溶液塗布用パターン製膜用マスクとその製造方法、パターン膜の製造方法、有機薄膜トランジスタの製造方法
【課題】精度の高いパターン膜の形成が可能な溶液塗布用パターン製膜用マスクを提供する。
【解決手段】本発明の溶液塗布用パターン製膜用マスクは、少なくとも1つの開口部からなる開口部パターンを有する薄板と、前記薄板上に設けられ且つ前記開口部パターン中の少なくとも1つの前記開口部を含む少なくとも1つの領域を取り囲むように配置された複数の凸形状構造体とを備える。
【解決手段】本発明の溶液塗布用パターン製膜用マスクは、少なくとも1つの開口部からなる開口部パターンを有する薄板と、前記薄板上に設けられ且つ前記開口部パターン中の少なくとも1つの前記開口部を含む少なくとも1つの領域を取り囲むように配置された複数の凸形状構造体とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液塗布用により微細なパターン膜を簡易且つ精度良く形成するために使用される溶液塗布用パターン製膜用マスクとその製造方法、そのマスクを用いたパターン膜の製造方法及び有機薄膜トランジスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子、液晶表示素子、有機EL素子などの電子部品分野において、塗布製膜プロセスの研究開発が盛んに行われている。該プロセスは、従来のフォトリソグラフィ技術と比較して、工程数削減、材料の使用効率化のメリットがあり、製造コスト削減が期待できる。
【0003】
塗布製膜プロセス技術の従来技術としては、例えば、配線パターンやカラーフィルター形成技術としてのインクジェット法や、配線や電極パターン、画像表示装置パネルのスペーサー、隔壁などの形成技術としてのスクリーン印刷法等が挙げられる。
【0004】
インクジェット技術とは、流動状のインク(液滴)を吐出し、基板上の所定の位置に着弾させることでパターンを形成する技術であり、ノズル形状等の改良により近年では数ピコリットルの極微量の液滴操作が可能である。また、着弾精度向上としては、例えば、特許文献1のように周辺を樹脂などで囲み隔壁形成するなど塗布面と非塗布面との間に物理的な段差を与える手法や、あるいは特許文献2のように塗布位置を凹状に加工することで、所望の位置にのみ液滴を配置する手法、さらに、特許文献3のように塗布する箇所を親水性に、塗布しない箇所は撥水性にというように親撥水処理を施しておくことで、表面の濡れ性の違いによる塗り分け方法等が提案されている。
【0005】
一方、スクリーン印刷法とは、被印刷基板上に、クリームはんだ、金属ペースト、ペースト状の樹脂等を印刷する方法であり、所定の印刷パターンの開口部が形成された印刷用マスクを被印刷基板に配置し、該印刷用マスクの開口部内にゴム製のスキージ等を用いてペーストを充填した後、該印刷用マスクを被印刷基板から剥離することによって、該印刷用マスクの開口部を通して該開口部内に充填したペーストを被印刷基板上に印刷することができる技術である。主に、インク材料、樹脂材料の塗布に適用され、大面積の基板に対しても高スループットで印刷が可能である。
【0006】
前記スクリーン印刷技術に対して、印刷版の開発がなされており、具体的には、例えば特許文献4のように、マトリクス状に凸部を形成したメタルマスクを用いてクリーム半田を効率的に開口部に定着させる方法や、特許文献5のように、開口部の大きさの異なる2層構造のスクリーン印刷版を用いて乾燥後のエッジ形状を調整する手法等が提案されている。
【特許文献1】特開2000−353594号公報
【特許文献2】特開2005−187316号公報
【特許文献3】特開2003−124215号公報
【特許文献4】特開平6−15979号公報
【特許文献5】特開平6−143855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記インクジェット法は、低粘度溶液に適用が可能であるが、着弾精度向上のために前記基板表面処理等が必要であり、工程が煩雑になる課題を有する。また、滴下直後の液滴形状がレンズ状になることで、膜中央と端で乾燥速度が異なるために、乾燥後に膜形状の均一性が保持できないことも課題である。
【0008】
一方、前記スクリーン印刷法は、高スループットの反面、材料使用効率が課題である。また、原理上、適用材料もインクや樹脂などペースト状の高粘性流体に限定され、低粘性の溶液に適用できない課題を有する。また、印刷版の開発も、高粘性材料向けに限定されており、低粘性溶液に適用しうるマスク開発はほとんどなされていない。
【0009】
ところで、低粘性の溶液へ適用可能であり、かつ、基板前処理工程が不要なパターン製膜方法として、溶液塗布用のパターン製膜用マスクを用いたパターン製膜方法が考えられる(公知であることを自認しない。)。
【0010】
ここで、溶液塗布用パターン製膜用マスクを用いたパターン製膜方法について、図11、図12(a)〜(e)、図13及び図14を用いて説明する。図11は、溶液塗布用パターン製膜用マスク1を示す斜視図である。図12(a)〜(e)は、パターン製膜方法を示す断面図であり、図12(a)は溶液滴下前の状態、図12(b)は溶液滴下直後の状態、図12(c)及び(d)は乾燥途中の状態、図12(e)は乾燥後の状態を示す。図13及び図14は、それぞれ、図12(c)及び(d)の状態を上から見た状態を示す平面図である。
【0011】
まず、図12(a)に示すように、図11に示すような複数の開口部3からなる開口部パターンを有する薄板5からなるマスク1を被塗布基板7上に配置する。
【0012】
次に、図12(b)に示すように、膜材料を溶媒に溶解させた溶液をマスク1の上から滴下する。滴下された溶液は、表面張力のためレンズ状に膨らんだ液滴9となる。
【0013】
次に、溶液を徐々に乾燥させると、ある時点から図12(c)及び(d)、図13及び図14に示すように、任意の端から乾燥が進行していき、液滴9が収縮する方向に(つまり、矢印Dで示す方向に)液滴形状が変化していく。マスク1上の溶液は次第に開口部3の辺りに引き寄せられて、液滴分布が出来始める。図12(d)及び図14に示すようにマスク1上の液滴は、開口部3に集まって留まるが、各開口部3の液滴量は不均一に分布し、その形状もレンズ状が維持される。
【0014】
この状態で溶液をさらに乾燥させると、図12(e)に示すように各開口部3に対応した位置にパターン膜11が形成される。図12(d)の状態で各開口部3の液滴量が不均一に分布しているので、各開口部3に形成されるパターン膜11は、膜密度や厚みなど膜の状態が異なり、また各パターン膜11内でも斑が生じやすい。従って、ここで示した方法では、精度の高いパターン膜の形成が困難である。
【0015】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、精度の高いパターン膜の形成が可能な溶液塗布用パターン製膜用マスクを提供するものである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0016】
本発明の溶液塗布用パターン製膜用マスクは、少なくとも1つの開口部からなる開口部パターンを有する薄板と、前記薄板上に設けられ且つ前記開口部パターン中の少なくとも1つの前記開口部を含む少なくとも1つの領域を取り囲むように配置された複数の凸形状構造体とを備える。
【0017】
本発明のマスクでは、少なくとも1つの開口部を含む領域を取り囲むように複数の凸形状構造体が配置されている。このマスク上に製膜用の溶液を塗布すると、塗布された溶液と凸形状構造体との間に付着力が働く。この付着力によって溶液が凸形状構造体によって取り囲まれた領域に保持される。そのままの状態で溶液を乾燥させると、マスクの開口部に対応した位置にパターン膜が精度よく形成される。
【0018】
また、本発明のマスクを用いたパターン製膜方法は、低粘性の溶液へ適用可能であり、材料使用効率が高く、かつ、基板前処理工程が不要であるという利点を有しており、半導体分野をはじめとして広く電子デバイス分野に応用することができる。
以下、本発明の種々の実施形態等を例示する。
【0019】
前記開口部パターンは、複数の開口部からなり、前記凸形状構造体は、前記開口部パターン中の少なくとも1つの前記開口部を含む複数の領域をそれぞれ取り囲んでもよい。この場合、マスク上に比較的低粘性の溶液を塗布した場合でも、各領域に保持される液滴の形状を比較的均一にすることができ、溶液を乾燥させて形成されるパターン膜の形状や厚さを比較的均一にすることができる。また、本実施形態では、溶液は、溶液と凸形状構造体との間の付着力によって凸形状構造体によって取り囲まれた領域に保持されている。従って、隣接する領域間で溶液が自由に移動することができ、各領域に保持されている溶液の量が比較的均一になるというメリットもある。
【0020】
前記凸形状構造体の形状は、回転体であってもよい。この場合、凸形状構造体が液滴に対して及ぼす効果が凸形状構造体の周囲に均等に及ぶ。
【0021】
少なくとも1つの前記開口部を含む前記領域は、長方形であり、前記凸形状構造体は、前記長方形の全ての頂点に配置されてもよい。前記開口部の形状が長方形である場合は、液滴が長方形に保持されることが好ましいが、長方形の領域の全ての頂点に凸形状構造体を配置することによって液滴をほぼ長方形状に保持することができる。
【0022】
本発明は、少なくとも1つの開口部からなる開口部パターンを薄板に形成し、前記薄板上に凸形状構造体形成材料層を形成し、前記開口部パターン中の少なくとも1つの前記開口部を含む少なくとも1つの領域を取り囲む複数の凸形状構造体が形成されるように前記凸形状構造体形成材料層をパターニングする工程を備える溶液塗布用パターン製膜用マスクの製造方法も提供する。この場合、本発明のマスクを比較的容易に形成することができる。
【0023】
本発明は、上記記載のマスクを被塗布基板上に配置し、膜材料の溶液を前記マスクの上から滴下し、前記溶液を乾燥させて前記開口部に対応した位置にパターン膜を形成する工程を備えるパターン膜の製造方法も提供する。この場合、パターン膜を比較的容易に精度良く製造することができる。
【0024】
本発明は、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極と有機材料からなる半導体層から構成される有機薄膜トランジスタの製造方法において、
前記半導体層は、上記記載のパターン膜の製造方法によって形成される有機薄膜トランジスタの製造方法も提供する。この場合、半導体層を比較的容易に精度良く形成することができる。
【0025】
ここで示した種々の実施形態等は、互いに組み合わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下,本発明の実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す内容は,例示であって,本発明の範囲は,図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0027】
1.溶液塗布用パターン製膜用マスクを用いたパターン製膜方法
本発明の一実施形態の溶液塗布用パターン製膜用マスクを用いた本発明の一実施形態のパターン製膜方法(言い換えると、パターン膜の製造方法又は形成方法)について説明する。
【0028】
まず、図1(a)〜(c)を用いて本実施形態の溶液塗布用パターン製膜用マスク(以下、「マスク」とも呼ぶ。)1の構造の概要について説明する。図1(a)〜(c)は、本実施形態のマスク1の構造を示し、図1(a)は斜視図であり、図1(b)は平面図であり、図1(c)は、図1(b)中のI−I断面図である。
【0029】
本実施形態のマスク1は、縦方向及び横方向にそれぞれ3つずつ並んだ9個の開口部3からなる開口部パターンを有する薄板5と、薄板5上に設けられた16個の凸形状構造体13とを備える。凸形状構造体13は、図1(b)中の点線で示すように、前記開口部パターン中の1つの開口部3を含む9つの領域をそれぞれ取り囲んでいる。開口部3を含む各領域は、4つの凸形状構造体13によって取り囲まれている。なお、開口部3及び凸形状構造体13の数、形状及び配置は、ここで示したものに限定されない。
【0030】
次に、マスク1を用いた本実施形態のパターン製膜方法について、図2(a)〜(e)、図3及び図4を用いて説明する。図2(a)〜(e)は、本実施形態のパターン製膜方法を示す断面図であり、図2(a)は溶液滴下前の状態、図2(b)は溶液滴下直後の状態、図2(c)及び(d)は乾燥途中の状態、図2(e)は乾燥後の状態を示す。図3及び図4は、それぞれ、図2(c)及び(d)の状態を上から見た状態を示す平面図である。
【0031】
まず、図2(a)に示すように、マスク1を被塗布基板7上に配置する。マスク1は、例えば、磁石等の力によって基板7上に固定する。
【0032】
次に、図2(b)に示すように、膜材料を溶媒に溶解させた溶液をマスク1の上から滴下する。滴下された溶液は、表面張力のためレンズ状に膨らんだ液滴9となる。溶液は、基板7とマスク1との間にも流れ込む場合がある。なお、基板7とマスク1との間に流れ込んだ溶液は、乾燥が進んで液適量が減少すると、凸形状構造体13や開口部3の縁に働く表面張力の影響等により、表面に引き寄せられるため、最終的にはマスク1の裏面にはほとんど溶液は残らない。また、基板7とマスク1との間に溶液が実質的に流れ込まないようにマスク1を基板7に固定してもよい。滴下する溶液の種類は、特に限定されない。但し、本実施形態のパターン製膜方法は、特に低粘性材料からなる溶液を用いたときに大きな効果を奏する。また、溶質や溶媒の種類、溶液濃度、製膜温度、製膜手法も特に限定されない。
【0033】
次に、液滴9を徐々に乾燥させると、ある時点から図2(c)及び(d)、図3及び図4に示すように、任意の端から乾燥が進行していき、液滴9が収縮する方向に(つまり、矢印Dで示す方向に)液滴形状が変化していく。マスク1上の溶液は次第に開口部3の辺りに引き寄せられて、液滴分布が出来始める。
【0034】
凸形状構造体13を有さないマスク1を使用した場合、図12(d)に示すようにマスク1の各開口部3の液滴量は不均一に分布する。しかし、凸形状構造体13を有する本実施形態のマスク1を使用した場合、図2(d)に示すように凸形状構造体13によって取り囲まれた領域(開口部3を含む領域)のそれぞれに液滴が保持され、各開口部3の液適量は、ほぼ均一になる。
【0035】
なお、図2(d)は、凸形状構造体13表面での溶液の接触角が比較的小さい場合を示しているので、液滴形状は周辺部が高く、開口部3の中央部分では比較的平坦になっているが、凸形状構造体13表面での溶液の接触角が比較的大きい場合には、図5に示すように、周辺部が低く、開口部3の中央部分では比較的平坦な形状になる。何れの場合でも凸形状構造体13によって取り囲まれた領域に液滴が保持されるという効果は得られる。凸形状構造体13によって取り囲まれた領域に液滴が保持される作用については、後述する。
【0036】
この状態で溶液をさらに乾燥させると、図2(e)のようにパターン膜11が形成される。図2(d)の状態で各開口部3の液滴量がほぼ均一に分布しているので、各開口部3に形成されるパターン膜11の膜密度や厚みなど膜の状態がほぼ均一になり、パターン膜11を精度よく形成することができる。
【0037】
2.凸形状構造体によって溶液が保持される作用
次に、図6(a)〜(c)を用いて、凸形状構造体13によって溶液が保持される作用について説明する。図6(a)〜(c)は、それぞれ、図12(d)、図2(d)及び図5中の点線で囲った範囲Xの拡大図である。
【0038】
図6(a)に示すような凸形状構造体13を有しないマスク1を用いた場合、開口部3近傍では、液滴には、矢印Aで示される液体分子同士の凝集力(Aと呼ぶ。)に起因する表面張力と、矢印Bで示される液体と基板あるいはマスク間の付着力の2つの力がかかる。特に低粘性の溶液の場合、Aの力に対してBの力が大きいために、液滴が広い範囲に広がってしまい、開口部3近傍に保持されない場合がある。また、Aの力は液滴全体にほぼ均等にかかるため、通常、マスク上部の液滴5の形状はレンズ状となる。一方で、乾燥速度は単位面積当たりの液滴量が小さい場所ほど早く、前記レンズ状の液滴では、中心部に対し、端部の乾燥が速くなるため乾燥後は、中心部が盛り上がった形状になる。
【0039】
一方、図6(b)及び(c)に示すような凸形状構造体13を有するマスク1を用いた場合、液滴には、矢印A及びBで示される力に加えて、矢印Cで示される溶液と凸形状構造体13の間の付着力が働く。この力によって、溶液が広い範囲に広がることが抑制され、溶液は、凸形状構造体13によって囲まれた領域に保持される。
【0040】
なお、図6(b)及び(c)は、それぞれ、凸形状構造体13表面での溶液の接触角が比較的小さい場合(親液性である場合)及び大きい場合(疎液性である場合)を示している。一般に、壁面と液体との吸着エネルギーの大きさ(吸着仕事WSL)は液体の表面張力(γL)と接触角(θ)により
WSL=γL(1+cosθ) 〈Dupre−Youngの式〉
と表される。従って、θ<180度ならば吸着相互作用が働く。例えば、テフロン(登録商標)樹脂と水との接触角は110度前後であり、比較的疎液性の関係であるが、凸形状構造体をテフロン(登録商標)にした時でもある程度液滴を引き付ける効果が確認された。逆にあまり親液性過ぎても良くないので、引き付けすぎず、溶液を乾燥の途中段階までとどめるには接触角の範囲として20〜100度が好ましい。
【0041】
3.溶液塗布用パターン製膜用マスク1の構造及び製造方法
次に、図1(a)〜(c)、図7及び図8を用いて本実施形態のマスク1の構造及び製造方法について説明する。
【0042】
まず、液滴が揮発していく過程で、所望の製膜位置すなわち開口部3近傍に液滴を留めるには、それぞれの開口部3上の液体を外側に均等に引っ張って保持するのに十分な凸形状構造体13をマスク薄板5上に点在させることが好ましい。長方形の開口部3が縦と横に規則的に配置されている場合、開口部3を取り囲む長方形の領域の全ての頂点に凸形状構造体13を配置することが好ましい。この場合、開口部3の形状に適した長方形状に液滴形状を効果的に維持できるからである。なお、正方形は、長方形の一形態である。
開口部3を取り囲む領域は、開口部3の形状に相似の形状であることが好ましい。また、凸形状構造体13は、図7に示すように、開口部3を取り囲む長方形の領域の全ての頂点と、長方形の全ての線分の中央に配置してもよい。
【0043】
図1(a)〜(c)では、凸形状構造体13は、1つの開口部3を含む領域の周囲に配置されているが、図8に示すように凸形状構造体13は、複数の開口部3を含む領域を取り囲むように配置されてもよい。
【0044】
開口部3を含む領域を取り囲む凸形状構造体13の数や隣接する2つの凸形状構造体13間の距離(以下、「凸形状構造体13間の距離」とも言う。)は、特に限定されない。しかし、凸形状構造体13間の距離が短すぎると、凸形状構造体13に多量の液滴が束縛されることになり、開口部3での液適量が不十分になる場合がある。従って、凸形状構造体13間の距離は、100μm以上であることが好ましい。また、凸形状構造体13間の距離が長すぎると、凸形状構造体13によって溶液が適切に保持されない場合があるので、凸形状構造体13間の距離は、5mm以下が好ましい。凸形状構造体13間の距離は、実質的に一定であることが好ましい。
【0045】
また、凸形状構造体13は、加工精度と最低限の強度を備えた上でできる限り細い方が望ましい。この場合、液滴が必要以上に凸形状構造体13に束縛されないからである。凸形状構造体13を格子のライン上に配置する場合は、凸形状構造体13の最大幅は、ライン幅の半分以下にするのが好ましい。
【0046】
凸形状構造体13の高さは加工技術に依るが、凸形状構造体13を支える強度が保てる範囲でできる限り高い方が好ましい。具体的には乾燥後のパターン膜11の膜厚に対し、5倍以上の高さとすることが好ましい。前述の形状による制限の範囲内でその他の形状条件は任意であるが、周辺に対して等しく液滴に影響を及ぼすためには等方性形状すなわち回転体が望ましく、円柱状、円錐状、円錐台状が好ましい。また、凸形状構造体13の形状は、円錐状又は円錐台状が特に好ましい。この場合、凸形状構造体13のアスペクト比が大きい場合でも凸形状構造体13が比較的安定であるからである。
【0047】
また、開口部3のサイズが大きすぎると本実施形態のマスク1の有効性が減少する。開口部3のサイズが大きすぎると、液滴が開口部3の中央部から周辺部に流動してしまう場合があるからである。効果的に開口部3の中央部に液滴を留めるための条件は溶液粘度等にも依存するが、開口部3が長方形である場合、開口部3の大きさは、長辺方向の長さが5mm以下であることが好ましい。
【0048】
次に、開口部パターンを有する薄板5は、例えば、銅、鉄、ニッケル、クロム、コバルトなどの金属またはこれらの金属からなる合金などの金属性材料か、あるいはポリカーボネイト、ポリアミド、ポリイミド、PETなどの樹脂材料、ガラス、窒化物、炭化物などのセラミック材料を用いることができるが、薄板5の強度、伸縮、歪みの少なさ、加工手段などを考慮すると金属性材料が適している。薄板5の板厚は微細な開口部パターンを形成することを考慮すると薄い方が好ましいが、開口部パターンを形成したときに歪まない程度の強度を確保する必要があり、50〜100μmの薄板5が強度と加工性の点で好適である。
【0049】
薄板5上にある凸形状構造体13の材料には、薄板5と同様の金属性材料、樹脂材料、セラミック材料などを用いることができる。
【0050】
薄板5と凸形状構造体13との接合方法は、特に限定はされないが、金属同士の場合は熱圧着や拡散接合などの方法があり、金属と樹脂やセラミックのような異種材料の場合には加熱溶着、射出接合、レーザー接合、モールド加工などの方法により接合される。高アスペクトの凸形状構造は取り扱いにくいことを考えると、前記接合方法の中では、樹脂のモールド加工が実施しやすい。また、開口部パターンを形成した薄板5上に凸形状構造体13になる凸形状構造体形成材料層を積層又は接合等により形成し、凸形状構造体形成材料層をパターニングすることにより薄板5上に凸形状構造体13を有するマスク1を形成することも可能である。凸形状構造体形成材料層のパターニングは、例えば、凸形状構造体13となる部分だけをマスキングして、残りの部分をレーザー加工、ブラスト加工、ドライエッチング加工などによって除去することによって行うことができる。また、開口部3の形成は、薄板5へのレーザー加工やエッチング加工、電鋳加工によって作製することができる。
【0051】
4.デバイス分野への応用
【0052】
以下、本実施形態のパターン製膜方法を用いて本発明の一実施形態の有機薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と呼ぶ。)を製造する方法の一例について説明する。ただし、本実施形態のパターン製膜方法は、有機TFTの製造以外にも、有機EL素子、有機LED、有機太陽電池、有機センサー、カラーフィルターなどの製造にも適用可能であり、溶液プロセスのパターニングを用いて作製される機能素子に幅広く応用することができる。
【0053】
ここでは、図9(a)〜(c)に示すようなボトムコンタクト型の有機TFTの製造方法を例にとって説明する。図9(a)は、有機TFTを形成した後の状態の基板2と、基板2から取り外されたマスク1とを示す斜視図である。図9(b)は、図9(a)中の点線で囲った領域Xの拡大図である。図9(c)は、図9(b)中の直線I−Iに沿った断面図である。
【0054】
本実施形態のパターン製膜方法は、図9(a)〜(c)中の有機半導体層23の形成に適用されるので、それ以外の構成要素の作製方法等については、一般的な手法に基づいて簡単に説明するにとどめる。
【0055】
まず、基板15にはシリコンやガラス、有機材料ではポリイミドやPEN(ポリエチレンナフタレート)のフィルムなどが用いられる。
【0056】
この基板15上にゲート電極(図示せず)をフォトリソグラフィ工程やメタルマスクを用いて、スパッタや蒸着、あるいは塗布によりパターン作製する。電極材料には、金、白金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、タンタル、タングステンの金属やITOのような導電性金属酸化物など当該分野で公知である材料から適宜選択して使用できる。その後、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、ポリイミド膜などがゲート絶縁膜17として、スパッタや蒸着、あるいは塗布により積層される。また、低抵抗のハイドープシリコン基板をゲート電極として用いることができ、ハイドープシリコン基板をそのまま熱酸化することによりゲート絶縁膜17を形成したものもよく用いられる。
【0057】
次に、平坦に製膜したゲート絶縁膜17の上に一対のソース・ドレイン電極19,21を形成する。ソース・ドレイン電極19,21は、ゲート電極と同様の手法、材料を用いて形成することができる。電極膜厚や電極幅などは素子条件に応じて適宜選択される。
【0058】
このようにして作製された構造素子上に、有機半導体材料を溶媒に溶解させた溶液を塗布し、乾燥させることによって有機半導体層23を形成する。有機半導体材料を含む溶液をソース・ドレイン電極19,21の間のチャネル部分にのみ選択的に塗布するために、チャネル長より広めの開口部3を有する本実施形態のマスク1を基板上の素子に合わせて配置し、その状態でマスク1上に溶液を滴下し、その後、溶液を乾燥させることによって開口部3に対応した部分にパターン膜として有機半導体層23が形成される。
低分子の有機半導体材料にはナフタセン、ペンタセンのようなアセン系化合物やペリレン、ルブレン、フラーレンなどがあり、溶解性が悪いものはアルキル側鎖を付与することによって溶解性を高めた誘導体を利用することができる。高分子の有機半導体材料には、ポリ−3−ヘキシルチオフェンのようなチオフェン系ポリマー、ポリフェニレンビニレン等が利用できる。有機半導体材料を溶解させる溶媒には、トルエン、キシレン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等を利用することができる。
【0059】
本実施形態のマスク1を用いたパターン製膜方法は、基板に前処理を行うことなく基板上に所定のパターン膜を形成できる特徴があるが、半導体層の特性向上等、他の目的のためにあらかじめ表面処理を行った基板上に所定のパターン膜を形成する場合にも適用できる。
【0060】
以上、本実施形態のマスク1を用いた有機TFTの製造方法によって、パターニングのための前処理工程や高度なインクジェット技術を必要とせずに個々の素子上の製膜パターンを均一にすることが可能で、素子を集積化したときに素子間で特性のばらつきが少ないTFTを提供できる。
【実施例】
【0061】
以下の実施例では、本発明の実施例のパターン製膜用マスク1を作製し、作製したマスク1を用いてパターン製膜を行った。また、作製したマスク1を用いて有機TFTの作製を行った。
【0062】
1.実施例1 金属からなるパターン製膜用マスクの作製
図1(a)〜(c)に示すような形状の、金属からなるパターン製膜用マスク1を以下の方法で作製した。
【0063】
まず、板厚0.05mmでサイズ20mm×20mmのSUS材薄板に対して、縦2mm×横0.5mmの長方形の開口部3を縦横3つずつ、1mm幅の格子を介して配列した開口部パターンをエッチング加工により形成し、開口部パターンを有する薄板5を作製した。
【0064】
次に、薄板5上の格子の交差部分中央に薄板5と同様の材料であるSUS材でできた直径0.5mm、高さ1mmの円柱状の凸形状構造体13をレーザー溶接により接合することにより、薄板5上に凸形状構造体13を有するマスク1を作製した。
【0065】
2.実施例2 金属と樹脂からなるパターン製膜用マスクの作製
図1(a)〜(c)に示すような形状の、金属と樹脂からなるパターン製膜用マスク1を以下の方法で作製した。
【0066】
まず、実施例1と同様の方法で開口部パターンを有する薄板5を作製した。
【0067】
次に、直径0.5mmの細孔が縦3mm間隔、横1.5mm間隔で配列された板厚1mmのニッケル材で別のパターンマスクを用意した。細孔の内側はフッ素樹脂によるコーティング加工を施した。
【0068】
このパターンマスクの細孔位置が、先に作製した薄板5の格子の交差部分中央に一致するように配置した。次に、細孔内にエポキシ樹脂を流し込み、熱硬化させて、その後にパターンマスクを取り外すことにより、直径0.5mm、高さ1mm程度の円柱状の樹脂からなる凸形状構造体13を薄板5上に有するマスク1を作製した。
【0069】
3.実施例3 金属とガラスからなるパターン製膜用マスクの作製
図1(a)〜(c)に示す形状の、金属とガラスからなるパターン製膜用マスク1を以下の方法で作製した。
【0070】
まず、実施例1と同様の方法で開口部パターンを有する薄板5を作製した。
次に、低融点ガラスを含む凸形状構造体形成材料層を薄板5上に形成した。
次に、凸形状構造体形成材料層にドライフィルムレジストを貼り付け、凸形状構造体13となる部分だけがマスキングされるようにドライフィルムレジストを露光及び現像によりパターニングしてマスキングパターンを形成し、その後、ブラスト加工により、凸形状構造体形成材料層のうちマスキングされていない部分を除去して、格子の交差部分に高さ1mm、底面直径0.5mmの円錐台状の凸形状構造体13を薄板5上に有するマスク1を作製した。
【0071】
4.実施例4 パターン製膜用マスクを用いたペンタセンのパターン製膜
実施例1で作製したマスク1を用いて、以下の方法により、ペンタセンのパターン製膜を行った。
【0072】
まず、図10(a)及び(b)に示すように、ホットプレート25上に配置された鉄板27上に20mm角の被塗布基板7を配置し、基板7上に実施例1で作製したマスク1を配置し、マスク1の4隅に磁石を配置することによってマスク1を基板7上に固定した。図10(a)は平面図であり、図10(b)は、図10(a)中のI−I断面図である。図10(a)ではホットプレート25と鉄板27は図示を省略している。
【0073】
次に、基板7を150℃に加熱した状態で、1,2,4−トリクロロベンゼン(沸点213℃)に0.1〜0.3wt%濃度でペンタセンを加えて基板温度と同じ150℃に加熱することにより作製した溶液を基板7上に200μm滴下した。
【0074】
滴下した溶液を十分に乾燥させた後、基板7をゆっくりと冷却し、マスク1を取り外すことにより、ペンタセンからなるパターン膜を形成した。パターン膜は、マスク1との接触していた部分に凹凸が見られるものの、中央部と周辺部の状態が均一な長方形の形状をした結晶性膜であった。
【0075】
5.比較例1 表面が平坦なマスクを用いたパターン製膜
次に、実施例1の薄板5のみからなるマスク(つまり、凸形状構造体13を有さないマスク)1を用いて、実施例4と同様の方法により、パターン膜を形成した。
【0076】
比較例1で形成されたパターン膜には、実施例4のように均一な膜も含まれていたが、膜厚が薄かったり、中央部と周辺部の状態が異なっていたりと不均一な膜も含まれていた。
【0077】
6.実施例5 ペンタセン有機TFTの作製
実施例4のパターン製膜方法を用いてペンタセンTFTを作製した。
【0078】
まず、20mm×20mmの大きさに切断した300nmの熱酸化膜付ハイドープシリコン基板の洗浄及び乾燥を行った。基板の洗浄及び乾燥方法は、アセトン、イソプロピルアルコール、超純水の順に各10分間超音波洗浄処理を行ったあと、その後、取り出して窒素フローで乾燥させてから120℃オーブンで10分間乾燥処理した。
【0079】
次に、フォトリソグラフィ工程を経て、リフトオフ法によりソース・ドレイン電極を作製した。具体的には、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、フォトレジストをスピンコートにより塗布およびベーク処理したのち、縦2mm×横0.5mmの開口部が20μmの間隔を隔てて横に2つ並んだ構成のソース・ドレイン電極用フォトマスクを用いて、露光処理を行った。露光処理後、アルカリ性現像液にて現像処理を行うことで、ソース・ドレイン電極部分のレジストを剥離した。その後、得られた基板を超純水でよく洗浄した後、金蒸着用のチャンバーに導入及び設置し,抵抗加熱によりクロム10nmと金50nmを順に蒸着して、ソース及びドレイン電極を形成した。このときの蒸着条件として、チャンバー内の真空度は5×10-5Pa、蒸着速度2.0Å/sで蒸着を行った。蒸着後、基板を最初と同じようにアセトン、イソプロピルアルコール、超純水の順で洗浄下のち、乾燥させることで、電極素子付き基板を準備した。
【0080】
次に、先ほど作製した電極素子付き基板上に実施例4と同様の方法でペンタセンからなるパターン膜を作製してペンタセン有機TFTを作製した。
【0081】
作製した該ペンタセン有機TFTのペンタセンからなるパターン膜は、チャネルと電極部分にのみ、形状の斑が少なく、きれいに形成されていた。その素子特性としてId−Vg特性から移動度を算出したところ、0.33+/-0.06cm2/Vsで、一般的なペンタセンの蒸着膜と同様の高い移動度を維持しつつ、9点の素子間のばらつきも抑えることができた。
【0082】
6.比較例2 ペンタセン有機TFTの作製
実施例4のパターン製膜方法の代わりに比較例4のパターン製膜方法を用いてペンタセンからなるパターン膜を作製した以外は、実施例5と同様の方法によりペンタセンTFTを作製した。
【0083】
比較例2で形成されたパターン膜には、一部が欠けた膜や、膜厚が薄く見た目の膜色が異なる膜が含まれていた。これは、マスクの開口部の全体に十分な塗布がされていないために生じたと考えられる。
得られたTFT素子の特性を評価して9点の移動度を算出したところ、そのうちの5点では0.26+/-0.05cm2/Vs、残りの4点では順に0.07、0.08、0.12、0.15cm2/Vsという値で、移動度の低下および素子ごとのばらつきが現れた。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態の溶液塗布用パターン製膜用マスクの構造を示し、(a)は斜視図であり、(b)は平面図であり、(c)は、(b)中のI−I断面図である。
【図2】(a)〜(e)は、本発明の一実施形態のパターン製膜方法を示す断面図であり、(a)は溶液滴下前の状態、(b)は溶液滴下直後の状態、(c)及び(d)は乾燥途中の状態、(e)は乾燥後の状態を示す。
【図3】図2(c)の状態を上から見た状態を示す平面図である。
【図4】図2(d)の状態を上から見た状態を示す平面図である。
【図5】凸形状構造体表面での溶液の接触角が比較的大きい場合の、図2(d)に対応した断面図である。
【図6】(a)〜(c)は、凸形状構造体によって溶液が保持される作用について説明するための図であり、(a)〜(c)は、それぞれ、図12(d)、図2(d)及び図5中の点線で囲った範囲Xの拡大図である。
【図7】本発明の別の実施形態の溶液塗布用パターン製膜用マスクの構造を示す図1(b)に対応した平面図である。
【図8】本発明の別の実施形態の溶液塗布用パターン製膜用マスクの構造を示す図1(b)に対応した平面図である。
【図9】(a)は、有機TFTを形成した後の状態の基板2と、基板から取り外された本発明の一実施形態の溶液塗布用パターン製膜用マスク1とを示す斜視図であり、(b)は、(a)中の点線で囲った領域Xの拡大図であり、(c)は、(b)中の直線I−Iに沿った断面図である。
【図10】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態の溶液塗布用パターン製膜用マスクを基板上に配置する方法を示し、(a)は平面図であり、(b)は、(a)中のI−I断面図である。
【図11】平坦な薄板からなる溶液塗布用パターン製膜用マスクの構造を示す斜視図である。
【図12】(a)〜(e)は、図11のマスクを用いたパターン製膜方法を示す断面図であり、(a)は溶液滴下前の状態、(b)は溶液滴下直後の状態、(c)及び(d)は乾燥途中の状態、(e)は乾燥後の状態を示す。
【図13】図12(c)の状態を上から見た状態を示す平面図である。
【図14】図12(d)の状態を上から見た状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0085】
1:溶液塗布用パターン製膜用マスク 2:有機TFTを形成した後の状態の基板 3:開口部 5:開口部パターンを有する薄板 7:被塗布基板 9:液滴 11:パターン膜 13:凸形状構造体 15:基板 17:ゲート絶縁膜 19,21:一対のソース・ドレイン電極 23:有機半導体層 25:ホットプレート 27:鉄板 29:磁石
矢印A:液体分子同士の凝集力 矢印B:液体と基板又は液体とマスクの間の付着力 矢印C:液体と凸形状構造体13の間の付着力
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液塗布用により微細なパターン膜を簡易且つ精度良く形成するために使用される溶液塗布用パターン製膜用マスクとその製造方法、そのマスクを用いたパターン膜の製造方法及び有機薄膜トランジスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子、液晶表示素子、有機EL素子などの電子部品分野において、塗布製膜プロセスの研究開発が盛んに行われている。該プロセスは、従来のフォトリソグラフィ技術と比較して、工程数削減、材料の使用効率化のメリットがあり、製造コスト削減が期待できる。
【0003】
塗布製膜プロセス技術の従来技術としては、例えば、配線パターンやカラーフィルター形成技術としてのインクジェット法や、配線や電極パターン、画像表示装置パネルのスペーサー、隔壁などの形成技術としてのスクリーン印刷法等が挙げられる。
【0004】
インクジェット技術とは、流動状のインク(液滴)を吐出し、基板上の所定の位置に着弾させることでパターンを形成する技術であり、ノズル形状等の改良により近年では数ピコリットルの極微量の液滴操作が可能である。また、着弾精度向上としては、例えば、特許文献1のように周辺を樹脂などで囲み隔壁形成するなど塗布面と非塗布面との間に物理的な段差を与える手法や、あるいは特許文献2のように塗布位置を凹状に加工することで、所望の位置にのみ液滴を配置する手法、さらに、特許文献3のように塗布する箇所を親水性に、塗布しない箇所は撥水性にというように親撥水処理を施しておくことで、表面の濡れ性の違いによる塗り分け方法等が提案されている。
【0005】
一方、スクリーン印刷法とは、被印刷基板上に、クリームはんだ、金属ペースト、ペースト状の樹脂等を印刷する方法であり、所定の印刷パターンの開口部が形成された印刷用マスクを被印刷基板に配置し、該印刷用マスクの開口部内にゴム製のスキージ等を用いてペーストを充填した後、該印刷用マスクを被印刷基板から剥離することによって、該印刷用マスクの開口部を通して該開口部内に充填したペーストを被印刷基板上に印刷することができる技術である。主に、インク材料、樹脂材料の塗布に適用され、大面積の基板に対しても高スループットで印刷が可能である。
【0006】
前記スクリーン印刷技術に対して、印刷版の開発がなされており、具体的には、例えば特許文献4のように、マトリクス状に凸部を形成したメタルマスクを用いてクリーム半田を効率的に開口部に定着させる方法や、特許文献5のように、開口部の大きさの異なる2層構造のスクリーン印刷版を用いて乾燥後のエッジ形状を調整する手法等が提案されている。
【特許文献1】特開2000−353594号公報
【特許文献2】特開2005−187316号公報
【特許文献3】特開2003−124215号公報
【特許文献4】特開平6−15979号公報
【特許文献5】特開平6−143855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記インクジェット法は、低粘度溶液に適用が可能であるが、着弾精度向上のために前記基板表面処理等が必要であり、工程が煩雑になる課題を有する。また、滴下直後の液滴形状がレンズ状になることで、膜中央と端で乾燥速度が異なるために、乾燥後に膜形状の均一性が保持できないことも課題である。
【0008】
一方、前記スクリーン印刷法は、高スループットの反面、材料使用効率が課題である。また、原理上、適用材料もインクや樹脂などペースト状の高粘性流体に限定され、低粘性の溶液に適用できない課題を有する。また、印刷版の開発も、高粘性材料向けに限定されており、低粘性溶液に適用しうるマスク開発はほとんどなされていない。
【0009】
ところで、低粘性の溶液へ適用可能であり、かつ、基板前処理工程が不要なパターン製膜方法として、溶液塗布用のパターン製膜用マスクを用いたパターン製膜方法が考えられる(公知であることを自認しない。)。
【0010】
ここで、溶液塗布用パターン製膜用マスクを用いたパターン製膜方法について、図11、図12(a)〜(e)、図13及び図14を用いて説明する。図11は、溶液塗布用パターン製膜用マスク1を示す斜視図である。図12(a)〜(e)は、パターン製膜方法を示す断面図であり、図12(a)は溶液滴下前の状態、図12(b)は溶液滴下直後の状態、図12(c)及び(d)は乾燥途中の状態、図12(e)は乾燥後の状態を示す。図13及び図14は、それぞれ、図12(c)及び(d)の状態を上から見た状態を示す平面図である。
【0011】
まず、図12(a)に示すように、図11に示すような複数の開口部3からなる開口部パターンを有する薄板5からなるマスク1を被塗布基板7上に配置する。
【0012】
次に、図12(b)に示すように、膜材料を溶媒に溶解させた溶液をマスク1の上から滴下する。滴下された溶液は、表面張力のためレンズ状に膨らんだ液滴9となる。
【0013】
次に、溶液を徐々に乾燥させると、ある時点から図12(c)及び(d)、図13及び図14に示すように、任意の端から乾燥が進行していき、液滴9が収縮する方向に(つまり、矢印Dで示す方向に)液滴形状が変化していく。マスク1上の溶液は次第に開口部3の辺りに引き寄せられて、液滴分布が出来始める。図12(d)及び図14に示すようにマスク1上の液滴は、開口部3に集まって留まるが、各開口部3の液滴量は不均一に分布し、その形状もレンズ状が維持される。
【0014】
この状態で溶液をさらに乾燥させると、図12(e)に示すように各開口部3に対応した位置にパターン膜11が形成される。図12(d)の状態で各開口部3の液滴量が不均一に分布しているので、各開口部3に形成されるパターン膜11は、膜密度や厚みなど膜の状態が異なり、また各パターン膜11内でも斑が生じやすい。従って、ここで示した方法では、精度の高いパターン膜の形成が困難である。
【0015】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、精度の高いパターン膜の形成が可能な溶液塗布用パターン製膜用マスクを提供するものである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0016】
本発明の溶液塗布用パターン製膜用マスクは、少なくとも1つの開口部からなる開口部パターンを有する薄板と、前記薄板上に設けられ且つ前記開口部パターン中の少なくとも1つの前記開口部を含む少なくとも1つの領域を取り囲むように配置された複数の凸形状構造体とを備える。
【0017】
本発明のマスクでは、少なくとも1つの開口部を含む領域を取り囲むように複数の凸形状構造体が配置されている。このマスク上に製膜用の溶液を塗布すると、塗布された溶液と凸形状構造体との間に付着力が働く。この付着力によって溶液が凸形状構造体によって取り囲まれた領域に保持される。そのままの状態で溶液を乾燥させると、マスクの開口部に対応した位置にパターン膜が精度よく形成される。
【0018】
また、本発明のマスクを用いたパターン製膜方法は、低粘性の溶液へ適用可能であり、材料使用効率が高く、かつ、基板前処理工程が不要であるという利点を有しており、半導体分野をはじめとして広く電子デバイス分野に応用することができる。
以下、本発明の種々の実施形態等を例示する。
【0019】
前記開口部パターンは、複数の開口部からなり、前記凸形状構造体は、前記開口部パターン中の少なくとも1つの前記開口部を含む複数の領域をそれぞれ取り囲んでもよい。この場合、マスク上に比較的低粘性の溶液を塗布した場合でも、各領域に保持される液滴の形状を比較的均一にすることができ、溶液を乾燥させて形成されるパターン膜の形状や厚さを比較的均一にすることができる。また、本実施形態では、溶液は、溶液と凸形状構造体との間の付着力によって凸形状構造体によって取り囲まれた領域に保持されている。従って、隣接する領域間で溶液が自由に移動することができ、各領域に保持されている溶液の量が比較的均一になるというメリットもある。
【0020】
前記凸形状構造体の形状は、回転体であってもよい。この場合、凸形状構造体が液滴に対して及ぼす効果が凸形状構造体の周囲に均等に及ぶ。
【0021】
少なくとも1つの前記開口部を含む前記領域は、長方形であり、前記凸形状構造体は、前記長方形の全ての頂点に配置されてもよい。前記開口部の形状が長方形である場合は、液滴が長方形に保持されることが好ましいが、長方形の領域の全ての頂点に凸形状構造体を配置することによって液滴をほぼ長方形状に保持することができる。
【0022】
本発明は、少なくとも1つの開口部からなる開口部パターンを薄板に形成し、前記薄板上に凸形状構造体形成材料層を形成し、前記開口部パターン中の少なくとも1つの前記開口部を含む少なくとも1つの領域を取り囲む複数の凸形状構造体が形成されるように前記凸形状構造体形成材料層をパターニングする工程を備える溶液塗布用パターン製膜用マスクの製造方法も提供する。この場合、本発明のマスクを比較的容易に形成することができる。
【0023】
本発明は、上記記載のマスクを被塗布基板上に配置し、膜材料の溶液を前記マスクの上から滴下し、前記溶液を乾燥させて前記開口部に対応した位置にパターン膜を形成する工程を備えるパターン膜の製造方法も提供する。この場合、パターン膜を比較的容易に精度良く製造することができる。
【0024】
本発明は、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極と有機材料からなる半導体層から構成される有機薄膜トランジスタの製造方法において、
前記半導体層は、上記記載のパターン膜の製造方法によって形成される有機薄膜トランジスタの製造方法も提供する。この場合、半導体層を比較的容易に精度良く形成することができる。
【0025】
ここで示した種々の実施形態等は、互いに組み合わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下,本発明の実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す内容は,例示であって,本発明の範囲は,図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0027】
1.溶液塗布用パターン製膜用マスクを用いたパターン製膜方法
本発明の一実施形態の溶液塗布用パターン製膜用マスクを用いた本発明の一実施形態のパターン製膜方法(言い換えると、パターン膜の製造方法又は形成方法)について説明する。
【0028】
まず、図1(a)〜(c)を用いて本実施形態の溶液塗布用パターン製膜用マスク(以下、「マスク」とも呼ぶ。)1の構造の概要について説明する。図1(a)〜(c)は、本実施形態のマスク1の構造を示し、図1(a)は斜視図であり、図1(b)は平面図であり、図1(c)は、図1(b)中のI−I断面図である。
【0029】
本実施形態のマスク1は、縦方向及び横方向にそれぞれ3つずつ並んだ9個の開口部3からなる開口部パターンを有する薄板5と、薄板5上に設けられた16個の凸形状構造体13とを備える。凸形状構造体13は、図1(b)中の点線で示すように、前記開口部パターン中の1つの開口部3を含む9つの領域をそれぞれ取り囲んでいる。開口部3を含む各領域は、4つの凸形状構造体13によって取り囲まれている。なお、開口部3及び凸形状構造体13の数、形状及び配置は、ここで示したものに限定されない。
【0030】
次に、マスク1を用いた本実施形態のパターン製膜方法について、図2(a)〜(e)、図3及び図4を用いて説明する。図2(a)〜(e)は、本実施形態のパターン製膜方法を示す断面図であり、図2(a)は溶液滴下前の状態、図2(b)は溶液滴下直後の状態、図2(c)及び(d)は乾燥途中の状態、図2(e)は乾燥後の状態を示す。図3及び図4は、それぞれ、図2(c)及び(d)の状態を上から見た状態を示す平面図である。
【0031】
まず、図2(a)に示すように、マスク1を被塗布基板7上に配置する。マスク1は、例えば、磁石等の力によって基板7上に固定する。
【0032】
次に、図2(b)に示すように、膜材料を溶媒に溶解させた溶液をマスク1の上から滴下する。滴下された溶液は、表面張力のためレンズ状に膨らんだ液滴9となる。溶液は、基板7とマスク1との間にも流れ込む場合がある。なお、基板7とマスク1との間に流れ込んだ溶液は、乾燥が進んで液適量が減少すると、凸形状構造体13や開口部3の縁に働く表面張力の影響等により、表面に引き寄せられるため、最終的にはマスク1の裏面にはほとんど溶液は残らない。また、基板7とマスク1との間に溶液が実質的に流れ込まないようにマスク1を基板7に固定してもよい。滴下する溶液の種類は、特に限定されない。但し、本実施形態のパターン製膜方法は、特に低粘性材料からなる溶液を用いたときに大きな効果を奏する。また、溶質や溶媒の種類、溶液濃度、製膜温度、製膜手法も特に限定されない。
【0033】
次に、液滴9を徐々に乾燥させると、ある時点から図2(c)及び(d)、図3及び図4に示すように、任意の端から乾燥が進行していき、液滴9が収縮する方向に(つまり、矢印Dで示す方向に)液滴形状が変化していく。マスク1上の溶液は次第に開口部3の辺りに引き寄せられて、液滴分布が出来始める。
【0034】
凸形状構造体13を有さないマスク1を使用した場合、図12(d)に示すようにマスク1の各開口部3の液滴量は不均一に分布する。しかし、凸形状構造体13を有する本実施形態のマスク1を使用した場合、図2(d)に示すように凸形状構造体13によって取り囲まれた領域(開口部3を含む領域)のそれぞれに液滴が保持され、各開口部3の液適量は、ほぼ均一になる。
【0035】
なお、図2(d)は、凸形状構造体13表面での溶液の接触角が比較的小さい場合を示しているので、液滴形状は周辺部が高く、開口部3の中央部分では比較的平坦になっているが、凸形状構造体13表面での溶液の接触角が比較的大きい場合には、図5に示すように、周辺部が低く、開口部3の中央部分では比較的平坦な形状になる。何れの場合でも凸形状構造体13によって取り囲まれた領域に液滴が保持されるという効果は得られる。凸形状構造体13によって取り囲まれた領域に液滴が保持される作用については、後述する。
【0036】
この状態で溶液をさらに乾燥させると、図2(e)のようにパターン膜11が形成される。図2(d)の状態で各開口部3の液滴量がほぼ均一に分布しているので、各開口部3に形成されるパターン膜11の膜密度や厚みなど膜の状態がほぼ均一になり、パターン膜11を精度よく形成することができる。
【0037】
2.凸形状構造体によって溶液が保持される作用
次に、図6(a)〜(c)を用いて、凸形状構造体13によって溶液が保持される作用について説明する。図6(a)〜(c)は、それぞれ、図12(d)、図2(d)及び図5中の点線で囲った範囲Xの拡大図である。
【0038】
図6(a)に示すような凸形状構造体13を有しないマスク1を用いた場合、開口部3近傍では、液滴には、矢印Aで示される液体分子同士の凝集力(Aと呼ぶ。)に起因する表面張力と、矢印Bで示される液体と基板あるいはマスク間の付着力の2つの力がかかる。特に低粘性の溶液の場合、Aの力に対してBの力が大きいために、液滴が広い範囲に広がってしまい、開口部3近傍に保持されない場合がある。また、Aの力は液滴全体にほぼ均等にかかるため、通常、マスク上部の液滴5の形状はレンズ状となる。一方で、乾燥速度は単位面積当たりの液滴量が小さい場所ほど早く、前記レンズ状の液滴では、中心部に対し、端部の乾燥が速くなるため乾燥後は、中心部が盛り上がった形状になる。
【0039】
一方、図6(b)及び(c)に示すような凸形状構造体13を有するマスク1を用いた場合、液滴には、矢印A及びBで示される力に加えて、矢印Cで示される溶液と凸形状構造体13の間の付着力が働く。この力によって、溶液が広い範囲に広がることが抑制され、溶液は、凸形状構造体13によって囲まれた領域に保持される。
【0040】
なお、図6(b)及び(c)は、それぞれ、凸形状構造体13表面での溶液の接触角が比較的小さい場合(親液性である場合)及び大きい場合(疎液性である場合)を示している。一般に、壁面と液体との吸着エネルギーの大きさ(吸着仕事WSL)は液体の表面張力(γL)と接触角(θ)により
WSL=γL(1+cosθ) 〈Dupre−Youngの式〉
と表される。従って、θ<180度ならば吸着相互作用が働く。例えば、テフロン(登録商標)樹脂と水との接触角は110度前後であり、比較的疎液性の関係であるが、凸形状構造体をテフロン(登録商標)にした時でもある程度液滴を引き付ける効果が確認された。逆にあまり親液性過ぎても良くないので、引き付けすぎず、溶液を乾燥の途中段階までとどめるには接触角の範囲として20〜100度が好ましい。
【0041】
3.溶液塗布用パターン製膜用マスク1の構造及び製造方法
次に、図1(a)〜(c)、図7及び図8を用いて本実施形態のマスク1の構造及び製造方法について説明する。
【0042】
まず、液滴が揮発していく過程で、所望の製膜位置すなわち開口部3近傍に液滴を留めるには、それぞれの開口部3上の液体を外側に均等に引っ張って保持するのに十分な凸形状構造体13をマスク薄板5上に点在させることが好ましい。長方形の開口部3が縦と横に規則的に配置されている場合、開口部3を取り囲む長方形の領域の全ての頂点に凸形状構造体13を配置することが好ましい。この場合、開口部3の形状に適した長方形状に液滴形状を効果的に維持できるからである。なお、正方形は、長方形の一形態である。
開口部3を取り囲む領域は、開口部3の形状に相似の形状であることが好ましい。また、凸形状構造体13は、図7に示すように、開口部3を取り囲む長方形の領域の全ての頂点と、長方形の全ての線分の中央に配置してもよい。
【0043】
図1(a)〜(c)では、凸形状構造体13は、1つの開口部3を含む領域の周囲に配置されているが、図8に示すように凸形状構造体13は、複数の開口部3を含む領域を取り囲むように配置されてもよい。
【0044】
開口部3を含む領域を取り囲む凸形状構造体13の数や隣接する2つの凸形状構造体13間の距離(以下、「凸形状構造体13間の距離」とも言う。)は、特に限定されない。しかし、凸形状構造体13間の距離が短すぎると、凸形状構造体13に多量の液滴が束縛されることになり、開口部3での液適量が不十分になる場合がある。従って、凸形状構造体13間の距離は、100μm以上であることが好ましい。また、凸形状構造体13間の距離が長すぎると、凸形状構造体13によって溶液が適切に保持されない場合があるので、凸形状構造体13間の距離は、5mm以下が好ましい。凸形状構造体13間の距離は、実質的に一定であることが好ましい。
【0045】
また、凸形状構造体13は、加工精度と最低限の強度を備えた上でできる限り細い方が望ましい。この場合、液滴が必要以上に凸形状構造体13に束縛されないからである。凸形状構造体13を格子のライン上に配置する場合は、凸形状構造体13の最大幅は、ライン幅の半分以下にするのが好ましい。
【0046】
凸形状構造体13の高さは加工技術に依るが、凸形状構造体13を支える強度が保てる範囲でできる限り高い方が好ましい。具体的には乾燥後のパターン膜11の膜厚に対し、5倍以上の高さとすることが好ましい。前述の形状による制限の範囲内でその他の形状条件は任意であるが、周辺に対して等しく液滴に影響を及ぼすためには等方性形状すなわち回転体が望ましく、円柱状、円錐状、円錐台状が好ましい。また、凸形状構造体13の形状は、円錐状又は円錐台状が特に好ましい。この場合、凸形状構造体13のアスペクト比が大きい場合でも凸形状構造体13が比較的安定であるからである。
【0047】
また、開口部3のサイズが大きすぎると本実施形態のマスク1の有効性が減少する。開口部3のサイズが大きすぎると、液滴が開口部3の中央部から周辺部に流動してしまう場合があるからである。効果的に開口部3の中央部に液滴を留めるための条件は溶液粘度等にも依存するが、開口部3が長方形である場合、開口部3の大きさは、長辺方向の長さが5mm以下であることが好ましい。
【0048】
次に、開口部パターンを有する薄板5は、例えば、銅、鉄、ニッケル、クロム、コバルトなどの金属またはこれらの金属からなる合金などの金属性材料か、あるいはポリカーボネイト、ポリアミド、ポリイミド、PETなどの樹脂材料、ガラス、窒化物、炭化物などのセラミック材料を用いることができるが、薄板5の強度、伸縮、歪みの少なさ、加工手段などを考慮すると金属性材料が適している。薄板5の板厚は微細な開口部パターンを形成することを考慮すると薄い方が好ましいが、開口部パターンを形成したときに歪まない程度の強度を確保する必要があり、50〜100μmの薄板5が強度と加工性の点で好適である。
【0049】
薄板5上にある凸形状構造体13の材料には、薄板5と同様の金属性材料、樹脂材料、セラミック材料などを用いることができる。
【0050】
薄板5と凸形状構造体13との接合方法は、特に限定はされないが、金属同士の場合は熱圧着や拡散接合などの方法があり、金属と樹脂やセラミックのような異種材料の場合には加熱溶着、射出接合、レーザー接合、モールド加工などの方法により接合される。高アスペクトの凸形状構造は取り扱いにくいことを考えると、前記接合方法の中では、樹脂のモールド加工が実施しやすい。また、開口部パターンを形成した薄板5上に凸形状構造体13になる凸形状構造体形成材料層を積層又は接合等により形成し、凸形状構造体形成材料層をパターニングすることにより薄板5上に凸形状構造体13を有するマスク1を形成することも可能である。凸形状構造体形成材料層のパターニングは、例えば、凸形状構造体13となる部分だけをマスキングして、残りの部分をレーザー加工、ブラスト加工、ドライエッチング加工などによって除去することによって行うことができる。また、開口部3の形成は、薄板5へのレーザー加工やエッチング加工、電鋳加工によって作製することができる。
【0051】
4.デバイス分野への応用
【0052】
以下、本実施形態のパターン製膜方法を用いて本発明の一実施形態の有機薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と呼ぶ。)を製造する方法の一例について説明する。ただし、本実施形態のパターン製膜方法は、有機TFTの製造以外にも、有機EL素子、有機LED、有機太陽電池、有機センサー、カラーフィルターなどの製造にも適用可能であり、溶液プロセスのパターニングを用いて作製される機能素子に幅広く応用することができる。
【0053】
ここでは、図9(a)〜(c)に示すようなボトムコンタクト型の有機TFTの製造方法を例にとって説明する。図9(a)は、有機TFTを形成した後の状態の基板2と、基板2から取り外されたマスク1とを示す斜視図である。図9(b)は、図9(a)中の点線で囲った領域Xの拡大図である。図9(c)は、図9(b)中の直線I−Iに沿った断面図である。
【0054】
本実施形態のパターン製膜方法は、図9(a)〜(c)中の有機半導体層23の形成に適用されるので、それ以外の構成要素の作製方法等については、一般的な手法に基づいて簡単に説明するにとどめる。
【0055】
まず、基板15にはシリコンやガラス、有機材料ではポリイミドやPEN(ポリエチレンナフタレート)のフィルムなどが用いられる。
【0056】
この基板15上にゲート電極(図示せず)をフォトリソグラフィ工程やメタルマスクを用いて、スパッタや蒸着、あるいは塗布によりパターン作製する。電極材料には、金、白金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、タンタル、タングステンの金属やITOのような導電性金属酸化物など当該分野で公知である材料から適宜選択して使用できる。その後、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、ポリイミド膜などがゲート絶縁膜17として、スパッタや蒸着、あるいは塗布により積層される。また、低抵抗のハイドープシリコン基板をゲート電極として用いることができ、ハイドープシリコン基板をそのまま熱酸化することによりゲート絶縁膜17を形成したものもよく用いられる。
【0057】
次に、平坦に製膜したゲート絶縁膜17の上に一対のソース・ドレイン電極19,21を形成する。ソース・ドレイン電極19,21は、ゲート電極と同様の手法、材料を用いて形成することができる。電極膜厚や電極幅などは素子条件に応じて適宜選択される。
【0058】
このようにして作製された構造素子上に、有機半導体材料を溶媒に溶解させた溶液を塗布し、乾燥させることによって有機半導体層23を形成する。有機半導体材料を含む溶液をソース・ドレイン電極19,21の間のチャネル部分にのみ選択的に塗布するために、チャネル長より広めの開口部3を有する本実施形態のマスク1を基板上の素子に合わせて配置し、その状態でマスク1上に溶液を滴下し、その後、溶液を乾燥させることによって開口部3に対応した部分にパターン膜として有機半導体層23が形成される。
低分子の有機半導体材料にはナフタセン、ペンタセンのようなアセン系化合物やペリレン、ルブレン、フラーレンなどがあり、溶解性が悪いものはアルキル側鎖を付与することによって溶解性を高めた誘導体を利用することができる。高分子の有機半導体材料には、ポリ−3−ヘキシルチオフェンのようなチオフェン系ポリマー、ポリフェニレンビニレン等が利用できる。有機半導体材料を溶解させる溶媒には、トルエン、キシレン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等を利用することができる。
【0059】
本実施形態のマスク1を用いたパターン製膜方法は、基板に前処理を行うことなく基板上に所定のパターン膜を形成できる特徴があるが、半導体層の特性向上等、他の目的のためにあらかじめ表面処理を行った基板上に所定のパターン膜を形成する場合にも適用できる。
【0060】
以上、本実施形態のマスク1を用いた有機TFTの製造方法によって、パターニングのための前処理工程や高度なインクジェット技術を必要とせずに個々の素子上の製膜パターンを均一にすることが可能で、素子を集積化したときに素子間で特性のばらつきが少ないTFTを提供できる。
【実施例】
【0061】
以下の実施例では、本発明の実施例のパターン製膜用マスク1を作製し、作製したマスク1を用いてパターン製膜を行った。また、作製したマスク1を用いて有機TFTの作製を行った。
【0062】
1.実施例1 金属からなるパターン製膜用マスクの作製
図1(a)〜(c)に示すような形状の、金属からなるパターン製膜用マスク1を以下の方法で作製した。
【0063】
まず、板厚0.05mmでサイズ20mm×20mmのSUS材薄板に対して、縦2mm×横0.5mmの長方形の開口部3を縦横3つずつ、1mm幅の格子を介して配列した開口部パターンをエッチング加工により形成し、開口部パターンを有する薄板5を作製した。
【0064】
次に、薄板5上の格子の交差部分中央に薄板5と同様の材料であるSUS材でできた直径0.5mm、高さ1mmの円柱状の凸形状構造体13をレーザー溶接により接合することにより、薄板5上に凸形状構造体13を有するマスク1を作製した。
【0065】
2.実施例2 金属と樹脂からなるパターン製膜用マスクの作製
図1(a)〜(c)に示すような形状の、金属と樹脂からなるパターン製膜用マスク1を以下の方法で作製した。
【0066】
まず、実施例1と同様の方法で開口部パターンを有する薄板5を作製した。
【0067】
次に、直径0.5mmの細孔が縦3mm間隔、横1.5mm間隔で配列された板厚1mmのニッケル材で別のパターンマスクを用意した。細孔の内側はフッ素樹脂によるコーティング加工を施した。
【0068】
このパターンマスクの細孔位置が、先に作製した薄板5の格子の交差部分中央に一致するように配置した。次に、細孔内にエポキシ樹脂を流し込み、熱硬化させて、その後にパターンマスクを取り外すことにより、直径0.5mm、高さ1mm程度の円柱状の樹脂からなる凸形状構造体13を薄板5上に有するマスク1を作製した。
【0069】
3.実施例3 金属とガラスからなるパターン製膜用マスクの作製
図1(a)〜(c)に示す形状の、金属とガラスからなるパターン製膜用マスク1を以下の方法で作製した。
【0070】
まず、実施例1と同様の方法で開口部パターンを有する薄板5を作製した。
次に、低融点ガラスを含む凸形状構造体形成材料層を薄板5上に形成した。
次に、凸形状構造体形成材料層にドライフィルムレジストを貼り付け、凸形状構造体13となる部分だけがマスキングされるようにドライフィルムレジストを露光及び現像によりパターニングしてマスキングパターンを形成し、その後、ブラスト加工により、凸形状構造体形成材料層のうちマスキングされていない部分を除去して、格子の交差部分に高さ1mm、底面直径0.5mmの円錐台状の凸形状構造体13を薄板5上に有するマスク1を作製した。
【0071】
4.実施例4 パターン製膜用マスクを用いたペンタセンのパターン製膜
実施例1で作製したマスク1を用いて、以下の方法により、ペンタセンのパターン製膜を行った。
【0072】
まず、図10(a)及び(b)に示すように、ホットプレート25上に配置された鉄板27上に20mm角の被塗布基板7を配置し、基板7上に実施例1で作製したマスク1を配置し、マスク1の4隅に磁石を配置することによってマスク1を基板7上に固定した。図10(a)は平面図であり、図10(b)は、図10(a)中のI−I断面図である。図10(a)ではホットプレート25と鉄板27は図示を省略している。
【0073】
次に、基板7を150℃に加熱した状態で、1,2,4−トリクロロベンゼン(沸点213℃)に0.1〜0.3wt%濃度でペンタセンを加えて基板温度と同じ150℃に加熱することにより作製した溶液を基板7上に200μm滴下した。
【0074】
滴下した溶液を十分に乾燥させた後、基板7をゆっくりと冷却し、マスク1を取り外すことにより、ペンタセンからなるパターン膜を形成した。パターン膜は、マスク1との接触していた部分に凹凸が見られるものの、中央部と周辺部の状態が均一な長方形の形状をした結晶性膜であった。
【0075】
5.比較例1 表面が平坦なマスクを用いたパターン製膜
次に、実施例1の薄板5のみからなるマスク(つまり、凸形状構造体13を有さないマスク)1を用いて、実施例4と同様の方法により、パターン膜を形成した。
【0076】
比較例1で形成されたパターン膜には、実施例4のように均一な膜も含まれていたが、膜厚が薄かったり、中央部と周辺部の状態が異なっていたりと不均一な膜も含まれていた。
【0077】
6.実施例5 ペンタセン有機TFTの作製
実施例4のパターン製膜方法を用いてペンタセンTFTを作製した。
【0078】
まず、20mm×20mmの大きさに切断した300nmの熱酸化膜付ハイドープシリコン基板の洗浄及び乾燥を行った。基板の洗浄及び乾燥方法は、アセトン、イソプロピルアルコール、超純水の順に各10分間超音波洗浄処理を行ったあと、その後、取り出して窒素フローで乾燥させてから120℃オーブンで10分間乾燥処理した。
【0079】
次に、フォトリソグラフィ工程を経て、リフトオフ法によりソース・ドレイン電極を作製した。具体的には、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、フォトレジストをスピンコートにより塗布およびベーク処理したのち、縦2mm×横0.5mmの開口部が20μmの間隔を隔てて横に2つ並んだ構成のソース・ドレイン電極用フォトマスクを用いて、露光処理を行った。露光処理後、アルカリ性現像液にて現像処理を行うことで、ソース・ドレイン電極部分のレジストを剥離した。その後、得られた基板を超純水でよく洗浄した後、金蒸着用のチャンバーに導入及び設置し,抵抗加熱によりクロム10nmと金50nmを順に蒸着して、ソース及びドレイン電極を形成した。このときの蒸着条件として、チャンバー内の真空度は5×10-5Pa、蒸着速度2.0Å/sで蒸着を行った。蒸着後、基板を最初と同じようにアセトン、イソプロピルアルコール、超純水の順で洗浄下のち、乾燥させることで、電極素子付き基板を準備した。
【0080】
次に、先ほど作製した電極素子付き基板上に実施例4と同様の方法でペンタセンからなるパターン膜を作製してペンタセン有機TFTを作製した。
【0081】
作製した該ペンタセン有機TFTのペンタセンからなるパターン膜は、チャネルと電極部分にのみ、形状の斑が少なく、きれいに形成されていた。その素子特性としてId−Vg特性から移動度を算出したところ、0.33+/-0.06cm2/Vsで、一般的なペンタセンの蒸着膜と同様の高い移動度を維持しつつ、9点の素子間のばらつきも抑えることができた。
【0082】
6.比較例2 ペンタセン有機TFTの作製
実施例4のパターン製膜方法の代わりに比較例4のパターン製膜方法を用いてペンタセンからなるパターン膜を作製した以外は、実施例5と同様の方法によりペンタセンTFTを作製した。
【0083】
比較例2で形成されたパターン膜には、一部が欠けた膜や、膜厚が薄く見た目の膜色が異なる膜が含まれていた。これは、マスクの開口部の全体に十分な塗布がされていないために生じたと考えられる。
得られたTFT素子の特性を評価して9点の移動度を算出したところ、そのうちの5点では0.26+/-0.05cm2/Vs、残りの4点では順に0.07、0.08、0.12、0.15cm2/Vsという値で、移動度の低下および素子ごとのばらつきが現れた。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態の溶液塗布用パターン製膜用マスクの構造を示し、(a)は斜視図であり、(b)は平面図であり、(c)は、(b)中のI−I断面図である。
【図2】(a)〜(e)は、本発明の一実施形態のパターン製膜方法を示す断面図であり、(a)は溶液滴下前の状態、(b)は溶液滴下直後の状態、(c)及び(d)は乾燥途中の状態、(e)は乾燥後の状態を示す。
【図3】図2(c)の状態を上から見た状態を示す平面図である。
【図4】図2(d)の状態を上から見た状態を示す平面図である。
【図5】凸形状構造体表面での溶液の接触角が比較的大きい場合の、図2(d)に対応した断面図である。
【図6】(a)〜(c)は、凸形状構造体によって溶液が保持される作用について説明するための図であり、(a)〜(c)は、それぞれ、図12(d)、図2(d)及び図5中の点線で囲った範囲Xの拡大図である。
【図7】本発明の別の実施形態の溶液塗布用パターン製膜用マスクの構造を示す図1(b)に対応した平面図である。
【図8】本発明の別の実施形態の溶液塗布用パターン製膜用マスクの構造を示す図1(b)に対応した平面図である。
【図9】(a)は、有機TFTを形成した後の状態の基板2と、基板から取り外された本発明の一実施形態の溶液塗布用パターン製膜用マスク1とを示す斜視図であり、(b)は、(a)中の点線で囲った領域Xの拡大図であり、(c)は、(b)中の直線I−Iに沿った断面図である。
【図10】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態の溶液塗布用パターン製膜用マスクを基板上に配置する方法を示し、(a)は平面図であり、(b)は、(a)中のI−I断面図である。
【図11】平坦な薄板からなる溶液塗布用パターン製膜用マスクの構造を示す斜視図である。
【図12】(a)〜(e)は、図11のマスクを用いたパターン製膜方法を示す断面図であり、(a)は溶液滴下前の状態、(b)は溶液滴下直後の状態、(c)及び(d)は乾燥途中の状態、(e)は乾燥後の状態を示す。
【図13】図12(c)の状態を上から見た状態を示す平面図である。
【図14】図12(d)の状態を上から見た状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0085】
1:溶液塗布用パターン製膜用マスク 2:有機TFTを形成した後の状態の基板 3:開口部 5:開口部パターンを有する薄板 7:被塗布基板 9:液滴 11:パターン膜 13:凸形状構造体 15:基板 17:ゲート絶縁膜 19,21:一対のソース・ドレイン電極 23:有機半導体層 25:ホットプレート 27:鉄板 29:磁石
矢印A:液体分子同士の凝集力 矢印B:液体と基板又は液体とマスクの間の付着力 矢印C:液体と凸形状構造体13の間の付着力
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの開口部からなる開口部パターンを有する薄板と、前記薄板上に設けられ且つ前記開口部パターン中の少なくとも1つの前記開口部を含む少なくとも1つの領域を取り囲むように配置された複数の凸形状構造体とを備える溶液塗布用パターン製膜用マスク。
【請求項2】
前記開口部パターンは、複数の開口部からなり、
前記凸形状構造体は、前記開口部パターン中の少なくとも1つの前記開口部を含む複数の領域をそれぞれ取り囲むように配置される請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記凸形状構造体の形状は、回転体である請求項1又は2に記載のマスク。
【請求項4】
少なくとも1つの前記開口部を含む前記領域は、長方形であり、
前記凸形状構造体は、前記長方形の全ての頂点に配置される請求項1〜3の何れか1つに記載のマスク。
【請求項5】
少なくとも1つの開口部からなる開口部パターンを薄板に形成し、
前記薄板上に凸形状構造体形成材料層を形成し、
前記開口部パターン中の少なくとも1つの前記開口部を含む少なくとも1つの領域を取り囲む複数の凸形状構造体が形成されるように前記凸形状構造体形成材料層をパターニングする工程を備える溶液塗布用パターン製膜用マスクの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか1つに記載のマスクを被塗布基板上に配置し、
膜材料の溶液を前記マスクの上から滴下し、
前記溶液を乾燥させて前記開口部に対応した位置にパターン膜を形成する工程を備えるパターン膜の製造方法。
【請求項7】
ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極と有機材料からなる半導体層から構成される有機薄膜トランジスタの製造方法において、
前記半導体層は、請求項6に記載の方法によって形成される有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項1】
少なくとも1つの開口部からなる開口部パターンを有する薄板と、前記薄板上に設けられ且つ前記開口部パターン中の少なくとも1つの前記開口部を含む少なくとも1つの領域を取り囲むように配置された複数の凸形状構造体とを備える溶液塗布用パターン製膜用マスク。
【請求項2】
前記開口部パターンは、複数の開口部からなり、
前記凸形状構造体は、前記開口部パターン中の少なくとも1つの前記開口部を含む複数の領域をそれぞれ取り囲むように配置される請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記凸形状構造体の形状は、回転体である請求項1又は2に記載のマスク。
【請求項4】
少なくとも1つの前記開口部を含む前記領域は、長方形であり、
前記凸形状構造体は、前記長方形の全ての頂点に配置される請求項1〜3の何れか1つに記載のマスク。
【請求項5】
少なくとも1つの開口部からなる開口部パターンを薄板に形成し、
前記薄板上に凸形状構造体形成材料層を形成し、
前記開口部パターン中の少なくとも1つの前記開口部を含む少なくとも1つの領域を取り囲む複数の凸形状構造体が形成されるように前記凸形状構造体形成材料層をパターニングする工程を備える溶液塗布用パターン製膜用マスクの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか1つに記載のマスクを被塗布基板上に配置し、
膜材料の溶液を前記マスクの上から滴下し、
前記溶液を乾燥させて前記開口部に対応した位置にパターン膜を形成する工程を備えるパターン膜の製造方法。
【請求項7】
ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極と有機材料からなる半導体層から構成される有機薄膜トランジスタの製造方法において、
前記半導体層は、請求項6に記載の方法によって形成される有機薄膜トランジスタの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−284459(P2008−284459A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131814(P2007−131814)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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