード粒子を形成する。吸着される物質が多いほど、そして該合金の組成が共晶(eutectic)組成に近いほど、以降のナノウィスカ成長のための過飽和状態がより早く実現される。触媒塊が融解するとき、形成される界面(これは表面張力「ぬれ」の考慮により決定される)が、塊をその初期位置に保持し、かつ基板―触媒粒子境界を横切っての原子の十分な拡散を許容するような表面領域をもたらすことが望ましい。ぬれが不十分であると、塊が1つのボールを形成し、小さな界面しか持たず、このボールが表面を横切って急速に移動するおそれが大きい。また、ぬれ効果が過度になると、塊は表面を横切って広がる可能性があり、断片化およびナノウィスカが予期できない位置に成長するおそれが大きい。
【0048】
この問題には多くのパラメータが関わっている。例えば、温度は酸化物を除去し清浄な基板表面をもたらすよう高くすべきであり、かつ塊が基板物質を吸着しすぎないように、そして表面に「食い込ま」ないようにするために、それほど高くしてはならない。特にIII−V族やII−VI族半導体物質の場合、V族またはVI族元素の基板からの蒸発が起こり、塊の移動に寄与する多くの自由原子ボンドを生成する可能性がある。蒸発を防止するために、アニールを適度なV族またはVI族物質を含んだ雰囲気内で行ってもよい。
【0049】
更に、触媒塊の初期の形と物質構成を考慮することが重要である。塊はその初期構成において、金などの触媒物質の領域と、該触媒物質と合金をなす例えばインジウムのような物質の領域とからなり、ナノウィスカ成長のための過飽和状態の成立を助けてもよい。これにより、シード粒子の形成に際して塊が基板物質と合金を形成する必要性が低減され、従って、塊の安定性と移動力に対する抵抗が増加する。好適には、触媒物質/合金形成物質/触媒物質というサンドウィッチ式の層構成が用いられる。
【0050】
塊の形については、融解した際に基板との界面の位置および形をほぼ同一に維持するような形が最適であることが見出された。こうすることによって、塊はそれが触媒シード粒子に変化したときに、元の位置に「固着」する傾向があり、広がることがなく、また基板表面を横切る移動を引き起こすような接触面積の減少を起こすこともない。純粋な触媒物質塊の好適な形状は、直径と高さの比が3:1であるようなディスク形状であり、この形は融解して理論的に完全な半球形になったときに、同一の界面面積をもたらす。実際には、10:1〜2:1の範囲の比であれば許容できることが見出された。しかし合金を形成する物質領域を含んだ触媒塊の場合には、かなり高い比である例えば50:1まで許容できることが見出された。これは触媒塊が基板表面と相互作用する必要が少なくなるからである。一般的に言って、触媒塊から触媒シード粒子が形成される間、基板表面とのぬれ界面の保持力は、表面を横切っての塊の移動を引き起こす力に抗するものであるべきである。
【0051】
特に、諸成長条件が触媒粒子の移動に及ぼす様々影響を考慮すると、所定の位置におけるナノウィスカの成長核形成に要する時間が基板表面上におけるそれぞれの塊の移動の特性時間よりも短くなり、該ナノウィスカを上記所定の位置からの所定の位置公差内に保つように、ナノウィスカ成長条件を好適に制御することが好ましい。
【0052】
以上の議論に鑑みて、当業者は触媒が基板表面を横切って移動する傾向を最小化するような条件を選ぶには、多くの実験的パラメータあるいはファクタが関係していることを理解するだろう。しかし、前記の開示の教示するところにより、当業者は基板表面上における触媒粒子の所望の安定性を達成するような適切な条件を選択することができるであろう。そのような条件は、触媒粒子を表面を横切って移動させる力が基板表面上のぬれ界面の保持力よりも小さくなることを確実なものとし、かつ成長核形成に要する時間が基板表面上の触媒粒子あるいは触媒塊の移動の特性時間よりも短くなることを確実なものとする条件を含む。
【0053】
以上に概括的に述べたように、本発明の方法は基板表面の所定の点に正確に位置決めされた1つ以上のナノウィスカを提供することができる。このような正確さを、非常に多くのナノウィスカを含むアレイ(「ナノエンジニアリングを用いた構造体」)に拡張することも可能であり、互いに対しておよび/または表面上の基準点に対して正確に位置決めされた106以上のナノウィスカアレイにまでさえ拡張可能である。
【0054】
ある実際の実施形態において要求される正確さは、その用途の特定の要請や用いられるナノウィスカまたはナノウィスカアレイの大きさによって異なる。当業者は触媒粒子となる物質のナノ塊の初期の位置決めが、そのような小さな対象物を形成し操作することの困難さに伴う制約を受けることを理解するだろう。従って、当業界で従来行われており、またここに説明する例でも採用されているリソグラフィ技術によって実現しうる精度は、レジスト層の物理的・化学的性質、特定のパターン露光装置の解像度などが課す制約を受ける。例えば、500nmオーダーの寸法の諸形状を有するパターンであれば比較的容易に作成できるが、20nmオーダーの寸法の諸形状を作成し、かつ基板上に正確に位置決めするのは非常に難しい。
【0055】
ナノスケールで作成された特定の構造を分析することもまた困難であり、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)などの利用可能な観察機器の解像度により制約される。
【0056】
しかし本発明によれば、本発明のプロセスにより形成されたナノウィスカの基板表面上での位置を正確に制御することが可能であり、与えられた用途の要求する精度を達成する。例えば、比較的形の大きい、例えば200nm乃至500nm(またはそれ以上)の形のナノウィスカを準備する場合、ナノウィスカ自体のサイズのばらつきが、それらが基板上に位置決めされる際の精度よりも大きくなるかもしれない。しかし、例えば20nm程度の小さなナノウィスカの場合は、位置精度は触媒粒子を基板表面上で位置決めする(例えばリソグラフィ技術により)際の精度によって制約されるであろう。
【0057】
いずれの場合にも本発明の方法によれば、ナノウィスカを基板表面上で位置決めする際の正確さを、触媒塊の正確な位置決めによって達成することができ、かつこれが成長過程において大きく劣化することがない。
【0058】
ナノウィスカを基板表面上で位置決めする際の精度を、ナノウィスカ自体の直径で定義してもよい。このような定義は、複数のナノウィスカがあってそれらの間隔が比較的近く、即ち隣り合うナノウィスカの間隔がそれらの直径数個分である場合に有用である。このような基準の下で、本発明によれば、隣接するナノウィスカ間の距離が所定の距離をウィスカ直径のおよそ20%以上ずれることのないようにナノウィスカを位置決めする。好適にはこのずれをナノウィスカ直径のおよそ10%より小さくし、より好適にはウィスカ直径のおよそ5%以下とする。
【0059】
ナノウィスカとナノウィスカアレイを規定する精度を、上の説明では所定の寸法からずれる割合に基づいて説明してきた。これはこうした定義が特定の実際の用途において、概して有用だからである。更にこうした所定の寸法からのずれの割合による定義は、例えばリソグラフィ技術による触媒粒子の位置決めにおける精度の欠如や、粒子の位置を測定し、それら位置の所定の基準点からのずれを解析する技法における精度の欠如を考慮したものであってもよい。従って、ある特定の実施形態において直線的な寸法について定義される精度は別の実施形態において定義される精度と異なっているかも知れない。いずれにせよ、ナノウィスカの位置の所定の基準点からのずれは、ナノウィスカ数個分よりも小さくすることが可能であり、これは例えばおよそ20nmより小さく、好適にはおよそ10nmより小さく、最も好適にはおよそ5nm程度以下とする。
【0060】
前に述べたように、触媒シード粒子は成長するナノウィスカに取り入れられる元素を含んでいてもよく、これは触媒金属と合金を形成する。例えば触媒粒子は金触媒粒子に何らかの割合でIII族元素またはV族元素を含んだ合金であってよい。基板表面にデポジットされた触媒塊が純粋な物質である場合、例えば純金である場合、または触媒金属と成長物質の不完全に飽和した合金である場合には、触媒粒子は当初基板に作用し、基板からいくらかの成長物質を溶け出させて完全に飽和した合金を形成する場合もある。基板からの物質の溶出は等方的に進まないかもしれないので、ナノウィスカの触媒作用を受けた成長が始まる前に触媒粒子がその初期位置からある程度移動してしまう可能性がある。このような移動により、基板上におけるナノウィスカの位置決め精度は明らかに劣化する。従って、プロセスの加熱成長段階を開始する前に、基板表面上にデポジットされた触媒塊に少なくとも幾分かの成長物質を取り込ませることが好ましい。これは例えば少なくとも1つの触媒金属層、例えば金の層とナノウィスカを形成する成長物質の層、即ち例えばIII−V族化合物の層とを有する層状の触媒塊をデポジットすることにより実現することができる。プロセスの成長工程を始めるときに、触媒金属と成長物質とは直ちに合金を形成し、それにより触媒粒子が基板に化学的に作用する傾向を最小化する。明らかに、幾分かの成長物質を取り入れることにより、触媒粒子が基板に化学的に作用する傾向が低減される。しかし、基板がある場所で局所的に溶解することが、例えばナノウィスカの基部においてより完全なインターフェイスをもたらすために、好ましいということを考慮していないわけではないが、デポジットされる触媒塊に少なくとも完全に飽和した合金を形成するように十分な量の成長物質を取り入れることが一般的に好ましい。
【0061】
本発明の好適な実施形態を、シングルワイヤ制御(single-wire control)を用いた垂直ナノウィスカアレイを合成するためのリソグラフィ製造方法について説明する。電子線リソグラフィ(EBL)および金属リフトオフを用いて金ディスクパターンを画成し、アニールにより成長触媒ナノ粒子へと変成させた。その後、有機金属気相エピタキシーを用いてナノウィスカを成長させた。
【実施例1】
【0062】
サンプルはN型のInP(111)Bウエハから作成した。この(111)B基板配向を選択したのは、その好適なワイヤ成長方向が(111)Bであることがよく知られているからである。これらのサンプルを、スピナ上でアセトンとイソプロパノル(IPA)で清浄にした。そしてそれらをポリメチルメタクリレート(PMMA)のフォトレジストでコーティングし、標準的なEBL手法を用いてディスクパターンをレジスト層に転写した。メチルイソブチルケトン(MIBK)内で現像処理し、IPA内で洗浄した後、サンプルを酸素プラズマで処理して、露光エリアに残存するレジストを除去した。プラズマ処理後に4%のフッ化水素酸内で20秒間エッチングして、表面酸化物を除去した。そしてサンプルを直ちに真空チャンバ内に移送し、熱蒸発により金膜をデポジットした(厚さは17〜45nmm径は125nm)。厚さを水晶振動子モニタを用いて測定した。熱アセトン内で10分、その後熱IPA内で5分のフォトレジスト層の溶解による金属リフトオフを行うことにより、図1(a)に示す構造体が得られた。その後サンプルを層流MOVPEリアクタ・セルに搬入し、グラファイトサセプタ上に載置した。気圧100ミリバール(10kPa)のもとで、6l/minの水素キャリアガス流を用いた。モル分率1.5×10−2の一定の亜リン酸塩流をリアクタ・セルに供給し、成長に先立ってサンプルを580℃で10分間アニールした。このステップの間に、酸化物が脱着され、基板表面上の金ディスクはInP基板と合金を形成する。そして温度を400℃に下げ、リアクタ・セル内にトリメチルインジウム(TMI)を導入して、ナノウィスカの成長が始まった。TMIのモル分率は3×10−6〜6×10−6とし、2500〜5000のV/III(PH3/TMI)比となった。成長時間によってワイヤ長が決まるが、成長時間は典型的には8分とした。図1(b)は(a)の成長後の構造を示している。ワイヤの径は頂部で140nm基部で200nmである。サンプルの特徴観察(characterization)をJSM6400F電界放射型走査電子顕微鏡を15kVで動作させて行った。成長前後の走査型電子顕微鏡写真(SEM)を比較することにより、ナノウィスカが基本的に触媒粒子の位置に成長したことがわかる。
【実施例2】
【0063】
この実施例はナノインプリントリソグラフィ(NIL)に基づくものである。NILは多くの面で電子線リソグラフィ(EBL)と比肩しうる結果をもたらすことができるが、そのコストはかなり低く、かつスループットはかなり高い。NILを用いてInP基板に成長触媒金粒子を用いてパターン形成した。その後、有機金属気相エピタキシー(MOVPE)システム内で気相−液相−固相(VLS)成長により垂直に整列したInPナノウィスカの成長が行われた。選択した物質はInPであったが、この方法は他のIII−V族物質に対しても同等の有効性を有する。ここでは(111)B基板配向とした。これはナノウィスカの好適な成長方向が<111>Bであるためであり、垂直に整列したアレイが望ましいからである。
【0064】
1インチのSiウエハ上にEBLとドライエッチングにより、ナノインプリントプロセスのためのスタンプを形成した。ZEP520A7/PMMA950Kのからなる2層レジストを使用し、それを35kVにおいて、プローブ電流10pAで露光した。レジストの現像後、30nmのクロムを熱蒸発させ熱したMicrodeposit RemoverS−1165 (Shipley社)内でリフトオフさせた。そして金属層をエッチング用マスクとして用いて、スタンプの形態学的構造を形成した。SF6/O2内での反応性イオンエッチングを用いて高さ300nmの構造を生成した。これは原子間力顕微鏡(AFM)によって測定した。コラム(柱状体)は最隣接距離1マイクロメートルの六角形パターンに配列される。残存するCrはウェットエッチングによって除去した。そして窒素雰囲気内で、トリデカフルオロ−(1,1,2,2)−テトラハイドロオクチルトリクロロシランの単層蒸着により、スタンプに固着防止処理を施した。使用後のスタンプの走査型電子顕微鏡写真(SEM)像を図2に示す。
【0065】
基板を触媒金ドットによってパターン形成するために、インプリントを用い、その後金属蒸発およびリフトオフを行った。リフトオフ層(LOL)およびPMMAの2層レジスト方式を用いた。始めに200nmのLOLおよびPMMAの2層レジスト方式膜をスピンコーティングし、180℃で弱焼結した(soft-baked)。その上に100nmのPMMA50kを蒸着し焼結した。インプリントは220℃、50バールで3分間行った。そしてサンプルを酸素プラズマ中で12秒間5ミリバールでアッシングし、その後MF319内で現像した。現像剤はLOL層を等方的に溶解し、良好な金属リフトオフに必要とされるアンダーカットプロファイルを形成する。そしてサンプルを酸素プラズマで12秒間5ミリバールで簡単に処理し、インプラントした領域から残存レジストを除去した。プラズマ処理後、サンプルを4%のフッ化水素酸内でエッチングして表面酸化物を除去した。その後サンプルを直ちに真空チャンバに移送して、40nmの金の膜を熱蒸発によって蒸着した。そしてRemoverS−1165内のホットプレート上において金属リフトオフを行った。
【0066】
その後、層流MOVPEシステムを用い、サンプルをRF加熱したグラファイト・サセプタ上に載置して、NILによって輪郭付けしたサンプル上にナノウィスカを成長させた。気圧100ミリバール(10kPa)のもとで、6l/minの水素キャリアガス流を用いた。モル分率1.5×10−2の一定の亜リン酸塩流をリアクタ・セルに供給し、成長に先立ってサンプルを580℃で10分間アニールした。このステップの間に、酸化物が脱着され、基板表面上の金ディスクはInP基板と合金を形成する。そして温度を400℃に下げ、リアクタ・セル内にトリメチルインジウム(TMI)を導入して、ナノウィスカの成長が始まった。TMIモル分率は3×10−6とし、成長時間は16分とした。サンプルの特徴観察(characterization)をJSM6400F電界放射型走査電子顕微鏡を15kVで動作させて行った。
【0067】
リソグラフィ法は設計に大きな自由度をもたらし、様々な用途の多くの異なるパターン形成を可能にする。異なるワイヤ密度と異なるワイヤ径を有する2つの構造を図3および4に示す。これは本発明の第1の実施形態を構成する。図3には高密度アレイの走査型電子顕微鏡(SEM)像が示されている。この8×8μm2アレイは最隣接距離が250nmの六角形のユニットセルからなる。触媒粒子は直径45nm、厚さ17nmの金ディスクからなる。厚さ−直径比の重要性については後で述べる。成長後、得られたワイヤは長さがおよそ3μmで頂部の径が50nmである。これに対し基部の径は(重い「脚」の直ぐ上の実際にワイヤがスタートするところで測定している)より大きく、およそ10nmである。図の入れ子部分は個々のワイヤの形状を示している。
【0068】
図4に示す構造はフォトニック結晶のフィールドにおけるパターンである。フォトニック結晶では電磁波が誘電率の周期的な変調を経験し、それによりフォトニックバンドギャップが生ずる。これは半導体における電子的バンドギャップと類比的なものである。このことは2次元のフォトニック結晶では、ある波長の電磁波は平面内を伝播することができないことを意味する。しかし、フォトニック結晶内の欠陥により、バンドギャップ内に電磁モードが許容され、これらの欠陥を巧みに処理することにより、光の流れを制御し、レーザキャビティや導波管などを実現することができる。図4はナノワイヤを利用したフォトニック結晶構造の例を示している。このパターンは空気中における高屈折率の柱状体からなり、非常に大きなフォトニックバンドギャップを有するハニカム格子を形成している。ワイヤ間距離を500nm、ワイヤ径を140nmに選定した。これを誘電率11.4について計算すると、およそ500nmの波長領域のフォトニックバンドギャップを与える。リソグラフィ的な手法の性質として、図3に示すように、いくつかのワイヤの径を変えることにより、あるいはまたあるいくつかのワイヤを全く無くすことにより、フォトニック格子(photonic lattice)に欠陥を導入することが容易にできる。成長前の金ディスクの径を125nm、厚さを47nmとすることにより、成長後のワイヤ頂部の径は140nm付近となった。これは所望の値である。ワイヤ長はおよそ1μmであった。
【0069】
理想的なアレイ成長のためには、シード粒子の形状、成長中のガス流および温度などのパラメータを最適化しなければならない。各金ドットから単一の垂直ナノワイヤを生成する能力はシード粒子の形状に強く依存することが見出された。図5は厚さ17nmで異なる径を有するディスクから得られた結果を示している。図の左から成長前のディスク径はそれぞれおよそ50、100、200、400、800nmである、一般的な傾向は明らかである。即ち、薄いディスクは壊れて分離し多くの小さな触媒粒子を形成し、他方で厚さ対直径比が大きいものほど安定である。経験的に厚さ対直径比がおよそ1/3のものが良い結果をもたらす(これはディスクがアニール中にその径を代えることなく融解半球に変化するという非常に単純なモデルと一致する)。図5においてアスペクト比は一番左側の構造体に対して最適化されているが、左から2番目の構造体で1/6のアスペクト比を有するものもよい結果となっており、これはある程度のトレランスがあることを示している。反対側の端のものは非常に高い厚さ対直径比を有しているが、これは、より柱状に近い構造体がアニール中に半球形に変化したときに、サイト(位置)制御上の問題を引き起こすものと推測される。例えばフォトニック結晶への利用などで、同一構造体内で非常に異なる径のワイヤを形成したいときには、各ワイヤ径に最適化されたアスペクト比を得るためには、複数のEBLパターニングおよび金属蒸発が必要となるかもしれない。触媒粒子は金と合金形成過程で基板から取り入れられたある量のインジウムとからなる。第1の近似として、ワイヤ形はこの触媒粒子の径として定義される。しかし{110}側面において互いに競合する成長メカニズムにより、これは頂部径に対してしか成立しない。従来の研究でも報告されているように、基部は多くの場合より大きくなり、ワイヤのテーパが観察される。テーパは温度が高いほど顕著となる。従って、ロッド状のワイヤに対しては、低い成長温度が好ましい。図3および4に示す構造は、少ない割合ではあるが不要な欠陥を含んでいる。このような欠陥は望ましくない位置において核形成し成長したナノウィスカ即ちワイヤや、成長途中で成長方向が変わった(キンクした)ワイヤによって引き起こされる。温度とV族/III族比とがワイヤがキンクの傾向に影響することが観察された。V族/III族比については両極端を観察することができた。即ち、低いV族/III族比は頻繁なワイヤキンクを引き起こし、他方で高いV族/III族比はワイヤ核形成およびワイヤ成長速度の低さに関連する問題を引き起こした。V族/III族比を一定に保った場合、ワイヤキンクの問題は温度が低い場合により大きくなる。これは以前に報告されている結果と一致する。従って、高アスペクト比のロッド状ワイヤ即ちナノウィスカを形成しようとする場合、テーパ効果を最小化する低温度とキンクを防止する高温度との間で妥協点を見つけなければならない。InPに基づくこれらの構造に対して、温度400℃が適していることを見出した。製造パラメータを更に最適化して、このような欠陥の存在を最小化するか、あるい完全に排除すべきである。
【0070】
この例は図3および図4に示すように、垂直InPナノウィスカの非常に均一なアレイの合成の実例となっている。ワイヤは別々の触媒金粒子をシードとしており、本方法により、ワイヤの位置と直径と長さとを制御している。このような製造方法は、特定の用途のための構成ブロックとしてのナノウィスカにとって重要である。ナノワイヤデバイスのアレイを利用した用途として、2次元フォトニック結晶およびナノワイヤカソードを有するFED(電界放出ディスプレイ)の製造がある。直立したワイヤに接点を形成する技術と組み合わせて、単一ナノワイヤ要素(SETやRTDなど)を組み合わせてより複雑なデバイスを形成することができる。
【0071】
この例は、アレイ内において高い位置精度を達成するMOVPE(MOCVD)プロセスの利用を例示している。MOVPEプロセスにより、TMI蒸気分子として存在するインジウムがナノウィスカ成長サイトに比較的多数存在する。これは反応チャンバ内の気圧が比較的高い(10ミリバール)からである。もう一つのファクタは動作温度である。基板表面にバルク成長があまり発生しないように、MOVPEの動作温度は比較的低いおよそ400℃に選定する。しかし、TMIの分解後に解放されたインジウムイオンは成長サイトまで長い距離を移動する場合がある。
【0072】
また別のファクタはホスフィンが成長サイトで分解した際に生ずるリンイオンの活動である。動作温度は、この活動が成長サイトに存在するインジウムの量に均衡し、触媒粒子がその所定サイトから移動することによってより多くのインジウムを集めるよう強いることなく成長を維持するように選定される。
【0073】
本発明による別のナノウィスカ成長プロセスは化学ビーム成長法(CBE)であり、これは本願出願人による同時係属中の米国特許出願第10/613,071号(2003年7月7日出願)に記載されている。化学ビーム成長法においては、反応チャンバ内の圧力が、MOVPEの場合に比べて数桁異なり、かなり小さくなってる。また基本的に1種類のビーム物質即ちTMIと気体のリンを用いてインジウムリンを生成している。分子を含むリンは成長サイトから離れて分解する。このためプロセスの制御が容易である。なぜなら動作温度とリンの活動とを切り離すことが可能であり、触媒粒子の位置精度を維持することが可能だからである。
【0074】
マスクを使用の有無を問わず、基板上にデポジットされた塊の初期形状が、その塊から形成される触媒粒子の正確な位置決めにとって重要であることがわかっている。図6は理想的な場合を示しており、融解した塊は当初の塊と正確に同じ表面積を占めている。図6(a)はディスクとして形成された金触媒を示し、図6は融解したディスクが完全な半球となったものを示している。金の小滴が基板から物質を吸収することを無視して計算すると、基板との界面において融解した小滴が元のディスクと同一の直径を維持するためには、金の直径を厚さの3倍にすればよいことがわかる。プライムのない量は加熱前を表し、プライムを付けたものは加熱後を表すものとする。tは金の厚さ、rは半径である。体積VとV’とは同一であると仮定する。
V=V’
πr2×t=4πr3/3・2
t=2r/3 即ち d=3t
実際には、d:tの比が12:1と2:1の間であれば、満足な結果が得られることが解っている。
【0075】
CBEプロセスにおいて動作パラメータを正確に精度良く制御すればナノウィスカアレイ内において正確に位置決めされたナノウィスカを形成することができるが、本発明の第2の実施例による別の好適な方法では、基板表面上にマスクを配置する。このマスクは2つの機能を持ち、その第1は表面上におけるバルク成長を防止することである、第2は触媒粒子の移動を抑制することである。本発明のマスクはエピ・マスクと名付けられる(エピタキシー抑制部)。
【0076】
続いて図7を参照すると、(111)面を有するガリウムヒ素基板20上にエピ・マスク22が形成されている。これは二酸化珪素などの無機物質としてもよく、または市場で手に入る様々な種類の有機高分子物質としてもよい。
【0077】
図7(b)に示すように、フォトレジスト物質24を層22に塗布し、例えば電子ビームを用いてこれにパターンを描く。そしてフォトレジスト物質をエッチングし、図7(c)に示す所定パターンを形成する。即ちフォトレジストおよびその下層のエピ・マスクに開口が形成され、ナノウィスカ成長のための所定サイトが画成される。
【0078】
続いて、図7(d)に示すように所定厚さの金の層が30に塗布される。その後のエッチング工程によりフォトレジスト層24とその上の金30が除去され、各サイトの開口30内に所定深さ(開口幅の3分の1)の金が存在するエピ・マスク22が残る(図7(e))。
【0079】
図7(e)に示す基板に適切な洗浄を施した後、図7(f)に示すCBE反応チャンバ34に送る。基板を20をヒータ38に接続された金属サンプルホルダ36に設置する。チャンバ周囲のリング49に液体窒素を満たして、クライオシュラウドとする。また。真空ポンプ42が設けられている。
【0080】
液相のTMIn、TBPソース44、46が恒温槽に蓄えられ、液体ソースの温度を制御することにより、液体蒸気の分圧を制御する。蒸気は複合パイプ48を経てソースインジェクタ50に供給される。ソースインジェクタ50はチャンバ内に分子ビームを安定かつ一定の強度で噴射する。III族物質は基板表面で分解する、即ちガリウムである。これに対し、V族のリンを含む物質は成長チャンバに噴射される前にインジェクタ内の高温で分解する。これらのインジェクタは分解セル(cracking cell)と呼ばれ、その温度は900℃程度に保たれる。ソースビームは熱せられた基板表面に直接衝突する。このとき分子は基板表面から十分な熱エネルギを得て、原子を表面に残してその3つのアルキルラジカルすべてに分離するか、または分離しない状態もしくは部分的に分離した状態で散乱される。これらの過程のどちらが支配的となるかは基板の温度と分子の入射流量に依存する。高温では、この成長速度は脱着となりサイトをブロックする。
【0081】
マスク22を設けることにより、アニール工程とナノウィスカ成長工程の不均衡が基板表面で金触媒シード粒子が移動を引き起こすことが防止される。シード粒子が形成されたとき、粒子のマスク開口縁部からの距離はナノウィスカの直径よりも小さくなる。これは最終的に得られるナノウィスカについても同様にあてはまる。
【実施例3】
【0082】
図8に示すように、厚さ27nmの窒化ケイ素マスクをInP基板上に形成した。リソグラフィプロセスにより、マスクに円形の開口を形成した。金触媒粒子をマスク内の円形開口に形成した。金触媒粒子からナノウィスカを成長させた。ナノウィスカはマスク開口の縁部との間に狭い隙間を残して、マスク開口をほぼ満たした。
【実施例4】
【0083】
GaAs基板上に金触媒粒子を形成した。粒子を形成する直前に、蒸着により構造全体上に薄い酸化物SiOxを形成し、基板上での金粒子の移動を制限した。その結果を図9(a)および図9(b)の2つのサンプルに示す。これらは製造方法と熱処理に関しては同一である。違いは図9(a)の例では薄い(7nm)SiOx酸化物層を形成した点のみである。この酸化物はSiOソースから熱蒸発させた。サンプル上の酸化物がSiOとなるかSiO2となるかは蒸発チャンバ内の真空条件に依存する。図からわかるように、薄い酸化物はサンプルの振る舞いを大きく変える。三角形の形成は見られるが、移動ははるかに少ない。酸化物の下ではメルトが表面に沿って移動する。元のディスクが見えるが、これは酸化物が金ディスクの上にシェルを形成していることを示している。被覆酸化物があっても、ウィスカ成長は滞りなく行われた。このことは、酸化物が成長温度(典型的にはおよそ550℃)において除去されることを意味する。
【実施例5】
【0084】
−InAs(100)基板
Au−In混合物において、451℃で38.4%のInに共晶点(eutectic point)がある。この組成をサンプル上に45nmの膜厚で蒸着した。AuとInは同時に共には蒸着しない。従って、Au−In−Auのようにサンドイッチしたものを用いた。各膜厚は14:17:14nmである。比較のために純粋な金としたものも作成した。これらのサンプルを455℃で20分間加熱し、図10(a)および図10(b)に示す結果を得た。図10(a)はAu−In−Auのサンドイッチの場合を示し、図10(b)は純粋な金の場合を示す。Inを含んだサンプルは表面上に小滴を形成し、その際基板からInを取り入れる必要がないように思われる。純粋な金の場合はInを取り込む必要があり、小滴は基板内に掘り進んでいる。従って、基板上に小滴が形成されるのではなく、小滴の頂部はほとんど表面と同じ高さになっている。小滴は結晶の対称性に倣う。正方形、そして時には長方形の形状は(100)面の四角形形状から理解できる。経験的な法則として、諸形状のサイズが小さいほど、より結晶の対称性に倣う傾向がある。最大の構造が多分に丸いままであったのに対し、最小のものはほぼ完全な四角形となった。AuとInを混合したサンプルの方が良い結果であったが、純粋な金のサンプルも、位置決めを考慮すれば非常によい結果をとなった。このことは、位置決めを考慮すると(100)面が(111)よりもより適しているか、またはInAsがGaAsよりもより適した物質である、ということを意味している。
【実施例6】
【0085】
−GaAs(111)B上のAu−In−Auサンドイッチ
GaAs基板上のAu−In−Auサンドイッチを用いた。GaAs(111)基板を用いた。これはこのシステムのウィスカ優先成長方向が(111)であるからである。上記サンプルに14nmのAu:17nmのIn:14nmのAuからなる厚さ45nmの金属膜を蒸着した。このサンプルを450℃で15分間加熱した。図11(a)および図11(b)は触媒粒子が問題なく位置決めされていることを示している。この実施形態ではInは小滴であってもよく、基板から多くのGaを吸着することがない。450℃程度の温度はInAsの成長に適した温度範囲に十分入っている。我々のシステムではInAsウィスカの通常の成長温度は410〜460℃である。
【0086】
図12には、3次元フォトニックバンドギャップ構造を提供するための本発明の第3の実施形態を示している。図7を参照して上に説明した第2実施形態のプロセスを用いて各ナノウィスカ成長サイトに金触媒塊101を供給する。結果を図12(a)に示す。ここでシリコン基板100は111上面を有する。シリコンナノウィスカのセグメント102を成長させるために、CBEプロセスを用いて成長を開始させる。所定時間後、反応チャンバ内に噴射される分子ビームの構成要素を素早く切り替え、シリコンセグメントの上にナノウィスカのゲルマニウムセグメント104の成長を誘起する。1つのナノウィスカ内において異なる物質を突然にヘテロ接合を形成するプロセスについては、本出願人による同時継続中の米国特許出願第10/613,071(2003年7月7日出願)に詳しく説明されている。
【0087】
結果として示されているものは、交互に並ぶ多くのゲルマニウムとシリコンのセグメントからなるナノウィスカである。なお別の方法として、ゲルマニウムの代わりにアルミニウムを用いてもよい。その後ナノウィスカを酸化雰囲気内で加熱し、シリコンとゲルマニウムをそれぞれの酸化物である、二酸化ケイ素と酸化ゲルマニウムに変化させる。また、アルミニウムを用いた場合にはアルミニウム酸化物(サファイア)に変化させる。図12(b)に示すように得られるナノウィスカはその長さに沿って異なる屈折率を有する領域106、108を有する。領域106、108の長さは調節することができ、3次元フォトニックバンドギャップ構造が得られる。該構造において、ナノウィスカのサイト位置が2次元以内のバンドギャップ特性を与え、ナノウィスカの長さに沿った屈折率の変化がフォトニックバンドギャップ構造の第3の次元を与える。
【0088】
第4の実施形態では、図13(a)および図13(b)に、フォトニックバンドギャップアレイを形成し、該アレイを通して光を透過するための光源を一体化したナノエンジニアリングで形成された構造を示している。図7を参照して上に説明した第2実施形態のプロセスを用いて、各ナノウィスカ成長サイトに金触媒塊101を供給する。結果を図13(a)に示す。ここでインジウムリンの基板130の上には金触媒粒子132が形成されている。InPナノウィスカのセグメント134を成長させるべく、CBEプロセスを用いて成長を開始させる。所定時間後、反応チャンバ内に噴射される分子ビームの構成要素を素早く切り替え、InPセグメントの上にナノウィスカのインジウムヒ素セグメント136の成長を誘起する。そしてInAsセグメント136の上に更なるInPセグメント138を成長させる。1つのナノウィスカ内において異なる物質を突然にヘテロ接合を形成するプロセスについては、本出願人による同時継続中の米国特許出願第10/613,071(2003年7月7日出願)に詳しく説明されている。その後アレイを透明マトリックス媒体140内に封入する。
【0089】
図13(b)に示すように、極小LED量子ドット構造が結果としていられる。ウィスカアレイから選択されたウィスカ150は、インジウムヒ素からなる内側領域136の両側に、インジウムリンからなるアノードおよびカソード外側領域134、138を有し、量子井戸を形成している。領域134、138はそれぞれ金属化領域152、154として形成されたアノードおよびカソード電気接点に接続されている。格子整合(lattice matching)と不整合応力の解放が必要とされ、所定の波長しか許容されない平面状デバイスと異なり、本実施形態においてはLEDの波長が完全に可変である点が重要である。これは所望の発光波長を得るべく、ダイオードを形成する物質をどのような所望の組成とすることもできるからである。
【0090】
図14はナノインプリントリソグラフィのスタンプとして用いる本発明の第5の実施例を示す。基板300上には、各サイト304に、実施例1として説明したプロセスによりナノウィスカアレイ302が形成されている(一部のナノウィスカのみを明示的に図示している)。ナノウィスカはグループ化され、パターン304を形成するように配列されており、NILプロセスに応用した場合に必要とされるナノ構造を形成する。ナノウィスカの長さは所望であれば、1マイクロメートル以上とすることができ、これにより任意の深さのナノ構造の形成を可能とする。
【実施例7】
【0091】
この実施例は本発明のナノウィスカアレイ製造の際に可能な精度を例示する。
【0092】
図15は本発明に従って作成されたナノウィスカアレイの平面図であり、ナノウィスカは一辺が1μmの六角形に配列されている。
【0093】
図16は図15に示すアレイの一部の拡大図であり、このような画像を解析するコンピュータプログラムによって得られるナノウィスカの位置を、個々のナノウィスカについて求め、その位置を十字60のような十字で示している。図16にはまた、コンピュータプログラムで生成した格子グリッドの諸点の位置(ナノウィスカのターゲット位置)を例えば十字62のような点として示している。グリッド点の位置と個々のナノウィスカの位置をコンピュータプログラムで求めた後に、格子点と実際の位置点との差を各ナノウィスカについて生成した。図17はそれらの差をヒストグラムプロットとして表している。図17に示す図に基づいて求めた、コンピュータで生成した格子グリッドからの実際の位置のずれの平均値は36nmであり、標準偏差は23nmであった。図示の構造に対して、これらの結果を格子パラメータ(=六角形セルの一辺)と比較すれば、平均ずれ量の割合は3.6%、標準偏差の割合は2.3%となる。また、ほとんどすべてのナノウィスカについて、各ウィスカのターゲット位置からのずれはウィスカの径よりも小さく、実際のところほとんどの場合、ウィスカ径の半分より小さく、多くのウィスカはそのターゲット位置からのずれが径の20%より小さく、また径の1%乃至5%でさえあり、あるいは実質的にターゲット位置と一致(ずれが0.5%以下)する。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】(a)は本発明の実施例1のSEM顕微鏡画像であり、フォトニックバンドギャップアレイを生成する際の成長前の1つの六角形セルを示す。およそ直径125nm厚さ45nmの金ドットが基板表面上に観察できる。(b)は(a)と同じ構造の成長後を示す。ワイヤは頂部径140nm、基部径200nmであり、長さは約1μmである(視線角度45度)。
【図2】本発明の実施例2に用いられるNILスタンプの斜め方向から見たSEM顕微鏡画像である。スタンプはCrをSF6O2内でのエッチング用のマスクとして用いて1インチのSiウエハから製造されたものである。各コラムは高さ300nm頂部径約200nmで、コラムは最隣接距離1μmの六角形パターンで配列されている。
【図3】本発明の実施例1によって製造された本発明の第1の実施形態による細いワイヤの高密度アレイのSEM像である。ワイヤは長さ3μm、頂部径50nmであり基部の径はそれより大きい。本図において主画像は45度の角度、入れ子画像は20度の角度から撮られたものである。
【図4】(a)はナノワイヤハニカム格子構造の上面図であり、(b)は同構造を45度から見た図である。欠陥エンジニアリング(defect engineering)の可能性を利用してウェーブガイドのような構造を形成したものである。
【図5】金ドットの厚さを17nmに固定し、異なる厚さ対高さ比を有する金ドットから成長させたナノワイヤを示す図である。元のドットの径は左からそれぞれ、50、200、200、400,800ナノメートルである。
【図6】(a)は本発明による、触媒シード粒子を形成するために融解させる前の触媒物質塊を示す図であり、(b)は触媒シード粒子を形成するために融解させた後の触媒物質塊を示す図である。
【図7】(a)〜(e)は本発明の第2の実施形態による、マスクの開口内において基板上に触媒粒子を形成し、その後CBEプロセスによってナノウィスカを成長させる際の工程を示す図である。(f)はCBEチャンバを模式的に示す図である。
【図8】本発明の実施例3のSEM像であり、上方から片側に傾けて撮像された、触媒シード粒子を位置決めするためのマスクの使用を示す図である。
【図9】本発明の実施例4のSEM像であり、(a)はGaAs(111)Bに45nmのAuを載せたものを7nmのSiOxで覆い、450℃で15分間加熱したものを示し、(b)はGaAs(111)Bに45nmのAuを載せたものを、450℃で15分間加熱したものを示す。
【図10】本発明の実施例5のSEM像であり、(a)はInAs(80)に45nmのAu−IN−Auのサンドイッチを載せたものを、450℃で20分間加熱したものを示し、(b)は左の例と同じであるが、純粋な金を用いている。
【図11】本発明の実施例6のSEM像であり、(a)はGaAs(91)に45nmのAu−IN−大きめのAuのサンドイッチを載せたものを、450℃で15分間加熱したものを示し、(b)はより大きい形成物をクローズアップで示す図である。元のディスク径は2μmであり、これはd(径)=48t(厚さ)の形状を意味する。
【図12】3次元フォトニックバンドギャップ構造を形成するための本発明の第3の実施形態を示す図である。
【図13】フォトニックバンドギャップ構造中にLED光源を形成するための本発明の第4の実施例を示す図である。
【図14】NILスタンプとして用いられる本発明の第6の実施形態を示す図である。
【図15】本発明により作成されたナノウィスカアレイの平面図であり、大きなアレイを形成するナノウィスカの正確な位置決めを示す。
【図16】図15のアレイの拡大平面図であり、格子点の位置と共に実際のナノウィスカ位置が示されている。
【図17】図16に示した格子点からのナノウィスカの実際の位置のずれを示すヒストグラムである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に少なくとも1つのナノウィスカを備える構造を製造する方法であって、
所定の物質の基板を提供することと、
該基板表面上の所定の位置に少なくとも1つの触媒物質塊を提供することと、
前記塊の各々からそれぞれ触媒シード粒子を生成し、かつ触媒シード粒子からエピタキシャルに所定物質のナノウィスカを成長させるように、熱を加え、かつ少なくとも1つの物質を気体状態で導入することと、からなり、
前記塊のそれぞれは、触媒シード粒子の形成中に塊を前記表面を横切って移動させようとする力が基板表面上のぬれた界面を介した保持力よりも小さくなるようになされている方法。
【請求項2】
前記各塊は融解に際して基板表面とほぼ同一の界面を維持する請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記各塊は径と高さを有し、径と高さの比が1:2と1:12の間である請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記比はおよそ1:3である請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記各塊は触媒物質からなる第1の領域と、前記触媒シード粒子を形成するための合金を形成する物質からなる第2の領域とを含む請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記塊は前記触媒物質からなる第1および第3の層と、それらの間に介在する前記合金を形成する物質からなる第2の層とを含む請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの塊は触媒塊を境界づけるスタンプを用いたナノインプリントリソグラフィプロセスによって形成される請求項1記載の方法。
【請求項8】
該スタンプは基板上の1つのナノウィスカのアレイによって形成され、それにより触媒物質塊の任意の径対高さ比を許容する請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記触媒シード粒子を形成する最初のアニール工程と、触媒シード粒子からナノウィスカを成長させる第2の成長工程とを含む請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記所定位置におけるナノウィスカの成長核形成に要する時間が基板表面上でのそれぞれの塊の流動性の特性時間よりも小さくなり、ナノウィスカを前記所定位置で所定の位置公差内に維持するようにナノウィスカの成長条件を制御する請求項1記載の方法。
【請求項11】
複数の触媒物質塊を所定の配置で提供し、各塊はそれぞれ所定の位置にあり、各ナノウィスカはその所定の位置からの距離がその最隣接ナノウィスカとの距離の10%以内となるような精度で位置することを含む請求項1記載の方法。
【請求項12】
ナノウィスカ物質はII−VI族、III−V族、IV族のいずれか1つである請求項1記載の方法。
【請求項13】
基板物質はII−VI族、III−V族、IV族のいずれか1つである請求項1記載の方法。
【請求項14】
各位置の周囲の1つ以上のガス状態のナノウィスカ物質の活動を制御して、ナノウィスカの成長を制御することを含む請求項1記載の方法。
【請求項15】
III−V族分子の成長中にV族物質の活動を制御することを含む請求項14記載の方法。
【請求項16】
エピタキシャル成長プロセスはMOVPEであり、ナノウィスカ成長のための物質は蒸気の形態で前記基板に導入される請求項1記載の方法。
【請求項17】
エピタキシャル成長プロセスはCBEであり、ナノウィスカ成長のための物質はビームの形態で基板に導入される請求項1記載の方法。
【請求項18】
基板表面上にマスクを設け、ナノウィスカ成長中の触媒塊の移動を抑制することを含む請求項1記載の方法。
【請求項19】
前記マスクには開口が設けられており、各開口内にそれぞれの塊を収容する請求項18記載の方法。
【請求項20】
ナノエンジニアリングを用いた構造であって、所定物質の基板と、該基板表面の所定の位置に形成された少なくとも1つの触媒物質の塊とを有し、前記塊のそれぞれは加熱し融解して以降のナノウィスカ成長のための触媒シード粒子を形成する際に、基板との間にぬれ界面が形成され、前記表面を横切って塊を移動させようとする力が該ぬれ界面によってもたらされる塊をその所定位置に保持する力よりも小さくなるようになされている構造。
【請求項21】
前記各塊は融解に際して基板表面とほぼ同一の界面を維持する請求項20記載の構造。
【請求項22】
前記各塊は径と高さを有し、径と高さの比が1:2と1:12の間である請求項21記載の構造。
【請求項23】
前記比はおよそ1:3である請求項21記載の構造。
【請求項24】
前記各塊は触媒物質からなる第1の領域と、前記触媒シード粒子を形成するための合金を形成する物質からなる第2の領域とを含む請求項20記載の構造。
【請求項25】
前記塊は前記触媒物質からなる第1および第3の層と、それらの間に介在する前記合金を形成する物質からなる第2の層とを含む請求項24記載の構造。
【請求項26】
基板上に少なくとも1つのナノウィスカを備える構造を製造する方法であって、
所定物質の基板を提供することと、
該基板表面上の所定の位置に少なくとも1つの触媒物質塊を提供することと、
それぞれの前記触媒シード粒子からエピタキシャルに、所定物質のナノウィスカを成長させるように、熱を加え、かつ少なくとも1つの物質を気体の状態で導入することと、からなり、
前記所定位置におけるナノウィスカの成長核形成に要する時間が基板表面上でのそれぞれの塊の流動性の特性時間よりも小さくなり、ナノウィスカを前記所定位置で所定の位置公差内に維持するようにナノウィスカの成長条件を制御する方法。
【請求項27】
複数の触媒物質塊を所定の配置で提供し、各塊はそれぞれ所定の位置にあり、各ナノウィスカはその所定の位置からの距離がその最隣接ナノウィスカとの距離の10%以内となるような精度で位置することを含む請求項26記載の方法。
【請求項28】
ナノウィスカ物質はII−VI族、III−V族、IV族のいずれか1つである請求項27記載の方法。
【請求項29】
基板物質はII−VI族、III−V族、IV族のいずれか1つである請求項27記載の方法。
【請求項30】
前記基板と前記少なくとも1つの触媒塊とをアニールする最初の工程を含み、その際各触媒塊は基板表面と合金を形成する請求項26記載の方法。
【請求項31】
各位置の周囲の1つ以上のガス状態のナノウィスカ物質の活動を制御して、ナノウィスカの成長を制御することを含む請求項26記載の方法。
【請求項32】
III−V族分子の成長中にV族物質の活動を制御することを含む請求項31記載の方法。
【請求項33】
エピタキシャル成長プロセスはMOVPEであり、ナノウィスカ成長のための物質は蒸気の形態で前記基板に導入される請求項26記載の方法。
【請求項34】
エピタキシャル成長プロセスはCBEであり、ナノウィスカ成長のための物質はビームの形態で基板に導入される請求項26記載の方法。
【請求項35】
基板表面上にマスクを設け、ナノウィスカ成長中の触媒塊の移動を抑制することを含む請求項26記載の方法。
【請求項36】
基板上に少なくとも1つのナノウィスカを備える構造を製造する方法であって、
基板を提供することと、
該基板表面上に少なくとも1つの触媒物質塊を提供し、その際、各塊は基板上のそれぞれの所定位置に配置することと、
基板表面にマスクを設けることと、
化学ビームエピタキシーによって、それぞれの触媒シード粒子を介して、所定物質のナノウィスカを、その高さおよび径および位置を制御して成長させるように、熱を加え、かつ少なくとも1つの物質を気体の状態で導入し、その際前記マスクが触媒塊の横移動と基板表面上での成長の両方を抑制することと、からなる方法。
【請求項37】
ナノエンジニアリングを用いた構造を製造する方法であって、
基板を提供することと、
基板表面の基板上の所定の位置に少なくとも1つの所定の寸法の開口を有するマスクを設けることと、
少なくとも1つの触媒物質塊を提供し、前記各塊は表面上の各マスク開口内に配置されることと、
化学ビームエピタキシーによって、それぞれの触媒シード粒子を介して、所定物質のナノウィスカを、その高さおよび径および位置を制御して成長させるように、熱を加え、かつ少なくとも1つの物質を気体の状態で導入し、その際前記マスクが触媒塊の横移動と基板表面上での成長の両方を抑制することと、からなる方法。
【請求項38】
複数の触媒物質塊を所定の配置で提供し、各塊はそれぞれ所定の位置にあり、各ナノウィスカはその所定の位置からの距離がその最隣接ナノウィスカとの距離の10%以内となるような精度で位置することを含む請求項37記載の方法。
【請求項39】
ナノウィスカ物質はII−VI族、III−V族、IV族のいずれか1つである請求項37記載の方法。
【請求項40】
基板物質はII−VI族、III−V族、IV族のいずれか1つである請求項37記載の方法。
【請求項41】
前記基板と前記少なくとも1つの塊とをアニールする最初の工程を含み、その際各触媒塊は基板表面と合金を形成する請求項37記載の方法。
【請求項42】
各位置の周囲の1つ以上のガス状態のナノウィスカ物質の活動を制御して、ナノウィスカの成長を制御することを含む請求項37記載の方法。
【請求項43】
ナノウィスカの基板表面における基部は各開口を画成するマスクの縁部からおよそナノウィスカの径より小さい距離にある請求項37記載の方法。
【請求項44】
ナノエンジニアリングを用いた構造であって、基板上の少なくとも1つのナノウィスカと、所定物質の基板と、基板上にあり所定の場所に所定の径で設けられた少なくとも1つの開口を有する別の物質からなるマスクと、該各開口から延びるナノウィスカとを有し、各ナノウィスカの基板表面における基部は各開口を画成するマスクの縁部からおよそナノウィスカの径より小さい距離にある構造。
【請求項45】
基板上にフォトニックバンドギャップアレイをなすおよそ1000以上のナノウィスカのアレイを製造する方法であって、
所定物質の基板を提供することと、
基板表面に触媒物質塊のアレイを所定の配置で提供し、該各塊は該表面上のそれぞれの所定位置に位置することと、
熱を加えかつ気体状の複数の物質を順次導入して、各触媒塊から、異なる物質の部分を含みそれら部分の間にシャープなヘテロ接合を有するナノウィスカを成長させることと、からなり、
ナノウィスカがその所定の位置からの距離がその最隣接ナノウィスカとの距離の10%以内となるような精度で位置するようにナノウィスカ成長条件を制御する方法。
【請求項46】
各ナノウィスカは2つの異なる物質が交互に並ぶ一連の部分からなり、前記ナノウィスカを酸化することにより、前記部分から異なる屈折率を有する交互に交替する領域を形成する請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記2つの異なる物質はSiとAlであり、前記領域はシリカとサファイアからなる請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記2つの異なる物質はSiとGeであり、前記領域はシリカとGeOxからなる請求項46記載の方法。
【請求項49】
前記セグメントは量子ドットLED構造を提供し、1つ以上の選択されたナノウィスカに電気的接点を設けて該LED構造の動作を可能とする請求項45記載の方法。
【請求項50】
基板上にある少なくとも1つのナノウィスカを有し、該ナノウィスカの所定のターゲット位置からの位置ずれは該ナノウィスカの径以下であるナノエンジニアリングを用いた構造。
【請求項51】
前記位置ずれはナノウィスカの径の半分以下である請求項50記載のナノエンジニアリングを用いた構造。
【請求項52】
前記位置ずれはナノウィスカの径の20%以下である請求項50記載のナノエンジニアリングを用いた構造。
【請求項53】
前記位置ずれはナノウィスカの径の5%以下である請求項50記載のナノエンジニアリングを用いた構造。
【請求項54】
前記位置ずれはナノウィスカの径の1%以下である請求項50記載のナノエンジニアリングを用いた構造。
【請求項55】
前記位置ずれはナノウィスカの径の0.5%以下である請求項50記載のナノエンジニアリングを用いた構造。
【請求項56】
基板上に少なくとも1つのナノウィスカを備える構造を製造する方法であって、
所定の物質の基板を提供することと、
該基板表面上の所定の位置に少なくとも1つの触媒物質塊を提供することと、
前記塊の各々からそれぞれ触媒シード粒子を生成し、かつ触媒シード粒子からエピタキシャルに所定物質のナノウィスカを成長させるように、熱を加え、かつ少なくとも1つの物質を気体状態で導入することと、からなり、
該ナノウィスカの所定のターゲット位置からの位置ずれは該ナノウィスカの径以下である方法。
【請求項57】
前記位置ずれはナノウィスカの径の半分以下である請求項56記載の方法。
【請求項58】
前記位置ずれはナノウィスカの径の20%以下である請求項56記載の方法。
【請求項59】
前記位置ずれはナノウィスカの径の5%以下である請求項56記載の方法。
【請求項60】
前記位置ずれはナノウィスカの径の1%以下である請求項56記載の方法。
【請求項61】
前記位置ずれはナノウィスカの径の0.5%以下である請求項56記載の方法。
【請求項1】
基板上に少なくとも1つのナノウィスカを備える構造を製造する方法であって、
所定の物質の基板を提供することと、
該基板表面上の所定の位置に少なくとも1つの触媒物質塊を提供することと、
前記塊の各々からそれぞれ触媒シード粒子を生成し、かつ触媒シード粒子からエピタキシャルに所定物質のナノウィスカを成長させるように、熱を加え、かつ少なくとも1つの物質を気体状態で導入することと、からなり、
前記塊のそれぞれは、触媒シード粒子の形成中に塊を前記表面を横切って移動させようとする力が基板表面上のぬれた界面を介した保持力よりも小さくなるようになされている方法。
【請求項2】
前記各塊は融解に際して基板表面とほぼ同一の界面を維持する請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記各塊は径と高さを有し、径と高さの比が1:2と1:12の間である請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記比はおよそ1:3である請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記各塊は触媒物質からなる第1の領域と、前記触媒シード粒子を形成するための合金を形成する物質からなる第2の領域とを含む請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記塊は前記触媒物質からなる第1および第3の層と、それらの間に介在する前記合金を形成する物質からなる第2の層とを含む請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの塊は触媒塊を境界づけるスタンプを用いたナノインプリントリソグラフィプロセスによって形成される請求項1記載の方法。
【請求項8】
該スタンプは基板上の1つのナノウィスカのアレイによって形成され、それにより触媒物質塊の任意の径対高さ比を許容する請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記触媒シード粒子を形成する最初のアニール工程と、触媒シード粒子からナノウィスカを成長させる第2の成長工程とを含む請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記所定位置におけるナノウィスカの成長核形成に要する時間が基板表面上でのそれぞれの塊の流動性の特性時間よりも小さくなり、ナノウィスカを前記所定位置で所定の位置公差内に維持するようにナノウィスカの成長条件を制御する請求項1記載の方法。
【請求項11】
複数の触媒物質塊を所定の配置で提供し、各塊はそれぞれ所定の位置にあり、各ナノウィスカはその所定の位置からの距離がその最隣接ナノウィスカとの距離の10%以内となるような精度で位置することを含む請求項1記載の方法。
【請求項12】
ナノウィスカ物質はII−VI族、III−V族、IV族のいずれか1つである請求項1記載の方法。
【請求項13】
基板物質はII−VI族、III−V族、IV族のいずれか1つである請求項1記載の方法。
【請求項14】
各位置の周囲の1つ以上のガス状態のナノウィスカ物質の活動を制御して、ナノウィスカの成長を制御することを含む請求項1記載の方法。
【請求項15】
III−V族分子の成長中にV族物質の活動を制御することを含む請求項14記載の方法。
【請求項16】
エピタキシャル成長プロセスはMOVPEであり、ナノウィスカ成長のための物質は蒸気の形態で前記基板に導入される請求項1記載の方法。
【請求項17】
エピタキシャル成長プロセスはCBEであり、ナノウィスカ成長のための物質はビームの形態で基板に導入される請求項1記載の方法。
【請求項18】
基板表面上にマスクを設け、ナノウィスカ成長中の触媒塊の移動を抑制することを含む請求項1記載の方法。
【請求項19】
前記マスクには開口が設けられており、各開口内にそれぞれの塊を収容する請求項18記載の方法。
【請求項20】
ナノエンジニアリングを用いた構造であって、所定物質の基板と、該基板表面の所定の位置に形成された少なくとも1つの触媒物質の塊とを有し、前記塊のそれぞれは加熱し融解して以降のナノウィスカ成長のための触媒シード粒子を形成する際に、基板との間にぬれ界面が形成され、前記表面を横切って塊を移動させようとする力が該ぬれ界面によってもたらされる塊をその所定位置に保持する力よりも小さくなるようになされている構造。
【請求項21】
前記各塊は融解に際して基板表面とほぼ同一の界面を維持する請求項20記載の構造。
【請求項22】
前記各塊は径と高さを有し、径と高さの比が1:2と1:12の間である請求項21記載の構造。
【請求項23】
前記比はおよそ1:3である請求項21記載の構造。
【請求項24】
前記各塊は触媒物質からなる第1の領域と、前記触媒シード粒子を形成するための合金を形成する物質からなる第2の領域とを含む請求項20記載の構造。
【請求項25】
前記塊は前記触媒物質からなる第1および第3の層と、それらの間に介在する前記合金を形成する物質からなる第2の層とを含む請求項24記載の構造。
【請求項26】
基板上に少なくとも1つのナノウィスカを備える構造を製造する方法であって、
所定物質の基板を提供することと、
該基板表面上の所定の位置に少なくとも1つの触媒物質塊を提供することと、
それぞれの前記触媒シード粒子からエピタキシャルに、所定物質のナノウィスカを成長させるように、熱を加え、かつ少なくとも1つの物質を気体の状態で導入することと、からなり、
前記所定位置におけるナノウィスカの成長核形成に要する時間が基板表面上でのそれぞれの塊の流動性の特性時間よりも小さくなり、ナノウィスカを前記所定位置で所定の位置公差内に維持するようにナノウィスカの成長条件を制御する方法。
【請求項27】
複数の触媒物質塊を所定の配置で提供し、各塊はそれぞれ所定の位置にあり、各ナノウィスカはその所定の位置からの距離がその最隣接ナノウィスカとの距離の10%以内となるような精度で位置することを含む請求項26記載の方法。
【請求項28】
ナノウィスカ物質はII−VI族、III−V族、IV族のいずれか1つである請求項27記載の方法。
【請求項29】
基板物質はII−VI族、III−V族、IV族のいずれか1つである請求項27記載の方法。
【請求項30】
前記基板と前記少なくとも1つの触媒塊とをアニールする最初の工程を含み、その際各触媒塊は基板表面と合金を形成する請求項26記載の方法。
【請求項31】
各位置の周囲の1つ以上のガス状態のナノウィスカ物質の活動を制御して、ナノウィスカの成長を制御することを含む請求項26記載の方法。
【請求項32】
III−V族分子の成長中にV族物質の活動を制御することを含む請求項31記載の方法。
【請求項33】
エピタキシャル成長プロセスはMOVPEであり、ナノウィスカ成長のための物質は蒸気の形態で前記基板に導入される請求項26記載の方法。
【請求項34】
エピタキシャル成長プロセスはCBEであり、ナノウィスカ成長のための物質はビームの形態で基板に導入される請求項26記載の方法。
【請求項35】
基板表面上にマスクを設け、ナノウィスカ成長中の触媒塊の移動を抑制することを含む請求項26記載の方法。
【請求項36】
基板上に少なくとも1つのナノウィスカを備える構造を製造する方法であって、
基板を提供することと、
該基板表面上に少なくとも1つの触媒物質塊を提供し、その際、各塊は基板上のそれぞれの所定位置に配置することと、
基板表面にマスクを設けることと、
化学ビームエピタキシーによって、それぞれの触媒シード粒子を介して、所定物質のナノウィスカを、その高さおよび径および位置を制御して成長させるように、熱を加え、かつ少なくとも1つの物質を気体の状態で導入し、その際前記マスクが触媒塊の横移動と基板表面上での成長の両方を抑制することと、からなる方法。
【請求項37】
ナノエンジニアリングを用いた構造を製造する方法であって、
基板を提供することと、
基板表面の基板上の所定の位置に少なくとも1つの所定の寸法の開口を有するマスクを設けることと、
少なくとも1つの触媒物質塊を提供し、前記各塊は表面上の各マスク開口内に配置されることと、
化学ビームエピタキシーによって、それぞれの触媒シード粒子を介して、所定物質のナノウィスカを、その高さおよび径および位置を制御して成長させるように、熱を加え、かつ少なくとも1つの物質を気体の状態で導入し、その際前記マスクが触媒塊の横移動と基板表面上での成長の両方を抑制することと、からなる方法。
【請求項38】
複数の触媒物質塊を所定の配置で提供し、各塊はそれぞれ所定の位置にあり、各ナノウィスカはその所定の位置からの距離がその最隣接ナノウィスカとの距離の10%以内となるような精度で位置することを含む請求項37記載の方法。
【請求項39】
ナノウィスカ物質はII−VI族、III−V族、IV族のいずれか1つである請求項37記載の方法。
【請求項40】
基板物質はII−VI族、III−V族、IV族のいずれか1つである請求項37記載の方法。
【請求項41】
前記基板と前記少なくとも1つの塊とをアニールする最初の工程を含み、その際各触媒塊は基板表面と合金を形成する請求項37記載の方法。
【請求項42】
各位置の周囲の1つ以上のガス状態のナノウィスカ物質の活動を制御して、ナノウィスカの成長を制御することを含む請求項37記載の方法。
【請求項43】
ナノウィスカの基板表面における基部は各開口を画成するマスクの縁部からおよそナノウィスカの径より小さい距離にある請求項37記載の方法。
【請求項44】
ナノエンジニアリングを用いた構造であって、基板上の少なくとも1つのナノウィスカと、所定物質の基板と、基板上にあり所定の場所に所定の径で設けられた少なくとも1つの開口を有する別の物質からなるマスクと、該各開口から延びるナノウィスカとを有し、各ナノウィスカの基板表面における基部は各開口を画成するマスクの縁部からおよそナノウィスカの径より小さい距離にある構造。
【請求項45】
基板上にフォトニックバンドギャップアレイをなすおよそ1000以上のナノウィスカのアレイを製造する方法であって、
所定物質の基板を提供することと、
基板表面に触媒物質塊のアレイを所定の配置で提供し、該各塊は該表面上のそれぞれの所定位置に位置することと、
熱を加えかつ気体状の複数の物質を順次導入して、各触媒塊から、異なる物質の部分を含みそれら部分の間にシャープなヘテロ接合を有するナノウィスカを成長させることと、からなり、
ナノウィスカがその所定の位置からの距離がその最隣接ナノウィスカとの距離の10%以内となるような精度で位置するようにナノウィスカ成長条件を制御する方法。
【請求項46】
各ナノウィスカは2つの異なる物質が交互に並ぶ一連の部分からなり、前記ナノウィスカを酸化することにより、前記部分から異なる屈折率を有する交互に交替する領域を形成する請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記2つの異なる物質はSiとAlであり、前記領域はシリカとサファイアからなる請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記2つの異なる物質はSiとGeであり、前記領域はシリカとGeOxからなる請求項46記載の方法。
【請求項49】
前記セグメントは量子ドットLED構造を提供し、1つ以上の選択されたナノウィスカに電気的接点を設けて該LED構造の動作を可能とする請求項45記載の方法。
【請求項50】
基板上にある少なくとも1つのナノウィスカを有し、該ナノウィスカの所定のターゲット位置からの位置ずれは該ナノウィスカの径以下であるナノエンジニアリングを用いた構造。
【請求項51】
前記位置ずれはナノウィスカの径の半分以下である請求項50記載のナノエンジニアリングを用いた構造。
【請求項52】
前記位置ずれはナノウィスカの径の20%以下である請求項50記載のナノエンジニアリングを用いた構造。
【請求項53】
前記位置ずれはナノウィスカの径の5%以下である請求項50記載のナノエンジニアリングを用いた構造。
【請求項54】
前記位置ずれはナノウィスカの径の1%以下である請求項50記載のナノエンジニアリングを用いた構造。
【請求項55】
前記位置ずれはナノウィスカの径の0.5%以下である請求項50記載のナノエンジニアリングを用いた構造。
【請求項56】
基板上に少なくとも1つのナノウィスカを備える構造を製造する方法であって、
所定の物質の基板を提供することと、
該基板表面上の所定の位置に少なくとも1つの触媒物質塊を提供することと、
前記塊の各々からそれぞれ触媒シード粒子を生成し、かつ触媒シード粒子からエピタキシャルに所定物質のナノウィスカを成長させるように、熱を加え、かつ少なくとも1つの物質を気体状態で導入することと、からなり、
該ナノウィスカの所定のターゲット位置からの位置ずれは該ナノウィスカの径以下である方法。
【請求項57】
前記位置ずれはナノウィスカの径の半分以下である請求項56記載の方法。
【請求項58】
前記位置ずれはナノウィスカの径の20%以下である請求項56記載の方法。
【請求項59】
前記位置ずれはナノウィスカの径の5%以下である請求項56記載の方法。
【請求項60】
前記位置ずれはナノウィスカの径の1%以下である請求項56記載の方法。
【請求項61】
前記位置ずれはナノウィスカの径の0.5%以下である請求項56記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2006−525214(P2006−525214A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505882(P2006−505882)
【出願日】平成16年1月7日(2004.1.7)
【国際出願番号】PCT/GB2004/000037
【国際公開番号】WO2004/087564
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(505371379)スターツコテット 22286 エービー (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年1月7日(2004.1.7)
【国際出願番号】PCT/GB2004/000037
【国際公開番号】WO2004/087564
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(505371379)スターツコテット 22286 エービー (4)
【Fターム(参考)】
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