流量測定装置及び流量測定方法
【課題】排気路の排気流量を安定して測定することができる流量測定装置及び流量測定方法を提供する。
【解決手段】
排気路の排気流量を測定する流量測定装置8において、ミスト供給部81は排気路7中にミストを供給し、撮像部82はこのミスト供給部81よりも下流側の排気路7を撮像する一方、推定部200はミスト供給部81から供給されたミストを前記撮像部82により撮像した撮像結果に基づいて排気流量を推定する。
【解決手段】
排気路の排気流量を測定する流量測定装置8において、ミスト供給部81は排気路7中にミストを供給し、撮像部82はこのミスト供給部81よりも下流側の排気路7を撮像する一方、推定部200はミスト供給部81から供給されたミストを前記撮像部82により撮像した撮像結果に基づいて排気流量を推定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気路中の排気流量を測定する技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の中には、基板に薬液の塗布膜を形成する工程があり、こうした工程に用いられる薬液としてはレジスト液、反射防止膜用の薬液、あるいは絶縁膜の前駆体を含む薬液などが挙げられる。薬液を用いて処理を行う液処理ユニットには基板保持部であるスピンチャックの周囲を囲むようにカップ体が設けられているものがあり、このカップ体内にて主にスピンコーティング、振り切り乾燥、更にサイドリンスなどの処理が行われる。例えばスピンコーティング時には、基板の中央部に薬液が滴下され、この薬液が遠心力により基板の径方向に広がった後、周囲に飛散する。このとき飛散したミストが上方に舞い上がって基板に再付着するのを防止するために、カップ体には排気路が接続されており、カップ体内の雰囲気を排気できるようになっている。
【0003】
一方カップ内の排気があまり強いと、基板上の液膜の膜厚に影響を及ぼすおそれがあるので、両者の兼ね合いで排気の強さを決定している。また振り切り乾燥及びサイドリンス時では、回転させながら溶剤を吐出したり、薬液を高速回転で振り切ったりすることから、その分飛散するミストの量も多いのでスピンコーティング時よりも強い排気を必要とする場合もある(特許文献1)。
【0004】
このように一連の液処理を行うにあたっては、液処理ユニットにおける排気のコントロールが行われるが、特に排気が液膜の膜厚に影響を与える場合には、排気流量は重要なパラメータの一つとなる。一方、排気路にミストが付着して固化し、固化物が堆積していくと排気路のコンダクタンスが小さくなるため、予定している流量値よりも排気流量が小さくなってしまう場合がある。このため排気路の排気流量を監視する必要があり、従来では排気路に絞り部分を形成してその前後の圧力差を測定し、差圧の測定値に基づいて排気流量を測定することが行われていた。
【0005】
しかしながらこの手法は、薬液のミストが絞り部分に付着すると、流量の低下が差圧の値として反映されなくなるため、排気流量の低下を検出できなくなる。このため絞り部分のメンテナンスを高い頻度で行わなければならないという課題がある。なお、超音波式の流量測定計も知られているが、小型の排気路に装着するには困難であり、また長い流路を必要とするため、例えば特許文献1に記載されたように3連式のカップ体の下部の排気路に装着することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−229062:図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、排気路の排気流量を安定して測定することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る流量測定装置は、排気路の排気流量を測定する流量測定装置において、
前記排気路中にミストを供給するためのミスト供給部と、
前記排気路におけるミスト供給部よりも下流側を撮像するために設けられた撮像部と、
前記ミスト供給部から供給されたミストを前記撮像部により撮像した撮像結果に基づいて排気流量を推定する推定部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
前記流量測定装置は以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記ミスト供給部よりも下流側において、前記排気路を形成する壁部の少なくとも一部が当該排気路の外から内部を覗くことができるように透明部材により構成され、前記撮像部は、この透明部材の外側に設けられていること。
(b)前記推定部は、ミスト供給部からミストが供給されてから予め設定した時間が経過した時点において撮像された画像中のミスト群の下流端の位置に基づいて排気流量を推定すること。
(c)前記推定部は、ミスト供給部からミストが供給されてからミスト群の下流端が予め設定した位置に到達するまでの時間を計測し、この計測時間に基づいて排気流量を推定すること。
(d)前記推定部は、前記撮像部で予め設定された時間だけ連続露光して撮像された画像中のミストが描く軌跡の長さに基づいて排気流量を推定すること。
(e)前記排気路は、液処理装置に設けられた排気路であり、この液処理装置は、下部に前記排気路が接続されたカップ体内の基板保持部に基板を水平に保持し、この基板に薬液を供給した状態で基板保持部を回転させて基板を処理する装置であること。
(f)前記カップ体は複数配置され、これら複数のカップ体の下部に各々接続された排気路は共通の排気路に接続され、前記撮像部により撮像されて排気流量の測定対象となる排気路は、前記カップ体と前記共通の排気路との間に位置する排気路であること。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、ミスト供給部から排気路中にミストを供給し、このミストを撮像部により撮像して得た撮像結果に基づいて排気流量を推定するようにしているため、排気流量を安定して測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態に係る液処理ブロックの平面図である。
【図2】前記液処理ブロックの縦断側面図である。
【図3】前記液処理ブロック内に設けられた液処理ユニットの縦断側面図である。
【図4】前記液処理ユニットに排気路が接続された様子を示す説明図である。
【図5】前記排気路に設けられた流量測定装置の外観構成を示す斜視図である。
【図6】前記流量測定装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図7】前記流量測定装置の作用を示す説明図である。
【図8】前記流量測定装置の動作の流れを示すフロー図である。
【図9】他の実施の形態に係る流量測定装置の動作の流れを示すフロー図である。
【図10】前記他の実施の形態に係る流量測定装置の作用を示す説明図である。
【図11】この他の実施の形態に係る流量測定装置の作用を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施の形態に係る流量測定装置の具体的な構成を説明する前に、当該流量測定装置が設けられる液処理装置について図1〜図3を参照しながら説明しておく。本実施の形態に係る液処理装置は、例えば基板であるウエハWにレジスト液を塗布するための、例えば3連式の液処理ユニット20、21、22として構成されている。図1中10は筐体内に形成された液処理ブロックであり、当該液処理ブロック10内には、例えば3個の液処理ユニット20、21、22が横方向(Y軸方向)に配列した状態で共通のベース体11の上に設けられている。これら液処理ユニット20、21、22は同様に構成されているので、液処理ユニット20を例に挙げてその構成を説明する。
【0013】
図2、図3に示す3はウエハWの裏面側中央部を吸引吸着して水平に保持するための基板保持部であるスピンチャックである。このスピンチャック3は軸部31を介して駆動機構(スピンチャックモータ)32に接続されており、ウエハWを保持した状態で回転及び昇降自在に構成されている。
【0014】
前記スピンチャック3に保持されたウエハWの周縁部外側には、このウエハWを囲むように配置され、上部側が開口するカップ体4が設けられている。前記カップ体4の側周面上端側は内側に傾斜していると共に、その底部側には凹部状をなす液受け部41が設けられている。液受け部41は、ウエハWの周縁下方側の位置にて全周に亘って外側領域と内側領域とに区画されており、外側領域の底部には貯留したレジスト液などのドレインを排出するための排液口43が設けられ、また内側領域の底部には例えば2つの排気口44、45が設けられている。
【0015】
またスピンチャック3に保持されたウエハWの下方には円形板46が設けられており、この円形板46の外側を囲むようにしてリング部材47が設けられている。当該リング部材47の外端面には下方に伸びる端板48が、既述の液受け部41の外側領域内に進入するようにして設けられており、レジスト液などはこれらリング部材47及び端板48の表面を伝って液受け部41の外側領域内に案内されるようになっている。なお図示は省略するが、スピンチャック3の周りには、ウエハWの裏面側を支持して昇降可能な昇降ピンが円形板46を上下に貫通するように設けられており、液処理ブロック10の外部に設けられた不図示のメインアームと昇降ピンとの協働作用によりスピンチャック3へのウエハWの受け渡しが行われるようになっている。
【0016】
図1に説明を戻すと、図中12は、3個の液処理ユニット20、21、22に対して薬液を供給する薬液ノズル12aを支持したノズル支持部であり、このノズル支持部12は上下方向に昇降自在、及び液処理ブロック10の長手方向(Y方向)に沿って設けられたガイドレール14により移動自在に構成されている。また図中15は、液処理ユニット20の外方に設けられた前記ノズル支持部12の待機領域である。
【0017】
図3に示すように、前記ノズル支持部12の一端側には薬液を吐出する細孔状の吐出口を備えた薬液ノズル12aが設けられており、レジスト液のスピンコーティング実行時には、ガイドレール14に沿って薬液支持部12を移動させて、各スピンチャック3に保持されたウエハWの表面の例えば中央部に、薬液ノズル12aを対向させることができる。
【0018】
また図2に示した16は液処理ブロック10の天井部に取り付けられたフィルタユニットであり、17は液処理ブロック10を構成する筐体内を排気する排気部である。これらの構成により、フィルタユニット16から所定流量の清浄気体が供給され、また排気部17から所定の排気流量で排気が行われ、液処理ブロック10内に清浄気体のダウンフローが形成されるようになっている。また図中18は、外部のメインアームが移動する領域に臨むように形成されたウエハWの搬入出口である。
【0019】
このほか、図1に示した50、51、52は、スピンチャック3に保持されたウエハWの周縁部にリンス液を供給するためのサイドリンス機構である。これらサイドリンス機構50、51、52は同様に構成されているので、サイドリンス機構50を例に挙げて説明する。図2に示すようにサイドリンス機構50は、例えば液処理ユニット20の近傍の外方位置に設けられており、L字状に屈曲したリンスノズル6と当該リンスノズル6を鉛直方向に昇降自在及び回転自在に駆動させる駆動部61とで構成されている。リンスノズル6は、サイドリンスを行っていないタイミングにおいては、例えば図1に破線で示したように液処理ユニット20の外方位置へと退避し、サイドリンス実行時には、駆動部61によりリンスノズル6を回転、昇降させて、図3に示すようにスピンチャック3に保持されたウエハWの周縁部と対向する位置に移動させることができる。
【0020】
以上に説明した構成を備えた液処理ユニット20、21、22の各カップ体4は、背景技術にて説明した薬液のミストの巻き上げを抑えるため、例えば図4に示すようにカップ体4の液受け部41底面に設けられた既述の排気口44、45を介して排気路7、7と接続されており、カップ体4内の雰囲気を排気できるようになっている。
【0021】
図4に示すように、各カップ体4の排気口44、45に接続された2つの排気路7、7は、合流した後垂直方向に立ち上がっており、この垂直方向に伸びる排気路7には、各カップ体4からの排気流量を調整するためのダンパー71が介設されている。そして各排気路7は、ダンパー71の下流側にて共通排気路72に夫々接続されており、この共通排気路72を介して排気ガスを例えば工場の除害設備へと排出する構成となっている。
【0022】
さらに図4に示すように各液処理ユニット20、21、22に接続された排気路7には、ミストを利用して各排気路7の排気流量を測定する本実施の形態に係る流量測定装置8が設けられている。これら流量測定装置8は同様に構成されているので、例えば液処理ユニット20に設けられた流量測定装置8を例に挙げて説明する。
本実施の形態において、流量測定装置8は例えばダンパー71の下流側の位置に配置されており、排気流量の測定の際に利用されるミストがダンパー71による排気流量の調節の妨げとならないようになっている。
【0023】
流量測定装置8は、図5に示すように排気路7を構成する配管の例えば垂直方向に伸びる管路上に配設されており、排気路7内にミストを供給するミスト供給部81と、このミストを撮像するための例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラなどからなる撮像部82と、ミストに撮像用の照明を当てる照明ランプ83とを備えている。
【0024】
またミスト供給部81は、排気路7内に挿入され、例えば排気ガスの流れ方向に沿って排気路7内にミストを噴霧するミストノズル811と、このミストノズル811にミストの原料液を供給する供給配管812と、ミストノズル811への原料液の給断を実行する例えばサックバックバルブ813と、例えば純水などの原料液を貯留したミスト原料タンク814と、から構成されている。
【0025】
撮像部82及び照明ランプ83は、排気路7内にミストを供給するミストノズル811に対して排ガスの流れ方向下流側配置されている。そしてこれら撮像部82、照明ランプ83が配置されている位置の排気路7の管壁面には、撮像部82により排気路7内を撮像するための例えばガラス窓などの透明部材からなる覗き窓701と、照明ランプ83により排気路7内を照射するための同じく透明部材からなる照射窓702とが設けられている。ここで図5においては、図示の便宜上、撮像部82と照明ランプ83とは互いに対向するように配置されているが、照明ランプ83からの照射光が撮像部82に直接入射しないようにするため、例えば照明ランプ83の撮像方向と照明ランプ83の照射方向とが互いに直交するように撮像部82及び照明ランプ83を配置してもよい。
【0026】
以上の構成を備えた流量測定装置8は、例えば図6に示すように、本実施の形態の液処理ユニット20、21、22を含むウエハ処理装置の制御部200と接続されている。制御部200は例えばCPU201と不図示の記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部にはウエハ処理装置の作用、即ち各液処理ユニット20、21、22にウエハWを搬送してスピンチャック3に保持し、ウエハWを回転させながらレジスト液を塗布した後、ウエハWを搬出するまでの動作に係わる制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0027】
この制御部200は、本例に係る流量測定装置8の動作制御を行う機能も備えており、ミスト供給部81のサックバックバルブ813や、照明ランプ83に電力を供給する照明電源831、撮像部82の撮像結果を画像データに変換する画像処理ユニット821や撮像部82本体と接続されていて、ミストノズル811からのミストの給断や照明ランプ83による排気路7内の照射、また撮像部82よる撮像動作の実行やその結果得られた画像データを取得する動作を実行することができる。
【0028】
さらに制御部200の記憶部には、撮像部82から取得した画像データに記録されているミストの到達位置を特定し、排気路内の排ガスの排気流量を検出(推定)するための流量検出プログラム204と、ミストの到達位置と排気流量との関係を記憶した流量検出テーブル205と、流量検出プログラム204にて検出された排気流量が適正値であるか否かを判断するための排気状態判断プログラム203と、が記憶されている。また制御部200には、排気状態判断プログラム203による判断結果に基づいて、例えばウエハ処理装置に設けられたモニター画面などを介して排気状態が異常であることを発報するアラーム発報部202が設けられている。ここで流量検出プログラム204、流量検出テーブル205に基づいて作動する制御部200は、本実施の形態の推定部に相当する。
【0029】
以上の構成を備えた液処理ユニット20、21、22及びこれらの液処理ユニット20、21、22に設けられた流量測定装置8の動作について説明する。先ず外部のメインアームにより搬入出口18を介して液処理ブロック10内に処理対象のウエハWが搬入され、不図示の昇降ピンを介して例えば一つの液処理ユニット20のスピンチャック3に当該ウエハWが受け渡される。
【0030】
スピンチャック3にウエハWが保持されると、当該ウエハWの中央部上方位置まで薬液ノズル12aが移動すると共にスピンチャック3を例えば2500rpmで回転させ、この状態で薬液ノズル12aからウエハWの中央部にレジスト液が供給される。そして遠心力によりレジスト液がウエハWの径方向に広がり、余分なレジスト液が振り切られる。その後、スピンチャック3の回転数を例えば100rpmまで下げてレジストの表面を平坦にする。
【0031】
しかる後、スピンチャック3の回転数を1500rpmまで上げてレジスト膜を乾燥させ、所定時間が経過してレジスト膜が乾燥したら、スピンチャック3の回転数を変更せずにウエハWの周縁部に溶剤からなるリンス液をリンスノズル6により供給する。これによりウエハWの周縁部のレジスト液を所定の幅でカットすると共にウエハWの裏面側に回り込んだレジスト液を除去する。
【0032】
このレジスト液の塗布の期間中、排気路7に設けられたダンパー71は開度を大きくして排気流量を大きくする「高排気」の排気流量調節が行われる。但し、スピンチャック3の回転数を下げてレジストの表面を平坦にする同さの期間中だけは、ダンパー71の開度を高排気時よりも狭くして排気流量を下げる「低排気」の排気流量調節が行われる。
【0033】
レジスト液の乾燥を終えたら、スピンチャック3の回転を停止し、薬液ノズル12aやリンスノズル6をウエハW上から退避させ、外部から進入してきたメインアームにウエハWを受け渡して液処理ブロック10から搬出し、スピンコーティングによるレジスト塗布を終える。ここで液処理ユニット20にウエハWを搬入、搬出する動作の期間中は、排気路7の排気流量は例えば「高排気」の状態となっている。
以上に説明した処理が他の液処理ユニット21、22においても順次、並行して行われる。
【0034】
一方、例えば各液処理ユニット20、21、22にてレジスト液の塗布処理を行っていない期間中などにおいて、流量測定装置8による排気流量の流量測定が行われ、ダンパー71による排気流量調節の監視が行われている。以下、この動作の内容を図7のフロー図及び図8を参照しながら説明する。
【0035】
既述のように本例では、レジスト液の塗布を行っていない期間中は、排気路7の排気流量は高排気の状態に設定されており(ステップS101)、例えばウエハWの搬入、搬出動作の所定のタイミングで予め設定された時間サックバックバルブ813を開とし、排ガスの流れ方向に沿って排気路7内にミストを供給する(ステップS102)。
【0036】
本例では既述のように排気路7が垂直方向に伸びている位置に流量測定装置8が設けられているので、排気路7内に供給されたミストは重力によって下方側へ沈降すると共に、排ガスの流れに乗って下流側へと流されていく。このとき、例えばミストノズル811よりミストが供給されてから当該ミストが撮像部82の撮像視野に入った後の予め設定したタイミングにて撮像を実行すると、撮像されたミスト群の下流端の位置は、例えば図8(a)〜図8(c)に示すように排ガスの排気流量が大きくなるに従って撮像視野の下方側へと移動していく。
【0037】
そこで本実施の形態に係る流量測定装置8は、撮像部82にて撮像された画像中のミスト群の下端位置(図8のD1〜D3)と排気路7内の排ガスの排気流量との関係を予め制御部200内の流量検出テーブル205に記憶しておき、排気流量測定時には、排気路7にミストを供給してから所定時間経過後に撮像部82による排気路7内の撮像を実行し、この撮像結果よりミスト群の下端位置を特定して、この下端位置に対応する排気流量を特定する仕組みとなっている。
【0038】
図7のフロー図の説明に戻ると、ステップS102で排気路7内にミストが供給されたら、所定時間が経過するのを待ち(ステップS103;NO)、予め設定された時間の経過した後、撮像視野内にミスト群が到達するタイミングにて(ステップS103;YES)、排気路7内の撮像を実行し、得られた画像データを排気流量検出用の画像としてメモリに記憶する(ステップS104)。
【0039】
検出用画像が得られたら、例えば輪郭検出などにより検出画像中のミスト群の下流端の位置を検出し(ステップS105)、検出して得られた位置を流量検出テーブル205と照合することにより当該排気路7内の排ガスの排気流量を検出することができる(ステップS106)。ここで流量検出テーブル205に検出結果と一致するミスト群の下端位置のデータが記憶されていない場合には、例えば検出結果に最も近い値を流量検出テーブル205から読み取るようにしてもよいし、また検出結果の前後のデータを流量検出テーブル205から読み取ってミスト群の下端位置と排気流量との関係を例えば直線近似や曲線近似し、この近似に基づいて検出結果に対応する排気流量を特定してもよい。
【0040】
こうして検出された排気流量を予め設定された適正値と比較し、当該排気流量が適正である場合には(ステップS107;YES)排気流量の計測動作を終えてそのまま液処理ユニット20、21、22側での処理を継続する(エンド)。一方、検出された排気流量が例えば許容変動範囲を超えており、適正な値となっていない場合には(ステップS107;NO)、アラーム発報部202よりアラームを発報してから(ステップS108)流量測定の動作を終える(エンド)。
アラームを確認したオペレータは排気流量の検出結果などを確認し、当該アラームの発報した液処理ユニット20、21、22の運転継続の可否やダンパー71などのメンテナンスの要否などを判断することができる。
【0041】
本実施の形態に係る流量測定装置8によればミスト供給部81から排気路7中にミストを供給し、このミストを82により撮像して得た撮像結果に基づいて排気流量を推定するようにしている。このため、例えば排気路7内に設けた絞り部分の前後での差圧の測定値に基づいて排気流量を測定する場合のように絞り部分にレジスト液のミスト等が付着することによる差圧の測定誤差などが発生せず、排ガスの排気流量を安定して測定することができる。
【0042】
また図7では排気流量が高排気に設定されている場合について説明したが、例えば低排気の場合についても同様の動作により排気流量の検出を行うようにしてもよい。ただしこの場合には、排気流量の検出結果と対比される適正値の値が低排気用の設定値に切り替えられる。
【0043】
ここで上述の実施の形態では、ミストノズル811から供給されたミストが撮像部82の撮像視野内に入るタイミングにて排気路7内の撮像を実行し、得られた画像中のミスト群の下流端の位置に基づいて排気流量を検出する場合について説明したが、排気流量の検出方法はこの例に限られない。例えばミストを供給してから、図10に示すように、撮像視野内の予め設定した位置「D0」にミスト群の下流端が到達するまでの時間を計測し、この結果に基づいて排気流量を推定してもよい。
【0044】
この場合には、例えば図7のフロー図で高排気の排気流量調節をした後(ステップS101)、図9に示すようにサックバックバルブ813の開動作を行う(ステップS111)。そしてこの動作と同時に撮像部82による撮像動作を例えば数十ミリ秒〜数百ミリ秒といった短い間隔で連続して実行し、予め設定された「D0」の位置にミスト群の下流端が到達したか否かを判断する(ステップS112)。ミストが「D0」の位置に到達したら、撮像間隔などのデータに基づいてミストの吐出開始時点から当該位置への到達時点までの所要時間を求め(ステップS113)、所要時間と排気流量とを対応させた流量検出テーブル205を読み取ることによりその排気路7内の排気流量を特定することができる(ステップS114)。その後の動作は図7のステップS107以降と同様であるので説明は省略する。
【0045】
さらにまたこれらの他の排気流量の推定方法として、所定のタイミングで間欠的に、または連続的にミストノズル811から排気路7内へミストを供給し、これらのミストが撮像視野内に到達したタイミングで、撮像部82を動作させ例えば数百ミリ秒〜数秒程度の連続露光による撮像を実行する。連続露光を行うと撮像されたミスト群は、例えば図11(a)に模式的に示すような軌跡を描く。露光時間が一定であれば、排気流量が大きくなるほどこの軌跡の長さ「L」が長くなる。そこで、例えば撮像した画像データから例えばミスト群の軌跡の長さ「L」の平均値を求め、予め流量検出テーブル205に記憶させておいた軌跡の長さとの対応関係から排気流量を推定してもよい。
【0046】
このとき例えば排気路7の伸びる方向は垂直方向に限定されるものではなく水平方向であってもよい。例えばミストが排ガスの流れに流されつつ重力方向に沈降する場合であっても、図11(b)に示すようにミストの軌跡から流れ方向の移動量「L’」を求め、この移動量に基づいて排気流量を推定することができる。
【符号の説明】
【0047】
W ウエハ
10 液処理装置
20、21、22
液処理ユニット
200 制御部
3 スピンチャック
4 カップ体
7 排気路
71 ダンパー
72 共通排気路
8 流量測定装置
81 ミスト供給部
82 撮像部
83 照明ランプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気路中の排気流量を測定する技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の中には、基板に薬液の塗布膜を形成する工程があり、こうした工程に用いられる薬液としてはレジスト液、反射防止膜用の薬液、あるいは絶縁膜の前駆体を含む薬液などが挙げられる。薬液を用いて処理を行う液処理ユニットには基板保持部であるスピンチャックの周囲を囲むようにカップ体が設けられているものがあり、このカップ体内にて主にスピンコーティング、振り切り乾燥、更にサイドリンスなどの処理が行われる。例えばスピンコーティング時には、基板の中央部に薬液が滴下され、この薬液が遠心力により基板の径方向に広がった後、周囲に飛散する。このとき飛散したミストが上方に舞い上がって基板に再付着するのを防止するために、カップ体には排気路が接続されており、カップ体内の雰囲気を排気できるようになっている。
【0003】
一方カップ内の排気があまり強いと、基板上の液膜の膜厚に影響を及ぼすおそれがあるので、両者の兼ね合いで排気の強さを決定している。また振り切り乾燥及びサイドリンス時では、回転させながら溶剤を吐出したり、薬液を高速回転で振り切ったりすることから、その分飛散するミストの量も多いのでスピンコーティング時よりも強い排気を必要とする場合もある(特許文献1)。
【0004】
このように一連の液処理を行うにあたっては、液処理ユニットにおける排気のコントロールが行われるが、特に排気が液膜の膜厚に影響を与える場合には、排気流量は重要なパラメータの一つとなる。一方、排気路にミストが付着して固化し、固化物が堆積していくと排気路のコンダクタンスが小さくなるため、予定している流量値よりも排気流量が小さくなってしまう場合がある。このため排気路の排気流量を監視する必要があり、従来では排気路に絞り部分を形成してその前後の圧力差を測定し、差圧の測定値に基づいて排気流量を測定することが行われていた。
【0005】
しかしながらこの手法は、薬液のミストが絞り部分に付着すると、流量の低下が差圧の値として反映されなくなるため、排気流量の低下を検出できなくなる。このため絞り部分のメンテナンスを高い頻度で行わなければならないという課題がある。なお、超音波式の流量測定計も知られているが、小型の排気路に装着するには困難であり、また長い流路を必要とするため、例えば特許文献1に記載されたように3連式のカップ体の下部の排気路に装着することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−229062:図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、排気路の排気流量を安定して測定することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る流量測定装置は、排気路の排気流量を測定する流量測定装置において、
前記排気路中にミストを供給するためのミスト供給部と、
前記排気路におけるミスト供給部よりも下流側を撮像するために設けられた撮像部と、
前記ミスト供給部から供給されたミストを前記撮像部により撮像した撮像結果に基づいて排気流量を推定する推定部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
前記流量測定装置は以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記ミスト供給部よりも下流側において、前記排気路を形成する壁部の少なくとも一部が当該排気路の外から内部を覗くことができるように透明部材により構成され、前記撮像部は、この透明部材の外側に設けられていること。
(b)前記推定部は、ミスト供給部からミストが供給されてから予め設定した時間が経過した時点において撮像された画像中のミスト群の下流端の位置に基づいて排気流量を推定すること。
(c)前記推定部は、ミスト供給部からミストが供給されてからミスト群の下流端が予め設定した位置に到達するまでの時間を計測し、この計測時間に基づいて排気流量を推定すること。
(d)前記推定部は、前記撮像部で予め設定された時間だけ連続露光して撮像された画像中のミストが描く軌跡の長さに基づいて排気流量を推定すること。
(e)前記排気路は、液処理装置に設けられた排気路であり、この液処理装置は、下部に前記排気路が接続されたカップ体内の基板保持部に基板を水平に保持し、この基板に薬液を供給した状態で基板保持部を回転させて基板を処理する装置であること。
(f)前記カップ体は複数配置され、これら複数のカップ体の下部に各々接続された排気路は共通の排気路に接続され、前記撮像部により撮像されて排気流量の測定対象となる排気路は、前記カップ体と前記共通の排気路との間に位置する排気路であること。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、ミスト供給部から排気路中にミストを供給し、このミストを撮像部により撮像して得た撮像結果に基づいて排気流量を推定するようにしているため、排気流量を安定して測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態に係る液処理ブロックの平面図である。
【図2】前記液処理ブロックの縦断側面図である。
【図3】前記液処理ブロック内に設けられた液処理ユニットの縦断側面図である。
【図4】前記液処理ユニットに排気路が接続された様子を示す説明図である。
【図5】前記排気路に設けられた流量測定装置の外観構成を示す斜視図である。
【図6】前記流量測定装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図7】前記流量測定装置の作用を示す説明図である。
【図8】前記流量測定装置の動作の流れを示すフロー図である。
【図9】他の実施の形態に係る流量測定装置の動作の流れを示すフロー図である。
【図10】前記他の実施の形態に係る流量測定装置の作用を示す説明図である。
【図11】この他の実施の形態に係る流量測定装置の作用を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施の形態に係る流量測定装置の具体的な構成を説明する前に、当該流量測定装置が設けられる液処理装置について図1〜図3を参照しながら説明しておく。本実施の形態に係る液処理装置は、例えば基板であるウエハWにレジスト液を塗布するための、例えば3連式の液処理ユニット20、21、22として構成されている。図1中10は筐体内に形成された液処理ブロックであり、当該液処理ブロック10内には、例えば3個の液処理ユニット20、21、22が横方向(Y軸方向)に配列した状態で共通のベース体11の上に設けられている。これら液処理ユニット20、21、22は同様に構成されているので、液処理ユニット20を例に挙げてその構成を説明する。
【0013】
図2、図3に示す3はウエハWの裏面側中央部を吸引吸着して水平に保持するための基板保持部であるスピンチャックである。このスピンチャック3は軸部31を介して駆動機構(スピンチャックモータ)32に接続されており、ウエハWを保持した状態で回転及び昇降自在に構成されている。
【0014】
前記スピンチャック3に保持されたウエハWの周縁部外側には、このウエハWを囲むように配置され、上部側が開口するカップ体4が設けられている。前記カップ体4の側周面上端側は内側に傾斜していると共に、その底部側には凹部状をなす液受け部41が設けられている。液受け部41は、ウエハWの周縁下方側の位置にて全周に亘って外側領域と内側領域とに区画されており、外側領域の底部には貯留したレジスト液などのドレインを排出するための排液口43が設けられ、また内側領域の底部には例えば2つの排気口44、45が設けられている。
【0015】
またスピンチャック3に保持されたウエハWの下方には円形板46が設けられており、この円形板46の外側を囲むようにしてリング部材47が設けられている。当該リング部材47の外端面には下方に伸びる端板48が、既述の液受け部41の外側領域内に進入するようにして設けられており、レジスト液などはこれらリング部材47及び端板48の表面を伝って液受け部41の外側領域内に案内されるようになっている。なお図示は省略するが、スピンチャック3の周りには、ウエハWの裏面側を支持して昇降可能な昇降ピンが円形板46を上下に貫通するように設けられており、液処理ブロック10の外部に設けられた不図示のメインアームと昇降ピンとの協働作用によりスピンチャック3へのウエハWの受け渡しが行われるようになっている。
【0016】
図1に説明を戻すと、図中12は、3個の液処理ユニット20、21、22に対して薬液を供給する薬液ノズル12aを支持したノズル支持部であり、このノズル支持部12は上下方向に昇降自在、及び液処理ブロック10の長手方向(Y方向)に沿って設けられたガイドレール14により移動自在に構成されている。また図中15は、液処理ユニット20の外方に設けられた前記ノズル支持部12の待機領域である。
【0017】
図3に示すように、前記ノズル支持部12の一端側には薬液を吐出する細孔状の吐出口を備えた薬液ノズル12aが設けられており、レジスト液のスピンコーティング実行時には、ガイドレール14に沿って薬液支持部12を移動させて、各スピンチャック3に保持されたウエハWの表面の例えば中央部に、薬液ノズル12aを対向させることができる。
【0018】
また図2に示した16は液処理ブロック10の天井部に取り付けられたフィルタユニットであり、17は液処理ブロック10を構成する筐体内を排気する排気部である。これらの構成により、フィルタユニット16から所定流量の清浄気体が供給され、また排気部17から所定の排気流量で排気が行われ、液処理ブロック10内に清浄気体のダウンフローが形成されるようになっている。また図中18は、外部のメインアームが移動する領域に臨むように形成されたウエハWの搬入出口である。
【0019】
このほか、図1に示した50、51、52は、スピンチャック3に保持されたウエハWの周縁部にリンス液を供給するためのサイドリンス機構である。これらサイドリンス機構50、51、52は同様に構成されているので、サイドリンス機構50を例に挙げて説明する。図2に示すようにサイドリンス機構50は、例えば液処理ユニット20の近傍の外方位置に設けられており、L字状に屈曲したリンスノズル6と当該リンスノズル6を鉛直方向に昇降自在及び回転自在に駆動させる駆動部61とで構成されている。リンスノズル6は、サイドリンスを行っていないタイミングにおいては、例えば図1に破線で示したように液処理ユニット20の外方位置へと退避し、サイドリンス実行時には、駆動部61によりリンスノズル6を回転、昇降させて、図3に示すようにスピンチャック3に保持されたウエハWの周縁部と対向する位置に移動させることができる。
【0020】
以上に説明した構成を備えた液処理ユニット20、21、22の各カップ体4は、背景技術にて説明した薬液のミストの巻き上げを抑えるため、例えば図4に示すようにカップ体4の液受け部41底面に設けられた既述の排気口44、45を介して排気路7、7と接続されており、カップ体4内の雰囲気を排気できるようになっている。
【0021】
図4に示すように、各カップ体4の排気口44、45に接続された2つの排気路7、7は、合流した後垂直方向に立ち上がっており、この垂直方向に伸びる排気路7には、各カップ体4からの排気流量を調整するためのダンパー71が介設されている。そして各排気路7は、ダンパー71の下流側にて共通排気路72に夫々接続されており、この共通排気路72を介して排気ガスを例えば工場の除害設備へと排出する構成となっている。
【0022】
さらに図4に示すように各液処理ユニット20、21、22に接続された排気路7には、ミストを利用して各排気路7の排気流量を測定する本実施の形態に係る流量測定装置8が設けられている。これら流量測定装置8は同様に構成されているので、例えば液処理ユニット20に設けられた流量測定装置8を例に挙げて説明する。
本実施の形態において、流量測定装置8は例えばダンパー71の下流側の位置に配置されており、排気流量の測定の際に利用されるミストがダンパー71による排気流量の調節の妨げとならないようになっている。
【0023】
流量測定装置8は、図5に示すように排気路7を構成する配管の例えば垂直方向に伸びる管路上に配設されており、排気路7内にミストを供給するミスト供給部81と、このミストを撮像するための例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラなどからなる撮像部82と、ミストに撮像用の照明を当てる照明ランプ83とを備えている。
【0024】
またミスト供給部81は、排気路7内に挿入され、例えば排気ガスの流れ方向に沿って排気路7内にミストを噴霧するミストノズル811と、このミストノズル811にミストの原料液を供給する供給配管812と、ミストノズル811への原料液の給断を実行する例えばサックバックバルブ813と、例えば純水などの原料液を貯留したミスト原料タンク814と、から構成されている。
【0025】
撮像部82及び照明ランプ83は、排気路7内にミストを供給するミストノズル811に対して排ガスの流れ方向下流側配置されている。そしてこれら撮像部82、照明ランプ83が配置されている位置の排気路7の管壁面には、撮像部82により排気路7内を撮像するための例えばガラス窓などの透明部材からなる覗き窓701と、照明ランプ83により排気路7内を照射するための同じく透明部材からなる照射窓702とが設けられている。ここで図5においては、図示の便宜上、撮像部82と照明ランプ83とは互いに対向するように配置されているが、照明ランプ83からの照射光が撮像部82に直接入射しないようにするため、例えば照明ランプ83の撮像方向と照明ランプ83の照射方向とが互いに直交するように撮像部82及び照明ランプ83を配置してもよい。
【0026】
以上の構成を備えた流量測定装置8は、例えば図6に示すように、本実施の形態の液処理ユニット20、21、22を含むウエハ処理装置の制御部200と接続されている。制御部200は例えばCPU201と不図示の記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部にはウエハ処理装置の作用、即ち各液処理ユニット20、21、22にウエハWを搬送してスピンチャック3に保持し、ウエハWを回転させながらレジスト液を塗布した後、ウエハWを搬出するまでの動作に係わる制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0027】
この制御部200は、本例に係る流量測定装置8の動作制御を行う機能も備えており、ミスト供給部81のサックバックバルブ813や、照明ランプ83に電力を供給する照明電源831、撮像部82の撮像結果を画像データに変換する画像処理ユニット821や撮像部82本体と接続されていて、ミストノズル811からのミストの給断や照明ランプ83による排気路7内の照射、また撮像部82よる撮像動作の実行やその結果得られた画像データを取得する動作を実行することができる。
【0028】
さらに制御部200の記憶部には、撮像部82から取得した画像データに記録されているミストの到達位置を特定し、排気路内の排ガスの排気流量を検出(推定)するための流量検出プログラム204と、ミストの到達位置と排気流量との関係を記憶した流量検出テーブル205と、流量検出プログラム204にて検出された排気流量が適正値であるか否かを判断するための排気状態判断プログラム203と、が記憶されている。また制御部200には、排気状態判断プログラム203による判断結果に基づいて、例えばウエハ処理装置に設けられたモニター画面などを介して排気状態が異常であることを発報するアラーム発報部202が設けられている。ここで流量検出プログラム204、流量検出テーブル205に基づいて作動する制御部200は、本実施の形態の推定部に相当する。
【0029】
以上の構成を備えた液処理ユニット20、21、22及びこれらの液処理ユニット20、21、22に設けられた流量測定装置8の動作について説明する。先ず外部のメインアームにより搬入出口18を介して液処理ブロック10内に処理対象のウエハWが搬入され、不図示の昇降ピンを介して例えば一つの液処理ユニット20のスピンチャック3に当該ウエハWが受け渡される。
【0030】
スピンチャック3にウエハWが保持されると、当該ウエハWの中央部上方位置まで薬液ノズル12aが移動すると共にスピンチャック3を例えば2500rpmで回転させ、この状態で薬液ノズル12aからウエハWの中央部にレジスト液が供給される。そして遠心力によりレジスト液がウエハWの径方向に広がり、余分なレジスト液が振り切られる。その後、スピンチャック3の回転数を例えば100rpmまで下げてレジストの表面を平坦にする。
【0031】
しかる後、スピンチャック3の回転数を1500rpmまで上げてレジスト膜を乾燥させ、所定時間が経過してレジスト膜が乾燥したら、スピンチャック3の回転数を変更せずにウエハWの周縁部に溶剤からなるリンス液をリンスノズル6により供給する。これによりウエハWの周縁部のレジスト液を所定の幅でカットすると共にウエハWの裏面側に回り込んだレジスト液を除去する。
【0032】
このレジスト液の塗布の期間中、排気路7に設けられたダンパー71は開度を大きくして排気流量を大きくする「高排気」の排気流量調節が行われる。但し、スピンチャック3の回転数を下げてレジストの表面を平坦にする同さの期間中だけは、ダンパー71の開度を高排気時よりも狭くして排気流量を下げる「低排気」の排気流量調節が行われる。
【0033】
レジスト液の乾燥を終えたら、スピンチャック3の回転を停止し、薬液ノズル12aやリンスノズル6をウエハW上から退避させ、外部から進入してきたメインアームにウエハWを受け渡して液処理ブロック10から搬出し、スピンコーティングによるレジスト塗布を終える。ここで液処理ユニット20にウエハWを搬入、搬出する動作の期間中は、排気路7の排気流量は例えば「高排気」の状態となっている。
以上に説明した処理が他の液処理ユニット21、22においても順次、並行して行われる。
【0034】
一方、例えば各液処理ユニット20、21、22にてレジスト液の塗布処理を行っていない期間中などにおいて、流量測定装置8による排気流量の流量測定が行われ、ダンパー71による排気流量調節の監視が行われている。以下、この動作の内容を図7のフロー図及び図8を参照しながら説明する。
【0035】
既述のように本例では、レジスト液の塗布を行っていない期間中は、排気路7の排気流量は高排気の状態に設定されており(ステップS101)、例えばウエハWの搬入、搬出動作の所定のタイミングで予め設定された時間サックバックバルブ813を開とし、排ガスの流れ方向に沿って排気路7内にミストを供給する(ステップS102)。
【0036】
本例では既述のように排気路7が垂直方向に伸びている位置に流量測定装置8が設けられているので、排気路7内に供給されたミストは重力によって下方側へ沈降すると共に、排ガスの流れに乗って下流側へと流されていく。このとき、例えばミストノズル811よりミストが供給されてから当該ミストが撮像部82の撮像視野に入った後の予め設定したタイミングにて撮像を実行すると、撮像されたミスト群の下流端の位置は、例えば図8(a)〜図8(c)に示すように排ガスの排気流量が大きくなるに従って撮像視野の下方側へと移動していく。
【0037】
そこで本実施の形態に係る流量測定装置8は、撮像部82にて撮像された画像中のミスト群の下端位置(図8のD1〜D3)と排気路7内の排ガスの排気流量との関係を予め制御部200内の流量検出テーブル205に記憶しておき、排気流量測定時には、排気路7にミストを供給してから所定時間経過後に撮像部82による排気路7内の撮像を実行し、この撮像結果よりミスト群の下端位置を特定して、この下端位置に対応する排気流量を特定する仕組みとなっている。
【0038】
図7のフロー図の説明に戻ると、ステップS102で排気路7内にミストが供給されたら、所定時間が経過するのを待ち(ステップS103;NO)、予め設定された時間の経過した後、撮像視野内にミスト群が到達するタイミングにて(ステップS103;YES)、排気路7内の撮像を実行し、得られた画像データを排気流量検出用の画像としてメモリに記憶する(ステップS104)。
【0039】
検出用画像が得られたら、例えば輪郭検出などにより検出画像中のミスト群の下流端の位置を検出し(ステップS105)、検出して得られた位置を流量検出テーブル205と照合することにより当該排気路7内の排ガスの排気流量を検出することができる(ステップS106)。ここで流量検出テーブル205に検出結果と一致するミスト群の下端位置のデータが記憶されていない場合には、例えば検出結果に最も近い値を流量検出テーブル205から読み取るようにしてもよいし、また検出結果の前後のデータを流量検出テーブル205から読み取ってミスト群の下端位置と排気流量との関係を例えば直線近似や曲線近似し、この近似に基づいて検出結果に対応する排気流量を特定してもよい。
【0040】
こうして検出された排気流量を予め設定された適正値と比較し、当該排気流量が適正である場合には(ステップS107;YES)排気流量の計測動作を終えてそのまま液処理ユニット20、21、22側での処理を継続する(エンド)。一方、検出された排気流量が例えば許容変動範囲を超えており、適正な値となっていない場合には(ステップS107;NO)、アラーム発報部202よりアラームを発報してから(ステップS108)流量測定の動作を終える(エンド)。
アラームを確認したオペレータは排気流量の検出結果などを確認し、当該アラームの発報した液処理ユニット20、21、22の運転継続の可否やダンパー71などのメンテナンスの要否などを判断することができる。
【0041】
本実施の形態に係る流量測定装置8によればミスト供給部81から排気路7中にミストを供給し、このミストを82により撮像して得た撮像結果に基づいて排気流量を推定するようにしている。このため、例えば排気路7内に設けた絞り部分の前後での差圧の測定値に基づいて排気流量を測定する場合のように絞り部分にレジスト液のミスト等が付着することによる差圧の測定誤差などが発生せず、排ガスの排気流量を安定して測定することができる。
【0042】
また図7では排気流量が高排気に設定されている場合について説明したが、例えば低排気の場合についても同様の動作により排気流量の検出を行うようにしてもよい。ただしこの場合には、排気流量の検出結果と対比される適正値の値が低排気用の設定値に切り替えられる。
【0043】
ここで上述の実施の形態では、ミストノズル811から供給されたミストが撮像部82の撮像視野内に入るタイミングにて排気路7内の撮像を実行し、得られた画像中のミスト群の下流端の位置に基づいて排気流量を検出する場合について説明したが、排気流量の検出方法はこの例に限られない。例えばミストを供給してから、図10に示すように、撮像視野内の予め設定した位置「D0」にミスト群の下流端が到達するまでの時間を計測し、この結果に基づいて排気流量を推定してもよい。
【0044】
この場合には、例えば図7のフロー図で高排気の排気流量調節をした後(ステップS101)、図9に示すようにサックバックバルブ813の開動作を行う(ステップS111)。そしてこの動作と同時に撮像部82による撮像動作を例えば数十ミリ秒〜数百ミリ秒といった短い間隔で連続して実行し、予め設定された「D0」の位置にミスト群の下流端が到達したか否かを判断する(ステップS112)。ミストが「D0」の位置に到達したら、撮像間隔などのデータに基づいてミストの吐出開始時点から当該位置への到達時点までの所要時間を求め(ステップS113)、所要時間と排気流量とを対応させた流量検出テーブル205を読み取ることによりその排気路7内の排気流量を特定することができる(ステップS114)。その後の動作は図7のステップS107以降と同様であるので説明は省略する。
【0045】
さらにまたこれらの他の排気流量の推定方法として、所定のタイミングで間欠的に、または連続的にミストノズル811から排気路7内へミストを供給し、これらのミストが撮像視野内に到達したタイミングで、撮像部82を動作させ例えば数百ミリ秒〜数秒程度の連続露光による撮像を実行する。連続露光を行うと撮像されたミスト群は、例えば図11(a)に模式的に示すような軌跡を描く。露光時間が一定であれば、排気流量が大きくなるほどこの軌跡の長さ「L」が長くなる。そこで、例えば撮像した画像データから例えばミスト群の軌跡の長さ「L」の平均値を求め、予め流量検出テーブル205に記憶させておいた軌跡の長さとの対応関係から排気流量を推定してもよい。
【0046】
このとき例えば排気路7の伸びる方向は垂直方向に限定されるものではなく水平方向であってもよい。例えばミストが排ガスの流れに流されつつ重力方向に沈降する場合であっても、図11(b)に示すようにミストの軌跡から流れ方向の移動量「L’」を求め、この移動量に基づいて排気流量を推定することができる。
【符号の説明】
【0047】
W ウエハ
10 液処理装置
20、21、22
液処理ユニット
200 制御部
3 スピンチャック
4 カップ体
7 排気路
71 ダンパー
72 共通排気路
8 流量測定装置
81 ミスト供給部
82 撮像部
83 照明ランプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気路の排気流量を測定する流量測定装置において、
前記排気路中にミストを供給するためのミスト供給部と、
前記排気路におけるミスト供給部よりも下流側を撮像するために設けられた撮像部と、
前記ミスト供給部から供給されたミストを前記撮像部により撮像した撮像結果に基づいて排気流量を推定する推定部と、を備えたことを特徴とする流量測定装置。
【請求項2】
前記ミスト供給部よりも下流側において、前記排気路を形成する壁部の少なくとも一部が当該排気路の外から内部を覗くことができるように透明部材により構成され、
前記撮像部は、この透明部材の外側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の流量測定装置。
【請求項3】
前記推定部は、ミスト供給部からミストが供給されてから予め設定した時間が経過した時点において撮像された画像中のミスト群の下流端の位置に基づいて排気流量を推定することを特徴とする請求項1または2に記載の流量測定装置。
【請求項4】
前記推定部は、ミスト供給部からミストが供給されてからミスト群の下流端が予め設定した位置に到達するまでの時間を計測し、この計測時間に基づいて排気流量を推定することを特徴とする請求項1または2に記載の流量測定装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記撮像部で予め設定された時間だけ連続露光して撮像された画像中のミストが描く軌跡の長さに基づいて排気流量を推定することを特徴とする請求項1または2に記載の流量測定装置。
【請求項6】
前記排気路は、液処理装置に設けられた排気路であり、
この液処理装置は、下部に前記排気路が接続されたカップ体内の基板保持部に基板を水平に保持し、この基板に薬液を供給した状態で基板保持部を回転させて基板を処理する装置であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の流量測定装置。
【請求項7】
前記カップ体は複数配置され、これら複数のカップ体の下部に各々接続された排気路は共通の排気路に接続され、
前記撮像部により撮像されて排気流量の測定対象となる排気路は、前記カップ体と前記共通の排気路との間に位置する排気路であることを特徴とする請求項6に記載の流量測定装置。
【請求項8】
排気路の排気流量を測定する方法において、
ミスト供給部から前記排気路中にミストを供給する工程と、
前記排気路におけるミスト供給部よりも下流側を撮像部により撮像する工程と、
前記ミスト供給部から供給されたミストを前記撮像部により撮像した撮像結果に基づいて排気流量を推定する工程と、を含むことを特徴とする流量測定方法。
【請求項9】
前記排気流量を推定する工程は、ミスト供給部からミストが供給されてから予め設定した時間が経過した時点において撮像された画像中のミスト群の下流端の位置に基づいて排気流量を推定する工程であることを特徴とする請求項7に記載の流量測定方法。
【請求項10】
前記排気流量を推定する工程は、ミスト供給部からミストが供給されてからミスト群の下流端が予め設定した位置に到達するまでの時間を計測し、この計測時間に基づいて排気流量を推定する工程であることを特徴とする請求項7に記載の流量測定方法。
【請求項11】
前記排気流量を推定する工程は、記撮像部で予め設定された時間だけ連続露光して撮像された画像中のミストが描く軌跡の長さに基づいて排気流量を推定する工程であることを特徴とする請求項7に記載の流量測定方法。
【請求項1】
排気路の排気流量を測定する流量測定装置において、
前記排気路中にミストを供給するためのミスト供給部と、
前記排気路におけるミスト供給部よりも下流側を撮像するために設けられた撮像部と、
前記ミスト供給部から供給されたミストを前記撮像部により撮像した撮像結果に基づいて排気流量を推定する推定部と、を備えたことを特徴とする流量測定装置。
【請求項2】
前記ミスト供給部よりも下流側において、前記排気路を形成する壁部の少なくとも一部が当該排気路の外から内部を覗くことができるように透明部材により構成され、
前記撮像部は、この透明部材の外側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の流量測定装置。
【請求項3】
前記推定部は、ミスト供給部からミストが供給されてから予め設定した時間が経過した時点において撮像された画像中のミスト群の下流端の位置に基づいて排気流量を推定することを特徴とする請求項1または2に記載の流量測定装置。
【請求項4】
前記推定部は、ミスト供給部からミストが供給されてからミスト群の下流端が予め設定した位置に到達するまでの時間を計測し、この計測時間に基づいて排気流量を推定することを特徴とする請求項1または2に記載の流量測定装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記撮像部で予め設定された時間だけ連続露光して撮像された画像中のミストが描く軌跡の長さに基づいて排気流量を推定することを特徴とする請求項1または2に記載の流量測定装置。
【請求項6】
前記排気路は、液処理装置に設けられた排気路であり、
この液処理装置は、下部に前記排気路が接続されたカップ体内の基板保持部に基板を水平に保持し、この基板に薬液を供給した状態で基板保持部を回転させて基板を処理する装置であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の流量測定装置。
【請求項7】
前記カップ体は複数配置され、これら複数のカップ体の下部に各々接続された排気路は共通の排気路に接続され、
前記撮像部により撮像されて排気流量の測定対象となる排気路は、前記カップ体と前記共通の排気路との間に位置する排気路であることを特徴とする請求項6に記載の流量測定装置。
【請求項8】
排気路の排気流量を測定する方法において、
ミスト供給部から前記排気路中にミストを供給する工程と、
前記排気路におけるミスト供給部よりも下流側を撮像部により撮像する工程と、
前記ミスト供給部から供給されたミストを前記撮像部により撮像した撮像結果に基づいて排気流量を推定する工程と、を含むことを特徴とする流量測定方法。
【請求項9】
前記排気流量を推定する工程は、ミスト供給部からミストが供給されてから予め設定した時間が経過した時点において撮像された画像中のミスト群の下流端の位置に基づいて排気流量を推定する工程であることを特徴とする請求項7に記載の流量測定方法。
【請求項10】
前記排気流量を推定する工程は、ミスト供給部からミストが供給されてからミスト群の下流端が予め設定した位置に到達するまでの時間を計測し、この計測時間に基づいて排気流量を推定する工程であることを特徴とする請求項7に記載の流量測定方法。
【請求項11】
前記排気流量を推定する工程は、記撮像部で予め設定された時間だけ連続露光して撮像された画像中のミストが描く軌跡の長さに基づいて排気流量を推定する工程であることを特徴とする請求項7に記載の流量測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−155081(P2011−155081A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14725(P2010−14725)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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