説明

液圧式熱収縮補償装置及び方法

【課題】本発明は、意図しないブームの収縮という望ましくない状況を回避するためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】油圧を動力源とする伸縮式ブームにおける流体の収縮を補償するための装置は、伸縮式ブームの仰角を測定するモニターを含むことができる。流体制御部は、仰角が所定の閾値角度を越えた際に、油圧流体を供給部から伸縮式ブームの伸長を制御する油圧シリンダーへ供給し、油圧流体の熱収縮を補償し、よって予期しないブームの収縮を防止する。また、本発明による方法も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年1月21日に出願された米国仮出願第61/202030号に基づく優先権を主張し、この出願の全体が参照によって本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
クレーン、特に可動式クレーンのような荷物用リフト機器は、頻繁に伸縮式ブームを使用して必要な楊提を達成している。伸縮式ブームは、互いに対して入れ子式に伸縮する複数の区画からなり、ブームの全体長を変化させている。運搬可能なクレーンの伸縮式ブームは、複数のブーム区画の上において作用する、通常はシリンダーである1つ以上の油圧機器によって伸ばされることが多い。流体が油圧シリンダーに供給されるか、又は油圧シリンダーから排出されて、ピストンを油圧シリンダー内において動かす。このピストンの動きによって、荷物用リフト機器のブームが伸縮できる。
【0003】
ブームを支持している油圧シリンダー中の流体の熱膨張及びそれに続く収縮によって引き起こされる自然現象が伸縮式ブームにおいて生じていることは周知である。この自然現象は、荷物用リフト機器が長期間作動されて、油圧シリンダー中の流体を加熱し、続いて冷却する際に見ることができる。油圧流体は、加熱された際に膨張し、冷却された際に収縮する。荷物用リフト機器は、所定期間、空運転することができ、その間に流体は冷却される。この間の水平より上側のブームの仰角は比較的低い場合がある。この場合には、流体は冷却する際に収縮するが、ブームは、個々のブーム区画の間に作用する摩擦力の故に、収縮しない場合がある。この効果は、特定のブーム構成、個々のブーム区画の間の摩擦の程度、ブーム区画の潤滑、及び他の見込まれる環境因子によって変化する。したがって、伸縮式ブームは、ブーム区画が油圧シリンダー中の流体によって完全には支持されているわけではないにも拘らず、伸びた状態に維持される場合がある。
【0004】
上述した状況においては、ブーム区画の相対的位置は個々のブーム区画の間の摩擦によって支持されている恐れがある。リフト機の操作者が低い仰角位置からブームを上昇させる場合に、ブームは所定の仰角範囲に対して同じブーム長に維持されてしまう。しかし、操作者がブームを上昇させ続けると、ブームは突然、ブーム区画の重量又はブーム区画の重量の組み合わせ、及びその他の負荷がブーム区画の間の摩擦力を超える仰角に達してしまう。この時点で、ブームは、シリンダー中の液柱が再びブーム区画を十分に支持するまで収縮してしまう場合がある。この意図しないブームの収縮が望ましくないことは理解することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、この望ましくない状況を回避するためのシステム及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の装置及び方法は、上述の流体の冷却及び収縮を補償するとともに、操作者の誤操作の可能性を回避する。本発明は、意図しないブームの収縮を、操作者の手動の介在又は油圧流体の高圧源を必要とせずに回避する。また、本発明は、既存のクレーンに組み込むことが好都合に有利であり得る機器、又は製造時当初にクレーンに組み込むことができる機器を備えている。
【0007】
本発明は、既存のリフト機の一部であることが多い、油圧流体の比較的低い圧力源しか必要としない。また、本発明のための油圧源は、クレーンの既存の油圧システムの拡張機能又は予備機能として設けることができる。さらに、本発明が油圧シリンダー中の流体を、ブームの伸長を変化させずに補充するので、本発明の装置及び方法はクレーンのブーム区画を再同期させる必要性を回避する。ブーム区画は、ブームが最初に伸長される際に適正に同期され、ブームの伸長長さは、油圧シリンダー中の流体が本発明によって補充される際に大幅に変化することが無い。
【0008】
本発明による油圧を動力源とする伸縮式ブームにおける流体の収縮を補償するための装置は、伸縮式ブームの仰角を測定するモニターと、油圧流体の供給部と、モニターに応答する流体制御部であって、ブームの仰角が所定の閾値角度を越えた際に油圧流体を供給部から油圧シリンダー又は伸縮式ブームの伸びを制御する同等の機器へ供給する流体制御部と、を含むことができる。水平から上方35°の仰角より低い角度では、多くのクレーンにおいて摩擦力がブーム区画の相対位置を維持するのに有効であり、かつ、水平から上方35°の仰角より大きな角度では、摩擦力がブーム区画をそれら自体の重量及び/又は他のかけられた負荷に対してもはや維持できないので、この水平から上方35°の閾値角度を本発明に従って通常は設定することができる。
【0009】
また、この装置は、ブームの仰角が閾値角度を越えた際に、モニターによって生成された信号に応答して油圧流体を油圧シリンダーに供給するように構成された制御バルブを含むことができる。
【0010】
さらに、この装置は、油圧シリンダーに供給された流体の圧力をモニターし、最小圧力より低い圧力への検知された低下に応答して信号を生成する圧力センサーを含むことができる。また、この圧力センサーによって生成された信号に応答して、操作者によって感知され得る信号を生成する機器を含むこともできる。好ましい実施形態においては、モニターされた圧力が望ましい最小値を超えない限り電気回路を連続的に閉鎖する圧力センサーを使用することが望ましい場合がある。
【0011】
本発明は、油圧流体の供給部を必要とし、この供給部は流体を、少なくともブームを支持するのに十分高い適切な圧力で装置へ供給する。典型的な用途においては、この圧力は約200psiとすることができる。また、この供給部は、通常のブームの伸長の一部としての伸縮する伸長シリンダーの動力源となる油圧回路とすることができ、又は別個の若しくは予備の油圧供給部とすることができる。一例においては、油圧流体の供給部は、油圧流体を風速計に供給する油圧回路とすることができる。
【0012】
また、装置は減圧逃がし弁を含むことができ、本発明によって供給される流体の圧力を制御することができる。これは、油圧流体容器へと戻される油圧流体の一部を放出することによって達成される。
【0013】
さらに、装置は、この装置の出力ポートに流体を流すように接続された一方向バルブを含むことができる。これは、流体の逆流を防止し、よって伸長及び収縮のような伸縮ブームの通常の操作を本発明の補償機能から分離させる。
【0014】
本発明によれば、油圧によって作動される伸縮式ブームにおける流体の収縮を補償する方法は、伸縮式ブームの仰角をモニターするステップと、仰角が所定の閾値角度を越えた際に、伸縮式ブームの伸長を制御する油圧シリンダーへ流体を供給するステップと、を含むことができる。閾値角度は、水平から上方35°、又は個々のクレーンに適した他の角度とすることができる。
【0015】
さらに、この方法は、ブームの仰角が閾値角度を越えた際に信号を生成するステップと、この信号に応答して制御バルブに動力を与えて油圧流体を油圧シリンダーに供給するステップとを含むことができる。1つの実施形態においては、この方法は追加的に、制御バルブによって制御された流体の接続を油圧シリンダー中に開放するステップを含むことができる。油圧シリンダーに供給される流体の圧力は、逃がし弁を通じて流体を放出することによって制御することができる。
【0016】
また、この方法は、油圧シリンダーに供給される油圧流体の圧力の全ての低下をモニターするステップと、検知された圧力低下に応答して信号を生成するステップとを含むことができる。作業者によって感知され得る通知は、低圧信号に応答して生成することができる。好都合な実施形態においては、油圧シリンダーに供給される油圧流体の圧力が望ましい最小値を超えない限り信号は連続的に生成することができる。一方向バルブは、本発明の装置及び方法における流体の逆流を防止するために設けることができる。
【0017】
本発明による装置の利点は、この装置が油圧式に作動される伸縮式ブームを有するリフト機器に容易に後付されることである。本発明の装置はポンプのような圧力源を含むことができるか、又はクレーンに既に設置されている構成要素を使用することができる。
【0018】
後述は概要であり、したがってやむを得ない単純化、一般化及び詳細の省略が行われている。したがって、当業者はこの概要が説明のためのみのものであって、多少なりとも限定を意図するものではないことを理解するであろう。本発明の装置及び/又は方法の他の解釈、特徴、及び利点がここに説明される教示の中で明らかになるであろう。
【0019】
本発明の記述された特徴及び他の特徴は、添付の図面を併用しつつ、後述及び添付の特許請求の範囲の記載から十分に明白とされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】リフト機の伸縮式ブームの例の図である。
【図2】本発明の実施形態による補償装置の図である。
【図3】油圧シリンダーの例の図である。
【図4】本発明の補償装置の実施の例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態によるプロセスのフローチャートである。
【図6】本発明の特徴によるプロセスステップの例を記載するフローチャートである。
【図7】本発明の一例によるシステム故障を検知するプロセスを記載するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は伸縮式ブーム110の一例を図示している。ブーム区画120は入れ子式の伸縮構造に構成されており、1つ以上の油圧シリンダーによって伸長及び収縮することができるが、その油圧シリンダー130の1つのみが図示されている。ブームの伸長制御部140は、個々の油圧シリンダー130の駆動を制御して望ましいブームの伸長長さ及び適切な伸長順を達成している。伸縮式ブーム110は、水平からの所定の仰角に上昇された状態で示されている。本発明によれば、補償装置100は、意図しないブームの収縮を引き起こす場合のある油圧流体の冷却を補償している。
【0022】
図2は補償装置100の典型的な実施形態を図的に示している。仰角モニター200は、水平より上側への伸縮式ブーム110の仰角を検知する。この仰角が所定の閾値を超えると、モニター200は流体制御部220に所定の信号を与える。流体制御部220は、通常は閉鎖位置にある二方向ソレノイドバルブとして実施されている。したがってバルブは、閉じられている場合に、供給部210によって供給された油圧流体がブームを伸長させ収縮させる油圧回路の残りの部分に達しないように防止している。
【0023】
仰角モニター200が信号を流体制御部220に与えると、制御部は供給部210からの流体接続を開く。220がソレノイドバルブである場合には、この流体接続の開放は、例えば単にソレノイドを作動させることによって達成することができる。図2に示すように、回路中の流体の圧力は、降圧手段230によって調整することができる。降圧手段230は、所定の圧力閾値を超える流体を放出するように構成された逃がし弁又は同一の機能を与えるいずれかの機器とすることができる。
【0024】
1つの典型的な実施形態においては、圧力逃がし弁は200psi(単位平方インチあたりのポンド)に設定することができる。したがって、200psiより高い圧力で供給される油圧流体は容器240の中へと放出される。容器240は油圧流体のオーバーフロー用容器であり、この油圧流体は、再加圧されてシステム全体に還流されるので、次いで油圧回路において再使用することができる。よって、容器240は流体を供給部210に戻すことができる。
【0025】
バルブ230の下流の油圧流体は、この例においては約200psiの望ましい圧力に調整される。勿論、200psiが特定のリフト機の構成に実施される実施形態例に使用される値であり、限定するものではないことが理解されるべきである。異なるリフト機の構成に対しては、適切な圧力は実験的に又はモデリングを通じて決定することができる。
【0026】
典型的な実施形態は、シリンダーへの補充圧力として200psiを使用している。この値は値を決定するための実験によって得られたものであり、伸長された構成においてブームの重量を支持するが、シリンダー若しくはブームを特別なブーム伸長命令無しにさらに伸長することはしていない。理解されるように、摩擦はシステムの中で重要な役割を担っている。したがって、この典型的な実施形態においては、200psiはブーム区画間における摩擦を克服するには十分ではなく、よってブームを伸長することは無い。一方でこの圧力は、既に伸長された状態の構成においてブームを支持するには十分である。
【0027】
図2に図示される供給部210は、加圧された油圧流体源である。これは様々な動力源から得ることができる。供給部210は、クレーンのスイング、ハンドル、及び付属連結管のスイング用パーキングブレーキの開放機能からの油圧ラインとすることができる。また、供給部は、クレーンが風力計のオプションを設けられた場合にはこの風力計に動力を与えるように使用される動力源とすることもできる。しかし、これは動力源をそのようなオプションに限定するわけではなく、リフト機に既に存在する高圧の油圧流体の多くの他の動力源によって、又は油圧流体の容器に接続された図示されているポンプによって、作動することができる。リフト機が始動された場合に直ちに加圧される油圧流体の動力源を使用することは好都合である。このタイプの流体源は、操作者からのいずれの入力も無しに直ちに圧力を与え、よって、補償装置を作動することを忘れるといった操作者の間違いが生じる可能性を回避する。
【0028】
供給部210は、リフト機のエンジンが始動されるとすぐに、補償システムに必要とされるよりも高い別の油圧源からの圧力、例えば250psiで流体を供給することができる。これにより流体制御システム220は、エンジンが始動されると直ちに高圧の油圧流体の一定の源を入手する。エンジンが始動されると直ちにシステムが自動的に駆動されるが、このことは、リフト機を操作する際にまず最初に行うこととして通常なされることであるので、確かにこれは好都合である。
【0029】
仰角モニター200は、水平よりも上側の伸縮式ブームの仰角をモニターする。仰角モニター200は、アナログセンサー、デジタルセンサー、又はリフト機の制御用コンピュータの出力として実施することができる。特定の実施が制限されるわけではない。仰角モニター200は連続的にブームの仰角を検知し、所定の仰角閾値を越えた際に流体を回路の残りの部分に供給するように、流体制御部220に命令する。したがって、閾値角より低い仰角においては、流体制御部220は閉じられたままであり、回路の残りの部分に流体は供給されない。しかし、一旦閾値角を越えると、流体制御部220が開き、回路の残りの部分に流体を供給し、よって逆止弁260を通じて伸縮式ブームを駆動する油圧シリンダーに補充流体を供給する。ブームを駆動する油圧シリンダーが複数ある場合には、対応する複数のバルブ260をシリンダーのそれぞれに1つずつ設けることができる。
【0030】
非常に少量の圧力(15psi未満)が非常に低い仰角においては伸縮式ブームを伸長させるのに十分であるということが示されているので、仰角モニターがあまりにも早くバルブ220の開放を命令することは無いということが重要である。したがって、仰角モニター200は、所定の仰角にいたるまでは補償システムの残りの部分を通じた流れを許容するべきではない。特定のクレーン装置においては、35°の仰角において200psiの流体の補償用流れを供給することは、既に伸長している構成にあるブームを支持するが、伸縮式ブームをさらに伸長することはないということがわかっている。どのような特定のクレーンにおいてもこのバランスを達成するのに適切な測定された角度は、クレーンのブーム区画の重量、隣接する伸縮式ブーム区画間に作用している摩擦力、補償システムに対して入手可能な流体の圧力、及び望ましい操作圧力、そして個々のクレーンのモデルに影響を与える他の要因に依存する。モニター200によって検知される閾値角度は、クレーンのそれぞれのモデルに対して実験的に決定されるべきであり、ブームが支持されるが意図せずに伸長しないような所定の仰角において本発明の補償システムを駆動するように設定されるべきである。
【0031】
意図しないブームの収縮は、水平の上側60°を超えるブームの仰角において経験することが多い。したがって、補償装置が補充流体を供給し始める閾値角度は、殆ど全てのクレーンにおいて60°よりも低くなければならない。ブームの収縮の機会を最小とするためには、閾値角度は、(入手可能な圧力又は設定圧力における)補充流体がクレーン制御部からの特定のブーム伸長命令無しにブームを伸長させない、最も低い角度に設定するべきである。したがって、閾値角度は好ましい実施形態においては35°に設定された。
【0032】
一方向バルブ260は、再充填回路によって供給される流体が再充填/補償回路からブームシリンダーへと一方向にのみ流れることを保証している。次いで出力ポート270が流体を油圧シリンダー130へ供給する。図1に示すように、補償装置はブーム伸長制御部140と流体接続部を共有することができる。したがって、一方向バルブ260は、ブーム伸長制御部140がブームを伸長させ、よって本発明の操作から通常のブーム制御機能を分離する場合に、再充填回路を通じる油圧流体の逆流を防止している。さらに、図2に示すように、再充填回路は、関連するリフト機に対して必要に応じて、複数の一方向バルブと複数の出力ポートとを含むことができる。
【0033】
上述したように、出力ポート270は油圧シリンダー130に流体が流れるように接続され、接続部はブーム伸長制御部140と共有することができる。代替的に、出力ポート270は、油圧シリンダー130のピストン側の専用の出力ポートを介してシリンダーに接続することができる。
【0034】
また、図2に示す再充填回路は圧力センサースイッチ250を含んでいる。圧力センサースイッチ250は、通常は閉じられた圧力スイッチとして実施されており、所定の閾値を超える圧力を検知すると電気的接続を開ける。したがって、圧力センサースイッチ250は、所定の閾値を超える圧力を検知しない限り閉のままである(電気的接続を閉じた状態に保持する)。圧力センサースイッチ250の電気的出力は、操作者によって感知可能な音又は光の信号のような、感知可能な信号を出力する信号機器に接続することができる。したがって、リフト機の操作者は、圧力センサースイッチ250によって検知された圧力が閾値圧力より低いということを感知可能な信号によって認知する。通常は閉状態の圧力スイッチを使用することは、圧力モニターシステムの故障に対して非常に強いので、好都合である。換言すれば、圧力モニターシステムは、閾値を超える圧力を検知しない限り操作者に故障を示すことは無い。したがって、圧力センサースイッチ250が故障(例えば適正に圧力を検知できないなど)したとしても圧力センサーは依然として操作者に故障を示す。
【0035】
図3は、伸縮式ブームの伸長を制御する油圧シリンダー130の例を図示している。ピストン側310は、油圧流体を、ポートを通じて受け取り、油圧シリンダーの伸長及び収縮を制御する。また、ロッド側320は、油圧流体を受け取り、油圧シリンダーの収縮を制御している。図3には2つのポートしか図示されていないが、油圧シリンダーに追加的なポートを設けることができることが理解される。熱収縮を補償するための流体は通常、ピストン側310に供給されて、上述のように、ブームの伸長された状態を維持している。
【0036】
図4は、小型のアルミニウム製管路に格納された、本発明の補償装置の実施例の1つを示している。図4に示すように、管路格納部400は、単純な箱状形状であり、多くの開口部を含んでいる。流体制御部220はこれら開口部のうちの1つに接続されている。圧力降下手段230(圧力降下バルブとして実施されている)は、開口部のうちの別の1つに接続されるとともに、容器240に液体が流れるように接続されたポートを含んでいる。さらに、圧力センサースイッチ250は、開口部のうちのまた別の1つに接続され、管400の内側の圧力を検知するように構成されている。1つ以上の出力ポート270が管400の追加的な開口部を貫通して設けられている。また、管400は供給入口410を含み、この供給入口は流体が流れるように供給部210に接続される。さらにまた、管は供給戻り部420を含み、この供給戻り部は、供給入口410を通じて供給された流体を流出する。したがって、管400は、既に存在している油圧流体ラインに最小のインパクトしか与えることなく、この既に存在している油圧流体ラインに直列に好都合に接続することができる。さらに、管400は1つ以上の診断用ポートを含むことができ、この診断用ポートは管400の内側の圧力及び/又は温度をモニターすることができる。
【0037】
図2及び図4から理解できるように、補償装置は1つの機器又はキットとして実施することができ、既存のリフト機に後付けすることができる。さらに、図4に図示されている例の実施形態は、好都合に頑丈で小型、かつ効率的に製造することができる。勿論、この補償装置は図4に示された実施に多少なりとも限定されるわけではなく、手近な特定の用途、後付けされる関連するリフト機、又は製造及び/又は設置における簡便な機器に実施することができる。
【0038】
図5は、油圧を動力源とする伸縮式ブームにおける流体の収縮を補償するプロセスのステップを図示している。ステップS500において、ブームの仰角が検知される。ステップS510において、この仰角を所定の閾値と比較する。1つの実施例においては、閾値角は水平より上側に35°であった。仰角が所定の閾値角を超えていない場合には、プロセスはブームの仰角を検知するプロセスに戻る。このように仰角は連続的にモニターされる。仰角が閾値を超えている場合には、ステップS520において、流体が油圧シリンダーに供給される。流体が油圧シリンダーに供給された後に、ブームの仰角が再度検知され、連続的にモニターされる。したがって、ブームの仰角が閾値より下に減少すると、シリンダーへの流体の供給は中止される。
【0039】
図6は、ステップS520の更なる詳細を図示している。ステップS600において、制御信号が流体制御部220に送られ、典型的な実施形態においては制御バルブが駆動される。流体制御部220は、ステップS610において、供給部210から補償装置の残りの部分への流体の接続を開ける。さらに、ステップS620において、圧力が所定の圧力レベルへ制御される(また、圧力降下逃がし弁230のような圧力降下手段によって低下することができる)。典型的な実施形態においては、圧力レベルは200psiに設定することができ、よってステップS630において補償装置から出力された圧力を200psiに制限する。さらに、ステップS630において、流体の出力を制御することができ、よって流体は単一の流れ方向に流出され、(例えば260のような一方向バルブを使用することによって)流れ方向の逆行は防止される。
【0040】
さらに、図7は補償装置における圧力をモニターするプロセスを図示している。ステップS700において、流体圧力の低下が検知される。流体圧力の検知された低下に応答して、ステップS710において信号が生成される。さらにステップ720において、感知可能な通知が出力される。実施の形態によっては、検知された圧力が所定の閾値より上昇しない限り、又は検知された圧力が所定の閾値より上昇するまで、S710において通知信号を連続的に生成することが有利である場合がある。これは、例えば、圧力が閾値より上昇した場合に開く、通常は閉じた状態のスイッチを使用することによって達成することができる。
【0041】
前述の詳細な記載は、装置及び/又はプロセスの様々な実施形態を、ブロックダイアグラム、フローチャート、及び/又は例示を用いることによって説明してきた。このようなブロックダイアグラム、フローチャート、及び/又は例示が1つ以上の機能及び/又は操作を含む限りにおいては、このようなブロックダイアグラム、フローチャート、又は例示の機能及び/又は操作のそれぞれを、広範囲に亘る特定の実施態様によって、個別に及び/又は集合的に実施することができるということが当業者に理解できるだろう。したがって、例示の実施態様は限定的なものではなく、むしろ本発明者によって特定された問題を解決するための熟考された方法を示している。
【0042】
当業者は、ここに説明された方法で装置及び/又はプロセスを記載すること、さらに技術的手法を使用してこのような記載された装置及び又はプロセスを大型のシステムに一体化することが、当業において一般的であることを認識するだろう。すなわち、ここに記載された装置及び/又はプロセスの少なくとも一部分を、適当量の実験を介して所定の機械的システムに一体化することができる。
【0043】
この明細書におけるいずれの実質的に複数及び/又は単数の用語の使用に関しては、当業者は内容及び/又は用途に応じて複数から単数及び/又は単数から複数へ変換することができる。様々な単数/複数の置換を明瞭化のために明白にここに説明することができる。
【0044】
様々な観点及び実施形態がここに開示されてきたが、別の観点及び実施形態が当業者には明白であろう。ここに開示された様々な観点及び実施形態は、説明の目的のためであり、添付の特許請求の範囲によって示される発明の真の技術的範囲及び精神を何ら限定することを意図したものではない。
【符号の説明】
【0045】
110・・・伸縮式ブーム
120・・・ブーム区画
130・・・油圧シリンダー
140・・・ブームの伸長制御部
100・・・補償装置
200・・・仰角モニター
210・・・供給部
220・・・流体制御部
230・・・降圧手段
240・・・容器
250・・・圧力センサースィッチ
260・・・一方向バルブ
270・・・出力ポート
310・・・ピストン側
320・・・ロッド側
420・・・供給戻り部
430・・・診断用ポート
400・・・管路格納部
410・・・供給入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮式ブームの仰角を測定するモニターと、
油圧流体の供給部と、
前記モニターに応答して、前記仰角が所定の閾値角度を越えた際に、前記供給部から前記伸縮式ブームの伸びを制御する油圧機器へ油圧流体を供給する流体制御部と、
を備える、油圧を動力源とする伸縮式ブームにおける流体の収縮を補償するための装置。
【請求項2】
前記流体制御部が、前記ブームの前記仰角が前記閾値角度を越えた際に、前記モニターによって生成された信号に応答して油圧流体を前記油圧機器に供給するように構成された制御バルブを備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記モニターは、前記ブームの前記仰角が少なくとも水平から上方35°にある時を決定することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記油圧シリンダーに供給された流体の圧力をモニターする圧力センサーであって、該圧力センサーは最小圧力より低い前記流体の圧力の検知された低下に応答して信号を生成する圧力センサーと、
前記圧力センサーによって生成された信号に応答し、前記圧力が最小圧力より低い場合に操作者によって感知され得る信号を生成する信号生成機器と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記圧力センサーは、モニターされた前記圧力が前記最小値より低い場合に、電気回路を連続的に閉じる機器を備えることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
油圧流体の前記供給部は、ブーム伸縮命令に応答して通常は加圧された油圧流体を前記油圧機器へ供給する油圧回路であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
油圧流体の前記供給部は、通常は加圧された油圧流体を油圧機器へ供給する前記油圧回路から離隔した予備油圧回路であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記装置の出力ポートに接続され、流体が前記伸縮式ブームの伸長を制御する前記油圧機器から前記装置へ逆流するのを防止する一方向バルブをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記装置から前記伸縮式ブームの伸長を制御する前記油圧機器へ供給される流体の圧力を制御する逃がし弁をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
伸縮式ブームの仰角をモニターするステップと、
前記仰角が所定の閾値角度を越えた際に、前記伸縮式ブームの伸長を制御する油圧機器へ流体を供給するステップと、
を備える、油圧によって作動される伸縮式ブームにおける流体の収縮を補償する方法。
【請求項11】
前記仰角が水平から上方へ少なくとも35°である場合に、前記伸縮式ブームの伸長を制御する前記油圧機器へ流体を供給するステップを備えることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ブームの仰角が閾値角度を越えた際に信号を生成するステップと、
前記信号に応答して制御バルブを駆動して、油圧流体を前記油圧機器に供給するステップと、
をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
流体の接続を開放して、流体が前記油圧機器中に流れることを可能にするステップと、
前記油圧機器に供給される流体の圧力を制御するステップと、
をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記油圧機器に供給される流体の圧力をモニターするステップと、
前記流体の圧力が最小圧力を下回った際に、圧力信号を生成するステップと、
前記圧力信号に応答して、作業者によって感知され得る通知を生成するステップと、
をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記仰角が所定の閾値角度を越えた際に、流れの方向へ前記伸縮式ブームの伸長を制御する油圧機器へと流体を供給するステップと、
前記流体が前記流れの方向に対して逆流することを防止するステップと、
をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項16】
油圧を動力源とする、クレーンの伸縮式ブームにおける流体の収縮を補償するための補償装置であって、
前記クレーンは、伸長可能なブームと、前記ブームを伸長するための油圧機器とを含み、
前記補償装置は、
伸縮式ブームの仰角を測定するモニターと、
油圧流体の容器を含む、加圧された油圧流体の供給部と、
前記加圧された油圧流体の供給部に接続可能な入口と、
前記入口を通じる流体の流量を制御するとともに、前記伸縮式ブームの仰角を測定する前記モニターに応答する流体制御部と、
前記油圧機器に接続可能であり、前記入口と前記流体制御部とを通じて受け取られた加圧された油圧流体を前記油圧機器へ供給する出口と、
前記油圧流体の容器に接続可能であるとともに、前記油圧機器へ供給される流体の一部が前記容器に戻ることを可能にする戻り流路を確立する第2の接続部と、
を備える、
補償装置。
【請求項17】
前記流体制御部は、前記モニターに応答するとともに前記入口から前記クレーンの油圧機器への流体の流れを制御するバルブを備え、前記流体制御部は、前記仰角が所定の閾値角度を越えた際に、前記油圧機器への流体の流れを可能にすることを特徴とする請求項16に記載の補償装置。
【請求項18】
前記入口と前記油圧機器との間の油圧流体の圧力をモニターするとともに、前記圧力が最小圧力を下回った際に圧力信号を生成する圧力センサーと、
前記圧力センサーによって生成された前記信号に応答して、操作者によって感知可能な信号を生成する警告機器と、
をさらに備えることを特徴とする請求項16に記載の補償装置。
【請求項19】
前記入口と前記油圧機器との間に位置し、前記油圧機器からの流体の流れが前記入口へ戻らないように防止する一方向バルブをさらに備えることを特徴とする請求項16に記載の補償装置。
【請求項20】
前記第2の接続部に操作可能に接続され、前記第2の接続部と前記容器とへの、加圧された油圧流体の流れを選択的に可能にするバルブをさらに備えることを特徴とする請求項16に記載の補償装置。
【請求項21】
前記バルブは、前記油圧機器へ供給される前記加圧された油圧流体の圧力を制限するための圧力逃し弁であることを特徴とする請求項20に記載の補償装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−169265(P2010−169265A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−10029(P2010−10029)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(510019082)マニトウォック・クレーン・カンパニーズ・エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】