説明

熱処理装置、半導体装置の製造方法、及び、基板の製造方法

【課題】爆発等の発生を抑制することができる熱処理装置、半導体装置の製造方法、及び、基板の製造方法を提供する。
【解決手段】磁気コイル50によりアウターチューブ42内を電磁誘導加熱するとともに、アウターチューブ42とライナーチューブ204との間には、不活性ガス供給ノズル210が設けられており、この不活性ガス供給ノズル210の不活性ガス供給孔212から窒素(N)等の不活性ガスを導入し、処理室44外の周囲空間214を上方から下方に向かってパージする。周囲空間214を不活性ガス雰囲気とし、この周囲空間214内の大気(酸素)濃度を低くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理装置、半導体装置の製造方法、及び、基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンの成膜装置に用いられる縦型成膜装置は、ウエハを縦方向に積み上げることで、ウエハ1枚相当のフットプリント(占有面積)で、一度に複数(25〜100)枚のウエハを処理することができる構成となっている。このため、大量生産に非常に有利であり、特許文献1及び特許文献2に記載されたような縦型の半導体装置をシリコンカーバイド(SiC)エピタキシャル成膜に応用することが考えられる
【0003】
特許文献1では、縦型半導体製造装置において、反応管下端部をスカベンジャーにより気密に囲繞し、このスカベンジャーの所用位置から不活性ガスを供給し、他の位置から排出するよう構成した半導体製造装置の熱処理炉が開示されている。
【0004】
特許文献2では、縦型の熱処理炉の下方に設けられたベースプレートの下側にケースを設け、このケースの外側を囲むようにしてスカベンジャーを設けた熱処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−195354号公報
【特許文献2】特開平1−251610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の縦型半導体製造装置は、ヒータとして抵抗加熱方式を用いており、キャリアガスに水素(H)ガスを使用する場合、反応室内のガスが漏洩し、かつ、抵抗発熱体とガスとの摩擦や静電気等に起因し、爆発に繋がるという問題があった。
【0007】
本発明は、処理室からのガスの漏洩を防止することができる熱処理装置、半導体装置の製造方法、及び、基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、基板を処理する処理室を内部に備える反応管と、前記反応管の外側に設けられ、前記処理室を電磁誘導加熱する磁場発生部と、前記反応管及び前記磁場発生部を収納する収納管と、前記反応管と前記収納管との間に、不活性ガスを供給する不活性ガス供給部と、を有する熱処理装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、反応室からのガスの漏洩を防止することができる熱処理装置、半導体装置の製造方法、及び、基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態が適用される熱処理装置を示す斜透視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に用いられる処理炉を示す側面断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に用いられる処理炉の中心付近の上面断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に用いられる処理炉及びその周辺構造を示す概略図である。
【図5】本発明の一実施形態が適用される熱処理装置のコントローラを示すブロック図である。
【図6】本発明の第2実施形態に用いられる処理炉を示す側面断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に用いられる処理炉の中心付近の上面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の理解を助けるために、発明者が認識している技術について説明する。
シリコンカーバイド(炭化珪素、SiC)は、シリコン(珪素、Si)と比較して、エネルギーギャップが大きいことや、絶縁耐性が高いこと等から、特にパワーデバイス用素子材料として注目されている。一方で、SiCは、融点がSiと比較して高いこと、常圧下での液相をもたないこと、及び、不純物拡散係数が小さいこと等から、Siと比較して基板やデバイスの作成が困難である。
【0012】
例えば、SiCエピタキシャル成膜装置において、エピタキシャル成膜温度が、Siでは900〜1200℃であるのに対し、SiCでは1500〜1800℃程度と高いため、成膜装置の耐熱構造や、原料の分解抑制に技術的な工夫を要する。また、SiCエピタキシャル成膜装置においては、Siと炭素(C)の2元素の反応で成膜が進行するため、膜厚や組成均一性の確保、及びドーピングレベルの制御技術についても、Siエピタキシャル成膜装置とは異なる工夫を要する。
【0013】
発明者が認識する、市場で流通している量産用のSiCエピタキシャル成膜装置としては、「パンケーキ型」、「プラネタリ型」と称される形態のものが主流である。これらの装置では、高周波等により成膜温度まで加熱したサセプタ上に数枚〜数十枚程度のSiC基板を平面的に並べ、原料ガスやキャリアガスを供給するという方法で成膜を行う。ここで、原料ガスのSi原料としてはモノシラン(SiH)が、C原料としてはプロパン(C)やエチレン(C)が、主に使用され、キャリアガスとしては水素(H)が使用されている。気相中でのシリコン核形成の抑制や結晶の品質向上のために、塩化水素(HCl)を添加したり、原料として塩素(Cl)を構造中に含むトリクロルシラン(SiHCl)、テトラクロルシラン(四塩化珪素、SiCl)などを用いたりする場合がある。
【0014】
「パンケーキ型」、「プラネタリ型」のようなSiCエピタキシャル成膜装置の反応室構造では、平面的に配置されたウエハに対し、原料ガス(Si原料及びC原料)は、中心部に設置されたガス供給部から供給され、周辺部に設置されたガス排気部から排気される。このため、ガス供給部からガス排気部にかけて、ガスの濃度分布は大きく変化し、これに伴い成膜する膜厚が不均一となる。
【0015】
このような装置において、一度に処理できるウエハ枚数を増加させるには、サセプタの直径を増大させればよいが、サセプタの直径を増大させると装置サイズが大きくなり、さらには、コストが増大するという問題が生じる。この問題は、ウエハの径が増大するほど深刻となる。
また、ガス供給部からガス排気部方向(サセプタの径方向)にウエハを2枚以上並べると、ガス供給部側とガス排気部側とに配置されたウエハ間で、ガスの濃度差に伴う膜厚差が生じる。
以上のように、ウエハを平面的に配置する構成の装置では、一度に処理できるウエハ枚数が制限されるという問題がある。
【0016】
[第1実施形態]
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる熱処理装置10の斜視図を示す。この熱処理装置10は、バッチ式縦型熱処理装置であり、主要部が配置される筺体12を有する。熱処理装置10には、例えば、SiCからなる基板としてのウエハ14を収納する基板収容器としてのフープ(以下、ポッドという)16が、ウエハキャリアとして使用される。この筺体12の正面側には、ポッドステージ18が配置されており、このポッドステージ18にポッド16が搬送される。ポッド16には、例えば25枚のウエハ14が収納され、蓋が閉じられた状態でポッドステージ18にセットされる。
【0017】
筺体12内の正面側であって、ポッドステージ18に対向する位置には、ポッド搬送装置20が配置されている。ポッド搬送装置20の近傍には、ポッド棚22、ポッドオープナ24及び基板枚数検知器26が配置されている。ポッド棚22はポッドオープナ24の上方に配置され、ポッド16を複数個載置した状態で保持するように構成されている。
基板枚数検知器26は、ポッドオープナ24に隣接して配置される。ポッド搬送装置20は、ポッドステージ18、ポッド棚22及びポッドオープナ24の間でポッド16を搬送する。ポッドオープナ24は、ポッド16の蓋を開けるものであり、基板枚数検知器26は、蓋が開けられたポッド16内のウエハ14の枚数を検知する。
【0018】
筺体12内には、基板移載機28、基板支持具としてのボート30が配置されている。基板移載機28は、アーム(ツイーザ)32を有し、図示しない駆動手段により上下回転動作が可能な構造となっている。アーム32は、例えば5枚のウエハ14を取り出すことができ、このアーム32を動かすことにより、ポッドオープナ24の位置に置かれたポッド16及びボート30間にて、ウエハ14を搬送する。
【0019】
ボート30は、例えば炭素含有部材として、カーボンやグラファイト、炭化珪素等の耐熱性(1500〜1800℃)材料で構成され、複数枚のウエハ14を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて縦方向に多段に保持するように構成されている。
ボート30の下部には、例えば炭素含有部材として、カーボンやグラファイト、炭化珪素等の耐熱性材料で構成される円板形状をした断熱部材としてのボート断熱部34(図2参照)が配置されており、後述するサセプタ48からの熱が処理炉40の下方側に伝わりにくくなるよう構成されている。
【0020】
筺体12内の背面側上部には処理炉40が配置されている。この処理炉40内に、複数枚のウエハ14を装填したボート30が搬入され、熱処理が行われる。
【0021】
次に、処理炉40について説明する。
図2は、処理炉40の側面断面図を示し、図3は、処理炉40の中心付近の上面断面図を示す。
【0022】
処理炉40は、反応管としてのアウターチューブ42を備える。アウターチューブ42は、石英(SiO)または炭化珪素(SiC)等の耐熱材料で構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。アウターチューブ42の内側の筒中空部には、処理室44が形成されており、ウエハ14をボート30によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。
【0023】
アウターチューブ42の下方には、このアウターチューブ42と同心円状にマニホールド46が配設されている。マニホールド46は、例えば、ステンレス等で構成され、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。このマニホールド46はアウターチューブ42を支持するように設けられている。マニホールド46とアウターチューブ42との間には、シール部材としてのOリングが設けられている。マニホールド46が保持体(非図示)に支持されることにより、アウターチューブ42は、垂直に据え付けられた状態となっている。このアウターチューブ42とマニホールド46により反応容器が形成される。
【0024】
処理炉40は、例えば炭素含有部材として、カーボン、グラファイト等で構成される被誘導体、つまり発熱体としてのサセプタ48、及び、磁場発生部としての磁気コイル50を備える。サセプタ48は、処理室44内に配設されており、このサセプタ48は、アウターチューブ42の外側に設けられた磁気コイル50に高周波等を印加することにより発生される磁場によって発熱する構成となっている。磁気コイル50によりサセプタ48が発熱し、処理室44内が加熱される。
【0025】
サセプタ48の近傍には、処理室44内の温度を検出する温度検出体としての温度センサ(非図示)が設けられている。磁気コイル50及び温度センサには、温度制御部52(図5参照)が電気的に接続されており、温度センサにより検出された温度情報に基づき磁気コイル50への通電具合を調節することで、処理室44内の温度が所望の温度分布となるよう、所望のタイミングにて制御するように構成されている。
【0026】
サセプタ48とアウターチューブ42との間には、このサセプタ48の熱が、アウターチューブ42あるいはこのアウターチューブ42の外側へ伝達するのを抑制する例えばフェルト状カーボンで構成される内側断熱壁54が設けられている。
処理室44内の熱が処理炉40の外側に伝達するのを抑制するための、例えば水冷構造である外側断熱壁56が、磁気コイル50の外側に処理室44を囲むようにして設けられている。なお、外側断熱壁56は、熱的に、処理炉40の外側への熱の伝達を抑制する必要がない程度であれば、設けなくてもよい。
【0027】
マニホールド46には、第1のガス供給ノズル60及び第2のガス供給ノズル160それぞれにガスを供給するガス供給管62、162が貫通するようにして設けられている。第1のガス供給ノズル60及び第2のガス供給ノズル160は、例えば、筒状に形成されている。
【0028】
ガス供給管62は、上流でガス供給管62a、62bの複数股、例えば二股に分かれ、これらガス供給管62a、62bそれぞれに設けられたバルブ64a、64bと、ガス流量制御装置としてのMFC(mass flow controller)66a、66bを介して、ガス供給源(非図示)に、それぞれ接続されている。
ガス供給管62aは、第1処理ガスとしてのシリコン源として、例えばテトラクロルシラン(SiCl)等のシリコン塩化物を導入する。シリコン源としては、モノシラン(SiH)等のシリコン水素化物や、トリクロルシラン(SiHCl)等のシリコン水素塩化物等を用いることができる。
ガス供給管62bには、キャリアガスとして、例えば水素(H)を導入する。
このようにして、ガス供給管62は、第1のガス供給ノズル60にSiCl等とHとの混合ガスを供給し、これを第1のガス供給ノズル60が処理室44内に導入する。
【0029】
ガス供給管162は、上流でガス供給管162a、162bの複数股、例えば二股に分かれ、これらガス供給管162a、162bそれぞれに設けられたバルブ164a、164bと、MFC166a、166bを介して、ガス供給源(非図示)に、それぞれ接続されている。
ガス供給管162aは、第2処理ガスとしての炭素源として、例えばプロパン(C)等の水素炭化物を導入する。
ガス供給管162bは、キャリアガスとして、水素(H)を導入する。
このようにして、ガス供給管162は、第2のガス供給ノズル160にC等とHとの混合ガスを供給し、これを第2のガス供給ノズル160が処理室44内に導入する。
【0030】
第1のガス供給ノズル60及び第2のガス供給ノズル160が導入するガスは、上記に限られず、目的に応じて適宜変更することができる。これら、処理室44内のウエハ14を処理(成膜)するためのガスを、以下、反応ガスと総称すること場合がある。
【0031】
バルブ64a、64b、164a、164b、及び、MFC66a、66b、166a、166bには、ガス流量制御部78(図5参照)が電気的に接続されており、供給するガスの流量が所望の流量となるよう、所望のタイミングにて制御するように構成されている。
【0032】
第1のガス供給ノズル60及び第2のガス供給ノズル160にはそれぞれ、ボート30に支持されたウエハ毎にガスを供給するための供給孔68、168が設けられている。なお、供給孔68、168は、ウエハ数枚ごとに設けるようにすることもできる。
【0033】
また、マニホールド46には、ガス排気ノズル80に接続されたガス排気管82が貫通するようにして設けられている。ガス排気ノズル80は、例えば、筒状に形成されている。ガス排気管82の下流側には、圧力検出器としての圧力センサ(非図示)及び圧力調整器としてのAPCバルブ84を介して真空ポンプ等の真空排気装置86が接続されている。圧力センサ及びAPCバルブ84には、圧力制御部98(図5参照)が電気的に接続されており、この圧力制御部98は、圧力センサにより検出された圧力に基づいてAPCバルブ84の開度を調節することにより、処理室44内の圧力が所望の圧力となるよう、所望のタイミングにて制御するように構成されている。
ガス排気ノズル80には、ボート30に支持されたウエハ毎にガスを排気するための排気孔88が設けられている。なお、排気孔88は、ウエハ数枚ごとに設けるようにすることもできる。
なお、ガス排気ノズル80を設けずに、ガス排気管82のマニホールド46の内側壁に設けられたガス排気口から直接排気するように構成してもよい。
【0034】
このように、供給孔68から噴出されたガスは、排気孔88に向かって流れるため、ガスがウエハ14に対し平行に流れ、ウエハ14全体が効率的にかつ均一にガスに晒される。
【0035】
マニホールド46の外側には、マニホールド46の下端部に設けられる第1開口部と、ライナーチューブ204の下端部に設けられる第2開口部とを囲うカバーとしてのスカベンジャー202が設けられている。スカベンジャー202は、処理炉40と、基板移載機28等が設けられた移載室等とを遮断する。
【0036】
アウターチューブ42と磁気コイル50との間には、処理室44内に導入されたH等のガスの漏洩を防止する収納管としてのライナーチューブ204が設けられている。ライナーチューブ204は、石英(SiO)またはSiC等の耐熱材料で構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。ライナーチューブ204の内側の筒中空部には、処理室44及びアウターチューブ42等が収納されている。
このように、処理室44の外側は、アウターチューブ42及びライナーチューブ204により2重に保護されており、処理炉40は防爆に対応する構成となっている。
【0037】
ライナーチューブ204の下方には、ヒータベース206が設けられ、このヒータベース206によりライナーチューブ204、磁気コイル50及び外側断熱壁56が支持されている。
外側断熱壁56の外側には、磁気コイル50により発生された磁場が処理炉40の外側に漏れるのを防止する磁場漏れ抑制部としての磁場シール58が設けられており、この磁場シール58の外側に、処理炉40の筺体カバー208が設けられている。
【0038】
アウターチューブ42とライナーチューブ204との間には、アウターチューブ42の上方に向かって伸びる不活性ガス供給部としての不活性ガス供給ノズル210が設けられており、この不活性ガス供給ノズル210は、上方に設けられた不活性ガス供給孔212から例えば窒素(N)等の不活性ガスを導入する。不活性ガス供給ノズル210から導入された不活性ガスは、アウターチューブ42の外側で、スカベンジャー202、ライナーチューブ204、及びマニホールド46等に囲まれた処理室44外の周囲空間214を上方から下方に向かって流れ、この周囲空間214をパージする。不活性ガスを上方から導入することで、その軽さから上方に溜まり易いHを、効果的に押し出すことができる。
【0039】
不活性ガス供給ノズル210は、ライナーチューブ204よりも下方側を貫通させて設置するようにしても良いが、好ましくは、ライナーチューブ204の下方側側壁を貫通して、この側壁に固着されるように設置すると良い。これにより、ライナーチューブ204より下方側に不活性ガス供給ノズル210を貫通させるための隙間をなくすことができる。また、不活性ガス供給ノズル210を取付け取外しする際には、この不活性ガス供給ノズル210よりもはるかに大きなメンテナンススペースが必要となるが、このメンテナンススペースを無くすことができる。また、このメンテナンススペースが無くなることで、ガスを漏洩させるスペースを少なくすることができるとともに、装置全体のサイズをコンパクトにすることができる。
【0040】
不活性ガス供給ノズル210には、不活性ガス供給管2101が接続されている。不活性ガス供給管2101は、開閉体としてのバルブ2102、流量制御装置としてのMFC2103、不活性ガス供給源2104にそれぞれ接続されている。
【0041】
不活性ガス供給管2101は、不活性ガスとしてアルゴン(Ar)、窒素(N)を導入する。バルブ2102、MFC2103には、ガス流量制御部78(図5参照)が電気的に接続されており、供給する流量が所望となるよう、所望のタイミングにて制御するように構成されている。
【0042】
また、スカベンジャー202により囲まれる空間を含む周囲空間214を不活性ガス(N)雰囲気とすることで、この周囲空間214内の大気(酸素)濃度が低くなる。このため、処理炉40では、アウターチューブ42が破損し処理室44からHが漏洩した場合でも、漏洩したHが酸素(O)と反応するのを防止することができ、防爆に対応する構成となっている。
【0043】
周囲空間214の大気及び不活性ガスは、スカベンジャー202に連通しており、周囲空間排気部もしくはカバー内を排気する廃棄ラインとしてのヒータベース206に設けられた排気ダクト216から排気される。排気ダクト216には、ガス検出器としてのガスセンサ218が設けられており、このガスセンサ218は、排気されるガスに含まれる水素元素含有ガスや酸素元素含有ガスとして、例えばHやO等を検知できる構成となっている。
なお、このガスセンサ218は、水素元素含有ガスを検出する第1のガスセンサと、酸素元素含有ガスを演出する第2のガスセンサとして、それぞれ単独で設けるようにしてもよい。
【0044】
ガスセンサ218は、ガス流量制御部78に電気的に接続されており、このガスセンサ218が例えばHを検出した場合に、ガス流量制御部78は、H等の反応ガスの供給を停止するようにバルブ64a、64b、164a、164b、及び、MFC66a、66b、166a、166bを制御する構成となっている。このため、所定のガスの漏洩の検出とともに、反応室44への反応ガスの供給を停止することができる。
また、ガスセンサ218による検出結果は、後述するコントローラ152の入出力部149から警報や表示として出力される。このため、処理室44外(周囲空間214)にH等が漏洩した場合、H等が漏洩していることを外部(作業者等)で確認することができる。
【0045】
次に、処理炉40周辺の構成について説明する。
図4は、処理炉40及びその周辺構造の概略図を示す。処理炉40の下方には、この処理炉40の下端開口を気密に閉塞するための炉口蓋体としてのシールキャップ102が設けられている。シールキャップ102は、例えばステンレス等の金属よりなり、円盤状に形成されている。シールキャップ102の上面には、処理炉40の下端と当接するシール部材としてのOリングが設けられている。シールキャップ102には、回転機構104が設けられている。回転機構104の回転軸106はシールキャップ102を貫通してボート30に接続されており、このボート30を回転させることでウエハ14を回転させるように構成されている。シールキャップ102は、処理炉40の外側に設けられた昇降機構としての後述する昇降モータ122によって垂直方向に昇降されるように構成されており、これによりボート30を処理炉40に対し搬入搬出することが可能となっている。回転機構104及び昇降モータ122には、駆動制御部108(図5参照)が電気的に接続されており、所望の動作をするよう所望のタイミングにて制御するよう構成されている。
【0046】
予備室としてのロードロック室110の外面には、下基板112が設けられている。下基板112には、昇降台114と嵌合するガイドシャフト116及びこの昇降台114と螺合するボール螺子118が設けられている。下基板112に立設したガイドシャフト116及びボール螺子118の上端に上基板120が設けられている。ボール螺子118は上基板120に設けられた昇降モータ122により回転される。ボール螺子118が回転することにより昇降台114が昇降するように構成されている。
【0047】
昇降台114には中空の昇降シャフト124が垂設され、昇降台114と昇降シャフト124の連結部は気密となっている。昇降シャフト124は昇降台114と共に昇降するようになっている。昇降シャフト124はロードロック室110の天板126を遊貫する。昇降シャフト124が貫通する天板126の貫通穴は、この昇降シャフト124に対して接触することがないよう充分な余裕がある。ロードロック室110と昇降台114との間には昇降シャフト124の周囲を覆うように伸縮性を有する中空伸縮体としてのベローズ128が、ロードロック室110を気密に保つために設けられている。ベローズ128は昇降台114の昇降量に対応できる充分な伸縮量を有し、このベローズ128の内径は昇降シャフト124の外形に比べ充分に大きく、ベローズ128の伸縮により接触することがないように構成されている。
【0048】
昇降シャフト124の下端には、昇降基板130が水平に固着される。昇降基板130の下面にはOリング等のシール部材を介して駆動部カバー132が気密に取付けられる。昇降基板130と駆動部カバー132とで駆動部収納ケース134が構成されている。この構成により、駆動部収納ケース134内部はロードロック室110内の雰囲気と隔離される。
【0049】
また、駆動部収納ケース134の内部には、ボート30の回転機構104が設けられ、この回転機構104の周辺は、冷却機構136により、冷却される。
【0050】
電力供給ケーブル138は、昇降シャフト124の上端からこの昇降シャフト124の中空部を通り回転機構104に導かれて接続されている。また、冷却機構136及びシールキャップ102には冷却流路140が形成されている。冷却水配管142は、昇降シャフト124の上端からこの昇降シャフト124の中空部を通り、冷却流路140に導かれて接続されている。
【0051】
昇降モータ122が駆動されボール螺子118が回転することで、昇降台114及び昇降シャフト124を介して駆動部収納ケース134を昇降させる。
【0052】
駆動部収納ケース134が上昇することにより、昇降基板130に気密に設けられているシールキャップ102が処理炉40の開口部である炉口144を閉塞し、ウエハ処理が可能な状態となる。駆動部収納ケース134が下降することにより、シールキャップ102とともにボート30が降下され、ウエハ14を外部に搬出できる状態となる。
【0053】
図5は、熱処理装置10を構成する各部の制御構成を示す。
温度制御部52、ガス流量制御部78、圧力制御部98、駆動制御部108は、操作部148及び入出力部149を備え、熱処理装置10全体を制御する主制御部150に電気的に接続されている。これら、温度制御部52、ガス流量制御部78、圧力制御部98、駆動制御部108及び主制御部150は、コントローラ152として構成されている。
【0054】
次に、上述したように構成された熱処理装置10を用いて、半導体デバイスの製造工程の一工程として、SiCウエハなどの基板上に、例えばSiC膜を形成する方法について説明する。なお、以下の説明において、熱処理装置10を構成する各部の動作は、コントローラ152により制御される。
【0055】
まず、ポッドステージ18に複数枚のウエハ14を収容したポッド16がセットされると、ポッド搬送装置20によりポッド16をポッドステージ18からポッド棚22へ搬送し、このポッド棚22にストックする。次に、ポッド搬送装置20により、ポッド棚22にストックされたポッド16をポッドオープナ24に搬送してセットし、このポッドオープナ24によりポッド16の蓋を開き、基板枚数検知器26によりポッド16に収容されているウエハ14の枚数を検知する。
【0056】
次に、基板移載機28により、ポッドオープナ24の位置にあるポッド16からウエハ14を取り出し、ボート30に移載する。
【0057】
複数枚のウエハ14がボート30に装填されると、複数枚のウエハ14を保持したボート30は、昇降モータ122による昇降台114及び昇降シャフト124の昇降動作により処理室44内に搬入(ボートローディング)される。この状態で、シールキャップ102はOリングを介してマニホールド46の下端をシールした状態となる。
【0058】
処理室44内が所望の圧力(真空度)となるように真空排気装置86によって真空排気される。この際、処理室44内の圧力は、圧力センサで測定され、この測定された圧力に基づきガス排気ノズル80に対応するAPCバルブ84がフィードバック制御される。
また、処理室44内が所望の温度となるようにサセプタ48からの熱エネルギーにより加熱される。この際、処理室44内が所望の温度分布となるように温度センサが検出した温度情報に基づき磁気コイル50への通電具合がフィードバック制御される。
そして、回転機構104により、ボート30が回転されることでウエハ14が回転される。
【0059】
続いて、ガス供給源から第1のガス供給ノズル60及び第2のガス供給ノズル160それぞれに反応ガスが供給される。所望の流量となるように、第1のガス供給ノズル60及び第2のガス供給ノズル160に対応するMFC66a、66b、166a、166bの開度が調節された後、バルブ64a、64b、164a、164bが開かれ、それぞれの反応ガスがガス供給管62a、62b、162a、162bを流通して、供給孔68、168から、処理室44内に導入される。
【0060】
第1のガス供給ノズル60及び第2のガス供給ノズル160から導入された反応ガスは、処理室44内のサセプタ48の内側を通り、ガス排気ノズル80からガス排気管82を通り排気される。反応ガスは、処理室44内を通過する際にウエハ14と接触し、ウエハ14の表面上にSiC膜が堆積(デポジション)される。
【0061】
一方、処理室44内のウエハ14の処理に先立って、不活性ガス供給源2104から不活性ガス供給管2101、MFC2103、バルブ2102を経て、不活性ガス供給ノズル210に不活性ガスが供給される。不活性ガス供給ノズル210から導入された周囲空間214内に不活性ガスは、この周囲空間214内をパージし、排気ダクト216から排気される。この際、ガスセンサ218は、排気ダクト216により排気されるガスを検出する。
好ましくは、少なくとも第1のガス供給ノズル60もしくは第2のガス供給ノズル160から処理室44内に水素ガスが供給される前に、周囲空間214内を不活性ガスで充填されるタイミングにて、不活性ガス供給ノズル210から不活性ガスを供給するように制御すると、より一層、爆発の発生を抑制することができる。
【0062】
予め設定された時間が経過すると、処理室44内へ不活性ガス供給源(非図示)から不活性ガスが供給され、この処理室44内が不活性ガスで置換されると共に、処理室44内の圧力が常圧に復帰される。
【0063】
その後、昇降モータ122によりシールキャップ102が下降されて、マニホールド46の下端が開口されると共に、処理済ウエハ14がボート30に保持された状態でマニホールド46の下端からアウターチューブ42の外部に搬出(ボートアンローディング)し、ボート30に支持された全てのウエハ14が冷えるまで、ボート30を所定位置で待機させる。次に、待機させたボート30のウエハ14が所定温度まで冷却されると、基板移載機28により、ボート30からウエハ14を取り出し、ポッドオープナ24にセットされている空のポッド16に搬送して収容する。その後、ポッド搬送装置20により、ウエハ14が収容されたポッド16をポッド棚22、またはポッドステージ18に搬送する。このようにして熱処理装置10の一連の作用が完了する。
【0064】
なお、本発明は上記実施形態に限られず、第1のガス供給ノズル60、第2のガス供給ノズル160、及び、ガス排気ノズル80の数や配置、あるいはその組み合わせは、目的に応じて適宜変更することができる。
【0065】
第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
1.ヒータとして抵抗加熱方式に代えて、磁気発生部を用いるようにし、かつ、収納管と反応管との間を不活性ガス供給部により不活性ガスを供給するようにしたので、反応管内から処理ガスが漏洩した場合であっても、爆発等の発生を抑制することができる。
2.収納管と反応管との間の周囲空間の上方で不活性ガスを供給するとともに、収納管の下端部に設けられる第2開口部と収納管の下端部に設けられる第1開口部とを囲うカバーに設けられた排気ラインから、該不活性ガスを排気するように構成したので、処理ガスの収納管と反応管との間での滞留を抑制することができ、かつ、収納管に排気口を設けずにすむため、収納管からの外部へのガスの漏洩を抑制することができる。
【0066】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
図6は、第2実施形態に係る処理炉40の側面断面図を示し、図7は、第2実施形態に係る処理炉40の中心付近の上面断面図を示す。
第1実施形態では、磁気コイル50はライナーチューブ204の外側に配置されていたのに対し、本実施形態では、磁気コイル50はライナーチューブ204の内側の周囲空間214内に配置されている。磁気コイル50のフィーダ線(非図示)は、例えばスカベンジャー202を貫通させて外部のRF電源(非図示)に接続する。
【0067】
磁気コイル50を不活性ガスでパージされた周囲空間214に配置することで、この磁気コイル50の酸化による劣化を防止することができる。また、磁気コイル50が不活性ガスにより冷却されるため、この磁気コイル50を冷却する水冷装置が不要となる。さらに、磁気コイル50をライナーチューブ204の外側に配置した場合と比較して、本実施形態では磁気コイル50が、サセプタ48や処理室44内のウエハ14の近くに配置されるため、加熱の効率を向上することができる。
なお、磁気コイル50を冷却する水冷装置を不要とすることもできるが、設けるようにしてもよい。
【0068】
[本発明の好ましい態様]
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0069】
(1)本発明の一態様によれば、内部に被誘導体と基板とを配置可能に構成され、該内部で被誘導体からの熱エネルギーに基づき、基板を処理する反応管と、該反応管の外側に配置され、前記被誘導体を誘導加熱する誘導体と、前記反応管および前記誘導体を収納する収納管と、前記反応管と前記収納管との間に形成される間隙に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部と、を備える基板処理装置が提供される。
これにより、処理ガスの漏洩を抑制するとともに、誘導体の酸化を抑制することができる。また、誘導体をより被誘導体に近づけることができるので、加熱効率の向上を図ることができる。
【0070】
(2)前記間隙は、前記反応管と前記収納管との間における前記反応管の上端部まで、形成されており、前記不活性ガス供給部は、前記収納管の下端部から上端部まで延在するように形成されている上記(1)の基板処理装置が提供される。
これにより、前記反応管と前記収納管との間における前記反応管の上端部でのHガス等可燃性ガスの溜りを抑制することができる。特に可燃性ガスとしてHガスは軽いため、前記上端部に溜りやすい。これにより、よりいっそう漏洩時の爆発、自然発火等の発生を抑制することができる。
【0071】
(3)前記不活性ガス供給部は、前記収納管の側壁を貫通して設置されており、前記側壁に前記不活性ガス供給部が固着されている上記(2)の基板処理装置が提供される。
これにより、不活性ガス供給部を反応管より下方に設ける際に必要となるギャップ(隙間)をなくすことができ、また、不活性ガスを取り付けする際に必要なメンテナンススペースを必要とすることがなく、ガスの漏洩を抑制するとともに、処理炉(装置)のサイズをコンパクトにすることができる。
【0072】
(4)前記反応管内に水素元素含有ガスを供給するガス供給部と、前記反応管の下端部に設けられる第一開口部と、前記収納管の下端部に設けられる第二開口部と、前記第一開口部および前記第二開口部とを囲うカバーと、該カバー内を排気する排気ラインと、該排気ラインに設けられる水素元素含有ガスを検出する第一ガス検出器と、前記排気ラインに設けられる酸素元素含有ガスを検出する第二ガス検出器と、を備える上記(1)の基板処理装置が提供される。
これにより、水素元素含有ガス漏洩時の爆発、自然発火等の発生を抑制するとともに、誘導体の酸化を抑制することができる。また、誘導体をより被誘導体に近づけることができるので、加熱効率の向上を図ることができる。また、カバーにより、水素元素含有ガス漏洩を抑制し、かつ該排気ラインに設けられる第一ガス検出器と第二ガス検出器とにより、水素元素含有ガスと酸素元素含有ガスを検出することができ、よりいっそう安全性を高めることができる。
【0073】
(5)本発明の他の態様によれば、収納管内に収納された誘導体と反応管とを有し、前記誘導体の内側に配置された反応管内に基板を搬送する工程と、前記反応管と前記収納管との間に形成される間隙に不活性ガス供給部から不活性ガスを供給しつつ、前記反応管内で、前記誘導体が誘導加熱した前記被誘導体からの熱エネルギーに基づき基板を処理する工程と、を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0074】
(6)本発明の他の態様によれば、収納管内に収納された誘導体と反応管とを有し、前記誘導体の内側に配置された反応管内に基板を搬送する工程と、前記反応管と前記収納管との間に形成される間隙に不活性ガス供給部から不活性ガスを供給しつつ、前記反応管内で、前記誘導体が誘導加熱した前記被誘導体からの熱エネルギーに基づき基板を処理する工程と、を有する基板処理方法が提供される。
【0075】
(7)本発明の他の態様によれば、収納管内に収納された誘導体と反応管とを有し、前記誘導体の内側に配置された反応管内に基板を搬送する工程と、前記反応管と前記収納管との間に形成される間隙に不活性ガス供給部から不活性ガスを供給しつつ、前記反応管内で、前記誘導体が誘導加熱した前記被誘導体からの熱エネルギーに基づき基板を処理する工程と、を有する基板の製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0076】
10 熱処理装置
12 筺体
14 ウエハ
16 ポッド
40 処理炉
42 アウターチューブ
44 処理室
46 マニホールド
48 サセプタ
50 磁気コイル
54 内側断熱壁
56 外側断熱壁
58 磁場シール
60、160 ガス供給ノズル
80 ガス排気ノズル
150 主制御部
152 コントローラ
202 スカベンジャー
204 ライナーチューブ
210 不活性ガス供給ノズル
214 周囲空間
216 排気ダクト
218 ガスセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室を内部に備える反応管と、
前記反応管の外側に設けられ、前記処理室を電磁誘導加熱する磁場発生部と、
前記反応管及び前記磁場発生部を収納する収納管と、
前記反応管と前記収納管との間に、不活性ガスを供給する不活性ガス供給部と、
を有する熱処理装置。
【請求項2】
基板を処理する処理室を内部に備える反応管と、
前記反応管の外側に設けられ、前記処理室を電磁誘導加熱する磁場発生部と、
を収納する収納管を有し、
前記処理室内に基板を搬送する工程と、
前記反応管と前記収納管との間に不活性ガスを供給しつつ、前記処理室を電磁誘導加熱し基板を処理する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項3】
基板を処理する処理室を内部に備える反応管と、
前記反応管の外側に設けられ、前記処理室を電磁誘導加熱する磁場発生部と、
を収納する収納管を有し、
前記処理室内に基板を搬送する工程と、
前記反応管と前記収納管との間に不活性ガスを供給しつつ、前記処理室を電磁誘導加熱し基板を処理する工程と、
を有する基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−199214(P2011−199214A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67196(P2010−67196)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】