説明

燃料電池自動車

【課題】センターコンソール部の下面側の凹空間に滞留した水素ガスを安定的に外部に排出することのできる燃料電池自動車を提供する。
【解決手段】フロアパネル13の車幅方向の略中央位置を上方に膨出させてセンターコンソール部14を形成する。センターコンソール部14の下方に形成された凹空間15に燃料電池2を配置する。凹空間15内の上部位置と、フロアパネル13の下方の車外側の走行気流発生部19を接続するガス排出管22を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池を電源としてモータ走行する燃料電池自動車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池自動車として、フロアパネルの車幅方向の略中央位置を車室内側に膨出されてセンターコンソール部を形成し、そのセンターコンソール部の下方に形成された凹空間に燃料電池を配置したものがある(例えば、特許文献1参照)。
この燃料電池自動車は、凹空間内の上部位置に水素センサを配置し、燃料電池や水素供給配管からの微小な水素ガスの漏れを、そのセンサによって検出するようになっている。
【特許文献1】特許第3770183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この従来の燃料電池自動車は、センターコンソール部の下面側の凹空間に滞留する水素ガスを水素センサによって検出できるものの、滞留した水素ガスの排出は、自然風の流入や凹空間の下方の走行気流に頼っており、凹空間内の上部の奥まった位置に滞留した水素ガスを安定して排出することが難しいというのが実情である。
【0004】
そこでこの発明は、センターコンソール部の下面側の凹空間に滞留した水素ガスを安定的に外部に排出することのできる燃料電池自動車を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決する請求項1に記載の発明は、フロアパネル(例えば、後述の実施形態におけるフロアパネル13)の車幅方向の略中央位置を上方に膨出させてセンターコンソール部(例えば、後述の実施形態におけるセンターコンソール部14)が形成され、このセンターコンソール部の下方に形成された凹空間(例えば、後述の実施形態における凹空間15)に燃料電池(例えば、後述の実施形態における燃料電池2)が配置された燃料電池自動車において、前記凹空間内の上部位置と、フロアパネルの下方の車外側の走行気流発生部(例えば、後述の実施形態における走行気流発生部19)を接続する水素ガス排出通路(例えば、後述の実施形態における接続プラグ20,21およびガス排出管22)を設けたことを特徴とする。
これにより、車両の走行時に走行気流発生部に負圧が生じると、その負圧が水素ガス排出通路を通して凹空間内の上部位置に作用し、凹空間内に滞留した水素ガスが走行気流発生部に吸い出される。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の燃料電池自動車において、前記フロアパネルの前記凹空間に臨む下面に断面ハット状の金属板(例えば、後述の実施形態における金属板30)を取り付け、この金属板と前記フロアパネルの下面によって前記水素ガス排出通路を形成したことを特徴とする。
これにより、凹空間内に滞留した水素はフロアパネルの下面に沿って走行気流発生部に吸い出される。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の燃料電池自動車において、前記フロアパネルの一般面に対する前記燃料電池の下方突出量に応じ、前記水素ガス排出通路のガス排出口(例えば、後述の実施形態における開口21a)を前記燃料電池の後方側に配置したことを特徴とする。
これにより、車両の走行時に燃料電池を乗り越える走行気流の流速の速い部分にガス排出口が開口するようになる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、センターコンソール部の下面側の凹空間に滞留した水素ガスを、水素ガス排出通路を通して車両の走行気流によって吸い出すことができるため、ファン等の動力を利用することなく水素ガスの安定的な排出を実現することが可能である。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、断面ハット状の金属板をフロアパネルの下面に取り付けて水素ガス排出通路を形成したため、大きなスペースを要しないコンパクトな構造でありながら、水素ガスの確実な排出を実現することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、車両の走行時に燃料電池を乗り越える走行気流の流速の速い部分にガス排出口が開口することになるため、滞留したガスの強制排出効果をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ車両における向きと同一とする。また、図中矢印FRは車両前方を、矢印LHは車両左方を、矢印UPは車両上方をそれぞれ示す。
【0012】
最初に、図1〜図4に示す第1の実施形態について説明する。
図1は、この発明にかかる燃料電池自動車1を側面から見た概略構成図である。この燃料電池自動車1は、水素と酸素の電気化学反応によって発電を行う燃料電池スタック2(以下、燃料電池2」と言う)を車体のフロア下に搭載するもので、該燃料電池2により生じた電力で電動モータ5を駆動して走行する。
【0013】
燃料電池2は、単位燃料電池(単位セル)を多数積層してなる周知の固体高分子膜型燃料電池(PEMFC)であり、そのアノード側に燃料ガスとして水素ガスを供給し、カソード側に酸化剤ガスとして酸素を含む空気を供給することで、電気化学反応により水の生成とともに電力を発生する。
【0014】
一方、この燃料電池自動車1は、車両左右のサイドフレーム3,3(図3参照)に、複数のビーム材から成るフレームユニットであるフロントサブフレーム4Aとセンターサブフレーム4Bとリヤサブフレーム4Cが結合されている。
フロントサブフレーム4Aには、車室の前方において、車両駆動源である電動モータ5が主に支持され、センターサブフレーム4Bには、車室下方の前部側において、燃料電池2と、その電池の補機類7a,7bとが支持されている。また、リヤサブフレーム4Cには、車室下方の後部側において、バッテリ8と、燃料電池2に水素を供給するための水素タンク9とが主に支持されている。なお、図1においては、10は、燃料電池冷却用の冷却水を冷却するためのラジエータであり、11F,11Rは、車室内のフロントシートとリヤシートである。
【0015】
図3に示すように、車両の左右両側のサイドシル12からサイドフレーム3とセンターサブフレーム4Bの上面にかけては、車室内に面するフロアパネル13が取り付けられている。このフロアパネル13の車幅方向の略中央部は車室内の上方に向かって略矩形状に膨出し、その膨出領域が車体前後方向に連続したセンターコンソール部14となっている。このセンターコンソール部14の下方側には凹空間15が形成され、この凹空間15の内側に、センターサブフレーム4Bに支持された燃料電池2と電池用補機類7a,7bが配置されている。
【0016】
センターコンソール部14は、図2に示すようにフロントシート11Fに着座した乗員の足元付近から車体後方側に向かってほぼ一定高さに隆起し、フロントシート11Fのシートバック11Fb付近で一段高く隆起した後に、リヤシート11Rの前方でフロアパネル13の一般面と同一高さまで立ち下がっている。シートバック11Fb付近で一段高く隆起した隆起部14aは、その上面側に乗員用の肘掛42等が取り付けられるとともに、凹空間15内の上方に一段高く拡張された領域15a(以下、「拡張空間部15a」と呼ぶ。)に、燃料電池2の各種の制御を行うための制御装置(ECU)16が収容されている。
また、フロアパネル13の後縁部13aの下面には、リヤサブフレーム4Cに取り付けられるリヤフロアパネル17が一体に接合されている。また、センターサブフレーム4Bの下面には、図3に示すように、少なくとも燃料電池2とセンターコンソール部14の下方を覆うアンダーカバー18が取り付けられている。
【0017】
ところで、上記のように車体に取り付けられたフロアパネル13の後縁部13aは、センターサブフレーム4Bのほぼ終端部となる位置にあり、車体の下面から見たときに若干の窪み形状となっている。このため、車両の走行時に車体下面に沿って流れる走行気流は、図2中の矢印で示すように、フロアパネル13の下面側の後縁部13a付近で湾曲した流れとなり、その湾曲した流れの周囲に負圧を作り出す。この負圧を作り出すフロアパネル13の下面側の後縁部13a付近の領域は、この発明における走行気流発生部19となっている。
【0018】
また、センターコンソール部14の隆起部14aとフロアパネル13の後縁部13aには、接続プラグ20,21が貫通して取り付けられ、車室内側に配管されたガス排出管22の各端部が接続プラグ20,21に接続されている。接続プラグ21の下端はフロアパネル13の後縁部13aの下方に突出し、その下端の開口21a(ガス排出口)が走行気流発生部19内に臨んでいる。ガス排出管22は、センターコンソール部14の下方の拡張空間部15aと走行気流発生部19を接続し、車両の走行時に走行気流発生部19に生じる負圧を拡張空間部15aに作用させ、拡張空間部15a内に滞留している水素ガスをベンチュリー効果によってフロアパネル13の後縁部13a下方に強制的に排出する。
【0019】
なお、接続プラグ21の開口21aの位置は、フロアパネル13の一般面に対する燃料電池2の下方突出量に応じて決められている。すなわち、燃料電池2の車両後方側では燃料電池2の下方突出量に応じて走行気流の流速の速い領域が変化し、燃料電池2の下方突出量の増大に応じて走行気流の流速の速い領域が車両後方側に変化する。このため、接続プラグ21の開口21aは、走行気流の流速のより速い位置に臨ませるために、燃料電池2の下方突出量の増大に応じて車両後方側になるように位置設定されている。
【0020】
以上のように、この燃料電池自動車1においては、車両走行時に、フロアパネル13の下面の走行気流発生部19に生じる負圧がガス排出管22を通してセンターコンソール部14の凹空間15内に作用して、凹空間15内のガスを強制的に吸い出すようになるため、燃料電池2や補機類7a,7b、接続配管等から漏れ出た水素を、電動ファン等を用いずに安定的に外部に排出することができる。
特に、この実施形態においては、センターコンソール部14側の接続プラグ20が、内壁高さが最も高く水素ガスの滞留し易い拡張空間部15aに臨んで設けられているため、センターコンソール部14内に滞留する水素ガスを効率良く外部に排出することができる。
【0021】
この燃料電池自動車1においては、接続プラグ21の開口21aの位置が燃料電池2の下方突出量に応じて決められているため、走行気流のによる大きなベンチュリー効果を、水素ガスの強制排出に有効に用いることができる。
【0022】
図5は、この発明の第2の実施形態を示すものである。以下、この第2の実施形態も含め他の実施形態について説明するが、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付し、重複する部分については説明を省略するものとする。
この実施形態の燃料電池自動車101は、基本的な構成は第1の実施形態とほぼ同様であるが、センターコンソール部14内の凹空間15と車両外部の走行気流発生部19を接続するガス排出管122(水素ガス排出通路)がセンターコンソール部14の車外側下面からフロアパネル13の後縁部13aの下面にかけて配管されている点で第1の実施形態と異なっている。
【0023】
この燃料電池自動車101においては、第1の実施形態と同様に、走行気流を利用してセンターコンソール部14内の凹空間15から水素ガスを強制的に排出することができるが、ガス排出管122が車外側に配置されているため、車内側への水素ガスの進入をより確実に防止することができるとともに、車内側の有効スペースの拡大と見栄えの向上を図ることができる。
【0024】
図6〜図8は、この発明の第3の実施形態を示すものである。
この実施形態の燃料電池自動車201は、第1,第2の実施形態と基本的な構成は同様であり、また、水素ガス排出通路が車外側に配置されている点では第2の実施形態と同様であるが、水素ガス排出通路の具体的な構造が第2の実施形態と異なっている。
即ち、この実施形態の燃料電池自動車201では、図7に示すような断面ハット状の長尺な金属板30がセンターコンソール部14(フロアパネル13)の隆起部14aの下面から後部壁14bに沿って接合され、その金属板30とフロアパネル13の間で断面台形状の水素ガス排出通路が形成されている。この水素ガス排出通路31は、センターコンソール部14内の拡張空間15aとフロアパネル13の後縁部13aの走行気流発生部19を接続するように設けられている。
【0025】
この燃料電池自動車201は、第2の実施形態と同様の効果を得ることができることに加え、断面ハット状の金属板30をフロアパネル13の下面に取り付けて水素ガス排出通路を形成したことから、フロアパネル13の下面側の水素ガス排出通路の占有スペースを小さくすることができる。
【0026】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の第1の実施形態の燃料電池自動車の側面説明図。
【図2】同実施形態の燃料電池自動車の要部断面図。
【図3】同実施形態を示す図2のA−A断面に対応する断面図。
【図4】同実施形態の燃料電池自動車のフロアを斜め上方から見た斜視図。
【図5】この発明の第2の実施形態の燃料電池自動車の要部断面図。
【図6】この発明の第3の実施形態の燃料電池自動車の要部断面図。
【図7】同実施形態を示す図6のB−B断面に対応する拡大断面図。
【図8】同実施形態の燃料電池自動車のフロアを裏面側から見た斜視図。
【符号の説明】
【0028】
1,101,201…燃料電池自動車
2…燃料電池
13…フロアパネル
14…センターコンソール部
15…凹空間
19…走行気流発生部
20…接続プラグ(水素ガス排出通路)
21…接続プラグ(水素ガス排出通路)
21a…開口(ガス排出口)
22,122…ガス排出管(水素ガス排出通路)
30…金属板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルの車幅方向の略中央位置を上方に膨出させてセンターコンソール部が形成され、
このセンターコンソール部の下方に形成された凹空間に燃料電池が配置された燃料電池自動車において、
前記凹空間内の上部位置と、フロアパネルの下方の車外側の走行気流発生部を接続する水素ガス排出通路を設けたことを特徴とする燃料電池自動車。
【請求項2】
前記フロアパネルの前記凹空間に臨む下面に断面ハット状の金属板を取り付け、この金属板と前記フロアパネルの下面によって前記水素ガス排出通路を形成したことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池自動車。
【請求項3】
前記フロアパネルの一般面に対する前記燃料電池の下方突出量に応じ、前記水素ガス排出通路のガス排出口を前記燃料電池の後方側に配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−100584(P2008−100584A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−284032(P2006−284032)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】