説明

燃料電池自動車

【課題】フロアパネルの全高の上昇や車室内の着座スペースの圧迫等による車室内の快適性を損なうことなく、しかも、外部からの荷重入力に対して燃料電池スタックを確実に保護し得る燃料電池自動車を提供する。
【解決手段】車幅方向の略中央位置に車両前後方向に沿う左右一対のセンターフレーム27を設け、センターフレーム27よりも車幅方向外側位置に車両前後方向に沿う左右一対のサイドフレーム2を設ける。車幅方向の略中央位置でフロアパネル1から上方に膨出するセンターコンソール23を設け、センターコンソール23の側壁下端の近傍をセンターフレーム27に支持させる。燃料電池スタック12をサブフレーム40に取り付け、サブフレーム40を、サイドフレーム2とセンターフレーム27に結合して、燃料電池スタック12がセンターコンソール23内に収容されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は燃料電池自動車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池自動車においては、複数の燃料電池セルを積層して燃料電池スタックが形成され、その燃料電池スタックがフロアパネルの下方等に搭載されている。この種の燃料電池自動車として、燃料電池スタックをサブフレームに取り付け、このサブフレームを車体下方側から車両のサイドフレーム等の車体骨格部材に結合したものが案出されている(例えば、特許文献1等参照)。
【特許文献1】特開2003−182624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この従来の燃料電池自動車の場合、燃料電池スタックがフロアパネルの下面側で車幅方向に広範囲に亙って配置されるため、フロアパネル全体の高さの上昇や、乗員の着座スペースの圧迫等の不具合を招く。
【0004】
また、この種の燃料電池自動車においては、燃料電池セルを車体前後方向に積層することも検討されているが、この場合には、燃料電池スタックの積層方向と直交する車両側方からの荷重入力に対して、燃料電池スタックを確実に保護することが課題となる。
【0005】
そこでこの発明は、フロアパネルの全高の上昇や車室内の着座スペースの圧迫等によって車室内の快適性を損なうことなく、外部からの荷重入力に対して燃料電池スタックを確実に保護し得る燃料電池自動車を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、燃料電池スタック(例えば、後述の実施形態における燃料電池スタック12)がサブフレーム(例えば、後述の実施形態におけるサブフレーム40)を介して車両のフロアパネル(例えば、後述の実施形態におけるフロアパネル1)の下方に取り付けられる燃料電池自動車において、車幅方向の略中央位置で前記フロアパネルを、車両の左右のフロントシート間で上方に膨出して形成したセンターコンソール(例えば、後述の実施形態におけるセンターコンソール23)と、車幅方向の略中央位置に車両前後方向に沿って配置されて、前記センターコンソールを支持する左右一対のセンターフレーム(例えば、後述の実施形態におけるセンターフレーム27)を設け、前記サブフレームに搭載した燃料電池スタックが前記センターコンソールの内側に収容されるよう、前記サブフレームを前記左右一対のセンターフレームに結合するようにした。
【0007】
これにより、燃料電池スタックは、左右のシート間で上方に膨出したセンターコンソールの内側に車体前後方向に沿って配置されるようになり、また、燃料電池スタックを支持するサブフレームは、燃料電池スタックの直近両側においてセンターフレームに結合されるようになる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記センターフレームよりも車幅方向外側位置に車両前後方向に沿って配置された左右一対のサイドフレーム(例えば、後述の実施形態におけるサイドフレーム2)を設け、前記サブフレームを前記センターフレームと前記サイドフレームとに連結するようにした。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記サブフレームを、車幅方向に延出する車体前側と後側のサブクロスフレーム(例えば、後述の実施形態におけるサブクロスフレーム41,42)と、車体前後方向に延出する車体左側と右側のサブセンターフレーム(例えば、後述の実施形態におけるサブセンターフレーム44)と、を備えた構成とし、これらのサブクロスフレームとサブセンターフレームとに囲まれた領域に、前記燃料電池スタックを取り付けるようにした。
これにより、燃料電池スタックは、前後のサブクロスフレームと左右のサブセンターフレームによって方形状に組まれた強固な骨格部に支持されることとなる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記サブフレームを、前記サブセンターフレームとサブクロスフレームとの各交点で、前記センターフレームに結合するようにした。
これにより、各センターフレームがサブセンターフレームによってそれぞれ補強されるとともに、左右のセンターフレームがサブクロスフレームを介して相互に補強されることとなる。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の発明において、前記センターフレームよりも車幅方向外側位置に車両前後方向に沿って配置された左右一対のサイドフレームを設け、前記各サブクロスフレームを前記左右のサイドフレーム間に亘って延在させるとともに、前記各サブクロスフレームの両端部を前記左右のサイドフレームに連結するようにした。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記サブセンターフレームをサブクロスフレームとの結合点から延長し、前記サイドフレーム側に連結される前記サブクロスフレームの端部と、前記サブセンターフレームの前記結合点からの延長部とを結合する傾斜フレーム(例えば、後述の実施形態におけるガセットパイプ46)を設けるようにした。
これにより、サイドフレームの側方から外部加重が入力されると、その加重がサブクロスフレームを介してサブセンターフレーム上のサブクロスフレームとの結合点に伝達されるとともに、傾斜フレームを介してサブセンターフレームの延長部にも伝達されることとなる。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明において、前記燃料電池スタックを前記サブフレームに取り付けるためのブラケットを設け、このブラケットが前記サブフレームと左右のセンターフレームの間に挟持されるように、前記サブフレームを左右のセンターフレームにそれぞれ結合するようにした。
これにより、燃料電池スタックを取り付けるためのブラケットが左右のセンターフレームを相互に連結する補強部材として機能するようになる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、燃料電池スタックが左右のフロントシート間においてセンターコンソールの内側に車体前後方向に沿って配置されるため、燃料電池スタックの少なくとも一部をフロアレベルの上側に位置させることで外部からの荷重入力に対し燃料電池スタックを有利に保護することができると共に、センターコンソールによって居住空間と燃料電池スタックとを区分することができる。また、フロアパネルの全高の上昇や車室内の着座スペースの圧迫を無くすことができるので、車室内の快適性を損なうことがない。しかも、燃料電池スタックを支持するサブフレームが車体前後方向に沿い、センターコンソールを支持するセンターフレームに結合されるため、外部からの荷重入力に対して燃料電池スタックを確実に保護することができる。
【0015】
さらに、請求項2に記載の発明によれば、燃料電池スタックを搭載するサブフレームが車両前後方向に沿うセンターフレームとサイドフレームの両方に連結されるため、特に、車体側方からの荷重入力に対して燃料電池スタックを確実に保護することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、燃料電池スタックが、前後のサブクロスフレームと左右のサブセンターフレームによって方形状に組まれた強固な骨格部に支持されるため、燃料電池スタックの支持剛性を高めることができるとともに、外部からの加重入力に対して燃料電池スタックをより確実に保護することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、サブフレームが、サブセンターフレームとサブクロスフレームとの各交点でセンターフレームに結合されるため、サブフレームによってセンターフレームの剛性を効率良く高めることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、サブセンターフレームとともに燃料電池スタックを支持するサブクロスフレームがセンターフレームとサイドフレームの両方に連結されるため、車体側方からの加重入力に対して燃料電池スタックをより確実に保護することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、サイドフレームに入力された車体側方からの外部加重を、サブクロスフレームと傾斜フレームを介してセンターフレームの長手方向に離間した部位に分散させて伝達することができるため、センターフレームの断面の大型化を招くことなく、車体側方からの入力加重に対するセンターフレームの強度を高めることができる。したがって、この発明においては、センターフレームの断面積や重量の増大を抑制することができるため、部品配置の自由度の向上と車両の軽量化を図ることができる。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、サブフレームとセンターフレームによるブラケットの挟み込みによってブラケットの取付剛性を確実に高めることができるうえ、ブラケットが左右のセンターフレームを相互に連結する補強部材として機能することから、部品点数の増加や重量増加を招くことなく、左右のセンターフレームの剛性を効率良く高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図4に示すように、燃料電池自動車には車体前部から車体後部に亘りフロアパネル1下に車体骨格部材を形成する左右一対のサイドフレーム2が設けられている。車体左右のサイドフレーム2は車体前後方向に沿って配置されており、各サイドフレーム2の外側壁3にはアウトリガー4を介してサイドシル5が接合されている。サイドシル5の後端部はイクステンション6を介してサイドフレーム2の後部に合流するように接続されている。サイドフレーム2には車幅方向に車体骨格部材であるクロスメンバ7,8,9が接続されている。
【0022】
車体前部のモータルーム10にはフロントサブフレーム11が設けられ、ここに燃料電池スタック12に空気を送給するコンプレッサ13と走行用の駆動モータ14からなるポンプモータユニット15が配置されている。
車体後部にはサイドフレーム2に下側から図示しない車輪及びサスペンションを一体で備えたリヤサブフレーム16が取り付けられ、このリヤサブフレーム16には燃料電池スタック12の燃料である水素を貯留する水素タンク17及び蓄電池18が取り付けられている。
このように構成されたサイドフレーム2上であってサイドシル5,5間に亘る部位にフロアパネル1が接合されている。フロアパネル1の前端部は前側に立ち上がりダッシュロア1aへと連なり、フロアパネル1の後端部は前記リヤサブフレーム16の水素タンク17上部を覆う位置まで延出している。
【0023】
フロアパネル1上には、フロントシート20とリヤシート21が配置され、左右のフロントシート20間には、ダッシュロア1aの下端部からリヤシート21の近傍まで延出するセンターコンソール23が車室内上方に膨出するようにしてフロアパネル1に形成されている。
【0024】
図4に示すように、センターコンソール23の左右の側壁25の付根側の立ち上がり部24には、略三角形状の断面を形成するようにレインフォース26が下面側から接合され、これによってセンターコンソール23の側壁25下端が補強されている。一方、車体幅方向の略中央位置には、閉断面構造の左右一対のセンターフレーム27が車体前後方向に延出して設けられている。このセンターフレーム27の上方にはセンターコンソール23の各側壁25の下端が配置され、各センターフレーム27の上面に前記レインフォース26が結合されることで前記センターコンソール23が支持されている。
【0025】
また、両側のセンターフレーム27の車幅方向外側に位置されている左右のサイドフレーム2とその上面に接続されるフロアパネル1との内側コーナー部分には、車体前後方向に沿った閉断面構造を成す補強フレーム28が接合されている。そして、この左右のサイドフレーム2に一体化された補強フレーム28と、前記各センターフレーム27の下面には後述するサブフレーム40が結合され、このサブフレーム40に搭載された燃料電池スタック12と補機類19とがセンターコンソール23内に配置されるようになっている。
【0026】
図5に示すように、サブフレーム40は、前記アウトリガー4に対応した位置に配置され車幅方向に延出する前サブクロスフレーム41と後サブクロスフレーム42を備えている。前後のサブクロスフレーム41,42の間には、これらのサブクロスフレーム41,42の左右の端部同士を連結するサブサイドフレーム43,43が設けられている。このサブサイドフレーム43,43は前記サイドフレーム2の内側壁に沿って補強フレーム28下に配置される。尚、図5中FRはフロント側を示す。
【0027】
各サブサイドフレーム43の内側には前記センターフレーム27の下側に位置するサブセンターフレーム44が車体前後方向に沿って配置されている。この各サブセンターフレーム44の前端部は前サブクロスフレーム41に結合され、各サブセンターフレーム44の後縁部は後サブクロスフレーム42に結合されており、各サブセンターフレーム44は更に後サブクロスフレーム42との結合点を超えて後方側に延長している。左右のサブセンターフレーム44の後端部は車幅方向に配置されたエンドパイプ45によって連結され、エンドパイプ45の左右の端部と後サブクロスフレーム42の左右の端部は、斜めに配置されたガセットパイプ46(傾斜パイプ)によって連結されている。ガセットパイプ46は、アウトリガー4に対し側部から衝撃荷重が入力された場合には、その衝撃荷重を燃料電池スタック12から遠ざける方向に逃がすように配置されており、側突時の衝撃荷重が燃料電池スタック12に作用しづらくなっている。
各サブセンターフレーム44とサブサイドフレーム43との間には前側と後側に中間パイプ47,47が所定間隔をもって接続されている。
【0028】
サブフレーム40上のサブサイドフレーム43と前後のサブクロスフレーム41,42との連結部には、車体側の補強フレーム28に対する取付点Pが設定され、サブセンターフレーム44と前後のサブクロスフレーム41,42との連結部には車体側のセンターフレーム27に対する取付点Pが設定され、エンドパイプ45とガセットパイプ46とサブセンターフレーム44との連結部には車体側のセンターフレーム27に対する取付点Pが設定されている。これら10箇所の取付点P,P,…において、前記サブフレーム40が車体のセンターフレーム27及び補強フレーム28に下方からボルト、ナットにより締め付け固定され、サイドフレーム2の上下幅寸法内に収まるようになっている。このように、補強フレーム28の下側であって、サイドフレーム2の上下幅寸法内に収まるようにサブフレーム40が取付けられているので、サブフレーム40の上下幅寸法の分、フロアパネル1の低床化を図ることができる。
【0029】
また、サブフレーム40の前後のサブクロスフレーム41,42間には、左右のサブセンターフレーム44間に納まるように燃料電池スタック12が配置されている。この燃料電池スタック12はサブクロスフレーム41,42に夫々固定したブラケット48,49(図6,図7参照)を介してサブフレーム40に固定されている。また、エンドパイプ45と後サブクロスフレーム42には、サブセンターフレーム44間に位置されるように燃料電池スタック12の補機類19が取り付けられている。具体的には、補機類19は下側から酸素系補機類、その上に水素系補機類、更に上に燃料電池スタック12のシステムを管理するECUの順に配置されている。
【0030】
サブフレーム40は、以上のように構成されているが、このサブフレーム40の前後のサブクロスフレーム41,42や左右のサブセンターフレーム44、エンドパイプ45等の構成要素間はボルト結合や溶接等によって結合されている。特に、ボルト結合によって構成要素間を結合する場合には、例えば、図8,図9に示すような結合部構造を採用することも可能である。
【0031】
図8,図9は、一方のサブセンターフレーム44と後サブクロスフレーム42の結合部構造を一例として示すものである。この結合部では、サブセンターフレーム44に車幅方向に貫通する貫通孔60を形成し、この貫通孔60に後サブクロスフレーム42を嵌合して両者の交差部をボルト61とナット62で結合した概略構造となっている。さらに詳細には、図9に示すようにサブセンターフレーム44の下面側からは、後サブクロスフレーム42の上壁に達する補強用のカラー63を嵌入した状態でボルト61を挿入し、ボルト61の先端部を後サブクロスフレーム42とサブセンターフレーム44の上壁、更に車体側のセンターフレーム27まで貫通させた状態でセンターフレーム27の上面側からナット62を締め込むようになっている。この構造の場合、後サブクロスフレーム42とサブセンターフレーム44がボルト61とナット62によって結合されることに加え、両フレーム42,44が相互に嵌合されるため、結合部の強度と剛性がより一層高まり、更に、センターフレーム27も同時に共締め固定するようにしているため、組み付け工数も削減される。
【0032】
ところで、燃料電池スタック12は、略長方形状の複数の燃料電池セル(以下、「単セル」と呼ぶ)を積層して一体ブロック状にしたものであり、積層方向の端部である前端部と後端部には、図6,図7に示すように金属製のエンドプレート12FE、12REが取り付けられ、このエンドプレート12FE,12REによって積層された単セルを挟み込んで締め付け固定されている。こうして構成された燃料電池スタック12は、前述のようにブラケット48,49を介してサブクロスフレーム41,42に固定されるが、このときスタック12は単セルのなす略長方形状の長辺が上下方向を向くようにしてサブフレーム40に搭載される。したがって、燃料電池スタック12はこれによって横断面が縦長になり、サブフレーム40が前述のように車体下面側に取り付けられた状態において、センターコンソール23の横幅の狭い横断面内に収容することが可能となっている。
【0033】
また、前部側のエンドプレート12FEには,図6に示すように冷却水の給排通路30a,30bが設けられ、後部側のエンドプレート12REには,図7に示すように水素系の給排口31a,31b(一方は前述の水素タンク17に接続されている。)と酸素系の給排口32a,32b(一方は前述のコンプレッサ13に接続されている。)が夫々対角位置に設けられている。
【0034】
ここで、この車両に搭載される燃料電池のシステムについて簡単に説明すると、この燃料電池においては、図10に示すように燃料電他スタック12の後方側から水素と酸素(コンプレッサ13によって加圧された空気)が導入され、この導入された水素と酸素が各セル内のアノードとカソードに供給されると、両ガスの反応によって発電が行われるようになっている。また、燃料電他スタック12の前方側からは冷却水が循環供給され、前述のガスの反応の際に発生する熱を冷却水によって冷却するようになっている。なお、各セルのアノードに供給される水素は図示しないエゼクタによって未反応分が再循環して用いられるが、ここで完全に反応しきらなかった残留水素を含む排出ガスは希釈ボックスで希釈されて車外に排出される。
【0035】
また、図5に示すようにサブフレーム40の車体左側の中間パイプ47,47間にはDC−DCコンバータ51が取り付けられ、車体右側の中間パイプ47,47間には水素タンク17内の水素の燃焼等によって発熱を行うヒータ50が取り付けられている。DC−DCコンバータ51は電圧調整をための電装機器であり、その電力変換ケーブル70が中間パイプ47の上面に沿い、更に車体左側のセンターフレーム27とサブセンターフレーム44の対向面を跨いでセンターフレーム27の車幅方向内側に沿って配線されている。また、ヒータ50は冷寒始動時に燃料電池スタック12内に温水を供給するためのものであり、その配管71が中間パイプ47の上面に沿い、更に車体右側のセンターフレーム27とサブセンターフレーム44の対向面を跨いで燃料電池スタック12に接続されている。
【0036】
図5,図11に示すように、車体右側のセンターフレーム27とサブセンターフレーム44の対向面には相互に対向する窪み部72,73が形成され、この窪み部72,73間に形成される貫通孔にヒータ50の配管71が挿通されている。車体左側のセンターフレーム27とサブセンターフレーム44の対向面には同様の窪み部72,73(図5中にサブセンターフレーム44側の窪み部73のみ図示)が形成され、その窪み部72,73間の貫通孔に電力変換ケーブル70が挿通されている。なお、図11において、Gは、燃料電池スタック12の重心を示す。
【0037】
この燃料電池自動車は、以上のように左右のフロントシート20,20間に部分的に膨出したセンターコンソール23内に燃料電池スタック12が収容されるため、フロアパネル1の全体の高さを低く抑え、かつ、居住空間内の着座スペースを圧迫することなく、燃料電池スタック12を居住空間外となるフロアパネル1下にコンパクトに配置することができる。つまり、燃料電池スタック12を配置するために居住空間内に大きく膨出するのはセンターコンソール23部分のみであり、しかも、センターコンソール23部分はその上方にアームレスト等が配置されて乗員にとって居住空間内への膨出が気にならない部分であるため、センターコンソール23の膨出による圧迫感や違和感を乗員に与えることがない。
特に、この燃料電池自動車においては、燃料電池スタック12の重心Gをフロアレベルの上側に位置させることで車両の側方からの荷重入力に対し燃料電池スタック12を保護することができると共に、センターコンソール23によって居住空間と燃料電池スタック12とを区分けすることができる。
さらに、この実施形態においては、横断面が縦長になるようにして燃料電池スタック12をコンソールボックス23内に収容するようにしているため、車室空間内におけるコンソールボックス23の占有幅をより小さく抑えるのに有利となっている。
【0038】
また、この燃料電池自動車の場合、燃料電池スタック12を支持するサブフレーム40が、フロアパネル1下において車体前後方向に沿う車体左右のサイドフレーム2,2とセンターフレーム27,27に夫々取り付けられているため、車体骨格部材に対して燃料電池スタック12を充分な強度をもって支持させることができる。特に、サブフレーム40の車幅方向外側は断面が大きく強度的に有利なサイドフレーム2,2に結合され、サブフレーム40の車幅方向内側は燃料電池スタック12の直近位置でセンターフレーム27,27に結合されているため、燃料電池スタック12の積層方向と直交する車体側方からの荷重入力に対して燃料電池スタック12を有効に保護することができる。
【0039】
また、サブフレーム40は、センターコンソール23の側壁下端を支持するセンターフレーム27自体の曲げ方向の強度を高めることができるため、側方荷重入力時におけるセンターコンソール23の変形や燃料電池スタック12に対するずれを有効に抑えることができる。
【0040】
この実施形態の場合、サブクロスフレーム41,42と左右のサブセンターフレーム44,44によって囲まれた長方形状の強固な骨格部の内側に燃料電池スタック12が取り付けられているため、燃料電池スタック12の支持剛性を高めることができるうえ、車体側部からの加重入力に対して燃料電池スタック12をより確実に保護することができる。
そして、この実施形態では、サブフレーム40はサブセンターフレーム44とサブクロスフレーム41,42の各交点でセンターフレーム27に結合されているため、サブクロスフレーム41,42とサブセンターフレーム44,44による前述の長方形状の骨格部構造によってセンターフレーム27,27の剛性を効率良く高めることができる。さらに、燃料電池スタック12を支持するサブクロスフレーム41,42は車幅方向中央側のセンターフレーム27と車幅方向外側のサイドフレーム2,2に結合されているため、車体側方からの加重入力に対して燃料電池スタック12をより確実に保護することができる。
【0041】
また、この実施形態においては、サブフレーム40の後サブクロスフレーム42の両端部と、サブセンターフレーム44,44の後端部(エンドパイプ45の両端部)を斜めに連結するガセットパイプ46が設けられているため、車両側方からサイドフレーム2に入力された衝撃加重を、サブクロスフレーム41,42とガセットパイプ46を介してセンターフレーム27の長手方向に離間した複数箇所に分散して伝達することができる。したがって、センターフレーム27の断面の大型化を招くことなく、側方荷重に対するセンターフレーム27の強度を高めることができることから、充分な車体強度を保ったままセンターフレーム27の断面を小型化し、部品配置の自由度の向上と車両の軽量化を図ることができる。そして、特に、ガセットパイプ46は、後サブクロスフレーム42の端部と、サブセンターフレーム44上の燃料電池スタック12の搭載位置から離間した部位とを斜めに連結し、側方からの衝突加重を燃料電池スタック12から遠ざける方向に逃がすことができるため、燃料電池スタック12をより有利に保護することができる。
【0042】
つづいて、図12〜図19に示すこの発明の他の実施形態について説明する。
この実施形態の燃料電池自動車は、基本的な構造は前述した実施形態とほぼ同様であるが、燃料電池スタック12をサブフレーム140に取り付けるためのブラケット148,149の取付構造と、サブフレーム140のフレーム要素の接合部構造が前述の実施形態のものと異なっている。なお、ここで説明する他の実施形態においては、前述の実施形態と同一部分に同一符号付して重複する説明を一部省略するものとする。
【0043】
サブフレーム140の基本構成は、前述の実施形態とほぼ同様であるが、燃料電池スタック12をサブフレーム140に取り付けるためのブラケット148,149は、図12,図13に示すようにサブフレーム140側に結合される取付ベース部80が左右のサブセンターフレーム144,144の上方に跨るように延出し、それぞれサブクロスフレーム141,142の上面とサブセンターフレーム44,44の一部上面とに重合されている。そして、ブラケット148,149の各取付ベース部80は、図13に示すように複数のボルト81…,82…によってサブクロスフレーム141,142に結合されている。なお、図13は、前サブクロスフレーム141側のブラケット148の取付構造を示し、後サブクロスフレーム142側のブラケット149の取付構造は直接示されていないが、後サブクロスフレーム142側のブラケット149の取付部も前サブクロスフレーム141側のブラケット148の取付部とほぼ同様の構造となっている。したがって、図13においては、後サブクロスフレーム142側のブラケット149の取付部の対応部分に符号を括弧に入れて付すものとする。
【0044】
この実施形態のサブフレーム140は、後述するように各フレーム要素が重合され、重合されたフレーム要素が適宜溶接固定されている。サブクロスフレーム141,142の各上下面には左右のサブセンターフレーム144,144がそれぞれ重合され、その各重合部が車体骨格部材であるセンターフレーム127にボルト82…とナット83…で結合されるようになっている。こうしてサブフレーム140がセンターフレーム127に結合されるとき、前記ブラケット148,149の各端部は、図14,図15に示すようにサブフレーム140とセンターフレーム127の間にそれぞれ挟み込まれ、その状態においてボルト82…とナット83…によって共締め固定される。なお、各ブラケット148,149は、左右のサブセンターフレーム127,127よりも幅方向内側位置においてサブクロスフレーム141,142に単独でボルト81によって結合されている。
【0045】
また、この実施形態の場合、サブフレーム140のフレーム要素同士は基本的に溶接によって接合されている。図16〜図19は、サブフレーム140の接合部構造の一例を示すものであり、ここではサブサイドフレーム143、後サブクロスフレーム142、ガセットパイプ146の三者の接合部とその周辺部が描かれている。
サブサイドフレーム143とガセットパイプ146は、いずれも、断面ハット状のプレート材143a,143bと146a,146bの両縁のフランジ部が相互にスポット溶接された基本構造とされ、サブサイドフレーム143とガセットパイプ146の接合部では、サブサイドフレーム143のプレート材143a,143bの外面にガセットパイプ146のプレート材146a,146bが重合され、重合された4枚のプレート材143a,143b,146a,146bのフランジ部が同時にスポット溶接されている。そして、サブサイドフレーム143とガセットパイプ146の接合部のうちの、車幅方向内側のコーナー部分には方形状の開口85が形成され、この開口部分にサブクロスフレーム142の端部が挿入されて、同フレーム142がサブサイドフレーム143とガセットパイプ146にミグ溶接によって固定されている。なお、図16中、sは、スポット溶接部分を示し、mは、ミグ溶接部分を示す。
【0046】
この実施形態の場合にも、前述の実施形態と同様にサブフレーム140には、後サブクロスフレーム142の両端部とサブセンターフレーム144,144の後端部を斜めに連結するガセットパイプ146が設けられているため、車両側方から入力される衝撃荷重をセンターフレーム27上の長手方向に離間した複数箇所に分散支持されることができる。そして、燃料電池スタック12から離間する方向に伝達荷重を分散させることができるため、燃料電池スタック12をより有利に保護することができる。
【0047】
また、この実施形態の燃料電池自動車においては、燃料電池スタック12をサブフレーム140に取り付けるためのブラケット148,149の取付ベース部80が左右のサブセンターフレーム144,144の上方に跨るように形成されるとともに、その取付ベース部80の両端部がセンターフレーム127とサブフレーム140で挟み込まれるようにしてセンターフレーム127にボルト82とナット82で結合されているため、ブラケット148,149を高い剛性をもって車体に取り付けることができるうえ、ブラケット148,149によって左右のセンターフレーム127,127を補強することができる。したがって、この実施形態においては、部品点数の増加や重量の大幅増加を招くことなく、左右のセンターフレーム127,127の剛性を効率良く高めることができる。
また、サブフレーム140とブラケット148,149は同材質の材料によって形成することも可能であるが、それぞれ特性の異なる材料によって形成して、それぞれ役割に応じた適正材料によって支持強度を担うようにしても良い。
【0048】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、以上の実施形態においては、サブフレーム40の車幅方向の両端部を、補強フレーム28を介してサイドフレーム2に結合するようにしたが、サブフレーム40をサイドフレーム2に直接結合するようにしても良い。また、サブフレーム40の具体的な構造も上述の実施形態のものに限るものでなく、種々の態様が採用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この発明の一実施形態の車両の側面説明図。
【図2】同実施形態の車両の平面説明図。
【図3】同実施形態の車両を裏面から見た斜視図。
【図4】図2のA−A線に沿うフロアパネルの断面図。
【図5】この発明の一実施形態のサブフレームの平面図。
【図6】同実施形態の燃料電池スタックの前部側の構造を示す斜視図。
【図7】同実施形態の燃料電池スタックの後部側の構造を示す斜視図。
【図8】同実施形態のサブフレームの結合部構造を示す部分破断斜視図。
【図9】図8のB−B線に沿う断面図。
【図10】この発明の一実施形態の燃料電池システムを示す概略構成図。
【図11】図3のC−C線に沿う断面図。
【図12】この発明の他の実施形態のサブフレームの平面図。
【図13】同実施形態の燃料電池スタックの前部側の構造を示す斜視図。
【図14】図12のD−D線に沿う断面図。
【図15】図12のE−E線に沿う断面図。
【図16】図12のF部の拡大平面図
【図17】図16のH矢視図。
【図18】図16のI−I線に沿う断面図。
【図19】図16のJ−J線に沿う断面図。
【符号の説明】
【0050】
1…フロアパネル
2…サイドフレーム
12…燃料電池スタック
23…センターコンソール
27,127…センターフレーム
40,140…サブフレーム
41,42,141,142…サブクロスフレーム
44,144…サブセンターフレーム
46,146…ガセットパイプ(傾斜パイプ)
48,49,148,149…ブラケット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックがサブフレームを介して車両のフロアパネルの下方に取り付けられる燃料電池自動車において、
車幅方向の略中央位置で前記フロアパネルを、車両の左右のフロントシート間で上方に膨出して形成したセンターコンソールと、
車幅方向の略中央位置に車両前後方向に沿って配置されて、前記センターコンソールを支持する左右一対のセンターフレームを設け、
前記サブフレームに搭載した燃料電池スタックが前記センターコンソールの内側に収容されるよう、前記サブフレームを前記左右一対のセンターフレームに結合したことを特徴とする燃料電池自動車。
【請求項2】
前記センターフレームよりも車幅方向外側位置に車両前後方向に沿って配置された左右一対のサイドフレームを設け、前記サブフレームを前記センターフレームと前記サイドフレームとに結合したことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池自動車。
【請求項3】
前記サブフレームを、車幅方向に延出する車体前側と後側のサブクロスフレームと、車体前後方向に延出する車体左側と右側のサブセンターフレームと、を備えた構成とし、これらのサブクロスフレームとサブセンターフレームとに囲まれた領域に、前記燃料電池スタックを取り付けたことを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池自動車。
【請求項4】
前記サブフレームを、前記サブセンターフレームとサブクロスフレームとの各交点で、前記センターフレームに結合したことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池自動車。
【請求項5】
前記センターフレームよりも車幅方向外側位置に車両前後方向に沿って配置された左右一対のサイドフレームを設け、
前記各サブクロスフレームを前記左右のサイドフレーム間に亘って延在させるとともに、前記各サブクロスフレームの両端部を前記左右のサイドフレームに連結したことを特徴とする請求項3または4に記載の燃料電池自動車。
【請求項6】
前記サブセンターフレームをサブクロスフレームとの結合点から延長し、
前記サイドフレーム側に連結される前記サブクロスフレームの端部と、前記サブセンターフレームの前記結合点からの延長部とを結合する傾斜フレームを設けたことを特徴とする請求項5に記載の燃料電池自動車。
【請求項7】
前記燃料電池スタックを前記サブフレームに取り付けるためのブラケットを設け、このブラケットが前記サブフレームと左右のセンターフレームの間に挟持されるように、前記サブフレームを左右のセンターフレームにそれぞれ結合したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃料電池自動車。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−39004(P2007−39004A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353358(P2005−353358)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】