説明

油圧制御装置

【課題】調圧バルブからの油圧の供給異常時に当該調圧バルブに対応した摩擦係合要素に他の油圧源から油圧を供給可能としつつ、当該調圧バルブからの油圧の正常供給時に当該他の油圧源からの油圧が当該摩擦係合要素に供給されないようにする。
【解決手段】C1切替バルブ80は、保持圧としてライン圧PLが供給されるときや、保持圧としてモジュレータ圧Pmodが供給されると共にB1ソレノイド圧Pslb1が供給されないときにクラッチC1にC1ソレノイド圧Pslc1を供給可能とする第1供給状態を形成し、保持圧としてモジュレータ圧Pmodが供給されると共にB1ソレノイド圧Pslb1が供給されるときにクラッチC1にライン圧PLを供給可能とする第2供給状態を形成し、C1ソレノイド圧Pslc1の供給異常時にはC1切替バルブ80に保持圧としてモジュレータ圧Pmodが供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力部材に付与された動力を複数の油圧式摩擦係合要素の係脱により変速比を複数段に変更して出力部材に伝達可能な変速装置の油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の油圧制御装置として、第1摩擦係合要素に第1作動油圧を供給し得る第1ソレノイドバルブと、第2摩擦係合要素に第2作動油圧を供給し得る第2ソレノイドバルブと、第3摩擦係合要素に第3作動油圧を供給し得る第3ソレノイドバルブとを備え、高速側変速段にて第2摩擦係合要素を係合させ、第1摩擦係合要素および第3摩擦係合要素の係合により低速側変速段の1つである低速段を形成すると共に、第2摩擦係合要素および第3摩擦係合要素の係合により高速側変速段の1つである高速段を形成するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この油圧制御装置において、第1から第3ソレノイドバルブは、非通電時に第1から第3作動油圧が非出力となるノーマルクローズタイプとされる。そして、この油圧制御装置は、通常走行時に通電されると共に非通電時に信号油圧を出力するノーマルオープンタイプのソレノイドバルブと、第2摩擦係合要素の係合状態に応じて第1摩擦係合要素用の第1予備油圧(前進レンジ圧)を出力する低速段側位置と第2摩擦係合要素用の第2予備油圧(前進レンジ圧)を出力する高速段側位置とに切り替えられる予備変速段切替バルブと、上記ソレノイドバルブから信号油圧が出力される故障時(非通電時)に、第1から第3作動油圧を第1から第3摩擦係合要素のそれぞれに供給し得る正常時位置から、第1および第2予備油圧を第1および第2摩擦係合要素に供給し得ると共に第3摩擦係合要素にライン圧を供給し得る故障時位置に切り替えられる油圧供給切替バルブとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−84855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の油圧制御装置では、第1ソレノイドバルブや第2ソレノイドバルブが通電状態にあるにも拘わらず、信号油圧を出力するソレノイドバルブが非通電となると、油圧供給切替バルブが故障時位置に切り替えられてしまう。このような場合、第1ソレノイドバルブや第2ソレノイドバルブから第1摩擦係合要素や第2摩擦係合要素に油圧を供給可能であるにも拘わらず、第1予備油圧や第2予備油圧が第1摩擦係合要素や第2摩擦係合要素に供給されることになり、油圧供給の切替に伴ってショックが発生してしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明の油圧制御装置は、調圧バルブから正常に油圧が供給されない異常時に当該調圧バルブに対応した油圧式摩擦係合要素に他の油圧源から油圧を供給可能としつつ、当該調圧バルブから油圧が正常に供給されるときに当該他の油圧源からの油圧が当該油圧式摩擦係合要素に供給されないようにすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の油圧制御装置は、上記主目的を達成するために以下の手段を採っている。
【0007】
本発明の油圧制御装置(50)は、
入力部材に付与された動力を複数の油圧式摩擦係合要素の係脱により変速比を複数段に変更して出力部材に伝達可能な変速装置の油圧制御装置において、
第1油圧式摩擦係合要素(C1)に供給される油圧(Pslc1)を調圧する第1調圧バルブ(SLC1)と、
第2油圧式摩擦係合要素(B1)に供給される油圧(Pslb1)を調圧する第2調圧バルブ(SLB1)と、
油圧発生源(29)からの油圧を調圧してライン圧(PL)を生成するライン圧生成バルブ(51)と、
前記第1調圧バルブ(SLC1)が正常であるときに該第1調圧バルブ(SLC1)からの油圧(Pslc1)を前記第1油圧式摩擦係合要素(C1)に供給可能とする第1供給状態を形成可能であると共に、前記第1調圧バルブ(SLC1)から正常に油圧が供給されない異常時に前記ライン圧生成バルブ(51)からの前記ライン圧(PL)を前記第1油圧式摩擦係合要素(C1)に供給可能とする第2供給状態とを形成可能な切替バルブ(80)とを備え、
前記切替バルブ(80)には、保持圧として第1油圧(PL)と該第1油圧(PL)よりも低圧の第2油圧(Pmod)とが選択的に供給されると共に、前記異常時に前記保持圧として前記第2油圧(Pmod)が供給されると共に前記第2調圧バルブ(SLB1)からの油圧(Pslb1)が供給され、
前記切替バルブ(80)は、前記保持圧として前記第1油圧(PL)が供給されるときに前記第2調圧バルブ(SLB1)からの油圧(Pslb1)の有無に拘わらず前記第1供給状態を形成し、前記保持圧として前記第2油圧(Pmod)が供給されると共に前記第2調圧バルブ(SLB1)からの油圧(Pslb1)が供給されないときに前記第1供給状態を形成し、前記保持圧として前記第2油圧(Pmod)が供給されると共に前記第2調圧バルブ(SLB1)からの油圧(Pslb1)が供給されるときに前記第2供給状態を形成することを特徴とする。
【0008】
この油圧制御装置(50)は、第1調圧バルブ(SLC1)が正常であるときに当該第1調圧バルブ(SLC1)からの油圧(Pslc1)を第1油圧式摩擦係合要素(C1)に供給可能とする第1供給状態をを形成可能であると共に、第1調圧バルブ(SLC1)から正常に油圧が供給されない異常時にライン圧生成バルブ(51)からのライン圧(PL)を第1油圧式摩擦係合要素(C1)に供給可能とする第2供給状態とを形成可能な切替バルブ(80)を備えており、切替バルブ(80)には、保持圧として第1油圧(PL)と第1油圧(PL)よりも低圧の第2油圧(Pmod)とが選択的に供給されると共に、異常時に保持圧として第2油圧(Pmod)が供給されると共に第2調圧バルブ(SLB1)からの油圧(Pslb1)が供給される。そして、この切替バルブ(80)は、保持圧として第1油圧(PL)が供給されるときに第2調圧バルブ(SLB1)からの油圧(Pslb1)の有無に拘わらず第1供給状態を形成し、保持圧として第2油圧(Pmod)が供給されると共に第2調圧バルブ(SLB1)からの油圧(Pslb1)が供給されないときに第1供給状態を形成し、保持圧として第2油圧(Pmod)が供給されると共に第2調圧バルブ(SLB1)からの油圧(Pslb1)が供給されるときに第2供給状態を形成する。
【0009】
このように、上記異常時に切替バルブ(80)に保持圧として第1油圧(PL)よりも低圧の第2油圧(Pmod)を供給することで、第2調圧バルブ(SLB1)からの油圧(Pslb1)により切替バルブ(80)を第1供給状態から第2供給状態へと速やかに切り替えてライン圧生成バルブ(51)からのライン圧(PL)を第1油圧式摩擦係合要素(C1)に供給し、第1油圧式摩擦係合要素(C1)と第2油圧式摩擦係合要素(B1)とを同時係合させることが可能となる。また、第1調圧バルブ(SLC1)から正常に油圧(Pslc1)が供給されるときに、切替バルブ(80)に保持圧として第1油圧(PL)が供給されれば、切替バルブ(80)は第2調圧バルブ(SLB1)からの油圧(Pslb1)の有無に拘わらず第1供給状態に維持され、保持圧として第2油圧(Pmod)が供給されても第2調圧バルブ(SLB1)からの油圧(Pslb1)が供給されない限り、切替バルブ(80)は第1供給状態に維持される。従って、この油圧制御装置(50)によれば、第1調圧バルブ(SLC1)から正常に油圧が供給されない異常時に第1調圧バルブ(SLC1)に対応した第1油圧式摩擦係合要素(C1)にライン圧生成バルブ(51)からのライン圧(PL)を供給可能としつつ、第1調圧バルブ(SLC1)から油圧(Pslc1)が正常に供給されるときにライン圧生成バルブ(51)からのライン圧(PL)が第1油圧式摩擦係合要素(C1)に供給されないようにすることが可能となる。この結果、第1調圧バルブ(SLC1)から油圧(Pslc1)が正常に供給されるときに、誤ってライン圧生成バルブ(51)からのライン圧(PL)が第1油圧式摩擦係合要素(C1)に供給されることを抑制して、油圧供給の切替に伴うショックの発生を良好に抑制することができる。
【0010】
また、前記第1油圧は、前記ライン圧(PL)であり、前記第2油圧は、前記ライン圧(Pmod)を減圧して得られるモジュレータ圧(Pmod)であってもよい。これにより、第1調圧バルブ(SLC1)から油圧(Pslc1)が正常に供給されるときに切替バルブ(80)に保持圧として第1油圧(PL)を供給することで、当該切替バルブ(80)をより確実に第1供給状態に維持して、ライン圧生成バルブ(51)からのライン圧(PL)が第1油圧式摩擦係合要素(C1)に供給されないようにすることが可能となる。
【0011】
更に、前記油圧制御装置(50)は、正常時に前記第2油圧式摩擦係合要素(B1)と同時係合されることがない第3油圧式摩擦係合要素(B3)に供給される油圧(Pslc2)を調圧する第3調圧バルブ(SLC2)と、前記第3調圧バルブ(SLC2)から前記第3油圧式摩擦係合要素(B3)への油圧(Pslc2)の供給を遮断すると共に該第3油圧式摩擦係合要素(B3)から油圧を排出可能とする遮断排出状態と、前記第3調圧バルブ(SLC2)からの油圧(Pslc2)を前記第3油圧式摩擦係合要素(B3)に供給可能とする連通状態とを形成可能であると共に、前記遮断排出状態および前記連通状態を形成するための信号圧(PL,Pmod)と前記第2調圧バルブ(SLB1)からの油圧とを入力可能な第2切替バルブ(70)と、前記第3調圧バルブ(SLC2)からの油圧(Pslc2)を正常時に前記第3油圧式摩擦係合要素(B3)と同時係合されることがない第4油圧式摩擦係合要素(C2)に供給可能とする第1状態と、前記第3調圧バルブ(SLC2)からの油圧(Pslc2)を前記第3油圧式摩擦係合要素(B3)に供給可能とすると共に前記第4油圧式摩擦係合要素(C2)から油圧を排出可能とする第2状態とを形成可能な第3切替バルブ(60)と、前記第3油圧式摩擦係合要素(B3)に前記第3調圧バルブ(SLC2)からの油圧(Pslc2)を供給するとき、および前記異常時に前記第3切替バルブ(60)を前記第1状態から前記第2状態へと切り替えるための信号圧(Ps1)を出力する信号圧出力バルブ(S1)とを更に備えてもよく、前記第3切替バルブ(60)は、前記ライン圧(PL)と前記モジュレータ圧(Pmod)とを入力可能であり、前記第1状態を形成したときに前記ライン圧(PL)を前記切替バルブ(80)に前記保持圧として供給すると共に該ライン圧(PL)を前記第2切替バルブ(70)に前記信号圧として供給し、前記第2状態を形成したときに前記モジュレータ圧(Pmod)を前記切替バルブ(80)に前記保持圧として供給すると共に該モジュレータ圧(Pmod)を前記第2切替バルブ(70)に前記信号圧として供給するものであってもよく、前記第2切替バルブ(70)は、前記信号圧として前記ライン圧(PL)が供給されるときに前記遮断排出状態を形成すると共に、前記信号圧として前記モジュレータ圧(Pmod)が供給されるときに前記連通状態を形成し、該連通状態で前記第2調圧バルブ(SLB1)からの油圧を入力したときに前記遮断排出状態を形成するものであってもよい。
【0012】
この油圧制御装置では、第1調圧バルブ(SLC1)から正常に油圧が供給されない異常時に、信号圧出力バルブ(S1)からの信号圧(Ps1)により第3切替バルブ(60)が第2状態を形成する。これにより、第3調圧バルブ(SLC2)からの油圧が第3油圧式摩擦係合要素(B3)に供給可能となると共に第4油圧式摩擦係合要素(C2)から油圧を排出可能となり、第3切替バルブ(60)からモジュレータ圧(Pmod)が切替バルブ(80)に保持圧として供給されると共に当該モジュレータ圧(Pmod)が第2切替バルブ(70)に信号圧として供給される。従って、上記異常時に、切替バルブ(80)に保持圧として第1油圧であるライン圧(PL)よりも低圧の第2油圧であるモジュレータ圧(Pmod)を供給することが可能となる。また、第3切替バルブ(60)が第2状態を形成すると、第3調圧バルブ(SLC2)からの油圧(Pslc2)が第3油圧式摩擦係合要素(B3)に供給可能となり、第2切替バルブ(70)は、信号圧としてモジュレータ圧(Pmod)が供給されることにより第3調圧バルブ(SLC2)からの油圧(Pslc3)を第3油圧式摩擦係合要素(B3)に供給可能とする連通状態を形成するが、連通状態にある第2切替バルブ(70)に第2調圧バルブ(SLB1)からの油圧(Pslb1)が供給されると、第2切替バルブ(70)は、第3調圧バルブ(SLC2)から第3油圧式摩擦係合要素(B3)への油圧の供給を遮断すると共に第3油圧式摩擦係合要素(B3)から油圧を排出可能とする遮断排出状態を形成する。従って、第1調圧バルブ(SLC1)から正常に油圧が供給されなくなったのに伴って第2調圧バルブ(SLB1)から油圧(Pslb1)が出力されても、第2油圧式摩擦係合要素(B1)と第3油圧式摩擦係合要素(B3)とが同時係合されてしまうことはない。
【0013】
また、前記切替バルブ(80)は、軸方向に移動自在に配置されると共に前記第1供給状態と前記第2供給状態とを形成可能なスプール(801)と、該スプール(801)を付勢するスプリング(802)とを含むものであってもよく、前記スプール(801)は、前記スプリング(802)の付勢力を受ける第1受圧面(801a)と、前記第2調圧バルブ(SLB1)からの油圧(Pslb1)を受ける第2受圧面(801b,801c)と、前記保持圧(PL,Pmod)を受ける保持圧受圧面(801d)とを有するものであってもよい。このような切替バルブ(80)を用いた場合、保持受圧面(801d)への第1油圧(ライン圧(PL))の作用によりスプール(800)に付与される推力が第2受圧面(801b,801c)への第2調圧バルブ(SLB1)からの油圧(Pslb1)の作用によりスプール(801)に付与される推力とスプール(801)に付与されるスプリング(802)の付勢力との和に打ち勝つこと、あるいは保持受圧面(801d)への第2油圧(モジュレータ圧(Pmod))の作用によりスプール(801)に付与される推力がスプール(801)に付与されるスプリング(802)の付勢力に打ち勝つことで第1供給状態が形成される。また、第2受圧面(801b,801c)への第2調圧バルブ(SLB1)からの油圧(Pslb1)の作用によりスプール(801)に付与される推力とスプール(801)に付与されるスプリング(802)の付勢力との和が保持受圧面(801d)への第2油圧(モジュレータ圧(Pmod))の作用によりスプール(801)に付与される推力に打ち勝つことで第2供給状態が形成される。
【0014】
更に、前記第3切替バルブ(60)が前記第2状態を形成したときに、前記スプール(801)の前記第1受圧面(801a)に前記第3調圧バルブ(SLC2)からの油圧(Pslc2)を作用させてもよい。これにより、第1調圧バルブ(SLC1)から正常に油圧が供給されない異常時にスプール(801)の第1受圧面(801a)に第3調圧バルブ(SLC2)からの油圧(Pslc2)が作用するので、切替バルブ(80)は、第1受圧面(801a)への第3調圧バルブ(SLC2)からの油圧(Pslc2)の作用によりスプール(801)に付与される推力と第2受圧面(801b,801c)への第2調圧バルブ(SLC2)からの油圧(Pslc2)の作用によりスプール(801)に付与される推力とスプール(801)に付与されるスプリング(802)の付勢力との和が保持受圧面(801d)への第2油圧(モジュレータ圧(Pmod))の作用によりスプール(801)に付与される推力に打ち勝つことで第2供給状態を形成する。従って、かかる構成によれば、切替バルブ(80)を第2供給状態にするときにスプリング(802)に要求される付勢力(剛性)を低下させることが可能となり、それにより第1調圧バルブ(SLC1)から油圧(Pslc1)が正常に供給されるときに切替バルブ(80)に保持圧として供給される第1油圧(ライン圧(PL))や第2油圧(モジュレータ圧(Pmod))により当該切替バルブ(80)をより確実に第1供給状態に維持することができる。
【0015】
また、前記第1油圧式摩擦係合要素(C1)は、少なくとも前記変速装置(30)の第1速および第2速が設定されるときに係合されてもよく、前記第2油圧式摩擦係合要素(B1)は、少なくとも前記変速装置(30)の前記第2速が設定されるときに係合されてもよい。これにより、第1調圧バルブ(SLC1)から正常に油圧が供給されない異常時に、ライン圧生成バルブ(51)からのライン圧(PL)により第1油圧式摩擦係合要素(C1)を係合させると共に第2油圧式摩擦係合要素(B1)を係合させて第2速での車両の発進・前進走行を保障することができる。
【0016】
そして、前記油圧制御装置(50)は、電力により駆動される第2油圧発生源(EMOP)を更に備えてもよく、前記油圧発生源(29)は、原動機(12)からの動力により駆動される機械式ポンプであってもよく、前記第1調圧バルブ(SLC1)は、前記ライン圧生成バルブ(51)からの前記ライン圧(PL)を調圧して第1油圧式摩擦係合要素(C1)に供給される油圧(Pslc1)を生成するものであってもよく、前記切替バルブ(80)は、第1油路(L1)を介して前記第2油圧発生源(EMOP)からの油圧(Pemop)を入力可能であると共に、前記第2供給状態を形成したときに前記第2油圧発生源(EMOP)からの油圧(Pemop)を前記第1油圧式摩擦係合要素(C1)に供給可能に構成されてもよく、前記切替バルブ(80)が前記第2供給状態を形成したときに、前記ライン圧生成バルブ(51)からのライン圧(PL)は、前記第1油路(L1)と接続されると共に前記第2油圧発生源(EMOP)からの油圧(Pemop)の流入を規制するバルブ(89)を中途に有する第2油路(L2)と前記第1油路(L1)とを経由して前記第1油圧式摩擦係合要素(C1)に供給されてもよい。
【0017】
これにより、原動機(12)の運転が停止されて油圧発生源(29)により油圧が発生されなくなり、第1調圧バルブ(SLC1)により第1油圧式摩擦係合要素(c1)への油圧(Pslc1)が供給されなくなるときに、切替バルブ(80)を第2供給状態へと切り替えると共に第2油圧発生源(EMOP)を作動させることで、当該第2油圧発生源(EMOP)からの油圧(Pemop)を第1油圧式摩擦係合要素(C1)に供給することが可能となる。また、第2油圧発生源(EMOP)と切替バルブ(80)とを結ぶ第1油路(L1)の一部を利用してライン圧生成バルブ(51)からのライン圧(PL)を第1油圧式摩擦係合要素(C1)へと供給可能にすることで、油路の増加ひいてはコストアップや装置の大型化を抑制することができる。そして、本発明の油圧制御装置は、上述のように第1調圧バルブ(SLC1)から油圧(Pslc1)が正常に供給されるときに、誤ってライン圧生成バルブ(51)からのライン圧(PL)が第1油圧式摩擦係合要素(C1)に供給されることを抑制可能なものであることから、第1調圧バルブ(SLC1)から油圧(Pslc1)が正常に供給されるときに第2油路(L2)および第1油路(L1)を介してライン圧(PL)が第2油圧発生源(EMOP)に作用して当該第2油圧発生源(EMOP)に悪影響を与えてしまうのを良好に抑制することができる。なお、上記バルブ(89)は、逆止弁であってもよく、開閉制御される開閉弁であってもよい。
【0018】
また、前記第2油圧発生源は、電力により駆動される電動ポンプあるいは電磁ポンプであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例に係る油圧制御装置50を含む動力伝達装置20を搭載した車両である自動車10の概略構成図である。
【図2】動力伝達装置20の概略構成図である。
【図3】動力伝達装置20に含まれる自動変速機30の各変速段とクラッチおよびブレーキの作動状態との関係を表した作動表である。
【図4】自動変速機30を構成する回転要素間における回転数の関係を例示する共線図である。
【図5】油圧制御装置50を示す系統図である。
【図6】油圧制御装置50を示す系統図である。
【図7】ロックアップソレノイドバルブSLUに印加される電流とロックアップソレノイド圧Psluとの関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0021】
図1は、本発明の実施例に係る油圧制御装置50を含む動力伝達装置20を搭載した車両である自動車10の概略構成図であり、図2は、動力伝達装置20の概略構成図である。図1に示す自動車10は、ガソリンや軽油といった炭化水素系の燃料と空気との混合気の爆発燃焼により動力を出力する内燃機関である動力発生源としてのエンジン12と、エンジン12を制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)14と、図示しない電子制御式油圧ブレーキユニットを制御するブレーキ用電子制御ユニット(以下、「ブレーキECU」という)15と、流体伝動装置(発進装置)23や有段の自動変速機30、これらに作動油(作動流体)を給排する油圧制御装置50、これらを制御する変速用電子制御ユニット(以下、「変速ECU」という)21等を有し、エンジン12のクランクシャフト16に接続されると共に動力発生源としてのエンジン12からの動力を左右の駆動輪DWに伝達する動力伝達装置20とを備える。
【0022】
図1に示すように、エンジンECU14には、アクセルペダル91の踏み込み量(操作量)を検出するアクセルペダルポジションセンサ92からのアクセル開度Accや車速センサ99からの車速V、クランクシャフト16の回転を検出する図示しないクランクシャフトポジションセンサといった各種センサ等からの信号、ブレーキECU15や変速ECU21からの信号等が入力され、エンジンECU14は、これらの信号に基づいて何れも図示しない電子制御式スロットルバルブや燃料噴射弁、点火プラグ等を制御する。また、実施例のエンジン用電子制御ユニット14は、自動車10の停車に伴って通常エンジン12がアイドル運転されるときにエンジン12の運転を停止させると共にアクセルペダル91の踏み込みによる自動車10に対する発進要求に応じてエンジン12を再始動させる自動始動停止制御(アイドルストップ制御)を実行可能に構成されている。
【0023】
ブレーキECU15には、ブレーキペダル93が踏み込まれたときにマスタシリンダ圧センサ94により検出されるマスタシリンダ圧や車速センサ99からの車速V、図示しない各種センサ等からの信号、エンジンECU14や変速ECU21からの信号等が入力され、ブレーキECU15は、これらの信号に基づいて図示しないブレーキアクチュエータ(油圧アクチュエータ)等を制御する。動力伝達装置20の変速ECU21は、トランスミッションケース22の内部に収容される。変速ECU21には、複数のシフトレンジ(実施例では、パーキングレンジ、リバースレンジ、ニュートラルレンジ、ドライブレンジ、2速レンジ、およびLレンジ)の中から所望のシフトレンジを選択するためのシフトレバー95の操作位置を検出するシフトレンジセンサ96からのシフトレンジSRや車速センサ99からの車速V、図示しない各種センサ等からの信号、エンジンECU14やブレーキECU15からの信号等が入力され、変速ECU21は、これらの信号に基づいて流体伝動装置23や自動変速機30等を制御する。
【0024】
上述のエンジンECU14、ブレーキECU15および変速ECU21は、何れも図示しないCPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成されており、CPUの他に各種プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートおよび通信ポート(何れも図示せず)等を有する。そして、エンジンECU14、ブレーキECU15および変速ECU21は、バスライン等を介して相互に接続されており、これらのECU間では制御に必要なデータのやり取りが随時実行される。
【0025】
動力伝達装置20は、トランスミッションケース22の内部に収容される流体伝動装置23や、油圧発生源としてのオイルポンプ(機械式ポンプ)29、自動変速機30等を含む。流体伝動装置23は、ロックアップクラッチ付きの流体式トルクコンバータとして構成されており、図2に示すように、フロントカバー18を介してエンジン12のクランクシャフト16に接続されるポンプインペラ24や、タービンハブを介して自動変速機30のインプットシャフト(入力部材)31に固定されるタービンランナ25、ポンプインペラ24およびタービンランナ25の内側に配置されてタービンランナ25からポンプインペラ24への作動油(ATF)の流れを整流するステータ26、ステータ26の回転方向を一方向に制限するワンウェイクラッチ27、図示しないダンパ機構を有するロックアップクラッチ28等を含む。流体伝動装置23は、ポンプインペラ24とタービンランナ25との回転速度差が大きいときにはステータ26の作用によりトルク増幅機として機能し、両者の回転速度差が小さくなると流体継手として機能する。ロックアップクラッチ28は、フロントカバー18と自動変速機30のインプットシャフト31とを直結するロックアップと当該ロックアップの解除とを実行可能なものである。そして、自動車10の発進後、所定のロックアップオン条件が成立すると、ロックアップクラッチ28によりフロントカバー18と自動変速機30のインプットシャフト31とが直結され、エンジン12からの動力がインプットシャフト31に機械的かつ直接的に伝達されるようになる。この際、インプットシャフト31に伝達されるトルクの変動は、図示しないダンパ機構により吸収される。
【0026】
実施例のロックアップクラッチ28は、流体伝動装置23のポンプインペラ24やタービンランナ25が配置される流体伝動室23aとロックアップピストン28pを介して対向するロックアップ室23b内の圧力を変化させることでロックアップおよびロックアップの解除を実行するように構成されている。すなわち、ロックアップ室23b内の圧力が流体伝動室23a内の圧力よりも高いか、あるいは流体伝動室23a内の圧力とロックアップ室23b内の圧力とが等圧であるときに、ロックアップピストン28pは係合側には移動せず、それによりロックアップは実行されない(解除される)。これに対して、ロックアップ室23b内に流体伝動室23a内の圧力よりも低い圧力が供給されてロックアップ室23b内の圧力が低下すると、ロックアップピストン28pがフロントカバー18側に移動して摩擦材を当該フロントカバー18の内面に圧着させ、それによりロックアップが実行される(完了する)。
【0027】
油圧発生源としてのオイルポンプ29は、ポンプボディとポンプカバーとからなるポンプアッセンブリと、ハブを介して流体伝動装置23のポンプインペラ24に接続された外歯ギヤとを備えるギヤポンプとして構成されており、油圧制御装置50に接続される。エンジン12が運転されているときには、当該エンジン12からの動力により外歯ギヤが回転し、それによりオイルポンプ29によってストレーナを介してオイルパン(何れも図示省略)に貯留されている作動油が吸引されると共に当該オイルポンプ29から吐出される。従って、エンジン12の運転中には、オイルポンプ29により流体伝動装置23や自動変速機30により要求される油圧を発生させたり、各種軸受などの潤滑部分に作動油を供給したりすることができる。
【0028】
自動変速機30は、4段変速式変速機として構成されており、図2に示すように、ラビニヨ式遊星歯車機構32と、入力側から出力側までの動力伝達経路を変更するための複数のクラッチC1,C2およびC3と2つのブレーキB1およびB3とワンウェイクラッチF2とを含む。ラビニヨ式遊星歯車機構32は、外歯歯車である2つのサンギヤ33a,33bと、自動変速機30のアウトプットシャフト(出力部材)37に固定された内歯歯車であるリングギヤ34と、サンギヤ33aに噛合する複数のショートピニオンギヤ35aと、サンギヤ33bおよび複数のショートピニオンギヤ35aに噛合すると共にリングギヤ34に噛合する複数のロングピニオンギヤ35bと、互いに連結された複数のショートピニオンギヤ35aおよび複数のロングピニオンギヤ35bを自転かつ公転自在に保持すると共にワンウェイクラッチF2を介してトランスミッションケース22に支持されたキャリア36とを有する。そして、自動変速機30のアウトプットシャフト37は、ギヤ機構38および差動機構39を介して駆動輪DWに接続される。
【0029】
クラッチC1は、インプットシャフト31とラビニヨ式遊星歯車機構32のサンギヤ33aとを締結すると共に両者の締結を解除することができる油圧クラッチである。クラッチC2は、インプットシャフト31とラビニヨ式遊星歯車機構32のキャリア36とを締結すると共に両者の締結を解除することができる油圧クラッチである。クラッチC3は、インプットシャフト31とラビニヨ式遊星歯車機構32のサンギヤ33bとを締結すると共に両者の締結を解除することができる油圧クラッチである。ブレーキB1は、ラビニヨ式遊星歯車機構32のサンギヤ33bをトランスミッションケース22に固定すると共にサンギヤ33bのトランスミッションケース22に対する固定を解除することができる油圧クラッチである。ブレーキB3は、ラビニヨ式遊星歯車機構32のキャリア36をトランスミッションケース22に固定すると共にキャリア36のトランスミッションケース22に対する固定を解除することができる油圧クラッチである。これらのクラッチC1〜C3、ブレーキB1およびB3は、油圧制御装置50による作動油の給排を受けて動作する。図3に、自動変速機30の各変速段とクラッチC1〜C3、ブレーキB1およびB3ならびにワンウェイクラッチF2の作動状態との関係を表した作動表を示し、図4に自動変速機30を構成する回転要素間における回転数の関係を例示する共線図を示す。自動変速機30は、クラッチC1〜C3、ブレーキB1およびB3を図3の作動表に示す状態にすることで前進1〜4速の変速段と後進1段の変速段とを提供する。
【0030】
図5および図6は、上述のロックアップクラッチ28を含む流体伝動装置23や自動変速機30に対して作動油を給排する油圧制御装置50を示す系統図である。油圧制御装置50は、エンジン12からの動力により駆動されてオイルパンから作動油を吸引して吐出する上述のオイルポンプ29に接続されるものであり、図5に示すように、オイルポンプ29からの作動油を調圧してライン圧PLを生成するプライマリレギュレータバルブ51や、一定のモジュレータ圧Pmodを生成するモジュレータバルブ52、シフトレバー95の操作位置に応じてプライマリレギュレータバルブ51からのライン圧PLの供給先を切り替えるマニュアルバルブ53、マニュアルバルブ53(プライマリレギュレータバルブ51)からのライン圧PLを調圧してクラッチC1へのC1ソレノイド圧Pslc1を生成するC1リニアソレノイドバルブSLC1、マニュアルバルブ53(プライマリレギュレータバルブ51)からのライン圧PLを調圧してクラッチC2へのC2ソレノイド圧Pslc2を生成するC2リニアソレノイドバルブSLC2、マニュアルバルブ53(プライマリレギュレータバルブ51)からのライン圧PLを調圧してブレーキB1へのB1ソレノイド圧Pslb1を生成するB1リニアソレノイドバルブSLB1とを含む。
【0031】
また、実施例の油圧制御装置50は、図5に示すように、リニアソレノイドバルブSLC1,SLC2およびSLB1の出力ポートに接続されると共にC1ソレノイド圧Pslc1、C2ソレノイド圧Pslc2およびB1ソレノイド圧Pslb1の中の最大圧力Pmaxを出力するシャトルバルブ(最大圧選択バルブ)54を含む。更に、油圧制御装置50は、図6に示すように、流体伝動装置23のロックアップクラッチ28を作動させるために、モジュレータバルブ52からのモジュレータ圧Pmodを調圧してロックアップソレノイド圧(ロックアップ制御圧)Psluを生成するロックアップソレノイドバルブSLUと、ロックアップソレノイドバルブSLUからのロックアップソレノイド圧Psluに応じたロックアップクラッチ28に供給されるロックアップ圧Plupを生成するロックアップ制御バルブ55と、流体伝動装置23のロックアップ室23bにロックアップ圧Plupを供給可能とするロックアップ圧供給状態と、ロックアップ室23bへのロックアップ圧Plupの供給を遮断するロックアップ圧遮断状態とを形成可能なロックアップリレーバルブ56とを含む。
【0032】
プライマリレギュレータバルブ51は、安全弁59を介して上述のシャトルバルブ54からの最大圧力Pmaxを信号圧として入力し、当該最大圧力Pmaxに応じたライン圧PLを生成する。ただし、プライマリレギュレータバルブ51は、オイルポンプ29側(例えばモジュレータバルブ52)からの作動油をアクセル開度Accあるいはスロットルバルブの開度に応じて調圧して制御圧を出力する図示しないリニアソレノイドバルブからの制御圧により駆動されるものであってもよい。また、実施例のモジュレータバルブ52は、スプリングの付勢力とフィードバック圧とによりプライマリレギュレータバルブ51からのライン圧PLを調圧して略一定のモジュレータ圧Pmodを生成する調圧バルブである。
【0033】
マニュアルバルブ53は、シフトレバー95と連動して軸方向に摺動可能なスプールや、ライン圧PLが供給される入力ポート、C1リニアソレノイドバルブSLC1、C2リニアソレノイドバルブSLC2およびB1リニアソレノイドバルブSLB1の入力ポートと油路を介して連通するドライブレンジ出力ポート、クラッチC3の油圧入口と油路を介して連通するリバースレンジ出力ポート等を有する。運転者により前進走行シフトレンジであるドライブレンジ、2速レンジおよびLレンジが選択されているときには、マニュアルバルブ53のスプールにより入力ポートがドライブレンジ出力ポートのみと連通され、これにより、C1リニアソレノイドバルブSLC1、C2リニアソレノイドバルブSLC2およびB1リニアソレノイドバルブSLB1にライン圧PL(ドライブレンジ圧Pd)が供給される。また、運転者によりリバース走行用のリバースレンジが選択されたときには、マニュアルバルブ53のスプールにより入力ポートがリバースレンジ出力ポートのみと連通され、これにより、クラッチC3にライン圧PL(Pr)が供給される。そして、運転者によりパーキングレンジやニュートラルレンジが選択されたときには、マニュアルバルブ53のスプールにより入力ポートとドライブレンジ出力ポートおよびリバースレンジ出力ポートとの連通が遮断される。
【0034】
C1リニアソレノイドバルブSLC1は、マニュアルバルブ53からのライン圧PLを図示しない補機バッテリから印加される電流値に応じて調圧してクラッチC1に供給されるC1ソレノイド圧Pslc1を生成する常開型リニアソレノイドバルブである。C2リニアソレノイドバルブSLC2は、マニュアルバルブ53からのライン圧PLを図示しない補機バッテリから印加される電流値に応じて調圧してクラッチC2に供給されるC2ソレノイド圧Pslc2を生成する常開型リニアソレノイドバルブである。B1リニアソレノイドバルブSLB1は、マニュアルバルブ53からのライン圧PLを図示しない補機バッテリから印加される電流値に応じて調圧してブレーキB1に供給されるB1ソレノイド圧Pslb1を生成する常閉型リニアソレノイドバルブである。
【0035】
これらリニアソレノイドバルブSLC1,SLC2およびSLB1(それぞれに印加される電流)は、何れも変速ECU21により制御される。そして、実施例では、コスト面や設計の容易さといった観点から、リニアソレノイドバルブSLC1,SLC2およびSLB1として、同一サイズかつ同一の最高出力圧を有するものが採用されている。更に、実施例の自動変速機30では、第2速および第4速の設定時に係合されるブレーキB1のトルク分担比が第2速の設定時に同時に係合されるクラッチC1や第4速の設定時に同時に係合されるクラッチC2のトルク分担比に比べて小さくなっている。従って、自動車10の走行中、ブレーキB1に対応したB1リニアソレノイドバルブSLB1に要求される出力圧は、クラッチC1に対応したC1リニアソレノイドバルブSLC1やクラッチC2に対応したC2リニアソレノイドバルブSLC2に要求される出力圧に比べて低くなる。これにより、自動車10の通常走行時にB1リニアソレノイドバルブSLB1に最高出力圧が要求されることはなく、B1リニアソレノイドバルブSLB1への要求出力圧は、最高出力圧よりも充分に低い値である常用上限圧を上限とする範囲内に収まる。
【0036】
また、実施例では、運転者によりLレンジが選択されたのに伴って自動変速機30の第1速が設定された状態でタービンランナ25側からアウトプットシャフト37にフリクショントルクを伝達するとき(1速エンジンブレーキ時)に、クラッチC1と共に係合されるブレーキB3に対して、正常時に当該ブレーキB3と同時に係合されないクラッチC2に対応したC2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2が供給される。このため、実施例の油圧制御装置50は、図5および図6に示すように、C2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2をクラッチC2とブレーキB3とに選択的に供給可能とするために、C2/B3切替バルブ60と、B3切替バルブ70と、変速ECU21により制御されてモジュレータバルブ52からのモジュレータ圧Pmodを調圧してC2/B3切替バルブ60への信号圧であるソレノイド圧Ps1を出力する常閉型のソレノイドバルブS1とを含む。実施例のB3切替バルブ70は、正常時にブレーキB3とは同時係合されることがないブレーキB1とブレーキB3との同時係合を抑制するフェールセーフ機能とを有すると共に、リバースレンジの選択時にクラッチC3と同時係合されるブレーキB3にマニュアルバルブ53からのライン圧PL(Pr)を供給するように構成されている。
【0037】
ロックアップソレノイドバルブSLUは、モジュレータバルブ52からのモジュレータ圧Pmodを図示しない補機バッテリから印加される電流値に応じて調圧してロックアップソレノイド圧Psluを生成するものであり、変速ECU21により制御される。図7にロックアップソレノイドバルブSLUに印加される電流とロックアップソレノイド圧Psluとの関係を示す。ロックアップ制御バルブ55は、プライマリレギュレータバルブ51からドレンされる作動油を上記最大圧力Pmaxに応じてライン圧PLよりも低くなるように調圧する図示しないセカンダリレギュレータバルブからのセカンダリ圧PsecをロックアップソレノイドバルブSLUからのロックアップソレノイド圧Psluに応じて調圧してロックアップクラッチ28へのロックアップ圧Plupを生成するスプールバルブである。実施例のロックアップ制御バルブ55は、ロックアップソレノイドバルブSLUからのロックアップソレノイド圧Psluが高いほど元圧であるセカンダリ圧Psecを減圧してロックアップ圧Plupを生成し、ロックアップソレノイド圧Psluがモジュレータ圧Pmod以下のロックアップクラッチ完全係合圧P1(図7参照)に達したときにロックアップクラッチ28の完全係合に要求されるロックアップ圧Plupを出力する。
【0038】
ロックアップリレーバルブ56は、スプリングにより付勢されるスプールを有し、ロックアップソレノイドバルブSLUからのロックアップソレノイド圧Psluを信号圧として入力する。実施例のロックアップリレーバルブ56は、ロックアップソレノイド圧Psluが供給されないときにロックアップ圧遮断状態を形成して上述のロックアップ室23bに対するセカンダリレギュレータバルブからのセカンダリ圧(循環圧)Psecの供給のみを許容すると共に、ロックアップソレノイド圧Psluが供給されるときにロックアップ圧供給状態を形成して流体伝動室23aへのセカンダリ圧Psecの供給およびロックアップ室23bへのロックアップ圧Plupの供給を許容するように構成されている。また、実施例のロックアップリレーバルブ56には、上述のソレノイドバルブS1からのソレノイド圧Ps1が供給される。ロックアップリレーバルブ56は、ソレノイドバルブS1からのソレノイド圧Ps1を入力したときに、上記ロックアップ圧遮断状態を形成し、ロックアップ室23bへのロックアップ圧Plupの供給すなわちロックアップを遮断(禁止)する。
【0039】
そして、実施例の油圧制御装置50は、上述の自動始動停止制御(アイドルストップ制御)によりエンジン12の運転が停止され、オイルポンプ29の作動停止に伴ってプライマリレギュレータバルブ51からのライン圧PLが低下したときに、自動変速機30を発進待機状態に保つべく発進クラッチであるクラッチC1に油圧を供給するのに用いられる電磁ポンプEMOPと、C1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイド圧Pslc1と電磁ポンプEMOPからの油圧PemopとをクラッチC1に選択的に供給可能とするためのC1切替バルブ80とを含む(何れも図5参照)。実施例では、オイルポンプ29の吐出圧が所定値以下になるときのエンジン12の回転数が閾値Nref(例えば1000〜1500rpm程度の値)として定められており、エンジン12の回転数が閾値Nref以下になると、C1切替バルブ80がC1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイド圧Pslc1をクラッチC1に供給可能とする第1供給状態(図5における右側半分の状態)から電磁ポンプEMOPからの油圧PemopをクラッチC1に供給可能とする第2供給状態(図5における左側半分の状態)へと切り替えられ、変速用電子制御ユニット21による制御のもと、電磁ポンプEMOPのソレノイド部のコイルに対して所定デューティ比の矩形波電流が印加される。そして、エンジン12が再始動されて当該エンジン12の回転数が閾値Nrefあるいはそれより若干高い所定値を上回ると、電磁ポンプEMOPに対する電流の供給が停止されると共に、C1切替バルブ80が第2供給状態から第1供給状態へと切り替えられる。
【0040】
電磁ポンプEMOPは、図示しないソレノイド部のコイルに矩形波電流が印加されるのに伴ってオイルパンから作動油を吸引すると共に吐出して油圧を発生する周知の構成を有するものであり、変速ECU21により制御される。ここで、エンジン用電子制御ユニット14により自動始動停止処理が実行されてエンジン12の運転が停止されるときには、クラッチC1を完全な係合状態に維持しておく必要はない。このため、実施例では、電磁ポンプEMOPとして、エンジン12の運転停止中にクラッチC1を係合直前(係合完了直前)の状態に設定し得る程度(油圧サーボにおけるストロークを無くすことができる程度)の油圧を発生可能なものが用いられる。これにより、エンジン12が運転停止されてから再始動されるまでの間に自動変速機30を発進待機状態により適正に保つことが可能となり、電磁ポンプEMOPに要求される性能(ポンプ容量)を低下させることで当該電磁ポンプEMOPひいては動力伝達装置20の全体を小型化することができる。そして、実施例では、上述のようなクラッチC1に対する油圧の供給元を切り替えるC1切替バルブ80が、C1リニアソレノイドバルブSLC1から正常に油圧が供給されない異常時にプライマリレギュレータバルブ51からのライン圧PLをクラッチC1に供給することができるように構成されている。
【0041】
次に、上述のC2/B3切替バルブ60、B3切替バルブ70およびC1切替バルブ80について詳細に説明する。
【0042】
C2/B3切替バルブ60は、図6に示すように、バルブボディ内に軸方向に移動自在に配置されるスプール601と、スプール601を付勢するスプリング602と、C2リニアソレノイドバルブSLC2の出力ポートと油路を介して連通する入力ポート61と、クラッチC2から油圧を排出可能とするC2ドレンポート62と、ブレーキB3から油圧を排出可能とするB3ドレンポート63と、マニュアルバルブ53のドライブレンジ出力ポートと油路を介して連通する信号圧入力ポート64と、マニュアルバルブ53のドライブレンジ出力ポートと油路を介して連通するライン圧入力ポート65と、モジュレータバルブ52の出力ポートと油路を介して連通するモジュレータ圧入力ポート66と、クラッチC2の油圧入口と油路を介して連通する第1出力ポート67と、C2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2をブレーキB3に供給可能とする第2出力ポート68と、第3出力ポート69とを有する。更に、C2/B3切替バルブ60のスプリング602を収容するスプリング室603は、図示しないポートおよび油路を介してソレノイドバルブS1の出力ポートと連通されている。
【0043】
実施例において、C2/B3切替バルブ60の取付状態は、ブレーキB3にC2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2を供給可能とすると共にクラッチC2から油圧を排出可能とするB3供給状態(第2状態)とされている。すなわち、C2/B3切替バルブ60の取付状態(B3供給状態)では、スプリング602によってスプール601が付勢されて図6中点線で示す状態に維持され、それによりC2リニアソレノイドバルブSLC2の出力ポートと連通する入力ポート61と第2出力ポート68とが連通され、クラッチC2の油圧入口と連通する第1出力ポート67とC2ドレンポート62とが連通され、モジュレータ圧入力ポート66と第3出力ポート69とが連通される。
【0044】
また、上述のように、C2/B3切替バルブ60の信号圧入力ポート64はマニュアルバルブ53のドライブレンジ出力ポートと連通しており、信号圧入力ポート64には、前進走行シフトレンジ(ドライブレンジ、2速レンジおよびLレンジ)が選択されると共にオイルポンプ29がエンジン12からの動力により駆動されてプライマリレギュレータバルブ51からライン圧PLが出力されているときに、マニュアルバルブ53からのドライブレンジ圧Pdすなわちライン圧PLが供給される。更に、Lレンジの選択に伴って自動変速機30の第1速が設定された状態でタービンランナ25側からアウトプットシャフト37にフリクショントルクを伝達すべくブレーキB3にC2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2を供給して当該ブレーキB3を係合させるとき(1速エンジンブレーキ時)には、上述のソレノイドバルブS1が信号圧としてのソレノイド圧Ps1を出力するように変速ECU21により制御され、C2/B3切替バルブ60のスプリング室603には、ソレノイドバルブS1からのソレノイド圧Ps1が供給される。
【0045】
そして、C2/B3切替バルブ60のスプリング602のバネ定数や信号圧入力ポート64に臨むスプール601の受圧面の面積、スプリング602の付勢力やソレノイドバルブS1からのソレノイド圧Ps1を受けるスプール601の受圧面の面積は、信号圧入力ポート64にライン圧PLが供給されると共にスプリング室603にソレノイドバルブS1からのソレノイド圧Ps1が供給されないときに、信号圧入力ポート64からのライン圧PLの作用によりスプール601に付与される推力がスプリング602の付勢力に打ち勝ってスプール601を図6中実線で示す状態にすると共に、信号圧入力ポート64にライン圧PLが供給された状態でスプリング室603にソレノイド圧Ps1が供給されたときに、スプリング602の付勢力とソレノイド圧Ps1の作用によりスプール601に付与される推力との和がライン圧PLの作用によりスプール601に付与される推力に打ち勝ってスプール601を図6中点線で示す状態(B3供給状態)にするように定められている。
【0046】
これにより、信号圧入力ポート64にライン圧PLが供給されると共にスプリング室603にソレノイドバルブS1からのソレノイド圧Ps1が供給されないときには、スプール601がスプリング602の付勢力に抗して移動し、C2/B3切替バルブ60は、図6において実線で示すC2供給状態(第1状態)を形成する。C2供給状態では、C2リニアソレノイドバルブSLC2の出力ポートと連通する入力ポート61とクラッチC2の油圧入口と連通する第1出力ポート67とが連通され、ブレーキB3から油圧を排出可能とするB3ドレンポート63とブレーキB3にC2ソレノイド圧Pslc2を供給可能とする第2出力ポート68とが連通され、ライン圧入力ポート65と第3出力ポート69とが連通される。これにより、C2/B3切替バルブ60がC2供給状態を形成しているときにC2リニアソレノイドバルブSLC2にC2ソレノイド圧Pslc2を出力させれば、C2ソレノイド圧Pslc2をクラッチC2に供給して当該クラッチC2を係合させることが可能となり、ブレーキB3から油圧を排出することも可能となる。
【0047】
また、C2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2をブレーキB3に供給して当該ブレーキB3を係合させるべく信号圧入力ポート64にライン圧PLが供給された状態でスプリング室603にソレノイド圧Ps1が供給されたとき(1速エンジンブレーキ時)には、C2/B3切替バルブ60が図6において点線で示すB3供給状態を形成する。これにより、C2リニアソレノイドバルブSLC2の出力ポートと連通する入力ポート61と第2出力ポート68とが連通され、クラッチC2の油圧入口と連通する第1出力ポート67とC2ドレンポート62とが連通されることから、C2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2をブレーキB3に供給すると共に、クラッチC2から油圧を排出することが可能となる。
【0048】
B3切替バルブ70は、図6に示すように、バルブボディ内に軸方向に移動自在に配置されるプランジャ700と、バルブボディ内にプランジャ700と同軸に移動自在に配置されるスプール701と、スプール701を付勢するスプリング702と、C2/B3切替バルブ60の第2出力ポート68と油路を介して連通する入力ポート71と、ブレーキB3の油圧入口と油路を介して連通する出力ポート72と、ブレーキB3から油圧を排出可能とするドレンポート73と、C2/B3切替バルブ60の第3出力ポート69と油路を介して連通する信号圧入力ポート74とを有する。また、B3切替バルブ70のスプリング702を収容するスプリング室703は、図示しないポートおよび油路を介してロックアップソレノイドバルブSLUの出力ポートと連通されている。
【0049】
更に、実施例では、B3切替バルブ70に上述のブレーキB1とブレーキB3との同時係合を抑制するフェールセーフ機能を持たせるために、プランジャ700とスプール701とが油室704を画成するように構成されており、当該油室704は、正常時にブレーキB3とは同時係合されることがないブレーキB1に供給される油圧であるB1ソレノイド圧Pslb1を出力(調圧)するB1リニアソレノイドバルブSLB1の出力ポートと連通されている。そして、スプール701は、B1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1を受ける第1受圧面701aと、当該第1受圧面701aの反対側に形成されると共にスプリング702の付勢力を受ける第2受圧面701bとを有する。また、プランジャ700は、スプール701の第1受圧面701aと対向すると共にB1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1を受ける受圧面700aと、当該受圧面700aの反対側に形成されると共に信号圧入力ポート74に供給された油圧を受ける信号圧受圧面700bとを有する。実施例において、スプール701の第1受圧面701aとプランジャ700の受圧面700aとは、同一の面積を有する。
【0050】
実施例において、B3切替バルブ70の取付状態は、C2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2をブレーキB3に供給可能とする連通状態とされている。すなわち、B3切替バルブ70の取付状態(連通状態)では、スプリング702によってスプール701とプランジャ700とが一体に付勢されて図6中点線で示す状態に維持され、C2/B3切替バルブ60の第2出力ポート68と連通する入力ポート71とブレーキB3の油圧入口と連通する出力ポート72とが連通される。
【0051】
また、上述のように、B3切替バルブ70の信号圧入力ポート74はC2/B3切替バルブ60の第3出力ポート69と連通しており、信号圧入力ポート74には、C2/B3切替バルブ60がクラッチC2にC2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2を供給可能とするC2供給状態を形成しているときに、マニュアルバルブ53からのドライブレンジ圧Pdすなわちライン圧PLが供給される。また、信号圧入力ポート74には、C2/B3切替バルブ60がブレーキB3にC2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2を供給可能とするB3供給状態を形成しているときに、モジュレータバルブ52からのモジュレータ圧Pmodが供給される。更に、実施例では、C2/B3切替バルブ60をC2供給状態からB3供給状態へと切り替えてブレーキB3にC2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2を供給するときに、C2/B3切替バルブ60への信号圧であるソレノイド圧Ps1を出力するようにソレノイドバルブS1が変速ECU21により制御されると共に、予め定められた上述のロックアップクラッチ完全係合圧P1よりも高い値P2(図7参照)のロックアップソレノイド圧Psluを出力するようにロックアップソレノイドバルブSLUが変速ECU21により制御され、ブレーキB3にC2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2が供給されるときには、B3切替バルブ70のスプリング室703にロックアップソレノイドバルブSLUからのロックアップソレノイド圧Psluが供給される。
【0052】
そして、B3切替バルブ70のスプリング702のバネ定数や信号圧入力ポート74に臨むプランジャ700の信号圧受圧面700bの面積、スプリング702の付勢力やロックアップソレノイドバルブSLUからのロックアップソレノイド圧Psluを受けるスプール701の第2受圧面701bの面積は、信号圧入力ポート74にライン圧PLが信号圧として供給されると共にスプリング室703にロックアップクラッチ28によるロックアップの実行に伴ってロックアップソレノイドバルブSLUからのロックアップソレノイド圧Pslu(ロックアップクラッチ完全係合圧P1以下の油圧)が供給されたときに、プランジャ700の信号圧受圧面700bへのライン圧PLの作用によりプランジャ700に付与される推力がスプール701に付与されるスプリング702の付勢力と第2受圧面701bへのロックアップソレノイド圧Psluの作用によりスプール701に付与される推力との和に打ち勝ってプランジャ700およびスプール701を一体に図6中実線で示す状態(遮断排出状態)にすると共に、信号圧入力ポート74にモジュレータ圧Pmodが供給されると共にスプリング室703にロックアップソレノイドバルブSLUからのロックアップソレノイド圧Pslu(ロックアップクラッチ完全係合圧P1よりも高い油圧)が供給されたときに、スプール701に付与されるスプリング702の付勢力とロックアップソレノイド圧Psluの作用によりスプール701に付与される推力との和がモジュレータPmodの作用によりプランジャ700に付与される推力に打ち勝ってスプール701とプランジャ700とを一体に図6中点線で示す状態(連通状態)にするように定められている。
【0053】
更に、実施例では、B3切替バルブ70のスプリング702のバネ定数や、油室704に臨むスプール701の第1受圧面701aの面積と、スプリング702の付勢力やロックアップソレノイドバルブSLUからのロックアップソレノイド圧Psluを受けるスプール701の第2受圧面701bの面積が、C2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2をブレーキB3に供給して当該ブレーキB3を係合させている状態でB1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1が供給されてしまったときに、第1受圧面701aへのB1ソレノイド圧Pslb1の作用によりスプール701に付与される推力がスプール701に付与されるスプリング702の付勢力とロックアップソレノイドバルブSLUからのロックアップソレノイド圧Psluの作用によりスプール701に付与される推力との和に打ち勝ってスプール701を図6中実線で示す状態(遮断排出状態)にするように定められている。
【0054】
これにより、信号圧入力ポート74にライン圧PLが供給されるとき、すなわちC2/B3切替バルブ60がクラッチC2にC2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2を供給可能とするC2供給状態を形成しているとき(1速エンジンブレーキ時以外の前進走行時)には、プランジャ700およびスプール701がスプリング702の付勢力に抗して移動し、B3切替バルブ70は、図6において実線で示す遮断排出状態を形成する。かかる遮断排出状態では、ブレーキB3の油圧入口と連通する出力ポート72がドレンポート73と連通されるので、C2リニアソレノイドバルブSLC2からブレーキB3へのC2ソレノイド圧Pslc2の供給を遮断すると共にブレーキB3から油圧を排出することができる。
【0055】
そして、このようにC2/B3切替バルブ60がC2供給状態を形成した状態(ブレーキB3を係合させていない状態)でブレーキB1を係合させるとき、すなわち第2速あるいは第4速の設定時に、B1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1がB3切替バルブ70の油室704に供給されたり、ロックアップクラッチ28によるロックアップの実行に伴ってロックアップソレノイドバルブSLUからのロックアップソレノイド圧Pslu(ロックアップクラッチ完全係合圧P1以下の油圧)がB1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1と同時にC2/B3切替バルブに供給されたとしても、高圧のライン圧PLによってプランジャ700およびスプール701の移動を規制してB3切替バルブ70をより確実に遮断排出状態に維持することができる。
【0056】
一方、C2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2をブレーキB3に供給して当該ブレーキB3を係合させるとき(1速エンジンブレーキ時)には、B3供給状態を形成するC2/B3切替バルブ60の第3出力ポート69からB3切替バルブ70の信号圧入力ポート74にライン圧PLよりも低圧のモジュレータ圧Pmodが供給されると共にスプリング室703にロックアップソレノイドバルブSLUからのロックアップソレノイド圧Psluが供給される。これにより、スプール701に付与されるスプリング702の付勢力とロックアップソレノイド圧Psluの作用によりスプール701に付与される推力との和がモジュレータPmodの作用によりプランジャ700に付与される推力に打ち勝ってスプール701とプランジャ700とを一体に移動させることから、B3切替バルブ70は、図5において点線で示す連通状態を形成する。かかる連通状態では、ブレーキB3の油圧入口と連通する出力ポート72がC2/B3切替バルブ60の第2出力ポート68と連通する入力ポート71と連通されるので、C2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2をブレーキB3に供給することができる。
【0057】
また、このようにブレーキB3を係合させた状態で何らかの異常が発生してB1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1が油室704に供給されたときには、第1受圧面701aへのB1ソレノイド圧Pslb1の作用によりスプール701に付与される推力がスプール701に付与されるスプリング702の付勢力とロックアップソレノイド圧Psluの作用によりスプール701に付与される推力との和に打ち勝つことから、B1ソレノイド圧Pslb1によりスプール701を図6中実線で示す状態にしてB3切替バルブ70を連通状態から遮断排出状態へと速やかに切り替えることができる。これにより、B1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1によって出力ポート72とドレンポート73とを連通させてブレーキB3から油圧を排出し、当該ブレーキB3の係合を速やかに解除することが可能となる。従って、油圧制御装置50によれば、ブレーキB3を係合させている状態で何らかの異常によりB1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1が油室704に供給されたとしても、ブレーキB3の係合を速やかに解除して、ブレーキB1とブレーキB3との同時係合を良好に抑制することができる。
【0058】
C1切替バルブ80は、図5に示すように、バルブボディ内に軸方向に移動自在に配置されるスプール801と、スプール801を付勢するスプリング802と、C1リニアソレノイドバルブSLC1の出力ポートと油路を介して連通する第1入力ポート81と、電磁ポンプEMOPの吐出ポートと油路L1を介して連通する第2入力ポート82と、C2/B3切替バルブ60の第3出力ポート69と油路を介して連通する保持圧入力ポート83と、B1リニアソレノイドバルブSLB1の出力ポートと油路を介して連通するB1ソレノイド圧入力ポート84と、マニュアルバルブ53のドライブレンジ出力ポートと油路を介して連通するライン圧入力ポート85と、C2/B3切替バルブの第2出力ポート68と油路を介して連通すると共にスプリング802が配置されるスプリング室と連通するポート86と、上記ライン圧入力ポート85と連通可能な中継ポート87と、クラッチC1の油圧入口と油路を介して連通する出力ポート88とを含む。
【0059】
図5に示すように、C1切替バルブ80のスプール801は、スプリング802の付勢力を受ける第1受圧面801aと、軸方向に離間して形成されて互いに対向すると共にそれぞれB1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1を受ける第2受圧面801bおよび801cと、C2/B3切替バルブ60の第3出力ポート69から供給される保持圧としてのライン圧PLまたはモジュレータ圧Pmodを受ける保持圧受圧面801dとを有する。実施例において、B1ソレノイド圧Pslb1を受ける第2受圧面801bおよび801cのうち、保持圧受圧面801d側の第2受圧面801cは、図5に示すように、第1受圧面801a側の第2受圧面801bよりも大きい面積を有している。更に、実施例の油圧制御装置50では、電磁ポンプEMOPの吐出ポートとC1切替バルブ80の第2入力ポート82とを結ぶ油路(第1油路)L1とC1切替バルブ80の中継ポート87とが、中途に逆止弁89を有する油路(第2油路)L2を介して接続されている。逆止弁89は、中継ポート87から油路L1すなわち第2入力ポート82への作動油の流入(油圧の供給)を許容すると共に、油路L1から油路L2すなわち中継ポート87への作動油の流入(油圧の供給)を規制(禁止)するものである。
【0060】
実施例において、C1切替バルブ80の取付状態は、クラッチC1に電磁ポンプEMOPからの油圧Pemopを供給可能とする第2供給状態(図5における左側半分の状態)とされている。すなわち、C1切替バルブ80の取付状態では、スプリング802の付勢力によってスプール801が図中上方に付勢され、それによりC1リニアソレノイドバルブSLC1の出力ポートと連通する第1入力ポート81がスプール801によって閉鎖され、電磁ポンプEMOPの吐出ポートと油路L1を介して連通する第2入力ポート82とクラッチC1の油圧入口と連通する出力ポート88とが連通され、ライン圧入力ポート85と中継ポート87とが連通される。これにより、C1切替バルブ80が第2供給状態を形成するときには、電磁ポンプEMOPからの油圧Pemopを油路L1、第2入力ポート82および出力ポート88を介してクラッチC1に供給したり、C1切替バルブ80のライン圧入力ポート85に供給されたマニュアルバルブ53からのライン圧PLを中継ポート87、油路L2(逆止弁89)、油路L1の一部、第2入力ポート82および出力ポート88を介してクラッチC1に供給したりすることができる。
【0061】
また、C1切替バルブ80の保持圧入力ポート83には、C2/B3切替バルブ60の信号圧入力ポート64にライン圧PLが供給されると共にスプリング室603にソレノイドバルブS1からのソレノイド圧Ps1が供給されないとき、すなわち1速エンジンブレーキ時以外の前進走行時に、C2供給状態を形成するC2/B3切替バルブ60の第3出力ポート69を介して、マニュアルバルブ53からのドライブレンジ圧Pdすなわちライン圧PLが保持圧として供給される。これに対して、C2/B3切替バルブ60の信号圧入力ポート64にライン圧PLが供給された状態でスプリング室603にソレノイド圧Ps1が供給されたとき、すなわち1速エンジンブレーキ時には、C1切替バルブ80の保持圧入力ポート83にB3供給状態を形成するC2/B3切替バルブ60の第3出力ポート69を介してライン圧PLよりも低圧のモジュレータ圧Pmodが保持圧として供給されると共に、C1切替バルブ80のポート86(スプリング室)にB3供給状態を形成するC2/B3切替バルブ60の第2出力ポート68を介してC2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2が供給される。更に、C1切替バルブ80のB1ソレノイド圧入力ポート84には、ブレーキB1の係合時(第2速、第4速の設定時)やB1リニアソレノイドバルブSLB1等に何らかの異常が発生したときにB1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1が供給される。
【0062】
そして、C1切替バルブ80のスプリングのバネ定数や第1受圧面801a、第2受圧面801bおよび801c、並びに保持圧受圧面801dの面積は、保持圧入力ポート83にC2/B3切替バルブ60からライン圧PLが保持圧として供給されたときに、保持圧受圧面801dへのライン圧PLの作用によりスプール801に付与される力が第2受圧面801bおよび801cへのB1ソレノイド圧Pslb1の作用によりスプール801に付与される力とスプール801に付与されるスプリング802の付勢力との和に打ち勝ってスプール801を図5における右側半分の状態(第1供給状態)にすると共に、保持圧入力ポート83にC2/B3切替バルブ60からモジュレータ圧Pmodが保持圧として供給されたときに、保持圧受圧面801dへのモジュレータ圧Pmodの作用によりスプール801に付与される力がスプール801に付与されるスプリング802の付勢力と第1受圧面801aへのC2ソレノイド圧Pslc2の作用によりスプール801に付与される力との和に打ち勝ってスプール801を図5における右側半分の状態(第1供給状態)にするように定められている。
【0063】
こうしてC1切替バルブ80が第1供給状態を形成するときには、C1リニアソレノイドバルブSLC1の出力ポートと連通する第1入力ポート81とクラッチC1の油圧入口と連通する出力ポート88とが連通され、ライン圧入力ポート85がスプール801により閉鎖され、電磁ポンプEMOPの吐出ポートと連通する第2入力ポート82および中継ポート87がドレンポートと連通される。これにより、C1切替バルブ80が第1供給状態を形成するときには、クラッチC1にC1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイド圧Pslc1を供給して当該クラッチC1を係合させると共に、電磁ポンプEMOPからの油圧Pemopやマニュアルバルブ53(プライマリレギュレータバルブ51)からのライン圧PLがクラッチC1に供給されないようにすることができる。
【0064】
更に、実施例では、C1切替バルブ80のスプリングのバネ定数や第1受圧面801a、第2受圧面801bおよび801c、並びに保持圧受圧面801dの面積が、保持圧入力ポート83にC2/B3切替バルブ60からモジュレータ圧Pmodが保持圧として供給された状態でB1ソレノイド圧入力ポート84にB1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1が供給されたときに、スプール801に付与されるスプリング802の付勢力と第1受圧面801aへのC2ソレノイド圧Pslc2の作用によりスプール801に付与される力と第2受圧面801bおよび801cへのB1ソレノイド圧Pslb1の作用によりスプール801に付与される力との和が保持圧受圧面801dへのモジュレータ圧Pmodの作用によりスプール801に付与される力に打ち勝ってスプール801を図5における左側半分の状態(第2供給状態)にするように定められている。
【0065】
引き続き、動力伝達装置20を搭載した自動車10の運転者により前進走行シフトレンジが選択されているときの油圧制御装置50の動作について説明する。
【0066】
運転者によりドライブレンジ等の前進走行シフトレンジが選択されているときには、エンジン12が運転されると共にオイルポンプ29がエンジン12からの動力により駆動されることから、プライマリレギュレータバルブ51によりライン圧PLが生成され、モジュレータバルブ52により一定のモジュレータ圧Pmodが生成される。そして、油圧制御装置50が正常に作動している状態での1速エンジンブレーキ時以外の前進走行時には、C1切替バルブ80の保持圧入力ポート83にC2供給状態を形成するC2/B3切替バルブ60の第3出力ポート69を介してマニュアルバルブ53からのドライブレンジ圧Pdすなわちライン圧PLが保持圧として供給される。従って、保持圧入力ポート83にライン圧PLが保持圧として供給されるときに、C1切替バルブ80は、B1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1の有無に拘わらずC1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイド圧Pslc1をクラッチC1に供給可能とする第1供給状態を形成し、それによりクラッチC1にC1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイド圧Pslc1を供給して当該クラッチC1を係合させることが可能となる。
【0067】
また、油圧制御装置50が正常に作動している状態での1速エンジンブレーキ時には、B3供給状態を形成するC2/B3切替バルブ60の第3出力ポート69を介してライン圧PLよりも低圧のモジュレータ圧PmodがC1切替バルブ80の保持圧入力ポート83に保持圧として供給されると共に、C2/B3切替バルブ60の第2出力ポート68を介してC2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2がポート86(スプリング室)に供給される。このように保持圧入力ポート83にライン圧PLよりも低圧のモジュレータ圧Pmodが保持圧として供給されるときにも、C1切替バルブ80は、B1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1がB1ソレノイド圧入力ポート84に供給されない限り、第1供給状態を形成し、それによりクラッチC1にC1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイド圧Pslc1を供給して当該クラッチC1を係合させることが可能となる。
【0068】
このように、C1リニアソレノイドバルブSLC1から正常にC1ソレノイド圧Pslc1が供給されるときにC1切替バルブ80に保持圧としてライン圧PLが供給されれば、C1切替バルブ80はB1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1の有無に拘わらず第1供給状態に維持され、保持圧としてモジュレータ圧Pmodが供給されてもB1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1が供給されない限り、C1切替バルブ80は第1供給状態に維持される。従って、実施例の油圧制御装置50では、C1リニアソレノイドバルブSLC1からC1ソレノイド圧Pslc1が正常に供給されるときに、C1切替バルブ80が第1供給状態から第2供給状態へと切り替えられてライン圧入力ポート85と中継ポート87とが連通されるのをより確実に抑制することができる。この結果、C1リニアソレノイドバルブSLC1からC1ソレノイド圧Pslc1が正常に供給されるときに、誤ってマニュアルバルブ53(プライマリレギュレータバルブ51)からのライン圧PLがクラッチC1に供給されることを抑制して、油圧供給の切替に伴うショックの発生を良好に抑制すると共に、油路L2(逆止弁89)および油路L1を介してライン圧が電磁ポンプEMOPに作用して当該電磁ポンプEMOP(内部の構成部品)に悪影響を与えてしまうのを良好に抑制することが可能となる。
【0069】
一方、例えば信号待ちに伴う自動車10の停車時等には、エンジンECU14により自動始動停止処理が実行されてエンジン12の運転が停止される。この際、エンジン12の運転停止に伴ってオイルポンプ29の駆動が停止されることからライン圧PLおよびモジュレータ圧Pmodが低下し、自動変速機30の第1速(および第2速)の設定時に係合される発進クラッチとしてのクラッチC1に対応したC1リニアソレノイドバルブSLC1も油圧(C1ソレノイド圧Pslc1)を生成し得なくなる。このため、実施例のC1切替バルブ80は、取付状態がクラッチC1に電磁ポンプEMOPからの油圧Pemopを供給可能とする第2供給状態となるように構成されている。すなわち、オイルポンプ29の駆動が停止されると、C1切替バルブ80の保持圧入力ポート83に供給されるライン圧PLまたはモジュレータ圧Pmodが低下することから、C1切替バルブ80はスプリング802の付勢力により取付状態(第2供給状態)へと戻り、それにより、電磁ポンプEMOPの吐出ポートと油路L1を介して連通する第2入力ポート82とクラッチC1の油圧入口と連通する出力ポート88とが連通される。
【0070】
これにより、電磁ポンプEMOPからの油圧PemopをC1切替バルブ80を介してクラッチC1へと供給可能となり、運転者によりドライブレンジ等の前進走行シフトレンジが選択されているときにエンジン12が運転停止されても、電磁ポンプEMOPからの油圧Pemopを発進クラッチであるクラッチC1に供給して自動変速機30を発進待機状態に保つことができる。なお、実施例の自動車10において、エンジン12が運転されると共にドライブレンジ等の前進走行シフトレンジが選択されているときには、電磁ポンプEMOPにより油圧が発生されることはない。また、エンジン12が再始動されてオイルポンプ29がエンジン12からの動力により駆動されると、保持圧として供給されるライン圧PLやモジュレータ圧Pmodにより、C1切替バルブ80は、第2供給状態から第1供給状態へと切り替えられる。
【0071】
ここで、上述の油圧制御装置50において、C1リニアソレノイドバルブSLC1の故障やC1リニアソレノイドバルブSLC1の出力ポートとC1切替バルブ80の第1入力ポート81との間の油路の閉塞といったC1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイド圧Pslc1の供給状態に異常が発生すると、クラッチC1にC1ソレノイド圧Pslc1を供給し得なくなる。従って、何ら対策が施されていないと、C1リニアソレノイドバルブSLC1から正常に油圧が供給されない異常時にクラッチC1を係合させることができなくなり、自動車10の発進・走行に支障をきたすおそれがある。
【0072】
このため、実施例の変速ECU21は、自動車10のイグニッションスイッチがオンされている間、図示しない圧力センサの検出値等に基づいてC1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイド圧Pslc1の供給状態に異常が発生したか否かを判定しており、C1ソレノイド圧Pslc1の供給状態に異常が発生していると判断すると、エンジン12が運転されていること、すなわちオイルポンプ29が駆動されていることを条件に、C2/B3切替バルブ60およびロックアップリレーバルブ56に対する信号圧としてのソレノイド圧Ps1がソレノイドバルブS1により出力されていなければ(1速エンジンブレーキ時以外)当該ソレノイド圧Ps1を出力するようにソレノイドバルブS1を制御すると共に、常用上限圧が比較的低いB1リニアソレノイドバルブSLB1から当該常用上限圧およびモジュレータ圧Pmodよりも高く、かつB1リニアソレノイドバルブSLB1の最高出力圧以下に定められた値(例えば最高出力圧)のB1ソレノイド圧(切替圧)Pslb1を出力するようにB1リニアソレノイドバルブSLB1を制御する。
【0073】
このようにソレノイドバルブS1およびB1リニアソレノイドバルブSLB1を制御することで、C2/B3切替バルブ60はB3供給状態を形成し、C1切替バルブ80の保持圧入力ポート83にはライン圧PLよりも低圧のモジュレータ圧Pmodが保持圧として供給されると共に、C2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2がポート86(スプリング室)に供給され、更にB1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1(切替圧)がB1ソレノイド圧入力ポート84に供給される。そして、スプール801に付与されるスプリング802の付勢力と第1受圧面801aへのC2ソレノイド圧Pslc2の作用によりスプール801に付与される力と第2受圧面801bおよび801cへのB1ソレノイド圧Pslb1の作用によりスプール801に付与される力との和が保持圧受圧面801dへのモジュレータ圧Pmodの作用によりスプール801に付与される力に打ち勝つことで、C1切替バルブ80は、上述の第1供給状態を形成する。
【0074】
これにより、C1切替バルブ80のライン圧入力ポート85に供給されたマニュアルバルブ53からのライン圧PLを中継ポート87、油路L2(逆止弁89)、油路L1の一部、第2入力ポート82および出力ポート88を介してクラッチC1へと供給して当該クラッチC1を係合させることが可能となる。また、こうして電磁ポンプEMOPとC1切替バルブ80とを結ぶ油路L1の一部を利用してライン圧入力ポート85に供給されたマニュアルバルブ53からのライン圧PLをクラッチC1へと供給可能にすることで、油路の増加ひいてはコストアップや装置の大型化を抑制することができる。なお、B1ソレノイド圧Pslb1が上述の切替圧に設定されると、シャトルバルブ54からB1ソレノイド圧Pslb1が最大圧力Pmaxとしてプライマリレギュレータバルブ51に供給されるので、当該プライマリレギュレータバルブ51により生成されるライン圧PL自体も高まることになる。
【0075】
この結果、動力伝達装置20を搭載した自動車10では、1速走行中にC1リニアソレノイドバルブSLC1からクラッチC1に正常に油圧が供給されなくなる異常が発生しても、上述のようにソレノイドバルブS1およびB1リニアソレノイドバルブSLB1を制御することにより自動変速機30により第2速が設定されるので、自動車10の前進走行を充分に保障することができる。また、2速走行中にC1リニアソレノイドバルブSLC1からクラッチC1に正常に油圧が供給されなくなる異常が発生しても、上述のようにソレノイドバルブS1を制御すると共にB1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1を上記切替圧まで増圧させることにより自動変速機30により第2速が継続して設定されるので、自動車10の前進走行を充分に保障することができる。
【0076】
更に、3速走行中にC1リニアソレノイドバルブSLC1からクラッチC1に正常に油圧が供給されなくなる異常が発生しても、上述のようにソレノイドバルブS1およびB1リニアソレノイドバルブSLB1を制御することにより、C2/B3切替バルブ60をC2供給状態からB3供給状態へと切り替えると共にB1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1の入力によりB3切替バルブ70を遮断排出状態へと切り替えることができる。これにより、クラッチC2の係合が解除されると共にブレーキB3の係合が阻止されて自動変速機30により第2速が設定されるので、自動車10の前進走行を充分に保障することができる。また、4速走行中にC1リニアソレノイドバルブSLC1からクラッチC1に正常に油圧が供給されなくなる異常が発生したときには、車速(エンジン12の回転数)がある程度低下した段階で上述のようにソレノイドバルブS1を制御すると共にB1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1を上記切替圧まで増圧させることにより自動変速機30により第2速が設定されるので、自動車10の前進走行を充分に保障することができる。そして、自動車10の停車前あるいは停車中にC1リニアソレノイドバルブSLC1からクラッチC1に正常に油圧が供給されなくなる異常が発生しても、上述のようにソレノイドバルブS1およびB1リニアソレノイドバルブSLB1を制御することで自動変速機30により第2速が設定されるので、自動車10の発進を充分に保障することができる。
【0077】
以上説明したように、実施例の油圧制御装置50は、C1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイド圧Pslc1をクラッチC1に供給可能とする第1供給状態と、マニュアルバルブ53(プライマリレギュレータバルブ51)からのライン圧PLをクラッチC1に供給可能とする第2供給状態とを形成可能であり、第1供給状態を保持するための保持圧としてライン圧(第1油圧)PLとモジュレータ圧(第2油圧)Pmodとを選択的に入力すると共に、C1リニアソレノイドバルブSLC1から正常に油圧が供給されない異常時にクラッチC1と同時係合されるブレーキB1に対応したB1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1を入力することができるC1切替バルブ80を備えている。また、C1切替バルブ80は、保持圧としてライン圧PLが供給されるときにB1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1の有無に拘わらず第1供給状態を形成し、保持圧としてモジュレータ圧Pmodが供給されると共にB1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1が供給されないときに第1供給状態を形成し、保持圧としてモジュレータ圧Pmodが供給されると共にB1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1が供給されるときに第2供給状態を形成する。そして、C1リニアソレノイドバルブSLC1から正常に油圧が供給されない異常時には、保持圧としてライン圧よりも低圧のモジュレータ圧PmodがC1切替バルブ80に供給される。
【0078】
このように、上記異常時にC1切替バルブ80に保持圧としてライン圧PLよりも低圧のモジュレータ圧Pmodを供給することで、B1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1によりC1切替バルブ80を第1供給状態から第2供給状態へと速やかに切り替えてプライマリレギュレータバルブ51からのライン圧PLをクラッチC1に供給し、クラッチC1とブレーキB1とを同時係合させることが可能となる。また、C1リニアソレノイドバルブSLC1から正常にC1ソレノイド圧Pslc1が供給されるときに、C1切替バルブ80に保持圧としてライン圧PLが供給されれば、C1切替バルブ80はB1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1の有無に拘わらず第1供給状態に維持され、1速エンジンブレーキ時に保持圧としてモジュレータ圧Pmodが供給されてもB1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1が供給されない限り、C1切替バルブ80は第1供給状態に維持される。従って、実施例の油圧制御装置50によれば、C1リニアソレノイドバルブSLC1から正常に油圧が供給されない異常時にC1リニアソレノイドバルブSLC1に対応したクラッチC1にプライマリレギュレータバルブ51からのライン圧PLを供給可能としつつ、C1リニアソレノイドバルブSLC1からC1ソレノイド圧Pslc1が正常に供給されるときにプライマリレギュレータバルブ51からのライン圧PLがクラッチC1に供給されないようにすることが可能となる。この結果、C1リニアソレノイドバルブSLC1からC1ソレノイド圧Pslc1が正常に供給されるときに、誤ってプライマリレギュレータバルブ51からのライン圧PLがクラッチC1に供給されることを抑制して、油圧供給の切替に伴うショックの発生を良好に抑制することができる。そして、C1リニアソレノイドバルブSLC1から油圧が正常に供給されるときに基本的にC1切替バルブ80に保持圧としてライン圧PLを供給することで、C1切替バルブ80をより確実に第1供給状態に維持して、プライマリレギュレータバルブ51からのライン圧PLがクラッチC1に供給されないようにすることが可能となる。
【0079】
更に、実施例の油圧制御装置50では、C1リニアソレノイドバルブSLC1から正常にC1ソレノイド圧Pslc1が供給されない異常時に、ソレノイドバルブS1からのソレノイド圧(信号圧)Ps1によりC2/B3切替バルブ60が第2状態を形成する。これにより、C2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2がブレーキB3に供給可能となると共にクラッチC2から油圧を排出可能となり、C2/B3切替バルブ60からモジュレータ圧PmodがC1切替バルブ80に保持圧として供給されると共にモジュレータ圧PmodがB3切替バルブ70に信号圧として供給される。これにより、上記異常時に、C1切替バルブ80に保持圧としてライン圧PLよりも低圧のモジュレータ圧を供給することが可能となる。また、C2/B3切替バルブ60が第2状態を形成すると、C2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2がブレーキB3に供給可能となり、B3切替バルブ70は、信号圧としてモジュレータ圧Pmodが供給されることによりC2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2をブレーキB3に供給可能とする連通状態を形成するが、連通状態にあるB3切替バルブ70にB1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1が供給されると、B3切替バルブ70は、C2リニアソレノイドバルブSLC2からブレーキB3への油圧の供給を遮断すると共にブレーキB3から油圧を排出可能とする遮断排出状態を形成する。従って、C1リニアソレノイドバルブSLC1から正常に油圧が供給されなくなったのに伴ってB1リニアソレノイドバルブSLB1からB1ソレノイド圧Pslb1が出力されても、ブレーキB1とブレーキB3とが同時係合されてしまうことはない。
【0080】
また、上記実施例において、C1切替バルブ80は、軸方向に移動自在に配置されると共に第1供給状態と第2供給状態とを形成可能なスプール801と、スプール801を付勢するスプリング802とを含むものであり、スプール801は、スプリング802の付勢力を受ける第1受圧面801aと、軸方向に離間して形成されて互いに対向すると共にそれぞれB1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1を受ける第2受圧面801bおよび801cと、保持圧としてのライン圧PLまたはモジュレータ圧Pmodを受ける保持圧受圧面801dとを有する。そして、C2/B3切替バルブ60が上記第2状態を形成したときに、C1切替バルブ80のスプール801の第1受圧面801aには、C2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2が作用させられる。
【0081】
これにより、C1リニアソレノイドバルブSLC1から正常にC1ソレノイド圧Pslc1が供給されない異常時にスプール801の第1受圧面801aにC2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2が作用するので、C1切替バルブ80は、第1受圧面801aへのC2ソレノイド圧Pslc2の作用によりスプール801に付与される推力と第2受圧面801bおよび801cへのB1ソレノイド圧Pslb1の作用によりスプール801に付与される推力とスプール801に付与されるスプリング802の付勢力との和が保持受圧面へのモジュレータ圧Pmodの作用によりスプール801に付与される推力に打ち勝つことで第2供給状態を形成する。従って、実施例の油圧制御装置」50によれば、C1切替バルブ80を第2供給状態にするときにスプリング802に要求される付勢力(剛性)を低下させることが可能となり、それによりC1リニアソレノイドバルブSLC1からC1ソレノイド圧Pslc1が正常に供給されるときにC1切替バルブ80に保持圧として供給されるライン圧PLやモジュレータ圧Pmodにより当該C1切替バルブ80をより確実に第1供給状態に維持することができる。ただし、スプリング802の剛性によっては、スプール801の第1受圧面801aにC2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2を作用させなくてもよい。また、スプール801に第2受圧面801bおよび801cを形成する代わりに、ポート86(スプリング室)にB1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1が供給されるようにC1切替バルブ80を構成してスプール801の第1受圧面801aをB1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1を受ける第2受圧面として兼用してもよい。
【0082】
更に、上記実施例において、クラッチC1は少なくとも自動変速機30の第1速および第2速が設定されるときに係合されるものであり、ブレーキB1は少なくとも自動変速機30の第2速が設定されるときに係合されるものである。従って、上記実施例の油圧制御装置50によれば、C1リニアソレノイドバルブSLC1から正常にC1ソレノイド圧Pslc1が供給されない異常時に、プライマリレギュレータバルブ51からのライン圧PLによりクラッチC1を係合させると共にブレーキB1を係合させて第2速での車両の発進・前進走行を保障することができる。
【0083】
そして、実施例の油圧制御装置50によれば、エンジン12の運転が停止されてオイルポンプ29により油圧が発生されなくなり、C1リニアソレノイドバルブSLC1によりクラッチC1へのC1ソレノイド圧Pslc1が供給されなくなるときに、C1切替バルブ80を第2供給状態へと切り替えると共に電磁ポンプEMOPを作動させることで、電磁ポンプEMOPからの油圧PemopをクラッチC1に供給することが可能となる。また、電磁ポンプEMOPとC1切替バルブ80とを結ぶ油路L1の一部を利用してプライマリレギュレータバルブ51からのライン圧PLをクラッチC1へと供給可能にすることで、油路の増加ひいてはコストアップや装置の大型化を抑制することができる。そして、上記実施例の油圧制御装置50は、上述のようにC1リニアソレノイドバルブSLC1からC1ソレノイド圧Pslc1が正常に供給されるときに、誤ってプライマリレギュレータバルブ51からのライン圧PLがクラッチC1に供給されることを抑制可能なものであることから、C1リニアソレノイドバルブSLC1からC1ソレノイド圧Pslc1が正常に供給されるときに油路L2および油路L1を介してライン圧PLが電磁ポンプEMOPに作用して当該電磁ポンプEMOPに悪影響を与えてしまうのを良好に抑制することができる。
【0084】
なお、上記実施例のように電磁ポンプEMOPを用いることにより、油圧制御装置50ひいては動力伝達装置20の全体をより小型化することが可能となるが、電磁ポンプEMOPの代わりに電動ポンプを採用してもよいことはいうまでもない。また、実施例の油圧制御装置50では、油路L2に逆止弁89が設けられているが、逆止弁89の代わりに、例えばC1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイド圧Pslc1の供給状態に異常が発生したと判断されたときに開とされる開閉弁を油路L2に配置してもよい。
【0085】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。すなわち、上記実施例では、フロントカバー18に付与された動力を複数のクラッチC1,C2およびブレーキB1素の係脱により変速比を複数段に変更してアウトプットシャフト37に伝達可能な自動変速機30の油圧制御装置50が「油圧制御装置」に相当し、クラッチC1に供給されるC1ソレノイド圧Pslc1を調圧するC1リニアソレノイドバルブSLC1が「第1調圧バルブ」に相当し、C1リニアソレノイドバルブSLC1から正常にC1ソレノイド圧Pslc1が供給されない異常時にクラッチC1と同時係合されるブレーキB1に供給されるB1ソレノイド圧Pslb1を調圧するB1リニアソレノイドバルブSLB1が「第2調圧バルブ」に相当し、オイルポンプ29からの油圧を調圧してライン圧PLを生成するプライマリレギュレータバルブ51が「ライン圧生成バルブ」に相当し、C1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイド圧Pslc1をクラッチC1に供給可能とする第1供給状態と、プライマリレギュレータバルブ51からのライン圧PLをクラッチC1に供給可能とする第2供給状態とを形成可能であり、第1供給状態を保持するための保持圧としてのライン圧PLまたはモジュレータ圧PmodとB1リニアソレノイドバルブSLB1からの油圧とを入力可能なC1切替バルブ80が「切替バルブ」に相当し、正常時にブレーキB1と同時係合されることがないブレーキB3に供給されるC2ソレノイド圧Pslc2を調圧するC2リニアソレノイドバルブSLC2が「第3調圧バルブ」に相当し、C2リニアソレノイドバルブSLC2からブレーキB3へのC2ソレノイド圧Pslc2の供給を遮断すると共にブレーキB3から油圧を排出可能とする遮断排出状態と、C2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2をブレーキB3に供給可能とする連通状態とを形成可能であると共に、遮断排出状態および連通状態を形成するための信号圧であるライン圧PLまたはモジュレータ圧PmodとB1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1とを入力可能なB3切替バルブ70が「第2切替バルブ」に相当し、C2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2をブレーキB3と同時係合されることがないクラッチC2に供給可能とする第1状態と、C2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2をブレーキB3に供給可能とすると共にクラッチC2から油圧を排出可能とする第2状態とを形成可能なC2/B3切替バルブ60が「第3切替バルブ」に相当し、ブレーキB3にC2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイド圧Pslc2を供給するとき、および上記異常時にC2/B3切替バルブ60を第1状態から第2状態へと切り替えるための信号圧であるソレノイド圧Ps1を出力するソレノイドバルブS1が「信号圧出力バルブ」に相当し、軸方向に移動自在に配置されると共に第1供給状態と第2供給状態とを形成可能なスプール801が「スプール」に相当し、スプール801を付勢するスプリング802が「スプリング」に相当し、スプリング802の付勢力を受ける第1受圧面801aが「第1受圧面」に相当し、B1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイド圧Pslb1を受ける第2受圧面801bおよび801cが「第2受圧面」に相当し、保持圧としてライン圧PLまたはモジュレータ圧Pmodを受ける保持圧受圧面801dが「保持圧受圧面」に相当し、電力により駆動される電磁ポンプEMOPが「第2油圧発生源」に相当し、エンジン12からの動力により駆動される機械式のオイルポンプ29が「油圧発生源」や「機械式ポンプ」に相当し、油路L1が「第1油路」に相当し、油路L2が「第2油路」に相当し、逆止弁89が「バルブ」に相当する。
【0086】
ただし、実施例等の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載された発明の主要な要素との対応関係は、実施例等が課題を解決するための手段の欄に記載された発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。すなわち、実施例等はあくまで課題を解決するための手段の欄に記載された発明の具体的な一例に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載された発明の解釈は、その欄の記載に基づいて行なわれるべきものである。
【0087】
以上、実施例を用いて本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、油圧制御装置の製造産業において利用可能である。
【符号の説明】
【0089】
10 自動車、12 エンジン、14 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、15 ブレーキ用電子制御ユニット(ブレーキECU)、16 クランクシャフト、18 フロントカバー、20 動力伝達装置、21 変速用電子制御ユニット(変速ECU)、22 トランスミッションケース、23 流体伝動装置、23a 流体伝動室、23b ロックアップ室、24 ポンプインペラ、25 タービンランナ、26 ステータ、27 ワンウェイクラッチ、28 ロックアップクラッチ、28p ロックアップピストン、29 オイルポンプ、30 自動変速機、31 インプットシャフト、32 ラビニヨ式遊星歯車機構、33a,33b サンギヤ、34 リングギヤ、35a ショートピニオンギヤ、35b ロングピニオンギヤ、36 キャリア、37 アウトプットシャフト、38 ギヤ機構、39 差動機構、50 油圧制御装置、51 プライマリレギュレータバルブ、52 モジュレータバルブ、53 マニュアルバルブ、54 シャトルバルブ、55 ロックアップ制御バルブ、56 ロックアップリレーバルブ、59 安全弁、60 C2/B3切替バルブ、61 入力ポート、62 C2ドレンポート、63 B3ドレンポート、64 信号圧入力ポート、65 ライン圧入力ポート、66 モジュレータ圧入力ポート、67 第1出力ポート、68 第2出力ポート、69 第3出力ポート、70 B3切替バルブ、71 入力ポート、72 出力ポート、73 ドレンポート、74 信号圧入力ポート、80 C1切替バルブ、81 第1入力ポート、82 第2入力ポート、83 保持圧入力ポート、84 B1ソレノイド圧入力ポート、85 ライン圧入力ポート、86 ポート、87 中継ポート、88 出力ポート、89 逆止弁、91 アクセルペダル、92 アクセルペダルポジションセンサ、93 ブレーキペダル、94 マスタシリンダ圧センサ、95 シフトレバー、96 シフトレンジセンサ、99 車速センサ、601,701,801 スプール、602,702,802 スプリング、603,703 スプリング室、700 プランジャ、700a 受圧面、700b 信号圧受圧面、701a,801a 第1受圧面、701b,801b,801c 第2受圧面、704 油室、801d 保持圧受圧面、B1,B3 ブレーキ、C1,C2,C3 クラッチ、DW 駆動輪、EMOP 電磁ポンプ、F2 ワンウェイクラッチ、L1,L2 油路、S1 ソレノイドバルブ、SLB1 B1リニアソレノイドバルブ、SLC1 C1リニアソレノイドバルブ、S1 ソレノイドバルブ、SLC2 C2リニアソレノイドバルブ、SLU ロックアップソレノイドバルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部材に付与された動力を複数の油圧式摩擦係合要素の係脱により変速比を複数段に変更して出力部材に伝達可能な変速装置の油圧制御装置において、
第1油圧式摩擦係合要素に供給される油圧を調圧する第1調圧バルブと、
第2油圧式摩擦係合要素に供給される油圧を調圧する第2調圧バルブと、
油圧発生源からの油圧を調圧してライン圧を生成するライン圧生成バルブと、
前記第1調圧バルブが正常であるときに該第1調圧バルブからの油圧を前記第1油圧式摩擦係合要素に供給可能とする第1供給状態を形成可能であると共に、前記第1調圧バルブから正常に油圧が供給されない異常時に前記ライン圧生成バルブからの前記ライン圧を前記第1油圧式摩擦係合要素に供給可能な切替バルブとを備え、
前記切替バルブには、保持圧として第1油圧と該第1油圧よりも低圧の第2油圧とが選択的に供給されると共に、前記異常時に前記保持圧として前記第2油圧が供給されると共に前記第2調圧バルブからの油圧が供給され、
前記切替バルブは、前記保持圧として前記第1油圧が供給されるときに前記第2調圧バルブからの油圧の有無に拘わらず前記第1供給状態を形成し、前記保持圧として前記第2油圧が供給されると共に前記第2調圧バルブからの油圧が供給されないときに前記第1供給状態を形成し、前記保持圧として前記第2油圧が供給されると共に前記第2調圧バルブからの油圧が供給されるときに前記第2供給状態を形成することを特徴とする油圧制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧制御装置において、
前記第1油圧は、前記ライン圧であり、前記第2油圧は、前記ライン圧を減圧して得られるモジュレータ圧であることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の油圧制御装置において、
正常時に前記第2油圧式摩擦係合要素と同時係合されることがない第3油圧式摩擦係合要素に供給される油圧を調圧する第3調圧バルブと、
前記第3調圧バルブから前記第3油圧式摩擦係合要素への油圧の供給を遮断すると共に該第3油圧式摩擦係合要素から油圧を排出可能とする遮断排出状態と、前記第3調圧バルブからの油圧を前記第3油圧式摩擦係合要素に供給可能とする連通状態とを形成可能であると共に、前記遮断排出状態および前記連通状態を形成するための信号圧と前記第2調圧バルブからの油圧とを入力可能な第2切替バルブと、
前記第3調圧バルブからの油圧を正常時に前記第3油圧式摩擦係合要素と同時係合されることがない第4油圧式摩擦係合要素に供給可能とする第1状態と、前記第3調圧バルブからの油圧を前記第3油圧式摩擦係合要素に供給可能とすると共に前記第4油圧式摩擦係合要素から油圧を排出可能とする第2状態とを形成可能な第3切替バルブと、
前記第3油圧式摩擦係合要素に前記第3調圧バルブからの油圧を供給するとき、および前記異常時に前記第3切替バルブを前記第1状態から前記第2状態へと切り替えるための信号圧を出力する信号圧出力バルブとを更に備え、
前記第3切替バルブは、前記ライン圧と前記モジュレータ圧とを入力可能であり、前記第1状態を形成したときに前記ライン圧を前記切替バルブに前記保持圧として供給すると共に該ライン圧を前記第2切替バルブに前記信号圧として供給し、前記第2状態を形成したときに前記モジュレータ圧を前記切替バルブに前記保持圧として供給すると共に該モジュレータ圧を前記第2切替バルブに前記信号圧として供給し、
前記第2切替バルブは、前記信号圧として前記ライン圧が供給されるときに前記遮断排出状態を形成すると共に、前記信号圧として前記モジュレータ圧が供給されるときに前記連通状態を形成し、該連通状態で前記第2調圧バルブからの油圧を入力したときに前記遮断排出状態を形成することを特徴とする油圧制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の油圧制御装置において、
前記切替バルブは、軸方向に移動自在に配置されると共に前記第1供給状態と前記第2供給状態とを形成可能なスプールと、該スプールを付勢するスプリングとを含み、
前記スプールは、前記スプリングの付勢力を受ける第1受圧面と、前記第2調圧バルブからの油圧を受ける第2受圧面と、前記保持圧を受ける保持圧受圧面とを有することを特徴とする油圧制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の油圧制御装置において、
前記第3切替バルブが前記第2状態を形成したときに、前記スプールの前記第1受圧面には前記第3調圧バルブからの油圧が作用することを特徴とする油圧制御装置。
【請求項6】
請求項1から4の何れかに一項に油圧制御装置において、
前記第1油圧式摩擦係合要素は、少なくとも前記変速装置の第1速および第2速が設定されるときに係合され、
前記第2油圧式摩擦係合要素は、少なくとも前記変速装置の前記第2速が設定されるときに係合されることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載の油圧制御装置において、
電力により駆動される第2油圧発生源を更に備え、
前記油圧発生源は、原動機からの動力により駆動される機械式ポンプであり、
前記第1調圧バルブは、前記ライン圧生成バルブからのライン圧を調圧して第1油圧式摩擦係合要素に供給される油圧を生成し、
前記切替バルブは、第1油路を介して前記第2油圧発生源からの油圧を入力可能であると共に、前記第2供給状態を形成したときに前記第2油圧発生源からの油圧を前記第1油圧式摩擦係合要素に供給可能に構成されており、
前記切替バルブが前記第2供給状態を形成したときに、前記ライン圧生成バルブからの前記ライン圧は、前記第1油路と接続されると共に前記第2油圧発生源からの油圧の流入を規制するバルブを中途に有する第2油路と前記第1油路とを経由して前記第1油圧式摩擦係合要素に供給されることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の油圧制御装置において、
前記第2油圧発生源は、電力により駆動される電動ポンプあるいは電磁ポンプであることを特徴とする油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−207722(P2012−207722A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74004(P2011−74004)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】