説明

洗浄装置

【課題】 マスクに付着した有機EL用の有機材料を除去することが可能な洗浄装置を提供する。
【解決手段】 本発明の洗浄装置は、マスク10を所定の洗浄液により洗浄処理する第1及び第2の洗浄槽21,22と、当該洗浄槽21,22の洗浄液を真空蒸留する真空蒸留器30と、真空蒸留された洗浄液を室温に冷却する第1の冷却器31と、第1の冷却器31により冷却された洗浄液を第2の洗浄槽22に還流させる第1の還流管101と、マスク10を所定のリンス液によりリンス処理する第1及び第2のリンス槽51,52と、当該リンス槽51,52のリンス液を常圧下で蒸留する常圧蒸留器60と、常圧蒸留されたリンス液を室温に冷却する第2の冷却器61と、第2の冷却器61により冷却されたリンス液を第2のリンス槽52に還流させる第2の還流管102と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄装置に関し、特に、有機EL用の有機材料の蒸着工程において、マスクに付着した有機材料を除去する洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence:以下、「有機EL」と略称する)素子を用いた有機EL表示装置が、CRTやLCDに代わる表示装置として注目されており、例えば、その有機EL素子を駆動させる駆動用薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下「TFT」と略称する。)を備えた有機EL表示装置の研究開発も進められている。
【0003】
有機EL素子は、例えば、ITOから成る陽極、MTDATA(4,4−bis(3−methylphenylphenylamino)biphenyl)等の第1ホール輸送層及びTPD(4,4,4−tris(3−methylphenylphenylamino)triphenylanine)等の第2ホール輸送層から成るホール輸送層、キナクリドン(Quinacridone)誘導体を含むBebq(10−ベンゾ〔h〕キノリノール−ベリリウム錯体)から成る発光層、Bebqから成る電子輸送層、及びアルミニウム合金等から成る陰極が、この順番で積層形成された構造を有する。
【0004】
このような有機EL素子は、有機EL素子を駆動させる駆動用TFTを介して電流が供給されることによって発光する。即ち、陽極から注入されたホールと、陰極から注入された電子とが発光層の内部で再結合し、発光層を形成する有機分子を励起して励起子が生じる。この励起子が放射失活する過程で発光層から光が放たれ、この光が、透明な陽極及びガラス基板等の絶縁性基板を介して外部へ放出されて発光する。
【0005】
上述した有機EL素子の各層のうち、ホール輸送層、発光層、電子輸送層の形成に用いられる有機材料は、耐溶剤性が低く、水分にも弱いという特性がある。そのため、半導体プロセスにおけるフォトリソグラフィ技術を利用することができない。そこで、例えば金属薄膜から成るマスク(いわゆるシャドウマスク)を用いた蒸着法により、上記有機材料を、駆動用TFTを備えた絶縁性基板上に選択的に蒸着して、有機EL素子のホール輸送層、発光層、電子輸送層及び陰極のパターン形成を行っていた。
【0006】
そのような有機材料の蒸着の際に用いるマスクの一例を、図15乃至図17に示す。図15は、従来例に係る有機EL用のマスクを説明する上面図である。また、図16は、図15のX−X線に沿った断面図であり、図17は、図15のY−Y線に沿った断面図である。図15乃至図17に示すように、マスク10は、例えば縦横各数ミクロンメートル程度の複数の微細な孔11を有した例えばニッケル(Ni)及び鉄(Fe)等の金属薄膜から成る。これらの孔11を通して、上記有機材料が絶縁性基板上に選択的に蒸着される。
【0007】
また、上記金属薄膜から成るマスク10は、例えばニッケル(Ni)及び鉄(Fe)から成る金属フレーム12に固定されており、当該マスク10の縁が、当該金属フレーム12により支持されている。また、金属フレーム12の縁には、当該金属フレーム12を保持するための複数の係止部13が形成されている。以下、金属フレーム12に固定されたマスク10を、「マスク10」として略称する。
【0008】
なお、関連する技術文献としては、例えば以下の特許文献が挙げられる。
【特許文献1】特開2004−103269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
有機EL素子が、カラー表示に対応して、3原色の赤色,緑色,青色の各発光層を有する場合、有機材料の蒸着工程は、一般に、各色用のマスクを繰り返し用いて行われる。そのため、繰り返される蒸着の回数が多くなるに従って、マスク10の表面には有機材料が幾層にも積層するようにして付着する。即ち、図18に示した有機材料が蒸着されたマスクの断面図に示すように、有機材料1は、マスク10の表面上のみならず、本来ならば有機材料1を通過させるべき複数の孔11を塞ぐようにして、孔11の周縁にオーバーハング1aを形成する。
【0010】
このように、マスク10の孔11が有機材料から成るオーバーハングによって狭められるために、当該有機材料の絶縁性基板への蒸着における精度が低下するという問題が生じていた。
【0011】
上述した問題への対処としては、同一のマスクを複数回用いずに、所定の蒸着回数ごとに使用済みのマスクを廃棄して、未使用のマスクに交換する方法がある。しかしながら、この方法を用いた場合、上記有機EL用の有機材料の蒸着に用いられる未使用のマスクは高価であることから、コストが増大するという問題が生じていた。
【0012】
そこで本発明は、マスクに付着した有機EL用の有機材料を除去することが可能な洗浄装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の洗浄装置は、上述の課題に鑑みて為されたものであり、マスクに付着した有機EL用の有機材料を除去する洗浄装置であって、以下の特徴を有するものである。
【0014】
即ち、本発明の洗浄装置は、マスクを所定の洗浄液により洗浄処理する洗浄槽と、洗浄槽からオーバーフローした洗浄液を真空蒸留する真空蒸留器と、真空蒸留器により真空蒸留された洗浄液を室温に冷却する第1の冷却器と、第1の冷却器により冷却された洗浄液を洗浄槽に還流させる第1の還流管と、マスクを所定のリンス液によりリンス処理するリンス槽と、リンス槽からオーバーフローしたリンス液を常圧下で蒸留する常圧蒸留器と、常圧蒸留器で常圧蒸留されたリンス液を室温に冷却する第2の冷却器と、第2の冷却器により冷却されたリンス液をリンス槽に還流させる第2の還流管と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の洗浄装置は、上記構成に加えて、洗浄槽内に、洗浄液を振動させる第1の超音波振動器を備え、さらに、洗浄槽の洗浄液の温度を検出する第1の温度センサと、第1の温度センサの検出結果に応じて洗浄槽内の洗浄液を室温に調整する第1の温度調整器と、を備えることを特徴とする。ここで、第1の温度調整器は第1の熱交換器を備え、当該第1の温度調整器は、当該第1の熱交換器により冷却された洗浄液を洗浄槽へ流入させることにより当該洗浄槽内の洗浄液の温度を調整する。
【0016】
また、本発明の洗浄装置は、上記構成に加えて、リンス槽内に、前記リンス液を振動させる第2の超音波振動器を備え、さらに、リンス槽のリンス液の温度を検出する第2の温度センサと、第2の温度センサの検出結果に応じてリンス槽内のリンス液を室温に調整する第2の温度調整器と、を備えることを特徴とする。ここで、第2の温度調整器は第2の熱交換器を備え、当該第2の温度調整器は、当該第2の熱交換器により冷却されたリンス液をリンス槽へ流入させることにより当該リンス槽内のリンス液の温度を調整する。
【0017】
また、本発明の洗浄装置は、上記構成に加えて、第3の冷却器を有した回収槽を備え、回収槽は、当該第3の冷却器によって冷却されることにより、リンス槽内で蒸発したリンス液を回収し、その回収されたリンス液を、第2の還流管を通してリンス槽に還流させることを特徴とする。ここで、回収槽は、当該回収槽内の温度を検出する第3の温度センサを備え、第3の冷却器は、第3の温度センサを用いて、リンス槽内と回収槽内とで蒸気圧差が生じるように回収槽内を冷却するものである。
【0018】
また、本発明の洗浄装置は、上記構成に加えて、回収槽によって回収されたリンス液中の水分を分離する水分離槽を備え、水分離槽を通したリンス液を、第2の還流管を通してリンス槽に還流させることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の洗浄装置は、上記構成に加えて、洗浄液を含有するリンス液を、洗浄液とリンス液とに分離する分離器と、当該分離器により分離された洗浄液、及び常圧蒸留器により蒸留された洗浄液を含有するリンス液を蓄積して再び分離器へ流入させるプール槽と、を備えることを特徴とする。ここで、プール槽は、洗浄液及び前記リンス液の液面の下限を検出する下限センサを備え、当該下限センサの検出結果に応じて、分離された洗浄液を真空蒸留器へ流入させるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の洗浄装置によれば、有機EL用の有機材料の蒸着工程において、蒸着に用いるマスクに付着した有機材料を、適宜除去することができる。
【0021】
従って、同一のマスクを繰り返し用いても、マスクの孔の周縁に当該有機材料から成るオーバーハングが形成されることがなくなるため、孔が狭められることがなくなる。結果として、有機材料の蒸着の精度が低下することを極力抑止することができる。
【0022】
また、有機材料の蒸着工程において、同一のマスクを用いることができることから、従来の蒸着工程にみられたような、未使用のマスクへの交換によるコストの増大を極力回避することが可能となる。また、使用済みのマスクの廃棄が不要となることから、当該廃棄に係る環境汚染を極力抑止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態に係る洗浄装置について説明する。なお、被洗浄体であるマスクは、図15乃至図17に示した従来の蒸着工程において用いられるものと同様のマスク10であるものとする。即ち、当該マスクは、有機材料が形成される所定のパターンに沿って、縦横各数ミクロンメートル程度の孔11が形成された金属薄膜から成る。この金属薄膜は、例えばニッケル(Ni)及び鉄(Fe)等から成る。また、当該マスクの縁には、例えばニッケル(Ni)及び鉄(Fe)から成る金属フレーム12が固定されている。当該金属フレーム12は、係止部13を有している。以下、金属フレーム12に固定されたマスク10を、「マスク10」として略称する。
【0024】
本実施形態に係る洗浄装置は、有機EL用の有機材料を、駆動用TFTが形成された絶縁性基板に蒸着する蒸着工程において、蒸着に用いられる金属薄膜から成るマスク10に付着した上記有機材料を除去するものである。本実施形態に係る洗浄装置の全体の構成は、マスク10に付着した有機EL用の有機材料を除去するための洗浄系と、マスク10を搬送するための搬送系とに大別される。
【0025】
最初に、本実施形態に係る洗浄装置の洗浄系の構成について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る洗浄装置の洗浄系を説明する図である。なお、図1では、搬送系に係る構成要素は省略されている。
【0026】
図1に示すように、本実施形態に係る洗浄装置の洗浄系は、マスク10を所定の洗浄液により洗浄処理する第1及び第2の洗浄槽21,22と、第1及び第2の洗浄槽21,22で洗浄処理されたマスク10を所定のリンス液によりリンス処理する第1及び第2のリンス槽51,52を備えている。
【0027】
なお、上記所定の洗浄液は、例えば炭化水素(HC)系の洗浄液であるものとする。また、上記所定のリンス液は、上記洗浄液よりも低い沸点を有したフッ素(F)系溶媒であり、例えばハイドロフルオロエーテル(HFE;Hydrofluoroether)であるものとする。当該リンス液の比重は、水分に対して大きいものである。また、表面張力が大きい上記洗浄液を、表面張力が小さい上記リンス液でリンスすることで、より細かなところまでリンスが入り込み、洗浄液を確実に捕捉する効果がある。
【0028】
次に、本実施形態に係る洗浄装置の洗浄系のうち第1及び第2の洗浄槽21,22に係る構成について説明する。
【0029】
この洗浄装置は、第1の洗浄槽21に、当該第1の洗浄槽21からオーバーフローした洗浄液を蓄えるオーバーフロー槽23を備えている。また、この洗浄装置は、洗浄処理によってマスク10より除去された有機材料を含む洗浄液から、いわゆる真空蒸留によって洗浄液のみを抽出するため真空蒸留器30を備えている。有機材料を含む洗浄液は、第1の洗浄槽21からオーバーフロー槽23にオーバーフローして、当該オーバーフロー槽23から真空蒸留器30に流入する。真空蒸留器30の底部に沈殿した有機材料は、冷却釜30rで冷却されて外部へ排出される。
【0030】
上述した洗浄液の蒸留では、当該洗浄液を真空状態において加熱して蒸留する。これにより、当該洗浄液の155℃程度の沸点を低下させて、蒸留の際の加熱温度を極力低下させることができる。
【0031】
また、この洗浄装置は、真空蒸留器30により真空蒸留された洗浄液を室温に冷却する第1の冷却器31を備えている。第1の冷却器31によって室温に冷却された洗浄液は、第1の還流管101を通して第2の洗浄槽22に還流する。
【0032】
なお、本願において、室温は、「10℃〜40℃」、好ましくは「20℃〜30℃」、更に好ましくは約25℃である。
【0033】
上述したような洗浄液の真空蒸留、冷却、及び還流により、マスク10の洗浄処理を、室温において行うことが可能となる。従って、マスク10に、熱を起因とした応力によるストレスや損傷が生じることを極力抑止することが可能となる。
【0034】
さらに、上述した第1及び第2の洗浄槽21,22は、マスク10の表面に洗浄液が確実に及ぶように当該洗浄液を振動させるための不図示の第1の超音波振動器を備えている。さらに、その第1の超音波振動器の振動による洗浄液の温度の上昇に対処するため、第1及び第2の洗浄槽21,22は、洗浄液の温度を室温に微調整するための第1の温度調整器40を備えている。
【0035】
ここで、第1の温度調整器40は、第1の熱交換器40h及びポンプ42を備えており、当該第1の熱交換器40hにより第1及び第2の洗浄槽21、22の洗浄液を冷却する。そして、第1の温度調整器40は、当該第1の熱交換器40hにより冷却された洗浄液を、ポンプ42を介して第1及び第2の洗浄槽21,22へ流入させるか否かによって、当該各槽の洗浄液の温度を室温に微調整する。
【0036】
また、洗浄液は、循環させてフィルタによってろ過している。なお、図1に示すように、その循環の経路、即ち洗浄槽21、第1の温度調整器40、ポンプ42、洗浄槽21の経路にフィルタを設けてもよいが、そのフィルタは、その経路とは別経路として、その経路に併設した経路、即ち、洗浄槽21、フィルタ、ポンプ42、洗浄槽21の経路を設けてもよい。
【0037】
上述したように、第1の温度調整器40によって、第1及び第2の洗浄槽21,22の洗浄液の温度を微調整することが可能となる。
【0038】
次に、本実施形態に係る洗浄装置の洗浄系のうち、第1及び第2のリンス槽51,52に係る構成について説明する。
【0039】
この洗浄装置は、第1のリンス槽51に、当該第1のリンス槽51からオーバーフローしたリンス液を蓄えるオーバーフロー槽53を備えている。
【0040】
また、この洗浄装置は、マスク10を介して第1のリンス槽51に持ち込まれる第2の洗浄槽22の微量な洗浄液や微量な有機材料等の不純物を含むリンス液から、常圧下における常圧蒸留によって当該不純物を取り除くための常圧蒸留器60を備えている。リンス液は、第1のリンス槽51からオーバーフロー槽53にオーバーフローして、当該オーバーフロー槽53から常圧蒸留器60に流入する。
【0041】
上述したリンス液の沸点は例えば60℃程度であれば、約160℃程度の沸点を有する洗浄液の蒸留のように、当該沸点を下げるための真空蒸留を行う必要がない。そのため、常圧蒸留器60で常圧(大気圧)下による常圧蒸留が行われる。蒸留の際に蒸発したリンス液は、これを液化させる温度のトラップコイル60tにより液化される。
【0042】
また、この洗浄装置は、常圧蒸留器60により常圧蒸留されたリンス液を室温に冷却する第2の冷却器61を備えている。第2の冷却器61によって室温に冷却されたリンス液は、第2の還流管102を通して第2のリンス槽52に還流する。
【0043】
ここで、第2の冷却器と第2の還流管102との間には、水分離槽80が備えられている。この水分離槽80は、常圧蒸留を経て水分を含んだリンス液を、水分とリンス液とに分離するものである。リンス液は、水分の分離後、第2の還流管102を通して第2のリンス槽52に還流する。
【0044】
また、この洗浄装置は、第1のリンス槽51もしくは第2のリンス槽52から蒸発したリンス液を回収する回収槽54を備えている。例えば、回収槽54内の温度は、第2のリンス槽52の蒸気圧と回収槽54内の蒸気圧の比が150:1〜10:1になるような温度に設定すれば良い。回収槽54は、第3の冷却器55を備えている。この第3の冷却器55が回収槽54を例えば零下25℃程度まで冷却することにより、回収槽54の蒸気圧が第1のリンス槽51もしくは第2のリンス槽52の蒸気圧よりも概ね100分の1程度に低くなり、蒸発したリンス液が回収槽54に流入する。回収槽54に流入したリンス液は水分離槽80へ流入して、含んでいる水分の分離後、第2の還流管102を通して第2のリンス槽52に還流する。
【0045】
上述したようなリンス液の常圧蒸留、冷却、及び還流により、マスク10のリンス処理を、室温において行うことが可能となる。従って、マスク10に、熱を起因とした応力によるストレスや損傷が生じることを極力抑止することが可能となる。
【0046】
また、上述した洗浄装置では、洗浄液に浸漬したマスク10をリンス液に浸漬することから、微量の洗浄液がマスク10を介して第1のリンス槽51のリンス液に移り、当該リンス液と混合される。そこで、この洗浄装置は、洗浄液を含有するリンス液を、洗浄液とリンス液とに分離する分離器90を備えている。この分離器90は、洗浄液を含有するリンス液を蒸発させた後に、当該蒸発したリンス液のみを冷却器等で冷却することにより液化して回収する。このように分離されたリンス液は、水分離槽80へ流入して、含んでいる水分の分離後、第2の還流管102を通して第2のリンス槽52に還流する。
【0047】
さらに、この洗浄装置は、分離器90により分離された洗浄液、及び常圧蒸留器60から流入する常圧蒸留される前のリンス液(洗浄液を含有する)を蓄積して再び分離器90へ流入させるプール槽91を備えている。
【0048】
ここで、プール槽91は、流入して蓄積される洗浄液及びリンス液の液面の上限を検出する上限センサ91fと、当該液面の下限を検出する下限センサ91eを備えている。そして、バルブ60bの開閉により、常圧蒸留器60からのリンス液を、上限センサ91fが液面を検出するまでプール槽91に流入させて当該流入を停止した後、その洗浄液を含むリンス液を分離器90に流入させ、洗浄液とリンス液との分離を行う。
【0049】
上記リンス液の分離器90への流入は、プール槽91内のリンス液の液面が下限センサ91eによって検出された時点で停止され、再度、常圧蒸留器60からのリンス液を、上限センサ91fが液面を検出するまでプール槽91に流入させて当該流入を停止する。そして、洗浄液を含むリンス液を分離器90に流入させる。このような洗浄液とリンス液との分離を繰り返す回数が増加するのに従って、プール槽91内に蓄積されるリンス液は、分離器90から流入してプール槽91内で蓄積する洗浄液を多く含むようになる。そのため、当該洗浄液を含有するリンス液が分離器90で蒸発して分離される速度が遅くなる。
【0050】
そこで、プール槽91内において、下限センサ91eの検出結果により、分離器90による分離開始時点からリンス液の液面が下限に到達するまでの時間が計測され、当該到達時間が所定の時間よりも長くなった場合、当該プール槽内のリンス液に含まれる洗浄液は飽和状態であるとみなされて、分離器90による分離が終了する。分離器90による分離が終了した後、プール槽91内の分離された洗浄液は、真空蒸留器30へ流入する。
【0051】
上述したような処理により、リンス液に含まれる洗浄液を分離して、リンス液のみを再利用することができる。
【0052】
さらに、上述した第1及び第2のリンス槽51,52は、マスク10の表面にリンス液が確実に及ぶように当該リンス液を振動させるための不図示の第2の超音波振動器を備えている。さらに、その第2の超音波振動器の振動によるリンス液の温度の上昇に対処するため、第1及び第2のリンス槽51,52は、リンス液の温度を室温に微調整するための第2の温度調整器70を備えている。
【0053】
ここで、第2の温度調整器70は、第2の熱交換器70h及びポンプ72を備えており、当該第2の熱交換器70hにより第1及び第2のリンス槽51、52のリンス液を冷却する。そして、第2の温度調整器70は、当該第2の熱交換器70hにより冷却されたリンス洗浄液を、ポンプ72を介して第1及び第2のリンス槽51,52へ流入させるか否かによって、当該各槽のリンス液の温度を室温に微調整する。
【0054】
上述したように、第2の温度調整器70によって、第1及び第2のリンス槽51,52のリンス液の温度を微調整することが可能となる。
【0055】
次に、第1及び第2の洗浄槽21,22、及び第1及び第2のリンス槽51,52の各槽内の詳細な構成について説明する。図2は、第1及び第2の洗浄槽21,22を説明する断面図である。また、図3は、第1及び第2のリンス槽51,52、及び回収槽54を説明する断面図である。なお、図2及び図3では、オーバーフロー槽23、53の図示は省略されている。
【0056】
図2に示すように、第1及び第2の洗浄槽21,22は、それぞれ、第1の超音波振動器21a,22a、第1の攪拌器21b,22b、第1の温度センサ21c,22c、及び可動式の第1の液中キャリア21d,22dを備えている。ここで、第1の超音波振動器21a,22aは、マスク10の表面に洗浄液が確実に及ぶようにマスクに対して正対するように当該洗浄液に振動を与えれば良いが、マスクを複数枚ずつ洗浄するいわゆるバッチ式の場合よりも、マスクを1枚ずつ洗浄するいわゆる枚葉式の場合の方が、その第1の超音波振動器21a,22aの効果は大きい。また、第1の攪拌器21b,22bは、第1及び第2の洗浄槽21,22内で洗浄液を流動させるように当該洗浄液を攪拌するものである。
【0057】
また、第1の温度センサ21c,22cは、第1の温度調整器40による第1及び第2の洗浄槽21,22内の洗浄液の温度調整の際に、参照温度として、当該洗浄液の温度を検出するものである。また、第1の液中キャリア21d,22dは、マスク10を洗浄処理する際に当該マスク10を保持して洗浄液に浸漬する機能を有する。また、この第1の液中キャリア21d,22dは、マスク10の表面にリンス液が確実に及ぶようにマスク10全体を垂直方向に振動させる揺動機能を有していることが好ましい。
【0058】
上述したように、第1及び第2の洗浄槽21,22では、第1の超音波振動器21a,22aによる洗浄液の振動、第1の攪拌器21b,22bによる洗浄液の攪拌、及び第1の液中キャリア21d,22dによるマスク10の揺動により、当該洗浄液によるマスク10の洗浄処理が確実に行われるようになる。
【0059】
同様に、図3に示すように、第1及び第2のリンス槽51,52は、それぞれ、第2の超音波振動器51a、52a、第2の攪拌器51b,52b、第2の温度センサ51c,52c、及び可動式の第2の液中キャリア51d,52dを備えている。ここで、第2の超音波振動器51a、52aは、マスク10の表面にリンス液が確実に及ぶように当該リンス液に振動を与える振動器である。また、第2の攪拌器51b,52bは、第1及び第2のリンス槽51,52内でリンス液を流動させるように当該リンス液を攪拌するものである。
【0060】
また、第2の温度センサ51c,52cは、第2の温度調整器70による第1及び第2のリンス槽51,52内のリンス液の温度調整の際に、参照温度として、当該リンス液の温度を検出するものである。また、第2の液中キャリア51d,52dは、マスク10をリンス処理する際に当該マスク10を保持してリンス液に浸漬する機能を有する。また、この第2の液中キャリア51dは、マスク10の表面にリンス液が確実に及ぶようにマスク10全体を垂直方向に振動させる揺動機能を有していることが好ましい。
【0061】
また、第2のリンス槽52と導通する回収槽54は、第3の冷却器55及び第3の温度センサ54cを備えている。第3の冷却器55は、第3の温度センサ54cの検出結果に応じて、回収槽54を、第1及び第2のリンス槽51,52よりも低い温度に冷却する。当該冷却の温度は、前述のように、例えば零下25℃程度である。回収槽54に導かれた蒸発したリンス液は、いわゆるトラップコイル54tによって液化されて、当該回収槽54に回収される。
【0062】
また、第1及び第2のリンス槽51,52のリンス液の液面より上方には、第3及び第4の温度調整器57,58、及び2つの第4の温度センサ50cが備えられている。第3の温度調整器57は、第1及び第2のリンス槽51,52のリンス液の液面の上方の温度を例えば零下10℃程度に冷却することにより、蒸発したリンス液が第1及び第2のリンス槽51,52の外部へ拡散することを抑止する第1の空気層59aを形成する。また、第4の温度調整器58は、第1の空気層59aの上方の温度を、室温より若干高い温度に調整して、第1及び第2のリンス槽51,52の外部の大気が当該槽内に流入することを抑止する第2の空気層59bを形成する。
【0063】
ここで、第3及び第4の温度調整器57,58による上記温度の調整は、2つの第4の温度センサ50cによる温度の検出結果に応じて行われることが好ましい。なお、第3及び第4の温度調整器57,58による上記温度の調整が、予め設定した所定の温度に調整される場合、2つの第4の温度センサ50cのうちいずれか1つもしくは全ては、省略されてもよい。
【0064】
上述したように、第1及び第2のリンス槽51,52では、第2の超音波振動器51a,52aによるリンス液の振動、第2の攪拌器51b,52bによるリンス液の攪拌、及び第2の液中キャリア51d,52dによるマスク10の揺動により、当該リンス液によるマスク10のリンス処理が確実に行われるようになる。
【0065】
また、第1及び第2のリンス槽51,52のリンス液の液面より上方に、第3及び第4の温度調整器57,58を備えているため、第1及び第2のリンス槽51,52で蒸発したリンス液を大気中に拡散させずに、回収槽54によって回収することができる。
【0066】
次に、本実施形態に係る洗浄装置の洗浄系における洗浄液の流れについて説明する。第1の洗浄槽21、次いで第2の洗浄槽22にマスク10が浸漬されて洗浄処理が行われると、マスク10から除去された有機材料が洗浄液に混ざる。そして、第1の還流管101を通して還流した洗浄液が第2の洗浄槽22に流入すると、第1及び第2の洗浄槽21,22の洗浄液が第1のオーバーフロー槽23へオーバーフローする。オーバーフローした洗浄液は真空蒸留器30へ流入する。ここで、真空蒸留器30内は例えば0.8気圧程度に減圧され、例えば120℃程度に加熱されて、洗浄液の真空蒸留が行われる。真空蒸留器30の底部に沈殿した有機材料は、冷却釜30rで冷却されて定期的に外部へ排出する。
【0067】
この洗浄液の沸点は例えば160℃程度であるが、当該洗浄液を真空状態において加熱して蒸留することにより、当該沸点を低下させて、蒸留の際の加熱温度を例えば120℃程度に低下させることができる。また、上記蒸留は真空蒸留であるため、蒸留の過程で洗浄液に水分が含まれることはない。
【0068】
真空蒸留されて有機材料が取り除かれた洗浄液は、第1の冷却器31により室温に冷却され、第1の還流管101を通して第2の洗浄槽22に還流する。
【0069】
また、第1及び第2の洗浄槽21,22の洗浄液の一部は、第1の温度調整器40に備えられた第1の熱交換器40hにより冷却され、当該冷却された洗浄液が、
ポンプ42を介して第2の洗浄槽22へ適宜流入する。
【0070】
次に、本実施形態に係る洗浄装置の洗浄系におけるリンス液の流れについて説明する。第1のリンス槽51、次いで第2のリンス槽52にマスク10が浸漬されてリンス処理が行われると、マスク10から除去された洗浄液がリンス液に混ざる。第2の還流管102を通して還流したリンス液が第2のリンス槽52に流入すると、第1及び第2のリンス槽51,52のリンス液が第2のオーバーフロー槽53へオーバーフローする。
【0071】
このオーバーフローしたリンス液は常圧蒸留器60へ流入する。ここで、リンス液の沸点は例えば60℃であるために、例えば160℃程度の沸点を有する洗浄液の蒸留のように、当該沸点を下げるための真空蒸留を行う必要がない。そこで、常圧蒸留器60内は例えば常圧(大気圧)下で、当該沸点を超える例えば65℃程度に加熱されて、リンス液の常圧蒸留が行われる。
【0072】
この常圧蒸留により、リンス液に含まれる有機材料(洗浄液が付着したマスク10を介して運ばれる)等の不純物が取り除かれる。常圧蒸留されたリンス液は、常圧蒸留される過程で水分が混合しているが、その水分よりも大きい比重を利用して、水分とリンス液とに分離される。このリンス液は、第2の冷却器62により室温に冷却され、水分離槽80へ流入する。
【0073】
水分離槽80でさらに水分が除かれたリンス液は、第2の還流管102を通して第2のリンス槽52へ還流する。
【0074】
また、常圧蒸留器60へ流入したものの常圧蒸留されていないリンス液の一部、即ち微量の洗浄液(マスク10を介してリンス液に混ざる)を含むリンス液は、バルブ60bの開閉に応じて、プール槽91へ流入する。リンス液がプール槽91へ流入して当該プール槽91の上限を満たした後、バルブ60bは閉じられ、リンス液の流入が停止する。そして、プール槽91内のリンス液は、分離器90へ流入して、リンス液と洗浄液との分離が開始される。
【0075】
プール槽91内のリンス液の液面が下限センサ91eにより検出された場合、再びバルブ60bが開けられて常圧蒸留器60からプール槽91内へリンス液が流入する。
【0076】
分離器90によって分離されたリンス液は、その水分よりも大きい比重を利用して、水分離槽80で水分を取り除いた後、第2の還流管102を通して第2のリンス槽52へ還流する。また、分離器90によって分離された洗浄液は、プール槽91へ流入する。
【0077】
このような洗浄液とリンス液との分離を繰り返してゆくに従って、プール槽91内に蓄積されるリンス液は、分離器90から流入してプール槽91内で蓄積する洗浄液を多く含むようになる。そのため、当該洗浄液を含有するリンス液が分離器90で蒸発して分離される速度が遅くなる。
【0078】
そこで、プール槽91のリンス液の液面に対する下限センサ91eの検出結果により、分離器90による分離開始時点からリンス液の液面が下限に到達するまでの時間が計測され、当該到達時間が所定の時間よりも長くなった場合、当該プール槽91内のリンス液に含まれる洗浄液は飽和状態であるとみなされて、分離器90による分離が終了する。そして、それまでは閉じていたバルブ91bが開いて、プール槽91内の分離された洗浄液は、真空蒸留器30へ流入する。
【0079】
また、第1及び第2のリンス槽51,52から蒸発したリンス液は、第3の冷却器55によって、第1及び第2のリンス槽51,52よりも低い例えば零下25℃程度に冷却された回収槽54に導かれて、回収される。回収槽54に回収されたリンス液は、水分離槽80へ流入して、その1.5程度の比重を利用して水分が除かれ、第2の還流管102を通して第2のリンス槽52へ還流する。
【0080】
次に、本実施形態に係る洗浄装置の搬送系について図面を参照して説明する。図4乃至図8、及び図11乃至図14は、本実施形態に係る洗浄装置の搬送系を説明する断面図である。また、図9及び図10は、本実施形態に係る洗浄装置の搬送系を説明する斜視図である。なお、図4乃至図14では、洗浄系に係る構成要素については、搬送系の説明に必要な一部の構成要素のみを図示している。
【0081】
図4乃至図14に示すように、本実施形態に係る洗浄装置の搬送系は、ステージ200上に設置されて複数のマスク10を水平方向に格納したカセット210と、カセット210から1つのマスク10を取り出す第1のアーム221を有した第1の移載装置220と、マスク10を掴む第2のアームを有した第2の移載装置230と、第1及び第2の洗浄槽21,22や第1及び第2のリンス槽51,52にマスク10を搬送する搬送装置240と、を備えている。ここで、搬送装置240は、マスク10を搬送する際に、マスク10の一辺を保持するための鉤部242を有している。
【0082】
次に、本実施形態に係る洗浄装置の搬送系の動作について説明する。最初に、図4に示すように、第1の移載装置220の第1のアーム221が伸縮して、カセット210から1つのマスク10を取り出す。次に、図5に示すように、第1の移載装置220は、第1のアーム221を下降させてマスク10をステージ200の所定の位置に載置する。次に、図6に示すように、第2の移載装置230が、第2のアーム231によってマスク10を掴み、さらに図7に示すように、マスク10を搬送装置240上に載置する。
【0083】
そして、図8に示すように、マスク10が載置された搬送装置240は、垂直方向に90度程度回転して垂直な状態に至るまで起き上がる。また、搬送装置240上に載置されたマスク10も同時に、垂直方向に90度程度回転して起き上がる。このときの搬送装置240及びそれに載置されたマスク10の様子を示すと、図9の斜視図のようになる。
【0084】
このように、搬送装置240及びマスク10が垂直な状態となるために、マスク10を構成する金属薄膜に応力(金属薄膜に対する重力を起因とする応力や液による揺動を起因とする応力)が加わって金属疲労や損傷が生じることを極力回避することが可能となる。さらに、マスク10を垂直方向に立てかけることにより、液切れがよくなるという効果もある。
【0085】
なお、上記搬送装置240とマスク10が回転する際の角度は、必ずしも90度程度である必要は無い。即ち、重力を起因とする応力によってマスク10を構成する金属薄膜に金属疲労や損傷が極力生じないような角度であれば、搬送装置240及びマスク10は、水平及び垂直以外の角度に至るようにして回転してもよい。
【0086】
さらに、図10の斜視図に示すように、搬送装置240に予め備えられている保持具241が、マスク10の係止部13と嵌合されるようにして当該マスク10の係止部13に圧着される。これにより、マスク10は、その金属薄膜の表面に損傷を与えることなく、搬送装置240の保持具241と鉤部242とにより挟まれて保持される。
【0087】
こうして搬送装置240上に保持されたマスク10は、搬送装置240と共に、洗浄装置の洗浄系、即ち、第1及び第2の洗浄槽21,22(及び第1及び第2のリンス槽51,52)へ搬送される。ここで、当該搬送の際は、搬送装置240は、図11の断面図に示すように、垂直方向及び水平方向の移動を連続的に行うことにより、同図中の軌跡1及び8のように、円弧状に近似した曲線状の所定の軌跡を以って移動する。なお、同図中のA,B,Cは洗浄液もしくはリンス液の液面より上方における垂直方向の位置(高さ)を示している。
【0088】
そのような所定の軌跡を有した搬送装置240の移動により、当該移動が垂直方向から水平方向へ、もしくは水平方向から垂直方向に切り替わる際の衝撃による応力によって金属薄膜から成るマスク10に金属疲労や損傷が生じることを極力回避することができる。
【0089】
また、搬送装置240は、所定の速度を以って移動する。この所定の速度は、搬送装置240が移動する際の風圧や衝撃による応力によって、金属薄膜から成るマスク10に金属疲労や損傷が生じない程度の速度であるものとする。もしくは、上記所定の速度は、搬送装置240が移動する際に生じる気流の乱れによって、第1及び第2のリンス槽51,52内のリンス液の蒸発を促さないような所定の速度であるものとする。
【0090】
次に、図12に示すように、マスク10を載置した搬送装置240が、第1の洗浄槽21上に搬送される。そして、図13に示すように、第1の洗浄槽21中に備えられている第1の液中キャリア21dが洗浄液の液面より上方に上昇する。そして、第1の液中キャリア21dが搬送装置240と同一の位置まで上昇した後、もしくは搬送装置240が洗浄液の液面の上方に上昇した液中キャリア21dと同一の位置まで移動した後、搬送装置240の保持具241の圧着が解除されて、マスク10が液中キャリア21dに移し替えられる。
【0091】
その後、図14に示すように、マスク10が載置された第1の液中キャリア21dが、洗浄液中に下降して、マスク10が洗浄液に浸漬される。また、マスク10を洗浄液中から取り出すときは、図14、図13、図12に示した過程を、この順で経るものとする。そして、図12乃至図14に示した第1の洗浄槽21のときと同様に、マスク10を載置した搬送装置240が、第2の洗浄槽22上に搬送される。そして、マスク10が第1の液中キャリア21dを介して洗浄液中に浸漬された後、取り出される。
【0092】
上述したように、第1及び第2の洗浄槽21,22の洗浄液にマスク10を浸漬する際、搬送装置240を洗浄液に浸漬することなく、洗浄処理を行うことができる。即ち、搬送装置240に洗浄液が付着することを極力回避することができる。そのため、第1及び第2の洗浄槽21,22の洗浄液が、搬送装置240を介して第1及び第2のリンス槽51,52のリンス液に運ばれることを極力回避することができる。
【0093】
次に、図12乃至図14に示した第1の洗浄槽21のときと同様に、マスク10を載置した搬送装置240が、第1のリンス槽51上に搬送される。そして、マスク10が第2の液中キャリア51dを介してリンス液中に浸漬された後、取り出される。さらに、マスク10を載置した搬送装置240が、第2のリンス槽52上に搬送される。そして、マスク10が第2の液中キャリア52dを介してリンス液中に浸漬された後、取り出される。
【0094】
上述したように、第1及び第2のリンス槽51,52のリンス液にマスク10を浸漬する際、搬送装置240をリンス液に浸漬することなく、リンス処理を行うことができる。即ち、搬送装置240にリンス液が付着することを極力回避することができる。そのため、再び洗浄処理を行う際、搬送装置240にリンス液が付着して、当該リンス液が第1及び第2の洗浄槽21,22の洗浄液に運ばれることを極力回避することができる。
【0095】
なお、上述した搬送装置240は、マスク10を洗浄液もしくはリンス液に浸漬する場合、図11の軌跡1乃至4に従って移動することが好ましい。即ち、最初に、搬送装置240は、軌跡1に従ってAからBの高さに移動して一時停止する。その停止の際には、急激に停止するのではなく、マスクに前述の応力がかからないように徐々に減速しながら停止させるようにする。そして、不図示の液中キャリア21d,22d,51d,52dがBの高さに上昇した後、搬送装置240は、液中キャリア21d,22d,51d,52dにマスク10を受け渡しながら、BからCの高さに移動する。その後、搬送装置240は、液中キャリア21d,22d,51d,52dを離れるようにして軌跡3に従って水平方向に移動する。さらに、搬送装置240は、Aの高さに戻るようにして、軌跡4に従って、垂直方向に移動する。
【0096】
また、上述した搬送装置240は、マスク10を洗浄液もしくはリンス液の液中から取り出す場合、図11の軌跡5乃至8に従って移動することが好ましい。即ち、最初に、搬送装置240は、軌跡5に従ってAからCの高さに移動する。次に、液中キャリア21d,22d,51d,52dに近づくようにして、軌跡6に従って水平方向に移動する。その後、搬送装置240は、軌跡7に従って、CからBの高さに移動して一時停止する。その後、搬送装置240は、Bの高さに上昇している液中キャリア21d,22d,51d,52dからマスク10を掬い上げるようにして移し替えながら、軌跡8に従って、BからAの高さに移動する。このときも、搬送装置240が急激に上方向に移動しないように、徐々に移動速度を増すようにすることが好ましい。そうすることにより、搬送装置240は、マスクに上述の応力をかけることなく移動できる。
【0097】
ここで、搬送装置240は1つのマスク10を、第1及び第2の洗浄槽21,22もしくは第1及び第2のリンス槽51,52のいずれか1つの槽へ搬送した後、当該搬送が完了したマスク10とは異なる他のマスク10を、その他の槽に搬送してもよい。
【0098】
最後に、マスク10を載置した搬送装置240が、図1に示した真空乾燥器99に搬送されて乾燥される。
【0099】
上述のように、図11に示す軌跡1及び8において円弧をなすように移動させること、また、軌跡1においては、移動速度(下方向)を徐々に減速すること、さらに軌跡8においては、移動速度(上方向)を徐々に増すようにすることによって、マスク10にかかる応力を減少させることができる。また、マスク10を搬送していないときの搬送装置240の動きは、液槽の側壁や液中キャリアとぶつからないようにすればよく、円弧状でもよく、また、急激に移動してもよい。
【0100】
なお、上述した実施形態では、洗浄液及びリンス液を、炭化水素系の洗浄液及びフッ素系のリンス液としたが、本発明はこれに限定されない。即ち、上記洗浄液及びリンス液は、マスク10に対して洗浄処理(有機EL用の有機材料の除去)及びリンス処理を行うことが可能であり、炭化水素系の洗浄液及びフッ素系のリンス液と同様の沸点、及び水分に対する比重を有したものであれば、上記以外の洗浄液及びリンス液であってもよい。
【0101】
また、上述した実施形態では、マスク10はニッケル(Ni)及び鉄(Fe)から成る金属薄膜であるものとしたが、本発明はこれに限定されない。即ち、本発明は、マスク10が上記金属薄膜以外の金属、もしくは樹脂により構成される場合においても適用される。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の実施形態に係る洗浄装置の洗浄系を説明する図である。
【図2】本発明の実施形態に係る洗浄装置の洗浄系を説明する図である。
【図3】本発明の実施形態に係る洗浄装置の洗浄系を説明する図である。
【図4】本発明の実施形態に係る洗浄装置の搬送系を説明する断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る洗浄装置の搬送系を説明する断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る洗浄装置の搬送系を説明する断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る洗浄装置の搬送系を説明する断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る洗浄装置の搬送系を説明する断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る洗浄装置の搬送系を説明する斜視図である。
【図10】本発明の実施形態に係る洗浄装置の搬送系を説明する斜視図である。
【図11】本発明の実施形態に係る洗浄装置の搬送系を説明する断面図である。
【図12】本発明の実施形態に係る洗浄装置の搬送系を説明する断面図である。
【図13】本発明の実施形態に係る洗浄装置の搬送系を説明する断面図である。
【図14】本発明の実施形態に係る洗浄装置の搬送系を説明する断面図である。
【図15】従来例に係る有機EL用のマスクを説明する上面図である。
【図16】図15のX−X線に沿った断面図である。
【図17】図15のY−Y線に沿った断面図である。
【図18】有機材料が蒸着されたマスクの断面図である。
【符号の説明】
【0103】
1 有機材料 1a オーバーハング
10 マスク 11 孔 12 金属フレーム 13 係止部
21 第1の洗浄槽 22 第2の洗浄槽
21a,22a 第1の超音波振動器
21b,22b 第1の攪拌器
21c,22c 第1の温度センサ
21d,22d 第1の液中キャリア
30 真空蒸留器 31 第1の冷却器
40 第1の温度調整器
51 第1のリンス槽 52 第2のリンス槽
51a,52a 第2の超音波振動器
51b,52b 第2の攪拌器
51c,52c 第2の温度センサ
51d,52d 第2の液中キャリア
54 回収槽 55 第3の冷却器
60 常圧蒸留器 61 第2の冷却器
70 第2の温度調整器
80 水分離槽
90 分離器
91 プール槽 91f 上限センサ 91e 下限センサ
101 第1の還流管 102 第2の還流管
200 ステージ
210 カセット
220 第1の移載装置
230 第2の移載装置
240 搬送装置 241 保持具 242 鉤部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクに付着した有機EL用の有機材料を除去する洗浄装置であって、
前記マスクを所定の洗浄液により洗浄処理する洗浄槽と、
前記洗浄槽からオーバーフローした前記洗浄液を真空蒸留する真空蒸留器と、
前記真空蒸留器により真空蒸留された前記洗浄液を室温に冷却する第1の冷却器と、
前記第1の冷却器により冷却された前記洗浄液を前記洗浄槽に還流させる第1の還流管と、
前記洗浄槽で洗浄された前記マスクを所定のリンス液によりリンス処理するリンス槽と、
前記リンス槽からオーバーフローした前記リンス液を常圧下で蒸留する常圧蒸留器と、
前記常圧蒸留器で常圧蒸留された前記リンス液を室温に冷却する第2の冷却器と、
前記第2の冷却器により冷却された前記リンス液を前記リンス槽に還流させる第2の還流管と、を備えることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄槽内に、前記洗浄液を振動させる第1の超音波振動器を備えることを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄槽の洗浄液の温度を検出する第1の温度センサと、
前記第1の温度センサの検出結果に応じて前記洗浄槽内の前記洗浄液を室温に調整する第1の温度調整器と、を備えることを特徴とする請求項2記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記第1の温度調整器に第1の熱交換器を備え、
当該第1の温度調整器は、当該第1の熱交換器により冷却された前記洗浄液を前記洗浄槽へ流入させることにより当該洗浄槽内の前記洗浄液の温度を調整することを特徴とする請求項3記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記リンス槽内に、前記リンス液を振動させる第2の超音波振動器を備えることを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記リンス槽のリンス液の温度を検出する第2の温度センサと、
前記第2の温度センサの検出結果に応じて前記リンス槽内の前記リンス液を室温に調整する第2の温度調整器と、を備えることを特徴とする請求項5記載の洗浄装置。
【請求項7】
前記第2の温度調整器に第2の熱交換器を備え、
当該第2の温度調整器は、当該第2の熱交換器により冷却された前記リンス液を前記リンス槽へ流入させることにより当該リンス槽内の前記リンス液の温度を調整することを特徴とする請求項6記載の洗浄装置。
【請求項8】
第3の冷却器を有した回収槽を備え、
前記回収槽は、当該第3の冷却器によって冷却されることにより、前記リンス槽内で蒸発した前記リンス液を回収し、
前記回収槽に回収された前記リンス液を、前記第2の還流管を通して前記リンス槽に還流させることを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項9】
前記回収槽に、当該回収槽内の温度を検出する第3の温度センサを備え、
前記第3の冷却器は、前記第3の温度センサを用いて、前記リンス槽内と前記回収槽内とで蒸気圧差が生じるように前記回収槽内を冷却することを特徴とする請求項8記載の洗浄装置。
【請求項10】
前記第2の冷却器によって冷却された前記リンス液中の水分を分離する水分離槽を備え、
前記水分離槽を通した前記リンス液を、前記第2の還流管を通して前記リンス槽に還流させることを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項11】
前記回収槽によって回収された前記リンス液中の水分を分離する水分離槽を備え、
前記水分離槽を通した前記リンス液を、前記第2の還流管を通して前記リンス槽に還流させることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の洗浄装置。
【請求項12】
洗浄液を含有するリンス液を、洗浄液とリンス液とに分離する分離器と、
当該分離器により分離された洗浄液、及び前記常圧蒸留器の洗浄液を含有するリンス液を蓄積して再び前記分離器へ流入させるプール槽と、を備えることを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項13】
前記プール槽に、前記洗浄液及び前記リンス液の液面の下限を検出する下限センサを備え、
当該下限センサの検出結果に応じて、分離された洗浄液を前記真空蒸留器へ流入させることを特徴とする請求項12記載の洗浄装置。
【請求項14】
前記所定のリンス液は、フッ素系溶媒であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13のいずれかに記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−100263(P2006−100263A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249430(P2005−249430)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(504333101)株式会社 ギガテック (2)
【出願人】(504333112)大川興産株式会社 (2)
【Fターム(参考)】