説明

水中位置検出システム、音源装置、水中位置検出装置、および水中位置検出方法

【課題】 ダイバーが自分の位置を把握しながら散策でき、水底に装置を設置する必要がなく、各装置の小型化を実現し、各装置が信号を送受信するために費やす時間を低減することが可能な水中位置検出システム、装置および方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 音源装置は、外部の測位手段からの測位情報を取得する手段と、自己の位置を算出する手段と、自己の位置を重畳して所定強度の音波として水中に照射する音源とを備え、水中位置検出装置は、照射された音波を取得する手段と、取得した音波に重畳された音源装置の位置を得る処理と、音波の強度に基づいて音源装置までの距離を得る処理とを行うことで、複数の音源装置の位置および複数の音源装置までの距離を取得する手段と、取得した複数の音源装置の位置および複数の音源装置までの距離に基づいて所定の測位処理を行うことで、自己の位置を取得する手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中における位置検出システム、音源装置、水中位置検出装置、および水中位置検出方法、特にダイビングのナビゲータとして利用する水中位置検出システム、音源装置、水中位置検出装置、および水中位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイビング初心者またはポイントへの潜水経験の浅いダイバーには位置の把握に不安がある。そこで、安全にダイバーがダイビングコースの散策を行えるように、水中での位置検出が可能な装置の開発がすすめられている。
従来においては、ダイバーがコンパスを用いて方位を確認しながら、周囲の景色を頼りに散策する手法がある。また、ボートとダイバーとの間で超音波信号のやりとりを行い、ダイバーがボートの位置を確認しながら散策する手法もある。
【0003】
また、他の手法として、超音波を発信する装置を複数水底に設置し、各装置から各装置固有の周波数の超音波を発信させ、ダイバーの携帯する装置が受信した複数の超音波の到達時間差からダイバーの位置を特定する技術が開示されている(特許文献1参照)。
さらに、他の手法として、誘導対象の水中航走体への音響測位用音源、電波測位装置、音響測位用音源からの音源信号を発信する音響トランスデューサ、および電波測位装置で得た測位情報を発信する水中音響部を有し、洋上に浮遊する複数のブイを備え、水中航走体は、複数のブイからの音響信号に基づく音響測位と、測位情報によるブイの絶対位置データとにより自己の絶対位置をリアルタイムに計測する技術が開示されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−172629号公報(段落0010〜0018、図1〜2)
【特許文献2】特開平10−111352号公報(段落0022〜0045、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、ダイバーがコンパスを用いて方位を確認しながら、周囲の景色を手掛かりとして自分の位置を確認する作業は、視界が悪いときには特に困難であり、初心者が安全に散策するのは難しいという問題がある。また、ボートとダイバー間の超音波信号のやりとりによって位置を確認する手法では、ダイバーが把握できるのは、ボートに対する相対位置であり、自分が水中のどの辺りを散策しているのかを把握できるものではないという問題がある。
【0005】
また、特許文献1で開示されている技術によれば、ダイバーは水中地図で自分の位置を確認しながら散策できるが、超音波を発信する装置を水底に設置する作業および回収する作業が煩雑であるという問題がある。さらには、水底にある岩礁などの障害物によって音波が反射してしまうと、位置の検出の精度が低下するという問題がある。
【0006】
さらに、特許文献2で開示されている技術によれば、ブイからの相対位置を測定するために必要な時刻情報を含む音響信号の発信器と、ブイの絶対位置情報を含む測位信号の発信器とをブイに取り付ける必要があることから、ブイが大きくなってしまうという問題がある。また、水中航走体にもふたつの受信器が必要になることから、水中航走体が大きくなってしまうという問題がある。仮に、ひとつの発信器から信号を発信する構成にしたとしても、ひとつの発信器から時刻情報と絶対位置情報とを含む信号を発信する必要が生じ、信号を送受信するために多くの時間を費やしてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、ダイバーが水中のどの辺りを散策しているのかを把握しながら散策することが可能であり、水底に装置を設置する必要がなく、また、各装置の小型化を実現し、各装置が信号を送受信するために費やす時間を低減することが可能な水中位置検出システム、音源装置、水中位置検出装置、および水中位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記目的を達成するために創案されたものであり、本発明の水中位置検出システムは、音源を備え、水中に向けて照射する音波により自己の位置を知らせる複数の音源装置と、水中に位置し、前記複数の音源装置からの音波を取得することで水中での自己の位置を検出する水中位置検出装置とを含んで構成される水中位置検出システムであって、前記音源装置は、水面上に設置され、外部の測位手段からの測位情報を取得する測位情報取得手段と、前記取得した測位情報に基づいて測位処理を行うことで、自己の位置を算出する自位置算出手段と、前記算出した自己の位置を重畳して所定強度の音波として水中に照射する音源とを備え、前記水中位置検出装置は、前記照射された音波を水中で取得する音波取得手段と、前記取得した音波からこれに重畳された音源装置の位置を得る処理と、前記音波の強度に基づいて前記音源装置までの距離を得る処理とを行うことで、前記複数の音源装置の位置および前記複数の音源装置までの距離を取得する位置・距離取得手段と、前記取得した前記複数の音源装置の位置および前記複数の音源装置までの距離に基づいて所定の測位処理を行うことで、水中での自己の位置を取得する水中位置算出手段と、を備える構成とした。
【0009】
かかる構成によれば、各音源装置は外部手段により、測位が可能で位置が明確に定まっているため、位置を重畳して、各音源装置で固有の周波数で音波を発生させ、水中位置検出装置において音波の強弱を検出できる装置によって音源装置までの距離を算出し、重畳された音源装置の位置と合わせて、水中の位置を検出することが可能である。したがってダイバーは、水中位置検出を携帯することによって、水中の位置を把握しながら散策することが可能となる。
【0010】
また、音源装置を水面上に設けているため、水底に設置すべき装置が不要となり、煩雑な装置の設置作業および回収作業を行う手間がなくなる。また、水底にある岩礁などの障害物によって音波が反射することもないので、精度を下げずに位置の検出を行うことが可能である。
【0011】
さらに、水中位置検出装置は、音波に重畳された音源装置の位置および音波強度に基づいて水中の位置を検出するため、水中位置検出装置が外部から時刻情報を取得する必要がなくなり、音源装置から水中位置検出装置に送信される信号に含まれる情報の量が低減される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ダイバーは水中の位置を把握しながら散策することが可能である。また、超音波発信装置などを水底に設置する作業および回収する作業が省略でき、岩礁などの水底障害物による位置検出精度の低下を防ぐことが可能である。さらに、音源装置から水中位置検出装置に送信される信号に含まれる情報が低減され、各装置の小型化を実現し、各装置が信号を送受信するために費やす時間を低減することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」という)について図面を参照して説明する。
【0014】
(第1実施形態)
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係る水中位置検出システムの構成について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る水中位置検出システムのブロック図である。水中位置検出システムは、GPSブイ10(10a,10b)と水中位置検出装置20とを含んで構成される。
【0015】
図1に示すように、GPSブイ10(10a,10b)は、測位情報取得手段101(101a,101b)と自位置算出手段102(102a,102b)と音源103(103a,103b)とを備える。以下、GPSブイ10aおよびGPSブイ10bの両方を指す場合は、GPSブイ10を用いて表す。同様に、測位情報取得手段101aおよび101bは、測位情報取得手段101を用いて表し、自位置算出手段102aおよび102bは、自位置算出手段102を用いて表し、音源103aおよび103bは、音源103を用いて表す。以下、GPSブイ10の各手段について説明する。
【0016】
[測位情報取得手段101の説明]
測位情報取得手段101は、GPS衛星2などの外部の測位手段から測位信号を受信する機能を有する。測位情報取得手段101は、測位信号を受信できるように、水面上などに設置されているのが好ましい。
【0017】
[自位置算出手段102の説明]
自位置算出手段102は、測位情報取得手段101で受信した測位信号から自己の位置を算出する機能を有する。算出する方法については、公知であるため、ここでは省略する。
【0018】
[音源103の説明]
音源103は、固有の周波数を持った電気信号から自位置算出手段102で算出した位置情報を各ブイ固有の周波数で位相変調して電圧を加えることにより音波を発生させて、GPSブイ10の位相変調された位置情報を送信する。GPSブイ10aでは、周波数f1で位相変調された音波を発生させ、GPSブイ10bでは、周波数f2で位相変調された音波を発生させる。音波自体は、圧電素子に電圧信号を入力することにより、圧電素子を用いたスピーカで音波の出力ができる。音波の指向性はスピーカで調整できるが、ここでは無指向とする。これにより音源103を構成する。
なお、測位情報取得手段101と音源103との距離を小さくすることによって、測位精度を上げることが可能である。
また、本実施形態においては、音源装置としてGPSブイ10を用いることにするが、音源装置としてGPS搭載の船などを代わりに用いることも可能である。
【0019】
受信側の水中位置検出装置20は、音波取得手段210、位置・距離取得手段220、水中位置算出手段230、水圧測定手段240および表示手段250を含んで構成される。以下、それぞれの手段について説明する。なお、本発明は、複数のGPSブイ10を用いることによって実現されるが、水中位置の算出方法を簡略化するため、水圧測定手段240とGPSブイ10aおよび10bとを用いた場合を好適な例として取り上げて説明することにする。
【0020】
[音波取得手段210の説明]
音波取得手段210は、水中の音波を検出し、検出した音波信号を電気信号に変換する機能を有する。ここでは、音波取得手段210は、水中マイクなどを用いて音波を検出し、圧電素子などを用いて音波信号を電気信号に変換する。また、音波取得手段210は、変換した音波信号を位置・距離取得手段220の周波数判定部221に送信する。
【0021】
[位置・距離取得手段220の説明]
位置・距離取得手段220は、周波数判定部221、音波強度検出部222、および復調部223を含んで構成される。
周波数判定部221は、音波取得手段210から受け取った音波信号の周波数がGPSブイ10aの周波数f1かGPSブイ10bの周波数f2かを判定する機能を有する。ここでは、周波数判定部221は、周波数回路フィルタなどにより周波数を識別し、音波強度検出部222に周波数の識別結果と音波信号とを送信する。
音波強度検出部222は、周波数判定部221から送られた音波信号から、音波の強度を検出する機能を有する。音波強度検出部222は、周波数の識別結果と音波強度と音波信号とを復調部223に送信する。
復調部223は、音波強度検出部222から受け取った変調された音波信号からGPSブイ10aまたは10bの位置情報を復調する機能を有する。周波数の識別結果と距離情報と位置情報とを水中位置算出手段230の測量計算部235に送信する。
【0022】
[水圧測定手段240の説明]
水圧測定手段240は、水中位置検出装置20にかかる水圧を測定する機能を有する。水圧測定手段240は、水圧計などを含んで構成される。また、測定された水圧は、測量計算部235に送信される。
【0023】
[水中位置算出手段230の説明]
水中位置算出手段230は、初期条件入力部231、設定部232、ROM233、RAM234、および測量計算部235を含んで構成される。
初期条件入力部231は、以下の計算処理に使用するパラメータの初期設定値を入力させる機能を有する。無線LANなどの技術を用いてハウジング200の外の端末装置310(図3参照)から入力することが可能である。
設定部232は、初期条件入力部231で入力されたパラメータの初期設定値をRAM234に設定する機能を有する。ここでは、設定部232は、端末装置310(図3参照)などから無線通信インタフェース311(図3参照)を介して、予め地上にいる間にパラメータを入力し、そのパラメータを設定部232によってRAM234に記録する。なお、パラメータの初期設定値をROM233の領域などに格納しておくことで、初期条件入力部231および設定部232を設けない構成とすることも可能である。
ROM233は、プログラムを格納しておく領域である。ROM233内の情報は必要に応じて、RAM234にロードされる。
RAM234は、測量計算部235において計算を行うために必要となる領域である。
測量計算部235は、復調部223から受け取った周波数の識別結果と音波強度と位置情報とを用いて、水中位置の算出を行う機能を有する。
【0024】
次に、図2を参照(適宜図1参照)して、測量計算部235における測量計算方法について説明する。図2は、本発明の第1実施形態に係る水中位置検出システムを構成する装置の位置関係を示す図である。
GPSブイ10aの位置(x1,y1,z1)とGPSブイ10bの位置(x2,y2,z2)とが復調部223によって既知となり、GPSブイ10aとGPSブイ10bとの距離r0は、次式(0)によって求められる。
【0025】
【数1】

【0026】
また、図2に示すように、GPSブイ10aの位置(x1,y1,z1)と水中位置検出装置20の位置(X,Y,Z)との距離をr1、GPSブイ10bの位置(x2,y2,z2)と水中位置検出装置20の位置(X,Y,Z)との距離をr2とし、線分r0への水中位置検出装置20(X,Y,Z)からの垂線に対する、r1とのなす角度をθ1、r2とのなす角度をθ2とすると、幾何的に次式(1)および(2)が成り立つ。
【0027】
r0 = r1 * sinθ1+ r2 * sinθ2 …式(1)
r1 * cosθ1 = r2 * cosθ2 …式(2)
【0028】
また、r1, r2について、「水工研技報 漁船工学 2,1980 pp.11〜29 水中衝撃音の分析について、畠山、石井」の実験報告より、音源との距離が100m程度までは音波強度は距離に反比例し、100m以上では距離の2乗に反比例するとあるため、ここでは簡易測位として100m以下の距離を対象とし、次式(3)および(4)が成立する。
【0029】
r1 = K1 * A1 / a1 …式(3)
r2 = K2 * A2 / a2 …式(4)
【0030】
a1,a2はそれぞれGPSブイ10aおよびGPSブイ10bの各ブイ固有の周波数における水中位置検出装置20(X,Y,Z)での観測音波検出強度を表し、K1,K2,A1,A2はそれぞれ定数であり、100m以内の音波伝播では、次式(5)および(6)で示された値を用いて初期設定パラメータとする。
【0031】
K = K1 = K2 …式(5)
A = A1 = A2 …式(6)
【0032】
本関係(5)および(6)により、GPSブイ10aまたはGPSブイ10bからの水中位置検出装置20との距離r1, r2は計算できる。
これにより、θ1は式(2)より、次式(7)が成立する。
【0033】
θ1 = arccos((r2/r1) * cosθ2) …式(7)
【0034】
また、式(1)と式(2)より、次式(8)が成立する。
【0035】
0 = r0 - r1 * sin[ arccos ((r2/r1)*cosθ2) ] + r2 * sinθ2 …式(8)
【0036】
式(8)から次の方法でθ2を求める。
arccosθ、cosθ、およびsinθについて、θが0から2πまでの間の計算結果を予め水中位置検出装置20のROM233に記録しておき、r0は予め式(0)の計算結果をRAM234に記録しておく。次に、水中位置検出装置20(X,Y,Z)の測量計算部235で、r1,r2は検出結果を元に式(3)と式(4)により計算し、θ2はROM233に記録してあるθの分解能で0から2πまで式(8)の右辺に代入しながら、値が予め設定した許容値Threshold以下となるθをθ2の候補とする。GPSブイが2つの場合は幾何的に対称となる解があるため、θ2の候補は2つ出るので、前回記録したθ2に近い方の解を新しいθ2として用いる。
また、r1,r2を計算する際に式(3)、式(4)に使用する定数 K * A は、次のように求める。
【0037】
r0 = K * A / b …式(9)
【0038】
ここで、GPSブイ10aから固有の周波数の音波を発生し、GPSブイ10bで受信した際の音波強度の測定値をbとして用いることにする。そして、次式により定数K * Aを求め、式(3)と式(4)に代入して用いる。
【0039】
K * A = r0 * b …式(10)
【0040】
以上によりr1,r22が求まり、次にθ1を式(7)から計算できる。
また、図2により、三角形の辺r0と辺r1とのなす角をα、辺r0と辺r2とのなす角をβとすると、次式(11)および(12)が成り立つ。
【0041】
α=π/2 -θ1 …式(11)
β=π/2 -θ2 …式(12)
【0042】
従って、(x1,y1,z1)102,(x2,y2,z2)112,(θ12),α,βが求まるので、三角測量から水中位置検出装置20の位置(X,Y,Z)を求めることができる。(X,Y,Z)の計算例を次に示す。
【0043】
図2に示した三角形の位置関係から、以下の式(13)〜(15)が成り立つ。
【0044】
【数2】

【0045】
いま、GPSブイ10aとGPSブイ10bは水面付近に存在し、ほぼ高さ位置z1 = z2 = 0 とみなし、水圧測定手段240での気圧値をATM[atm]として、Z = ATM - 1として、Zについては既知とする。そして、式(14)より、次式(16)を得る。
【0046】
【数3】

【0047】
これを式(15)に代入すると、次式(17)となる。
【0048】
【数4】

【0049】
これはXについての2次方程式であり、式(18)〜式(20)を
【0050】
【数5】

とすると、式(17)は、次式(21)となる。
【0051】
【数6】

【0052】
従って、この2次方程式を解いて次式(22)に示す解を得る。
【0053】
【数7】

【0054】
プラスマイナスで2つの解が得られるが、前回計算結果のXの値に近い方を、新しいXとして用いる。
これを式(16)に代入して、水中位置検出装置20の現在地(X,Y,Z)が求まる。
【0055】
次に、図1に戻って、表示手段250の構成について説明する。
[表示手段250の説明]
図1に示すように、表示手段250は、電子コンパス251、表示部252、倍率計算部253、水中地図254、および内部時計255から構成される。
電子コンパス251は、方位を測定するために備えられている。電子コンパス251によって測定された方位は、倍率計算部253に出力される。
水中地図254には、ポイントに特化して予め熟練ダイバーによって作成された、緯度、経度および深度情報を有する電子地図が利用される。また、水中地図254には、場所による海流の流れに関する情報も含めて記述され、緯度、経度、深度、流れの方位、流れの強さおよび時刻などの組合せで電子データ化されており、倍率計算部253に出力される。また、地図の内容としては、地形の深度・スケール・危険箇所および魚などの見ものとダイビングルートの情報なども記載可能である。なお、本データは、ダイビングポイントにより、情報が収集可能である。また、本発明において「海流」とは、海の干満によっておこる海水の流れである「潮流」も含むものとする。
内部時計255は、ダイバーの利用時刻により、海流の方向や大きさなどを表示するためなどに使用される。ここでは、内部時計255は、時刻を倍率計算部253に出力し、倍率計算部253は、受け取った時刻に合った水中地図254を読み込む構成にするのが好ましい。
倍率計算部253は、可変のパラメータLを用いて、任意の位置(x,y)を次式(23)〜(24)により変換して、任意の表示座標点(x’,y’)を算出するものである。
【0056】
x’ = L * x …式(23)
y’ = L * y …式(24)
【0057】
次に、図3を参照(適宜図1参照)して、水中位置検出装置20のインタフェースについて説明する。図3は、本発明の第1実施形態に係る水中位置検出装置の模式図である。
図3の水中位置検出装置20には、ハウジング200、水中地図254、表示部252、表示倍率ボタン303、初期条件入力部231、音波取得手段210、現在地306、流れの方向307、端末装置310、および無線通信インタフェース311が示されている。
表示部252上には、水中位置検出装置20の現在地306が示されている。現在地306を示すことによって、ダイバーは水中における自分の位置を把握することができる。
また、流れの方向307は、季節や時刻によって変化するので、初心者がダイビングなどを行った場合、流れの方向307が分からなくなる状況に陥りやすい。流れの方向307は、内部時計255の利用時刻に合わせて、海流の方向と強さを表示できるので、初心者は、安全なダイビングを行うことが可能となる。
更に、ナビゲートの補助として、画面に電子コンパス251のデータによる方位表示、内部時計255による時刻表示が可能である。
【0058】
表示するコントローラを持った液晶パネルなどの表示部252と倍率計算部253とを一体化して、透明なプラスチックなどのハウジング200により防水性を持たせる。防水性はゴムパッキンなどで実現可能であり、倍率設定ボタン301などの操作ボタンの外部との機械的インタフェースはゴムのシーリングで実現可能である。
【0059】
電子コンパス251を内蔵し、水中地図254の北方向γmを電子コンパス251の北方向γnに合わせるために、描画点を
【0060】
γ = (γn −γm) …式(25)
とおいて、表示倍率ボタン303で設定された表示座標(x’,y’)を回転行列により、現在地306(x”,y”)へ変換して表示する。
【0061】
x” = x’* cosγ− y’* sinγ …式(26)
y” = x’* sinγ + y’* cosγ …式(27)
【0062】
また、水中地図254と現在地306の3次元座標を元に、3次元座標変換行列を用いて、容易に3次元表示方向を変更する機能を拡張することも可能である。
【0063】
次に、図4を参照(適宜図1参照)して、ダイビングルートの記録方法について説明する。図4は、本発明の第1実施形態に係るダイビングルートの記録方法を示す模式図であり、(a)は履歴経路、(b)は現在経路を示す。
【0064】
図4(a)に示すように、ダイビングのインストラクターやダイブマスターなどの上級者である利用者Aが、予め安全な経路を散策する。利用者Aの第1の履歴経路501および第2の履歴経路502などがRAM234などの記憶手段に一連の位置データとして記録される。
図4(b)に示すように、利用者Bは、現在経路511を通って散策を行っている。初期設定により、利用者Aによる第1の履歴経路501または第2の履歴経路502を選択すると、第1の履歴経路501または第2の履歴経路502などから割り出した安全なエリアの中にいる間は、安全とみなされる。
【0065】
次に、図5を参照(適宜図1参照)して、ダイバーが安全とみなされるエリアについて説明する。図5は、本発明の第1実施形態に係るダイバーが安全とみなされるエリアを示す図である。
ここで、第1の履歴経路501または第2の履歴経路502などの記録位置データを(XX,YY,ZZ)とし、予め設定する許容クリアランスをパラメータ(Tx,Ty,Tz)とする。
図5は、第1の履歴経路501の記録位置データを(XX,YY,ZZ)とした場合の利用者Bが安全とみなされるエリアを図示したものである。ここでは、後記する式(28)〜(30)を満たすx,y,zが許容範囲601として示されている。図5において、例えば、利用者Bが許容範囲601で示された範囲外にいる場合は、利用者Bは危険とみなされ、警告時の処理などが行われる。
【0066】
次に、図6を参照(適宜図1参照)して、水中位置検出装置20の利用方法について説明する。図6は、本発明の第1実施形態に係る水中位置検出装置の利用方法を表すフローチャートである。
【0067】
まず、水中位置検出装置20は、電源をONにされる(S101)。続いて、水中位置検出装置20は、水中位置検出処理すなわち、定期的に自己の位置を算出する処理を開始する(S102)。
【0068】
続いてダイバーは、ダイビング経路をRAM234に記録するかどうかを選択する(S103)。記録する場合(S103でYesの場合)、ダイビングルート記録処理を行い、ダイビングルートにS102で算出した自己の位置を記録する(S104)。S104のダイビングルート記録処理は、記録を終了すると選択されるまで、繰り返し行われる(S105)。記録を終了すると選択された場合(S105でYesの場合)、S113の終了判定に進む。
【0069】
S103で、記録しないと選択された場合(S103でNoの場合)、履歴ルートデータ読込み処理を行い、S104で記録した履歴経路を読込む(S107)。続けて、式(28)〜(30)を満たすかどうかを判定する処理を行い、利用者が安全なエリアにいるかどうかを判定する処理を行う(S108)。S108の判定処理に関する詳しい説明は後記する。安全なエリアにいると判定された場合(S109でYesの場合)、S113の終了判定に進む。安全なエリアにいないと判定された場合(S109でNoの場合)、S106で読み込んだ履歴経路を継続して読み込む(S110)。履歴ルートデータが終了した場合(S111でYesの場合)、警告処理を行い(S111)、S112の終了判定に進む。S111の警告処理に関する詳しい説明は後記する。履歴ルートデータの継続読込みが行われた場合(S110でNoの場合)、S107の判定計算処理に戻る。
【0070】
S112の終了判定においては、終了するかどうかの選択を行い、終了する選択がされた場合(S112でYesの場合)は、終了処理を行う。終了しない選択がされた場合(S112でNoの場合)は、S103の記録を開始するかどうかの判定処理に戻る。
【0071】
[S107の判定計算の説明]
S107では、測量計算部235で位置の計算と並行して次の処理を行う。
利用者Bの現在地を(x,y,z)とした場合、利用者Aによる第1の履歴経路501および第2の履歴経路502などについてのデータを読み込み、次式(28)〜(30)に示す判定を行う。
XX - Tx < x < XX + Tx …式(28)
YY - Ty < y < YY + Ty …式(29)
ZZ - Tz < z < ZZ + Tz …式(30)
【0072】
利用者Bの現在地が、全履歴データ(XX,YY,ZZ)において、式(28)〜(30)の全ての判定式を、同時に満たす(x,y,z)が一つも存在しなかったときは警告とする。このとき、式(28)〜(30)の全ての判定式を、同時に満たす(x,y,z)が1つでも存在したときは、利用者は安全なエリアにいるとみなされる。履歴ルートデータの続きを読込み、判定処理を行う処理を繰り返す。こうすることにより、測量計算部235の処理負荷を軽減し、また、利用者が潜水開始ポイントをずらす場合、または逆ルートを辿る場合についても履歴データを有効に利用することが可能となる。
【0073】
[S111の警告処理の説明]
警告処理S111は、水中位置検出装置20内にブザーを持たせ警告音を鳴らすか、または表示部252に文字などで警告表示をすることで実現できる。
【0074】
水中位置検出装置20に、救命の目的で予め定めた特定の周波数Fで、水中位置(x,y,z)の情報を位相変調して発信し、位相復調音波受信機で受信中の他の水中移動体または船で救命位置を検出することも可能である。
【0075】
この第1実施形態によれば、表示倍率ボタン303の操作によって指定された倍率に基づいて、水中地図254を表示部に出力することが可能となる。また、内部時計255と連動させれば、ダイバーの利用時刻に合った海流方向や海流の大きさなどの情報も出力することが可能となるので、ダイバーは安全に水中を散策することができる。
【0076】
(第2実施形態)
次に、図7を参照(適宜図1参照)して、第2実施形態を説明する。この第2実施形態は、水中位置検出装置20のインタフェースに関するものである。したがって、それ以外の第1実施形態と共通する部分については、同じ符号を付し、説明を省略する。図7は、本発明の第2実施形態に係る水中位置検出装置の模式図である。
ハウジング200には水中地図セル401を固定できるようなガイド403をつけ、水中地図セル401を固定する。
ハウジング200に設定する水中地図セル401として透明なプラスチックシートを用意し、マジックで予め簡易地図を描き、確認できる魚などの情報も書き加えたシートを作り、ガイド403に入れて固定する。現在地306の表示倍率パラメータLは、既知のポイント水面下で、表示倍率ボタン303の操作により水中地図セル401と比較しながら手動で調整する。これにより、水中地図セル401が透けて見えるため、表示部252に表示された現在地306の倍率を任意に調整可能とする。
このとき、描く地図の方向は方向マーキング402を明確にして予め定めておき、水中位置確認時にはダイビング機材のゲージの方位磁針と水中地図セル401の方向を一致させて使用する。
【0077】
この第2実施形態によれば、表示倍率ボタン303の操作によって指定された倍率に基づいて、現在地306の倍率を調整し、水中地図セル401の方向を方位磁針の方向と一致させることで、ダイバーは、水中地図254のデータの代わりに簡易地図を利用して、表示部252に出力された自分の位置を把握しながら、散策することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の第1実施形態に係る水中位置検出システムのブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る水中位置検出システムを構成する装置の位置関係を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る水中位置検出装置の模式図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るダイビングルートの記録方法を示す模式図であり、(a)は履歴経路、(b)は現在経路を示す。
【図5】本発明の第1実施形態に係るダイバーが安全とみなされるエリアを示す図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る水中位置検出装置の利用方法を表すフローチャートである。
【図7】本発明の第2実施形態に係る水中位置検出装置の模式図である。
【符号の説明】
【0079】
1 水中位置検出システム
2 GPS衛星
10(10a,10b) GPSブイ
20 水中位置検出装置
101(101a,101b) 測位情報取得手段
102(102a,102b) 自位置算出手段
103(103a,102b) 音源
200 ハウジング
210 音波取得手段
220 位置・距離取得手段
221 周波数判定部
222 音波強度検出部
223 復調部
230 水中位置算出手段
231 初期条件入力部
232 設定部
233 ROM
234 RAM
235 測量計算部
240 水圧測定手段
250 表示手段
251 電子コンパス
252 表示部
253 倍率計算部
254 水中地図
255 内部時計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音源を備え、水中に向けて照射する音波により自己の位置を知らせる複数の音源装置と、水中に位置し、前記複数の音源装置からの音波を取得することで水中での自己の位置を検出する水中位置検出装置とを含んで構成される水中位置検出システムであって、
前記音源装置は、
水面上に設置され、外部の測位手段からの測位情報を取得する測位情報取得手段と、
前記取得した測位情報に基づいて測位処理を行うことで、自己の位置を算出する自位置算出手段と、
前記算出した自己の位置を重畳して所定強度の音波として水中に照射する音源と
を備え、
前記水中位置検出装置は、
前記照射された音波を水中で取得する音波取得手段と、
前記取得した音波からこれに重畳された音源装置の位置を得る処理と、前記音波の強度に基づいて前記音源装置までの距離を得る処理とを行うことで、前記複数の音源装置の位置および前記複数の音源装置までの距離を取得する位置・距離取得手段と、
前記取得した前記複数の音源装置の位置および前記複数の音源装置までの距離に基づいて所定の測位処理を行うことで、水中での自己の位置を算出する水中位置算出手段と
を備えたことを特徴とする水中位置検出システム。
【請求項2】
請求項1において、前記水中位置検出装置は、
水圧を測定する水圧測定手段をさらに備え、
前記水中位置算出手段は、前記複数の音源装置のうちふたつの音源装置の位置、前記ふたつの音源装置までの距離、および前記水圧測定手段によって測定された水圧に基づいて所定の測位処理を行うこと
を特徴とする水中位置検出システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記音源装置のうち、すくなくともひとつをブイとしたことを特徴とする水中位置検出システム。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、前記音源装置のうち、すくなくともひとつをGPS搭載の船としたことを特徴とする水中位置検出システム。
【請求項5】
請求項1または請求項2において、前記水中位置検出装置は、表示手段、水中地図、および電子コンパスを備え、
前記表示手段に水中地図および方位を表示させることを特徴とする水中位置検出システム。
【請求項6】
請求項1または請求項2において、前記水中位置検出装置は、表示手段および電子コンパスを備え、
前記表示手段に手書きの水中地図を取り付け、取り付けた地図上に方位を表示させることを特徴とする水中位置検出システム。
【請求項7】
請求項1または請求項2において、前記水中位置検出装置は、表示手段、水中の海流方向が記された水中地図、および電子コンパスを備え、
前記表示手段に水中地図、水中の海流方向、および方位を表示させることを特徴とする水中位置検出システム。
【請求項8】
請求項1または請求項2において、前記水中位置検出装置は、水中移動体の過去の移動履歴をガイドルートとして、許容移動ルート逸脱を判定し、逸脱時に警告処理を行う水中位置検出システム。
【請求項9】
請求項1または請求項2において、前記水中位置検出装置は、救命の目的で設定された周波数帯の音波によって、当該装置の位置情報を送信可能とした水中位置検出システム。
【請求項10】
音源を備え、水中に向けて照射する音波により自己の位置を知らせる音源装置であって、
水面上に設置され、外部の測位手段からの測位情報を取得する測位情報取得手段と、
前記取得した測位情報に基づいて測位処理を行うことで、自己の位置を算出する自位置算出手段と、
前記算出した自己の位置を重畳して所定強度の音波として水中に照射する音源と
を備えること
を特徴とする音源装置。
【請求項11】
水中に位置し、複数の音源装置からの音波を取得することで水中での自己の位置を検出する水中位置検出装置であって、
前記水中位置検出装置は、
前記照射された音波を水中で取得する音波取得手段と、
前記取得した音波からこれに重畳された音源装置の位置を得る処理と、前記音波の強度に基づいて前記音源装置までの距離を得る処理とを行うことで、前記複数の音源装置の位置および前記複数の音源装置までの距離を取得する位置・距離取得手段と、
前記取得した前記複数の音源装置の位置および前記複数の音源装置までの距離に基づいて所定の測位処理を行うことで、水中での自己の位置を算出する水中位置算出手段と
を備えたことを特徴とする水中位置検出装置。
【請求項12】
水中に位置し、ふたつの音源装置からの音波を取得することで水中での自己の位置を検出する水中位置検出装置であって、
前記水中位置検出装置は、
前記照射された音波を水中で取得する音波取得手段と、
前記取得した音波からこれに重畳された音源装置の位置を得る処理と、前記音波の強度に基づいて前記音源装置までの距離を得る処理とを行うことで、前記ふたつの音源装置の位置および前記ふたつの音源装置までの距離を取得する位置・距離取得手段と、
水圧を測定する水圧測定手段と、
前記取得した前記ふたつの音源装置の位置、前記ふたつの音源装置までの距離、および前記水圧に基づいて所定の測位処理を行うことで、水中での自己の位置を算出する水中位置算出手段と
を備えたことを特徴とする水中位置検出装置。
【請求項13】
複数の音源装置からの音波を取得することで、水中の装置の位置を検出する水中位置検出方法であって、
前記水中位置検出方法は、
音波取得手段が、前記照射された音波を水中で取得する第1ステップと、
位置・距離取得手段が、前記取得した音波からこれに重畳された音源装置の位置を得る処理と、前記音波の強度に基づいて前記音源装置までの距離を得る処理とを行うことで、前記複数の音源装置の位置および前記複数の音源装置までの距離を取得する第2ステップと、
水中位置算出手段が、前記取得した前記複数の音源装置の位置および前記複数の音源装置までの距離に基づいて所定の測位処理を行うことで、水中での装置の位置を算出する第3ステップと
を含むことを特徴とする水中位置検出方法。
【請求項14】
ふたつの音源装置からの音波を取得することで、水中の装置の位置を検出する水中位置検出方法であって、
前記水中位置検出方法は、
音波取得手段が、前記照射された音波を水中で取得する第1ステップと、
位置・距離取得手段が、前記取得した音波からこれに重畳された音源装置の位置を得る処理と、前記音波の強度に基づいて前記音源装置までの距離を得る処理とを行うことで、前記ふたつの音源装置の位置および前記ふたつの音源装置までの距離を取得する第2ステップと、
水圧測定手段が、水圧を測定する第3ステップと、
水中位置算出手段が、前記取得した前記ふたつの音源装置の位置、前記ふたつの音源装置までの距離、および前記水圧に基づいて所定の測位処理を行うことで、水中での装置の位置を算出する第4ステップと
を備えたことを特徴とする水中位置検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−275920(P2006−275920A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98500(P2005−98500)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】