説明

洗浄処理装置及び半導体装置の製造方法

【課題】薬液循環型の基板洗浄処理装置の薬液中のCuイオン濃度の上昇を防止する。
【解決手段】被処理基板を薬液4を用いて洗浄する処理チャンバ1と、薬液4を循環させる循環機構とを有する洗浄処理装置において、循環機構又は処理チャンパ内に、薬液4に接触するアルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属板5を着脱可能に設置する。薬液4中のCuイオンが金属板5のAlと交換して、Cuが金属板5表面に析出し、薬液中のCuイオンが除去される。金属板5は、塵埃を発生せず、安価かつ着脱容易であるから、製造コストが低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理基板を循環する薬液を用いて洗浄する洗浄処理装置及びかかる洗浄工程を有する半導体装置の製造方法に関し、とくに薬液中に溶解するCuイオン及びその他の有害イオンを除去することができる洗浄処理装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路に代表される半導体装置の製造工程では、アルカリ系又は酸系の薬剤を用いた洗浄工程が頻繁になされる。例えば、ハロゲン系ガスによるプラズマエッチングによる配線のパターニング工程あるいはフッ酸系薬液を用いた絶縁膜のエッチング工程では、Cl又はFを含む反応生成物が基板上に形成された配線の上面又は側面に付着する。この基板を大気中に放置すると、これらの反応生成物は大気中の水分と反応して塩酸又はフッ酸を生成し、配線の腐蝕、即ちAl配線のコロージョンを引き起こす。かかる反応生成物に起因する配線の腐蝕を防止するため、反応生成物を薬液(例えば、剥離薬液)を用いて除去する洗浄工程が必要とされている。
【0003】
この反応生成物の洗浄工程に用いられる薬液は高価であるため、通常は薬液を循環して繰り返し使用する。以下、かかる薬液を循環させる循環機構を有する従来の洗浄処理装置を説明する。
【0004】
図5は従来の洗浄処理装置構成図であり、薬液循環型の洗浄処理装置の主要な装置構成を表している。
【0005】
図5を参照して、従来の洗浄処理装置は、処理チャンバ1と、処理チャンバ1から排出される薬液4を循環させて再供給する循環機構とを備える。処理チャンバ1は、その内部に被処理基板(図示せず)を収納し、薬液4をシャワー状に散布して被処理基板に付着した反応生成物を剥離し洗浄する。
【0006】
循環機構は、ポンプ2、薬液タンク3及びフィルタ6を備え、これらの装置2、3、6及び処理チャンバ1間を配管11により接続する。処理チャンバ1内で洗浄に用いられた薬液4は、処理チャンバ1からポンプにより薬液タンク3に送出される。さらに、薬液タンク3内の薬液4は、微小粒子を濾過するフィルタ6を通過して精製され、再び処理チャンバ1に送出される。この薬液4を循環させさて使用する循環型の洗浄処理装置では、高価な薬液4を繰り返し使用できるので、薬液4の購入及び廃棄のコストを大きく低減することができる。
【0007】
しかし、かかる循環型の洗浄処理装置には、半導体装置の製造にとって有害な金属イオン、とくにCuイオンが蓄積し、半導体装置の信頼性を損ねるという問題がある。
【0008】
即ち、半導体装置の配線には、通常、Al配線が用いられている。このAl配線は、エレクトロマイグレーションを防ぐため、Al−Cu合金が用いられる。或いは、エレクトロマイグレーションが危惧される配線にはCu配線を用い、残りをAl配線とすることもある。このようなCuを含む配線のパターニングにより生成した反応生成物には、多くのCuが含まれる。このため、反応生成物を剥離し洗浄するために用いられた薬液4には、反応生成物に含有されているCuが溶け込み、薬液4中にCuイオンとして溶解する。
【0009】
反応生成物の破片等の微粒子及び有機物は、循環機構内に設けられたフィルター6によりかなりの部分が除去される。しかし、フィルター6は金属イオンを捕捉しないので、洗浄工程ごとに薬液4中へ溶解する金属イオンが蓄積し、薬液4中の金属イオン濃度は洗浄工程の回数に応じて増加する。
【0010】
薬液4中の金属イオン濃度、例えばCuイオン濃度が高くなると、洗浄の際、その金属よりもイオン化傾向が大きなAl又はAl合金からなるAl配線に薬液4が接触したとき、Al配線中のAlが薬液4中に溶け込み、代わりに薬液4中のCuイオンがAl配線上に析出する。このようにAl配線上にAlよりもイオン化傾向が小さなCuが析出すると、Al配線と析出したCuとの間に局部電池が形成され、さらなるAl配線の溶出が進行し、Al配線が腐蝕されるいわゆるAlコロージョンが発生する。その結果、Al配線に狭窄部分が形成され、半導体装置の信頼性が損なわれる。かかる事情は、薬液中にAlよりイオン化傾向の小さな金属イオン、例えばCuの他、貴金属イオン、希土類金属イオンが溶解した場合も同様であり、同じようにこれらの金属がAl配線上に析出して局部電池を形成し、Al配線の腐蝕が進行する。(例えば、特許文献1参照。)。
【0011】
上述した薬液4中のCuイオン濃度の上昇に起因するAl配線の腐蝕を防止するために、洗浄に用いられる薬液4中のCuイオン濃度を低減するCuトラップを循環機構内に備え、薬液4中に溶解するCuイオンを除去してCuイオン濃度の上昇を抑制する処理洗浄装置が考案されている。(例えば、特許文献2参照。)。
【0012】
図6は従来のCuトラップを有する洗浄処理装置構成図であり、薬液循環機構内にCuをトラップするカラムを備えた洗浄処理装置の主要な装置構成を表している。
【0013】
図6を参照して、従来のCuトラップを有する洗浄処理装置では、図5を参照しつつ説明した従来の洗浄処理装置のフィルタ6に代えて、シリコン粒子7aが充填されたカラム7を備える。カラム7内を通過したCuイオンを含む薬液4は、シリコン粒子7aに接触してシリコン粒子7aからシリコンを溶出すると同時にシリコン粒子7a表面にCuを析出することで、薬液4中のCuイオン濃度を低下させる。従って、薬液4を循環させても薬液4中のCuイオン濃度が上昇しないので、Al配線上へのCuの析出が防止され、Al配線の腐蝕の進行が阻止される。
【0014】
この従来のCuトラップを有する洗浄処理装置は、Cuトラップとしてシリコン粒子7aを用いる。その結果、薬液4中のSiイオン濃度が上昇する。しかし、薬液4中のSiイオンは半導体装置上、例えばAl配線上に析出せず、また、Siイオンが半導体装置の特性に悪影響を及ぼすこともないのでSiイオン濃度の上昇は何ら問題にならない。
【0015】
しかし、シリコン粒子7aは脆く破壊しやすく、カラム7内で互いに擦れて微細なシリコン破片を発生することがある。このシリコン破片が薬液4中に混入し、洗浄されるべき被処理基板の表面に付着して半導体装置の欠陥を生じるおそれがある。さらに、微粒子を除去するフィルター6を併用する場合、シリコン破片は微粒子を除去するフィルターの目詰りを促進しフィルターの交換時期を早めるので製造コストが上昇する。
【特許文献1】特開2002−110616号公報
【特許文献2】特開平06−279005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述したように、洗浄用の薬液を微粒子を除去するフィルターを介して循環させて被処理基板を洗浄する洗浄処理装置では、洗浄により薬液中に金属イオン、例えばCuイオンが溶解し蓄積するため、薬液中の金属イオン濃度が上昇する。その結果、薬液に接触する被処理基板のAl配線上に金属、例えばCuが析出し、金属とAl配線間に局部電池を形成してAl配線の腐蝕を引き起こすという問題がある。
【0017】
薬液中の金属イオン、例えばCuイオンを、薬液をシリコン粒子が充填されたカラムを通すことで除去する従来のCuトラップを有する洗浄処理装置では、薬液中にシリコン粒子の微細な破片が混入しやすく、半導体装置の欠陥を招来するあるいはフィルターを用いる場合はフィルターの交換時期を早めコスト上昇につながるという問題がある。またシリコン粒子の交換はカラムごと交換するので、洗浄処理を中断するか又は2台のカラムを交替で使用しなければならず、コスト上昇を招く。
【0018】
本発明は、洗浄用の薬液を循環して使用する被処理基板の洗浄処理装置において、低価格の装置を用いて、半導体装置の特性に悪影響を及ぼす薬液中の金属イオン(例えばCuイオン)の濃度上昇を抑制し、かつ、溶液中への微粒子の混入を回避することができる洗浄処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述の課題を解決するための本発明の第1の構成は、被処理基板を薬液を用いて洗浄する処理チャンバと、薬液の循環機構とを有する洗浄処理装置において、循環機構又は処理チャンバ内に、薬液に接触するアルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属板を有する。
【0020】
本第1の構成では、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属板を備え、この金属板が循環している薬液に接触している。このため、薬液中に溶解しているAlよりもイオン化傾向が小さな金属イオンは金属板表面に析出し、溶液中の金属イオン濃度の上昇が抑制される。従って、薬液中の金属イオン濃度が常に低濃度に維持されるので、Alよりもイオン化傾向が小さな金属のAl配線上への析出が抑止され、信頼性の高い被処理基板、さらにはかかる被処理基板を用いた信頼性の高い半導体装置が製造される。
【0021】
また、金属板はAl又はAl合金からなるので、安価に製造することができる。また、金属板を薬液中に昇降させることで、洗浄工程中でも金属板を容易に交換することができる。さらに、板状なので、粒子を詰めたカラムのように、微細な破片が溶液中に混入することもない。このため、粒子を詰めたカラムを用いた場合と比較して、微粒子を捕捉するフィルターの交換期間が長くなり、洗浄処理装置の維持費用を少なくすることができる。なお、金属板からはAlイオンが薬液中に融けだし薬液中のAlイオン濃度が上昇する。しかし、Alイオンは半導体装置の特性に大きな悪影響を与えないので、通常は無視することができる。また、薬液中への不純物の溶解を最小にするために、金属板は添加元素を含まない純Al板とすることが望ましい。
【0022】
この本第1の構成の洗浄処理装置を用いることにより、Al配線の腐蝕を引き起こすAlよりもイオン化傾向が小さな金属イオン、例えばCuイオンを効果的に薬液中から除去することができる。また、半導体装置の電極等に使用される希土類元素及び貴金属元素も除去される。このため、信頼性の高い半導体装置を製造することができる。以下、本明細書では、「金属イオン」をAlよりもイオン化傾向が小さな金属の金属イオンの意味で用いる。
【0023】
上記金属板が薬液と接触する面積を大きくして薬液中の金属イオンを速やかに除去する観点から、上記金属板を複数枚用いることが好ましい。このように金属板の表面積を大きくすると、金属板の交換期間が延長するという利点も生ずる。即ち、金属板の表面には金属が析出し、遂にはそのかなりの面積が析出した金属で覆われる。この析出金属の被覆面積が大きくなり金属板の表出面積が小さくなると金属イオンの除去速度が低下して、薬液中の金属イオン濃度が上昇してしまう。その以前に、金属板を新たなものと交換しなければならない。金属板の総表面積が大きいと、多量の金属が析出してもなお金属板の表出面積は大きいから、交換時期は大幅に延長される。
【0024】
複数の金属板を用いる場合、複数枚の金属板を貫通する軸棒に、金属板が互いに平行になるように固定される構造とすることできる。この構造では、複数膜の金属板を同時に取り付け又は取り外すことができ、取り扱いが容易である。
【0025】
さらに、金属板の表面積を大きくするために、金属板を屈曲した板、例えば波状の板、上下方向(板の表裏方向)に凹凸のエンボス加工がされた板とすることができる。
【0026】
上述した金属板は、薬液中に浸漬される、又は薬液を注ぎかけられるように保持される。例えば、金属板は、薬液循環機構を構成する薬液タンク内の薬液中に浸漬される。あるいは洗浄処理装置内の薬液溜内の薬液に浸漬される。浸漬せず薬液をシャワー状に注いでもよい。さらに、金属板を薬液循環機構の一部、例えば薬液を循環する配管内に設けることもできる。
【0027】
この金属板は、交換が容易なように着脱自在に設置することが好ましい。複数の金属板が一体構造をなす場合は、交換作業が迅速かつ容易に行なわれるように、その一体構造ごと交換することが望ましい。複数の金属板がそれぞれ分離して設置される場合は、任意の1枚の金属板を交換することもできる。このように1枚づづ交換することで、金属板の露出面積を常に所定面積以上に保持し、薬液中の金属イオン濃度の上限を確実に制限することがてきる。
【0028】
本発明の第2の構成は、薬液を循環させつつ、被処理基板を薬液を用いて洗浄する工程を有する半導体装置の製造方法において、薬液にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属板を接触させる工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法として構成する。
【0029】
上述した第1の構成と同様に、本第2の構成では、循環して使用する薬液にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属板を接触させる。このとき、金属板からAlが薬液に溶解し、同時に薬液中の金属イオン、例えばCuイオンが金属板表面に析出する。この結果、薬液中の金属イオン濃度が減少し、薬液中の金属イオン濃度の上昇が抑制される。このため、被処理基板上に形成されたAl配線への金属の析出が抑制され、信頼性の高い半導体装置が製造される。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、循環して基板洗浄に用いられる薬液中の、Alよりもイオン化傾向が小さな金属イオン濃度の上昇が抑制されるから、基板上に形成されたAl配線への金属の析出が防止され、Al配線の腐蝕を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の第1実施形態は、一体の複数金属板を用いた洗浄処理装置に関する。なお、この第1実施形態の洗浄処理装置は、半導体装置の製造装置として構成されている。
【0032】
図1は本発明の第1実施形態洗浄処理装置構成図であり、薬液を循環して使用する洗浄処理装置の主要な装置構成を表している。図2は本発明の第1実施形態金属板斜視図であり、一体化された複数金属板の構造とその金属板が収容される薬液タンクとを表している。
【0033】
図1を参照して、本発明の第1実施形態に使用された洗浄処理装置は、被処理基板である半導体基板を収容し、薬液4を用いて基板を洗浄するための処理チャンバ1と、薬液4を循環させる循環機構とを備える。
【0034】
処理チャンバ1は、処理チャンバ1内に収容された25枚の直径8インチの半導体基板(ウエーハ)へ薬液4をシャワー状に注ぎかけ、25枚の半導体基板を同時に洗浄することができる。 この半導体基板は、集積回路を構成するAl配線(正確にはAl−Cu配線)の形成工程途中にあり、表面に堆積されたAl−Cu合金薄膜をCl含有ガスを用いた反応性イオンエッチングによりパターニングした直後のものである。この反応性イオンエッチングにより、半導体基板表面、とくにAl配線の上面及び側面に反応生成物が付着する。
【0035】
処理チャンバ1内での洗浄処理は半導体装置の製造に使用される周知の洗浄処理装置であり、半導体基板に付着した反応生成物を薬液、例えば剥離液をシャワー状に注ぎかけて除去する。この洗浄処理用の薬液として、モノエタノールアミンとヒドロキシルアミンを含む周知のアルカリ性剥離液(例えば、アシュランド・スペシャルティ・ケミカル社の商品名アシュランド−ACT)あるいは周知の酸性剥離液を用いた。
【0036】
処理チャンバ1へは毎分4リットル(4l/分)の薬液4が供給され、同量の薬液4が処理チャンバから排出される。なお、処理チャンバ1内には、例えば15リットルの薬液4が停留する。もちろん、処理チャンバの構造により停留する薬液4量を減少することもできる。
【0037】
薬液4の循環機構は、ポンプ2、薬液タンク3及びフィルター6と、それらの装置間を接続する配管11とを備える。この配管11の両端は処理チャンバに接続されており、薬液4はその一端から処理チャンバ1内に供給され、他端から排出された薬液4が回収される。
【0038】
洗浄処理に使用された薬液4は、処理チャンバ1に接続する配管11(図1の処理チャンバの紙面下方に接続する配管11)に回収され、ポンプ2により薬液タンク3に送られる。
【0039】
薬液タンク3内には純AlからなるAl板5が配置されている。このAl板5は、薬液タンク3内に満たされた約30リットルの薬液4中に浸漬される。このとき、薬液4中に溶解していたAlよりもイオン化傾向の小さな金属イオン、例えばCuイオンは、Al板5の表面に析出し薬液4中から除去される。同時に、Al板からAlが薬液中に溶け出すので、Al板5は腐蝕されて薄くなる。
【0040】
薬液タンク3中で金属イオンが除去された薬液4は、配管11を通りフィルター6へ送出される。このフィルター6は、薬液4中に混入した塵埃、その他の固形物を除去する。例えば、反応性イオンエッチングにより半導体基板表面に付着した反応生成物が、薬液処理工程で剥離して薬液4中に混入して塵埃となった場合、かかる塵埃(多くは有機物を含む)はフィルター6により除去される。
【0041】
一方、薬液タンク3から送出される薬液4中の金属イオン濃度は低いから、フィルター6により固形物が除去された薬液4は、金属イオン濃度が低くかつ固形物(例えば有機物)も少ない。
【0042】
フィルター6を通過した薬液4は、配管11を通り処理チャンバ1に送られる。そして、上述したように、基板にシャワー状に注ぎかけられて基板を洗浄する。このように、薬液は、処理チャンバ1、ポンプ2、薬液タンク3及びフィルター6を循環し、再び処理チャンバ1に戻される。
【0043】
図2は本発明の第1実施形態金属板斜視図であり、薬液タンク3内に浸漬される金属板5の構造を表している。
【0044】
図2を参照して、6枚のAl板5(金属板)が軸棒5aに固定されている。Al板5は不純物が少ない純Alからなり、例えば厚さ1mm、一辺が10cmの正方形の板である。Al板5は、使用中に腐蝕されて薄くなるので、使用期間の終期にも強度を保持できるだけの厚さ、例えば0.5mm以上の厚さとすることが好ましい。薄すぎると腐蝕孔ができ、Al板5から破片が薬液4中に混入するおそれがある。厚すぎると無用にAl板のコストが上昇する。このため、0.5mm〜2mmの厚さとすることが好ましく、さらに0.5〜1mmの厚さとすることがより望ましい。なお、腐蝕量はAl板の表面積に依存するので、Al板の厚さも表面積を加味して決定される。
【0045】
軸棒5aは、例えば直径5mmの純Alの円柱からなり、Al板5の中心に開設された円形の穴に嵌挿されて、Al板5を軸棒5aに垂直に固定する。従って、6枚のAl板5は、軸棒5aに垂直に固定され、互いに平行に保持される。
【0046】
薬液タンク3は、上面に蓋を有する内面がテフロン(登録商標)加工された直方体の箱であり、薬液タンク3の対面する側壁3bに、それぞれ薬液タンク3内に薬液4を導入する導入口配管11aと薬液を送出する導出口配管11bが接続されている。また、導入口配管11a又は導出口配管11bが接続している側壁3bと直交して対向する側壁3c内面に、軸棒5aを水平に支持する支持具3aが取り付けられる。
【0047】
軸棒5aに固定されたAl板5は、薬液タンク3内に降下され、軸棒5aの両端が支持具3aにより水平に支持されるように薬液タンク3内に保持される。このとき、Al板5の板面(表裏面)は、導入口配管11a又は導出口配管11bが接続する対向する側壁3bに対して直交する。従って、導入口配管11aから導出口配管11に流れる薬液タンク3内の水流に対して、Al板5の板面は平行になる。このため、水流の乱れが少なくなり、薬液タンク3を通過する薬液4がAl板に接触する機会を増やす。その結果、薬液4の循環が容易になり、かつ、十分に金属イオンが除去される。
【0048】
薬液タンク3内の薬液4は、金属板5を完全に浸漬する液量とすることが、金属板5との接触面積を大きくするために望ましい。もちろん、一部が薬液4に接触するものであってもよい。
【0049】
Al板5の表面積を増加するために、波形のAl板5あるいは表面を凹凸にエンボス加工を施したAl板5を用いることもできる。さらに、表面積の大きな形状、例えば冷却フィン状の形状を有するAl板5を用いることもできる。
【0050】
図3は本発明の第1実施形態効果説明図であり、基板の洗浄処理回数と薬液中のCuイオン濃度との関係を表している。なお、図中1の直線イは本第1実施形態でのCuイオン濃度変化を表し、直線ロは図5を参照して説明した従来の洗浄処理装置を用いたときのCuイオン濃度変化を比較例として表している。
【0051】
ここで、本第1実施形態では上述したように、薬液タンク3及び処理チャンバ1内にそれぞれ30リットル及び15リットルの薬液4があり、これにポンプ2、カラム7及び配管内の薬液4を加えると、洗浄処理装置全体で略60リットルの薬液4が使用されており、毎分4リットル/分で循環している。また、1回の洗浄処理で同時に25枚の基板を洗浄した。この洗浄処理は各回あたり、約15分間とした。
【0052】
比較例として図3中の直線ロに示す従来の洗浄処理装置の結果は、洗浄処理装置を、金属板5(Al板5)がないことを除き、処理チャンバ1、ポンプ2、薬液タンク3、フィルター6及び配管11は第1実施形態と同様とし、さらに、半導体基板の洗浄処理を、使用された薬液4量及び薬液4の循環速度も第1実施形態と同一の条件下で実施した結果である。
【0053】
図3の直線イを参照して、本第1実施形態では、洗浄処理回数が130回に達しても薬液4中のCuイオン濃度の上昇は測定されない。これに対して、従来の処理装置による比較例の洗浄処理では、洗浄処理回数に比例して薬液4中のCuイオン濃度が上昇し、洗浄処理回数が130回では100ppm近くに達する。
【0054】
次いで、本第1実施形態及び従来の洗浄処理装置を用いた比較例において、半導体基板上に形成されたAl配線上へのCuの析出の有無を観測した。その結果、本第1実施形態では洗浄処理回数が300回を超えても、Al配線上へのCu析出は観測されなかった。一方、従来の洗浄処理装置を用いた比較例では、洗浄処理回数が略95回を超えるとAl配線上へのCu析出が観測された。このCu析出が観測されたときの薬液4中のCuイオン濃度は70ppmであった。この事実は、薬液4中のCuイオン濃度が70ppmを超えるとAl配線上へのCu析出が起こることを示している。また、本第1実施形態では、Cu濃度の上昇が強く抑制されるので、Al配線上へのCu析出が防止されたことを示唆している。
【0055】
このように、Al配線上へのCu析出を防止するには、薬液4中の金属イオン濃度(例えば、Cuイオン濃度)を70ppm未満に制御しなければならない。従って、Al配線上へのCu析出を防止するには、従来の洗浄処理装置を用いた比較例では、洗浄処理回数が95回未満で、実施際には余裕を見て60回程度で薬液4全体を新たな薬液4と入れ替える必要がある。
【0056】
一方、本第1実施形態では、通常の稼働状態では、Al配線上へのCu析出を生ずることなく洗浄処理を3〜6カ月間継続することができた。
【0057】
本第1実施形態では、洗浄処理回数の増加と共に、Al板5(金属板)の表面は析出したCuにより被覆され、Al板5の露出する表面積が徐々に減少する。このAl板5の露出する表面積が一定値を超えて小さくなると、Cuイオンの析出速度が洗浄処理により生ずるCuイオンの増加速度より遅くなり、その結果、薬液4中のCuイオン濃度は増加し始まる。Cuイオン濃度の増加は、さらなるAl板5の表面積の減少を加速するので、薬液4中のCuイオン濃度は急速に増加する。従って、Al板5を、Cuイオン濃度の急速な増加が始まったとき又はその前に交換することが望ましい。かかる交換時期は、Cuイオン濃度を観測することで又はAl板5へ析出したCuの被覆状態を観測することで知ることができる。
【0058】
本発明の第2実施形態は、複数のAl板を1枚づつ交換可能とした洗浄処理装置に関する。上述した第1実施形態の軸棒5aに一体に固定されたAl板5は、軸棒5aを上下に昇降することで、着脱可能に薬液タンク3内に装着された。本第2実施形態では、Al板5を1枚ごとに着脱可能に薬液タンク3内に装着する。
【0059】
図2は本発明の第2実施形態金属板構造図であり、1枚ごとに着脱可能に保持された金属板を表している。
【0060】
図2を参照して、本第2実施形態では、複数のAl板5(金属板)を、任意の一枚ごと薬液タンク3内の薬液4に浸漬及び取り出し可能に保持する。かかる保持機構は、例えば複数枚の半導体基板をほぼ垂直に保持する周知のウエーハホルダと同様の構造を有し、Al板5を半導体基板と同様に保持する保持具8を用いて実現することができる。なお、薬液タンク3及びその他の構成は、上記のAl板5及びその保持具8を除き第1実施形態と同様である。
【0061】
このような保持具8として、保持具8が薬液タンク3内に収容されたとき、上下にそれぞれ水平に保持される一対の横枠8a、8bを備え、Al板5を横枠8a、8bに形成された溝で支持するものを用いることができる。このとき、複数のAl板5は、ほぼ垂直に互いに平行に保持される。なお、Al板5の交換(保持具からの着脱)は、Al板5を薬液4中に浸漬したま、ピンセットを用いて選択した一枚のAl板5を取り出し、新しいAl板5を横枠8a、8bの溝に挿入して取り付ける。このように薬液4に浸漬したままAl板5を交換することができるので、交換のために洗浄処理を中断することがない。
【0062】
本第2実施形態でのAl板5の交換は、薬液4中の金属イオン濃度が上昇し始めてから、Al配線上に析出する濃度、例えばCuイオン濃度では70ppm)まで上昇する間に行なう。金属イオン濃度が上昇し始めても、Al板5を交換することで複数のAl板5の総表面積が増加するので、金属イオン濃度の上昇が抑制される又は低減する。
【0063】
本第2実施形態では、最初に7枚の厚さ1mm、辺長10cmの正方形のAl板5又は厚さ1mm、直径10cmの円板形のAl板5を薬液4に浸漬し、その後、0.5カ月ごとに1枚づつAl板5を順次交換した。このように1枚づつ交換すると、全ての複数Al板5を一時に交換する場合に起こる、複数Al板5の表出面積の急速な減少に起因する金属イオン濃度の急激な上昇を回避することができる。
【0064】
なお、同時に交換するAl板の枚数は、1枚に限らず、複数枚、例えば2〜3枚とすることもできる。この場合、1枚づつの交換に比べて、交換時期を例えば2〜3倍に伸ばすことができる。
【0065】
上記したように、本明細書には以下の付記記載の発明が開示されている。
(付記1)被処理基板を薬液を用いて洗浄する処理チャンバと、前記薬液を循環させる循環機構とを有する洗浄処理装置において、
前記循環機構又は前記処理チャンバ内に、前記薬液に接触するアルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属板を有することを特徴とする洗浄処理装置。
(付記2)複数の前記金属板を貫通する軸棒に、複数の前記金属板が互いに平行に固定されていることを特徴とする付記1記載の洗浄処理装置。
(付記3)前記金属板は、表面積を大きくするために屈曲した板とすることを特徴とする付記1又は2記載の洗浄処理装置。
(付記4)前記金属板は、着脱自在に設置されることを特徴とする付記1、2又は3記載の洗浄処理装置。
(付記5)複数の前記金属板を有し、
任意の前記金属板を着脱自在に設置したことを特徴とする付記1記載の洗浄処理装置。(付記6)薬液を循環させつつ、被処理基板を前記薬液を用いて洗浄する工程を有する半導体装置の製造方法において、
前記薬液にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属板を接触させる工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明をAl配線を有する半導体装置の洗浄処理工程に適用することで、Al配線の腐蝕が少ない信頼性の高い半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1実施形態洗浄処理装置構成図
【図2】本発明の第1実施形態金属板斜視図
【図3】本発明の第1実施形態効果説明図
【図4】本発明の第2実施形態金属板構造図
【図5】従来の洗浄処理装置構成図
【図6】従来のCuトラップを有する洗浄処理装置構成図
【符号の説明】
【0068】
1 処理チャンバ
2 ポンプ
3 薬液タンク
3a 支持具
3b、3c 側壁
4 薬液
5 Al板(金属板)
5a 軸棒
6 フィルター
7 カラム
7a シリコン粒子
8 保持具
8a、8b 横枠
11 配管
11a 導入口配管
11b 導出口配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板を薬液を用いて洗浄する処理チャンバと、前記薬液を循環させる循環機構とを有する洗浄処理装置において、
前記循環機構又は前記処理チャンバ内に、前記薬液に接触するアルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属板を有することを特徴とする洗浄処理装置。
【請求項2】
複数の前記金属板を貫通する軸棒に、複数の前記金属板が互いに平行に固定されていることを特徴とする請求項1記載の洗浄処理装置。
【請求項3】
前記金属板は、表面積を大きくするために屈曲した板とすることを特徴とする請求項1又は2記載の洗浄処理装置。
【請求項4】
前記金属板は、着脱自在に設置されることを特徴とする請求項1、2又は3記載の洗浄処理装置。
【請求項5】
薬液を循環させつつ、被処理基板を前記薬液を用いて洗浄する工程を有する半導体装置の製造方法において、
前記薬液にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属板を接触させる工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−123925(P2009−123925A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296334(P2007−296334)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】