無段変速機及びその制御方法
【課題】車両停車中に無段変速機の出力軸トルクが減少するときのショックを低減する。
【解決手段】変速機コントローラ12は、車両が走行レンジで停車したときに、副変速機構30を、無段変速機4に入力されるトルクが第2変速段で伝達され、かつ、第1変速段の摩擦締結要素(Lowブレーキ32)及び第2変速段の摩擦締結要素(Highクラッチ33)の両方が締結された2速インターロック状態とし、車両が停車している間に所定の条件が成立した場合に無段変速機4の出力軸トルクを低減する。
【解決手段】変速機コントローラ12は、車両が走行レンジで停車したときに、副変速機構30を、無段変速機4に入力されるトルクが第2変速段で伝達され、かつ、第1変速段の摩擦締結要素(Lowブレーキ32)及び第2変速段の摩擦締結要素(Highクラッチ33)の両方が締結された2速インターロック状態とし、車両が停車している間に所定の条件が成立した場合に無段変速機4の出力軸トルクを低減する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無段変速機及びその制御方法に関し、特に、無段変速機が無段変速機構と副変速機構を備えるものに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、無段変速機構(以下、「バリエータ」という。)に対して前進2段の副変速機構を直列に設け、車両の運転状態に応じてこの副変速機構の変速段を変更するように構成することで、バリエータを大型化させることなく、とりうる変速比範囲を拡大した無段変速機を開示している。
【0003】
このような無段変速機においては、再発進時の駆動力を確保するには、停車時の副変速機構を低速段にするのが好適であり、低速段で停車した場合にはその変速段を維持し、また高速段で停車した場合には停車中に高速段から低速段に変速させることが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−37455号公報
【特許文献2】特開平11−93987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、Dレンジで停車中、セレクトレバーがDレンジからNレンジに操作され(以下、「D−Nセレクト」という。)、低速段を実現する摩擦締結要素への供給油圧がドレンされて当該摩擦締結要素が解放されると、ショックが発生する。同様のショックは、Dレンジにおいて停車中、当該摩擦締結要素への供給油圧を締結ぎりぎりの油圧まで低下させるニュートラルアイドル制御(以下、「Nアイドル制御」という。)を行う場合にも発生する。
【0006】
これは、停車中、無段変速機に入力されたトルクが高速段よりもトルク増福作用の大きな低速段を介して出力軸へと伝達されており、この状態からD−Nセレクトにより出力軸トルクがゼロになる、あるいは、Nアイドル制御により出力軸トルクが減少すると、出力軸トルクの段差(減少幅)が大きいことによる。
【0007】
特許文献2は、このようなショックを緩和する方法として、低速段を実現する摩擦締結要素への油圧供給経路にオリフィスやアキュムレータを設け、供給油圧を緩やかに減少させる方法を提案している。しかしながら、この方法では、当該摩擦締結要素を締結する際の供給油圧の上昇も緩やかになるため、当該摩擦締結要素の締結遅れという別の問題が発生する。
【0008】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、車両停車中に無段変速機の出力軸トルクが減少するときのショックを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様によれば、車両に搭載される無段変速機であって、変速比を無段階に変化させることができる無段変速機構(以下、「バリエータ」という。)と、前記バリエータに対して直列に設けられ、前進用変速段として第1変速段と該第1変速段よりも変速比の小さな第2変速段とを有する副変速機構と、前記バリエータと前記副変速機構の全体の変速比の目標値を前記車両の運転状態に基づき設定し、当該目標値が実現されるように前記バリエータ及び前記副変速機構の少なくとも一方を制御する変速制御手段と、セレクトレバー位置が走行レンジのまま前記車両が停車したときに、前記副変速機構を、前記第2変速段でトルクが伝達され、かつ、前記第1変速段の摩擦締結要素及び前記第2変速段の摩擦締結要素の両方が締結された状態(以下、「2速インターロック状態」という。)とする2速インターロック手段と、前記車両が停車している間に所定の条件が成立した場合に前記無段変速機の出力軸トルクを低減する伝達トルク低減手段と、を備えたことを特徴とする無段変速機が提供される。
【0010】
また、本発明の別の態様によれば、車両に搭載され、変速比を無段階に変化させることができる無段変速機構(以下、「バリエータ」という。)と、前記バリエータに対して直列に設けられ、前進用変速段として第1変速段と該第1変速段よりも変速比の小さな第2変速段とを有する副変速機構と、を備えた無段変速機の制御方法であって、前記バリエータと前記副変速機構の全体の変速比の目標値を前記車両の運転状態に基づき設定し、当該目標値が実現されるように前記バリエータ及び前記副変速機構の少なくとも一方を制御する変速制御工程と、セレクトレバー位置が走行レンジのまま前記車両が停車したときに、前記副変速機構を、前記第2変速段でトルクが伝達され、かつ、前記第1変速段の摩擦締結要素及び前記第2変速段の摩擦締結要素の両方が締結された状態とする2速インターロック工程と、前記車両が停車している間に所定の条件が成立した場合に前記無段変速機の出力軸トルクを低減する伝達トルク低減工程と、を含むことを特徴とする無段変速機の制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
これらの態様によれば、走行レンジで停車中、副変速機構は第2変速段でトルクを伝達するので、停車している間に出力軸トルクが減少した場合であっても、副変速機構が第1変速段でトルクを伝達する状態から出力軸トルクが同レベルまで減少する場合に比べて出力軸トルクの段差が小さくなり、出力軸トルクの段差に起因するショックを緩和することができる。
【0012】
上記ショックは、セレクトレバーがDレンジからNレンジに操作された時(D−Nセレクト時)及びニュートラルアイドル制御開始時に発生し、これらの態様によればいずれのショックも緩和することができ、特に、後者のショックを緩和することによる効果(運転者に与える違和感、不快感の低減)が顕著である。これは、D−Nセレクト時のショックは運転者の操作を受けて発生するので運転者が予期できるのに対し、ニュートラルアイドル制御開始時のショックは運転者の意図とは関係なく所定の条件成立時に自動的に発生し、運転者が予期できないからである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る無段変速機を搭載した車両の概略構成図である。
【図2】変速機コントローラの内部構成を示した図である。
【図3】変速マップの一例を示した図である。
【図4】車両が停車するときの変速を説明するための図である。
【図5】2速インターロック状態を実現するための制御内容を示したフローチャートである。
【図6】2速インターロック状態での制御内容を示したフローチャートである。
【図7A】車両が停車して2速インターロック状態となり、この状態からD−Nセレクトが行われた場合の様子を示したタイムチャートである。
【図7B】車両が停車して2速インターロック状態となり、この状態からNアイドル制御が開始される場合の様子を示したタイムチャートである。
【図7C】車両が停車して2速インターロック状態となり、この状態から車両が再発進する場合の様子を示したタイムチャートである。
【図8】副変速機構の変速段が2速の状態で車両が停車する場合に2速インターロック状態を実現するための制御内容を示したフローチャートである。
【図9】(a)停車時にD−Nセレクトが行われた場合の様子と、(b)停車時にニュートラルアイドル制御が開始される場合の様子とを対比して示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、ある変速機構の「変速比」は、当該変速機構の入力回転速度を当該変速機構の出力回転速度で割って得られる値である。また、「最Low変速比」は当該変速機構の最大変速比を意味し、「最High変速比」は当該変速機構の最小変速比を意味する。
【0015】
図1は第1実施形態に係る無段変速機を搭載した車両の概略構成図である。この車両は動力源としてエンジン1を備える。エンジン1の出力回転は、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータ2、第1ギヤ列3、無段変速機(以下、単に「変速機4」という。)、第2ギヤ列5、終減速装置6を介して駆動輪7へと伝達される。第2ギヤ列5には駐車時に変速機4の出力軸を機械的に回転不能にロックするパーキング機構8が設けられている。
【0016】
また、車両には、エンジン1の動力の一部を利用して駆動されるオイルポンプ10と、オイルポンプ10からの油圧を調圧して変速機4の各部位に供給する油圧制御回路11と、油圧制御回路11を制御する変速機コントローラ12とが設けられている。
【0017】
各構成について説明すると、変速機4は、無段変速機構(以下、「バリエータ20」という。)と、バリエータ20に対して直列に設けられる副変速機構30とを備える。「直列に設けられる」とは同動力伝達経路においてバリエータ20と副変速機構30が直列に設けられるという意味である。副変速機構30は、この例のようにバリエータ20の出力軸に直接接続されていてもよいし、その他の変速ないし動力伝達機構(例えば、ギヤ列)を介して接続されていてもよい。
【0018】
バリエータ20は、プライマリプーリ21と、セカンダリプーリ22と、プーリ21、22の間に掛け回されるVベルト23とを備えるベルト式無段変速機構である。プーリ21、22は、それぞれ固定円錐板と、この固定円錐板に対してシーブ面を対向させた状態で配置され固定円錐板との間にV溝を形成する可動円錐板と、この可動円錐板の背面に設けられて可動円錐板を軸方向に変位させる油圧シリンダ23a、23bとを備える。油圧シリンダ23a、23bに供給される油圧を調整すると、V溝の幅が変化してVベルト23と各プーリ21、22との接触半径が変化し、バリエータ20の変速比vRatioが無段階に変化する。
【0019】
副変速機構30は前進2段・後進1段の変速機構である。副変速機構30は、2つの遊星歯車のキャリアを連結したラビニョウ型遊星歯車機構31と、ラビニョウ型遊星歯車機構31を構成する複数の回転要素に接続され、それらの連係状態を変更する複数の摩擦締結要素(Lowブレーキ32、Highクラッチ33、Revブレーキ34)とを備える。各摩擦締結要素32〜34への供給油圧を調整し、各摩擦締結要素32〜34の締結・解放状態を変更すると、副変速機構30の変速段が変更される。例えば、Lowブレーキ32を締結し、Highクラッチ33とRevブレーキ34を解放すれば副変速機構30の変速段は1速となる。Highクラッチ33を締結し、Lowブレーキ32とRevブレーキ34を解放すれば副変速機構30の変速段は1速よりも変速比が小さな2速となる。また、Revブレーキ34を締結し、Lowブレーキ32とHighクラッチ33を解放すれば副変速機構30の変速段は後進となる。なお、以下の説明では、副変速機構30の変速段が1速であるとき「変速機4が低速モードである」と表現し、2速であるとき「変速機4が高速モードである」と表現する。
【0020】
変速機コントローラ12は、図2に示すように、CPU121と、RAM・ROMからなる記憶装置122と、入力インターフェース123と、出力インターフェース124と、これらを相互に接続するバス125とから構成される。
【0021】
入力インターフェース123には、アクセルペダルの開度(以下、「アクセル開度APO」という。)を検出するアクセル開度センサ41の出力信号、変速機4の入力回転速度(=プライマリプーリ21の回転速度、以下、「プライマリ回転速度Npri」という。)を検出する回転速度センサ42の出力信号、車両の走行速度(以下、「車速VSP」という。)を検出する車速センサ43の出力信号、変速機4の油温を検出する油温センサ44の出力信号、セレクトレバー45の位置を検出するインヒビタスイッチ46の出力信号、ブレーキペダルが踏み込まれていることを検出するブレーキスイッチ47の出力信号などが入力される。
【0022】
記憶装置122には、変速機4の変速制御プログラム、この変速制御プログラムで用いる変速マップ(図3)が格納されている。CPU121は、記憶装置122に格納されている変速制御プログラムを読み出して実行し、入力インターフェース123を介して入力される各種信号に対して各種演算処理を施して変速制御信号を生成し、生成した変速制御信号を出力インターフェース124を介して油圧制御回路11に出力する。CPU121が演算処理で使用する各種値、その演算結果は記憶装置122に適宜格納される。
【0023】
油圧制御回路11は複数の流路、複数の油圧制御弁で構成される。油圧制御回路11は、変速機コントローラ12からの変速制御信号に基づき、複数の油圧制御弁を制御して油圧の供給経路を切り換えるとともにオイルポンプ10で発生した油圧から必要な油圧を調製し、これを変速機4の各部位に供給する。これにより、バリエータ20の変速比vRatio、副変速機構30の変速段が変更され、変速機4の変速が行われる。
【0024】
図3は変速機コントローラ12の記憶装置122に格納される変速マップの一例を示している。
【0025】
この変速マップ上では変速機4の動作点が車速VSPとプライマリ回転速度Npriとに基づき決定される。変速機4の動作点と変速マップ左下隅の零点を結ぶ線の傾きが変速機4の変速比(バリエータ20の変速比vRatioに副変速機構30の変速比subRatioを掛けて得られる全体の変速比、以下、「スルー変速比Ratio」という。)を表している。この変速マップには、従来のベルト式無段変速機の変速マップと同様に、アクセル開度APO毎に変速線が設定されており、変速機4の変速はアクセル開度APOに応じて選択される変速線に従って行われる。なお、図3には簡単のため、全負荷線(アクセル開度APO=8/8のときの変速線)、パーシャル線(アクセル開度APO=4/8のときの変速線)、コースト線(アクセル開度APO=0のときの変速線)のみが示されている。
【0026】
変速機4が低速モードのときは、変速機4はバリエータ20の変速比vRatioを最大にして得られる低速モード最Low線とバリエータ20の変速比vRatioを最小にして得られる低速モード最High線の間で変速することができる。このとき、変速機4の動作点はA領域とB領域内を移動する。一方、変速機4が高速モードのときは、変速機4はバリエータ20の変速比vRatioを最大にして得られる高速モード最Low線とバリエータ20の変速比vRatioを最小にして得られる高速モード最High線の間で変速することができる。このとき、変速機4の動作点はB領域とC領域内を移動する。
【0027】
副変速機構30の各変速段の変速比は、低速モード最High線に対応する変速比(低速モード最High変速比)が高速モード最Low線に対応する変速比(高速モード最Low変速比)よりも小さくなるように設定される。これにより、低速モードでとりうる変速機4のスルー変速比Ratioの範囲である低速モードレシオ範囲と高速モードでとりうる変速機4のスルー変速比Ratioの範囲である高速モードレシオ範囲とが部分的に重複し、変速機4の動作点が高速モード最Low線と低速モード最High線で挟まれるB領域にあるときは、変速機4は低速モード、高速モードのいずれのモードも選択可能になっている。
【0028】
変速機コントローラ12は、この変速マップを参照して、車速VSP及びアクセル開度APO(車両の運転状態)に対応するスルー変速比Ratioを到達スルー変速比DRatioとして設定する。この到達スルー変速比DRatioは、当該運転状態でスルー変速比Ratioが最終的に到達すべき目標値である。そして、変速機コントローラ12は、スルー変速比Ratioを所望の応答特性で到達スルー変速比DRatioに追従させるための過渡的な目標値である目標スルー変速比tRatioを設定し、スルー変速比Ratioが目標スルー変速比tRatioに一致するようにバリエータ20及び副変速機構30を制御する。
【0029】
また、変速マップ上には副変速機構30の変速を行うモード切換変速線(副変速機構30の1−2変速線)が低速モード最High線上に重なるように設定されている。モード切換変速線に対応するスルー変速比(以下、「モード切換変速比mRatio」という。)は低速モード最High変速比に等しい。
【0030】
そして、変速機4の動作点がモード切換変速線を横切った場合、すなわち、変速機4のスルー変速比Ratioがモード切換変速比mRatioを跨いで変化した場合は、変速機コントローラ12はモード切換変速制御を行う。このモード切換変速制御では、変速機コントローラ12は、副変速機構30の変速を行うとともに、バリエータ20の変速比vRatioを副変速機構30の変速比subRatioが変化する方向と逆の方向に変化させる協調変速を行う。
【0031】
協調変速では、変速機4のスルー変速比Ratioがモード切換変速比mRatioよりも大きい状態から小さい状態になったときは、変速機コントローラ12は、副変速機構30の変速段を1速から2速に変更(以下、「1−2変速」という。)するとともに、バリエータ20の変速比vRatioを変速比大側に変化させる。逆に、変速機4のスルー変速比Ratioがモード切換変速比mRatioよりも小さい状態から大きい状態になったときは、変速機コントローラ12は、副変速機構30の変速段を2速から1速に変更(以下、「2−1変速」という。)するとともに、バリエータ20の変速比vRatioを変速比小側に変化させる。
【0032】
モード切換変速時、協調変速を行うのは、変速機4のスルー変速比Ratioの段差により生じる入力回転の変化に伴う運転者の違和感を抑えるためである。また、モード切換変速をバリエータ20の変速比vRatioが最High変速比のときに行うのは、この状態では副変速機構30に入力されるトルクがそのときにバリエータ20に入力されるトルクのもとでは最小になっており、この状態で副変速機構30を変速すれば副変速機構30の変速ショックを緩和することができるからである。
【0033】
また、この変速マップに従えば、車両が停車する際、バリエータ20の変速比vRatioは最Low変速比となり、また、副変速機構30の変速段は1速となる。
【0034】
図4は、変速機4の動作点がX1にあるときにアクセルペダルから足が離されて車両が減速を開始し、X5で車両が停車するまでの変速機4の動作点が移動する様子を示した図である。
【0035】
X1でアクセルペダルから足が離されると、変速機4の動作点はコースト線上のX2まで移動し、以後、コースト線に沿って変速機4のスルー変速比Ratioが変速比大側に変化する。変速機4の動作点がモード切換線上のX3に到達すると、上記協調変速により副変速機構30の変速段が2速から1速に変更される。
【0036】
車速VSPがさらに低下し、変速機4の動作点が低速モード最Low線上のX4まで移動すると、バリエータ20の変速比vRatioが最Low変速比となる。この後は、変速機4の動作点は低速モード最Low線に沿って移動し、車速VSPがゼロとなって車両が停車するX5でのバリエータ20の変速比vRatioは最Low変速比、副変速機構30の変速段は1速となる。
【0037】
なお、ここではC領域内のX1から減速した場合を示したが、変速機4の動作点がA領域あるいはB領域内にあるときにアクセルペダルから足が離され、車両が減速する場合であっても、車両はバリエータ20の変速比vRatioが最Low変速比かつ副変速機構30の変速段が1速の状態で停車する。
【0038】
ところで、セレクトレバー45の位置が走行レンジ(Dレンジ、Sレンジ等、エンジン1のトルクが変速機4を介してその出力軸に伝達されるレンジ。以下の説明は代表して走行レンジがDレンジであるとして説明する。)のまま車両が停車し、副変速機構30の変速段が1速のままであると、1速のトルク増幅作用が2速に比べて大きいために以下の問題が発生する。
【0039】
第1に、停車中にセレクトレバー45がDレンジからNレンジ(エンジン1のトルクが変速機4を介してその出力軸に伝達されない非走行レンジ)に操作され(以下、「D−Nセレクト」という。)、1速を実現するLowブレーキ32への供給油圧がドレンされてLowブレーキ32が解放されると、変速機4の出力軸トルクが、副変速機構30の変速段が1速のときの出力軸トルク(以下、「1速トルク」という。)からゼロまで減少するために、出力軸トルクの段差(減少幅)が大きく、ショックが発生する。
【0040】
第2に、停車中にニュートラルアイドル条件(以下、「Nアイドル条件」という。)が成立し、ニュートラルアイドル制御(以下、「Nアイドル制御」という。)によりLowブレーキ32の供給油圧をLowブレーキ32が締結ぎりぎりの状態(Lowブレーキ32を構成する対向する係合部材が僅かに接触する状態、あるいは、接触する直前の状態)となる油圧まで下げる場合にも、出力軸トルクの段差(減少幅)が大きく、同様のショックが発生する。
【0041】
このため、変速機コントローラ12は、これらのショックを緩和するために、セレクトレバー45の位置がDレンジのまま車両が停車した場合には、副変速機構30を、2速でトルクを伝達する状態(このときの出力軸トルクを以下、「2速トルク」という。)で、かつ、Lowブレーキ32及びHighクラッチ33の両方が締結されたインターロック状態(以下、「2速インターロック状態」という。)とする。
【0042】
この2速インターロック状態を実現するには、変速機コントローラ12は、まず、Highクラッチ33を締結して副変速機構30をインターロックさせる。この状態では、副変速機構30はまだ1速でトルクを伝達しており、変速機4の出力軸トルクは1速トルクのままである。
【0043】
次に、変速機コントローラ12は、Lowブレーキ32を解放する。これにより、トルク伝達を受け持つ変速段が1速から2速に移行し、副変速機構30は2速でトルクを伝達する状態になり、変速機4の出力軸トルクは2速トルクまで減少する。その後、変速機コントローラ12は、Lowブレーキ32を再締結し、副変速機構30を再びインターロックさせるが、副変速機構30は2速でトルクを伝達する状態を維持する。これにより、副変速機構30の2速インターロック状態が実現される。
【0044】
副変速機構30を2速インターロック状態で待機させておけば、D−Nセレクトがなされて変速機4の出力軸に伝達されるトルクがゼロとなっても、また、Nアイドル制御に移行して変速機4の出力軸に伝達されるトルクが減少しても、出力軸トルクの減少が2速トルクからの減少なので、1速トルクから減少させる場合と比べて出力軸トルクの段差が縮小され、上記ショックが緩和される。
【0045】
なお、2速インターロック状態で停車中に、運転者がアクセルペダルを踏み込んで、すなわち、運転者の発進要求を受けて車両を再発進させる場合には、変速機コントローラ12は、Highクラッチ33を解放し、副変速機構30のインターロックを解除する。Lowブレーキ32は既に締結されているのでHighクラッチ33が解放されると副変速機構30は1速でトルクを伝達する状態に直ちに移行し、発進駆動力の不足やLowブレーキ32の締結遅れが問題になることはない。
【0046】
図5は、副変速機構30の2速インターロック状態を実現するための制御プログラムの一例を示している。これを参照しながら2速インターロック状態を実現するための変速機コントローラ12の具体的な制御内容について説明する。なお、図5に示すフローチャートは、所定時間毎(例えば、10msec毎)に実行される。
【0047】
S11では、変速機コントローラ12は、Dレンジで停車したか判定する。Dレンジで停車したと判定されたら処理がS12に進み、そうでない場合は処理を終了する。
【0048】
S12では、変速機コントローラ12は、Highクラッチ33への供給油圧を高めてHighクラッチ33を締結し、副変速機構30をインターロックさせる。この状態では、副変速機構30は、まだ1速でトルクを伝達する状態である。
【0049】
S13では、変速機コントローラ12は、Lowブレーキ32への供給油圧をドレンしてLowブレーキ32を解放し、その後、Lowブレーキ32への供給油圧を高めて再締結する。Lowブレーキ32が解放されたことで副変速機構30は2速でトルクを伝達する状態となり、この状態は、Lowブレーキ32が再締結されて副変速機構30が再びインターロックされた後も維持される。
【0050】
S14では、変速機コントローラ12は、副変速機構30が2速インターロック状態にあることを示す1をフラグF2ILにセットする。
【0051】
したがって、この制御によれば、Dレンジで車両が停車した場合には、副変速機構30の2速インターロック状態が実現され、フラグF2ILに1がセットされる(S11〜S14)。
【0052】
また、図6は、2速インターロック状態での制御プログラムの一例を示している。これを参照しながら2速インターロック状態での変速機コントローラ12の具体的な制御内容について説明する。なお、なお、図6に示すフローチャートは、所定時間毎(例えば、10msec毎)に実行される。
【0053】
S21では、変速機コントローラ12は、フラグF2ILの値に基づき、2速インターロック状態か判定する。フラグF2ILが1で2速インターロック状態と判定された場合は処理がS22に進み、そうでない場合は処理が終了する。
【0054】
S22では、変速機コントローラ12は、運転者の発進要求があったか判定する。発進要求があったかどうかは、例えば、ブレーキペダルから足が離されたことが検出され、かつ、アクセル開度APOが0から0以外の値に変化したときに、発進要求があったと判定される。発進要求があったと判定されたときは、処理がS23に進み、そうでない場合は処理がS25に進む。
【0055】
S23では、変速機コントローラ12は、Highクラッチ33への供給油圧をドレンし、Highクラッチ33を解放する。これにより、2速インターロック状態が解除されて変速機4の出力軸トルクが2速トルクから1速トルクに増大し、再発進時の駆動力が確保される。
【0056】
S24では、変速機コントローラ12は、フラグF2ILに2速インターロック状態が解除されたことを示す0をセットする。
【0057】
S25では、変速機コントローラ12は、D−Nセレクトが行われたか判定する。D−Nセレクトが行われたと判定された場合は処理がS26に進み、そうでない場合は処理がS28に進む。
【0058】
S26では、変速機コントローラ12は、Lowブレーキ32とHighクラッチ33への供給油圧をともにドレンし、両要素を解放する。これにより、変速機4はエンジン1のトルクを出力軸に伝達しないニュートラル状態となり、変速機4の出力軸トルクはゼロまで減少する。しかしながら、1速トルクよりも小さな2速トルクからの減少であるので、出力軸トルクの段差は小さく、ショックは小さく抑えられる。
【0059】
S27では、変速機コントローラ12は、フラグF2ILに2速インターロック状態が解除されたことを示す0をセットする。
【0060】
S28では、変速機コントローラ12は、Nアイドル条件が成立したか判定する。Nアイドル条件は、例えば、以下の条件:
車両が停車(VSP=0)
ブレーキペダルが踏み込まれている(ブレーキスイッチ=ON)
アクセルペダルから足が離されている(アクセル開度APO=0)
セレクトレバー45の位置がDレンジ
エンジン1及び変速機4の暖機が完了(エンジン冷却水温及び変速機油温に基づき判定)
が全て成立したときに成立したと判定される。
【0061】
Nアイドル条件が成立したと判定された場合は処理がS29に進み、そうでない場合は処理が終了する。
【0062】
S29では、変速機コントローラ12は、Nアイドル制御を開始する。Nアイドル制御では、変速機コントローラ12は、Highクラッチ33の供給油圧をドレンしてHighクラッチ33を解放するとともに、Lowブレーキ32の供給油圧を、Lowブレーキ32が締結ぎりぎりの状態(Lowブレーキ32を構成する対向する係合部材が僅かに接触する状態、あるいは、接触する直前の状態)となるように制御する。Nアイドル制御に移行すると、変速機4の出力軸トルクが減少するが、1速トルクよりも小さな2速トルクからの減少であるので、出力軸トルクの段差は小さく、ショックは小さく抑えられる。
【0063】
S30では、変速機コントローラ12は、フラグF2ILに2速インターロック状態が解除されたことを示す0をセットする。
【0064】
したがって、この制御によれば、2速インターロック状態で停車中、発進要求があれば2速インターロック状態が解除され(S22、S23)、変速機4の出力軸トルクが2速トルクから1速トルクに増大して再発進時の駆動力が確保される。また、D−Nセレクトが行われれば変速機4がニュートラル状態に移行し(S25、S26)、Nアイドル条件が成立すればNアイドル制御に移行するが(S28、S29)、これらの場合であっても変速機4の出力軸トルクの段差が小さく抑えられ、ショックが緩和される。
【0065】
続いて、上記制御を行うことによる作用効果を図7A〜図7Cを参照しながら説明する。
【0066】
図7Aは、車両が停車して2速インターロック状態となり、この状態からD−Nセレクトが行われた場合の様子を示したタイムチャートである。
【0067】
時刻t11で車速VSPがゼロとなって車両が停車すると、時刻t12〜t13でHighクラッチ33が締結され、副変速機構30がインターロックされる。
【0068】
時刻t14〜t15では、Lowブレーキ32が解放されて、トルクの伝達を受け持つ副変速機構30の変速段が1速から2速に移行し、変速機4の出力軸トルクが1速トルクから2速トルクに下げられる。その後、Lowブレーキ32が再締結され、副変速機構30は再びインターロックされるが、変速機4の出力軸トルクは2速トルクを維持する。これにより、副変速機構30の2速インターロック状態が実現される。
【0069】
時刻t16では、D−Nセレクトが行われ、Lowブレーキ32とHighクラッチ33への供給油圧がドレンされ、両要素とも解放されて変速機4の出力軸トルクはゼロとなる。しかしながら、出力軸トルクがあらかじめ2速トルクまで下げられていることにより、出力軸トルクの段差は1速トルクからゼロになる場合に比べて縮小され、ショックは緩和される(請求項1、2、5、8に対応する効果)。
【0070】
図7Bは、車両が停車して2速インターロック状態となり、この状態からNアイドル制御が開始される場合の様子を示したタイムチャートである。
【0071】
時刻t21〜t25は図7Aにおける時刻t11〜t15と同じく、副変速機構30の2速インターロック状態が実現される。
【0072】
時刻t26では、Nアイドル条件が成立してNアイドル制御に移行し、Highクラッチ33の供給油圧がドレンされるとともに、Lowブレーキ32への供給油圧がLowブレーキ32が締結ぎりぎりの状態になるまで下げられる。Nアイドル制御に移行すると、変速機4の出力軸トルクが減少するが、出力軸トルクがあらかじめ2速トルクまで下げられていることにより、出力軸トルクの段差は1速トルクからゼロになる場合に比べて縮小され、これによってショックが緩和される(請求項1、2、6、8に対応する効果)。
【0073】
上記の通り、D−Nセレクト時及びNアイドル制御開始時に出力軸トルクの段差に起因するショックが発生するが、第1実施態様によれば、いずれのショックも緩和することができる。特に、Nアイドル制御開始時のショックは運転者が予期できないので、これを緩和することによる効果、すなわち、運転者に与える違和感、不快感の低減が顕著である。Nアイドル制御開始時のショックを運転者が予期できないのは、D−Nセレクト時のショックは運転者の操作を受けて発生するのに対し、Nアイドル制御開始時のショックは運転者の意図とは無関係にNアイドル条件が成立すると自動的に発生するからである。
【0074】
図7Cは、車両が停車して2速インターロック状態となり、この状態から車両が再発進する場合の様子を示したタイムチャートである。
【0075】
時刻t31〜t35は図7Aにおける時刻t11〜t15と同じく、副変速機構30の2速インターロック状態が実現される。
【0076】
時刻t36では、発進要求を受けて、Highクラッチ33への供給油圧がドレンされてHighクラッチが解放され、2速インターロック状態が解除される。変速機4の出力軸に伝達されるトルクが2速トルクから1速トルクまで直ちに増大するので、停車中出力軸トルクが2速トルクまで下げられているにもかかわらず、発進駆動力が不足することはなく、また、Lowブレーキ32は既に締結されているのでLowブレーキ32の締結遅れが問題になることはない(請求項1、2、4、8に対応する効果)。
【0077】
このように、上記制御によれば、D−Nセレクト時、Nアイドル制御移行時のショックを緩和し、また、発進要求があったときの駆動力不足を防止することができる。
【0078】
続いて第2実施形態について説明する。
【0079】
第1実施形態では、変速マップ(図4)は、車両が停車する際、副変速機構30の変速段が1速になるようにモード切換変速線が設定されている。
【0080】
しかしながら、第2実施形態では、このモード切換変速線を低速モードから高速モードへの切換え、すなわち、副変速機構30の1−2変速にのみ用いる。そして、高速モードから低速モードへの切換えには別のモード切換変速線(図示せず)を設定することにより、あるいは、副変速機構30を一旦1−2変速させた後は停車するまで副変速機構30の変速段を2速に維持することにより、停車時の副変速機構30の変速段が2速になるようにする。
【0081】
停車時の副変速機構30の変速段が第1実施形態と異なり2速となるため、この第2実施形態では、図5に示した制御に代えて図8に示す制御を行い、副変速機構30の2速インターロック状態を実現する。
【0082】
図8に示される制御について説明すると、S41では、変速機コントローラ12は、Dレンジで停車したか判定する。Dレンジで停車したと判定されたら処理がS42に進み、そうでない場合は処理を終了する。
【0083】
S42では、変速機コントローラ12は、Lowブレーキ32への供給油圧を高めてLowブレーキ32を締結し、副変速機構30をインターロックさせる。副変速機構30が2速でトルクを伝達する状態はLowブレーキ32を締結しても維持されるので、これにより、副変速機構30の2速インターロック状態が実現される。
【0084】
S43では、変速機コントローラ12は、副変速機構30が2速インターロック状態にあることを示す1をフラグF2ILにセットする。
【0085】
したがって、この制御によれば、副変速機構30の変速段が2速の状態で停車した場合であっても、第1実施形態と同様に副変速機構30の2速インターロック状態を実現することができる(S41〜S43、請求項3に対応する効果)。
【0086】
なお、2速インターロック状態で停車中に発進要求、D−Nセレクト、Nアイドル条件成立があった場合の制御は第1実施形態と同じく図6に示した制御により行われ、これにより、第1実施形態と同じ作用効果(D−Nセレクト時及びNアイドル制御移行時のショック緩和、再発進時の駆動力確保)が奏される。
【0087】
続いて第3実施形態について説明する。
【0088】
第1実施形態によれば、Dレンジのまま車両が停車した場合に副変速機構30を2速インターロック状態にすることで、D−Nセレクト時及びNアイドル制御開始時のトルク段差を小さくし、トルク段差に起因するショックを緩和することができる。
【0089】
しかしながら、上記の通り、Nアイドル制御開始時のショックはNアイドル条件の成立を受けて発生、すなわち、運転者の意図と関係なく発生するので、運転者に与える違和感、不快感が大きく、D−Nセレクト時のショックよりも抑える必要性が高い。
【0090】
そこで、第3実施形態では、Nアイドル制御開始時のショックをさらに抑えるために、Nアイドル制御開始時のLowブレーキ32及びHighクラッチ33への供給油圧の減少速度をD−Nセレクト時の供給油圧の減少速度よりも遅くし、すなわち、より時間をかけて減少させ、供給油圧を緩やかに減少させる。
【0091】
これを実現するための変速機コントローラ12の制御内容は図6に示した第1実施形態のものとほぼ同じであり、Nアイドル条件が成立して進むS29での処理のみが相違する。
【0092】
具体的には、S29では、変速機コントローラ12は、第1実施形態と同じくHighクラッチ33への供給油圧をドレンし、Lowブレーキ32への供給油圧を減少させてNアイドル制御に移行するが、第3実施形態ではこのときの供給油圧の減少をD−Nセレクト時よりも緩やかにする。すなわち、Lowブレーキ32及びHighクラッチ33への供給油圧を減少させる時の減少速度を、D−Nセレクト時にこれらを減少させる時(S26)の減少速度よりも遅くなるように設定する。
【0093】
これにより、2速インターロック状態で停車することによってトルク段差が小さくなることに加え、Nアイドル制御開始時の出力軸トルクを緩やかに減少させることができ、Nアイドル制御開始時に発生するショックをより一層抑えることができる。
【0094】
図9は、(a)停車時にD−Nセレクトが行われた場合の様子と、(b)停車時にNアイドル制御が開始される場合の様子とを対比して示すタイムチャートである。時刻t41以前の2速インターロック状態を実現する部分は第1実施形態と同じである。
【0095】
(a)では時刻t41にD−Nセレクトが行われ、(b)では同時刻にNアイドル条件が成立してNアイドル制御が開始される。いずれの場合も出力軸トルクがあらかじめ2速トルクまで下げられているので、1速トルクからゼロになる場合に比べて出力軸トルクの段差が縮小され、ショックが緩和される。
【0096】
加えて、第3実施形態では、Nアイドル制御開始時のLowブレーキ32及びHighクラッチ33への供給油圧の減少をD−Nセレクト時よりも緩やかにしたので、運転者が予期できないNアイドル制御開始時のショックがさらに抑えられて運転者が感じにくくなり、運転者に与える違和感、不快感をより一層抑えることができる(S29、請求項7に対応する効果)。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0098】
例えば、上記実施形態では、バリエータ20としてベルト式無段変速機構を備えているが、バリエータ20は、Vベルト23の代わりにチェーンがプーリ21、22の間に掛け回される無段変速機構であってもよい。あるいは、バリエータ20は、入力ディスクと出力ディスクの間に傾転可能なパワーローラを配置するトロイダル式無段変速機構であってもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、副変速機構30は前進用の変速段として1速と2速の2段を有する変速機構としたが、副変速機構30を前進用の変速段として3段以上の変速段を有する変速機構としても構わない。
【0100】
また、副変速機構30をラビニョウ型遊星歯車機構を用いて構成したが、このような構成に限定されない。例えば、副変速機構30は、通常の遊星歯車機構と摩擦締結要素を組み合わせて構成してもよいし、あるいは、ギヤ比の異なる複数の歯車列で構成される複数の動力伝達経路と、これら動力伝達経路を切り換える摩擦締結要素とによって構成してもよい。
【0101】
また、プーリ21、22の可動円錐板を軸方向に変位させるアクチュエータとして油圧シリンダ23a、23bを備えているが、アクチュエータは油圧で駆動されるものに限らず電気的に駆動されるものあってもよい。
【0102】
また、変速機4が、停車時の副変速機構30の変速段が1速、2速のいずれをもとりうる場合は、停車時に副変速機構30の変速段を判定し、停車時の変速段に応じて図5あるいは図8に示す制御を実行するようにすればよい。
【符号の説明】
【0103】
4…無段変速機
11…油圧制御回路
12…変速機コントローラ
20…バリエータ(無段変速機構)
21…プライマリプーリ
22…セカンダリプーリ
23…Vベルト
30…副変速機構
32・・・Lowブレーキ(第1変速段の摩擦締結要素)
33・・・Highクラッチ(第2変速段の摩擦締結要素)
【技術分野】
【0001】
本発明は、無段変速機及びその制御方法に関し、特に、無段変速機が無段変速機構と副変速機構を備えるものに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、無段変速機構(以下、「バリエータ」という。)に対して前進2段の副変速機構を直列に設け、車両の運転状態に応じてこの副変速機構の変速段を変更するように構成することで、バリエータを大型化させることなく、とりうる変速比範囲を拡大した無段変速機を開示している。
【0003】
このような無段変速機においては、再発進時の駆動力を確保するには、停車時の副変速機構を低速段にするのが好適であり、低速段で停車した場合にはその変速段を維持し、また高速段で停車した場合には停車中に高速段から低速段に変速させることが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−37455号公報
【特許文献2】特開平11−93987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、Dレンジで停車中、セレクトレバーがDレンジからNレンジに操作され(以下、「D−Nセレクト」という。)、低速段を実現する摩擦締結要素への供給油圧がドレンされて当該摩擦締結要素が解放されると、ショックが発生する。同様のショックは、Dレンジにおいて停車中、当該摩擦締結要素への供給油圧を締結ぎりぎりの油圧まで低下させるニュートラルアイドル制御(以下、「Nアイドル制御」という。)を行う場合にも発生する。
【0006】
これは、停車中、無段変速機に入力されたトルクが高速段よりもトルク増福作用の大きな低速段を介して出力軸へと伝達されており、この状態からD−Nセレクトにより出力軸トルクがゼロになる、あるいは、Nアイドル制御により出力軸トルクが減少すると、出力軸トルクの段差(減少幅)が大きいことによる。
【0007】
特許文献2は、このようなショックを緩和する方法として、低速段を実現する摩擦締結要素への油圧供給経路にオリフィスやアキュムレータを設け、供給油圧を緩やかに減少させる方法を提案している。しかしながら、この方法では、当該摩擦締結要素を締結する際の供給油圧の上昇も緩やかになるため、当該摩擦締結要素の締結遅れという別の問題が発生する。
【0008】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、車両停車中に無段変速機の出力軸トルクが減少するときのショックを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様によれば、車両に搭載される無段変速機であって、変速比を無段階に変化させることができる無段変速機構(以下、「バリエータ」という。)と、前記バリエータに対して直列に設けられ、前進用変速段として第1変速段と該第1変速段よりも変速比の小さな第2変速段とを有する副変速機構と、前記バリエータと前記副変速機構の全体の変速比の目標値を前記車両の運転状態に基づき設定し、当該目標値が実現されるように前記バリエータ及び前記副変速機構の少なくとも一方を制御する変速制御手段と、セレクトレバー位置が走行レンジのまま前記車両が停車したときに、前記副変速機構を、前記第2変速段でトルクが伝達され、かつ、前記第1変速段の摩擦締結要素及び前記第2変速段の摩擦締結要素の両方が締結された状態(以下、「2速インターロック状態」という。)とする2速インターロック手段と、前記車両が停車している間に所定の条件が成立した場合に前記無段変速機の出力軸トルクを低減する伝達トルク低減手段と、を備えたことを特徴とする無段変速機が提供される。
【0010】
また、本発明の別の態様によれば、車両に搭載され、変速比を無段階に変化させることができる無段変速機構(以下、「バリエータ」という。)と、前記バリエータに対して直列に設けられ、前進用変速段として第1変速段と該第1変速段よりも変速比の小さな第2変速段とを有する副変速機構と、を備えた無段変速機の制御方法であって、前記バリエータと前記副変速機構の全体の変速比の目標値を前記車両の運転状態に基づき設定し、当該目標値が実現されるように前記バリエータ及び前記副変速機構の少なくとも一方を制御する変速制御工程と、セレクトレバー位置が走行レンジのまま前記車両が停車したときに、前記副変速機構を、前記第2変速段でトルクが伝達され、かつ、前記第1変速段の摩擦締結要素及び前記第2変速段の摩擦締結要素の両方が締結された状態とする2速インターロック工程と、前記車両が停車している間に所定の条件が成立した場合に前記無段変速機の出力軸トルクを低減する伝達トルク低減工程と、を含むことを特徴とする無段変速機の制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
これらの態様によれば、走行レンジで停車中、副変速機構は第2変速段でトルクを伝達するので、停車している間に出力軸トルクが減少した場合であっても、副変速機構が第1変速段でトルクを伝達する状態から出力軸トルクが同レベルまで減少する場合に比べて出力軸トルクの段差が小さくなり、出力軸トルクの段差に起因するショックを緩和することができる。
【0012】
上記ショックは、セレクトレバーがDレンジからNレンジに操作された時(D−Nセレクト時)及びニュートラルアイドル制御開始時に発生し、これらの態様によればいずれのショックも緩和することができ、特に、後者のショックを緩和することによる効果(運転者に与える違和感、不快感の低減)が顕著である。これは、D−Nセレクト時のショックは運転者の操作を受けて発生するので運転者が予期できるのに対し、ニュートラルアイドル制御開始時のショックは運転者の意図とは関係なく所定の条件成立時に自動的に発生し、運転者が予期できないからである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る無段変速機を搭載した車両の概略構成図である。
【図2】変速機コントローラの内部構成を示した図である。
【図3】変速マップの一例を示した図である。
【図4】車両が停車するときの変速を説明するための図である。
【図5】2速インターロック状態を実現するための制御内容を示したフローチャートである。
【図6】2速インターロック状態での制御内容を示したフローチャートである。
【図7A】車両が停車して2速インターロック状態となり、この状態からD−Nセレクトが行われた場合の様子を示したタイムチャートである。
【図7B】車両が停車して2速インターロック状態となり、この状態からNアイドル制御が開始される場合の様子を示したタイムチャートである。
【図7C】車両が停車して2速インターロック状態となり、この状態から車両が再発進する場合の様子を示したタイムチャートである。
【図8】副変速機構の変速段が2速の状態で車両が停車する場合に2速インターロック状態を実現するための制御内容を示したフローチャートである。
【図9】(a)停車時にD−Nセレクトが行われた場合の様子と、(b)停車時にニュートラルアイドル制御が開始される場合の様子とを対比して示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、ある変速機構の「変速比」は、当該変速機構の入力回転速度を当該変速機構の出力回転速度で割って得られる値である。また、「最Low変速比」は当該変速機構の最大変速比を意味し、「最High変速比」は当該変速機構の最小変速比を意味する。
【0015】
図1は第1実施形態に係る無段変速機を搭載した車両の概略構成図である。この車両は動力源としてエンジン1を備える。エンジン1の出力回転は、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータ2、第1ギヤ列3、無段変速機(以下、単に「変速機4」という。)、第2ギヤ列5、終減速装置6を介して駆動輪7へと伝達される。第2ギヤ列5には駐車時に変速機4の出力軸を機械的に回転不能にロックするパーキング機構8が設けられている。
【0016】
また、車両には、エンジン1の動力の一部を利用して駆動されるオイルポンプ10と、オイルポンプ10からの油圧を調圧して変速機4の各部位に供給する油圧制御回路11と、油圧制御回路11を制御する変速機コントローラ12とが設けられている。
【0017】
各構成について説明すると、変速機4は、無段変速機構(以下、「バリエータ20」という。)と、バリエータ20に対して直列に設けられる副変速機構30とを備える。「直列に設けられる」とは同動力伝達経路においてバリエータ20と副変速機構30が直列に設けられるという意味である。副変速機構30は、この例のようにバリエータ20の出力軸に直接接続されていてもよいし、その他の変速ないし動力伝達機構(例えば、ギヤ列)を介して接続されていてもよい。
【0018】
バリエータ20は、プライマリプーリ21と、セカンダリプーリ22と、プーリ21、22の間に掛け回されるVベルト23とを備えるベルト式無段変速機構である。プーリ21、22は、それぞれ固定円錐板と、この固定円錐板に対してシーブ面を対向させた状態で配置され固定円錐板との間にV溝を形成する可動円錐板と、この可動円錐板の背面に設けられて可動円錐板を軸方向に変位させる油圧シリンダ23a、23bとを備える。油圧シリンダ23a、23bに供給される油圧を調整すると、V溝の幅が変化してVベルト23と各プーリ21、22との接触半径が変化し、バリエータ20の変速比vRatioが無段階に変化する。
【0019】
副変速機構30は前進2段・後進1段の変速機構である。副変速機構30は、2つの遊星歯車のキャリアを連結したラビニョウ型遊星歯車機構31と、ラビニョウ型遊星歯車機構31を構成する複数の回転要素に接続され、それらの連係状態を変更する複数の摩擦締結要素(Lowブレーキ32、Highクラッチ33、Revブレーキ34)とを備える。各摩擦締結要素32〜34への供給油圧を調整し、各摩擦締結要素32〜34の締結・解放状態を変更すると、副変速機構30の変速段が変更される。例えば、Lowブレーキ32を締結し、Highクラッチ33とRevブレーキ34を解放すれば副変速機構30の変速段は1速となる。Highクラッチ33を締結し、Lowブレーキ32とRevブレーキ34を解放すれば副変速機構30の変速段は1速よりも変速比が小さな2速となる。また、Revブレーキ34を締結し、Lowブレーキ32とHighクラッチ33を解放すれば副変速機構30の変速段は後進となる。なお、以下の説明では、副変速機構30の変速段が1速であるとき「変速機4が低速モードである」と表現し、2速であるとき「変速機4が高速モードである」と表現する。
【0020】
変速機コントローラ12は、図2に示すように、CPU121と、RAM・ROMからなる記憶装置122と、入力インターフェース123と、出力インターフェース124と、これらを相互に接続するバス125とから構成される。
【0021】
入力インターフェース123には、アクセルペダルの開度(以下、「アクセル開度APO」という。)を検出するアクセル開度センサ41の出力信号、変速機4の入力回転速度(=プライマリプーリ21の回転速度、以下、「プライマリ回転速度Npri」という。)を検出する回転速度センサ42の出力信号、車両の走行速度(以下、「車速VSP」という。)を検出する車速センサ43の出力信号、変速機4の油温を検出する油温センサ44の出力信号、セレクトレバー45の位置を検出するインヒビタスイッチ46の出力信号、ブレーキペダルが踏み込まれていることを検出するブレーキスイッチ47の出力信号などが入力される。
【0022】
記憶装置122には、変速機4の変速制御プログラム、この変速制御プログラムで用いる変速マップ(図3)が格納されている。CPU121は、記憶装置122に格納されている変速制御プログラムを読み出して実行し、入力インターフェース123を介して入力される各種信号に対して各種演算処理を施して変速制御信号を生成し、生成した変速制御信号を出力インターフェース124を介して油圧制御回路11に出力する。CPU121が演算処理で使用する各種値、その演算結果は記憶装置122に適宜格納される。
【0023】
油圧制御回路11は複数の流路、複数の油圧制御弁で構成される。油圧制御回路11は、変速機コントローラ12からの変速制御信号に基づき、複数の油圧制御弁を制御して油圧の供給経路を切り換えるとともにオイルポンプ10で発生した油圧から必要な油圧を調製し、これを変速機4の各部位に供給する。これにより、バリエータ20の変速比vRatio、副変速機構30の変速段が変更され、変速機4の変速が行われる。
【0024】
図3は変速機コントローラ12の記憶装置122に格納される変速マップの一例を示している。
【0025】
この変速マップ上では変速機4の動作点が車速VSPとプライマリ回転速度Npriとに基づき決定される。変速機4の動作点と変速マップ左下隅の零点を結ぶ線の傾きが変速機4の変速比(バリエータ20の変速比vRatioに副変速機構30の変速比subRatioを掛けて得られる全体の変速比、以下、「スルー変速比Ratio」という。)を表している。この変速マップには、従来のベルト式無段変速機の変速マップと同様に、アクセル開度APO毎に変速線が設定されており、変速機4の変速はアクセル開度APOに応じて選択される変速線に従って行われる。なお、図3には簡単のため、全負荷線(アクセル開度APO=8/8のときの変速線)、パーシャル線(アクセル開度APO=4/8のときの変速線)、コースト線(アクセル開度APO=0のときの変速線)のみが示されている。
【0026】
変速機4が低速モードのときは、変速機4はバリエータ20の変速比vRatioを最大にして得られる低速モード最Low線とバリエータ20の変速比vRatioを最小にして得られる低速モード最High線の間で変速することができる。このとき、変速機4の動作点はA領域とB領域内を移動する。一方、変速機4が高速モードのときは、変速機4はバリエータ20の変速比vRatioを最大にして得られる高速モード最Low線とバリエータ20の変速比vRatioを最小にして得られる高速モード最High線の間で変速することができる。このとき、変速機4の動作点はB領域とC領域内を移動する。
【0027】
副変速機構30の各変速段の変速比は、低速モード最High線に対応する変速比(低速モード最High変速比)が高速モード最Low線に対応する変速比(高速モード最Low変速比)よりも小さくなるように設定される。これにより、低速モードでとりうる変速機4のスルー変速比Ratioの範囲である低速モードレシオ範囲と高速モードでとりうる変速機4のスルー変速比Ratioの範囲である高速モードレシオ範囲とが部分的に重複し、変速機4の動作点が高速モード最Low線と低速モード最High線で挟まれるB領域にあるときは、変速機4は低速モード、高速モードのいずれのモードも選択可能になっている。
【0028】
変速機コントローラ12は、この変速マップを参照して、車速VSP及びアクセル開度APO(車両の運転状態)に対応するスルー変速比Ratioを到達スルー変速比DRatioとして設定する。この到達スルー変速比DRatioは、当該運転状態でスルー変速比Ratioが最終的に到達すべき目標値である。そして、変速機コントローラ12は、スルー変速比Ratioを所望の応答特性で到達スルー変速比DRatioに追従させるための過渡的な目標値である目標スルー変速比tRatioを設定し、スルー変速比Ratioが目標スルー変速比tRatioに一致するようにバリエータ20及び副変速機構30を制御する。
【0029】
また、変速マップ上には副変速機構30の変速を行うモード切換変速線(副変速機構30の1−2変速線)が低速モード最High線上に重なるように設定されている。モード切換変速線に対応するスルー変速比(以下、「モード切換変速比mRatio」という。)は低速モード最High変速比に等しい。
【0030】
そして、変速機4の動作点がモード切換変速線を横切った場合、すなわち、変速機4のスルー変速比Ratioがモード切換変速比mRatioを跨いで変化した場合は、変速機コントローラ12はモード切換変速制御を行う。このモード切換変速制御では、変速機コントローラ12は、副変速機構30の変速を行うとともに、バリエータ20の変速比vRatioを副変速機構30の変速比subRatioが変化する方向と逆の方向に変化させる協調変速を行う。
【0031】
協調変速では、変速機4のスルー変速比Ratioがモード切換変速比mRatioよりも大きい状態から小さい状態になったときは、変速機コントローラ12は、副変速機構30の変速段を1速から2速に変更(以下、「1−2変速」という。)するとともに、バリエータ20の変速比vRatioを変速比大側に変化させる。逆に、変速機4のスルー変速比Ratioがモード切換変速比mRatioよりも小さい状態から大きい状態になったときは、変速機コントローラ12は、副変速機構30の変速段を2速から1速に変更(以下、「2−1変速」という。)するとともに、バリエータ20の変速比vRatioを変速比小側に変化させる。
【0032】
モード切換変速時、協調変速を行うのは、変速機4のスルー変速比Ratioの段差により生じる入力回転の変化に伴う運転者の違和感を抑えるためである。また、モード切換変速をバリエータ20の変速比vRatioが最High変速比のときに行うのは、この状態では副変速機構30に入力されるトルクがそのときにバリエータ20に入力されるトルクのもとでは最小になっており、この状態で副変速機構30を変速すれば副変速機構30の変速ショックを緩和することができるからである。
【0033】
また、この変速マップに従えば、車両が停車する際、バリエータ20の変速比vRatioは最Low変速比となり、また、副変速機構30の変速段は1速となる。
【0034】
図4は、変速機4の動作点がX1にあるときにアクセルペダルから足が離されて車両が減速を開始し、X5で車両が停車するまでの変速機4の動作点が移動する様子を示した図である。
【0035】
X1でアクセルペダルから足が離されると、変速機4の動作点はコースト線上のX2まで移動し、以後、コースト線に沿って変速機4のスルー変速比Ratioが変速比大側に変化する。変速機4の動作点がモード切換線上のX3に到達すると、上記協調変速により副変速機構30の変速段が2速から1速に変更される。
【0036】
車速VSPがさらに低下し、変速機4の動作点が低速モード最Low線上のX4まで移動すると、バリエータ20の変速比vRatioが最Low変速比となる。この後は、変速機4の動作点は低速モード最Low線に沿って移動し、車速VSPがゼロとなって車両が停車するX5でのバリエータ20の変速比vRatioは最Low変速比、副変速機構30の変速段は1速となる。
【0037】
なお、ここではC領域内のX1から減速した場合を示したが、変速機4の動作点がA領域あるいはB領域内にあるときにアクセルペダルから足が離され、車両が減速する場合であっても、車両はバリエータ20の変速比vRatioが最Low変速比かつ副変速機構30の変速段が1速の状態で停車する。
【0038】
ところで、セレクトレバー45の位置が走行レンジ(Dレンジ、Sレンジ等、エンジン1のトルクが変速機4を介してその出力軸に伝達されるレンジ。以下の説明は代表して走行レンジがDレンジであるとして説明する。)のまま車両が停車し、副変速機構30の変速段が1速のままであると、1速のトルク増幅作用が2速に比べて大きいために以下の問題が発生する。
【0039】
第1に、停車中にセレクトレバー45がDレンジからNレンジ(エンジン1のトルクが変速機4を介してその出力軸に伝達されない非走行レンジ)に操作され(以下、「D−Nセレクト」という。)、1速を実現するLowブレーキ32への供給油圧がドレンされてLowブレーキ32が解放されると、変速機4の出力軸トルクが、副変速機構30の変速段が1速のときの出力軸トルク(以下、「1速トルク」という。)からゼロまで減少するために、出力軸トルクの段差(減少幅)が大きく、ショックが発生する。
【0040】
第2に、停車中にニュートラルアイドル条件(以下、「Nアイドル条件」という。)が成立し、ニュートラルアイドル制御(以下、「Nアイドル制御」という。)によりLowブレーキ32の供給油圧をLowブレーキ32が締結ぎりぎりの状態(Lowブレーキ32を構成する対向する係合部材が僅かに接触する状態、あるいは、接触する直前の状態)となる油圧まで下げる場合にも、出力軸トルクの段差(減少幅)が大きく、同様のショックが発生する。
【0041】
このため、変速機コントローラ12は、これらのショックを緩和するために、セレクトレバー45の位置がDレンジのまま車両が停車した場合には、副変速機構30を、2速でトルクを伝達する状態(このときの出力軸トルクを以下、「2速トルク」という。)で、かつ、Lowブレーキ32及びHighクラッチ33の両方が締結されたインターロック状態(以下、「2速インターロック状態」という。)とする。
【0042】
この2速インターロック状態を実現するには、変速機コントローラ12は、まず、Highクラッチ33を締結して副変速機構30をインターロックさせる。この状態では、副変速機構30はまだ1速でトルクを伝達しており、変速機4の出力軸トルクは1速トルクのままである。
【0043】
次に、変速機コントローラ12は、Lowブレーキ32を解放する。これにより、トルク伝達を受け持つ変速段が1速から2速に移行し、副変速機構30は2速でトルクを伝達する状態になり、変速機4の出力軸トルクは2速トルクまで減少する。その後、変速機コントローラ12は、Lowブレーキ32を再締結し、副変速機構30を再びインターロックさせるが、副変速機構30は2速でトルクを伝達する状態を維持する。これにより、副変速機構30の2速インターロック状態が実現される。
【0044】
副変速機構30を2速インターロック状態で待機させておけば、D−Nセレクトがなされて変速機4の出力軸に伝達されるトルクがゼロとなっても、また、Nアイドル制御に移行して変速機4の出力軸に伝達されるトルクが減少しても、出力軸トルクの減少が2速トルクからの減少なので、1速トルクから減少させる場合と比べて出力軸トルクの段差が縮小され、上記ショックが緩和される。
【0045】
なお、2速インターロック状態で停車中に、運転者がアクセルペダルを踏み込んで、すなわち、運転者の発進要求を受けて車両を再発進させる場合には、変速機コントローラ12は、Highクラッチ33を解放し、副変速機構30のインターロックを解除する。Lowブレーキ32は既に締結されているのでHighクラッチ33が解放されると副変速機構30は1速でトルクを伝達する状態に直ちに移行し、発進駆動力の不足やLowブレーキ32の締結遅れが問題になることはない。
【0046】
図5は、副変速機構30の2速インターロック状態を実現するための制御プログラムの一例を示している。これを参照しながら2速インターロック状態を実現するための変速機コントローラ12の具体的な制御内容について説明する。なお、図5に示すフローチャートは、所定時間毎(例えば、10msec毎)に実行される。
【0047】
S11では、変速機コントローラ12は、Dレンジで停車したか判定する。Dレンジで停車したと判定されたら処理がS12に進み、そうでない場合は処理を終了する。
【0048】
S12では、変速機コントローラ12は、Highクラッチ33への供給油圧を高めてHighクラッチ33を締結し、副変速機構30をインターロックさせる。この状態では、副変速機構30は、まだ1速でトルクを伝達する状態である。
【0049】
S13では、変速機コントローラ12は、Lowブレーキ32への供給油圧をドレンしてLowブレーキ32を解放し、その後、Lowブレーキ32への供給油圧を高めて再締結する。Lowブレーキ32が解放されたことで副変速機構30は2速でトルクを伝達する状態となり、この状態は、Lowブレーキ32が再締結されて副変速機構30が再びインターロックされた後も維持される。
【0050】
S14では、変速機コントローラ12は、副変速機構30が2速インターロック状態にあることを示す1をフラグF2ILにセットする。
【0051】
したがって、この制御によれば、Dレンジで車両が停車した場合には、副変速機構30の2速インターロック状態が実現され、フラグF2ILに1がセットされる(S11〜S14)。
【0052】
また、図6は、2速インターロック状態での制御プログラムの一例を示している。これを参照しながら2速インターロック状態での変速機コントローラ12の具体的な制御内容について説明する。なお、なお、図6に示すフローチャートは、所定時間毎(例えば、10msec毎)に実行される。
【0053】
S21では、変速機コントローラ12は、フラグF2ILの値に基づき、2速インターロック状態か判定する。フラグF2ILが1で2速インターロック状態と判定された場合は処理がS22に進み、そうでない場合は処理が終了する。
【0054】
S22では、変速機コントローラ12は、運転者の発進要求があったか判定する。発進要求があったかどうかは、例えば、ブレーキペダルから足が離されたことが検出され、かつ、アクセル開度APOが0から0以外の値に変化したときに、発進要求があったと判定される。発進要求があったと判定されたときは、処理がS23に進み、そうでない場合は処理がS25に進む。
【0055】
S23では、変速機コントローラ12は、Highクラッチ33への供給油圧をドレンし、Highクラッチ33を解放する。これにより、2速インターロック状態が解除されて変速機4の出力軸トルクが2速トルクから1速トルクに増大し、再発進時の駆動力が確保される。
【0056】
S24では、変速機コントローラ12は、フラグF2ILに2速インターロック状態が解除されたことを示す0をセットする。
【0057】
S25では、変速機コントローラ12は、D−Nセレクトが行われたか判定する。D−Nセレクトが行われたと判定された場合は処理がS26に進み、そうでない場合は処理がS28に進む。
【0058】
S26では、変速機コントローラ12は、Lowブレーキ32とHighクラッチ33への供給油圧をともにドレンし、両要素を解放する。これにより、変速機4はエンジン1のトルクを出力軸に伝達しないニュートラル状態となり、変速機4の出力軸トルクはゼロまで減少する。しかしながら、1速トルクよりも小さな2速トルクからの減少であるので、出力軸トルクの段差は小さく、ショックは小さく抑えられる。
【0059】
S27では、変速機コントローラ12は、フラグF2ILに2速インターロック状態が解除されたことを示す0をセットする。
【0060】
S28では、変速機コントローラ12は、Nアイドル条件が成立したか判定する。Nアイドル条件は、例えば、以下の条件:
車両が停車(VSP=0)
ブレーキペダルが踏み込まれている(ブレーキスイッチ=ON)
アクセルペダルから足が離されている(アクセル開度APO=0)
セレクトレバー45の位置がDレンジ
エンジン1及び変速機4の暖機が完了(エンジン冷却水温及び変速機油温に基づき判定)
が全て成立したときに成立したと判定される。
【0061】
Nアイドル条件が成立したと判定された場合は処理がS29に進み、そうでない場合は処理が終了する。
【0062】
S29では、変速機コントローラ12は、Nアイドル制御を開始する。Nアイドル制御では、変速機コントローラ12は、Highクラッチ33の供給油圧をドレンしてHighクラッチ33を解放するとともに、Lowブレーキ32の供給油圧を、Lowブレーキ32が締結ぎりぎりの状態(Lowブレーキ32を構成する対向する係合部材が僅かに接触する状態、あるいは、接触する直前の状態)となるように制御する。Nアイドル制御に移行すると、変速機4の出力軸トルクが減少するが、1速トルクよりも小さな2速トルクからの減少であるので、出力軸トルクの段差は小さく、ショックは小さく抑えられる。
【0063】
S30では、変速機コントローラ12は、フラグF2ILに2速インターロック状態が解除されたことを示す0をセットする。
【0064】
したがって、この制御によれば、2速インターロック状態で停車中、発進要求があれば2速インターロック状態が解除され(S22、S23)、変速機4の出力軸トルクが2速トルクから1速トルクに増大して再発進時の駆動力が確保される。また、D−Nセレクトが行われれば変速機4がニュートラル状態に移行し(S25、S26)、Nアイドル条件が成立すればNアイドル制御に移行するが(S28、S29)、これらの場合であっても変速機4の出力軸トルクの段差が小さく抑えられ、ショックが緩和される。
【0065】
続いて、上記制御を行うことによる作用効果を図7A〜図7Cを参照しながら説明する。
【0066】
図7Aは、車両が停車して2速インターロック状態となり、この状態からD−Nセレクトが行われた場合の様子を示したタイムチャートである。
【0067】
時刻t11で車速VSPがゼロとなって車両が停車すると、時刻t12〜t13でHighクラッチ33が締結され、副変速機構30がインターロックされる。
【0068】
時刻t14〜t15では、Lowブレーキ32が解放されて、トルクの伝達を受け持つ副変速機構30の変速段が1速から2速に移行し、変速機4の出力軸トルクが1速トルクから2速トルクに下げられる。その後、Lowブレーキ32が再締結され、副変速機構30は再びインターロックされるが、変速機4の出力軸トルクは2速トルクを維持する。これにより、副変速機構30の2速インターロック状態が実現される。
【0069】
時刻t16では、D−Nセレクトが行われ、Lowブレーキ32とHighクラッチ33への供給油圧がドレンされ、両要素とも解放されて変速機4の出力軸トルクはゼロとなる。しかしながら、出力軸トルクがあらかじめ2速トルクまで下げられていることにより、出力軸トルクの段差は1速トルクからゼロになる場合に比べて縮小され、ショックは緩和される(請求項1、2、5、8に対応する効果)。
【0070】
図7Bは、車両が停車して2速インターロック状態となり、この状態からNアイドル制御が開始される場合の様子を示したタイムチャートである。
【0071】
時刻t21〜t25は図7Aにおける時刻t11〜t15と同じく、副変速機構30の2速インターロック状態が実現される。
【0072】
時刻t26では、Nアイドル条件が成立してNアイドル制御に移行し、Highクラッチ33の供給油圧がドレンされるとともに、Lowブレーキ32への供給油圧がLowブレーキ32が締結ぎりぎりの状態になるまで下げられる。Nアイドル制御に移行すると、変速機4の出力軸トルクが減少するが、出力軸トルクがあらかじめ2速トルクまで下げられていることにより、出力軸トルクの段差は1速トルクからゼロになる場合に比べて縮小され、これによってショックが緩和される(請求項1、2、6、8に対応する効果)。
【0073】
上記の通り、D−Nセレクト時及びNアイドル制御開始時に出力軸トルクの段差に起因するショックが発生するが、第1実施態様によれば、いずれのショックも緩和することができる。特に、Nアイドル制御開始時のショックは運転者が予期できないので、これを緩和することによる効果、すなわち、運転者に与える違和感、不快感の低減が顕著である。Nアイドル制御開始時のショックを運転者が予期できないのは、D−Nセレクト時のショックは運転者の操作を受けて発生するのに対し、Nアイドル制御開始時のショックは運転者の意図とは無関係にNアイドル条件が成立すると自動的に発生するからである。
【0074】
図7Cは、車両が停車して2速インターロック状態となり、この状態から車両が再発進する場合の様子を示したタイムチャートである。
【0075】
時刻t31〜t35は図7Aにおける時刻t11〜t15と同じく、副変速機構30の2速インターロック状態が実現される。
【0076】
時刻t36では、発進要求を受けて、Highクラッチ33への供給油圧がドレンされてHighクラッチが解放され、2速インターロック状態が解除される。変速機4の出力軸に伝達されるトルクが2速トルクから1速トルクまで直ちに増大するので、停車中出力軸トルクが2速トルクまで下げられているにもかかわらず、発進駆動力が不足することはなく、また、Lowブレーキ32は既に締結されているのでLowブレーキ32の締結遅れが問題になることはない(請求項1、2、4、8に対応する効果)。
【0077】
このように、上記制御によれば、D−Nセレクト時、Nアイドル制御移行時のショックを緩和し、また、発進要求があったときの駆動力不足を防止することができる。
【0078】
続いて第2実施形態について説明する。
【0079】
第1実施形態では、変速マップ(図4)は、車両が停車する際、副変速機構30の変速段が1速になるようにモード切換変速線が設定されている。
【0080】
しかしながら、第2実施形態では、このモード切換変速線を低速モードから高速モードへの切換え、すなわち、副変速機構30の1−2変速にのみ用いる。そして、高速モードから低速モードへの切換えには別のモード切換変速線(図示せず)を設定することにより、あるいは、副変速機構30を一旦1−2変速させた後は停車するまで副変速機構30の変速段を2速に維持することにより、停車時の副変速機構30の変速段が2速になるようにする。
【0081】
停車時の副変速機構30の変速段が第1実施形態と異なり2速となるため、この第2実施形態では、図5に示した制御に代えて図8に示す制御を行い、副変速機構30の2速インターロック状態を実現する。
【0082】
図8に示される制御について説明すると、S41では、変速機コントローラ12は、Dレンジで停車したか判定する。Dレンジで停車したと判定されたら処理がS42に進み、そうでない場合は処理を終了する。
【0083】
S42では、変速機コントローラ12は、Lowブレーキ32への供給油圧を高めてLowブレーキ32を締結し、副変速機構30をインターロックさせる。副変速機構30が2速でトルクを伝達する状態はLowブレーキ32を締結しても維持されるので、これにより、副変速機構30の2速インターロック状態が実現される。
【0084】
S43では、変速機コントローラ12は、副変速機構30が2速インターロック状態にあることを示す1をフラグF2ILにセットする。
【0085】
したがって、この制御によれば、副変速機構30の変速段が2速の状態で停車した場合であっても、第1実施形態と同様に副変速機構30の2速インターロック状態を実現することができる(S41〜S43、請求項3に対応する効果)。
【0086】
なお、2速インターロック状態で停車中に発進要求、D−Nセレクト、Nアイドル条件成立があった場合の制御は第1実施形態と同じく図6に示した制御により行われ、これにより、第1実施形態と同じ作用効果(D−Nセレクト時及びNアイドル制御移行時のショック緩和、再発進時の駆動力確保)が奏される。
【0087】
続いて第3実施形態について説明する。
【0088】
第1実施形態によれば、Dレンジのまま車両が停車した場合に副変速機構30を2速インターロック状態にすることで、D−Nセレクト時及びNアイドル制御開始時のトルク段差を小さくし、トルク段差に起因するショックを緩和することができる。
【0089】
しかしながら、上記の通り、Nアイドル制御開始時のショックはNアイドル条件の成立を受けて発生、すなわち、運転者の意図と関係なく発生するので、運転者に与える違和感、不快感が大きく、D−Nセレクト時のショックよりも抑える必要性が高い。
【0090】
そこで、第3実施形態では、Nアイドル制御開始時のショックをさらに抑えるために、Nアイドル制御開始時のLowブレーキ32及びHighクラッチ33への供給油圧の減少速度をD−Nセレクト時の供給油圧の減少速度よりも遅くし、すなわち、より時間をかけて減少させ、供給油圧を緩やかに減少させる。
【0091】
これを実現するための変速機コントローラ12の制御内容は図6に示した第1実施形態のものとほぼ同じであり、Nアイドル条件が成立して進むS29での処理のみが相違する。
【0092】
具体的には、S29では、変速機コントローラ12は、第1実施形態と同じくHighクラッチ33への供給油圧をドレンし、Lowブレーキ32への供給油圧を減少させてNアイドル制御に移行するが、第3実施形態ではこのときの供給油圧の減少をD−Nセレクト時よりも緩やかにする。すなわち、Lowブレーキ32及びHighクラッチ33への供給油圧を減少させる時の減少速度を、D−Nセレクト時にこれらを減少させる時(S26)の減少速度よりも遅くなるように設定する。
【0093】
これにより、2速インターロック状態で停車することによってトルク段差が小さくなることに加え、Nアイドル制御開始時の出力軸トルクを緩やかに減少させることができ、Nアイドル制御開始時に発生するショックをより一層抑えることができる。
【0094】
図9は、(a)停車時にD−Nセレクトが行われた場合の様子と、(b)停車時にNアイドル制御が開始される場合の様子とを対比して示すタイムチャートである。時刻t41以前の2速インターロック状態を実現する部分は第1実施形態と同じである。
【0095】
(a)では時刻t41にD−Nセレクトが行われ、(b)では同時刻にNアイドル条件が成立してNアイドル制御が開始される。いずれの場合も出力軸トルクがあらかじめ2速トルクまで下げられているので、1速トルクからゼロになる場合に比べて出力軸トルクの段差が縮小され、ショックが緩和される。
【0096】
加えて、第3実施形態では、Nアイドル制御開始時のLowブレーキ32及びHighクラッチ33への供給油圧の減少をD−Nセレクト時よりも緩やかにしたので、運転者が予期できないNアイドル制御開始時のショックがさらに抑えられて運転者が感じにくくなり、運転者に与える違和感、不快感をより一層抑えることができる(S29、請求項7に対応する効果)。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0098】
例えば、上記実施形態では、バリエータ20としてベルト式無段変速機構を備えているが、バリエータ20は、Vベルト23の代わりにチェーンがプーリ21、22の間に掛け回される無段変速機構であってもよい。あるいは、バリエータ20は、入力ディスクと出力ディスクの間に傾転可能なパワーローラを配置するトロイダル式無段変速機構であってもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、副変速機構30は前進用の変速段として1速と2速の2段を有する変速機構としたが、副変速機構30を前進用の変速段として3段以上の変速段を有する変速機構としても構わない。
【0100】
また、副変速機構30をラビニョウ型遊星歯車機構を用いて構成したが、このような構成に限定されない。例えば、副変速機構30は、通常の遊星歯車機構と摩擦締結要素を組み合わせて構成してもよいし、あるいは、ギヤ比の異なる複数の歯車列で構成される複数の動力伝達経路と、これら動力伝達経路を切り換える摩擦締結要素とによって構成してもよい。
【0101】
また、プーリ21、22の可動円錐板を軸方向に変位させるアクチュエータとして油圧シリンダ23a、23bを備えているが、アクチュエータは油圧で駆動されるものに限らず電気的に駆動されるものあってもよい。
【0102】
また、変速機4が、停車時の副変速機構30の変速段が1速、2速のいずれをもとりうる場合は、停車時に副変速機構30の変速段を判定し、停車時の変速段に応じて図5あるいは図8に示す制御を実行するようにすればよい。
【符号の説明】
【0103】
4…無段変速機
11…油圧制御回路
12…変速機コントローラ
20…バリエータ(無段変速機構)
21…プライマリプーリ
22…セカンダリプーリ
23…Vベルト
30…副変速機構
32・・・Lowブレーキ(第1変速段の摩擦締結要素)
33・・・Highクラッチ(第2変速段の摩擦締結要素)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される無段変速機であって、
変速比を無段階に変化させることができる無段変速機構(以下、「バリエータ」という。)と、
前記バリエータに対して直列に設けられ、前進用変速段として第1変速段と該第1変速段よりも変速比の小さな第2変速段とを有する副変速機構と、
前記バリエータと前記副変速機構の全体の変速比の目標値を前記車両の運転状態に基づき設定し、当該目標値が実現されるように前記バリエータ及び前記副変速機構の少なくとも一方を制御する変速制御手段と、
セレクトレバー位置が走行レンジのまま前記車両が停車したときに、前記副変速機構を、前記第2変速段でトルクが伝達され、かつ、前記第1変速段の摩擦締結要素及び前記第2変速段の摩擦締結要素の両方が締結された状態(以下、「2速インターロック状態」という。)とする2速インターロック手段と、
前記車両が停車している間に所定の条件が成立した場合に前記無段変速機の出力軸トルクを低減する伝達トルク低減手段と、
を備えたことを特徴とする無段変速機。
【請求項2】
請求項1に記載の無段変速機であって、
前記2速インターロック手段は、前記車両が停車したときの前記副変速機構の変速段が前記第1変速段のときは、前記第2変速段の摩擦締結要素を締結して前記副変速機構をインターロックさせ、この状態で前記第1変速段の摩擦締結要素を解放し、その後前記第1変速段の摩擦締結要素を再締結することで前記副変速機構を前記2速インターロック状態とする、
ことを特徴とする無段変速機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の無段変速機であって、
前記2速インターロック手段は、前記車両が停車したときの前記副変速機構の変速段が前記第2変速段のときは、前記第1変速段の摩擦締結要素を締結して前記副変速機構をインターロックさせることで前記副変速機構を前記2速インターロック状態とする、
ことを特徴とする無段変速機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の無段変速機であって、
運転者の発進要求を検出する発進要求検出手段と、
前記副変速機構が前記2速インターロック状態のときに前記発進要求検出手段により発進要求が検出された場合は、前記第2変速段の摩擦締結要素を解放する発進制御手段と、
を備えたことを特徴とする無段変速機。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の無段変速機であって、
前記伝達トルク低減手段は、前記無段変速機のセレクトレバーが非走行レンジに操作された場合に前記第1変速段の摩擦締結要素と前記第2変速段の摩擦締結要素をともに解放する、
ことを特徴とする無段変速機。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一つに記載の無段変速機であって、
前記伝達トルク低減手段は、前記第2変速段の摩擦締結要素を解放するとともに、前記第1変速段の摩擦締結要素への供給油圧を少なくとも前記無段変速機の出力軸トルクが低下するまで低下させるニュートラルアイドル制御を行う、
ことを特徴とする無段変速機。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一つに記載の無段変速機であって、
前記伝達トルク低減手段は、
前記無段変速機のセレクトレバーが非走行レンジに操作された場合に前記第1変速段の摩擦締結要素と前記第2変速段の摩擦締結要素をともに解放する第1伝達トルク低減手段と、
前記第2変速段の摩擦締結要素を解放するとともに、前記第1変速段の摩擦締結要素への供給油圧を少なくとも前記無段変速機の出力軸トルクが低下するまで低下させるニュートラルアイドル制御を行う第2伝達トルク低減手段と、
を備え、
前記第2伝達トルク低減手段により前記出力軸トルクを低減する場合の前記第1変速段の摩擦締結要素及び前記第2変速段の摩擦締結要素への供給油圧の減少速度を前記第1伝達トルク低減手段により前記出力軸トルクを低減する場合の前記第1変速段の摩擦締結要素及び前記第2変速段の摩擦締結要素への供給油圧の減少速度よりも遅くなるよう設定した、
ことを特徴とする無段変速機。
【請求項8】
車両に搭載され、変速比を無段階に変化させることができる無段変速機構(以下、「バリエータ」という。)と、前記バリエータに対して直列に設けられ、前進用変速段として第1変速段と該第1変速段よりも変速比の小さな第2変速段とを有する副変速機構と、を備えた無段変速機の制御方法であって、
前記バリエータと前記副変速機構の全体の変速比の目標値を前記車両の運転状態に基づき設定し、当該目標値が実現されるように前記バリエータ及び前記副変速機構の少なくとも一方を制御する変速制御工程と、
セレクトレバー位置が走行レンジのまま前記車両が停車したときに、前記副変速機構を、前記第2変速段でトルクが伝達され、かつ、前記第1変速段の摩擦締結要素及び前記第2変速段の摩擦締結要素の両方が締結された状態とする2速インターロック工程と、
前記車両が停車している間に所定の条件が成立した場合に前記無段変速機の出力軸トルクを低減する伝達トルク低減工程と、
を含むことを特徴とする無段変速機の制御方法。
【請求項1】
車両に搭載される無段変速機であって、
変速比を無段階に変化させることができる無段変速機構(以下、「バリエータ」という。)と、
前記バリエータに対して直列に設けられ、前進用変速段として第1変速段と該第1変速段よりも変速比の小さな第2変速段とを有する副変速機構と、
前記バリエータと前記副変速機構の全体の変速比の目標値を前記車両の運転状態に基づき設定し、当該目標値が実現されるように前記バリエータ及び前記副変速機構の少なくとも一方を制御する変速制御手段と、
セレクトレバー位置が走行レンジのまま前記車両が停車したときに、前記副変速機構を、前記第2変速段でトルクが伝達され、かつ、前記第1変速段の摩擦締結要素及び前記第2変速段の摩擦締結要素の両方が締結された状態(以下、「2速インターロック状態」という。)とする2速インターロック手段と、
前記車両が停車している間に所定の条件が成立した場合に前記無段変速機の出力軸トルクを低減する伝達トルク低減手段と、
を備えたことを特徴とする無段変速機。
【請求項2】
請求項1に記載の無段変速機であって、
前記2速インターロック手段は、前記車両が停車したときの前記副変速機構の変速段が前記第1変速段のときは、前記第2変速段の摩擦締結要素を締結して前記副変速機構をインターロックさせ、この状態で前記第1変速段の摩擦締結要素を解放し、その後前記第1変速段の摩擦締結要素を再締結することで前記副変速機構を前記2速インターロック状態とする、
ことを特徴とする無段変速機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の無段変速機であって、
前記2速インターロック手段は、前記車両が停車したときの前記副変速機構の変速段が前記第2変速段のときは、前記第1変速段の摩擦締結要素を締結して前記副変速機構をインターロックさせることで前記副変速機構を前記2速インターロック状態とする、
ことを特徴とする無段変速機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の無段変速機であって、
運転者の発進要求を検出する発進要求検出手段と、
前記副変速機構が前記2速インターロック状態のときに前記発進要求検出手段により発進要求が検出された場合は、前記第2変速段の摩擦締結要素を解放する発進制御手段と、
を備えたことを特徴とする無段変速機。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の無段変速機であって、
前記伝達トルク低減手段は、前記無段変速機のセレクトレバーが非走行レンジに操作された場合に前記第1変速段の摩擦締結要素と前記第2変速段の摩擦締結要素をともに解放する、
ことを特徴とする無段変速機。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一つに記載の無段変速機であって、
前記伝達トルク低減手段は、前記第2変速段の摩擦締結要素を解放するとともに、前記第1変速段の摩擦締結要素への供給油圧を少なくとも前記無段変速機の出力軸トルクが低下するまで低下させるニュートラルアイドル制御を行う、
ことを特徴とする無段変速機。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一つに記載の無段変速機であって、
前記伝達トルク低減手段は、
前記無段変速機のセレクトレバーが非走行レンジに操作された場合に前記第1変速段の摩擦締結要素と前記第2変速段の摩擦締結要素をともに解放する第1伝達トルク低減手段と、
前記第2変速段の摩擦締結要素を解放するとともに、前記第1変速段の摩擦締結要素への供給油圧を少なくとも前記無段変速機の出力軸トルクが低下するまで低下させるニュートラルアイドル制御を行う第2伝達トルク低減手段と、
を備え、
前記第2伝達トルク低減手段により前記出力軸トルクを低減する場合の前記第1変速段の摩擦締結要素及び前記第2変速段の摩擦締結要素への供給油圧の減少速度を前記第1伝達トルク低減手段により前記出力軸トルクを低減する場合の前記第1変速段の摩擦締結要素及び前記第2変速段の摩擦締結要素への供給油圧の減少速度よりも遅くなるよう設定した、
ことを特徴とする無段変速機。
【請求項8】
車両に搭載され、変速比を無段階に変化させることができる無段変速機構(以下、「バリエータ」という。)と、前記バリエータに対して直列に設けられ、前進用変速段として第1変速段と該第1変速段よりも変速比の小さな第2変速段とを有する副変速機構と、を備えた無段変速機の制御方法であって、
前記バリエータと前記副変速機構の全体の変速比の目標値を前記車両の運転状態に基づき設定し、当該目標値が実現されるように前記バリエータ及び前記副変速機構の少なくとも一方を制御する変速制御工程と、
セレクトレバー位置が走行レンジのまま前記車両が停車したときに、前記副変速機構を、前記第2変速段でトルクが伝達され、かつ、前記第1変速段の摩擦締結要素及び前記第2変速段の摩擦締結要素の両方が締結された状態とする2速インターロック工程と、
前記車両が停車している間に所定の条件が成立した場合に前記無段変速機の出力軸トルクを低減する伝達トルク低減工程と、
を含むことを特徴とする無段変速機の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−38633(P2011−38633A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96773(P2010−96773)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]