説明

無人搬送システム

【課題】施工に手間がかかるとともに汚れや損傷に弱い分岐指示用部材を不要とし、無人搬送車を誘導ラインに沿って目的地まで確実に走行制御可能な、無人搬送システムを提供する。
【解決手段】無人搬送システム1は、分岐部G〜Jを有し複数の走行路を形成する複数の誘導ラインLと、誘導ラインに沿って走行する無人搬送車2と、誘導ラインを含む画像を撮像する撮像装置3と、この画像に関する画像情報に基づいて誘導ラインに沿って無人搬送車を現在地から目的地まで走行制御する走行制御装置4と、を備える。各誘導ラインは互いに異なる色の識別パターンからなる。走行制御装置は、現在地および目的地を結ぶ誘導ラインを設定し、画像の誘導ラインの識別パターンと設定した誘導ラインの識別パターンとを照合しながら、設定した識別パターンの誘導ラインに沿って無人搬送車を現在地から目的地まで走行制御するように、構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人搬送システム、より詳細には、少なくとも1つの分岐部を有する誘導ラインに沿って無人搬送車を現在地から目的地まで走行制御する無人搬送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、工場や倉庫等において物品の搬送を効率的に行うために、少なくとも1つの分岐部を有する誘導ラインに沿って無人搬送車を様々な目的地へ移動可能に走行制御するように構成された無人搬送システムが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
図6は、これら特許文献1、2に記載された無人搬送システムの概略構成を示す平面図である。図6に示すように、この無人搬送システム1’は、路面に敷設された誘導ラインL’と、誘導ラインL’に沿って走行する無人搬送車2’と、誘導ラインL’の近傍位置に設けられた走行指示用部材6A〜6Fおよび分岐指示用部材6G〜6Jと、を備える。
誘導ラインL’は、例えば、4つの分岐部G〜Jを有し、地点A〜Fに至る複数の走行路を形成している。なお、これらの誘導ラインL’は全て同一の色を有している。
走行指示用部材6A〜6Fは、それぞれ無人搬送車2’が地点A〜Fに位置するときに該無人搬送車2’の前進・後進・停止等の走行指示を行うための、走行指示情報を有する。一方、分岐指示用部材6G〜6Jは、それぞれ無人搬送車2’が分岐部G〜Jに位置するときに、該無人搬送車2’の走行方向選択等の分岐指示を行うための、分岐指示情報を有する。
【0004】
特許文献1に記載の無人搬送システム1’は、走行指示用部材6A〜6Fおよび分岐指示用部材6G〜6Jが記憶媒体(IDタグ)からなり、読取装置(図示せず)で読み取った記憶媒体の走行指示情報や分岐指示情報に基づいて、走行制御装置(図示せず)が、誘導ラインL’に沿って無人搬送車2’を現在地から目的地(地点A〜F)まで走行制御するように構成されている。
また、特許文献2に記載の無人搬送システム1’は、走行指示用部材6A〜6Fおよび分岐指示用部材6G〜6Jがコマンドコード片からなり、視覚認識装置(図示せず)で撮像したコマンドコード片の走行指示情報や分岐指示情報に基づいて、走行制御装置(図示せず)が、誘導ラインL’に沿って無人搬送車2’を現在地から目的地まで走行制御するように構成されている。
特に、これら特許文献1、2に記載の無人搬送システム1’は、いずれも、無人搬送車2’が分岐部G〜Jに位置するときに、分岐指示用部材6G〜6Jの分岐指示情報に基づいて、無人搬送車2’の走行方向選択が行われ、選択した誘導ラインL’に沿って無人搬送車2’を走行制御するように構成されている。
【0005】
ところで、このような無人搬送システムにおいては、誘導ラインの分岐部の数が増えると、それに応じて分岐指示用部材の数も増えるため、分岐指示用部材の施工に大変手間がかかるという問題があった。
また、このような無人搬送システムにおいては、IDタグやコマンドコード片からなる分岐用指示部材は誘導ラインと比べて比較的小さい構造のものからなるため、当該分岐用指示部材が汚れや損傷等の影響を受け易く、走行制御装置が分岐指示情報を確実に認識できない場合があるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−097500号公報
【特許文献2】特開2001−188610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、施工に手間がかかるとともに汚れや損傷に弱い分岐指示用部材を不要とし、無人搬送車を誘導ラインに沿って目的地まで確実に走行制御可能な、無人搬送システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、少なくとも1つの分岐部を有し、複数の走行路を形成する複数の誘導ラインと、前記誘導ラインに沿って走行する無人搬送車と、前記無人搬送車に搭載され、前記誘導ラインを含む画像を撮像する撮像装置と、前記画像に関する画像情報に基づいて、前記誘導ラインに沿って前記無人搬送車を現在地から目的地まで走行制御する走行制御装置と、を備えた無人搬送システムであって、前記各誘導ラインが、互いに異なる色または模様の識別パターンを有し、前記走行制御装置が、前記現在地および目的地を結ぶ走行路を形成する誘導ラインを設定し、前記画像に含まれる誘導ラインの識別パターンと前記設定した誘導ラインの識別パターンとを照合しながら、前記設定した識別パターンの誘導ラインに沿って前記無人搬送車を前記現在地から前記目的地まで走行制御するように、構成されていることを特徴とする無人搬送システムとしたものである。
この発明では、各誘導ラインを、互いに異なる色または模様の識別パターンで構成するとともに、走行制御装置を、撮像装置によって撮像された画像に含まれる誘導ラインの識別パターンと、現在地および目的地を結ぶ走行路として設定した誘導ラインの識別パターンとを照合させながら、設定した識別パターンの誘導ラインに沿って無人搬送車を現在地から目的地まで走行制御するように、構成した。
したがって、この発明によれば、走行制御装置によって、誘導ラインの識別パターンが判別されて無人搬送車を現在地から目的地まで走行制御できるので、従来技術のような、施工に手間がかかる分岐指示用部材を不要とすることができる。
また、分岐指示用部材は汚れや損傷に弱いが、この代わりに、分岐指示用部材に対して比較的大きな構造の、汚れや損傷の影響を受けにくい誘導ラインによって無人搬送車の走行制御が行われるので、無人搬送車の確実な走行制御が可能となる。
また、従来技術の誘導ラインは全て同一の色からなるが、この発明の各誘導ラインは、互いに異なる色または模様の識別パターンを有するので、これによって当該各誘導ラインを明確に区別できて視認性を向上させ、その施工時や修理時等における作業性を向上させることもできる。
【0009】
上記構成において、前記走行制御装置が、前記目的地に関する目的地情報の入力を受ける目的地情報入力部と、前記各誘導ラインの識別パターンに関する識別パターン情報を予め記憶しておくとともに、前記目的地情報入力部に入力された目的地情報の目的地に近い順に、前記各誘導ラインの識別パターン情報に対して優先順位情報を付与して走行路情報として設定する走行路情報設定部と、前記無人搬送車が前記分岐部に位置するときに、前記走行路情報設定部で設定された各優先順位情報に基づいて、前記画像に含まれる誘導ラインのうち優先順位の高い識別パターンを有する誘導ラインを選択して、前記選択した識別パターンの誘導ラインに沿って前記無人搬送車を走行制御する走行制御部と、を含むことが好ましい。
この構成の発明では、目的地情報が入力されると、予め記憶された各誘導ラインの識別パターン情報に対して目的地に近い順に優先順位情報が付与されて、走行路情報が設定され、無人搬送車が分岐部に位置するときに、その走行路情報に含まれる優先順位情報に基づいて、優先順位の高い誘導ラインに沿って無人搬送車を走行制御するように、走行制御装置を構成した。
したがって、目的地情報を入力するだけで、走行制御装置によって、各誘導ラインの識別パターン情報に優先順位情報を付与した走行路情報が設定されるので、この優先順位情報に従って分岐部において所望の誘導ラインを選択でき、無人搬送車のより確実な走行制御が可能となる。
【0010】
上記構成において、前記誘導ラインが、少なくとも1つの分岐部を有し、幹路となる走行路を形成する幹路用誘導ラインと、前記幹路用誘導ラインの分岐部からの分岐後のものであって、枝路となる複数の走行路を形成する複数の枝路用誘導ラインと、から構成され、前記各枝路用誘導ラインの色または模様が、同じ系統に属していることが好ましい。
ここで、「枝路用誘導ラインにおける色が同じ系統に属している」とは、枝路用誘導ラインの色が、色相、明度または彩度等において互いに近い系統に属していることを意味するものとする。また、「枝路用誘導ラインにおける模様が同じ系統に属している」とは、枝路用誘導ラインの模様が、その表面に現された線図等の模様において互いに近い系統に属していることを意味するものとする。
この構成の発明では、幹路用誘導ラインの分岐部からの分岐後の各枝路用誘導ラインを、その色または模様が同じ系統に属するように、構成した。
したがって、分岐部からの分岐後の枝路用誘導ラインは、異なった識別パターンを有しながらも同じ系統に属するので、これによって幹路用誘導ラインおよび枝路用誘導ラインの関係をより明確に区別できて視認性をさらに向上させ、その施工時や修理時等における作業性をさらに向上させることもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、施工に手間がかかるとともに汚れや損傷に弱い分岐指示用部材を不要とし、無人搬送車を誘導ラインに沿って目的地まで確実に走行制御可能な、無人搬送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(A)は、本発明に係る無人搬送システムの概略構成例を示す平面図であり、(B)(i)〜(vi)は、地点Aから地点Fに移動する無人搬送車がそれぞれ、地点Aの位置、分岐部Gの位置、分岐部Hの位置、分岐部Hを通過した直後の位置、分岐部Jの位置、分岐部Jを通過した直後の位置にいるときに、撮像装置で撮像される画像の一例を示した図である。
【図2】図1の無人搬送車の構成例を示すブロック図である。
【図3】図2の走行制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】図2の走行路情報設定部が設定した走行路情報の一例であり、(A)は、目的地情報が入力される前の初期状態の走行路情報を示す図、(B)は、目的地情報(地点F)が入力された場合の走行路情報を示す図、(C)は、目的地情報(地点C)が入力された場合の走行路情報を示す図である。
【図5】図2の走行路情報設定部が設定した走行路情報の他の例であり、(A)は、目的地情報が入力される前の初期状態の走行路情報を示す図、(B)は、目的地情報(地点F)が入力された場合の走行路情報を示す図、(C)は、目的地情報(地点C)が入力された場合の走行路情報を示す図である。
【図6】従来の無人搬送システムの概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1および図2に示すように、この無人搬送システム1は、路面に敷設された複数の誘導ラインL(便宜上、各誘導ラインLをL100、L110、L111、L120、L121として区別する)と、誘導ラインLに沿って走行する無人搬送車2と、前記無人搬送車2に搭載された撮像装置3および走行制御装置4と、を備える。
【0015】
各誘導ラインL100、L110、L111、L120、L121は、以下に一例を示すように、互いに異なる識別パターンを有する。ここで、識別パターンとしては例えば色または模様があるが、以下では、色の識別パターンを例とした場合について説明する。
【0016】
誘導ラインL100は、2つの分岐部G、Hを有し、幹路となる走行路を形成する幹路用誘導ラインである。誘導ラインL100は、例えば緑色からなる。
誘導ラインL110、L111は、いずれも、誘導ラインL100の分岐部Gからの分岐後のものであって、枝路となる走行路を形成する枝路用誘導ラインである。誘導ラインL110は、分岐部Iを有し、例えば赤色からなる。誘導ラインL111は、誘導ラインL110の分岐部Iからさらに分岐したものであって、例えば橙色からなる。このように、枝路を形成する誘導ラインL110、L111は、例えば暖色の系統に属している。
誘導ラインL120、L121は、いずれも、誘導ラインL100の分岐部Hからの分岐後のものであって、枝路となる走行路を形成する枝路用誘導ラインである。誘導ラインL120は、分岐部Jを有し、例えば青色からなる。誘導ラインL121は、誘導ラインL120の分岐部Jからさらに分岐したものであって、例えば紫色からなる。このように、枝路を形成する誘導ラインL120、L121は、例えば寒色の系統に属している。
なお、上記誘導ラインL100、L110、L111、L120、L121の敷設部分を除く路面の色は、これら各誘導ラインLの色とは全く異なった、例えば白色や黄色からなる。
【0017】
図2に示すように、無人搬送車2は、撮像装置3と、走行制御装置4と、車体の下部に設けられた車輪5と、を備えている。
撮像装置3は、路面の誘導ラインLを含む撮像領域Pの画像を光学的に撮像して、その画像に関する画像情報を例えば15秒/秒の頻度で出力するものであって、例えばCCDカメラ等からなる。
走行制御装置4は、撮像装置3の画像情報に基づいて、誘導ラインLの中心位置を特定し、該中心位置が撮像領域Pの中心になるように各車輪5を制御して、無人搬送車2を誘導ラインLに沿って走行させるようになっている。走行制御装置4は、さらに、後述するような手順で、現在地および目的地を結ぶ走行路を形成する誘導ラインLを設定し、撮像装置3によって撮像された画像に含まれる誘導ラインLの色と設定した誘導ラインLの色とを照合しながら、設定した色の誘導ラインLに沿って無人搬送車2を現在地から目的地まで走行制御するように、構成されている。
【0018】
走行制御装置4は、目的地情報入力部4aと、走行路情報設定部4bと、走行制御部4cと、を含む。
目的地情報入力部4aは、外部からの入力装置(図示しない)を介して、目的地A〜Fに関する目的地情報の入力を受けるようになっている。
走行路情報設定部4bは、後述するように、各誘導ラインLの色に関する色情報(識別パターン情報)を予め記憶しておくとともに、目的地情報入力部4aに入力された目的地情報の目的地に近い順に、各誘導ラインLの色情報に対して優先順位情報を付与して走行路情報として設定するものである。
走行制御部4cは、後述するように、無人搬送車2が分岐部G〜Jに位置するときに、走行路情報設定部4bで設定された各優先順位情報に基づいて、撮像手段3の画像に含まれる誘導ラインLのうち優先順位の高い色を有する誘導ラインLを選択して、選択した色の誘導ラインLに沿って無人搬送車2を走行制御するものである。
【0019】
次に、本発明に係る無人搬送システム1の動作について、<1>地点Aに位置する無人搬送車2を目的地である地点Fまで走行させる場合、および、<2>地点Fに位置する無人搬送車2を目的地である地点Cまで走行させる場合を例として以下に簡単に説明する。
【0020】
<1>地点Aに位置する無人搬送車2を目的地である地点Fまで走行させる場合:
図4(A)に示すように、走行路情報設定部4bには、無人搬送車2を現在地から目的地へ走行させる前の初期状態(デフォルト状態)として、各誘導ラインLに関する優先順位情報、色情報および誘導ライン名情報が予め設定されている。
この初期状態においては、幹路用誘導ラインである緑色の誘導ラインL100が優先順位1であり、枝路用誘導ラインである、赤色の誘導ラインL110、橙色の誘導ラインL111、青色の誘導ラインL120および紫色の誘導ラインL121がそれぞれ優先順位2、優先順位3、優先順位4、優先順位5となっている。
【0021】
まず、目的地である地点Fに関する目的地情報が外部からの入力装置(図示しない)を介して目的地情報入力部4aに入力される(図3のステップS1参照)。入力された目的地情報は、目的地情報入力部4aによって走行路情報設定部4bへと送られる。
【0022】
地点Aおよび地点Fを結ぶ走行路を形成する誘導ラインは、L100、L120およびL121であるので、走行路情報設定部4bは、図4(B)に示すように、目的地情報入力部4aに入力された目的地Fに近い順に、紫色の誘導ラインL121、青色の誘導ラインL120、緑色の誘導ラインL100に対して優先順位をそれぞれ1、2、3とする優先順位情報を付与して走行路情報として設定する(図3のステップS2参照)。なお、これら以外の、優先順位2の赤色の誘導ライン110および優先順位3の橙色の誘導ラインL111は、上記の初期状態の優先順位が繰り下げられて、それぞれ優先順位が4、5となる。
【0023】
次に、走行制御部4cが、公知の指示手段による前進の走行指示を受けて無人搬送車2を地点Aの位置から走行方向へ前進させたとき、図1(B)(i)に示すように、誘導ラインL100を含む画像に関する画像情報(緑色情報を含む)が、撮像装置3から走行制御部4cへと送られる。このとき、走行制御部4cは、この画像に含まれる誘導ラインL100が優先順位1の色の誘導ラインに該当するか否かを判別する(図3のステップS3参照)。誘導ラインL100は優先順位1の色の誘導ラインに該当しないので、走行制御部4cは、次に、誘導ラインL100が優先順位2の色の誘導ラインに該当するか否かを判別する(図3のステップS5参照)。誘導ラインL100は優先順位2の色の誘導ラインに該当しないので、走行制御部4cは、次に、誘導ラインL100が優先順位3の色の誘導ラインに該当するか否かを判別する(図3のステップS7参照)。誘導ラインL100は優先順位3の緑色の誘導ラインに該当するので、走行制御部4cは、優先順位3の緑色の誘導ラインL100の中心位置を特定し、該中心位置が撮像領域Pの中心になるように各車輪5を制御しながら、この誘導ラインL100に沿って無人搬送車2を走行させるように制御する(図3のステップS8参照)。
【0024】
次に、無人搬送車2が分岐部Gの位置に到達したとき、図1(B)(ii)に示すように、誘導ラインL100およびL110を含む画像に関する画像情報(緑色情報および赤色情報を含む)が、撮像装置3から走行制御部4cへと送られる。走行制御部4cは、上記と同様にして各誘導ラインL100およびL110の色の優先順位を判別する(図3のステップS3、S5、S7参照)。赤色の誘導ラインL110は緑色の誘導ラインL100よりも優先順位が低いので、走行制御部4cは、無人搬送車2を、分岐部Gにおいて誘導ラインL110に分岐させることなくそのまま直進させて、この緑色の誘導ラインL100に沿って走行させるように制御する(図3のステップS8参照)。
【0025】
そして、無人搬送車2が分岐部Hの位置に到達したとき、図1(B)(iii)に示すように、誘導ラインL100およびL120を含む画像の画像情報(緑色情報および青色情報を含む)が、撮像装置3から走行制御部4cへと送られる。分岐走行制御部4cは、上記と同様にして、各誘導ラインL100およびL120の色の優先順位を判別し(図3のステップS3)、誘導ラインL100およびL120が優先順位2の色の誘導ラインに該当するか否かを判別する(図3のステップS5参照)。青色の誘導ラインL120は緑色の誘導ラインL100よりも優先順位が高いので、分岐走行制御部4cは、優先順位の高い青色の誘導ラインL120を選択して、分岐部Hにおいて該無人搬送車2の走行方向選択を行い、無人搬送車2を、分岐部Hから分岐させて、選択した青色の誘導ラインL120に沿って走行させるように、当該無人搬送車2の走行方向を変更する。
こうして、無人搬送車2が分岐部Hを通過した直後の位置では、図1(B)(iv)に示すように、誘導ラインL120およびL100を含む画像の画像情報(青色情報および緑色情報を含む)が、撮像装置3から走行制御部4cへと送られる。分岐走行制御部4cは、無人搬送車2を、分岐部Hにおいて優先順位2の青色の誘導ラインL120に沿って分岐走行させ、当該誘導ラインL120の中心位置を特定し、該中心位置が撮像領域Pの中心になるように各車輪5を制御しながら、この誘導ラインL120に沿って走行させるように制御する(図3のステップS6参照)。
【0026】
そして、無人搬送車2が分岐部Jの位置に達したとき、走行制御部4cは、図1(B)(v)に示すような画像に関する画像情報(青色情報および紫色情報を含む)に基づいて、上記と同様にして、選択した紫色の誘導ラインL121に沿って無人搬送車2を走行させるように、当該無人搬送車2の走行方向を変更する。
さらに、無人搬送車2が分岐部Jを通過した直後の位置では、走行制御部4cは、図1(B)(vi)に示すような画像に関する画像情報(紫色情報および青色情報を含む)に基づいて、上記と同様にして、この誘導ラインL121に沿って無人搬送車2を走行させるように制御する(図3のステップS4参照)。
【0027】
最終的に、無人搬送車2が地点Fの位置に達したとき、走行制御部4cは、公知の指示手段による停止指示に基づいて無人搬送車2を停止させる。こうして、無人搬送車2は、地点Aから目的地である地点Fへと移動する。
【0028】
<2>地点Fに位置する無人搬送車2を目的地である地点Cまで走行させる場合:
まず、目的地である地点Cに関する目的地情報が入力装置(図示しない)を介して目的地情報入力部4aに入力される(図3のステップS1参照)。入力された目的地情報は、目的地情報入力部4aによって走行路情報設定部4bへと送られる。
【0029】
地点Fおよび地点Cを結ぶ走行路を形成する誘導ラインは、L121、L120、L100およびL110であるので、走行路情報設定部4bは、図4(C)に示すように、目的地情報入力部4aに入力された目的地Cに近い誘導ラインLの順に、赤色の誘導ラインL110、緑色の誘導ラインL100、青色の誘導ラインL120、紫色の誘導ラインL121に対して優先順位をそれぞれ1、2、3、4とする優先順位情報を付与して走行路情報として設定する(図3のステップS2参照)。なお、優先順位3の橙色の誘導ラインL111は、上記の初期状態の優先順位が繰り下げられて、優先順位が5となる。
【0030】
次に、走行制御部4cは、公知の指示手段による前進の走行指示を受けて無人搬送車2を地点Fから走行方向に前進させ、上記<1>同様にして、無人搬送車2を、まず紫色の誘導ラインL121に沿って走行させ、分岐部Jを通過すると、より優先順位の高い青色の誘導ラインL120に沿って走行させ、さらに分岐部Hを通過すると、より優先順位の高い緑色の誘導ラインL100に沿って走行させるように制御する。
そして、無人搬送車2が分岐部Gに達したとき、誘導ラインL100およびL110を含む画像に関する画像情報(緑色情報および赤色情報を含む)が、撮像装置3から走行制御部4cへと送られる。ここで、走行制御部4cは、無人搬送車2を、分岐部Gから誘導ラインL110にいきなり分岐させることなく、誘導ラインL100に沿って一旦地点Aまで走行させ、公知の指示手段による停止・後進の走行指示に基づき、一旦地点Aで停止させて再び誘導ラインL100を逆戻りさせ、無人搬送車2が再び分岐部Gに達したときに、より優先順位の高い赤色の誘導ラインL110を選択して、当該ラインに沿って地点Cまで走行させるように制御する。
【0031】
最終的に、無人搬送車2が地点Cの位置に達したとき、走行制御部4cは、公知の指示手段による停止指示を受けて停止する。こうして、無人搬送車2は、地点Fから目的地である地点Cへと移動する。
【0032】
したがって、本実施例に係る無人搬送システム1によれば、走行制御装置4によって、誘導ラインLの色が判別されて無人搬送車2を現在地から目的地まで走行制御できるので、従来技術のような、施工に手間がかかる分岐指示用部材を不要とすることができる。
また、汚れや損傷に弱い分岐指示用部材の代わりに、これよりも比較的大きな構造の、汚れや損傷の影響を受けにくい誘導ラインLによって無人搬送車2の走行制御が行われるので、無人搬送車2の確実な走行制御が可能となる。
また、従来技術の誘導ラインL’は全て同一の色からなるが、この無人搬送システム1の各誘導ラインLは、互いに異なる色を有するので、この色によって当該各誘導ラインLを明確に区別できて視認性を向上させ、その施工時や修理時等における作業性を向上させることもできる。
【0033】
さらに、本実施例に係る無人搬送システム1によれば、目的地情報を入力するだけで、走行制御装置4によって、各誘導ラインLの色情報に優先順位情報を付与した走行路情報が設定されるので、この優先順位情報に従って分岐部において所望の誘導ラインLを選択でき、無人搬送車2のより確実な走行制御が可能となる。
【0034】
加えて、本実施例に係る無人搬送システム1によれば、枝路用誘導ラインが、異なった色を有しながらも、暖色や寒色といった同じ系統に属するので、各誘導ラインの関係をより明確に区別できて視認性をさらに向上させ、その施工時や修理時等における作業性をさらに向上させることもできる。
【0035】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明の構成は上記実施例に限定されるものではない。
【0036】
例えば、誘導ラインLの色は、上記緑色、赤色、橙色、青色、紫色に限定されるものではなく、互いに異なる色であれば任意の色を選択することができる。
また、幹路用誘導ラインLの分岐部からの分岐後の、枝路用誘導ラインLの色は、暖色または寒色に限定されるものではなく、色相、明度または彩度において互いに近い色の系統に属するものであっても良い。
【0037】
また、上記実施例においては、各誘導ラインLを異なる色の識別パターンから構成したが、色の識別パターンに限定されるものではなく、各誘導ラインLを異なる模様の識別パターンから構成することもできる。
この場合、図5(A)〜(C)に示すような、色情報の代わりに模様情報(識別パターン情報)が用いられる。なお、図5において、塗りつぶし模様とは、図1の誘導ラインL100のような単一の色で塗りつぶされた模様を意味する。また、模様1−1、模様1−2とは、それぞれ、図1の誘導ラインL110、L111のような、同じ系統の斜線模様(右上から左下への斜線模様)を意味する。また、模様2−1、模様2−2とは、それぞれ、図1の誘導ラインL120、L121のような、同じ系統の斜線模様(左上から右下への斜線模様)を意味する。この場合、走行制御装置4は、現在地および目的地を結ぶ走行路を形成する誘導ラインLを設定し、画像に含まれる誘導ラインLの模様と設定した誘導ラインLの模様とを照合しながら、設定した模様の誘導ラインLに沿って無人搬送車2を現在地から目的地まで走行制御するように、構成されるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0038】
1 無人搬送システム
2 無人搬送車
3 撮像装置
4 走行制御装置
4a 目的地情報入力部
4b 走行路情報設定部
4c 走行制御部
5 車輪
6A〜6F 走行指示用部材
6G〜6J 分岐指示用部材
P 撮像領域
A〜F 地点
G〜J 分岐部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの分岐部を有し、複数の走行路を形成する複数の誘導ラインと、前記誘導ラインに沿って走行する無人搬送車と、前記無人搬送車に搭載され、前記誘導ラインを含む画像を撮像する撮像装置と、前記画像に関する画像情報に基づいて、前記誘導ラインに沿って前記無人搬送車を現在地から目的地まで走行制御する走行制御装置と、を備えた無人搬送システムであって、
前記各誘導ラインが、互いに異なる色または模様の識別パターンを有し、
前記走行制御装置が、前記現在地および目的地を結ぶ走行路を形成する誘導ラインを設定し、前記画像に含まれる誘導ラインの識別パターンと前記設定した誘導ラインの識別パターンとを照合しながら、前記設定した識別パターンの誘導ラインに沿って前記無人搬送車を前記現在地から前記目的地まで走行制御するように、構成されていることを特徴とする無人搬送システム。
【請求項2】
前記走行制御装置が、
前記目的地に関する目的地情報の入力を受ける目的地情報入力部と、
前記各誘導ラインの識別パターンに関する識別パターン情報を予め記憶しておくとともに、前記目的地情報入力部に入力された目的地情報の目的地に近い順に、前記各誘導ラインの識別パターン情報に対して優先順位情報を付与して走行路情報として設定する走行路情報設定部と、
前記無人搬送車が前記分岐部に位置するときに、前記走行路情報設定部で設定された各優先順位情報に基づいて、前記画像に含まれる誘導ラインのうち優先順位の高い識別パターンを有する誘導ラインを選択して、前記選択した識別パターンの誘導ラインに沿って前記無人搬送車を走行制御する走行制御部と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の無人搬送システム。
【請求項3】
前記誘導ラインが、
少なくとも1つの分岐部を有し、幹路となる走行路を形成する幹路用誘導ラインと、
前記幹路用誘導ラインの分岐部からの分岐後のものであって、枝路となる複数の走行路を形成する複数の枝路用誘導ラインと、から構成され、
前記各枝路用誘導ラインの色または模様が、同じ系統に属していることを特徴とする請求項1または2に記載の無人搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−234461(P2012−234461A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104084(P2011−104084)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000232807)日本輸送機株式会社 (320)
【Fターム(参考)】