説明

温度制御型水晶振動子及び水晶発振器

【課題】 出力周波数を安定させ、落下等の衝撃に対して堅牢で、小型化及び量産性の向上を図ることができる温度制御型水晶振動子及び水晶発振器を提供する。
【解決手段】 水晶ブランク10が、振動片である内部領域1と、内部領域1の周囲を囲む外周部2と、内部領域1と外周部2とを接続する接続部3とから成り、内部領域1の両面に電極5が形成され、ヒータ6と温度センサ7とが、内部領域1の一方の面に形成された電極5の周囲を囲むように形成され、電極5、ヒータ6、温度センサ7がそれぞれ引出線によって外周部2の端子に接続されており、温度センサ7と水晶との接触面積を広くする温度制御型水晶振動子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度制御型水晶振動子に係り、特に出力周波数を安定させ、落下に対して堅牢で、小型化を図ることができ、量産性に優れた温度制御型水晶振動子及び水晶発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明:図8]
従来の温度制御型水晶振動子の構成について図8を用いて説明する。図8は、従来の温度制御型水晶振動子の概略構成を示す平面図である(非特許文献1)。尚、図8では、非特許文献1において断面図で記載されている構成を平面図で示している。
【0003】
図8に示すように、従来の温度制御型水晶振動子は、円板状に形成されたSCカットの水晶ブランク50の両面に形成された水晶電極(励振電極)51a及び51bと、水晶ブランク50の外周に沿って両面に半周ずつ形成され、水晶ブランク50を加熱するヒータ52a及び52bと、水晶ブランク50の温度を検出する温度センサ53とを備えている。
【0004】
水晶ブランク50の表面に設けられた水晶電極51aは、図8の上方向に設けられた電極に接続し、裏面に設けられた水晶電極51bは、下方向に設けられた電極に接続し、ヒータ52a及び52bは、図8の左右方向に設けられた電極に接続している。
【0005】
温度センサ53は、熱電対で構成されており、水晶ブランク50の一方の面(ここでは表面)で、ヒータ52a近傍の水晶基板表面に1点で接触して温度を検出する。
更に、熱伝導による放熱を防ぐために、上記構成を真空パッケージ(TO−8パッケージ)に封入して温度制御型水晶振動子を形成している。
【0006】
そして、上記温度制御型水晶振動子を用いた水晶発振器では、温度制御回路が、温度センサ53で検出された温度に基づいてヒータ52a,52bへの電流又は電圧を制御するようになっている。
SCカットの水晶ブランクを用いた場合、約85℃の温度となるよう制御されている。
【0007】
[関連技術]
尚、水晶振動子に関する技術としては、 "Long term stability (aging) of evacuated hybrid OCXO", Igor Abramzon et al, 2001 IEEE International Frequency Control Symposium and PDA Exhibition (非特許文献1)がある。
非特許文献1には、OCXOについて、温度やエイジングによる周波数変動の影響が記載されている。
【0008】
尚、温度制御型水晶振動子に関する技術としては、実開平6−85523号公報(特許文献1)、特開平11−41032号公報(特許文献2)がある。
特許文献1には、表面弾性波素子において、圧電性基板の櫛型電極と同じ面で電極の両側に温度センサとヒータを配置したものが記載されている。
特許文献2には、水晶振動子のケースの外側に、温度センサとヒータを有する筒状のキャップを設けた構成が記載されている。
【0009】
更に、関連する技術として、特開平9−153761号公報(特許文献3)、特開2004−343681号公報(特許文献4)、特開2005−124129号公報(特許文献5)がある。
特許文献3には、表面実装型水晶振動子において、パッケージの底部裏面に凹部空間を設け、凹部空間に温度補償用電子部品を配置することが記載されている。
【0010】
特許文献4には、温度補償型水晶振動子において、振動子と接合する面の反対側の凹部に温度補償ICを実装することが記載されている。
特許文献5には、恒温槽を用いた水晶発振器において、発熱用のチップ抵抗と、発振用素子と、温度依存性の大きい温度制御素子を基板の同一面に配置して熱伝導性の物質で直接的に接合することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実開平6−85523号公報
【特許文献2】特開平11−41032号公報
【特許文献3】特開平9−153761号公報
【特許文献4】特開2004−343681号公報
【特許文献5】特開2005−124129号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】"Long term stability (aging) of evacuated hybrid OCXO", Igor Abramzon et al, 2001 IEEE International Frequency Control Symposium and PDA Exhibition
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来の温度制御型水晶振動子では、熱電対を水晶ブランクに一点で接触させているため、温度を正確に検出することができず出力周波数が不安定になるという問題点があり、また、落下等の衝撃によって熱電対と水晶とが離れてしまう恐れがあり、振動や衝撃に対して脆弱であるという問題点があった。
更に、従来の温度制御型水晶振動子では、パッケージに個別に真空封止する構成であり、小型化及び量産が困難であるという問題点があった。
【0014】
本発明は、上記実状に鑑みて為されたもので、出力周波数を安定させ、落下等の衝撃に対して堅牢で、小型化及び量産性の向上を図ることができる温度制御型水晶振動子及び水晶発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、電極が両面に設けられた水晶板と、水晶板を加熱するヒータと、水晶板の温度を検出するセンサとを備えた温度制御型水晶振動子であって、水晶板の周囲を囲むように形成された外周部と、水晶板と外周部とを接続する接続部とを備え、ヒータ及びセンサが、水晶板の一方の面において形成された一方の電極の周囲を囲むよう形成され、電極、ヒータ、センサが、各々引出線によって外周部の端子に接続されていることを特徴としている。
【0016】
また、本発明は、上記温度制御型水晶振動子において、引出線が、接続部上に形成されていることを特徴としている。
【0017】
また、本発明は、上記温度制御型水晶振動子において、引出線が、ワイヤボンディングであることを特徴としている。
【0018】
また、本発明は、上記温度制御型水晶振動子において、ヒータ及びセンサが、水晶のα−β転移温度未満で形成された抵抗体で形成されていることを特徴としている。
【0019】
また、本発明は、上記温度制御型水晶振動子において、水晶板の一辺に接続部が設けられ、片持ち型であること特徴としている。
【0020】
また、本発明は、上記温度制御型水晶振動子において、接続部が同一辺上の二箇所に設けられていることを特徴としている。
【0021】
また、本発明は、上記温度制御型水晶振動子において、水晶板の対向する二辺に接続部が設けられ、両持ち型であることを特徴としている。
【0022】
また、本発明は、上記温度制御型水晶振動子において、凹部を備えた2枚のシリコン板の間に挟まれて、両シリコン板の凹部に格納された状態で、真空接合されていることを特徴としている。
【0023】
また、本発明は、上記温度制御型水晶振動子において、シリコン板は、電磁界を遮蔽するシールド効果が得られる抵抗率を有することを特徴としている。
【0024】
また、本発明は、上記温度制御型水晶振動子と発振回路と温度制御回路とを備えた水晶発振器であって、発振回路の入力側に設けられるバリキャップダイオードを温度制御水晶振動子の水晶板に設けたことを特徴としている。
【0025】
また、本発明は、上記水晶発振器において、バリキャップダイオードを、水晶板のヒータが形成された面に設けたことを特徴としている。
【0026】
また、本発明は、上記水晶発振器において、バリキャップダイオードを、水晶板のヒータが形成された面とは異なる面に設けたことを特徴としている。
【0027】
また、本発明は、上記水晶発振器において、温度制御回路に、ヒータへの電流を調整するチップ抵抗を接続したことを特徴としている。
【0028】
また、本発明は、上記水晶発振器において、発振回路と温度制御回路とが集積回路で構成され、集積回路に、設定された抵抗値によりヒータへの電流を調整する抵抗と、複数の抵抗値を記憶する不揮発性メモリとを備え、不揮発性メモリに記憶された複数の抵抗値の中から選択された抵抗値が抵抗に設定されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、電極が両面に設けられた水晶板と、水晶板を加熱するヒータと、水晶板の温度を検出するセンサとを備えた温度制御型水晶振動子であって、水晶板の周囲を囲むように形成された外周部と、水晶板と外周部とを接続する接続部とを備え、ヒータ及びセンサが、水晶板の一方の面において形成された一方の電極の周囲を囲むよう形成され、電極、ヒータ、センサが、各々引出線によって外周部の端子に接続されている温度制御型水晶振動子としているので、センサと水晶板との接触面積を広くして、水晶板の温度をより正確に検出して出力周波数を安定させると共に、振動や衝撃に対する耐性を向上させて堅牢な構造とすることができる効果がある。
【0030】
また、本発明によれば、引出線が、接続部上に形成されている上記温度制御型水晶振動子としているので、引出線のパターンを、ヒータ又は温度センサと同一工程で形成することができ、製造工程を簡易にすることができる効果がある。
【0031】
また、本発明によれば、引出線が、ワイヤボンディングである上記温度制御型水晶振動子としているので、細い接続部に複数の引出線を形成するための精度の高い微細加工を不要とし、簡易な製造設備でも容易に製造可能とする効果がある。
【0032】
また、本発明によれば、ヒータ及びセンサが、水晶のα−β転移温度未満で形成された抵抗体で形成されている上記温度制御型水晶振動子としているので、水晶の特性を維持することができる効果がある。
【0033】
また、本発明によれば、凹部を備えた2枚のシリコン板の間に挟まれて、両シリコン板の凹部に格納された状態で、真空接合されている上記温度制御型水晶振動子としているので、温度制御型水晶振動子を水晶ウエハ上で形成し、シリコン板をシリコンウエハ上で形成して、3枚のウエハを接合してから個々の温度制御型水晶振動子に切断することにより、量産性を向上させることができる効果がある。
【0034】
また、本発明によれば、シリコン板が、電磁界を遮蔽するシールド効果が得られる抵抗率を有する上記温度制御型水晶振動子としているので、外部の電磁波の影響を受けにくくすることができる効果がある。
【0035】
また、本発明によれば、上記温度制御型水晶振動子と発振回路と温度制御回路とを備えた水晶発振器であって、発振回路の入力側に設けられるバリキャップダイオードを温度制御水晶振動子の水晶板に設けた水晶発振器としているので、バリキャップダイオードの温度変動を水晶と同じにして、水晶に対して精度の高い温度制御を行って、出力周波数を安定させることができる効果がある。
【0036】
また、本発明によれば、温度制御回路に、ヒータへの電流を調整するチップ抵抗を接続した上記水晶発振器としているので、適切な抵抗値のチップ抵抗を選択して接続することにより、ヒータ温度を、搭載された水晶振動子の周波数−温度特性の変曲点付近の温度とすることができ、水晶振動子の個体差に応じて、温度による周波数変動をできるだけ小さくするヒータ温度に調整することができ、一層安定した出力周波数を得ることができる効果がある。
【0037】
また、本発明によれば、発振回路と温度制御回路とが集積回路で構成され、集積回路に、設定された抵抗値によりヒータへの電流を調整する抵抗と、複数の抵抗値を記憶する不揮発性メモリとを備え、不揮発性メモリに記憶された複数の抵抗値の中から選択された抵抗値が抵抗に設定される上記水晶発振器としているので、適切な抵抗値を設定して、ヒータ温度を、搭載された水晶振動子の周波数−温度特性の変曲点付近の温度とすることができ、水晶振動子の個体差に応じて、温度による周波数変動をできるだけ小さくするヒータ温度に調整することができ、一層安定した出力周波数を得ることができると共に、チップ抵抗を外付けするのに比べて実装及び調整の作業を簡易にすることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る温度制御型水晶振動子の概略説明図である。
【図2】第1の水晶振動子の構成を示す模式説明図である。
【図3】第2の水晶振動子の構成を示す説明図である。
【図4】両持ちタイプの第1の水晶振動子の構成例を示す説明図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る温度制御型水晶振動子の構成を示す説明図である。
【図6】本発振器の回路構成図である。
【図7】本発振器における水晶振動子の構成を示す説明図である。
【図8】従来の温度制御型水晶振動子の概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る温度制御型水晶振動子は、両面に電極が形成された水晶板と、水晶板の周囲に形成された外周部と、水晶板と外周部とを接続する接続部とを備え、ヒータと温度センサとが、水晶板の一方の面に形成された電極の周囲を囲むように形成され、電極、ヒータ、温度センサがそれぞれ引出線によって外周部の端子に接続されているものであり、温度センサが水晶板と点ではなくより広い面積で接触することにより、水晶板の温度をより正確に検出して出力周波数を安定させると共に、振動や衝撃に対する耐性を向上させることができるものである。
【0040】
また、本発明の実施の形態に係る温度制御型水晶振動子は、上記構成の水晶ブランクをシリコン板によって上下から挟み込んで真空封止し、その後個別に切断するようにしているので、容易に小型化することができ、量産性に優れているものである。
【0041】
また、本発明の実施の形態に係る水晶発振器は、上記構成の温度制御型水晶振動子と発振回路とを備え、水晶板の、ヒータが形成された面にバリキャップダイオードを設けたものであり、発振回路における温度変化の大きい要因となるバリキャップダイオードを水晶ブランク上に固定することにより、バリキャップダイオードを含んだ状態で温度検出を行うことができるものである。
【0042】
更に、本発明の実施の形態に係る水晶発振器は、ヒータ温度を、水晶振動子の周波数−温度特性の変曲点付近の温度に制御するよう、適切な抵抗値を備えたチップ抵抗を温度制御回路に接続する構成として、水晶振動子の個体差を吸収して安定した出力を得ることができるものである。
【0043】
[本発明の第1の実施の形態:図1]
本発明の第1の実施の形態に係る温度制御型水晶振動子の概略構成について図1を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る温度制御型水晶振動子の概略説明図である。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る温度制御型水晶振動子(第1の水晶振動子)は、振動片が形成された水晶ブランク10を、上下から板20と板30とで挟みこんで接合し真空封入した構成となっている。
【0044】
水晶ブランク10は、ATカット又はSCカットの水晶片であり、後述するように、外枠部分に相当する外周部と、振動片に相当する内部領域とを備えている。外周部と内部領域との間には両者を分離する空間(すきま)が形成され、細い首状の接続部によって外周部と内部領域とが接続されている。尚、内部領域は、請求項に記載した水晶板に相当している。
【0045】
更に、内部領域には、両面に水晶電極5が設けられ、一方の面(図1では下面)には、内部領域の温度を検出する温度センサ6と、内部領域を加熱するヒータ7とが水晶電極5の周囲を取り囲むように形成されている。水晶ブランク10の具体的な構成については後述する。温度センサ6は、請求項に記載したセンサに相当する。
【0046】
板20及び30は、リン又はホウ素を注入して抵抗率を下げたシリコン等で形成され、それぞれ、水晶ブランク10を格納する凹部が形成されている。
また、板30の下面には水晶ブランク10の水晶電極5、温度センサ6、ヒータ7と接続する複数の電極31が設けられている。その内の1つは、板20をグランドレベルにするGND電極となっている。尚、水晶ブランク10には、板20をグランドレベルにするためのビアホールが形成されており、板30のGND電極に接続している。例えば、板20を低抵抗のシリコンで形成し、板30を高抵抗のシリコンで形成する。
【0047】
このように、板20及び30を適当な抵抗率のシリコンで形成することにより、シールド効果が得られ、外部の電磁波の影響を受けにくくするものである。
尚、板20及び30をガラスで形成することも可能であるが、その場合にはシールド効果は得られない。
また、板20、水晶ブランク10、板30の3層を接合した構成としているのは、後述する第2及び第3の実施の形態でも同様である。
【0048】
[第1の水晶振動子の構成:図2]
次に、第1の水晶振動子の構成について図2を用いて説明する。図2は、第1の水晶振動子の構成を示す模式説明図である。
図2に示すように、第1の水晶振動子は、水晶ブランク10において、内部領域1と、外周部2とを備え、内部領域1と外周部2との間には、分離部4としての間隙が形成されている。また、内部領域1と外周部2とは、接続部3によって接続されている。
尚、内部領域1と外周部2の厚さは同等である。
【0049】
このように、内部領域1と外周部2との間を細い接続部3によって接続することにより、ヒータ7によって加熱された内部領域1から外周部2に熱が逃げるのを防ぐことができるものである。
また、第1の水晶振動子は、接続部3によって振動部分である内部領域1の一辺を保持する片持ちタイプとなっている。
【0050】
そして、内部領域1には、両面に励振電極として水晶電極5が形成され、内部領域1のいずれか一方の面において、水晶電極5の周囲に帯状(又は線状)の温度センサ6が形成され、更にその外側に帯状(又は線状)のヒータ7が形成されている。
尚、ここでは、温度センサ6が内側、ヒータ7が外側に形成されているが、反対にヒータ7を内側、温度センサ6を外側とすることも可能である。
また、温度センサ6とヒータ7とを別々の面に形成することも可能である。
【0051】
温度センサ6は、定電圧印加時に温度によって電流が変動する抵抗体で形成されており、電流値が温度検出に用いられるものである。
ヒータ7は、ITO(酸化インジウムスズ)等の抵抗体で形成されており、水晶ブランク10を所望の温度(85℃付近)にまで加熱することが可能なものである。
また、温度センサ6及びヒータ7は、水晶α−β転移温度(573℃)未満の温度でスパッタによって形成されている。
【0052】
このように、第1の水晶振動子では、温度センサ6を振動片である水晶ブランク10の内部領域1に点で接触させるのではなく、内部領域1の水晶電極5の周囲に帯状に配置して接触面積を広くしていることにより、温度検出の精度を向上させることができると共に、落下等の衝撃があっても水晶との接触を保持することができ、衝撃に強い構成となっている。
【0053】
そして、水晶電極5と、温度センサ6と、ヒータ7の引出線は、いずれも、接続部3に形成されて、外周部2に設けられた端子にそれぞれ接続されている。裏面の水晶電極5の引出線は接続部3の裏面に設けられている。
【0054】
第1の水晶振動子では、金属電極5、温度センサ6、ヒータ7はいずれも水晶ウエハ上でスパッタ及びエッチングにより、それぞれ、金属電極5、温度センサ6、ヒータ7と同一工程で形成することができ、製造工程を簡易にすることができるものである。
【0055】
また、板20及び板30をそれぞれシリコンウエハ上で形成し、板20、水晶ブランク10、板30のウエハ工程が完了後に、真空中で3枚のウエハを積層して接合し、各水晶ブランク10を真空封入する。水晶ブランク10の外周部2は、縁部分で板20及び板30と接合され、内部領域1は、板20及び板30に形成された凹部に格納される。
その後、切断して、個々の温度制御水晶振動子を得るものである。ウエハの状態で接合してから切断するため、個々の水晶片を1つずつパッケージに封入するのに比べて量産性に優れているものである。
【0056】
[第2の水晶振動子の構成:図3]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る温度制御型水晶振動子について説明する。
上述した第1の水晶振動子では、細い接続部3の上に、水晶電極5と、温度センサ6と、ヒータ7の引出線を全て並列して形成しており、水晶ブランク10上に引出線のパターンを形成するという製造工程は簡易であるものの、線幅及び間隔を狭くしなければならず、精度の高い微細加工技術が要求される。
本発明の第2の実施の形態に係る温度制御型水晶振動子(第2の水晶振動子)は、高度な微細加工技術がなくても製造可能なものとしている。
【0057】
図3は、第2の水晶振動子の構成を示す説明図である。
図3に示すように、第2の水晶振動子は、水晶ブランク10において、内部領域1の構成は第1の水晶振動子とほぼ同様であり、両面に水晶電極5が形成され、一方の面の水晶電極5の周囲に温度センサ6と、ヒータ7とが形成されている。
そして、第2の水晶振動子では、水晶電極5、温度センサ6、ヒータ7の引出線をワイヤボンディング9によって形成し、分離部4を跨いで外周部に設けられた端子に接続している。
【0058】
これにより、第2の水晶振動子では、細い接続部3に複数の引出線を形成しなくて済み、簡易な製造設備でも容易に製造可能となるものである。
【0059】
[両持ちタイプの例:図4]
次に、両持ちタイプの例について図4を用いて説明する。図4は、両持ちタイプの第1の水晶振動子の構成例を示す説明図である。
図4に示すように、両持ちタイプの第1の水晶振動子は、水晶ブランク10において、内部領域1と外周部2とを接続する2つの接続部3a及び3bが設けられている。
接続部3a及び3bは、内部領域1の対向する2辺を保持するように形成されている。
そして、接続部3aの表面には、水晶電極5a、温度センサ6、ヒータ7の引出線が形成され、接続部3bの裏面には、裏面に設けられた水晶電極5bの引出線が形成されている。
【0060】
尚、ここでは水晶ブランク10の表面の引出線を、全て接続部3a側から取り出すようにしているが、一部又は全部を接続部3bから取り出すようにしてもよい。例えば、温度センサ6の引出線を接続部3b側から取り出すようにすると、接続部3aに形成される水晶電極5a及びヒータ7の引出線の間隔を広くすることができ、製造工程における加工が容易になるものである。
【0061】
[第3の水晶振動子の構成:図5]
次に、本発明の第3の実施の形態に係る温度制御型水晶振動子について図5を用いて説明する。図5は、本発明の第3の実施の形態に係る温度制御型水晶振動子の構成を示す説明図である。
図5に示すように、本発明の第3の実施の形態に係る温度制御型水晶振動子(第3の水晶振動子)は、水晶ブランク10において、内部領域1と外周部2とを接続する2つの接続部3a及び3bが、内部領域1の同一辺上に設けられている。
【0062】
内部領域1の構成は、第1の水晶振動子とほぼ同様であり、内部領域1の両面に水晶電極5が設けられ、一方の面に温度センサ6とヒータ7とが水晶電極5の三方を取り囲むように形成されている。
そして、温度センサ6とヒータ7の引出線は、接続部3a及び3bに形成されて、外周部2の端子に接続されている。
また、水晶電極5の引出線は、接続部3a又は3bを通るように形成される。
これにより、それぞれの接続部3に形成される引出線の数を少なくすることができ、製造工程における加工を容易にすることができるものである。
【0063】
[実施の形態に係る温度制御型水晶振動子の効果]
本発明の実施の形態に係る温度制御型水晶振動子によれば、水晶ブランク10の内部領域1の両面に水晶電極5を設け、一方の面の水晶電極5の周囲を取り囲むように温度センサ6とヒータ7とを形成しているので、温度センサ6と水晶ブランク10との接触面積を広くすることができ、正確な温度検出を行って出力周波数を安定させることができると共に、衝撃に対する耐性を向上させることができる効果がある。
【0064】
また、本実施の形態に係る水晶振動子によれば、内部領域1と、その周囲の外周部2との間に、両者を分離する空間である分離部4を設け、内部領域1と外周部2とを、細い首状の接続部3によって接続した構成としているので、内部領域1の熱が外部に逃げるのをできるだけ抑制することができ、温度変動を防ぎ、出力を安定させることができる効果がある。
【0065】
また、本実施の形態に係る水晶振動子によれば、水晶ウエハ上で形成された水晶ブランク10を、シリコンウエハ上に形成されたシリコンの板20及び板30で挟みこんで3層を接合し、その後切断して形成しているので、量産性を向上させることができる効果がある。
【0066】
また、本実施の形態に係る第2の水晶振動子によれば、水晶電極5と、温度センサ6と、ヒータ7の引出線をワイヤボンディングによって形成して、外周部2の端子に接続する構成としているので、高度な微細加工技術を用いずに形成でき、簡易な装置でも製造可能とすることができる効果がある。
【0067】
また、本実施の形態に係る第3の水晶振動子によれば、2つの接続部3a及び3bを内部領域1の同一辺と外周部2とを接続するように設けているので、引出線を両方の接続部に分けて形成することができ、配線パターン形成を容易にすることができる効果がある。
【0068】
[本実施の形態に係る水晶発振器:図6]
次に、本発明の実施の形態に係る水晶発振器について説明する。
本発明の実施の形態に係る水晶発振器(本発振器)は、上述した本実施の形態に係る温度制御型水晶振動子を備えた発振器である。
図6は、本発振器の回路構成図である。
図6に示すように、本発振器は、外部からの制御電圧の入力端子(AFC)と、出力端子(OUT)の間に、抵抗41と、発振回路(VCXO CORE)42と、出力バッファ(出力Buf)43とが直列に接続され、抵抗41と出力バッファ43との間に、発振回路42に並列に温度制御型水晶振動子11が接続されている。
そして、抵抗41と発振回路42との間にバリキャップダイオード12の一端が接続され、他端が接地されている。
【0069】
更に、本発振器は、温度制御型水晶振動子の温度を制御する温度制御回路(Thermal Regulator)45と、定電圧を供給する定電圧電源(VREG)44とを備えている。
温度制御回路45は、温度センサ6からの検出温度が入力されると、それに基づいてヒータ7への電流を制御する。その際、温度制御回路45は、水晶振動子の周波数−温度特性の変曲点付近の温度を目標温度としてヒータ7を制御する。SCカットの水晶ブランクの場合、85℃付近である。
水晶振動子11は、上述した第1〜第3の水晶振動子のいずれかと同じ構成であり、内部領域1と、温度センサ6と、ヒータ7とを備えている。
【0070】
上記構成部分のうち、抵抗41と、発振回路42と、定電圧回路44と、温度制御回路45とは、LSIに集積されて形成されている。また、水晶振動子11は、図1に示したように水晶ブランク10上に形成され、真空封入されている。
そして、本発振器の特徴として、バリキャップダイオード12も水晶ブランク10上に設けて、真空封入する構成としている。
【0071】
バリキャップダイオード12は、温度特性が悪いため、水晶ブランク10上に設けることにより水晶ブランク10と熱結合させて、バリキャップダイオード12の温度変化を水晶と同じにすることができ、温度センサ6ではバリキャップダイオード12を含んだ状態で温度検出するため、出力を安定させることができるものである。
【0072】
更に、本発振器では、LSIの外部に、温度制御回路45に接続するチップ抵抗46を備えている。
温度制御回路45では、できるだけ温度変動の影響を小さくするため、水晶ブランクの温度を周波数−温度特性の変曲点付近の温度とするようにヒータを制御し、SCカットの水晶では約85℃である。
しかし、水晶振動子の周波数−温度特性は、個々の水晶振動子によってバラツキがあり、変曲点となる温度も変動する。変曲点温度のバラツキは、主として水晶の製造バラツキに起因するものである。
【0073】
そこで、本発振器では、個々の水晶振動子のバラツキを吸収するために、各水晶振動子の変曲点温度に合わせてチップ抵抗46の抵抗値を変えて、ヒータ温度を当該水晶振動子の変曲点温度となるよう制御する。
具体的には、予め抵抗値の異なる複数種類のチップ抵抗46を用意しておき、実装された水晶振動子の周波数−温度特性に応じて最適な抵抗値のチップ抵抗46を温度制御回路45に接続する。
これにより、水晶振動子の特性にバラツキがあっても、温度による周波数変動が小さくなる変曲点温度で動作させることができ、安定した出力が得られるものである。
【0074】
また、別の構成として、チップ抵抗を設ける代わりに、LSIの中に、抵抗値を設定可能な抵抗と、当該抵抗の抵抗値を複数記憶した不揮発性メモリを組み込み、外部の通信線により不揮発性メモリから所望の抵抗値を選択して設定し、ヒータ温度を水晶振動子の個体差に応じて調整することも可能である。
【0075】
[本発振器における水晶振動子の構成:図7]
次に、本発振器における水晶振動子の構成について図7を用いて説明する。図7は、本発振器における水晶振動子の構成を示す説明図である。
図7に示すように、本発振器における水晶振動子は、基本的な構成は、図2に示した第1の水晶振動子と同様であり、水晶ブランク10の内部領域1の両面に水晶電極5を備え、一方の面に、水晶電極5の周囲に温度センサ6とヒータ7とが形成されている。
【0076】
そして、本発振器における水晶振動子は、内部領域1の温度センサ6及びヒータ7が設けられた面に、バリキャップダイオード12が搭載され、ワイヤボンディング13で引出線に接続されている。バリキャップダイオード12の引出線は、他の引出線と同様に、接続部3から外周部2の端子に接続されている。そして、当該端子とLSIの端子とが接続されている。
バリキャップダイオード12を表面実装型の構成とすれば、ワイヤボンディングの代わりに配線パターンのみで搭載可能となる。
このように、水晶ブランク上にバリキャップダイオード12を設けて、真空封入することにより、温度変動による出力周波数変動を抑え、出力を一層安定させることができるものである。
【0077】
また、バリキャップダイオード12を、内部領域1の温度センサ6及びヒータ7とは反対の面に設けることも可能である。反対の面に設けることにより、バリキャップダイオード12の引出線は、接続部3の裏面に形成されるため、配線パターンの形成が容易になるものである。
【0078】
[実施の形態に係る水晶発振器の効果]
本発明の実施の形態に係る水晶発振器によれば、水晶振動子11と、発振回路42を含むLSIとを備え、水晶振動子11の水晶ブランク10上に、発振回路42に接続するバリキャップダイオード12を搭載して真空封入した構成としているので、バリキャップダイオード12の温度変動は水晶と同様に温度センサ6で温度を検出することができ、精度の高い温度制御を行って出力周波数を安定させることができる効果がある。
【0079】
また、本実施の形態に係る水晶発振器によれば、搭載された水晶振動子の周波数−温度特性の変曲点付近の温度とするよう、適切な抵抗値を備えたチップ抵抗46を温度制御回路45に接続して設けているので、個々の水晶振動子の特性に応じて、当該水晶振動子の出力周波数の変動を小さくするようにヒータ温度を調整することができ、出力を安定させることができる効果がある。
【0080】
また、本実施の形態に係る水晶発振器によれば、チップ抵抗46の代わりに、LSIに抵抗を組み込み、外部からの操作によって、複数の抵抗値が記憶された不揮発性メモリから所望の抵抗値を選択して、当該抵抗に設定するようにしているので、チップ抵抗46を実装する作業をなくし、製造工程を簡易にすることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、出力周波数を安定させ、落下に対して堅牢で、小型化を図ることができ、量産性に優れた温度制御型水晶振動子及び水晶発振器適している。
【符号の説明】
【0082】
1...内部領域、 2...外周部、 3...接続部、 4...分離部、 5,51...水晶電極、 6...温度センサ、 7,52...ヒータ、 9,13...ワイヤボンディング、 10,50...水晶ブランク、 11...水晶振動子、 12...バリキャップダイオード、 20,30...板、 31...電極、 41...抵抗、 42...発振回路、 43...出力バッファ、 44...定電圧電源、 45...温度制御回路、 46...チップ抵抗、 53...温度センサ(熱電対)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極が両面に設けられた水晶板と、前記水晶板を加熱するヒータと、前記水晶板の温度を検出するセンサとを備えた温度制御型水晶振動子であって、
前記水晶板の周囲を囲むように形成された外周部と、
前記水晶板と前記外周部とを接続する接続部とを備え、
前記ヒータ及び前記センサが、前記水晶板の一方又は他方の面において形成された前記電極の周囲を囲むよう形成され、
前記電極、前記ヒータ、前記センサが、各々引出線によって前記外周部の端子に接続されていることを特徴とする温度制御型水晶振動子。
【請求項2】
引出線が、接続部上に形成されていることを特徴とする請求項1記載の温度制御型水晶振動子。
【請求項3】
引出線が、ワイヤボンディングであることを特徴とする請求項1記載の温度制御型水晶振動子。
【請求項4】
ヒータ及びセンサが、水晶のα−β転移温度未満で形成された抵抗体で形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の温度制御型水晶振動子。
【請求項5】
水晶板の一辺に接続部が設けられ、片持ち型であること特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の温度制御型水晶振動子。
【請求項6】
接続部が同一辺上の二箇所に設けられていることを特徴とする請求項5記載の温度制御型水晶振動子。
【請求項7】
水晶板の対向する二辺に接続部が設けられ、両持ち型であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の温度制御型水晶振動子。
【請求項8】
凹部を備えた2枚のシリコン板の間に挟まれて、前記両シリコン板の凹部に格納された状態で、真空接合されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか記載の温度制御型水晶振動子。
【請求項9】
シリコン板は、電磁界を遮蔽するシールド効果が得られる抵抗率を有することを特徴とする請求項8記載の温度制御型水晶振動子。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか記載の温度制御型水晶振動子と発振回路と温度制御回路とを備えた水晶発振器であって、
前記発振回路の入力側に設けられるバリキャップダイオードを前記温度制御水晶振動子の水晶板に設けたことを特徴とする水晶発振器。
【請求項11】
バリキャップダイオードを、水晶板の前記ヒータが形成された面に設けたことを特徴とする請求項10記載の水晶発振器。
【請求項12】
バリキャップダイオードを、水晶板の前記ヒータが形成された面とは異なる面に設けたことを特徴とする請求項10記載の水晶発振器。
【請求項13】
温度制御回路に、ヒータへの電流を調整するチップ抵抗を接続したことを特徴とする請求項10乃至12のいずれか記載の水晶発振器。
【請求項14】
発振回路と温度制御回路とが集積回路で構成され、
前記集積回路に、設定された抵抗値によりヒータへの電流を調整する抵抗と、複数の抵抗値を記憶する不揮発性メモリとを備え、
前記不揮発性メモリに記憶された複数の抵抗値の中から選択された抵抗値が前記抵抗に設定されることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか記載の水晶発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−124549(P2012−124549A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271157(P2010−271157)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】