説明

消火設備用流水検知装置

【課題】 簡単な構造で小型化の可能な消火設備用流水検知装置を得ること。
【解決手段】 逆止弁筐体11a内の二次側弁室内において、弁体16の周縁より外側位置に水流により回動し得るパドル20を軸支すると共に、該パドル20をそのパドル面が上記弁体16と重なり合うことなくその回動端20’が該弁体の側縁に近接する位置となるように配設し、上記パドル20の回動端20’とは反対側にスイッチ操作部材20a’を設けると共に、該スイッチ操作部材20a’によって駆動し得る流水検知スイッチ22を設け、上記パドル20の回動に基づく上記スイッチ操作部材20a’の動きにより上記流水検知スイッチ22を駆動するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばオフィスビル、集合住宅、ホテル等のスプリンクラー設備に用いて好適な消火設備用流水検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的なオフィスビルのスプリンクラー設備は、図17に示すようにオフィスビルの各階毎に複数個のスプリンクラーヘッド2が設けられ、各階において上記各ヘッド2がスプリンクラー配管3を介して流水検知装置11の二次側に接続され、かつ該流水検知装置11の一次側に消火水配管4が接続され、各配管4はオフィスビルの地階に配設され、該地階において加圧送水ポンプ5、圧力保持ポンプ6を介して貯水槽7に接続されている。また、上記配管4には圧力タンク8及び上記配管4内の圧力低下を圧力タンク8を介して検出し得る圧力スイッチ9が接続されている。尚、同図中10は屋上に配置された消火水の補助水槽である。
【0003】
そして、上記スプリンクラー設備は警戒動作中において全配管内が水で満たされ上記圧力保持ポンプ6により静圧(加圧ポンプ5から最遠箇所で0.1MPa以上)が印加されており、何れかのエリアRで火災が発生すると、スプリンクラーヘッド2’のノズルが熱により自動的に発砲し、配管3’内に充満する消火水が同ヘッド2’から放出され、かかる流水圧力により、上記エリアRの上記流水検知装置11のリードスイッチ等がオンしてこれにより火災警報等が発せられる。
【0004】
また、上記ヘッド2’の発砲に基づく管内圧力の低下を圧力スイッチ9が検知してオンし、該オンに基づいて加圧送水ポンプ5が起動され、配管4内に貯水槽7内の消火水が加圧送水され、引き続いて上記スプリンクラーヘッド2’から消火水が放水され消火活動が行われるものである。
【0005】
このようなスプリンクラー設備における上記流水検知装置として、従来、特許文献1、2に示すような装置が提案されている。
【0006】
特許文献1の流水検知装置は、逆止弁の一次側にパドル型流水検知部を設けたものであり、二次側圧力の低下に伴う逆止弁の一次側から二次側への流水圧力を一次側のパドルで検出して検知部にて検知信号を発するものである。
【0007】
特許文献2の流水検知装置は、いわゆる2ステップバルブ(予作動弁)の二次側にパドル型流水検知部を設けたものであり、2ステップバルブの開時の一次側から二次側への流水圧を二次側のパドルで検出するものである。
【0008】
【特許文献1】特開2003−149021号公報(図1、図2)
【特許文献2】特開2003−290382号公報(図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記特許文献1のものは、逆止弁本体の一次側に流水検知パドルの収納用の導入管部を設ける必要があり、これにより逆止弁本体のサイズが大型化して、流水検知装置自体の小型化が難しいという課題がある。
【0010】
特許文献2のものは、2ステップバルブの2次側に流水検知パドルの設置用の配管を設ける必要があり、上記特許文献1と同様に検知装置全体のサイズが大型化してしまい、小型化が難しいという課題がある。
【0011】
また、流水検知装置としては、小型化の要請と共に、誤動作の防止、メンテナンスの容易さ等の要請から、その構造はできるだけシンプルなものが求められる。
【0012】
本発明は、上記従来の各課題に鑑みてなされたもので、簡単な構造で小型化の容易な消火設備用流水検知装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため本発明は、
第1に、逆止弁筐体内を一次側から二次側に向かう水流により流水検知用パドルを動作させて上記水流を検知する消火設備用流水検知装置であって、逆止弁筐体内の二次側弁室内において、逆止弁を構成する弁体の周縁より外側位置に上記水流により回動し得るパドルを支持すると共に、上記パドルをそのパドル面が上記弁体と重なり合うことなくその回動端が該弁体の側縁に近接する位置となるように配設し、かつ上記パドルの回動端とは反対側にスイッチ操作部材を設けると共に、該スイッチ操作部材によって駆動し得る流水検知スイッチを設け、上記パドルの回動に基づく上記スイッチ操作部材の動きにより上記流水検知スイッチを駆動するように構成したものであることを特徴とする消火設備用流水検知装置により構成される。
【0014】
上記パドルの回動端とは、パドル(20)の回動軸に直交する中心線(n)に沿う回動先端部分をいう。よって、火災等の発生に基づいて弁体(16)が開成して一次側から二次側への水流が生じると、当該水流によりパドル(20)が回動してそのスイッチ操作部材によって流水検知スイッチをオンすることができる。
【0015】
第2に、上記パドルは、その回動端が上記弁体の回動端に近接する位置に配設されているものであることを特徴とする上記第1記載の消火設備用流水検知装置により構成される。
【0016】
上記弁体の回動端とは、弁体(16)の回動支持軸(17a)に直交する中心線(m)に沿う回動先端部分をいう。このように構成すると、弁体(16)の開成時の回動端(16’)に近接してパドル(20)の回動端(20’)が位置するので、弁体(16)開成時の水流を上記パドル(20)に効率良く誘導することができる。
【0017】
第3に、上記二次側弁室の弁筐体壁面に取付孔を設けて当該取付孔にパドル支持体を装着し、該支持体に支持腕を回動可能に取り付け、該支持腕の弁室側の一端部に上記パドルを設け、上記支持腕の他端部に上記スイッチ操作部材を設け、上記弁筐体外部に上記流水検知スイッチを設けたものであることを特徴とする上記第1又は2記載の消火設備用流水検知装置により構成される。
【0018】
このように構成すると、パドル支持体(18等)を中心としてパドル(20)及び流水検知スイッチ(22)をユニット化することが可能となり、当該ユニットを小型化し得て、流水検知装置をコンパクトに構成することができる。
【0019】
第4に、上記弁体の裏面に、弁体の開成時に一次側から二次側に向かう水流を上記パドルの方向に誘導する水流ガイド部材を設けたものであることを特徴とする上記第1〜3の何れかに記載の消火設備用流水検知装置により構成される。
【0020】
第5に、上記水流ガイド部材は、上記弁体裏面から一次側流水経路側に突出する水流ガイド板を具備しており、当該水流ガイド板により水流を上記パドル方向に誘導するものであることを特徴とする上記第4記載の消火設備用流水検知装置により構成される。
【0021】
このように構成することにより、水流ガイド部材(24等)により水流をより効率的にパドルに誘導することが可能となる。
【0022】
尚、本発明の構成に対応して実施形態中の符号をかっこ書で示したが、これは対応関係を明確にするために便宜上表示したものであって、本発明の構成が実施形態中の構成に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、その構造が簡単であるため故障や誤動作を極力少なくすることができ、メンテナンス性の良い消火設備用流水検知装置を実現し得る。
【0024】
また、流水検知用パドルの回動端を弁体の周縁に近接して設けたので、少ない流量でパドルを作動させることが可能となり、これにより流水検知用パドルの面積を小さくし得て、流水検知装置自体を小型化することが可能となる。
【0025】
また弁体の裏面に水流ガイド部材を設けることにより感度の高い流水検知装置を実現することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る消火設備用流水検知装置の実施形態を詳細に説明する。
【0027】
図1及び図2は第1実施形態に係る流水検知装置11を示すものであり、11aは逆止弁筐体としての弁筐体であって、一次側A(貯水槽7側)から二次側B(スプリンクラー2側)に向かう流水経路(矢印C方向)が形成されており、一次側流水経路12には一次側配管4に接続するための一次側の取付用フランジ12a、二次側流水経路13には二次側配管3に接続するための二次側の取付用フランジ13aが形成されている

【0028】
上記一次側流水経路12の弁室11a’(二次側弁室)側の開口部12bには水平の弁座14が形成されており、該弁座14には密閉用のオーリング15が埋め込まれている。
【0029】
16は上記開口部12bを二次側から開閉し得る逆止弁体としての円形弁体、17,17は(図3参照)上記二次側弁室11a’の内壁に対向配置されたボス部であり、該ボス部17,17間には弁体支持用の支軸17aが軸支されている。上記弁体16は、上記支軸17aにその腕部16a,16aを以って開閉自在に軸支されており、当該弁体16は、図1に示すように、上記開口部12bのオーリング15に密着した弁閉止状態と、一次側から二次側への水流によって矢印D方向に回動して上記開口部12bを開放した弁開成状態とを採り得るように構成されている。
【0030】
18はパドル支持体であり、上記二次側弁室11a’の上記支軸17aとは反対側の壁面に貫設された取付孔19に止水状態で嵌着されている。このパドル支持体18には(図4参照)、流水検知用パドル20の支持腕20aがその中央屈曲部kを以って、該腕20aに直交する支軸21により回動自在に支持されている。この支持腕20aの弁室11a’側の一端には流水検知用パドル20が接続され、上記支軸21から弁筐体11a外側方向に延びる上方屈曲部分には後述の可動接片23bに接触する棒状のスイッチ操作部材20a’が形成されている。尚、上記支持腕20aは全体として中央屈曲部kを中心とした「く」字状をなすものである(図4)。
【0031】
このスイッチ操作部材20a’の端部には上記可動接片23bが弾性的に接触しており、上記支持腕20a自体は上記可動接片23bの弾性力により常時矢印E方向に若干回動附勢され、これにより常時は、上記支持腕20a下部が上記パドル支持体18に前面に突設されたストッパー部材18aに当接した状態を維持するように構成されている。そして、この支持腕20aが上記ストッパー部材18aに当接した回動附勢状態では、上記パドル20は図1、図4に示す水平状態となるように構成されている。尚、図4、図5中G1,G2は止水用ゴムパッキンである。
【0032】
ここで、上記弁体16の支軸17aに直交する当該弁体16の中心線をmとすると(図3)、当該中心線mに沿う上記弁体16の回動先端部を回動端16’といい、上記弁体16の周縁を符号16”で示す。また、上記パドルの支軸21に直交する上記パドル20の中心線をnとすると、当該中心線nに沿う上記パドル20の回動先端部を回動端20’という(図3)。
【0033】
上記流水検知用パドル20は左右方向に横長の略長方形状をなし(図3参照)、上記支持腕20aの先端に固着されている。このパドル20は、図1に示す水平状態で、その弁体16側の回動端20’が、上記弁体16の回動端16’に接触しないよう、上記弁体6の回動端16’と上記回動端20’との間には僅かの間隙tが形成されるように設けられる(図1)。即ち、上記弁体16の周縁より外側の位置に上記パドル20を支持(軸支)すると共に、上記パドル20をそのパドル面が上記弁体16と重なり合うことなくその回動端20’が上記弁体16の側縁(図1の場合は回動端16’)に近接する位置となるように配設する。
【0034】
この流水検知用パドル20は、上記弁筐体11a内に充水された火災警戒状態では、上記回動附勢状態、即ち、図1に示すように、上記開口部12b周辺の弁室11a’側の水平段部12b’に沿う水平な状態で支持され、かかる状態において、当該パドル20の設置位置は、上記弁体16の上面位置より多少上側に位置するように配設されている。その結果、上記パドル20の下側と、上記水平段部12b’の上側には小空間Sが形成されるように構成配置される。このような構成により、上記弁体16の開成方向への回動動作(矢印D方向)を、上記回動端16’は上記パドル20に接触することなく行うことができる。
【0035】
22は火災警報スイッチとしての流水検知スイッチであり、上記パドル支持体18の弁筐体11a外側に接続固定されている。この流水検知スイッチ22は、固定接片23aと、上端部qを固定された弾性板からなる可動接片23bとを有しており(図4)、上記可動接片23bが上記スイッチ操作部材20a’に接触することで、上記パドル20に矢印E方向の回動附勢力を与えている。このスイッチ22は、上記弁体11の一次側Aから二次側Bへの流水圧力により上記パドル20が矢印F方向に回動することにより、上記可動接片23bが上記操作部材20a’により固定接片23a側に押されて該接片23aに接触しオンし得るように構成されている(図5の状態)。
【0036】
また、水流が停止する等して上記パドル20への流水圧力が消勢すると、上記可動接片23bが弾性復帰して上記固定接片23aから離間してオフ状態となる。このとき、上記パドル20は上記可動接片23bの弾性復帰力により矢印E方向に回動附勢されて上記支持腕20aが上記ストッパー部材18aに接触する水平状態(図1、図4の状態)に復帰する。
【0037】
本発明に係る消火設備用流水検知装置は、上述のように構成されるものであるから、次にその動作を説明する。
【0038】
(1)火災警戒状態
本発明に係る流水検知装置11は、図17に示すオフィスビルの各階に配置され、一次側フランジ12aに一次側配管4が接続され、二次側フランジ13aに二次側配管としてのスプリンクラー配管3が接続されており、上記配管4、3及び流水検知装置11内(弁筐体11a内)は、消火水で満たされており、圧力保持ポンプ6にて静圧(末端で0.1MPa以上)が印加された火災警戒状態を維持している。
【0039】
この火災警戒状態においては、図1に示すように、弁体16は閉止状態であり、流水検知用パドル20も同図の水平状態となっており、該パドル20下側には空間Sが形成されている。
【0040】
(2)火災が発生したときの動作
かかる火災警戒状態において、例えば図17のエリアRにて火災が発生し、当該火災により特定のスプリンクラーヘッド2(例えばスプリンクラーヘッド2’)が発砲すると、スプリンクラー配管3’内に充満していた消火水が上記スプリンクラーヘッド2’から放出され、これにより流水検知装置11の二次側圧力が低下し、当該圧力低下に基づいて上記流水検知装置11において一次側から二次側への水流(矢印C方向)が発生する。
【0041】
即ち、上記二次側圧力の低下により弁筐体11a内の弁体16がパドル20に接触することなく矢印D方向に回動し、一次側流水経路12から弁室11a’を介して二次側流水経路13方向(矢印C方向)への水流が発生する。
【0042】
このとき、上記弁体16が上記支軸17aを支点として回動(開成動作)すると、該回動動作の初期(図2の弁体16の実線位置、開成角度θ)において弁体16の回動端16’近傍位置から上記パドル20の下側の空間Sを通って二次側流水経路13側に水流が生じ(図5矢印G参照)、かかる水流の圧力により上記パドル20が矢印F方向に回動する。このとき、上記パドル20は弁体16の開口角度の大きい回動端16’側に近接して位置しているので、一次側Aから二次側Bへの流量は上記パドル20の下側空間S近傍で大となり、かかる空間Sを通る水流によりパドル20を効率的に作動させることができる。
【0043】
上記パドル20が矢印F方向に回動すると、警報スイッチ22の可動接片23bが上記操作部材20a’により押されて固定接片23aに接触し(図2、図5参照)、これにより流水検知スイッチ22がオンする。よって、当該流水検知スイッチ22のオンにより警報機(図示せず)が作動して警報音が鳴り、火事が発生したことを住人に知らせることができる。尚、一次側Aから二次側Bへの流量により上記弁体16は図2の二点鎖線位置まで回動するが、上記パドル20による上記スイッチ22のオン動作は上記弁体16の開成初期動作(例えば図1の弁体16の実線位置の開成角度θ)にて行われる。
【0044】
さらに、上記スプリンクラーヘッド2’の発砲に基づく配管3、4の圧力低下は、圧力タンク8を介して圧力スイッチ9により検出され、当該検出に基づいて加圧送水ポンプ5が駆動され、これにより引き続き配管4内に貯水槽7内の消火水が圧力送水され、当該送水された消火水が開状態の上記弁体16を介して引き続き上記スプリンクラーヘッド2’から放水されて消火動作が続行される。
【0045】
尚、消火作業が終了して、上記弁筐体11a内の水流が消勢すると、上記可動接片23bの附勢力により上記パドル20は矢印E方向に回動復帰して、ストッパー部材18aに当接した水平状態に復帰する。
【0046】
このように、本発明に係る消火設備用流水検知装置では、二次側弁室11a’内において、弁体16の回動端16’に、流水検知用のパドル20の回動端20’が近接するように、当該流水検知用パドル20を設けたので、弁体16自体には、流水検出用のパドル20を設ける必要がなく、弁体16とパドル20は何等接触がないので、パドル20による弁体16自体の圧力損失を殆どなくすことができる。
【0047】
また、流水検知用のパドル20を弁体16の回動端16’に近接して設けているので、少ない流量でパドル20を作動させることが可能となり、これにより流水検知用パドル20自体の面積を非常に小さくすることができ、当該パドルを作動させるための圧力損失を極めて小さくすることができる。
【0048】
また、本発明に係る流水検知装置は、通常の逆止弁として用いられる弁筐体11aの二次側弁室11a’の側壁に取付孔19を貫設し、当該取付孔19を介して上記流水検知用パドル20、パドル支持体18及び流水検知スイッチ22を図1に示すように設置することにより構成することができるため、流水検知パドルや警報スイッチを設置するための連結管や弁筐体を別途設ける必要はなく、このため、流水検知装置自体を極めて小型に構成することができる。
【0049】
また、このようにパドルを含め流水検知のための機構を極めて小型に構成できるので、パドル20、パドル支持体18等のユニットを既存の逆止弁筐体に設置することも可能である。
【0050】
図6に示すものは、当該第1の実施形態における流水検知用パドル20の他の実施形態であり、上記パドル20の回動端20’を上記円形の弁体16の回動端16’に沿う凹状円弧形状としたものである。このように、パドル20の回動端20’を円形弁体16に沿う凹状円弧形状とすることによって、上記弁体16の回動端16’側の周縁と上記パドル20の回動端20’との間隙をより少なくすることができる。これによって上記パドル20により、上記弁体16の開成時に一次側Aから二次側Bに生じる水流をより効率的に受けることができ、該パドル20の作動感度をより向上させることができる。
【0051】
図7に示すものは、当該第1の実施形態における流水検知用パドル20のさらに他の実施形態であり、上記パドル20及び流水検知スイッチ22の弁筐体11aへの取り付け位置を、図1、図6の実施形態に対して90度移動させたものである。即ち、上記パドル20を上記弁体16の回動端16’に対して直交する位置に設けたものである。この場合、弁体16の開成時には、上記パドル20は弁体16の回動端16’側から90度移動した位置(直交位置)に存在しているが、上記開口部12bから上記弁体16の回動端16’から直交する周縁16”近傍から二次側Bに向かう水流によりパドル20を同様に作動させることができる。
【0052】
また、パドル20及び流水検知スイッチ22の取り付け位置は、パドル20の感度を向上させる観点からすると、弁体16の開成に伴う開口面積の大きい部分に対応した位置、即ち当該弁体16の回動端16’に対向する位置(図6の位置)に設けることが好ましいが、本発明に係る流水検知装置の構成では、パドル20の回動端20’が弁体16の周縁16”に近接して位置しているので、小流量でパドル20を作動することができ、このため当該パドル20の取り付け位置は、上記二次側弁室11a’内において、上記弁体16の支軸17a近傍を除く周縁16”に対応する位置であればどこでも取り付けることができる。
【0053】
図8、図9に示すものは、本発明に係る流水検知装置の第2の実施形態を示すものであり、上記弁体16の下面に水流ガイド部材24(図13)を設けたものである。尚、当該第2の実施形態において上記水流ガイド部材24以外の構成は、上記第1の実施形態と同様であるため、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付し、便宜上それらの説明は省略する。
【0054】
上記水流ガイド部材24は、一次側Aから二次側Bへの水流により上記弁体16が開成する際に、一時側Aから二次側Bに流れる水流を上記パドル20側(上記空間S側)に誘導することにより(図12矢印G’参照)、上記パドル20の開閉感度をさらに向上させるものである。
【0055】
この水流ガイド部材24は、図13に示すように、台形状の基板24aと該基板24aの左右側縁を下方に向けて略直角に折曲して形成した同一形状の一対の水流ガイド板24b、24bとから構成されており、これら水流ガイド板24b,24bは基板24aの長辺側の下辺25から短辺側の上辺26に行くにつれてその上下方向幅が徐々に大きくなるように形成している。上記水流ガイド板24b,24bの上下方向幅をこのように構成することにより、例えば弁体16が図9に示すように少し開いた状態(角度θ度)においても、上記水流ガイド板24b,24bの下縁24b’が水平状態を維持し得るので、かかる開成状態においても効果的に水流をパドル20方向に誘導し得る。
【0056】
この水流ガイド部材24は、上記弁体16の裏面に図10に示すように、上記上辺26側を上記パドル20に向けた状態で2箇所のスポット溶接Pにより固着されており、これにより上記水流ガイド板24b,24bの間隔は、上記パドル20方向に向けて徐々に狭くなるように構成される。
【0057】
本発明に係る流水検知装置(第2の実施形態)は上述のように構成されるので次にその動作を説明する。火災警戒状態においては、上記第1の実施形態と同様に、上記弁筐体11a内は充水状態であり、図8に示すように、弁体16は閉止状態であり、流水検知用パドル20も同図の水平状態を維持しており、該パドル20下側には空間Sが形成された状態となっている。
【0058】
かかる火災警戒状態において、第1の実施形態と同様に、例えば図16のエリアRにて火災が発生し、当該火災により特定のスプリンクラーヘッド2(例えばスプリンクラーヘッド2’)が発砲すると、スプリンクラー配管3’内に充満していた消火水が上記スプリンクラーヘッド2’から放出され、これにより流水検知装置11の二次側圧力が低下し、当該圧力低下に基づいて上記流水検知装置11において一次側Aから二次側Bへの水流(矢印C方向)が発生する。
【0059】
そして上記弁体16が上記支軸17aを支点として回動(開成動作)すると、弁体16の回動端16’近傍位置から上記パドル20の下側の空間Sを通って二次側流水経路13側に水流が生じ(図8矢印C参照)、かかる水流の圧力により上記パドル20が矢印F方向に回動する。この上記弁体16の開成動作の初期動作(例えば、上記弁体16が図9の角度(約θ度)まで開く過程において)、一次側流水経路12から上記弁体16方向に生じる水流は、上記弁体16の下面において水流ガイド部材24の水流ガイド板24b,24bにより上記パドル20の方向(空間Sの方向)に誘導される(図12矢印G’)。即ち、上記弁体16方向に生じる水流は、徐々にその間隔を上記パドル方向に向けて狭くなる上記水流ガイド板24b、24bによって上記パドル20の方向に集中され、効果的に上記パドル下側空間S方向に誘導される。よって、少ない流量で弁体16の開き角度が小さい場合であってもパドル20を効果的に作動させることができる。
【0060】
上記パドル20が矢印F方向に回動すると、流水検知スイッチ22の可動接片23bが上記スイッチ操作部材20a’により押されて固定接片23aに接触し、これにより流水検知スイッチ22がオンする。よって、当該スイッチ22のオンにより警報機(図示せず)が作動して警報音が鳴り、火事が発生したことを住人に知らせることができる。以降の動作は第1の実施形態と同様である。
【0061】
このように、本発明に係る流水検知装置(第2の実施形態)では、上記第1の実施形態と同様の効果を奏し得ると共に、弁体16裏面に設けた水流ガイド部材24によって、一次側Aから二次側Bに流れる水流を効果的にパドル20方向に誘導することができ、より少ない流量で流水検知用パドル20を確実に作動させることができるものである。
【0062】
図14に示すものは、当該第2の実施形態におけるパドル20の他の実施形態であり、上記第1の実施形態の図6と同様に、上記パドル20の回動端20’を上記円形の弁体16の周縁(回動端16’)に沿う凹状円弧形状としたものである。このように、パドル20の先端側縁20’を円形弁体16の周縁に沿う凹状円弧形状とすることによって、当該パドル20は、上記弁体16の開口時に一次側Aから二次側Bに生じる水流をより効率的に受けることができ、上記水流ガイド部材24の作用と相俟って上記パドル20の感度をより向上させることができる。
【0063】
図15(イ)に示すものは、当該第2の実施形態におけるパドル20のさらに他の実施形態であり、上記パドル20及び流水検知スイッチ22の弁筐体11aへの取り付け位置を図14の実施形態に対して90度移動させたものである。即ち、上記パドル20を上記弁体16の回動端16’に対して直交する位置に設けたものである。この場合、弁体16の開成時には、上記開口部12bから上記弁体16の回動端16’に対して直交する周縁16”近傍から二次側Bに向かう水流によりパドル20を作動させることができる。
【0064】
図15(ロ)は、この場合の水流ガイド部材27を示すものであり、この水流ガイド部材27は、三角形状の基板27aと該基板27aの隣接する2辺から下方に向けて略直角に設けられた水流ガイド板27b、27cとから構成されており、上記水流ガイド板27b、27cは、上記基板27bの頂点r側に行くに従いその上下方向幅を徐々に大きくなるように形成されている。上記水流誘導板27b,27cの上下方向幅をこのように構成することにより、例えば弁体16が図9に示すように少し開いた状態(角度θ)において、上記第1の実施形態と同様に、上記水流ガイド板27b,27cの下縁27b’,27c’が略水平状態となるので、弁体16の開成動作の初期において効率的に水流をパドル20方向に誘導することができる。
【0065】
この水流ガイド板27は、上記弁体16の裏面に図15(イ)に示すように、上記水流ガイド板27b,27cの形成されていない一辺を上記パドル20方向に向け、かつ上記水流ガイド板27bが上記パドル20の長手方向に略平行となるような状態で、上記弁体16裏面に2箇所のスポット溶接Pにより固着されている。当該水流ガイド板27をこのような向きで上記弁体16裏面に固定することにより、その水流ガイド板27b,27cによって、一次側Aから弁体16下面方向に流れる水流を、弁体16の回動端16’に対して直交する方向に誘導してパドル20方向に誘導、集中させることができる。
【0066】
これにより、流水検知用パドル20を上記弁体16の回動端16’に対して直交する方向に取り付けた場合であっても、効果的に水流を上記パドル20方向に誘導して、当該パドル20の作動感度を向上させることができるものである。
【0067】
尚、当該第2の実施形態においても、流水検知用パドル20の取り付け位置は、上記弁筐体11a内壁(弁室11a’内)において、弁体16の支軸17a近傍位置を除く周縁16”に対応する位置であれば、どの位置に設けても良い。また、この場合、取り付け位置のパドル20へ効果的に水流を誘導するように水流ガイド板27b,27cを構成すればよい。このように、水流ガイド部材27により、一次側Aから二次側Bへの水流をパドル20に誘導するように構成することにより、パドルを上記弁体16の周縁16”に対応するどの位置に取り付けても、感度の高い流水検知装置を構成することができる。
【0068】
図16に示すものは、本発明に係る流水検知装置の第3の実施形態であり、取付孔19内において、パドル20の支持腕20aをゴム等の弾性体からなるパドル支持体28によって水平に支持したものである。このパドル支持体28は上記取付孔19の弁筐体11外側位置において取付板29を介してボルト30,30により止水状態で取り付けられており、弁室11a’側に突出する取付部28aにより上記支持腕20aを水平状態で挟持するものである。よって、弁体16が開成して矢印C方向の水流により上記パドルが矢印F方向に回動すると、スイッチ操作部20a’が流水検知スイッチ22の可動接片23bを固定接片23aに接触させ、当該スイッチ22をオンすることができる。かかる構成によると、パドル20の支持構成をより簡略化することができる。尚、水流が消勢した場合は、上記支持体28の弾性力により上記パドル20は水平状態に復帰する。
【0069】
以上のように本発明の消火設備用流水検知装置11によれば、その構造が簡単であるため故障や誤動作を極力少なくすることができ、メンテナンス性を高めることができる。
【0070】
また、弁体16の回動端16’等の周縁に近接してパドル20の回動端20’を設けたので、パドル20の作動感度を高めることができ、これにより流水検知感度を高く維持しつつ、パドル20の面積を小さくすることができる。
【0071】
また、弁体16の裏面に水流ガイド部材24(27)を設けた場合は、パドル20の作動感度をさらに高めることができる。このため、該水流ガイド板24(27)は、例えば流量が小の場合や管径が大で消火水の流速が遅い場合等に適用することにより、パドル20の作動感度を高く維持することができる。
【0072】
また、パドル20の面積を小さくすることが可能であるため、パドル20や流水検知スイッチ22等を小型化することができ、当該パドル20及び流水検知スイッチ22を既存の逆止弁筐体11a内に取り付けることも可能となり、パドル20取り付けのための特別の管体等を必要とせず、流水検知装置全体を非常に小型化することが可能となる。
【0073】
さらにパドル面積自体が小さいのでパドル20による水流抵抗も小さく、圧力損失を非常に低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る第1の実施形態の消火設備用流水検知装置の側面断面図である。
【図2】同上装置の側面断面図であり、弁の開成状態を示すものである。
【図3】同上装置の横断面図である。
【図4】同上装置のパドル近傍の要部側面図である。
【図5】同上装置のパドル近傍の要部側面図であり、弁開成状態を示すものである。
【図6】同上装置の他の実施形態の横断面図である。
【図7】同上装置の他の実施形態の横断面図である。
【図8】本発明に係る第2の実施形態の消火設備用流水検知装置の側面断面図である。
【図9】同上装置の側面断面図であり、弁の開成状態を示すものである。
【図10】同上装置の横断面図である。
【図11】同上装置のパドル近傍の要部側面図である。
【図12】同上装置のパドル近傍の要部側面図であり、弁開成状態を示すものである。
【図13】同上装置の水流ガイド部材の斜視図である。
【図14】同上装置の他の実施形態の横断面図である。
【図15】(イ)は同上装置の他の実施形態の横断面図、(ロ)は同上装置の他の実施形態における水流ガイド部材の斜視図である。
【図16】本発明に係る第3の実施形態の消火設備用流水検知装置のパドル近傍の側面断面図である。
【図17】オフィスビルにおけるスプリンクラー設備の全体構成を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
11 流水検知装置
11a 弁筐体
11a’ 二次側弁室
16 弁体
16’ 回動端
16” 周縁
18,28 パドル支持体
19 取付孔
20 パドル
20’ 回動端
20a 支持腕
20a’ スイッチ操作部材
22 流水検知スイッチ
24、27 水流ガイド部材
24b 水流ガイド板
27b,27c 水流ガイド板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆止弁筐体内を一次側から二次側に向かう水流により流水検知用パドルを動作させて上記水流を検知する消火設備用流水検知装置であって、
逆止弁筐体内の二次側弁室内において、逆止弁を構成する弁体の周縁より外側位置に上記水流により回動し得るパドルを支持すると共に、
上記パドルをそのパドル面が上記弁体と重なり合うことなくその回動端が該弁体の側縁に近接する位置となるように配設し、
かつ上記パドルの回動端とは反対側にスイッチ操作部材を設けると共に、該スイッチ操作部材によって駆動し得る流水検知スイッチを設け、
上記パドルの回動に基づく上記スイッチ操作部材の動きにより上記流水検知スイッチを駆動するように構成したものであることを特徴とする消火設備用流水検知装置。
【請求項2】
上記パドルは、その回動端が上記弁体の回動端に近接する位置に配設されているものであることを特徴とする請求項1記載の消火設備用流水検知装置。
【請求項3】
上記二次側弁室の弁筐体壁面に取付孔を設けて当該取付孔にパドル支持体を装着し、該支持体に支持腕を回動可能に取り付け、該支持腕の弁室側の一端部に上記パドルを設け、上記支持腕の他端部に上記スイッチ操作部材を設け、上記弁筐体外部に上記流水検知スイッチを設けたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の消火設備用流水検知装置。
【請求項4】
上記弁体の裏面に、弁体の開成時に一次側から二次側に向かう水流を上記パドルの方向に誘導する水流ガイド部材を設けたものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の消火設備用流水検知装置。
【請求項5】
上記水流ガイド部材は、上記弁体裏面から一次側流水経路側に突出する水流ガイド板を具備しており、当該水流ガイド板により水流を上記パドル方向に誘導するものであることを特徴とする請求項4記載の消火設備用流水検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−3377(P2007−3377A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−184570(P2005−184570)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(593192900)株式会社立売堀製作所 (22)
【出願人】(504318429)大明機械工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】