説明

無線通信機器及び無線通信システム

【課題】電池の電力により動作する無線通信機器において、電池の残容量が低下しても、送受信されるデータの品質を良好に維持しつつ長時間の動作を可能とする。
【解決手段】無線通信機器において、RF送信出力低下量テーブルが予め用意されている。このテーブルは、電池電圧が低くなった場合にデータ送信時の送信出力をどの程度低下させるべきかを表すRF送信出力低下量が、電池電圧のレベル毎に段階的に設定されたものである。データ通信を行う際、電池電圧をモニタして、そのモニタ結果とRF送信出力低下量テーブルを照合することにより、データ送信時の出力を低下させるべきか否か判断する。電池電圧が、データ送信時の出力を低下させるべきレベル(例えばシングルモードの場合は3.45V未満)の場合には、モニタした電池電圧に対応付けられたRF送信出力低下量に従ってデータ送信時の送信出力を低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の電力により動作して通信対象と無線にて相互にデータ通信可能な無線通信機器、及びこの無線通信機器を備えた無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばデジタルコードレス電話装置を構成する子機のように、電池の電力により動作し、音声データ或いはその他の各種データを無線にて送受信可能な無線通信機器が種々知られている。
【0003】
このような無線通信機器は、電池の電力によって動作することから、電池の消耗を抑えて少しでも長い時間動作させ続けるようにすることが望まれている。これを実現すべく、機器動作時の消費電力の低減を図るための技術として、例えば、デジタル携帯電話装置やコードレス電話装置において、電池の残容量が所定量未満に低下した場合に、送話信号中の無音区間で送信出力を低減させることで消費電力の低減を図る技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1に記載の技術によれば、電池の残容量が低下した場合、有音区間では通常通りの送信電力で送信制御がなされるものの、無音区間では送信出力が低減されるため、その分、電池の消耗が抑えられ、電池の長寿命化が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−32463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電池の残容量が低下(電池電圧の低下も含む)すると、電池寿命とは別の問題が生じる。それは、無線通信機器の動作中、大電流が消費されるような動作がなされた場合に、その動作時に電源電圧が低下(ドロップ)してしまうことである。
【0007】
電池の電力で動作する無線通信機器は、一般に、電池の電圧Vbを所定の電圧に降圧(レギュレート)することにより一定の電源電圧Vcを生成するレギュレータが設けられ、このレギュレータからの電源電圧Vcが機器内の各部に供給されることで機器内の各部が動作するよう構成されている。
【0008】
無線通信機器を安定して動作させ、通話音声の品質を良好に保つためには、機器内の各部へ安定した電源電圧Vcを供給する必要がある。また、データ送信時(特に音声データ送信時)には、他の受信時等に比べて大きな電力を必要とするため、レギュレータからは大電流が供給されるが、その際も電源電圧Vcは安定して供給されるのが望ましい。
【0009】
しかし、長時間使用することによって電池の電圧Vbが低下(即ち残容量が低下)してくると、レギュレータにおける入力電圧(Vb)と出力電圧(Vc)の差が小さくなり、データ送信の際、必要な大電流を供給しきれなくなって電源電圧Vcのドロップが発生する。
【0010】
レギュレータから供給される電力は、データ送信のためだけでなく、無線通信機器内の各部の動作用にも用いられるため、レギュレータからの電源電圧Vcにドロップが発生すると、その電源電圧Vcを元に動作する他の回路等にも影響を及ぼしてしまう。特に、デジタルコードレス電話装置の子機のように、他の通信対象(親機等)との間で音声信号を送受信するような無線通信機器においては、音声信号に対する各種処理を行う回路においてもレギュレータの電源電圧Vcが用いられることから、電源電圧Vcにドロップが発生すると、それがノイズとなって音声信号に重畳されてしまい、通話音声品質に影響が及んでしまう。
【0011】
また、デジタルコードレス電話装置における子機と親機間の通信方式の1つとして、フレーム通信方式が知られている。これは例えば、複数の送信スロットと複数の受信スロットからなるフレーム(例えば10msのフレーム長)を1周期として、フレーム毎に一又は複数のスロットを用いてデータの送受信を行うものである。
【0012】
このようなフレーム通信方式の無線通信方式では、予め決められた周期でデータ送信が行われるため、電池電圧Vbの低下によってデータ送信時に電源電圧Vcがドロップするようになると、そのドロップも周期的に発生することになり、電源電圧Vcは全体としてリップルを含む電圧となってしまう
電池電圧Vbの低下によって電源電圧Vcのリップルが生じることを、図7を用いてより具体的に説明する。図7(a)に示すように、無線通信機器において消費される電流(即ちレギュレータから供給される電流)は、データ送信時以外では低い(平均してIb)ものの、データ送信の度に非常に大きい電流(Ia)となる。
【0013】
そして、電池電圧Vbが十分なレベル(例えば3.6V)である正常時には、図7(b)に示すように、データ送信時か否かに拘わらずレギュレータからは安定した電源電圧Vc(例えば3.3V)が出力される。
【0014】
しかし、電池の残容量低下によって電池電圧Vbが低下していくと(例えば3.4Vに低下)、図7(c)に示すように、データ送信時に電源電圧Vcがドロップし、これにより電源電圧Vcはリップルを含むものとなってしまう。
【0015】
このリップルは、上記例のようにフレーム長が10msの場合は100Hzで生じることになるため、その場合は100Hzのノイズが音声信号に重畳されてしまうことになる。しかも、フレーム通信の場合にはリップルは周期的に発生することから、その発生の基本周波数である100Hzのノイズの他にも、その高調波ノイズ(200Hz,300Hz,・・・)も発生し、可聴帯に含まれるノイズ成分が多くなって通話音声品質をより低下させてしまうことになる。
【0016】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、電池の電力によって動作する無線通信機器において、電池の残容量が低下しても、送受信されるデータの品質を良好に維持しつつ、長時間動作させることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するためになされた本発明の無線通信機器は、通信対象と無線にて相互にデータ通信可能な無線通信機器であって、電池を有し、該電池の電力に基づく電源電力を供給する電源手段と、この電源手段から供給される電源電力により動作し、送信データを無線にて送信する機能、及び通信対象から送信されたデータを受信する機能を有する無線通信手段と、電源手段から供給される電源電力により動作し、少なくとも、所定のデータ処理を行うことにより上記送信データを生成するデータ処理手段と、電池の残容量を直接又は間接的に取得する残容量取得手段と、この残容量取得手段により取得された残容量が、予め設定された残容量閾値より小さい残容量不足範囲内にあるか否かを判断する残容量判断手段と、この残容量判断手段によって残容量が残容量不足範囲内にあると判断された場合に、無線通信手段による送信データの送信時に電源手段から出力される電流を低減させる電流低減手段と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
このように構成された本発明の無線通信機器では、電源手段から供給される電源電力は、無線通信手段だけでなくデータ処理手段でも消費される。電池の残容量低下によって電源手段からの電源電力の供給能力が低下すると、無線通信手段によるデータ送信時にこの無線通信手段によって大きな電流が消費され、これにより電源手段から出力される電圧がドロップしてしまうおそれがある。そして、このような電圧のドロップが発生すると、データ処理手段によるデータ処理に影響が及び、生成される送信データの品質が悪化してしまうおそれがある。
【0019】
そこで本発明の無線通信機器では、電池の残容量が残容量不足範囲内にある場合には、無線通信手段によるデータ送信時に、電源手段から出力される電流を低減させる。つまり、電池の残容量が残容量閾値以上である通常時に出力される電流よりも出力電流を抑えるのである。
【0020】
従って、本発明の無線通信機器によれば、電池の残容量が低下しても、データ送信時の消費電流が抑制されることにより、データ送信時に電源手段から出力される電圧がドロップするのを抑制することができる。そのため、電池の残容量が低下しても、送受信されるデータの品質を良好に維持しつつ、当該無線通信機器を長時間動作させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態のデジタルコードレス電話装置の概略構成を表す構成図である。
【図2】子機のDCL無線制御部の内部構成を表す構成図である。
【図3】実施形態のデジタルコードレス電話装置における通信方式、及びデータ送信時に子機で生じる電源電圧のドロップを説明するための説明図である。
【図4】子機に設定されたRF送信出力低下量テーブルを表す図である。
【図5】子機で実行される送信出力制御処理を表すフローチャートである。
【図6】子機におけるデータ通信時の消費電流、電池電圧及び電源電圧の一例を表す説明図である。
【図7】従来の子機におけるデータ通信時の消費電流、電池電圧及び電源電圧の一例を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
(1)デジタルコードレス電話装置の構成
図1に、本実施形態のデジタルコードレス電話装置1の概略構成を示す。図1に示すように、本実施形態のデジタルコードレス電話装置1は、子機2と、公衆の電話回線網4に接続された親機3とを備えたものである。親機3は、電話回線網4を介して外部の通信装置(通話相手)と音声信号の送受信(通話)ができるよう構成され、子機2も、親機3を介して、外部の通信装置と音声信号の送受信ができるよう構成されている。
【0023】
子機2と親機3との通信は、デジタル通信方式(より詳しくは後述するフレーム通信方式)により行われる。つまり、子機2と親機3との間で行われる通信はデジタルのデータ通信である。また、そのデータ通信は、2.4GHz帯の周波数帯域を利用した周波数ホッピング方式によるスペクトラム拡散通信方式(FHSS方式)により行われる。勿論、FHSS方式のデータ通信であることはあくまでも一例である。
【0024】
次に、子機2の構成について説明する。子機2は、当該子機2における各種制御処理を担う制御部10と、音声信号の処理を行う音声処理部14と、ユーザの通話音声等、外部からのアナログの音声信号を入力するマイク15と、通話相手の音声や後述するアラーム音等を出力するスピーカ16と、当該子機2の動作状態や各種設定情報等が表示される表示部17と、ユーザにより操作される各種操作ボタン等が配置された操作部18と、親機3との間で音声データ等の各種データを無線にて送受信するためのいわゆるRF(Radio Frequency)回路からなるDCL(デジタルコードレス)無線制御部19と、電波の送受信を行うアンテナ20と、当該子機2の動作用電力の供給源である電池21と、この電池21の電圧(電池電圧Vb)を所定の電圧に降圧して電源電圧Vcを生成するレギュレータ22と、電池電圧Vbを計測してその計測結果(電池電圧計測値)を制御部10へ出力する電池電圧計測部23と、を備えている。
【0025】
そして、制御部10、音声処理部14、表示部17、操作部18、及びDCL無線制御部19は、バス29を介して相互にデータ送受信可能に構成されている。
制御部10は、各種制御プログラムに従って各種制御処理を実行することにより当該子機2における各種機能を実現するCPU11と、これら各種制御プログラムや各種設定データ等が記憶されたROM12と、CPU11が各種制御プログラムを実行する際の演算結果や各種データが一時的に記憶されるRAM13と、CPU11が各種制御プログラムを実行する際に用いられる各種アナログ情報が入力されてこれら各種アナログ情報をデジタルデータに変換するAD変換器24と、を備えている。
【0026】
AD変換器24には、各種アナログ情報の1つとして、電池電圧計測部23からの電池電圧計測値が入力され、デジタルデータに変換される。そして、デジタルデータに変換された電池電圧計測値は、後述する送信出力制御処理(図5)において用いられる。
【0027】
そして、制御部10には、その動作用電源として、レギュレータ22からの電源電圧Vcが入力され、制御部10内の各部はその電源電圧Vcにより動作する。
尚、制御部10には、図2に示すように、DCL無線制御部19から受信信号のRSSI値及び受信データが入力され、逆にDCL無線制御部19に対しては送信データ、送信ゲイン指令、及び基準信号を出力するのであるが、これらについては後で詳述する。
【0028】
音声処理部14は、マイク15から入力されたアナログの音声信号をデジタルの音声データに変換するAD変換器26と、このAD変換器26によりAD変換された音声データに対する各種データ処理を行って制御部10へ出力すると共に制御部10から入力された音声データに対する各種データ処理を行うデータ処理部27と、制御部10から入力されてデータ処理部27にてデータ処理された音声データをアナログの音声信号に変換するDA変換器28と、を備えている。
【0029】
マイク15から入力された音声信号は、音声処理部14により音声データとして処理・生成され、その生成された音声データは、制御部10による制御に従ってDCL無線制御部19へ入力され、DCL無線制御部19から無線にて送信される。また、DCL無線制御部19にて受信された親機3からの音声データは、制御部10に入力され、制御部10による制御に従って音声処理部14に入力される。そして、その入力された音声データが音声処理部14内でアナログの音声信号に変換され、スピーカ16から出力される。
【0030】
この音声処理部14にも、その動作用電源としてレギュレータ22からの電源電圧Vcが入力され、音声処理部14内の各部はその電源電圧Vcにより動作する。
なお、制御部10と音声処理部14は、ベースバンドICとして1チップ化されている。また、DCL無線制御部19も1チップ化されたICとして構成されている。但し勿論、このような1チップ構成はあくまでも一例である。
【0031】
電池21は、本実施形態では繰り返し充電が可能な二次電池である。但し、電池21として二次電池を用いるのはあくまでも一例であり、一次電池であってもよい。この電池21を充電するために、本実施形態のデジタルコードレス電話装置1には充電台5が備えられており、子機2を充電台5に載置すると、充電台5から充電用の電力が子機2の充電部25へ供給される。充電部25は、充電台5から供給された電力を、電池21を充電するために必要な電圧に変換して電池21へ出力する。
【0032】
レギュレータ22は、電池電圧Vb(例えば定格3.6V)を所定の電源電圧Vc(例えば3.3V)に降圧(レギュレート)するものであり、例えば一般によく知られたシリーズレギュレータにより構成することができる。
【0033】
このレギュレータ22からの電源電圧Vcは、上述した制御部10、音声処理部14、及びDCL無線制御部19へ供給されるのはもちろん、これら以外にも当該子機2内の各部に供給され、各部の動作用電源として用いられる。
【0034】
電池電圧計測部23は、電池電圧Vbを分圧するための、2つの抵抗R1,R2が直列接続されてなる回路により構成されている。電池電圧計測部23に入力された電池電圧Vbは、抵抗R1と抵抗R2の各抵抗値により定まる分圧比にて分圧され、その分圧値が、電池電圧Vbを示す電池電圧計測値として制御部10内のAD変換器24に入力される。
【0035】
次に、親機3の構成について概略説明する。親機3も、子機2と同様、制御の中枢を担うCPU51をはじめ、ROM52、RAM53、表示部60、操作部61を備えている。また、子機2との間で音声データ等の各種データを無線にて送受信するためのDCL無線制御部58及びアンテナ59も備えている。
【0036】
更に、親機3は、電話回線網4に接続されてダイヤル信号の送出や電話回線網4からの呼出信号への応答、音声信号やファクシミリデータの送受信などを行うNCU(網制御装置)54と、子機2の音声処理部14と同様に音声信号に対する各種処理を行う音声処理部55と、電話回線網4を介して送受信されるファクシミリデータの変調・復調等を行うモデム57と、音声信号の入出力が行われる周知のハンドセット56とを備えている。なお、親機3が有するファクシミリ送受信機能については、本発明とは直接関係ないため、その説明を省略する。
【0037】
このように構成された本実施形態のデジタルコードレス電話装置1では、上述したように、子機2と親機3とのデータ通信が、フレーム通信方式によって行われる。本実施形態におけるフレーム通信方式は、図3(a)に示すように、4つの送信用タイムスロットからなる単位送信期間TX及び4つの受信用タイムスロットからなる単位受信期間RXを1つの通信フレーム(1フレーム)として、この通信フレームにより周期的にデータ通信を行う通信方式である。
【0038】
本実施形態では、1フレームのフレーム長が10msである。4つの送信用タイムスロット及び4つの受信用タイムスロットのうちどのタイムスロットを用いてデータ通信するかについては、子機2と親機3とのデータ通信開始時に、所定のタイムスロット設定処理の実行によって定まるのであるが、ここではその詳細説明は省略する。
【0039】
また、本実施形態のフレーム通信においては、通信モードとしてシングルルモード及びマルチモードのうち何れか一方を選択的に設定可能となっている。シングルモードとは、1フレーム毎に、何れか1つのタイムスロットを用いてデータ通信を行う通信モードであり、マルチモードとは、1フレーム毎に、同一のデータを何れか2つのタイムスロットを用いて2回送信(及び受信)する通信モードである。
【0040】
図3(a)は、通信モードがシングルモードに設定され、且つ通信用のタイムスロットとして1番目のタイムスロットが設定されている例が示されている。この例では、1フレーム毎に、単位送信期間TXにおいては1番目のタイムスロットを用いてデータ送信が行われる。この場合、単位受信期間RXにおいても1番目のタイムスロットを用いてデータ受信が行われる。
【0041】
通信モードの設定は、ユーザが手動で設定できるようにしてもよいし、通信環境等に応じて自動で切り替えが行われるようにしてもよいが、本実施形態では、一例として、子機2において自動で通信モードが選択・設定されると共にその設定情報が親機3に伝送される構成であるものとして説明する。
【0042】
子機2は、後述するように、親機3から受信される電波の受信強度(RSSI)を検出できるよう構成されている。また、制御部10において、親機3から受信したデータのビットエラーレート(BER)を検出可能に構成されている。制御部10は、検出したRSSIやBERに基づいて親機3との通信品質(通信環境等)を総合的に判断し、その判断結果に基づいて通信モードを自動的に設定する。
【0043】
そのため、例えば通信環境が良好でBERが適切な値であったり或いはRSSIが高い値を示している場合には、シングルモードが設定される。逆に、通信環境が悪くてBERが悪化したりRSSIが低い値を示している場合には、マルチモードが設定される。
【0044】
(2)DCL無線制御部の構成
次に、子機2が備えるDCL無線制御部19の構成について、図2を用いて説明する。図2に示すように、DCL無線制御部19は、大きく分けて送信系の回路と受信系の回路とにより構成されている。
【0045】
送信系の回路は、制御部10から入力(指示)される基準信号に応じた周波数の送信信号(2.4GHz帯)を生成する周波数シンセサイザ31と、この周波数シンセサイザ31からの送信信号を増幅する送信アンプ34とにより構成される。
【0046】
周波数シンセサイザ31は、PLL(Phase Lock Loop ;位相同期ループ)32及びVCO(Voltage Controlled Oscillator ;電圧制御発振器)33からなる周知の構成である。制御部10からは、FHSS方式に基づき、例えば1フレーム毎に異なる周波数(チャネル)の基準信号が入力される。周波数シンセサイザ31は、制御部10から入力される基準信号に従い、一定時間毎(本例では1フレーム毎)に周波数(チャネル)がホッピングされた発振信号を生成し出力する。
【0047】
そして、データ送信時(単位送信期間TX)には、制御部10から基準信号が入力されると共に、送信データ(音声データ等)も入力される。この送信データはVCO33に入力され、これにより、VCO33からの発振信号は送信データにより変調され、その変調された発振信号が、親機3への送信信号として出力される。そして、周波数シンセサイザ31から出力された2.4GHz帯の送信信号は、送信アンプ34にて増幅され、スイッチ35を介してアンテナ20から送信される。
【0048】
一方、データ受信時(単位受信期間RX)には送信データは入力されないため、周波数シンセサイザ31からは、送信データによる変調がなされる前の状態の発振信号がそのまま出力される。
【0049】
また、送信アンプ34は、制御部10から入力される送信ゲイン指令に従ってゲインが可変設定されるよう構成されており、これにより、子機2からのデータ送信時の送信出力が可変設定できるよう構成されている。
【0050】
受信系の回路は、アンテナ20にて受信されスイッチ35を介して入力された受信信号を増幅する受信アンプ36と、この受信アンプ36により増幅された受信信号を、周波数シンセサイザ31からの発振信号を用いて中間周波数(IF:例えば数MHz帯)にダウンコンバートするミキサ37と、このミキサ37によりダウンコンバートされた受信信号からIF帯以外の信号を除去(つまりIF帯の信号のみ抽出)するフィルタ38と、このフィルタ38により抽出された受信信号を復調して受信データ(音声データ等)を出力する復調回路39と、フィルタ38により抽出された受信信号に基づいてその受信強度を示すRSSI値を検出するRSSI回路40と、により構成される。
【0051】
尚、スイッチ35は、制御部10からのスイッチ制御信号(図示略)により制御され、データ送信時には送信系の回路側へ切り替えられ、データ受信時には受信系の回路側へ切り替えられる。
【0052】
(3)子機における、電池電圧Vbに応じた送信出力の制御(低減)について
ところで、このように構成された本実施形態の子機2において、音声通話が行われている際には、図3(a)に示したフレーム通信方式にて音声データの送受信が行われるわけだが、データ通信中、特にデータ送信時には、そのデータ送信のためにDCL無線制御部19において(より詳しくは送信アンプ34において)多大な電力(大電流)が消費される。
【0053】
具体的には、図3(b)に示すように、子機2全体の消費電流は、データ送信時以外は比較的小さく、データ受信中もそれほど多くの電流を消費しないのに対し、データ送信時、即ち1番目の送信用タイムスロットの期間では、消費電流が非常に大きくなる。
【0054】
子機2全体の消費電流が大きくなるということは、即ち、レギュレータ22からの供給電流が大きくなるということである。そのため、例えば長時間通話が継続されること等によって電池21の残容量が少なくなり、電池電圧Vbが低下すると、図3(c)に示すように、データ送信時に電源電圧Vcがドロップしてしまう。そして、このように電源電圧Vcのドロップが生じると、音声処理部14の動作(AD/DA変換を含む各種処理)にも影響が生じ、高調波成分を含むノイズが音声信号に重畳して、通話音声品質が低下してしまう。
【0055】
そこで本実施形態の子機2は、電池21の残容量が不足しているか否かを、電池電圧計測部23による電池電圧計測値に基づいて判断し、電池電圧Vbが所定値より低い場合(即ち残容量が不足している場合)には、データ送信時の送信出力を低下させて消費電流を低減させることにより、データ送信時に電源電圧Vcのドロップが生じるのを抑制するようにしている。
【0056】
具体的には、制御部10において例えばROM12に、図4に示すようなRF送信出力低下量テーブルが予め設定されている。このRF送信出力低下量テーブルは、より詳しくは、通信モードがシングルモードに設定されている場合に用いられるシングルモード用テーブル(図4(a))と、通信モードがマルチモードに設定されている場合に用いられるマルチモード用テーブル(図4(b))とにより構成されている。
【0057】
このRF送信出力低下量テーブルは、電池電圧Vbの範囲毎に、RF送信出力(ここでは送信アンプ34のゲイン)を低下させるべきか否か、低下させるべきならばどの程度低下させるべきか、更には、低下させるべき場合に、低下させるならばその時のRSSI値が最低限どの程度必要か、といった情報が設定されている。
【0058】
例えば図4(a)に示すシングルモード用テーブルの場合、電池電圧Vbが3.45V以上の場合にはRF送信出力を低下させる必要はないが、3.45V未満の場合にはRF送信出力を低下させる必要があることが設定されている。
【0059】
また、3.45V未満の場合において、RF送信出力を具体的にどの程度低下させるべきかが、電池電圧Vbの範囲毎に段階的に設定されており、3.40V以上3.45V未満の場合には2dBm低下させ、3.35V以上3.40V未満の場合には4dBm低下させ、3.35V未満の場合には6dBm低下させるべきであることが設定されている。
【0060】
更に、電池電圧Vbの範囲毎に、設定されたRF送信出力低下量だけ低下させるために必要なRSSI値が設定されている。この設定されているRSSI値は、設定されたRF送信出力低下量だけ送信出力を低下させたとしても親機3との通信品質に問題は生じない(大きな劣化は生じない)ようにするために必要なRSSI値である。
【0061】
例えば電池電圧Vbが3.42Vであった場合、電源電圧Vcのドロップを抑制するためにはRF送信出力を2dBm低下させる必要があるが、2dBm低下させても親機3との通信を引き続き良好に行えるようにするためには、RSSI値として最低でも60H(単位;ヘキサ。dBmで表すと−60dBm。)は必要である。シングルモード用テーブルにはこういった情報が設定されているのであり、これはマルチモード用テーブルについても全く同様である。
【0062】
但し、シングルモードに比べてマルチモードの場合は、1フレーム中に同じ送信データが2回送信されるため、電圧ドロップもそれに応じて発生し、シングルモード時よりも電圧ドロップが大きくなるおそれがある。
【0063】
そのため、本実施形態では、図4に示すように、シングルモード時とマルチモード時とでそれぞれ個別にテーブルが用意されており、且つ、同じ電池電圧Vbでもマルチモード時の方がより大きく送信出力を低下させるようにしている。
【0064】
制御部10は、後述する送信出力制御処理を実行することにより、電池電圧VbやRSSI値をもとに、図4に示したRF送信出力低下量テーブルを参照しつつ、必要に応じてRF送信出力を低下させ、レギュレータ22からの電源電圧Vcがドロップするのを抑制するようにしている。
【0065】
図5に、制御部10のCPU11が実行する送信出力制御処理のフローチャートを示す。CPU11は、子機2と親機3の間でデータ通信が開始されるとこの送信出力制御処理を実行する。この処理が開始されると、まずS110にて、現在設定されている通信モードがシングルモードであるかマルチモードであるかを確認する。この確認の結果、シングルモードであった場合には、以下の処理ではRF送信出力低下量テーブルのうちシングルモード用テーブル(図4(a))が用いられることとなり、逆にマルチモードであった場合には、以下の処理ではマルチモード用テーブル(図4(b))が用いられることとなる。
【0066】
続くS120で、電池電圧Vbをモニタする。これは、既述の通り、電池電圧計測部23から入力される電池電圧計測値を取得することにより行われる。
そして、S130にて、S110で確認した通信モードに対応したRF送信出力低下量テーブルを参照して、S120でモニタした電池電圧VbがRF送信出力を低下すべきレベルであるか否かを判断する。このとき、例えばシングルモード時において電池電圧Vbが3.45V以上であったという場合のように、RF送信出力を低下する必要がない場合は(S130:NO)、S110に戻る。一方、例えばマルチモード時において電池電圧Vbが3.5V未満であったという場合のように、RF送信出力を低下させる必要がある場合には(S130:YES)、更にS140にて、RSSI値をモニタする。これは、DCL無線制御部19内のRSSI回路40により検出されたRSSI値を取り込むことにより行われる。
【0067】
そして、S150にて、S110で確認した通信モードに対応したRF送信出力低下量テーブルを参照して、S140でモニタしたRSSI値が必要な数値以上であるか否かを判断する。
【0068】
このとき、例えばシングルモード時において電池電圧Vbが3.38Vであって且つRSSI値が70H(−50dBm)以上であった場合は、その電池電圧Vbに対応した必要なRSSI値を満たしていることになり、よってその電池電圧Vbに対応したRF送信出力低下量である4dBmだけ低下させても問題ないということになる。
【0069】
そこで、このようにRSSI値が必要な数値以上であった場合は(S150:YES)、S160にて、RF送信出力低下量テーブルに従ってRF送信出力を低下させる。
そして、S170にて通話が終了したか否か判断し、通話が継続されている間は引き続きS110に戻って同様の処理を繰り返し、通話が終了した場合にはS180にて所定の通話終了処理を行った上でこの送信出力制御処理を終了する。
【0070】
一方、S150の判断処理において、例えばマルチモード時において電池電圧Vbが3.42Vであって且つRSSI値が60H(−60dBm)程度であった場合は、その電池電圧Vbに対応した必要なRSSI値である65H(−55dBm)を満たしていないことになり、よってその電池電圧Vbに対応したRF送信出力低下量である3dBm低下させると親機3との通信品質に影響が及んでしまうおそれがある。
【0071】
そこで、このようにRSSI値が必要な数値以上でなかった場合は(S150:NO)、S190にて、子機2のユーザに対し、親機3へ近付くように通知する。この通知の具体的方法は種々考えられ、例えば、スピーカ16からアラーム音を出力させてもよいし、表示部17に何らかの表示をさせるようにしてもよい。
【0072】
そして、あらためてRSSI値を取得すると共に、S200にて、S150と同様にRSSI値が必要な数値以上であるか否かを判断する。そして、必要な数値になった場合は(S200:YES)、S160に進み、既述の通りRF送信出力を低下させる。
【0073】
S190による通知後、RSSI値がすぐには必要な数値以上とならなくても、一定期間(設定されたタイムアウト期間)はS190の通知を継続する(S210:NO)。そして、RSSI値が必要な数値以上にならないままタイムアウトした場合は(S210:YES)、S220にて、子機2のユーザへ通話終了することを通知し、S180の通話終了処理へ進む。
【0074】
(4)実施形態の効果等
以上説明したように、本実施形態のデジタルコードレス電話装置1では、子機2が、電池電圧Vbに基づき、図4に示したRF送信出力低下量テーブルを参照して、RF送信出力を低下させるべきか否か判断する。そして、RF送信出力を低下させるべきと判断した場合には、テーブルに設定されているRF送信出力低下量だけRF送信出力を低下させるようにしている。
【0075】
このようにRF送信出力を低下させることで、図6(a)に示すように、データ送信時における子機2内での消費電流は、RF送信出力を低下させない通常時の値Iaよりも低い値Ibに低減される。そのため、図6(b)に示すように、電池電圧Vbが定格より低い値(例えば3.4V)に低下していたとしても、データ送信時における電源電圧Vcのリップル発生は抑制される。
【0076】
そのため、本実施形態の子機2によれば、電池電圧Vbが低下(即ち電池の残容量が低下)しても、送受信されるデータの品質を良好に維持しつつ、当該子機2を長時間動作させることが可能となる。
【0077】
特に本実施形態では、子機2と親機3との間で音声信号(音声データ)が送受信されることから、仮に電源電圧Vcのドロップが発生すると、それが通話音声へのノイズ重畳として反映されてユーザに与える影響が大きくなるおそれがある。これに対し、本実施形態の子機2によれば、そういった通話音声へのノイズ混入等の問題を防ぐことができ、尚且つ、電池電圧Vbが低下しても良好な通話品質を維持しつつ長時間の通話が可能となるため、より効果的である。
【0078】
また、データ送信時に子機2での消費電流を低減させる具体的方法は種々考えられ、DCL無線制御部19以外の他の機能を抑制することによっても可能であるが、本実施形態のように、DCL無線制御部19にてデータ送信時に消費される電流を低減させる(送信アンプ34のゲインを低下させる)ようにすれば、データ送信時の大電流消費を直接的且つ効果的に抑制することができるため、より好ましい。
【0079】
また、本実施形態では、電池電圧Vbの低下によってRF送信出力を低下させる必要がある場合に、無条件にRF送信出力を低下させるのではなく、その時の親機3との通信品質(本例ではRSSI値)を確認する。そして、親機3との通信品質がRF送信出力を低下させても問題ないレベルである場合に低下させるようにしている。そのため、電源電圧Vcのドロップを抑制すべくRF送信出力を低下したがために親機3とのデータ通信品質そのものに影響が生じてしまうといった事態の発生が防止される。
【0080】
しかも、電池電圧Vbに対してRF送信出力をどの程度低下させるべきかが、その送信出力低下に必要なRSSI値と共に、電池電圧Vbのレベル(範囲)に応じて段階的に設定されている。そのため、親機3とのデータ通信品質そのものに影響が生じることを防止しつつ、電池電圧Vbに応じた適切な(必要十分な)送信出力の低下が可能となる。
【0081】
また、本実施形態ではフレーム通信方式のデータ通信が行われるため、仮にデータ送信の度に電源電圧Vcのドロップが生じてしまうと、そのドロップは周期的に生じることになり、結果、周期的なリップルを含む電源電圧Vcが子機2内の各部に供給されることになる。すると、高次高調波を含むノイズが発生して通話音声の品質をより悪化させてしまうおそれがある。
【0082】
これに対し、本実施形態の子機2は、電池電圧Vbが低い場合にはRF送信出力を低下させて電源電圧Vcのドロップを抑制するようにしているため、上述した高次高調波の発生に伴う通話品質の悪化を防ぐことも可能となる。
【0083】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素の対応関係を明らかにする。本実施形態において、DCL無線制御部19は本発明の無線通信手段に相当し、音声処理部14は本発明のデータ処理手段に相当し、電池電圧計測部23は本発明の残容量取得手段に相当し、RSSI回路40は本発明の通信品質情報取得手段に相当し、図4に示したRF送信出力低下量テーブルは本発明の低減量設定手段に相当し、RF送信出力低下量テーブルの最左列において段階的に区分されている電池電圧の各範囲はそれぞれ本発明の残容量不足範囲に相当し、RF送信出力低下量テーブルの最右列において電池電圧の範囲毎に設定されている各RSSI値はそれぞれ本発明の通信品質判定基準に相当し、RF送信出力低下量テーブルの中央列において電池電圧の範囲毎に設定されている各RF送信出力低下量はそれぞれ本発明の低減量に相当し、シングルモードは本発明の第1通信モードに相当し、マルチモードは本発明の第2通信モードに相当する。また、制御部10(CPU11)は、本発明の残容量判断手段、通信モード設定手段、及び通知手段に相当する。
【0084】
また、電池21とレギュレータ22とにより本発明の電源手段が構成され、制御部10(CPU11)と送信アンプ34とにより本発明の電流低減手段が構成され、マイク15とスピーカ16とにより本発明の音声信号入出力手段が構成される。
【0085】
[変形例]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0086】
例えば、上記実施形態では、データ送信時の消費電流を抑えるための具体的方法として送信アンプ34のゲインを下げる方法を採用したが、これは消費電流低減のための具体的方法の一例であり、他の方法によってデータ送信時の消費電流を低減させるようにしてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、電池電圧Vbが低下してRF送信出力を低下させるべき状況となった場合における通信品質のモニタ方法として、RSSI値をモニタするようにしたが、RSSI値をモニタすること(延いてはRSSI値に基づいてRF送信出力の低下の可否を決めること)はあくまでも一例であり、RSSI値以外の他のパラメータ等を用いても良い。例えば、BERを測定し、BERが所定レベルを満たしている場合にRF送信出力の低下を許可するようにしてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、電池21の残容量が不足しているか否かを、電池電圧Vbに基づいて判断し、電池電圧Vbが低下している場合にはその値に応じてRF送信出力を低下させるようにしたが、RF送信出力を低下させるべきか否かの判断を電池電圧Vbに基づいて行うのもあくまでも一例であり、電池電圧Vb以外に、電池21の残容量を直接的又は間接的に示す情報を取得できれば、その情報に基づいてRF送信出力を低下させるべきか否か判断するようにしてもよい。
【0089】
具体的には、例えば、電池21が満充電状態となってからの連続通話時間に基づいて電池21の残容量或いは電池電圧Vbを予測し、その予測結果に基づいてRF送信出力を低下させるべきか否か判断するようにしてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、レギュレータ22からの電源電圧Vcによって各部が動作するよう構成された子機2について説明したが、電池電圧Vbによって直接動作するような無線通信機器に対しても本発明の適用が可能である。
【0091】
また、上記実施形態では、本発明をデジタルコードレス電話装置1に適用した場合について説明したが、本発明は、無線にてデータ通信を行う種々の無線通信機器、無線通信システムに対して適用することが可能である。
【符号の説明】
【0092】
1…デジタルコードレス電話装置、2…子機、3…親機、4…電話回線網、5…充電台、10…制御部、11,51…CPU、12,52…ROM、13,53…RAM、14,55…音声処理部、15…マイク、16…スピーカ、17,60…表示部、18,61…操作部、19,58…DCL無線制御部、20,59…アンテナ、21…電池、22…レギュレータ、23…電池電圧計測部、24,26…AD変換器、25…充電部、27…データ処理部、28…DA変換器、29…バス、31…周波数シンセサイザ、32…PLL、33…VCO、34…送信アンプ、35…スイッチ、36…受信アンプ、37…ミキサ、38…フィルタ、39…復調回路、40…RSSI回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信対象と無線にて相互にデータ通信可能な無線通信機器であって、
電池を有し、該電池の電力に基づく電源電力を供給する電源手段と、
前記電源手段から供給される電源電力により動作し、送信データを無線にて送信する機能、及び前記通信対象から送信されたデータを受信する機能を有する無線通信手段と、
前記電源手段から供給される電源電力により動作し、少なくとも、所定のデータ処理を行うことにより前記送信データを生成するデータ処理手段と、
前記電池の残容量を直接又は間接的に取得する残容量取得手段と、
前記残容量取得手段により取得された前記残容量が、予め設定された残容量閾値より小さい残容量不足範囲内にあるか否かを判断する残容量判断手段と、
前記残容量判断手段によって前記残容量が前記残容量不足範囲内にあると判断された場合に、前記無線通信手段による前記送信データの送信時に前記電源手段から出力される電流を低減させる電流低減手段と、
を備えたことを特徴とする無線通信機器。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信機器であって、
前記電流低減手段は、前記送信データの送信時における前記電流の低減を、前記無線通信手段において該送信データの送信のために必要な電流を低減させることにより行う
ことを特徴とする無線通信機器。
【請求項3】
請求項2に記載の無線通信機器であって、
前記通信対象との通信品質を示す通信品質情報を取得する通信品質情報取得手段を備え、
前記電流低減手段は、前記残容量判断手段によって前記残容量が前記残容量閾値を下回っていると判断された場合、前記通信品質情報取得手段により取得された前記通信品質情報が示す前記通信品質が、予め設定された通信品質判定基準を満たしていたならば、前記電源手段から出力される電流を低減させる
ことを特徴とする無線通信機器。
【請求項4】
請求項3に記載の無線通信機器であって、
前記通信品質情報取得手段により取得された前記通信品質情報に基づき、前記通信品質が前記通信品質判定基準を満たしていなかった場合に、その旨を通知する通知手段を備えている
ことを特徴とする無線通信機器。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の無線通信機器であって、
前記残容量不足範囲は、一又は複数の範囲に分けて段階的に設定されており、
前記範囲毎に、前記電流低減手段にて低減させるべき電流の量を示す低減量が予め設定された低減量設定手段を備え、
前記電流低減手段は、前記残容量判断手段によって前記残容量が前記残容量不足範囲内にあると判断された場合、該残容量が前記複数の範囲のうち何れの範囲内にあるか判断し、前記低減量設定手段において該判断した範囲に対して設定されている前記低減量に従って、前記電流を低減させる
ことを特徴とする無線通信機器。
【請求項6】
請求項3又は請求項4に記載の無線通信機器であって、
前記残容量不足範囲は、一又は複数の範囲に分けて段階的に設定されており、
前記範囲毎に、前記電流低減手段にて低減させるべき電流の量を示す低減量、及び、該低減量だけ前記電流を低減させてもよいか否かの判断基準としての前記通信品質判定基準が予め設定された低減量設定手段を備え、
前記電流低減手段は、前記残容量判断手段によって前記残容量が前記残容量不足範囲内にあると判断された場合、該残容量が前記複数の範囲のうち何れの範囲内にあるか判断すると共に、前記通信品質情報取得手段により取得された前記通信品質情報が示す前記通信品質が、前記低減量設定手段において該判断した範囲に対して設定されている前記通信品質判定基準を満たしているか否か判断し、該通信品質判定基準を満たしていたならば、前記低減量設定手段において該判断した範囲に対して設定されている前記低減量に従って前記電流を低減させる
ことを特徴とする無線通信機器。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の無線通信機器であって、
当該無線通信機器は、前記通信対象との間で、一又は複数の送信用タイムスロットからなる単位送信期間及び一又は複数の受信用タイムスロットからなる単位受信期間により構成される通信フレームを1周期とする通信方式にて無線通信を行うと共に、前記単位送信期間においては、予め設定された少なくとも1つの前記送信用タイムスロットを用いて前記送信データを送信するよう構成されている
ことを特徴とする無線通信機器。
【請求項8】
請求項5又は請求項6に記載の無線通信機器であって、
当該無線通信機器は、前記通信対象との間で、一又は複数の送信用タイムスロットからなる単位送信期間及び一又は複数の受信用タイムスロットからなる単位受信期間により構成される通信フレームを1周期とする通信方式にて無線通信を行うと共に、前記単位送信期間においては、予め設定された少なくとも1つの前記送信用タイムスロットを用いて前記送信データを送信するよう構成されており、
前記単位送信期間における前記送信データの送信を、前記複数の送信用タイムスロットのうち何れか1つを用いて行う第1通信モード、若しくは2つ以上の前記送信用タイムスロットを用いてそれぞれ同一の前記送信データを送信する第2通信モード、の何れか一方の通信モードを選択的に設定可能な通信モード設定手段を備え、
前記低減量設定手段は、前記通信モード毎に個別に備えられており、
前記電流低減手段は、前記残容量判断手段によって前記残容量が前記残容量不足範囲内にあると判断された場合、該判断時に設定されている前記通信モードに対応した前記低減量設定手段の設定内容に基づいて動作するよう構成されている
ことを特徴とする無線通信機器。
【請求項9】
請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の無線通信機器であって、
音声信号を入出力可能な音声信号入出力手段を備え、
前記データ処理手段は、前記音声信号入出力手段により入力された音声信号を前記送信データとしての音声データに変換する機能を有すると共に、前記無線通信手段により受信された前記通信対象からの音声データを前記音声信号入出力手段にて出力可能な音声信号に変換する機能を有している
ことを特徴とする無線通信機器。
【請求項10】
請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の無線通信機器と、
前記無線通信機器と無線にて相互にデータ通信可能な前記通信対象としての通信装置と、
を備えたことを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−176575(P2011−176575A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38711(P2010−38711)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】