説明

浮遊物回収用ポンプ装置および回収船

【課題】浮遊物の回収技術向上のためには、水面付近において幅広で層状的な吸込み流れを強めて確実に効率良く浮遊物を取り込めること、流出油事故の場合は、緊急性を考慮した走行型で小回りがきくこと、および直接回収による再利用が求められる。
【解決手段】 本発明の浮遊物回収用ポンプ装置を船にセットして一体化することによって走行型の浮遊物回収船として利用できる。本技術の浮遊物回収用ポンプ装置は、水面近くの浮遊物をポンプにより幅広く取り込んだ後、吐出しダクトに接続した浮遊物分離タンクで、比重差を利用して浮遊物のみを回収できるように構成されている。流出油回収では処理剤を使用せずに比重差を利用した直接回収のため、再利用が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水面に浮かぶ流出油やアオコ・スカムおよびゴミなどの浮遊物をポンプにより取り込み、分離タンクで浮遊物を回収する装置に関する
【背景技術】
【0002】
従来は、海洋において、油流出事故が発生した場合、オイルフェンスを張り、油吸着材で回収するか油処理剤などで分散・分解する方法がある。流出油の処理装置としては、双胴船の双胴間に下端が水面下に没する回転翼車(水車)を設け、ゲル化剤との混合攪拌による油物質のゲル化を促進し、回収するもの(特許文献1)もあるが、装置が大掛かりで、小回りもきかず、回収しても、再利用は難しい。また、ポンプを吸引力として利用した浮遊物を回収する方法(特許文献2)やバキュウムポンプで流出油を回収する方法(特許文献3)もあるが、吸込み流れが不安定で一様でないため、回収効率は良くない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−156890号公報
【特許文献2】特開昭59−230887号公報
【特許文献3】特開平4−266588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
浮遊物の回収技術向上のためには、水面付近において一様で幅広の層状的な吸込み流れを強めて確実に浮遊物を取り込むこと、浮遊物を取り込んだ後、浮遊物のみを効率的に分離回収する技術を必要とする。流出油事故の場合は、緊急性を考慮した小回りがきくこと、および直接回収による再利用が求められる。
【0005】
本発明は従来技術の問題点を解決するために、浮遊物を直接取り込むことが出来るポンプを組み込んだ比較的簡単な浮遊物回収装置で、貫流ポンプの流れの特性を生かして、水面付近に一様で幅広の層状的な吸込み流れを作り、浮遊物を効率良くポンプを通して取り込み、分離タンクで回収出来るようにした浮遊物回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、貫流ポンプ(クロスフロ−ポンプ)の内部流れの特性を生かし、ポンプによる浮遊物の取り込み技術と浮遊物分離タンクの回収技術を組み合わせた効率良い浮遊物回収装置を提供するものである。即ち、羽根車形状が円筒状で多翼の貫流ポンプの外側ケ−シング形状を浮遊物回収用にアレンジしたポンプ本体を羽根車上端が水面近くに没する程度に設置し、水面付近の流れに貫流ポンプ特有の一様で幅広の層状の安定した吸込み流れを作ることによって、浮遊物を含む流れを直接ポンプに取り込む。その吐出し流れは、なお乱れの少ない層状の流れを維持しながら浮遊物分離タンクに送られる。この乱れの少ない流れの特性により、水と浮遊物の比重差を利用することによるタンク内での浮遊物の回収が容易となる。
【0007】
図1に浮遊物吸引用の貫流ポンプ50の内部構造の概略図を示す。(a)は貫流ポンプ本体の外側ケ−シング形状を浮遊物吸引用にアレンジした断面図、(b)は(a)のY−Y矢視断面図である。貫流ポンプ50の本体は、基本的には円筒状の多翼の羽根車7を収容したポンプケ−シング30と流れを制御する舌部8から構成され、羽根車回転軸2によって駆動用モ−タ12に接続されている。
【0008】
流れは図1(a)のポンプ断面図に示すように吸込み側9から吐出し側10に向って2回羽根6を通過する。即ち流れは吸込み側9では、羽根車7の外側から内側へ、吐出し側10では内側から外側へ流出して羽根車7を横断する。羽根車7は幅方向に長くとれること、また、流れが二次元的で羽根車に接線方向に吐出されることから、吐出し流れは従来技術と異なり、幅広のシ−ト状で乱れも少なく、また拡散することなく、一様な流れとなって遠くまで達することができる。従って従来とは異なり、ポンプによって直接取り込まれた浮遊物は水と浮遊物が複雑に混濁することなく、吐出されるため、吐出し側に設置された浮遊物分離タンクにおける浮遊物の分離が容易である。
【0009】
また、各羽根6の吸込み側における入口と出口が吐出し側では逆になるため、物が羽根間に詰まりにくい構造であることは回収に当たり、優れた強みである。例えば藻類や小さなクラゲ類および小さなゴミなども直接ポンプに取り込むことが出来る。羽根枚数を変えて羽根ピッチを変えたり、羽根内外径比を変えることによって、浮遊物の性状や大きさに応じた対応が出来るなどの特徴を持っている。
【0010】
請求項2に記載の発明は請求項1に記載の浮遊物回収用ポンプ装置を船にセットして一体化した走行型の浮遊物回収船を構成したもので、その中の浮遊物分離タンクの底部解放口は船の底面あるいは船尾側の外壁を通して外部へ開口していて、該浮遊物吸引用の貫流ポンプにより取り込まれた浮遊物を含む液体のうち、比重の大きい液体は低部開口部より自然に外に流出し、比重の小さい油などの浮遊物はタンク容器内の上部水面付近に集積するような構造になっている。
【0011】
該浮遊物分離タンクの底部解放口を船尾側に開口するようにすれば、ポンプによる吐出し流れが推進力となるため、スクリュウによる推進を不要とすることも出来る。
【0012】
請求項3に記載の発明は図2の浮遊物吸引用の貫流ポンプ51の羽根車7の羽根6の外径寸法を6bのように羽根車側板7bより少し外側に突き出して、吸込み口での浮遊物を掻き込みやすくしたもので、これによれば、空回りすることなく、浮遊物の種類によらず、確実に取り込むことができる。各羽根外径寸法の羽根車側板外径よりの突き出し量は羽根車直径に対し、3〜10%程度が適当である。
【0013】
請求項4に記載の発明は、流出した毒性のある浮遊物の液体などをポンプ内に取込んで、羽根車中空回転軸の散気孔から処理液や微細気泡を噴出させて、液体を中和して無害化したり水質浄化を助長すること、および装置内の清掃を目的とする。
【0014】
微細化した気泡や処理液の供給手段は図2に示すように、羽根車7内の中空回転軸3の外周面に多数の散気孔5を穿孔、あるいは多孔質材を貼り付け、中空回転軸3を通して羽根車外部のホ−ス13に接続したエアポンプ11と液体ポンプ11bにより処理液単独あるいはエアと一緒に羽根車内の流れの中に散気孔5より微粒子の状態で供給できる構造となっている。
【0015】
請求項5に記載の発明は、該貫流ポンプの吸込み側流路内の羽根車直前に吸込口に向かって水平面に対し、+3°〜+10°程度傾斜したガイドベ−ンを水面近くに没した状態で設置することを特徴とするもので、これによりポンプへの近寄り流れの水面近傍の流れが増速され、水面に淀みのない微小波を発生させることになる。これにより、水面に油膜様の幕を張らないようになり、浮遊物の取り込みを容易にすることが可能となる。
【0016】
請求項6に記載の発明はポンプにより取り込んだ浮遊物を比重差を利用して分離回収するための浮遊物分離タンクの形状や構造についての技術を提供するものである。タンクは大別して矩形タイプと円形タイプに分けられ、浮遊物が浮上し易いように円形タイプでは、タンク内において流れに旋回流を与えるサイクロンタイプ、矩形タイプでは、タンク後部の高さ方向中間の位置に流れを制御して浮遊物を分離するための浮遊物分離ガイドを設置した構造となっている。
【0017】
請求項7に記載の発明は固定型の浮遊物回収用ポンプ装置で、藻類や浮遊ゴミなどの固形物を回収する浮遊物回収タンクの形状や設置方法についての技術を提供するものである。浮遊物回収タンクは貫流ポンプの吸込み側に接続しても吐出し側に接続してもよい。浮遊物の回収には、外部の海や河川に開放された吸込み側流路や吐出し側流路に浮遊物回収スクリ−ン設置して行う。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、流出油や多様な浮遊物をポンプに直接取り込んだ後、容易に浮遊物分離タンクで回収できることから従来の技術よりも回収効率が良く、回収した油の再利用も可能となる。また、有害な浮遊物に対しても羽根車中空回転軸3の散気孔5から処理液や微細気泡を噴出することにより、対処することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明の浮遊物を取り込む貫流ポンプ(クロスフロ−ポンプ)本体の基本構造を示す。(a)は貫流ポンプの断面図、(b)は(a)のY−Y矢視断面図である。
【図2】図2は図1の羽根車および流入口ケ−シング内部に新技術を加えた浮遊物吸引用の貫流ポンプの構造を示す。(a)は貫流ポンプの断面図、(b)は(a)のY−Y矢視断面図である。
【図3】図3は浮遊物回収用ポンプ装置を船にセットし、一体化した浮遊物回収船の構造を示す。(a)は平面図、(b)は側断面図である。(実施例1)
【図4】図4は図3の第1の実施例とは浮遊物分離タンクの構造が異なる場合の浮遊物回収船の構造を示す。(a)は平面図、(b)は側断面図である。(実施例2)
【図5】図5は図4の第2の実施例とは浮遊物分離タンク後壁側開放口の形状が異なる場合の浮遊物回収船の構造を示す。(a)は平面図、(b)は側断面図である。(実施例3)
【図6】図6は図4の第2の実施例の羽根車を3連にして、より幅広く浮遊物を回収できるようにした浮遊物回収船の構造を示す平面図である。(実施例4)
【図7】図7は図3の第1実施例における浮遊物分離タンクを円筒型にした場合の構造を示す。(a)は平面図、(b)は側断面図である。(実施例5)
【図8】図8は貫流ポンプを縦型にして、ポンプの吐き出しダクトを円形の浮遊物分離タンクの流入口に接線方向に接続した場合の浮遊物回収船を示す。(a)は平面図、(b)は側断面図である。(実施例6)
【図9】図9は図4の第2実施例とは異なる矩形型の浮遊物分離タンクを接続した場合の浮遊物回収船の構造を示す。(a)は平面図、(b)は側断面図である。(実施例7)
【図10】図10は図9の第7実施例の浮遊物分離タンクと異なり、浮遊ゴミなどの固形の浮遊物を回収する場合の装置を示す。(a)は平面図、(b)は側断面図である。(実施例8)
【図11】図11は縦置きの貫流ポンプの吸込み側に浮遊物回収タンクを接続した場合の浮遊物回収用ポンプ装置の据付け状態を示す。(a)は平面図、(b)は側断面図である。(実施例9)
【図12】図12は浮遊物吸引用の貫流ポンプを筏に取り付けた場合の構造を示す。(a)は平面断面図、(b)は側断面図である。(実施例10)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を図3〜図12を参照して説明する。
【実施例1】
【0021】
図3は本発明の第1実施例で、請求項1に記載の浮遊物回収用ポンプ装置全体を船にセットし、一体化したときの浮遊物回収船40の形態を示し、流出油などの回収に利用される。(a)は平面図、(b)は側断面図である。本発明の基本的構造は貫流ポンプを中心にして、吸込み側には船首の取水口部に開閉式流入ガイド61、ポンプの直前の取水流路64に浮遊物導入ガイドベ−ン65を設置し、吐き出し側には吐出しダクト55に接続した浮遊物分離タンク81が設置されている。タンク底部の開放口70は船底を通じて外へ開口している。浮遊物のポンプへの取水口62の開口部は浮遊物のある水面側の流れを幅広く取り込むため、深さ方向を浅くした横長の矩形にし、ポンプ吸込側ケ−シング15によってポンプ吸込み口に向かってなだらかに接続している。
【0022】
この実施の形態による流出油などの浮遊物回収では、まず船60の先首も兼ねた開閉式流入ガイド61を開いて水面付近に漂う流出油などの浮遊物を取水口62に導き、取水流路64において貫流ポンプの羽根車7のすぐ上流側に設置した浮遊物導入ガイドベ−ン65によって、水面14付近の流れを増速させるとともに、局部的に水面付近のみを活性化させ、微小な水面波を発生させる。この手法により、油などの浮遊物が水面に幕を張ることなく、浮遊物のポンプへの取り込みを容易にすることが出来る。
【0023】
浮遊物吸引用の貫流ポンプ51により水とともに取り込まれた流出油などの浮遊物の吐き出し流れは前述のように乱れも少ないため、水と浮遊物は混濁せず、吐出しダクト55を通って矩形型浮遊物分離タンク81に運び込まれる。この浮遊物分離タンク81は矩形型で流入口部に水平方向導入ガイド68、後壁側に浮遊物分離ガイド69、底部に船底開放口70を設けた構造になっている。
【0024】
浮遊物分離タンク81においては、流入口部において水平方向導入ガイド68によりポンプの吐出しダクト55からの流入を水平方向に向かわせ、比重の小さい浮遊物が浮上し易いようにする。タンク後壁側では、下向きの流れに含まれる浮遊物のみを水面側に戻すために流れを制御する浮遊物分離ガイド69を設置し、比重差を利用して浮遊物のみ上方に向かうようにする。余分の水は船底開放口70から外部に自然流出し、浮遊物分離タンク81の水位のバランスが保たれる。
【0025】
浮遊物分離タンク81の水面側に集められた油などの浮遊物は浮遊物回収導入パイプ71を通って浮遊物回収容器73に集められる。浮遊物は浮遊物分離タンク81の入口側に集まりやすいため、回収容器の位置は場所の余裕があれば、浮遊物分離タンク81の前側に置いた方がよい。あるいはフレキシブルホ−スなどによるサイホン作用を利用して直接水面側から回収容器へ回収してもよい。本発明によれば、流出油を直接回収できるため、再利用できるメリットがある。
【0026】
水質浄化や浮遊物の浮上を助長する手段としては、請求項4に記載の技術を利用できる。エアポンプ11により該中空回転軸3に供給された気体を前述の図2に示す散気孔5を通して羽根車内中心部に細かな気泡として噴出させ、その微細な気泡が均一に混入した状態で羽根車7の内側から外側を通ってポンプの吐出し流れと共に供給される。この気泡を伴う流れによって、水質を浄化したり、吐出し部において浮遊物の浮上を助長し、回収を容易にする。
【0027】
流出した浮遊物が回収できない毒性のある液体などを処理する場合には、液体ポンプ11bにより有害液を無害にするための処理液をホ−ス13を通して貫流ポンプの羽根車の中空回転軸3に供給し、回転を伴いながら該散気孔5から微粒化した処理液を羽根車内に噴出させ、取込んだ有害液などに均一に混入させることによって、無害化することができる。
【0028】
ポンプのメンテナンスおよび洗浄は吸込み側水門58と吐出し側水門59を閉じることによって行う。装置の洗浄はポンプを空運転しながら、液体ポンプ11bにより洗浄液を該羽根車中空軸散気孔5の装置に供給して行う。
【実施例2】
【0029】
図4は本発明の第2実施例の流出油などの浮遊物回収船41の形態を示す。(a)は平面図、(b)側断面図である。本装置の構造は、図3の第一の実施例と異なり、浮遊物分離タンク82の底部の開放口は船底側でなく、浮遊物分離タンク後壁側開放口74から船尾開放口80を通じて外部(海、河川)へ通じている。
【0030】
この実施の形態によれば、浮遊物分離ガイド69の部分で、比重差により分離された余分の水は該浮遊物分離ガイド69の下を通って船尾開放口80から外へ流出する。船外部への開放口の位置は船底側でも船尾側でも構わないが、開放口を船尾側に設ければ、排出速度により船の推進力が得られるという利点がある。
【0031】
船首入口部にあるバ−スクリ−ン63は、貫流ポンプに直接取り込むことができない大きな固形浮遊物を回収するため、および浮遊物の種類によりポンプ上流側で回収した方が良いときに対応できるようにしたものである。
【実施例3】
【0032】
図5は本発明の第3実施例の浮遊物回収船42の形態を示す。(a)は平面図、(b)は側断面図である。本装置の構造は、図4の第2の実施例と異なり、浮遊物分離タンク後壁側開放口74から船尾開放口80へ接続した排出パイプ91の途中に電動排出コントロ−ルバルブ90を設けて、バルブ開度を調節することによりタンクからの排出量や排出スピ−ドを変え、また左右のバルブ開度を変えることによって船の速度や方向変換が出来ようにしている。この方法では、スクリュウによる推進は必要とせず、ゆっくりしたスピ−ドで動くため、浮遊物回収に適している。
【実施例4】
【0033】
図6は本発明の第4実施例の浮遊物回収船43の形態を示す平面図である。貫流ポンプ52の流れは2次元的であるから、吸込みの流入口幅を増やすためには、単純に羽根車7の軸方向の長さを増やせばよい。あるいは本図に示すように羽根車7を数個幅方向に連結すればよい。本実施例は羽根車7を3個接続した場合で、他の構成は図4の第2実施例の形態と同様である。
【実施例5】
【0034】
図7は本発明の第5実施例の浮遊物回収船44の形態を示す平面図(a)と側断面図(b)である。本技術は浮遊物分離タンク84の形状を矩形ではなく、円筒形にしたものである。吐出しダクト55から円筒形の浮遊物分離タンク84に流入した流れは、センタ−分離壁86によって左右に分かれ、円筒に沿う循環流を生じながら、比重差によって、浮遊物は水面側に集められる。センタ−分離壁86は油などの浮遊物の浮上を助長するために下膨らみになっている。余分の水は底部開口部より自然流出し、水位のバランスが保たれる。浮遊物回収容器73bは、仕切り板77によって、油室78と水室79に分けられている。
【0035】
浮遊物の回収容器76を仕切り板77によって、油室78と水室79に分けたのは、次の理由による。本装置による浮遊物の回収効率は、貫流ポンプ羽根車7の没水深さに関係する船の喫水に影響されやすいので、浮遊物の回収量に応じて、水室の水量を放出調整して船の喫水を最適の位置に保つためである。
【0036】
貫流ポンプ羽根車7を適正な没水深さにする方法としては、ポンプ吸込み側ケ−シング15と吐出しダクト55の一部をフレキシブルホ−スにしてポンプ本体を上下可能にする方法もある。また、ポンプと一体の前後のフランジ25、26を上下にスライドできるようにして調節する方法もある。
【実施例6】
【0037】
図8は本発明の第6実施例の浮遊物回収船45の形態を示す。(a)は平面図、(b)は側断面図である。本実施例では浮遊物吸引用の貫流ポンプ53の据付けが第1〜第5の実施例とは異なり、縦置きになっているのが特徴である。ポンプケ−シング形状31はポンプと分離タンクの位置関係を考慮してアレンジしている。この実施の形態によれば円筒形の浮遊物分離タンク85は、吐出しダクト56からの流れが分離用タンクに接線方向に流入する構造であり、流れは円形のタンク内を旋回しながら、分離に要する時間を長くし、浮遊物と水を分離しやすくする。余分の水は船底開放口70bから自然流出し、タンク内の水位が保たれる。
【0038】
縦置きでは、横置きのように幅方向に長く取れないが、駆動用モ−タ12bが水面上に設置できることから、据付およびメンテナンスが容易である。縦置きは小規模の浮遊物回収に対して有効である。また、水面近くの流れのみの流入が得られるので浮遊物を確実に取り込むことが出来る。
【実施例7】
【0039】
図9は本発明の第7実施例の浮遊物回収船46の形態を示す。(a)は平面断面図、(b)は側断面図である。本発明は第6実施例と同じく、浮遊物吸引用の貫流ポンプ54の据付けは縦置きであるが、浮遊物分離タンク83は矩形で、タンクの船尾側は全面的に開放されていて、外海や河川と通じている。ポンプケ−シング形状32はポンプと分離タンクの中心位置がほぼ一致するようにアレンジしている。
【0040】
この実施の形態によれば、浮遊物分離タンク83に取り込まれた浮遊物を含む流れは、浮遊物分離板92によって水面近くの流れをせき止めることによって、比重の小さい油などの浮遊物を回収し、比重の大きい水は浮遊物分離板92の下を通過して後方に流出する構造になっている。他の構成は図8の第6実施例の形態と基本的には同様である。
【実施例8】
【0041】
図10は本発明の第8実施例の浮遊物回収船47の形態を示す。(a)は平面断面図、(b)は側断面図である。本発明は主にアオコや浮遊ゴミなどの小浮遊物を対象にしたもので、油類の回収装置に比べるとシンプルな装置となる。ダム湖などでの浮遊物回収の使用にも適している。
【0042】
この実施の形態では、図9の第7実施例と同じく、浮遊物回収タンク87の船尾側は全面的に開放されていて外海や河川と通じている。浮遊物回収タンク87に取り込まれた浮遊物を含む流れは、浮遊物回収スクリ−ン94において浮遊物のみ回収される。
【実施例9】
【0043】
図11は本発明の第9実施例で、縦置きの浮遊物吸引用の貫流ポンプ54を池20に設置した場合の状態を示す。(a)は平面断図、(b)はポンプ縦置き型浮遊物回収装置47の側断面図である。本実施例では固定据付け型なのでポンプの吸込み側に浮遊物回収タンク88を接続した構成になっている。また、図2に示す羽根車中空回転軸の散気孔5から微小気泡を噴出すれば水質の浄化にもなる。
【0044】
この実施の形態によれば、貫流ポンプの流れは乱れが少なく、吐出し流れが遠くまで達する特性により池全体の水面付近の流れの循環を活性化させることができるため、水質を浄化とともにアオコなども発生し難くなる。アオコなどの藻類やゴミなどの浮遊物は、ポンプの吸込側に設置した浮遊物回収スクリ−ン94によって回収できる。池が広い場合はポンプ台数を増やした方が良い。ゴルフ場などに配置されている池にも利用できる。
【実施例10】
【0045】
図12は本発明の第10実施例で、筏95に浮遊物吸引用の貫流ポンプ54を取り付けて、移動可能にしたものである。この場合はアオコなどの藻類や浮遊ゴミなどを直接貫流ポンプに取り込んだ後、ポンプ吐出口89に接続したフレキシブルホ−ス96により、離れた場所で浮遊物を分離用タンクで回収するかそのまま放流する場合を示す。
【0046】
この実施の形態によれば、筏に貫流ポンプが設置されていることからポンプの吸込み口が水位によらず一定になるため、ダム湖やポンプ機場の前池など水位が大きく変動する所での使用に適している。また、本ポンプは前述のように物が詰りにくいこと、および羽根車7の羽根ピッチを変えることによって羽根間の間隔を容易に変えることができるので、多様でサイズの異なる浮遊物に対応できることが特徴である。例えば、発電所取水口における小クラゲ対策なども考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の浮遊物回収用ポンプ装置で使用する浮遊物吸引用の貫流ポンプは構造的に物が詰りにくいことから、浮遊物を直接ポンプに取り込み回収できるため、流出油やアオコおよび浮遊ゴミなどの多様な浮遊物回収に適している。特に本装置を船にセットして一体化した走行型の浮遊物回収船は、流出油を直接回収して再利用できるなど優れたメリットがある。
【符号の説明】
【0048】
2 羽根車回転軸
3 散気孔を有する羽根車中空回転軸
5 散気孔
6 貫流ポンプの羽根
6b 羽根先端が羽根車の側板外径より外側に突き出した部分
7 羽根車
7b 貫流ポンプ羽根車の側板
8 ケ−シング舌部
9 ポンプ吸込側
10 ポンプ吐出側
11 エアポンプ
11b 液体ポンプ
12 駆動用モ−タ
12b 縦型駆動用モ−タ
13 ホ−ス
14 水面
14b 液面
15 ポンプ吸込み側ケ−シング
20 池
25、26 フランジ
30,31,32,33,
ポンプケ−シング
40,41,42,43,44, 浮遊物回収船
45、46、47 ポンプ縦置き型浮遊物回収船
48 浮遊物回収筏
50,51,52 貫流ポンプ
53,54 縦置きの貫流ポンプ
55、56、57 吐出しダクト
58 吸込み側水門
59 吐出し側水門
60 船
61、61b、61C 開閉式流入ガイド
62 取水口
63 バ‐スクリ‐ン
64 取水流路
65 浮遊物導入ガイドベ‐ン
68 水平方向導入ガイド
69 浮遊物分離ガイド
70,70b 船底開放口
71 浮遊物回収導入パイプ
72 バルブ
73, 73b 浮遊物回収容器
74 浮遊物分離タンク後壁側開放口
77 仕切り板
78 油類回収室
79 水室
80 船尾開放口
81,82,83 矩形型浮遊物分離タンク
84, 85 円筒型浮遊物分離タンク
86 センタ−分離壁
87、88 浮遊物回収タンク
89 ポンプ吐出口
90 電動排出コントロ−ルバルブ
91 排出パイプ
92 浮遊物分離板
94 浮遊物回収スクリ−ン
95 筏
96 フレキシブルホ−ス
97 ポンプ取付架台
B 微細気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根車形状が円筒状で多翼の貫流ポンプ(クロスフロ−ポンプ)の外側ケ−シング形状を浮遊物回収用にアレンジしたポンプを羽根車上端が水面近くに没する程度に設置し、水面近くに浮遊する油や浮遊ゴミなどをポンプで吸引して取り込んだ後、吐出しダクトに接続した浮遊物回収用分離タンク(底部に外部への開放口あり)へ導き、浮遊物を水との比重差を利用して分離し、浮遊物のみをまとめて回収することを特徴とする浮遊物回収用ポンプ装置
【請求項2】
請求項1に記載の浮遊物回収用ポンプ装置を船や筏と一体化してセットし、前記浮遊物回収用分離タンクの底部の開放口を船の底や船尾の外壁を通して外へ開口するようにして、貫流ポンプにより取り込まれた浮遊物を含む液体のうち、比重の大きい余分の液体はタンク低部の開口部より船外に自然流出させ、比重の小さい油などの浮遊物は浮遊物回収用分離タンク内の上部水面付近に集積するようにし、それを浮遊物回収容器にまとめて回収することを特徴とする走行型の浮遊物回収船(筏)
【請求項3】
請求項1に記載の貫流ポンプの各羽根外径寸法を羽根車側板の外径より少し外側に突き出した構造にし、浮遊物を吸込み口へ掻き込みやすくしたことを特徴とする浮遊物回収用ポンプ装置
【請求項4】
請求項1に記載の貫流ポンプの羽根車回転軸を多数の散気孔を有する中空回転軸にし、羽根車外部より該中空回転軸を通して羽根車内に処理液や洗浄液を供給、あるいは同時にエアも供給し、該散気孔よりそれらを微粒化して流れの中に噴出させることにより、水質の浄化、装置内の洗浄および微細気泡による浮遊物の浮上助長などが出来るようにしたことを特徴とする浮遊物回収用ポンプ装置
【請求項5】
請求項1乃至2に記載の貫流ポンプの吸込み側流路内の羽根車直前に吸込口に向かって水平面に対し、+3°〜+10°程度傾斜させたガイドベ−ンを水面近くに没した状態で設置することによって、吸込み口へ向う水面近傍の流れを増速し、浮遊物の取り込みを容易にしたことを特徴とする浮遊物回収用ポンプ装置
【請求項6】
請求項1乃至2に記載のポンプ吐出しケ−シングに接続した該浮遊物分離タンクの形状は大別して矩形タイプと円形タイプに分けられ、比重差を利用して浮遊物が浮上し易いように円形タイプでは、タンク内において旋回流を与えるサイクロンタイプ、矩形タイプでは、タンク後壁側の高さ方向中間の位置に流れを制御して浮遊物を分離するための浮遊物分離ガイドを設置した構造を特徴とする浮遊物回収用ポンプ装置
【請求項7】
請求項1に記載の貫流ポンプの吸込み側あるいは吐出し側に浮遊物回収タンクを接続し、
その回収タンクの外部の海や河川に開放された吸込み側流路や吐出し側流路に藻類やゴミなどの浮遊物を回収するためのスクリ−ンを設置したことを特徴とする浮遊物回収用ポンプ装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−7524(P2012−7524A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143413(P2010−143413)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(709003735)
【Fターム(参考)】