説明

洗浄装置

【課題】回転するウェーハの表面に噴射されミスト状に飛散した洗浄水及び洗浄屑が、ウェーハ表面上に再付着することのない洗浄装置を提供する。
【解決手段】回転テーブル3の上面に対向する位置に強制給気手段5を設け、回転テーブル3の外周を囲繞し回転テーブル3の上面と同じ高さ位置またはその上面より低い位置に環状排気手段7を配設し、環状排気手段7から吸引排気することにより、洗浄チャンバー2内において強制給気手段5から環状排気手段7に向かうダウンフロー100を発生させ、ダウンフロー100を利用して洗浄時に飛散したミスト状の洗浄水及び洗浄屑を効果的に環状排気手段7から排気し、ミスト等の被洗浄物Wの表面への再付着を防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転するウェーハに対して洗浄水を供給してウェーハの洗浄を行う洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等の被加工物は、ダイシング装置等によってストリートに沿って分離され個々のデバイスに分割される。分割されたウェーハの表面に対しては、洗浄装置において洗浄液が噴射され、これによって分割による切削屑等で汚れたウェーハの表面は洗浄される。
【0003】
かかる洗浄装置は、ウェーハ等を吸引保持して回転するスピンナーテーブルと、このスピンナーテーブルに対向して配設される洗浄液供給手段とを少なくとも含む洗浄チャンバーを備えており、この洗浄チャンバーの下部には、洗浄チャンバー内において洗浄液を噴射することにより発生したミストを強制的に排出する排出手段が形成され、この洗浄チャンバーの上部には、外気を流入させる外気流入孔が形成されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−162435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、洗浄時に回転テーブルが高速回転すること等に起因して、外気流入孔から排出手段へ流れる気流が旋回する影響で、ウェーハ表面に噴射された洗浄水はミスト状に飛散する。そして、排出手段は洗浄チャンバー下部に一カ所配設されているのみであるため、ミスト状に飛散した洗浄水を排出手段が完全に外部に排出することが困難であり、洗浄後のウェーハ上にミスト状の洗浄水及び洗浄屑が再付着するという問題がある。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、回転するウェーハの表面に噴射されミスト状に飛散した洗浄水及び洗浄屑が、ウェーハ表面上に再付着することのない洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被洗浄物を上面に保持して回転する回転テーブルと、回転テーブルに保持された被洗浄物に向けて洗浄液を噴射する洗浄液供給手段とを有し、天井壁、側壁及び回転テーブルの上面よりも下方に位置する底壁によって囲まれた洗浄チャンバーの内部に回転テーブル及び洗浄液供給手段が収容されて構成される洗浄装置に関するもので、回転テーブルの外周を囲繞し、回転テーブルの上面と同じ高さ位置又はその上面より低い位置で上下方向に貫通した吸引口を有する環状排気手段と、回転テーブルの上面に対向する位置に設けられた強制給気手段とを備え、洗浄チャンバー内には、強制給気手段から給気され環状排気手段から吸引排気されることによって、チャンバー内が大気圧よりも気圧が高い状態で上方から下方へ流れるダウンフローが形成され、環状排気手段全周に渡り均等に吸引排気されることを特徴とする。
【0008】
上記洗浄装置において、環状排気手段の吸引口は、環状に等間隔に形成された複数個の孔からなり、複数個の孔は、洗浄チャンバーを構成する側壁又は底壁に配設された排出口に連通され、排出口は、回転テーブルの上面よりも下方に位置し、外部のダクトに接続され、複数個の孔は、排出口に近づくにつれて開口部が小さくなるようにそれぞれが形成され、洗浄チャンバー内のダウンフローは、環状排気手段全周に渡り均等に吸引排気されることが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、回転テーブルの上面に対向する位置に強制給気手段を設け、回転テーブルの外周を囲繞する環状排気手段を配設し、環状排気手段から吸引排気するため、洗浄チャンバー内において強制給気手段から環状排気手段に向かうダウンフローが発生し、洗浄時に飛散したミスト状の洗浄水及び洗浄屑が効果的に環状排気手段から排気され、被洗浄物の表面への再付着を可及的に防ぐことができる。特に、環状排気手段の吸引口が、環状に等間隔に形成された複数個の孔からなり、複数個の孔が、排出口に近づくにつれて開口部が小さくなるようにそれぞれが形成されると、洗浄チャンバー内のダウンフローは、環状排気手段全周に渡り均等に吸引排気されるため、洗浄チャンバー内のミスト等を、排出口から満遍なく排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】洗浄装置の一例を示す斜視図である。
【図2】洗浄装置の内部構造の一例を略示的に示す断面図である。
【図3】環状排気手段の一例を略示的に示す断面図である。
【図4】環状排気手段の別の例を略示的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示す洗浄装置1は、洗浄チャンバー2の内部において各種被洗浄物の洗浄を行う装置である。洗浄チャンバー2の内部には、被洗浄物を上面に保持して回転する回転テーブル3と、回転テーブル3に保持された被洗浄物Wに向けて洗浄液を噴射する洗浄液供給手段4とが収容されている。
【0012】
洗浄チャンバー2は、開閉カバー20によって上方及び側方から覆われている。開閉カバー20は、天井壁200及び側壁201によって構成されている。天井壁200には、洗浄チャンバー2の内部への給気を行う強制給気手段5が配設されている。洗浄チャンバー2の前方には、洗浄装置1の動作を指示するための操作部6を備えている。
【0013】
図2に示すように、洗浄チャンバー2は、天井壁200、側壁201及び底壁202によって囲まれて形成されている。洗浄チャンバー2の内部に配設された回転テーブル3は、図示しない吸引源と連通する保持部30を有しており、保持部30の上面において被洗浄物を吸引保持することができる。また、回転テーブル3は、図示しないモータに駆動されて回転可能となっている。底壁202の上面は、回転テーブル3の上面よりも下方に位置している。
【0014】
洗浄チャンバー2の内部に配設された洗浄液供給手段4は、鉛直方向の軸心を有する回転軸40と、回転軸40の上端から水平方向にのびるアーム部41と、アーム部41の先端から垂設され回転テーブル3の上面に向けて洗浄液を噴射するノズル42とを備えており、回転軸40の正逆両方向の回転によって、ノズル42を回転テーブル3の上方において揺動させることができる。
【0015】
回転テーブル3の上面に対向する位置には、強制給気手段5が位置している。強制給気手段5の上部、すなわち外部との境界部分には、外部から塵等の侵入を防ぐフィルタ50を備えている。フィルタ50としては、例えばHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタを使用することができる。
【0016】
強制給気手段5の内部には、フィルタ50を介して外気を取り入れるためのファン51を備えている。そして、強制給気手段5の下部には、複数の上下方向に貫通する通気孔52を備えており、フィルタ50を介して取り入れた外気は、通気孔52又はそれに替えてフィルタ等を通って洗浄チャンバー2の内部に流入する構成となっている。
【0017】
回転テーブル3の外周を囲繞する位置には、円環状に形成された環状排気手段7が配設されている。環状排気手段7には、回転テーブル3の上面と同じ高さ位置か、または回転テーブル3の上面より低い位置において上下方向に貫通し、強制給気手段5から外気を下方に向けて通すための孔である吸引口70が複数形成されている。
【0018】
側壁201または底壁202には、回転テーブル3の上面より下方の任意の位置に、装置外部のダクト9(図1参照)に接続された排出口8が形成されている。
【0019】
図3に示すように、環状排気手段7には、小径の吸引口70aと中径の吸引口70bと大径の吸引口70cとが形成されている。小径の吸引口70aは、排出口8に近い位置に形成され、排出口8から離れるにしたがって、中径の吸引口70b、大径の吸引口70cが形成されており、いずれの吸引口も、排出口8に連通している。
【0020】
図2に示したように、被洗浄物Wは、回転テーブル3の保持部30において保持される。そして、回転テーブル3が回転するとともに、洗浄液供給手段4が揺動しながらノズル42から被洗浄物Wに向けて洗浄液が噴出され、回転テーブル3の回転と洗浄液供給手段4の揺動とによって、被洗浄物Wの上面が満遍なく洗浄される。
【0021】
洗浄チャンバー2の内部においては、強制給気手段5から流入した外気が吸引口70を通って排出口8に導かれることによりダウンフロー100が発生する。洗浄中は、洗浄液が高圧で噴射されるとともに、回転テーブル3が高速回転するため、洗浄水がミスト状に飛散するとともに、洗浄前の被洗浄物に付着していた塵などが飛散するが、このダウンフロー100は、洗浄チャンバー2の内部のミストや塵を排出口8から排出することを促進するため、被洗浄物Wにミストや塵が再付着することを防ぐことができる。
【0022】
また、ダウンフロー100が発生することで、洗浄チャンバー2の内部は、大気圧よりも気圧が高い状態となり、開閉カバー20を開けても塵等が入ってこない状態となる。したがって、開閉カバー20を開けたとしても、洗浄チャンバー2の内部に外部の塵等が侵入して被洗浄物に付着するのを防止することができる。
【0023】
特に、図3に示したように、排出口8から離れるにしたがって吸引口70a、70b、70cの径が大きくなることにより、ダウンフロー100が環状排気手段7の全周に渡ってほぼ均等に吸引排気されるため、回転テーブル3の回転によってダウンフロー100が旋回しても、洗浄チャンバー2の内部のミスト等を、排出口8から満遍なく排出することができる。
【0024】
なお、環状排気手段7に形成される吸引口は、排出口8に近づくにつれてその開口部分が小さくなるものであれば、図3の形態には限定されない。図3に示した例では吸引口70a、70b、70cという内径の異なる3種類の吸引口を備えているが、吸引口の内径は2種類でも4種類以上でもよく、例えば図4に示す吸引口71a、71b、・・・、71hのように、排出口8に近づくにつれて徐々に内径が小さくなるように形成すれば、ダウンフロー100がより均等に吸引排気される。また、吸引口の形状も特に限定されず、円形以外であってもよい。
【0025】
図3、4に示した複数の吸引口は、洗浄チャンバー2の内部に均等なダウンフローを形成する観点から、等間隔に形成されていることが望ましい。
【符号の説明】
【0026】
1:洗浄装置
2;洗浄チャンバー
20:開閉カバー 200:天井壁 201:側壁
202:底壁
3:回転テーブル 30:保持部
4:洗浄液供給手段 40:回転軸 41:アーム部 42:ノズル
5:強制給気手段 50:フィルタ 51:ファン 52:通気孔
6:操作部
7:環状排気手段 70、70a、70b、70c:吸引口
71a、71b、・・・、71h:吸引口
8:排出口 9:ダクト
100:ダウンフロー
W:被洗浄物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物を上面に保持して回転する回転テーブルと、該回転テーブルに保持された被洗浄物に向けて洗浄液を噴射する洗浄液供給手段とを有し、天井壁、側壁及び該回転テーブルの上面よりも下方に位置する底壁によって囲まれた洗浄チャンバーの内部に該回転テーブル及び該洗浄液供給手段が収容されて構成される洗浄装置であって、
該回転テーブルの外周を囲繞し、該回転テーブルの上面と同じ高さ位置又は該上面より低い位置で上下方向に貫通した吸引口を有する環状排気手段と、該回転テーブルの上面に対向する位置に設けられた強制給気手段とを備え、
該洗浄チャンバー内には、該強制給気手段から給気され該環状排気手段から吸引排気されることによって、該チャンバー内が大気圧よりも気圧が高い状態で上方から下方へ流れるダウンフローが形成され、該環状排気手段全周に渡り均等に吸引排気されることを特徴とする、
洗浄装置。
【請求項2】
前記環状排気手段の吸引口は、環状に等間隔に形成された複数個の孔からなり、
該複数個の孔は、前記洗浄チャンバーを構成する前記側壁又は前記底壁に配設された排出口に連通され、
該排出口は、前記回転テーブルの上面よりも下方に位置し、外部のダクトに接続され、
該複数個の孔は、該排出口に近づくにつれて開口部が小さくなるようにそれぞれが形成され、
該洗浄チャンバー内の前記ダウンフローは、該環状排気手段全周に渡り均等に吸引排気される、
請求項1記載の洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−243833(P2011−243833A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116129(P2010−116129)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】