説明

溶液の供給装置及び供給方法

【課題】ノズルから吐出される溶液の重量を高精度に測定することができるよう易の供給装置を提供することにある。
【解決手段】基板を保持するテーブル3と、このテーブルの上方に配置され基板に液滴状の溶液を吐出して塗布する複数のノズルと、ノズルの下方に位置決め可能に設けられ複数のノズルから同時に吐出される複数の液滴状の溶液のうち、1つのノズルから吐出された溶液だけを通過させる遮蔽部材28と、遮蔽部材を通過した溶液の重量を測定する電子天秤を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はインクジェット方式によって溶液をノズルから液滴状に吐出させて基板に塗布する溶液の供給装置及び供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶表示装置や半導体装置の製造工程においては、ガラス基板や半導体ウエハなどの基板に回路パターンを形成するための成膜プロセスがある。この成膜プロセスでは、基板の板面にたとえば配向膜やレジストなどの機能性薄膜が形成される。
【0003】
基板に機能性薄膜を形成する場合、この機能性薄膜を形成する溶液をノズルから液滴状にして吐出させて基板の板面に供給塗布する、インクジェット方式による供給装置が用いられている。
【0004】
インクジェット方式による供給装置は、基板を搬送するテーブルを有しており、このテーブルの上方には、上記ノズルが穿設されたノズルプレートを有する複数の塗布ヘッドが基板の搬送方向に対して直交する方向に沿ってたとえば千鳥状に設けられている。それによって、搬送される基板の上面には複数のノズルから液滴状の溶液が搬送方向と交差する方向に所定間隔で噴射塗布される。
【0005】
基板に溶液を噴射塗布する場合、基板に塗布される溶液の塗布パターンに応じてノズルからの溶液の噴射を制御するようにしている。ノズルからの溶液の噴射を制御するには、塗布データとして上記塗布パターンの座標データを設定し、その座標データに基づいて各塗布ヘッドのノズルに対向して設けられた圧電素子への通電を制御することで、塗布パターンに対向するノズルから溶液を噴射させるということが行なわれている。
【0006】
ノズルから溶液を吐出させて基板に所定の塗布パターンで機能性薄膜を塗布する場合、上記機能性薄膜を基板に均一の厚さで形成することが要求される。機能性薄膜の厚さを均一にするためには、基板上に必要量の溶液を精度良く塗布することが要求される。
【0007】
しかしながら、複数のノズルから吐出される溶液の量は、各圧電素子に同じ電圧を印加したとしても、ノズルプレートに形成されたノズル孔の加工誤差などによって異なることがある。
【0008】
そこで、特許文献1には、次に示すような方法を用いてノズルからの溶液の吐出量の調整を行なうことが提案されている。
1つは、カメラによる撮像画像をもとに各ノズルから吐出される溶液の量を目標値に調整する方法である。
【0009】
この方法は、まず、塗布ヘッドに設けられた複数のノズルのうち選択した1つから溶液を吐出させる。このときノズルから吐出された溶液をカメラで撮像し、この撮像画像から得た液滴の投影面積から液体の体積を概算する。この算出結果をフィードバックして液滴の体積が目標とする値となるように吐出量を調整する。これを塗布ヘッドの全てのノズルに対して行なう。
【0010】
他の1つは、電子天秤の測定値を頼りに基板上に必要量の溶液を塗布する方法である。この方法は、基板を電子天秤の受けに載せ、まず、この基板上に目標値よりも少ない量の溶液を塗布する。そして、塗布された溶液の総量を電子天秤にて実測し、目標値との差を求める。この差をなくす分だけ溶液の塗布を繰り返す。
【特許文献1】特開2005−40690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上述のような方法により、基板上に形成される機能性薄膜の品質の向上を図ることが可能である。しかしながら、液晶表示装置は年々大型化、高精細化する傾向にあることから、機能性薄膜の品質の要求レベルはますます高まることが予想される。
【0012】
そこで、本発明は、各ノズルからの溶液の吐出量を精度良く調整することにより、塗布品質をより向上させることができる溶液の供給装置及び供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、溶液をインクジェット方式によって吐出させて基板に塗布する溶液の供給装置であって、
上記基板を保持するテーブルと、
搬送される基板の上方に配置され上記基板に液滴状の溶液を吐出して塗布する複数のノズルと、
上記ノズルの下方に位置決め可能に設けられ複数のノズルから同時に吐出される複数の液滴状の溶液のうち、1つのノズルから吐出された溶液だけを通過させる遮蔽部材と、
この遮蔽部材を通過した溶液の重量を測定する測定手段と
を具備したことを特徴とする溶液の供給装置にある。
【0014】
上記測定手段の測定に基づいて各ノズルから吐出される溶液の重量が同じになるよう設定する制御手段を備えていることが好ましい。
【0015】
ベースを有し、このベースには上記テーブルを所定方向に移動可能にガイドするガイドレールが設けられ、上記遮蔽部材と上記測定手段は上記ガイドレールにガイドされて上記所定方向に移動可能とされるとともにこの所定方向と交差する方向に移動可能に設けられていることが好ましい。
【0016】
上記遮蔽部材には、上記所定方向及び所定方向と交差する方向の位置を検出する位置決めセンサが設けられ、この位置決めセンサの検出に基づいて上記遮蔽部材は上記ノズルに対して位置決めされることが好ましい。
【0017】
上記遮蔽部材には、この遮蔽部材を上記ノズルの下方で上記所定方向と交差する方向に移動させたときに上記ノズルの開口面に付着した溶液を清掃除去する清掃部材が設けられていることが好ましい。
【0018】
上記遮蔽部材には、上記溶液が貯留される液溜まり部が形成され、この液溜まり部には溶液を排出する排液管が接続されていることが好ましい。
【0019】
この発明は、複数のノズルを有し、これらのノズルから溶液をインクジェット方式によって吐出させる溶液の供給方法であって、
複数のノズルから液滴状の溶液を同時に吐出させる工程と、
各ノズルから同時に吐出された複数の液滴状の溶液のうちの1つのノズルから吐出された溶液だけを取り出してその重量を測定するとともに、その測定を各ノズルから吐出される溶液に対して行なう工程と、
複数のノズルから吐出された液滴状の溶液の重量を比較してそれぞれの溶液の重量が同じになるよう設定する工程と
を具備したことを特徴とする溶液の供給方法にある。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、溶液を複数のノズルから同時に吐出させ、そのうちの1つのノズルから吐出される溶液の重量を測定する。そのため、基板に溶液を塗布するときと同じ条件でノズルから吐出された溶液の重量を測定できるから、測定精度を向上させることが可能となり、それによって塗布品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1に示す溶液の塗布装置はベース1を備えている。このベース1上には所定間隔で平行に離間した一対のガイドレール2が所定方向沿って設けられている。このガイドレール2には載置テーブル3が走行可能に設けられ、たとえばリニアモータなどの図示しない駆動源によって駆動されるようになっている。載置テーブル3の駆動方向を図1に矢印で示すX方向とする。載置テーブル3の上面にはたとえば液晶表示装置に用いられるガラス製の基板Wが供給され、静電チャックや真空吸着などの手段によって吸着保持され支持される。
【0023】
上記ベース1のX方向の中途部には、X方向と直交するY方向の両端部に支柱4が立設されている。一対の支柱4の一側面と他側面にはX方向に対して所定間隔で対向した2枚の取付け板5がY方向に沿って架設されている。各取付け板5の内面には複数、この実施の形態ではそれぞれ4つの塗布ヘッド7が保持されている。つまり、2枚の取付け板5の内面には合計で8つの塗布ヘッド7が千鳥状に設けられている。
【0024】
各塗布ヘッド7は図4に示すようにヘッド本体8を備えている。ヘッド本体8は筒状に形成され、その下面開口は可撓板9によって閉塞されている。この可撓板9はノズルプレート11によって覆われており、このノズルプレート11と上記可撓板9との間に複数の液室12が形成されている。
【0025】
各液室12は、ノズルプレート11内に形成された主管路11Aに不図示の枝管路を介してそれぞれ連通されていて、主管路11Aからこの枝管路を介して溶液が各液室12に供給される。主管路11Aは、一端が後述する給液孔13に接続され、他端が後述する回収孔17に接続される。
【0026】
上記ヘッド本体8の長手方向一端部には上記液室12に連通する上記給液孔13が形成されている。この給液孔13から上記液室12にはたとえば配向膜やレジストなどの機能性薄膜を形成する溶液が供給される。それによって、上記液室12内は溶液で満たされるようになっている。
【0027】
図5に示すように、上記ノズルプレート11には、基板Wの搬送方向に直交する方向に沿って複数、この実施の形態では37個のノズル14が千鳥状に穿設されている。図4に示すように、上記可撓板9の上面には上記各ノズル14にそれぞれ対向する複数の圧電素子15が設けられている。
【0028】
各圧電素子15は上記ヘッド本体8内に設けられた駆動回路部16によって後述するように駆動電圧が供給される。それによって、圧電素子15は伸縮し、可撓板9を部分的に変形させるから、その圧電素子15に対向位置するノズル14から溶液が搬送される基板Wの上面に噴射塗布される。
なお、圧電素子15に印加する電圧の強さやパルス幅を変えて圧電素子15の作動量を制御すれば、各圧電素子15が対向するノズル14からの溶液の吐出量を変えることができる。
【0029】
図4に示すように、上記ヘッド本体8の長手方向他端部には上記液室12に連通する上記回収孔17が形成されている。上記給液孔13から液室12に供給された溶液は、上記回収孔17から回収することができるようになっている。すなわち、各塗布ヘッド7は上記液室12に供給された溶液をノズル14から噴射させるだけでなく、上記液室12を通じて上記回収孔17から回収することが可能となっている。
なお、各塗布ヘッド7の給液孔13には溶液供給管21が接続され、回収孔17には溶液回収管22が接続されている。
【0030】
上記ガイドレール2には上記載置テーブル3と同様、図示しないリニアモータなどの駆動源によってX方向に、しかも上記載置テーブル3とは別々に駆動可能な計測用テーブル25が設けられている。この計測用テーブル25には第1の可動体26と第2の可動体27とが計測用テーブル25の長手方向である、Y方向に沿って移動可能に設けられている。第1、第2の可動体26,27はたとえばリニアモータなどの図示せぬ駆動源によってそれぞれ別々にY方向に駆動することができるようになっている。
【0031】
第1、第2の可動体26,27は上載置部26a,27aと、下載置部26b,27bが上下方向に所定間隔で設けられている。上載置部26a,27aには矩形状の遮蔽部材28が設けられ、下載置部26b,27bには電子天秤29が設けられている。
【0032】
上記遮蔽部材28は図3(a),(b)に示すように上面に開口した矩形凹状の液溜まり部31が形成されている。この液溜まり部31のX方向に沿う一端部のY方向中途部には円錐状の凸部33が設けられ、この凸部33には通過孔32が厚さ方向に貫通して形成されている。この通過孔32は塗布ヘッド7の1つのノズル14から吐出される液滴状の溶液だけが通過する大きさに形成されている。
【0033】
たとえば、塗布ヘッド7に直径が0.1mmのノズル14が1mm間隔で形成されているとすると、上記通過孔32はたとえば0.2〜0.4mmの直径で形成されている。それによって、塗布ヘッド7の複数のノズル14から溶液を同時に吐出させても、通過孔32に対向するノズルから吐出された溶液だけが通過孔32を通過し、他のノズル14から吐出された溶液は上記液溜まり部31に溜まるようになっている。液溜まり部31に溜まった溶液は通過孔32が凸部33に形成されているため、この凸部33によって通過孔32に流れ込むのが阻止されるようになっている。
【0034】
上記液溜まり部31のY方向に沿う寸法は上記塗布ヘッド7のノズル14の列におけるY方向に沿う長さ寸法の約2倍或いはそれ以上の大きさに設定されている。それによって、塗布ヘッド7のY方向の末端に位置するノズル14を通過孔32に対向させてその塗布ヘッド7のすべてのノズル14から溶液Lを吐出させても、通過孔32に対向したノズル14以外のノズル14から吐出された溶液は上記液溜まり部31に吐出させることができる。
【0035】
上記通過孔32を通過した溶液は上記電子天秤29の受け部29a(図2に示す)に滴下する。それによって、複数のノズル14から同時に溶液を吐出させても、1つのノズル14から吐出された溶液だけの重量が上記電子天秤29によって計測することが可能となっている。
【0036】
上記遮蔽部材28の上面には、位置決めセンサとしてY方向に沿う一辺に一対の第1のセンサ34が設けられ、X方向に沿う一辺には第2のセンサ35が設けられている。第1、第2のセンサ34,35はたとえば投光部と受光部を有する反射型の光センサであって、上記遮蔽部材28が塗布ヘッド7の下方に駆動されたときに、この塗布ヘッド7のY方向に沿う一側と、X方向に沿う一側を検出する。それによって、第1、第2の可動体26,27を塗布ヘッド7に対してX、Y方向に位置決めできるようになっている。
【0037】
上記液溜まり部31の上記通過孔32から所定寸法離れた位置には排液孔36が形成されている。この排液孔36には排液管37が接続されている。それによって、上記通過孔32と対向しないノズル14から上記液溜まり部31に吐出された溶液Lは上記排液管37を通じて排出されるようになっている。
【0038】
さらに、上記液溜まり部31のY方向の一端部にはゴムなどの弾性材によってブレード状に形成された清掃部材39がX方向に沿って設けられている。第1、第2の可動体26,27がヘッド7の下方でY方向に沿って駆動されると、上記清掃部材39によってノズル14の開口面であるヘッド7の下面が擦られる。それによって、ヘッド7の下面に付着した溶液Lが清掃されることになる。
【0039】
図6は溶液の供給装置の制御回路図で、同図中71は制御装置である。この制御装置71はヘッドコントローラ72、ノズルコントローラ73を制御するとともに、上記第1、第2の可動体26,27に設けられた第1、第2のセンサ34,35からの信号によって第1、第2の可動体26,27をX、Y方向に位置決め駆動し、遮蔽部材28に設けられた通過孔32をヘッド7に設けられた複数のノズル14に順次対向位置させる。
【0040】
上記コントローラ72,73は上記載置テーブル3のX、Y座標を検出する図示しないエンコーダからの検出信号に基づいて駆動信号をマスタユニット74に出力する。このマスタユニット74は、第1のCPU75、第1のトランシーバ76、24Vの直流電圧を供給する電源77を有し、複数の塗布ヘッド7のノズル34からの溶液Lの噴射を制御する。
【0041】
各塗布ヘッド7には上述した駆動回路部16が設けられている。この駆動回路部16には第2のCPU82が設けられている。この第2のCPU82には上記第1のCPU75からの同期パルスが入力されるとともに、上記第1のトランシーバ76と通信する第2のトランシーバ83を介して上記ノズルコントローラ73から駆動信号が入力される。
【0042】
上記第1のCPU75は、上記テーブル3のX方向の移動量に基づく図示しないXエンコーダからの複数のパルス信号に対し、上記制御装置71及び上記塗布ヘッドコントローラ72を介して1つの同期パルスを上記第2のCPU82に出力するようになっている。
【0043】
第2のCPU82には塗布データが格納されたメモリ84が接続されている。この塗布データは、上記第1のCPU75からの同期パルス信号が駆動回路部16の第2のCPU82に入力されることで、この第2のCPU82に読み出される。第2のCPU82に読み出された塗布データはシリアル・パラレルデータ変換部85に出力される。
【0044】
シリアル・パラレルデータ変換部85には第1の変圧部86が接続されている。この第1の変圧部86は、上記マスタユニット74の電源77からの24Vの電圧を、上記第2のCPU82からの電圧指令に応じて0〜90Vの電圧に変圧し、上記シリアル・パラレルデータ変換部85に出力する。このシリアル・パラレルデータ変換部85には上記各塗布ヘッド7に設けられた複数の圧電素子15が接続されている。
【0045】
第1のCPU75から第2のCPU82に同期信号が入力されると、上記シリアル・パラレルデータ変換部85には上記第2のCPU82から発振信号が出力される。それによって、メモリ84からの塗布データに基づく所定の圧電素子15に第1の変圧部86からの電圧が印加されるから、その圧電素子15に対応するノズル14から溶液が噴射されることになる。
【0046】
つぎに、上記構成の塗布装置の各塗布ヘッド7に設けられたノズル14からの溶液の吐出量を測定して設定する手順を説明する。基板Wに溶液を塗布する場合、基板Wを上面に載置した載置テーブル3は図1に実線で示す位置から鎖線で示す位置までX方向に移動される。そして、基板Wが塗布ヘッド7の下方を通過するときに、各塗布ヘッド7のノズル14から溶液が吐出されることで行われる。
【0047】
上記ノズル14からの溶液の吐出量を測定して設定する場合、まず、載置テーブル3を、図1に実線で示すようにヘッド7の下方から退避させたならば、測定用テーブル25をX方向に駆動して第1、第2の可動体26,27をそれぞれヘッド7の下方に位置させる。
【0048】
制御装置71は、第1、第2の可動体26,27をそれぞれ塗布ヘッド7の下方に位置付けたならば、まず、測定用テーブル25を駆動させて各可動体26,27、すなわち遮蔽部材26に設けられた第1のセンサ34をX方向に予め設定された範囲で移動させる。制御装置71は、この移動中における第1のセンサ34の出力信号と測定用Yテーブル25に付随して設けられた不図示の位置検出器の出力信号とから、塗布ヘッド7のY方向に沿う図示右側の位置を検出する。
【0049】
塗布ヘッド7のY方向の端部位置を求めたならば、今度は、各可動体26,27をそれぞれ駆動させて遮蔽部材28に設けられた第2のセンサ35をY方向に予め設定された範囲で移動させる。制御装置71は、この移動中における第2のセンサ35の出力信号と各可動体26,27に付随して設けられた不図示の位置検出器の出力信号とから塗布ヘッド7のX方向に沿う図示上側の端部の位置を検出する。
【0050】
そして、制御装置71は、各ヘッド7について求めたX方向の端部位置とY方向の端部位置とから、塗布ヘッド7と各可動体26,27との位置関係を求める。
【0051】
塗布ヘッド7上における各ノズル14の位置情報と遮蔽部材28上における通過孔32の位置情報とは設計データにより既知であるから、制御装置71は、予め設定されたこの既知の位置情報と、上述で求めた塗布ヘッド7と各可動体26,27との位置関係とから、各ノズル14と通過孔32との相対位置を求める。
【0052】
このようにして求めた各ノズル14と通過孔32との相対位置に従って、制御装置71は、第1、第2の可動体26,27をそれぞれの遮蔽部材28に設けられた通過孔32が各ヘッド7の37個のノズル14に対して順次対向するよう位置決めする。
【0053】
なお、遮蔽部材28にはY方向に沿って2つの第1のセンサ34が設けられている。そのため、2つの第1のセンサ34によって塗布ヘッド7のX方向に対する傾き角度を検出することができるから、そのことによって塗布ヘッド7の位置認識をより精度よく行うことが可能となる。
【0054】
上記通過孔32がヘッド7の37個のノズル14のうちの1つに対向すると、そのヘッド7の37個のノズル14から溶液が同時に吐出される。そして、通過孔32に対向する1つのノズル14から吐出された溶液だけが上記通過孔32を通過して電子天秤29の受け部29aに滴下して重量が測定される。測定された溶液の重量は制御装置71に入力され、図示しない記憶部に記憶される。最初のノズル14を1番目のノズル14とする。
【0055】
なお、制御装置71は、1番目のノズル14から溶液が吐出される前と吐出された後とでの電子天秤29の出力値の差から受け部29aに滴下された溶液の重量を算出する。例えば、各ノズル14から1000回液滴を吐出させた場合、受け部29aには1000滴の溶液が滴下されることとなる。制御装置71は、この1000滴の液滴が滴下される前と後とでの電子天秤29の出力値の差を求め、この差を1000で割った値を1番目のノズル14から吐出される1滴の液滴の重量として求める。そして、この液滴1滴分の重量が制御装置71の記憶部に記憶される。
【0056】
なお、通過孔32に対向する1つのノズル14以外の36個のノズル14から吐出された溶液は遮蔽部材28の液溜まり部31に吐出され、そこから排液孔36を通じて排液管37に排出される。
【0057】
つぎに、第1、第2の可動体26,27を駆動して通過孔32を2番目のノズル14に対向させてヘッド7の37個のノズル14から溶液を同時に吐出させる。それによって、2番目のノズル14から吐出された溶液だけが通過孔32を通過してその重量が電子天秤29によって測定される。以下、同様にして3番目〜37番目までのノズル14から吐出される溶液の重量が測定される。
【0058】
このようにして、1つのヘッド7の37個のノズル14からそれぞれ吐出される溶液の重量が測定されると、それらの重量が制御装置71の図示しない比較部によって目標値とする重量と比較される。各ノズル14から吐出された溶液の重量が目標とする重量に対して許容値以上の差があると、そのことが第2のCPU82に出力される。目標とする重量は、制御装置71の図示しない記憶部に予め記憶させておく。
【0059】
それによって、第2のCPU82は、各ノズル14から吐出される溶液が目標とする重量の許容値内となるよう、第1の変圧部86からシリアル・パラレルデータ変換部85を介して各ノズル14に対向する圧電素子15に印加する電圧値或いは電圧のパルス幅を制御する。
【0060】
例えば、圧電素子15に印加する電圧値を制御してノズル14から吐出される溶液の量を調整する場合、第2のCPU82のメモリ84に電圧補正量を予め記憶させておく。そして、第2のCPU82は、制御装置71から送られた溶液の重量の差が正(測定した重量が目標とする重量よりも大)のときには、吐出量を減じる必要があるので、圧電素子15に印加する電圧値を電圧補正量分だけ下げるように第1の変圧部85を制御する。反対に、溶液の重量の差が負(測定した重量が目標とする重量よりも小)のときには、吐出量を増やす必要があるから、第2のCPU82は、圧電素子15に印加する電圧値を電圧補正量分だけ上げるように第1の変圧部85を制御する。
【0061】
このようにして、各ノズル14からの溶液の吐出量を補正したならば、上述と同様の手段により、再度各ノズル14から吐出される溶液の重量を測定し、目標とする重量と比較する動作が制御装置71によって行なわれる。比較の結果、全てのノズル14において吐出される溶液の重量が目標とする重量の許容値内であれば調整を完了し、許容値を外れていれば、全てのノズル14から吐出される溶液の重量が目標とする重量の許容値内となるまで繰り返し調整が行なわれる。
【0062】
このようにして、1つの塗布ヘッド7の各ノズル14について吐出量の設定動作が完了したら、他の塗布ヘッド7についても同様にして制御装置71によって吐出量の設定動作が行なわれる。
【0063】
上述したように、本実施例によれば、1つのヘッド7に設けられた複数のノズル14の全てから溶液を同時に吐出させ、そのときに遮蔽部材28の通過孔32に対向する1つのノズル14から吐出された溶液Lだけを、上記通過孔32を通過させて電子天秤29で重量を測定するようにした。そして、そのような測定をヘッド7の37個のノズル14に対して順次行うようにした。
【0064】
図4に示すように、単一の種管路11Aに対して複数の液室12が連通される構造の塗布ヘッド7においては、複数のノズル14のうち、1つのノズル14から溶液を吐出させた場合と、全てのノズル14から同時に溶液を吐出させた場合とでは、圧電素子15に印加する電圧値を同じにしたとしても、前者よりも後者でノズル14から吐出される溶液の量が少なくなる現象、所謂クロストークが生じることがある。
【0065】
このような場合、複数のノズルのうち選択した1つのノズル14だけから溶液を吐出させて吐出量の設定を行なうと、溶液を実際に基板Wに塗布するにあたり全てのノズル14から溶液を同時に吐出させた際に、吐出量が少なくなるという問題が生じる。
【0066】
上述したように、各ノズル14から吐出される溶液の重量を、溶液を実際に基板Wに塗布するときと同じ条件下で測定できるから、その測定に基づいて各ノズル14から吐出される溶液の重量を設定すれば、基板Wに溶液を塗布するときに各ノズル14から吐出される溶液の重量を必要とする値にすることができる。つまり、基板Wに対して均一な所望の厚さの機能性薄膜を形成することができる。
【0067】
遮蔽部材28にはX方向に沿って清掃部材39が設けられている。そのため、各ノズル14から吐出される溶液の重量を測定するため、第1、第2の可動体26,27を塗布ヘッド7の下方をY方向に駆動すると、清掃部材39は先端部が塗布ヘッド7の下面を擦りながら移動することになるから、ノズル14の開口面に付着した溶液を清掃することができる。
【0068】
例えば、ノズル14からの溶液の吐出量を測定して設定する設定動作において、1つのノズル14についての測定が完了するごとに、可動体26,27をY方向に往復動させて塗布ヘッド7の下面全体を払拭する。なお、このとき、上載置部26a,27aを可動体26,27に対して不図示のエアシリンダ等の駆動装置にて昇降可能としておき、上述の往復動のうち、往動時には上載置部26a,27aを上昇端に移動させて清掃部材39の上端が塗布ヘッド7の下面に接触する払拭位置に、復動時には上載置部26a,27aを下降端に移動させて清掃部材39の上端が塗布ヘッド7の下面に接触することのない待機位置に位置付けるようにする。
【0069】
ノズル14からの溶液の吐出を繰り返すうちに、塗布ヘッド7の下面に溶液が付着してくることが知られている。しSて、溶液の付着量が増加してくると、その溶液に異よってノズル14の開口が塞がれ、ノズル14からの溶液の吐出が妨げられることがある。
【0070】
そこで、上述のように、吐出量の設定動作中、清掃部材39で塗布ヘッド7の下面を払拭するようにすると、塗布ヘッド7の下面に付着した溶液によってノズル14が塞がれることが防止できるので、各ノズル14からの吐出量の測定及び設定をより精度良く行なうことができる。
【0071】
また、各ノズル14から吐出された溶液の重量を直接測定するようにしたので、吐出量を精度良く測定でき、各ノズル14からの吐出量を必要とする吐出量に正確に合わせることができる。その結果、基板Wに対して溶液を塗布するときには、溶液を均一な塗布量で塗布でき、ムラの無い均一厚さの機能性薄膜を形成することが可能となる。
【0072】
上記一実施の形態では計測用テーブルに2つの可動体を設け、2つのヘッドのノズルから吐出される溶液の重量を同時に測定できるようにしたが、計測用テーブルに設けられる可動体の数は限定されず、1つ或いは3つ以上であっても差し支えない。
【0073】
また、各ノズル14から吐出される溶液の重量が同じになるように設定したが、ノズル14毎に異なる重量に設定しても良い。
【0074】
また、全てのノズル14から溶液を同時に吐出させながら各ノズル14から吐出された溶液の重量を測定する例で説明したが、全てのノズル14のうちの一部のノズル14からの溶液の吐出を停止させて行っても良い。例えば、今回基板W上に形成する機能性薄膜のパターンにおいては、ヘッド7の37個あるノズル14のうち30個のノズル14からしか溶液を吐出させないような場合、その30個のノズル14からだけ溶液を同時に吐出させながらそれら30個のノズル14それぞれから吐出された溶液の重量を測定する。このようにした場合でも、基板Wに溶液を実際に塗布するときに使用される全てのノズル14から溶液を吐出させながら各ノズル14から吐出される溶液の重量を測定できる。そのため、その測定に基いて調整された溶液の吐出量は実際の塗布に即したものとなり、形成される機能性薄膜の品質を向上させることが可能となる。
【0075】
また、遮蔽部材として矩形板状の遮蔽部材29に通過孔32を設けたものとして説明したが、要は、1つのノズル14から吐出された溶液だけを通過させることができればよいので、例えば、2枚の矩形板を1つのノズル14から吐出された溶液だけが通過できる間隔を隔てて配置し、他のノズル14から吐出された溶液を2枚の矩形板のいずれかで受けるようにしても良い。
【0076】
また、ノズル14から吐出される液滴の重量を1000滴分の液滴の重量から算出する例で説明したが、重量を測定するために吐出する液滴の数は1000滴に限らずいくつでも良く、1滴でも構わない。また、1滴分の液滴の重量を目標とする重量を比較する例で説明したが、1000滴分など複数滴文の重量を比較して吐出量を調整しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】この発明の一実施の形態の塗布装置の概略的構成を示す平面図。
【図2】図1に示す塗布装置の側断面図。
【図3】(a)は遮蔽部材の平面図、(b)は同じく図3(a)のA−A線に沿う断面図。
【図4】塗布ヘッドの縦断面図。
【図5】塗布ヘッドの下面側の図。
【図6】塗布ヘッドのノズルから溶液を吐出させるための制御回路図。
【符号の説明】
【0078】
1…ベース、2…ガイドレール、3…載置テーブル、14…ノズル、28…遮蔽部材、29…電子天秤(測定手段)、31…液溜まり部、32…通過孔、34…第1のセンサ(位置決めセンサ)、35…第2のセンサ(位置決めセンサ)、37…排液管、39…清掃部材、71…制御装置(制御手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液をインクジェット方式によって吐出させて基板に塗布する溶液の供給装置であって、
上記基板を保持するテーブルと、
搬送される基板の上方に配置され上記基板に液滴状の溶液を吐出して塗布する複数のノズルと、
上記ノズルの下方に位置決め可能に設けられ複数のノズルから同時に吐出される複数の液滴状の溶液のうち、1つのノズルから吐出された溶液だけを通過させる遮蔽部材と、
この遮蔽部材を通過した溶液の重量を測定する測定手段と
を具備したことを特徴とする溶液の供給装置。
【請求項2】
上記測定手段の測定に基づいて各ノズルから吐出される溶液の重量が同じになるよう設定する制御手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の溶液の供給装置。
【請求項3】
ベースを有し、このベースには上記テーブルを所定方向に移動可能にガイドするガイドレールが設けられ、上記遮蔽部材と上記測定手段は上記ガイドレールにガイドされて上記所定方向に移動可能とされるとともにこの所定方向と交差する方向に移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載の溶液の供給装置。
【請求項4】
上記遮蔽部材には、上記所定方向及び所定方向と交差する方向の位置を検出する位置決めセンサが設けられ、この位置決めセンサの検出に基づいて上記遮蔽部材は上記ノズルに対して位置決めされることを特徴とする請求項3記載の溶液の供給装置。
【請求項5】
上記遮蔽部材には、この遮蔽部材を上記ノズルの下方で上記所定方向と交差する方向に移動させたときに上記ノズルの開口面に付着した溶液を清掃除去する清掃部材が設けられていることを特徴とする請求項4記載の溶液の供給装置。
【請求項6】
上記遮蔽部材には、上記溶液が貯留される液溜まり部が形成され、この液溜まり部には溶液を排出する排液管が接続されていることを特徴とする請求項1記載の溶液の供給装置。
【請求項7】
複数のノズルを有し、これらのノズルから溶液をインクジェット方式によって吐出させる溶液の供給方法であって、
複数のノズルから液滴状の溶液を同時に吐出させる工程と、
各ノズルから同時に吐出された複数の液滴状の溶液のうちの1つのノズルから吐出された溶液だけを取り出してその重量を測定するとともに、その測定を各ノズルから吐出される溶液に対して行なう工程と、
複数のノズルから吐出された液滴状の溶液の重量を比較してそれぞれの溶液の重量が同じになるよう設定する工程と
を具備したことを特徴とする溶液の供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−313773(P2007−313773A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146472(P2006−146472)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】