説明

液状硬化性組成物、コーテイング方法、無機質基板および半導体装置

【課題】保存安定性が優れ、硬質シリカ系層を形成できる液状硬化性組成物;均一性と平坦性と耐クラック性と密着性に優れた硬質シリカ系層を形成できるコーテイング方法;耐熱性、耐寒性、電気絶縁性、機械的強度、耐薬品性等が優れた無機質基板;精度と信頼性と長期間安定性が優れた半導体装置を提供する。
【解決手段】水酸基を有する多価金属酸化物微粒子が分散している有機溶媒中で、ハイドロジェンハロシランもしくはアルコキシシランを縮合反応または加水分解縮合反応させて得られた液状硬化性組成物。該組成物を無機質基板にコーテイングし、硬化させて硬質シリカ系層を形成する、無機質基板のコーテイング方法。該硬質シリカ系層を有する無機質基板。該無機質基板上に半導体層を有する半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸基を有する多価金属酸化物微粒子とハイドロジェンハロシランもしくはハイドロジェンアルコキシシランとの反応生成物からなる液状硬化性組成物、該液状硬化性組成物による無機質基板のコーテイング方法、多価金属酸化物微粒子含有シリカ系層を有する無機質基板ならびに多価金属酸化物微粒子含有シリカ系層を有する無機質基板上に半導体層を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶剤に希釈された水素シルセスキオキサンと充填剤(例えばガラス、アルミナ、シリカ、コロイダルシリカ、二酸化チタン)を含む塗布組成物を電子基板(例えばシリコンウエファー、CMOSデバイス)に塗布し、空気中で50〜800℃で45分〜2.5時間間加熱することにより、セラミック膜を形成することが、特開平6−345417号公報(特許文献1)に開示されている。ところが、この塗布組成物は、調製後すぐに充填剤が沈降し始めるので、直ちにコーテイングに供する必要があること、沈殿物が生じかけている状態でコーテイングに供すると、不均一であり平坦性に欠けるセラミック膜になることに本発明者らは気付いた。
【0003】
水素シルセスキオキサン100重量部当たり平均粒径が100nm以下であるコロイダルシリカを1重量部以上100重量部以下含む水素シルセスキオキサン樹脂組成物を、半導体装置、電気装置、光学素子等にコーティングし、硬化させると、絶縁性と光学的透明性に優れた酸化ケイ素膜、すなわち、シリカ系膜を形成すること、および、この水素シルセスキオキサン樹脂組成物は、コロイダルシリカを有機溶媒中に分散させ、別に水素シルセスキオキサンを溶媒中に溶解させておき、両溶液を混合することにより製造できることが、特開平11−106658号公報(特許文献2)に開示されている。ところが、有機溶媒中にコロイダルシリカを分散させ、別に水素シルセスキオキサン樹脂を溶媒中に溶解させておき、両溶液を混合すると、数分以内に沈殿物が生じるので、混合後直ちにコーテイングに供する必要があること、沈殿物が生じかけている状態でコーテイングに供すると、不均一であり平坦性に欠ける酸化ケイ素膜になることに本発明者らは気付いた。
【0004】
【特許文献1】特開平6−345417号公報
【特許文献2】特開平11−106658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明者らは前記問題点を解消すべく鋭意研究した結果、水酸基を有する多価金属酸化物微粒子(例えばシリカ微粒子)が分散している有機溶媒中で、ハイドロジェンハロシランまたはハイドロジェンアルコキシシランを縮合反応させ、または、加水分解し縮合反応させることにより生成した組成物は、調製後の保存安定性が優れ、加熱等すれば硬化して多価金属酸化物微粒子含有硬質シリカ系層を形成できること;
有機溶媒中でアルコキシ化金属またはハロゲン化金属を加水分解縮合し、ついで、該有機溶媒中で、ハイドロジェンハロシランまたはハイドロジェンアルコキシシランを縮合反応させ、または、加水分解し縮合反応させることにより生成した組成物は、調製後の保存安定性が優れ、加熱等すれば硬化して多価金属酸化物微粒子含有硬質シリカ系層を形成できること;
これらの液状硬化性組成物は、無機質基板にコーテイングして加熱等すれば硬化して均一性と平坦性と耐クラック性と基板への密着性に優れた多価金属酸化物微粒子含有硬質シリカ系層を形成できること;
かかる多価金属酸化物微粒子含有硬質シリカ系層を有する無機質基板は半導体層を形成するのに有用なことを見出し、本発明に至った。
さらには、水酸基を有する多価金属酸化物微粒子の代わりに、水酸基を有するシリカ・多価金属酸化物複合微粒子を使用しても、同様の液状硬化性組成物が生成すること;
この液状硬化性組成物を無機質基板にコーテイングして加熱等すれば硬化して均一性と平坦性と耐クラック性と基板への密着性に優れたシリカ・多価金属酸化物複合微粒子含有硬質シリカ系層を形成できることを見出し、本発明に至った。
【0006】
本発明の目的は、調製後の保存安定性が優れ、加熱等すれば硬化して多価金属酸化物微粒子含有硬質シリカ系層を形成できる液状硬化性組成物;無機質基板に均一性と平坦性と耐クラック性と基板への密着性に優れた硬質シリカ系層を形成することができるコーテイング方法;均一性と平坦性と耐クラック性と基板への密着性に優れた多価金属酸化物微粒子含有硬質シリカ系層を有し、耐熱性、耐寒性、電気絶縁性、機械的強度、耐薬品性等が優れた無機質基板;均一性と平坦性と耐クラック性と基板への密着性に優れた硬質シリカ系層を有する無機質基板上に半導体層が形成され、精度と信頼性と長期間安定性が優れた半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
「 [1] 水酸基を有する多価金属酸化物微粒子が分散している有機溶媒中で、
一般式(1):HSiX4−n
(式中、Xはハロゲン原子または炭素原子数1〜4のアルコキシル基を表わし、nは0、1または2である。)で表わされるシラン化合物(ただし、n=0のシラン化合物の場合は、n=1のシラン化合物またはn=2のシラン化合物とともに)を縮合反応または加水分解縮合反応させることにより得られた液状硬化性組成物。
[4] 有機溶媒中で一般式(2):MXm
(式中、Mは多価金属原子であり、Xはハロゲン原子または炭素原子数1〜4のアルコキシル基を表わし、mは多価金属原子の原子価である。)で表わされるアルコキシ化多価金属またはハロゲン化多価金属を加水分解縮合し、ついで、該有機溶媒中で、
一般式(1):HSiX4−n
(式中、Xはハロゲン原子または炭素原子数1〜4のアルコキシル基を表わし、nは0、1または2である。)で表わされるシラン化合物(ただし、n=0のシラン化合物の場合は、n=1のシラン化合物またはn=2のシラン化合物とともに)を縮合反応または加水分解縮合反応させることにより得られた液状硬化性組成物。
[7] [1]または[4]に記載の液状硬化性組成物を無機質基板にコーテイングし、硬化性成分を硬化させることにより、鉛筆硬度が4H〜9Hである多価金属酸化物微粒子含有シリカ系層を該無機質基板上に形成することを特徴とする、無機質基板のコーテイング方法。
[9] 鉛筆硬度が4H〜9Hである多価金属酸化物微粒子含有シリカ系層を該無機質基板上に有することを特徴とする、無機質基板。
[10] [9]記載の多価金属酸化物微粒子含有シリカ系層を有する無機質基板の当該シリカ系層上に少なくとも半導体層が形成されていることを特徴とする、半導体装置。」に関する。
【0008】
本発明は、詳しくは、
「[1] 水酸基を有する多価金属酸化物微粒子が分散している有機溶媒中で、
一般式(1):HSiX4−n
(式中、Xはハロゲン原子または炭素原子数1〜4のアルコキシル基を表わし、nは0、1または2である。)で表わされるシラン化合物(ただし、n=0のシラン化合物の場合は、n=1のシラン化合物またはn=2のシラン化合物とともに)を縮合反応または加水分解縮合反応させることにより得られた液状硬化性組成物。
[1-1] 縮合反応後または加水分解縮合反応後に、反応副生物が留去されていることを特徴とする、[1]記載の液状硬化性組成物。
[2] 該多価金属酸化物微粒子がシリカ微粒子、酸化チタン微粒子、酸化ジルコニウム微粒子、アルミナ微粒子、酸化亜鉛微粒子、酸化錫微粒子、シリカ・酸化チタン複合微粒子、シリカ・酸化ジルコニウム複合微粒子、またはシリカ・アルミナ複合微粒子であることを特徴とする、[1]記載の液状硬化性組成物。
[2-1] 該多価金属酸化物微粒子がシリカ微粒子、酸化チタン微粒子、酸化ジルコニウム微粒子、アルミナ微粒子、酸化亜鉛微粒子、酸化錫微粒子、シリカ・酸化チタン複合微粒子、シリカ・酸化ジルコニウム複合微粒子、またはシリカ・アルミナ複合微粒子であることを特徴とする、[1-1]記載の液状硬化性組成物。
[3] 該シラン化合物が、ジハイドロジェンジクロロシラン、ハイドロジェントリクロロシラン、ジハイドロジェンジメトキシシラン、ジハイドロジェンジエトキシシラン、ハイドロジェントリメトキシシラン、ハイドロジェントリエトキシシラン、テトラクロロシラン、テトラエトキシシランからなる群から選択される1種または2種以上のシラン化合物(ただし、テトラクロロシラン、テトラエトキシシランの場合は前記ハイドロジェンシラン化合物とともに)であることを特徴とする、[1]記載の液状硬化性組成物。
[3-1] 該シラン化合物が、ジハイドロジェンジクロロシラン、ハイドロジェントリクロロシラン、ジハイドロジェンジメトキシシラン、ジハイドロジェンジエトキシシラン、ハイドロジェントリメトキシシラン、ハイドロジェントリエトキシシラン、テトラクロロシラン、テトラエトキシシランからなる群から選択される1種または2種以上のシラン化合物(ただし、テトラクロロシラン、テトラエトキシシランの場合は前記ハイドロジェンシラン化合物とともに)であることを特徴とする、[1-1]記載の液状硬化性組成物。
[3-2]
該多価金属酸化物微粒子がシリカ微粒子、酸化チタン微粒子、酸化ジルコニウム微粒子、アルミナ微粒子、酸化亜鉛微粒子、酸化錫微粒子、シリカ・酸化チタン複合微粒子、シリカ・酸化ジルコニウム複合微粒子、またはシリカ・アルミナ複合微粒子であり、該シラン化合物が、ジハイドロジェンジクロロシラン、ハイドロジェントリクロロシラン、ジハイドロジェンジメトキシシラン、ジハイドロジェンジエトキシシラン、ハイドロジェントリメトキシシラン、ハイドロジェントリエトキシシラン、テトラクロロシラン、テトラエトキシシランからなる群から選択される1種または2種以上のハイドロジェンシラン化合物(ただし、テトラクロロシラン、テトラエトキシシランの場合は前記ハイドロジェンシラン化合物とともに)であることを特徴とする、[1]または[1-1]記載の液状硬化性組成物。
【0009】
本発明は、さらに
「[4] 有機溶媒中で一般式(2):MXm
(式中、Mは多価金属原子であり、Xはハロゲン原子または炭素原子数1〜4のアルコキシル基を表わし、mは多価金属原子の原子価である。)で表わされるアルコキシ化多価金属またはハロゲン化多価金属を加水分解縮合し、ついで、該有機溶媒中で、
一般式(1):HSiX4−n
(式中、Xはハロゲン原子または炭素原子数1〜4のアルコキシル基を表わし、nは0、1または2である。)で表わされるシラン化合物(ただし、n=0のシラン化合物の場合は、n=1のシラン化合物またはn=2のシラン化合物とともに)を縮合反応または加水分解縮合反応させることにより得られた液状硬化性組成物。
[4-1] 縮合反応後または加水分解縮合反応後に、反応副生物が留去されていることを特徴とする、[4]記載の液状硬化性組成物。
[5] 多価金属原子が、ケイ素原子、チタン原子、ジルコニウム原子、アルミニウム原子、亜鉛原子、錫原子、またはケイ素原子とチタン原子、ジルコニウム原子もしくはアルミニウム原子との組合せであることを特徴とする、[4]記載の液状硬化性組成物。
[5-1] 多価金属原子が、ケイ素原子、チタン原子、ジルコニウム原子、アルミニウム原子、亜鉛原子、錫原子、またはケイ素原子とチタン原子、ジルコニウム原子もしくはアルミニウム原子との組合せであることを特徴とする、[4-1]記載の液状硬化性組成物。
[6] 該シラン化合物が、ジハイドロジェンジクロロシラン、ハイドロジェントリクロロシラン、ジハイドロジェンジメトキシシラン、ジハイドロジェンジエトキシシラン、ハイドロジェントリメトキシシラン、ハイドロジェントリエトキシシラン、テトラクロロシラン、テトラエトキシシランからなる群から選択される1種または2種以上のシラン化合物(ただし、テトラクロロシラン、テトラエトキシシランの場合は前記ハイドロジェンシラン化合物とともに)であることを特徴とする[4]記載の液状硬化性組成物。
[6-1] 該シラン化合物が、ジハイドロジェンジクロロシラン、ハイドロジェントリクロロシラン、ジハイドロジェンジメトキシシラン、ジハイドロジェンジエトキシシラン、ハイドロジェントリメトキシシラン、ハイドロジェントリエトキシシラン、テトラクロロシラン、テトラエトキシシランからなる群から選択される1種または2種以上のシラン化合物(ただし、テトラクロロシラン、テトラエトキシシランの場合は前記ハイドロジェンシラン化合物とともに)であることを特徴とする[4-1]記載の液状硬化性組成物。
[6-2] 多価金属原子が、ケイ素原子、チタン原子、ジルコニウム原子、アルミニウム原子、亜鉛原子、錫原子、またはケイ素原子とチタン原子、ジルコニウム原子もしくはアルミニウム原子との組合せであり、該シラン化合物が、ジハイドロジェンジクロロシラン、ハイドロジェントリクロロシラン、ジハイドロジェンジメトキシシラン、ジハイドロジェンジエトキシシラン、ハイドロジェントリメトキシシラン、ハイドロジェントリエトキシシラン、テトラクロロシラン、テトラエトキシシランからなる群から選択される1種または2種以上のシラン化合物(ただし、テトラクロロシラン、テトラエトキシシランの場合は前記ハイドロジェンシラン化合物とともに)であることを特徴とする、[4]または[4-1]記載の液状硬化性組成物。」に関する。
【0010】
本発明は、さらに
「[7] [1]または[4]に記載の液状硬化性組成物を無機質基板にコーテイングし、硬化性成分を硬化させることにより、鉛筆硬度が4H〜9Hである多価金属酸化物微粒子含有シリカ系層を該無機質基板上に形成することを特徴とする、無機質基板のコーテイング方法。
[7-1] [1-1]、[2]、[2-1]、[3]、[3-1]、[3-2]、[4-1]、[5]、[5-1]、[6] 、[6-1]または[6-2]に記載の液状硬化性組成物を無機質基板にコーテイングし、硬化性成分を硬化させることにより、鉛筆硬度が4H〜9Hである多価金属酸化物微粒子含有シリカ系層を該無機質基板上に形成することを特徴とする、無機質基板のコーテイング方法。
[8] 硬化が、酸素ガス含有雰囲気下で150℃以上の温度での加熱、不活性ガスもしくは真空中での200℃以上の温度での加熱、高エネルギー線照射、オゾン暴露、亜酸化窒素ガス暴露または湿性アンモニアガス暴露によることを特徴とする、[7]記載の無機質基板のコーテイング方法。
[8-1] 硬化が、酸素ガス含有雰囲気下で150℃以上の温度での加熱、不活性ガスもしくは真空中での200℃以上の温度での加熱、高エネルギー線照射、オゾン暴露、亜酸化窒素ガス暴露または湿性アンモニアガス暴露によることを特徴とする、[7-1]記載の無機質基板のコーテイング方法。」に関する。
本発明は、さらに
「[9] 鉛筆硬度が4H〜9Hである多価金属酸化物微粒子含有シリカ系層を該無機質基板上に有することを特徴とする、無機質基板。
[9-1] 多価金属酸化物微粒子が、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、酸化ジルコニウム微粒子、アルミナ微粒子、酸化亜鉛微粒子、酸化錫微粒子、シリカ・酸化チタン複合微粒子、シリカ・酸化ジルコニウム複合微粒子またはシリカ・アルミナ複合微粒子であり、無機質基板が金属基板、セラミック基板またはガラス基板であることを特徴とする、[9]記載の無機質基板。」に関する。
【0011】
本発明は、さらに
「[10] [9]記載の多価金属酸化物微粒子含有シリカ系層を有する無機質基板の当該シリカ系層上に少なくとも半導体層が形成されていることを特徴とする、半導体装置。
[10-1] 多価金属酸化物微粒子がシリカ微粒子、酸化チタン微粒子、酸化ジルコニウム微粒子、アルミナ微粒子、酸化亜鉛微粒子、酸化錫微粒子、シリカ・酸化チタン複合微粒子、シリカ・酸化ジルコニウム複合微粒子またはシリカ・アルミナ複合微粒子であり、無機質基板が金属基板、セラミック基板またはガラス基板であることを特徴とする、[10]記載の半導体装置。
[11] 無機質基板がガラス薄板またはステンレススチール薄板であり、半導体層がシリコン半導体薄層または化合物半導体薄層であり、半導体装置が薄膜太陽電池であることを特徴とする、[10]記載の半導体装置。
[11-1] 無機質基板がガラス薄板またはステンレススチール薄板であり、半導体層がシリコン半導体薄層または化合物半導体薄であり、半導体装置が薄膜太陽電池であることを特徴とする、[10-1]記載の半導体装置。」に関する。
【0012】
本発明は、さらに
「[14] 水酸基を有する多価金属酸化物微粒子が分散している有機溶媒中で、
一般式(1):HSiX4−n
(式中、Xはハロゲン原子または炭素原子数1〜4のアルコキシル基を表わし、nは0、1または2である。)で表わされるシラン化合物(ただし、n=0のシラン化合物の場合は、n=1のシラン化合物またはn=2のシラン化合物とともに)を縮合反応または加水分解縮合反応させることを特徴とする、液状硬化性組成物の製造方法。
[14-1] Xが炭素原子数1〜4のアルコキシル基であり、一般式(1)で表わされるシラン化合物の加水分解用の水を含有させることを特徴とする、[14]記載の液状硬化性組成物の製造方法。
[14-2] 反応時に酸触媒を存在させることを特徴とする、[14-1]記載の液状硬化性組成物の製造方法。
[14-3] 酸触媒がハロゲン化水素酸であることを特徴とする、[14-2]記載の液状硬化性組成物の製造方法。
[14-4] 反応後、ハロゲン化水素酸および一般式(1)で表わされるシラン化合物の加水分解により副生した炭素原子数1〜4のアルコールを留去することを特徴とする、[14-3]記載の液状硬化性組成物の製造方法。
[14-5] Xがハロゲン原子であり、反応後、一般式(1)で表わされるシラン化合物の加水分解により副生したハロゲン化水素を留去することを特徴とする、[14]記載の液状硬化性組成物の製造方法。」に関する。
【0013】
本発明は、さらに
「[15] 平均単位式(8):{[H2SiO2/2x[HSiO3/2y[SiO4/2]z}v[MOa/2]w
(式中、x,y,zはモル分率を表わし、0≦x≦1.0,0≦y≦1.0,0≦z≦0.5,0.5≦x+y≦1.0、x+y+z=1.0である。v、wは質量分率を表し、0<v<1.0,0<w<1.0,v+w=1である。Mは多価金属酸化物微粒子中の多価金属原子であり、aは多価金属原子の原子価である)で表わされることを特徴とする、ジハイドロジェンシロキサン、ジハイドロジェンポリシロキサン、ハイドロジェンシロキサンまたはハイドロジェンポリシロキサンが結合した多価金属酸化物微粒子。
[15-1] [15]記載の多価金属酸化物微粒子と、遊離状態のジハイドロジェンポリシロキサン、ハイドロジェンポリシロキサン、または、ジハイドロジェンポリシロキサンとハイドロジェンポリシロキサンとからなることを特徴とする、[15]記載の液状硬化性組成物。
[15-2] さらに有機溶媒からなることを特徴とする、[15-1]記載の液状硬化性組成物。
[16] [15-2]記載の液状硬化性組成物からなることを特徴とする、無機質基板用コーテイング剤。
[17] [16]記載のコーテイング剤を無機質基板に塗布し、硬化させて鉛筆硬度が4H〜9Hであるシリカ系層を該無機質基板上に形成することを特徴とする、無機質基板のコーテイング方法。
[17-1] 無機質基板が金属基板、セラミック基板またはガラス基板であることを特徴とする、[17]記載の無機質基板のコーテイング方法。
[17-2] 金属基板がステンレススチール薄板であることを特徴とする、[17-1]記載の無機質基板のコーテイング方法。
[17-3] 硬化が、酸素ガス含有雰囲気下で150℃以上の温度での加熱、不活性ガスもしくは真空中での200℃以上の温度での加熱、高エネルギー線照射、オゾン暴露、亜酸化窒素ガス暴露または湿性アンモニアガス暴露によることを特徴とする、[17]記載の無機質基板のコーテイング方法。」に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る液状硬化性組成物は、調製後に長時間経過後も分離することがなく保存安定性が優れ、加熱等すれば容易に硬化して多価金属酸化物微粒子含有硬質シリカ系硬化物となる。
本発明に係るコーテイング方法によると、無機質基板に均一性と平坦性と耐クラック性と基板への密着性に優れに硬質シリカ系層を形成することができる。
本発明に係る無機質基板は、均一性と平坦性と耐クラック性と基板への密着性に優れた多価金属酸化物微粒子含有硬質シリカ系層を有するので、耐熱性、耐寒性、電気絶縁性、機械的強度、耐薬品性等が優れている。
本発明に係る半導体装置は、均一性と平坦性と耐クラック性と基板への密着性に優れた硬質シリカ系層を有する無機質基板上に半導体層が形成されているので、精度と信頼性と長期間安定性が優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る液状硬化性組成物は、水酸基を有する多価金属酸化物微粒子が分散している有機溶媒中で、
一般式(1):HSiX4−n
(式中、Xはハロゲン原子または炭素原子数1〜4のアルコキシル基を表わし、nは0、1または2である。)で表わされるシラン化合物(ただし、n=0のシラン化合物の場合は、n=1のシラン化合物またはn=2のシラン化合物とともに)を縮合反応または加水分解縮合反応させることにより得られる。
【0016】
水酸基を有する多価金属酸化物微粒子、例えばシラノール基を有するシリカ微粒子の有機溶媒分散液は、市販されている。市販品として、メタノール分散シリカゾル(商品名:MT−ST、日産化学工業株式会社製、SiO2濃度30質量%、平均粒子径12nm、水分1.8質量%、動的光散乱法粒子径30nm)、イソプロピルアルコール分散シリカゾル(商品名:IPA−ST、日産化学工業株式会社製、SiO2濃度30質量%、平均粒子径12nm、水分1.8質量%、動的光散乱法粒子径30nm)、トルエン分散コロイダルシリカ(商品名:TOL−ST、日産化学工業株式会社製、SiO2濃度40質量%、平均粒径10nm〜20nm)が例示される。
シリカ微粒子以外の多価金属酸化物微粒子は、酸化チタン(チタニア)微粒子、酸化ジルコニウム(ジルコニア)微粒子、酸化アルミニウム(アルミナ)微粒子が好ましく、ついで酸化錫微粒子と酸化亜鉛微粒子が好ましい。
水酸基を有する酸化チタンゾル、酸化スズゾルは多木化学株式会社から市販されており、水酸基を有するアルミナゾルは 川研ファインケミカル株式会社から市販されている(商品名アルミゾル-10、10%ベーマイトアルミナコロイド水溶液)。
【0017】
水酸基を有する多価金属酸化物微粒子、例えばシラノール基を有するシリカ微粒子の有機溶媒分散液は、一般式(3):SiX (式中、Xはハロゲン原子または炭素原子数1〜4のアルコキシル基を表わす。)で表わされるシラン化合物を、水溶性有機溶媒と非極性有機溶媒が二層に分離せず均一になるような混合比率(例えば、100:80〜100:200)であり、該シラン化合物を加水分解させるのに必要な量の水を含有する混合有機溶媒に添加し、撹拌等して、加水分解・縮合反応させることにより製造することができる。
【0018】
原料である一般式(3)で表わされるシラン化合物として、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランが例示される。テトラクロロシランとテトラブロモシランは加水分解性が激しく、テトラメトキシシランは揮発性が大きすぎるが、テトラエトキシシランは加水分解性が適度であり、揮発性もさほど大きくないので、最も好ましい。
【0019】
水溶性有機溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;エチレングライコールモノメチルエーテル、エチレングライコールモノエチルエーテル等の低級アルキレングリコールモノアルキルエーテルが好ましく、非極性有機溶媒としてトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の低級脂肪族炭化水素溶媒が好ましい。
【0020】
一般式(3) で表わされるシラン化合物のXがすべて炭素原子数1〜4のアルコキシル基である場合には、加水分解用触媒を併用することが好ましい。加水分解用触媒は、酸触媒が好ましく、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、蟻酸、酢酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸が例示される。これらの中でも塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、蟻酸、酢酸及びシュウ酸が好ましく、塩酸及びリン酸がより好ましい。加水分解用触媒の添加量は、一般式(3)で表わされるシラン化合物の100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましく、0.5〜2質量部であることがより好ましい。
【0021】
加水分解・縮合反応温度は、常温〜50℃が好ましい。反応液を撹拌、振盪などして加水分解・縮合反応生成物であるシリカを微粒子化させることが好ましい。加水分解・縮合反応時間は、原料であるシラン化合物が殆ど残存しないような時間であればよく、例えば30分〜3時間である。
縮合反応が進行してシラノール基を有するシリカ微粒子が生成すると、シラノール基を有するシリカ微粒子の有機溶媒分散液となる。
【0022】
シラノール基を有するシリカ微粒子以外の水酸基を有する多価金属酸化物微粒子は、一般式(2):MXm (式中、Mはケイ素原子以外の多価金属原子を表わし、Xはハロゲン原子または炭素原子数1〜4のアルコキシル基を表わす。mは多価金属原子の原子価を表す)で表わされるアルコキシ化多価金属化合物またはハロゲン化多価金属化合物を有機溶媒中で加水分解することにより製造することができる。
一般式(2)で表わされる多価金属化合物として、テトラクロロチタン、テトラブロモチタン、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン;テトラクロロジルコニウム、テトラブロモジルコニウム、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム;トリクロロアルミニウム、トリブロモアルミニウム、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリプロポキシアルミニウム、トリブトキシアルミニウムが例示される。塩化金属化合物や、臭化金属化合物は加水分解性が激しいが、アルコキル化金属化合物は加水分解性が適度であり、揮発性も大きくないので、アルコキル化金属化合物が最も好ましい。
【0023】
水酸基を有する多価金属酸化物微粒子は、シラノール基を有するシリカと水酸基を有する多価金属酸化物の複合微粒子であってもよい。かかる複合微粒子の有機溶媒分散液は、一般式(3)で表わされるシラン化合物と一般式(2)で表わされる多価金属化合物とを有機溶媒中で共加水分解し、共縮合反応させることにより容易に製造することができる。
有機溶媒中で、一般式(3):SiX (式中、Xはハロゲン原子または炭素原子数1〜4のアルコキシル基を表わす。)で表わされるテトラハロシランまたはテトラアルコキシシラン、および、一般式(4):TiXで表わされるチタン化合物、一般式(5):ZrX で表わされるジルコニウム化合物または一般式(6):AlXで表わされるアルミニウム化合物(式中、Xはハロゲン原子または炭素原子数1〜4のアルコキシル基を表わす。)を共加水分解し共縮合反応させることにより、水酸基(シラノール基を含む)を有するシリカ・チタニア複合微粒子、水酸基(シラノール基を含む)有するシリカ・ジルコニア複合微粒子または水酸基(シラノール基を含む)を有するシリカ・アルミナ複合微粒子を製造することができる。
【0024】
有機溶媒中で、一般式(3)で表わされるシラン化合物と一般式(4)表わされるチタン化合物を共加水分解し共縮合反応させるには、有機溶媒に一般式(3)で表わされるシラン化合物と一般式(4)表わされるチタン化合物を溶解し、加水分解に必要な量の水を加えて撹拌、振盪などをすればよい。チタン化合物はテトラアルコキシシランを加水分解する触媒作用があるので、別途触媒を添加する必要はない。該チタン化合物と該シラン化合物は、ハロゲン化水素またはアルコールを脱離しつつ共縮合反応が進行して、やがて水酸基(シラノール基を含む)を有するシリカ・チタニア複合微粒子が析出してくる。その結果、水酸基(シラノール基を含む)を有するシリカ・チタニア複合微粒子の有機溶媒分散液となる。
【0025】
有機溶媒中で、一般式(3)で表わされるシラン化合物と一般式(5)で表わされるジルコニウム化合物を共加水分解し共縮合反応させるには、有機溶媒に一般式(3)で表わされるシラン化合物と一般式(5)で表わされるジルコニウム化合物を溶解し、加水分解に必要な量の水を加えて撹拌、振盪などをすればよい。該ジルコニウム化合物は該シラン化合物を加水分解する触媒作用があるので、別途触媒を添加する必要はない。該シラン化合物と該ジルコニウム化合物は、ハロゲン化水素またはアルコールを脱離しつつ共縮合反応が進行して、やがて水酸基(シラノール基を含む)を有するシリカ・ジルコニア複合微粒子が析出してくる。その結果、水酸基(シラノール基を含む)を有するシリカ・ジルコニア複合微粒子の有機溶媒分散液となる。
【0026】
有機溶媒中で、一般式(3)で表わされるシラン化合物と一般式(6)で表わされるアルミニウム化合物を共加水分解し共縮合反応させるには、有機溶媒に一般式(3)で表わされるシラン化合物と一般式(6)で表わされるアルミニウム化合物を溶解し、加水分解に必要な量の水を加えて撹拌、振盪などをすればよい。該アルミニウム化合物はテトラアルコキシシランを加水分解する触媒作用があるので、別途触媒を添加する必要はない。該シラン化合物と該アルミニウム化合物は、ハロゲン化水素またはアルコールを脱離しつつ共縮合反応が進行して、やがて水酸基(シラノール基を含む)を有するシリカ・アルミナ複合微粒子が生成してくる。その結果、水酸基(シラノール基を含む)を有するシリカ・アルミナ複合微粒子の有機溶媒分散液となる。
【0027】
この際、一般式(4)で表わされるチタン化合物、一般式(5)で表わされるジルコニウム化合物および一般式(6)で表わされるアルミニウム化合物の2者、または3者を共加水分解、共縮合反応に供してもよい。そうすると水酸基(シラノール基を含む)を有する、シリカ・チタニア・ジルコニア複合微粒子、シリカ・チタニア・アルミナ複合微粒子、シリカ・ジルコニア・アルミナ複合微粒子またはシリカ・チタニア・ジルコニア・アルミナ複合微粒子が生成する。
【0028】
水酸基を有する多価金属酸化物微粒子の有機溶媒分散液中の該多価金属酸化物微粒子含有量は、10〜40質量%が好ましい。
水酸基を有する多価金属酸化物微粒子の平均粒径は、大きすぎると有機溶媒中で沈降しやすくなるので、好ましくは5〜100nmである。なお、有機溶媒中の水酸基を有する多価金属酸化物微粒子の平均粒径は、動的光散乱法により測定した平均粒径を意味する。
水酸基を有する多価金属酸化物微粒子の形状は、特に限定されず、球状、紡錘状、角柱状、円筒状、不定形状が例示される。
【0029】
一般式(1):HSiX4−n (式中、Xはハロゲン原子または炭素原子数1〜4のアルコキシル基を表わし、nは1または2である。)で表わされるシラン化合物は、ケイ素原子に水素原子が1または2個結合し、ハロゲン原子または炭素原子数1〜4のアルコキシル基が3個または2個結合したシランである。同一分子中にハロゲン原子と炭素原子数1〜4のアルコキシル基が存在していてもよい。
nが4であるシラン化合物、例えばテトラクロロシラン、テトラエトキシシランはケイ素原子結合水素原子を有していないので、n=1のシラン化合物、n=2のシラン化合物、またはn=1のシラン化合物とn=2のシラン化合物の混合物と併用する必要がある。
【0030】
Xであるハロゲン原子は塩素原子がもっとも一般的であり、ついで臭素原子が一般的である。炭素原子数1〜4のアルコキシル基には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基がある。本シラン化合物の具体例として、HSiCl、HSiCl、HSiBr、HSiBr、HSi(OCH(ハイドロジェントリメトキシシラン)、HSi(OCH(ジハイドロジェンジメトキシシラン)、HSi(OC(ハイドロジェントリエトキシシラン)、HSi(OC(ジハイドロジェンジエトキシシラン)、HSi(OC(ジハイドロジェンジプロポキシシラン、HSi(OC(ハイドロジェントリプロポキシシラン)、HSiCl(OCH)(ジハイドロジェンクロロメトキシシラン)、HSiCl(OC(ハイドロジェンクロロジエトキシシラン)がある。これらシラン化合物は2種以上を併用してもよい。
【0031】
本発明に係る液状硬化性組成物は、上記のような水酸基を有する多価金属酸化物微粒子が分散している有機溶媒中で、
一般式(1):HSiX4−n
(式中、Xはハロゲン原子または炭素原子数1〜4のアルコキシル基を表わし、nは0、1または2である。)で表わされるシラン化合物(ただし、n=0のシラン化合物の場合は、n=1のシラン化合物またはn=2のシラン化合物とともに)を縮合反応または加水分解縮合反応させることにより製造される。
【0032】
上記のような水酸基を有する多価金属酸化物微粒子の有機溶媒分散液に、一般式(1)で表わされるシラン化合物を直接投入し撹拌してもよいが、反応の均一化のためには、該シラン化合物を非プロトン性の有機溶媒に分散または溶解してから投入し撹拌することが好ましい。そのための非プロトン性の有機溶媒として、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン(2,2,4−トリエチルペンタン)、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘプタン、エチルシクロヘキサン、シクロオクタン、ジエチルシクロヘキサン、デカリン(デカヒドロナフタレン)等の脂環式炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プソイドクメン(トリエチルベンゼン)、テトラリン(1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン)等の芳香族炭化水素溶媒;アセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)等の脂肪族ケトンが例示される。
【0033】
一般式(1) で表わされるシラン化合物中のXのすべてがハロゲン原子であると、多価金属酸化物微粒子の水酸基との脱ハロゲン化水素縮合反応が起こって、多価金属酸化物微粒子の表面処理がなされ、ジハイドロジェンシロキサンまたはハイドロジェンシロキサンが結合した多価金属酸化物微粒子が生成する。
加水分解・縮合反応により液状硬化性組成物を製造するに当たり、一般式(1)で表わされるシラン化合物がハロゲン原子を含有する場合(すなわち、Xがハロゲン原子である場合)は、加水分解用の水を反応系に加えるだけでよい。しかし、本シラン化合物がハロゲン原子を含有しない場合(すなわち、すべてのXが炭素原子数1〜4のアルコキシル基である場合)は、加水分解用の水と酸触媒を反応系に加える必要がある。
加水分解用の水は、ケイ素原子結合アルコキシル基を加水分解するに十分な量を加水分解反応に供すればよい。
酸触媒は、一般式(1)で表されるシラン化合物、すなわち、ハイドロジェンアルコキシシランを加水分解する能力を有すればよく、無機酸、有機酸がある。無機酸としてハロゲン化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸が例示される。有機酸としては蟻酸、酢酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸が例示される。
触媒は、加水分解縮合反応後に除去容易なものが好ましく、ハロゲン化水素酸が好ましい。塩化水素酸、臭化水素酸が例示され、塩化水素酸がより好ましい。加水分解するとハロゲン化水素酸を生成する化合物も好ましい。
【0034】
一般式(1)で表わされるシラン化合物(ただし、Xの少なくとも一つがハロゲン原子である)が加水分解してシラノール基を有するジハイドロジェンシロキサンまたはハイドロジェンシロキサンとハロゲン化水素酸(例えば、塩酸)が生成し、ハロゲン化水素酸(例えば、塩酸)の触媒作用で、シラノール基を有するジハイドロジェンシロキサンまたはハイドロジェンシロキサンと水酸基を有する多価金属酸化物微粒子とが脱水縮合反応して、ジハイドロジェンシロキサンまたはハイドロジェンシロキサンが結合した多価金属酸化物微粒子が生成すると解される。
あるいは、生成したシラノール基を有するジハイドロジェンシロキサンまたはハイドロジェンシロキサンがハロゲン化水素酸(例えば、塩酸)の触媒作用で自己縮合することにより、次いで、シラノール基を有するジハイドロジェンポリシロキサンまたはハイドロジェンポリシロキサンとなり、それらのシラノール基と多価金属酸化物微粒子の水酸基(例えば、シリカ微粒子のシラノール基)とが脱水縮合反応することにより、ジハイドロジェンポリシロキサンまたはハイドロジェンポリシロキサンが結合した多価金属酸化物微粒子が生成すると解される。
【0035】
一般式(1)で表わされるシラン化合物(ただし、すべてのXが炭素原子数1〜4のアルコキシル基である)が、酸触媒(例えば、塩酸のようなハロゲン化水素酸)の作用により加水分解することにより、シラノール基を有するジハイドロジェンシロキサンまたはハイドロジェンシロキサンと炭素原子数1〜4のアルコールが生成し、次いで、酸触媒(例えば、塩酸のようなハロゲン化水素酸)の触媒作用で、シラノール基を有するジハイドロジェンシロキサンまたはハイドロジェンシロキサンと多価金属酸化物微粒子の水酸基(例えば、シリカ微粒子のシラノール基)とが脱水縮合反応することにより、ジハイドロジェンシロキサンまたはハイドロジェンシロキサンが結合した多価金属酸化物微粒子が生成すると解される。
あるいは、生成したシラノール基を有するジハイドロジェンポリシロキサンまたはハイドロジェンシロキサンが、酸触媒(例えば、塩酸のようなハロゲン化水素酸)の触媒作用で、自己縮合することにより、シラノール基を有するジハイドロジェンポリシロキサンまたはハイドロジェンポリシロキサンとなり、それらのシラノール基と多価金属酸化物微粒子の水酸基とが脱水縮合反応することにより、ジハイドロジェンポリシロキサンまたはハイドロジェンポリシロキサンが結合した多価金属酸化物微粒子が生成すると解される。
【0036】
ジハイドロジェンシロキサンまたはハイドロジェンシロキサンがSiOM結合(Mは金属原子を意味する)により多価金属酸化物微粒子に結合している態様、ジハイドロジェンポリシロキサンまたはハイドロジェンポリシロキサンがSiOM結合により多価金属酸化物微粒子に結合している態様、および、ジハイドロジェンシロキサンとジハイドロジェンポリシロキサンがSiOM結合により多価金属酸化物微粒子に結合している態様、ハイドロジェンシロキサンとハイドロジェンポリシロキサンがSiOM結合により多価金属酸化物微粒子に結合している態様、ジハイドロジェンポリシロキサンとハイドロジェンポリシロキサンがSiOM結合により多価金属酸化物微粒子に結合している態様などがある。
もっとも、すべてのジハイドロジェンシロキサン、ジハイドロジェンポリシロキサン、ハイドロジェンシロキサンまたはハイドロジェンポリシロキサンが多価金属酸化物微粒子に結合するとは限らず、遊離状態で有機溶媒中に溶解していることがあり得る。
また、すべての水酸基を有する多価金属酸化物微粒子がジハイドロジェンシロキサン、ジハイドロジェンポリシロキサン、ハイドロジェンシロキサンまたはハイドロジェンポリシロキサンと結合するとは限らず、遊離状態で有機溶媒中に分散していることがあり得る。
【0037】
SiOM結合により多価金属酸化物微粒子に結合しているジハイドロジェンシロキサンは、式H2SiO2/2により表すことができる。SiOM結合により多価金属酸化物微粒子に結合しているハイドロジェンシロキサンは、式HSiO3/2により表すことができる。
多価金属酸化物微粒子の金属原子に結合しているH2SiO2/2はジハイドロジェンシロキシ基と言うことができ、多価金属酸化物微粒子の金属原子に結合しているHSiO3/2はモノハイドロジェンシロキシ基と言うことができる。
ジハイドロジェンシロキサンは、HSiX (式中、Xはハロゲン原子または炭素原子数1〜4のアルコキシル基を表わす。)に由来する。ハイドロジェンシロキサンは、HSiX (式中、Xはハロゲン原子または炭素原子数1〜4のアルコキシル基を表わす)に由来する。
なお、H2SiO2/2中の酸素原子の一つが水素原子と結合して水酸基となっていることもあり得る。HSiO3/2中の酸素原子の一つまたは二つが水素原子と結合して水酸基となっていることもあり得る。
【0038】
ジハイドロジェンポリシロキサンには、HSiXの加水分解と縮合反応によるオリゴマー、ポリマー、またはオリゴマーとポリマーの混合物があり得る。ハイドロジェンポリシロキサンには、HSiXの加水分解と縮合反応によるオリゴマー、ポリマー、またはオリゴマーとポリマーの混合物があり得る。さらにはHSiXとHSiXの共加水分解と共縮合反応によるオリゴマー、ポリマー、またはオリゴマーとポリマーの混合物があり得る。さらにはHSiXとHSiXのいずれか、または両方とSiXとの共加水分解と共縮合反応によるオリゴマー、ポリマー、またはオリゴマーとポリマーの混合物があり得る。
ジハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状または環状である。
ハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、分岐状、網状、籠状などである。HSiXを原料にすると原則として直鎖状または環状となる。しかし、ジハイドロジェンポリシロキサンの生成中に分岐してハイドロジェンポリシロキサンになることがあり得る。
HSiXを原料にすると分岐状、網状、籠状などとなる。両シラン化合物を併用すると、所々で分岐した直鎖状、あるいは、分岐度の小さい分岐状となる。SiXを併用すると分岐度が著しく大きくなる。
【0039】
ジハイドロジェンポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンの重量平均分子量は、ダイマー相当の分子量以上であればよく、特に限定されないが、通常60〜100,000の範囲内である。なお、この重量平均分子量は、実施例の段落番号0077に記載の方法により求めるものである。
【0040】
SiOM結合により多価金属酸化物微粒子に結合しているジハイドロジェンシロキサン、ジハイドロジェンポリシロキサン、ハイドロジェンシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンは、
平均シロキサン単位式(7):[H2SiO2/2x[HSiO3/2y[SiO4/2]z
(式中、x,y,zはモル分率を表わし、0≦x≦1.0,0≦y≦1.0,0≦z≦0.50,0.5≦x+y≦1.0、x+y+z=1.0である)で表わすことができる。しかし、zは0.50より大きく、x+yは0.50より小さくてもよい。
[H2SiO2/2]は、HSiX (式中、Xはハロゲン原子または炭素原子数1〜4のアルコキシル基を表わす。)に由来する単位であり、[HSiO3/2]は、HSiX (式中、Xはハロゲン原子または炭素原子数1〜4のアルコキシル基を表わす)に由来する単位であり、[SiO4/2]は、SiXに由来する単位である。
平均シロキサン単位式(7)を構成するシロキサン単位として、[H2SiO2/2]単独、[HSiO3/2]単独、[H2SiO2/2]と[HSiO3/2]の組合せ、[H2SiO2/2]と[SiO4/2]の組合せ、[HSiO3/2]と[SiO4/2]の組合せ、[H2SiO2/2]と[HSiO3/2]と[SiO4/2]の組合せがある。
なお、本明細書では、ジハイドロジェンシロキサン、ジハイドロジェンポリシロキサン、ハイドロジェンシロキサン、ハイドロジェンポリシロキサンのいずれか一つ、いずれか2種の組合せ、いずれか3種の組合せ、および、これら4種の組合せをハイドロジェンポリシロキサン類と略称する。
【0041】
ハイドロジェンポリシロキサン類が結合した多価金属酸化物微粒子は、
平均単位式(8):{[H2SiO2/2x[HSiO3/2y[SiO4/2]z}v[MOa/2]w
(式中、x,y,zはモル分率を表わし、0≦x≦1.0,0≦y≦1.0,0≦z≦0.50,0.5≦x+y≦1.0、x+y+z=1.0である。v、wは質量分率を表し、0<v<1.0,0<w<1.0,v+w=1である。Mは多価金属酸化物微粒子中の多価金属原子であり、aは多価金属原子の原子価である)で表すことができる。
上記平均単位式において、ハイドロジェンポリシロキサン類と、多価金属酸化物微粒子との質量比(v:w)は、特に限定されないが、ジハイドロジェンシロキサンとハイドロジェンシロキサンは、多価金属酸化物微粒子表面を装飾する形で結合している場合しかあり得ないので、v/(v+w)の値は小さく、約0.1以下である。
ジハイドロジェンポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンの量が少なすぎると硬化性が乏しく、多価金属酸化物微粒子量が少なすぎると硬化時の硬さが小さくなるので、v:wは好ましくは0.1:99.9〜99.0:0.1であり、より好ましくは1:99〜99:1であり、もっとも好ましくは、5:95〜90:10である。
ジハイドロジェンポリシロキサンおよび/またはハイドロジェンポリシロキサンが多価金属酸化物微粒子表面を装飾する形で結合している場合は、ジハイドロジェンポリシロキサンおよび/またはハイドロジェンポリシロキサンの量は合計質量の約10%以下、すなわち、v/(v+w)の値が約0.1以下である。
ジハイドロジェンポリシロキサンおよび/またはハイドロジェンポリシロキサンが結合した多価金属酸化物微粒子と、遊離状態のジハイドロジェンポリシロキサンおよび/またはハイドロジェンポリシロキサンとからなる硬化性組成物の場合は、多価金属酸化物微粒子量は合計質量の約90%以下、すなわち、w/(v+w)の値が約0.9以下である。
それより多価金属酸化物微粒子量が多いと硬化時に均一な硬化物になりにくいからである。
なお、硬化性の点で、ジハイドロジェンポリシロキサンおよび/またはハイドロジェンポリシロキサンが結合した多価金属酸化物微粒子と、遊離状態のジハイドロジェンポリシロキサンおよび/またはハイドロジェンポリシロキサンとからなる硬化性組成物が好ましい。
【0042】
ハイドロジェンポリシロキサン類が結合した多価金属酸化物微粒子中のハイドロジェンポリシロキサン類が、[SiO4/2]単位を含有していない場合は、
平均シロキサン単位式(9):{[H2SiO2/2x[HSiO3/2y}v[MOa/2]w
(式中、x,yはモル分率を表わし、0≦x<1.0,0≦y<1.0,x+y=1.0である。v、wは質量分率を表し、0<v<1.0,0<w<1.0,v+w=1である。Mは多価金属酸化物微粒子中の多価金属原子であり、aは多価金属原子の原子価である)で表すことができる。
【0043】
上記製造方法において、水酸基を有する多価金属酸化物微粒子に対する一般式(1)で表わされるシラン化合物の仕込み比率が小さい(ハイドロジェンポリシロキサン類の量が、合計質量の約10%以下である)と、ハイドロジェンポリシロキサン類が多価金属酸化物微粒子表面を装飾する形で結合している多価金属酸化物微粒子が有機溶媒中に分散している液状硬化性組成物が生成する。上記仕込み比率を大きくしていく(ハイドロジェンポリシロキサン類の量が、合計質量の約10%を超える)と、ジハイドロジェンポリシロキサン類が結合した多価金属酸化物微粒子が有機溶媒中に分散し、ハイドロジェンポリシロキサン類が有機溶媒に溶解した液状硬化性組成物が生成するようになる。
液状硬化性組成物中の、ハイドロジェンポリシロキサン類が結合した多価金属酸化物微粒子と遊離状態のハイドロジェンポリシロキサン類の質量比は、硬化性および硬化物の性状の点で、90:10〜1:99が好ましく、80:20〜10:90がより好ましい。
【0044】
ハイドロジェンポリシロキサン類が結合した多価金属酸化物微粒子が有機溶媒中に占める割合は、特に限定されないが、少なすぎると均一なコーテイング膜を形成しにくくなり、多すぎると粘稠になりコーテイングしにくくなるので、5〜50質量%が適切である。ハイドロジェンポリシロキサン類が結合した多価金属酸化物微粒子中の多価金属酸化物微粒子の平均粒径は、特に限定されないが、大きすぎると有機溶媒中で沈降しやすくなり、あまりにも小さいものは製造困難であるので、5〜100nmが適切である。該多価金属酸化物微粒子の平均粒径がこのように小さいと、ハイドロジェンポリシロキサン類が結合した多価金属酸化物微粒子の有機溶媒分散液は、コロイド状またはゾル状を呈する。
【0045】
有機溶媒は、ハイドロジェンポリシロキサン類が結合した多価金属酸化物微粒子を分散することができ、ヒドロシリル基を損傷しないものであればよい。メタノール、エタノール、イソプロパノールのような低級1価アルコール;エチレングライコールモノメチルエーテル、エチレングライコールモノエチルエーテルのような低級2価アルコールのモノアルキルエーテル;トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素;へキサン、オクタンのような低級脂肪族炭化水素が例示される。
【0046】
水酸基を有する多価金属酸化物微粒子が分散している有機溶媒中で、一般式(1)で表わされるシラン化合物(ただし、n=0のシラン化合物の場合は、n=1のシラン化合物またはn=2のシラン化合物とともに)を縮合反応または加水分解縮合反応させるときの温度は、常温〜50℃が好ましい。反応液を撹拌、振盪などして均一化させることが好ましい。縮合反応時間および加水分解・縮合反応時間は、原料であるシラン化合物が殆ど残存しないような時間であればよく、例えば30分〜3時間である。
【0047】
本発明に係る液状硬化性組成物は、有機溶媒中で一般式(2):MXm
(式中、Mは多価金属原子であり、Xはハロゲン原子または炭素原子数1〜4のアルコキシル基を表わし、mは多価金属原子の原子価である。)で表わされるアルコキシ化多価金属またはハロゲン化多価金属を加水分解縮合し、ついで、該有機溶媒中で、
一般式(1):HSiX4−n
(式中、Xはハロゲン原子または炭素原子数1〜4のアルコキシル基を表わし、nは0、1または2である。)で表わされるシラン化合物(ただし、n=0のシラン化合物の場合は、n=1またはn=2のシラン化合物とともに)を縮合反応または加水分解縮合反応させることによっても製造することができる。
有機溶媒、一般式(2)で表わされるアルコキシ化多価金属またはハロゲン化多価金属、その加水分解縮合条件、一般式(1) で表わされるシラン化合物、その縮合反応または加水分解縮合反応条件などについては、第一の製造方法で既に説明したと同様である。
【0048】
上記2種の製造方法において、
一般式(1)で表わされるシラン化合物(ただし、Xの少なくとも一つがハロゲン原子である)が加水分解すると、シラノール基を有するハイドロジェンシランとハロゲン化水素が副生する。また、テトラアルコキシシラン、ハイドロジェンアルコキシシランなどの加水分解促進のために添加したハロゲン化水素酸は、シラノール基を有するハイドロジェンポリシロキサン類と多価金属酸化物微粒子の水酸基との縮合反応の触媒となるが、縮合反応終了後は用済みとなる。かかるハロゲン化水素やハロゲン化水素酸は、減圧下撹拌する、乾燥窒素ガスを反応生成物に吹き込むなどの方法により除去することが好ましい。また、一般式(1)で表わされるシラン化合物(ただし、Xの少なくとも一つが炭素原子数1〜4のアルコキシル基である)が加水分解すると、炭素原子数1〜4のアルコールが副生する。かかるアルコールも、減圧下撹拌する、乾燥窒素ガスを反応生成物に吹き込むなどの方法により除去するとよい。
【0049】
反応終了後、水溶性有機溶媒、一般式(1)で表わされるシラン化合物、一般式(2)で表わされるアルコキシ化多価金属またはハロゲン化多価金属の加水分解により副生したアルコール、ハロゲン化水素(例えば、塩化水素)などを除去することにより、不純物と不要物を実質的に含まない液状硬化性組成物が得られる。その後、必要に応じて、濃縮や有機溶媒交換などを行ってもよい。たとえば反応系中に非極性有機溶媒としてトルエン、水溶性有機溶媒としてエタノールやメタノールが含んでいる場合には、反応終了後、エタノールやメタノールを除去し、必要量のトルエンを添加することによりハイドロジェンポリシロキサン類が結合した金属酸化物微粒子のトルエン分散液が得られる。
もっとも、遊離状態のハイドロジェンポリシロキサン類、未反応の多価金属酸化物微粒子が混在していることはあり得る。
ハイドロジェンポリシロキサン類が結合した多価金属酸化物微粒子の有機溶媒分散液の粘度は、原料である水酸基を有する多価金属酸化物微粒子の有機溶媒分散液の粘度よりは、通常大きい。
この有機溶媒分散液から有機溶媒を除去すると、ハイドロジェンポリシロキサン類が結合した多価金属酸化物微粒子が生成するが、遊離状態のハイドロジェンポリシロキサン類、未反応の多価金属酸化物微粒子が混在していることはあり得る。
【0050】
本発明に係る液状硬化性組成物の主要成分であるハイドロジェンポリシロキサン類が結合した多価金属酸化物微粒子中の多価金属酸化物微粒子は、好ましくはシリカ微粒子、酸化チタン微粒子、酸化ジルコニウム微粒子、アルミナ微粒子、酸化スズ微粒子および酸化亜鉛微粒子からなる群から選択されるもの、および、シリカ・酸化チタン複合微粒子、シリカ・酸化ジルコニウム複合微粒子またはシリカ・アルミナ複合微粒子であるが、組成物の保存安定性と性状および硬化物の性状の点でシリカ微粒子が好ましく、ついで、シリカ・酸化チタン複合微粒子、シリカ・酸化ジルコニウム複合微粒子、シリカ・アルミナ複合微粒子が好ましい。
【0051】
本発明に係る液状硬化性組成物の主要成分であるハイドロジェンポリシロキサン類が結合した多価金属酸化微粒子中のハイドロジェンポリシロキサン類、および、遊離状態で存在するハイドロジェンポリシロキサン類は、酸素ガス含有雰囲気下で150℃以上の温度で加熱すると、酸化反応によってケイ素原子に直結した水素原子が水酸基になり、ケイ素原子結合水素原子と脱水縮合反応を起こして架橋する。すなわち、SiOSi結合を形成して架橋し、硬化する。
酸素ガス含有雰囲気下での加熱の代わりに、純不活性ガス中や真空中で200℃以上の温度で加熱しても、分子の再分配反応が起こって架橋し、硬化する。加熱する温度は、200℃以上であり、好ましくは200〜450℃である。加熱時間は200℃では10時間以上が好ましく、それより高温になるほど短くてよい。
酸素ガス雰囲気下での加熱の代わりに、オゾン暴露、亜酸化窒素暴露または湿性アンモニア暴露によっても硬化する。
この硬化反応はオゾンでも誘起される反応であり、大気中の酸素ガスによる反応誘起よりも効率よく起きる。湿性アンモニア中ではケイ素直結水素原子が活性化され、空気中の水分と容易に反応して水酸基になり、ケイ素原子結合水素原子と脱水縮合反応を起こし架橋する。その結果、シリカ(酸化ケイ素)系硬化物が生成する。
【0052】
もっとも、多価金属酸化物微粒子に結合したハイドロジェンポリシロキサン類、あるいは、遊離状態で存在するハイドロジェンポリシロキサン類中のすべてのケイ素原子結合水素原子が消費される必要はなく、その一部、例えば60モル%以下が残留していてもよい。ケイ素原子結合水素原子の消費度合いが増すにしたがって、すなわち、SiOSi結合を形成するに従ってシリカ系硬化物の硬度が大きくなり、鉛筆硬度が4〜10、好ましくは5〜9となる。
【0053】
酸素ガス雰囲気の代表例は、空気である。空気より酸素ガス濃度の小さい酸素ガス含有窒素ガスやヘリウムガス、アルゴンガスであってもよい。加熱する温度は、150℃以上であり、好ましくは180℃以上であり、より好ましくは180〜450℃である。加熱時間は200℃では10時間以上が好ましく、それより高温になるほど短くてよい。
オゾンは、純粋のオゾン、オゾンを含有する空気、水蒸気を含有するオゾン、オゾンを含有する窒素ガスが例示され、これらのいずれでもよい。亜酸化窒素は、純粋の亜酸化窒素ガス、亜酸化窒素含有空気、亜酸化窒素含有窒素ガスが例示され、これらのいずれでもよい。湿性アンモニアは、アンモニアを含有する空気、水酸化アンモニウムガス、アンモニアと水蒸気を含有する窒素ガスが例示され、これらのいずれでもよい。オゾン暴露、亜酸化窒素暴露または湿性アンモニア暴露は、加熱下で行ってもよい。
【0054】
前記多価金属酸化物微粒子に結合したハイドロジェンポリシロキサン類、あるいは、遊離状態で存在するハイドロジェンポリシロキサン類は、高エネルギー線照射によっても硬化する。その代表例は電子線とX線である。電子線の照射量は、好ましくは0.5MGy〜10MGyである。
【0055】
本発明に係る液状硬化性組成物から有機溶媒を除去して作られた、ハイドロジェンポリシロキサン類が結合したシリカ微粒子と、遊離状態のハイドロジェンポリシロキサン類と、からなる硬化性組成物を、離型性のある型に入れ、必要に応じて120℃未満の硬化しない温度に保持して流動性を高め、ついで酸素ガス雰囲気下で150℃以上の温度での加熱により、または高エネルギー線照射により、硬化させてシリカ系成形体を形成し、該型から取り出することにより、シリカ系成形体を製造することができる。当該シリカ系成形体の形状は、特に制限されず、フィルム、スラブ、シート、短冊、三角柱、四角柱、円柱、立方体、直方体、円筒、真球、楕円球、凸型レンズの形状、凹型レンズの形状、プリズムの形状、紫外光源の封止材の形状、ランプのガラス外囲体の形状が例示される。
【0056】
ハイドロジェンポリシロキサン類が結合したシリカ微粒子と遊離状態のハイドロジェンポリシロキサン類とからなる常温で液状である硬化性組成物は、型への注入は容易である。しかし、常温で高粘度である組成物や、固形状である組成物は、必要に応じて120℃未満の硬化しない温度に保持して流動性を高める必要がある。型は、シリカ系ガラスに対する離型性さえあれば、金型、プラスチック型、セラミック型のいずれでもよい。型の内部は、成形物であるシリカ系硬化物、特には光学素子の形状に応じて種々の形状をとる。
このとき、型の転写を十分に行うためには、型面に密着することが重要であるから、硬化前の前記硬化性組成物は、その熱膨張と硬化収縮と硬化後の熱収縮を考慮する必要がある。室温近傍温度で型に前記硬化性組成物を注入または流入させ、120℃以上に加熱すると、前記硬化性組成物の線熱膨張係数が100〜150ppmであるので、数%膨張することになる。一方、縮合反応による硬化収縮は通常5%以上であるため、熱膨張と硬化収縮による体積変化は相殺できない。
したがって、硬化は加圧下で行うことが好ましい。
良好な光学特性を発現させるためには、硬化時に歪を発生させないようすることが好ましい。そのためには、熱硬化開始温度120℃未満の温度で粘度が10,000mPa・s以下、特には5,000mPa・s以下である前記硬化性組成物を使用することが好ましい。
型を使用しての成形は、圧縮成形、射出成形、トランスファー成形、注型成形、浸漬成形が例示される。圧縮成形、注型成形、射出成形、トランスファー成形には、加熱による硬化が適しており、注型成形と浸漬成形には高エネルギー線照射による硬化が適している。
【0057】
かくして得られたシリカ系成形体は、無色透明でありクラックおよび内部歪がなく、鉛筆硬度(JIS K5400の8.4.2に規定する鉛筆ひっかき値)が4〜9であり、適度な弾性があり、200nm以上の真空紫外光領域〜紫外光領域、すなわち、200〜400nmで光透過率90〜100%であり可視光領域〜1700nm以下の近赤外光領域、すなわち、400〜1700nmで光透過率90%以上であるので、光学素子用材料として有用である。
かくして得られたシリカ系成形体は、エリプソメーターで測定する限りは、複屈折は観測されず、その表面粗さがAtomic Force Microscopy(略称AFM)によれば12nm以下である。したがって、少なくとも200nmで1/10λ程度の精度が確保されるので、成形に使用した型内面の形状の転写性が良好である。
さらには、線熱体膨張係数は約120ppmであり、400℃近傍の温度での耐久性を有しているため、高温に曝される光学素子用材料として有用である。当該シリカ系硬化物からなる光学素子は、レンズ、ミラー、プリズム、封止材、回折格子、ランプのガラス外囲体が代表的である。
レンズは、凸レンズ、凹レンズ、回折レンズ、光拡散用レンズ、光ビーム集光レンズが例示される。光学素子を通過する光は、真空紫外線、遠紫外線、紫外線、エキシマレーザ光、固体レーザ光、YAGレーザ光、可視光線が例示される。
【0058】
ハイドロジェンポリシロキサン類が結合したシリカ微粒子と遊離状態のハイドロジェンポリシロキサン類とからなる硬化性組成物を、必要に応じて120℃未満の硬化しない温度に保持して流動性を高め、真空紫外光領域〜紫外光領域で光透過率90%以上であり可視光領域〜近赤外光領域で光透過率90%以上である光学部材上に被覆し、ついで、硬化させることにより、具体的には、酸素ガス含有雰囲気下で150℃以上の温度での加熱、不活性ガスもしくは真空中での200℃以上の温度での加熱、高エネルギー線照射、オゾン暴露、亜酸化窒素暴露または湿性アンモニア暴露により硬化させることにより、無色透明でありクラックおよび内部歪がなく、鉛筆硬度(JIS K5400の8.4.2に規定する鉛筆ひっかき値)が4〜9であり、200nm以上の真空紫外光領域〜紫外光領域で光透過率90%以上であり、可視光領域〜1700nm以下の近赤外光領域で光透過率90%以上であるシリカ系層を有する光学素子を製造することができる。
【0059】
真空紫外光領域〜紫外光領域で光透過率90%以上であり可視光領域〜近赤外光領域で光透過率90%以上である光学部材の代表例は、合成石英、天然石英、蛍石である。
【0060】
本発明に係る液状硬化性組成物が高粘度である場合は、有機溶剤によりさらに稀釈してからコーテイングに供することが好ましい。特に、膜厚がμmオーダのシリカ系薄層を形成するときは、溶剤稀釈が好ましい。溶剤として、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム等の含ハロゲン炭化水素;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の脂肪族ケトン;ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテルが例示される。
有機溶媒中の、ハイドロジェンポリシロキサン類が結合したシリカ微粒子の濃度、あるいは、ハイドロジェンポリシロキサン類が結合したシリカ微粒子と遊離状態のハイドロジェンポリシロキサン類の濃度は、これらを低粘度化または溶解して膜厚さがμmオーダのシリカ系薄層を形成するのに十分な濃度であればよく、例えば10〜60質量%、より望ましくは10〜50質量%である。
コーテイング方法は、特に限定されず、スピンコーテイング、ブレードコーテイング、スプレー、ローラコーテイング、浸漬コーテイングが例示される。シリカ系膜の膜厚は、1〜10μm、さらには1mm位まで種々の厚みをとり得る。
【0061】
かくして得られたシリカ系薄層を有する光学部材は、クラックおよび内部歪がなく、鉛筆硬度(JIS K5400の8.4.2に規定する鉛筆ひっかき値が4〜9であり、200nm以上の真空紫外光領域〜紫外光領域、すなわち、200〜400nmで光透過率90%以上であり、可視光領域〜1700nm以下の近赤外光領域、すなわち、400〜1700nmで光透過率90%以上であるので、光学素子として有用である。
さらには、かくして得られたシリカ系薄層を有する光学素子は、還元性を有するため反射防止膜を構成するスパッタ成膜物質に対する制限はあるが、ガラス同様に反射防止膜を形成できる。
さらには、線熱体膨張係数は約120ppmであり、400℃近傍の温度での耐久性を有しているため、高温に曝される光学素子用材料として有用である。
かくして得られた、クラックおよび内部歪がなく、鉛筆硬度(JIS K5400の8.4.2に規定する鉛筆ひっかき値が4〜9であり、200nm以上の真空紫外光領域〜紫外光領域で光透過率90%以上であり、可視光領域〜1700nm以下の近赤外光領域で光透過率90%以上であるシリカ系薄層を有する光学素子は、レンズ、ミラー、プリズム、回折格子、封止材、ランプのガラス外囲体、光導波路が代表的である。
レンズは、凸レンズ、凹レンズ、回折レンズ、光拡散用レンズ、光ビーム集光レンズが例示される。光学素子を通過する光は、170nm以上の真空紫外線、遠紫外線、紫外線、エキシマレーザ光、固体レーザ光、YAGレーザ光、可視光線、1700nm以下の近赤外光が例示される。
【0062】
本発明に係る液状硬化性組成物を、無機質基板上に被覆し、ついで、硬化させることにより、具体的には、酸素ガス含有雰囲気下で150℃以上の温度での加熱、不活性ガスもしくは真空中での200℃以上の温度での加熱、高エネルギー線照射、オゾン暴露、亜酸化窒素ガス暴露または湿性アンモニアガス暴露により硬化させることにより、平坦でありクラックがなく、耐熱性、電気絶縁性、可撓性に優れ、鉛筆硬度が4H〜9H、より好ましくは7H〜9Hであるシリカ系層を有する無機質基板を製造することができる。
【0063】
シリカ系層を形成するための無機質基板は、350℃以上、好ましくは500℃以上、さらに好ましくは700℃以上の耐熱性を有すること、および、表面加工と使用時の応力、変位に耐えることができる機械的強度と耐久性を有することが必要である。
その代表例は、金属板、セラミック板、非光学ガラス板および半導体チップである。金属板、セラミック板、非光学ガラス板のような無機質基板は、厚みがあって可撓性を有しないもの、薄くて可撓性を有するもののいずれでもよい。しかし、薄膜太陽電池、反射型液晶表示装置用薄膜トランジスター(TFT)、薄膜エレクトロルミネッセンス表示素子ないし装置等の薄膜半導体素子ないし装置用には、薄くて可撓性を有するものである必要がある。
機械的強度の点で、金属薄板、金属箔が好ましく、金属の具体例としては、金、銀、銅、ニッケル、チタン、チタン合金、アルミニウム、ジュラルミン、スチール、特には、ステンレススチール、モリブデン鋼が例示される。ステンレススチール箔として、フェライト系ステンレススチール箔、マルテンサイトステンレススチール箔、オーステナイトステンレススチール箔が例示される。また、透明性の点でガラス薄板が好ましい。
【0064】
無機質基板としての薄板は、厚みが10μm以上1mm以下であることが好ましく、20μm以上200μm以下であることがより好ましい。かかる薄板の厚みは薄いほど高屈曲性の可撓性基板が得られる。しかし、10μm未満では、撓みが大きくハンドリング性に欠けるという不都合があり、また、200μmを超えると、可撓性が小さくなり、薄膜太陽電池等の薄膜半導体装置の基板として不適になりがちである。
【0065】
本発明に係る液状硬化性組成物の無機質基板へのコーテイング方法は、特に限定されず、スピンコーテイング、ブレードコーテイング、スプレー、ローラコーテイング、浸漬コーテイングが例示される。主にハイドロジェンポリシロキサン類が結合した多価金属酸化物微粒子(特にはシリカ微粒子)が硬化して形成されるシリカ系層、および、主にハイドロジェンポリシロキサン類が結合した多価金属酸化物微粒子(特にはシリカ微粒子)と遊離状態のハイドロジェンポリシロキサン類が硬化して形成されるシリカ系層の厚みは、通常0.1〜10μmであり、可撓性がさほど要求されない場合は10μmより厚くてもよく、極端な場合は1mm位まで種々の厚みをとり得る。
【0066】
シリカ系層は、多くの場合無機質基板の片面に形成されるが、無機質基板の両面に形成してもよい。無機質基板の両面にシリカ系層が存在するものを形成するには、その片面に本発明に係る液状硬化性組成物をスピンコーテイング、ブレードコーテイング、スプレーまたはローラコーテイングし、加熱して硬化させ、ついで、反対面に本発明に係るコーテイング剤をスピンコーテイング、ブレードコーテイング、スプレーまたはローラコーテイングし、加熱して硬化させればよい。あるいは、無機質基板を本発明に係る液状硬化性組成物中に浸漬して引き上げ、加熱して硬化させればよい。あるいは、無機質基板の両面に本発明に係る液状硬化性組成物を噴霧し、加熱して硬化させればよい。
【0067】
主にハイドロジェンポリシロキサン類が結合した多価金属酸化物微粒子(特にはシリカ微粒子)からなる硬化性組成物、あるいは、ハイドロジェンポリシロキサン類が結合した多価金属酸化物微粒子(特にはシリカ微粒子)と遊離状態のハイドロジェンポリシロキサン類とからなる硬化性組成物の硬化物であり鉛筆硬度が4H〜9H、より好ましくは7H〜9Hであるシリカ系層を有する無機質基板は、該シリカ系層により平坦化されており、平坦さが10nm以下であり、該シリカ系層は優れた耐熱性、耐寒性、電気絶縁性、機械的強度、耐薬品性等を併せ持つので、太陽電池、反射型液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス表示装置等の製造に使用される基板として有用である。
無機質基板が可撓性金属薄板である場合は、薄膜太陽電池、反射型液晶表示装置用薄膜トランジスター(TFT)、薄膜エレクトロルミネッセンス表示素子ないし装置、薄膜型リチウム電池の電極用基板として有用である。無機質基板がガラス薄板である場合は、薄膜太陽電池、透過型液晶表示装置用薄膜トランジスター(TFT)、薄膜エレクトロルミネッセンス表示素子ないし装置等の製造に使用される無機質基板としてとして有用である。
【0068】
前記硬化性組成物の硬化物であり、鉛筆硬度が4H〜9H、より好ましくは7H〜9Hであるシリカ系層を有する可撓性金属薄板の表面に第1電極薄膜を形成し、該第1電極薄膜上にシリコン半導体薄膜を形成し、ついで該シリコン半導体薄膜上に第2電極薄膜を形成することにより薄膜太陽電池を製造することができる。あるいは、前記硬化性組成物の硬化物であり鉛筆硬度が4H〜9Hであるシリカ系層を有する可撓性金属薄板の表面に第1電極薄膜を形成し、該第1電極薄膜上に化合物半導体薄膜を形成し、ついで化合物半導体薄膜を熱処理することにより薄膜太陽電池を製造することができる。
【0069】
前記硬化性組成物の硬化物であり、鉛筆硬度が4H〜9H、好ましくは7H〜9Hであるシリカ系層を有する可撓性金属薄板の表面にアモルファスシリコン半導体薄膜を形成し熱処理して薄膜トランジスターを製造することができる。
【0070】
前記硬化性組成物の硬化物であり、鉛筆硬度が4H〜9H、好ましくは7H〜9Hであるシリカ系層を有する可撓性金属薄板の表面にシリコン含有導電性電極層を形成し、該シリコン含有導電性電極層上に電気絶縁層を形成し、該電気絶縁層上に発光層を形成し、ついで熱処理等することにより薄膜エレクトロルミネッセンス(EL)素子を製造することができる。
【0071】
さらには、前記硬化性組成物の硬化物であり、鉛筆硬度が4H〜9H、好ましくは7H〜9Hであるシリカ系層を有する可撓性金属薄板の表面に酸化マンガン薄膜、LiMn等の正電極層を形成することによりリチウム電池の正極材料を製造することができる。
これらの製造時には、高温での蒸着、プラズマCVD、スパッタリング、高温熱処理等が行われるので、これら可撓性金属薄板は、きわめて高温、例えば、400℃〜700℃に曝されるが、前記硬化性組成物の硬化物であり、鉛筆硬度が4H〜9H、好ましくは7H〜9Hであるシリカ系層を有するので変質、劣化、変形することがない。
【0072】
薄膜半導体装置の代表例である薄膜太陽電池は、一般に、金属薄板にまずモリブテン等の金属層を被着させた後、フォトエッチング等の手法により薄膜電極層を形成し、ついで半導体層を被着させた後、フォトエッチングやレーザースクライブ等の手法により薄膜半導体層を形成する。ついで該薄膜半導体層上に透明導電膜を被着させた後、フォトエッチング等の手法により薄膜電極層を形成する等の工程を経て製造される。このため、金属薄板は、耐薬品性、耐腐食性等が要求される。
薄膜太陽電池は、可撓性が必要な用途に使用されるため、金属薄板は、可撓性が必要であり、特には、熱伝導性、耐薬品性、耐腐食性の点より、ステンレススチール、モリブデン鋼、アルミナ等が適する。金属薄板は、前記特性のほか、入手可能性、経済性等の観点より、特にはステンレススチール薄板、すなわち、ステンレススチール箔が好ましい。ステンレススチール箔として、フェライト系ステンレススチール箔、マルテンサイトステンレススチール箔、オールステナイトステンレススチール箔が例示される。
【0073】
前記硬化性組成物の硬化物であり、鉛筆硬度が4H〜9H、好ましくは7H〜9Hであるシリカ系層上に形成される金属電極の金属の種類には特に制約はなく、モリブテン、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、錫、これら金属の合金が例示される。
この金属電極上に形成する半導体層用の半導体として、多結晶シリコン半導体、単結晶シリコン半導体、アモルファスシリコン半導体、化合物半導体が例示され、化合物半導体としては、CIS、CdTe、GICSが例示される。これらの半導体層上に形成する透明電極としては酸化インジウム−スズ合金、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛が例示される。この透明電極上にさらに必要に応じて保護層を形成するが、この保護層としてフッ素樹脂、透明ポリイミドなどの光透過率が高く、かつ耐候性にすぐれた高分子材料が好適である。
【0074】
かくして得られた薄膜太陽電池は、その基板がフレキシブルであり、折り曲げ可能であり、製造時あるいは取り扱い時に割れることがなく、シリカ系ガラス薄層にクラックが生じたり、ステンレススチール箔から剥がれたりすることがないため、生産性、ハンドリング性、耐久性等が優れている。薄膜太陽電池だけでなく、反射型液晶表示装置用薄膜トランジスター(TFT)、薄膜エレクトロルミネッセンス表示素子ないし装置、薄膜型リチウム電池等の薄膜半導体装置についても同様である。
【実施例】
【0075】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の実施例と比較例中、%は特に記載が無い限り質量基準である。
実施例と比較例中、溶解、撹拌、コーテイング、加熱等の操作および測定は、特に断らない限り実験室雰囲気中で行った。
【0076】
実施例と比較例中、諸特性は下記の条件により測定した。
トルエン分散液および液状硬化性組成物の粘度は、TOKIMEC製のE型回転粘度計により25℃で測定した。
【0077】
硬化性組成物中のハイドロジェンポリシロキサン類が結合した多価金属酸化物微粒子、および、硬化性組成物中のハイドロジェンポリシロキサン類が結合した多価金属酸化物微粒子とハイドロジェンポリシロキサン類の重量平均分子量と分子量分布は、ゲルパーミエーション(GPC)により測定した。GPC装置として、東ソー株式会社製のHLC-8020 ゲルパーミエーション(GPC)に屈折率検出器と東ソー株式会社製のTSKgel GMHXL-L カラム2個を取り付けたものを使用した。試料は2質量%クロロホルム溶液にして溶出曲線の測定に供した。検量線は重量平均分子量既知の標準ポリスチレンを用いて作成した。重量平均分子量は標準ポリスチレン換算して求めた。
【0078】
硬化性組成物中のハイドロジェンポリシロキサン類が結合した多価金属酸化物微粒子、および、硬化性組成物中のハイドロジェンポリシロキサン類が結合した多価金属酸化物微粒子とハイドロジェンポリシロキサン類の29Si−NMRスペクトルと1H−NMRスペクトルは、Bruker ACP-300 Spectrometerにより測定した。
シラノール基と水酸基(吸収波数3200〜3800cm−1)、およびケイ素原子結合水素原子(SiH2基は吸収波数2264cm−1、SiH基は2260cm−1)の存在は、FT-IRスペクトルの吸収波数により同定した。FT-IRスペクトルは、Nicolet Protege 460 Spectrometerにより測定した。
【0079】
シリカ微粒子等の多価金属酸化物微粒子の平均粒子径は、日機装株式会社製のMICROTRAC UPA−150を用いて動的光散乱法にて測定した。
液状硬化性組成物の固形分は、試料1gをステンレス製シャーレに精秤し、一晩室温で風乾した後、120℃の恒温槽に3時間保存して溶媒を除去した後の残分から求めた。
【0080】
硬化物であるシリカ系薄層の鉛筆硬度(鉛筆ひっかき値)は、JIS K5400の8.4.2に従い各種硬度の鉛筆で表面をひっかき、傷が発生しない最大硬度の鉛筆の硬度(濃度記号)で示した。
硬化物であるシリカ系薄層のクラックは、KEYENCE VH-7000電子顕微鏡により観察した。
【0081】
シリカ系薄層の表面粗さは、AFM−DI5000 Atomic Force Microscope (略称AFM)を用いて25μmスキャンで観測した。
シリカ系薄層の厚さは、その切断面をFESEM-JEOL JSM-6335F Field Emission Scanning Electron Microscopeにより観測した。
【0082】
[実施例1]
攪拌機、窒素ガス導入管、コンデンサー、温度計および注入口を備えたガラス製反応容器に、水溶性溶媒としてエタノール65g、非極性溶媒としてトルエン65g、水3.5g(0.198モル)及び加水分解触媒として35%塩酸水溶液0.20g(水0.128g(0.070モル)を含有)を仕込み、室温で10分間激しく撹拌することにより、均一な液体を得た。ついで、テトラエトキシシラン20.8g(0.10モル)を投入し、30℃で1時間撹拌して加水分解縮合反応させた。ついで、ブタノール10gを投入し、加熱してエタノールを除去した。トルエンを追加しながらブタノールを除き、シラノール基を有するシリカ微粒子のトルエン分散液を得た。このトルエン分散液を零下5℃に冷却し、ジハイドロジェンジクロロシランを2.02g(0.02モル)含有する10mlのトルエン溶液を1時間掛けて投入し、2時間攪拌して加水分解縮合反応させた。その後反応液を室温に戻し、さらに2時間攪拌して加水分解縮合反応させた。ついで、トルエンを65g投入し、減圧下40℃以下の温度で、エタノール及びブタノールをトルエンと共に除去することにより、反応したシリカ微粒子のトルエン分散液(SiO2濃度15質量%、25℃における粘度3.5mPa・s、動的光散乱法粒子径21nm)を得た。この反応したシリカ微粒子のトルエン分散液の一部をプラスチック製容器に密閉し、5℃の冷蔵庫で1ヶ月保持した後、粘度を測定したところ、3.8mPa・sであった。
この反応したシリカ微粒子の分散液の29Si−NMRスペクトルにおける、HSiO単位に由来する−50.1ppmのシグナルの積分値とHSiO3/2単位に由来する−84.5ppmのシグナルの積分値とSiO2に由来する−112.4ppmのシグナルの積分値から求めた平均シロキサン単位式は、(H2SiO2/20.10(HSiO3/20.05(SiO20.85であることが判明した。なお、HSiO3/2単位は、ジハイドロジェンポリシロキサンが分岐して生成したため含まれている。
この反応したシリカ微粒子のトルエン分散液から得た固形のシリカ微粒子のFT−IRの測定では、2264cm−1と2200cm−1にケイ素原子結合水素原子(SiH2基およびSiH基)に由来する吸収ピークが観測されたが、シラノール基に由来する吸収ピークは、反応前のシリカ微粒子に比べて約50%強減少していた。同じく29SiNMRスペクトルではSiOHに由来する−102.4ppmのピークが明らかに減少していた。これらの測定結果から、このトルエン分散液が、主に、ジハイドロジェンポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンが結合したシリカ微粒子と、トルエンとからなる液状硬化性組成物であると解される。
【0083】
[実施例2]
実施例1において、テトラエトキシシランの加水分解縮合によるシラノール基を有するシリカ微粒子のトルエン分散液に、ジハイドロジェンジクロロシラン2.02g(0.02モル)を含有するトルエン溶液10mlの代わりに、ジハイドロジェンジクロロシラン1.01g(0.010モル)とハイドロジェントリクロロシラン2.03g(0.015モル)(モル比=2:3)を含有するトルエン溶液10.0mlを投入し、室温で2時間撹拌して反応させた。反応液にイソプロピルアルコールを10ml加え、減圧下、40℃以下の温度で、エタノール及びメタノールをトルエンと共に除去することにより、反応したシリカ微粒子のトルエン分散液を得た(SiO2濃度20質量%、20℃における比重1.160、20℃における粘度3.8mPa・s、動的光散乱法粒子径31nm)を得た。このトルエン分散液の一部をプラスチック製容器に密閉し、5℃の冷蔵庫で1ヶ月保持した後、粘度を測定したところ、3.9mPa・sであった。
このトルエン分散液の29Si−NMRスペクトルにおける、HSiO単位に由来する−50.1ppmのシグナルの積分値とHSiO3/2単位に由来する−84.5ppmのシグナルの積分値とSiO2に由来する−112.4ppmのシグナルの積分値から求めた平均シロキサン単位式は、(H2SiO2/2)0.05(HSiO3/2)0.13(SiO2)0.82であることが判明した。また、このトルエン分散液から得た固形のシリカ微粒子のFT−IRの測定では、2264cm−1と2200cm−1にケイ素原子結合水素原子(SiH基とSiH基)に由来する吸収ピークが観測されたが、シラノール基に由来する吸収ピークは反応前のシリカ微粒子に比べて約50%強減少していた。同じく29SiNMRスペクトルではSiOHに由来する−102.4ppmのピークも明らかに減少していた。これらの測定結果から、このトルエン分散液が、主に、ハイドロジェンポリシロキサンおよびジハイドロジェンポリシロキサンが結合したシリカ微粒子と、トルエンとからなる液状硬化性組成物であると解される。
【0084】
[実施例3]
実施例1において、ジハイドロジェンジクロロシランを2.02g(0.020モル)から8.08g(0.080モル)に増量した以外は、実施例1と同様の操作を行い、トルエン中に反応したシリカ微粒子が分散し、ジハイドロジェンポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンが溶解した液状組成物(固形分濃度15質量%、25℃における粘度5.0mPa・s)を得た。このコロイド状の液状組成物の一部をプラスチック製容器に密閉し、5℃の恒温槽内で1ヶ月保持した後、粘度を測定したところ、3.8mPa・sであった。この液状組成物の29Si−NMRスペクトルにおける、HSiO単位に由来する−50.1ppmのシグナルの積分値とHSiO3/2単位に由来する−84.5ppmのシグナルの積分値とSiO2に由来する−112.4ppmのシグナルの積分値から求めた平均シロキサン単位式は、(H2SiO2/2)0.20(HSiO3/2)0.34 (SiO2)0.46であることが判明した。なお、HSiO3/2単位は、ジハイドロジェンポリシロキサンが分岐して生成したため含まれている。
また、この液状組成物から得た固形の反応したシリカ微粒子のFT−IRの測定では、2264cm−1と2200cm−1にケイ素原子結合水素原子(SiH2基およびSiH基)に由来する吸収ピークが観測されたが、シラノール基に由来する吸収ピークは反応前のシリカ微粒子に比べて約50%強減少していた。同じく29SiNMRスペクトルではSiOHに由来する−102.4ppmのピークが明らかに減少していた。これらの測定結果から、この液状組成物が、主に、ジハイドロジェンポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンが結合したシリカ微粒子と、ジハイドロジェンポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンと、トルエンとからなる液状硬化性組成物であると解される。
【0085】
[実施例4]
実施例2において、ジハイドロジェンジクロロシラン1.01g(0.010モル)とハイドロジェントリクロロシラン2.03g(0.015モル)の代わりに、ジハイドロジェンジクロロシラン8.08g(0.08モル)とハイドロジェントリクロロシラン32.52g(0.24モル)の混合物を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行うことにより、トルエン中に反応したシリカ微粒子が分散し、ハイドロジェンポリシロキサンレジンが溶解した液状組成物(固形分濃度15質量%、25℃における粘度5.0mPa・s)を得た。この液状組成物の29Si−NMRスペクトルにおける、HSiO単位に由来する−50.1ppmのシグナルの積分値とHSiO3/2単位に由来する−84.5ppmのシグナルの積分値とSiO2に由来する−112.4ppmのシグナルの積分値から求めた平均シロキサン単位式は、(H2SiO2/2)0.15(HSiO3/2)0.62(SiO2)0.2であることが判明した。このコロイド状の液状組成物から得た固形のシリカ微粒子のFT−IRの測定では、2264cm−1と2200cm−1にケイ素原子結合水素原子(SiH基とSiH基)に由来する吸収ピークが観測されたが、シラノール基に由来する吸収ピークは反応前のシリカ微粒子に比べて約50%強減少していた。同じく29SiNMRスペクトルではSiOHに由来する−102.4ppmのピークが明らかに減少していた。これらの測定結果から、この液状組成物が、主に、ハイドロジェンポリシロキサンおよびジハイドロジェンポリシロキサンが結合したシリカ微粒子と、ハイドロジェンポリシロキサンレジンと、トルエンとからなる液状硬化性組成物であると解される。
【0086】
[実施例5]
攪拌機、窒素ガス導入管及び温度計を備えた反応容器に、水溶性溶媒としてメタノール65g、非極性溶媒としてトルエン65g、水3.50g(0.198モル)及び加水分解触媒として35%塩酸水溶液0.20g(水0.128g(0.070モル)を含有)を仕込み、室温で10分間激しく撹拌することにより、均一な液体を得た。ついで、テトラメトキシシラン15.2g(0.10モル)を投入し、30℃で1時間撹拌した後、ジハイドロジェンジエトキシシランを2.40g(0.020モル)含有するトルエン溶液10mlの1時間かけて投入し、2時間攪拌して加水分解縮合反応させた。その後、イソプロピルアルコールを10ml加え、トルエンを追加しながら、減圧下、更に40℃以下の温度で、エタノール及びメタノールをトルエンと共に除去し、反応したシリカ微粒子のトルエン分散液(SiO2濃度15質量%、20℃における粘度3.5mPa・s、動的光散乱法粒子径25nm)を得た。このコロイド状のトルエン分散液の一部をプラスチック製容器に密閉し、5℃の冷蔵庫で1ヶ月保持した後、粘度を測定したところ、3.8mPa・sであった。このコロイド状のトルエン分散液の29Si−NMRスペクトルにおける、HSiO単位に由来する−50.1ppmのシグナルの積分値とHSiO3/2単位に由来する−84.5ppmのシグナルの積分値とSiO2に由来する−112.4ppmのシグナルの積分値から求めた平均シロキサン単位式は、(H2SiO2/20.12(HSiO3/20.05(SiO20.83であることが判明した。なお、HSiO3/2単位は、ジハイドロジェンポリシロキサンが分岐して生成したため含まれている。
また、このトルエン分散液から得た固形のシリカ微粒子のFT−IRの測定では、2264cm−1と2200cm−1にケイ素原子結合水素原子(SiH基とSiH基)に由来する吸収ピークが観測されたが、シラノール基に由来する吸収ピークは反応前のシリカ微粒子に比べて約50%強減少していた。同じく29SiNMRスペクトルではSiOHに由来する−102.4ppmのピークが明らかに減少していた。これらの測定結果から、このトルエン分散液が、主に、ジハイドロジェンポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンが結合したシリカ微粒子と、トルエンとからなる液状硬化性組成物であると解される。
【0087】
[実施例6]
実施例5において、ジハイドロジェンジエトキシシラン2.40g(0.020モル)の代わりに、ジハイドロジェンジエトキシシラン0.96g(0.008モル)とハイドロジェントリエトキシシラン1.96g(0.012モル)(モル比=2:3)の混合物を用いた以外は、実施例5と同様の操作を行い、反応したシリカ微粒子のトルエン分散液(SiO2濃度20質量%、20℃における比重1.160、20℃における粘度3.8mPa・s、イソプロピルアルコール濃度0.5質量%、動的光散乱法粒子径35nm)を得た。このコロイド状のトルエン分散液の一部をプラスチック製容器に密閉し、5℃の恒温槽内で1ヶ月保持した後粘度を測定したところ、3.9mPa・sであった。このトルエン分散液の29Si−NMRスペクトルにおける、HSiO単位に由来する−50.1ppmのシグナルの積分値とHSiO3/2単位に由来する−84.5ppmのシグナルの積分値とSiO2に由来する−112.4ppmのシグナルの積分値から求めた平均シロキサン単位式は(H2SiO2/2)0.03(HSiO3/2)0.17(SiO2)0.80であることが判明した。また、FT−IRの測定では、2264cm−1と2200cm−1にケイ素原子結合水素原子(SiHとSiH基)に由来する吸収ピークが観測されたが、シラノール基に由来する吸収ピークは反応前のシリカ微粒子に比べて約50%強減少していた。同じく29SiNMRスペクトルではSiOHに由来する−102.4ppmのピークも明らかに減少していた。これらの測定結果から、このトルエン分散液が、主に、ハイドロジェンポリシロキサンおよびジハイドロジェンポリシロキサンが結合したシリカ微粒子と、トルエンとからなる液状硬化性組成物であると解される。
【0088】
[実施例7]
実施例1と同様の反応容器に、エタノール65.0g、トルエン15.0g、水3.60gを投入し、室温で10分間激しく撹拌することにより、均一な液体を得た。ついで、テトラエトキシシラン16.6g(0.080モル)を投入し、30℃で1時間撹拌した後、トリイソプロポキシアルミニウム4.08g(0.02モル)を投入し、30℃で1時間攪拌した。次いで、ジハイドロジェンジクロロシラン2.02g(0.020モル)を投入し、30℃で2時間攪拌して加水分解縮合反応させた。その後、常圧にて、エタノール及びイソプロパノールをトルエンと共に除去することにより、反応したシリカ・アルミナ複合微粒子のトルエン分散液(固形成分15質量%、25℃における粘度3.5mPa・s、動的光散乱法粒子径21nm)を得た。このコロイド状のトルエン分散液の一部をプラスチック製容器に密閉し、5℃の恒温槽内で1ヶ月保持した後、粘度を測定したところ、3.8mPa・sであった。
このコロイド状のトルエン分散液の29Si−NMRスペクトルにおける、HSiO単位に由来する−50.1ppmのシグナルの積分値とHSiO3/2単位に由来する−84.5ppmのシグナルの積分値とSiO2に由来する−112.4ppmのシグナルの積分値とから求めた平均シロキサン単位式は、(H2SiO2/20.12(HSiO3/20.03(SiO20.68(Al2O30.17であることが判明した。また、このトルエン分散液から得た固形のシリカ・アルミナ複合微粒子のFT−IRの測定では、ケイ素原子結合水素原子(SiHとSiH基)に由来する吸収ピークが観測されたが、シラノール基と水酸基に由来する吸収ピークは反応前のシリカ・アルミナ複合微粒子に比べて約50%強減少していた。同じく29SiNMRスペクトルではSiOHに由来する−102.4ppmのピークが明らかに減少していた。これらの測定結果から、このトルエン分散液が、主にジハイドロジェンポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンが結合したシリカ・アルミナ複合微粒子と、トルエンとからなる液状硬化性組成物であると解される。
【0089】
[実施例8]
実施例1と同様の反応容器に、エタノール65.0g、トルエン15.0g、水3.60gを投入し、室温で10分間激しく撹拌することにより、均一な液体を得た。ついで、テトラエトキシシラン16.6g(0.080モル)を投入し、30℃で1時間撹拌した後、テトライソプロポキシチタン5.8g(0.020モル)を投入し、30℃で1時間攪拌した。次いで、ジハイドロジェンジクロロシラン2.02g(0.020モル)を投入し、30℃で1時間撹拌し、70℃で2時間攪拌して加水分解縮合反応させた。その後、更に温度を上げて、常圧にて、エタノール及びイソプロパノールをトルエンと共に除去することにより、反応したシリカ・チタニア複合微粒子のトルエン分散液(固形成分15質量%、25℃における粘度3.5mPa・s、動的光散乱法粒子径25nm)を得た。このコロイド状のトルエン分散液の一部をプラスチック製容器に密閉し、5℃の恒温槽内で1ヶ月保持した後、粘度を測定したところ、3.8mPa・sであった。
このトルエン分散液の29Si−NMRスペクトルにおける、HSiO単位に由来する−50.1ppmのシグナルの積分値とHSiO3/2単位に由来する−84.5ppmのシグナルの積分値とSiO2に由来する−112.4ppmのシグナルの積分値から求めた平均シロキサン単位式は、(H2SiO2/20.10(HSiO3/20.05(SiO20.68(TiO20.17であることが判明した。また、このトルエン分散液から得た固形のシリカ・チタニア複合微粒子のFT−IRの測定では、2264cm−1と2200cm−1にケイ素原子結合水素原子(SiH2基およびSiH基)に由来する吸収ピークが観測されたが、シラノール基と水酸基に由来する吸収ピークは反応前のシリカ・チタニナ複合微粒子に比べて約50%強減少していた。同じく29SiNMRスペクトルではSiOHに由来する−102.4ppmのピークが明らかに減少していた。これらの測定結果から、このトルエン分散液が、主に、ジハイドロジェンポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンが結合したシリカ・チタニア複合微粒子と、トルエンとからなる液状硬化性組成物であると解される。
【0090】
[実施例9]
実施例1と同様の反応容器に、オクチルスルスルホン酸ナトリウムト1.0gを含むトルエン300mlと濃塩酸100mlを投入して攪拌し零下5℃以下まで冷却した。窒素ガス雰囲気中で撹拌しつつ、トルエン10gとハイドロジェントリクロロシラン9.6gとジハイドロジェンジクロロシラン7.3gとコロイダルシリカのトルエン分散液(固形分40質量%)(日産化学株式会社製、商品名:TOL−ST、平均粒径10nm〜20nm)4.3gの混合液を5℃以下で滴下した。滴下終了後、室温で1時間攪拌した後、分液ロートで有機層を分取し、水洗後、無水硫酸マグネシウム粉末を投入して乾燥した。その後、乾燥剤を濾別し、濾液中のトルエンを加熱減圧下除去し、真空中で乾固して液状組成物 を得た。この液状組成物について、GPCにより分子量分布を測定したところ複数のピークを有しており、重量平均分子量は5.0 x103であった。この液状組成物の29Si−NMRスペクトルにおける、HSiO単位に由来する−50.1ppmのシグナルの積分値とHSiO3/2単位に由来する−84.5ppmのシグナルの積分値とSiO2に由来する−112.4ppmのシグナルの積分値から求めた平均シロキサン単位式は、(H2SiO2/2)0.38(HSiO3/2)0.41(SiO2)0.20であることが判明した。また、この液状組成物のFT−IRの測定では、2264cm−1と2200cm−1にケイ素原子結合水素原子(SiH基とSiH基)に由来する吸収ピークが観測されたが、シラノール基に由来する吸収ピークは、反応前のシリカ微粒子に比べて約50%強減少していた。同じく29SiNMRスペクトルではSiOHに由来する−102.4ppmのピークが明らかに減少していた。これらの測定結果から、この液状組成物が、主に、ジハイドロジェンポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンが結合したシリカ微粒子と、ハイドロジェンポリシロキサンレジンと、トルエンとからなる液状硬化性組成物であると解される。
【0091】
[実施例10]
実施例1と同様の反応容器に、トルエン200mlとジハイドロジェンジクロロシラン24.8g(0.25モル)を投入し、撹拌しつつ零下5℃以下まで冷却した。窒素ガス雰囲気下で混合液を攪拌しながらコロイダルシリカのトルエン分散液(固形分40質量%)(日産化学株式会社製、商品名:TOL−ST、平均粒径10nm〜20nm)30gとトルエン30gの混合液を5℃以下で30分間にわたって滴下した。滴下終了後、更にさらに2時間攪拌した後、撹拌しつつ水5.4g(0.30モル)を3時間にわたって滴下し、更に30分攪拌した後、じょじょに室温に戻し、また更に30分間攪拌した後、水、生成した塩酸などをトルエンと共に減圧蒸留して濃縮し、0.45ミクロンフィルターを通し、トルエンで希釈して固形分25質量%になるよう調整した。得られた液状組成物の25℃における粘度は5.0mPa・sであった。この液状組成物の一部をプラスチック製容器に密閉し、5℃の冷蔵庫にで1ヶ月保持した後、粘度を測定したところ、3.8mPa・sであった。
この液状組成物の29Si−NMRスペクトルにおける、HSiO単位に由来する−50.1ppmのシグナルの積分値とSiO2に由来する−112.4ppmのシグナルの積分値から求めた平均シロキサン単位式は、(H2SiO2/2)0.44(SiO2)0.56であることが判明した。また、FT−IRの測定では、2264cm−1にケイ素原子結合水素原子(SiH2基)に由来する吸収ピークが観測されたが、シラノール基に由来する吸収ピークは、反応前のシリカ微粒子に比べて約50%強減少していた。同じく29SiNMRスペクトルではSiOHに由来する−102.4ppmのピークが明らかに減少していた。これらの測定結果から、この液状組成物が、主に、ジハイドロジェンポリシロキサンが結合したシリカ微粒子と、ジハイドロジェンポリシロキサンと、トルエンとからなる液状硬化性組成物であると解される。
【0092】
[実施例11]
実施例1と同様の反応容器に、コロイダルシリカのトルエン分散液(固形分40質量%)(日産化学株式会社製、商品名:TOL−ST、平均粒径10nm〜20nm)30gとトルエン30gと重炭酸ソーダ(NaHCO3)粉末4gを投入し、撹拌しつつ零下5℃以下まで冷却した。窒素ガス雰囲気下で混合液を攪拌しながら5℃以下でジハイドロジェンジクロロシラン2.48g(0.025モル)をゆっくり滴下した。30分間攪拌し、反応液の温度を室温に戻し、更に30分間攪拌して縮合反応させた。反応液をろ過して残存重炭酸ソーダを濾別し、反応したコロイダルシリカの透明なトルエン分散液(SiO2濃度20質量%、25℃における粘度3.5mPa・s、動的光散乱法粒子径21nm)を得た。この反応したコロイダルシリカのトルエン分散液の一部をプラスチック製容器に密閉し、5℃の恒温槽内で1ヶ月保持した後、粘度を測定したところ、3.8mPa・sであった。
このトルエン分散液の29Si−NMRスペクトルにおける、HSiO単位に由来する−50.1ppmのシグナルの積分値とSiO2単位に由来する−112.4ppmのシグナルの積分値から求めた平均シロキサン単位式は、(H2SiO2/20.10(SiO20.9であることが判明した。また、このトルエン分散液から得た固形のシリカ微粒子のFT−IRの測定では、2264cm−1にケイ素原子結合水素原子(SiH2)に由来する吸収ピークが観測されたが、シラノール基に由来する吸収ピークは、反応前のシリカ微粒子に比べて約50%強減少していた。同じく29SiNMRスペクトルではSiOHに由来する−102.4ppmのピークが明らかに減少していた。これらの測定結果から、このトルエン分散液が、主に、ジハイドロジェンポリシロキサンが結合したシリカ微粒子と、トルエンとからなる液状硬化性組成物であると解される。
【0093】
[実施例12]
撹拌機、窒素ガス導入管、コンデンサー、温度計および注入口2箇を備えた内容積1リットルのガラス製反応器に、市販のメタノール分散シリカゾル(商品名:MT−ST、日産化学工業株式会社製、SiO2濃度30質量%、平均粒子径12nm、水分1.8質量%、動的光散乱法粒子径30nm)257.0gを投入し、5℃まで冷却した。ジハイドロジェンジクロロシラン(H2SiCl2)7.8gを30分間かけて滴下した後、室温でさらに60分間攪拌した。その後イソプロパンノール100gとトルエン200gを投入し、さらに30分間攪拌した後、攪拌を継続しながら窒素ガス吹き込みを60分間行った。その後、減圧下、40℃以下の温度で、塩化水素、メタノールおよびイソプロパンノールをトルエンと共に除去することにより、反応したシリカ微粒子のトルエン分散液(SiO2濃度25質量%、25℃における粘度3.5mPa・s、動的光散乱法粒子径21nm)を得た。このトルエン分散液の一部をプラスチック製容器に密閉し、5℃の恒温槽内で1ヶ月保持した後、粘度を測定したところ、3.8mPa・sであった。
このトルエン分散液の29Si−NMRスペクトルにおける、HSiO単位に由来する−50.1ppmのシグナルの積分値とHSiO3/2単位に由来する−84.5ppmのシグナルの積分値とSiO2に由来する−112.4ppmのシグナルの積分値から求めた平均シロキサン単位式は、(H2SiO2/2)0.10(HSiO3/2)0.05(SiO2)0.85であることが判明した。なお、HSiO3/2単位は、ジハイドロジェンポリシロキサンが分岐して生成したため含まれている。
また、このトルエン分散液から得た固形のシリカ微粒子のFT−IRの測定では、2264cm−1と2200cm−1にケイ素原子結合水素原子(SiH基とSiH基)に由来する吸収ピークが観測されたが、シラノール基に由来する吸収ピークは、反応前のシリカ微粒子に比べて約50%強減少していた。同じく29SiNMRスペクトルではSiOHに由来する−102.4ppmのピークが明らかに減少していた。これらの測定結果から、このトルエン分散液が、主に、ジハイドロジェンポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンが結合したシリカ微粒子と、トルエンとからなる液状硬化性組成物であると解される。
【0094】
[実施例13]
撹拌機、窒素ガス導入管コンデンサー、温度計および注入口2箇を備えた内容積1リットルのガラス製反応器に、市販のイソプロピルアルコール分散シリカゾル(商品名:IPA−ST、日産化学工業株式会社製、SiO2濃度30質量%、平均粒子径12nm、水分1.8質量%、動的光散乱法粒子径30nm)257.0gを投入し、イソプロピルアルコール128gを投入して固形分20%に調整した。ハイドロジェントリクロロシラン(HSiCl3)10.4gを30分間かけて添加した後、室温でさらに60分間攪拌した。その後2L/分の流量で窒素ガス吹き込みを60分行った後、トルエン250gを投入し、さらに30分間攪拌しながら窒素ガス吹き込みを継続した。その後、減圧下、50℃以下の温度で、塩化水素、イソプロピルアルコールおよびトルエンを除去して固形分が15%になるよう調整した。次いでトルエン100gを投入し、更に50℃の温度でイソプロピルアルコールとトルエンを除去することにより、反応したシリカ微粒子のトルエン分散液(SiO2濃度15質量%、25℃における粘度3.5mPa・s、動的光散乱法粒子径21nm)を得た。このトルエン分散液の一部をプラスチック製容器に密閉し、5℃の恒温槽内で1ヶ月保持した後、粘度を測定したところ、3.8mPa・sであった。
このトルエン分散液の29Si−NMRスペクトルにおける、HSiO3/2単位に由来する−84.5ppmのシグナルの積分値とSiO2単位に由来する−112.4ppmのシグナルの積分値から求めた平均シロキサン単位式は、(HSiO3/20.15(SiO20.85であることが判明した。また、このトルエン分散液から得た固形のシリカ微粒子のFT−IRの測定では、2200cm−1にケイ素原子結合水素原子(SiH)に由来する吸収ピークが観測されたが、シラノール基に由来する吸収ピークは、反応前のシリカ微粒子に比べて約50%強減少していた。同じく29SiNMRスペクトルではSiOHに由来する−102.4ppmのピークが明らかに減少していた。これらの測定結果から、このトルエン分散液が、主に、ハイドロジェンポリシロキサンが結合したシリカ微粒子と、ハイドロジェンポリシロキサンレジンと、トルエンとからなる液状組成物であると解される。
【0095】
[実施例14]
実施例1と同様の反応容器に、窒素ガス雰囲気下でトルエン200mlとジハイドロジェンジクロロシラン24.8g(0.25モル)を投入し、撹拌しつつ零下5℃以下まで冷却した。溶液を攪拌しながら、メチルイソブチルケトンに分散したコロイダル酸化チタン(Sukgyung A・T Co., Ltd製のコロイダル酸化チタン、Model No. SG-TO15SMI、平均粒径20nm〜30nm、濃度20質量%)30gとトルエン30gの混合液を5℃以下で30分間にわたって滴下した。滴下終了後、さらに2時間攪拌した後、撹拌しつつ水5.4g(0.30モル)を3時間にわたって滴下した。更に30分間攪拌した後、じょじょに室温に戻し、更に30分間攪拌した後、水、生成した塩化水素などをトルエンと共に減圧蒸留して濃縮した。濃縮物を0.45ミクロンフィルターに通し、トルエンにより固形分20質量%になるよう調整した。得られたトルエン分散液は25℃における粘度が5.0mPa・sであった。このトルエン分散液の一部をプラスチック製容器に密閉し、5℃の冷蔵庫に1ヶ月保持した後、粘度を測定したところ、3.8mPa・sであった。
このトルエン分散液の29Si−NMRスペクトルにおける、HSiO単位に由来する−50.1ppmのシグナルの積分値とHSiO3/2単位に由来する−84.5ppmのシグナルの積分値から求めた平均シロキサン単位式は、(H2SiO2/2)0.24(HSiO3/2)0.53(TiO2)0.23であることが判明した。なお、HSiO3/2単位は、ジハイドロジェンポリシロキサンが分岐して生成したため含まれている。
このトルエン分散液から得た固形の酸化チタン微粒子のFT−IRの測定では、2264cm−1と2200cm−1にケイ素原子結合水素原子(SiH基とSiH基)に由来する吸収ピークが観測されたが、水酸基に由来する吸収ピークは、反応前の酸化チタン微粒子に比べて約50%強減少していた。これらの測定結果から、このトルエン分散液が、主に、ジハイドロジェンポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンが結合した酸化チタン微粒子と、ジハイドロジェンポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンと、トルエンとからなる液状硬化性組成物であると解される。
【0096】
[実施例15]
実施例4で得た、主に、ジハイドロジェンポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンが結合したシリカ微粒子と、ハイドロジェンポリシロキサンレジンと、トルエンとからなる液状硬化性組成物を、厚さ24μmであり表面の粗さRmaxが56.7nmのステンレススチール薄板、すなわち、ステンレススチール箔(150mm角の切片)にスピンコーターでコーテイング後、200℃で2時間加熱し、更に600℃で1時間加熱することにより、片面に厚さ1.8μmのシリカ系薄層を有する可撓性ステンレススチール薄板を得た。シリカ系薄層の表面の粗さをAFMで観測したところRmaxが6.1nm であった。シリカ系薄層のFT−IRの測定では、2264cm−1と2200cm−1にケイ素原子結合水素原子(SiH基とSiH基)に由来する吸収ピークが観測されなかった。シリカ系薄層は鉛筆硬度が9Hであり、電気絶縁性であった。このシリカ系薄層を有する可撓性ステンレススチール薄板の両端を指で摘まんで、繰り返し180度屈曲してもシリカ系層に剥がれやクラックが生じなかった。
このシリカ系薄層を有する可撓性ステンレススチール薄板を、空気中または窒素ガス中600℃で1時間加熱したが、シリカ系薄層はステンレススチール薄板との密着性が良好であり、クラックが観察されなかった。
【0097】
[実施例16]
実施例7で得た、主にジハイドロジェンポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンが結合したシリカ・アルミナ複合微粒子とトルエンとからなる液状硬化性組成物を、厚さ24μmであり表面の粗さRmaxが56.7nmのステンレススチール薄板、すなわち、ステンレススチール箔(150mm角の切片)にスピンコーターでコーテイング後、200℃で2時間加熱し、更に600℃で1時間加熱することにより、片面に厚さ2.8μmのシリカ・アルミナ複合微粒子含有シリカ系薄層を有する可撓性ステンレススチール薄板を得た。シリカ系薄層の表面の粗さをAFMで観測したところRmaxが5.1nm であった。シリカ系薄層のFT−IRの測定では、2264cm−1と2200cm−1にケイ素原子結合水素原子(SiH基とSiH基)に由来する吸収ピークが観測されなかった。シリカ・アルミナ複合微粒子含有シリカ系薄層は鉛筆硬度が9Hであり、電気絶縁性であった。このシリカ・アルミナ複合微粒子含有シリカ系薄層を有する可撓性ステンレススチール薄板の両端を指で摘まんで、繰り返し180度屈曲してもシリカ系薄層に剥がれやクラックが生じなかった。
シリカ系薄層を有する可撓性ステンレススチール薄板を、さらに空気中または窒素ガス中600℃で1時間加熱しても、シリカ・アルミナ複合微粒子含有シリカ系薄層はステンレススチール薄板との密着性が良好であり、クラックが観察されなかった。
【0098】
[実施例17]
実験例14で得た、主に、ジハイドロジェンポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンが結合した酸化チタン微粒子と、ジハイドロジェンポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンと、トルエンとからなる液状硬化性組成物を、固形分濃度が20質量%になるようにトルエンで希釈し、厚さ24μmであり表面の粗さRmaxが56.7nmのステンレススチール薄板、すなわち、ステンレススチール箔(150mm角の切片)にスピンコーターでコーテイング後、200℃で2時間加熱し、更に600℃で1時間加熱することにより、片面に厚さ2.0μmのシリカ系薄層を有する可撓性ステンレススチール薄板を得た。酸化チタン微粒子含有シリカ系薄層の表面の粗さをAFMで観測したところRmaxが5.1nm であった。シリカ系薄層のFT−IRの測定では、2264cm−1と2200cm−1にケイ素原子結合水素原子(SiH基とSiH基)に由来する吸収ピークが観測されなかった。酸化チタン微粒子含有薄膜は鉛筆硬度が9Hであり、電気絶縁性であった。この酸化チタン微粒子含有薄層を有する可撓性ステンレススチール薄板の両端を指で摘まんで、繰り返し180度屈曲してもシリカ系薄層に剥がれやクラックが生じなかった。
この酸化チタン微粒子含有シリカ系薄層を有する可撓性ステンレススチール薄板は、空気中または窒素ガス中600℃で1時間加熱しても、シリカ系薄層はステンレススチール薄板との密着性が良好であり、クラックが観察されなかった。
【0099】
[実施例18]
実施例9で得た、主に、ジハイドロジェンポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンが結合したシリカ微粒子と、ハイドロジェンポリシロキサンレジンと、トルエンとからなる液状硬化性組成物を、固形分濃度が20質量%に成るようにトルエンで希釈し、厚さ75μmであり表面の粗さRmaxが30.6nmのガラス薄板にディップコートし、200℃で2時間加熱し、ついで450℃で2時間加熱することにより、両面に厚さ1.5μmのシリカ微粒子含有シリカ系薄層を有する可撓性ガラス薄板を得た。シリカ系薄層表面の粗さをAFMで観測したところRmaxが1.0nmであった。シリカ系薄層の鉛筆硬度は9Hであり、電気絶縁性であった。この可撓性ガラス薄板の両端を指で持って撓ませてもシリカ系薄層に剥がれやクラックが生じなかった。
この可撓性ガラス薄板を、さらに600℃で加熱しても、このシリカ系薄層はガラス薄板との密着性が良好であり、クラックが観察されなかった。
【0100】
[実施例19]
実施例3で得た、主に、ジハイドロジェンポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンが結合したシリカ微粒子と、ジハイドロジェンポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンと、トルエンとからなる液状硬化性組成物を、モレキュラシーブで脱水したジブチルエーテルに、固形分濃度が10質量%に成るように希釈し、実施例14で使用したステンレススチール薄板と同一のステンレススチール薄板(150mm角の切片)にブレードコーティングし、200℃で2時間加熱して、片面に厚さ2.5μmであるジハイドロジェンポリシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンの半硬化物層を有する可撓性ステンレススチール薄板を得た。酸素ガスが70ppm含まれる窒素ガス中で、このシリカ微粒子含有ジハイドロジェンシロキサンおよびハイドロジェンポリシロキサンの半硬化物層に、加速電圧165kVの電子線照射装置より線量200Mradの電子線を照射して厚さ2.5μmのシリカ微粒子含有シリカ系薄層を形成させた。
このシリカ系薄層はステンレススチール薄板との密着性が良好であり、クラックは観察されなかった。このシリカ系薄層を有する可撓性ステンレススチール薄板の両端を指で摘まんで、繰り返し180度屈曲してもシリカ系薄層に剥がれやクラックが生じなかった。FT−IRスペクトルにおけるケイ素原子結合水素原子の特性吸収であるOSiHに由来する2264cm-1 とO1.5SiHに由来する2200cm-1の吸収ピークの高さの減少から、SiH含有量とSiH含有量が60%減少したことが判明した。更に500℃で1時間加熱して、表面の粗さをAFMで観測したところ、Rmaxが10.2nmであった。シリカ系薄層の鉛筆硬度は9Hであり、電気絶縁性であった。このシリカ系薄層を有するステンレススチール薄板を、さらに空気中または窒素ガス中で600℃で1時間加熱しても、シリカ系薄層はステンレススチール薄板との密着性が良好であり、クラックは観察されなかった。
【0101】
[実施例20]
実施例10で得た、主に、ジハイドロジェンポリシロキサンが結合したシリカ微粒子と、ジハイドロジェンポリシロキサンと、トルエンとからなる液状硬化性組成物を、モレキュラシーブで脱水したジブチルエーテルにより、固形分濃度が20質量%に成るように希釈した。この希釈液を実施例15で使用したステンレススチール薄板と同一のステンレススチール薄板(150mm角の切片)上にブレードコーティングし、200℃で12時間加熱することにより、ステンレススチール薄板の片面に、ジハイドロジェンポリシロキサンが結合したシリカ微粒子を含有するジハイドロジェンポリシロキサンの半硬化物層を形成した。この半硬化物層を形成したステンレススチール薄板を、5体積%のアンモニアガス含有空気を充填した縦30cmx横30cmのポリエチレンフィルム袋に入れ2時間放置して硬化させた。これを更に500℃で1時間加熱して、厚さ1.5μmのシリカ微粒子含有シリカ系薄層を形成させた。シリカ系薄層の表面の粗さをSEM顕微鏡で観測したところRmaxが8.5nmであった。シリカ系薄層をFT−IRにより観測したところ、波数2220cm−1のSiHに由来するピークが観測されなかった。シリカ系薄層の鉛筆硬度は9Hであり、電気絶縁性であった。片面にシリカ系薄層を有するステンレススチール薄板を、空気中または窒素ガス中でさらに600℃で1時間加熱しても、このシリカ系薄層はステンレススチール薄板との密着性が良好であり、クラックは観察されなかった。
【0102】
[実施例21]
実施例19または実施例20で得られたシリカ系薄層を有するステンレススチール薄板のシリカ系薄層上に、公知の方法でMo裏面電極薄層、CuInGaSe2からなるCIGS系光吸収薄層、CdS高抵抗バッファ薄層、ZnO半絶縁薄層、ITO透明電極薄層を順次蒸着することにより、図4に示す断面を有する薄膜化合物半導体太陽電池セルを製作した。この薄膜太陽電池セルは高い光変換効率を有していた。
【0103】
[比較例1]
市販のコロイダルシリカのトルエン分散液(固形分40質量%)(日産化学株式会社製、商品名:TOL−ST、平均粒径10nm〜20nm)をハイドロジェンポリシロキサンレジン(平均単位式(H2SiO2/2)0.25(HSiO3/2)0.75、重量平均分子量6.0x10、粘度8,000mPa・s)と混合して、トルエンで固形分が30質量%になるように調整したところ、トルエン分散液は数分以内にゲル化した。
【0104】
[比較例2]
特開平11-106658の参考例に従って、エタノールにハイドロジェントリエトキシシランを溶解し、これを氷水で冷却しながら攪拌し、ハイドロジェントリエトキシシランの3グラム当量倍の水を滴下した。滴下終了後、室温で攪拌した後沈殿物を濾別し、エタノールを除去し、真空中で乾燥してハイドロジェンポリシルセスキオキサンレジンを得た。
モレキュラーシーブで脱水したメチルイソブチルケトンに、このハイドロジェンポリシルセスキオキサンレジンを固形分濃度が30質量%になるように溶解した。
市販のコロイダルシリカのメチルイソブチルケトン分散液(日産化学株式会社製、商品名:MIBK−ST、固形分30質量%、平均粒径10nm〜20nm)と上記ハイドロジェンポリシルセスキオキサンレジン溶液を1:1で混合したところ、分散液中に不溶解の沈殿物が生じた。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の実施例15の、ステンレススチール薄板2の片面にシリカ系薄層1を有するステンレススチール薄板Aの断面図である。
【図2】本発明の実施例18の、両面にシリカ系薄層1を有するガラス薄板Bの断面図である。
【図3】本発明の実施態様である、ステンレススチール薄板2の片面にシリカ系薄層1を有するステンレススチール薄板Aのシリカ系薄層1上に半導体層4を有する半導体装置Cの断面図である。
【図4】本発明の実施例21の、薄膜化合物半導体太陽電池セルDの断面図である。
【符号の説明】
【0106】
1:シリカ系薄層
2:ステンレススチール薄板
3:ガラス薄板
4:半導体薄層
5a:Mo裏面電極薄層
5b:ITO透明電極薄層
6:CdS高抵抗バッファ薄層
7:CuInGaSe2からなるCIGS系光吸収薄層
8:ZnO半絶縁薄層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有する多価金属酸化物微粒子が分散している有機溶媒中で、
一般式(1):HSiX4−n
(式中、Xはハロゲン原子または炭素原子数1〜4のアルコキシル基を表わし、nは0、1または2である。)で表わされるシラン化合物(ただし、n=0のシラン化合物の場合は、n=1のシラン化合物またはn=2のシラン化合物とともに)を縮合反応または加水分解縮合反応させることにより得られた液状硬化性組成物。
【請求項2】
該多価金属酸化物微粒子がシリカ微粒子、酸化チタン微粒子、酸化ジルコニウム微粒子、アルミナ微粒子、酸化亜鉛微粒子、酸化錫微粒子、シリカ・酸化チタン複合微粒子、シリカ・酸化ジルコニウム複合微粒子またはシリカ・アルミナ複合微粒子であることを特徴とする、請求項1記載の液状硬化性組成物。
【請求項3】
該シラン化合物が、ジハイドロジェンジクロロシラン、ハイドロジェントリクロロシラン、ジハイドロジェンジメトキシシラン、ジハイドロジェンジエトキシシラン、ハイドロジェントリメトキシシラン、ハイドロジェントリエトキシシラン、テトラクロロシラン、テトラエトキシシランからなる群から選択される1種または2種以上のシラン化合物(ただし、テトラクロロシラン、テトラエトキシシランの場合は前記ハイドロジェンシラン化合物とともに)であることを特徴とする、請求項1記載の液状硬化性組成物。
【請求項4】
有機溶媒中で一般式(2):MXm
(式中、Mは多価金属原子であり、Xはハロゲン原子または炭素原子数1〜4のアルコキシル基を表わし、mは多価金属原子の原子価である。)で表わされるアルコキシ化金属またはハロゲン化金属を加水分解縮合し、ついで、該有機溶媒中で、
一般式(1):HSiX4−n
(式中、Xはハロゲン原子または炭素原子数1〜4のアルコキシル基を表わし、nは0、1または2である。)で表わされるシラン化合物(ただし、n=0のシラン化合物の場合は、n=1のシラン化合物またはn=2のシラン化合物とともに)を縮合反応または加水分解縮合反応させることにより得られた液状硬化性組成物。
【請求項5】
該多価金属原子が、ケイ素原子、チタン原子、ジルコニウム原子、アルミニウム原子、亜鉛原子、錫原子、またはケイ素原子とチタン原子、ジルコニウム原子もしくはアルミニウム原子との組合せであることを特徴とする、請求項4記載の液状硬化性組成物。
【請求項6】
該シラン化合物が、ジハイドロジェンジクロロシラン、ハイドロジェントリクロロシラン、ジハイドロジェンジメトキシシラン、ジハイドロジェンジエトキシシラン、ハイドロジェントリメトキシシラン、ハイドロジェントリエトキシシラン、テトラクロロシラン、テトラエトキシシランからなる群から選択される1種または2種以上のシラン化合物(ただし、テトラクロロシラン、テトラエトキシシランの場合は前記ハイドロジェンシラン化合物とともに)であることを特徴とする、請求項4記載の液状硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1または請求項4に記載の液状硬化性組成物を無機質基板にコーテイングし、硬化性成分を硬化させることにより、鉛筆硬度が4H〜9Hである多価金属酸化物微粒子含有シリカ系層を該無機質基板上に形成することを特徴とする、無機質基板のコーテイング方法。
【請求項8】
硬化が、酸素ガス含有雰囲気下で150℃以上の温度での加熱、不活性ガスもしくは真空中での200℃以上の温度での加熱、高エネルギー線照射、オゾン暴露、亜酸化窒素ガス暴露または湿性アンモニアガス暴露によることを特徴とする、請求項7記載の無機質基板のコーテイング方法。
【請求項9】
鉛筆硬度が4H〜9Hである多価金属酸化物微粒子含有シリカ系層を無機質基板上に有することを特徴とする、無機質基板。
【請求項10】
請求項9記載の多価金属酸化物微粒子含有シリカ系層を有する無機質基板の当該シリカ系層上に少なくとも半導体層が形成されていることを特徴とする、半導体装置。
【請求項11】
該無機質基板がガラス薄板またはステンレススチール薄板であり、半導体層がシリコン半導体薄層または化合物半導体薄層であり、半導体装置が薄膜太陽電池であることを特徴とする、請求項10記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−189765(P2008−189765A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24477(P2007−24477)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【出願人】(500295461)ダウ コーニング コーポレーション (15)
【Fターム(参考)】