説明

温水乾燥装置

【課題】
温水槽の表面の波立ちと泡の発生を抑制することができる温水乾燥装置を提供することにある。
【解決手段】
この発明は、温水槽の下に設けられた上に開いたコーン槽を有し、コーン槽の底にはその中心部に温水供給孔が設けられ、温水供給孔に被さるように温水供給孔の上部に温水供給孔からの吐出水を受ける下に開いた中空コーン部材が設けられ、中空コーン部材の最下端の外周がコーン槽の傾斜した壁面に所定の間隙をもって隣接し、中空コーン部材には吐出水により発生する泡を排出するために底にに排出管が結合されてこの排出管の端部が温水槽より上部に導出されているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、温水乾燥装置に関し、詳しくは、磁気ディスク、その基板(サブストレート)、半導体ウエハなどの円板状の基板(ワーク)を加熱した温純水の温水槽から表面張力を利用してゆっくりと引き上げることでワークを洗浄するとともに乾燥させる温水乾燥装置において、温水槽の表面の波立ちと泡の発生を抑制することができるような温水乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク、その基板(サブストレート)、半導体ウエハなどのワークは、洗浄工程においてフッ化水素や純水リンス液などの処理液(洗浄液)で洗浄された後に乾燥工程に入る。乾燥工程における乾燥装置の1つに温水乾燥装置による基板(ワーク)の乾燥があるが、これは、表面が濡れたワーク(基板)を加熱された所定の温度の純水層に浸漬させて、そこからゆっくりと引き上げて表面張力により洗浄するとともに引き上げ後にワークの熱をもって乾燥させるものである。
温水乾燥装置は、層流を発生させてワークを加熱するとともにワークに付着する粒子や異物の洗浄をし、温水の表面張力(メニスカス)を利用して洗浄しながら液表面からワークを引き上げるもので、表面張力が途切れないようにすることが必要である。そのため、液表面の波立ちと泡の発生を抑制する各種の装置が考案、発明され、この種の温水乾燥装置がすでに公知となっている(特許文献1,2,3)。
【特許文献1】実開平3−126047号公報
【特許文献2】特開2000−3899号公報
【特許文献3】特開2001−137791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
温水乾燥装置は、乾燥効率を上げるために温水の温度を70゜Cか、それ以上にすると、特許文献1に記載されているように、泡が発生し易くなるので泡取り器が必要になる。また、洗浄効率を上げるために層流の流入量を大きくすると泡が発生し易くなり、表面が波立ち易くなるので、それによりワークにシミやムラ、ウオータマークを発生させる問題がある。
特許文献1では、温水槽の底面から給水することで層流を発生させているが、液表面の波動防止のためにその傾斜が小さく、温水槽の内壁に沿った大きな外形の波動防止・泡取り器を使用している。しかし、このような構造にすると、波動防止・泡取り器内に泡が溜まり易くなる問題がある。
この波動防止・泡取り器の四隅には、温純水を槽内に供給する放射状の供給流路が設けられているが、その供給路を伝わって波動防止・泡取り器内に溜まった泡が温水槽に流れ泡が出てしまう欠点がある。
波動防止・泡取り器の天井面に大きな傾斜を持たせて波動防止・泡取り器を小さくすることで泡の捕捉はできるが、そうすると今度は波動防止・泡取り器周辺と温水槽の内壁との間に形成される温純水の供給路の幅が大きくなるので、波動防止効果が低減しかつ泡が逃げ出す構造となってしまい、これもまた問題である。波動防止・泡取り器を温水槽の壁面に対応するように大きくしかつその傾斜も大きく採ることも可能であるが、それによりワークの浸漬する容積が圧迫され、しかも温水乾燥装置全体が大きくならざるを得ない。
この発明の目的は、このような従来技術の問題点を解決するものであって、温水槽の表面の波立ちと泡の発生を抑制することができる温水乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このような目的を達成するために、この発明の温水乾燥装置の構成は、温水槽の下に設けられた上に開いたコーン槽を有し、コーン槽の底には温水供給孔が設けられ、温水供給孔に被さるように温水供給孔の上部に温水供給孔からの吐出水を受ける下に開いた中空コーン部材が設けられ、中空コーン部材の最下端の外周がコーン槽の傾斜した壁面に対して所定の間隙をもって隣接し、中空コーン部材には吐出水により発生する泡を排出するためにその上端部に排出管が結合されてこの排出管の端部が温水槽より上部に導出されているものである。
【発明の効果】
【0005】
このように、この発明にあっては、温水槽の下に上に開いたコーン槽を設けて、このコーン槽の底の中心部に温水供給孔を設け、この温水供給孔に被さるように温水供給孔からの吐出水を受ける下に開いた中空コーン部材をコーン槽の底の上部に設けて、さらに、中空コーン部材の最下端の外周がコーン槽の傾斜した壁面に所定の間隙をもって隣接するように配置している。
これにより、温水槽に下から供給される温水供給孔からの吐出水は、中空コーン部材にぶつかって中空コーン部材の最下端に戻り、この最下端で拡散されてゆるやかにコーン槽の傾斜した側壁に沿って上昇して拡散し、温水槽の底部から側壁に供給されるので、温水槽の表面には波動が発生し難い。
さらに、中空コーン部材には、吐出水で発生する泡を排出するために上端部(その底)に管が結合されて温水槽より上部に導出されているので、温水槽内部や表面での泡の発生が抑制される。
その結果、温水槽の表面の波立ちと泡の発生を抑制することができる温水乾燥装置を容易に実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は、この発明を適用した温水乾燥装置の一実施例の断面説明図であり、図2は、その平面説明図の説明図、図3は、そのコーン槽の底部と波動防止・泡取コーンとの関係を示す断面説明図、そして図4は、ディスク基板が温水槽に搬入された状態の平面図である。
図1,図2において、1は、温水乾燥装置であって、SUS(ステンレス)製の装置本体に対して平面からみて矩形で垂直な側壁を有する温水槽2が設けられ、その下側から底部にかけて壁面が45゜程度で傾斜し、上に開いた矩形の中空コーン形でSUS製のコーン槽3が設けられている。
このコーン槽3は、温水槽2への温水供給槽として、その外周が装置フレーム8により支持され、その上部が温水槽2に結合され、コーン槽3の底部中央には温純水を供給する供給孔4が設けられている。
なお、温水槽2は、装置フレーム8にブラケット8aを介して支持されている。
【0007】
温水槽2の上部には、所定の溝幅で温水槽2の上部周囲に矩形溝としてオーバーフロー廃液槽5が設けられ、オーバーフロー廃液槽5には排出孔5a(図2参照)が設けられ、これにドレイン管(図では見えていない)が結合され、オーバーフロー廃液槽5の液がオーバーフローする手前で排出孔5a,ドレイン管を介して外部へと排出される。
温水槽2の上部にはオーバーフロー廃液槽5との間にVノッチの波消し板2aが温水槽2の矩形の4辺に沿って張り付けられている。
また、温水槽2の上には、ガス乾燥チャンバ6がオーバーフロー廃液槽5の上部でこれに結合して設けられている。ガス乾燥チャンバ6には図2に示すように両側に排気孔6aがぞれぞれ設けられている。この排気孔6aに結合され、オーバーフロー廃液槽5に沿ってこれの外側にガスの排気管6bが左右に導出されている。
ガス乾燥チャンバ6の内部には内壁面に沿って冷却コイル6cが設けられ、ガス乾燥チャンバ6には、温水槽2から引き上げられたディスク9を乾燥するためのホットN2ガスがガス導入管6dを介して供給されて満たされている。なお、冷却コイル6cは、温水槽2から発生する蒸気を冷却して温水槽2へ戻すために用いられる。
【0008】
供給孔4の上部には、45゜程度の傾斜を持つ下に開いた円形の中空コーン形でSUS製の波動防止・泡取コーン7が設けられている。波動防止・泡取コーン7は、供給孔4に被さるように供給孔4の上部に設けられ、供給孔4からの吐出水を受けて、コーン槽3の傾斜した側壁に温水槽2に供給する温純水を吐き出す。
波動防止・泡取コーン7は、支持アーム7aによりその上端部の継手管7bの位置で吊られて支持されている。支持アーム7aは、フレーム8にボルト固定され、槽の外側にあるフレーム8から槽の上を越えて内壁に沿って下って継手管7bの位置まで案内され、継手管7bには廃棄管7cが結合され、廃棄管7cが温水槽2の壁面に沿って上部へと導出され、その先端側の排出孔がオーバーフロー廃液槽5の上部まで延びて、泡による廃液がオーバーフロー廃液槽5へと導かれる。
支持アーム7aは、図2に示すように、継手管7b位置から水平にコーン槽3の背面側を横断してコーン槽3の傾斜壁面に沿って這い上がり、温水槽2の側面に沿って這って上昇してガス乾燥チャンバ6の壁面を越えてそこで下に折れ曲がって温水槽2の外側で降下して装置フレーム8へと至る板状の支持体である。
なお、図2の平面図にあっては、内部状態が見えるようにするためにガス乾燥チャンバ6の最上部にあるカバーは外してある。図4もこの点は同様である。
このように、温水槽2およびコーン槽3の外部から伸びた支持アーム7aによる支持で波動防止・泡取コーン7は、その最下端の周囲近傍を360゜開放状態にすることができる。
【0009】
一方、供給孔4には、その下側に供給管4aが結合され、開閉弁4b,流量調整ポンプ等(図示せず)を介して温純水源4cに接続されている。
温純水源4cから供給孔4に供給された温純水は、供給孔4からコーン槽3の傾斜した壁面に沿って上昇し、温水槽2の底部に到達し、層流となって温水槽2の垂直壁面に沿って上昇してオーバーフロー廃液槽5に至る。
洗浄されるディスク(磁気ディスクあるいはそのサブストレート)9(図4参照)が温水槽2から引き上げられたときにそれに付着した粒子等が温純水の表面張力(メニスカス)により落とされる。その粒子等を含む流れは、温水槽2の壁面に向かって流れ、その上部壁面からオーバーフローして波消し板2aを越えてオーバーフロー廃液槽5に流れ込む。引き上げられたディスク9は、ガス乾燥チャンバ6にて乾燥され外部へと搬出される。
このとき、供給孔4に供給された温純水の吐出し水の脈動は、波動防止・泡取コーン7で抑えられ、逆流して波動防止・泡取コーン7のコーン部の最下端7d(図1〜図3参照)からコーン槽3に導入されてこの槽の傾斜した壁面に沿って上昇することで、温水槽2の表面での波動が防止され、ディスク引き上げ時に表面張力が切れない安定した液面を形成する。
【0010】
図3は、そのコーン槽3の底部と波動防止・泡取コーン7との関係を示す断面説明図である。
波動防止・泡取コーン7は、供給孔4の上部に相互に中心を一致させて、供給孔4から5mm〜10mm程度の間隔で上部に配置され、その最下端7dが位置する。このとき、コーン部の最下端7dとコーン槽3の底部のコーン部の壁面3aとが隣接し、それにより波動防止・泡取コーン7とコーン槽3の底部壁面との間に間隙3bが形成される。間隙3bの距離は、1.5mm〜3mm程度が確保される。
なお、波動防止・泡取コーン7のコーン部の最下端7dは、円形であり、コーン槽3の最下端7dに隣接するコーン槽3の壁面は矩形であるので、角の部分では、間隙3bの距離は最大で10mm程度にはなるが、間隙3bの距離は、最短で1.5mm〜3mm程度である。もちろん、最下端7dに隣接するコーン槽3の壁面は、円形に形成されていてもよい。
ところで、図3では、コーン槽3の底面3cの大きさは、コーン部の最下端7dより小さいが、コーン槽3の底面3cの大きさは、コーン部の最下端7dに対応するか、これより少し大きくても、波動防止・泡取コーン7のコーン部の最下端7dからの吐出水がコーン槽3の傾斜面に当たってそれに沿って昇ればよい。
前記のような間隙3bを形成することにより、矩形の温水槽2へ供給される温純水は、波動防止・泡取コーン7とコーン槽3の底部壁面との間隙3bから流出してコーン槽3の傾斜した壁面に沿って上昇してコーン槽3の垂直な壁面へと拡散していく。
一方、供給孔4の吐出水は、波動防止・泡取コーン7によりカバーされかつ波動防止・泡取コーン7のコーン部の最下端7dがコーン槽3のコーンと隣接するように配置されているので、図示するように、波動防止・泡取コーン7に向かって流れ込み、波動防止・泡取コーン7の内側に沿って逆流して波動防止・泡取コーン7の内側の傾斜壁面に沿って流れる。このときの傾斜角が約45゜程度の鋭角になっていることで、温純水の吐出し供給で発生した泡は、傾斜壁面に沿って上へと上昇し、壁面との間隙3bに辿りつかない。
【0011】
泡取りとして重要な点は、波動防止・泡取コーン7の外側の最大径は、供給孔4から吐出される温純水のほとんどを包み込む大きさで供給孔4の近傍にあること、波動防止・泡取コーン7の長さと角度は、波動防止・泡取コーン7の内側に発生する泡のほとんどが間隙3bまで到達しないものであることである。
そして、波動防止としては、間隙3bから流出する温純水がコーン槽3の壁面に沿った狭い間隙3bから最下端7dの全周囲からコーン槽3の内壁に向かって吐き出され、吐き出された温純水がコーン型をしたコーン槽3の内壁面にそって拡散し、拡大していくことである。
そのようなコーン壁面の傾斜角としては、40゜〜60゜程度が好ましく、波動防止・泡取コーン7のコーンの壁面傾斜角もほぼこれに対応していることが好ましい。コーン壁面の傾斜角が60゜以上になると、装置が大型化する。
例えば、供給孔4の口径は、20mmφ〜30mmφで、その流量は10リットル/minのときには、コーンの最下端の径は80mmφ、その長さは、50mm〜60mm程度で、供給孔4から5mm以下の位置に最大外径のコーンの最下端7dが配置されるとよい。
一方、このときのコーン槽3の大きさは、380mm〜400mm角で、傾斜角が同様に約45゜程度の開き角で、その深さが160mm〜170mm程度である。
【0012】
図4は、ディスク基板が温水槽2に搬入された状態の平面図であって、1列25枚で4列100枚のディスク9がディスクキャリア11に配列収納されて、温水槽2にハンドリングロボット(図示せず)の吊下げアーム12により吊り下げられた状態で保持されてディスク9が浸漬された状態を示している。
所定時間浸漬後、吊下げアーム12によりディスク9の表裏両面が温水槽2の表面の液に接して表面張力をもってゆっくりとディスクキャリア11が引き上げられ、そのディスクキャリア11がガス乾燥チャンバ6まで持ち上げられる。ここで、ディスク9は、ホットN2ガス雰囲気中で乾燥されてその乾燥後にハンドリングロボットによりディスクキャリア11が温水乾燥装置1の上部から外部に排出される。
【産業上の利用可能性】
【0013】
以上説明してきたが、実施例では、温水乾燥装置の形態は、平面からみて矩形の槽となっているが、これは平面からみて円形の槽で構成されていてもよい。
また、実施例では温純水の乾燥装置を例としているが、この発明の温水は、純水に限定されるものではない。
さらに、実施例では、乾燥するワークとしてディスクの例を挙げているが、この発明は、ディスクに限らず、ウエハをはじめとしてその他のワーク一般に適用できることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、この発明を適用した温水乾燥装置の一実施例の断面説明図である。
【図2】図2は、その平面説明図の説明図である。
【図3】図3は、そのコーン槽の底部と波動防止・泡取コーンとの関係を示す断面説明図である。
【図4】図4は、ディスク基板が温水槽に搬入された状態の平面図である。
【符号の説明】
【0015】
1…温水乾燥装置、2…温水槽、2a…波消し板、
3…コーン槽、4…供給孔、4a…供給管、
4b…開閉弁、4c…温純水源、
5…オーバーフロー廃液槽、5a…排出孔、
6…ガス乾燥チャンバ、6a…排気孔、6b…排気管、
6c…冷却コイル、8…装置フレーム、
7…波動防止・泡取コーン、7a…支持アーム、
7b…継手管、7c…廃棄管、7d…コーン部の最下端、
9…ディスク、11…ディスクキャリア、12…吊下げアーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の温度に加熱された温水を温水槽の下部から供給して前記温水槽中にワークを浸漬した後に温水の表面張力を利用したゆっくりとした引き上げをして前記ワークを乾燥する温水乾燥装置において、
前記温水槽の下に設けられた上に開いたコーン槽を有し、前記コーン槽の底には温水供給孔が設けられ、前記温水供給孔に被さるように前記温水供給孔の上部に前記温水供給孔からの吐出水を受ける下に開いた中空コーン部材が設けられ、
前記中空コーン部材の最下端の外周が前記コーン槽の傾斜した壁面に対して所定の間隙をもって隣接し、前記中空コーン部材には前記吐出水により発生する泡を排出するためにその上端部に排出管が結合されてこの排出管の端部が前記温水槽より上部に導出されている温水乾燥装置。
【請求項2】
前記中空コーン部材のコーン部の長さと角度が前記中空コーン部材の内側に発生する泡が前記間隙まで到達しないものとなっている請求項1記載の温水乾燥装置。
【請求項3】
前記ワークはディスクであり、前記温水は純水であり、前記中空コーン部材は、前記温水槽および前記コーン槽の外部から伸びた支持アームにより支持され、前記間隙の幅は1.5mm〜3mmの範囲にあって、前記コーン槽と前記中空コーン部材の各コーン開き角度は40゜〜60゜の範囲から選択されたものである請求項2記載の温水乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−32861(P2009−32861A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194452(P2007−194452)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】