説明

油圧作動装置および油圧センサを備える機械

【課題】低油圧作動装置および高油圧作動装置を備える機械において、油圧センサの配置を工夫することにより、油圧センサの検出精度を向上させて、低油圧作動装置の作動安定化および低油圧側での作動範囲の拡大を図る。
【解決手段】内燃機関Eは、クランク軸6の動力により駆動されるオイルポンプ60により圧送されたオイルが流れる油路70に接続されて該オイルを作動油とする油圧作動装置と、油路70に配置された油圧センサ52とを備える。前記油圧作動装置は、油圧が予め設定された設定圧以上のときに作動する位相可変装置20(高油圧作動装置)と、油圧センサ52が前記設定圧よりも低い所定圧の油圧を検出したときに作動する弁休止装置39(低油圧作動装置)とを含む。油圧センサ52は、オイルポンプ60と弁休止装置39との間であって、位相可変装置20およびオイルポンプ60に対してよりも弁休止装置39に対して近い位置に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルポンプにより圧送されたオイルが流れる油路に接続されて該オイルを作動油とする油圧作動装置と、該油路の油圧を検出する油圧センサとを備える機械に関し、さらに詳細には、油路における油圧センサの配置に関する。そして、前記機械は、例えば内燃機関である。
【背景技術】
【0002】
オイルポンプにより圧送されたオイルが流れる油路が設けられた機械としての内燃機関において、前記油路に接続されて該油路のオイルを作動油とする油圧作動装置と、該油路でのオイルの圧力(すなわち油圧)を検出する油圧センサとを備えるものは知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−106701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オイルポンプにより圧送されたオイルを作動油とする油圧作動装置が、内燃機関の動弁装置において、機関弁(すなわち、吸気弁または排気弁)の開閉時期を変更するために、該機関弁を開閉作動させるカム軸をクランク軸に対して相対回動させて、該クランク軸に対するカム軸の位相を変更可能な位相可変装置である場合、カム軸を回動させるために大きな駆動力を発生させる必要性から、位相可変装置には高圧の作動油が供給される。
また、内燃機関には、前記油圧作動装置として、前述の位相可変装置のほかに、該位相可変装置よりも低圧の作動油で作動する低油圧作動装置、例えば動弁装置において、カム軸により駆動されるカムフォロアを介しての機関弁の開閉作動を停止して、機関弁を休止状態にする弁休止装置が備えられることがある。
一方、油圧センサは、オイルポンプや油圧作動装置の作動状態を監視する目的で使用されることから、該オイルポンプや油圧作動装置よりも下流の油路に配置されることが通常である。しかしながら、高油圧作動装置(例えば、前記位相可変装置)と該高油圧作動装置よりも低圧の作動油により作動する低油圧作動装置(例えば、前記弁休止装置)とを備える機械において、油圧センサにより、オイルポンプで圧送されたオイルが低油圧作動装置を作動させる油圧状態にあることを的確に検出できれば、低油圧作動装置の作動領域を、より低圧の油圧領域まで拡大することができる。例えば、オイルポンプをクランク軸の動力により駆動する内燃機関において、低油圧作動装置が弁休止装置である場合には、弁休止装置により、シリンダを休止状態にして稼働シリンダ数を減少させた減筒運転での運転領域や、シリンダ毎の1対の吸気弁の一方を休止することで燃焼室に旋回流を発生させて燃焼性を向上させる運転領域を、機関低速回転側に拡大することが可能になって、燃費性能を向上させることができる。
しかしながら、オイルポンプ付近の油路では、油圧が比較的高圧であるうえ、オイルポンプの作動に基づくオイル吐出量の周期的変化に起因する油圧の変動量が大きい。また、高圧の作動油を要する高油圧作動装置付近の油路の油圧も比較的高圧になっているうえ、高油圧作動装置により駆動される油圧被動部材が変動する外力を受ける部材、例えば機関弁からの反力が周期的に作用するカム軸である場合には、該外力による油圧被動部材の運動に起因して、高油圧作動装置の油圧制御弁による作動油の供給時に油圧作動装置付近の油路での油圧が高圧側に一時的に変動することがある(以下、前記油圧被動部材の運動により油路に生じる油圧変動を「反動油圧変動」という。)。そして、この反動油圧変動を有するオイルが油路を逆流して、オイルポンプからのオイルとぶつかることにより、高油圧作動装置付近の油路での油圧の高圧側への変動量が大きくなこともある。
このため、油圧センサがオイルポンプ付近や高油圧作動装置付近の油路に配置される場合には、オイルポンプの吐出流量が比較的小さいとき、例えば内燃機関においてオイルポンプからの吐出流量が小さい機関回転速度の低速回転領域において、オイルポンプの作動や高油圧作動装置により駆動される前記油圧被動部材の運動に起因する油圧変動が発生すると、油圧センサでの検出油圧が、低油圧作動装置を作動させるときの油圧である所定圧を一時的に超えたり、一時的に下回ったりすることになって、該所定圧で低油圧作動装置を安定的に作動させることができない。そこで、油圧変動に起因する低油圧作動装置の作動の不安定化を回避するために、油圧センサの検出油圧を前記所定圧よりも高く設定するのでは、低油圧作動装置の作動領域を低油圧側に拡大することは困難である。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、請求項1〜5記載の発明は、低油圧作動装置および高油圧作動装置を備える機械において、油圧センサの配置を工夫することにより、油圧センサの検出精度を向上させて、低油圧作動装置の作動安定化および低油圧側での作動範囲の拡大を図ることを目的とする。そして、請求項4記載の発明は、さらに、機械としての内燃機関において、油圧センサの検出精度を向上させて、低油圧作動装置の作動安定化および低油圧側での作動範囲の拡大を図ることを目的とし、請求項5記載の発明は、さらに、機械としての内燃機関において、低油圧作動装置である弁休止装置の作動安定化および機関低速回転側での作動範囲の拡大による燃費性能の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、オイルポンプ(60)により圧送されたオイルが流れる油路(70)に接続されて前記オイルを作動油とする油圧作動装置と、前記油路(70)に配置されて前記油路(70)の油圧を検出する油圧センサ(52)とを備える機械において、前記油圧作動装置は、油圧が予め設定された設定圧以上のときに作動する高油圧作動装置(20)と、前記油圧センサ(52)が前記設定圧よりも低い所定圧の油圧を検出したときに作動する低油圧作動装置(39)とを含み、前記油圧センサ(52)は、前記オイルポンプ(60)と前記低油圧作動装置(39)との間であって、前記オイルポンプ(60)および前記高油圧作動装置(20)に対してよりも前記低油圧作動装置(39)に対して近い位置に配置される機械である。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の機械において、前記油路(70)は、前記オイルポンプ(60)から吐出されたオイルが流入する主油路(70a)と、前記主油路(70a)と前記高油圧作動装置(20)とを接続する第1油路(73a,73b)と、前記主油路(70a)と前記低油圧作動装置(39)とを接続する第2油路(74b)とを有し、前記主油路(70a)は、前記第2油路(74b)が接続されるベース油路(72)と、前記オイルポンプ(60)と前記ベース油路(72)とを接続して前記オイルポンプ(60)から吐出されたオイルを前記ベース油路(72)に導く吐出油路(71)とから構成され、前記吐出油路(71)と前記ベース油路(72)とが接続されるベース接続部(81)は、前記主油路(70a)と前記第1油路(73a,73b)とが接続される第1接続部(83a,83b)との距離よりも、前記油圧センサ(52)との距離が大きくなる位置にあり、前記ベース油路(72)の通路面積は、前記第1油路(73a,73b)の通路面積よりも大きいものである。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の機械において、前記ベース油路(72)の通路面積は、前記第2油路(74b)の通路面積よりも大きく、前記油圧センサ(52)は、前記第2油路(74b)に配置されるものである。
請求項4記載の発明は、クランク軸(6)を回転可能に支持する全てである所定数の主軸受(18)を備える内燃機関である請求項3記載の機械において、前記油路(70)は、前記ベース油路(72)と前記所定数の主軸受(18)とをそれぞれ接続する前記所定数の軸受用油路(75)を有し、前記ベース接続部(81)と、前記ベース油路(72)と前記第2油路(74b)とが接続される第2接続部(84b)との間に、前記ベース油路(72)と前記所定数の軸受用油路(75)とがそれぞれ接続される前記所定数の軸受用接続部(85)が配置され、前記第1接続部(83a,83b)は、前記主油路(70a)において、前記所定数の軸受用接続部(85)のうちで前記ベース油路(72)において最も上流に位置する最上流軸受用接続部(85c)と同じ位置または前記最上流軸受用接続部(85c)よりも上流に位置し、前記第2接続部(84b)は、前記ベース油路(72)において、前記所定数の軸受用接続部(85)のうちで前記ベース油路(72)において最も下流に位置する前記最下流軸受用接続部(85d)と同じ位置または前記最下流軸受用接続部(85d)よりも下流に位置するものである。
請求項5記載の発明は、クランク軸(6)と、機関弁(7,8)を開閉作動させる動弁装置(A1,A2)とを備える内燃機関である請求項1から3のいずれか1項記載の機械において、前記オイルポンプ(60)は、前記クランク軸(6)の動力により駆動され、前記動弁装置(A2)は、前記クランク軸(6)の動力により回転駆動されて前記機関弁(7,8)を開閉作動させるカム軸(10,11)と、前記クランク軸(6)に対する前記カム軸(10)の位相を変更する位相可変装置(20)と、前記機関弁(7,8)を休弁状態にする弁休止装置(39)とを備え、前記高油圧作動装置(20)は前記位相可変装置(20)であり、前記低油圧作動装置(39)は前記弁休止装置(39)であるものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、オイルポンプにより圧送されたオイルが流れる油路に配置された油圧センサは、オイルポンプ、および、低油圧作動装置が作動する油圧である所定圧よりも高圧の設定圧以上で作動する高油圧作動装置よりも、低油圧作動装置に近い位置に配置されるので、油圧センサが検出する油圧は、オイルポンプおよび高油圧作動装置付近の高圧側での油圧変動の影響を受けにくくなって、油圧センサは設定圧よりも低い所定圧を精度よく検出することができる。この結果、油路の油圧の低圧時にも、油圧センサにより検出される油圧に基づいて、低油圧作動装置を安定して作動させることができ、ひいてはその作動範囲を低油圧側で拡大することができる。
請求項2記載の事項によれば、オイルポンプおよび高油圧作動装置と、油圧センサとの間には、第1油路の通路面積よりも大きな通路面積を有するベース油路が介在するので、オイルポンプおよび高油圧作動装置の作動に起因する油圧変動をベース油路において効果的に低減することができる。この結果、油圧センサが検出する油圧は、ベース油路により油圧変動が低減しているため、オイルポンプおよび高油圧作動装置付近の高圧側での油圧変動の影響を受けにくくなるので、油圧センサの油圧検出精度を高めることができて、油圧センサにより第1所定圧を精度よく検出することができる。
請求項3記載の事項によれば、オイルポンプおよび高油圧作動装置と、油圧センサが配置される第2油路との間には、第2油路の通路面積よりも大きな通路面積を有するベース油路が介在するので、オイルポンプおよび高油圧作動装置の作動に起因する油圧変動をベース油路において効果的に低減することができる。この結果、第2油路ではベース油路により油圧変動が低減しているため、油圧センサが検出する油圧は、オイルポンプおよび高油圧作動装置付近の高圧側での油圧変動の影響を一層受けにくくなるので、油圧センサの油圧検出精度を一層高めることができて、油圧センサにより第1所定圧を一層精度よく検出することができる。
請求項4記載の事項によれば、ベース油路において、油圧センサが配置される第2油路とベース油路との第2接続部と、ベース接続部および第1接続部との間には、クランク軸を支持する全ての主軸受に接続される所定数の軸受用油路が配置されるので、ベース油路の通路長をほぼ最大限に利用して該ベース油路での通路抵抗により、オイルポンプおよび高油圧作動装置の作動に起因する油圧変動をベース油路において低減することができる。この結果、油圧センサが検出する油圧は、オイルポンプおよび高油圧作動装置付近の高圧側での油圧変動の影響を一層受けにくくなるので、油圧センサにより所定圧を一層精度よく検出することができる。
請求項5記載の事項によれば、高油圧作動装置としての位相可変装置と、該位相可変装置を作動させる油圧である設定圧よりも低い所定圧以上で作動する低油圧作動装置としての弁休止装置とを備える動弁装置を備える内燃機関において、弁休止装置により、シリンダを休止状態にして稼働シリンダ数を減少させた減筒運転での運転領域や、機関弁の一部を休止することで燃焼室に旋回流を発生させて燃焼性を向上させる運転領域を、機関低速回転側に拡大することが可能になって、燃費性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明が適用された内燃機関の要部の斜視図であり、油路の一部を可視化した概略図である。
【図2】図1の内燃機関の油路、位相可変装置およびリフト量可変装置の各要部の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図1,図2を参照して説明する。
図1を参照すると、本発明が適用された機械である内燃機関Eは、車両に搭載される多気筒内燃機関としてのV型内燃機関であり、V字形の1対のシリンダ部1a,1bを形成するように配列された複数のシリンダ(以下、「シリンダ」という。)を有するシリンダブロック1と、該シリンダブロック1において第1,第2シリンダ部1a,1bの上端部にそれぞれ結合される1対のシリンダヘッド2と、1対のシリンダヘッド2の上端部にそれぞれ結合される1対のヘッドカバー3と、シリンダブロック1の下端部に結合されるロアブロック4と、ロアブロック4の下端部に結合されるオイルパン5とから構成される機械本体としての機関本体を備える。
【0010】
ここで、前記各シリンダ部1a,1bは、1つのシリンダにより、または、複数のシリンダからなるシリンダ列により構成され、この実施形態では、両バンクB1,B2は同一数の複数のシリンダを有する。そして、内燃機関EにおいてV字形の1対のバンクB1,B2は、シリンダ部1a、シリンダヘッド2およびヘッドカバー3およびシリンダ部1b、シリンダヘッド2およびヘッドカバー3によりそれぞれ構成される。
【0011】
シリンダブロック1の下部1c、ロアブロック4およびオイルパン5は、内燃機関Eが備える出力軸としてのクランク軸6が配置されるクランク室を形成するクランクケースを構成し、クランク軸6は前記下部1cおよびロアブロック4に主軸受18(図2参照)を介して回転可能に支持される。
【0012】
なお、実施形態において、上下方向は、クランク軸6の回転中心線Lが水平面に含まれるとしたときの鉛直方向であるとする。そして、回転中心線Lに平行な方向を軸方向とする。
また、車両に搭載された状態で、回転中心線Lは、車両の前後方向に平行であり、軸方向から見て、V字形を形成する1対のバンクB1,B2において、第1バンクB1は右バンクであり、第2バンクB2は左バンクである。
【0013】
図2を併せて参照すると、内燃機関Eは、各シリンダに往復運動可能に嵌合するピストンと、各バンクB1,B2のシリンダヘッド2に設けられる機関弁としての吸気弁7および排気弁8と、シリンダのシリンダ軸線に平行なシリンダ軸線方向でシリンダヘッド2と前記ピストンとの間に形成される燃焼室に開口してシリンダヘッド2に設けられる吸気ポートおよび排気ポートをそれぞれ開閉する吸気弁7および排気弁8をクランク軸6の回転位置(すなわちクランク角)に応じて開閉作動させる第1,第2動弁装置A1,A2とを備える。吸気弁7および排気弁8は、シリンダ毎に1対ずつ設けられる。
前記ピストンは、前記各燃焼室内での燃料の燃焼により発生する燃焼ガスの圧力により駆動されて往復運動し、コンロッドを介してクランク軸6を回転方向Rに回転駆動する。各バンクB1,B2において、動弁装置A1,A2は、シリンダヘッド2とヘッドカバー3とにより形成される動弁室内に配置される。
【0014】
各動弁装置A1,A2は、各シリンダヘッド2に回転可能に支持されて吸気弁7および排気弁8を開閉作動させるカム軸としての吸気カム軸10および排気カム軸11と、両カム軸10,11にそれぞれ設けられた動弁カムとしての吸気カムおよび排気カムによりそれぞれ駆動されるカムフォロアとしての吸気ロッカアーム12,14および排気ロッカアーム13,15と、吸気弁7および排気弁8を閉弁方向に常時付勢する付勢部材としての弁バネ(図示されず)と、シリンダヘッド2に設けられて吸気ロッカアーム12,14および排気ロッカアーム13,15を揺動可能に支持する支持部である1対のロッカ軸16,17と、吸気弁7および排気弁8のリフト量と開閉時期とを含む弁作動特性を変更可能な弁作動特性可変装置とを備える。
【0015】
回転中心線Lと平行な回転中心線を有する各カム軸10,11は、内燃機関Eが備える動弁用伝動機構Tを介して伝達されるクランク軸6の動力により駆動されて回転する。軸方向での機関本体の端部と該端部に結合される伝動カバー9とにより形成される伝動室内に配置される伝動機構Tは、クランク軸6の駆動回転体Taおよび両吸気カム軸10,11の被動回転体Tbに巻き掛けられた無端伝動帯としてのチェーンTcを備える巻掛け伝動機構からなる第1伝動機構T1と、各バンクB1,B2において被動回転体Tbを介してクランク軸6の動力を排気カム軸11に伝達して両カム軸10,11を等速で回転させる1対のギヤからなる第2伝動機構(図示されず)とから構成される。
【0016】
前記弁作動特性可変装置は、第1弁作動特性可変装置としての、クランク軸6に対する吸気カム軸10の位相を変更して吸気弁7の開閉時期を変更可能な位相可変装置20と、第2弁作動特性可変装置としての、吸気弁7および排気弁8のリフト量を変更可能なリフト量可変装置30a,30bとから構成される。
そして、位相可変装置20およびリフト量可変装置30a,30bは、後述する弁休止装置39を含めて、オイルポンプ60により圧送されて後述する油路70を流れるオイルを作動油とする油圧作動装置である。
【0017】
各バンクB1,B2に配置される位相可変装置20は、吸気カム軸10と被動回転体Tbとを相対的に回転させる油圧式の駆動機構21と、駆動機構21の作動を制御するための作動油の給排を制御する電磁弁である油圧制御弁22とを有する。駆動機構21は、被動回転体Tbと一体に回転する第1回転体21aと、吸気カム軸10と一体に回転する第2回転体21bと、進角室23および遅角室24とから構成される。進角室23および遅角室24は、吸気カム軸10の回転中心線を中心とする周方向で第1、第2回転体21a,21bの間に形成され、油圧制御弁22により作動油が給排されて室内の油圧が制御される油圧室である。このため、吸気カム軸10は、第1伝動機構T1と位相可変装置20の駆動機構21とを介して、駆動軸としてのクランク軸6の動力により回転駆動される。
また、油圧で駆動される駆動機構21により駆動されて被動回転体Tbに対して相対的に回転する油圧被動部材としての吸気カム軸10は、該吸気カム軸10の運動である回転に起因して、前記弁バネの付勢力に基づく吸気弁7からの反力が、変動する外力として、クランク軸6の回転位置または吸気弁7の開閉時期に対応して周期的に作用する部材である。
【0018】
スプール弁からなる油圧制御弁22により、後述する第1油路73a,73bのオイルを作動油として、進角用制御油路25を通じて進角室23に作動油が供給されると共に遅角室24の作動油が遅角用制御油路26を通じて前記動弁室であるドレン空間に排出されるときには吸気カム軸10が進角して、吸気弁7の開閉時期が早められ、遅角室24に作動油が供給されると共に進角室23の作動油が前記ドレン空間に排出されるときには吸気カム軸10が遅角して、吸気弁7の開閉時期が遅くされ、進角室23および遅角室24に対して作動油が給排されないとき、クランク軸6に対する吸気カム軸10の位相が保持されて、吸気弁7の開閉時期が保持される。
【0019】
第1動弁装置A1のリフト量可変装置30aは、吸気弁7および排気弁8の開弁時のリフト量を変更可能であり、第2動弁装置A2のリフト量可変装置30bは、リフト量可変装置30aと同様に吸気弁7および排気弁8の開弁時のリフト量を変更可能であると共に、吸気弁7および排気弁8を実質的に閉弁状態に保持する弁休止装置39を有する。各リフト量可変装置30a,30bは、この実施形態では、吸気弁7および排気弁8の開弁時のリフト量を、低リフト量と該低リフト量よりも大きい高リフト量とに切換える。
なお、吸気弁7および排気弁8のそれぞれの開弁時のリフト量を変更する機構は基本的に同じ構造であるので、以下の説明では、簡単化のために、排気弁8に関する構造についての用語または符号が異なる場合に、必要に応じて、それらを括弧内に記載する。
【0020】
第1バンクB1のリフト量可変装置30aは、吸気弁7(排気弁8)にそれぞれ当接する1対の駆動ロッカアーム12a(13a)と自由ロッカアーム12b(13b)とから構成される吸気ロッカアーム12(排気ロッカアーム13)と、駆動ロッカアーム12a(13a)と自由ロッカアーム12b(13b)との連結状態を切り換える連結切換機構31と、連結切換機構31に対して作動油を給排する電磁弁である第1油圧制御弁33と、1対の第1カムとしての低リフトカム10a(11a)と第2カムとしての高リフトカム10b(11b)とから構成される吸気カム(排気カム)とを有する。
【0021】
連結切換機構31は、駆動ロッカアーム12a(13a)と自由ロッカアーム12b(13b)との連結および連結解除を行う連結制御部材31aと、吸気ロッカアーム12(排気ロッカアーム13)に形成される各油圧室35とから構成される。連結制御部材31aは、駆動ロッカアーム12a(13a)と自由ロッカアーム12b(13b)とに摺動可能に嵌合する第1,第2連結ピン31b,31cおよび連結解除ピン31dと、該連結解除ピン31dを連結ピン31cに押し付けるバネ31eとから構成される。
軸方向で隣接する駆動ロッカアーム12a(13a)および自由ロッカアーム12b(13b)のうちで、一方のロッカアームとしての駆動ロッカアーム12a(13a)には連結用油圧室35が形成される。
【0022】
また、第2バンクB2のリフト量可変装置30bは、吸気弁7(排気弁8)にそれぞれ当接する1対の駆動ロッカアーム14c(15c)と、1対の第1自由ロッカアーム14a(15a)と、1つの第2自由ロッカアーム14b(15b)とから構成される吸気ロッカアーム14(排気ロッカアーム15)と、駆動ロッカアーム14c(15c)と自由ロッカアーム14b(15b)との連結状態を切り換える第1連結切換機構31と、駆動ロッカアーム14c(15c)と自由ロッカアーム14a(15a)との連結状態を切り換える第2連結切換機構32と、両連結切換機構31,32に対してそれぞれ作動油を給排する電磁弁である第1,第2油圧制御弁33,34と、1対の休止カム10c(11c)と1対の低リフトカム10a(11a)と1つの高リフトカム10b(11b)から構成される吸気カム(排気カム)とを有する。
【0023】
第1連結切換機構31は、駆動ロッカアーム14c(15c)と自由ロッカアーム14b(15b)との連結および連結解除を行う連結制御部材31aと、吸気ロッカアーム14(排気ロッカアーム15)に形成される各油圧室35とから構成される。連結制御部材31aは、駆動ロッカアーム14c(15c)と自由ロッカアーム14a(15a)とに摺動可能に嵌合する第1,第2連結ピン31b,31cおよび連結解除ピン31dと、該連結解除ピン31dを連結ピン31cに押し付けるバネ31eとから構成される。
軸方向で隣接する駆動ロッカアーム14c(15c)および自由ロッカアーム14b(15b)のうちで、一方のロッカアームとしての駆動ロッカアーム14c(15c)には連結用油圧室35が形成される。
【0024】
第2連結切換機構32は、駆動ロッカアーム14c(15c)と自由ロッカアーム14a(15a)との連結および連結解除を行う1対の第2連結制御部材32aと、吸気ロッカアーム14(排気ロッカアーム15)に形成される各油圧室36,37とから構成される。第2連結制御部材32aは、駆動ロッカアーム14c(15c)と自由ロッカアーム14a(15a)とに摺動可能に嵌合する連結ピン32bおよび連結解除ピン32dと、該連結解除ピン32dを連結ピン32bに押し付けるバネ32eとから構成される。
軸方向で隣接する駆動ロッカアーム14c(15c)および自由ロッカアーム14a(15a)のうちで、一方のロッカアームとしての駆動ロッカアーム14c(15c)には連結解除用油圧室36が形成され、他方のロッカアームとしての自由ロッカアーム14a(15a)には連結用油圧室37が設けられる。
【0025】
そして、ロッカ軸16(17)および駆動ロッカアーム12a,14c(13a,15c)には、第1油圧制御弁33と各油圧室35とを接続する制御油路41が形成され、ロッカ軸16(17)、駆動ロッカアーム12a,14c(13a,15c)および自由ロッカアーム14a(15a)には、第2油圧制御弁34と各油圧室36,37とをそれぞれ接続する制御油路42,43が形成される。
また、スプール弁からなる第1,第2油圧制御弁33,34により、後述する第2油路74a,74bのオイルを作動油として、制御油路41,42,43を通じて各油圧室35,36,37に作動油が供給され、各油圧室35,36,37の作動油が制御油路41,42,43を通じて前記ドレン空間に排出される。
【0026】
ここで、低リフトカム10a(11a)および高リフトカム10b(11b)は、吸気弁7(排気弁8)を開閉する開閉用カムである。また、変形により弾発力を発生する弾発部材である各バネ31e,32eは、連結を解除するために連結解除ピン31d,32dを連結解除位置に移動させる連結解除用の付勢部材である。
【0027】
リフト量可変装置30bにおいて、弁休止装置39は、駆動ロッカアーム14c(15c)と、第2連結切換機構32と、第2油圧制御弁34と、休止カム10c(11c)とから構成される。ここで、自由ロッカアーム14a,14b(15a,15b)は、低リフトカム10a(11a)および高リフトカム10b(11b)により駆動されるカムフォロアを構成する。それゆえ、弁休止装置39は、第2連結切換機構32の連結および連結解除に応じて、該カムフォロアを介しての吸気弁7(排気弁8)の開弁を停止して、吸気弁7(排気弁8)を休止状態にする。
【0028】
位相制御用の油圧制御弁22およびリフト量制御用の第1,第2油圧制御弁33,34は、制御装置50により制御されて、内燃機関Eの作動状態である機関運転状態に応じて作動して、進角室23、遅角室24および各油圧室35,36,37の油圧を制御する。
具体的には、制御装置50は、電子制御ユニット51と、前記機関運転状態を検出する検出手段とを備える。該検出手段は、後述する油路70を流れるオイルの油圧を検出する油圧センサ52と、油圧センサ52以外の前記機関運転状態を検出する他の検出手段としての機関負荷検出手段53および機関回転速度検出手段34とを含む。
【0029】
油路70の第2油路74a,74bに配置された検知部を有する油圧センサ52は、弁休止装置39を作動させるときの油圧である所定圧としての第1所定圧を検出する。該第1所定圧は、位相可変装置20を作動させる最低油圧として予め設定された設定圧よりも低い油圧である。それゆえ、後述する第1油路73a,73bの油圧が前記設定圧以上のときに作動する位相可変装置20を高油圧作動装置とするとき、第2油路74a,74bでの油圧が前記設定圧よりも低い前記第1所定圧のときに作動する弁休止装置39は、低油圧作動装置である。
そして、この実施形態では、油圧センサ52は、前記第1所定圧のほかに、前記第1所定圧よりも高い油圧であって弁休止装置39の作動を解除する第2所定圧を含む複数の油圧を検出し、ここでは、第2油路74a,74bの油圧を無段階に検出する。
内燃機関Eの運転領域を低速回転領域と高速回転領域とにほぼ二等分したとき、前記第1所定圧は、前記低速回転領域において低速側の回転速度、例えばアイドル回転速度での油圧に相当し、前記第2所定圧は、前記低速回転領域において高速側の回転速度または前記高速回転領域における低速側の油圧に相当する。
【0030】
油圧センサ52は、後述するオイル供給系統の油圧の異常、例えば異常を示す低油圧を検出する油圧異常検出手段を兼ねる。そして、油圧センサ52により、油圧の異常が検出されたとき、電子制御ユニット51は、警報装置、例えば警告灯等の表示装置を作動させて、異常状態を報知する。
【0031】
内燃機関Eは、その軸受部や摺動部等の潤滑箇所にその潤滑油として、冷却箇所にその冷却油として、および内燃機関Eが備える油圧作動装置にその作動油として、オイルを供給するオイル供給系統を備える。オイル供給系統は、オイルを溜める油溜であるオイルパン5と、オイルパン5内で吸入したオイルを吐出するオイルポンプ60と、オイルパン5内のオイルをオイルポンプ60に導く吸入油路61と、オイルポンプ60により圧送されたオイルを前記潤滑箇所および油圧作動装置に導く導出用の油路70とから構成される。油路70は、内燃機関Eの構成部材、例えば機関本体であるシリンダブロック1やシリンダヘッド2などや動弁装置A1,A2を構成するカム軸10,11などに設けられた孔や溝から構成され、また、前記構成部材としての導管等により形成される。
吸入油路61には、オイルストレーナ62が設けられる。オイルポンプ60は、回転型ポンプとしてのトロコイドポンプであり、クランク軸6とオイルポンプ60の回転軸との間に設けられたポンプ駆動用伝動機構を介して伝達されるクランク軸6の動力により駆動される。
【0032】
油路70は、シリンダブロック1に設けられて軸方向に一直線状に延びているベース油路としてのメインギャラリ72と、オイルポンプ60から吐出されたオイルをメインギャラリ72に導く吐出油路71と、吐出油路71またはメインギャラリ72から分岐する複数の分岐油路から構成される分岐油路群とを有する。吐出油路71とメインギャラリ72は、前記分岐通路群にオイルを導く主油路70aを構成する。また、オイルポンプ60とメインギャラリ72とを接続する吐出油路71には、オイルフィルタ63が配置される。
【0033】
分岐油路群は、メインギャラリ72の一方の端部72c側の部分である第1ベース油路部分または吐出油路71と位相可変装置20とを接続する第1油路73a,73bと、メインギャラリ72の他方の端部72d側の部分である第2ベース油路部分とリフト量可変装置30a,30bとを接続する第2油路74a,74bと、クランク軸6を回転可能に支持する複数である所定数の主軸受18にそれぞれオイルを導く前記所定数の軸受用油路75と、前記ピストンを冷却するためのオイルを噴射するオイル噴射用油路とを含む。
ここで、前記第1,第2ベース油路部分は、メインギャラリ72を、その通路長がほぼ二等分されるように二分したときに、端部72cが含まれる部分および端部72dがそれぞれ含まれる部分である。そして、この実施形態では、端部72cおよび端部72dは、それぞれメインギャラリ72の上流端部および下流端部である。
【0034】
そして、位相可変装置20では進角室23および遅角室24が油密状態になるように形成されていることから、進角室23および遅角室24内の油圧で駆動される吸気カム軸10に吸気弁7からの反力が周期的に作用することに起因して、位相可変装置20の油圧制御弁22による作動油の供給時に進角室23または遅角室24に作動油を導く第1油路73a,73bに前述の反動油圧変動が生じて、第1油路73a,73bでの油圧が高圧側に一時的に変動することがあり、さらに、この反動油圧変動を有するオイルが第1油路73a,73bを逆流して、オイルポンプ60からのオイルとぶつかることにより、第1油路73a,73bでの油圧の高圧側への変動量が大きくなることもある。
一方、リフト量可変装置30a,30bでは、ピン31b,31c,31d,32b,32dとロッカアーム12,14(排気ロッカアーム13,15)との間に形成される微小な隙間、換言すればリフト量可変装置30a,30bの構成部材により形成される微小な隙間を通じて油圧室35〜37内の作動油が漏れるため、油圧制御弁33,34によるリフト量可変装置30a,30bへの作動油の供給時に、油圧室35〜37に作動油を導く第2油路74a,74bでの油圧が高圧側に変動することは殆どない。
【0035】
吐出油路71とメインギャラリ72とは、ベース接続部81で接続され、メインギャラリ72または吐出油路71と第1油路73a,73bとは、第1接続部83a,83bで接続され、メインギャラリ72と第2油路74a,74bとは、第2接続部84a,84bで接続される。この実施形態では、第1油路73aは、第1接続部83aでメインギャラリ72の前記第1ベース油路部分と接続され、第1油路73bは、第1接続部83bで吐出油路71と接続される。
さらに、メインギャラリ72と、内燃機関Eが備える全ての主軸受18である前記所定数の主軸受18にオイルを導く前記所定数の軸受用油路75とは、メインギャラリ72において両端部72c,72dの間に軸方向での間隔をおいて位置する前記所定数の軸受用接続部85でそれぞれ接続される。なお、図2には、前記所定数の軸受用接続部85のうちで、メインギャラリ72において最も上流に位置する最上流軸受用接続部85cと、メインギャラリ72において最も下流に位置する最下流軸受用接続部85dとが模式的に示されている。それゆえ、両軸受用接続部85c,85dは、前記所定数の軸受用接続部85において、軸方向での両端部にそれぞれ位置する端部軸受用接続部である。
【0036】
そして、ベース接続部81は、メインギャラリ72において、最上流軸受用接続部85cよりも上流に位置し、第1接続部81は、主油路70aにおいて、最上流軸受用接続部85cと同じ位置または最上流軸受用接続部85cよりも上流に位置し、第2接続部84a,84bは、メインギャラリ72において、最下流軸受用接続部85dと同じ位置または最下流軸受用接続部85dよりも下流に位置する。この実施形態において、端部72cには、ベース接続部81および第1接続部83aが位置し、端部72dには、第2接続部84a,84bが位置する。
【0037】
油圧センサ52は、オイルポンプ60と弁休止装置39の第1,第2油圧制御弁33,34との間であって、第2油路74bに配置され、かつ、位相可変装置20の油圧制御弁22およびオイルポンプ60に対してよりも第1,第2油圧制御弁33,34に対して近い位置に配置される。そして、油圧センサ52は、第2油路74bにおいて、第1,第2油圧制御弁33,34付近に、すなわち第2油路74bにおいて、第2接続部84bと第2油圧制御弁34との間の油路部分を、その通路長がほぼ二等分されるように二分したときに、第2油圧制御弁34寄りの部分に配置される。
また、ベース接続部81は、第1接続部83a,83bとの距離よりも、第2接続部84bとの距離および油圧センサ52との距離が大きくなる位置にある。
なお、油路70に位置する部分または部材に関しての遠近および距離は、油路70を通じての遠近および距離である。
【0038】
吐出油路71およびメインギャラリ72のそれぞれの少なくとも一部における、この実施形態ではそれぞれの全体における通路面積は、第1,第2油路73a,73b,74a,74bのそれぞれの少なくとも一部(なお、この一部は、第2油路74bについては、油圧センサ52よりも上流に位置する。)における、この実施形態ではそれぞれの全体における通路面積よりも大きい。吐出油路71およびメインギャラリ72は、油路70において、オイルポンプ60の作動に起因して吐出油路71に生じる油圧変動を低減し、さらに、位相可変装置20の油圧制御弁22の作動の際に前記弁バネに基づく吸気弁7からの反力により吸気カム軸10が回転することに起因して第1油路73a,73bに生じる反動油圧変動を低減する油圧変動低減部を構成する。このため、第2油路74a,74bには、メインギャラリ72で油圧変動が低減されたオイルが流れる。
【0039】
主に図2を参照して、位相可変装置20およびリフト量可変装置30a,30bの動作について説明する。
内燃機関Eの始動時およびアイドル運転時には、位相可変装置20においては、電子制御ユニット51により制御された油圧制御弁22により、第1油路73a,73bのオイルが作動油が遅角用制御油路26を通じて遅角室24に供給され、進角室23の作動油が進角用制御油路25を通じて排出される状態にあり、図示されるように、吸気カム軸10は最も遅角した状態にある。
また、リフト量可変装置30a,30bにおいては、油圧センサ52により検出される油圧が前記第1所定圧に達したとき、電子制御ユニット51により制御された第1油圧制御弁33により、油圧室35の作動油が制御油路41を通じて排出される状態にあり、第2油圧制御弁34により、第2油路74bのオイルが作動油として制御油路42を通じて油圧室36に供給され、かつ油圧室37の作動油が制御油路43を通じて排出される状態にある。このため、図示されるように、第1バンクB1では、第1連結制御部材31aが連結解除状態になって、吸気弁7(排気弁8)がロッカアーム12a(13a)を介して低リフトカム10a(11a)により開閉作動される。一方、第2バンクB2では、第1バンクB1では、第1,第2連結制御部材31a,32aが連結解除状態になって、全て吸気弁7(排気弁8)が休止状態になって、第2バンクB2の全てのシリンダが休止状態になる。それゆえ、第2バンクB2の各シリンダは、弁休止装置39により稼働状態と休止状態とに切り換えられる休止可能シリンダであり、弁休止装置39は該休止可能シリンダを休止状態にする気筒休止装置でもある。
【0040】
内燃機関Eの負荷運転時および第1油路73a,73bでの油圧が前記設定圧以上となる運転時には、位相可変装置20においては、制御ユニット51により制御された油圧制御弁22により、検出手段53,54により検出される機関負荷および機関回転速度に応じて予め設定された位相に吸気カム軸10が位置するように、第1油路73a,73bの作動油が遅角室24または進角室23に供給され、進角室23または遅角室24の作動油が排出されて、吸気弁7の開閉時期が制御される。
また、リフト量可変装置30a,30bにおいては、油圧センサ52により検出される油圧が前記第2所定圧に達したとき、電子制御ユニット51により制御された第2油圧制御弁34により、第2油路74bの作動油が制御油路43を通じて油圧室37に供給され、かつ油圧室36の作動油が制御油路42を通じて排出される状態にある。このため、第2バンクB2では、第2連結制御部材32aが連結状態になって、駆動ロッカアーム14c(15c)と自由ロッカアーム14a(15a)が連結ピン32bにより連結されて一体に揺動可能となる。このため、第1バンクB1での吸気弁7(排気弁8)と同様に、第2バンクB2でも、吸気弁7(排気弁8)がロッカアーム14a,14c(15a,15c)を介して低リフトカム10a(11a)により開閉作動される。
【0041】
内燃機関Eの負荷運転時および第1油路73a,73bでの油圧が前記設定圧以上となる運転時に、油圧センサ52で検出された前記第2所定圧に相当する所定高速回転速度よりも高い機関回転速度が機関回転速度検出手段54により検出されたとき、位相可変装置20においては、制御ユニット51により制御された油圧制御弁22により、機関負荷および機関回転速度に応じて予め設定された位相に吸気カム軸10が位置するように、第1油路73a,73bの作動油が遅角室24または進角室23に供給され、進角室23または遅角室24の作動油が排出されて、吸気弁7の開閉時期が制御される。
また、リフト量可変装置30a,30bにおいては、第1油圧制御弁33により、第2油路74a,74bの作動油が制御油路41を通じて油圧室35に供給されて、第1連結制御部材31aが連結状態になり、第2油圧制御弁34により、第2油路74a,74bの作動油が制御油路43を通じて油圧室37に供給され、かつ油圧室36の作動油が制御油路42を通じて排出される状態にあって、第2連結制御部材32aが連結解除状態になる。このため、第1バンクB1では、駆動ロッカアーム12a(13a)と、自由ロッカアーム12b(13b)とが連結ピン31b,31cにより連結されて一体に揺動可能となり、吸気弁7(排気弁8)がロッカアーム12b,12a(13b,13a)を介して高リフトカム10b(11b)により開閉作動される。また、第2バンクB2では、第2連結制御部材32aが連結解除状態になると共に、第1連結制御部材31aが連結状態になって、自由ロッカアーム14a(15a)との連結が解除された駆動ロッカアーム14c(15c)と、自由ロッカアーム14b(15b)とが、連結ピン31b,31cにより連結されて一体に揺動可能となり、吸気弁7(排気弁8)がロッカアーム14b,14c(15b,15c)を介して高リフトカム10b(11b)により開閉作動される。
【0042】
次に、前述のように構成された実施形態の作用および効果について説明する。
クランク軸6の動力により駆動されるオイルポンプ60により圧送されたオイルが流れる油路70に接続されて該オイルを作動油とする油圧作動装置と、油路70に配置された油圧センサ52とを備える内燃機関Eにおいて、前記油圧作動装置は、油圧が前記設定圧以上のときに作動する位相可変装置20と、油圧センサ52が前記設定圧よりも低い前記第1所定圧の油圧を検出したときに作動する弁休止装置39とを含み、油圧センサ52は、オイルポンプ60と弁休止装置39との間であって、位相可変装置20およびオイルポンプ60に対してよりも弁休止装置39に対して近い位置に配置される。
この構造により、油路70に配置された油圧センサ52は、オイルポンプ60よりも、および、弁休止装置39が作動する油圧である前記第1所定圧よりも高圧の前記設定圧以上で作動する位相可変装置20よりも、弁休止装置39に近い位置に配置されるので、油圧センサ52が検出する油圧は、オイルポンプ60および位相可変装置20付近の高圧側での油圧変動の影響を受けにくくなって、油圧センサ52は前記設定圧よりも低い前記第1所定圧を含む任意の油圧、特に低油圧側の油圧を、精度よく検出することができる。この結果、油路70の第2油路74bの油圧の低圧時にも、油圧センサ52により検出される油圧に基づいて、弁休止装置39を安定して作動させることができ、ひいてはその作動範囲を低油圧側で拡大することができるので、弁休止装置39により、シリンダを休止状態にして稼働シリンダ数を減少させた減筒運転での運転領域を、機関低速回転側に拡大することが可能になって、燃費性能を向上させることができる。
【0043】
油路70は、オイルポンプ60から吐出されたオイルが流入する主油路70aと、主油路70aと位相可変装置20とを接続する第1油路73a,73bと、主油路70aと弁休止装置39とを接続する第2油路74bとを有し、主油路70aは、第2油路74bが接続されるメインギャラリ72と、オイルポンプ60とメインギャラリ72とを接続してオイルポンプ60から吐出されたオイルをメインギャラリ72に導く吐出油路71とから構成され、吐出油路71とメインギャラリ72とが接続されるベース接続部81は、主油路70aと第1油路73a,73bとが接続される第1接続部83a,83bとの距離よりも、油圧センサ52との距離が大きくなる位置にあり、メインギャラリ72の通路面積は、第1油路73a,73bの通路面積よりも大きい。
この構造により、オイルポンプ60および位相可変装置20と、油圧センサ52との間には、第1油路73a,73bの通路面積よりも大きな通路面積を有するメインギャラリ72が介在するので、オイルポンプ60および位相可変装置20の作動に起因する油圧変動をメインギャラリ72において効果的に低減することができる。この結果、油圧センサ52が検出する油圧は、メインギャラリ72により油圧変動が低減しているため、オイルポンプ60および位相可変装置20付近の高圧側での油圧変動の影響を受けにくくなるので、油圧センサ52の油圧検出精度を高めることができて、油圧センサ52により前記第1所定圧を含む任意の油圧、特に低油圧側の油圧を、精度よく検出することができる。
【0044】
また、メインギャラリ72の通路面積は、第2油路74bの通路面積よりも大きく、油圧センサ52は、第2油路74bに配置されることにより、オイルポンプ60および位相可変装置20と、油圧センサ52が配置される第2油路74bとの間には、第2油路74bの通路面積よりも大きな通路面積を有するメインギャラリ72が介在するので、オイルポンプ60および位相可変装置20の作動に起因する油圧変動をメインギャラリ72において効果的に低減することができる。この結果、第2油路74bではメインギャラリ72により油圧変動が低減しているため、油圧センサ52が検出する油圧は、オイルポンプ60および位相可変装置20付近の高圧側での油圧変動の影響を一層受けにくくなるので、油圧センサ52の油圧検出精度を一層高めることができて、油圧センサ52により前記第1所定圧を含む任意の油圧、特に低油圧側の油圧を、一層精度よく検出することができる。
【0045】
油路70は、メインギャラリ72と内燃機関Eが備える全ての主軸受18とをそれぞれ接続する前記所定数の軸受用油路75を有し、ベース接続部81と第2接続部84bとの間に、メインギャラリ72と前記所定数の軸受用油路75とがそれぞれ接続される前記所定数の軸受用接続部85が配置され、第1接続部83a,83bは、主油路70aにおいて、前記所定数の軸受用接続部85のうちでメインギャラリ72において最も上流に位置する最上流軸受用接続部85cと同じ位置または最上流軸受用接続部85cよりも上流に位置し、第2接続部83a,83bは、メインギャラリ72において、前記所定数の軸受用接続部85のうちでメインギャラリ72において最も下流に位置する最下流軸受用接続部85dと同じ位置または最下流軸受用接続部85dよりも下流に位置する。
この構造により、メインギャラリ72において、油圧センサ52が配置される第2油路74bとメインギャラリ72との第2接続部84bと、ベース接続部81および第1接続部83a,83bとの間には、クランク軸6を支持する全ての主軸受18に接続される前記所定数の軸受用油路75が配置されるので、メインギャラリ72の通路長をほぼ最大限に利用して該メインギャラリ72での通路抵抗により、オイルポンプ60および位相可変装置20の作動に起因する油圧変動をメインギャラリ72において低減することができる。この結果、油圧センサ52が検出する油圧は、オイルポンプ60および位相可変装置20付近の高圧側での油圧変動の影響を一層受けにくくなるので、油圧センサ52により前記第1所定圧を含む任意の油圧、特に低油圧側の油圧を、一層精度よく検出することができる。
【0046】
以下、前述した実施形態の一部が変更された形態について、変更された部分を中心に説明する。
位相可変装置は、吸気カム軸および排気カム軸、または、排気カム軸のみに設けられてもよく、リフト量可変装置は、吸気弁のみのバルブリフト量を制御するためのもの、または、排気弁のみのリフト量を制御するためのものであってもよい。
内燃機関が備える油圧作動装置は、位相可変装置、リフト量可変装置または弁休止装置以外の装置であってもよい。
第2バンクの位相可変装置に接続される第1油路73bはメインギャラリ72に接続されてもよく、また油圧センサはメインギャラリに配置されてもよい。
弁休止装置は、低速回転領域において、シリンダ毎に、1対の吸気弁の一方のみ、または複数の吸気弁の一部のみを休止して、燃焼室にスワールなどの旋回流を発生させることで燃焼性を高めることにより、燃費性能の向上を図るものであってもよい。
吸気弁および排気弁は、シリンダ毎に、それぞれ1以上の同数または異なる数で設けられてもよい。
内燃機関は、直列多気筒内燃機関であってもよい。
内燃機関は、前記実施形態では車両に使用されるものであったが、鉛直方向を指向するクランク軸を備える船外機等の船舶推進装置に使用されるものであってもよい。
油圧作動装置および油圧センサを備える機械は、内燃機関以外の機械であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
5…オイルパン、6…クランク軸、7…吸気弁、8…排気弁、10,11…カム軸、12,14…吸気ロッカアーム、13,15…排気ロッカアーム、18…主軸受、20…位相可変装置、22…油圧制御弁、30a,30b…リフト量可変装置、33,34…油圧制御弁、52…油圧センサ、60…オイルポンプ、70…油路、70a…主油路、71…吐出油路、72…メインギャラリ、73a,73b…第1油路、74a,74b…第2油路、75…軸受用油路、81,83a,83b,84a,84b,85…接続部、
E…内燃機関、A1,A2…動弁装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルポンプにより圧送されたオイルが流れる油路に接続されて前記オイルを作動油とする油圧作動装置と、前記油路に配置されて前記油路の油圧を検出する油圧センサとを備える機械において、
前記油圧作動装置は、油圧が予め設定された設定圧以上のときに作動する高油圧作動装置と、前記油圧センサが前記設定圧よりも低い所定圧の油圧を検出したときに作動する低油圧作動装置とを含み、
前記油圧センサは、前記オイルポンプと前記低油圧作動装置との間であって、前記オイルポンプおよび前記高油圧作動装置に対してよりも前記低油圧作動装置に対して近い位置に配置されることを特徴とする機械。
【請求項2】
請求項1記載の機械において、
前記油路は、前記オイルポンプから吐出されたオイルが流入する主油路と、前記主油路と前記高油圧作動装置とを接続する第1油路と、前記主油路と前記低油圧作動装置とを接続する第2油路とを有し、
前記主油路は、前記第2油路が接続されるベース油路と、前記オイルポンプと前記ベース油路とを接続して前記オイルポンプから吐出されたオイルを前記ベース油路に導く吐出油路とから構成され、
前記吐出油路と前記ベース油路とが接続されるベース接続部は、前記主油路と前記第1油路とが接続される第1接続部との距離よりも、前記油圧センサとの距離が大きくなる位置にあり、
前記ベース油路の通路面積は、前記第1油路の通路面積よりも大きいことを特徴とする機械。
【請求項3】
請求項2記載の機械において、
前記ベース油路の通路面積は、前記第2油路の通路面積よりも大きく、
前記油圧センサは、前記第2油路に配置されることを特徴とする機械。
【請求項4】
クランク軸を回転可能に支持する全てである所定数の主軸受を備える内燃機関である請求項3記載の機械において、
前記油路は、前記ベース油路と前記所定数の主軸受とをそれぞれ接続する前記所定数の軸受用油路を有し、
前記ベース接続部と、前記ベース油路と前記第2油路とが接続される第2接続部との間に、前記ベース油路と前記所定数の軸受用油路とがそれぞれ接続される前記所定数の軸受用接続部が配置され、
前記第1接続部は、前記主油路において、前記所定数の軸受用接続部のうちで前記ベース油路において最も上流に位置する最上流軸受用接続部と同じ位置または前記最上流軸受用接続部よりも上流に位置し、
前記第2接続部は、前記ベース油路において、前記所定数の軸受用接続部のうちで前記ベース油路において最も下流に位置する前記最下流軸受用接続部と同じ位置または前記最下流軸受用接続部よりも下流に位置することを特徴とする機械。
【請求項5】
クランク軸と、機関弁を開閉作動させる動弁装置とを備える内燃機関である請求項1から3のいずれか1項記載の機械において、
前記オイルポンプは、前記クランク軸の動力により駆動され、
前記動弁装置は、前記クランク軸の動力により回転駆動されて前記機関弁を開閉作動させるカム軸と、前記クランク軸に対する前記カム軸の位相を変更する位相可変装置と、前記機関弁を休弁状態にする弁休止装置とを備え、
前記高油圧作動装置は前記位相可変装置であり、前記低油圧作動装置は前記弁休止装置であることを特徴とする機械。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−164039(P2010−164039A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9373(P2009−9373)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】