溶接ビードの品質検査方法
【課題】溶接ビードの幅方向の位置ずれ量を算出するためのコストを抑えることができる溶接ビードの品質検査方法を提供する。
【解決手段】溶接ビードの品質検査方法は、床小梁との結合部分と端板の溶接ビード側端、溶接ビードの端板との結合部分にそれぞれ影ができるように光を当て、モノクロUSBCCDカメラで撮像する。得られた2つのモノクロ画像データを二値化し、端板の溶接ビード側端に相当する基準線a、溶接ビードの床小梁との結合線b、溶接ビードの端板の結合線cをそれぞれ設定する。次に、双方の結合線b、cの間に中間線dを設定し、基準線aから仮想溶接線eを設定する。そして、仮想溶接線eの垂直方向Yの位置に対する中間線dの垂直方向Yの位置のずれ量Yaを算出する。
【解決手段】溶接ビードの品質検査方法は、床小梁との結合部分と端板の溶接ビード側端、溶接ビードの端板との結合部分にそれぞれ影ができるように光を当て、モノクロUSBCCDカメラで撮像する。得られた2つのモノクロ画像データを二値化し、端板の溶接ビード側端に相当する基準線a、溶接ビードの床小梁との結合線b、溶接ビードの端板の結合線cをそれぞれ設定する。次に、双方の結合線b、cの間に中間線dを設定し、基準線aから仮想溶接線eを設定する。そして、仮想溶接線eの垂直方向Yの位置に対する中間線dの垂直方向Yの位置のずれ量Yaを算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、溶接ビードの品質検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アーク溶接により2つの母材間に形成される溶接ビードは、溶接時の状況により幅方向に位置ずれが生じて品質が低下する。また、母材が溶融したときに発生する蒸気が溶融金属内にわき上がって生成するピットと呼ばれる穴が溶接ビード表面にできる場合がある。そこで、例えば特許文献1のような溶接ビードの位置や形状を検査する品質検査方法が用いられている。
【0003】
特許文献1の溶接ビードの品質検査方法では、まず、スリット光を溶接線に沿って移動させながらCCDカメラで溶接ビードを撮像してカラー画像データを得る。次に、画像処理装置を用いてカラー画像データを画像処理して溶接ビードの幅方向の位置ずれ量を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−276250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の溶接ビードの品質検査方法は、カラー画像データを画像処理するために複雑なプログラムを必要とすることから、システム開発費用が大幅にかかる。また、スリット光源の移動装置が非常に高価なものである。さらに、カラー撮像するCCDカメラや、このCCDカメラの移動装置も高価なものである。したがって、特許文献1の溶接ビードの品質検査方法は、溶接ビードの幅方向の位置ずれ量を算出するために大幅なコストがかかっていた。
【0006】
本件発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、溶接ビードの幅方向の位置ずれ量を算出するためのコストを抑えることができる溶接ビードの品質検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件発明者等は、鋭意研究の結果、前記課題を解決するために以下のような溶接ビードの品質検査方法を採用した。
【0008】
本件発明の溶接ビードの品質検査方法では、アーク溶接によって2つの母材の溶接部分に形成される溶接ビードの品質を、モノクロCCDカメラ、照明装置、画像処理装置を用いて検査する方法であって、
前記2つの母材の溶接線の前方に前記モノクロCCDカメラを設置し、前記溶接ビードの一方の母材との結合部分に影ができるように前記照明装置を用いて前記溶接ビードに光を当て、この状態で前記2つの母材を前記モノクロCCDカメラで撮像して第1モノクロ画像データを得て、前記溶接ビードの他方の母材との結合部分に影ができるように前記照明装置を用いて前記溶接ビードに光を当て、この状態で前記2つの母材を前記モノクロCCDカメラで撮像して第2モノクロ画像データを得る撮像工程と、
前記画像処理装置を用いて、前記第1モノクロ画像データを二値化することにより当該第1モノクロ画像データからノイズ成分を除去して第1二値化画像データを得て、前記第2モノクロ画像データを二値化することにより当該第2モノクロ画像データからノイズ成分を除去して第2二値化画像データを得る二値化処理工程と、
前記画像処理装置を用いて前記一方の母材の前記溶接ビード側端または前記他方の母材の前記溶接ビード側端を基準線として座標平面上に設定する基準線設定工程と、
前記画像処理装置を用いて、前記第1二値化画像データから前記溶接ビードの一方の母材との結合部分に相当する範囲の黒画素を前記座標平面上に設定し、当該黒画素から近似線を設定して、この近似線を前記溶接ビードの一方の母材との結合線とし、前記第2二値化画像データから前記溶接ビードの他方の母材との結合部分に相当する範囲の黒画素を前記座標平面上に設定し、当該黒画素から近似線を設定して、この近似線を前記溶接ビードの他方の母材との結合線とする結合線設定工程と、
前記画像処理装置を用いて、双方の結合線の間に中間線を設定し、前記基準線から仮想溶接線を設定して、当該仮想溶接線の垂直方向の位置に対する前記中間線の垂直方向の位置のずれ量を算出する溶接ビード位置ずれ量算出工程と
を備えることを特徴とする。
【0009】
ここで、基準線設定工程の前に、溶接線の前方に前記モノクロCCDカメラを設置し、一方の母材の溶接ビード側端または他方の母材の溶接ビード側端に影ができるように照明装置を用いて一方の母材または前記他方の母材に光を当て、この状態で2つの母材をモノクロCCDカメラで撮像して、一方の母材の溶接ビード側端または他方の母材の溶接ビード側端に影ができているモノクロ画像データを得て、
基準線設定工程では、画像処理装置を用いてモノクロ画像データを二値化することによりモノクロ画像データからノイズ成分を除去して二値化画像データを得て、二値化画像データから一方の母材の溶接ビード側端とその周囲を含む範囲の黒画素または他方の母材の溶接ビード側端とその周囲を含む範囲の黒画素を座標平面上に設定し、当該黒画素から近似線を設定して、この近似線を基準線としても良い。
【0010】
また、撮像工程では、溶接ビードの一方の母材との結合部分と他方の母材の溶接ビード側端とに影ができるように当該溶接ビード側端の外側から溶接ビードに向けて光を当てて第1モノクロ画像データを得て、当該第1モノクロ画像データに他方の母材の溶接ビード側端に影ができているモノクロ画像データを含めるようにしても良い。
あるいは、溶接ビードの他方の母材との結合部分と一方の母材の溶接ビード側端とに影ができるように当該溶接ビード側端の外側から溶接ビードに向けて光を当てて第2モノクロ画像データを得て、当該第2モノクロ画像データに一方の母材の溶接ビード側端に影ができているモノクロ画像データを含めるようにしても良い。
【0011】
また、一方の母材または他方の母材の溶接ビード側端を含む端部に切り欠きが形成されている場合は、二値化画像データから切り欠きの溶接ビード側端とその周囲を含む部分に相当する範囲の黒画素を座標平面上に設定し、当該黒画素から近似線を設定して、この近似線を前記基準線とすることが好ましい。
【0012】
また、照明装置を用いて溶接ビードに撮像工程時よりも強い光を当て、この状態で2つの母材をモノクロCCDカメラで撮像してモノクロ画像データを得た後に、画像処理装置を用いて当該モノクロ画像データを二値化することにより当該モノクロ画像データからノイズ成分を除去して二値化画像データを得て、当該二値化画像データから溶接ビードに相当する範囲に存在する黒画素をピットとしても良い。
【発明の効果】
【0013】
本件発明の溶接ビードの品質検査方法では、モノクロCCDカメラ、照明装置、画像処理装置を用いて溶接ビードの幅方向の位置ずれ量を算出するようにした。したがって、画像処理装置はモノクロ画像を処理するので、従来のようにカラー画像を処理する場合に比べてプログラムを簡単にすることが可能になり、システム開発費用が抑えられる。また、従来のような照明装置やCCDカメラを移動する装置が不要となる。さらに、モノクロCCDカメラを使用するため、CCDカメラ自体のコストが抑えられる。よって、本件発明の溶接ビードの品質検査方法は、溶接ビードの幅方向の位置ずれ量を算出するためのコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本件発明の一実施の形態のアーク溶接から溶接ビードの品質検査への流れを示す製造ラインの模式図である。
【図2】同実施の形態において(a)は溶接ビードを含む2つの母材の端面図、(b)は溶接ビードを含む2つの母材の正面図である。
【図3】同実施の形態の溶接ビード品質検査装置の構成を示す模式図である。
【図4】同実施の形態の溶接ビードの品質検査方法を示すフローチャートである。
【図5】同実施の形態の撮像工程の説明図である。
【図6】同実施の形態の第1二値化画像データの図である。
【図7】同実施の形態の第2二値化画像データの図である。
【図8】同実施の形態の第3二値化画像データの図である。
【図9】同実施の形態の基準線設定工程、結合線設定工程の説明図である。
【図10】同実施の形態の溶接ビード位置ずれ量算出工程の説明図である。
【図11】同実施の形態のピット検出工程の説明図である。
【図12】端板に切り欠きが形成されている斜視図である。
【図13】図12の第1二値化画像データの図である。
【図14】図13の第1二値化画像データを用いた基準線設定工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本件発明の実施の形態を図にしたがって説明する。
【0016】
図1は、本件発明の一実施の形態の製造ラインの模式図である。この製造ラインは、アーク溶接から溶接ビードの品質検査への流れを示している。本実施の形態では、アーク溶接を行う2つの母材として端板11と床小梁12を挙げ、床小梁12の両端面に端板11の表面が突き合わせられたもの(ワーク10)が搬送される。製造ラインの上流側には溶接エリアが形成されており、この溶接エリアには溶接装置20が配置されている。製造ラインの下流側には検査エリアが形成されており、この検査エリアには溶接ビード品質検査装置1が配置されている。
【0017】
溶接装置20は、溶接エリアに搬送されてきたワーク10の上側と下側にある隅部(溶接部分)10a、10aを2つの溶接トーチ20aを用いてアーク溶接する、いわゆる隅肉溶接を行う。具体的には、溶接トーチ20aを、隅部10aの一端側から他端側にそれぞれ移動させながらアーク溶接する。このアーク溶接によって、隅部10aには溶接ビードが形成される。図2に、上側の隅部10aに形成された溶接ビード13を示す。
【0018】
溶接ビード品質検査装置1は、検査エリアに搬送されてきたワーク10に対して、溶接ビード13の位置ずれやピット14(図2(b)参照)の大きさをモノクロCCDカメラを用いて検査するものである。
【0019】
図3は、溶接ビード品質検査装置1の構成を示す模式図である。この溶接ビード品質検査装置1は、モノクロUSBCCDカメラ2(モノクロCCDカメラ)、照明装置3、パソコン4(画像処理装置)を備えている。
【0020】
モノクロUSBCCDカメラ2は、マクロレンズ2aを備えている。また、このモノクロUSBCCDカメラ2はUSBケーブル5でパソコン4に接続されており、図1や図3に示すように床小梁12の上方および下方に配置されている。
【0021】
具体的に説明すると、上側のモノクロUSBCCDカメラ2は、図3に示すように、マクロレンズ2aの中心を床小梁12と端板11との上側の溶接線15(開先中心線)へ向けて配置されている。このように配置された上側のモノクロUSBCCDカメラ2は、端板11の上部、上側の溶接ビード13、床小梁12の上面にかけての範囲を撮像してモノクロ画像データを生成する。
【0022】
また、図示しないが、下側のモノクロUSBCCDカメラ2は、マクロレンズ2aの中心を床小梁12と端板11との下側の溶接線15へ向けて配置されている。このように配置された下側のモノクロUSBCCDカメラ2は、端板11の下部、下側の溶接ビード13、床小梁12の下面にかけての範囲を撮像してモノクロ画像データを生成する。
【0023】
また、図示しないが、双方のモノクロUSBCCDカメラ2はそれぞれ移動機構に取り付けられており、溶接線15に沿って移動するように構成されている。
【0024】
照明装置3は、バー照明3a、照明光源3b、デジタル入出力ユニット3cを備えている。バー照明3aは、溶接ビード13とその周囲を照らすものである。バー照明3aは、上側の溶接ビード13の周囲と、下側の溶接ビード13の周囲に2台ずつ配置されている。図3では上側のバー照明3aを示している。
【0025】
上側の2台のバー照明3aは、床小梁12の上方および端板11の上方で溶接ビード13と対向するように配置され、発光面が上側の溶接ビード13に向けられている。図示しないが、下側の2台のバー照明は、床小梁12の下方および端板11の下方で溶接ビード13と対向するように配置され、発光面が下側の溶接ビード13に向けられている。さらに、各バー照明3aは、ケーブル6により照明光源3bに接続されている。
【0026】
照明光源3bは、各バー照明3aの光量を調整するものである。照明光源3bには、上記で説明したようにバー照明3aが接続されている。デジタル入出力ユニット3cは、照明光源3bをパソコン4で操作するために用いられる。このデジタル入出力ユニット3cは照明光源3bにRS232Cケーブル7で接続され、パソコン4にはUSBケーブル5で接続されている。
【0027】
パソコン4は、モノクロUSBCCDカメラ2の動作制御、照明装置3の動作制御(バー照明3aの光量制御等)、モノクロ画像データの画像処理等を行うものである。このパソコン4は、各制御処理や画像処理を行うためのハードディスク(図示せず)、操作内容や制御内容等を表示するためのディスプレイ4a、各種操作を行うためのキーボード4b等を備えている。また、ハードディスクには、上記で説明したように、モノクロUSBCCDカメラ2、デジタル入出力ユニット3cが接続されている。なお、ハードディスクは、CPU、処理手順のプログラムや各種データ等が記憶されたROM、処理中のデータ等を記憶するRAM、座標系等を備えている。
【0028】
次に、溶接ビード品質検査装置1を用いた溶接ビード13の品質検査方法を具体的に説明する。図4は、溶接ビード13の品質検査方法を示すフローチャートである。溶接ビード13の品質検査方法は、以下の(1)〜(6)の工程を備えている。なお、ここでは、上側の溶接ビード13の品質検査方法について説明する。下側の溶接ビード13の品質検査方法は、上側の溶接ビード13の品質検査方法と比べてモノクロUSBCCDカメラ2、バー照明3aの配置位置が異なるだけであり、上側の溶接ビード13の品質検査方法と実質的には同じである。以下に、各工程について順に説明する。
【0029】
(1)撮像工程
(2)二値化処理工程
(3)基準線設定工程
(4)結合線設定工程
(5)溶接ビード位置ずれ量算出工程
(6)ピット検出工程
【0030】
(1)撮像工程(図5参照)
撮像工程は、第1撮像工程、第2撮像工程、第3撮像工程に分けられる。以下、順に説明する。
【0031】
<第1撮像工程>
第1撮像工程では、端板11の上方に配置されているバー照明3aを用いて、端板11の上端面11aの上方から溶接ビード13の上面に光Lを当てる。このときに、溶接ビード13の床小梁12との結合部分13aと、端板11の溶接ビード側端11bとに影ができるように光量を調整する。この状態で、モノクロUSBCCDカメラ2を用いて、端板11の上部、上側の溶接ビード13、床小梁12の上面にかけての範囲を溶接線15に沿って移動しながら撮像し、第1モノクロ画像データを得る。
【0032】
<第2撮像工程>
第2撮像工程では、床小梁12の上方に配置されているバー照明3aを用いて溶接ビード13の側面に光Lを当てる。このときに、溶接ビード13の端板11との結合部分13bに影ができるように光量を調整する。この状態で、モノクロUSBCCDカメラ2を用いて、第1撮像工程と同じ範囲を溶接線15に沿って移動しながら撮像し、第2モノクロ画像データを得る。
【0033】
<第3撮像工程>
第3撮像工程では、双方のバー照明3a、3aを用いて溶接ビード13の上面と側面とに光Lを当てる。このときの光量は、上記の2つの撮像工程よりも強く設定する。好ましくは、溶接ビード13の端板11との結合部分13b、床小梁12との結合部分13a、端板11の溶接ビード側端11bにそれぞれ影ができず、溶接ビード13やその周囲に付着しているスパッタ(図示せず)により影ができないように光量を調整する。この状態で、モノクロUSBCCDカメラ2を用いて上記の2つの撮像工程と同じ範囲を溶接線15に沿って移動しながら撮像し、第3モノクロ画像データを得る。なお、この後の工程はパソコン4を用いて行う。
【0034】
(2)二値化処理工程
二値化処理工程は、第1二値化処理工程、第2二値化処理工程、第3二値化処理工程に分けられる。以下、順に説明する。
【0035】
<第1二値化処理工程(図6参照)>
第1二値化処理工程では、第1モノクロ画像データを二値化する。つまり、グレースケールモードになっている第1モノクロ画像データを白黒の2階調にする。一方、溶接ビード13やその周囲にはスパッタにより影ができ、第1モノクロ画像データのノイズ成分になる。したがって二値化のしきい値(濃度のしきい値)は、ノイズ成分が除去されるようにできるだけ低い値を設定することが好ましい。例えば、8ビットのモノクロUSBCCDカメラ2を使用した場合には、濃度が0〜255に対するしきい値は40が好ましい。このように第1モノクロ画像データを二値化すると、第1モノクロ画像データからノイズ成分が除去されて図6に示す第1二値化画像データが得られる。この第1二値化画像データは、多数の黒画素100から構成されている。特に、端板11の上端部11c、溶接ビード13の床小梁12との結合部分13aに黒画素100が多く集まっている。これは、第1撮像工程において、端板11の溶接ビード側端11b、溶接ビード13の床小梁12との結合部分13aに影ができるように光を当てたためである。
【0036】
<第2二値化処理工程(図7参照)>
第2二値化処理工程では、第2モノクロ画像データを二値化する。このときのしきい値は、第1二値化処理工程で説明したようにできるだけ低い値を設定することが好ましい。このように第2モノクロ画像データを二値化すると、第2モノクロ画像データからノイズ成分が除去されて、図7に示すような第2二値化画像データが得られる。この第2二値化画像データは、多数の黒画素200から構成されている。特に、溶接ビード13の端板11との結合部分13bに黒画素200が多く集まっている。これは、第2撮像工程において、溶接ビード13の端板11との結合部分13bに影ができるように光を当てたためである。
【0037】
<第3二値化処理工程(図8参照)>
第3二値化処理工程では、第3モノクロ画像データを二値化する。このときのしきい値は、上記の2つの二値化処理工程よりも低い値に設定する。このように第3モノクロ画像データを二値化すると、第3モノクロ画像データからノイズ成分が除去されて、図8に示すような第3二値化画像データが得られる。この第3二値化画像データは、多数の黒画素300から構成されており、溶接ビード13のピット14の位置に黒画素300が多く集まっている。
【0038】
なお、しきい値を上記の2つの二値化処理工程よりも低い値に設定する理由は、第3モノクロ画像データにあるノイズ成分を白と判断させて第3二値化画像データには反映させないようにするためである。
【0039】
(3)基準線設定工程(図9参照)
基準線設定工程では、最初に、図6の第1二値化画像データから端板11の溶接ビード側端11bとその周囲を含む部分に相当する範囲Aを選択し、この範囲A内の黒画素100を抽出して、図9のような座標平面上に設定する。次に、これらの黒画素100から近似線aを設定し、この近似線aを基準線aとする。この基準線aは、端板11の溶接ビード側端11b(端線)に相当する。なお、近似線aの設定方法は最小二乗法が好ましい。
【0040】
(4)結合線設定工程(図9参照)
結合線設定工程は、第1結合線設定工程と第2結合線設定工程とに分けられる。以下、順に説明する。
【0041】
<第1結合線設定工程>
第1結合線設定工程では、最初に、図6の第1二値化画像データから溶接ビード13の床小梁12との結合部分13aに相当する範囲Bを選択し、この範囲B内にある黒画素100を抽出して図9のような座標平面上に設定する。次に、これらの黒画素100から近似線bを設定し、この近似線bを溶接ビード13の床小梁12との結合線bとする。なお、近似線bの設定方法としては最小二乗法が好ましい。
【0042】
<第2結合線設定工程>
第2結合線設定工程では、最初に、図7の第2二値化画像データから溶接ビード13の端板11との結合部分13bに相当する範囲Cを選択し、この範囲C内にある黒画素200を抽出して図9のように座標平面上に設定する。次に、これらの黒画素200から近似線cを設定し、この近似線cを溶接ビード13の端板11との結合線cとする。なお、近似線cの設定方法としては最小二乗法が好ましい。
【0043】
(5)溶接ビード位置ずれ量算出工程(図10参照)
溶接ビード位置ずれ量算出工程では、最初に、図10に示すように座標平面上の双方の結合線b、cの間の中間位置に中間線dを設定する。さらに、基準線aから仮想溶接線eを設定する。この仮想溶接線eは、基準線aの位置が設定されたときに、予めROMやRAMに記憶されている端板11の溶接ビード側端11bと溶接線15の位置情報に基づいて設定される。次に、仮想溶接線eの垂直方向Yの位置に対する中間線dの垂直方向Yの位置のずれ量Yaを算出する。このずれ量Yaは、溶接ビード13の幅方向13Y(図2(b)参照)の位置ずれ量である。そして、このずれ量Yaを、予め定められている品質基準と比較して溶接ビード13の品質を評価する。
【0044】
(6)ピット検出工程(図11参照)
ピット検出工程では、図8の第3二値化画像データから溶接ビード13に相当する範囲Pを選択し、この範囲P内に黒画素300があれば、この黒画素300をピット14と判断する。このようにしてピット14を検出することにより溶接ビード13の品質を評価する。また、ピット14があると判断した場合には、ピット14を構成している黒画素300を図11のように座標平面上に設定し、その大きさ、位置、個数を測定する。そして、この測定結果を、予め定められている品質基準と比較して溶接ビード13の品質を評価する。
【0045】
このように本実施の形態の溶接ビード13の品質検査方法では、モノクロCCDカメラ2、照明装置3、パソコン4を用いて溶接ビード13の幅方向13Yの位置ずれ量Yaを算出するようにした。したがって、パソコン4はモノクロ画像を処理するので、従来のようなカラー画像を処理する場合に比べてプログラムを簡単にすることが可能になり、システム開発費用が抑えられる。また、従来のような照明装置3やCCDカメラ2を移動する装置が不要である。さらに、モノクロCCDカメラ2を使用するため、カラーCCDカメラを用いた従来の溶接ビードの品質検査方法に比べて、CCDカメラ自体のコストが抑えられる。よって、本実施の形態の溶接ビード13の品質検査方法は、溶接ビード13の幅方向13Yの位置ずれ量Yaを算出するためのコストを抑えることができる。
【0046】
さらに、本実施の形態の溶接ビード13の品質検査方法では、溶接ビード13の位置ずれ量とピット14の有無で溶接ビード13の品質を評価するようにした。したがって、溶接ビード13の位置ずれ量のみで溶接ビード13の品質を評価する場合に比べて、溶接ビード13の品質を正確に評価することができる。
【0047】
また、本実施の形態の溶接ビード13の品質検査方法では、実際のモノクロ画像データから基準線aを設定するようにした。このため、基準線aと、実際の端板11の溶接ビード側端11bとのずれ量が小さくなり、基準線aを用いて設定される仮想溶接線eと実際の溶接線15とのずれ量の精度が高くなる。したがって、仮想溶接線eを基準にして算出される中間線dのずれ量Ya(溶接ビード13の幅方向13Yの位置ずれ量)の精度が高くなる。よって、本実施の形態の溶接ビード13の品質検査方法は、溶接ビード13品質検査の精度を高め、溶接ビード13の品質をより正確に評価することができる。
【0048】
さらに、本実施の形態の溶接ビード13の品質検査方法では、基準線aを設定するモノクロ画像データを第1モノクロ画像データに含めるようにした。したがって、基準線aを設定するモノクロ画像データを得るための専用の撮像工程を設ける必要がなく、工程数を短縮できる。よって、本実施の形態の溶接ビード13の品質検査方法は、溶接ビード13の品質検査にかかる時間を短縮できる。なお、本実施の形態では、実際のモノクロ画像データから基準線aを設定したが、予め座標平面上に基準線が設定されているようにしても良い。
【0049】
以上、本件発明にかかる実施の形態を例示したが、この実施の形態は本件発明の内容を限定するものではない。また、本件発明の請求項の範囲を逸脱しない範囲であれば、各種の変更等は可能である。
【0050】
例えば、本実施の形態の溶接ビードの品質検査方法では、端板11の上端部11cに切り欠きが形成されていない場合を説明したが、図12に示すように端板11の上端部11cに切り欠き16が形成されている場合は、第1撮像工程、第1二値化処理工程、基準線設定工程を順に行って基準線を設定する。ここでは基準線設定工程について説明する。
【0051】
最初に、図13に示す第1二値化画像データから、切り欠き16の溶接ビード側端16aとその周囲を含む範囲Gを選択し、この範囲G内の黒画素100を抽出して図14のように座標平面上に設定する。次に、これらの黒画素100から近似線gを設定して、この近似線gを基準線gとする。なお、近似線gの設定方法は最小二乗法が好ましい。
【0052】
切り欠き16を用いて基準線gを設定する理由について説明すると、図12に示すように端板11に上方から光を当てたときには、切り欠き16の内壁面16bにより切り欠き16の底面16c全体に影ができる。この影によって、底面16cと端板11の溶接ビード側面11dとの境界部分(溶接ビード側端16a)が明瞭になり、この状態で第1モノクロ画像データが得られることになる。
【0053】
その結果、この第1モノクロ画像データを二値化処理しても、図14に示すように黒画素100のY方向のばらつきが少ないので、基準線gを容易に設定することができる。したがって、基準線gと実際の切り欠き16の溶接ビード側端16a(端線)とのずれ量がより小さくなり、これに伴い仮想溶接線eと実際の溶接線15とのずれ量の精度がさらに高くなる。したがって、仮想溶接線eを基準として算出される中間線dのずれ量Ya(溶接ビード13の幅方向13Yの位置ずれ量)の精度もさらに高くなる。よって、切り欠き16を用いて基準線gを設定することにより、溶接ビード13の品質検査の精度をさらに高め、溶接ビード13の品質の評価をさらに正確に行うことができる。
【0054】
また、本実施の形態では隅肉溶接で形成された溶接ビード13の品質検査方法について説明したが、その他の溶接方法で形成された溶接ビードについても、本実施の形態で説明したような品質検査方法を適用しても良い。なお、本件発明の溶接ビードの品質検査方法は、溶接ビードと鋼板の光反射量が近いメッキ鋼板の溶接外観品質検査、特に亜鉛メッキ、亜鉛アルミメッキ、亜鉛・アルミ・マグネシュウムメッキに適応が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上説明したように本件発明の溶接ビードの品質検査方法は、溶接ビードの幅方向の位置ずれ量を算出するためのコストを抑えることができる。したがって、本件発明の溶接ビードの品質検査方法は、溶接ビードの品質検査方法の技術分野で十分に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 溶接ビード品質検査装置
2 モノクロUSBCCDカメラ(モノクロCCDカメラ)
3 照明装置
4 パソコン(画像処理装置)
10a 隅部(溶接部分)
11 端板(母材)
11b 端板の溶接ビード側端
12 床小梁(母材)
13 溶接ビード
13a 溶接ビードの床小梁との結合部分
13b 溶接ビードの端板との結合部分
13Y 溶接ビードの幅方向
14 ピット
15 溶接線
16 切り欠き
100 黒画素
200 黒画素
300 黒画素
a 基準線
b 溶接ビードの床小梁との結合線
c 溶接ビードの端板との結合
d 中間線
e 仮想溶接線
Y 垂直方向
Ya 垂直方向のずれ量(幅方向の位置ずれ量)
【技術分野】
【0001】
本件発明は、溶接ビードの品質検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アーク溶接により2つの母材間に形成される溶接ビードは、溶接時の状況により幅方向に位置ずれが生じて品質が低下する。また、母材が溶融したときに発生する蒸気が溶融金属内にわき上がって生成するピットと呼ばれる穴が溶接ビード表面にできる場合がある。そこで、例えば特許文献1のような溶接ビードの位置や形状を検査する品質検査方法が用いられている。
【0003】
特許文献1の溶接ビードの品質検査方法では、まず、スリット光を溶接線に沿って移動させながらCCDカメラで溶接ビードを撮像してカラー画像データを得る。次に、画像処理装置を用いてカラー画像データを画像処理して溶接ビードの幅方向の位置ずれ量を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−276250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の溶接ビードの品質検査方法は、カラー画像データを画像処理するために複雑なプログラムを必要とすることから、システム開発費用が大幅にかかる。また、スリット光源の移動装置が非常に高価なものである。さらに、カラー撮像するCCDカメラや、このCCDカメラの移動装置も高価なものである。したがって、特許文献1の溶接ビードの品質検査方法は、溶接ビードの幅方向の位置ずれ量を算出するために大幅なコストがかかっていた。
【0006】
本件発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、溶接ビードの幅方向の位置ずれ量を算出するためのコストを抑えることができる溶接ビードの品質検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件発明者等は、鋭意研究の結果、前記課題を解決するために以下のような溶接ビードの品質検査方法を採用した。
【0008】
本件発明の溶接ビードの品質検査方法では、アーク溶接によって2つの母材の溶接部分に形成される溶接ビードの品質を、モノクロCCDカメラ、照明装置、画像処理装置を用いて検査する方法であって、
前記2つの母材の溶接線の前方に前記モノクロCCDカメラを設置し、前記溶接ビードの一方の母材との結合部分に影ができるように前記照明装置を用いて前記溶接ビードに光を当て、この状態で前記2つの母材を前記モノクロCCDカメラで撮像して第1モノクロ画像データを得て、前記溶接ビードの他方の母材との結合部分に影ができるように前記照明装置を用いて前記溶接ビードに光を当て、この状態で前記2つの母材を前記モノクロCCDカメラで撮像して第2モノクロ画像データを得る撮像工程と、
前記画像処理装置を用いて、前記第1モノクロ画像データを二値化することにより当該第1モノクロ画像データからノイズ成分を除去して第1二値化画像データを得て、前記第2モノクロ画像データを二値化することにより当該第2モノクロ画像データからノイズ成分を除去して第2二値化画像データを得る二値化処理工程と、
前記画像処理装置を用いて前記一方の母材の前記溶接ビード側端または前記他方の母材の前記溶接ビード側端を基準線として座標平面上に設定する基準線設定工程と、
前記画像処理装置を用いて、前記第1二値化画像データから前記溶接ビードの一方の母材との結合部分に相当する範囲の黒画素を前記座標平面上に設定し、当該黒画素から近似線を設定して、この近似線を前記溶接ビードの一方の母材との結合線とし、前記第2二値化画像データから前記溶接ビードの他方の母材との結合部分に相当する範囲の黒画素を前記座標平面上に設定し、当該黒画素から近似線を設定して、この近似線を前記溶接ビードの他方の母材との結合線とする結合線設定工程と、
前記画像処理装置を用いて、双方の結合線の間に中間線を設定し、前記基準線から仮想溶接線を設定して、当該仮想溶接線の垂直方向の位置に対する前記中間線の垂直方向の位置のずれ量を算出する溶接ビード位置ずれ量算出工程と
を備えることを特徴とする。
【0009】
ここで、基準線設定工程の前に、溶接線の前方に前記モノクロCCDカメラを設置し、一方の母材の溶接ビード側端または他方の母材の溶接ビード側端に影ができるように照明装置を用いて一方の母材または前記他方の母材に光を当て、この状態で2つの母材をモノクロCCDカメラで撮像して、一方の母材の溶接ビード側端または他方の母材の溶接ビード側端に影ができているモノクロ画像データを得て、
基準線設定工程では、画像処理装置を用いてモノクロ画像データを二値化することによりモノクロ画像データからノイズ成分を除去して二値化画像データを得て、二値化画像データから一方の母材の溶接ビード側端とその周囲を含む範囲の黒画素または他方の母材の溶接ビード側端とその周囲を含む範囲の黒画素を座標平面上に設定し、当該黒画素から近似線を設定して、この近似線を基準線としても良い。
【0010】
また、撮像工程では、溶接ビードの一方の母材との結合部分と他方の母材の溶接ビード側端とに影ができるように当該溶接ビード側端の外側から溶接ビードに向けて光を当てて第1モノクロ画像データを得て、当該第1モノクロ画像データに他方の母材の溶接ビード側端に影ができているモノクロ画像データを含めるようにしても良い。
あるいは、溶接ビードの他方の母材との結合部分と一方の母材の溶接ビード側端とに影ができるように当該溶接ビード側端の外側から溶接ビードに向けて光を当てて第2モノクロ画像データを得て、当該第2モノクロ画像データに一方の母材の溶接ビード側端に影ができているモノクロ画像データを含めるようにしても良い。
【0011】
また、一方の母材または他方の母材の溶接ビード側端を含む端部に切り欠きが形成されている場合は、二値化画像データから切り欠きの溶接ビード側端とその周囲を含む部分に相当する範囲の黒画素を座標平面上に設定し、当該黒画素から近似線を設定して、この近似線を前記基準線とすることが好ましい。
【0012】
また、照明装置を用いて溶接ビードに撮像工程時よりも強い光を当て、この状態で2つの母材をモノクロCCDカメラで撮像してモノクロ画像データを得た後に、画像処理装置を用いて当該モノクロ画像データを二値化することにより当該モノクロ画像データからノイズ成分を除去して二値化画像データを得て、当該二値化画像データから溶接ビードに相当する範囲に存在する黒画素をピットとしても良い。
【発明の効果】
【0013】
本件発明の溶接ビードの品質検査方法では、モノクロCCDカメラ、照明装置、画像処理装置を用いて溶接ビードの幅方向の位置ずれ量を算出するようにした。したがって、画像処理装置はモノクロ画像を処理するので、従来のようにカラー画像を処理する場合に比べてプログラムを簡単にすることが可能になり、システム開発費用が抑えられる。また、従来のような照明装置やCCDカメラを移動する装置が不要となる。さらに、モノクロCCDカメラを使用するため、CCDカメラ自体のコストが抑えられる。よって、本件発明の溶接ビードの品質検査方法は、溶接ビードの幅方向の位置ずれ量を算出するためのコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本件発明の一実施の形態のアーク溶接から溶接ビードの品質検査への流れを示す製造ラインの模式図である。
【図2】同実施の形態において(a)は溶接ビードを含む2つの母材の端面図、(b)は溶接ビードを含む2つの母材の正面図である。
【図3】同実施の形態の溶接ビード品質検査装置の構成を示す模式図である。
【図4】同実施の形態の溶接ビードの品質検査方法を示すフローチャートである。
【図5】同実施の形態の撮像工程の説明図である。
【図6】同実施の形態の第1二値化画像データの図である。
【図7】同実施の形態の第2二値化画像データの図である。
【図8】同実施の形態の第3二値化画像データの図である。
【図9】同実施の形態の基準線設定工程、結合線設定工程の説明図である。
【図10】同実施の形態の溶接ビード位置ずれ量算出工程の説明図である。
【図11】同実施の形態のピット検出工程の説明図である。
【図12】端板に切り欠きが形成されている斜視図である。
【図13】図12の第1二値化画像データの図である。
【図14】図13の第1二値化画像データを用いた基準線設定工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本件発明の実施の形態を図にしたがって説明する。
【0016】
図1は、本件発明の一実施の形態の製造ラインの模式図である。この製造ラインは、アーク溶接から溶接ビードの品質検査への流れを示している。本実施の形態では、アーク溶接を行う2つの母材として端板11と床小梁12を挙げ、床小梁12の両端面に端板11の表面が突き合わせられたもの(ワーク10)が搬送される。製造ラインの上流側には溶接エリアが形成されており、この溶接エリアには溶接装置20が配置されている。製造ラインの下流側には検査エリアが形成されており、この検査エリアには溶接ビード品質検査装置1が配置されている。
【0017】
溶接装置20は、溶接エリアに搬送されてきたワーク10の上側と下側にある隅部(溶接部分)10a、10aを2つの溶接トーチ20aを用いてアーク溶接する、いわゆる隅肉溶接を行う。具体的には、溶接トーチ20aを、隅部10aの一端側から他端側にそれぞれ移動させながらアーク溶接する。このアーク溶接によって、隅部10aには溶接ビードが形成される。図2に、上側の隅部10aに形成された溶接ビード13を示す。
【0018】
溶接ビード品質検査装置1は、検査エリアに搬送されてきたワーク10に対して、溶接ビード13の位置ずれやピット14(図2(b)参照)の大きさをモノクロCCDカメラを用いて検査するものである。
【0019】
図3は、溶接ビード品質検査装置1の構成を示す模式図である。この溶接ビード品質検査装置1は、モノクロUSBCCDカメラ2(モノクロCCDカメラ)、照明装置3、パソコン4(画像処理装置)を備えている。
【0020】
モノクロUSBCCDカメラ2は、マクロレンズ2aを備えている。また、このモノクロUSBCCDカメラ2はUSBケーブル5でパソコン4に接続されており、図1や図3に示すように床小梁12の上方および下方に配置されている。
【0021】
具体的に説明すると、上側のモノクロUSBCCDカメラ2は、図3に示すように、マクロレンズ2aの中心を床小梁12と端板11との上側の溶接線15(開先中心線)へ向けて配置されている。このように配置された上側のモノクロUSBCCDカメラ2は、端板11の上部、上側の溶接ビード13、床小梁12の上面にかけての範囲を撮像してモノクロ画像データを生成する。
【0022】
また、図示しないが、下側のモノクロUSBCCDカメラ2は、マクロレンズ2aの中心を床小梁12と端板11との下側の溶接線15へ向けて配置されている。このように配置された下側のモノクロUSBCCDカメラ2は、端板11の下部、下側の溶接ビード13、床小梁12の下面にかけての範囲を撮像してモノクロ画像データを生成する。
【0023】
また、図示しないが、双方のモノクロUSBCCDカメラ2はそれぞれ移動機構に取り付けられており、溶接線15に沿って移動するように構成されている。
【0024】
照明装置3は、バー照明3a、照明光源3b、デジタル入出力ユニット3cを備えている。バー照明3aは、溶接ビード13とその周囲を照らすものである。バー照明3aは、上側の溶接ビード13の周囲と、下側の溶接ビード13の周囲に2台ずつ配置されている。図3では上側のバー照明3aを示している。
【0025】
上側の2台のバー照明3aは、床小梁12の上方および端板11の上方で溶接ビード13と対向するように配置され、発光面が上側の溶接ビード13に向けられている。図示しないが、下側の2台のバー照明は、床小梁12の下方および端板11の下方で溶接ビード13と対向するように配置され、発光面が下側の溶接ビード13に向けられている。さらに、各バー照明3aは、ケーブル6により照明光源3bに接続されている。
【0026】
照明光源3bは、各バー照明3aの光量を調整するものである。照明光源3bには、上記で説明したようにバー照明3aが接続されている。デジタル入出力ユニット3cは、照明光源3bをパソコン4で操作するために用いられる。このデジタル入出力ユニット3cは照明光源3bにRS232Cケーブル7で接続され、パソコン4にはUSBケーブル5で接続されている。
【0027】
パソコン4は、モノクロUSBCCDカメラ2の動作制御、照明装置3の動作制御(バー照明3aの光量制御等)、モノクロ画像データの画像処理等を行うものである。このパソコン4は、各制御処理や画像処理を行うためのハードディスク(図示せず)、操作内容や制御内容等を表示するためのディスプレイ4a、各種操作を行うためのキーボード4b等を備えている。また、ハードディスクには、上記で説明したように、モノクロUSBCCDカメラ2、デジタル入出力ユニット3cが接続されている。なお、ハードディスクは、CPU、処理手順のプログラムや各種データ等が記憶されたROM、処理中のデータ等を記憶するRAM、座標系等を備えている。
【0028】
次に、溶接ビード品質検査装置1を用いた溶接ビード13の品質検査方法を具体的に説明する。図4は、溶接ビード13の品質検査方法を示すフローチャートである。溶接ビード13の品質検査方法は、以下の(1)〜(6)の工程を備えている。なお、ここでは、上側の溶接ビード13の品質検査方法について説明する。下側の溶接ビード13の品質検査方法は、上側の溶接ビード13の品質検査方法と比べてモノクロUSBCCDカメラ2、バー照明3aの配置位置が異なるだけであり、上側の溶接ビード13の品質検査方法と実質的には同じである。以下に、各工程について順に説明する。
【0029】
(1)撮像工程
(2)二値化処理工程
(3)基準線設定工程
(4)結合線設定工程
(5)溶接ビード位置ずれ量算出工程
(6)ピット検出工程
【0030】
(1)撮像工程(図5参照)
撮像工程は、第1撮像工程、第2撮像工程、第3撮像工程に分けられる。以下、順に説明する。
【0031】
<第1撮像工程>
第1撮像工程では、端板11の上方に配置されているバー照明3aを用いて、端板11の上端面11aの上方から溶接ビード13の上面に光Lを当てる。このときに、溶接ビード13の床小梁12との結合部分13aと、端板11の溶接ビード側端11bとに影ができるように光量を調整する。この状態で、モノクロUSBCCDカメラ2を用いて、端板11の上部、上側の溶接ビード13、床小梁12の上面にかけての範囲を溶接線15に沿って移動しながら撮像し、第1モノクロ画像データを得る。
【0032】
<第2撮像工程>
第2撮像工程では、床小梁12の上方に配置されているバー照明3aを用いて溶接ビード13の側面に光Lを当てる。このときに、溶接ビード13の端板11との結合部分13bに影ができるように光量を調整する。この状態で、モノクロUSBCCDカメラ2を用いて、第1撮像工程と同じ範囲を溶接線15に沿って移動しながら撮像し、第2モノクロ画像データを得る。
【0033】
<第3撮像工程>
第3撮像工程では、双方のバー照明3a、3aを用いて溶接ビード13の上面と側面とに光Lを当てる。このときの光量は、上記の2つの撮像工程よりも強く設定する。好ましくは、溶接ビード13の端板11との結合部分13b、床小梁12との結合部分13a、端板11の溶接ビード側端11bにそれぞれ影ができず、溶接ビード13やその周囲に付着しているスパッタ(図示せず)により影ができないように光量を調整する。この状態で、モノクロUSBCCDカメラ2を用いて上記の2つの撮像工程と同じ範囲を溶接線15に沿って移動しながら撮像し、第3モノクロ画像データを得る。なお、この後の工程はパソコン4を用いて行う。
【0034】
(2)二値化処理工程
二値化処理工程は、第1二値化処理工程、第2二値化処理工程、第3二値化処理工程に分けられる。以下、順に説明する。
【0035】
<第1二値化処理工程(図6参照)>
第1二値化処理工程では、第1モノクロ画像データを二値化する。つまり、グレースケールモードになっている第1モノクロ画像データを白黒の2階調にする。一方、溶接ビード13やその周囲にはスパッタにより影ができ、第1モノクロ画像データのノイズ成分になる。したがって二値化のしきい値(濃度のしきい値)は、ノイズ成分が除去されるようにできるだけ低い値を設定することが好ましい。例えば、8ビットのモノクロUSBCCDカメラ2を使用した場合には、濃度が0〜255に対するしきい値は40が好ましい。このように第1モノクロ画像データを二値化すると、第1モノクロ画像データからノイズ成分が除去されて図6に示す第1二値化画像データが得られる。この第1二値化画像データは、多数の黒画素100から構成されている。特に、端板11の上端部11c、溶接ビード13の床小梁12との結合部分13aに黒画素100が多く集まっている。これは、第1撮像工程において、端板11の溶接ビード側端11b、溶接ビード13の床小梁12との結合部分13aに影ができるように光を当てたためである。
【0036】
<第2二値化処理工程(図7参照)>
第2二値化処理工程では、第2モノクロ画像データを二値化する。このときのしきい値は、第1二値化処理工程で説明したようにできるだけ低い値を設定することが好ましい。このように第2モノクロ画像データを二値化すると、第2モノクロ画像データからノイズ成分が除去されて、図7に示すような第2二値化画像データが得られる。この第2二値化画像データは、多数の黒画素200から構成されている。特に、溶接ビード13の端板11との結合部分13bに黒画素200が多く集まっている。これは、第2撮像工程において、溶接ビード13の端板11との結合部分13bに影ができるように光を当てたためである。
【0037】
<第3二値化処理工程(図8参照)>
第3二値化処理工程では、第3モノクロ画像データを二値化する。このときのしきい値は、上記の2つの二値化処理工程よりも低い値に設定する。このように第3モノクロ画像データを二値化すると、第3モノクロ画像データからノイズ成分が除去されて、図8に示すような第3二値化画像データが得られる。この第3二値化画像データは、多数の黒画素300から構成されており、溶接ビード13のピット14の位置に黒画素300が多く集まっている。
【0038】
なお、しきい値を上記の2つの二値化処理工程よりも低い値に設定する理由は、第3モノクロ画像データにあるノイズ成分を白と判断させて第3二値化画像データには反映させないようにするためである。
【0039】
(3)基準線設定工程(図9参照)
基準線設定工程では、最初に、図6の第1二値化画像データから端板11の溶接ビード側端11bとその周囲を含む部分に相当する範囲Aを選択し、この範囲A内の黒画素100を抽出して、図9のような座標平面上に設定する。次に、これらの黒画素100から近似線aを設定し、この近似線aを基準線aとする。この基準線aは、端板11の溶接ビード側端11b(端線)に相当する。なお、近似線aの設定方法は最小二乗法が好ましい。
【0040】
(4)結合線設定工程(図9参照)
結合線設定工程は、第1結合線設定工程と第2結合線設定工程とに分けられる。以下、順に説明する。
【0041】
<第1結合線設定工程>
第1結合線設定工程では、最初に、図6の第1二値化画像データから溶接ビード13の床小梁12との結合部分13aに相当する範囲Bを選択し、この範囲B内にある黒画素100を抽出して図9のような座標平面上に設定する。次に、これらの黒画素100から近似線bを設定し、この近似線bを溶接ビード13の床小梁12との結合線bとする。なお、近似線bの設定方法としては最小二乗法が好ましい。
【0042】
<第2結合線設定工程>
第2結合線設定工程では、最初に、図7の第2二値化画像データから溶接ビード13の端板11との結合部分13bに相当する範囲Cを選択し、この範囲C内にある黒画素200を抽出して図9のように座標平面上に設定する。次に、これらの黒画素200から近似線cを設定し、この近似線cを溶接ビード13の端板11との結合線cとする。なお、近似線cの設定方法としては最小二乗法が好ましい。
【0043】
(5)溶接ビード位置ずれ量算出工程(図10参照)
溶接ビード位置ずれ量算出工程では、最初に、図10に示すように座標平面上の双方の結合線b、cの間の中間位置に中間線dを設定する。さらに、基準線aから仮想溶接線eを設定する。この仮想溶接線eは、基準線aの位置が設定されたときに、予めROMやRAMに記憶されている端板11の溶接ビード側端11bと溶接線15の位置情報に基づいて設定される。次に、仮想溶接線eの垂直方向Yの位置に対する中間線dの垂直方向Yの位置のずれ量Yaを算出する。このずれ量Yaは、溶接ビード13の幅方向13Y(図2(b)参照)の位置ずれ量である。そして、このずれ量Yaを、予め定められている品質基準と比較して溶接ビード13の品質を評価する。
【0044】
(6)ピット検出工程(図11参照)
ピット検出工程では、図8の第3二値化画像データから溶接ビード13に相当する範囲Pを選択し、この範囲P内に黒画素300があれば、この黒画素300をピット14と判断する。このようにしてピット14を検出することにより溶接ビード13の品質を評価する。また、ピット14があると判断した場合には、ピット14を構成している黒画素300を図11のように座標平面上に設定し、その大きさ、位置、個数を測定する。そして、この測定結果を、予め定められている品質基準と比較して溶接ビード13の品質を評価する。
【0045】
このように本実施の形態の溶接ビード13の品質検査方法では、モノクロCCDカメラ2、照明装置3、パソコン4を用いて溶接ビード13の幅方向13Yの位置ずれ量Yaを算出するようにした。したがって、パソコン4はモノクロ画像を処理するので、従来のようなカラー画像を処理する場合に比べてプログラムを簡単にすることが可能になり、システム開発費用が抑えられる。また、従来のような照明装置3やCCDカメラ2を移動する装置が不要である。さらに、モノクロCCDカメラ2を使用するため、カラーCCDカメラを用いた従来の溶接ビードの品質検査方法に比べて、CCDカメラ自体のコストが抑えられる。よって、本実施の形態の溶接ビード13の品質検査方法は、溶接ビード13の幅方向13Yの位置ずれ量Yaを算出するためのコストを抑えることができる。
【0046】
さらに、本実施の形態の溶接ビード13の品質検査方法では、溶接ビード13の位置ずれ量とピット14の有無で溶接ビード13の品質を評価するようにした。したがって、溶接ビード13の位置ずれ量のみで溶接ビード13の品質を評価する場合に比べて、溶接ビード13の品質を正確に評価することができる。
【0047】
また、本実施の形態の溶接ビード13の品質検査方法では、実際のモノクロ画像データから基準線aを設定するようにした。このため、基準線aと、実際の端板11の溶接ビード側端11bとのずれ量が小さくなり、基準線aを用いて設定される仮想溶接線eと実際の溶接線15とのずれ量の精度が高くなる。したがって、仮想溶接線eを基準にして算出される中間線dのずれ量Ya(溶接ビード13の幅方向13Yの位置ずれ量)の精度が高くなる。よって、本実施の形態の溶接ビード13の品質検査方法は、溶接ビード13品質検査の精度を高め、溶接ビード13の品質をより正確に評価することができる。
【0048】
さらに、本実施の形態の溶接ビード13の品質検査方法では、基準線aを設定するモノクロ画像データを第1モノクロ画像データに含めるようにした。したがって、基準線aを設定するモノクロ画像データを得るための専用の撮像工程を設ける必要がなく、工程数を短縮できる。よって、本実施の形態の溶接ビード13の品質検査方法は、溶接ビード13の品質検査にかかる時間を短縮できる。なお、本実施の形態では、実際のモノクロ画像データから基準線aを設定したが、予め座標平面上に基準線が設定されているようにしても良い。
【0049】
以上、本件発明にかかる実施の形態を例示したが、この実施の形態は本件発明の内容を限定するものではない。また、本件発明の請求項の範囲を逸脱しない範囲であれば、各種の変更等は可能である。
【0050】
例えば、本実施の形態の溶接ビードの品質検査方法では、端板11の上端部11cに切り欠きが形成されていない場合を説明したが、図12に示すように端板11の上端部11cに切り欠き16が形成されている場合は、第1撮像工程、第1二値化処理工程、基準線設定工程を順に行って基準線を設定する。ここでは基準線設定工程について説明する。
【0051】
最初に、図13に示す第1二値化画像データから、切り欠き16の溶接ビード側端16aとその周囲を含む範囲Gを選択し、この範囲G内の黒画素100を抽出して図14のように座標平面上に設定する。次に、これらの黒画素100から近似線gを設定して、この近似線gを基準線gとする。なお、近似線gの設定方法は最小二乗法が好ましい。
【0052】
切り欠き16を用いて基準線gを設定する理由について説明すると、図12に示すように端板11に上方から光を当てたときには、切り欠き16の内壁面16bにより切り欠き16の底面16c全体に影ができる。この影によって、底面16cと端板11の溶接ビード側面11dとの境界部分(溶接ビード側端16a)が明瞭になり、この状態で第1モノクロ画像データが得られることになる。
【0053】
その結果、この第1モノクロ画像データを二値化処理しても、図14に示すように黒画素100のY方向のばらつきが少ないので、基準線gを容易に設定することができる。したがって、基準線gと実際の切り欠き16の溶接ビード側端16a(端線)とのずれ量がより小さくなり、これに伴い仮想溶接線eと実際の溶接線15とのずれ量の精度がさらに高くなる。したがって、仮想溶接線eを基準として算出される中間線dのずれ量Ya(溶接ビード13の幅方向13Yの位置ずれ量)の精度もさらに高くなる。よって、切り欠き16を用いて基準線gを設定することにより、溶接ビード13の品質検査の精度をさらに高め、溶接ビード13の品質の評価をさらに正確に行うことができる。
【0054】
また、本実施の形態では隅肉溶接で形成された溶接ビード13の品質検査方法について説明したが、その他の溶接方法で形成された溶接ビードについても、本実施の形態で説明したような品質検査方法を適用しても良い。なお、本件発明の溶接ビードの品質検査方法は、溶接ビードと鋼板の光反射量が近いメッキ鋼板の溶接外観品質検査、特に亜鉛メッキ、亜鉛アルミメッキ、亜鉛・アルミ・マグネシュウムメッキに適応が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上説明したように本件発明の溶接ビードの品質検査方法は、溶接ビードの幅方向の位置ずれ量を算出するためのコストを抑えることができる。したがって、本件発明の溶接ビードの品質検査方法は、溶接ビードの品質検査方法の技術分野で十分に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 溶接ビード品質検査装置
2 モノクロUSBCCDカメラ(モノクロCCDカメラ)
3 照明装置
4 パソコン(画像処理装置)
10a 隅部(溶接部分)
11 端板(母材)
11b 端板の溶接ビード側端
12 床小梁(母材)
13 溶接ビード
13a 溶接ビードの床小梁との結合部分
13b 溶接ビードの端板との結合部分
13Y 溶接ビードの幅方向
14 ピット
15 溶接線
16 切り欠き
100 黒画素
200 黒画素
300 黒画素
a 基準線
b 溶接ビードの床小梁との結合線
c 溶接ビードの端板との結合
d 中間線
e 仮想溶接線
Y 垂直方向
Ya 垂直方向のずれ量(幅方向の位置ずれ量)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーク溶接によって2つの母材の溶接部分に形成される溶接ビードの品質を、モノクロCCDカメラ、照明装置、画像処理装置を用いて検査する方法であって、
前記2つの母材の溶接線の前方に前記モノクロCCDカメラを設置し、前記溶接ビードの一方の母材との結合部分に影ができるように前記照明装置を用いて前記溶接ビードに光を当て、この状態で前記2つの母材を前記モノクロCCDカメラで撮像して第1モノクロ画像データを得て、前記溶接ビードの他方の母材との結合部分に影ができるように前記照明装置を用いて前記溶接ビードに光を当て、この状態で前記2つの母材を前記モノクロCCDカメラで撮像して第2モノクロ画像データを得る撮像工程と、
前記画像処理装置を用いて、前記第1モノクロ画像データを二値化することにより当該第1モノクロ画像データからノイズ成分を除去して第1二値化画像データを得て、前記第2モノクロ画像データを二値化することにより当該第2モノクロ画像データからノイズ成分を除去して第2二値化画像データを得る二値化処理工程と、
前記画像処理装置を用いて前記一方の母材の前記溶接ビード側端または前記他方の母材の前記溶接ビード側端を基準線として座標平面上に設定する基準線設定工程と、
前記画像処理装置を用いて、前記第1二値化画像データから前記溶接ビードの一方の母材との結合部分に相当する範囲の黒画素を前記座標平面上に設定し、当該黒画素から近似線を設定して、この近似線を前記溶接ビードの一方の母材との結合線とし、前記第2二値化画像データから前記溶接ビードの他方の母材との結合部分に相当する範囲の黒画素を前記座標平面上に設定し、当該黒画素から近似線を設定して、この近似線を前記溶接ビードの他方の母材との結合線とする結合線設定工程と、
前記画像処理装置を用いて、双方の結合線の間に中間線を設定し、前記基準線から仮想溶接線を設定して、当該仮想溶接線の垂直方向の位置に対する前記中間線の垂直方向の位置のずれ量を算出する溶接ビード位置ずれ量算出工程と
を備えることを特徴とする溶接ビードの品質検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の溶接ビードの品質検査方法において、
前記基準線設定工程の前に、前記溶接線の前方に前記モノクロCCDカメラを設置し、前記一方の母材の前記溶接ビード側端または前記他方の母材の前記溶接ビード側端に影ができるように前記照明装置を用いて前記一方の母材または前記他方の母材に光を当て、この状態で前記2つの母材を前記モノクロCCDカメラで撮像して、前記一方の母材の前記溶接ビード側端または前記他方の母材の前記溶接ビード側端に影ができているモノクロ画像データを得て、
前記基準線設定工程では、前記画像処理装置を用いて前記モノクロ画像データを二値化することにより当該モノクロ画像データからノイズ成分を除去して二値化画像データを得て、当該二値化画像データから前記一方の母材の前記溶接ビード側端とその周囲を含む範囲の黒画素または前記他方の母材の前記溶接ビード側端とその周囲を含む範囲の黒画素を前記座標平面上に設定し、当該黒画素から近似線を設定して、この近似線を前記基準線とすることを特徴とする溶接ビードの品質検査方法。
【請求項3】
請求項2に記載の溶接ビードの品質検査方法において、
前記撮像工程では、
前記溶接ビードの一方の母材との結合部分と前記他方の母材の前記溶接ビード側端とに影ができるように当該溶接ビード側端の外側から前記溶接ビードに向けて光を当てて前記第1モノクロ画像データを得て、当該第1モノクロ画像データに前記他方の母材の前記溶接ビード側端に影ができているモノクロ画像データを含める、
あるいは、前記溶接ビードの他方の母材との結合部分と前記一方の母材の前記溶接ビード側端とに影ができるように当該溶接ビード側端の外側から前記溶接ビードに向けて光を当てて前記第2モノクロ画像データを得て、当該第2モノクロ画像データに前記一方の母材の前記溶接ビード側端に影ができているモノクロ画像データを含めることを特徴とする溶接ビードの品質検査方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の溶接ビードの品質検査方法において、
前記一方の母材または前記他方の母材の前記溶接ビード側端を含む端部に切り欠きが形成されている場合は、前記二値化画像データから前記切り欠きの前記溶接ビード側端とその周囲を含む部分に相当する範囲の黒画素を前記座標平面上に設定し、当該黒画素から近似線を設定して、この近似線を前記基準線とすることを特徴とする溶接ビードの品質検査方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の溶接ビードの品質検査方法において、
前記照明装置を用いて前記溶接ビードに前記撮像工程時よりも強い光を当て、この状態で前記2つの母材を前記モノクロCCDカメラで撮像してモノクロ画像データを得た後に、前記画像処理装置を用いて当該モノクロ画像データを二値化することにより当該モノクロ画像データからノイズ成分を除去して二値化画像データを得て、当該二値化画像データから前記溶接ビードに相当する範囲に存在する黒画素をピットとすることを特徴とする溶接ビードの品質検査方法。
【請求項1】
アーク溶接によって2つの母材の溶接部分に形成される溶接ビードの品質を、モノクロCCDカメラ、照明装置、画像処理装置を用いて検査する方法であって、
前記2つの母材の溶接線の前方に前記モノクロCCDカメラを設置し、前記溶接ビードの一方の母材との結合部分に影ができるように前記照明装置を用いて前記溶接ビードに光を当て、この状態で前記2つの母材を前記モノクロCCDカメラで撮像して第1モノクロ画像データを得て、前記溶接ビードの他方の母材との結合部分に影ができるように前記照明装置を用いて前記溶接ビードに光を当て、この状態で前記2つの母材を前記モノクロCCDカメラで撮像して第2モノクロ画像データを得る撮像工程と、
前記画像処理装置を用いて、前記第1モノクロ画像データを二値化することにより当該第1モノクロ画像データからノイズ成分を除去して第1二値化画像データを得て、前記第2モノクロ画像データを二値化することにより当該第2モノクロ画像データからノイズ成分を除去して第2二値化画像データを得る二値化処理工程と、
前記画像処理装置を用いて前記一方の母材の前記溶接ビード側端または前記他方の母材の前記溶接ビード側端を基準線として座標平面上に設定する基準線設定工程と、
前記画像処理装置を用いて、前記第1二値化画像データから前記溶接ビードの一方の母材との結合部分に相当する範囲の黒画素を前記座標平面上に設定し、当該黒画素から近似線を設定して、この近似線を前記溶接ビードの一方の母材との結合線とし、前記第2二値化画像データから前記溶接ビードの他方の母材との結合部分に相当する範囲の黒画素を前記座標平面上に設定し、当該黒画素から近似線を設定して、この近似線を前記溶接ビードの他方の母材との結合線とする結合線設定工程と、
前記画像処理装置を用いて、双方の結合線の間に中間線を設定し、前記基準線から仮想溶接線を設定して、当該仮想溶接線の垂直方向の位置に対する前記中間線の垂直方向の位置のずれ量を算出する溶接ビード位置ずれ量算出工程と
を備えることを特徴とする溶接ビードの品質検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の溶接ビードの品質検査方法において、
前記基準線設定工程の前に、前記溶接線の前方に前記モノクロCCDカメラを設置し、前記一方の母材の前記溶接ビード側端または前記他方の母材の前記溶接ビード側端に影ができるように前記照明装置を用いて前記一方の母材または前記他方の母材に光を当て、この状態で前記2つの母材を前記モノクロCCDカメラで撮像して、前記一方の母材の前記溶接ビード側端または前記他方の母材の前記溶接ビード側端に影ができているモノクロ画像データを得て、
前記基準線設定工程では、前記画像処理装置を用いて前記モノクロ画像データを二値化することにより当該モノクロ画像データからノイズ成分を除去して二値化画像データを得て、当該二値化画像データから前記一方の母材の前記溶接ビード側端とその周囲を含む範囲の黒画素または前記他方の母材の前記溶接ビード側端とその周囲を含む範囲の黒画素を前記座標平面上に設定し、当該黒画素から近似線を設定して、この近似線を前記基準線とすることを特徴とする溶接ビードの品質検査方法。
【請求項3】
請求項2に記載の溶接ビードの品質検査方法において、
前記撮像工程では、
前記溶接ビードの一方の母材との結合部分と前記他方の母材の前記溶接ビード側端とに影ができるように当該溶接ビード側端の外側から前記溶接ビードに向けて光を当てて前記第1モノクロ画像データを得て、当該第1モノクロ画像データに前記他方の母材の前記溶接ビード側端に影ができているモノクロ画像データを含める、
あるいは、前記溶接ビードの他方の母材との結合部分と前記一方の母材の前記溶接ビード側端とに影ができるように当該溶接ビード側端の外側から前記溶接ビードに向けて光を当てて前記第2モノクロ画像データを得て、当該第2モノクロ画像データに前記一方の母材の前記溶接ビード側端に影ができているモノクロ画像データを含めることを特徴とする溶接ビードの品質検査方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の溶接ビードの品質検査方法において、
前記一方の母材または前記他方の母材の前記溶接ビード側端を含む端部に切り欠きが形成されている場合は、前記二値化画像データから前記切り欠きの前記溶接ビード側端とその周囲を含む部分に相当する範囲の黒画素を前記座標平面上に設定し、当該黒画素から近似線を設定して、この近似線を前記基準線とすることを特徴とする溶接ビードの品質検査方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の溶接ビードの品質検査方法において、
前記照明装置を用いて前記溶接ビードに前記撮像工程時よりも強い光を当て、この状態で前記2つの母材を前記モノクロCCDカメラで撮像してモノクロ画像データを得た後に、前記画像処理装置を用いて当該モノクロ画像データを二値化することにより当該モノクロ画像データからノイズ成分を除去して二値化画像データを得て、当該二値化画像データから前記溶接ビードに相当する範囲に存在する黒画素をピットとすることを特徴とする溶接ビードの品質検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−63291(P2012−63291A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208933(P2010−208933)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
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