説明

無人搬送台車の進路変更方法および進路変更装置

【課題】キャスタ輪による駆動負荷の低減に好適な無人搬送台車の進路変更装置および進路変更方法を提供する。
【解決手段】一対の駆動手段により夫々独立して駆動される左右の駆動輪10を備えた駆動ユニット4を車両の前後に配置した支軸6に旋回可能に配置し、駆動ユニット4の前記左右の駆動輪10の回転により車両を走行させると共に、その相対回転により駆動ユニット4が旋回することにより操舵される無人搬送車3を備え、無人搬送車3を交差する走行ラインの交差点上に停止させ、前記前後の駆動ユニット4を逆方向に進行させることにより車両を旋回させて、一方の走行ライン上から交差する他方の走行ライン上に前後の駆動ユニット4を夫々移行させる無人搬送台車1であり、前記無人搬送車3を交差点上での停止時に、その後の進路変更に伴う旋回方向へ回頭させて停止させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面に敷設した磁気テープや反射テープ等の軌道により予め指定したルート上を走行させる無人搬送台車の進路変更方法および進路変更装置に関し、特に、転回や横行による進路変更に好適な無人搬送台車の進路変更方法および進路変更装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から物流の自動化を目的として、床面に敷設した直線と曲線を組み合わせた磁気テープ等の軌道に対する車両の左右ずれを検出センサにより補正しつつ、軌道により形成された経路上を前進移動する無人搬送台車が一般的に使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
これは、進路変更を行う場合に、一旦停止して、前後に配置された駆動ユニットの左右のタイヤを互いに逆方向へ回転駆動させ、各駆動ユニットを無人搬送台車に対して90度に回転させる。その後、この回転角度を維持した状態で前後の走行装置を逆方向に走行させることにより、無人搬送台車を旋回させて進行方向の変更を行い、変更した走行ラインに沿って走行させる。これにより、無人搬送台車の進行方向を狭スペースで任意の方向へ向けることができ、大きな角度で交差する走行ラインに沿った無人搬送台車の進路変更を可能とするものである。
【特許文献1】特開平09−325815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来例のような無人搬送台車においては、車両重量および積荷の荷重を支持するために車両の四隅にキャスタ輪が配置され、これらのキャスタ輪は車両の前後に配置した前後の駆動ユニットによる進行方向に追従して夫々旋回(向き変更)され且つ車両の進行に連れて従動回転する構成を備えている。
【0005】
このため、上記従来例のように、進路変更のために無心搬送台車をその場回転により旋回させる場合には、今までの車両進行方向の後方側に倣うよう向き(ヨー角度)が整列して停止しているキャスタ輪を、各駆動ユニットの逆方向への前進により車両を初期旋回させて、車両旋回方向(旋回中心に対して接線方向)のヨー角度を持つよう向きを変更させ、キャスタ輪のヨー角度が接線方向に向きが変更された後は、キャスタ輪の転動により軽快に車両を旋回させることができる。
【0006】
しかしながら、前記車両の初期旋回は、各キャスタ輪のヨー角(向き)変更を伴い、大きい駆動負荷を伴う。即ち、一旦回転が停止されたキャスタ輪のヨー角度変更に対する旋回抵抗力は、キャスタ輪と床面との摩擦力が加わることから、転動しているキャスタ輪のヨー角度変更に対する旋回抵抗力に対して、数倍の旋回抵抗が発生する。前記摩擦力は車両重量および積載荷重に比例して大きくなる。このため、車両を円滑に初期旋回させるためには、前記駆動ユニットにより初期に発生させる旋回トルクを、前記(積載荷重に応じて増加する)旋回抵抗に打勝つ程度の高い駆動力を備えた駆動ユニットとする必要があり、高価な駆動ユニットとなり、無人搬送車のコストが上昇する不具合が予想される。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、キャスタ輪による駆動負荷の低減に好適な無人搬送台車の進路変更方法および進路変更装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一対の駆動手段により夫々独立して駆動される左右の駆動輪を備えた駆動ユニットを車両の前後に配置した支軸に旋回可能に配置し、駆動ユニットの前記左右の駆動輪の回転により車両を走行させると共に、その相対回転により駆動ユニットが旋回することにより操舵される無人搬送車と、無人搬送車若しくは無人搬送車と一体となった台車の少なくとも四隅に配置されて車両重量および積載物重量を支持して無人搬送車若しくは台車の移動方向に追従して旋回され且つ転動するキャスタ輪と、を備え、無人搬送車を交差する走行ラインの交差点上に停止させる際にその後の進路変更に伴う旋回方向へ回頭させて停止させるようにした。
【発明の効果】
【0009】
したがって、本発明では、一対の駆動手段により夫々独立して駆動される左右の駆動輪を備えた駆動ユニットを車両の前後に配置した支軸に旋回可能に配置し、駆動ユニットの前記左右の駆動輪の回転により車両を走行させると共に、その相対回転により駆動ユニットが旋回することにより操舵される無人搬送車を備え、無人搬送車を交差する走行ラインの交差点上に停止させる際にその後の進路変更に伴う旋回方向へ回頭させて停止させるようにしたため、無人搬送車若しくは無人搬送車と一体となった台車の少なくとも四隅に配置されて車両重量および積載物重量を支持して無人搬送車若しくは台車の移動方向に追従して旋回され且つ転動するキャスタ輪を車両の進路変更への旋回方向後方側へ旋回させた状態で車両を交差点上で停止させることができ、キャスタ輪による駆動負荷の低減に好適な無人搬送台車とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の無人搬送台車の進進路変更方法および進路変更装置を、図1〜図8に示す一実施形態に基づいて説明する。図1は無人搬送台車の底面図、図2は無人搬送車の走行制御のシステム構成図、図3および図4は無人搬送車が転回する走行ラインの交差点の説明図、図5は無人搬送車が横行走行する走行ラインの説明図、図6は通常の走行ラインに沿った無人搬送車の駆動ユニットコントローラにより実行される走行制御のフローチャート、図7は大きく交差した交差点における旋回動作による進路変更での走行制御コントローラにより実行される進路変更制御のフローチャート、図8は大きく交差した交差点における横行動作による進路変更での走行制御コントローラにより実行される進路変更制御のフローチャートである。
【0011】
図1において、本実施形態における無人搬送台車1(以下では、単に「車両」ともいう)は、下部の略四隅に配置したキャスタ輪5により支持される台車2と、台車2の下部に固定されて台車2と一体となり、前方および後方位置に旋回可能な駆動ユニット4を有する無人搬送車3と、から構成されている。前記キャスタ輪5は台車2および台車2上に積載された積載物の重量を支え、無人搬送車3により駆動される車両の移動方向に追従して旋回される。
【0012】
前記無人搬送車3は、車体2の下部の前方および後方に床面に向けて立設させた2本の支軸6と、各支軸6に夫々旋回可能に設けた駆動ユニット4と、電源としてのバッテリ7と、駆動ユニット4を制御するコントローラ8とを備える。
【0013】
前記駆動ユニット4は、前記支軸6に回動可能に支持され、図示しない一対の駆動モータを内蔵するアクスル9と、アクスル9の左右に配置されて前記一対の駆動モータにより夫々独立して駆動される一対の駆動輪10とを備える。また、駆動ユニット4には、アクスル9の前方および後方に配置されたブラケットにより保持して、走行ラインを形成する軌道テープ15を検出する軌道センサ11を備える。また、同じくアクスル9の前方若しくは後方に配置されたブラケットに保持して、軌道テープ15に隣接した設定位置に配置されて、無人搬送車3のコントローラ8へ外部信号(コマンド(転回指令、停止指令、発進指令)命令)を伝達するアドレスマーク(磁気テープ)16を検出するアドレスセンサ12を備える。
【0014】
各駆動輪10は走行路面に接地されて夫々対応する駆動モータにより回転駆動されて無人搬送車3を走行させる。即ち、前記両駆動輪10が夫々駆動モータにより互いに等速で駆動される場合には、アクスル9は支軸6回りの旋回することなく、左右駆動輪10を連結するアクスル軸と直交する方向(駆動方向)に、アクスル9を介して支軸6を押し、車両を移動させる。この場合には、両駆動輪10の駆動方向の合成力が一致している。車両の進行方向は、後述するように、車両の前後に配置されている両駆動ユニット4の夫々の駆動状態(前後駆動ユニット4の駆動方向および駆動速度)に応じて様々に変化させることができる。
【0015】
また、左右駆動輪10の駆動速度に差を持たせた場合には、支軸6回りにアクスル9を回動させつつ両駆動輪10の平均速度に応じて支軸6を押動して車両を走行させる。また、前記両駆動輪10の平均速度が零となる場合、即ち、両駆動輪10が互いに反対方向に等速で駆動される場合には、支軸6回りにアクスル9を転回させて、支軸6への駆動方向を変更することができる。
【0016】
車両の進行方向は、車両の前後に配置された夫々の駆動ユニット4の駆動方向が同一軸線上、即ち、車両の前後方向軸と一致している舵角が零の場合には、車両を前方に直進させる(直進位置)ことができ、また、駆動ユニット4を180度の角度だけ反転させた状態(後進位置、舵角が180度)では、車両を後方に直進させることができる。なお、両駆動ユニット4の駆動方向を逆転させる場合においても、車両を後方に直進させることができる。
【0017】
また、両駆動ユニット4を直進位置から同一方向に90度の角度により旋回させた場合には、車両をその姿勢を変更させることなく、横方向に横行させることができる。さらに、両駆動ユニット4を任意の同一方向および同一角度により斜め方向に旋回させた場合には、車両をその姿勢を変更させることなく、任意の方向に斜め走行させることができる。
【0018】
さらに、両駆動ユニット4を直進位置から夫々逆方向に90度の角度により旋回させた場合には、車両の中心位置(前後支軸6の中間位置)を移動させることなく、車両をその場旋回させることができる。また、前方の駆動ユニット4の駆動方向を任意の角度だけ旋回させた場合には、車両をこの任意の方向に旋回させることができ、その時のトレールは前方駆動ユニット4のアクスル軸と後方駆動ユニット4のアクスル軸とが交差する点を旋回中心とする旋回半径を備えるものとなる。この旋回に際して、後方の駆動ユニット4の駆動方向(支軸6回りの角度位置)を前方の駆動ユニット4の駆動方向(支軸6回りの角度位置)とは反対側の角度に旋回させる場合には、前後のアクスル軸同士の交点(旋回中心)がより車両に接近して旋回半径を小さくして、車両を小回りさせることができる。
【0019】
前記軌道センサ11は、詳細には図示しないが、走行ラインを形成する軌道テープ15の幅方向に沿って複数(例えば、3個)のセンサが設けられている。そして、通常は、コントローラ8により、進行方向の前方に位置する軌道センサ11の全てのセンサによって軌道テープ15を検出するように、駆動ユニット4の左右の駆動輪10の移動速度を調整する。なお、進行方向の後方に位置する軌道センサ11における複数のセンサによって軌道テープ15を検出するように、左右の駆動輪10の移動速度を調整してもよく、また、進行方向の前後に位置する両軌道センサ11の全てのセンサによって軌道テープ15を検出するように、左右の駆動輪10の移動速度を調整してもよい。
【0020】
図2は無人搬送車3のシステム構成図である。コントローラ8には、無人搬送車3の走行制御を実行する走行制御コントローラ8Aと、各駆動ユニット4を制御する駆動ユニットコントローラ8Bとを備える。前記走行制御コントローラ8Aには、軌道テープ15の側方に必要に応じて配置された、指令コマンドを発信する磁気テープや現在位置を示すアドレス用磁気テープを検出するアドレスセンサ12よりの検出信号と、予め設定した走行ルート・車両速度指令を記憶した記憶回路よりのルート・速度指令とが入力されて、車両の前後駆動ユニット4の舵角指令および速度指令(発進、停止、速度)を演算し、駆動ユニットコントローラ8Bに出力する。以下では、前記指令コマンドを発信する磁気テープや現在位置を示すアドレス用磁気テープを総称して、アドレスマーク16という。前記駆動ユニットコントローラ8Bには、軌道センサ11よりの検出信号が入力されると共に、走行制御コントローラ8Aからの舵角指令および速度指令が入力され、これらの入力信号に基づいて、左右駆動モータの回転速度および回転角速度を演算する。この左右駆動モータの回転速度および回転角速度の指令は、夫々モータ駆動回路13に出力され、各駆動モータが制御される。
【0021】
無人搬送車3の走行ラインは、磁気テープや反射テープ等により形成した任意の走行ラインに沿って自在に設定して、無人搬送車3を走行させることができる。ところで、一方の走行ラインから分岐させた走行ラインへ無人搬送車3を移動させる時には、分岐させた軌道テープ15を軌道センサ11によって検出しながら行うことができる。このとき、無人搬送車3の自動走行が軌道センサ11によって確実に軌道テープ15を検出しながら走行できるように、分岐する軌道テープ15は、緩やかなカーブを描くように設置するか、元の軌道テープ15と分岐する軌道テープ15の間の角度を小さく設定されている。
【0022】
しかしながら、無人搬送車3は、軌道センサ11によって軌道テープ15を検出しながら移動するため、緩やかなカーブを描くように走行ラインを形成したり、小さい角度で走行ラインを分岐させる必要がある。このためには、無人搬送車3を走行させるため、大きな角度で交差する走行ラインへは進路変更することができないため無人搬送車3を走行させるための走行ラインの形状が限られてしまうと共に、広いスペースを用いて走行ラインを形成しなければならない。
【0023】
図3に示す走行ラインは、大きな角度で交差する走行ラインへの確実に進路変更させる場合に使用する交差点の走行ラインの形態を示すものである。即ち、一方の軌道テープ15A(進路変更前の軌道テープ15Aであり、「第1軌道テープ15A」という)と他方の軌道テープ15B(進路変更後の軌道テープ15Bであり、「第2軌道テープ15B」という)とが交差する交差点を取囲んで円形となる走行ラインが、円軌道テープ15Cにより形成されている。前記円軌道テープ15Cは、交差点の中心を中心とする円形に形成されると共に、そのテープ幅は通常の軌道テープ15A,15Bと同じ幅に設定されている。また、円軌道テープ15Cを検出する軌道センサ11は、駆動ユニット4の支軸6に対して前方および後方にオフセットして配置されているため、軌道センサ11が円軌道テープ15Cに対して直交せずに傾斜した状態で対面するようになる。そして、円軌道テープ15Cの直径は、無人搬送車3の前後の駆動ユニット4の支軸6間の距離と同じ寸法に設定されている。
【0024】
また、また、一方の交差点を越えた領域の第1軌道テープ15Aは、車両を回頭動作させる方向に所定角度だけ振って配置している。この第1軌道テープ15Aの交差点先端側の傾斜は、それに沿って走行する前方側の駆動ユニット4の位置を旋回方向に寄らせるものである。このようにすることにより、無人搬送車3と一体となった台車2の前端側を無人搬送車3による旋回に先立ってある程度まで回頭動作させるものである。
【0025】
また、無人搬送車3を、交差点の中心にその中心を一致させて停車させるために、停止・旋回指令のアドレスマーク16Aが設置される。例えば、図中の矢印方向から第1軌道テープ15Aに沿って無人搬送車3が交差点に進入し、交差点から抜け出して第2軌道テープ15Bに沿って矢印の方向に進む場合には、無人搬送車3の中心が交差点の中心と一致した時点で、前方の駆動ユニット4に設置したアドレスセンサ12が位置する部分に、停止・旋回指令のアドレスマーク16Aが設置される。
【0026】
上記時点においては、前後の駆動ユニット4の支軸6は、第1軌道テープ15Aと円軌道テープ15Cとが夫々交差した部分に位置して停止される。そして、後述するように、各駆動ユニット4が支軸6回りに90度だけ旋回されて、各駆動ユニット4を円軌道テープ15Cに沿って進行させ、無人搬送車3が第2軌道テープ15Bに沿った状態となる場合に、円軌道テープ15C上の走行を停止させるための、停止指令のアドレスマーク16Bが第2軌道テープ15Bに近接して夫々設置される。この停止指令のアドレスマーク16Bは、各駆動ユニット4を正規位置に停止させるために、各駆動ユニット4に対して設置される。
【0027】
なお、前記アドレスマーク16Bの設置位置は、前記説明では、第1軌道テープ15Aを矢印方向から進路変更して第2軌道テープ15Bに矢印方向に進む場合を示しており、第2軌道テープ15Bから進路変更して第1軌道テープ15Aに進む場合には、その目的のために、上記したものとは別のアドレスマーク16Bの設置を必要とする。
【0028】
図4は、無人搬送車3の大きく交差した走行ラインの第2例を示したものであり、交差点には円軌道テープ15Cと、必要とするアドレスマーク16A,16Bが夫々設置される。そして、無人搬送車3の交差点への進入路である第1軌道テープ15Aは、円軌道テープ15Cと交差する手前から、車両の後方側を回頭動作させる方向(車両後方側が旋回する方向)に傾斜配置されて円軌道テープ15Cと交差し、第2軌道テープ15Bと交差した後の先端側の第1軌道テープ15Aは、車両の前方側を回頭動作させる方向(車両前方側が旋回する方向)に傾斜配置されて円軌道テープ15Cと交差するよう配置されている。なお、第1軌道テープ15Aの第2軌道テープ15Bを挟んだ前後部分は、それらに沿って走行する駆動ユニット4が円滑に走行するよう滑らかな曲線で繋げられている。
【0029】
前記第1軌道テープ15Aの交差点前後の傾斜は、それに沿って走行する前方側の駆動ユニット4の位置と後方側の駆動ユニット4の位置とを、夫々を旋回方向に寄らせるものである。このようにすることにより、無人搬送車3と一体となって走行する台車2の前端側および後端側を、無人搬送車3による旋回に先立って、図3に示す台車2の回頭動作よりも更に大きく回頭動作させるものである。無人搬送車3は、例えば、A方向から第1の交差点で旋回してB方向に進行してもよく、更に旋回を継続してC方向に走行させることもできる。なお、C方向に走行させる場合には、実線で示すアドレスマーク16A,16Bに代えて、破線で示すアドレスマーク16A,16Bの設置を必要とする。
【0030】
また、図5に示す走行ラインは、無人搬送車3を横行させて、台車2を横行移動させるための走行ラインである。第1軌道テープ15Aと前後の駆動ユニット4が横行する平行な横行軌道テープ15Dとの間には、台車2の移動方向を横行移動に繋ぐ傾斜した傾斜軌道テープ15Eが平行状態で配置されている。従って、無人搬送車3の分岐点を通過後の前後の駆動ユニット4により傾斜軌道テープ15Eの走行移動を経ることにより、台車2はその移動方向を斜め方向とされ、その傾斜軌道テープ15Eの終端において一旦停止された後に横行軌道テープ15Dによる横行移動が実行されるようにしている。ここでは、傾斜軌道テープ15Eの終端と横行軌道テープ15Dとの交点が交差点を構成する。なお、横行移動後の第2軌道テープ15Bへの乗移り時においても、傾斜軌道テープ15Fを介在させることにより、横行移動から前進若しくは後進移動への円滑な乗移り移動を可能としている。
【0031】
以上の構成の無人搬送車3の制御動作について、図6〜図8に示すフローチャートに基づいて、以下に説明する。図6は、通常の走行ラインに沿った無人搬送車3の走行、すなわち、無人搬送車3の通常走行時における駆動ユニットコントローラ8により実行される走行制御のフローチャートを示している。図7は、大きく交差した交差点における旋回動作による進路変更での走行制御コントローラ8により実行される進路変更制御のフローチャートを示している。また、図8は、大きく交差した交差点における横行動作による進路変更での走行制御コントローラ8により実行される進路変更制御のフローチャートを示している。
【0032】
図6に示す通常走行のための制御は、前後の駆動ユニット4の夫々について実行され、駆動ユニット4の夫々が進行方向を略無人搬送車3の進行方向へ向けた状態(舵角が略0°)で、左右の駆動輪10を略同一速度で回転させながら、軌道センサ11の検出結果に基づいて左右の駆動輪10の回転速度を調整する。これによって、無人搬送車3が走行ラインに沿って操舵されながら走行するようにしている。
【0033】
このフローチャートの最初のステップS1では、駆動モータのフィードバック制御を行って、左右の駆動輪10を同一の速度で回転駆動して走行する。一方、次のステップS2及びステップS3では、軌道センサ11の検出結果から、軌道テープ15の幅方向に沿って設けられたすべてのセンサが軌道テープ15の検出状態にあるか否かを確認している。ここで幅方向の両側のセンサの何れかが軌道テープ15の非検出状態、すなわち、センサが軌道テープ15からずれると、ステップS2またはステップS3で否定判定される。
【0034】
走行ラインを形成する軌道テープ15の幅方向に配置されている軌道センサ11の複数のセンサの中で、右端のセンサが軌道テープ15から外れて非検出状態となると、ステップS2で否定判定されてステップS4へ移行する。このステップS4では、駆動ユニット4の左右の駆動輪10のうちの左側の駆動輪10の回転速度を減速させる。即ち、右側のセンサが非検出状態となったときには、駆動ユニット4が軌道テープ15の右側にずれていると判断して左側の駆動輪10を減速する。これによって、駆動ユニット4が左に徐々に旋回し、走行ラインに対するずれが修正される。
【0035】
また、駆動ユニット4が軌道テープ15に対して左側へずれていると判断したときには、ステップS3で否定判定されて、ステップS5へ移行する。このステップS5では、逆に右側の駆動輪10の回転速度を減速して、駆動ユニット4を徐々に右側に旋回するようにして、駆動ユニット4の走行ラインに対するずれを修正する。
【0036】
このように、駆動ユニット4の走行ラインに対するずれの修正は、軌道センサ11の検出結果に基づいて行われ、また、軌道センサ11の全てのセンサが軌道テープ15を検出している状態では、ステップS2、S3のそれぞれで肯定判定されて、左右の駆動輪10を同速で駆動して走行する(ステップS1)。これによって、走行ラインに対するずれが修正されながら、無人搬送車3を走行ラインに沿って操舵しながら走行できるようにしている。
【0037】
図7に示す無人搬送車3の走行制御コントローラ8により実行される進路変更制御は、走行プログラムに基づいて進路変更を行うか否かを判断して、進路変更を行うと判断されると、実行される。なお、走行プログラムでは進路変更を行うアドレスマーク16と走行方向が設定されている。即ち、走行してきた元の軌道テープ15A(第1軌道テープ15A)から右へ向いて走行するか左へ向いて走行するか等が設定されている。ここでは、図3および図4に示す走行ラインに基づいて車両を旋回走行させて進路変更する場合を示す図9および図10を参照しつつ説明する。
【0038】
図3に示す走行ラインにおいては、図9に示すように、車両が交差点に進入すると、無人搬送車3の前方の駆動ユニット4は第1軌道テープ15Aに沿って交差点に進入し、交差点を通過した後は所定角度だけ振って配置された第1軌道テープ15Aに沿って走行する。一方、後方の駆動ユニット4は交差点手前の直線状の第1軌道テープ15Aに沿って走行する。このため、車両の前方部分は交差点通過後の第1軌道テープ15Aに沿って、図示状態では、時計回りに移動され、車両を回頭動作させる。この車両の回頭動作に連れて、台車2に設けられている前方のキャスタ輪5は夫々時計方向に旋回され、後方のキャスタ輪5の台車2の回頭に伴い台車2に対して反時計方向に旋回される。
【0039】
図4に示す走行ラインにおいては、図10に示すように、車両が交差点に進入すると、前方の駆動ユニット4は、交差点手前の傾斜した第1軌道テープ15Aおよび交差点通過後の傾斜した第1軌道テープ15Aに沿って走行し、それにより車両は前方部分を左側に振りながら左旋回する。そして、後方の駆動ユニット4が交差点手前の傾斜した第1軌道テープ15Aに進入した時点では、車両の前方部分を右側に振ると共に後方部分を左側に振ることにより右旋回しながら走行する。このため、台車2に設けられている前方のキャスタ輪5は図中の時計方向に旋回され、後方のキャスタ輪5は図中の反時計方向に旋回される。
【0040】
上記した状態で、車両はアドレスセンサ12によって進路変更位置を示すアドレスマーク16Aを検出しながら走行する(ステップS10)。そして、前方の駆動ユニット4が円軌道テープ15C上に到達した時点で、図示しないがアドレスマーク16Aを検出して、前後の駆動ユニット4を一時停止させる(ステップS11)。この状態においては、図9および図10に示すように、前後の駆動ユニット4は夫々第1軌道テープ15Aと円軌道テープ15Cとが交差した部分に位置する。
【0041】
次に、ステップS12では、前後の駆動ユニット4の左右の駆動輪10を互いに逆方向へ回転駆動させて、無人搬送車3の車体2に対して駆動ユニット4を支軸6を中心に回転させる。このとき、無人搬送車3の前後に設けている駆動ユニット4の進行方向が互いに異なる方向へ向くように、駆動ユニット4が回転される。
【0042】
即ち、無人搬送車3は、アドレスマーク16Aを検出して停止すると、前方側の駆動ユニット4を一方の軌道テープ15Aに沿った進行方向(矢印A1方向)に対して直交する進行方向(矢印A2方向)前方側へ向くように回転され、また、後方側の駆動ユニット4は、一方の軌道テープ15Aに沿った進行方向に対して直交する進行方向後方側(矢印A3方向)へ向くように回転される。
【0043】
駆動ユニット4を支軸6を中心とする回転は継続され、各駆動ユニット4が備える軌道センサ11の全てのセンサにより円軌道テープ15Cが検出されると、支軸6回りの回転が停止される(ステップS13)。これによって、前方側の駆動ユニット4及び後方側の駆動ユニット4の向きが夫々円軌道テープ15Cに沿う方向となる。次いで、ステップS14へ移行して、前後の駆動ユニット4が備える軌道センサ11により円軌道テープ15Cを検出させつつ、前進させる。車両は、前後の駆動ユニット4の進行により旋回動作を開始する。
【0044】
ところで、この時点において、第1軌道テープ15Aが第2軌道テープ15Bに対して直交する状態で配置されている走行ラインを備える、図12に示す比較例では、車両が交差点上で停止されると、台車2に設けている各キャスタ輪5は今までの進行方向後方側に向かうヨー角度をとることになる。即ち、台車2の右前方側キャスタ輪5は旋回方向に向かうヨー角となり、左前方側キャスタ輪5および左後方側キャスタ輪5は旋回方向に直交するヨー角となり、左後方側キャスタ輪5のみが旋回方向後方側となるヨー角を備えるものとなる。このため、台車2の旋回動作は、先ず、各キャスタ輪5を旋回方向後方側に向くヨー角度となるまでキャスタ輪5を旋回させて後、キャスタ輪5の転動を開始させることとなる。
【0045】
しかしながら、キャスタ輪5のヨー角度を変更させるためには、図13に示すように、キャスタ輪5を床面に対する接地軸C回りにすべり接触させつつ(キャスタ輪5と床面との摩擦力に打勝って)その場で転回させる状態で捩るものであるため、大きい旋回抵抗が発生する。この場合、上記したように、一つのキャスタ輪5のヨー角は旋回方向に対して前方にあり、2つのキャスタ輪5のヨー角は旋回方向に直交する方向にある。このため、これら3つのキャスタ輪5のヨー角度を変更する必要があり、非常に大きい旋回駆動力を必要とすることとなる。しかも、前記旋回抵抗は、台車2に積載している積荷による荷重が増加するに連れて増加するものであるため、積載荷重が大きい場合には、各駆動ユニット4による推進力を増加させる等の対策が必要となる。
【0046】
一方、図3に示す本実施形態の走行ラインにおいては、図9に示すように、台車2前方のキャスタ輪5は台車2の旋回方向(矢印方向)に対して接地点が後方側に位置するよう旋回されており、台車2後方のキャスタ輪5も台車2の旋回方向(矢印方向)に対して接地点が後方側に位置するよう旋回されている。このため、旋回初期に発生する前記した旋回抵抗が小さく抑えられ、台車2の旋回動作に対して、少ない旋回抵抗を伴いつつ台車2の旋回移動に追従して台車2の旋回方向後方側へヨー角度を変更しつつ転動を開始する。従って、台車2の旋回動作を円滑に開始させることができる。
【0047】
また、図4に示すより改良された走行ラインにおいては、図10に示すように、いずれのキャスタ輪5においても、台車2の旋回方向(矢印方向)に対して接地点が後方側に位置するよう旋回されている。このため、旋回初期に発生する前記した旋回抵抗をより一層小さく抑えることができ、台車2の旋回動作に対して、極めて少ない旋回抵抗を伴いつつ台車2の旋回移動に追従して台車2の旋回方向後方側へヨー角度を変更しつつ転動を開始する。従って、台車2の旋回動作を極めて円滑に開始させることができる。
【0048】
次いで、各駆動ユニット4は円軌道テープ15Cに追従するために、左右の駆動輪10の駆動速度を制御しながら回転駆動させる。この場合の左右の駆動輪10の駆動速度は、無人搬送車3の中心点に近い内側の駆動輪10の速度が無人搬送車3の中心点から遠い外側の駆動輪10の速度より低くなる内外輪差をもって制御される。この結果として、無人搬送車3の中心点を中心に、前後の駆動ユニット4および無人搬送車3が旋回する。
【0049】
次に、ステップS15に進み、前後いずれかの駆動ユニット4のアドレスセンサ12が、当該駆動ユニット4の停止のために、他方の軌道テープ15Bに近接して配置されている、停止指令のアドレスマーク16Bを検出したか否かを確認する。そして、アドレスマーク16Bを検出されると、ステップS16へ進み、アドレスマーク16Bを検出した前後いずれか一方の駆動ユニット4を停止させると共に、停止指令のアドレスマーク16Bを検出していない他方の駆動ユニット4は走行を継続させ、ステップS17へ進む。
【0050】
ステップS17では、他方の駆動ユニット4のアドレスセンサ12が、当該駆動ユニット4の停止用に、他方の軌道テープ15Bに近接して設置されている停止指令のアドレスマーク16Bを検出したか否かを確認する。他方の駆動ユニット4のアドレスセンサ12が停止用に設置した停止用のアドレスマーク16Bを検出していない場合には、他方の駆動ユニット4の進行を継続させ、他方の駆動ユニット4のアドレスセンサ12が停止用に設置した停止指令のアドレスマーク16Bを検出するか否かを確認する。そして、他方の駆動ユニット4のアドレスセンサ12が、当該駆動ユニット4の停止用に、他方の軌道テープ15Bに近接して設置されている停止指令のアドレスマーク16Bを検出すると、ステップS18へ進む。
【0051】
ステップS18では、他方の駆動ユニット4を停止させて、ステップS19へ進む。無人搬送車3の前後の駆動ユニット4は、目的とする他方の軌道テープ15Bに対して、夫々進行方向を直交させて停止されている。
【0052】
前記停止用のアドレスマーク16Bの設置位置は、環状の円軌道テープ15C上を走行してきた各駆動ユニット4の左右の駆動輪10が共に他方の走行ラインを形成する他方の軌道テープ15B上に到達した時点におけるアドレスセンサ12の位置に対応して床面に設置される。なお、アドレスセンサ12として、アドレスマーク16Bを通過した時点で検出信号を発生するものである場合には、検出信号が発生される時点を考量して設置される。
【0053】
このように、環状の円軌道テープ15Cと他方の軌道テープ15Bとの2つの交差部分に夫々駆動ユニット4の停止用のアドレスマーク16Bを設置しているため、夫々の駆動ユニット4の到達時点に差異が発生しても、正確に他方の走行ライン上に各駆動ユニット4を停止させることができる。
【0054】
ステップS19では、左右の駆動輪10の相対的な回転方向を一方の軌道テープ15A上での回転方向と逆方向となるように回転させ、それぞれの駆動ユニット4が他方の軌道テープ15Bの無人搬送車3の進行方向側へ向ける駆動ユニット4の戻し回転を行う。そして、駆動ユニット4の軌道センサ11が他方の軌道テープ15Bを検出したか否かを確認する。この戻し回転によって、駆動ユニット4の軌道センサ11が他方の軌道テープ15Bを検出して、軌道センサ11の検出結果に基づいた他方の軌道テープ15Bに沿った走行が可能となると、ステップS21へ移行して、次のコマンドの実行、例えば、軌道センサ11の検出結果に基づいた通常走行を開始する。この第2軌道テープ15Bに沿っての走行では、前後の駆動ユニット4の進行方向が一致しておりその駆動力が倍増されるため、キャスタ輪5の旋回時におけるヨー角が車両の進行方向に対して直交する方向にあっても、容易にキャスタ輪5のヨー角を変更して走行させることができる。
【0055】
なお、上記図3の走行ラインの実施例において、第1軌道テープ15Aの交差点通過後の走行ラインを傾斜させるものについて説明したが、図示はしないが、交差点通過前の走行ラインを傾斜させるものであってもよい。
【0056】
図8に示す無人搬送車3の走行制御コントローラ8により実行される進路変更制御は、走行プログラムに基づいて進路変更を行うか否かを判断して、進路変更を行うと判断されると、実行される。なお、走行プログラムでは進路変更を行うアドレスマーク16と走行方向が設定されている。即ち、走行してきた元の軌道テープ15A(第1軌道テープ15A)から右へ向いて走行するか左へ向いて走行するか等が設定されている。ここでは、図5に示す走行ラインに基づいて車両を横行走行させて進路変更する場合を示す図11を参照しつつ説明する。
【0057】
図5に示す走行ラインにおいては、車両が交差点に接近すると、車両はアドレスセンサ12によって進路変更位置、即ち、軌道テープ15Aに隣接させて配置されている横行指示のアドレスマーク16A(横行指示マーク)を検出しながら走行する(ステップS20)。そして、前方の駆動ユニット4が横行指示のアドレスマーク16Aを検出すると、ステップS21に進み、前後の駆動ユニット4に対して分岐した互いに平行な傾斜軌道テープ15Eを軌道センサ11により選択させて、前後の駆動ユニット4を傾斜軌道テープ15Eに沿って進行させる。この走行状態においては、台車2が向きを変えることなく斜めに駆動されるため、図11に示すように、台車2を支持する各キャスタ輪5も傾斜軌道テープ15Eの進行方向後方側に向かってヨー角度が変更される。
【0058】
次に、ステップS22に進み、前後いずれかの駆動ユニット4のアドレスセンサ12が、当該駆動ユニット4の停止のために、横行軌道テープ15Dに近接して配置されている、停止指令のアドレスマーク16Bを検出したか否かを確認する。そして、アドレスマーク16Bを検出されると、ステップS23へ進み、アドレスマーク16Bを検出した前後いずれか一方の駆動ユニット4を停止させると共に、停止指令のアドレスマーク16Bを検出していない他方の駆動ユニット4は傾斜軌道テープ15Eに沿っての走行を継続させ、ステップS24へ進む。
【0059】
ステップS24では、他方の駆動ユニット4のアドレスセンサ12が、当該駆動ユニット4の停止用に、横行軌道テープ15Dに近接して設置されている停止指令のアドレスマーク16Bを検出したか否かを確認する。他方の駆動ユニット4のアドレスセンサ12が停止用に設置した停止用のアドレスマーク16Bを検出していない場合には、他方の駆動ユニット4の進行を継続させ、他方の駆動ユニット4のアドレスセンサ12が停止用に設置した停止指令のアドレスマーク16Bを検出するか否かを確認する。そして、他方の駆動ユニット4のアドレスセンサ12が、当該駆動ユニット4の停止用に、横行軌道テープ15Dに近接して設置されている停止指令のアドレスマーク16Bを検出すると、ステップS25へ進む。
【0060】
ステップS25では、他方の駆動ユニット4を停止させて、ステップS26へ進む。無人搬送車3の前後の駆動ユニット4は、目的とする横行軌道テープ15Dと傾斜軌道テープ15Eとの交差点上で停止されている。
【0061】
次に、ステップS26では、前後の駆動ユニット4の左右の駆動輪10を互いに逆方向へ回転駆動させて、無人搬送車3の車体2に対して駆動ユニット4を支軸6を中心に回転させる。このとき、無人搬送車3の前後に設けている駆動ユニット4の進行方向が夫々横方向へ向くように、駆動ユニット4が回転される。
【0062】
即ち、無人搬送車3は、アドレスマーク16Bを検出して停止すると、前後の駆動ユニット4を傾斜軌道テープ15Eに沿った進行方向(矢印A1方向)と交差する進行方向(矢印A2方向)前方側へ向くように回転される。駆動ユニット4を支軸6を中心とする回転は継続され、各駆動ユニット4が備える軌道センサ11の全てのセンサにより横行軌道テープ15Dが検出されると、支軸6回りの回転が停止される(ステップS27)。これによって、前後の駆動ユニット4の向きが夫々横行軌道テープ15Dに沿う方向となる。次いで、ステップS28へ移行して、前後の駆動ユニット4が備える軌道センサ11により横行軌道テープ15Dを検出させつつ、前進させる。車両は、前後の駆動ユニット4の進行により横行動作を開始する。
【0063】
ところで、第1軌道テープ15Aと横行軌道テープ15Dとが直交している走行ラインを備える、図14に示す比較例では、車両が交差点上で停止されると、台車2に設けている各キャスタ輪5は今までの進行方向後方側に向かうヨー角度をとることになる。即ち、台車2の各キャスタ輪5は横行方向に対して夫々直角方向のヨー角を備えるものとなる。このため、台車2の横行動作は、先ず、各キャスタ輪5を横行方向の後方側に向くヨー角度となるまでキャスタ輪5を旋回させて後、キャスタ輪5の転動を開始させることとなる。
【0064】
しかしながら、キャスタ輪5のヨー角度を変更させるためには、前述(図13参照)したように、キャスタ輪5を床面に対する接地軸回りにすべり接触させつつ(キャスタ輪5と床面との摩擦力に打勝って)その場で転回させる状態で捩るものであるため、大きい旋回抵抗が発生する。この場合、上記したように、全てのキャスタ輪5のヨー角は横行方向に直交する方向にある。このため、これら全てのキャスタ輪5のヨー角度を変更する必要があり、非常に大きい旋回駆動力を必要とすることとなる。しかも、前記旋回抵抗は、台車2に積載している積荷による荷重が増加するに連れて増加するものであるため、積載荷重が大きい場合には、各駆動ユニット4による推進力を増加させる等の対策が必要となる。
【0065】
一方、図5に示す本実施形態の走行ラインにおいては、分岐した傾斜軌道テープ15Eに沿って走行させることにより、図11に示すように、全てのキャスタ輪5が傾斜軌道テープ15Eに平行なヨー角度に旋回されており、横行動作の方向に対して接地点が後方側に位置するよう旋回されている。このため、横行走行初期に発生する前記した走行抵抗が小さく抑えられ、台車2の横行動作に対して、少ない走行抵抗を伴いつつ台車2の横行移動に追従して台車2の移動方向後方側へヨー角度を変更しつつ転動を開始する。従って、台車2の横行動作を円滑に開始させることができる。
【0066】
次に、ステップS29へ進み、前後の駆動ユニット4のアドレスセンサ12が、当該駆動ユニット4の斜行のために、横行軌道テープ15Dの終端部に近接して配置されている、斜行指令のアドレスマーク16Bを検出したか否かを確認する。そして、斜行指示のアドレスマーク16Cを検出されると、ステップS30へ進み、前後の駆動ユニット4に対して分岐した互いに平行な傾斜軌道テープ15Fを軌道センサ11により選択させて、前後の駆動ユニット4を傾斜軌道テープ15Fに沿って進行させる。この走行状態においては、台車2が向きを変えることなく斜めに駆動されるため、台車2を支持する各キャスタ輪5も傾斜軌道テープ15Fの進行方向後方側に向かってヨー角度が変更される。
【0067】
なお、ステップS29の判定で、前後の駆動ユニット4による斜行指示のアドレスマーク16Cを検出させるまで先行する駆動ユニット4を停止状態で待機させ、両駆動ユニット4によるアドレスマーク16の検出後に、傾斜軌道テープ15Fに沿った走行を開始するようにしてもよい。
【0068】
次に、ステップS31へ進み、前後いずれかの駆動ユニット4のアドレスセンサ12が、当該駆動ユニット4の停止のために、傾斜軌道テープ15Fの終端部に近接して配置されている、停止指令のアドレスマーク16Dを検出したか否かを確認する。そして、アドレスマーク16Dを検出されると、ステップS32へ進み、アドレスマーク16Dを検出した前後いずれか一方の駆動ユニット4を停止させると共に、停止指令のアドレスマーク16Dを検出していない他方の駆動ユニット4は傾斜軌道テープ15Fに沿っての走行を継続させ、ステップS33へ進む。
【0069】
ステップS33では、他方の駆動ユニット4のアドレスセンサ12が、当該駆動ユニット4の停止用に、傾斜軌道テープ15Fの終端に近接して設置されている停止指令のアドレスマーク16Dを検出したか否かを確認する。他方の駆動ユニット4のアドレスセンサ12が停止用に設置した停止用のアドレスマーク16Dを検出していない場合には、他方の駆動ユニット4の進行を継続させ、他方の駆動ユニット4のアドレスセンサ12が停止用に設置した停止指令のアドレスマーク16Dを検出するか否かを確認する。そして、他方の駆動ユニット4のアドレスセンサ12が、当該駆動ユニット4の停止用に、傾斜軌道テープ15F近接して設置されている停止指令のアドレスマーク16Dを検出すると、ステップS34へ進む。ステップS34では、他方の駆動ユニット4を停止させて、次のステップ35へ進む。両駆動ユニット4は、第2軌道テープ15B上に位置した状態で停止されている。
【0070】
次のステップ35では、両駆動ユニット4を第2軌道テープ15Bに前後の駆動ユニット4を沿わせるよう旋回させ、第2軌道テープ15Bに沿って車両を走行させるようにする。この場合においても、台車2に設けられているキャスタ輪5は傾斜軌道テープ15Fに沿う走行により、車両の進行方向の後方側に向くヨー角度となっているため、車両を無理なく進行方向へ進行させることができる。
【0071】
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
【0072】
(ア)一対の駆動手段により夫々独立して駆動される左右の駆動輪10と、走行ラインを検出するライン検出手段としての軌道センサ11と、前記ライン検出手段の検出結果に基づいて前記駆動手段による左右の駆動輪10の夫々の回転を制御する制御手段8と、を備えた駆動ユニット4を車両の前後に配置した支軸6に旋回可能に配置し、駆動ユニット4の前記左右の駆動輪10の回転により車両を走行させると共に、その相対回転により駆動ユニット4が旋回することにより操舵される無人搬送車3と、無人搬送車3若しくは無人搬送車3と一体となった台車2の少なくとも四隅に配置されて車両重量および積載物重量を支持して無人搬送車3若しくは台車2の移動方向に追従して旋回され且つ転動するキャスタ輪5と、を備え、無人搬送車3を交差する走行ラインの交差点上に停止させ、前記前後の駆動ユニット4を逆方向に進行させることにより車両を旋回させて、一方の走行ライン上から交差する他方の走行ライン上に前後の駆動ユニット4を夫々移行させる無人搬送台車1であり、前記無人搬送車3を交差点上での停止時に、その後の進路変更に伴う旋回方向へ回頭させて停止させるようにしている。このため、無人搬送車3若しくは無人搬送車3と一体となった台車2の少なくとも四隅に配置されて車両重量および積載物重量を支持して無人搬送車3若しくは台車2の移動方向に追従して旋回され且つ転動するキャスタ輪5を車両の進路変更への旋回方向後方側へ旋回させた状態で車両を交差点上で停止させることができ、キャスタ輪5による駆動負荷を低減でき、無人搬送車3の駆動ユニット4の駆動力を大きく上昇させる等の対策も不要とでき、安価な無人搬送台車1とすることができる。
【0073】
(イ)一方の走行ラインとしての第1軌道テープ15Aを、交差点手前および交差点前方の少なくとも一方を進路変更方向に傾斜させて配置するため、無人搬送車3の交差点への進入により、無人搬送台車1を自動的に旋回方向に回頭できる。
【0074】
(ウ)一方の走行ラインとしての第1軌道テープ15Aを、交差点手前および交差点前方の両方を進路変更方向に傾斜させて配置すると、無人搬送車3の交差点への進入により、無人搬送台車1の旋回方向への回頭をより一層大きくでき、より一層キャスタ輪5による駆動負荷を低減できる。
【0075】
(エ)前後の駆動ユニット4を逆方向に進行させることにより車両を旋回させて、一方の走行ライン上から交差する他方の走行ライン上に前後の駆動ユニット4を夫々移行させる際に、前後の駆動ユニット4を交差点を中心とする環状の走行ラインとしての円軌道テープ15Cに沿って前記前後の駆動ユニット4を逆方向に進行させて車両を旋回させることにより、旋回中の無人搬送台車1の移動軌跡の精度を向上させ、脱輪等を効果的に抑制できる。
【0076】
(オ)一対の駆動手段により夫々独立して駆動される左右の駆動輪10と、走行ラインを検出するライン検出手段としての軌道センサ11と、前記ライン検出手段の検出結果に基づいて前記駆動手段による左右の駆動輪10の夫々の回転を制御する制御手段としてのコントローラ8と、を備えた駆動ユニット4を車両の前後に配置した支軸6に旋回可能に配置し、駆動ユニット4の前記左右の駆動輪10の回転により車両を走行させると共に、その相対回転により駆動ユニット4が旋回することにより操舵される無人搬送車3と、無人搬送車3若しくは無人搬送車3と一体となった台車2の少なくとも四隅に配置されて車両重量および積載物重量を支持して無人搬送車3若しくは台車2の移動方向に追従して旋回され且つ転動するキャスタ輪5と、を備え、無人搬送車3を交差する走行ラインの交差点上に停止させ、前記前後の駆動ユニット4を横方向に進行させることにより車両を横行させて、一方の走行ライン上から交差する他方の平行な走行ライン上に前後の駆動ユニット4を夫々移行させる無人搬送台車1であり、前記無人搬送車3を交差点手前の傾斜された平行な傾斜走行ライン上を走行させた後に前記交差点上に停止させるようにしている。このため、横行軌道テープ15Dへの進路変更においても、無人搬送車3若しくは無人搬送車3と一体となった台車2の少なくとも四隅に配置されて車両重量および積載物重量を支持して無人搬送車3若しくは台車2の移動方向に追従して旋回され且つ転動するキャスタ輪5を車両の進路変更への後方側へ旋回させた状態で車両を交差点上で停止させることができ、キャスタ輪5による駆動負荷を低減でき、無人搬送車3の駆動ユニット4の駆動力を大きく上昇させる等の対策も不要とでき、安価な無人搬送台車1とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施形態を示す無人搬送台車の底面図。
【図2】同じく無人搬送車の走行制御のシステム構成図。
【図3】無人搬送車が転回する走行ラインの交差点の説明図。
【図4】無人搬送車が転回するより改良した走行ラインの交差点の説明図。
【図5】無人搬送車が横行走行する走行ラインの説明図。
【図6】通常の走行ラインに沿った無人搬送車の駆動ユニットコントローラにより実行される走行制御のフローチャート。
【図7】大きく交差した交差点における旋回動作による進路変更での走行制御コントローラにより実行される進路変更制御のフローチャート。
【図8】大きく交差した交差点における横行動作による進路変更での走行制御コントローラにより実行される進路変更制御のフローチャート。
【図9】図3に示した走行ラインによる進路変更の動作状態を示す説明図。
【図10】図4に示した走行ラインによる進路変更の動作状態を示す説明図。
【図11】図5に示した走行ラインによる進路変更の動作状態を示す説明図。
【図12】図3,4に対する比較例の走行ラインによる進路変更の動作状態を示す説明図。
【図13】キャスタ輪の旋回状態を示す説明図。
【図14】図5に対する比較例の走行ラインによる進路変更の動作状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0078】
1 無人搬送台車
2 台車
3 無人搬送車
4 駆動ユニット
5 キャスタ輪
6 支軸
7 バッテリ
8 コントローラ(進路変更装置)
9 アクスル
10 駆動輪
11 軌道センサ
12 アドレスセンサ
15、15A〜15F 走行ラインを構成する軌道テープ
16A、16B アドレスマーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の駆動手段により夫々独立して駆動される左右の駆動輪を備えた駆動ユニットを車両の前後に配置した支軸に旋回可能に配置し、駆動ユニットの前記左右の駆動輪の回転により車両を走行させると共に、その相対回転により駆動ユニットが旋回することにより操舵される無人搬送車と、無人搬送車若しくは無人搬送車と一体となった台車の少なくとも四隅に配置されて車両重量および積載物重量を支持して無人搬送車若しくは台車の移動方向に追従して旋回され且つ転動するキャスタ輪と、を備え、無人搬送車を交差する走行ラインの交差点上に停止させ、前記前後の駆動ユニットを逆方向に進行させることにより車両を旋回させて、一方の走行ライン上から交差する他方の走行ライン上に前後の駆動ユニットを夫々移行させる無人搬送台車の進路変更方法であり、
前記無人搬送車を交差点上での停止時に、その後の進路変更に伴う旋回方向へ回頭させて停止させることを特徴とする無人搬送台車の進路変更方法。
【請求項2】
前記一方の走行ラインは、交差点手前および交差点前方の少なくとも一方を進路変更方向に傾斜させた走行ラインを備えることを特徴とする請求項1に記載の無人搬送台車の進路変更方法。
【請求項3】
前記一方の走行ラインは、交差点手前および交差点前方の両方を進路変更方向に傾斜させた走行ラインを備えることを特徴とする請求項2に記載の無人搬送台車の進路変更方法。
【請求項4】
前記前後の駆動ユニットを逆方向に進行させることにより車両を旋回させて、前記一方の走行ライン上から交差する他方の走行ライン上に前後の駆動ユニットを夫々移行させる際に、前後の駆動ユニットを交差点を中心とする環状の走行ラインに沿って前記前後の駆動ユニットを逆方向に進行させることにより車両を旋回させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の無人搬送台車の進路変更方法。
【請求項5】
一対の駆動手段により夫々独立して駆動される左右の駆動輪を備えた駆動ユニットを車両の前後に配置した支軸に旋回可能に配置し、駆動ユニットの前記左右の駆動輪の回転により車両を走行させると共に、その相対回転により駆動ユニットが旋回することにより操舵される無人搬送車と、無人搬送車若しくは無人搬送車と一体となった台車の少なくとも四隅に配置されて車両重量および積載物重量を支持して無人搬送車若しくは台車の移動方向に追従して旋回され且つ転動するキャスタ輪と、を備え、無人搬送車を交差する走行ラインの交差点上に停止させ、前記前後の駆動ユニットを横方向に進行させることにより車両を横行させて、一方の走行ライン上から交差する他方の平行な走行ライン上に前後の駆動ユニットを夫々移行させる無人搬送台車の進路変更方法であり、
前記無人搬送車を交差点手前の傾斜された平行な傾斜走行ライン上を走行させた後に前記交差点上に停止させるようにしたことを特徴とする無人搬送台車の進路変更方法。
【請求項6】
一対の駆動手段により夫々独立して駆動される左右の駆動輪と、走行ラインを検出するライン検出手段と、前記ライン検出手段の検出結果に基づいて前記駆動手段による左右の駆動輪の夫々の回転を制御する制御手段と、を備えた駆動ユニットを車両の前後に配置した支軸に旋回可能に配置し、駆動ユニットの前記左右の駆動輪の回転により車両を走行させると共に、その相対回転により駆動ユニットが旋回することにより操舵される無人搬送車と、無人搬送車若しくは無人搬送車と一体となった台車の少なくとも四隅に配置されて車両重量および積載物重量を支持して無人搬送車若しくは台車の移動方向に追従して旋回され且つ転動するキャスタ輪と、を備え、無人搬送車を交差する走行ラインの交差点上に停止させ、前記前後の駆動ユニットを逆方向に進行させることにより車両を旋回させて、一方の走行ライン上から交差する他方の走行ライン上に前後の駆動ユニットを夫々移行させる無人搬送台車の進路変更装置であり、
前記無人搬送車の交差点への進入時に、交差点手前および交差点前方の少なくとも一方を進路変更方向に傾斜させた前記一方の走行ラインを走行させることにより、前記無人搬送車を交差点上での停止時に、その後の進路変更に伴う旋回方向へ回頭させて停止させることを特徴とする無人搬送台車の進路変更装置。
【請求項7】
前記一方の走行ラインは、交差点手前および交差点前方の両方を進路変更方向に傾斜させた走行ラインを備えることを特徴とする請求項6に記載の無人搬送台車の進路変更装置。
【請求項8】
前記交差点は当該交差点を中心とする環状の走行ラインを備え、
前記無人搬送車は前記環状の走行ラインに沿って前後の駆動ユニットを逆方向に進行させることにより車両を旋回させて、一方の走行ライン上から交差する他方の走行ライン上に前後の駆動ユニットを夫々移行させることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の無人搬送台車の進路変更装置。
【請求項9】
一対の駆動手段により夫々独立して駆動される左右の駆動輪と、走行ラインを検出するライン検出手段と、前記ライン検出手段の検出結果に基づいて前記駆動手段による左右の駆動輪の夫々の回転を制御する制御手段と、を備えた駆動ユニットを車両の前後に配置した支軸に旋回可能に配置し、駆動ユニットの前記左右の駆動輪の回転により車両を走行させると共に、その相対回転により駆動ユニットが旋回することにより操舵される無人搬送車と、無人搬送車若しくは無人搬送車と一体となった台車の少なくとも四隅に配置されて車両重量および積載物重量を支持して無人搬送車若しくは台車の移動方向に追従して旋回され且つ転動するキャスタ輪と、を備え、無人搬送車を交差する走行ラインの交差点上に停止させ、前記前後の駆動ユニットを横方向に進行させることにより車両を横行させて、一方の走行ライン上から交差する他方の平行な走行ライン上に前後の駆動ユニットを夫々移行させる無人搬送台車の進路変更装置であり、
前記交差点に至る手前に配置した傾斜した平行な傾斜走行ライン上に前後の駆動ユニットを走行させた後に、前記無人搬送車を前記交差点上に停止させるようにしたことを特徴とする無人搬送台車の進路変更装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−223561(P2009−223561A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66553(P2008−66553)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(508079304)愛知機械テクノシステム株式会社 (12)
【Fターム(参考)】