説明

液晶テレビジョン及び自励式インバータ回路

【課題】自励式インバータ回路において、発振開始時における電源供給の立ち上がりに起因する突入電流(サージ)の発生を抑制し、インバータトランスの唸り音を無くすことを可能とする。
【解決手段】供給された直流電圧に基づいて自励発振する自励発振回路26bと、入力されたPWM信号に基づいて自励発振回路26bに入力する直流電圧を制御する調光制御回路26aと、を備えて、供給された直流電圧をもとに自励発振して交流電圧を生成し、該交流電圧にて放電灯を点灯させる自励式インバータ回路26において、調光制御回路26aは、自励発振回路26bに入力される直流電圧を、自励発振回路26bが自励発振可能且つ放電灯が安定して点灯可能な電圧以上に維持する電圧維持回路26a1を備えさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自励式インバータ回路及びこの自励式インバータ回路を備えた液晶テレビジョンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自励式インバータ回路としては、例えば、図7に示す回路が知られている。図7のインバータ回路は、PWM制御部2の発生するPWM調光制御信号(以下、PWM信号と略す。)に基づいて、電源回路から供給される直流電圧を調光制御回路3がオンオフ制御し、この連続した矩形の電圧を入力された自励発振回路4が自励発振を行って高周波電圧を生成し、放電灯5を点灯させる。
【0003】
調光制御回路3は、トランジスタQ3、トランジスタQ4、抵抗R3,R4から構成されており、自励発振回路4への電圧供給ラインにトランジスタQ3挿入して電源供給ラインをスイッチング可能にしており、PWM信号でオン/オフされるトランジスタQ4がトランジスタQ3のオン/オフを切り換えている。
【0004】
即ち、PWM信号に基づいてトランジスタQ4がオン/オフされ、トランジスタQ4がオンするとトランジスタQ3のベースをグランドに引き込んでトランジスタQ3をオフし、トランジスタQ4がオフするとトランジスタQ3のベースをグランドから切断する。トランジスタQ3のベースには自己バイアスがかかっており、ベースがグランドから切断されると自動的にトランジスタQ3はオンする。
【0005】
このような自励式インバータ回路1では、図8のような出力特性を示す。即ち、PWM制御によりトランジスタQ3がオフからオンに切り替わると、自励発振回路4の発振が開始されるが、電源供給の立ち上がりに突入電流によるサージが発生し、インバータトランスやチョークコイルに生じる磁歪等による共振/共鳴により、唸り音が発生していた。
【0006】
ところで、放電灯を点灯させるインバータ回路において、調光開始時の始動性を向上させる技術としては、以下のものが知られている。
まず、引用文献1には、他励式インバータ回路において、デューティ比をコントロールにより、放電灯を点灯可能な電圧を出力させる期間と、放電灯の点灯を維持不可能な電圧を出力させる期間との比を変化させることにより、インバータ電圧をセロに落とさない技術について記載されている。
また、特許文献2には、インバータをソフトスタートさせるために、直流電源からインバータへの電源供給路において、インバータをソフトスタートさせるためのコンデンサについて各種記載されている。例えば、PNP型の調光用スイッチングトランジスタ(以下調光トランジスタと略す。)の後段への平滑コンデンサの挿入、調光トランジスタの自己バイアス抵抗と並列な位置への平滑コンデンサの挿入、PWM制御信号の入力ラインへの平滑コンデンサの挿入、等の記載がある。
【特許文献1】特開2004−247201号公報
【特許文献2】特開2005−174610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
引用文献1記載の技術は、デューティ比の制御が容易に行える他励式インバータ回路の技術であり、このようなデューティ比の制御を自励式インバータ回路で行うのは容易ではない。
元来、他励式インバータ回路で使用されるトランスは、リーゲージインダクタンスが大きく、起動直後の突入電流によるサージがリーゲージインダクタンスで吸収される。従って、他励式インバータ回路であれば、突入電流による発振乱れは基本的に発生することは無く、本願のようなトランス唸りは問題になりにくい。また、他励式インバータ回路であれば、発振を行うFETのゲートをコントロール可能であるため、引用文献1記載の図8等に記載のような所定電圧で発振する期間と該所定電圧に対して所定割合で発振する期間とを容易に形成できていた。
これに対し、自励式インバータ回路で使用されるトランスは、リーゲージインダクタンスも発振のパラメータの1つであるため、起動直後の動作を制御するパラメータを動かせず、突入電流によるサージを吸収しづらいという課題が存在する。また、自励式インバータ回路は他励式インバータ回路とは異なり、発振を行うFETのゲートをコントロールすることが非常に難しく、引用文献1のような発振を行おうとすると、複雑な回路構成を必要とする。
【0008】
また、引用文献2記載の技術では、電源の根元に平滑コンデンサを挿入している。しかしながら、この位置にコンデンサを挿入して突入電流を吸収しようとすると、相当大きな容量のコンデンサが必要となるが、抜けが悪い。結果としてPWMの周波数を数十Hzまで落とさなければならなくなる。フレームの周波数が60Hzくらいなので、この周波数と干渉を起す危険性が生じ、実用的な回路ではない。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、発振開始時における電源供給の立ち上がりに起因する突入電流(サージ)の発生を抑制し、インバータトランスの唸り音を無くすことが可能な自励式インバータ回路及び液晶テレビジョンの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の自励式インバータ回路は、供給された直流電圧に基づいて自励発振する自励発振回路と、入力されたPWM信号に基づいて上記自励発振回路に入力する直流電圧を制御する調光制御回路と、を備えて、供給された直流電圧をもとに自励発振して交流電圧を生成し、該交流電圧にて放電灯を点灯させる自励式インバータ回路において、上記調光制御回路は、上記自励発振回路に入力される直流電圧を、上記自励発振回路が自励発振可能且つ上記放電灯が安定して点灯可能な電圧以上に維持する電圧維持回路を備える構成としてある。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明の自励式インバータ回路を備えた液晶テレビジョンは、液晶パネルの背面から光を照射するバックライトと、該バックライトを点灯させるための電源電圧を供給するインバータ回路と、を備え、入力された映像信号に基づいて上記液晶パネルの画面に映像を表示する液晶テレビジョンにおいて、上記インバータ回路は、供給された直流電圧に基づいて自励発振を行う自励発振回路と、調光点灯用のPWM信号を発振出力するPWM制御部と、電圧維持回路及び平滑回路から構成された調光制御回路と、を備え、上記電圧維持回路は、上記自励発振回路へ供給される直流電圧ラインをスイッチング可能となるように、直流電圧ラインにコレクタ−エミッタを直列に接続しているNPN型の第一トランジスタと、該第一トランジスタのベースにツェナダイオードを介してコレクタが接続され、ベースに上記PWM制御部からPWM信号が入力されているNPN型の第二トランジスタと、上記自励発振回路に供給される直流電圧よりも高い電圧となる維持電圧を一端に入力されつつ他端が上記第一のトランジスタのベースに接続された抵抗と、を備え、上記ツェナダイオードは、ツェナ電圧が上記直流電圧の略半分以上の電圧とされ、上記トランジスタのベース電圧がツェナ電圧を超えると降伏して上記トランジスタのベース電圧をツェナ電圧に略等しく維持し、上記平滑回路は、一端が上記第一トランジスタのベースに接続されつつ他端が接地された電解コンデンサを備え、上記PWM制御部が上記PWM信号の周波数を500Hz以下で制御すると共に、上記抵抗と上記電解コンデンサとにより決定される時定数が0.5msec以上となるように抵抗値及びコンデンサ容量が決定され、上記PWM信号がLの時は上記第二トランジスタがオフし、上記抵抗を介して上記維持電圧が上記第一トランジスタのベースに印加され、上記第一トランジスタのコレクタ−エミッタ間が飽和状態となることにより、上記直流電圧が上記第一トランジスタのコレクタ−エミッタ間で電圧降下されて上記自励発振回路に入力され、上記PWM信号がHの時は、上記第二トランジスタがオンして上記第一トランジスタのベースに上記ツェナダイオードのツェナ電圧に略等しい電圧が印加され、該ツェナ電圧に上記第一トランジスタのベース−エミッタ間電圧を加えた電圧が上記自励発振回路に入力され、本液晶テレビジョンの電源が投入されている間は上記自励発振回路が上記バックライトの放電灯を点灯可能となる電圧以上での発振を継続すると共に、上記PWM信号がHからLに変化する時は上記第一トランジスタのベースに印加される電圧が上記時定数で立ち上がることにより上記自励発振回路の発振周波数を緩やかに上昇させる構成としてある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発振開始時における電源供給の立ち上がりに起因する突入電流(サージ)の発生を抑制し、インバータトランスの唸り音を無くすことが可能な自励式インバータ回路を提供することができる。
請求項3に係る発明によれば、自励発振回路が放電灯を確実に点灯可能な電圧を出力し続けることが可能となる。
請求項4に係る発明によれば、電圧供給の立ち上がりに発生しやすい突入電流をより確実に抑制可能となる。
請求項5に係る発明によれば、波形の鈍り過ぎを防止可能となる。
請求項6、7に係る発明によれば、簡易な回路構成で本発明を実現可能となる。
請求項1のような、より具体的な構成において、前述した請求項2〜請求項7の各発明と同様の作用を奏することはいうまでもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
(1)液晶テレビジョンの構成:
(2)インバータ回路の構成:
(3)変形例:
(4)まとめ:
【0014】
(1)液晶テレビジョンの構成:
図1の液晶テレビジョン100は、インバータ回路26で発生される高周波電圧によりバックライト24の放電灯を点灯させて、液晶パネル18の背面から照射する構成となっている。
【0015】
液晶テレビジョン100は、アンテナ10aを介してテレビ放送信号を受信するチューナ10と、テレビ放送信号に含まれる映像信号に各種処理を施す映像処理部12と、テレビ放送信号に含まれる音声信号に各種処理を施してスピーカ15に出力する音声処理部14と、映像信号に基づいて液晶パネル18を駆動する駆動回路16と、液晶テレビジョン100全体を制御するマイコン20と、リモコン30からのリモコン信号を受信して対応する電圧信号をマイコン20に出力するリモコン受信部22と、液晶パネル18の背面から光を照射するバックライト24と、バックライト24に電圧を供給して駆動するインバータ回路26と、商用電源などの交流電源から各種電圧を生成して液晶テレビジョン100の各部に電源電圧を供給する電源回路28と、を備える。
【0016】
より具体的には、チューナ10は、マイコン20の制御により、アンテナ10aを介してテレビジョン放送信号を受信し、所定の信号増幅処理等を行いつつテレビジョン放送信号から中間周波信号としての映像信号および音声信号を抽出し、映像信号を映像処理部12へ出力するとともに音声信号を音声処理部14に出力する。
【0017】
映像処理部12は、入力された映像信号をその信号レベルに応じてデジタル信号化するとともに、映像信号から抽出した輝度信号と色差信号とに基づいてマトリクス変換処理を行ない、画像データとしてのRGB(レッド、グリーン、ブルー)信号を生成する。そして、このRGB信号に対して液晶パネル18の画素数(横縦比、m:n)に合わせたスケーリング処理を行い、液晶パネル18に表示する1画面分の画像データを生成する。このように生成された画像データを駆動回路16に出力する。駆動回路は、入力された画像データに従って液晶パネル18の各表示セルを駆動して、画面に映像を表示する。
【0018】
インバータ回路26は、電源回路28から直流電圧を供給され、この電源回路から供給された直流電圧を基にして高周波かつ高圧の交流電圧を生成し、当該交流電圧をバックライト24に供給して点灯させる。バックライト24は、放電灯としての複数の蛍光管を有し、液晶パネル18を背面から照射する光源の役割を果たす。
【0019】
マイコン22は、液晶テレビジョン100を構成する各部と電気的に接続しており、マイコン22内部の構成部品としてのCPUが、同じくマイコン22内の構成部品であるROMやRAMなどに書き込まれた各プログラムに従って、液晶テレビジョン100全体を制御する。CPUやROMやRAMについては図示を省略している。例えば、マイコン22は、CPUの制御により、リモコン受信部22から電圧信号を入力して対応するキー操作を検知するとリモコン30からの操作入力を受け付け、受け付けた操作入力に対応した制御を行う。
【0020】
(2)インバータ回路の構成:
次に、図2〜図4を参照して本発明の実施形態に係るインバータ回路26について詳細に説明する。図2に示すように、インバータ回路26は、供給された直流電圧に基づいて自励発振を行う自励発振回路26b、PWM制御部40から入力されたPWM信号に基づいて自励発振回路26bに入力する直流電圧を制御することによりバックライト24の調光を行う調光制御回路26a、を備える。
【0021】
調光制御回路26aは電圧維持回路26a1を備える。この電圧維持回路26a1は、自励発振回路26bに入力される直流電圧を、自励発振回路26bが自励発振可能且つ、バックライト24の放電灯が安定して点灯可能な電圧以上に維持する。また、平滑回路26a2は、自励発振回路26bにおける自励発振の立ち上がり波形を所定の時定数で鈍らせる。
【0022】
調光制御回路26aには、インバータ回路26の電源電圧となるV及び、インバータ回路26の出力電圧を所定電圧以上に維持するための維持電圧Vsus、が電源回路28から供給されており、さらにPWM制御部40からPWM信号が入力されている。そして、調光制御回路26aは、後段の自励発振回路26bに対する出力電圧の値を、PWM信号に基づいて切り換えて出力する。維持電圧Vsusは、PWM制御の結果として自励発振回路に供給される電圧が落ち込む時に、自励発振回路への電圧供給を維持させるための電圧である。
【0023】
以下、図3を参照して、各回路の詳細について説明する。
自励発振回路26bには、電源回路28から入力される直流電圧Vが調光制御回路26aを介して入力されており、この直流電圧Vが定電流用のコイルLを介して発振トランスTRの一次巻線のセンタータップに入力されている。発振トランスTRの一次巻線の両端は、トランジスタQ1,Q2のコレクタ−エミッタを介して接地されている。発振トランスTRの一次巻線の両端には共振用のコンデンサC1が並列接続されている。トランジスタQ1,Q2のベースには、抵抗R1,R2を介して直流バイアスが印加されている。また、この直流バイアスに重畳して発振トランスTRの帰還巻線から自励発振用の帰還バイアスが印加されている。発振トランスTRの2次巻線の両端は、放電灯の各端子に接続されている。
【0024】
電圧維持回路26a1は、NPN型のトランジスタQ3(第一トランジスタ),Q4(第二トランジスタ)と、ツェナダイオードDと、抵抗R5と、を備えている。トランジスタQ3は、自励発振回路26bへ供給される直流電圧ラインをスイッチング可能となるように、直流電圧ラインにコレクタ−エミッタを直列に接続している。このトランジスタQ3のベースにはツェナダイオードDを介してトランジスタQ4のコレクタが接続されている。トランジスタQ4はPWM制御部40の発振するPWM信号に基づいてスイッチングされる。またトランジスタQ4のエミッタは接地されている。
【0025】
ツェナダイオードDは、トランジスタQ3のベースに印加される最大電圧を規定するものであり、トランジスタQ3のベース電圧がツェナ電圧を超えると降伏するため、トランジスタQ3のベース電圧をツェナ電圧V以上に維持する。また、自励発振回路26bが自励発振を停止させず、且つ、放電灯を点灯させ続けるために必要とされる電圧は、直流電圧Vの略半分以上である。従って、このツェナ電圧Vを、直流電圧V/2以上の電圧とする。即ち、電圧維持回路26a1は、最低でも入力された維持電圧VsusからツェナダイオードDにより規定されるツェナ電圧をトランジスタQ3のベースに印加し続けることにより、トランジスタQ3を介して自励発振回路にV/2以上の電圧を供給しうることになる。
【0026】
PWM制御部40は、直流電源を電源として動作し、調光点灯用の低周波のPWM信号を発振出力する矩形波発振器であり、PWM信号によりトランジスタQ4をオン/オフすることで、ツェナダイオードDを介してトランジスタQ3をオン/オフ制御する。このPWM制御部40は、例えばマイコン20が構成する。
【0027】
即ち、電圧維持回路26a1は、自励発振回路26bに入力する直流電圧を、供給された直流電圧Vに基づいて上記自励発振回路に入力可能な最大電圧の約半分以上に維持することになる。より具体的には、電圧維持回路26a1が、供給された直流電圧Vに基づいて自励発振回路26bに入力可能な最大電圧と、この最大電圧の約半分の電圧と、を交互に自励発振回路26bに入力する。
【0028】
以上の構成により、図4を参照して、電圧維持回路26a1の動作を説明する。
PWM信号がLの時は、トランジスタQ4はオフしており、トランジスタQ3のベースには維持電圧Vsusが抵抗R5を介して印加される。すると、トランジスタQ3のコレクタ−エミッタ間を飽和状態として直流電圧Vがコレクタ−エミッタ間で電圧降下されて自励発振回路26bに入力される。即ち、A点の電圧は、V−VCE、となる。
一方、PWM信号がHの時は、トランジスタQ4はオンしており、トランジスタQ3のベースをグランドに引き込む。この時、トランジスタQ3のベースとグランドの間にはツェナダイオードDが介在し、且つ、トランジスタQ3のベースには維持電圧Vsusが抵抗R5を介して入力されているため、トランジスタQ3のベース電圧はツェナダイオードDのツェナ電圧Vに略等しい電圧となる。従って、A点の電圧は、トランジスタQ3のベース−エミッタ間電圧VBEにVを加えた、VBE+V(≒V/2)、となり、自励発振回路26bはPWM信号がLのときの約半分の振幅で発振することになる。
【0029】
即ち、液晶テレビジョン100の電源が投入されている間は、自励発振回路26bはバックライト24の放電灯を点灯可能な電圧以上で発振を継続するため、自励発振回路26bに入力される直流電圧が0に落ちることが無くなり、発振開始時における電源供給の立ち上がりに起因する突入電流(サージ)の発生が抑制され、インバータトランスの唸り音を無くすことができる。
【0030】
(3)変形例:
上述した、インバータ回路26は、図5のように変形することも可能である。図5において、調光制御回路26aでは、電圧維持回路26a1に対して平滑回路26a2を接続し、PWM信号の立ち上がり波形を鈍らせる構成となっている。より具体的には、平滑回路26a2は、所定の容量を有する電解コンデンサC3で構成されており、一端がトランジスタQ3のベースに接続されつつ他端が接地されている。
【0031】
ここで、抵抗R5の抵抗値と電解コンデンサC3の容量とにより決定される時定数をτ、PWM制御部40の出力するPWM信号の周波数をf、とすると、電解コンデンサC3の容量は時定数τがPWM信号の周期1/fの1/4以下、τ<1/4f、となるように決定される。より具体的には、PWM信号の立ち上がり波形に0.5msec以上の鈍りを確保するために、電解コンデンサC3の容量を0.47〜1μFとするとともに、f≦500Hzとし、PWM信号の一周期が2msec以上確保されるようにする。このようにPWM信号の周期の1/4以下の時定数とするのは、PWM信号の一周期が2msec以下になると、PWM信号が鈍りすぎてしまうためである。
【0032】
この平滑回路26a2によりインバータ回路26の動作を図6のタイミングチャートに示した。
同図において、PWM信号がHからLに変化すると、トランジスタQ3のベースに印加される電圧が、Vから維持電圧Vsus(より正確にはVsusからR5の電圧降下分を除いた電圧)まで、時定数τで立ち上がるようになる。すると、自励発振回路26bに入力される電圧も、V+VBEからV−VCE(sat)まで、時定数τで立ち上がることになる。即ち、自励発振回路26bに入力される直流電圧が時定数τで傾きを持って連続的に上昇し、自励発振回路26bの発振周波数を緩やかに上昇させることになる。従って、調光時の突入電流がより発生し難くなり、トランス唸りをより完全に無くすことができる。
【0033】
(4)まとめ:
つまり、供給された直流電圧に基づいて自励発振する自励発振回路26bと、入力されたPWM信号に基づいて自励発振回路26bに入力する直流電圧を制御する調光制御回路26aと、を備えて、供給された直流電圧をもとに自励発振して交流電圧を生成し、該交流電圧にて放電灯を点灯させる自励式インバータ回路26において、調光制御回路26aは、自励発振回路26bに入力される直流電圧を、自励発振回路26bが自励発振可能且つ放電灯が安定して点灯可能な電圧以上に維持する電圧維持回路26a1を備えさせる。これにより、自励式インバータ回路において、発振開始時における電源供給の立ち上がりに起因する突入電流(サージ)の発生を抑制し、インバータトランスの唸り音を無くすことを可能とする。
【0034】
なお、本発明は上記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・上記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって上記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が上記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
は本発明の一実施例として開示されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】液晶テレビジョンの概略構成ブロック図である。
【図2】インバータ回路の構成を示すブロック図である。
【図3】インバータ回路の回路図である。
【図4】インバータ回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】インバータ回路の変形例にかかる回路図である。
【図6】インバータ回路の変形例の動作を示すタイミングチャートである。
【図7】従来のインバータ回路の回路図である。
【図8】従来のインバータ回路の動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0036】
10…チューナ、10a…アンテナ、12…映像処理部、14…音声処理部、15…スピーカ、16…駆動回路、18…液晶パネル、20…マイコン、22…リモコン受信部、24…バックライト、26…インバータ回路、26a…調光制御回路、26b…自励発振回路、26a1…電圧維持回路、26a2…平滑回路、28…電源回路、30…リモコン、40…PWM制御部、100…液晶テレビジョン、C1…コンデンサ、C3…電解コンデンサ、Dz…ツェナダイオード、L…コイル、Q1…トランジスタ、Q2…トランジスタ、Q3…トランジスタ、Q4…トランジスタ、R1〜R5…抵抗、TR…発振トランス、1…自励式インバータ回路、2…PWM制御部、3…調光制御回路、4…自励発振回路、5…放電灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶パネルの背面から光を照射するバックライトと、該バックライトを点灯させるための電源電圧を供給するインバータ回路と、を備え、入力された映像信号に基づいて上記液晶パネルの画面に映像を表示する液晶テレビジョンにおいて、
上記インバータ回路は、供給された直流電圧に基づいて自励発振を行う自励発振回路と、直流電源を電源として動作し、調光点灯用のPWM信号を発振出力するPWM制御部と、電圧維持回路及び平滑回路から構成された調光制御回路と、を備え、
上記電圧維持回路は、上記自励発振回路へ供給される直流電圧ラインをスイッチング可能となるように、直流電圧ラインにコレクタ−エミッタを直列に接続しているNPN型の第一トランジスタと、該第一トランジスタのベースにツェナダイオードを介してコレクタが接続され、ベースに上記PWM制御部からPWM信号が入力されているNPN型の第二トランジスタと、上記自励発振回路に供給される直流電圧よりも高い電圧となる維持電圧を一端に入力されつつ他端が上記第一トランジスタのベースに接続された抵抗と、を備え、
上記ツェナダイオードは、ツェナ電圧が上記直流電圧の略半分以上の電圧とされ、上記第一トランジスタのベース電圧がツェナ電圧を超えると降伏して上記第一トランジスタのベース電圧をツェナ電圧に略等しく維持し、
上記平滑回路は、一端が上記第一トランジスタのベースに接続されつつ他端が接地された電解コンデンサを備え、
上記PWM信号の周波数が500Hz以下となるように制御されると共に、上記抵抗と上記電解コンデンサとにより決定される時定数が0.5msec以上となるように抵抗値及びコンデンサ容量が決定され、
上記PWM信号がLの時は上記第二トランジスタがオフし、上記抵抗を介して上記維持電圧が上記第一トランジスタのベースに印加され、上記第一トランジスタのコレクタ−エミッタ間が飽和状態となることにより、上記直流電圧が上記第一トランジスタのコレクタ−エミッタ間で電圧降下されて上記自励発振回路に入力され、
上記PWM信号がHの時は、上記第二トランジスタがオンして上記第一トランジスタのベースに上記ツェナダイオードのツェナ電圧に略等しい電圧が印加され、該ツェナ電圧に上記第一トランジスタのベース−エミッタ間電圧を加えた電圧が上記自励発振回路に入力され、
本液晶テレビジョンの電源が投入されている間は上記自励発振回路が上記バックライトの放電灯を点灯可能となる電圧以上での発振を継続すると共に、上記PWM信号がHからLに変化する時は上記第一トランジスタのベースに印加される電圧が上記時定数で立ち上がることにより上記自励発振回路の発振周波数を緩やかに上昇させることを特徴とする液晶テレビジョン。
【請求項2】
供給された直流電圧に基づいて自励発振する自励発振回路と、入力されたPWM信号に基づいて上記自励発振回路に入力する直流電圧を制御する調光制御回路と、を備えて、供給された直流電圧をもとに自励発振して交流電圧を生成し、該交流電圧にて放電灯を点灯させる自励式インバータ回路において、
上記調光制御回路は、上記自励発振回路に入力される直流電圧を、上記自励発振回路が自励発振可能且つ上記放電灯が安定して点灯可能な電圧以上に維持する電圧維持回路を備えることを特徴とする自励式インバータ回路。
【請求項3】
上記電圧維持回路は、上記自励発振回路に入力する直流電圧を、上記供給された直流電圧に基づいて上記自励発振回路に入力可能な最大電圧の約半分以上に維持する請求項2の自励式インバータ回路。
【請求項4】
上記調光制御回路が、上記自励発振の立ち上がり波形を所定の時定数で鈍らせる平滑回路を備えた請求項2又は請求項3の自励式インバータ回路。
【請求項5】
上記時定数が、上記PWM信号の周期の1/4以下である請求項4の自励式インバータ回路。
【請求項6】
上記電圧維持回路が、上記自励発振回路に対する上記直流電圧の入力をスイッチングするNPN型の第一トランジスタと、上記PWM信号に基づいてスイッチングされて上記第一トランジスタのベース電圧を上下させる第二トランジスタと、該第二トランジスタと上記第一トランジスタのベースとの間に所定のツェナ電圧を発生させるツェナダイオードと、を備え、上記直流電圧よりも高い維持電圧が上記第一トランジスタのベースに入力されており、上記第一トランジスタが完全にオフすることを防止する請求項2〜請求項5の何れか一項に記載の自励式インバータ回路。
【請求項7】
上記平滑回路が、一端が上記第一トランジスタのベースに接続されつつ他端が接地されたコンデンサである請求項6に記載の自励式インバータ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−218291(P2008−218291A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56416(P2007−56416)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】