説明

液体供給装置

【課題】吐出する液体に気泡を混入させない液体供給装置を提供する。
【解決手段】液体供給装置1は、貯留する液体Lを加圧可能なサーバタンク2と、シリンジ9とピストン11とで内部空間10を形成し、液体Lの圧力によってピストン11を後退させてサーバタンク2から内部空間10に液体を導入し、ピストン11の前進により内部空間10から液体Lを吐出可能なシリンジポンプ3と、サーバタンク2から内部空間10に液体Lを導入するための吸込流路5および液体Lを外部に送出するための吐出流路8のいずれかに、シリンジポンプ3の内部空間10を連通させる切換弁6と、ピストン11の前進方向および後退方向に移動可能であり、ピストン11の外側に当接してピストン11を前進させることが可能なプッシャ14を有する駆動機構4と、プッシャ14から一定距離以内にピストン11があることを検出するセンサ15とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特に塗料のような高粘度の液体を供給するために、シリンジポンプを用いた装置が利用される。従来のシリンジポンプは、ピストン後退させてシリンジ内の圧力を低下させることで液体を吸引する。粘度の高い液体は容易にシリンジ内に流入せず、シリンジ内に大きな負圧が発生して、配管の継目などから外気を吸入したり、液体中に溶存している気体を気泡化させてしまう場合がある。このような気泡は、液体の供給量にバラツキを生じさせ、後工程の歩留まりの低下などの不具合を招くという問題がある。
【0003】
特許文献1には、シリンジポンプの吸込側の液体を加圧することで液体が大気圧以下にならないようにする技術が開示されているが、液体に最初から気泡が混入している場合には、気泡が混入した液体を吐出することを防止できない。
【特許文献1】特開平8−182951号公報
【特許文献2】特開平2003−56667号公報
【特許文献3】特開平5−285436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記問題点に鑑みて、本発明は、吐出する液体に気泡を混入させない液体供給装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記問題点を解決するために、本発明による液体供給装置は、貯留する液体を加圧可能なサーバタンクと、シリンジとピストンとで内部空間を形成し、前記液体の圧力によって前記ピストンを後退させて前記サーバタンクから前記内部空間に前記液体を導入し、前記ピストンの前進により前記内部空間から前記液体を吐出可能なシリンジポンプと、前記サーバタンクから前記内部空間に前記液体を導入するための吸込流路および前記液体を外部に送出するための吐出流路のいずれかに、前記シリンジポンプの内部空間を連通させる切換弁と、前記ピストンの前進方向および後退方向に移動可能であり、前記ピストンの外側に当接して前記ピストンを前進させることが可能なプッシャを有する駆動機構と、前記プッシャから一定距離以内に前記ピストンがあることを検出するセンサと、前記センサが前記プッシャから一定距離以内に前記ピストンがあることを検出できない状態が、所定の猶予時間よりも長く続いたときに、前記プッシャの動作を停止させる制御手段とを有するものとする。
【0006】
この構成によれば、プッシャを後退させたときに、液体は、自身の圧力によりピストンを後退させてシリンジポンプ内に流入する。このとき、液体に気泡が混入していると、気泡の圧縮性によってピストンを後退させる速度が低下するので、プッシャの後退に対するピストンの後退の遅れをセンサによって監視することで、気泡の混入を検出することができ、気泡の混入を検出したときにはプッシャの動作を停止させることで、シリンジポンプから気泡の混入した液体を吐出させないようにできる。
【0007】
また、本発明の液体供給装置において、前記制御手段は、前記プッシャを所定の速度で後退させ、前記センサが前記プッシャから一定距離以内に前記ピストンがあることを検出できなくなったときは、前記プッシャを一旦停止させ、前記センサが前記プッシャから一定距離以内に前記ピストンがあることを所定の猶予時間内に再度検出できたならば前記プッシャを再度前記所定の速度で後退させ、前記センサが前記プッシャから一定距離以内に前記ピストンがあることを前記猶予時間内に再度検出できなかったならば前記プッシャの動作を停止させてもよい。
【0008】
この構成によれば、ピストンの後退速度を逐次監視して気泡の混入を監視するので、ピストンのストロークの途中で気泡の混入を検出して装置を停止できる。
【0009】
また、本発明の液体供給装置において、前記制御手段は、前記センサが前記猶予時間の経過後、さらに所定の判別時間が経過する前に、前記センサが前記プッシャから一定距離以内に前記ピストンがあることを検出したときは、前記液体に気泡が混入していると判断してもよい。
【0010】
気泡の圧縮性によるピストンの後退の遅れは、一定の範囲内に収まるので、この構成によって、ピストンの遅れが、気泡の混入によるものであるか、他のトラブルによるものであるかを判別できる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、液体を加圧し、液体の圧力によってピストンを後退させ、気泡が混入したときに発生するピストンの後退の遅れをセンサで検出することで、気泡が混入した液体を吐出しないように動作を停止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に、本発明の1つの実施形態である液体供給装置1の概要を示す。液体供給装置1は、液体、例えば粘度2500〜4500cpsの塗料Lを貯留するサーバタンク2と、サーバタンク2から液体Lを所定の流量(例えば500〜1000cc/min)で、液体Lを消費する外部の供給先、例えば塗装装置に対して供給するシリンジポンプ3と、シリンジポンプ3を駆動する駆動機構4とからなる。
【0013】
サーバタンク2は、密閉構造をなし、液体Lの上部空間に所定圧力(例えば0.5MPa)の圧縮空気が導入され、貯留している液体Lを加圧するようになっている。
【0014】
液体Lは、サーバタンク2の下端に設けられた吸込流路5から切換弁6および共用流路7を介してシリンジポンプ3に導入される。切換弁6は、三方弁であり、共用流路7を吸込流路5および供給先に通じる吐出流路8のいずれかに選択的に連通させるようになっている。
【0015】
シリンジポンプ3は、一端が共用流路7に接続された、例えば内径80mmのシリンジ9と、シリンジ9の内部を区分して共用流路7に連通する内部空間10を形成するピストン11とからなり、ピストン11は、シリンジ9の外部に延伸するロッド12を有している。
【0016】
駆動機構4は、モータ13により、プッシャ14をピストン11の可動方向と同じ方向に移動可能させることができ、ピストン11の外側、つまり、ロッド12の後端にプッシャ14を当接させて、ピストン11をシリンジ9の奥側(前進方向)に押し込むことができるようになっている。また、駆動機構4は、プッシャ14に配設したセンサ15によりロッド12の後端がプッシャ14から所定の距離以内にあるか否かを確認でき、センサ15の出力に応じて、モータ13を制御する制御装置16を備えている。
【0017】
図2にシリンジポンプ3および駆動機構4の詳細を示す。駆動機構4は、モータ13により回転する送りねじ17によってプッシャ14を、前進方向または後退方向(ピストン11をシリンジ9から引き出す向き)に、それぞれ所定の速度(例えば、後退方向に200〜600mm/min、前進方向に100〜200mm/min)で移動させられるようになっている。このプッシャ14の後退速度は、サーバタンク2において加圧された液体Lがその圧力によってピストン11を後退させながらシリンジ9の内部空間10に流入する速度に略一致するように設定されている。プッシャ14には、ロッド12の後端を受け入れる座18が形成されており、センサ15は、例えば、ロッド12の後端が座18の中にあるときに電位を出力する光電センサである。
【0018】
切換弁6により、共用流路7を吸込流路5に連通させると、サーバタンク2によって加圧された液体Lがピストン11を押圧する。このとき、ロッド12の後端がプッシャ14に当接していれば、プッシャ14が液体Lの圧力に抗してピストン11をその場に留まらせるが、図3に示すように、駆動機構4がプッシャ14を後退させると、ピストン11は、液体Lの圧力によって後退させられる。液体Lの圧力が十分に大きければ、ピストン11は、プッシャ14の後退に合わせて同じ速度で後退する。
【0019】
図4に示すように、液体L中に気泡Bが混入していると、気泡Bの収縮によってサーバタンク2から伝播してピストン11に伝わる圧力が減殺されるので、ピストン11の後退に遅れが生じる。
【0020】
図5に、粘性流体の圧力の伝播のモデル示す。図示するように、粘性流体が充填された管路の離れた2点の圧力をP1,P2とする。図6に示すように、流体に管路の一方から圧力を加え、上流側の圧力P1が上昇した場合、下流側の圧力P2は僅かに遅れて上昇する。圧力P1,P2が安定しても、管路における圧損により、下流側の圧力P2は、上流側の圧力P1よりも若干低い圧力に留まる。
【0021】
図6には、この液体Lに気泡Bが混入している場合の下流側の圧力をP2’として示す。図示するように、気泡は、圧力の上昇によって収縮し、液体Lの見かけ上の体積を減少させるので、下流側の圧力P2’の上昇は、気泡がないときの圧力P2に比べても、さらに遅れて上昇する。
【0022】
これをシリンジポンプ3に当てはめると、上流側の圧力P1がサーバタンク2内の液体Lの圧力、下流側の圧力P2,P2’がシリンジ9の内部空間10内のピストン11を後退させる液体Lの圧力になる。図6に、ピストン11をシリンジ9との摩擦に打ち勝って後退させるのに必要な圧力Ppを示す。図示するように、上流側の圧力がPpまで上昇してから下流側の圧力がPpまで上昇するまでの、気泡Bが混入している場合の遅れT2は、気泡Bが混入していない場合の遅れT1よりも大きくなる。この遅れT1,T2は、液体Lの粘度、流路5,7や切換弁6の流路抵抗およびシリンジ9の内径などによって大きく異なる。
【0023】
図7に、本実施形態において、シリンジポンプ3の内部空間10に液体Lを吸引(サーバタンク2から加圧して導入)する際の、制御装置16によって制御される駆動機構4の動作の流れを示す。図示するように、制御装置16は、センサ15がピストン11のロッド12を検出していれば、モータ13を逆転させてプッシャ14を後退させ、液体Lの圧力によりピストン11が後退して、液体Lを内部空間10に導入することを可能にする。
【0024】
しかしながら、制御装置16は、センサ15がピストン11のロッド12を検出できなければ、モータ13の回転を停止してプッシャ14を停止させる。制御装置16は、モータ13を停止させてからセンサ15がピストン11のロッド12を検出するまでの時間を計測する。センサ15がロッド12を検出するまでの時間が図6の気泡が混入していない場合の遅れ時間に相当する所定の猶予時間T1(例えば3秒)以内である場合には、モータ13を再度逆回転させてプッシャ14を後退させ、液体Lの圧力によるピストン11のさらなる後退を可能にする。
【0025】
猶予時間T1以内にセンサ15がロッド12を再検出できない場合、気泡混入による遅れである疑いがあるので、制御装置16は、吸引異常であるとして駆動機構4の動作を停止し、例えば制御装置16に設けた表示装置などに異常を表示する。
【0026】
センサ15がロッド12を猶予時間T1より長い間再検出できない吸引異常が発生しなかった場合、制御装置16は、プッシャ14が送りねじの端部まで後退したことを不図示の後退限界センサによって検出したときに、吸引動作を停止する。
【0027】
このようにして、本実施形態の液体供給装置1は、気泡が混入した液体Lを供給して、後工程で不良を発生させる危険を防止できる。
【0028】
また、本実施形態の液体供給装置1において、制御装置16は、図8に示すような制御を行ってもよい。この制御では、制御装置16は、センサ15がロッド12を検出できなければ、モータ13の回転を停止してプッシャ14を停止させ、センサ15がロッド12を再度検出するまでの時間が猶予時間T1以内である場合には、モータ13を再度逆回転させる点は、図7の制御と同様である。
【0029】
しかしながら、この制御では、猶予時間T1以内にセンサ15がロッド12を再検出できない場合にも、さらにセンサ15の出力を監視し、図6の気泡が混入している場合の圧力上昇の遅れ時間に相当する判別時間T2(例えば10秒)以内に、センサ15がロッド12を再検出できたときは、処理を停止して気泡混入である旨の警告表示をする。センサ15がロッド12を再検出できないまま判別時間T2が経過したときは、直ちに処理を停止して吸引異常の警告表示を行う。
【0030】
これによって、オペレータは、動作停止の原因が気泡混入の可能性が高いのか、或いは、それ以外のメカニカルトラブルなどの可能性が高いのかを知ることができ、トラブル処置を効率的に行うことができる。
【0031】
また、本実施形態では、液体Lをシリンジ9に吸引する際、ピストン11がプッシャ14を押圧しながら後退する。このため、液体Lにはプッシャ14の反力が作用しており、気泡Bが混入している場合は、プッシャ14の反力が予め気泡Bを圧縮している。つまり、気泡Bが予め圧縮されている分だけ気泡Bの収縮によるピストン11の後退の遅延時間が短くなり、気泡Bの検出感度を低下させることになる。
【0032】
この問題を解決するためには、液体Lをシリンジ9に吸引する際、先ず、切換弁6がシリンジ9の内部空間10を吐出流路8に連通させている状態で、モータ13を起動してプッシャ14を後退させ、プッシャ14がロッド12から例えば1から3mm程度離れるのを待ってから切換弁6を操作して内部空間10を吸込流路5に連通させることが有効である。
【0033】
このようにすれば、液体Lに気泡Bの混入がなく、ピストン11の後退速度がプッシャ14の後退速度と一致しているときには、ピストン11は、プッシャ14と一定の距離を保ちながら、プッシャ14の反力を受けずに後退することができる。
【0034】
ピストン11が後退時にプッシャ14の反力を受けないようにすることで、気泡Bが混入したときのピストン11の後退の遅れを容易に検出することができる。尚、このためには、センサ15は、プッシャ14がロッド12から数mm離れていてもロッド12を検出できるようにしておく必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の1つの実施形態の液体供給装置の概略図。
【図2】図1のシリンジポンプの詳細図。
【図3】図2のシリンジポンプのピストン移動時を示す詳細図。
【図4】図2のシリンジポンプの気泡混入時を示す詳細図。
【図5】粘性流体の圧力伝達のモデルを示す図。
【図6】図5のモデルにおける圧力の変化を示す図。
【図7】図1の液体供給装置における液体吸引動作の流れ図。
【図8】図7の代案の液体吸引動作の流れ図。
【符号の説明】
【0036】
1 液体供給装置
2 サーバタンク
3 シリンジポンプ
4 駆動機構
5 吸込流路
6 切換弁
7 共用流路
8 吐出流路
9 シリンジ
10 内部空間
11 ピストン
12 ロッド
13 モータ
14 プッシャ
15 センサ
16 制御装置
17 送りねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留する液体を加圧可能なサーバタンクと、
シリンジとピストンとで内部空間を形成し、前記液体の圧力によって前記ピストンを後退させて前記サーバタンクから前記内部空間に前記液体を導入し、前記ピストンの前進により前記内部空間から前記液体を吐出可能なシリンジポンプと、
前記サーバタンクから前記内部空間に前記液体を導入するための吸込流路および前記液体を外部に送出するための吐出流路のいずれかに、前記シリンジポンプの内部空間を連通させる切換弁と、
前記ピストンの前進方向および後退方向に移動可能であり、前記ピストンの外側に当接して前記ピストンを前進させることが可能なプッシャを有する駆動機構と、
前記プッシャから一定距離以内に前記ピストンがあることを検出するセンサと、
前記センサが前記プッシャから一定距離以内に前記ピストンがあることを検出できない状態が、所定の猶予時間よりも長く続いたときに、前記プッシャの動作を停止させる制御手段とを有することを特徴とする液体供給装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記プッシャを所定の速度で後退させ、前記センサが前記プッシャから一定距離以内に前記ピストンがあることを検出できなくなったときは、前記プッシャを一旦停止させ、前記センサが前記プッシャから一定距離以内に前記ピストンがあることを所定の猶予時間内に再度検出できたならば前記プッシャを再度前記所定の速度で後退させ、前記センサが前記プッシャから一定距離以内に前記ピストンがあることを前記猶予時間内に再度検出できなかったならば前記プッシャの動作を停止させることを特徴とする請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記センサが前記猶予時間の経過後、さらに所定の判別時間が経過する前に、前記センサが前記プッシャから一定距離以内に前記ピストンがあることを検出したときは、前記液体に気泡が混入していると判断することを特徴とする請求項2に記載の液体供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−180182(P2008−180182A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15402(P2007−15402)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000211123)中外炉工業株式会社 (170)
【Fターム(参考)】