説明

液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成用材料及び該保護膜

【課題】水又は水に対する液浸媒体に対して高い撥水性及び耐水性を有し、剥離剤によって容易に剥離し、かつフォトレジスト層とのミキシングを起こさない保護膜を形成するための液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成用材料を提供する。
【解決手段】水又は水を主成分とする液浸媒体からフォトレジスト層を保護する非水溶性でかつ有機溶剤可溶性の保護膜を形成するための保護膜形成用材料であって、少なくとも下記一般式(1)


(式中、Xは少なくとも炭素数3〜15の脂環骨格を有する基を示す)
で表される構成単位を有する樹脂を含むことを特徴とする液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成用材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子などの製造工程で微細化のために使用される液浸リソグラフィーにおいて、レジスト層を保護する保護膜を形成するために使用される液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成用材料及び該保護膜に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造のために用いられるリソグラフィーにおいては、集積度の増大に伴い、より微細なパターンの形成が求められている。パターンの微細化には露光光源の短波長化が不可欠であるが、現在ではフッ化クリプトン(KrF)エキシマレーザー光(波長248nm)によるリソグラフィーが主流になりつつあり、フッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザー光(波長193nm)による線幅100nm以下のリソグラフィーも実用化されている。更には、フッ素ダイマー(F2)エキシマレーザー光(波長157nm)、極紫外線(EUV)、X線、電子線等を用いたリソグラフィー技術が開発段階にある。
【0003】
また、最近になって、ArFエキシマレーザーによる露光技術を延命する手段として、液浸リソグラフィーが提案されている。これは、露光時にウェハー上に形成されたフォトレジスト膜と露光装置のレンズとの間に水又は水を主成分とする液浸媒体を含浸させるプロセスであるが、この場合、フォトレジスト膜が液浸媒体と接触することから、フォトレジスト層中の光酸発生剤等の成分が液浸媒体に溶出し、又は、液浸媒体がフォトレジスト層中に吸収されてしまうことで、感度の低下や解像性の変動をまねくという問題があった。また、含浸させた液浸流体がレジスト層上に残留してしまうことでドライ露光にはみられない液浸リソグラフィー特有のパターン欠陥が生じる問題があった。
【0004】
上記液浸リソグラフィーに関するこれらの問題を解決するために、フォトレジスト膜を液浸媒体から保護する目的で、フォトレジスト膜上層に保護膜を形成する方法が提案されている(非特許文献1)。
この保護膜は、使用する露光波長に対して十分な透明性を確保し、フォトレジスト層とインターミキシングをおこすことなく安定に保護膜を形成することができ、たとえば水又は水を主成分とする液浸媒体に対して十分な耐性を有し、かつ、該液浸媒体に対して高い撥水性を有し、また、剥離剤又は現像液によって容易に剥離できることが要求される(特許文献1)。
【特許文献1】国際公開2004/074937号パンフレット
【非特許文献1】日経マイクロデバイス04年4月号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情を克服するためになされたものであって、水又は水に対する液浸媒体に対して高い撥水性及び耐水性を有し、剥離剤によって容易に剥離し、かつフォトレジスト層とのミキシングを起こさない保護膜を形成するための液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成用材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討した結果、下記一般式(1)で示される構成単位を有する樹脂を含む保護膜形成材料を使用したレジスト保護膜が水又は水を主成分とする液浸媒体に対する耐性を有し剥離剤によって容易に剥離し、かつフォトレジスト層とのミキシングを起こさないことを知見し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、水又は水を主成分とする液浸媒体からフォトレジスト層を保護する非水溶性でかつ有機溶剤可溶性の保護膜を形成するための保護膜形成用材料であって、少なくとも下記一般式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Xは少なくとも炭素数3〜15の脂環骨格を有する基を示す)
で表される構成単位を有する樹脂を含むことを特徴とする液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成用材料を提供するものである。
【0010】
また本発明は、上記液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成用材料を、フォトレジスト膜として塗布し乾燥することによって形成された液浸リソグラフィー用レジスト保護膜を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成用材料によって形成したレジスト上層膜は、レジスト層が水又は水を主成分とする液浸媒体に犯されることを防ぎ、かつ剥離剤によって容易に剥離できる。従って、今後更に微細化が進行されていくと予想される半導体デバイスの製造に極めて好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成用材料は、特に、ウェハー上に形成されたフォトレジスト上層に保護膜を形成し、水又は水を主成分とする液浸媒体に含浸させ露光を行う液浸プロセスにおいて、上記フォトレジスト上層保護膜を形成するための保護膜形成用材料であって、少なくとも下記一般式(1)で示される構成単位を有する樹脂を含むものである。
【0013】
【化2】

(式中、Xは少なくとも炭素数3〜15の脂環骨格を有する基を示す)
【0014】
一般式(1)中、Xで示される脂環骨格を有する基における脂環としては、単環式脂環、総合多環式脂環、架橋多環式脂環が挙げられる。ここで単環式脂環としては炭素数3〜15のシクロアルカン、例えばシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等が挙げられる。縮合多環式脂環としては、炭素数9〜14の縮合多環式脂環、例えば、オクタヒドロインデン、デカリン等が挙げられる。架橋多環式脂環としては、炭素数7〜15の架橋多環式脂環、例えばノルボルナン、ボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン、ペンタシクロペンタデカン、アダマンタン等が挙げられる。
【0015】
これらの脂環は、置換基を有していてもよく、当該置換基としては、炭化水素基、フッ素、全部又は一部がフッ素に置換されたアルキル基、ヒドロキシル基、アセタール保護されたヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、ニトリル基、が挙げられる。
【0016】
また、前記脂環骨格と一般式(1)中の酸素原子との間の結合は単結合であってもよいし、アルキレン基、アルキレンオキシ基、エーテル結合を介したアルキレン基であってもよい。当該アルキレン基としては、炭素数1〜4、特にメチレン基が好ましい。エーテル結合を介したアルキレン基としては、C2−C4アルキレンオキシ基、C2−C4アルキレンオキシ−C2−C4アルキル基等が好ましい。
【0017】
一般式(1)で表される構成単位としては、下記一般式(1a)
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、Yはアルキレン基、アルキレンオキシ基又はアルキレンオキシアルキル基を示し、Zは置換基を有していてもよい炭素数3〜15の単環式、縮合多環式又は架橋多環式の脂環基を示す)
で表される構成単位が好ましい。
【0020】
一般式(1a)中、Yで示されるアルキレン基としては、炭素数1〜6の直鎖状アルキレン基が好ましく、特にメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基が好ましい。アルキレンオキシ基としては、C2−C4アルキレンオキシ基が好ましく、特にエチレンオキシ基、トリメチレンオキシ基が好ましい。アルキレンオキシアルキル基としては、C2−C4アルキレンオキシ−C2−C4アルキル基が好ましく、エチレンオキシエチル基、エチレンオキシプロピル基、プロピレンオキシエチル基、プロピレンオキシプロピル基等が挙げられる。
【0021】
Zで示される脂環基としては、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ペンタシクロペンタデカニル基、アダマンチル基等が挙げられる。これらの脂環基には、炭化水素基、フッ素、全部又は一部がフッ素に置換されたアルキル基、ヒドロキシル基、アセタール保護されたヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、ニトリル基等が置換していてもよい。
【0022】
一般式(1)で表される構造単位のうち、更に下記式で表される構造単位が特に好ましい。
【0023】
【化4】

【0024】
上記一般式(1)で示される構成単位を含む樹脂は、それに対応するビニルエーテル単量体を単独に重合させた単独重合体、あるいは2種以上の構成単位を含む共重合体でもよい。
【0025】
上記ビニルエーテル単量体は、下記一般式(I)で示される。
【0026】
【化5】

【0027】
(式中、Xは前記と同じ)
【0028】
また、上記一般式(I)の好ましい例としては、次式(Ia)で表されるビニルエーテル単量体が挙げられる。
【0029】
【化6】

【0030】
(式中、Y及びZは前記と同じ)
【0031】
更に好ましいビニルエーテル単量体としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【0032】
【化7】

【0033】
また、本発明の液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成用材料に使用される樹脂は、塗膜性、耐熱性、液浸媒体に対する耐性、後述する有機溶媒に対する溶解性などの液浸リソグラフィーに使用する保護膜としての性能を調節するために、上記一般式(1)以外の構成単位を含む共重合体であってもよい。
【0034】
上記一般式(1)以外の構成単位としては、重合性不飽和二重結合を有する単量体から得られる構成単位であれば特に限定されないが、たとえば、アルケニルエーテル誘導体(単量体1)、(メタ)アクリル酸誘導体(単量体2)、環状オレフィン誘導体(単量体3)、ジカルボン酸誘導体(単量体4)、マレイミド誘導体(単量体5)、スチレン誘導体(単量体6)などの単量体と共重合することによって得られる構成単位が挙げられる。
【0035】
単量体1の具体例としては、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジヒドロフラン、ジヒドロピラン、2,2,2−トリフルオロエチルビニルエーテル、エチルトリフルオロビニルエーテル等が挙げられる。単量体2の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、γ−ブチロラクトン(メタ)アクリレート、ノルボルナラクトン(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、メチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアダマンチルメタクリレート、トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、等が挙げられる。単量体3の具体例としては、ノルボルネン、シクロヘキセン、テトラシクロドデセン等が挙げられる。単量体4の具体例としては、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチル等が挙げられる。単量体5の具体例としては、マレイミド、N−ヒドロキシマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−アダマンチルマレイミド等が挙げられる。
単量体6の具体例としては、スチレン、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、アセトキシスチレン、t−ブトキシスチレン、t−ブトキシカルボニロキシスチレン、トリメチルシリルオキシスチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。
【0036】
本発明に用いられる樹脂の前記構成単位の組成は、液浸リソグラフィーに使用する保護膜としての性能を損なわない範囲で選択することができる。例えば前記構成単位(一般式(1))は、通常40〜100モル%、好ましくは50〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%である。また、単量体1〜単量体6は、通常0〜60モル%、好ましくは0〜50モル%、より、好ましくは0〜20モル%である。
【0037】
本発明の液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成用材料に使用する樹脂は、重量平均分子量が3,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000であることが望ましい。重量平均分子量が小さすぎるとレジスト膜とのミキシングが生じやすく、また、水などの液浸媒体に対する耐性が落ちる。また、重量平均分子量が大きすぎると、後述する有機溶剤に対する溶解性が落ち、成膜性に問題が生じる。また、上記樹脂の多分散度(Mw/Mn)は通常1〜5である。
【0038】
これらの樹脂は、使用する単量体に応じてカチオン重合、ラジカル重合、アニオン重合などの公知の重合法によって合成することができるが、一般式(1)で示される構成単位に対応するビニルエーテル誘導体を単独もしくは2種以上を共重合せしめる場合、又はこれらの単量体(1)とその他のビニルエーテル誘導体とを共重合せしめる場合においては、とくにカチオン重合が好ましい。
【0039】
カチオン重合にあたっては公知の技術を好適に使用することができる。例えばBF3・Et2O、TiCl4、SnCl4、塩化亜鉛/塩化水素、ヨウ素/ヨウ化水素、有機アルミニウム化合物/エーテルもしくはエステル類、等の開始剤が好適に使用でき、必要に応じてリビング重合により分子量分布の狭い重合体を製造することも可能である。
【0040】
本発明の液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成用材料は、前記樹脂が有機溶剤に溶解している形態とするのが好ましい。
【0041】
本発明の液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成用材料の主成分である一般式(1)で表される構成単位を有する樹脂は、単独、又は2種以上含ませてもよく、また、それらの樹脂の固形分濃度は、フォトレジスト層上に塗膜できる濃度であればよく、具体的には0.1〜40重量%、好ましくは1〜30重量%である。
【0042】
また該保護膜形成用材料を構成する有機溶剤は、上記樹脂を容易に溶解させ、かつ、フォトレジスト膜上に塗膜乾燥する際にレジストを溶解させることなく、リソグラフィーの性能を劣化させることがないものが使用可能である。このような有機溶剤としては、炭素数5〜20の鎖状又は環状の炭化水素、又は部分的にフッ素化された炭素数5〜20の鎖状又は環状の炭化水素が好適に使用される。
【0043】
上記炭化水素又はフッ化炭化水素の具体例としては、たとえば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、2−メチル―ブタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、デカリン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン等が挙げられ、これらは単独、又は2種以上の混合溶媒として使用できる。
【0044】
また、塗布性を調整するために上記溶媒以外の有機溶剤を含ませることができる。上記溶媒以外の有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。これらの配合割合は溶媒成分中の30重量%以下が好ましく、より好ましくは10重量%以下である。30重量%を越えると、フォトレジスト上層に該保護膜形成用材料を塗布する際に、フォトレジスト層を溶解させる等の不具合を生じ、パターン形状を劣化させてしまう。
【0045】
更に、本発明の保護膜形成用材料には、塗膜性の向上などの目的で界面活性剤などの添加剤を適宜、含有させることができる。当該添加剤としては、例えば、BM-1000(BMケミー社製)、サーフロンS-112、同S-141(以上、旭硝子(株)社製)等が挙げられる。
【0046】
また、本発明の保護膜形成用材料は、金属等の不純物が少ないほど好ましく、これにより半導体素子製造における歩留まりを改善させることができる。従って、金属等の不純物は、100ppm以下、特に10ppm以下が好ましい。
【0047】
本発明の保護膜は、フォトレジスト上層に上記保護膜形成用材料を塗布乾燥することによって得ることができる。塗布する方法は、生産性の観点からウェハーを回転させて塗布乾燥させるスピンコート法が好ましい。また、該保護膜の膜厚は、半導体素子製造に好適な膜厚であれば特に限定されないが、好ましくは1〜500nm、より好ましくは10〜200nmである。膜厚が1nm以下であると、水などの液浸媒体からレジストを保護しきれず、レジスト層中の光酸発生剤などが溶出してしまい、パターン形状が劣化する。また、保護膜の透過率の観点から、膜厚が500nm以上であると感度が大幅に低下し、生産性が落ちる。
【0048】
該保護膜を形成させるための乾燥温度は特に限定されないが、例えば70℃〜150℃、好ましくは80℃〜140℃の温度条件で、20〜120秒間、好ましくは20〜90秒間施すことによって形成される。
【0049】
本発明の保護膜は、有機溶剤によって容易に剥離することができる。使用できる有機溶剤は、フォトレジスト膜を溶解させない溶媒であれば特に限定されないが、炭素数5〜20の鎖状又は環状の炭化水素、又は部分的にフッ素化された炭素数5〜20の鎖状又は環状の炭化水素が好適に使用される。
上記炭化水素又はフッ化炭化水素の具体例としては、たとえば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、2−メチル―ブタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、デカリン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン等が挙げられ、これらは単独、又は2種以上の混合溶媒として使用できる。保護膜は、具体的には、浸漬処理等によって剥離することができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。
【0051】
[合成例1]トリシクロデカニルビニルエーテル重合体の合成
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下で加熱することにより、ガラス容器内の吸着水を除去した。系を室温に戻した後、トリシクロデカニルビニルエーテル112.18mmol及びトルエン204mLを加え、系中の温度が−30℃に達したところでBF3・Et2O錯体(0.45mmol)のトルエン溶液を添加して重合を開始した。5分重合を継続した時点で2.5Mナトリウムメトキシド/メタノール溶液を加えることにより重合反応の停止を行った。反応を終えた混合溶液中にトルエンを加え希釈し、アセトン溶液中で再沈殿したものを濾過し、減圧乾燥させて目的物であるトリシクロデカニルビニルエーテル重合体19.52g(Mw=195,000、Mw/Mn=3.5)を得た。この重合体を樹脂Aとする。
【0052】
[合成例2]テトラシクロドデカニルビニルエーテル重合体の合成
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下で加熱することにより、ガラス容器内の吸着水を除去した。系を室温に戻した後、テトラシクロドデカニルビニルエーテル37.72mmol及びトルエン142.5mLを加え、系中の温度が−62℃に達したところでBF3・Et2O錯体(0.22mmol)のトルエン溶液を添加して重合を開始した。10分重合を継続した時点で2.5mol/Lナトリウムメトキシド/メタノール溶液を加えることにより重合反応の停止を行った。反応を終えた混合溶液中にトルエンを加え希釈し、アセトン溶液中で再沈殿したものを濾過し、減圧乾燥させて目的物であるテトラシクロドデセニルビニルエーテル重合体7.61g(Mw=323,000、Mw/Mn=2.0)を得た。
この重合体を樹脂Bとする。
【0053】
[合成例3]トリシクロデカニルビニルエーテル/n−ブチルビニルエーテル共重合体の合成
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下で加熱することにより、ガラス容器内の吸着水を除去した。系を室温に戻した後、トリシクロデカニルビニルエーテル39.99mmol、n−ブチルビニルエーテル9.98mmol、及びトルエン47.5mLを加え、系中の温度が−30℃に達したところで予め冷却しておいたBF3・Et2Oトルエン溶液(1.75mmol)を添加して重合を開始した。3分後、系中に0.3wt%のアンモニア/メタノール溶液を加える事により重合反応の停止を行った。混合溶液中にトルエンを加え希釈し、10wt%食塩水溶液で3回洗浄した後、有機溶媒層をメタノールに滴下して共重合体を白色固体として再沈殿させた。白色固体を濾別し、メタノールで洗浄後、減圧乾燥させて目的物であるトリシクロデカンビニルエーテル/n−ブチルビニルエーテル共重合体7.96g(Mw=136,000、Mw/Mn=2.9)を得た。この重合体を樹脂Cとする。
この重合体を樹脂Cとする。
【0054】
[合成例4]1−アダマンチルビニルエーテル/i-ブチルビニルエーテル共重合体の合成
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下で加熱することにより、ガラス容器内の吸着水を除去した。系を室温に戻した後、トルエン32mL、1−アダマンチルビニルエーテル18.86mmol、i−ブチルビニルエーテル12.48mmol、ブトキシエチルアセテート70μmol及び酢酸エチル1.8mL加え、系中の温度が0℃に達したところで予め冷却しておいたEt1.5AlCl1.5トルエン溶液(0.35mmol)を添加して重合を開始した。5分後、系中に0.3wt%のアンモニア/メタノール溶液を加える事により重合反応の停止を行った。混合溶液中にトルエンを加え希釈し、10wt%食塩水溶液で3回洗浄した後、有機溶媒層をメタノールに滴下して共重合体を白色固体として再沈殿させた。白色固体を濾別し、メタノールで洗浄後、減圧乾燥させて目的物である1−アダマンチルビニルエーテル/i−ブチルビニルエーテル共重合体4.67g(Mw=52,000、Mw/Mn=1.3)を得た。
この重合体を樹脂Dとする。
【0055】
[合成例5]1−アダマンチルビニルエーテル/オクタデシルビニルエーテル共重合体の合成
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下で加熱することにより、ガラス容器内の吸着水を除去した。系を室温に戻した後、トルエン32mL、1−アダマンチルビニルエーテル5.89mmol、オクタデシルビニルエーテル2.04mmol、ブトキシエチルアセテート10μmol及び酢酸エチル0.3mL加え、系中の温度が0℃に達したところで予め冷却しておいたEt1.5AlCl1.5トルエン溶液(50μmol)を添加して重合を開始した。1時間後、系中に0.3wt%のアンモニア/メタノール溶液を加える事により重合反応の停止を行った。混合溶液中にトルエンを加え希釈し、10wt%食塩水溶液で3回洗浄した後、有機溶媒層をメタノールに滴下して共重合体を白色固体として再沈殿させた。白色固体を濾別し、メタノールで洗浄後、減圧乾燥させて目的物である1−アダマンチルビニルエーテル/オクタデシルビニルエーテル共重合体1.51g(Mw=73,500、Mw/Mn=1.3)を得た。この重合体を樹脂Eとする。
【0056】
[合成例6]ボルニルビニルエーテル重合体の合成
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下で加熱することにより、ガラス容器内の吸着水を除去した。系を室温に戻した後、ボルニルビニルエーテル25.54mmol及びトルエン95mLを加え、系中の温度が−64℃に達したところでBF3・Et2O錯体(0.13mmol)のトルエン溶液を添加して重合を開始した。60分重合を継続した時点で2.5mol/Lナトリウムメトキシド/メタノール溶液を加えることにより重合反応の停止を行った。反応を終えた混合溶液中にトルエンを加え希釈し、アセトン溶液中で再沈殿したものを濾過し、減圧乾燥させて目的物であるボルニルビニルエーテル重合体2.23g(Mw=119,000 Mw/Mn=3.1)を得た。
この重合体を樹脂Fとする。
【0057】
[液浸用保護膜形成材料の調製]
[実施例1]
樹脂A1重量部をシクロヘキサン99重量部に溶解し、30分時間攪拌した後、孔径200nmのフィルターでろ過して液浸用保護膜形成用材料Aを調整した。
【0058】
[実施例2]
実施例1の樹脂Aを樹脂Bに変更した以外は同様の方法で保護膜形成材料Bを調整した。
【0059】
[実施例3]
実施例1の樹脂Aを樹脂Cに変更した以外は同様の方法で保護膜形成材料Cを調整した。
【0060】
[実施例4]
実施例1の樹脂Aを樹脂Dに変更した以外は同様の方法で保護膜形成材料Dを調整した。
【0061】
[実施例5]
実施例1の樹脂Aを樹脂Eに変更した以外は同様の方法で保護膜形成材料Eを調整した。
【0062】
[実施例6]
実施例1の樹脂Aを樹脂Fに変更した以外は同様の方法で保護膜形成材料Fを調整した。
【0063】
[比較例1]
実施例1の樹脂Aを市販ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂(三菱レイヨン社製アクリペット)に、シクロヘキサンをテトラヒドロフランに変更した以外は同様な方法で比較材料Gを調整した。
【0064】
[フォトレジスト組成物の調製例1]
ノルボルナンラクトンメタクリレート/メチルアダマンチルメタクリレート共重合体(Mw=9500、平均組成ノルボルナンラクトンメタクリレート/メチルアダマンチルメタクリレート=55/45)100重量部、光酸発生剤(トリフェニルスルホニウムトリスルフェート)3重量部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート750gに溶解させ、フォトレジスト組成物1を調製した。
[フォトレジスト組成物の調製例2]
フォトレジスト組成物の調製例1においてノルボルナンラクトンメタクリレート/メチルアダマンチルメタクリレート共重合体をγ−ブチロラクトンメタクリレート/メチルアダマンチルメタクリレート共重合体に変更した以外は同様の方法でフォトレジスト組成物2を調製した。
【0065】
得られた液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成材料の評価を次に示す方法で行った。
(1)液浸用保護膜の耐水性評価
4インチシリコンウェハー上に液浸用保護膜形成材料A〜Fをそれぞれスピンコートし、90℃で60秒間ベークして、液浸用保護膜を作製した。次に、このウェハーを純水に90秒間浸漬してスピンドライした後、膜厚の変動を観察した。膜厚変動が2%以内であれば○、2%を超えた場合は×とした。また比較として、レジスト組成物1を同様に評価した。結果を表1に示す。膜厚測定はFoothill Instruments社製Film Thickness Metrology System(KT22)で測定した。
【0066】
【表1】

【0067】
(2)上層膜剥離性の評価
4インチシリコンウェハー上に液浸用保護膜形成材料をスピンコートし、90℃で60秒間ベークして、膜厚120nmの液浸用保護膜を作製した。本塗布膜をシクロヘキサンで60秒間浸漬剥離処理を行い、振り切りによりスピンドライした後、膜厚測定をおこなった。更に目視でウェハー表面を観察し、残渣がなく剥離されていれば、剥離性「○」、残渣が観察されれば「×」とした。結果を表2に示す。剥離前後における膜厚測定はFoothill Instruments社製Film Thickness Metrology System(KT22)を使用した。
【0068】
【表2】

【0069】
(3)インターミキシングの評価
予めHMDS処理(100℃、60秒)を行なった4インチシリコンウェハ上にレジスト1をスピンコート、ホットプレート上で90℃、60秒PBを行ない所定膜厚(340nm)の塗膜を形成した。本塗膜上に、上記液浸用上層膜組成物をスピンコート、PB(90℃、60秒)により膜厚120nmの塗膜を形成した後、超純水に60秒間浸漬させ、4000rpmで15秒間振り切りによりスピンドライを行ない、次いでシクロヘキサンで剥離処理を行ない、上記上層膜を除去した。液浸用塗膜は、現像工程により除去されるが、レジスト塗膜は未露光であり、そのまま残存する。当工程の前後にてFoothill Instruments社製Film Thickness Metrology System(KT22)で膜厚測定を行ない、レジスト膜厚の変化が5%以内であれば、レジスト塗膜と液浸用上層膜間でのインターミキシングが無いと判断して「○」、5%をこえたときは「×」とした。比較材料として保護膜形成用材料Gを使用し、剥離剤としてテトラヒドロフランを使用して評価した。
【0070】
【表3】

【0071】
(4)撥水性の評価
4インチシリコンウェハー上に液浸用保護膜形成材料A〜Fをそれぞれスピンコートし、90℃で60秒間ベークして、膜厚120nmの液浸用保護膜を作製した。本塗布膜に3μLの純水を着滴し、接触角を測定した。比較例として4インチシリコンウェハー上に比較材料G、レジスト組成物1及びレジスト組成物2をそれぞれ同様にスピンコートし、90℃で60秒間ベークして、レジスト膜を作製して、上記と同様の接触角測定をおこなった。接触角測定は協和界面科学(株)製接触角測定装置(FAMAS)を使用した。
【0072】
【表4】

【0073】
本発明の液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成材料は、液浸露光時にフォトレジスト膜を保護することができ、液浸媒体に対する耐性を有し、剥離剤によって容易に剥離可能で、また、フォトレジスト膜とインターミキシングすることなく、かつ、高い撥水性を有するので、今後更に微細化が進むと予想される半導体デバイスの製造に極めて好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水又は水を主成分とする液浸媒体からフォトレジスト層を保護する非水溶性でかつ有機溶剤可溶性の保護膜を形成するための保護膜形成用材料であって、少なくとも下記一般式(1)
【化1】

(式中、Xは少なくとも炭素数3〜15の脂環骨格を有する基を示す)
で表される構成単位を有する樹脂を含むことを特徴とする液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成用材料。
【請求項2】
一般式(1)で表される構造単位が、少なくとも下記一般式(1a)
【化2】

(式中、Yはアルキレン基、アルキレンオキシ基又はアルキレンオキシアルキル基を示し、Zは置換基を有していてもよい炭素数3〜15の単環式、縮合多環式又は架橋多環式の脂環基を示す)
で表される構成単位である請求項1記載の液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成用材料。
【請求項3】
前記構成単位が、少なくとも1種又は2種以上の下記式から選ばれるものである請求項1又は2記載の液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成用材料。
【化3】

【請求項4】
少なくとも請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂が有機溶剤に溶解していることを特徴とする請求項1〜3記載の液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成用材料。
【請求項5】
前記有機溶剤が炭素数5〜20の鎖状又は環状の炭化水素、及び部分的にフッ素化された炭素数5〜20の鎖状又は環状の炭化水素より選ばれる1種又は2種以上の混合溶媒である請求項4記載の液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成用材料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成用材料を、フォトレジスト膜上に塗布、乾燥することによって形成された液浸リソグラフィー用レジスト保護膜。
【請求項7】
液浸リソグラフィープロセスにおいて、炭素数5〜20の鎖状又は環状の炭化水素、及び部分的にフッ素化された炭素数5〜20の鎖状又は環状の炭化水素より選ばれる1種又は2種以上の混合溶媒を用いて剥離できるものであることを特徴とする請求項6に記載の液浸リソグラフィー用レジスト保護膜。

【公開番号】特開2008−158448(P2008−158448A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350204(P2006−350204)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000157603)丸善石油化学株式会社 (84)
【Fターム(参考)】