説明

液体または流動性固化材供給用の噴射装置及びそれを用いた鋼杭並びに鋼杭の施工方法及び基礎杭

【課題】鋼管杭及びそれに用いる装置並びに鋼管杭の施工方法及び基礎杭を提供すること。
【解決手段】鋼管杭本体2の外側に、先端部および周方向の側壁にそれぞれ噴射孔6を備えた金属製外管7が杭軸方向に配置されて固定され、その金属製外管7の内側に、給液用の管状弁体8が摺動可能に嵌合され、前記給液用の管状弁体8の先端部および周方向の側壁には、前記噴射孔の入り口5a側に接続するための孔と、前記噴射孔の入り口側を閉塞するための壁部とが設けられている鋼管杭1とする。前記金属製外管7と給液用の管状弁体8とを備えた流動性固化材供給用の噴射装置22とする。また、前記の鋼管杭1を用いて金属製外管7の先端部の噴射孔から水またはセメントミルク等の経時硬化性材料および側壁の噴射孔から経時硬化性材料を噴射して鋼管杭1を施工して基礎杭を構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼杭を打設する際に、杭支持力の増大を図るために鋼杭の先端と周面にセメントミルク等の流動性固化材を注入して根固め部および付着層を形成するための液体または流動性固化材供給用の噴射装置及びそれを用いた鋼杭並びに鋼杭の施工方法及び基礎杭に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管杭の施工において、バイブロハンマを用いて、鋼管杭に振動力を与えて、地盤の抵抗を軽減しながら、地中に打設する工法が一般に用いられるが、地盤が固い場合にはウォータージェットを併用する方法がある。
【0003】
図19に示すように、バイブロハンマ35による振動に加えてウォータージェットを併用する鋼管杭の施工方法は、鋼管杭36の先端部に複数の噴射ノズルを配置し、各々の噴射ノズルにゴムホース37が接続され、噴射ノズルから高圧水を噴射することにより、地盤を掘削し、杭の打設抵抗を軽減する工法である。なお、一般的にウォータージェットは、鋼管杭の先端部から下方のみに向かって噴射される。
【0004】
しかし、ウォータージェットを併用した施工方法においては、鋼管杭の下方の地盤内に空洞が発生したり、鋼管杭先端部の閉塞が不十分となるために、鋼管杭の施工後に、先端支持力を確保することができない。
そこで、噴射ノズルを用いて高圧水を噴射しながら、所定の支持層まで鋼管杭を施工後に、噴射ノズルから流動性固化材を噴射することにより、杭先端部に根固め部を築造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、噴射ノズルの高圧水の噴射方向を杭打設方向および打設方向と垂直外側方向とすることにより、大きな根固め部を築造できることも知られている(例えば、特許文献1参照)。
前記従来の場合は、セメントミルクを噴射するためにゴム製のホースを使用しているが、ゴム製のホースはフレキシブルであるため、鋼管杭の打込み長が15m未満程度であると、回収が可能で、鋼管杭打設後にホースを回収しながら周面へもセメントミルクを注入することができるという特長を有している。
【0006】
セメントミルクを噴射するためにゴム製のホースを使用した場合には、鋼管杭の打設深度が大きくなってくると、周面の地盤からの抵抗(土圧による締付け)が大きくなり、ゴム製のホースの回収が困難になる。また、鋼管杭打設途中でゴム製のホースが破断してしまう危険性も大きくなる。鋼管杭の打込み長が20m〜30mを超えると、地盤条件にもよるが、事実上、ゴム製のホースは使用できなくなる。
【0007】
また、地盤掘削補助として鋼管杭に取り付けた高圧噴射用の高圧給水ホースには、先端に高圧噴射ノズルが取り付けてあるが、高圧噴射ノズルを、鋼管杭に溶接してあるノズルホルダーに取り付ける際にテンションエレメントと呼称される部品で固定することも知られている(例えば、特許文献2参照)。
前記のテンションエレメントによって打設時に高圧噴射ノズルが外れないようにしており、逆に高圧給水ホース回収時には、所定の引張り力が加わるとテンションエレメントがちぎれて簡単に取り外れるようになっている。ただし、この場合も、鋼管杭の打込み深度が深いほど困難となる。すなわち、鋼管杭打込み途中であるのにテンションエレメントが耐荷重を超えて切断し(ちぎれ)たり、地盤からの高圧給水ホースへの締め付けが強すぎて、地上から高圧給水ホースに引張り力を作用させても、その引張り力がテンションエレメントまで到達しない恐れがある。
【0008】
前記の装置と同様に、杭へのジェットノズルの固定、取り外しを簡単に行うための装置として、高圧噴射ノズルをノズルホルダーに差込み、シャーピンと呼ばれる部品で固定し、高圧給水ホース回収時は一定の力以上の引張り力が加わるとシャーピンが破断し、高圧噴射ノズルがノズルホルダーから簡単に取り外しできるようにした技術も知られている(例えば、特許文献3参照)。
ただし、この場合も、杭の打込み深度が深くなると、打設途中でシャーピンが破断したり、高圧給水ホース回収時に引張り力が、高圧給水ホース先端まで届かずに、シャーピンが破断できずに、高圧給水ホースが、回収不能と成ってしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−270157号公報
【特許文献2】特開2007−46432号公報
【特許文献3】特開平08−92955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記従来の場合には、打設時の課題として、(1)打設中にテンションエレメントが切れたり、(2)高圧給水ホースが損傷したり、最悪の場合、高圧給水ホースが破断する恐れがあった。
また、高圧給水ホース回収時の課題として、杭の貫入深度が深くなると、高圧給水ホースを引張ってもテンションエレメントが切れずに高圧給水ホースが切れる恐れがある。
これらの課題を解消することで、打設途中に水及びセメントミルク配送のための管が破損しないようにしつつ、セメントミルクの杭先端注入から杭周面注入への切り替えが可能となり、効率よく鋼杭を施工でき基礎杭を築造することができる。
本発明は前記の課題を有利に解消した液体または流動性固化材供給用の噴射装置及びそれを用いた鋼杭並びに鋼管杭の施工方法及び基礎杭を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明の液体または流動性固化材供給用の噴射装置においては、液体または流動性固化材供給用の噴射装置であって、先端部および周方向の側壁にそれぞれ噴射孔を備えた金属製外管の内側に、給液用の管状弁体が摺動可能に嵌合され、前記給液用の管状弁体の先端部および周方向の側壁には、前記金属製外管の噴射孔に接続する入り口に接続するための孔と、前記金属製外管の噴射孔に接続する入り口を閉塞するための壁部とが設けられていることを特徴とする。
第2発明では、第1発明の液体または流動性固化材供給用の噴射装置において、金属製外管先端部の噴射孔と、給液用の管状弁体の先端部の孔とが連通している時に、金属製外管側壁の噴射孔と、給液用の管状弁体の側壁の孔とが連通しないように、金属製外管における側壁の噴射孔と、給液用の管状弁体の側壁の孔とは、位置がずらされて設けられていることを特徴とする。
第3発明では、第1発明の金属製外管先端部の噴射孔と、給液用の管状弁体の先端部の孔とが連通している時に、金属製外管側壁の噴射孔と、給液用の管状弁体の側壁の孔とが連通しないように、属製外管における側壁の噴射孔と、給液用の管状弁体における側壁の孔とは、上下方向に位置がずらされており、かつ、金属製外管側壁の噴射孔と、給液用の管状弁体の側壁の孔とが連通している時に、金属製外管先端部の噴射孔と、給液用の管状弁体の先端部の孔とが連通連通しないように、金属製外管先端部の噴射孔と、給液用の管状弁体の先端部の孔とは、管半径方向に位置がずらされていることを特徴とする。
第4発明では、第1発明の液体または流動性固化材供給用の噴射装置において、金属製外管先端部の噴射孔と、給液用の管状弁体の先端部の孔とが連通している時に、金属製外管側壁の噴射孔と、給液用の管状弁体の側壁の孔とが連通しないように、属製外管における側壁の噴射孔と、給液用の管状弁体における側壁の孔とは、管周方向に位置がずらされ、かつ金属製外管側壁の噴射孔と、給液用の管状弁体の側壁の孔とが連通している時に、金属製外管先端部の噴射孔と、給液用の管状弁体の先端部の孔とが連通連通しないように、金属製外管先端部の噴射孔と、給液用の管状弁体の先端部の孔とは、管周方向に位置がずらされていることを特徴とする。
第5発明では、鋼杭本体の外側に、第1発明〜第4発明のいずれか一つまたは複数の液体または流動性固化材供給用の噴射装置における金属製外管が杭長手方向に配置されて固定されていることを特徴とする。
第6発明では、第1,2,3のいずれかの発明の鋼杭において、鋼杭本体の外側に、請求項1〜請求項3のいずれか一つまたは複数の液体または流動性固化材供給用の噴射装置における金属製外管が杭長手方向に配置されて固定され、前記金属製外管の側壁に、上下方向に間隔をおいて噴射孔が設けられ、給液用の管状弁体の側壁には、前記噴射孔に接続するための孔が、前記噴射孔が設けられている間隔と同じ間隔で上下方向に間隔をおいて設けられ、金属製外管に対して給液用の管状弁体は上下方向に移動可能に、かつ周方向に回転不能にされていることを特徴とする。
第7発明では、第1,2,4のいずれかの発明の鋼杭において、金属製外管の側壁に、周方向に間隔をおいて噴射孔が設けられ、給液用の管状弁体の側壁には、前記噴射孔に接続するための孔が、前記噴射孔が設けられている間隔と同じ間隔で周方向に間隔をおいて設けられ、金属製外管に対して給液用の管状弁体は周方向に回動可能に、かつ上下方向に移動不能にされ、金属製外管の側壁噴射孔と管状弁体の孔が連通するときは金属製外管の先端部噴射孔が閉塞され、金属製外管の側壁噴射孔と管状弁体の孔が連通していないときは金属製外管の先端部噴射孔が開放されていることを特徴とする。
第8発明の鋼杭においては、鋼杭本体は、鋼管またはH形鋼あるいは鋼矢板のいずれかであることを特徴とする。
第9発明の鋼管杭の施工方法においては、鋼管杭の打設において、鋼杭貫入方向に高圧水を噴射する鋼杭の施工方法であって、請求項5〜8のいずれかの鋼杭を用い、給液用の管状弁体内に高圧水を供給し杭先端部から高圧水を噴射して、鋼杭を所定の深度に貫入させた後、前記高圧水の噴射に代わって、管状弁体内に流動性固化材を供給して、前記杭先端部から流動性固化材を噴射し、鋼杭先端部に根固め部を築造し、また給液用の管状弁体における側壁の孔と、金属製外管の側壁の噴射孔を連通させて、金属製外管の側壁の噴射孔から流動性固化材を噴射して、鋼杭の外周面と鋼杭周囲の地盤に形成された縦孔との間に流動性固化材を噴射して鋼杭側周面側に付着層を形成することを特徴とする。
第7発明の基礎杭では、第6発明の鋼杭の施工方法によって施工されて、流動性固化材が固化された根固め部および付着層により鋼杭が支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1発明の液体または流動性固化材供給用の噴射装置によると、先端部および周方向の側壁にそれぞれ噴射孔を備えた金属製外管の内側に、給液用の管状弁体が摺動可能に嵌合され、前記給液用の管状弁体の先端部および周方向の側壁には、前記金属製外管噴射孔に接続するための孔と、前記金属製外管噴射孔を閉塞するための壁部とが設けられているので、金属製外管と管状弁体とを備えた簡単な二重管構造の噴射装置であり、また、金属製外管の先端部あるいは側壁の噴射孔から噴射させることができる等の効果が得られる。
第2発明の液体または流動性固化材供給用の噴射装置によると、金属製外管先端部の噴射孔と、給液用の管状弁体の先端部の孔とが連通している時に、金属製外管側壁の噴射孔と、給液用の管状弁体の側壁の孔とが連通しないように、金属製外管先端部の噴射孔と、給液用の管状弁体の先端部の孔と、金属製外管における側壁の噴射孔と、給液用の管状弁体の先端部および側壁の孔とは、位置がずらされて設けられているので、金属製外管の先端部からの噴射と、側壁の噴射孔からの噴射とを切り替えて、セメントミルク等の流動性固化材料を噴射することができる。また、金属製外管と管状弁体とを備えた簡単な二重管構造の噴射装置とすることができる等の効果が得られる。
第3発明によると、金属製外管先端部の噴射孔と、給液用の管状弁体の先端部の孔とが連通している時に、金属製外管側壁の噴射孔と、給液用の管状弁体の側壁の孔とが連通しないように、属製外管における側壁の噴射孔と、給液用の管状弁体における側壁の孔とは、上下方向に位置がずらされており、かつ、金属製外管側壁の噴射孔と、給液用の管状弁体の側壁の孔とが連通している時に、金属製外管先端部の噴射孔と、給液用の管状弁体の先端部の孔とが連通連通しないように、金属製外管先端部の噴射孔と、給液用の管状弁体の先端部の孔とは、管半径方向に位置がずらされているので、給液用の管状弁体を金属製外管に対して下降移動または上昇移動させるだけで、金属製外管の先端部からの噴射と、側壁の噴射孔からの噴射とを切り替えて、セメントミルク等の流動性固化材料を噴射することができる等の効果が得られる。
第4発明によると、金属製外管先端部の噴射孔と、給液用の管状弁体の先端部の孔とが連通している時に、金属製外管側壁の噴射孔と、給液用の管状弁体の側壁の孔とが連通しないように、属製外管における側壁の噴射孔と、給液用の管状弁体における側壁の孔とは、管周方向に位置がずらされ、かつ金属製外管側壁の噴射孔と、給液用の管状弁体の側壁の孔とが連通している時に、金属製外管先端部の噴射孔と、給液用の管状弁体の先端部の孔とが連通連通しないように、金属製外管先端部の噴射孔と、給液用の管状弁体の先端部の孔とは、管周方向に位置がずらされているので、給液用の管状弁体を金属製外管に対して時計方向に回動または半時計方向に回動させるだけで、金属製外管の先端部からの噴射と、側壁の噴射孔からの噴射とを切り替えて、セメントミルク等の流動性固化材料を噴射することができる等の効果が得られる。
第5発明によると、鋼管杭本体の外側に、第1発明〜第4発明のいずれか一つまたは複数の液体または流動性固化材供給用の噴射装置における金属製外管が杭長手方向に配置されて固定されているので、下記(1)〜(5)のような効果が得られる。
(1)従来のようなゴム製のホースを用いていたときのような打設時のゴム製ホース等の破損がなくなる。
(2)噴射孔を備えた金属製外管の内側に貫通孔を備えた管状弁体を摺動可能に嵌合は位置することにより、金属製外管の周側壁の噴射孔から噴射して、鋼杭周面へのセメントミルク等の経時硬化性の流動性固化材料の注入が確実に行える。
(3)従来の鋼製パイプでは、鋼杭先端への注入しかできなかったが、本発明の鋼杭では、鋼杭先端と鋼杭周面の両方にセメントミルク等の経時硬化性の流動性固化材料を注入できるようになる。
(4)前記の(3)により、鋼杭先端部に、セメントミルク等の流動性固化材料を用いた均質な拡大根固め部が形成でき、また、鋼杭の周側面の付着も確実になるため、鋼杭の確実な支持力発現に貢献でき、確実な支持力を発揮できる鋼杭を用いた基礎杭となる。
(5)複数種類の噴射装置を用いる場合には、鋼杭に対する配置位置により、1種または複数種類の噴射装置を適宜選択して用いることもできる。
第6発明によると、鋼杭本体の外側に、第1発明〜第3発明のいずれか一つまたは複数の液体または流動性固化材供給用の噴射装置における金属製外管が杭長手方向に配置されて固定され、前記金属製外管の側壁に、上下方向に間隔をおいて噴射孔が設けられ、給液用の管状弁体の側壁には、前記噴射孔に接続するための孔が、前記噴射孔が設けられている間隔と同じ間隔で上下方向に間隔をおいて設けられ、金属製外管に対して給液用の管状弁体は上下方向に移動可能に、かつ周方向に回転不能にされ、金属製外管の側壁噴射孔と管状弁体の孔が連通するときは金属製外管の先端部噴射孔が閉塞され、金属製外管の側壁噴射孔と管状弁体の孔が連通していないときは金属製外管の先端部噴射孔が開放されているので、管状弁体を金属製外管の上下方向に、孔間隔と同じ距離だけ、下降移動または上昇移動させることで、金属製外管における周側壁の噴射孔と、管状弁体の周側壁の孔とを合致させたり、位置をずらして、噴射孔を閉塞させることができる。また、金属製外管の周側面から噴射可能な簡単な構造の鋼管杭とすることができる等の効果が得られる。
第7発明によると、鋼杭本体の外側に、第1,2,4発明のいずれか一つまたは複数の液体または流動性固化材供給用の噴射装置における金属製外管が杭長手方向に配置されて固定され、前記金属製外管の側壁に、周方向に間隔をおいて噴射孔が設けられ、給液用の管状弁体の側壁には、前記噴射孔に接続するための孔が、前記噴射孔が設けられている間隔と同じ間隔で周方向に間隔をおいて設けられ、金属製外管に対して給液用の管状弁体は周方向に回動可能に、かつ上下方向に移動不能にされ、金属製外管の側壁噴射孔と管状弁体の孔が連通するときは金属製外管の先端部噴射孔が閉塞され、金属製外管の側壁噴射孔と管状弁体の孔が連通していないときは金属製外管の先端部噴射孔が開放されているので、管状弁体を金属製外管の周方向に、孔角度間隔と同じ角度だけ、時計方向移動または反時計方向移動させることで、金属製外管における周側壁の噴射孔と、管状弁体の周側壁の孔とを合致させたり、位置をずらして、噴射孔を閉塞させることができる。また、金属製外管の周側面から噴射可能な簡単な構造の鋼管杭とすることができる等の効果が得られる。
第8発明によると、第5発明〜第7発明のいずれかの鋼杭において、鋼杭本体は、鋼管またはH形鋼あるいは鋼矢板のいずれかであるので、単に鋼管またはH形鋼あるいは鋼矢板に噴射装置を設けることで、各種形態の鋼杭本体と組み合わせて各種形態の鋼杭とすることができる等の効果が得られる。
第9発明によると、バイブロハンマを用い鋼管杭に振動を与えると共に鋼杭貫入方向に高圧水を噴射する鋼杭の施工方法であって、請求項5〜8のいずれかの鋼杭を用い、給液用の管状弁体内に高圧水を供給し杭先端部から高圧水を噴射して、鋼杭を所定の深度に貫入させた後、前記高圧水の噴射に代わって、管状弁体内に流動性固化材を供給して、前記杭先端部から流動性固化材を噴射し、鋼杭先端部に根固め部を築造し、また給液用の管状弁体における側壁の孔と、金属製外管の側壁の噴射孔を連通させて、金属製外管の側壁の噴射孔から流動性固化材を噴射して、鋼杭の外周面と鋼杭周囲の地盤に形成された縦孔との間に流動性固化材を噴射して鋼杭側周面側に付着層を形成するので、鋼杭を埋め込む形態の施工をする場合に、噴射孔を備えた金属製外管と、管状弁体とを備えた二重管構造とした簡単な構造の噴射装置を鋼杭に付属させて施工するだけで、鋼杭先端部に根固め部および鋼杭側周面に付着層を確実に形成して、確実に支持力を発揮できる鋼杭を地盤に容易に貫入施工することができる等の効果が得られる。
第10発明によると、第9発明の鋼杭の施工方法によって施工されて、流動性固化材が固化された根固め部および付着層により鋼杭が支持されているので、流動性固化材が固化された拡大根固め部およびこれに接続する付着層により鋼杭が支持されている基礎杭とすることができ、確実な支持力を発揮できる品質の高い基礎杭とすることができる。施工効率が良く、短工期で施工可能な基礎杭であり、その分、施工費用が安価な基礎杭とすることができる等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態の鋼管杭における給液用の管状弁体にホース等を付属させた状態を示す正面図である。
【図2】図1における片側の配管の状態を示し、外管の噴射ノズルと内管の横孔とが上下方向に位相がずれた状態を示す縦断側面図である。
【図3】図1のa−a線断面図である。
【図4】図1のb−b線断面図である。
【図5】図2の一部を拡大して示す図である。
【図6】(a)は図1の一部を拡大して示す図、(b)は(a)における内管の回転を防止しながらガイドするための構造を示す図である。
【図7】図1における片側の配管の状態を示し、外管の噴射ノズルと内管の横孔とが合致した状態を示す縦断側面図である。
【図8】内管の横孔と外管の噴射ノズルとが合致した状態を示す横断平面図である。
【図9】本発明の鋼管杭の先端からウォータージェット水を噴射して鋼管杭を所定の位置まで地盤に貫入させた状態を示す縦断正面図である。
【図10】本発明の鋼管杭の先端からセメントミルクを噴射して鋼管杭の先端に根固め部を形成している状態を示す縦断正面図である。
【図11】鋼管杭の周面にセメントミルクを噴射して、鋼管杭の外周面と縦孔との間に付着層を形成した状態を示す縦断正面図である。
【図12】本発明の鋼管杭を用いた杭基礎の完成した状態を示す縦断正面図である。
【図13】本発明の第2実施形態の鋼管杭にホース等を付属させた状態を示す正面図である。
【図14】図13における片側の配管の状態を示し、外管の噴射ノズルと内管の横孔とが合致した状態を示す縦断側面図である。
【図15】内管および外管の底部付近と開閉弁機構と、外管側周面の噴射ノズルと内管の側周面の横孔との関係を示す横断平面図で、内管底部の縦孔が外管の縦孔の入り口と合致した状態を示す横断平面図である。
【図16】図13における片側の配管の状態を示し、外管の噴射ノズルと内管の横孔とが上下方向に位相がずれた状態を示す縦断側面図である。
【図17】内管および外管の底部付近と開閉弁機構と、外管側周面の噴射ノズルと内管の側周面の横孔との関係を示す横断平面図で、内管底部の縦孔が外管の縦孔の入り口と位相がずれた状態を示す横断平面図である。
【図18】(a)は図13の一部を拡大して示す図、(b)は(a)における内管の回転を防止しながらガイドする構造を示す図である。
【図19】従来の鋼管杭の施工手順を示す説明図である。
【図20】本発明の他の実施形態の鋼杭の形態を示す側面図である。
【図21】本発明の他の実施形態の鋼杭の形態を示す側面図である。
【図22】(a)は、図20に示す鋼杭のd−d断面図、(b)は図21に示す鋼杭のe−e断面図である。
【図23】(a)および(b)は、溝形鋼矢板を鋼杭本体として用いた他の形態の鋼杭を示す一部横断平面図である。
【図24】(a)および(b)は、ハット形鋼矢板を鋼杭本体として用いた他の形態の鋼杭を示す一部横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1〜図8には、本発明の第1実施形態の鋼杭1が示されている。この第1実施形態の鋼杭1では、特に図2に示すように、大径の鋼管2aからなる鋼杭本体2の外周面側にその軸方向の先端部から上端部に亘って、先端部の底壁3および周方向の側壁4にそれぞれ噴射孔5,6を備えた鋼管からなる金属製外管7が杭軸方向に配置されて溶接等により固定されている。
前記の金属製外管7は、鋼杭本体2の周方向に等角度間隔をおいて複数本(例えば、2本、3本、4本・・・n本等)配置されている。
前記の金属製外管7は、その先端部の底壁3中央部に縦噴射孔5を備えていると共に、底壁より上側の金属製外管7の周側壁4には、上下方向に間隔を置くと共に、側周方向に間隔(等角度間隔)をおいて複数の横噴射孔6を備えている。
また、前記の金属製外管7の上端部には、前記金属製外管7の内側に摺動可能に嵌合された給液用の管状弁体8の回り止めを図るための周り止め用の係合部材9が設けられ、また、給液用の管状弁体8を摺動可能に駆動するための駆動装置10の一端側を連結するための連結部11が給液用の管状弁体8の上端部に設けられている。
前記の係合部材9としては、図示の形態では、金属製外管7の上端部に、上方に向かって突出するように周方向に間隔をおいて平行に設けられた一本のガイド部材とされている。
前記の金属製外管7の底壁3の上面側には、ゴム等の弾性材料製の弁座13が設けられている。ノズル本体を構成している底壁3とその上部に接続するように設けられた外管本体(側壁4)とは、溶接接合またはネジ接合等により一体化されて、金属製外管7が構成されている。
【0016】
前記の金属製外管7の内側に、鋼製管状体からなる給液用の管状弁体8が上下方向に摺動可能に嵌合されている。
前記の給液用の管状弁体8は、その先端部の底壁14に、一つまたは複数の縦貫通孔15を備えていると共に、前記縦貫通孔15は、前記金属製外管7の底壁3に設けられている縦噴射孔5から半径方向に変位した位置に設けられ、前記縦貫通孔15以外の底壁14により、金属製外管7の底壁の縦噴射孔5を塞ぐ弁体の作用をしている。
底壁3より上側の給液用の管状弁体8の周側壁16には、上下方向に間隔を置くと共に、側周方向に間隔(等角度間隔)をおいて複数の横貫通孔17を備えている。また、横貫通孔17間の周側壁により、金属製外管7の側壁に設けられている横噴射孔6を塞ぐ弁体の作用をしている。
また、前記の給液用の管状弁体8の上端部には、前記金属製外管7側の係合部材9に相対的に上下移動可能にかつ側周方向に回転不能に係合する係合部18が設けられ、また、給液用の管状弁体8を摺動可能に駆動するための縦向きに配置された駆動装置10の一端側のピストン先端部が連結部11により連結されている。
前記の連結部11としては、間隔をおいて平行な一対のブラケットを溶接すると共に、前記ブラケットに対して着脱可能なピン等の横軸12により構成されている。

前記の係合部18は、前記一本のガイド部材9を挟むように、相対的に上下摺動可能に嵌合された鋼製の一対の横方向張り出し突起18aとされ、その突起18aの基端側が管状弁体8に溶接あるいはネジ止め等により固定されている。
前記の駆動装置10は、液圧または電動式等の伸縮式ジャッキとされ、その伸縮式ジャッキのシリンダ側のブラケットが、管状弁体8にボルトあるいは溶接により固定された支持ブラケットにボルト等により着脱可能に管状弁体8に固定されて、上部の連結部11を形成している。
前記管状弁体8の上端部には、雄ねじ部等の接続部19が設けられ、その接続部19には、給液用の高圧ホース20が、着脱可能に設けられている。前記の高圧ホース20は、適宜、切り替え弁等を介して、高圧水供給源、またはセメントミルク等の流動性固化材料供給源に管路およびポンプ等を介して接続している。
【0017】
前記の金属製外管7側の複数の横噴射孔6と、管状弁体8側の複数の横貫通孔17とは、上下方向に、同じピッチで設けられ、また、前記の金属製外管7側の複数の同レベルの横噴射孔6と、管状弁体8側の複数の同レベルの横貫通孔17とは、等角度間隔をおいて設けられている。
前記のように、給液用の管状弁体8の先端部および周方向の周側壁に、金属製外管7の縦噴射孔5あるいは横噴射孔6に接続するための縦貫通孔15あるいは横貫通孔17と、金属製外管7側の噴射孔を閉塞するための壁部とが設けられていることにより、駆動装置10により管状弁体8を下降移動させて、管状弁体8の先端部を金属製外管7の底壁3の弁座13に着座させることで、管状弁体8の下端側により金属製外管7の底壁3の縦噴射孔5側を閉塞させ、管状弁体8における周側壁16と金属製外管7の周側壁面の横噴射孔6とを連通させて、横噴射孔6から噴射可能にされている。
また、駆動装置10により管状弁体8を上昇移動させて、管状弁体8の先端部を金属製外管7の底壁3の弁座13から離反させることで、管状弁体8の下端側と縦貫通孔15と金属製外管7の底壁3の縦噴射孔5側とを連通させ、管状弁体8における周側壁16の横貫通孔17と金属製外管7の周側壁面の横噴射孔6とを上下方向に位置をずらすことで、管状弁体8の側周壁を利用して閉塞して、横噴射孔6から噴射を防止するようにされている。
前記の管状弁体8の周側壁下端部の横貫通孔17から底壁14下端部までの距離と、金属製外管7の側周壁下端部の横噴射孔6から弁座13までの距離とが同じ寸法とすることで、管状弁体8を摺動移動可能な下端レベルまで移動したり、横貫通孔17の直径程度上昇移動することで、横噴射孔6の閉塞が可能にされている。
前記の管状弁体8は、金属製外管7の内側にある部材で、地盤21との接触が起こらないので、金属製外管7と同様な強度は要求されない。
主に、前記の金属製外管7と高圧ホース20に接続された管状弁体8およびこれに付属する駆動装置10等により、液体または流動性固化材供給用の噴射装置22が構成されている。
【0018】
前記第1実施形態の鋼杭本体2に設けられる本発明の液体または流動性固化材供給用の噴射装置22では、先端部および周方向の側壁にそれぞれ噴射孔5,6を備えた金属製外管7の内側に、給液用の管状弁体8が摺動可能に嵌合され、前記給液用の管状弁体8の先端部および周方向の周側壁16には、前記噴射孔に接続するための孔と、前記噴射孔を閉塞するための壁部とが設けられている。
また、前記の管状弁体8の底壁14には、金属製外管7における噴射孔5の入り口5aから半径方向外側に位置をずらして、一つまたは複数の縦貫通孔15が設けられていることで、管状弁体8の先端部が弁座13に着座した時に、噴射孔5の入り口5aを塞ぐようにされ、かつ金属製外管7の横噴射孔6と、管状弁体8の横貫通孔17が合致するようにされている。
【0019】
図9に示すように、前記のような第1実施形態の鋼杭1では、図示を省略するがバイブロハンマを鋼杭1の上端部に接続して、振動工法により地盤21に貫入させる場合に、管状弁体8の上端に接続されている給液高圧ホース20から水を供給することで、金属製外管7の下端側から高圧水23を噴射して鋼杭1の下側を掘削しながら、また鋼杭1周側面と地盤21との摩擦を低減して、鋼杭1を地盤21の所定の深度まで(例えば、支持層から少なくとも鋼管杭の直径程度の深度まで)貫入させることができる。
また、支持層24まで達した所定の深度において、高圧ホース20からセメントミルク等の経時硬化性の流動性固化材料25に切り替えて、鋼杭1の先端部から噴射して、土砂が混合しセメントミルクが硬化した均質な流動性固化材料による拡大根固め部26(拡大球根部)を形成することができる。
【0020】
また、図11に示すように、駆動装置10を短縮して、管状弁体8を下方に摺動移動させることで、管状弁体8の底壁14により、鋼杭1先端部の噴射孔5の入り口5aを閉塞し、かつ管状弁体8における横貫通孔17と金属製外管7における横噴射孔6とを連通させて、金属製外管7における横噴射孔6からセメントミルク等の流動性固化材料25を噴射して、地盤21の縦孔内周壁27と鋼管杭外周面との間に充填し硬化させることで付着層28を形成し、縦孔内周面と鋼管杭外周面との付着を確実に図ることができる。
また、図12に示すように、駆動装置10側のブラケットを固定しているボルトを取り外すことで、駆動装置10を管状弁体8から取り外すと共に、高圧ホース20を管状弁体上端部から取り除くことで、地盤21に埋め込み固定された鋼杭1を用いた基礎杭29を構築することができる。
前記のような基礎杭29上には、例えば、図示を省略するが、適宜ひげ鉄筋が溶接により固定され、適宜鉄筋が配筋されると共にコンクリートが打設されて鉄筋コンクリート製フーチングが構築される。
【0021】
次に、図13〜図18を参照して、本発明の第2実施形態の鋼杭1について説明する。
この第2実施形態の鋼管杭1では、前記の第1実施形態の鋼杭1と同様な部分が多いので、相違する点を主に説明し、同様な要素には、図に同様な符号を付して説明する。
【0022】
図14に示すように、この第2実施形態では、金属製外管7の内側に給液用の管状弁体8を嵌合配置している点では、共通している。この第2実施形態では、前記の管状弁体8を定レベル位置に保持していると共に、金属製外管7に対して、管状弁体8の縦軸を中心として周方向に摺動可能に回動させている点で、前記第1実施形態と相違している。
金属製外管7における底壁3には、底壁3の中心から半径方向に離れた位置において、入り口5aとして少なくとも一つの縦連通孔または周方向に間隔または周方向に等角度間隔をおいて複数の縦連通孔が設けられ、前記縦連通孔は金属製外管7の先端部に設けられている噴射孔5に接続している。
また、管状弁体8の底壁14には、前記金属製外管7側の噴射孔5の入り口5aとしての縦連通孔と半径方向に同じ位置に、一つの縦貫通孔15または周方向に間隔または周方向に等角度間隔をおいて複数の複数の縦貫通孔15が設けられている。
この第2実施形態では、金属製外管7の周側壁4に、周方向に間隔をおいて横噴射孔6が設けられ、給液用の管状弁体8の周側壁16には、前記横噴射孔6に接続するための横貫通孔17が、前記横噴射孔6が設けられている間隔と同じ間隔で周方向に間隔をおいて同レベルに設けられている。
前記の管状弁体8を金属製外管7に対して周方向に回転させるための駆動手段としては、管状弁体8の支持ブラケット30に対して、油圧等の液圧ジャッキあるいは電動式ネジ式ジャッキ等の駆動装置10は横向きに配置されて、シリンダ側に固定の取り付け部31がボルト等の縦軸により、管状弁体8側の支持ブラケット30に取り外し可能に固定されて、連結部11が形成されている。また、駆動装置10におけるピストン側は、前記金属製外管7に取り付けられた縦孔付きのブラケット32に縦軸により連結されている。前記の縦孔付きのブラケット32に設けられる縦孔は、金属製外管7の半径方向に長孔とされていることで、駆動装置10の多少の回動を可能にしている。
前記のように、金属製外管7と管状弁体8が駆動装置10により連結されることで、金属製外管7に対して給液用の管状弁体8は周方向に回動可能に、かつ上下方向に移動不能にされている鋼杭1となっている。
なお、管状弁体8の上下方向の移動を拘束する手段としては、金属製外管7の上端部に周方向に平面円弧状の縦孔を有する下位の張り出しフランジを設け、前記下位の張り出しフランジの上に重合するように管状弁体8側に上位のフランジを設け、その上位のフランジに縦軸を設け、その縦軸を平面円弧状の縦孔に周方向に摺動可能に嵌合させると共に縦軸により下位のフランジと上位のフランジとを連結することでもよい。
【0023】
この第2実施形態の鋼杭1では、図15あるいは図17に示すように、金属製外管7の周側壁の横噴射孔6と、管状弁体8の周側壁16の横貫通孔17とが合致している状態で、金属製外管7の底壁3の縦連通孔(入り口5a)と、管状弁体8の底壁14に設けられている縦貫通孔15とは、周方向に位置がずらされて設けられ(位相がずらされて設けられ)、図15に示すように、縦連通孔(入り口5a)側が連通している時に横噴射孔6側が閉塞され、また、図17に示すように、横噴射孔6側連通している時に縦連通孔(入り口5a)側が閉塞される。
【0024】
図示を省略するが、第2実施形態の鋼管杭1を使用して、地盤に基礎杭を築造する場合には、前記第1実施実施形態の鋼杭1の場合の図9から図12と同様に、バイブロハンマ等を鋼杭1の上端部に接続して、振動工法等により地盤21に貫入させる。
また、管状弁体8の上端に接続されている給液高圧ホース20から水を供給することで、金属製外管7の下端側から高圧水を噴射して鋼杭1の下側を掘削しながら、また鋼杭1周側面と地盤21との摩擦を低減して、鋼杭1を地盤21の所定の深度まで(例えば、支持層から少なくとも鋼管杭の直径程度の深度まで)貫入させる。
また、所定の深度において、高圧ホース20からセメントミルク等の流動性固化材料25に切り替えて、鋼杭1の先端部から噴射して、土砂が混合しセメントミルクが硬化した均質な流動性固化材料による拡大根固め部26(球根部)を形成することができる。
【0025】
また、駆動装置10を伸長または短縮して、管状弁体8を水平回動させることで、管状弁体8の底壁14により、金属製外管7先端部の噴射孔5を閉塞し、かつ管状弁体8における横貫通孔17と金属製外管7における横噴射孔6とを連通させて、金属製外管7における横噴射孔6からセメントミルク等の流動性固化材料25を噴射して、地盤21の縦孔内周壁と鋼杭外周面との間に充填し硬化させることで、縦孔内周面と鋼杭外周面との付着を確実に図ることができる。
また、駆動装置10側のブラケットを固定しているボルト等の縦軸を取り外すことで、駆動装置10を管状弁体8から取り外すと共に、高圧ホース20を管状弁体上端部から取り除くことで、地盤21に埋め込み固定された鋼杭1を用いた基礎杭29を構築することができる。
前記のような基礎杭29上には、例えば、図示を省略するが、適宜ひげ鉄筋等の連結鉄筋が溶接により固定され、適宜鉄筋が配筋されると共にコンクリートが打設されて鉄筋コンクリート製フーチングが構築される。
【0026】
前記のように、鋼杭本体2に設けられる本発明の液体または流動性固化材供給用の噴射装置22は、先端部および周方向の側壁にそれぞれ噴射孔5,6を備えた金属製外管7の内側に、給液用の管状弁体あるが摺動可能に嵌合され、前記給液用の管状弁体の先端部および周方向の周側壁には、前記噴射孔に接続するための孔と、前記噴射孔を閉塞するための壁部とが設けられている。
また、本発明の液体または流動性固化材供給用の噴射装置22は、金属製外管先端部の噴射孔5と、給液用の管状弁体8の先端部の孔とが連通している時に、金属製外管側壁の噴射孔6と、給液用の管状弁体8の側壁の横貫通孔とが連通しないように、金属製外管先端部の噴射孔5と、給液用の管状弁体8の先端部の孔と、金属製外管における側壁の噴射孔と、給液用の管状弁体8の先端部および側壁の孔とは、位置がずらされて設けられている。
【0027】
前記のように、本発明の鋼杭の施工方法では、バイブロハンマを用い鋼杭に振動を与えると共に鋼杭貫入方向に高圧水を噴射する鋼杭の施工方法であって、前記実施形態の鋼杭1を用い、給液用の管状弁体8内に高圧水を供給し杭先端部から高圧水を噴射して、地盤21との摩擦力を低減しながら鋼杭1を所定の深度に貫入させた後、前記高圧水の噴射に代わって、管状弁体8内に流動性固化材25を供給して、前記杭先端部から流動性固化材25を噴射し、鋼杭先端部に拡大した根固め部26を築造し、また給液用の管状弁体8における周側壁の横貫通孔17と、金属製外管7の周側壁の噴射孔6を連通させて、金属製外管7の周側壁4の噴射孔から流動性固化材25を噴射して、鋼杭1の外周面と鋼杭周囲の地盤21に形成された縦孔27との間に流動性固化材25を噴射して鋼杭側周面側に付着層25を形成している。
【0028】
本発明の鋼管杭の施工方法では、金属製外管7側が、地盤21と接触しているため、従来のように、引っ張り強度の弱いホースの問題点を解消することができ、また、ホース先端を脱着させる複雑な構造を備えていないので、構造が簡単な鋼杭1とすることができ、施工効率も向上する。
【0029】
また、前記のような鋼杭の施工方法により、流動性固化材25が固化された拡大根固め部26およびこれに接続する付着層27により鋼杭1が支持されている基礎杭29を容易に構築することができる。前記のような基礎杭29では、施工効率が良い分、施工費用が安価になる。
【0030】
本発明を実施する場合、図示を省略するが、鋼管杭からなる鋼杭本体2を備えた鋼杭1とし、金属製外管の先端部に向けた底壁3からなる噴射ノズル本体に、内向き噴射ノズルを設けると共に、鋼管杭先端部の側壁に貫通する横孔を設け、前記内向き噴射ノズルを、前記側壁の貫通する横孔に配置して、鋼杭1の内側に向かって噴射するようにすると、高圧水による鋼杭1内の付着土の除去、およびセメントミルク等の流動性固化材と、鋼杭内の土との混合を効率よく行って、均質なソイルセメントとすることができる。
【0031】
本発明を実施する場合、深度が深い場合には、下位の鋼杭ユニットの上部に、上位の鋼杭ユニットを接続した鋼杭としてもよい。この場合には、上位の鋼杭ユニットにおける金属製外管下端部の底壁3および管状弁体8の底壁を省略して、上下鋼杭ユニットにおける管状弁体にネジ接合部を設けて相互に連結し、また、適宜上下の金属製外管7相互を直接溶接または適宜継手管を用いて溶接またはネジ接合すればよい。前記の継手管内に管状弁体を配置して、管状弁体相互を連結した後、継手管を上下の金属製外管に接合するようにすればよい。
【0032】
本発明を実施する場合、鋼杭本体2としては、図20および図22(a)に示すように、H形鋼2bからなる鋼杭本体2を用い、そのH形鋼2bのウェブ38に、金属製外管7を備えた液体または流動性固化材供給用の噴射装置22を、ウェブ38の巾方向中央部に配置すると共にウェブ38の長手方向に沿って配置して溶接等により金属製外管7を固定して、噴射装置22を1つ設けるようにしてもよい。また、図21及び図22(b)に示すように、H形鋼2bにおけるウェブ38とフランジ39とにより形成されている各内隅部に沿って液体または流動性固化材供給用の噴射装置22をそれぞれ配置すると共に、ウェブ38およびフランジ39に溶接により固定して、液体または流動性固化材供給用の噴射装置22を2つ設けるようにしてもよい。あるいは、図22(a)(b)を組み合わせて、液体または流動性固化材供給用の噴射装置22を3つ設けるようにしてもよく、あるいはウェブ38またはフランジ39の部分に複数の液体または流動性固化材供給用の噴射装置22を、間隔をおいて配置して、4つ以上設けるようにしてもよい。
【0033】
さらに、本発明を実施する場合、鋼杭本体2としては、図23(a)に示すように、フランジ39の両側にウェブ38を一体に連接すると共にウェブ38にそれぞれ継手40を備えた溝形鋼矢板2cを用いてもよい。そのような杭本体2に、金属製外管7を備えた液体または流動性固化材供給用の噴射装置22を、溝形鋼矢板2cにおける溝内側のフランジ39に沿って1つ設けるようにしてもよい。あるいは図20(b)に示すように、溝形鋼矢板2cにおける溝内側の内隅部に沿って液体または流動性固化材供給用の噴射装置22を2つ設けるようにしてもよい。さらには、前記実施形態と同様に、図23(a)(b)を組み合わせて、液体または流動性固化材供給用の噴射装置22を3つ設けるようにしてもよく、あるいはウェブ38またはフランジ39の部分に複数の液体または流動性固化材供給用の噴射装置22を、間隔をおいて配置して、4つ以上設けるようにしてもよい。
【0034】
また、鋼杭本体2としては、図24(a)に示すように、フランジ39の両側にウェブ38を一体に連設されて備えていると共にウェブ38にそれぞれフランジ38に平行なアーム部41を備え、各アーム部41の端部に継手40を備えた鋼矢板2d(断面ハット形の鋼矢板)を用いてもよい。そのような杭本体2に、フランジ39の巾方向中央部に、金属製外管7を備えた液体または流動性固化材供給用の噴射装置22を、鋼矢板2dにおける溝内側のフランジ39の長手方向に沿って1つ設けるようにしてもよく、図24(b)に示すように、鋼矢板2dにおける溝内側の内隅部に沿って液体または流動性固化材供給用の噴射装置22を2つ設けるようにしてもよい。また、前記と同様に液体または流動性固化材供給用の噴射装置22を3つあるいは4つ以上設けるようにしてもよい。
なお、図23および図24において、鋼杭本体2としての鋼矢板2c(2d)に対する液体または流動性固化材供給用の噴射装置22の上下部の配置形態は、図20あるいは図21に示す配置関係と同様である。
【0035】
鋼杭本体2に対して複数の液体または流動性固化材供給用の噴射装置22を設ける場合には、第1実施形態の噴射装置22と第2実施形態の噴射装置22の内の1種類を用いてもよく、あるいは複数種類の液体または流動性固化材供給用の噴射装置22を適宜選択して用いてもよく、鋼杭本体に対する配置位置により、適宜、複数種類の液体または流動性固化材供給用の噴射装置22を用いてもよい。
前記のように、本発明の液体または流動性固化材供給用の噴射装置22を、鋼管または溝形鋼矢板等の各種形態の鋼杭本体2に組み込むことで、各種形態の噴射装置を備えた鋼杭1とすることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 鋼杭
2 鋼杭本体
2a 鋼管
2b H形鋼
2c 溝形鋼矢板
2d 鋼矢板(断面ハット形の鋼矢板)
3 外管の底壁
4 側壁
5 噴射孔(外管の底壁の)
5a 入り口
6 噴射孔(外管の周側壁の)
7 金属製外管
8 管状弁体
9 係合部材
10 駆動装置
11 連結部
12 横軸
13 弁座
14 底壁(管状弁体の)
15 縦貫通孔(管状弁体の)
16 側壁(管状弁体の)
17 横貫通孔
18 係合部
19 接続部
20 高圧ホース
21 地盤
22 噴射装置
23 高圧水
24 支持層
25 流動性固化材料
26 根固め部
27 縦孔内周壁
28 付着層
29 基礎杭
30 支持ブラケット
31 取り付け部
32 縦孔付きのブラケット
35 バイブロハンマ
36 鋼管杭
37 ゴムホース
38 ウェブ
39 フランジ
40 継手
41 アーム部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体または流動性固化材供給用の噴射装置であって、先端部および周方向の側壁にそれぞれ噴射孔を備えた金属製外管の内側に、給液用の管状弁体が摺動可能に嵌合され、前記給液用の管状弁体の先端部および周方向の側壁には、前記金属製外管の噴射孔に接続する入り口に接続するための孔と、前記金属製外管の噴射孔に接続する入り口を閉塞するための壁部とが設けられていることを特徴とする液体または流動性固化材供給用の噴射装置。
【請求項2】
金属製外管先端部の噴射孔と、給液用の管状弁体の先端部の孔とが連通している時に、金属製外管側壁の噴射孔と、給液用の管状弁体の側壁の孔とが連通しないように、金属製外管における側壁の噴射孔と、給液用の管状弁体の側壁の孔とは、位置がずらされて設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液体または流動性固化材供給用の噴射装置。
【請求項3】
金属製外管先端部の噴射孔と、給液用の管状弁体の先端部の孔とが連通している時に、金属製外管側壁の噴射孔と、給液用の管状弁体の側壁の孔とが連通しないように、属製外管における側壁の噴射孔と、給液用の管状弁体における側壁の孔とは、上下方向に位置がずらされており、かつ、金属製外管側壁の噴射孔と、給液用の管状弁体の側壁の孔とが連通している時に、金属製外管先端部の噴射孔と、給液用の管状弁体の先端部の孔とが連通連通しないように、金属製外管先端部の噴射孔と、給液用の管状弁体の先端部の孔とは、管半径方向に位置がずらされていることを特徴とする請求項1に記載の液体または流動性固化材供給用の噴射装置。
【請求項4】
金属製外管先端部の噴射孔と、給液用の管状弁体の先端部の孔とが連通している時に、金属製外管側壁の噴射孔と、給液用の管状弁体の側壁の孔とが連通しないように、属製外管における側壁の噴射孔と、給液用の管状弁体における側壁の孔とは、管周方向に位置がずらされ、かつ金属製外管側壁の噴射孔と、給液用の管状弁体の側壁の孔とが連通している時に、金属製外管先端部の噴射孔と、給液用の管状弁体の先端部の孔とが連通連通しないように、金属製外管先端部の噴射孔と、給液用の管状弁体の先端部の孔とは、管周方向に位置がずらされていることを特徴とする請求項1に記載の液体または流動性固化材供給用の噴射装置。
【請求項5】
鋼杭本体の外側に、請求項1〜請求項4のいずれか一つまたは複数の液体または流動性固化材供給用の噴射装置における金属製外管が杭長手方向に配置されて固定されていることを特徴とする鋼杭。
【請求項6】
鋼杭本体の外側に、請求項1〜請求項3のいずれか一つまたは複数の液体または流動性固化材供給用の噴射装置における金属製外管が杭長手方向に配置されて固定され、前記金属製外管の側壁に、上下方向に間隔をおいて噴射孔が設けられ、給液用の管状弁体の側壁には、前記噴射孔に接続するための孔が、前記噴射孔が設けられている間隔と同じ間隔で上下方向に間隔をおいて設けられ、金属製外管に対して給液用の管状弁体は上下方向に移動可能に、かつ周方向に回転不能にされ、金属製外管の側壁噴射孔と管状弁体の孔が連通するときは金属製外管の先端部噴射孔が閉塞され、金属製外管の側壁噴射孔と管状弁体の孔が連通していないときは金属製外管の先端部噴射孔が開放されていることを特徴とする鋼杭。
【請求項7】
鋼杭本体の外側に、請求項1〜請求項3のいずれか一つまたは複数の液体または流動性固化材供給用の噴射装置における金属製外管が杭長手方向に配置されて固定され、前記金属製外管の側壁に、周方向に間隔をおいて噴射孔が設けられ、給液用の管状弁体の側壁には、前記噴射孔に接続するための孔が、前記噴射孔が設けられている間隔と同じ間隔で周方向に間隔をおいて設けられ、金属製外管に対して給液用の管状弁体は周方向に回動可能に、かつ上下方向に移動不能にされ、金属製外管の側壁噴射孔と管状弁体の孔が連通するときは金属製外管の先端部噴射孔が閉塞され、金属製外管の側壁噴射孔と管状弁体の孔が連通していないときは金属製外管の先端部噴射孔が開放されていることを特徴とする鋼杭。
【請求項8】
鋼杭本体は、鋼管またはH形鋼あるいは鋼矢板のいずれかであることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の鋼杭。
【請求項9】
鋼杭の打設において、鋼杭貫入方向に高圧水を噴射する鋼杭の施工方法であって、請求項5〜8のいずれかの鋼杭を用い、給液用の管状弁体内に高圧水を供給し杭先端部から高圧水を噴射して、鋼杭を所定の深度に貫入させた後、前記高圧水の噴射に代わって、管状弁体内に流動性固化材を供給して、前記杭先端部から流動性固化材を噴射し、鋼杭先端部に根固め部を築造し、また給液用の管状弁体における側壁の孔と、金属製外管の側壁の噴射孔を連通させて、金属製外管の側壁の噴射孔から流動性固化材を噴射して、鋼杭の外周面と鋼杭周囲の地盤に形成された縦孔との間に流動性固化材を噴射して鋼杭側周面側に付着層を形成することを特徴とする鋼杭の施工方法。
【請求項10】
請求項9の鋼杭の施工方法によって施工されて、流動性固化材が固化された根固め部および付着層により鋼杭が支持されていることを特徴とする基礎杭。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−122408(P2011−122408A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283115(P2009−283115)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】