説明

燃料電池車両の換気装置

【課題】コンパクトで、換気効率のよい燃料電池車両の換気装置を提供すること。
【解決手段】燃料電池車両Vは、水素と酸化剤ガスとが供給されて発電を行う燃料電池FCと、燃料電池FCへ水素を供給する水素供給デバイス10と、燃料電池FCから水素を排出する水素排出デバイス20と、を備えている。換気装置40は、燃料電池車両Vの前後方向の中央部に、燃料電池FC、水素供給デバイス10および水素排出デバイス20が配置されてなる水素系ユニット領域Qに向けて、燃料電池車両Vの前方から換気風を取り入れて送る第1換気デバイス41と、燃料電池車両Vの車体後方から、水素系ユニット領域Qに取り入れられた換気風を吸引する第2換気デバイスと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池を搭載した燃料電池車両において、水素が流通するデバイスが配置された水素系ユニット領域の水素を換気する燃料電池車両の換気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池車両では、燃料電池と、燃料電池へ水素を供給する水素供給デバイスと、燃料電池から水素を排出する水素排出デバイスとが配置された水素系ユニット領域を、フロアパネルと車両の底部を覆うアンダパネルとの間の空間に配設した燃料電池発電装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。その燃料電池車両には、水素系ユニット領域の雰囲気ガスを吸引する吸引デバイスや、水素を検出する水素検出デバイスなどが設けられている。
【0003】
このため、前記燃料電池車両では、雰囲気ガスの吸引口付近に水素検出デバイスを備えたことによって、水素漏れを検出することが可能になっている。さらに、その車両では、吸引デバイスを備えたことによって、水素系ユニット領域の水素保有部品から漏れた水素を吸引して換気することが可能になっている。また、吸引デバイスは、吸引した雰囲気ガスを高電圧の蓄電池に向けて排出して冷却することも可能になっている。
【特許文献1】特開2007−80655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の燃料電池発電装置では、水素保有部品を車両前後方向に長く配置した場合、吸引口から遠い位置の雰囲気ガスを吸引するためには、大風量の吸引デバイスが必要となり、吸引デバイスが大型化するという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、コンパクトで、換気効率のよい燃料電池車両の換気装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段として、請求項1に記載の燃料電池車両の換気装置の発明は、水素と酸化剤ガスとが供給されて発電を行う燃料電池と、前記燃料電池へ水素を供給する水素供給デバイスと、前記燃料電池から水素を排出する水素排出デバイスと、を備えた燃料電池車両の換気装置において、前記燃料電池車両の前後方向の中央部に、前記燃料電池、前記水素供給デバイスおよび前記水素排出デバイスが配置されてなる水素系ユニット領域に向けて、前記燃料電池車両の前方から換気風を取り入れて送る第1換気デバイスと、前記燃料電池車両の車体後方から、前記水素系ユニット領域に取り入れられた前記換気風を吸引する第2換気デバイスと、を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の燃料電池車両の換気装置の発明によれば、燃料電池車両の中央部の水素系ユニット領域に対して第1換気デバイスによって燃料電池車両の前方から換気風を送って、その換気風が第2換気デバイスに流入されるので、換気風が勢いよく流れるようになる。このため、換気装置は、燃料電池車両の前後方向の中央部に配置された水素系ユニット領域の雰囲気ガスを効率よく換気することができる。さらに、水素保有部品が車体前後方向に長く配置されて、その水素保有部品の前方から第1換気デバイスが走行風を吸引し、水素保有部品の後方から第2換気デバイスがその走行風(換気風)を吸引して車両の後方へ放出する。したがって、吸引口から遠い位置の雰囲気ガスを吸引する場合であっても、第1換気デバイスと第2換気デバイスとによって、雰囲気ガスが車体前方から車体後方に向かって速い流速で流れるので、効率よく換気することができる。
【0008】
請求項2に記載の燃料電池車両の換気装置の発明は、請求項1に記載の燃料電池車両の換気装置であって、前記水素系ユニット領域は、前記燃料電池車両のセンタトンネルの内側に配置され、前記第1換気デバイスから流出した換気風が流れる換気風流路は、前記第1換気デバイスから前記センタトンネルに向けて絞られて形成された絞り部を有することを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、水素系ユニット領域は、車両のセンタトンネルの内側に配置されて、第1換気デバイスから流出される換気風の換気風流路がセンタトンネルに向けて絞り部が形成され、流路の断面積が減少している。このため、絞り部の下流側に配置された水素系ユニット領域を通過する換気風の流速を速くすることができる。さらに、センタトンネルは、水素系ユニット領域を換気風が車体後方に向かって流れるようにトンネル状に覆って略管路状になっているので、水素系ユニット領域内に漏れた水素を含む雰囲気ガスの流れを車体後方に導いて指向させることができる。その結果、水素系ユニット領域の雰囲気ガスの換気を効果的に促進させることができる。
【0010】
請求項3に記載の燃料電池車両の換気装置の発明は、請求項2に記載の燃料電池車両の換気装置であって、前記換気風流路は、前記燃料電池車両の車体前方から前記水素系ユニット領域を介して車体後方に形成されて、前記第2換気デバイスは、前記換気風流路の中に設置されていることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、第2換気デバイスが設置された換気風流路は、車体前方から水素系ユニット領域を介して車体後方に向かって形成されていることによって、換気風が車体前方から後方に向かって勢いよく流れる。このため、漏れた水素を攪拌および希釈した上で、車体後方から排出することができる。
【0012】
請求項4に記載の燃料電池車両の換気装置の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池車両の換気装置であって、前記第1換気デバイスは、前記燃料電池車両の前方からの走行風を吸引するラジエータファンからなることを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、第1換気デバイスは、燃料電池車両の前方からの走行風を利用するラジエータファンからなることによって、燃料電池、発電用保機類およびエアコンの冷却水を冷却するラジエータファンの走行風を、さらに、水素系ユニット領域の換気風として有効利用して換気をアシストすることができる。これにより、換気装置の換気効率が向上され、第1換気デバイスを小型のものでも対応可能にして、換気装置のコンパクト化および省電力化を図ることができる。
【0014】
請求項5に記載の燃料電池車両の換気装置の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の燃料電池車両の換気装置であって、前記燃料電池車両は、前記燃料電池が発電した電気を蓄積する蓄電装置を前記水素系ユニット領域の後方に配置し、前記第2換気デバイスは、前記水素系ユニット領域の空間の雰囲気ガスを吸引し、前記雰囲気ガスを前記蓄電装置に当てて冷却することを特徴とする。
【0015】
かかる構成によれば、燃料電池車両は、第2換気デバイスが水素系ユニット領域の空間の雰囲気ガスを吸引して蓄電装置を冷却することによって、車体前方から後方に向かって流れる換気風をさらに速く流れるようにすることができる。このため、さらに、換気装置の換気能力および冷却能力を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コンパクトで、換気効率のよい燃料電池車両の換気装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1〜図3を参照して、本発明の実施形態に係る燃料電池車両の換気装置を説明する。
図1は、本実施形態に係る燃料電池車両の換気装置の構成を示す概略平面図である。図2は、本発明の実施形態に係る燃料電池車両の換気装置の構成を示す概略側面図である。図3は、図2のX−X拡大断面図である。なお、図1〜図3は、燃料電池FCなどが設置される水素系ユニット領域Qおよび換気風流路43を誇張して記載してある。
【0018】
≪燃料電池車両の構成≫
図1に示すように、燃料電池車両Vは、燃料電池FCの発電電力によって走行用の走行モータMを回転させて走行する電気自動車である。この燃料電池車両Vは、それぞれ後記する燃料電池FC、水素供給デバイス10、水素排出デバイス20、換気装置40などを備えた燃料電池発電装置1を搭載している。図2に示すように、燃料電池車両Vは、車室Cと、車室Cの前方に配置されたモータルームMRと、車室Cと床下とを仕切るフロアパネル81と、フロアパネル81によって形成されたセンタトンネル82と、フロアパネル81の下方に配置されたアンダパネル83と、車両前後方向の中央部に配置された水素系ユニット領域Qと、を備えている。燃料電池車両Vには、フロアパネル81(図2参照)の床下とアンダパネル83との間の空間(換気風流路43)およびモータルームMRに燃料電池発電装置1の各デバイスが設置されている。なお、水素系ユニット領域Qと前記空間とは、同じ場所を意味する。
【0019】
<車室の構成>
図2に示すように、車室Cは、ドライバなどの乗員が乗車する部屋であり、車体80の中央部に配置されている。車室Cは、フロアパネル81上に形成され、そのフロアパネル81上には座席85が複数設置されている。車室Cの前方には、インストルメントパネル(図示省略)および隔壁84を介してモータルームMRが配置されている。車室Cの床下中央には、前端部から後端部にわたってセンタトンネル82および換気風流路43が形成されている。
【0020】
<モータルームの構成>
図1に示すように、前記モータルームMRは、走行モータM、第1換気デバイス41、エアコンプレッサ30などが設置される収納空間であり、車体前方に配置されている。モータルームMRの車体前面側には、走行風をモータルームMR内に取り込んで第1換気デバイス41に空気を流すための導風板(図示省略)が設置されている。モータルームMRの車体後方側には、モータルームMRの後側内壁を形成する隔壁84が設置されている。モータルームMR内には、前端部中央に第1換気デバイス41が配置され、左右の前輪WF,WFの間に走行モータMが配置されて、後方寄りにエアコンプレッサ30が配置されている。なお、モータルームMRは、隔壁84の下端部からセンタトンネル82が連設されて、後記する換気風流路43に連通している。
【0021】
<フロアパネルの構成>
図2に示すように、前記フロアパネル81は、車室Cの床面と、換気風流路43の上側半体を形成する板部材であり、床面全体に設けられた鋼板などの金属製平板材からなる。フロアパネル81の上面には、フロアマットが敷設されている。なお、フロアパネル81は、水素を透過させたり、通過させたりしない構成になっている。
【0022】
<センタトンネルの構成>
前記センタトンネル82は、車室前端部の隔壁84の中央から車体80に沿って車体後方に向けて直線上にフロアパネル81で形成されたトンネル状のフロアトンネルである。センタトンネル82の内壁は、換気風流路43および水素系ユニット領域Qの上側半体を形成している。このため、センタトンネル82の内部には、換気風が車体前方から車体後方に向かって流れると共に、それぞれ後記する水素供給デバイス10、燃料電池FC、水素排出デバイス20、蓄電装置50などが収納されている。また、センタトンネル82は、換気風流路43および水素系ユニット領域Qの空間を形成している。
【0023】
<アンダパネルの構成>
図2に示すように、前記アンダパネル83は、燃料電池FCなどを路面の突起やはね石などから保護するための部材であり、車体80の底面を形成する板材からなる。アンダパネル83は、フロアパネル81の下方に適宜な空間を介して略水平に配置された鋼板などの金属製平板部材からなり、車体80の前端部から後端部にわたって設けられている。アンダパネル83は、モータルームMRの床面と、換気風流路43の下面と、水素系ユニット領域Qの下面と、蓄電装置50および第2換気デバイス42が載設される設置面とを形成している。アンダパネル83は、隔壁84、フロアパネル81およびセンタトンネル82とで換気風が流れる換気風流路43を形成している。また、アンダパネル83は、フロアパネル81とで、水素系ユニット領域Qの空間を形成している。
【0024】
<隔壁の構成>
図2に示すように、隔壁84は、モータルームMRと車室Cとを仕切り、モータルームMRの後側内壁を形成する板材であり、側面視してフロアパネル81に連続して設けられている。隔壁84の下端部中央には、モータルームMRの後側内壁中央の下部から換気風流路43およびセンタトンネル82が車体80に沿って車体後方に向けて連設されている。その隔壁84およびダッシュボードの下端部中央には、後記する換気風流路43の絞り部43aが形成されている。
【0025】
<水素系ユニット領域の構成>
図1に示すように、水素系ユニット領域Qは、水素が流通するデバイスが存在する領域であり、燃料電池FC、水素供給デバイス10、水素排出デバイス20などの水素保有部品が配置されている部位である。換言すると、水素系ユニット領域Qは、水素消費機器(プラス水素排出処理機器)が設置される領域である。水素系ユニット領域Qは、燃料電池車両Vの前後方向の車両中央部のセンタトンネル82の内側に配置されて、燃料電池FC、水素供給配管13の一部、水素循環機構14、水素排出配管21、水素パージ弁22、希釈器23などの水素保有部品が配置されている。
【0026】
≪燃料電池発電装置の構成≫
燃料電池発電装置1は、水素と酸化剤ガスとを燃料電池FCに供給して発電を行い、その発電電力によって走行モータMを回転させて燃料電池車両Vを走行させるための発電装置である。この燃料電池発電装置1は、それぞれ後記する燃料電池FC、水素供給デバイス10、水素排出デバイス20、エアコンプレッサ30、換気装置40、蓄電装置50、水素検出装置60、制御ユニット90(図2参照)などを含んで構成されている。燃料電池発電装置1は、燃料電池車両Vのフロアパネル81とアンダパネル83との間に形成された空間と、モータルームMRと、に収納されている(図2参照)。
【0027】
≪燃料電池の構成≫
図1に示すように、燃料電池FCは、一価の陽イオン交換型の高分子電解質膜(以下、「電解質膜」という)をアノード極(水素極)と、他面側をカソード極(空気極)とで挟んで構成した膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)の両面を、さらに、導電性のセパレータ(図示省略)で挟んで構成した単セルが、複数積層された構造を有している。この燃料電池FCのアノード極に水素が供給され、カソード極に酸化剤ガスとしての空気(酸素)が供給されることで、水素と酸素との電気化学反応によって発電するように構成されている。燃料電池FCは、センタトンネル82内に収納されている(図3参照)。
【0028】
≪水素供給デバイスの構成≫
水素供給デバイス10は、燃料電池FCに水素を供給する装置であり、遮断弁12を備えた高圧水素タンク11、水素供給配管13、水素循環機構14などで構成されている。
【0029】
<高圧水素タンクの構成>
図1に示すように、前記高圧水素タンク11は、燃料電池FCに供給する燃料である高純度の水素が高圧で充填された容器であり、燃料電池車両Vの後輪WR,WR付近のセンタトンネル82に続く荷物室の下に横置きに配置されている。高圧水素タンク11は、遮断弁12に接続されている。
【0030】
<遮断弁の構成>
遮断弁12は、高圧水素タンク11から流出される燃料ガスの流出を調整する電磁バルブであり、配管を介してエゼクタ14aに接続されている。遮断弁12は、制御ユニット90(図2参照)と電気的に接続されており、この制御ユニット90(図2および図3参照)によって適宜に弁体が開閉制御されるようになっている。
【0031】
<水素供給配管の構成>
図1に示すように、水素供給配管13は、高圧水素タンク11内の水素を燃料電池FCに送るための流路であり、その一端が燃料電池FCに接続され、他端が高圧水素タンク11に接続されている。
【0032】
<水素循環機構の構成>
水素循環機構14は、燃料電池FCから排出された水素の排ガスを再度、水素供給配管13に戻して循環させるものである。この水素循環機構14は、エゼクタ14a、水素循環配管14bなどで構成され、エゼクタ14aが水素供給配管13の途中に設けられている。水素循環配管14bは、一端がエゼクタ14aに接続され、他端が燃料電池FCに接続されている。
【0033】
≪水素排出デバイスの構成≫
図1に示すように、水素排出デバイス20は、燃料電池FCから水素を排出する装置であり、水素排出配管21、水素パージ弁22、希釈器23などで構成されている。
【0034】
<水素排出配管の構成>
前記水素排出配管21は、燃料電池FCから排出された水素を水素パージ弁22、希釈器23などを介在して外部に排出するための流路である。水素排出配管21は、その一端が燃料電池FCのアノード極の出口側と接続され、他端が水素パージ弁22を介して希釈器23と接続されている。また、水素排出配管21には、前記水素循環配管14bの他端が接続されている。
【0035】
<水素パージ弁の構成>
図1に示すように、水素パージ弁22は、燃料電池発電装置1の運転中に水素循環配管14b内に混在する水分や、その他の不純物を適宜に外部に排出するための電磁バルブである。水素パージ弁22は、水素排出配管21の希釈器23の上流側に設けられている。燃料電池FCのカソード極に供給された空気に含まれる窒素が、電解質膜を介してカソード極からアノード極に透過して水素濃度が低下した場合に、この水素パージ弁22が必要に応じて開弁することにより、水素濃度の低下によって発電性能が損なわれるのを防止するようになっている。
【0036】
<希釈器の構成>
希釈器23は、水素パージ弁22を通って排出されたアノードオフガス(水素)を、この希釈器23と燃料電池FCのカソード極とを接続する空気排出配管32を介して排出されたカソードオフガス(空気+水)で希釈する装置である。希釈器23で所定の水素濃度以下に希釈された水素は、排気管24を介して大気中へと排出される。
【0037】
≪エアコンプレッサの構成≫
図1に示すように、前記エアコンプレッサ30は、モータにより駆動されるスーパーチャージャなどであり、圧縮した空気(外気)を、空気供給配管31を介して燃料電池FCに供給するものである。
【0038】
<空気供給配管の構成>
空気供給配管31は、燃料電池FCのカソードに空気を供給する供給路である。空気供給配管31は、例えば、一端側が空気を送るためのエアコンプレッサ30や、空気を加湿させるための加湿器(図示省略)などに接続され、他端側が配管によってカソードに接続されている。
【0039】
≪蓄電装置の構成≫
蓄電装置50は、燃料電池FCが発電した電気を蓄積する装置であり、例えば、センタトンネル82の後方に配置された第2換気デバイス42の車体前方側に設けられている。つまり、蓄電装置50は、水素系ユニット領域Qの後方に配置されている。この蓄電装置50としては、バッテリまたはキャパシタなどで構成され、バッテリとしては、鉛蓄電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、ニッケル水素蓄電池、ニッケルカドミウム蓄電池などであり、キャパシタとしては、電気二重層キャパシタや電解コンデンサなどである。なお、蓄電装置50は、複数の小型蓄電池が適宜組み合わされた組電池であり、複数の小型蓄電池を収容する枠体(基体、筐体など)を含めていう。
【0040】
≪換気装置の構成≫
図1に示すように、換気装置40は、燃料電池車両Vの前方の走行風を吸引して取り入れて、換気風をモータルームMRからセンタトンネル82を通して車体後方に流すことによって、センタトンネル82内に漏れた漏れ水素を排気風と共に車外に排出して換気する装置である。この換気装置40は、水素が流通される水素保有部品が配置されてなる水素系ユニット領域Qに向けて、燃料電池車両Vの前方から換気風を取り入れて送る第1換気デバイス41と、燃料電池車両Vの車体後方から、水素系ユニット領域Qに取り入れられた換気風を吸引する第2換気デバイス42と、車体前方から第1換気デバイス41および第2換気デバイス42を介して車体後方にわたって形成された換気風流路43と、を備えて構成されている。
【0041】
<第1換気デバイスの構成>
第1換気デバイス41は、燃料電池車両Vの走行によって発生する走行風を車体前方から吸引して取り入れて水素系ユニット領域Qに向けて換気風を送る装置であり、例えば、ラジエータファン41Aからなる。
図2に示すように、ラジエータファン41Aは、燃料電池FCや走行モータMを冷却する熱媒である水を空気によって冷却する装置であり、モータルームMRの前端部中央に配置され、センタトンネル82の方向へ走行風を送っている。ラジエータファン41Aは、制御ユニット90に電気的に接続されて、制御ユニット90によって回転速度が調整される。
【0042】
<第2換気デバイスの構成>
第2換気デバイス42は、燃料電池車両Vの後方から水素系ユニット領域Qおよびセンタトンネル82内の換気風、漏れ水素などを含む雰囲気ガスを吸引して、その雰囲気ガスを蓄電装置50に当てて蓄電装置50を冷却する装置であり、電動ファン42Aからなる。第2換気デバイス42は、換気風流路43の中のセンタトンネル82および水素系ユニット領域Q内の後方側に設置されている。この第2換気デバイス42は、制御ユニット90を介して車速検出装置(図示省略)に電気的に接続されて、その車速検出装置で検出した車速に応じて電動ファン42Aの回転速度が増減するようになっている。
【0043】
図2に示すように、前記電動ファン42Aは、その回転軸が蓄電装置50の壁面に直交するように配置されている。また、この電動ファン42Aは、そのプロペラが回転することにより、水素系ユニット領域Qおよびセンタトンネル82内の雰囲気ガスを吸引して車外に排出するようになっている。
【0044】
<換気風流路の構成>
換気風流路43は、水素供給デバイス10などから流出した漏れ水素や換気用の換気風が流れる流路である。換気風流路43は、燃料電池車両Vの車体前端部のモータルームMRから絞り部43a、センタトンネル82および水素系ユニット領域Qを通って車体後端部にわたって、平面視して車体80の中心線上に沿うように形成されている。換気風流路43は、側面視して、アンダパネル83とフロアパネル81との間に介在されている。換気風流路43内には、前端部に第1換気デバイス41が設置され、後端部に第2換気デバイス42が設置され、第1換気デバイス41と第2換気デバイス42との間に走行モータM、エアコンプレッサ30、燃料電池FC、水素供給デバイス10、水素排出デバイス20、蓄電装置50などが介在されている。つまり、燃料電池発電装置1を構成する各デバイス、部品などが換気風流路43内に設けられて、その換気風流路43内が換気装置40によって効率よく換気および冷却されるようになっている。
【0045】
絞り部43aは、換気風流路43内を流れる換気風の流速を速くするために形成されたものであり、車体前方のモータルームMRからセンタトンネル82に向けて絞られて形成されている。
【0046】
≪水素検出装置の構成≫
図2に示すように、水素検出装置60は、水素系ユニット領域Qから漏れ出る水素を検出するものであり、水素系ユニット領域Q内の上部であるセンタトンネル82内の上端部や高圧水素タンク11の上方などの高い位置に配置されている。なお、この水素検出装置60は、制御ユニット90に電気的に接続されている。
【0047】
≪制御ユニットの構成≫
前記制御ユニット90は、燃料電池発電装置1および換気装置40を制御する装置である。制御ユニット90は、イグニッションスイッチ(図示省略)に接続されて、このイグニッションスイッチのON/OFFに連動して作動するようになっている。この制御ユニット90は、例えば、CPU、ROM、RAM、各種インタフェイス、電子回路などから構成されている。制御ユニット90は、水素検出装置60で検出した水素の漏れや、車速検出装置で検出した車速や、温度センサ(図示省略)で検出した走行モータMなどの機器の温度に応じて適宜な回転速度で駆動するように換気装置40を制御している。
【0048】
≪燃料電池車両の換気装置の作用≫
次に、本実施形態に係る燃料電池車両Vの換気装置40の作用について説明する。
まず、運転者が燃料電池車両Vのイグニッションスイッチ(図示省略)をONにすると、制御ユニット90(図2参照)は、図2に示す蓄電装置50に蓄積された電気(電力)を利用して、遮断弁12を開弁すると共に、エアコンプレッサ30を駆動する。これにより、高圧水素タンク11内の水素が水素供給配管13を介して燃料電池FCのアノード極に供給され、エアコンプレッサ30から空気供給配管31を介して、加湿器(図示省略)によって加湿された空気が燃料電池FCのカソード極に供給される。これにより、燃料電池FC内において水素と加湿空気中の酸素とが電気化学反応によって発電が行われ、走行モータMなどの負荷に電力(発電電流)が供給され、走行モータMの回転動力によって燃料電池車両Vの駆動輪(前輪WF,WF)が駆動される。
【0049】
また、水素の利用効率を高めるために、燃料電池FCのアノード極から排出された水素を、水素循環配管14bを介して燃料電池FCのアノード極に導入して再循環させている。また、水素パージ処理時に、水素パージ弁22を介して排出された水素は、希釈器23に導入されると共に、燃料電池FCのカソード極から排出されたカソードオフガス(主に、空気と水)によって所定値以下の水素濃度まで希釈された後に、排気管24を介して大気中へと排出される。
【0050】
例えば、図1および図2に示すように、燃料電池車両Vが走行すると、車両前方から走行風が、導風板からモータルームMRに侵入して走行モータM、エアコンプレッサ30などを冷却すると共に、換気風流路43を形成するフロアパネル81とアンダパネル83との間を車体後方へ流れて、水素系ユニット領域Qの漏れ水素などを車体後方へ流す。
【0051】
この場合、換気風流路43が、モータルームMRから車体後方へ向かってセンタトンネル82が形成されていると共に、センタトンネル82の前端部に絞る部43aが形成されて、断面積が縮小されているので、この換気風流路43内を流れる換気風の流速が速くなる。このため、センタトンネル82内を流れる換気風は、水素系ユニット領域Qの車体前側で流速を上げて、水素系ユニット領域Q内に漏れた水素などを含む雰囲気ガスを掃気するように、車両後方へ流出される。
【0052】
したがって、水素保有部品が配置された水素系ユニット領域Qにある配管などの接合部分やシール部分から仮に水素漏れが発生したとしても、図1および図2に矢印で示すように、漏れ出た水素を、水素系ユニット領域Qの雰囲気ガスと共に車両後方へ放出させることができる。
【0053】
また、燃料電池車両Vの走行時または停車時に、換気装置40が駆動した場合には、1つ目の第1換気デバイス41のラジエータファン41Aが、車両前方の走行風をモータルームMR内に吸引してセンタトンネル82側へ換気風として送り流す。さらに、その換気風および水素系ユニット領域Qの雰囲気ガスは、センタトンネル82の後側に設置された2つ目の第2換気デバイス42の電動ファン42Aによって車体後方側へ吸引される。このため、換気風は、フロアパネル81とアンダパネル83との間の換気風流路43内を速い流速でスムーズに車体後方に流れて、水素系ユニット領域Qの漏れ水素を希釈攪拌して均一に薄められた濃度で車体後方へ流れて放出される。
【0054】
このため、換気装置40は、走行風をセンタトンネル82と、センタトンネル82の前後に設置された第1換気デバイス41および第2換気デバイス42とによって効率よく換気風流路43内に換気風を流して漏れ水素を換気することができる。その結果、換気装置40の換気能力が小さい装置であっても対応可能にして第1換気デバイス41および第2換気デバイス42の小型化を図ることができると共に、重量、コスト、消費電力の削減を図ることもできる。
【0055】
換気装置40が駆動しているときに、前記走行風は、燃料電池車両Vの前方から車体後方側に向けて換気風として流れるので、換気風のアシストの役目を果たす。このため、第1換気デバイス41および第2換気デバイス42の小型化と、重量、コストおよび消費電力の削減をさらに向上させることができる。
【0056】
また、前記走行風の流速は、燃料電池車両Vの車速に伴って速くなる。そして、第1換気デバイス41のラジエータファン41Aおよび第2換気デバイス42の電動ファン42Aの回転速度は、車速検出装置で検出した燃料電池車両Vの車速に応じて増減させて適宜な速度に調整される。つまり、車速が高速の場合は、走行風が速く、その走行風の流れの方向に向けてスムーズに流れるように換気風流路43が形成されているので、換気装置40を停止させても対応可能である。
【0057】
また、停車中や換気装置40が停止している場合であっても、水素系ユニット領域Qに水素検出装置60が設けられているので、水素漏れがあった際に、水素検出装置60が漏れた水素を検出して、その検出信号で制御ユニット90が換気装置40をONさせることができる。このため、第1換気デバイス41および第2換気デバイス42を自動的に駆動させて、水素系ユニット領域Q内を換気することが可能である。
【0058】
また、水素は、空気と比較して非常に軽い物質であるので、図2に示すように、水素検出装置60をフロアパネル81とアンダパネル83との間の換気風流路43(センタトンネル82)内の上部下流側に設けたことによって、漏れ出た水素をより確実に検知することが可能になる。
【0059】
また、換気風流路43を形成するセンタトンネル82内の後方に蓄電装置50を配置したことによって、水素系ユニット領域Qから車体後方側に流れる換気風を蓄電装置50に当てて効率よく冷却することが可能となる。したがって、蓄電装置50を冷却するための冷却手段を別個に設ける必要がないので、部品点数や設置スペースを削減することができる。
【0060】
≪変形例≫
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造および変更が可能であり、本発明はこれら改造および変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【0061】
前記実施形態では、燃料電池車両Vとして、乗用車タイプの自動車を例に挙げて説明したが、燃料電池車両Vの型式は特に限定されない。例えば、燃料電池車両Vは、バス、トラック、あるいは作業車などであっても構わない。つまり、燃料電池車両Vは、車体80の底面にアンダパネル83を設けて、このアンダパネル83の上方に適宜な間隔を介してフロアパネル81に相当する板部材を設け、アンダパネル83とフロアパネル81との間に換気風流路43を設け、さらに、換気風流路43の中央部に水素系ユニット領域Qを配置して、その前後に第1換気デバイス41および第2換気デバイス42を設けた車両であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施形態に係る燃料電池車両の換気装置の構成を示す概略平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る燃料電池車両の換気装置を示す要部概略側面図である。
【図3】図2のX−X拡大断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 燃料電池発電装置
10 水素供給デバイス
20 水素排出デバイス
40 換気装置
41 第1換気デバイス
41A ラジエータファン
42 第2換気デバイス
43 換気風流路
43a 絞り部
50 蓄電装置
80 車体
81 フロアパネル
82 センタトンネル
83 アンダパネル
84 隔壁
FC 燃料電池
Q 水素系ユニット領域
V 燃料電池車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素と酸化剤ガスとが供給されて発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池へ水素を供給する水素供給デバイスと、
前記燃料電池から水素を排出する水素排出デバイスと、
を備えた燃料電池車両の換気装置において、
前記燃料電池車両の前後方向の中央部に、前記燃料電池、前記水素供給デバイスおよび前記水素排出デバイスが配置されてなる水素系ユニット領域に向けて、前記燃料電池車両の前方から換気風を取り入れて送る第1換気デバイスと、
前記燃料電池車両の車体後方から、前記水素系ユニット領域に取り入れられた前記換気風を吸引する第2換気デバイスと、
を備えたことを特徴とする燃料電池車両の換気装置。
【請求項2】
前記水素系ユニット領域は、前記燃料電池車両のセンタトンネルの内側に配置され、
前記第1換気デバイスから流出した換気風が流れる換気風流路は、前記第1換気デバイスから前記センタトンネルに向けて絞られて形成された絞り部を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両の換気装置。
【請求項3】
前記換気風流路は、前記燃料電池車両の車体前方から前記水素系ユニット領域を介して車体後方に形成されて、
前記第2換気デバイスは、前記換気風流路の中に設置されていることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池車両の換気装置。
【請求項4】
前記第1換気デバイスは、前記燃料電池車両の前方からの走行風を吸引するラジエータファンからなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池車両の換気装置。
【請求項5】
前記燃料電池車両は、前記燃料電池が発電した電気を蓄積する蓄電装置を前記水素系ユニット領域の後方に配置し、
前記第2換気デバイスは、前記水素系ユニット領域の空間の雰囲気ガスを吸引し、前記雰囲気ガスを前記蓄電装置に当てて冷却することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の燃料電池車両の換気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−4649(P2010−4649A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160893(P2008−160893)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】