説明

無線センサノード及び架空電線監視システム

【課題】 無線通信部を駆動するための一次電池又は二次電池が不要である無線センサノードを提供するものである。
【解決手段】 無線センサノード100は、電源供給部30が、電源用コイル31と、電源用コイル31の巻線31bの一端に、一端が接続される共振用コンデンサ32と、共振用コンデンサ32の他端及び電源用コイル31の巻線31bの他端に、一次側が接続される整流回路33と、整流回路33の二次側及び無線通信部20の電源入力端子27間に接続される電源回路34と、を備え、計測部10が、計測用コイル11と、計測用コイル11の巻線11bの両端に、一次側が接続される整流回路12と、整流回路12の二次側及び無線通信部20のA/D変換入力端子26間に接続される分圧器13と、を備え、電源用コイル31及び計測用コイル11を一体として架空電線500をクランプし、電源用コイル31及び計測用コイル11が架空電線500に軸通される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、架空電線の交流電流を計測し、当該交流電流に基づく計測データを、隣接する他の無線センサノードに送信する無線センサノードに関し、複数の無線センサノードを架空電線にそれぞれ配設して、多数の地点における架空電線の交流電流を実時間で計測し、無線センサネットワークを用いて少数の拠点に計測データを収集することにより、広い範囲における架空電線の状態を実時間で監視することができる架空電線監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線ネットワーク技術は、著しく進歩し、企業や個人を問わず、様々な方面で活用されている。また、無線ネットワーク技術が進歩するにつれ、「ユビキタス・ネットワーク」という言葉が盛んに叫ばれるようになり、「いつでも・どこでも・つながる」を実現するための技術開発が日々行われている。
【0003】
ZigBee(登録商標)は、そのような中で注目を浴びている無線センサネットワーク技術の1つである。なお、ZigBee(登録商標)とは、短距離無線規格のIEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)802.15.4に基づいて策定された無線センサネットワークプロトコルであり、ZigBee Allianceにより、2005年に策定されている。
【0004】
ZigBee(登録商標)に対応する端末(以下、ZigBee端末と称す)は、小電力無線送受信機とマイクロプロセッサを組み合わせたデバイスである。それぞれのZigBee端末が中継ポイントとして利用できるマルチホップ・ネットワークや、複数のZigBee端末により網の目のようなネットワークを構築できるメッシュ・ネットワークに対応することができる。
【0005】
メッシュ・ネットワークにおいて、1つのZigBee端末は、そのZigBee端末から電波が届く範囲にある全てのZigBee端末と通信する可能性を有し、電波が届く範囲になるZigBee端末を「隣接端末」という。
【0006】
メッシュ・ネットワークにおいて、任意のZigBee端末間で通信の要求がある場合には、AODV(Ad hoc On-Demand Distance Vector:アドホックオンデマンド距離ベクトル)ルーティングアルゴリズムを使用して、ZigBee端末間で自動的に情報交換が行われる。そして、ルーティングテーブル(経路制御表)が自動的に作成され、そのZigBee端末間で通信が行えるようになる。
【0007】
このことにより、通信経路の途中のZigBee端末で障害が発生した場合であっても、迂回経路が自動的に作成され、ZigBee端末間で通信が行えるために、障害に強く、管理が容易なネットワークを構成できる。
【0008】
また、ZigBee端末は、1つのネットワークに接続できる端末数が、約65000個であり、Bluetooth(登録商標)やUWB(Ultra Wide Band:超広帯域無線)等の他の無線ネットワーク技術に比べて遥かに多い。
【0009】
また、ZigBee端末は、間欠的に送受信を行い、送受信以外の時間をスリーブする機能を有している。これにより、乾電池程度の電力で100日〜数年間稼動し、電源も含めて、完全に無線でセンサネットワークを構築できる可能性がある。
これらの特徴から、ZigBee(登録商標)は、広域な無線センサネットワークを構築するのに有効な規格といえる。
【0010】
ここで、AODVルーティングアルゴリズムの概要を、図25を用いて説明する。
まず、送信元のZigBee端末(以下、送信元端末と称す)から受信先のZigBee端末(以下、受信先端末と称す)にデータを送信するにあたり、送信元端末の経路制御表に受信先端末の情報が無い場合には、隣接端末を通じて、ネットワーク上の全てのZigBee端末に対して経路要求パケット(RREQ:Route REQuest)を放送する(図25(a))。
そして、RREQを受け取ったZigBee端末は、送信元端末への通信経路を記憶した後に、RREQを隣接端末に送信する(図25(b))。
【0011】
受信先端末にRREQが到達すると、その受信先端末は、経路応答パケット(RREP:Route Reply)を送信元端末に返信する。このとき、RREPは、受信先端末に到達したRREQが辿った通信経路を逆向きに辿っていく(図25(c))。
【0012】
なお、RREPが逆向きに辿るときや受信先端末にデータを送るときに使われる、隣接端末やホップ数等の情報は、経路制御表に記憶され、次回以降のデータ転送時に利用される。また、使われなくなった情報は、逐次、経路制御表から削除される。
【0013】
これに対し、従来の可搬型配電線事故検出装置は、計測部の検出値に基づいて配電線に事故が発生したか否かの判定を行う判定部と、この判定部により判定された判定結果に基づいて制御信号を送出する制御部と、この制御部から入力された制御信号に基づいて事故が発生したか否かの情報を配電線の状態を遠隔で監視する監視装置に送信する移動電話とを備えるようにしている。移動電話が制御部から入力された制御信号に基づいて事故が発生したか否かの情報を配電線の状態を遠隔で監視する監視装置に送信するようにすると、作業員は現地に出向くことなく、監視装置を確認するだけで事故の状況を把握できるため、事故区間の特定を簡単かつ短時間で行える(例えば、特許文献1参照)。
【0014】
また、従来の過電流監視方法は、通報装置の変流器は配電線の電流に応じた電圧を誘起する。この電圧は整流部で整流されてコンデンサを充電する。コンデンサの電圧で制御部と送出部を作動させる。制御部はコンデンサの電圧を昇圧して12分間隔で色センサの青色発光素子を短時間ずつ間欠的に発光させ、表示装置の表示の色が白色か橙色かを反射光で監視する。過電流が流れて表示の色が橙色に変わると、色センサが制御部に信号を出し、送出部が電波信号を出して通報する(例えば、特許文献2参照)。
【0015】
また、従来の情報収集システムは、地面との距離に応じた信号を出力する超音波センサと、当該超音波センサの出力情報及び自己の識別情報を送信する無線通信部とを有し、コン柱に付設されたセンサノードと、上記センサノードから送信される伝送情報を収集し、収集した情報を、当該センサノードとは通信プロトコルの異なる他の通信ネットワークに伝送するゲートウェイサーバとを備え、各センサノードが、自己の通信可能距離内に存在する他のコン柱に搭載されたセンサノードとの間で、無線アドホックネットワークを構成するようにした(例えば、特許文献3参照)。
【0016】
さらに、従来のhEPAS(Hierarchical Energy-E±cient Protocol for Aggregator Selection:多重階層型データ集約手法)は、ノードが一定の割合で各階層の集約ノードになり、その情報を周りに周知する手順をとる(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平11−281700号公報
【特許文献2】特開2002−365328号公報
【特許文献3】特開2006−323440号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Y. P. Chen, A. L. Liestman, and J. Liu, "Energy-E±cient Data Aggregation Hierarchy for Wireless Sensor Networks," Proc. Qshine 2005, August 2005.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、従来の可搬型配電線事故検出装置は、無線通信手段が既存の携帯電話、PHS等から構成される移動電話であり、監視装置の電話に通話するものであるために、電波状態が悪く、基地局との間で無線通信を行うことが困難な場所への設置が制限されるという課題がある。また、移動電話の電源は、変流器に接続される電源部により充電される二次電池(バッテリ)から供給され、バッテリの重量が重くなるために、配電線に吊り下げて使用することができず、バッテリの寿命が短いという課題がある。
【0020】
また、従来の過電流監視方法は、過電流通報装置の送出部は免許の不要な微弱電力無線の無線機を用いており、送出部の信号電波は、近くの電柱に配設された中継局を通じて遠隔地の基地局へ通報されるために、中継局に障害が発生した場合には、迂回経路がなく、基地局に通報することができないという課題がある。
【0021】
また、従来の情報収集システムは、電池と外部電源の接続切換えを行い、電池の電力もしくは外部電源の電力を制御部に供給する。この電池は、ボタン電池、蓄電池又は太陽電池を利用し、太陽電池を利用する場合は、外部電池を用いなくてもよく、夜間使用に備えて蓄電池が併用される。このため、蓄電池を使用した場合には、蓄電池の重量が重くなるために、配電線に吊り下げて使用することができない。また、ボタン電池又は蓄電池を使用した場合には、電池の寿命が短いという課題がある。
さらに、従来のhEPASは、各ノードが確率を計算する処理を必要とし、階層を構成する度にノード間の通信が多発するという課題がある。
【0022】
この発明は、前述のような課題を解決するためになされたもので、無線通信部を駆動するための一次電池又は二次電池が不要であり、中継装置に障害が発生した場合であっても、迂回経路により、計測データを確実に収集することができる無線センサノード及び架空電線監視システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この発明に係る無線センサノードにおいては、装着される架空電線の交流電流を計測する計測部、隣接する他の無線センサノードとの間で前記交流電流に基づく計測データを電波により送受信する無線通信部、及び当該無線通信部に電源を供給する電源供給部を備え、複数の他の無線センサノードとから無線センサネットワークを構成する無線センサノードであって、前記電源供給部が、カットコアに巻線を巻回した第1のコイルと、前記第1のコイルの巻線の一端に、一端が接続される共振用コンデンサと、前記共振用コンデンサの他端及び前記第1のコイルの巻線の他端に、一次側が接続される第1の整流回路と、前記第1の整流回路の二次側及び前記無線通信部の第1の入力端子間に接続される電源回路と、を備え、前記計測部が、カットコアに巻線を巻回した第2のコイルと、前記第2のコイルの巻線の両端に、一次側が接続される第2の整流回路と、前記第2の整流回路の二次側及び前記無線通信部の第2の入力端子間に接続される分圧器と、を備え、前記第1のコイル及び第2のコイルを一体として前記架空電線をクランプし、当該第1のコイル及び第2のコイルが当該架空電線に軸通されるものである。
【発明の効果】
【0024】
開示の無線センサノードにおいては、無線通信部を駆動するための一次電池又は二次電池が不要であり、電池交換の手間がなく、メンテナンスに労力を要しないと共に、計測部及び電源供給部のコイルを架空電線に容易に着脱できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施形態に係る架空電線監視システムの概略構成を説明するための説明図である。
【図2】図1に示す無線センサノードの概略構成を説明するための説明図である。
【図3】図2に示す計測部及び電源供給部の概略構成を示す回路図である。
【図4】(a)は図2に示す無線通信部の概略構成を示すブロック図あり、(b)は図1に示すデータ収集ノードの無線通信部の概略構成を示すブロック図である。
【図5】(a)は図2に示す無線センサノードの概略構成を示す正面図であり、(b)は図5(a)に示す無線センサノードの背面図であり、(c)は図5(a)に示す無線センサノードの右側面図であり、(d)は図5(c)に示す電源用コイル及び計測用コイルの開放状態を示す右側面図である。
【図6】(a)は図5(a)に示す無線センサノードにガイド部を配設した無線センサノードの概略構成を示す正面図であり、(b)は図6(a)に示す無線センサノードの背面図であり、(c)は図6(a)に示す無線センサノードの右側面図であり、(d)は図6(c)に示す電源用コイル及び計測用コイルの開放状態を示す右側面図である。
【図7】(a)は架空電線に無線センサノードを装着及び脱着するための固定治具の概略構成を示す斜視図であり、(b)は架空電線に無線センサノードを装着及び脱着するための開閉治具の概略構成を示す正面図である。
【図8】(a)は図2に示す無線センサノードの他の概略構成を示す正面図であり、(b)は図8(a)に示す無線センサノードの背面図であり、(c)は図8(a)に示す無線センサノードの右側面図であり、(d)は図8(c)に示す電源用コイル及び計測用コイルの開放状態を示す右側面図である。
【図9】架空電線に無線センサノードを装着及び脱着するための絶縁ヤットコの概略構成を示す正面図である。
【図10】(a)は図2に示す無線センサノードのさらに他の概略構成を示す正面図であり、(b)は図10(a)に示す無線センサノードの背面図であり、(c)は図10(a)に示す無線センサノードの右側面図であり、(d)は図10(c)に示す電源用コイル及び計測用コイルの開放状態を示す右側面図である。
【図11】実験端末に接続する電源供給部の電源用コイルを説明するための説明図である。
【図12】(a)は珪素鋼板コアのサイズを説明するための説明図であり、(b)は電源用コイルのコアに珪素鋼板コアを用いた場合の誘導起電力の波形を示す波形図である。
【図13】(a)はフェライトコアのサイズを説明するための説明図であり、(b)は電源用コイルのコアにフェライトコアを用いた場合の誘導起電力の波形を示す波形図である。
【図14】(a)は誘導電流による実験端末の駆動回路を示す回路図であり、(b)はコイルのインダクタンスLの測定回路を示す回路図であり、(c)は共振用コンデンサの静電容量を変化させたときの誘導起電力を示すグラフである。
【図15】(a)は誘導電流による電流計測に使用した回路を示す回路図であり、(b)は図15(a)に示す回路により得られる電流IrとD値との関係を示すグラフである。
【図16】(a)は実験端末を誘導電流で駆動しながら電流を計測する場合の回路を示す回路図であり、(b)は図16(a)に示す回路により得られる電流IrとD値との関係を示すグラフである。
【図17】(a)はA/D変換特性を計測する実験に使用した装置構成を説明するための説明図であり、(b)は図17(a)に示す実験端末におけるA/D変換特性を示すグラフである。
【図18】(a)は計測部と実験端末の回路構成を示す回路図であり、(b)は図18(a)に示す回路におけるI−D特性を示すグラフである。
【図19】(a)は図18(b)に示すI−D特性に対して多項式近似を行った結果を示すグラフであり、(b)は図18(a)に示す回路における電流測定の結果を示すグラフである。
【図20】(a)は図18(a)に示す回路における電流測定の誤差を示すグラフであり、(b)は44Aまでの電流測定の結果を示すグラフである。
【図21】(a)は各ノードの配置場所を説明するための説明図であり、(b)は第1ノードで受信した測定データを表示画面に表示した状態を説明するための説明図である。
【図22】(a)は測定データを1時間に亘って計測した場合の受信エラーの割合を示すグラフであり、(b)は1時間の連続運転を実験中の受信状況を表示画面に表示した状態を説明するための説明図である。
【図23】(a)は第2の実施形態に係る架空電線監視システムにおけるグループ構成手順及びデータ収集手順を説明するための説明図であり、(b)は図23(a)に示す説明図の続きを示す説明図である。
【図24】第2の実施形態に係る他の架空電線監視システムを説明するための説明図である。
【図25】メッシュ・ネットワークを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(本発明の第1の実施形態)
架空電線監視システムは、図1に示すように、複数の無線センサノード100の集合と、所定の無線センサノード100に対して計測データを要求して当該所定の無線センサノード100から送信される計測データを収集するデータ収集ノード200と、データ収集ノード200に接続してデータ収集ノード200により収集される計測データを処理するデータ処理装置300とを備える。また、データ収集ノード200及びデータ処理装置300は、データ収集システム400を構成する。
【0027】
なお、複数の無線センサノード100における一の無線センサノード100は、他の無線センサノード100のうち少なくも1つの無線センサノード100との間で電波の届く範囲に配設され、短距離無線通信規格ZigBee(登録商標)の通信方式を用いて、隣接する無線センサノード100との間で無線通信を行う。また、データ収集ノード200は、複数の無線センサノード100のうち少なくも1つの無線センサノード100との間で電波の届く範囲に配設され、短距離無線通信規格ZigBee(登録商標)の通信方式を用いて、隣接する無線センサノード100との間で無線通信を行う。
【0028】
なお、以下の説明においては、必要に応じて、自身の無線センサノード100を自ノードと称し、自ノード以外の他の無線センサノード100を他ノードと称し、自ノードに隣接する他ノードを隣接ノードと称する。また、他ノードのうち、自ノードに対してデータ収集ノード200(根ノード)側のノードを親ノードと称し、自ノードに対して末端(葉ノード)側のノードを子ノードと称する。
【0029】
無線センサノード100は、配電線や送電線等の架空電線500の交流電流に基づく誘導電流を駆動電力として用いるZigBee端末にセンサ機能を具備する端末である。特に、無線センサノード100は、図2に示すように、装着される架空電線500の交流電流及び/又は交流電圧を計測する計測部10、隣接する他の無線センサノード100との間で交流電流及び/又は交流電圧に基づく計測データを電波により送受信する無線通信部20、並びに無線通信部20に電源を供給する電源供給部30を備え、複数の他の無線センサノード100とから無線センサネットワーク(メッシュ・ネットワーク)を構成する。
【0030】
計測部10は、架空電線500の交流電流を計測する電流センサや架空電線500の交流電圧を計測する電圧センサが挙げられるが、本実施形態においては、電流センサを例に挙げて説明する。
【0031】
計測部10は、図2及び図3に示すように、架空電線500に軸通される計測用コイル11と、計測用コイル11の巻線11bの両端に、一次側が接続される整流回路12と、整流回路12の二次側及び無線通信部20のA/D(アナログ−デジタル)変換入力端子26間に接続される分圧器13と、を備えている。
【0032】
計測用コイル11は、カットコア11aに巻線11bを巻回した構成であり、カットコア11aを2つに分割し、カットコア11aの中心に位置するように架空電線500を挿入した後に、カットコア11aの各突合せ端面を突合せることで、架空電線500に装着する。
【0033】
整流回路12は、計測用コイル11で得られた交流電流を全波整流して直流電流に変換するものであり、本実施形態においては、計測用コイル11の巻線11bの両端に一次側が並列に接続されるダイオードブリッジである。
【0034】
なお、本実施形態に係る計測部10は、整流回路12の二次側に両端が並列に接続され、整流回路12から出力される直流電流を平滑化する平滑化コンデンサ14を備えている。
【0035】
分圧器13は、無線通信部20のA/D変換入力端子26に対する入力電圧の許容範囲に計測データ(電流計測値)を合わせる(収める)ために使用するものであり、平滑化コンデンサ14の両端に一次側が並列に接続され、無線通信部20のA/D変換入力端子26に二次側が並列に接続される。また、分圧器13は、平滑化コンデンサ14に貯まった電荷を放電するためにも用いられる。
【0036】
無線通信部20は、図4(a)に示すように、送受信部21、無線変調部22、制御部23、インタフェース部24及びメモリ部25を備え、短距離無線通信規格ZigBee(登録商標)の通信方式を用いて、隣接ノードとの間で無線通信を行う既存のZigBeeモジュールである。
【0037】
無線変調部22は、送受信部21で受信した電波の変調信号を復調し、デジタル信号に変換して、伝送情報を再生すると共に、再生した伝送情報を制御部23に出力する。また、無線変調部22は、制御部23で生成される送信信号を変調して、送受信部21から空間に放射する。
【0038】
制御部23は、マイクロコンピュータから構成され、無線変調部22の通信制御を行う通信制御部23aと、計測部10からの計測データをデータ処理するためのデータ処理部23bと、電源供給部30からの電力供給を制御する電力制御部23cとを備えている。
【0039】
通信制御部23aは、アクセス制御、チャネル割当、通信経路制御及び誤り制御等の各種データアクセス処理、アドホック通信処理並びにマルチホップ処理を行うネットワークプロトコルを備える。
【0040】
データ処理部23bは、インタフェース部24を介して計測部10の動作を制御し、計測部10の計測データを収集する。また、データ処理部23bは、収集した計測データを、適宜、データ処理した後に、パケットデータに変換する。パケットデータは、通信制御部23aにより通信制御されて無線変調部22に出力される。
【0041】
電力制御部23cは、計測部10からのデータ採取と無線通信の動作に着目した動的な電力制御を行う。電力制御部23cは、例えば、無線センサノード100の動作状態を定期的に把握し、各機能部位の電源のオン/オフ制御やプロセッサのクロック周波数の切換えを動的に行い、きめ細かく電力を制御することにより、消費電力を低減させる。
【0042】
インタフェース部24は、計測部10及びメモリ部25が接続され、計測部10から出力される計測データをデジタル信号に変換して、一時的にメモリ部25に格納する。このメモリ部25がバッファとして機能し、インタフェース部24は、メモリ部25に格納された計測データを所定のタイミングで制御部23に転送する。
【0043】
メモリ部25は、例えば、フラッシュメモリ等により構成され、計測部10からの計測データを、特定のメモリ領域に随時蓄積すると共に、制御部23の管理する外部メモリとして機能する。また、メモリ部25には、各種の初期データが格納され、例えば、自ノードの識別情報(ID)や、確立された通信経路に従って順次データリンクを行うための他ノードの識別情報(ID)や、通信経路に沿った各無線センサノード100の並び順(経路制御表)等が格納されている。なお、これらの情報は、架空電線監視システムを構成するための初期の接続段階において、他ノードとの交信により取得される。
【0044】
電源供給部30は、図2及び図3に示すように、架空電線500に軸通される電源用コイル31と、電源用コイル31の巻線31bの一端に、一端が直列に接続される共振用コンデンサ32と、共振用コンデンサ32の他端及び電源用コイル31の巻線31bの他端に、一次側が接続される整流回路33と、整流回路33の二次側及び無線通信部20の電源入力端子27間に接続される電源回路34と、を備えている。
【0045】
電源用コイル31は、カットコア31aに巻線31bを巻回した構成であり、カットコア31aを2つに分割し、カットコア31aの中心に位置するように架空電線500を挿入した後に、カットコア31aの各突合せ端面を突合せることで、架空電線500に装着する。
【0046】
共振用コンデンサ32は、電源用コイル31と組み合わされ、共振回路を構成することにより、架空電線500を流れる交流電流が少なくても、無線通信部20に電源を供給できるようにする。
【0047】
整流回路33は、電源用コイル31で得られた交流電流を全波整流して直流電流に変換するものであり、本実施形態においては、共振用コンデンサ32の他端及び電源用コイル31の巻線31bの他端に、一次側が並列に接続されるダイオードブリッジである。
【0048】
なお、本実施形態に係る電源供給部30は、整流回路33の二次側に、両端が並列に接続され、整流回路12から出力される直流電流を平滑化する平滑化コンデンサ35を備えている。
【0049】
電源回路34は、架空電線500を流れる交流電流の変化が大きい場合であっても、安定した直流電圧を無線通信部20に供給することができるものであり、本実施形態においては、平滑化コンデンサ35の両端に、一次側が並列に接続されるDC−DCコンバータである。
【0050】
なお、本実施形態に係る電源供給部30は、電源回路34の二次側及び無線通信部20の電源入力端子27に、両端が並列に接続され、電源回路34から出力される直流電流を平滑化する平滑化コンデンサ36を備えている。
【0051】
また、本実施形態に係る無線センサノード100は、図5に示すように、計測用コイル11及び電源用コイル31を一体として架空電線500をクランプするクランプ式の構造にすることにより、架空電線500を加工することなく、架空電線500を簡単に装着することができる。
【0052】
具体的には、無線センサノード100は、図2に示すように、計測用コイル11を除く計測部10(各回路素子を実装した基板)と、無線通信部20(Zigbeeモジュール)と、電源用コイル31を除く電源供給部30(各回路素子を実装した基板)と、を基板ボックス41内部に収納する。
【0053】
また、無線センサノード100は、図5に示すように、計測用コイル11のカットコア11a並びに電源用コイル31のカットコア31aの一方及び他方のそれぞれの表面に固着する2つの部材からなる挟持部42を、ヒンジ部43を支点として、基板ボックス41及び対向部44の接離により開閉する構造である。
【0054】
なお、基板ボックス41及び対向部44間には、基板ボックス41及び対向部44間を離間する方向に弾性力が作用するバネ等の弾性部材45が配設され、挟持部42の突合せ端面側には、架空電線500を装着又は脱着する以外は、挟持部42が開かないように咬持するラッチ部46が配設される。
【0055】
また、本実施形態に係る無線センサノード100は、図6に示すように、カットコア11a及びカットコア31aの中心に架空電線500を導くと共に、架空電線500の脱離を防止する略馬蹄(和鋏)形状のガイド部47と、カットコア11a及びカットコア31aの反対向面側のそれぞれに各ガイド部47を2点以上で支持する支持部材48と、を備えることで、架空電線500の装着をさらに容易にすることができる。
なお、無線センサノード100は、地上から高所にある架空電線500に吊り下げる作業や、吊り下げられた架空電線500から取り外す作業を伴うものである。
【0056】
このため、架空電線500に無線センサノード100を吊り下げる作業には、図7(a)に示す固定治具50における絶縁操作棒51の先端に配設したケース52内に、図8に示す無線センサノード100の基板ボックス41を嵌合して保持し、架空電線500近傍まで無線センサノード100を上昇させる。
【0057】
そして、無線センサノード100の対向部44の端部を略コの字形状に屈曲した係止部44aに、図7(b)に示す開閉治具60における絶縁操作棒61の先端に配設したフック部62を引っ掛けて、対向部44を下方に引き下げ、一対の挟持部42間を離間させる。
【0058】
そして、無線センサノード100を上昇させ、カットコア11a及びカットコア31aの中心に架空電線500を挿入して、無線センサノード100の係止部44aから開閉治具60のフック部62を外し、一対の挟持部42間を閉じる。そして、固定治具50を下降させることで、無線センサノード100を架空電線500に吊り下げることができる。
【0059】
また、吊り下げられた無線センサノード100を架空電線500から取り外す作業には、図7(a)に示す固定治具50を図8に示す無線センサノード100に近づけ、固定治具50のケース52内に、無線センサノード100の基板ボックス41を嵌合して支持する。
【0060】
そして、無線センサノード100の係止部44aに、図7(b)に示す開閉治具60のフック部62を引っ掛けて、対向部44を下方に引き下げ、一対の挟持部42間を離間させたまま、開閉治具60と共に固定治具50を下降させることで、無線センサノード100を架空電線500から取り外すことができる。
【0061】
なお、架空電線500に無線センサノード100を装着及び脱着するための開閉治具60及び固定治具50の替わりに、図9に示す既存の活線作業用の絶縁ヤットコ70を用いるのであれば、図10に示す無線センサノード100を用いることが考えられる。
【0062】
図10に示す無線センサノード100は、絶縁ヤットコ70の先端にある把持部71の一端71aを挟持する略コの字形状の挟持部49a、及び挟持部49aの両端から延在して絶縁ヤットコ70の把持部71を挟持部49aに導く略ハの字形状の導入部49bからなる板ばね49と、板ばね49の挟持部49aの一端及び他端側にある導入部49bを基板ボックス41の表面に2点以上でそれぞれ支持する支持部材49cと、を備える。
【0063】
なお、絶縁ヤットコ70の把持部71の一端71aは、無線センサノード100の基板ボックス41の表面に当接されて板ばね49の挟持部49aに挟持され、絶縁ヤットコ70の把持部71の他端71bは、無線センサノード100の対向部44に当接される。そして、絶縁ヤットコ70の絶縁操作棒72に対して操作レバー73を操作することで、一対の把持部71の開閉に追従して、無線センサノード100の一対の挟持部42間を開閉する。これにより、開閉治具60及び固定治具50を用いることなく、既存の絶縁ヤットコ70を用いて、作業者が架空電線500に近づくことなく、無線センサノード100を安全に装着及び脱着することができる。
なお、図8及び図10に示す無線センサノード100には、図6に示すガイド部47(支持部材48)を図示していないが、ガイド部47(支持部材48)を備えていてもよい。
【0064】
データ収集ノード200は、隣接する無線センサノード100との間で交流電流及び/又は交流電圧に基づく計測データを電波により送受信する無線通信部220を備えている。なお、本実施形態に係るデータ収集ノード200は、架空電線500に装着するものではなく、架空電線500の交流電流及び/又は交流電圧を計測する計測部を備えていないのであるが、必要に応じて、架空電線500に装着し、計測部を備えていてもよい。
【0065】
また、本実施形態に係るデータ収集ノード200は、無線通信部220の駆動電源として、一次電池、二次電池又は商用電源を用いており、架空電線500に装着して無線通信部20に電源を供給する電源供給部を備えていないのであるが、必要に応じて、架空電線500に装着し、電源供給部を備えていてもよい。
【0066】
無線通信部220は、図4(b)に示すように、送受信部221、無線変調部222、制御部223、インタフェース部224及びメモリ部225を備え、短距離無線通信規格ZigBee(登録商標)の通信方式を用いて、隣接ノードとの間で無線通信を行う既存のZigBeeモジュールである。
【0067】
無線変調部222は、送受信部221で受信した電波の変調信号を復調し、デジタル信号に変換して、伝送情報を再生すると共に、再生した伝送情報を制御部223に出力する。また、無線変調部222は、制御部223で生成される送信信号を変調して、送受信部221から空間に放射する。
【0068】
制御部223は、マイクロコンピュータから構成され、無線変調部222の通信制御を行う通信制御部223aと、計測データをデータ処理するためのデータ処理部223bと、電源入力端子227を介して図示しない電源からの電力供給を制御する電力制御部223cとを備えている。
【0069】
通信制御部223aは、アクセス制御、チャネル割当、通信経路制御及び誤り制御等の各種データアクセス処理、アドホック通信処理並びにマルチホップ処理を行うネットワークプロトコルを備える。
【0070】
データ処理部223bは、収集した計測データを、適宜、データ処理した後に、パケットデータに変換する。パケットデータは、通信制御部223aにより通信制御されて、出力端子228を介して、データ処理装置300に出力される。
【0071】
電力制御部223cは、無線通信の動作に着目した動的な電力制御を行う。電力制御部223cは、例えば、データ収集ノード200の動作状態を定期的に把握し、各機能部位の電源のオン/オフ制御やプロセッサのクロック周波数の切換えを動的に行い、きめ細かく電力を制御することにより、消費電力を低減させる。
【0072】
インタフェース部224は、メモリ部225が接続される。このメモリ部225がバッファとして機能し、インタフェース部224は、メモリ部225に格納されたデータを所定のタイミングで制御部223に転送する。
【0073】
なお、インタフェース部224は、必要に応じて、A/D変換入力端子226を介して計測部が接続され、計測部から出力される計測データをデジタル信号に変換して、一時的にメモリ部225に格納する構成であってもよい。この場合に、データ処理部223bは、インタフェース部224を介して計測部の動作を制御し、計測部の計測データを収集する。
【0074】
メモリ部225は、例えば、フラッシュメモリ等により構成され、制御部223の管理する外部メモリとして機能する。また、メモリ部225には、各種の初期データが格納され、例えば、自ノードの識別情報(ID)や、確立された通信経路に従って順次データリンクを行うための他ノードの識別情報(ID)や、通信経路に沿った各無線センサノード100の並び順(経路制御表)等が格納されている。なお、これらの情報は、架空電線監視システムを構成するための初期の接続段階において、他ノードとの交信により取得される。
【0075】
データ処理装置300は、データ収集ノード200の出力端子228に接続され、データ収集ノード200から入力される計測データに対して、統計処理や、ディスプレイへの表示処理や、紙媒体等への印刷処理等の加工処理を行うコンピュータである。また、データ処理装置300は、計測データを要求する所定の無線センサノード100を指定するためのキーボードやマウス等の入力装置を備えている。
【0076】
なお、データ処理装置300は、予め設定した閾値を保持しておき、閾値と各無線センサノード100における計測データとを比較して、閾値を越える計測データを計測した無線センサノード100を特定する。そして、データ処理装置300は、特定した無線センサノード100の情報を外部に報知(ディスプレイへの表示やスピーカーからの警報など)することで、特定した無線センサノード100を装着した架空電線500の異常を検知する構成にすることも考えられる。
【0077】
つぎに、本実施形態に係る架空電線監視システムの動作の一例(所定の無線センサノード100から測定データを取得する場合)について説明する。
まず、架空電線監視システムの利用者は、データ処理装置300の入力装置を用いて、所定の無線センサノード100を指定する。
【0078】
データ処理装置300は、データ収集ノード200に対して、指定された所定の無線センサノード100から計測データを収集するように指令を出力する。
データ収集ノード200は、データ処理装置300による指定に従い、所定の無線センサノード100に対して、当該無線センサノード100が装着された架空電線500における計測データを要求するコマンドを、無線変調部222により変調し、送受信部221から電波で送信する。
【0079】
各無線センサノード100は、隣接ノードとの間で無線通信を行い、データ収集ノード200からのコマンドは、無線センサネットワークを構成する複数の無線センサノード100間でバケツリレー式に伝送され、所定の無線センサノード100に到達する。
【0080】
所定の無線センサノード100は、データ収集ノード200からのコマンドを送受信部21により受信すると、無線変調部22で復調し、復調したコマンドをデータ処理部23bで解析する。
【0081】
制御部23は、自ノードの測定データが要求されていることを認識すると、現時点における架空電線500の交流電流を計測部10により計測し、インタフェース部24により計測データをデジタル信号に変換して、一時的にメモリ部25に格納する。
【0082】
そして、インタフェース部24は、メモリ部25に格納された計測データを所定のタイミングで制御部23に転送する。また、所定の無線センサノード100は、データ処理部23bにより測定データをパケット化し、無線変調部22により変調して、送受信部21からデータ収集ノード200に向けて返信する。なお、所定の無線センサノード100からデータ収集ノード200への測定データの送信は、無線センサネットワークを構成する複数の無線センサノード100間でバケツリレー式に伝送される。
【0083】
このバケツリレー式の伝送方式における、各無線センサノード100が任意のデータを任意の無線センサノード100に送るべきかの決定は、AODVルーティングアルゴリズムにより自動的に決定される。
【0084】
ここで、本実施形態に係る無線センサノード100における、誘導電流による無線通信部20の駆動実験、及び架空電線500を模擬した電線(以下、模擬電線501と称す)に流れる交流電流に対する計測部10による計測実験、並びに、本実施形態に係る架空電線監視システムにおける、無線センサネットワークによるデータ転送実験を説明する。
【0085】
なお、以下の実験においては、無線センサノード100の無線通信部20として、Helicomm社製のZigBee端末「IP-Link 1220-2133」(以下、実験端末20aと称す)を用いた。また、実験端末20aは、Helicomm社のZigBee開発キット「EZ-NET DevKit for 2.4GHz」に開発ツールと共に市販されている。
【0086】
実験端末20a「IP-Link 1220-2133」及びその姉妹品である「IP-Link 1220-2033」のハードウェア仕様(モジュール仕様)を次表1に示し、実験端末20a「IP-Link 1220-2133」及び姉妹品「IP-Link 1220-2033」のソフトウェア仕様(ファームウェア仕様)を次表2に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
表1に示すように、実験端末20aのマイクロプロセッサ(MCU:microprocessor unit)は、クロックが24.5MHzであり、フラッシュROM(Read Only Memory)が128KBであり、RAM(Random Access Memory)が8KBである。このため、ROM中にネットワークの制御プログラムが組み込まれていることを考慮すると、MCUのROM及びRAMにおいて、利用者が利用できる領域はあまり大きくないと考えられる。しかしながら、実験端末20aは、多数の入出力ポートを有しているために、テキサス・インスツルメンツ社製の超省消費電力MCU「MSP430」等を接続して、複雑なシステムを構成することにより、利用者が利用できる領域を大きくことも可能である。
【0090】
なお、実験端末20aは、入出力ポートとして、3個のアナログ入力と2個のアナログ出力と12個の汎用入出力ポートとを有し、1個のシリアルポート(RS-232C:Recommended Standard 232)を有しているため、これらを適宜組み合わせることにより、複雑なシステムに応用できる可能性がある。また、実験端末20aのシリアルポートは、このシリアルポートに直接接続された隣接ノードやネットワークを介して他ノードにコマンドを送信する場合に利用される。
【0091】
また、実験端末20aにおける電波(高周波(RF:Radio Frequency))の送受信部21は、現在の無線LAN(Local Area Network)や電子レンジ等でよく用いられている2.4GHz帯を使用する。なお、通信速度は250Kbpsであり、無線LANのIEEE802.11b規格の11Mbpsと比較すると低速であるが、送受信されるデータや用途を限定すれば、実験端末20aは様々な応用が考えられる。
【0092】
また、実験端末20aにおける送受信時の消費電流は85mAであるが、スリープ時の消費電流は90〜100μAであるため、待機電源モードを有効に活用することにより、実験端末20aの消費電力を抑えることが可能である。
【0093】
さらに、実験端末20aの大きさは、平面積が46mm×19mmであり、厚さが4mmである。また、実験端末20aの動作可能な温度は、−20℃から70℃までであり、注意すれば、屋外でも利用できる可能性がある。また、実験端末20aの利用可能な湿度は、10%から90%までであり、利用可能な範囲が広い。
【0094】
表2に示すように、シリアルポートの通信速度は38400bpsという高速であり、USB(Universal Serial Bus)ケーブルを利用してソフトウェアの書き込みや読み出しが短時間で行える。
【0095】
また、「Maximum Payload over Serial Port」とは、シリアルポートに直接接続された隣接ノードやネットワークを介して他ノードに情報を送信する場合に、1つのコマンドで送ることができる最大の情報量である。
【0096】
また、ネットワークに関する部分における最大のID数(≒1つの無線センサネットワークに接続できる最大のノード数)は、65535個であり、複数のチャンネルを用いてネットワークを結合することにより、より大きなネットワークを構成できる可能性がある。
【0097】
さらに、「Mac Layer Blacklist(接続拒否リスト)」とは、ネットワークトポロジ(ネットワーク接続形態)を定める際に、実験端末20aに接続しないノードを登録するものである。これにより、ネットワーク構成時の負担を小さくし、実験端末20aの消費電力を抑えることができる。
【0098】
「Neighbor Table(隣接端末表)」とは、実験端末20aに直接接続された隣接ノードの情報を記述した表である。また、「Routing Table(経路制御表)」とは、ネットワークに属する任意のノードにデータを送信する場合に、どの隣接ノードを経由させればよいかの情報を記述した表である。
【0099】
また、「RREQ Table(経路要求表)」とは、Routing Table(経路制御表)を作成するときに使用する表であり、無線センサネットワークを構成する場合に、ノードID及びネットワーク層ID以外は、全てのノードに全て同じ設定を行う。
【0100】
実験端末20aで実行するコマンドには、入出力ポートからの入出力に関するものや、識別情報(ID)などに関するものや、ネットワークトポロジの設定に関するものや、電力制御に関するものなどがある。また、コマンドには、ノード間のRSSI(Received Signal Strength Indicator:受信信号強度)を取得するものがあり、このコマンドを使うことにより、電波の状態を確認することやノード間の距離を推定することができる。
【0101】
さらに、実験端末20aは、モデムのコマンド体系であるAT(ATtention)コマンドも利用できる。ATコマンドのSレジスタの値を読み書きすることにより、実験端末20aの現在の状態を把握することや実験端末20aの状態を変更することができる。また、実験端末20aは、透過モードを設定することにより、ネットワークを介して、2つの端末のシリアルポート間でデータの交換を直接行うことができる。
【0102】
また、ZigBee開発キット「EZ-NET DevKit for 2.4GHz」には、ボリューム、LED(Light Emitting Diode)又はスイッチなどの入出力装置、USB接続インタフェース、並びに電源回路を実装したインタフェースボードが付属しており、実験端末20aを簡単に利用できる。
【0103】
また、ZigBee開発キット「EZ-NET DevKit for 2.4GHz」に付属する開発ツール「Helicomm EZ-NET 1220 Development Tool」により、コマンドの代わりにGUI(Graphical User Interface)を用いて、実験端末20aの設定を容易に行うことができる。
【0104】
つぎに、実験端末20aの駆動実験及び実験結果を説明する。
まず、誘導起電力を得るための電源供給部30の電源用コイル31を選定した。
電源用コイル31としては、図11に示すように、トロイダルコア31aに巻線31bを巻回したコイルを用い、トロイダルコア31aの中心を通るように模擬電線501を配置する。なお、トロイダルコア31aとしてカットコアを用いることで、模擬電線501に対して比較的容易に装着することができる。
この場合に得られる電圧V[V]は、次式(1)で得られる。
【0105】
なお、次式(1)において、φは電源用コイル31の断面に発生する磁束であり、tは時間[sec]であり、Icは模擬電線501に流れる電流[A]であり、Nは電源用コイル31の巻線31bの巻数[回]である。また、μはコア31aの透磁率[H/m]であり、rは模擬電線501から電源用コイル31の中心までの半径[m]であり、Sは電源用コイル31の断面積[m2]である。なお、同じ電流Icで、より高い電圧Vを得るためには、巻数N、断面積S若しくは透磁率μを大きくし、又は半径rを小さくすればよい。
【0106】
【数1】

【0107】
トロイダルコア31aの材料は、珪素鋼板又はフェライトをそれぞれ用いて、直径0.23mmのエナメル線を各コアに100回巻いて電源用コイル31とし、トロイダルコア31aに軸通する模擬電線501に商用電源周波数60Hzで2Aの交流電流を流した。
【0108】
珪素鋼板製のトロイダルコア31aは、図12(a)に示すように、日本カットコアトランス株式会社製の標準カットコア「CS-6.3」(極薄珪素鋼板帯 GT-100 0.1t)を用いた。また、珪素鋼板製のトロイダルコア31aは、図12(b)に示すように、得られた誘導起電力の波形のピークは、+/−300mVくらいである。
【0109】
これに対し、フィライト製のトロイダルコア31aは、図13(a)に示すように、電源ノイズフィルタ用フェライトコアであり、TDK株式会社製のクランプフィルタ「ZCAT3035-1330」を用いた。また、フィライト製のトロイダルコア31aは、図13(b)に示すように、得られた誘導起電力の波形は乱れているが、約+/−1.5Vのピークが得られ、珪素鋼板製のトロイダルコア31aよりも高い電圧が得られることがわかる。
【0110】
したがって、実験端末20aの電源用コイル31は、トロイダルコア31aとして、比透磁率が比較的高く入手が容易である、電源ノイズフィルタ用フェライトコア(TDK株式会社製のクランプフィルタ「ZCAT3035-1330」)を使用し、フェライトコア31aに巻線31bを100回巻いたコイル(以下、FTと称す)を用いた。
【0111】
つぎに、電源供給部30の電源用コイル31以外の回路素子を選定した。
実験端末20aは、周辺回路を含めると約5V(ZigBeeモジュール自体は3.3V)の駆動電圧が必要となり、約80mAの電流を消費する。
【0112】
すなわち、所望の電圧及び電流を得るために、模擬電線501に流す交流電流を大きくすると共に、複数個のFTを直列に接続し、この複数個のFTに共振用コンデンサ32を接続した。また、実験端末20aを駆動するには直流電源が必要であり、過大な電圧を印加すると実験端末20aが破壊する恐れがあるため、図14(a)に示すように、ダイオードブリッジ33aにより誘導電流を全波整流し、平滑化コンデンサ35による平滑化し、DC−DCコンバータ34aにより一定電圧として、実験端末20aに供給する。
【0113】
図14(a)において、Lは複数個のFTを直列に接続した電源用コイル31のインダクタンスであり、RLは電源用コイル31の内部抵抗である。また、DC/DCはDC−DCコンバータ34aを示し、出力が5Vであるローム株式会社製のDC/DCコンバータ「BP5029」を用いた。
【0114】
また、図14(a)において、C2は共振用コンデンサ32の静電容量であり、電源用コイル31と共振する値に設定した。なお、共振用コンデンサ32の静電容量C2を計算するために、電源用コイル31(複数個のFTを直列接続したコイル)のインダクタンスLを測定した。これは、図14(b)に示す回路において、電流測定用抵抗Rの抵抗値及びコイルの内部抵抗RLの抵抗値と、電流測定用抵抗R間の実効電圧VRの電圧値及びコイルの端子間の実効電圧VFの電圧値とをそれぞれ測定し、次式(2)から次式(6)までを計算することにより、コイルのインダクタンス成分Lを求めることができる。また、コイルのインダクタンス成分Lが求まれば、次式(6)により、共振用コンデンサ32の静電容量C2が求まる。
【0115】
なお、次式(2)〜(6)において、Iは実効電流であり、Rは電流測定用抵抗である。また、VRは電流測定用抵抗間の実効電圧であり、RLはコイルの内部抵抗である。また、VRLはコイルの内部抵抗間の実効電圧であり、Lはコイルのインダクタンスである。また、VLはコイルのインダクタンス間の実効電圧であり、VFはコイルの端子間の実効電圧である。
【0116】
【数2】

【0117】
【数3】

式(2)及び式(3)より、次式(4)が得られる。
【0118】
【数4】

【0119】
【数5】

【0120】
【数6】

【0121】
【数7】

具体的には、FTの個数を10個、15個又は20個として直列に接続した場合について、前述した方法により、インダクタンスLを計測し、共振用コンデンサ32の静電容量C2を求めたところ、次表3のようになった。
【0122】
【表3】

【0123】
また、共振用コンデンサ32の有効性を確かめるために、6個のFTを直列に接続して共振用コンデンサ32の静電容量C2を変化させ、得られた電圧のグラフを図14(c)に示す。図14(c)に示すように、20μFより小さい静電容量C2の場合には、共振の効果が現われており、共振用コンデンサ32のリアクタンスの割合が大きく、共振用コンデンサ32の影響が大きいことがわかる。また、20μF付近の静電容量C2の場合には、共振の効果が現われ、架空電線500からエネルギーを多く吸収するために、電圧が高くなることがわかる。また、20μFを超えた静電容量C2の場合には、共振の効果が小さくなり、共振用コンデンサ32を使用しない場合の電圧に近くなっていくことがわかる。
【0124】
つぎに、実験端末20aの駆動に必要な模擬電線501に流れる電流を考察した。
実験端末20aを動作させるために必要となった模擬電線501に流れる電流とFTの個数との関係を次表4に示す。なお、共振用コンデンサ32の静電容量C2は、FTの個数の増減に対応して商用電源周波数60Hzで共振させるように変更している。また、スライダックの出力電圧を変化させることで、模擬電線501に流す電流を変化させた。
【0125】
【表4】

【0126】
表4に示すように、FTが5個の場合であっても、模擬電線501に11A以上の電流が流れれば、実験端末20aが利用できることがわかる。特に、電源用コイル31は、透磁率μがより大きなトロイダルコア11aを使用し、巻線31bの巻数を多くすることにより、電源用コイル31を小型化して、少ない電流で実験端末20aを駆動できる可能性がある。また、実験端末20a本体は、3.3Vで駆動可能であるため、出力が3.3VのDC−DCコンバータ34aを利用することより、電源用コイル31の小型化と駆動可能な電流の低下とに有効な可能性がある。
つぎに、模擬電線501に流れる交流電流に対する計測部10による計測実験及び実験結果を説明する。
【0127】
なお、計測部10の計測用コイル11は、電源用コイル31と同様に、トロイダルコア11aに巻線11bを巻回したコイルを用い、トロイダルコア11aの中心を通るように模擬電線501を配置する。なお、トロイダルコア11aとしてカットコアを用いることで、模擬電線501に対して比較的容易に装着することができる。
【0128】
また、計測用コイル11は、トロイダルコア11aとして、比透磁率が比較的高く入手が容易である、電源ノイズフィルタ用フェライトコア(TDK株式会社製のクランプフィルタ「ZCAT3035-1330」)を使用し、トロイダルコア11aに巻線11bを100回巻いたコイル(FT)を用いた。
【0129】
計測部10は、図15(a)に示すように、模擬電線501に交流電流Irが流れることにより計測用コイル11に発生する誘導電流を、ダイオードブリッジ12aにより全波整流し、2つの抵抗で構成された分圧器13を介して、実験端末20a(無線通信部20)のA/D変換入力端子26に入力する。なお、図15(a)において、計測用コイル11は1個のFTを使用し、分圧器13の抵抗R1は500kΩであり、分圧器13の抵抗R2は250kΩであり、平滑化コンデンサ14は33μFである。
【0130】
また、図15(a)において、Rrは0.0333Ωのセメント抵抗であり、その両端にかかる電圧を計測し、計測した電圧とセメント抵抗Rrの抵抗値とから、模擬電線501に流れる電流Irを算出した。
【0131】
さらに、A/D変換の結果であるデジタルデータ(D値)は、電波によって他のZigBee端末201に送信し、そのZigBee端末201に接続されたパソコン301により、D値を読み取った。
【0132】
なお、計測部10による計測実験では、実験端末20aの駆動電源として、AC(Alternating Current)アダプタを介してコンセントから供給される商用電源を用いる場合と、前述した電源供給部30を用いる場合との二通りの実験を行った。
【0133】
まず、商用電源を用いる場合について説明する。
計測部10による計測実験では、次表5に示す結果が得られた。
なお、次表5において、Vrは抵抗Rrにかかる電圧値(実効値(RMS:Root Mean Square value)、V)であり、Irは電圧Vrを抵抗Rrで除算することにより得られた電流値(RMS、A)である。
【0134】
また、「実験端末のD値」とは、実験端末20aのA/D変換入力の変換結果を示し、実験端末20aのA/D変換入力端子26に電圧がかかると、その電圧に比例した値がデジタル値で得られ、その値がD値である。また、「入力電圧」とは、実験端末20aのA/D変換入力端子26にかかる電圧値を示し、この値は、A/D変換入力端子26に3Vを与えた場合に、D値が「3676」であったため、D値に「0.816」を乗算して求めている。
【0135】
また、「電流推定値」とは、模擬電線501に流れる電流Irを変化させた場合に、電流IrとD値との関係を最小2乗法による直線で近似した結果(図15(b))から、傾きが5.08となり、切片が2.55となり、この値を用いてD値から電流Irの値を推定したものである。
【0136】
また、「誤差[A]」とは、表5に示す電流Irから電流測定値を減算したものであり、「誤差[%]」は、表5に示す誤差[A]から電流Irを除算し、100を乗算したたものである。
【0137】
【表5】

【0138】
図15(b)に示すように、電流IrとD値とが線形の関係になっていないのは、フェライトコア11aにおける磁束の飽和などが影響しているものと考えられる。
つぎに、電源供給部30を用いる場合について説明する。
計測部10による計測実験では、図16(a)に示す回路により、実験端末20aを誘導電流で駆動させながら、模擬電線501に流れる電流Irを測定した。
【0139】
電源供給部30は、図14(a)に示す回路において、電源用コイル31として、11個のFTと日立金属株式会社製のコモンモードチョーク用コア「FT-3KM K2818E」に巻線を巻回したコイル1個とを直列に接続したものを用い、DC−DCコンバータ34aの二次側に平滑化コンデンサ36を備えている以外は、図14(a)に示す回路と同様である。また、計測部10は、図15(a)に示す回路と同様である。
【0140】
計測部10による計測実験では、次表6に示す結果が得られた。
【0141】
なお、次表6において、電圧値Vr[mV]、電流値Ir[A]、実験端末のD値、入力電圧[V]、誤差[A]及び誤差[%]は、表5と同様の項目である。
【0142】
また、「電流推定値」は、模擬電線501に流れる電流Irを変化させた場合に、電流IrとD値との関係を最小2乗法による直線で近似した結果(図16(b))から、傾きが4.53となり、切片が3.36となり、この値を用いてD値から電流Irの値を推定したものである。
【0143】
【表6】

【0144】
図16(b)に示すように、電流IrとD値とが線形の関係になっていないのは、図15(a)と同様に、フェライトコア11aにおける磁束の飽和などが影響しているものと考えられる。
【0145】
ここで、実験端末20aのA/D変換特性を測定した結果を説明する。
実験端末20aにおけるA/D変換の特性が悪い場合には、計測結果が信頼できないものになるため、実験端末20aのA/D変換特性を測定した。
【0146】
A/D変換特性の測定回路は、図17(a)に示すように、直流安定化電源600を実験端末20aに接続し、A/D変換の結果であるデジタルデータ(D値)を電波により受信する他のZigBee端末201をパソコン301に接続することで構成した。なお、実験端末20aの駆動電源は、ACアダプタを介してコンセントから供給される商用電源を用いた。
【0147】
A/D変換特性の測定は、直流安定化電源600からの入力電圧Vを変化させ、この入力電圧Vを実験端末20aに印加し、A/D変換の結果であるデジタルデータ(D値)を電波により、他のZigBee端末201に送信して、パソコン301でD値を読み取り計測した。なお、実験端末20aに印加する入力電圧Vは、図示しないテスタを用いて測定した。また、A/D変換特性の測定は、2回行い、平均値を算出し、図17(b)に示す結果が得られた。
【0148】
図17(b)に示すように、入力電圧Vの限界点は、電圧Vが3.37[V]であり、D値が4089であった。これより、分解能は、約0.82mV(=3.37/4089)であることがわかる。また、入力電圧Vの限界点までは、入力に対して線形に出力されていることがわかる。
【0149】
ここで、模擬電線501に流れる電流Irと、計測部10により計測されて実験端末20aによりA/D変換されたデジタルデータ(D値)との特性(以下、I−D特性と称す)を検証した結果を説明する。
【0150】
図15(b)及び図16(b)に示すように、電流IrとD値とは比例していないが、そのI−D特性が安定したものであれば、I−D特性に合わせた変換を行うことにより、比較的精度の高い電流の計測を行うことができるため、I−D特性を検証した。
【0151】
A/D特性の測定回路は、図18(a)に示すように、計測部10及び電源供給部30(図示を省略)を実験端末20aに接続し、A/D変換の結果であるデジタルデータ(D値)を電波により受信する他のZigBee端末201をパソコン301に接続することで構成した。
【0152】
計測部10は、図15(a)に示す回路において、抵抗Rrを削除し、分圧器13の代わりに70kΩの抵抗13aを実験端末20aのA/D変換入力端子26に対して並列に接続し、平滑化コンデンサ14が10μFである以外は、図15(a)に示す回路と同様である。
【0153】
また、電源供給部30は、図14(a)に示す回路において、電源用コイル31として、10個のFTを直列に接続したコイルを用いている以外は、図14(a)に示す回路と同様である。
【0154】
また、A/D変換の結果であるデジタルデータ(D値)は、電波によって他のZigBee端末201に送信し、そのZigBee端末201に接続されたパソコン301により、D値を読み取った。
模擬電線501に流れる電流Ir[A]と電流測定用電圧V[V]をAD変換したデジタルデータ(D値)との特性を5回測定した結果を図18(b)に示す。
【0155】
図18(b)に示すように、同一の電流Irに対して、1回目〜6回目のD値の測定値に、ばらつきがあることがわかる。このばらつきは、電流測定用RC回路の電圧リプル(15mV)及び模擬電線501に接続した負荷特性の変動が要因として考えられる。
【0156】
また、これらの測定データを用いて、I−D特性の3次の多項式近似を行った結果を図19(a)に示す。ただし、図18(b)に示す1回目及び2回目のデータは、他の3回のデータとの偏りが大きいため、1回目及び2回目のデータを除外して、次式(8)により近似した結果を、図19(a)に図示した。なお、次式(8)において、I’は電流Irの推定値である。
【0157】
【数8】

【0158】
また、図18(a)に示す測定回路を用いて、模擬電線501に流す電流Irを変化させてD値を繰り返し測定した結果を、式(8)により近似した結果と共に、図19(b)に示す。また、電流Irと3次の多項式近似により得られた推定電流I’との誤差(|Ir−I’|)[A]を算出した結果を図20(a)に示す。
【0159】
図20(a)に示すように、誤差は約0.3A以内に収まっており、誤差の率(|I−I’|/Ir×100%)が最大となるのは電流Irが6.5Aの場合に約3.3%であった。
【0160】
なお、前述したI−D特性の検証では、電流Irを14Aまでしか計測していなかったが、現在、一般家庭における一世帯の契約アンペアは60Aまで契約が可能であるため、より大きな電流Irを計測することが求められる。
【0161】
そこで、図18に示す測定回路において、44Aまでの電流Irの計測を3回行い、3回の計測結果と、1回目の計測におけるD値とそのときに流した電流Irとの関係を推定する2次式を最小二乗法で求めた結果とを、図20(b)に示す。
【0162】
図20(b)に示すように、電流Irが14Aから44Aまでの範囲においても、D値と電流Irとの値は、ほぼ比例していることがわかる。
【0163】
つぎに、実験端末20aを用いた無線センサネットワークによるデータ転送実験を説明する。
本実験では、図21(a)に示すように、模擬電線501を計測する端末である無線センサノード100(以下、第1ノード101と称す)と、計測した結果を収集する端末であるデータ収集ノード200と、第1ノード101からデータ収集ノード200に計測データを転送する4つの無線センサノード100(以下、第2ノード102、第3ノード103、第4ノード104、第5ノード105、とそれぞれ称す)を使用した。
【0164】
なお、第1ノード101、第2ノード102、第3ノード103、第4ノード104及び第5ノード105は、実験端末20a(無線通信部20)をそれぞれ備え、データ収集ノード200は、実験端末20a(無線通信部220)を備えている。
【0165】
なお、本来、ZigBee端末は、メッシュ・ネットワークの設定を行うことにより、無線センサノード100を適当に配置しても、通信経路を自動的に構成できる。しかしながら、本実験では、第1ノード101及び第2ノード102間、第2ノード102及び第3ノード103間、第3ノード103及び第4ノード104間、第4ノード104及び第5ノード105間、並びに、第5ノード105及びデータ収集ノード200間でのみ無線通信するように設定した。
【0166】
図21(b)は、データ収集ノード200で受信した測定データを実時間でパソコン301に表示した表示画面であり、この表示画面は、ZigBee開発キット「EZ-NET DevKit for 2.4GHz」に付属するソフトウェア(表示ソフト)を使用して表示したものである。
【0167】
この表示ソフトは、データ収集ノード200が、予め指定したノード(本実験では、第1ノード101)に対して、指定した入力端子の値のデータ転送要求を一定間隔の時間毎に行い、データ収集ノード200に返送されてきた測定データ(D値)を、パソコン301に表示するソフトウェアである。
【0168】
図21(b)において、左上の領域310は、測定データを受信した時間と、そのときの測定データ(D値)とを示している。また、領域310の下側にある、欄「Success:」は測定データを受信できた回数を示し、欄「False:」は測定データを受信できなかった回数を示し、欄「SuccessRate:」は測定データを受信できた割合を示している。
【0169】
また、図21(b)において、領域310の左側にあるグラフ320は、D値の変化を示し、グラフ320の下側にある欄「Interval(sec):」は、ノード(本実験では、第1ノード101)に測定データの要求を行う間隔(秒)を示している。なお、本実験では、実験の途中において、模擬電線501に流す電流の値を変化させたのであるが、このことがグラフ320にも表れている。
【0170】
また、第1ノード101により1時間に亘って計測した測定データをデータ収集ノード200で受信し、データ収集ノード200における受信エラーの割合を算出した結果を図22(a)に示す。また、ZigBee開発キット「EZ-NET DevKit for 2.4GHz」に付属する表示ソフトのソフトウェアを使用して、1時間の連続運転による実験中の受信状況をパソコン301に表示した表示画面を、図22(b)に示す。なお、模擬電線501に流す電流は約12Aとした。
【0171】
図22(a)に示すように、測定開始の数分間は、受信エラーの割合が非常に高い。これは、実験者が隣接する無線センサノード100間に入り、電波を遮断したために、受信エラーの割合が増加した可能性がある。また、図22(a)に示す19分時点での受信エラーは、第1ノード101の電源入力端子27から電源供給部30が外れたことが原因である。
【0172】
なお、隣接する無線センサノード100間に存在する障害物の問題に関しては、無線センサノード100を架空電線500で使用するために、隣接する無線センサノード100間に、人間や自動車などの障害物が入る可能性は低いと考える。また、隣接する無線センサノード100間に建物が存在しても、短い距離であれば通信可能であることを実験により明らかになっている。このため、本実施形態に係る架空電線監視システムにおいては、障害物による通信の影響は少ないものと考える。
【0173】
また、端子が外れるなどのハードウェア障害に関し、本実験ではテストリードを用いて一時的な回路を組んで実験しているのであるが、実運用で利用する場合には、より信頼性の高い装置を使用(接続)することになるため、ハードウェア障害が発生する確立は低くなると考える。
【0174】
特に、本実験では、隣接するノード間を1対1で通信するネットワークを構成したが、ZigBee(登録商標)の特徴であるメッシュ・ネットワークを構成することにより、一対のノード間の通信に障害が発生した場合であっても、別の通信経路でデータ転送が自動的に行うことができ、受信エラーの割合が少なくなる可能性がある。
【0175】
以上のように、本実施形態に係る架空電線監視システムは、隣り合う無線センサノード100間が適切な間隔で各無線センサノード100を設置していれば、無線を用いた無線センサネットワーク(自動データ転送機能)により、各無線センサノード100からの計測データをデータ収集システム400に集約することができ、多数の地点における架空電線500の電流を実時間で計測することができると共に、データ収集のための有線による配線設備(通信回線)が不要であるという作用効果を奏する。
【0176】
また、本実施形態に係る架空電線監視システムは、多数の地点における架空電線500の電流を実時間で計測することができることにより、障害が発生した架空電線500を速やかに特定することができるという作用効果を奏する。また、本実施形態に係る架空電線監視システムは、隣接ノードに障害が発生した場合であっても、迂回経路により、所定の無線センサノード100から計測データを確実に収集することができるという作用効果がある。
【0177】
また、本実施形態に係る架空電線監視システムは、架空電線500の交流電流に基づく誘導電流から電力を無線通信部20に供給する電源供給部30を備えているために、一次電池又は二次電池の電源が不要であり、電池交換の手間が不要であるという作用効果を奏する。特に、本実施形態に係る架空電線監視システムは、無線通信部20の駆動電力を得るために太陽電池や風力発電機等を用いないため、天候に左右されず、架空電線500に一定以上の交流電流が流れている限り、無線通信部20に電力をいつでも供給することができるという作用効果を奏する。
【0178】
また、本実施形態に係る無線センサノード100は、計測用コイル11及び電源用コイル31をクランプ式にしているために、架空電線500を分岐させるなどの危険な工事を伴わずに、無線センサノード100を簡単に設置することができるという作用効果を奏する。
【0179】
特に、本実施形態に係る無線センサノード100は、ZigBeeモジュールを用いているために、各々の無線センサノード100に対する個別設定が容易であると共に、ZigBeeモジュールが安価であるため、多数の無線センサノード100を電力系統に幅広く設置することができるという作用効果を奏する。
【0180】
(本発明の第2の実施形態)
図23(a)は第2の実施形態に係る架空電線監視システムにおけるグループ構成手順及びデータ収集手順を説明するための説明図であり、図23(b)は図23(a)に示す説明図の続きを示す説明図、図24は第2の実施形態に係る他の架空電線監視システムを説明するための説明図である。図23及び図24において、図1乃至図6と同じ符号は、同一又は相当部分を示し、その説明を省略する。
【0181】
第1の実施形態に係る架空電線監視システムにおいては、データ収集ノード200に対して、無線センサネットワークを構成する全ての無線センサノード100から測定データを定期的に送信する設定の場合に、測定データがデータ収集ノード200に一時に集中して送信される。このため、第1の実施形態に係る架空電線監視システムにおいては、データ収集ノード200の受信能力の制限により、データ収集ノード200が全ての無線センサノード100からの測定データを受信できない可能性がある。
【0182】
特に、全ノード数に比例した一定時間以下の周期で、全ての無線センサノード100からの測定データのデータ収集を行うことができないため、無線センサノード100を増設するほど、全ての無線センサノード100から一斉にデータ収集を行う間隔を長く設定する必要がある。
このような状況を緩和するために、本実施形態に係る架空電線監視システムにおいては、後述するグループ構成手順及びデータ収集手順を行うものである。
【0183】
図4(a)において、データ処理部23bは、新たな機能として、無線センサネットワークを構成する範囲(無線センサノード100及びデータ収集ノード200のうち少なくとも1つのノードに電波が届く範囲であり、以下、グループ範囲と称す)に自ノードが配設された場合に、当該無線センサネットワークのグループに参加を要求するパケット(以下、参加要求パケットと称す)を生成し、無線変調部22及び送受信部21を介して、データ収集ノード200に向けて送信する。
【0184】
また、データ処理部23bは、参加要求パケットに対するデータ収集ノード200から受信した応答パケット(以下、参加応答パケットと称す)を解析し、参加応答パケットに付与された隣接する親ノードの情報を抽出する。
【0185】
また、データ処理部23bは、隣接する親ノードに対して、自ノードにおける計測データを送信し、所定の時間内に当該計測データに対する当該親ノードからの応答パケット(以下、データ応答パケットと称す)を受信できない場合に、参加要求パケットを生成し、無線変調部22及び送受信部21を介して、データ収集ノード200に向けて送信する。
【0186】
また、データ処理部23bは、所定の受信間隔を超えて、隣接する子ノードからの計測データを受信できない場合に、障害発生通知信号として、メモリ部25に記憶される当該隣接する子ノードの計測データ及び識別情報(ID)を付加したパケット(以下、子ノード障害発生通知パケットと称す)を生成し、無線変調部22及び送受信部21を介して、データ収集ノード200に向けて送信する。
【0187】
さらに、データ処理部23bは、自ノードにおける計測データの値が所定の範囲外にある場合に、障害発生通知信号として、メモリ部25に記憶される当該自ノードの計測データ及び識別情報(ID)を付加したパケット(以下、自ノード障害発生通知パケットと称す)を生成し、無線変調部22及び送受信部21を介して、データ収集ノード200に向けて送信する。
【0188】
図4(a)において、メモリ部25は、新たな機能として、データ処理部23bが参加応答パケットから抽出した隣接する親ノードの情報を記憶する。
また、メモリ部25は、自ノードにおける計測データを当該自ノードの識別情報(ID)と対応付けて記憶すると共に、隣接する子ノードにおける計測データを当該子ノードの識別情報(ID)と対応付けて記憶する。
【0189】
なお、第2の実施形態においては、グループ構成手順及びデータ収集手順が異なるところのみが第1の実施形態と異なるところであり、グループ構成手順及びデータ収集手順による作用効果以外は、第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0190】
以下、本実施形態に係る架空電線監視システムにおけるグループ構成手順及びデータ収集手順を、図23を用いて説明する。なお、以下の説明においては、無線センサネットワークに参加したノードの集合を「グループ」と称す。
【0191】
まず、架空電線監視システムにおけるグループ構成手順について説明する。
最初に、データ収集ノード200(データ収集システム400)を配設することにより、このデータ収集ノード200は、グループに参加すること(グループを発起するノード)になる(図23(a))。
【0192】
そして、新たな無線センサノード100をグループ範囲に配設することにより、この無線センサノード100は、グループに新たに参加するノード(以下、新規ノードと称す)であり、データ収集ノード200に対してグループに参加を要求する信号(グループ参加要求信号)を送信する。すなわち、新規ノードのデータ処理部23bは、参加要求パケットを生成し、無線変調部22及び送受信部21を介して、データ収集ノード200に向けて送信する。
【0193】
グループ参加要求信号パケットは、AODVルーティングアルゴリズムを利用し、データ収集ノード200に向かって伝送される。なお、新規ノードの近接ノードがデータ収集ノード200である場合には、新規ノードからデータ収集ノード200に、直接、参加要求パケットが送信されるが、新規ノードの近接ノードがデータ収集ノード200でない場合には、近接ノードを経由して、新規ノードからデータ収集ノード200に参加要求パケットが伝送される(図23(b))。
【0194】
データ収集ノード200は、参加要求パケットを受信した場合に、グループ参加要求信号(参加要求パケット)に対する応答信号を新規ノードに返信する。すなわち、データ収集ノード200のデータ処理部223bは、参加応答パケットを生成し、無線変調部222及び送受信部221を介して、新規ノードに向けて送信する。なお、新規ノードは、参加応答パケットを受信するまで、データ収集ノード200に対して、定期的に参加要求パケットを送信する。
【0195】
参加応答パケットは、AODVルーティングアルゴリズムを利用し、新規ノードに向かって伝送される。なお、データ収集ノード200の近接ノードが新規ノードである場合には、データ収集ノード200から新規ノードに、直接、参加応答パケットが送信されるが、データ収集ノード200の近接ノードが新規ノードでない場合には、近接ノードを経由して、データ収集ノード200から新規ノードに参加応答パケットが伝送される(図23(b))。
【0196】
そして、新規ノードが参加応答パケットを受信した場合には、AODVルーティングアルゴリズムにより、新規ノードからデータ収集ノード200までの閉路(ループ)を持たない通信経路が確立されたことになり、新規ノードはグループに属することなる。
【0197】
このように、新たな無線センサノード100がグループ範囲に配設される度に、前述した処理を繰り返し、データ収集ノード200を根ノードとする木構造が構築され、自動的に階層が構成される。なお、グループに属する全ての無線センサノード100は、AODVルーティングアルゴリズムを実行するための経路制御表を、メモリ部25にそれぞれ記憶しているため、各無線センサノード100は、隣接する子ノードである無線センサノード100と、隣接する親ノードである無線センサノード100とを把握している。
【0198】
つぎに、架空電線監視システムにおけるデータ収集手順について説明する。
データ収集ノード200以外の各無線センサノード100(葉及び節のノード)は、架空電線500の交流電流を計測部10により計測し、所定の期間、計測データをメモリ部25に記憶する。そして、各無線センサノード100(葉及び節のノード)のデータ処理部23bは、測定データをパケット化し、無線変調部22及び送受信部21を介して、隣接する親ノードに対して定期的に計測データを送信する。
【0199】
また、隣接する子ノードから計測データを受信した親ノードは、所定の期間、当該子ノードの計測データをメモリ部25に記憶する。そして、親ノードのデータ処理部23bは、当該子ノードに対する応答信号として、データ応答パケットを生成し、無線変調部22及び送受信部21を介して、当該子ノードに向けて送信する。
【0200】
すなわち、葉ノードである各無線センサノード100は、所定の期間、自身の計測データをメモリ部25に記憶し、根ノード(データ収集ノード200)及び葉ノード以外の各無線センサノード100は、所定の期間、自ノード及び隣接する子ノードにおける計測データをメモリ部25に記憶する。
【0201】
なお、前述した所定の期間は、長期間であるほど、過去の履歴から精度の高いデータ検証を行うことができるのであるが、メモリ部25のメモリ容量を必要とするために、架空電線監視システムの仕様に応じて適宜設定する時間である。
【0202】
子ノードの制御部23は、所定の期間以上、隣接する親ノードから応答信号(データ応答パケット)を受信できない場合に、当該親ノードに障害が発生したと判断する。そして、子ノードのデータ処理部23bは、グループ参加要求信号として、参加要求パケットを生成し、無線変調部22及び送受信部21を介して、再度、データ収集ノード200に向けて送信する。これにより、データ収集ノード200を根ノードとする木構造が更新される。なお、ここでの所定の時間は、パケットを隣接ノードに送信して確認応答パケットを受信するまでの通常の応答時間を考慮して、適宜設定する時間である。
【0203】
また、親ノードの制御部23は、所定の期間以上、隣接する子ノードから計測データを受信できない場合に、当該子ノードに障害が発生したと判断する。そして、親ノードのデータ処理部23bは、障害発生通知信号として、メモリ部25に記憶される該当の隣接する子ノードの計測データ及び識別情報(ID)を付加した子ノード障害発生通知パケットを生成し、無線変調部22及び送受信部21を介して、データ収集ノード200に向けて送信する。なお、ここでの所定の期間は、データ収集ノード200以外の各無線センサノード100(葉及び節のノード)が、隣接する親ノードに対して定期的に計測データを送信する送信間隔を考慮して、適宜設定する時間である。
【0204】
また、任意の無線センサノード100のデータ処理部23bは、自ノードにおける計測データの値が所定の範囲外にある場合(異常な測定データを計測した場合)に、障害発生通知信号として、メモリ部25に記憶される当該自ノードの計測データ(異常な測定データ)及び識別情報(ID)を付加した自ノード障害発生通知パケットを生成し、無線変調部22及び送受信部21を介して、データ収集ノード200に向けて送信する。
【0205】
以上のように、本実施形態に係る架空電線監視システムは、無線センサノード100に障害が発生した場合にのみ、データ収集ノード200にその情報が通知されるために、データ収集ノード200に対する測定データの送信が集中し、輻輳状態が発生することを抑制できるという作用効果を奏する。
【0206】
なお、データ収集ノード200は、必要に応じて、任意の無線センサノード100に対して、当該無線センサノード100のメモリ部25に記憶された測定データを取得することにより、グループ全体の経時的な測定データの変化をデータ収集ノード200に集約し、無線センサノード100が設置された電力系統の経時的な状態変化を計測することができる。
【0207】
この場合に、データ収集ノード200は、任意の無線センサノード100に対して、当該無線センサノード100のメモリ部25に記憶された計測データを要求するコマンドを、無線変調部222により変調し、送受信部221から無線で送信する。
【0208】
各無線センサノード100は、隣接ノードとの間で無線通信を行い、データ収集ノード200からのコマンドは、無線センサネットワークを構成する複数の無線センサノード100間でバケツリレー式に伝送され、任意の無線センサノード100に到達する。
【0209】
計測データを要求された無線センサノード100は、データ収集ノード200からのコマンドを送受信部21により受信すると、無線変調部22で復調し、復調したコマンドをデータ処理部23bで解析する。
【0210】
制御部23は、自ノードの測定データが要求されていることを認識すると、インタフェース部24は、メモリ部25に格納された対象の計測データを制御部23に転送する。また、計測データを要求された無線センサノード100は、データ処理部23bにより測定データをパケット化し、無線変調部22により変調して、送受信部21からデータ収集ノード200に向けて返信する。なお、計測データを要求された無線センサノード100からデータ収集ノード200への測定データの送信は、無線センサネットワークを構成する複数の無線センサノード100間でバケツリレー式に伝送される。
なお、第1の実施形態に係る架空電線監視システムにおける前述した課題を解決するため、以下の無線ネットワークを構成してもよい。
【0211】
図24に示すように、無線センサネットワークは、複数の無線センサノード100から構成されるグループ(601、602、603、・・・)が複数集合してなる。また、各グループにおけるデータ収集ノード200に近接する一の無線センサノード(以下、上位ノード100aと称す)は、同一のグループに属する他の無線センサノード(以下、下位ノード100bと称す)の計測データを収集し、データ収集ノード200に対して、収集した計測データを他の上位ノードからの送信タイミングと異ならせて送信する。
【0212】
すなわち、一旦、各グループに属する下位ノード100bの計測データを上位ノード100aで収集し、各上位ノード100aからデータ収集ノード200に計測データを送信するタイミングを異ならせることで、データ収集ノード200に対する測定データの送信が集中することを抑制できるという作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0213】
10 計測部
11 計測用コイル
11a コア
11b 巻線
12 整流回路
12a ダイオードブリッジ
13 分圧器
13a 抵抗
14 平滑化コンデンサ
20 無線通信部
20a 実験端末
21 送受信部
22 無線変調部
23 制御部
23a 通信制御部
23b データ処理部
23c 電力制御部
24 インタフェース部
25 メモリ部
26 A/D変換入力端子
27 電源入力端子
30 電源供給部
31 電源用コイル
31a コア
31b 巻線
32 共振用コンデンサ
33 整流回路
33a ダイオードブリッジ
34 電源回路
34a DC−DCコンバータ
35,36 平滑化コンデンサ
41 基板ボックス
42 挟持部
43 ヒンジ部
44 対向部
44a 係止部
45 弾性部材
46 ラッチ部
47 ガイド部
48 支持部材
49 板ばね
49a 挟持部
49b 導入部
49c 支持部材
50 固定治具
51 絶縁操作棒
52 ケース
60 開閉治具
61 絶縁操作棒
62 フック部
70 絶縁ヤットコ
71 把持部
71a 一端
71b 他端
72 絶縁操作棒
73 操作レバー
100 無線センサノード
100a 上位ノード
100b 下位ノード
101 第1ノード
102 第2ノード
103 第3ノード
104 第4ノード
105 第5ノード
200 データ収集ノード
201 ZigBee端末
220 無線通信部
221 送受信部
222 無線変調部
223 制御部
223a 通信制御部
223b データ処理部
223c 電力制御部
224 インタフェース部
225 メモリ部
226 A/D変換入力端子
227 電源入力端子
228 出力端子
300 データ処理装置
301 パソコン
310 領域
320 グラフ
400 データ収集システム
500 架空電線
501 模擬電線
600 直流安定化電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着される架空電線の交流電流を計測する計測部、隣接する他の無線センサノードとの間で前記交流電流に基づく計測データを電波により送受信する無線通信部、及び当該無線通信部に電源を供給する電源供給部を備え、複数の他の無線センサノードとから無線センサネットワークを構成する無線センサノードであって、
前記電源供給部が、
カットコアに巻線を巻回した第1のコイルと、
前記第1のコイルの巻線の一端に、一端が接続される共振用コンデンサと、
前記共振用コンデンサの他端及び前記第1のコイルの巻線の他端に、一次側が接続される第1の整流回路と、
前記第1の整流回路の二次側及び前記無線通信部の第1の入力端子間に接続される電源回路と、
を備え、
前記計測部が、
カットコアに巻線を巻回した第2のコイルと、
前記第2のコイルの巻線の両端に、一次側が接続される第2の整流回路と、
前記第2の整流回路の二次側及び前記無線通信部の第2の入力端子間に接続される分圧器と、
を備え、
前記第1のコイル及び第2のコイルを一体として前記架空電線をクランプし、当該第1のコイル及び第2のコイルが当該架空電線に軸通されることを特徴とする無線センサノード。
【請求項2】
前記請求項1に記載の無線センサノードにおいて、
前記第1のコイル及び第2のコイルの反対向面側に支持され、当該第1のコイル及び第2のコイルのカットコアの中心に前記架空電線を導くと共に、当該架空電線の脱離を防止する略和鋏形状のガイド部を備えていることを特徴とする無線センサノード。
【請求項3】
装着される架空電線の交流電流を計測する計測部、隣接する他の無線センサノードとの間で前記交流電流に基づく計測データを電波により送受信する無線通信部、及び当該無線通信部に電源を供給する電源供給部を備え、複数の他の無線センサノードとから無線センサネットワークを構成する無線センサノードと、当該無線センサノードから送信される計測データを収集するデータ収集ノードと、当該データ収集ノードに接続して当該データ収集ノードにより収集される計測データを処理するデータ処理装置とを備える架空電線監視システムであって、
前記無線センサノードの無線通信部は、
前記無線センサネットワークを構成する範囲に自ノードが配設された場合に、前記データ収集ノードに対して、当該無線センサネットワークのグループに参加を要求する参加要求パケットを送信すると共に、当該参加要求パケットに対する前記データ収集ノードからの応答パケットを受信する制御部と、
前記応答パケットに付与された隣接する親ノードの情報を記憶するメモリ部と、
を備え、
前記隣接する親ノードに対して、自ノードにおける前記計測データを送信し、所定の時間内に当該計測データに対する当該親ノードからの応答パケットを受信できない場合に、前記制御部は、前記データ収集ノードに対して、前記参加要求パケットを送信することを特徴とする架空電線監視システム。
【請求項4】
前記請求項3に記載の架空電線監視システムにおいて、
前記メモリ部は、隣接する子ノードにおける前記計測データを当該子ノードの識別情報と対応付けて記憶しており、
所定の受信間隔を超えて、前記隣接する子ノードからの計測データを受信できない場合に、前記制御部は、前記データ収集ノードに対して、前記メモリ部に記憶される当該隣接する子ノードの計測データ及び識別情報を付加したパケットを送信することを特徴とする架空電線監視システム。
【請求項5】
前記請求項3又は4に記載の架空電線監視システムにおいて、
前記メモリ部は、自ノードにおける前記計測データを当該自ノードの識別情報と対応付けて記憶しており、
前記自ノードにおける計測データの値が所定の範囲外にある場合に、前記制御部は、前記データ収集ノードに対して、前記メモリ部に記憶される当該自ノードの計測データ及び識別情報を付加したパケットを送信することを特徴とする架空電線監視システム。
【請求項6】
装着される架空電線の交流電流を計測する計測部、隣接する他の無線センサノードとの間で前記交流電流に基づく計測データを電波により送受信する無線通信部、及び当該無線通信部に電源を供給する電源供給部を備え、複数の他の無線センサノードとから無線センサネットワークを構成する無線センサノードと、当該無線センサノードから送信される計測データを収集するデータ収集ノードと、当該データ収集ノードに接続して当該データ収集ノードにより収集される計測データを処理するデータ処理装置とを備える架空電線監視システムであって、
前記無線センサネットワークが、複数の無線センサノードから構成されるグループが複数集合してなり、
前記各グループにおけるデータ収集ノードに近接する一の無線センサノードが、同一のグループに属する他の無線センサノードの計測データを収集し、収集した計測データを前記データ収集ノードに送信することを特徴とする架空電線監視システム。
【請求項7】
前記請求項3乃至6のいずれかに記載の架空電線監視システムにおいて、
前記電源供給部が、
カットコアに巻線を巻回した第1のコイルと、
前記第1のコイルの巻線の一端に、一端が接続される共振用コンデンサと、
前記共振用コンデンサの他端及び前記第1のコイルの巻線の他端に、一次側が接続される第1の整流回路と、
前記第1の整流回路の二次側及び前記無線通信部の第1の入力端子間に接続される電源回路と、
を備え、
前記計測部が、
カットコアに巻線を巻回した第2のコイルと、
前記第2のコイルの巻線の両端に、一次側が接続される第2の整流回路と、
前記第2の整流回路の二次側及び前記無線通信部の第2の入力端子間に接続される分圧器と、
を備え、
前記第1のコイル及び第2のコイルを一体として前記架空電線をクランプし、当該第1のコイル及び第2のコイルが当該架空電線に軸通されることを特徴とする架空電線監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−122939(P2011−122939A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280847(P2009−280847)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(504258527)国立大学法人 鹿児島大学 (284)
【出願人】(000164438)九州電力株式会社 (245)
【Fターム(参考)】