説明

燃料漏れ防止弁

【課題】 燃料漏れを完全に防止できる燃料漏れ防止弁の提供。
【解決手段】 内部に外部と連通する接続空間5を有して燃料タンクの上壁に取り付けられるコネクタ1と、内部に収納空間を画して上部に上記接続空間5と連通する弁座6を有するハウジング2と、該ハウジング2の弁座6を開閉する弁部3aを有してハウジング2の収納空間内に上下動可能に配されるフロートバルブ3とを備える燃料漏れ防止弁において、上記ハウジング2の上部壁面に内外側を連通させる通孔11を設けると共に、該通孔と対応するハウジング2の内側に矩形状の壁片16を設ける一方、上記フロートバルブ3を当該壁片16に干渉しない形状となしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車の旋回時や転倒時などにおいて、燃料タンクからの燃料漏れを防止する燃料漏れ防止弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種燃料漏れ防止弁は、図11に示す如く、内部に外部と連通する接続空間5を有して燃料タンクの上壁に取り付けられるコネクタ1と、内部に収納空間を画成して上部に上記接続空間5と連通する弁座6を有するハウジング2と、該ハウジング2の弁座6を開閉する弁部3aを有してハウジング2の収納空間内をスプリング7の付勢ばね圧を受けながら上下動可能に配設されるフロートバルブ3と、ハウジング2の下部開口を閉塞するキャップ4とを備える構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、上記コネクタ1に対しては、その下部外周に燃料タンクの上壁に開設された取付孔をシールする円環状のフランジ部8を形成すると共に、上部側方にキャニスター(図示せず)側に接続される接続配管部9を横設し、該コネクタ1にOリング15を介して連結されるハウジング2に対しては、上記弁座6を有する上部小室部10Aと、該上部小室部10Aから連続する下部大室部10Bとから成して、下部大室部10Bの最上位の壁面に内外側を連通させる複数の通孔11を設け、フロートバルブ3に対しては、ハウジング2の弁座6を開閉する弁部3aを先端に形成した上部小径部12Aと、ハウジング2の下部大室部10B内を上下動する下部大径部12Bとから成して、上部小径部12Aの円錐状周面に第1案内壁部13を突設すると共に、下部大径部12Bの側面に第2案内壁部14を突設し、キャップ4に対しては、具体的には図示しないが、ハウジング2との連結固定手段を有して、その下壁に多数の通気孔を形成する構成となっている。
【0004】
従って、実際の使用に際しては、コネクタ1とハウジング2とを連結する状態を得て、ハウジング2の収納空間内にフロートバルブ3とスプリング7を収納しながら、当該ハウジング2の下部開口をキャップ4で閉塞すれば、これにより、燃料漏れ防止弁が組み付けられるので、後は、ハウジング2を燃料タンクTの上壁Taに開設された取付孔H内に臨ませながら、コネクタ1をそのフランジ部8を介して燃料タンクTの上壁Taに熱溶着すれば、その使用に供せられることとなる。
【0005】
そして、常時は、図12に示す如く、フロートバルブ3がハウジング2の内部で下降しているので、ハウジング2の上部小室部10Aに形成されている弁座6が開放されて、燃料タンクT内のガソリン蒸気をコネクタ1の接続配管部9からキャニスター(図示せず)を経て外部に放出する。尚、斯かる状態の下で、燃料の揺動などで、ハウジング2の通孔11から入り込んできた燃料の飛沫が弁座6方向に飛散し易くなって、燃料漏れの恐れがあるが、この場合には、当該通孔11をハウジング2の下部大室部10Bの最上位に設けた関係で、その大室部10Bと小室部10Aの境に生じる段差で燃料の飛沫を遮れるので、燃料漏れの心配がなくなる。
【0006】
逆に、自動車が旋回して、燃料タンクT内の燃料がハウジング2の通孔11やキャップ4の通気孔を経てハウジング2の内部に達すると、その浮力とスプリング7の付勢ばね圧により、フロートバルブ3が自動的に上昇して、図13に示す如く、フロートバルブ3の上部小径部12Aがハウジング2の上部小室部10Aに入り込んで、自身の弁部3aでハウジング2側の弁座6を閉塞するので、これにより、燃料漏れが防止できる。
【特許文献1】特開2007−127017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、従来の燃料漏れ防止弁にあっては、ハウジング2の下部大室部10Bの最上位に通孔11を設けた関係で、理屈の上では、燃料の揺動などで、ハウジング2の通孔11から燃料が入り込んで、その飛沫が弁座6方向に飛散しようとしても、大室部10Bと小室部10Aの境に生じる段差で燃料の飛沫を遮れることとなるが、実際の問題においては、これだけでは、燃料の飛沫を完全に遮ることができないので、少なくとも、燃料の飛沫の一部が弁座6方向に飛散して、燃料漏れを引き起こす恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、斯かる従来の燃料漏れ防止弁が抱える課題を有効に解決するために開発されたもので、請求項1記載の発明は、内部に外部と連通する接続空間を有して燃料タンクの上壁に取り付けられるコネクタと、内部に収納空間を画して上部に上記接続空間と連通する弁座を有するハウジングと、該ハウジングの弁座を開閉する弁部を有してハウジングの収納空間内に上下動可能に配されるフロートバルブとを備える燃料漏れ防止弁において、上記ハウジングの上部壁面に内外側を連通させる通孔を設けると共に、該通孔と対応するハウジングの内側に矩形状の壁片を設ける一方、上記フロートバルブを当該壁片に干渉しない形状となしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1を前提として、矩形状の壁片は、その上縁と一方の側縁とがハウジングと一体に連接されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1乃至請求項2を前提として、ハウジングは、弁座を有する上部小室部と、該上部小室部から連続する下部大室部とを有し、フロートバルブは、ハウジングの弁座を開閉する弁部を形成した上部小径部と、上記ハウジングの下部大室部内を上下動する下部大径部とを有し、フロートバルブの上部小径部にフロートバルブが下降している時でも上記ハウジングの上部小室部に入り込んでいる第1案内壁部を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3を前提として、フロートバルブの下部大径部に第2案内壁部を設けて、該第2案内壁部と第1案内壁部の間に矩形状の壁片を存在させたことを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項2を前提として、矩形状の壁片のハウジングに連接されていない他方の側縁から離れたハウジングの内側面に、ハウジングの通孔を通過してきた燃料がぶつかる内壁を設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項2を前提として、矩形状の壁片のハウジングに連接されている一方の側縁側のハウジングの外側面に、ハウジングの通孔を通過する前の燃料がぶつかる外壁を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項2を前提として、矩形状の壁片のハウジングに連接されていない他方の側縁から離れたハウジングの内側面に、ハウジングの通孔を通過してきた燃料がぶつかる内壁を設けると共に、矩形状の壁片のハウジングに連接されている一方の側縁側のハウジングの外側面に、ハウジングの通孔を通過する前の燃料がぶつかる外壁を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
依って、請求項1記載の発明にあっては、通孔と対応するハウジングの内側に壁片を設けた関係で、一旦、ハウジングの通孔から入り込んだ燃料を当該壁片にぶつけることにより、その飛沫がハウジングの弁座方向に飛散する時間を稼いで、その間に、フロートバルブの弁部でハウジングの弁座を閉塞できるので、これにより、燃料漏れを防止することが可能となる。又、フロートバルブ自体は、壁片と干渉しない形状となっている関係で、壁片の存在が邪魔となることがない。更に、ハウジングの内部に壁片を設けたので、燃料漏れ防止弁自体が大型化する心配もない。
【0016】
請求項2記載の発明にあっては、矩形状の壁片の上縁と一方の側縁とがハウジングと一体に連接されている関係で、ハウジングの通孔から入り込んできた燃料を壁片の連接されてない下縁側と他方の側縁側に導けるので、燃料漏れを確実に防止できると共に、壁片自体が変形し難い。
【0017】
請求項3記載の発明にあっては、フロートバルブの上部小径部に第1案内壁部を設けた関係で、フロートバルブを壁片と干渉しない形状にしても、ハウジングとフロートバルブとのガタツキを最小限に抑えることが可能となる。
【0018】
請求項4記載の発明にあっては、フロートバルブの下部大径部にも第2案内壁部を設けた関係で、ハウジングとフロートバルブとのガタツキをより確実に防止できる。逆に、第2案内壁部をハウジング側に設けると、第2案内壁部と通孔の間隔が狭くなるので、ガソリン蒸気の排気性が悪くなるが、フロートバルブ側に第2案内壁部を設ければ、このような影響を全く受けない。
【0019】
請求項5記載の発明にあっては、矩形状の壁片のハウジングに連接されていない他方の側縁から離れたハウジングの内側面に内壁を設けた関係で、ハウジングの通孔を通過してきた燃料が当該内壁にぶつかるので、壁片の作用と相俟って、燃料漏れを有効に防止できる。
【0020】
請求項6記載の発明にあっては、矩形状の壁片のハウジングに連接されている一方の側縁側のハウジングの外側面に外壁を設けた関係で、ハウジングの通孔を通過する前の燃料が当該外壁にぶつかるので、これも、壁片の作用と相俟って、燃料漏れを有効に防止できる。
【0021】
請求項7記載の発明にあっては、内壁と外壁の双方をハウジングの内側面と外側面に設けた関係で、ハウジングの通孔を通過してきた燃料とハウジングの通孔を通過する前の燃料とを内壁と外壁に同時にぶつけられることができるので、燃料漏れを更に一層防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、内部に外部と連通する接続空間を有して燃料タンクの上壁に取り付けられるコネクタと、内部に収納空間を画して上部に上記接続空間と連通する弁座を有するハウジングと、該ハウジングの弁座を開閉する弁部を有してハウジングの収納空間内に上下動可能に配されるフロートバルブとを備える燃料漏れ防止弁を前提として、上記ハウジングの上部壁面に内外側を連通させる通孔を設けると共に、該通孔と対応するハウジングの内側に矩形状の壁片を設ける一方、上記フロートバルブを当該壁片に干渉しない形状となすことにより、燃料漏れを確実に防止せんとするものである。
【実施例1】
【0023】
以下、本発明を図示する各好適な実施例に基づいて詳述する。第一実施例に係る燃料漏れ防止弁も、基本的には、先に説明した従来例と同様に、図1に示す如く、内部に外部と連通する接続空間5を有して燃料タンクTの上壁Taに取り付けられるコネクタ1と、内部に収納空間を画成して上部に上記接続空間5と連通する弁座6を有するハウジング2と、該ハウジング2の弁座6を開閉する弁部3aを有してハウジング2の収納空間内をスプリング7の付勢ばね圧を受けながら上下動可能に配設されるフロートバルブ3と、ハウジング2の下部開口を閉塞するキャップ4とを備える構成となっている。尚、従来例の部品・部材と共通するものには、従来例の符号と同様な符号を付してある。
【0024】
尚、この場合、コネクタ1に対しては、その下部外周に燃料タンクTの上壁Taに開設された取付孔Hをシールする円環状のフランジ部8を形成すると共に、上部側方にキャニスター側に接続される接続配管部9を横設し、該コネクタ1にOリング15を介して連結されるハウジング2に対しては、上記弁座6を有する上部小室部10Aと、該上部小室部10Aから連続する下部大室部10Bとから成して、下部大室部10Bの最上位の対向する壁面に内外側を連通させる対の関係にある3段の通孔11を形成し、フロートバルブ3に対しては、ハウジング2の弁座6を開閉する弁部3aを先端に形成した上部小径部12Aと、ハウジング2の下部大室部10B内を上下動する下部大径部12Bとから成して、上部小径部12Aの円錐状周面に複数の第1案内壁部13を一定の間隔をおいて突設すると共に、下部大径部12Bの側面に複数の第2案内壁部14を一定の間隔をおいて突設し、キャップ4に対しては、具体的には図示しないが、ハウジング2との連結固定手段を有して、その下壁に多数の通気孔を形成する構成となっている。
【0025】
そして、第一実施例にあっては、斯かる構成を前提として、図2・図3にも示す如く、上記ハウジング2の各通孔11と対向するハウジング2の内側に矩形状の壁片16を個々に設けて、各通孔11から入り込む燃料を当該壁片16にぶつけて、その飛沫がハウジング2の弁座6方向に飛散する時間を稼ぐことにより、その間に、フロートバルブ3の弁部3aでハウジング2の弁座6を閉塞して、これにより、燃料漏れを防止できるように構成した点にある。この為、各壁片16は、その上縁と一方の側縁とをハウジング2と一体に連接する構成を採用した関係で、全体としてみると、各通孔11を一定の間隔を画して覆う状態をもって、横L字状となって表面側が湾曲する形状を呈することとなる。
【0026】
又、ハウジング2の内側に壁片16を設けたことに起因して、その上下動の過程で、フロートバルブ3が当該壁片16に干渉しないように、図4にも示す如く、フロートバルブ3の下部大径部12Bの側面に設けられる第2案内壁部14の高さを制限して、該第2案内壁部14と上記第1案内壁部13の間に空域17を画成して、該空域17内に各壁片16を存在させる構成を併せて採用している。従って、各壁片16を結ぶ径は、各第1案内壁部13を結ぶ径と各第2案内壁部14を結ぶ径の範囲内に設定され、且つ、各壁片16の高さは、第1案内壁部13と第2案内壁部14の間に留まる関係で、フロートバルブ3の上下動に支障を来たす心配は全くない。
【0027】
依って、斯かる構成の燃料漏れ防止弁にあっても、コネクタ1とハウジング2とを連結する状態を得て、ハウジング2の収納空間内にフロートバルブ3とスプリング7を収納しながら、当該ハウジング2の下部開口をキャップ4で閉塞すれば、これにより、燃料漏れ防止弁が簡単に組み付けられるので、後は、従来と同様に、ハウジング2を燃料タンクTの上壁Taに開設された取付孔Hに臨ませながら、上記コネクタ1をそのフランジ部8を介して燃料タンクTの上壁Taに熱溶着すれば、その使用に供されることとなる。
【0028】
尚、この状態にあっては、ハウジング2の上部小室部10Aとフロートバルブ3の上部小径部12Aとが対応し、同下部大室部10Bと同下部大径部12Bとが対応する関係で、ハウジング2が有する弁座6の高さ位置を燃料タンクTの上壁Taに開設された取付孔Hを介して十分な高さまで外部に突出させることができるので、満タン時の燃料液面を引き上げることが可能となって、より大量の燃料を燃料タンクT内に蓄積することが可能となる。
【0029】
そして、常時は、フロートバルブ3がハウジング2の内部で下降しているので、ハウジング2の上部小室部10Aに形成された弁座6が開放されて、燃料タンクT内のガソリン蒸気をコネクタ1に設けられている接続配管部9からキャニスターを経て外部に放出する結果、燃料タンクTの内圧が異常に上昇することを防止できる。
【0030】
更に、自動車の走行に伴う燃料の揺動などで、ハウジング2の各通孔11から入り込んできた燃料は、基本的には、ハウジング2の下部大室部10Bと上部小室部10Aの境に生じる段差で、その飛沫がハウジング2の弁座6方向に飛散することを防止できるが、これでも、十分ではない場合には、通孔11から入り込んできた燃料を、一旦、対応する壁片16にぶつけて、ハウジング2に連接されていないその開放状態にある下縁側と他方の側縁側に導いて、弁座6に到達する時間を稼げるので、燃料の飛沫が弁座6に到達する前に、フロートバルブ3の上部小径部12Aに形成された弁部3aがハウジング2の弁座6を塞ぐ結果、これにより、燃料漏れを防止することが可能となる。
【0031】
逆に、自動車が旋回して、燃料タンクT内の燃料がハウジング2の通孔11やキャップ4の通気孔を経てハウジング2の内部に達すると、その浮力とスプリング7の付勢ばね圧により、フロートバルブ3が自動的に上昇することとなるが、この時には、フロートバルブ3の下部大径部12B側に設けられた第2案内壁部14がハウジング2の下部大室部10Bの内壁面に沿って移動することに加えて、上部小径部12A側に設けられた第1案内壁部13も上部小室部10Aの内壁面に沿って移動するので、上昇時におけるフロートバルブ3のガタツキを最小限に抑えて、フロートバルブ3の移動をスムーズに案内できる。尚、この場合にあっても、ハウジング2の通孔11から入り込んできた燃料は、対応する壁片16にぶつかって、該壁片16の開放されている下縁側と他方の側縁側に導かれることは言うまでもない。
【0032】
従って、最終的には、フロートバルブ3の上部小径部12Aがハウジング2の上部小室部10A内に入り込んで、自身の弁部3aでハウジング2側の弁座6を閉塞するので、これにより、燃料漏れが防止できる。尚、自動車の転倒時には、今度は、フロートバルブ3自体の重量とスプリング7の付勢ばね圧により、フロートバルブ3が第1・第2案内壁部13・14の案内を得て同様に作動して、自身の弁部3aでハウジング2側の弁座6を閉塞するので、やはり、燃料漏れが防止できる。
【0033】
更に、燃料がハウジング2の内部から流下すると、今度は、フロートバルブ3が浮力を失って、ハウジング2の内部で下降することとなるが、この時にも、第1案内壁部13が上部小室部10Aの内壁面に沿って移動し、第2案内壁部14が下部大室部10Bの内壁面に沿って移動するので、フロートバルブ3の移動をスムーズに案内できる。
【実施例2】
【0034】
次に、第二実施例に係る燃料漏れ防止弁を説明すると、該第二実施例のものは、上記した第一実施例の構成をそのまま踏襲するものであるが、これに加えて、図5に示す如く、各矩形状の壁片16のハウジング2に連接されていない他方の側縁から離れたハウジング2の内側面に、壁片16の高さ方向の寸法と径方向の寸法と略等しくする内壁18を個々に設けて、ハウジング2の各通孔11を通過してきた燃料を当該内壁18にぶつけるように構成したものである。
【0035】
依って、第二実施例にあっても、自動車の走行に伴う燃料の揺動などで、ハウジング2の各通孔11から燃料が入り込もうとすると、通孔11を通過した燃料は、一旦、対応する壁片16にぶつかることとなるが、この場合に、燃料の入り込む方向が、図8・図9の矢印に示す如く、各壁片16のハウジング2に連接されている一方の側縁側であると、燃料は当該一方の側縁側にぶつかって、大方がハウジング2に連接されていないその開放状態にある下縁側と他方の側縁側に導かれて、弁座6に到達する時間を稼げるが、逆に、燃料の入り込む方向が、図10の矢印に示す如く、各壁片16のハウジング2に連接されている一方の側縁から開放状態にある他方の側縁方向であると、燃料の通過を遮るものがないので、燃料の飛沫が弁座6方向に到達する恐れがある。
【0036】
しかし、第二実施例にあっては、既述したように、開放状態にある他方の側縁から離れたハウジング2の内側面に内壁18を設けて、通孔11を通過してきた燃料を該内壁18にぶつける構成を採用している関係で、例え、図10の矢印方向から燃料が入り込んできても、入り込んできた燃料は、今度は、この内壁18にぶつかって、弁座6に到達することを確実に阻止できるので、これにより、第一実施例と比較すると、燃料漏れをより確実に防止できることとなる。
【0037】
又、第二実施例にあっては、図6にも示す如く、ハウジング2の上部小室部10Aの弁座6の周面内側に、縦横のリブ構造20を積極的に付与して、例え、弁座6に燃料の飛沫が飛散しても、当該リブ構造20にぶつけて、燃料の飛沫が溜まりにくくすると共に、耐衝撃性を図る構成をも併せて採用している。
【実施例3】
【0038】
第三実施例に係る燃料漏れ防止弁を説明すると、該第三実施例のものは、上記した第二実施例とは逆に、図7に示す如く、各矩形状の壁片16のハウジング2に連接されている一方の側縁側のハウジング2の外側面に、今度は、壁片16の高さ方向の寸法と略等しくする外壁19を個々に設けて、ハウジング2の各通孔11を通過する前の燃料を当該外壁19にぶつけるように構成したものである。
【0039】
依って、第三実施例にあっては、自動車の走行に伴う燃料の揺動などで、ハウジング2の各通孔11から燃料が入り込もうとすると、今度は、燃料が各通孔11を通過する前に、上記した各外壁19にぶつかって、ハウジング2の外側面に沿って流下することとなるので、各通孔11を通過する燃料の量が極めて少なくなって、これにより、第一実施例と比較すると、やはり、燃料漏れをより確実に防止できることとなる。
【0040】
尚、具体的には図示しないが、第二実施例の内壁18と第三実施例の外壁19とをハウジング2の内外側面に同時に設ければ、内壁18と外壁19の相乗作用で、燃料漏れを一層確実に防止することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る燃料漏れ防止弁は、ハウジングの通孔と対応する内側に壁片を設けて、該通孔から入り込んだ燃料の飛沫がハウジングの弁座方向に直ちに飛散することを防止できるので、これを自動車の燃料タンクに応用すれば、頗る好都合なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第一実施例に係る燃料漏れ防止弁を分解して示す縦断面図である。
【図2】(A)はハウジングの底面図、(B)はハウジングの縦断面図である。
【図3】燃料漏れ防止弁を一部切欠して底面側から示す要所斜視図である。
【図4】フロートバルブを示す斜視図である。
【図5】(A)は第二実施例に供されるハウジングを示す底面図、(B)は要部拡大断面図である。
【図6】ハウジングの上部小室部側の要部断面図である。
【図7】第三実施例に供されるハウジングの要部拡大断面図である。
【図8】燃料の入り込み方向を示す説明図である。
【図9】燃料の入り込み方向を示す説明図である。
【図10】燃料の入り込み方向を示す説明図である。
【図11】従来の燃料漏れ防止弁を分解して示す縦断面図である。
【図12】従来の燃料漏れ防止弁において、ハウジングの弁座を開放した状態を示す縦断面図である。
【図13】従来の燃料漏れ防止弁において、ハウジングの弁座を閉塞した状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 コネクタ
2 ハウジング
3 フロートバルブ
3a 弁部
4 キャップ
5 接続空間
6 弁座
7 スプリング
8 フランジ部
9 接続配管部
10A 上部小室部
10B 下部大室部
11 通孔
12A 上部小径部
12B 下部大径部
13 第1案内壁部
14 第2案内壁部
15 Oリング
16 壁片
17 空域
18 内壁
19 外壁
20 リブ構造
T 燃料タンク
Ta 上壁
H 取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に外部と連通する接続空間を有して燃料タンクの上壁に取り付けられるコネクタと、内部に収納空間を画して上部に上記接続空間と連通する弁座を有するハウジングと、該ハウジングの弁座を開閉する弁部を有してハウジングの収納空間内に上下動可能に配されるフロートバルブとを備える燃料漏れ防止弁において、上記ハウジングの上部壁面に内外側を連通させる通孔を設けると共に、該通孔と対応するハウジングの内側に矩形状の壁片を設ける一方、上記フロートバルブを当該壁片に干渉しない形状となしたことを特徴とする燃料漏れ防止弁。
【請求項2】
矩形状の壁片は、その上縁と一方の側縁とがハウジングと一体に連接されていることを特徴とする請求項1記載の燃料漏れ防止弁。
【請求項3】
ハウジングは、弁座を有する上部小室部と、該上部小室部から連続する下部大室部とを有し、フロートバルブは、ハウジングの弁座を開閉する弁部を形成した上部小径部と、上記ハウジングの下部大室部内を上下動する下部大径部とを有し、フロートバルブの上部小径部にフロートバルブが下降している時でも上記ハウジングの上部小室部に入り込んでいる第1案内壁部を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の燃料漏れ防止弁。
【請求項4】
フロートバルブの下部大径部に第2案内壁部を設けて、該第2案内壁部と第1案内壁部の間に矩形状の壁片を存在させたことを特徴とする請求項3記載の燃料漏れ防止弁。
【請求項5】
矩形状の壁片のハウジングに連接されていない他方の側縁から離れたハウジングの内側面に、ハウジングの通孔を通過してきた燃料がぶつかる内壁を設けたことを特徴とする請求項2記載の燃料漏れ防止弁。
【請求項6】
矩形状の壁片のハウジングに連接されている一方の側縁側のハウジングの外側面に、ハウジングの通孔を通過する前の燃料がぶつかる外壁を設けたことを特徴とする請求項2記載の燃料漏れ防止弁。
【請求項7】
矩形状の壁片のハウジングに連接されていない他方の側縁から離れたハウジングの内側面に、ハウジングの通孔を通過してきた燃料がぶつかる内壁を設けると共に、矩形状の壁片のハウジングに連接されている一方の側縁側のハウジングの外側面に、ハウジングの通孔を通過する前の燃料がぶつかる外壁を設けたことを特徴とする請求項2記載の燃料漏れ防止弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−166825(P2009−166825A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239439(P2008−239439)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】