説明

測位航法用擬似距離推定回路、移動体測位装置及び移動体測位方法

【課題】INSとGPSの両航法における位置情報の入力側の正確度を高め、更に帰還情報の質を高めて、結果的により正しい位置情報を得る。
【解決手段】本発明の移動体測位装置は、測位衛星からの複数の擬似距離と、また測位航法部と慣性航法部とカルマンフィルタと、により移動体の航法位置を求める測位装置において、測位衛星と移動体間のドップラ観測値と、航法暦とカルマンフィルタ出力とにより測位衛星と移動体間の相対速度の計算をしてドップラ推定値を求め、複数の擬似距離から選択擬似距離を出力する衛星情報選択部13と、測位衛星から得る搬送波位相情報と選択擬似距離とカルマンフィルタの出力とで演算出力する擬似距離推定部14とを備えて、測位航法部15は、擬似距離推定値を入力として、測位航法速度と測位航法位置を出力し、カルマンフィルタ16は、擬似距離推定値と、測位航法部の出力と慣性航法部の出力とで状態推定値を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は移動体の加速度と衛星を用いた移動体の測位情報に基づいて、正確な移動体の移動位置を得るための移動体測位装置及び移動体測位方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の移動体位置推定においては、IMU(Inertial Measurement Unit)と呼ばれる移動体自体に搭載した加速度検出器等を基に、移動体の移動を積算して移動体の位置を慣性航法計算で求めるINS(Inertial Navigation System)航法と呼ばれる航法があった。
また、測位衛星からの測位信号を基に測位信号の伝播時間差により移動体の位置を測位航法計算するGPS(Global Positioning System)航法と呼ばれる航法があった。
また、複合航法として、INS航法とGPS航法とから得られるそれぞれの位置情報を入力し、入力の時間的な差分をもとに補正用の誤差推定値や状態推定値を演算して出力するカルマンフィルタを用いて、この出力をINS航法に入力する構成も知られている。この帰還量に基づいて、INS航法演算部は、他の航法の位置情報や速度情報が入力されるので、他の位置情報の影響を受ける。そしてその場合、一般的には、この複合航法の出力を移動体の移動した位置として用いている。
【0003】
カルマンフィルタの動作としては、微分等の演算処理をして、上記二つの航法が出力する位置と速度情報からなる航法状態量の差や各種センサの誤差を実時間で推定出力するので、カルマンフィルタの出力は、INS航法に帰還され、その航法の補正入力に使用する。上記複合航法において、カルマンフィルタの入出力については、疎結合あるいは密結合と呼ばれる構成がある。疎結合とは、INS航法の出力である速度と位置、GPS航法からの速度と位置との両者を入力とし、カルマンフィルタの出力をINS航法に帰還する構成をいう。密結合とは、GPS航法に関してはGPS航法からの位置出力を入力するのではなくGPS航法の入力側の信号をカルマンフィルタに入力する構成をいう。
【0004】
なお、GPSの位置情報は、未だ精度が高いとは云えず、正確に座標値が既知である、複数の基準点におけるGPS信号の誤差量を基に、測定点の誤差量を補正するDGPS(Differential Global Positioning System)が知られている。そして複数の基準点における誤差量から、特定の基準点を中心としたある範囲において、その基準点からある距離離れた測定点における誤差量を知る方式が非特許文献1に示されている。
【特許文献1】特表2003−509671号公報
【特許文献2】特表2000−502802号公報
【特許文献3】特開2001−264409号公報
【特許文献4】特開2002−196060号公報
【特許文献5】米国特許第6311129号明細書
【非特許文献1】RTK Networks based on Geo++ GNSMART (登録商標)- Concepts, Implementation, Results (Gerhard Wuebbena, Andreas Bagge, Martin Schmitz) International Technical Meeting, ION GPS-01, Sept. 11-14, 2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の移動体の位置推定装置は上記のように構成されており、IMUの加速度検出を基に入力を行い、位置情報を得るINS航法の出力は、IMUで得られる加速度の値が正確とは云い難いので、INS航法の出力である位置情報の精度は正確であるとは云い難い。
また、GPS航法による場合は、GPS航法で得られる位置情報に種々の誤差要因を含んでいるため、GPS航法による出力位置の精度も正確ではない。
また、INS航法の出力位置を、カルマンフィルタを介して補正するためにGPS航法を複合して用いる複合航法があるが、GPS航法で得られる位置情報も種々の誤差要因を含んでいるので、GPS航法で得られる位置情報で補正しても、その精度も必ずしも正確ではない。
【0006】
この発明は上記の課題を解決するためになされたもので、慣性航法における加速度信号を含む距離情報の入力側の正確度を高めて、演算された移動体の航法位置を正確な値とする。また、測位航法における入力側の擬似距離の正確度を高め、更に帰還情報の質を高めて、結果的により正しい位置情報を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による移動体測位装置は、測位衛星からの情報を受信して測位衛星から移動体への複数の擬似距離と測位衛星の航法暦を求めて、また測位航法により測位航法速度と測位航法位置を出力する測位航法部と、慣性航法により慣性航法速度と慣性航法位置を出力する慣性航法部と、状態推定値を出力するカルマンフィルタと、により移動体の航法位置を求める測位装置において、
広域補正情報で誤差補正された測位衛星と移動体間のドップラ観測値を入力すると共に、上記航法暦とカルマンフィルタが出力する上記状態推定値とにより測位衛星と移動体間の相対速度の計算をして測位衛星と移動体間のドップラ推定値を求め、このドップラ推定値と、誤差補正された上記ドップラ観測値とを比較し、比較結果に基づいて、上記複数の擬似距離から所定の擬似距離を選択して、選択擬似距離として出力する衛星情報選択部と、
上記測位衛星から受信した信号によって得られる搬送波位相情報を入力し、入力したこの搬送波位相情報と衛星情報選択部が出力する上記選択擬似距離とカルマンフィルタが出力する上記状態推定値とを演算して擬似距離推定値を求め、求めたこの擬似距離推定値を出力する擬似距離推定部とを備えて、
上記測位航法部は、擬似距離推定部が出力する上記擬似距離推定値を入力として、測位航法速度と測位航法位置を求めてこれらの測位航法速度と測位航法位置を出力し、
上記カルマンフィルタは、擬似距離推定部が出力する上記擬似距離推定値と、測位航法部が出力する上記測位航法速度と上記測位航法位置と、慣性航法部が出力する上記慣性航法速度と上記慣性航法位置とを入力として、状態推定値を演算して求めるようにした。
【発明の効果】
【0008】
この構成または方法によれば、入力側の速度検出を含む加速度信号の信号精度を高めて、または正しい測位衛星による精度を上げた情報により、正確な慣性航法演算または測位航法演算に基づいた位置が得られる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
この実施の形態における移動体測位装置全体の概略構成図を図1に示す。移動体測位装置は、移動体に搭載されるものである。なお、図1以降の図において、黒丸は、結線結合点を示している。白丸は、加算器を示している。線は、信号(信号線)を示している。線先の矢印は、その線が示す信号の出力先を示している。加算器に入力される信号にマイナス記号(−)がある場合は、その信号値を減算することを示している。また図2は、SF(スケールファクタ)・速度推定部24と加速度推定部25の詳細構成を示す図である。
【0010】
図1において、移動体測位装置は、衛星測位航法系(GPS航法系)と慣性航法系(INS航法系)とカルマンフィルタ16から構成される。ここで衛星測位航法とは、測位衛星と移動体との距離、正確には測位衛星と移動体に載せた受信機(GPS部11)との距離を電波の伝搬時間で測定して、測位計算を行うものである。そしてその結果、測位衛星からの信号受信で得られる擬似距離情報に基づいてGPS航法部での演算結果として移動体位置を出力する。また、カルマンフィルタにこのGPS航法位置の他に、GPS航法部で得た速度をあわせてGPS航法状態量として出力する。
【0011】
また慣性航法は、移動体に搭載した加速度検出器や車輪の車速(回転)パルスを検出する車速検出部(移動体速度検出部)(VMS部)、更に移動体の進行方向を示すForward/Reverse(F/R)検出部等による入力を用いて、移動体の移動距離を示す距離推定値や加速度推定値を出力する加速度推定部を持ち、この出力により航法演算してINS航法位置を出力する。このように、安定で正しいSFを用いて、アライメントにより補正された加速度、距離情報により、INS航法部に対して正しい情報入力ができる。またGPS航法部と同様にカルマンフィルタに対して、INS航法部で関連して計算した速度や加速度からなる、INS航法状態量を出力する。
【0012】
衛星測位航法系(GPS航法系)として、以下の要素がある。先ずGPS衛星や準天頂衛星等の測位用の衛星からの信号を受信して擬似距離、ドップラ偏位等の観測量を得るGPS部11がある。このGPS部11から観測量のうち、擬似距離を入力とすると共に、複数の電子基準点に基づく位置誤差信号を広域補正情報として入力し、所定の補正情報を選択して擬似距離を補正し、補正後擬似距離を時系列に出力するDGPS(Differential Global Positioning System)部12が次にある。更に、DGPS部12から時系列で得られる補正後擬似距離を含む観測量12aを入力とし、これらの情報がマルチパスによるものであるかどうかを判定し、マルチパスであると判定した場合はその補正後擬似距離を廃棄し、マルチパスではなくて正しいパスによる信号であると判断した場合はその補正後擬似距離を出力することにより正しいパスによる信号を選択して選択擬似距離13aとして出力する衛星情報選択部13がある。
【0013】
更に、この正しいパスであると判断された選択擬似距離13aを入力とし、各種の他の信号で補正して更に正しいと判断される擬似距離推定値14aを出力する擬似距離推定部14がある。
こうしてDGPS部、衛星情報選択部、擬似距離推定部を組合わせることによって、GPS航法部に対して正しい擬似距離のみが選択されて入力される。この擬似距離推定値14aを入力とし、この入力を用いて位置計算して衛星測位航法による位置(GPS航法位置)や関連速度からなるINS航法状態量15aを出力するGPS航法部(衛星測位航法部)15がある。
【0014】
またINS慣性航法系(INS航法系)として、移動体の角加速度や上下左右方向の加速度及び進行方向(距離方向)の加速度を検出するIMU部21と、移動体の前方向進行または後方向進行を検出するF/R部22と、移動体の移動量に応じて発生するパルス信号(車速パルス)を検出する車速検出部23(移動体速度検出部)と、車速検出部23から出力される車速検出信号としての、単位時間当たりの車速パルス数にスケールファクタ(SF)を乗算して移動体速度推定値24aを出力するSF(スケールファクタ)・速度推定部24がある。
SF・速度推定部24は、移動体の速度が推定可能かどうかの条件に基づいて、GPS航法部15からの出力であるGPS航法状態量(位置、速度)15aの座標変換値とINS航法部26からの出力であるINS航法状態量(位置、速度)26aの座標変換値とで得られる量から、より品質のよい出力を選択してスケールファクタを補正する。
【0015】
INS航法系では更に、IMU部21から得られる進行方向加速度を、上記の移動体速度推定値24aで補正し、更に後に詳述するアライメント補正して、補正後の推定加速度を出力し、また後に詳述する演算をして距離推定値45a、47aを出力する加速度推定部25と、この推定加速度25aを更にカルマンフィルタ出力の誤差推定値16bとの差をとって入力とし、また加速度推定部25からの上記距離推定値と、カルマンフィルタ16からの状態推定値16cとをも入力として、INS航法位置を計算して出力するINS航法部26がある。
【0016】
また、この両航法部の出力であるGPS航法状態量15aとINS航法状態量26aと、擬似距離推定部14から出力される擬似距離推定値14aと航法暦11aとを入力として、INS航法部26側への帰還出力となる誤差推定値16b、状態推定値16cを出力し、GPS航法側の擬似距離推定部14と衛星情報選択部13とへの帰還出力となる状態推定値16aを出力するカルマンフィルタ16がある。
カルマンフィルタ16は、擬似距離推定値14aを用いた密結合と、GPS航法部15とINS航法部26からのそれぞれの出力であるGPS航法状態量とINS航法状態量とを入力とする疎結合とを併用しており、航法状態量の差や各種センサの誤差を実時間で推定出力する際に、より詳しい情報を入力し、従ってより正しい誤差を推定して出力する。
なお図1では、GPS航法部15が出力する航法状態量15aの一部であるGPS航法位置と、INS航法部26が出力する航法状態量26aの一部であるINS航法位置とは、後段で適宜利用されるが、本実施の形態における構成と動作には関係しないので、ここでは説明を省略する。
【0017】
図2により、移動体加速度・距離推定回路、つまりSF・速度推定部24と加速度推定部25の詳細構成を説明する。
車速検出部23は、移動体の速度(車速)相当を検出する要素である。これはディジタル信号であってもよく、アナログ信号であってもよい。例えばタイヤが一回転するたびにパルス発生させ、この発生パルスを送信する。従って単位時間当たりの車速パルスを数えれば、車の現在速度相当が判る。もっと云えば、車速パルスはタイヤが回転するたびにそれを検出しているなら、それをタイヤ周囲長に相当する換算係数で乗算すれば、時間当たりのパルス数なので、速度が判る。このときF/R部22からの前方向進行か、後方向進行かの信号により、進行方向を判別する。SF・速度推定部24は、車速パルスをSF計算回路51に入力する。ところでこの単位時間当たりの車速パルス数から速度への換算係数であるスケールファクタは、後に述べるように変動する。従って変動に追従して更新し、この更新したスケールファクタで速度を推定しなければならない。これに対応して、スケールファクタが更新可能かどうかを判定する推定可否判定回路52がある。この条件については、動作説明の部分で記述する。
【0018】
この推定可否判定回路52により更新が可能と判断すると、スケールファクタ更新用の入力として、GPS航法系とINS航法系のどちらが適当かを入力切替え(または選択)指示としてカルマンフィルタ53に出力する。この場合の位置に関する状態量としては、GPS航法とINS航法共に地球座標系で表現されるが、移動体の座標系はこれとは異なる。従ってこの両者の座標系を変換する必要があり、座標変換回路54,55がこれを行う。そしてSF計算回路51は、車速検出部23からの車速パルスと、演算ループを構成するカルマンフィルタ53からの出力を入力とし、スケールファクタを更新・保持して、以後、車速パルスを乗算して移動体速度推定値24aを出力する。
【0019】
一方、加速度推定部25は、先ずIMU部21から進行方向加速度21aを含む各種の検出した加速度信号を入力する。図2においては、図1においては詳しく表示されていないが、IMU部21で得られる進行方向加速度の傾斜センサ等の傾斜検出器41による傾斜補正も示している。傾斜検出器41は、移動体が傾いていることを検出するもので、図2で出力の補正量41aとは、この検出した傾斜量から重力加速度のX軸方向、つまり進行方向加速度に換算して加減算すべき加速度補正量を出力する。
IMU部21から得られるIMU進行方向加速度21aをこの傾斜補正量41aで加速度補正をして、進行方向加速度21bとし、進行方向加速度21bを加速度推定部25に入力する。
なお図4は、本実施の形態における移動体測位装置と入力の関係も示していて、この場合は自動車である移動体に搭載したGPS受信機により、GPS衛星から擬似距離、ドップラ偏位等の情報を受信し、GPS航法部でGPS航法距離を得る。なおこの際、GPS衛星と移動体との間の上層に、図示していない電離層や対流圏があって、それらの変動が擬似距離の誤差要因になる。そして車に搭載したIMU部により加速度を検出し、また車速検出器により車速パルスを検出して、これらからINS航法部で進行方向に移動した位置を得る。
【0020】
図2に戻って、進行方向加速度21bにも未だ変動要因がある。そのうちの、静止アライメント補正のための構成を説明する。
先ず静止アライメントを行うためには、静止状態での値を測定しなければならない。しかし最初に静止時にアライメントを行ってバイアス値を得ても、その後に車が受ける加速度変化や、センサの特性変化によって、その値が変化する。従って正しいと考えられる静止アライメントを時々刻々行って、進行方向加速度信号をバイアス値で補正しなければ、正しい進行方向加速度とはならない。本実施の形態では、走行中の僅かな安定期間を検出して、この僅かな期間に静止アライメントを行い、加速度信号に含まれるバイアス値を検出または測定して、その検出したバイアス値で進行方法加速度を補正する。
先ず、静止条件を判定する静止判定回路42を設けて、この判定回路が複数の静止であると判定できる情報の一致により静止と判定した時のみ、静止アライメント検出回路43が加速度信号に含まれるバイアス値を検出する。そして、次に更新するまでそのバイアス値を保持する。こうして加速度推定部25は、IMU部21から得られる進行方向加速度を傾斜検出器41が補正値41aとして出力する補正量で補正した進行方向加速度21bを入力とし、上記静止アライメント検出回路43が保持するバイアス値で補正して、更に後で述べる移動アライメントによる補正量でも補正して、推定加速度25aとして出力する。
【0021】
また加速度推定部25は、(IMU)距離推定値を出力するためのIMU側の積分器44,45と、(VMS)(VMSは移動体速度推定値側を意味する)距離推定値を出力するための積分器47と、これら2つの距離推定値と更にIMU側、VMS側の2つの速度を時系列入力として加速度誤差推定値73aと速度誤差推定値76aを出力する移動アライメント検出回路46を持つ。
【0022】
図3は、SF・速度推定部24と加速度推定部25の機能と動作を示すフロー図である。図2と図3を用いて移動体に載せたIMUや車速検出で得られた加速度や速度から、進行方向の補正後加速度を得るまでの動作を説明する。
さて図2、図3において、SF・速度推定部24内の推定可否判定回路52は、図3のS201で、GPS航法状態量15aとINS航法状態量26aとの座標変換回路54,55により座標系を移動体の座標系に変換した距離相当の値と、検出車速度推定値24aとを監視し、移動体が一定速度以上で走行中であり、かつ加速度入力が少ないかまたは速度変動が少ない安定走行をしていて、情報品質が良くて距離計算が可能、という条件をみたした場合、スケールファクタ(SF)の推定が可能と判断する。スケールファクタは、上記で述べたように車速パルス数から距離に換算する際に使用する換算係数であるが、この値は例えば移動体が受ける加速度変動等、移動体である車の挙動で変動している。従って上記の安定走行条件を満足するときに変動が少ないとして、係数の更新を行う。
【0023】
安定条件の判定を一つの入力のみで判定すると、誤判定の可能性があるが、しかし全ての条件を満たさなくても、代表的な複数の監視対象入力が安定走行条件を示していれば、推定可否判定回路52は、S202でスケールファクタ(SF)の更新制御の信号をSF・速度推定部24の内部カルマンフィルタ53に出す。そして更にGPS航法状態量15aの変換値か、INS航法状態量26aの変換値かのいずれを用いてスケールファクタ(SF)の更新をするかを示す、選択用の入力切替信号を出力する。
このSF計算回路51はS203で、INS航法状態量の変換値か、GPS航法状態量の変換値か、を設定されたカルマンフィルタ53と閉ループを構成して、スケールファクタ(SF)の更新値を計算する。その後、このSFの更新値を保持して、車速検出部23で得られた単位時間当たりの車速パルスの数に基づいてそれを保持している係数で係数倍し、S204で移動体速度推定値24aを加速度推定部25、推定可否判定回路52、内部カルマンフィルタ53に向けて出力する。
このSFの変動に追従して安定なSFの値を更新することは、移動体の位置計算精度向上に大いに寄与する。
【0024】
一方、加速度推定部25側では、静止判定回路42がS211で、これは車速検出部23からの車速パルスがほとんど出ていないということであるが、移動体速度推定値24aがしきい値以下であり、更に座標変換回路54で換算したGPS航法状態量からも移動していないという複数の静止情報に基づいて、移動体の静止状態を判定している。
図5は静止アライメント検出回路43の詳細を示す構成図である。静止判定回路42がその入力信号を調べて、上記で述べた静止状態と判定すると、更新の起動がかかる。更にS212aで、IMU進行方向加速度21bを標準偏差計算回路62で標準偏差を求めて、遅延回路63,64によるそれらの時系列信号により計算可否判定回路65でアライメント計算が可能な状態を検出する。
こうして静止アライメントが計算可能と判定すると、静止アライメント計算回路66が補正後のIMU進行方向加速度21bから低域フィルタを用いてバイアス値43aを測定する。つまりS212bで、静止アライメント検出回路43の出力から補正量としてのバイアス値が得られる。
この例では、静止アライメントを行う条件として、車速パルスがほとんど出ていない、航法状態量が変化していない、アライメントが計算可能、の上記3つの条件の組合わせを説明した。しかし、SFの更新時もそうであるが、更新条件を満足するかどうかを監視する入力としては、種々のバリエーションがあり、他の適切な監視入力を採用してもよい。
【0025】
例えば図6は横軸が時間を示し、縦軸が加速度を示す実測値の例である。図の変動が多い実線は進行方向加速度の実測値を示しており、実測加速度は時間的に絶えず変動している。そして中央部分に横方向に水平な線は静止アライメント検出回路43が保持している静止時加速度、つまりバイアス値を示している。図のA点のわずかな時間軸方向に安定な期間で静止判定回路42による静止判定が行われて、その後に丸く囲んだ部分に示されるように、静止アライメント検出回路43で静止時加速度の値が補正されてステップ状に更新されている。
このように静止アライメントが計算可能時に、絶えず静止アライメント検出回路43によるバイアスの検出と進行方向加速度の補正を更新し、更新した値が保持される。そして移動体の移動に伴う各種の車の状態変動に追従して、適切に静止アライメントによる補正が行われる。
【0026】
更に積分器44と、図7にその詳細構成を示す移動アライメント検出回路46によるS213aの移動アライメントの検出と、S213bでの処理により、S214で速度推定値を出力する。
移動アライメント検出回路46は、まず検出車速度推定値24aをサンプル/ホールド回路71でサンプルホールドする。そしてそのサンプルホールド値と、IMU側からの進行方向加速度21bを更に静止アライメントを行って得たバイアス値で補正した加速度を積分した積分器44との差分を、遅延回路72を用いて微分して、加速度誤差推定回路73を用いて加速度誤差推定値73aとして出力する。また検出車速度推定値24aを積分器47で積分した移動距離と積分器45による距離との差分を、サンプル/ホールド回路74と遅延回路75とを用い、速度誤差推定回路76で推定して、速度誤差推定値76aを得る。
即ち図7の加速度誤差推定回路73と、速度誤差推定回路76が行う推定演算は、例えば過去の4点から最新の点まで、それらのサンプルの二乗平均値を求める。例えば速度誤差推定回路76が行う演算は、図8でいえば横軸で1ないし5で示す5点のサンプル値を得て、点1から点5までを順次線でつないだ折れ線ではなくて、一次回帰線である一直線の太線で近似していることである。この加速度推定部25で得られる検出車速度推定値とIMU側からの加速度による距離積算値との差を時系列で5点、サンプルしている。そしてこの5点を一次回帰線で近似したものを、時間を変えて順に図8(a)ないし(d)に示す。図8(a)ないし(d)の一直線の傾斜が加速度推定部25の出力である速度推定値であり、図2でいえば、速度誤差推定回路76からの出力76aと積分器44との差である。加速度誤差推定回路73による演算も、上記の速度誤差推定回路76と同様な演算を行う。
【0027】
こうして加速度推定部25は、IMUからの補正された加速度入力と移動体速度推定値も用いてS215で二つの距離推定値、即ち(IMU)距離推定値45a、(VMS)距離推定値47aを出力する。このSF・速度推定部24と加速度推定部25とで加速度・距離推定回路を構成する。
INS航法部26は、速度推定値25bが入力として加わることもあるが、加速度推定部25からの二つの距離推定値45a、47aと、同じく加速度推定部25の加速度出力をカルマンフィルタ16の誤差推定値で補正した加速度と、を入力とする。勿論、進行方向加速度以外の角加速度も、IMU部21から、カルマンフィルタの出力である誤差推定値16bで帰還補正をした後、INS航法部26に入力して、航法演算に用いられる。
INS航法部としては、一般的な構成であるので、その動作詳細を述べることは省く。ただ、入力として、より正しいと考えられる加速度推定値と、距離推定値とを用いてINS航法位置情報を得る。
【0028】
GPS系の動作を説明する。
GPSは、よく知られているように全地球上を覆域とする衛星を利用した測位システムであり、この目的のための衛星群がGPS衛星と呼ばれる。しかしその位置が必ずしも天頂真上近くにあるとは限らないので、準天頂衛星と呼ばれる3つの衛星からなる衛星群を利用することもできる。
準天頂衛星に関して説明する。準天頂衛星は、赤道面から約45度の傾斜角になるように地球の自転に合わせて1日に1周回している。なお、赤道面からの傾斜角は、設計により任意に設定してよい。また、一例として昇交点赤経(赤道面との交点)において120度ずつ離れるように3機が配置されている。地表面上に投影される準天頂衛星軌道の軌跡は、地上を固定して考えた場合に、準天頂衛星は「8の字」または「涙滴型」を描くように周回している。3機の準天頂衛星は、軌道面を異にするが8時間ごとに交代(会合)することにより、切れ目なく日本上空に位置している。また、地域を日本で考えた場合、仰角が70度以上の準天頂衛星が常に存在することになる。切れ目なく日本上空に位置しているため、仰角が70度以上の準天頂衛星が常に存在し、受信者が地上で準天頂衛星から電波を受ける際、ビルの谷間でも電波を遮られることが少ない。
【0029】
本実施の形態においては、更に後段における処理の必要上、DGPS方式を使用して、衛星軌道誤差や、電離層遅延誤差の影響を除いて、補正後擬似距離12a、つまり更に精密な擬似距離、ドップラ観測値を得ることができる。図4は、測位衛星が出す信号から得られる代表的な情報の種類、即ち測定点までの擬似距離、ドップラ偏位、アルマナック/エフェメリスといった航法値も記載している。
GPS受信部11は、詳細データとして上に述べた擬似距離と、ドップラ偏位、搬送波位相の信号を観測量12aとして出す。また品質情報も出す。
また、従来のDGPSは、あらかじめ位置の確定している基準局における誤差量を求めるが、誤差量は、電離層遅延、対流圏遅延、衛星軌道誤差の和となる。しかし、電離層遅延、対流圏遅延、衛星軌道誤差等は、基線長に依存して値が大きくなり、基準点からの距離が大きくなると、即ち移動体が基準点から離れれば離れるほど、測位精度が劣化するなどの問題があった。
【0030】
図9(a)は、非特許文献1に示されたDGPS方式における誤差分布を多平面近似した誤差説明図であり、図9(b)はある誤差平面における測定点での誤差を説明する図である。複数の基準点の観測情報から位置に依存する誤差成分を推定し、誤差成分を各基準点の周りに線形近似した誤差平面を示す。図において、複数の電子基準点からの情報があると、座標値X1,Y1における測定点Sにおいて、R3平面で近似したR3内の基準点における誤差e3に対して、その基準点から測定点までの距離に比例した面上の誤差ベクトル量Δeを加えたe3+Δeを求めることができる。これは上記従来のDGPSが単にeのみを求めるのに対し、Δeだけ更に誤差を補正ができる。
本実施の形態においては、DGPS部12が上記の複数の基準点情報としての広域補正情報を得て、上記の演算でe3+Δeを求める。即ちこの演算で得た誤差による木目細かい擬似距離の補正を行って、更に精度の高い距離情報としての、補正後擬似距離12aを得る。そして移動体は順に目的地に向かって移動するので、その移動経路に沿って図9(a)の、例えばR1,R3,R4と順々に、近似平面を選択して行くことで、常に精度の高い補正後擬似距離12aが求められる。
なお、DGPS部では、後に説明するドップラ偏位も、通常のGPS部出力による値よりも木目細かい誤差補正がされ、従ってより正しい値が出力される。
【0031】
次にマルチパスの説明をする。図10は衛星から到来する電波の経路を示したもので、直接信号Vseと記載の直接受信される経路と、マルチパス信号と記載の周囲の建物などによって反射して到達する経路が示してある。このように反射して到達する信号をマルチパスと呼ぶ。マルチパスは伝搬経路が通常の経路よりも長くなるため、測位計算結果にオフセットが発生する原因となる。この図は、マルチパスだけが受信される条件になっている。このようにマルチパスが主に受信される場合を識別し、その信号成分を除去することで、測位精度が向上する。
衛星から到来する電波の搬送波周波数が、発信源である衛星の運動と受信側の運動によって変化する、いわゆるドップラ偏位は両者の移動速度の伝搬方向成分から算出可能である。衛星の運動によるドップラ量は、直接信号とマルチパス信号の両者に共通であり、これをVseとする。受信側の移動体の移動速度を図中のVrとすると、直接信号とマルチパス信号に発生するドップラ量は、図示されているように、それぞれVreとVre’になる。図のケースでは受信側の移動速度によるドップラ量は、絶対値だけでなく符号も異なっている事がわかる。
航法暦11aによって測位衛星の座標と移動速度を計算することが可能である。また一般的な測位衛星は遠方にあるため、測位装置の概略位置と概略速度がわかれば、ドップラ量を予測することが可能である。従って、このドップラ予測量と、実際に受信された信号のドップラ量を比較することで、マルチパスの影響を推定することが可能になる。
【0032】
図11は衛星からのDGPS部12を経由した信号から、マルチパスによる信号であると考えられる信号を除去する衛星情報選択部13の詳細構成を示す図である。
また図12はその選択機能と動作を示すフロー図である。図12及び図1において、DGPS部12の出力である観測量12aは、補正後擬似距離と広域補正情報で補正されたドップラ観測値を含んでいる。
ここで衛星情報選択とは、マルチパスで受信されていると判定される擬似距離を、誤りを含むデータとして演算対象データから削除し、直接信号による擬似距離の情報を選択することである。この目的のためにGPS信号のドップラ量を推定し、実際の観測値と比較して、マルチパスかどうかを判定する。例えば観測値が推定値と大きく異なる場合は、マルチパスによる観測値であると判定できる。そしてこの判定結果を用いて、マルチパスであると判定された測位衛星からの信号は廃棄し、直接信号である正しい信号のみを選択して後段に出力する。
【0033】
先ずGPS信号を受信して、その中に含まれる航法暦11aに基づいて、衛星位置計算回路83はステップS301で、衛星の位置計算をする。更にカルマンフィルタ16からの出力である位置状態量のうち、位置情報から移動体の位置を知り、両者の差を求め、これを基にS302で視線ベクタ計算回路84が視線ベクタを計算する。
航法暦11aからは衛星速度計算回路82により求めた衛星の速度と、カルマンフィルタからの状態推定値16aのうち速度を示す値とを比較して測位衛星と移動体間の相対速度差から仮のドップラ量が得られる。これを内積回路85で視線ベクタ成分のドップラ推定値81aが得られる。つまり進行方向に換算してのドップラ値が得られる。
【0034】
マルチパス判定回路86は、上記で得られた進行方向に対するドップラ推定値81aと、DGPS信号から得られる誤差補正された精密なドップラ観測値(12a)との差を絶対値回路87で絶対値をS304で得る。また先のカルマンフィルタ16が出力する位置状態量のうち、移動体速度の視線ベクタ成分を内積回路88で求める。視線ベクタ成分の絶対値を絶対値回路89で得て、この値と先のドップラ差の絶対値とを、所定の条件で比較する。更にS305aで判定回路90により比較判定する。
マルチパスであることの判定基準は、視線ベクタ成分の絶対値差が大きいことである。この差が所定値以上であればマルチパス判定回路86は廃棄の選択制御信号86aを出し、それに基づいて選択回路91はS311で、マルチパスであるとしてその擬似距離は廃棄する。
こうしてS306において、衛星情報選択部13からは、正しいと考えられる擬似距離及び関連情報のみが次段の擬似距離推定部14に選択擬似距離13aとして出力される。即ちDGPS部12による広域補正情報により補正したドップラ観測値により、マルチパス判定が正しく行える。
上記の選択が正しく行われるためには、DGPS部12からの補正されたドップラ値を用いることが必須である。つまり単にGPS部出力のドップラ値では不正確な値しか得られないが、DGPS部12を経由して広域補正情報により補正された補正後擬似距離12aに含まれるドップラ観測値を用いることで正しい選択ができる。
【0035】
図13(a)は擬似距離推定部14の詳細構成を示す図であり、図14は擬似距離推定部14の機能と動作を示すフロー図である。
擬似距離の観測量にはGPS受信機の時計誤差の影響が含まれる。図13(a)において、GPS航法部15での演算結果から得られる時計誤差推定値15bにより擬似距離換算回路101が時計誤差分を距離値に換算し、この値で前段からの選択擬似距離13aを補正して、S401で、受信機時計誤差を除去する。
擬似距離平滑計算の動作を図13(b)に示す詳細構成図に基づいて説明する。GPS部11から出力され、DGPS部12で誤差補正されて出力される搬送波位相12bの観測量を、遅延回路121と減算器で差分をとって搬送波位相の変動分を得て、適応計算回路122への入力とする。適応計算回路122はS402で、この搬送波位相の変動分と、先に述べた時計誤差換算による補正を受けた選択擬似距離と、カルマンフィルタ出力の状態推定値16aとで時間系列の重み付けして適応計算し、乗算回路123の乗数Kを制御する。
一方S403では、搬送波位相の変動分と遅延回路124とを加算して擬似距離予測値を得る。S404で、この擬似距離予測値と先に補正して得ている擬似距離との差分を、適応計算回路122の出力指示であるK倍して乗算回路123が出力し、先の擬似距離予測値と加算して、擬似距離平滑計算回路102の出力である擬似距離平滑値102aとする。
即ち品質の優れた搬送波位相観測量を用いて擬似距離観測量に含まれる雑音を除去する。二つをそれぞれ重み付けして加算して、移動体の挙動や擬似距離の変化に応じて平滑定数Kを時系列で適応変化させて、雑音除去特性を高めている。
【0036】
ここで図13(a)に戻って、入力の航法暦を用いて衛星位置計算回路103が計算した衛星位置と、状態推定値16aのうちの移動体位置との差分を計算し、絶対値回路105へ出力する。また衛星位置計算回路103の出力から仰角計算回路104により擬似距離の情報を得ている測位衛星への仰角を求め、S405で、重み付け回路106と推定計算回路108により、未だ除去されていない対流圏誤差を推定する。同時にGPS部11からの擬似距離品質情報から、重み付け回路107と推定計算回路109により、未除去のマルチパス誤差等による位置誤差を推定する。これらの合計推定誤差と、先の比較した差分とを乗算回路110で乗算し、推定計算回路111で過去の値を二乗平均計算して補正値111aを得る。
擬似距離推定部14はS406で、最終的にこの補正値111aで補正した擬似距離推定値14aを出力し、GPS航法部15への入力とする。
なお、この場合も搬送波位相と擬似距離は、GPS部11からの値を用いたのでは誤った擬似距離推定値となることもある。DGPS部12を経由して誤差補正された値を用いて、はじめて正しい擬似距離推定値14aが得られる。
【0037】
GPS航法部15の構成はよく知られているので、その動作を特に詳述はしない。入力として補正がされた擬似距離推定値14aが用いられるので、得られるGPS航法位置としてより正しい値が得られる。
カルマンフィルタ16の入力として、疎結合ではINS航法部26からのINS航法位置とGPS航法部15からのGPS航法位置が用いられるが、本実施の形態では、更に擬似距離推定部14からのドップラ値も含む擬似距離推定値14aも用いられる密結合としている。
カルマンフィルタ16の帰還出力は状態推定値16cとしてINS航法部26への入力と、誤差推定値16bによる加速度補正とに用いられ、またGPS系に対しては状態推定値16aとして擬似距離推定部14と衛星情報選択部13に出力される。
【0038】
こうしてINS系に対しては、安定入力が得られる場合に、誤差を少なくした状態でスケールファクタ(SF)を求めて更新し、その値を次の更新時まで保持して、また静止アライメントが行える状態を検出してバイアス値を更新し、移動アライメントを帰還量から正しいと思われる値を推定して、それらを用いて加速度誤差を補正して正しい加速度入力としている。即ち、車速パルス入力が所定の安定した入力状態である場合に、スケールファクタ補正し、同じく静止していることが明らかな場合にのみ、加速度信号に含まれるバイアス値を測定して、その測定したバイアス値で入力の加速度信号を補正する加速度・距離推定回路を用いて、航法計算の精度を高めている。
またGPS系に対しては、複数の電子基準点による広域補正情報を含んだDGPS部で擬似距離誤差を補正し、マルチパスの影響を除き、搬送波位相や時計誤差推定や過去サンプルの二乗平均計算による値推定と残存誤差除去により入力情報の質を高め、更にそれ自体、擬似距離推定部からの擬似距離推定値を併用して推定精度を高めたカルマンフィルタと一体となった擬似距離推定を行い、航法計算の精度を高めている。
【0039】
上記説明では、各構成要素はハードウェアであるとして説明したが、各構成要素は同一の機能を持つソフトウェアのプログラムをROMまたは不揮発性RAMに組み込み、マイクロプロセッサでそれらを読み出して図3、図12、図14に示す機能を実行するようにした構成としてもよい。その場合は、各フロー図におけるステップSの機能が、対応する構成図中の要素の機能と同様の動作をする。またGPS航法部15とINS航法部も、他の要素と同様にプログラムを組み込んで、ソフトウェアで機能を得るようにしてもよい。
また、上記の各構成要素を、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで実現してもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の実施の形態1における移動体測位装置の構成図である。
【図2】実施の形態1におけるスケールファクタ・速度推定部と加速度誤差推定部の詳細構成図である。
【図3】実施の形態1におけるスケールファクタ・速度推定部と加速度誤差推定部の機能と動作を示すフロー図である。
【図4】移動体が受ける加速度を説明する図である。
【図5】実施の形態1における静止アライメント検出回路の詳細構成図である。
【図6】実加速度データと静止アライメント検出回路により得られる静止加速度値(バイアス値)の例を示す図である。
【図7】実施の形態1における移動アライメント検出回路の詳細構成図である。
【図8】移動アライメント検出回路により得られる傾斜係数の例を示す図である。
【図9】DGPS方式における誤差分布を多平面近似した誤差説明図である。
【図10】マルチパスとマルチパスによる影響を説明する図である。
【図11】実施の形態1における衛星情報選択部の詳細構成図である。
【図12】実施の形態1における衛星情報選択部の機能と動作を示すフロー図である。
【図13】実施の形態1における擬似距離推定部の詳細構成図である。
【図14】実施の形態1における擬似距離推定部の機能と動作を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0041】
12 DGPS部、13 衛星情報選択部、14 擬似距離推定部、15 GPS航法部、16 カルマンフィルタ、24 スケールファクタ(SF)・速度推定部、25 加速度推定部、26 INS航法部、42 静止判定回路、43 静止アライメント検出回路、46 移動アライメント検出回路、51 SF計算回路、52 推定可否判定回路、53 カルマンフィルタ、81 ドップラ推定回路、86 マルチパス判定回路、91 選択回路、102 擬似距離平滑計算回路、S201 SF推定可能判定ステップ、S202 計算用入力切替設定ステップ、S203 SF更新ステップ、S204 移動体速度推定値計算ステップ、S211 静止判定ステップ、S212a 静止アライメント検出ステップ、S212b 静止アライメントによる補正ステップ、S213a 移動アライメント検出ステップ、S213b 移動アライメントによる処理ステップ、S214 速度推定値計算ステップ、S215 距離推定値計算ステップ、S301 衛星位置計算ステップ、S302 視線ベクタ計算ステップ、S303 ドップラ推定値計算ステップ、S304 ドップラ推定値とドップラ観測値との差検出ステップ、S305a 推定値と観測値間の差と、移動体速度の視線ベクタ成分との比較ステップ、305b 比較結果が所定値以内にあるかを判定するステップ、S306 正規パスとして擬似距離を出力するステップ、S311 マルチパスとしてデータ廃棄ステップ、S401 搬送波位相変動計算ステップ、S402 位相変動と時計誤差補正後の擬似距離とカルマンフィルタからの状態推定値とによる適応計算ステップ、S403 遅延出力と位相変動とによる擬似距離予測値計算ステップ、S404 擬似距離予測値と擬似距離入力との差の適応計算結果である乗数K倍後と、予測値との差による擬似距離平滑値取得ステップ、S405,S406 擬似距離平滑値と推定計算結果との差による擬似距離推定値取得ステップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位衛星からの情報を受信して測位衛星から移動体への複数の擬似距離と測位衛星の航法暦を求めて、また状態推定値を出力するカルマンフィルタを用いて移動体の航法位置を計算する測位装置に用いられる測位航法用擬似距離推定回路において、
広域補正情報で誤差補正された測位衛星と移動体間のドップラ観測値を入力すると共に、上記航法暦とカルマンフィルタが出力する上記状態推定値とにより測位衛星と移動体間の相対速度の計算をして測位衛星と移動体間のドップラ推定値を求め、該ドップラ推定値と、誤差補正された上記ドップラ観測値とを比較し、比較結果に基づいて、上記複数の擬似距離から所定の擬似距離を選択して、選択擬似距離として出力する衛星情報選択部と、
上記測位衛星から受信した信号によって得られる搬送波位相情報を入力し、入力した該搬送波位相情報と衛星情報選択部が出力する上記選択擬似距離とカルマンフィルタが出力する上記状態推定値とを演算して擬似距離推定値を求め、求めた該擬似距離推定値を出力する擬似距離推定部、とを備えたことを特徴とする測位航法用擬似距離推定回路。
【請求項2】
測位衛星からの情報を受信して測位衛星から移動体への複数の擬似距離と測位衛星の航法暦を求めて、また測位航法により測位航法速度と測位航法位置を出力する測位航法部と、慣性航法により慣性航法速度と慣性航法位置を出力する慣性航法部と、状態推定値を出力するカルマンフィルタと、により移動体の航法位置を求める測位装置において、
広域補正情報で誤差補正された測位衛星と移動体間のドップラ観測値を入力すると共に、上記航法暦とカルマンフィルタが出力する上記状態推定値とにより測位衛星と移動体間の相対速度の計算をして測位衛星と移動体間のドップラ推定値を求め、該ドップラ推定値と、誤差補正された上記ドップラ観測値とを比較し、比較結果に基づいて、上記複数の擬似距離から所定の擬似距離を選択して、選択擬似距離として出力する衛星情報選択部と、
上記測位衛星から受信した信号によって得られる搬送波位相情報を入力し、入力した該搬送波位相情報と衛星情報選択部が出力する上記選択擬似距離とカルマンフィルタが出力する上記状態推定値とを演算して擬似距離推定値を求め、求めた該擬似距離推定値を出力する擬似距離推定部とを備えて、
上記測位航法部は、擬似距離推定部が出力する上記擬似距離推定値を入力として、測位航法速度と測位航法位置を求めて該測位航法速度と測位航法位置を出力し、
上記カルマンフィルタは、擬似距離推定部が出力する上記擬似距離推定値と、測位航法部が出力する上記測位航法速度と上記測位航法位置と、慣性航法部が出力する上記慣性航法速度と上記慣性航法位置とを入力として、上記状態推定値を演算して求めるようにしたことを特徴とする移動体測位装置。
【請求項3】
測位衛星からの情報を受信して測位衛星から移動体への複数の擬似距離と測位衛星の航法暦を求めて、また測位航法により測位航法速度と測位航法位置を出力する測位航法部と、慣性航法により慣性航法速度と慣性航法位置を出力する慣性航法部と、状態推定値を出力するカルマンフィルタと、により移動体の航法位置を求める測位装置において、
広域補正情報で誤差補正された測位衛星と移動体間のドップラ観測値を入力すると共に、上記航法暦とカルマンフィルタが出力する上記状態推定値とにより測位衛星と移動体間の相対速度の計算をして測位衛星と移動体間のドップラ推定値を求め、該ドップラ推定値と、誤差補正された上記ドップラ観測値とを比較し、比較結果に基づいて、上記複数の擬似距離から所定の擬似距離を選択して、選択擬似距離として出力する衛星情報選択部と、
上記測位衛星から受信した信号によって得られる搬送波位相情報を入力し、入力した該搬送波位相情報と衛星情報選択部が出力する上記選択擬似距離とカルマンフィルタが出力する上記状態推定値とを演算して擬似距離推定値を求め、求めた該擬似距離推定値を出力する擬似距離推定部と、
移動体の移動に伴い得られる移動体速度検出信号を入力すると共に、上記移動体速度検出信号から移動体速度に換算する係数をスケールファクタとし、複数の所定条件を満たす場合に、測位航法部の出力である上記測位航法速度と上記測位航法位置とからなる情報と、慣性航法部の出力である上記慣性航法速度と上記慣性航法位置とからなる情報との少なくともいずれかの情報を選択し、該選択した情報に基づいて上記スケールファクタを更新し、該スケールファクタを用いて上記移動体速度検出信号から移動体速度推定値を計算して出力するスケールファクタ・速度推定部と、
移動体の進行方向加速度信号を入力すると共に、移動体の静止を検出する複数の信号により移動体の静止を判定して、該静止判定時に上記進行方向加速度信号に含まれるバイアス値を測定して、該測定したバイアス値を用いて上記進行方向加速度信号を補正し、かつ該補正後の進行方向加速度信号と上記スケールファクタ・速度推定部が出力する上記移動体速度推定値とを用いて、移動体の推定加速度と距離推定値とを計算して出力する加速度推定部と、を備え、
上記カルマンフィルタは、擬似距離推定部が出力する上記擬似距離推定値と、測位航法部が出力する上記測位航法速度と上記測位航法位置と、慣性航法部が出力する上記慣性航法速度と上記慣性航法位置とを入力として、状態推定値を演算して求めるようにし、
上記慣性航法部は、加速度推定部が出力する上記推定加速度と上記距離推定値と、カルマンフィルタが出力する上記状態推定値とを入力として、移動体の慣性航法速度と慣性航法位置を演算で求め、求めた該慣性航法速度と慣性航法位置を出力するようにしたことを特徴とする移動体測位装置。
【請求項4】
測位衛星からの情報を受信して測位衛星から移動体への複数の擬似距離と測位衛星の航法暦を求めるステップと、また測位航法により測位航法速度と測位航法位置を出力する測位航法演算ステップと、慣性航法により慣性航法速度と慣性航法位置を出力する慣性航法演算ステップと、状態推定値を出力するカルマンフィルタ演算ステップと、により移動体の航法位置を求める測位方法において、
広域補正情報で誤差補正された測位衛星と移動体間のドップラ観測値を入力するステップと、
上記航法暦とカルマンフィルタ演算ステップが出力する上記状態推定値とにより測位衛星と移動体間の相対速度の計算をして測位衛星と移動体間のドップラ推定値を求め、該ドップラ推定値と、誤差補正された上記ドップラ観測値とを比較し、比較結果に基づいて、上記複数の擬似距離から所定の擬似距離を選択して、選択擬似距離として出力する衛星情報選択ステップと、
上記測位衛星から受信した信号によって得られる搬送波位相情報を入力するステップと、
該搬送波位相情報と衛星情報選択ステップが出力する上記選択擬似距離とカルマンフィルタ演算ステップが出力する上記状態推定値とを演算して擬似距離推定値を求め、求めた該擬似距離推定値を出力する擬似距離推定ステップとを備えて、
上記測位航法演算ステップは、擬似距離推定ステップが出力する上記擬似距離推定値を入力し、測位航法速度と測位航法位置を演算して求めて、該測位航法速度と測位航法位置を出力するステップとし、
上記カルマンフィルタ演算ステップは、擬似距離推定ステップが出力する上記擬似距離推定値と、測位航法演算ステップが出力する上記測位航法速度と上記測位航法位置と、慣性航法演算ステップが出力する上記慣性航法速度と上記慣性航法位置とを入力として、位置状態量を演算で求めるステップとしたことを特徴とする移動体測位方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2006−208392(P2006−208392A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−63456(P2006−63456)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【分割の表示】特願2004−223(P2004−223)の分割
【原出願日】平成16年1月5日(2004.1.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】