説明

液圧制御装置

【課題】プランジャポンプを備えた液圧制御装置におけるハウジングに関し、ポンプからリークした作動油を貯留する容量を確保して、且つ、加工工数を低減できる液圧制御装置を提供する。
【解決手段】モータMに接続しプランジャポンプPを往復運動させるカム13と、カム13を収容するカム室13aを設け、ハウジング10にバルブを格納するカバー50を設け、液溜め53を前記カバー50内に設けるとともに、前記ハウジング10に、カム室13aからリークした作動油を貯留する前記液溜め53と前記カム室13aとを連通する油路60を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プランジャポンプを備えた液圧制御装置におけるハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示される液圧制御装置としてのブレーキ装置にあっては、ハウジング内の余剰スペースに液溜めを設け、ポンプからリークした作動油を貯留している。リークした作動油はモータのブラシを摩耗させるとともに、リーク油がバルブの電極に触れると発火のおそれがあるため、リーク油を確実に液溜めに導くものである。
【特許文献1】特開2006−307688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記従来技術にあっては、液溜めをハウジング内に設けるためスペースに限界があり、液溜めの容量が不足するという問題があった。とりわけ、車両姿勢制御等を実行するとポンプの作動頻度も増大し、これに伴って作動油のリーク量も増大するため、液溜めの容量不足がさらに大きな問題となる。また、液溜めを設けるためにハウジングに別途機械加工を施す必要があり、コストアップの原因となっていた。
【0004】
本発明は上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、加工工数を低減しつつ液溜めの容量を確保した液圧制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、ハウジングに、バルブを格納するカバーを設け、液溜めを前記カバー内に設けるとともに、前記ハウジングに、前記液溜めと前記カム室とを連通する油路を設けた。
【発明の効果】
【0006】
よって、加工工数を低減しつつ液溜めの容量を確保した液圧制御装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の液圧制御装置を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
[油圧回路]
図1は液圧制御装置としてのブレーキ装置におけるハウジング10内に設けられた油圧回路図である。本願液圧制御装置の油圧回路はP,S系統を有する油圧回路である。ポンプPはプランジャポンプであり、モータMにより駆動される。
【0009】
ポンプPの吸入側は第3油路3P,3Sおよびイン側ゲート弁21,22を介してマスタシリンダ20と接続し、吐出側は第1油路1P,1S、増圧弁25〜28、および第2油路2(FL〜RR)を介して各ホイルシリンダW/C(FL〜RR)と接続する。
【0010】
第2油路2(FL〜RR)はそれぞれ減圧弁29〜32および第6油路6P,6Sを介してリザーバ41,42と接続し、第6油路6P,6Sは第3油路3P,3SとともにポンプPの吸入側と接続する。さらに、増圧弁25〜28のポンプP側はアウト側ゲート弁23,24を介してマスタシリンダ20と接続する。
【0011】
また、第1油路1P,1SであってP系統の増圧弁25,27およびS系統の増圧弁26,28を接続する部分を第5油路5P,5Sとする。
【0012】
アウト側ゲート弁23,24には、マスタシリンダ20への逆流を防止するチェック弁33,34が並列に設けられている。また、各増圧弁25〜28にはそれぞれ各ホイルシリンダW/C(FL〜RR)への逆流を防止するチェック弁35〜38が並列に設けられている。さらに、第3油路3P,3Sであってイン側ゲート弁21,22とポンプPとの間にはダイヤフラム43,44が設けられている。
【0013】
(増圧時)
増圧時には、イン側ゲート弁21,22および増圧弁25〜28を開弁し、減圧弁29〜32を閉弁してポンプPを駆動する。ポンプ駆動によりマスタシリンダ20から作動油が汲み出され、第3油路3P,3Sおよび第2油路2(FL〜RR)を介して各ホイルシリンダW/C(FL〜RR)に導入される。
【0014】
(減圧時)
減圧時には、増圧弁25〜28を閉弁、減圧弁29〜32を開弁し、第6油路6P,6Sを介して各ホイルシリンダW/C(FL〜RR)の作動油をリザーバ41,42に還流する。
【0015】
[ハウジング]
図2はハウジング10のy軸方向断面図(図3のII−II断面)、図3はy軸負方向側正面図である。また、図4はカバー50のy軸正方向正面図である。なお、モータMの軸方向であってモータMからハウジング10側を負方向とする。また、図2,3において図面下方をz軸負方向とし、図3の右方向をx軸正方向側とする。実施例1では、z軸負方向側を鉛直方向下方とする。
【0016】
プランジャポンプPはカム13によって駆動され、このカム13はカム室13aに収容される。ハウジング10のy軸正方向側面10dにはモータMが装着される。
【0017】
各バルブ21〜32はハウジング10のy軸負方向側面10aに装着される。なお、各増圧弁25〜28、減圧弁29〜32、イン側およびアウト側ゲート弁21〜24の配置は他のパターンであってもよい。
【0018】
ハウジング10のy軸負方向側には、各電磁弁21〜32を格納するカバー50が設けられている。このカバー50は内部に基板50aを有し、各電磁弁21〜32を装着したハウジング10のy軸負方向側面10aに被せることで各電磁弁21〜32を格納部52に格納するとともに、基板50aと各電磁弁21〜32の端子を接続する。ハウジング10との当接部分にはシール51が設けられて液密に画成する。
【0019】
カバー50のz軸負方向側には、ハウジング10の油路内から漏れた作動油を貯留する液溜め53が設けられている。この液溜め53はハウジング10のy軸負方向側面10aに開口する領域であり、ハウジング10内のカム室13aと接続する。
【0020】
カム室13aと液溜め53は、ハウジングy軸負方向側面10aから穿孔された油路60によって接続される。この油路60は、カム室側開口部61においてカム室13aに開口するとともに、液溜め側開口部62において液溜め53に開口する。
【0021】
カム室側開口部61はカム室13aのz軸負方向側(鉛直下方)最下部に開口し、液溜め側開口部62は、カム室側開口部61よりもz軸負方向側(鉛直方向下方)に設けられている。したがってカム室13aから漏れた作動油は、重力によって油路60を介して液溜め53に流入する。
【0022】
また、各バルブ21〜32は全て液溜め53よりもz軸正方向側(鉛直上方)に設けられている。実施例1では各バルブ21〜32は全てポンプPの軸線I−Iよりもz軸正方向側(鉛直上方)にあるものとする。リークした作動油は鉛直下方に流れるため、液溜め53よりもz軸正方向側(鉛直上方)に設けることで、各バルブ21〜32にリーク油が接触することを極力回避した構成となっている。
【0023】
[実施例1の効果]
(1)ハウジング10にバルブ21〜32を格納するカバー50を設け、液溜め53をカバー50内に設けるとともに、ハウジング10に、液溜め53とカム室13aとを連通する油路60を設けた。
【0024】
これにより、ハウジング10内に液溜め53を設ける必要を回避し、ハウジング10の加工工数を低減することができる。また、ハウジング10の外部に液溜め53を設けることで、ハウジング10内部のレイアウトにとらわれることなく液溜め53の容量を設定することが可能となり、液溜め53の容量を確保した液圧制御装置を提供することができる。
【0025】
(2)カバー50に、バルブ21〜32と液溜め53を液密に画成するシール51を設けた。これにより、液溜め53とバルブ21〜32を確実にシールすることができる。
【0026】
(3)油路60は、カム室側開口部61においてカム室13aに開口するとともに、液溜め側開口部62において液溜め53に開口し、カム室側開口部61は、カム室13aのz軸負方向側(鉛直下方)最下部に開口し、液溜め側開口部62は、カム室側開口部61よりもz軸負方向側(鉛直下方)に設けられていることとした。
【0027】
これにより、カム室13aから漏れた作動油は、重力によって油路60を介して液溜め53に流入するため、リークした作動油を確実に液溜め53に導くことができる。
【0028】
(4)各バルブ21〜32を、全て液溜め53よりもz軸正方向側(鉛直上方)に配置した。これにより、リークして鉛直下方に流れる作動油が各バルブ21〜32に接触することを極力回避することができる。
【0029】
(他の実施例)
以上、本発明を実施するための最良の形態を実施例1に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は各実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【0030】
例えば、油圧パワーステアリング装置の液溜めにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】液圧制御装置の油圧回路図である。
【図2】ハウジング10のy軸方向断面図である。
【図3】ハウジング10y軸負方向側正面図である。
【図4】カバー50のy軸正方向正面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 ハウジング
13 カム
13a カム室
21,22 イン側ゲート弁(バルブ)
23,24 アウト側ゲート弁(バルブ)
25〜28 増圧弁(バルブ)
29〜32 減圧弁(バルブ)
50 カバー
51 シール
52 格納部
53 液溜め
60 油路
61 カム室側開口部
62 液溜め側開口部
M モータ
P プランジャポンプ
W/C ホイルシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジング内に設けられたプランジャポンプと、
前記プランジャポンプを駆動するモータと、
前記モータに接続し、プランジャポンプを往復運動させるカムと、
前記ハウジング内に設けられ、前記カムを収容するカム室と、
前記ハウジングに設けられたバルブと、
前記カム室からリークした作動油を貯留する液溜めと
を有する液圧制御装置において、
前記ハウジングに、前記バルブを格納するカバーを設け、
前記液溜めを前記カバー内に設けるとともに、前記ハウジングに、前記液溜めと前記カム室とを連通する油路を設けたこと
を特徴とする液圧制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液圧制御装置において、
前記カバーに、前記バルブと前記液溜めを液密に画成するシールを設けたこと
を特徴とする液圧制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液圧制御装置において、
前記油路は、カム室側開口部において前記カム室に開口するとともに、液溜め側開口部において前記液溜めに開口し、
前記カム室側開口部は、前記カム室の鉛直方向最下部に開口し、
前記液溜め側開口部は、前記カム室側開口部よりも鉛直方向下方に設けられていること
を特徴とする液圧制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の液圧制御装置において、
前記バルブを、全て前記液溜めよりも鉛直上方に配置したこと
を特徴とする液圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−114874(P2009−114874A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285831(P2007−285831)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】