説明

無線LAN通信システム、コントローラ装置、無線LAN基地局及びそれらに用いる無線LAN通信方法

【課題】 無線LAN基地局が通話数を制限する目的で、着信呼が発生した無線LAN端末を切断した場合でも、発信者が直ちに着信呼を切断することを防止することが可能な無線LAN通信方法を提供する。
【解決手段】 無線LAN基地局(#1)4−1へ収容される無線LAN端末6の通話数の制限を行う無線LAN通信システムにおいて、無線LAN基地局(#1)4−1及び無線LAN端末6を管理するコントローラ2が、通話数の制限の対象となる無線LAN端末6が応答できるようになるまで当該無線LAN端末6への着信呼に対して、PBX1に代理応答を行う処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線LAN通信システム、コントローラ装置、無線LAN基地局及びそれらに用いる無線LAN通信方法に関し、特に切断された無線LAN(Local Area Network)端末への呼が着信呼であった場合の無線LAN通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する無線LAN基地局については、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)802.11に規定されており、VOIP(Voice Over Internet Protocol)音声通話を収容する際、他の無線LAN端末の帯域があふれたり、他の無線LAN端末のVOIP通話数が許容量を超えた場合、通話品質の低下を防ぐ目的で新たなVOIP通話の発生を防止するため、無線LAN端末を帰属させないことで既存の通話品質を確保している。
【0003】
しかしながら、既に無線LAN基地局に帰属している無線LAN端末が通話を開始しようとすると、VOIP通話が増加することで無線LANの帯域使用率が増大するため、既存のVOIP通話の通話品質が低下してしまう。この問題に対し、無線LAN基地局では、通話を行った、または行おうとする無線LAN端末を切断することでVOIP通話の増加を防止している。
【0004】
また、切断された無線LAN端末の呼が着信呼であった場合、無線LAN端末が別の無線LAN基地局へ帰属して、着信呼のパケットを受信できるようになるまで時間が掛かると、PBX(Private Branch eXchange)側で発信をタイムアウトさせてしまい、着信が再開しなくなるという問題がある。
【0005】
一般的に、SIP(Session Initiation Protocol)において、着信側が応答パケットを返さない場合の発信者側のタイムアウトは合計して32秒と推奨されているが、ほとんどのPBXでは、無線LAN端末が圏外であった場合のタイムアウトが数秒と短く定義されている。
【0006】
このため、無線LAN基地局が通話数を制限する目的で、着信呼が発生した無線LAN端末を切断した場合、無線LAN端末が別の無線LAN基地局に帰属した後でも着信が再開せず、着信呼を破棄(Drop)してしまうという問題が見られる。
【0007】
尚、本発明に関連する技術としては、下記の特許文献に記載の技術がある。
【特許文献1】特開2005−318344号公報
【特許文献2】特開2000−341414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明に関連する無線LAN基地局では、VOIP通話数やデータの帯域が許容量を超えた場合、データの帯域を絞り、新たなVOIP通話を行った無線LAN端末を切断することで既存の通話品質を確保している。
【0009】
切断された無線LAN端末は、別の無線LAN基地局に帰属する。無線LAN基地局が新たなVOIP通話を行った無線LAN端末を切断する際、VOIP通話が無線LAN端末からの発信であった場合、発信失敗が即座に使用者に判断できる。
【0010】
しかしながら、この場合には、VOIP通話が無線LAN端末への着信であり、無線LAN端末がPBXが定める発信のタイムアウト時間までに何れの無線LAN基地局にも帰属できず、VOIP着信を再開することができなかった場合、無線LAN端末へ発信した発信者において、無線LAN端末が話中状態であるとみなされ、通話が切断されてしまう。この時、PBXも、無線LAN端末が着信呼のパケットの再送もほとんど行わず、短い時間で無線LAN端末がビジー状態であると判断する場合も多い。
【0011】
また、無線LAN基地局またはコントローラが無線LAN端末の無線LAN帰属状態を管理し、PBXへ通知する通信方法もあるが、無線LAN基地局の他、独自の改造を施した専用の無線LAN端末またはPBXが必要となる。
【0012】
さらに、無線LAN基地局またはコントローラが無線LAN端末の無線LAN帰属状態を管理し、PBXへ通知する通信方法をとった場合には、単一のPBXとコントローラとの組み合わせしか提供できなくなる。このため、無線LAN基地局に複数のPBXシステムのVOIP通話が存在する場合、通話数制限を提供することができない。
【0013】
さらにまた、エリア内の全ての無線LAN基地局が通話数制限を行っている状態で、新たな発信呼または着信呼を有する無線LAN端末を何れかの無線LAN基地局で管理し、それをPBXへ通知する通信方法もあるが、無線LAN基地局の他、独自の改造を施した専用の無線LAN端末またはPBXが必要となる。
【0014】
そこで、本発明の目的は上記の問題点を解消し、無線LAN基地局が通話数を制限する目的で、着信呼が発生した無線LAN端末を切断した場合でも、発信者が直ちに着信呼を切断することを防止することができる無線LAN通信システム、コントローラ装置、無線LAN基地局及びそれらに用いる無線LAN通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による無線LAN通信システムは、無線LAN(Local Area Network)基地局へ収容される無線LAN端末の通話数の制限を行う無線LAN通信システムであって、
前記通話数の制限の対象となる無線LAN端末が応答できるようになるまで当該無線LAN端末への着信呼に対して代理応答を行う手段を備えている。
【0016】
本発明によるコントローラ装置は、上記の無線LAN通信システムの手段を有することを特徴とする。
【0017】
本発明による無線LAN基地局は、上記の無線LAN通信システムの手段を有することを特徴とする。
【0018】
本発明による無線LAN通信方法は、無線LAN(Local Area Network)基地局へ収容される無線LAN端末の通話数の制限を行う無線LAN通信システムに用いる無線LAN通信方法であって、
前記無線LAN基地局及び前記無線LAN端末を管理するコントローラ装置が、前記通話数の制限の対象となる無線LAN端末が応答できるようになるまで当該無線LAN端末への着信呼に対して代理応答を行う処理を実行している。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、上記のような構成及び動作とすることで、無線LAN基地局が通話数を制限する目的で、着信呼が発生した無線LAN端末を切断した場合でも、発信者が直ちに着信呼を切断することを防止することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態による無線LAN(Local Area Network)通信システムの構成例を示すブロック図である。図1において、本発明の第1の実施の形態による無線LAN通信システムは、PBX(Private Branch eXchange)1と、コントローラ2と、ルータ(#1,#2)3−1,3−2と、無線LAN基地局(#1〜#3)4−1〜4−3と、無線LAN端末群5と、無線LAN端末6とから構成されている。
【0021】
ここで、ルータ(#1,#2)3−1,3−2はL3(レイヤ3)スイッチでもよい。また、図1において、101は無線LAN基地局(#1)4−1と無線LAN端末群5及び無線LAN端末6とを接続する無線通信路、102はルータ(#1)3−1と無線LAN基地局(#1,#2)4−1,4−2とを接続する通信路である。無線LAN端末群5は既に通話を行っている複数の端末であり、無線LAN端末6は新たな着信通話を行おうとしている端末である。
【0022】
無線LAN基地局(#1)4−1は無線LAN端末群5及び無線LAN端末6を収容し、現在、無線LAN端末群5によって通話数があふれている基地局であり、無線LAN基地局(#2)4−2は無線LAN端末6が次に帰属するであろう基地局であり、無線LAN基地局(#3)4−3は無線LAN端末6が次に帰属するであろうサブネット外の基地局である。
【0023】
図2は図1のコントローラ2及び無線LAN基地局(#1)4−1の構成例を示すブロック図である。図2において、コントローラ2は、IEEE802.3 Ethernet(登録商標)インタフェース(以下、LAN I/F部とする)21と、トーキ送出部22と、帰属情報管理部23と、帰属情報テーブル24と、AP(Access Point)テーブル25と、パケット変換部26と、呼処理解析部27と、ログ保存部28と、アラーム表示部29とを備えている。
【0024】
無線LAN基地局(#1)4−1は、パケットフィルタ部41と、LAN I/F部42と、パケット変換部43と、ARP(Address Resolution Protocol)解析部44と、ARPテーブル45と、IEEE802.11インタフェース(以下、802.11 I/F部とする)46とを備えている。尚、無線LAN基地局(#2,#3)4−2,4−3は上記の無線LAN基地局(#1)4−1と同様の構成とする。
【0025】
図3は図2の帰属テーブル24の構成例を示す図である。図3において、帰属テーブル24は「端末MAC(Media Access Control)アドレス」、「呼状態(0:空き、1:通話中)」、「着信呼のパケットのペイロード」を保持しており、APテーブル25は基地局SSID(Service Set IDentifier)」、「ESSID(Extended Service Set IDentifier)」を保持している。
【0026】
図4は本発明の第1の実施の形態における呼状態情報を示す図である。図4において、呼状態情報Aは、「端末MACアドレス」、「送信元IP(Internet Protocol)アドレス」、「送信先IPアドレス」、「着信呼のパケットのペイロード」からなる。
【0027】
図5は本発明の第1の実施の形態における呼状態継続可否を示す図である。図4において、呼状態継続可否Bは、「呼状態継続可否(0:可、1:不可)」からなる。
【0028】
図6は図1のコントローラ2が無線LAN基地局(#1)4−1に対して無線LAN端末6を切断する旨を通知する際の動作を示すシーケンスチャートであり、図7は本発明の第1の実施の形態による無線LAN通信システムの動作を示すタイムチャートであり、図8は本発明の第1の実施の形態による無線LAN通信システムにおける端末帰属時の動作を示すシーケンスチャートである。これら図1〜図8を参照して本発明の第1の実施の形態による無線LAN通信システムの動作について説明する。
【0029】
無線LAN基地局(#1)4−1は、無線LAN端末6を収容する802.11 I/F部46と、PBX1及びコントローラ2との通信を実現するLAN I/F部42とを有し、無線LAN端末6が帰属すると、コントローラ2へ帰属情報を通知する。
【0030】
コントローラ2は、無線LAN基地局(#1)4−1から帰属情報を受信した際、APテーブル25から情報を検索し、無線LAN基地局(#1)4−1の帰属情報テーブル24に無線LAN端末6のMACアドレスと呼状態とからなる帰属情報を保存する(図3参照)。
【0031】
無線LAN基地局(#1)4−1は、現在収容されている無線LAN端末6が発信を行うか、PBX1から着信呼のパケットが到着した際(図6のa2)、パケットを即座に無線LAN端末6へ送信せず、呼状態情報をコントローラ2に送信する(図6のa3)。
【0032】
コントローラ2は無線LAN基地局(#1)4−1から呼状態情報を受信した際、呼処理解析部27において着信呼のパケットを分析し、帰属情報テーブル24に呼状態と着信呼のパケットとを加える。
【0033】
この時、コントローラ2は、APテーブル25配下の無線LAN端末毎の帰属情報テーブル24の合計を再計算し(図6のa4)、呼状態継続可否B(図5参照)を無線LAN基地局(#1)4−1へ通知する(図6のa5)。通話数の合計が無線LAN基地局(#1)4−1の許容量を超えていた場合、コントローラ2は、呼状態継続可否Bに「1:不可」を設定して無線LAN基地局(#1)4−1へ送信する。
【0034】
無線LAN基地局(#1)4−1は呼状態継続可否B(0:可)を受信すると、パケットフィルタ部41において、着信呼のパケットを通過させる。無線LAN基地局(#1)4−1は呼状態継続可否B(1:不可)を受信すると、パケットフィルタ部41において、着信呼のパケットを破棄し(パケットDrop)(図6のa6)、無線LAN端末6上で着信が発生することを防ぎ、802.11 I/F部46において、無線LAN端末6を切断することで(図6のa7)、無線LAN端末6の別の無線LAN基地局への移動を促す。
【0035】
無線LAN基地局(#1)4−1において無線LAN端末6宛の着信呼が破棄された場合(切断成功通知)(図6のa8)、コントローラ2は、無線LAN端末6が無線LAN基地局(#1)4−1とは別の無線LAN基地局へ帰属するまで、着信呼に対してPBX1宛に代理応答する(図6のa9)。PBX1はこの代理応答を受けて、発信者に応答を返す(図6のa10)。
【0036】
着信呼に応答したコントローラ2は、トーキ送出部22からトーキ(電話サービスにおける自動音声ガイダンス)を送出し(図6のa11)、無線LAN端末6宛に発信した発信者に対し、無線LAN端末6が現在応答できない状態である旨を伝える(RTP:Real−time Transport Protocol)(図6のa12)。
【0037】
この時、発信者に対して、着信呼をIVR(Interactive Voice Response)へ転送することで、着信呼の宛先の無線LAN端末6がいずれかの無線LAN基地局へ帰属して応答可能となった際、発信者へコールバックすることを約束し、発信者へ発信者の電話番号を問い合わせるプロンプトを送出しても良い。
【0038】
無線LAN基地局(#2)4−2[または無線LAN基地局(#3)4−3]は、無線LAN端末6が帰属した際(図8のb1)、コントローラ2に無線LAN端末6に対する着信呼のパケットがないかを問い合わせる(帰属通知)(図8のb2)。
【0039】
コントローラ2は、無線LAN端末6に対する着信呼のパケット有無の問い合わせを無線LAN基地局(#2)4−2[または無線LAN基地局(#3)4−3]から受信した際、帰属情報テーブル24から無線LAN端末6の無線LAN端末に対する着信呼のパケットを検索し、着信呼のパケットを無線LAN端末6宛に送信する(図8のb3)。
【0040】
無線LAN基地局(#2)4−2[または無線LAN基地局(#3)4−3]は、無線LAN端末6が帰属した際、無線LAN端末6がブロードキャスト宛に発行するARPパケットをARP解析部44にて解析し、ARPテーブル45に保存する。
【0041】
無線LAN端末6が無線LAN基地局(#2)4−2[または無線LAN基地局(#3)4−3]へ帰属した後にARPを発行しない場合、無線LAN基地局(#2)4−2[または無線LAN基地局(#3)4−3]はARPテーブル45を更新するために、ブロードキャスト宛、または無線LAN端末6のMACアドレス宛にARP要求を発行しても良い。
【0042】
無線LAN基地局(#2)4−2は、ルータ(#2)3−2で分割された無線LAN基地局(#3)4−3とは異なるサブネットに属するため、IPアドレスが変更される可能性があり、無線LAN基地局(#2)4−2内のパケット変換部43にて、無線LAN端末6へ着信呼のパケットを送信する前に、着信呼のパケット内のペイロード内のアドレス情報を、ARPテーブル45で解決された新しいアドレスに変換して送信する。
【0043】
無線LAN基地局(#1)4−1から切断された無線LAN端末6が、無線LAN基地局(#2)4−2または無線LAN基地局(#3)4−3のいずれかに帰属し、着信呼のパケットを受信した後、その着信呼に対して無線LAN端末6が鳴動成功した場合(図8のb8)、コントローラ2は発信者へ流したトーキの呼(図8のb1)を保留し、PBX1を介して発信者を非保留状態とすることで、発信者に対して保留音を送出する(図8のb5〜b7)。
【0044】
保留が成功した場合、コントローラ2はPBX1に対して、無線LAN端末6に転送中で、鳴動中である旨の発信者へのRBT(Ring Back Tone)を送出し、発信者の非保留状態を解除し、呼出状態転送とする(図8のb9〜b13)。
【0045】
上記のように、無線LAN基地局(#1)4−1が無線LAN端末6を切断してから、コントローラ2が発信者に対して呼出状態を転送するまでの動作を図7に示す。
【0046】
無線LAN基地局(#1)4−1から切断された無線LAN端末6が、エリア内の全ての無線LAN基地局の何れにも帰属できなかった場合、コントローラ2は、最後に無線LAN端末6が帰属していた無線LAN基地局(#1)4−1と、無線LAN端末6のMACアドレスとをアラーム表示部29に表示し、アラームをログ保存部28に保存することで、管理者にイベントを通知する。
【0047】
その他、アラーム表示部29はSNMP(Simple Network Management Protocol)で別ホストへ通知したり、管理者のメールアドレスに自動的にメールを送信してもよい。
【0048】
また、無線LAN基地局(#1)4−1から切断された無線LAN端末6が、エリア内の全ての無線LAN基地局の何れにも帰属できなかった場合、コントローラ2は、例えばPBX1の内線番号毎や、SIP(Session Initiation Protocol)アドレス毎に無線LAN基地局の利用者のメールアドレスを保持し、無線LAN基地局の利用者のメールアドレスに自動的にメールを送信してもよい。
【0049】
このように、本実施の形態では、制限した着信呼に対して代理応答しているので、無線LAN基地局が通話数を制限する目的で、着信呼が発生した無線LAN端末を切断した場合でも、発信者が直ちに着信呼を切断することを防止することできる。
【0050】
また、本実施の形態では、PBX1が発信した呼の比較的短いタイムアウトを、コントローラ2が着信呼に対して代理応答しているので、延長することができる。
【0051】
さらに、本実施の形態では、コントローラ2と無線LAN基地局(#1)4−1とが無線LAN端末6の代理を行うことで、無線LAN基地局(#1)4−1に複数のPBXと無線LAN端末との組み合わせについて、通話数制限を提供することができる。
【0052】
さらにまた、本実施の形態では、コントローラ2が管理者または利用者に、呼があふれた旨の通知を行っているので、管理者が無線LAN基地局の収容能力不足を分析することができる。
【0053】
図9は本発明の第2の実施の形態による無線LAN通信システムの構成例を示すブロック図である。図9において、本発明の第2の実施の形態による無線LAN通信システムは、その基本的構成が上記の本発明の第1の実施の形態による無線LAN通信システムと同様であるが、ルータがないレイヤ2のみの構成についてさらに工夫している。
【0054】
図9において、ルータを介さないレイヤ2のみの構成の場合、レイヤ3の再帰属は発生し得ず、無線LAN基地局(#1,#2)4−1,4−2は各無線LAN基地局で独立して通話数のカウントを行い、通話数があふれ、新たな着信呼を持つ無線LAN端末6を切断した無線LAN基地局(#1)4−1は、上記のコントローラ2の機能(帰属情報テーブル24の管理、代理応答、アラーム表示等の機能)を包括し、無線LAN基地局(#2)4−2が上記のコントローラ2の機能(着信呼のパケットの検索・送信、発信者に対する保留音送出、呼出状態の転送等の機能)を包括することで、コントローラ2を使用せずに構成してもよい。
【0055】
その場合、無線LAN基地局(#1,#2)4−1,4−2から見ると、コントローラ2はルータ(#1,#2)3−1,3−2の先に設置されているため、コントローラ2のIPアドレスを無線LAN基地局(#1,#2)4−1,4−2に設定し、無線LAN基地局(#1,#2)4−1,4−2とコントローラ2との通信はユニキャストで行われる。
【0056】
しかしながら、上記の無線LAN基地局(#1)4−1からコントローラ2への着信呼の通知は、無線LAN基地局内部で処理されるために必要なく、上記の着信呼を有する無線LAN端末6を切断した無線LAN基地局(#1)4−1は、同一サブネット内のいずれかの無線LAN基地局が切断した無線LAN端末を収容することを期待し、ブロードキャスト宛に切断通知を行う。
【0057】
切断通知を受信した無線LAN基地局(#2)4−2は、切断された着信呼を有する無線LAN端末6が収容された場合、コントローラ2の代わりに無線LAN基地局(#1)4−1へ帰属の通知を行い、無線LAN基地局(#1)4−1は、着信呼を無線LAN基地局(#2)4−2宛に送信することで、上述したような着信呼のパケットの検索・送信の操作を行う。
【0058】
このように、本実施の形態では、無線LAN基地局がコントローラの機能を代行しているので、コントローラレスのメッシュ型のネットワークを組めるという効果が得られる。本構成において、レイヤ2のみの構成に限り、コントローラは任意の無線LAN基地局で構成してもよい。
【0059】
すなわち、本発明は、無線LAN基地局において、無線LAN基地局へ収容される無線LAN端末(VOIP)の通話数の制限を行うに当たり、無線LAN端末が応答できるようになるまで、VOIP着信呼が制限された無線LAN端末の代わりに、コントローラまたは無線LAN基地局が代理応答を行うことで、呼損率を低下させ、応答性を高めることを特徴としている。
【0060】
この場合、コントローラは、無線LAN基地局毎に通話数をカウントする手段と、着信呼のパケットを無線LAN基地局・無線LAN端末毎に記録する手段と、無線LAN基地局・無線LAN端末毎に呼状態を記録する手段と、無線LAN基地局に着信呼の宛先の無線LAN端末を切断させる通知を行う手段と、無線LAN端末が圏内に復帰するまで着信呼の宛先に代理応答してトーキを送出する手段と、無線LAN端末が圏内に復帰後、着信呼を保留して自動的に無線LAN端末へ転送することで、着信呼を再開させる手段と、無線LAN基地局の通話数のあふれにより切断した無線LAN端末があった場合、無線LAN基地局の増設を促すアラームを表示する手段と、無線LAN基地局の通話数のあふれによって切断した無線LAN端末があった場合、無線LAN基地局の増設を促すログを保存する手段とを有している。
【0061】
無線LAN基地局は、無線LAN端末へのパケットがVOIP通話であることを判別する手段と、着信呼のパケットをコントローラへ送信する手段と、無線LAN端末への着信呼が制限されたもので、無線LAN端末のIPアドレスが切断前後で変更されたものがある場合に着信呼のパケットを変換する手段とを有している。
【0062】
IEEE802.11 インフラストラクチャ型の無線通信方式を行う無線LAN基地局は、現在収容中の複数の無線LAN端末がVOIP通話を開始した場合、通話数をカウントする。無線LAN基地局は、収容中のVOIP通話のトラフィックが増大して閾値を超え、無線LAN端末へPBXから着信呼が発生した場合、既に通話を行っている無線LAN端末群の通話品質を確保するために、新たな着信呼が発生した無線LAN端末を切断する。
【0063】
無線LAN基地局は、無線LAN端末が他の無線LAN基地局へ帰属した後、コントローラへ着信のVOIP呼処理パケットを送信する。他の無線LAN基地局は、無線LAN端末が配下に帰属した際、コントローラから着信のVOIP呼処理パケットを受信する。他の無線LAN基地局は、配下に帰属した無線LAN端末へ着信のVOIP呼処理パケットを送信し、着信を再開させる。
【0064】
この時、コントローラは、予め設定された発信タイムアウトを過ぎても無線LAN端末がどの無線LAN基地局へも帰属できなかった場合、着信のVOIP呼処理パケットに対して代理応答する。無線LAN端末がいずれかの無線LAN基地局へ帰属した場合、コントローラは無線LAN基地局へ着信のVOIP呼処理パケットを送信し、着信を再開させる。
【0065】
このように、本発明では、無線LAN端末への着信呼へ代理応答することで、着信呼の確率の成功率を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、IEEE802.11 無線LAN端末を収容するVOIP PBXシステムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施の形態による無線LAN通信システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】図1のコントローラ及び無線LAN基地局の構成例を示すブロック図である。
【図3】図2の帰属テーブルの構成例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における呼状態情報を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における呼状態継続可否を示す図である。
【図6】図1のコントローラが無線LAN基地局に対して無線LAN端末を切断する旨を通知する際の動作を示すシーケンスチャートである。
【図7】本発明の第1の実施の形態による無線LAN通信システムの動作を示すタイムチャートである。
【図8】本発明の第1の実施の形態による無線LAN通信システムにおける端末帰属時の動作を示すシーケンスチャートである。
【図9】本発明の第2の実施の形態による無線LAN通信システムの構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0068】
1 PBX
2 コントローラ
3−1,3−2 ルータ(#1,#2)
4−1〜4−3 無線LAN基地局(#1〜#3)
5 無線LAN端末群
6 無線LAN端末
21,42 IEEE802.3 Ethernet(登録商標)インタフェース
22 トーキ送出部
23 帰属情報管理部
24 帰属情報テーブル
25 APテーブル
26 パケット変換部
27 呼処理解析部
28 ログ保存部
29 アラーム表示部
41 パケットフィルタ部
43 パケット変換部
44 ARP解析部
45 ARPテーブル
46 IEEE802.11インタフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線LAN(Local Area Network)基地局へ収容される無線LAN端末の通話数の制限を行う無線LAN通信システムであって、
前記通話数の制限の対象となる無線LAN端末が応答できるようになるまで当該無線LAN端末への着信呼に対して代理応答を行う手段を有することを特徴とする無線LAN通信システム。
【請求項2】
前記代理応答を行う手段は、制限した着信呼の着信が再開する期間内に前記代理応答を行うことを特徴とする請求項1記載の無線LAN通信システム。
【請求項3】
前記無線LAN基地局及び前記無線LAN端末を管理するコントローラ装置に、前記代理応答を行う手段を配設したことを特徴とする請求項1または請求項2記載の無線LAN通信システム。
【請求項4】
前記コントローラ装置は、前記無線LAN基地局毎に通話数をカウントする手段と、前記着信呼のパケットを前記無線LAN基地局及び前記無線LAN端末毎に記録する手段と、前記無線LAN基地局及び前記無線LAN端末毎に呼状態を記録する手段と、前記無線LAN基地局に着信呼の宛先の無線LAN端末を切断させる通知を行う手段と、前記無線LAN端末が圏内に復帰するまで前記着信呼の宛先に代理応答してトーキを送出する手段と、前記無線LAN端末が圏内に復帰した後に前記着信呼を保留して自動的に前記無線LAN端末へ転送することで前記着信呼の処理を再開させる手段とを含み、
前記無線LAN基地局は、前記着信呼のパケットを前記コントローラ装置へ送信する手段を含むことを特徴とする請求項3記載の無線LAN通信システム。
【請求項5】
前記コントローラ装置は、前記無線LAN基地局の通話数のあふれによって切断した無線LAN端末があった場合に前記無線LAN基地局の増設を促すアラームを表示する手段と、当該切断した無線LAN端末があった場合に前記無線LAN基地局の増設を促すログを保存する手段とを含むことを特徴とする請求項3または請求項4記載の無線LAN通信システム。
【請求項6】
前記無線LAN基地局は、前記無線LAN端末への着信呼が制限されたもので前記無線LAN端末のIPアドレスが切断前後で変更されたものがある場合に前記着信呼のパケットの内容を変換する手段を含むことを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか記載の無線LAN通信システム。
【請求項7】
前記コントローラ装置の各手段を前記無線LAN基地局に配設したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか記載の無線LAN通信システム。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか記載の手段を含むことを特徴とするコントローラ装置。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれか記載の手段を含むことを特徴とする無線LAN基地局。
【請求項10】
無線LAN(Local Area Network)基地局へ収容される無線LAN端末の通話数の制限を行う無線LAN通信システムに用いる無線LAN通信方法であって、
前記無線LAN基地局及び前記無線LAN端末を管理するコントローラ装置が、前記通話数の制限の対象となる無線LAN端末が応答できるようになるまで当該無線LAN端末への着信呼に対して代理応答を行う処理を実行することを特徴とする無線LAN通信方法。
【請求項11】
前記コントローラ装置が、前記代理応答を行う処理において、制限した着信呼の着信が再開する期間内に前記代理応答を行うことを特徴とする請求項10記載の無線LAN通信方法。
【請求項12】
前記コントローラ装置が、前記無線LAN基地局毎に通話数をカウントする処理と、前記着信呼のパケットを前記無線LAN基地局及び前記無線LAN端末毎に記録する処理と、前記無線LAN基地局及び前記無線LAN端末毎に呼状態を記録する処理と、前記無線LAN基地局に着信呼の宛先の無線LAN端末を切断させる通知を行う処理と、前記無線LAN端末が圏内に復帰するまで前記着信呼の宛先に代理応答してトーキを送出する処理と、前記無線LAN端末が圏内に復帰した後に前記着信呼を保留して自動的に前記無線LAN端末へ転送することで前記着信呼の処理を再開させる処理とを実行し、
前記無線LAN基地局が、前記着信呼のパケットを前記コントローラ装置へ送信する処理を実行することを特徴とする請求項10または請求項11記載の無線LAN通信方法。
【請求項13】
前記コントローラ装置が、前記無線LAN基地局の通話数のあふれによって切断した無線LAN端末があった場合に前記無線LAN基地局の増設を促すアラームを表示する処理と、当該切断した無線LAN端末があった場合に前記無線LAN基地局の増設を促すログを保存する処理とを実行することを特徴とする請求項10から請求項12のいずれか記載の無線LAN通信方法。
【請求項14】
前記無線LAN基地局が、前記無線LAN端末への着信呼が制限されたもので前記無線LAN端末のIPアドレスが切断前後で変更されたものがある場合に前記着信呼のパケットの内容を変換する処理を実行することを特徴とする請求項10から請求項13のいずれか記載の無線LAN通信方法。
【請求項15】
前記コントローラ装置が実行する各処理を前記無線LAN基地局において実行することを特徴とする請求項10から請求項14のいずれか記載の無線LAN通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−89282(P2009−89282A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259312(P2007−259312)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】