説明

液処理装置

【課題】角形の基板に形成される塗布膜の基板縁部に生じるフリンジを抑制すると共に、フリンジの除去を容易にし、基板の使用領域の拡大を図れるようにすること。
【解決手段】角形の基板Gの表面に処理液を供給して所定の処理を施す液処理装置において、基板を水平に保持すると共に、基板を鉛直軸回りに回転させるスピンチャック11と、スピンチャックに保持された基板の表面に処理液を供給する供給ノズル20と、スピンチャックに保持された基板の各辺の外方近傍に設けられると共に、上面平坦部31aを有する下部整流部材31と、下部整流部材の上方に位置し、下部整流部材の上面平坦部と協働して平行な流路空間34を形成する下面平坦部32aを有する上部整流部材32とを具備する気流調整部30と、スピンチャックの周縁の外側を包囲すると共に、気流調整部に形成される流路空間の外側近傍に吸引口47が開口する吸引流路46を有するカップと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばレチクル(マスク基板)やLCD用ガラス基板等の角形の基板に処理液を供給して処理を施す液処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば、半導体デバイスやレチクル(マスク基板)等の基板の製造プロセスにおけるフォトリソグラフィ工程では、基板上にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成するレジスト塗布処理,基板上のレジスト膜に対し所定のパターンの露光を行う露光処理,露光処理後の基板上に現像液を供給して基板上のレジスト膜を現像する現像処理等が行われている。
【0003】
例えば、マスク基板(以下に基板という)の表面にレジスト膜等の薄膜を形成する手法のスピンコーティングにおいては、基板保持部であるスピンチャックによって基板を水平状態で鉛直軸回りに高速回転させながら基板の表面の例えば中心部に例えばレジスト成分とシンナーなどの溶剤とを混ぜ合わせてなる塗布液(レジスト液)を供給することで、塗布液は遠心力で基板中心から塗り広げられて液膜を形成し、次いで、比較的低速回転させてシンナーを蒸発させるいわゆるスピン乾燥を行って薄膜状のレジスト膜を形成する。
【0004】
上記スピンコーティングでは、角形の基板を回転させて処理するため、スピンチャックの基板の四方に、擬似的に円形にするために、基板の表面と略同一平面の表面を有し、外周縁が円弧状になる気流調整部材が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、特許文献1では、スピンチャックの外周側を囲むカップを設け、このカップにおける気流調整部材の外周縁に吸引口が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−273846号公報(図1,図2,図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、この種のスピンコーティングにおいて、遠心力で基板の中心から塗り広げられた塗布液は基板端面から飛散するが、膜形成から膜乾燥にかけての比較的低速回転の状態では、表面張力が遠心力に勝り、残液は基板端面で基板に留まる。これが起因となって膜面の周囲に厚膜部として発生する厚膜不均一領域すなわち額縁(フリンジ)となる。
【0008】
フリンジを取り除くためには、例えばエッジ・ビード・リムーバ(Edge Bead Remover:EBR)を用いて、レジストの溶剤であるリンス液を基板の周縁部に供給してフリンジを除去している。
【0009】
しかしながら、エッジ・ビード・リムーバを用いるフリンジの除去においては、リンス液(溶剤)の使用量が多くなると共に、多くの時間を要し、また、リンス液(溶剤)によって溶解されたレジストの溶解だれが生じる等の懸念があった。
【0010】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、角形の基板に形成される塗布膜の基板縁部に生じる額縁(フリンジ)を抑制すると共に、フリンジの除去を容易にし、かつ、基板の使用領域の拡大を図れるようにする液処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、この発明は、角形の基板の表面に処理液を供給して所定の処理を施す液処理装置であって、上記基板を水平に保持すると共に、この基板を鉛直軸回りに回転させる基板保持部と、上記基板保持部に保持された基板の表面に処理液を供給する供給ノズルと、上記基板保持部に保持された基板の各辺の外方近傍に設けられると共に、上面に平坦部を有する下部整流部材と、この下部整流部材の上方に位置し、下部整流部材の上面平坦部と協働して平行な流路空間を形成する下面に平坦部を有する上部整流部材とを具備する気流調整部と、上記基板保持部の周縁の外側を包囲すると共に、上記気流調整部に形成される上記流路空間の外側近傍に吸引口が開口する吸引流路を有するカップと、を備えることを特徴とする。
【0012】
このように構成することにより、基板保持部の回転によって基板端面を水平方向に流れる気流を気流調整部の上部整流部材と下部整流部材によって形成された流路空間を介して外側の吸引口側に流すことができる。
【0013】
この発明において、上記下部整流部材の上面の平坦部が、上記基板保持部に保持された基板の表面より僅かに低い位置に設けられている方が好ましい。
【0014】
このように構成することにより、基板端面上の気流が気流調整部の上部整流部材と基板表面との隙間によって絞られた後、気流は流速を高めて流路空間を流れる。
【0015】
また、この発明において、上記下部整流部材及び上部整流部材は、上記基板保持部に保持された基板の角部を除いた各辺に設けられると共に、支持部材を介して上記両整流部材間に上記流路空間が形成され、かつ、上記下部整流部材及び上部整流部材の外側縁は、上記基板保持部の回転中心と同心円上の円弧状に形成される方がよい。
【0016】
また、この発明において、上記基板保持部の上方に位置し、基板保持部と相対的に上下移動する気流規制リング部材を更に備え、上記気流規制リング部材の内側縁側下面に、上記気流調整部の上部整流部材を設ける構造としてもよい。
【0017】
また、この発明において、上記上部整流部材の外側下面に、上記下部整流部材の上面平坦部に対して漸次離れる傾斜面を形成してもよい。あるいは、上記上部整流部材は、平面視において上記基板保持部に保持された基板の辺と平行な内側直線部と、上記基板保持部の回転中心と同心円上の外側円弧部とを有し、上記上部整流部材の下面は、上記基板保持部に保持された基板の端面から流れる気流を均一にすべく、上記内側直線部に沿って両端から中央に向かって漸次隙間が広くなる凹状部が形成されていてもよい。
【0018】
また、この発明において、上記カップに設けられる吸引流路の吸引口の下端縁は、上記下部整流部材の上面平坦部より下方に位置している方がよい。
【0019】
このように構成することにより、気流調整部の流路空間を流れる気流が下部整流部材の平坦面の外側端部と吸引口の上縁との隙間によって絞られた後、気流は流速を高めて吸引流路を流れる。
【0020】
加えて、この発明において、上記カップに設けられた吸引流路は、上記吸引口から流れ方向に沿って漸次開口面積が拡大されている方が好ましい。
【0021】
このように構成することにより、気流調整部の流路空間を流れた気流が吸引口で絞られた後、流速を高めて吸引流路を流れる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、基板保持部の回転によって基板端面を水平方向に流れる気流を気流調整部の上部整流部材と下部整流部材によって形成された流路空間を介して外側の吸引口側に流すことができるので、角形の基板に形成される塗布膜の基板縁部に生じる額縁(フリンジ)を抑制することができると共に、フリンジの除去を容易にし、かつ、基板の使用領域の拡大を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明に係る液処理装置の第1実施形態を示す概略断面図である。
【図2】上記液処理装置の要部拡大断面図である。
【図3】第1実施形態におけるスピンチャックと気流調整部を示す概略平面図である。
【図4】上記スピンチャックと気流調整部を示す斜視図である。
【図5】この発明に係る液処理装置の第2実施形態の要部断面図である。
【図6】この発明に係る液処理装置の第3実施形態の要部断面図である。
【図7】第3実施形態における上部整流部材の平面図(a)、(a)のI矢視図(b)及び(あ)のII矢視図(c)である。
【図8】この発明に係る液処理装置の第4実施形態を示す概略断面図である。
【図9】第4実施形態の要部拡大断面図である。
【図10】第4実施形態の要部拡大斜視図である。
【図11】この発明に係る液処理装置を備える塗布・現像処理装置の概略平面図である。
【図12】上記塗布・現像処理装置の概略斜視図である。
【図13】マスク基板の額縁幅評価の測定方法を示すためのマスク基板の概略平面図(a)、(a)のI部拡大図(b)及び(b)のII−II線断面図(c)である。
【図14】この発明における基板と気流調整部及び吸引口の細部の寸法を示す拡大断面図である。
【図15】マスク基板の額縁幅評価の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、この発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。ここでは、この発明に係る液処理装置を被処理基板である例えばレチクル(マスク基板)のレジスト塗布装置に適用した場合について説明する。
【0025】
<第1実施形態>
レジスト塗布装置10は、図1に示すように、角形のレチクル(マスク基板)G{以下に基板Gという}を水平に保持すると共に、この基板Gを鉛直軸回りに回転させる基板保持部であるスピンチャック11と、スピンチャック11に保持された基板Gの表面に処理液例えば塗布液であるレジスト液を供給する供給ノズル20と、スピンチャック11に保持された基板Gの各辺の外方近傍に設けられる気流調整部30と、スピンチャック11の周縁の外側を包囲するカップ40と、スピンチャック11の上方に位置し、スピンチャック11と相対的に上下移動する気流規制リング部材50と、を備えている。
【0026】
上記スピンチャック11は、例えばアルミニウム合金,ステンレス鋼、ポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)等の材質又はこれらを組合せた複合材にて形成されている。スピンチャック11は、回転軸部12を介して駆動部13に連結されており、基板Gを保持した状態で回転及び上下移動(昇降)可能に構成されている。なお、駆動部13は、図示しない制御手段であるコントローラに電気的に接続されており、コントローラからの制御信号に基づいて、ON,OFF動作及び所定の回転速度に回転する。また、スピンチャック11は、基板Gよりも僅かに大きい四角形の基台14を具備し、この基台14の各辺部に気流調整部30が設けられている。また、基台14の角部には切欠き部15が設けられ、角部の切欠き部15を挟んだ対向する位置には、基板Gの角部を固定する基板固定部材16が立設されている。また、基台14の各辺部の中間部には基板を載置する扁平円柱状の突起部17が設けられている。
【0027】
スピンチャック11の基台14の角部に切欠き部15を設けることにより、基板Gを支持して搬送する、水平−鉛直方向及び鉛直軸回りに回転自在な搬送アーム4の基板支持爪5が切欠き部15を通過して、スピンチャック11と搬送アーム4との間で基板Gの受け渡しを行うことができる(図3参照)。
【0028】
気流調整部30は、基台14の辺部に起立する起立片18の上端から外方に向かって水平に延在する上面に平坦部31a(以下に上面平坦部31aという)を有する下部整流部材31と、例えば円柱状の支持部材33を介して下部整流部材31の上方に位置し、下部整流部材31の上面平坦部31aと協働して平行な流路空間34を形成する下面に平坦部32a(以下に下面平坦部32aという)を有する上部整流部材32とで構成されている。
【0029】
また、下部整流部材31と上部整流部材32は、スピンチャック11に保持された基板Gの角部を除いた各辺に設けられており、下部整流部材31及び上部整流部材32の外側縁は、スピンチャック11の回転中心と同心円上の円弧状に形成されている。このように、気流調整部30を構成する両整流部材31,32の外側縁を、スピンチャック11の回転中心と同心円上の円弧状に形成することにより、スピンチャック11の回転バランスを良好にすると共に、スピンチャック11の回転により生じる気流の乱れを抑制することができる。なお、下部整流部材31の上面平坦部31aと上部整流部材32の下部平坦部32aは、後述するレジスト液の振り切り性をよくするために、例えばフッ素コーティングやタフラム処理などの撥水処理が施されていることが好ましい。
【0030】
この場合、図2に示すように、下部整流部材31の上面平坦部31aは、スピンチャック11に保持された基板Gの表面より僅かに低い位置例えば0.4mmに設定されている。また、流路空間34は、例えば1.4mmの間隔に設定されている。
【0031】
上記のように、下部整流部材31の上面平坦部31aは、スピンチャック11に保持された基板Gの表面より僅かに低い位置例えば0.4mmに設定し、流路空間34を、例えば1.4mmの間隔に設定することにより、スピンチャック11の回転により、基板端面を水平方向に流れる気流を気流調整部30の流路空間34を介して外側の吸引口側に流すことができる。この際、基板端面上の気流が気流調整部30の上部整流部材32と基板表面との隙間すなわち流路空間34の間隔(1.4mm)より基板表面と下部整流部材31との段差(0.4mm)分の隙間(1.4mm−0.4mm=1.0mm)によって絞られた後、気流は流速を高めて流路空間34を流れる。
【0032】
一方、カップ40は、スピンチャック11の周縁の外側を包囲する外カップ41と内カップ42とで構成されるカップ上部43と、スピンチャック11の回転軸部12を囲む円板44と、この円板44の外周縁と内カップ42の内周縁部に内周壁45aが連結し、外周壁45bが外カップ41の外周下部に連結する有底円筒状のカップ胴部45とを備えている。なお、円板44の上方には、スピンチャック11の切欠き部15から基板Gの縁部に向かってリンス液(溶剤)を噴射するバックリンスノズル21が配設されている。なお、円板44の中心部とスピンチャック11の回転軸部12とは例えばラビリンスシール等のシール機構(図示せず)を介して連結されており、回転軸部12が気水密に回転及び摺動可能に形成されている。
【0033】
この場合、内カップ42の上面は内周側から外周側に向かって下り勾配の円錐面42aと、この円錐面42aの先端から垂下する円筒状の垂下片42bを有している。また、カップ胴部45の上部内周側には、内周側に向かって上り勾配の円錐内周壁45cが突設されている。この円錐内周壁45cの内周先端側の上面には気流調整部30の上部整流部材32の上面平坦面とほぼ同一面上に位置する平坦面45dが形成されている。この円錐内周壁45cの下部内周面45jと内カップ42の円錐面42aとで吸引流路46が形成されると共に、円錐内周壁45cの内周側端部と円錐面42aの内周側端部とで形成される吸引口47が、上記気流調整部30の流路空間34の外側近傍に位置している。なおこの場合、図2に示される流路空間34の外側端部と吸引口47との隙間は0.4mmに設定されている。また、吸引口47の下端縁すなわち内カップ42の円錐面42aの内周側端部は、気流調整部30の下部整流部材31の上面平坦部31aより下方に位置している。なお、吸引口47の上端縁すなわち円錐内周壁45cの内周端部下面は上部整流部材32の下面平坦部32aより僅かに上方に位置している。また、吸引流路46は、吸引口47から流れ方向に沿って漸次開口面積が拡大されるように形成されている。
【0034】
上記のように、吸引口47の下端縁を気流調整部30の下部整流部材31の上面平坦部31aより下方に位置することにより、気流調整部30の流路空間34を流れた気流が吸引口47で絞られた後、回転による排出気流と相俟って流速を高めて吸引流路46を流れる。更に、吸引流路46を吸引口47から流れ方向に沿って漸次開口面積が拡大されるように形成することにより、気流調整部30の流路空間34を流れた気流が吸引口47で絞られた後、流速を高めて吸引流路46を流れる。
【0035】
なお、外カップ41の下面には、内周縁から外周側に向かって下り勾配の内方円錐面41aが形成されており、この内方円錐面41aとカップ胴部45の円錐内周壁45cの上部円錐面42cとの間に、レジスト塗布処理によって基板Gから飛散されるミストを吸引するミスト吸引流路48が形成されている。このミスト吸引流路48を流れるミストは円錐内周壁45cの外周側の基部に設けられた流通路45eを介して下方の後述するカップ胴部45の底部45fに流れ、その後排気管60を介して外部へ排出される。
【0036】
また、カップ胴部45の底部45fには、カップ胴部45を内側室45gと外側室45hに区画する円筒状の仕切壁45iが立設されている。外側室45hの上部側には、カップ胴部45の内壁と仕切壁45iとの間に隙間を残して内カップ42の垂下片42bが配設されている。一方、内側室45gの底部の適宜位置例えば2箇所には排気口49が設けられており、この排気口49に排気管60が接続されている。排気管60は図示しない排気装置と気液分離器が接続されている。
【0037】
また、スピンチャック11の回転軸部12を囲む円板44の外周側の適宜位置には排液口44aが設けられており、円板44の下方の排液口44aの直下位置には、バックリンスに供されたリンス液によって溶解された排液を排液口44aから落下する排液を受け止める環状のドレインパン61は配設されている。ドレインパン61に受け止められた排液はドレイン管62を介して排液される。
【0038】
一方、気流規制リング部材50は、図1に示すように、スピンチャック11に保持された基板Gの角部を覆うような内周円51aを有する内周円板部51と、この内周円板部51の外周に延在する内周円板部51より肉厚の外周円板部52と、外周円板部52の外周側下面に垂設される筒状部53とで構成されている。このように構成される気流規制リング部材50は、外周円板部52に連結される昇降機構54の駆動によってスピンチャック11に対して相対的に上下移動されるようになっている。なお、気流規制リング部材50が上下移動する際、筒状部53が外カップ41の上面に設けられた環状ガイド溝41b内を摺動自在に嵌挿されて、気流規制リング部材50の水平方向からの気流の流入を抑制するようになっている。
【0039】
上記のように構成される気流規制リング部材50によれば、スピンチャック11の回転により生じる基板Gの中央から周縁(角部)に渡って螺旋状に流れる気流によって基板角部のレジスト膜に生じるいわゆる風切りマークを抑制することができる。
【0040】
供給ノズル20は、スピンチャック11に保持された基板Gの表面に処理液であるレジスト液を供給し得るように、基板Gの表面に対して昇降及び水平移動可能に設けられている。
【0041】
次に、上記のように構成されるレジスト塗布装置10を用いて基板Gの表面に塗布膜を形成するスピンコーティングについて説明する。まず、気流規制リング部材50が上昇位置に設定された状態において、スピンチャック11をカップ40の上方まで上昇させ、上述したように搬送アーム4からスピンチャック11に基板Gが渡される。その後、搬送アーム4はレジスト塗布装置10から後退し、スピンチャック11がカップ40の内方に下降する一方、供給ノズル20が基板Gの中心部に対向する位置に移動される。ここで、スピンチャック11例えば2〜3秒間、第1の周速度例えば2500rpmで基板Gを高速回転させながら、供給ノズル20から処理液であるレジスト液を基板Gの中心部に向けて例えば1.5秒間吐出(供給)する。この状態で、基板Gに到達したレジスト液は遠心力の作用により周縁側に向かって塗り広げられていき、更に基板G上野余剰のレジスト液が振り切られる。その後、供給ノズル20を基板Gの中心部上方からカップ40の外方に後退させる一方、例えば50秒間、第2の周速度例えば500rpmで基板Gを低速回転させることにより、基板Gの表面に例えば0.3μm程度のレジスト膜が形成される。その後、スピンチャック11を上昇させて搬送アーム4が基板Gを受け取り、基板Gをレジスト塗布装置10から搬出する。
【0042】
上記のようなスピンコーティングにおいては、上述したように、まず高速回転させて遠心力の作用によってレジスト液を基板Gの中心部から周縁側に向かって塗り広げてレジスト膜を形成し、次いで低速回転させてレジスト液を乾燥させる。ここで、高速回転プロセスでは、遠心力で基板中心から塗り広げられたレジスト液は基板端面から飛散するが、膜厚プロファイル形成から膜乾燥にかけての比較的低速回転プロセスでは、表面張力が遠心力に勝り、レジスト液の残液は基板表面端面で基板Gに留まり、膜面の周囲に厚膜部として発生する厚膜不均一領域すなわち額縁(フリンジ)となる。そこで、上記実施形態の構造とすることにより、乾燥過程において、気流調整部30の上部整流部材32と下部整流部材31によって形成された流路空間34に基板Gの中央から周縁方向に向かって流れる気流を多くすることで、額縁(フリンジ)の幅及び高さを小さくすることができる。
【0043】
すなわち、基板Gを低速回転すると、基板Gの表面には、見かけ上、その回転方向とは反対方向に向かう気流が生じ、基板Gの中央で蒸発成分であるシンナーを含んだ風が基板Gの表面に沿って周縁に向かって螺旋状に流れるが、その気流は、基板Gの表面と平行に形成され、かつ、基板表面より僅かに低い位置に設けられる上面平坦部31aを有する下部整流部材31と上部整流部材32の下面平坦部32aとが協働して形成される流路空間34を流速を高めて流れる。更に、流路空間34を流れた気流は、カップ40に設けられた、流路空間34の外方近傍に吸引口47が開口する吸引流路46を流れて、外部に排気される。このとき、吸引口47の下端縁を気流調整部30の下部整流部材31の上面平坦部31aより下方に位置するので、気流調整部30の流路空間34を流れた気流が吸引口47で絞られた後、回転による排出気流と相俟って流速を高めて吸引流路46を流れる。更に、吸引流路46を吸引口47から流れ方向に沿って漸次開口面積が拡大されるように形成されているので、気流調整部30の流路空間34を流れた気流が吸引口47で絞られた後、流速を高めて吸引流路46を流れる。
【0044】
したがって、上記実施形態によれば、スピンチャック11の回転によって基板端面を水平方向に流れる気流は流速を高めて気流調整部30の流路空間34を流れると共に、更に吸引口47で絞られた後、流速を高めて吸引流路46を流れるので、基板端面の水平方向に流れる気流を多くすることができ、基板端面に留まろうとするレジスト液による額縁(フリンジ)の幅及び高さを小さくすることができる。その結果、基板端面に残った額縁(フリンジ)の剥離が容易となり、露光プロセスで基板Gのより広範囲を使用することができる。
【0045】
<第2実施形態>
上記第1実施形態では、気流調整部30に形成される流路空間34が水平方向に平行な流路によって形成される場合について説明したが、気流調整部30を別の構造にしてもよい。例えば、図5に示すように、下部整流部材31の上面平坦部31aと協働して水平方向に平行な流路空間34を形成する上部整流部材32の外側下面に、下部整流部材31の上面平坦部31aに対して漸次離れる傾斜面35を形成してもよい。
【0046】
このように、上部整流部材32の外側下面に、下部整流部材31の上面平坦部31aに対して漸次離れる傾斜面35を形成することにより、流路空間34の流出側の開口面積を漸次増大させることができるので、流路空間34内の気流の流れを更に増大することができる。なお、第2実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、説明は省略する。
【0047】
<第3実施形態>
また、気流調整部30の別の形態として、図6及び図7に示すように、上部整流部材32Aを、平面視においてスピンチャック11に保持された基板Gの辺と平行な内側直線部36と、スピンチャック11の回転中心と同心円上の外側円弧部37とで形成すると共に、上部整流部材32Aの下面を、スピンチャック11に保持された基板Gの端面から流れる気流を均一にすべく、内側直線部36に沿って両端から中央に向かって漸次隙間が広くなる凹状部38を形成してもよい。
【0048】
このように形成することにより、気流調整部30の流路空間34において、スピンチャック11に保持された基板Gの端面から流れる気流を均一にすることができるので、基板G表面のレジスト膜厚を更に均一にすることができる。なお、第3実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、説明は省略する。
【0049】
<第4実施形態>
また、上記実施形態では、気流調整部30の流路空間34が、支持部材33を介して下部整流部材31と上部整流部材32間に形成される場合について説明したが、図8ないし図10に示すように、気流規制リング部材50の内側縁側下面に、気流調整部30の上部整流部材32Bを設けてもよい。この場合、上部整流部材32Bは、下部整流部材31の上面平坦部31aと協働して平行な流路空間34を形成する下面平坦部32aを有する上部整流部材本体39aと、上部整流部材本体39aの上面にスペーサ39bを介して上部整流部材本体39aとの間に内周側と外周側が連通した環状の流路39cを形成する厚肉の固定部39dとで構成され、例えば固定ねじや接着剤等固定手段によって固定部39dが気流規制リング部材50の内側縁側下面に固着されている。
【0050】
なお、第4実施形態においてその他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0051】
上記のように構成される第4実施形態によれば、昇降機構54の駆動により気流規制リング部材50を下降させて、上部整流部材本体39aを下部整流部材31の上面平坦部31aの上方の対向位置に近接(隙間:1.4mm)させた状態にすることにより、上記第1実施形態と同様に、スピンチャック11の回転によって基板端面を水平方向に流れる気流は流速を高めて気流調整部30の流路空間34を流れる。流路空間34を流れた気流は更に吸引口47で絞られた後、流速を高めて吸引流路46を流れるので、基板端面の水平方向に流れる気流を多くすることができ、基板端面に留まろうとするレジスト液による額縁(フリンジ)の幅及び高さを小さくすることができる。その結果、基板端面に残った額縁(フリンジ)の剥離が容易となり、露光プロセスで基板Gのより広範囲を使用することができる。
【0052】
なお、第4実施形態においても、上部整流部材32Bを第2実施形態又は第3実施形態と同様の構造にすることも可能である。
【0053】
なお、上記実施形態では、基板Gがマスク基板の場合について説明したが、基板Gはマスク基板に限定されるものではなく、例えば液晶ディスプレイ用のガラス基板などであってもよい。また、この発明においては、液処理は塗布液を塗布する処理に限定されるものではなく、露光後の基板Gに現像液を供給して現像する処理、基板Gに洗浄液を供給して洗浄する処理であってもよい。
【0054】
次に、この発明の液処理装置であるレジスト塗布装置10を塗布ユニットU1として組み込んだ塗布・現像処理装置の一例について図11及び図12を参照して説明する。
【0055】
上記塗布・現像処理装置は、図1及び図2に示すように、キャリアブロックB1と、処理ブロックB2と、インターフェースブロックB3及び露光ブロックB4を具備している。
【0056】
キャリアブロックB1は、複数枚の基板Gを収納したキャリア1を載置するキャリア載置部2と、受け渡し手段3を備えている。このキャリアブロックB1の奥側には処理ブロックB2が接続されている。処理ブロックB2には主搬送手段である搬送アーム4が設けられ、この搬送アーム4を取り囲むように例えばキャリアブロックB1からみて右側には、この発明に係る液処理装置を設けた塗布ユニットU1及び露光処理後の基板Gを現像するための現像ユニットU2が備えられ、左側には基板Gを洗浄するための洗浄ユニットU3が備えられ、更に手前側及び奥側には基板Gを加熱及び冷却処理するための加熱・冷却ユニット及び基板受け渡し用の受け渡しユニットなどを多段に積層した棚U4,U5が備えられている。また、搬送アーム4は、例えば、昇降及び前後に移動自在でかつ鉛直軸回りに回転自在に構成されており、塗布ユニットU1,現像ユニットU2,洗浄ユニットU3及び棚ユニットU4,U5間で基板Gの受け渡しが可能なように構成されている。更にまた、処理ブロックB2は、インターフェースブロックB3を介して例えばレジスト膜が形成された基板Gに所定のマスクを用いて露光処理するための露光ブロックB4と接続されており、また、このインターフェースブロックB3には受け渡し手段3Aが設けられ、棚ユニットU5の棚の一つである受け渡しユニットと、露光ブロックB4との間で基板Gの受け渡しが可能なように構成されている。
【0057】
この塗布・現像処理装置の基板Gの流れについて簡単に説明すると、先ず外部から基板Gが収納されたキャリア1がキャリア載置部2に搬入されると、受け渡し手段3によりキャリア1内から基板Gが1枚取り出され、棚ユニットU4の棚の一つである受け渡しユニットを介して搬送アーム4に渡され、洗浄ユニットU3→加熱ユニット→冷却ユニット→塗布ユニットU1に順次搬入されて例えばレジスト膜が形成される。次いで加熱ユニットでプリベーク処理が行われ、冷却ユニットで所定の温度に調整された後、受け渡し手段3Aを介して露光ブロックB4に搬入されて露光が行われる。その後、基板Gは加熱ユニットに搬入されて所定の温度でポストエクスポージャーベーク処理が行われ、次いで冷却ユニットで所定の温度に温調された後、現像ユニットU2にて現像処理が行われる。このようにして所定の処理が施され、その表面に例えばレジストマスクパターンが形成された基板Gは元のキャリア1内に戻される。
【実施例】
【0058】
次に、この発明の効果を確認するための実施例について、図13ないし図15を参照して説明する。
【0059】
実験条件
・基板Gのサイズ:152mm角×6.35mm厚、0.4mm(カット面幅)
・塗布液供給量:5cc
・高速回転プロセス:2500rpm
・低速回転プロセス:500rpm
測定方法
図13に示すように基板Gの一辺の最大の幅をその基板Gの額縁幅として判断する。ここで、額縁幅(F)はフリンジ幅(f)とカット面幅(C)とを加えた幅、すなわち
F=f+Cとなる。
【0060】
(実施例)
図1及び図2に示す気流調整部30を備えた装置を用いて上述の手法により、マスク基板である基板Gの表面にレジスト膜を形成した実施例である。ここで、気流調整部30の詳細は、図15に示すように、流路空間34の隙間(間隔)は1.4mm、基板Gの表面と下部整流部材31の上面平坦部31aとの段差は0.4mm、気流調整部30と吸引口47との隙間(間隔)は0.7mmである。まず、基板Gをスピンチャック11に載置し、高速回転プロセスにて基板Gにレジストの液膜を形成し、次いで低速回転プロセスにてレジスト液中のシンナーを蒸発させてレジスト膜を得た。低速回転プロセス過程の気流調整部30の流路空間34の流入口を流れる気流の流速は、12m/s以上であり、元圧(カップの排気口での圧力)は−270Paであった。
【0061】
上記実験条件で、実施例を2回行って得られたレジスト膜の額縁幅{フリンジ幅+0.4mm(カット面幅)}を測定したところ、図15に示すように、1回目{実施例(1)}は、0.77mmであり、2回目{実施例(2)}は0.82mmであった。
【0062】
(比較例)
実施例の気流調整部30を除いたスピンチャックを用いて実施例と同様の手法によりレジスト膜を得た。その結果、レジスト膜の額縁幅{フリンジ幅+0.4mm(カット面幅)}を測定したところ、図15に示すように1.19mmであった。
【0063】
上記額縁幅評価結果より、気流調整部30を用いない比較例の額縁幅{フリンジ幅+0.4mm(カット面幅)}が1.19mmであるのに対し、実施例の額縁幅{フリンジ幅+0.4mm(カット面幅)}は比較例に比べて0.37〜0.42mm少ない額縁幅であり、基板Gのより広範囲を使用できることが判った。
【符号の説明】
【0064】
11 スピンチャック(基板保持部)
20 供給ノズル
30 気流調整部
31 下部整流部材
31a 上面平坦部
32 上部整流部材
32a 下面平坦部
33 支持部材
34 流路空間
35 傾斜面
40 カップ
46 吸引流路
47 吸引口
50 気流規制リング部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角形の基板の表面に処理液を供給して所定の処理を施す液処理装置であって、
上記基板を水平に保持すると共に、この基板を鉛直軸回りに回転させる基板保持部と、
上記基板保持部に保持された基板の表面に処理液を供給する供給ノズルと、
上記基板保持部に保持された基板の各辺の外方近傍に設けられると共に、上面に平坦部を有する下部整流部材と、この下部整流部材の上方に位置し、下部整流部材の上面平坦部と協働して平行な流路空間を形成する下面に平坦部を有する上部整流部材とを具備する気流調整部と、
上記基板保持部の周縁の外側を包囲すると共に、上記気流調整部に形成される上記流路空間の外側近傍に吸引口が開口する吸引流路を有するカップと、
を備えることを特徴とする液処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の液処理装置において、
上記下部整流部材の上面の平坦部が、上記基板保持部に保持された基板の表面より僅かに低い位置に設けられている、ことを特徴とする液処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の液処理装置において、
上記下部整流部材及び上部整流部材は、上記基板保持部に保持された基板の角部を除いた各辺に設けられると共に、支持部材を介して上記両整流部材間に上記流路空間が形成され、かつ、上記下部整流部材及び上部整流部材の外側縁は、上記基板保持部の回転中心と同心円上の円弧状に形成される、ことを特徴とする液処理装置。
【請求項4】
請求項1記載の液処理装置において、
上記基板保持部の上方に位置し、基板保持部と相対的に上下移動する気流規制リング部材を更に備え、上記気流規制リング部材の内側縁側下面に、上記気流調整部の上部整流部材が設けられている、ことを特徴とする液処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の液処理装置において、
上記上部整流部材の外側下面に、上記下部整流部材の上面平坦部に対して漸次離れる傾斜面が形成されている、ことを特徴とする液処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載の液処理装置において、
上記上部整流部材は、平面視において上記基板保持部に保持された基板の辺と平行な内側直線部と、上記基板保持部の回転中心と同心円上の外側円弧部とを有し、上記上部整流部材の下面は、上記基板保持部に保持された基板の端面から流れる気流を均一にすべく、上記内側直線部に沿って両端から中央に向かって漸次隙間が広くなる凹状部が形成されている、ことを特徴とする液処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の液処理装置において、
上記カップに設けられる吸引流路の吸引口の下端縁は、上記下部整流部材の上面平坦部より下方に位置している、ことを特徴とする液処理装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の液処理装置において、
上記カップに設けられた吸引流路は、上記吸引口から流れ方向に沿って漸次開口面積が拡大されている、ことを特徴とする液処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−44085(P2012−44085A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185891(P2010−185891)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】