説明

燈体における成膜方法および成膜装置

【課題】ハウジング部に光源を組み込んで、ハウジング部内側面と、光源先端部とに反射面を成膜するにあたり、成膜にムラができず、光源先端部のみを成膜できるように構成する。
【解決手段】固定金型となる第一金型6に、ターゲット室11aの溝奥側に、成膜方向の直進性が低減され、よりムラのない成膜ができるような装置として汎用されるマグネトロンスパッタリング装置9aを設けた成膜装置9を配設し、ターゲット室11aの開口部に、貫通孔10aが開設された円板体10bを備えたマスキング部材10を設けて、一次の射出工程の後、前記ターゲット室11aにバルブ3を組み込んだハウジング部4を突き当てることにより、マスキング部材10の貫通孔10aにバルブ先端部3bを貫通させ、この状態において成膜する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載されるフロントランプ、ウインカー(サイドターンランプ)、テールランプ等の燈体における成膜方法および成膜装置の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種燈体のなかには、車両用に設けられるサイドウィンカーやフロントランプ等があり、このものでは、光源(バルブ、発光ダイオード等)が組み込まれる(支持される)ハウジング部に、レンズ部を突き合わせ、該突き合わせ部となる外周部位を一体化することにより構成されている。このような燈体を成型するにあたり、一対の金型を用いた型移動を伴う一次の射出工程により、一次成型体としてレンズ部とハウジング部とを成型し、これらを互いに突き合わせた状態とし、該突き合わせ部に二次の射出工程により樹脂材を射出することで一体化して燈体を成型するようにした、所謂中空体成型方法で射出成型することが提唱されている。
また、このような燈体では、ハウジング部の内側の面に、反射面となる金属膜を成膜することで、光源の光量を増加したり広い照射範囲が確保することができ、このような燈体を中空体成型方法により成型する場合に、第一、第二金型の何れか一方に成膜装置を組み込んで、中空体成型方法による成型工程の過程に成膜工程を組み込むようにして、作業性の改善、歩留まりの向上、品質の向上等を図るようにする方法が既に提唱されている。
一方、このような燈体のレンズ部は透光性樹脂材で形成されているため、光源が非点灯状態にあるとき、レンズ部を透して光源を目視できることになるが、近年、光源を発光ダイオードにしたり、反射面が成膜されたハウジング部の内側面やレンズ部の色と異なる色の光源を用いることがあり、このような場合では、非点灯時にレンズ部から光源が透ける状態で目視できて(見えて)しまい、意匠的に劣るという問題があり改善が求められている。
【0003】
前記問題を解決する一手段として、光源の先端部にハウジング部と同様に成膜を施すことで、非点灯時にレンズ部を透して光源を見たとき、光源の色がハウジング部の内側面と同じになり、光源がハウジング部と異なる色であっても目立つことがないようにしたものが提唱されている。この場合に、一次射出工程と二次射出工程とのあいだに成膜工程を設けて、ハウジング部の内側面と光源の先端部とを同時に成膜するようにして、燈体を高品質でしかも作業性よく成型するようにしている。
【特許文献1】WO2006/098302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来のものにおいて、金型に組み込まれる成膜装置は、被成膜製品への成膜方向が直進性に優れる特性を有した成膜手段が用いられており、ターゲットの配設方向とハウジング部に組み込まれる光源の配設方向とを一直線上に位置させた状態で成膜する構成となっている。このため、光源が組み込まれたハウジング部の内側面を光源とともに成膜すると、光源の先端部とハウジング部の内側面とが成膜され、光源として光を放射するために成膜を回避しなければならない光源の基端側部位については成膜されることはない。しかるに、このように、成膜方向が直進性に優れる特性を有した成膜手段を用いたものでは、ターゲットと光源との位置関係に位置ズレが生じたり、成膜手段の使用条件が異なるような場合では、反射面にムラが生じてハウジングの内側面がきれいに成膜できないばかりか、光源の基端側部位が成膜されて光源としての機能が損なわれてしまうことがあり、ターゲットの位置調整が難しいという問題がある。そこで、直進性が低減され、よりムラのない成膜ができるような成膜手段であって、例えばマグネトロンスパッタリング装置を用いた成膜装置により成膜することが提唱されるが、前記従来のような成膜装置において成膜手段を前記直進性が低減された成膜手段に換えた場合では、光源の先端部から基端側部位に至るまでの全ての外周部位が成膜されてしまい、光源としての機能が損なわれてしまう。これに対処するには、光源にマスキング部材を設けてから成膜することが提唱されるが、前記従来のもののように、一次射出工程と二次射出工程とのあいだに成膜工程が組み込まれる中空体成型方法で燈体を成型する場合では、一次の射出工程の後に、ハウジング部に光源を組み込むとともにマスキング部材を組み込む工程と、成膜工程の後、二次の射出工程の前の段階でマスキング部材を取り外す工程が必要になり、組み込み、取り外し操作が面倒な作業であるうえ、作業工程数が増加して所要時間が増加してコスト高になるという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、一対の金型を用いた型移動を伴う一次の射出工程によりレンズ部とハウジング部とを成型し、一方の金型に支持され、光源の基端部が挿入固定されたるハウジング部を、他方の金型に設けられる成膜装置により成膜し、その後、レンズ部とハウジング部とを突き合わせ、二次の射出工程により一体化して燈体を成型するよう構成するにあたり、成膜装置による成膜工程では、光源にマスキング部材を設けて成膜するようにした燈体における成膜方法である。
請求項2の発明は、成膜装置は、一方の金型側が開口する開口部が形成されたターゲット室を備えて構成されるものとし、マスキング部材は、ターゲット室の開口部に設けられている請求項1に記載の燈体における成膜方法である。
請求項3の発明は、マスキング部材は、光源の先端部に外嵌する貫通孔を備えた円板体で構成されている請求項1または2に記載の燈体における成膜方法である。
請求項4の発明は、マスキング部材は、光源の先端から基端部までを覆う筒状体で形成されている請求項1または2に記載の燈体における成膜方法である。
請求項5の発明は、一対の金型を用いた型移動を伴う一次の射出工程によりレンズ部とハウジング部とを成型し、一方の金型に支持され、光源の基端部が挿入固定されたるハウジング部を、他方の金型に設けられる成膜装置により成膜し、その後、レンズ部とハウジング部とを突き合わせ、二次の射出工程により一体化して燈体を成型するよう構成するにあたり、前記成膜装置は、一方の金型側が開口する開口部が形成されたターゲット室を備えて構成され、該ターゲット室に、光源の先端部に装着して基端側部位をマスキングするマスキング部材が設けられている燈体における成膜装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1、3、4、5発明とすることにより、ハウジング部内側面とともに光源先端部をムラなく成膜することができて、光源としての機能が損なわれない高い性能を備えた信頼性のある燈体を、作業性よく、かつ、歩留まりよく成型できる。
請求項2、5の発明とすることにより、マスキング部材を別途組み込んだり、取り外したりする工程を省略できて、信頼性の高い燈体を作業性よく、短時間で成型できてコスト低下に寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
つぎに、本発明の第一の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図面において、1は本発明の燈体に相当するサイドウインカーであって、該サイドウインカー1は、レンズ部2と、先端半球体状に形成されたアンバー色のバルブ3(光源であればよく、例えば発光ダイオードでも実施できる。)が組み込まれるハウジング部(本体部)4とを備えて構成されている。尚、3aはバルブ3から伸長する端子である。
【0008】
さらに、本実施の形態のサイドウインカー1は、バルブ3の半球体状の先端部3bと、ハウジング部4の内側面4aとに金属膜で構成される反射面5がそれぞれ成膜されており、これによって、サイドウインカー1の非点灯時において、レンズ部2を介してバルブ3をみたとき、バルブ3の先端部3bとハウジング4の内側面4aとが同色となって、バルブ3のアンバー色が透けて見えることがなくなって、意匠性の高いサイドウインカー1となっている。
【0009】
前記サイドウインカー1は、固定型である第一の金型6と、可動型である第二の金型7とを用い、一次の射出工程においてそれぞれ一次成型体としてレンズ部2とハウジング部4とを成型し、これら一次成型体同士を突き合わせて二次の射出工程においてレンズ部2とハウジング部4との外周部に樹脂材8を射出して一体化することによりサイドウインカー1が成型される中空体成型方法に基づいて成型されている。
そして、本発明が実施された第一、第二金型6、7を用いることで、中空体成型方法に基づくサイドウインカー1の成型過程で、ハウジング部4の内側面4aとバルブ3の先端部3bとにそれぞれ反射面5が成膜(形成)される。この場合に、固定側の第一金型6に成膜装置9が組み込まれるが、該成膜装置9は、後述するように、成膜方向の直進性が低減されてムラのない成膜ができる成膜手段であるマグネトロンスパッタリング装置9aを用い、バルブ3にマスキング部材10を装着した状態で成膜するように構成されており、これによって、ハウジング部4の内側面4aとバルブ3の先端部3bとの両者に反射面5をムラなく成膜できるように構成されている。
【0010】
前記可動型である第二金型7は、固定型である第一金型6に対して互いに対向する方向への離接移動(図2において上下方向への移動)と、第一金型6から離間した状態で第一金型6の面に沿う方向への移動(平行移動であって、図2において左右方向への移動)とがそれぞれ自在に行えるよう、架台Bに組み込まれている。前記移動機構の詳細については、従来の中空体成型方法に用いる技術をそのまま採用することができ、ここでの説明は省略する。
尚、金型の移動は相対的なものでよく、第一金型を可動、第二金型を移動させるように構成してもよく、また、第一、第二金型の両者を移動するように構成することもできる。さらに、金型の移動は、面に沿う方向の移動であれば直線方向の移動に限定されることはなく、軸を中心とする回転移動であってもよい。
【0011】
そして、上方に位置する固定型である第一金型6は、右端部に位置してレンズ部2外側面を成型するための第一凹型面6aが形成され、中央部にハウジング部4の内側面を成型するための第一凸型面6bが形成されている。さらに、第一金型6は、左端部に位置して凹部6cが形成され、該凹部6cに、本発明の成膜装置9が設けられている。前記成膜装置9は、前記凹部6cに一体的に設けられるケーシング11を備えて構成されており、該ケーシング11には、下方が開口する凹溝形状のターゲット室11aが形成されており、該ターゲット室11aに、ハウジング部4の内側面4aとバルブ3の先端部3bに反射面5を成膜するための成膜手段であるマグネトロンスパッタリング装置9aが収容(内装)されている。ここで、成膜装置9に組み込まれる成膜手段としては、種々のスパッタリング装置、真空蒸着装置等による成膜手段を適宜用いることができ、本実施の形態では、前述したように、マグネトロンスパッタリング装置9aが用いられている。前記マグネトロンスパッタリング装置9aは、成膜方向の直進性が低減され、よりムラのない成膜ができるような装置として汎用されており、ここでの詳細な説明は省略するが、真空ポンプP、吸気路12、マグネット13、反射面5を構成する反射膜(金属膜)となるターゲット14、図示しない不活性ガス供給路等の各種部材装置を備えて構成されている。
一方、下方に位置する可動型である第二金型7には、右半部に位置してレンズ部2の内側面を成型するための第二凸型面7aが形成され、左半部に位置してハウジング部4外側面を成型するための第二凹型面7bが形成されている。
【0012】
そして、前記成膜装置9は、ターゲット室11aの溝奥側にマグネトロンスパッタリング装置9aが内装され、ターゲット室11aの開口部11bに、前記マスキング部材10が固定されている。前記マスキング部材10は、中央部に貫通孔10aが形成された円板体10bを備えて構成されており、該円板体10bの外周縁部には、上方に延出する筒状段差部10cが形成されている。さらに、筒状段差部10cの延出端部の周回り方向少なくとも二箇所には、外径方向に延出する脚片10dがそれぞれ形成されており、これら脚片10dの先端部が、ターゲット室11aの開口部11b側における内側面11cに固定されている。この固定状態において、円板体10bは、ターゲット室11aの先端位置よりも第二金型7側に突出して配設されており、後述するように、ターゲット室11aに第二金型7が突き当てられたとき、第二金型7に支持されるバルブ3の先端部が円板体10bの貫通孔10aに嵌入する状態となるように設定されている。因みに、脚片10dは、周回り方向幅狭に形成されていて、後述するように、マグネトロンスパッタリング装置9aがハウジング部4の内側面に反射面5を成膜する際に、脚片14dが邪魔にならないように形成されている。
【0013】
つぎに、サイドウインカー1の製造工程手順について、図2〜6の図面を用いて説明する。
図2は、第一金型6と第二金型7とが離間して配設されているが、第一凹型面6aと第一凸型面6bに対し、第二凸型面7aと第二凹型面7bとが互いに対向する状態となっており、この状態から第二金型7を第一金型6側に移動して、第一凹型面6aと第一凸型面6bとに、第二金型7の第二凸型面7aと第二凹型面7bとを互いに突き合わせ状態とする。そして、前記状態において樹脂材を射出して、図3(A)に示すように、一次成型体としてのレンズ部2とハウジング部4とをそれぞれ成型する(一次の射出工程)。このとき、第一金型6に組み込まれた成膜装置9は、第二金型7の各型面7a、7bとは位置ズレした状態となっていて、マグネトロンスパッタリング装置9aが作動することはなく、しかも、マスキング部材10が第二金型に干渉することはないように構成されている。
【0014】
前記状態から、第二金型7は、図3(B)に示すように、第一金型6から離間する方向に移動するが、このとき、レンズ部2は第二金型7から脱型されて第一金型6側に支持された状態となり、ハウジング部4は第一金型6から脱型されて第二金型7側に支持される状態となる(離型工程)ように型設計されている。
そして、前記状態から、第二金型7を左方に移動し、図4(A)に示すように、第一金型6の成膜装置9に第二金型7に支持されているハウジング部4が対向する位置関係とする。この状態において、図4(B)に示すように、端子部材3aが組み込まれたバルブ3をハウジング部4に挿入組み込みして固定し、続いて、第二金型7を第一金型6に近接する方向に移動し、第一金型6のターゲット室11aの開口部11b下端面と第二金型7の第二凹型面7b上端面とを突き合わせる。この突き合わせ移動において、図5に示すように、ハウジング部4に組み込まれたバルブ3の先端部は、ターゲット室11aよりも僅かに第二金型7側に突出して設けられたマスキング部材10の貫通孔10aに自動的に貫通するように構成されており、これによって、マスキング部材10のバルブ先端部3bへの組み込み工程を省略できるように設定されている。前記マスキング部材10の組み込み状態になると、バルブ先端部3bが円板体10bよりもターゲット室11a側に位置し、外径側に延出するフランジ状の円板体10bがバルブ3の先端部3bよりも下方の部位である基端側部位3cをマスキングし、ターゲット14によるバルブ基端側部位3cの成膜を回避するように設定されている。
【0015】
そして、前記状態において、マグネトロンスパッタリング装置9aが作動することにより、ハウジング部4の内側面4aとともにバルブ3の先端部3bに反射面5が成膜される。ここで、マグネトロンスパッタリング装置9aによる成膜は、成膜方向として直進性が低減されているため、ターゲット室11aの溝奥側に設けたターゲット14は、種々の角度を存してハウジング部4側に向けて成膜することによりムラのない成膜を実施するが、このとき、マスキング部材10の円板体10bはバルブ先端部3bにフランジ状に嵌着しており、円板体10bの下方の部位であるバルブ基端側部位3cをマスキングして、該部位の成膜を回避し、ハウジング部4の内側面4aと、バルブ先端部3bとにムラのない反射面5が成膜される(成膜工程)。
尚、マスキング部材10の脚片10dは、マスキング部材10をターゲット室11aに固定するための構成部材であるが、前述したように、周回り方向の幅が狭く形成されている。これによって、前記成膜装置9のターゲット室11aにハウジング部4を対向させた状態で成膜したとき、脚片10dがハウジング部内側面4aをマスキングしてしまうようなことはなく、ハウジング部内側面4aとバルブ先端部3bとをムラなく成膜できるように構成されている。
【0016】
前記成膜工程が終了すると、バルブ先端部3bとともに内側面4aに反射面5が成膜されたハウジング部4を支持する第二金型7を第一金型6から離間する方向に移動させるが、このとき、バルブ3は、成膜装置9を構成するターゲット室11aから、ハウジング部4とともに下動することにより、ターゲット室11aに設けられたマスキング部材10の貫通孔10aから自動的に抜け出すように構成され、これによって、マスキング部材10の取り外し工程を省略できるように構成されている。
そして、前記状態から第二金型7を右方に移動させ、図6(A)に示すように、第一金型6支持されている一次成型体としてのレンズ部2に対し、第二金型7に支持されている前記成膜が施された一次成型体としてのハウジング部4とを対向させる。さらに、図6(B)に示すように、第二金型7を第一金型6側に近接する方向に移動させ、これら第一、第二金型6、7同士を突き合わせてレンズ部2とハウジング部4とを突き合わせ状態とし、該突き合わせ部の外周縁部に、前述したように、樹脂材8を射出(二次の射出工程)することで、レンズ部2とハウジング部4とが一体化(接着)され、サイドウインカー1が成型される。因みに、二次の射出工程において、成膜装置9は、対向する第二金型7に干渉してしまうことがないように型設計されている。
このように成型されたサイドウインカー1は、第二金型7を第一金型6から離間させた状態で取り出されるが、この後、第二金型7を右方に移動させることにより、レンズ部2とハウジング4とを一次射出する状態となり、以降、この工程を繰り返すことにより、順次サイドウインカー1が成型されるように構成されている。
【0017】
叙述の如く構成された本形態において、射出により成型されたサイドウインカー1は、ハウジング部4の内側面4aとアンバー色のバルブ3の先端部3bとにそれぞれ反射面5が成膜されている。これによって、レンズ部2側からサイドウインカー1をみたとき、アンバー色のバルブ3が透けて見えることがなく、高い意匠を備えたサイドウインカー1とすることができる。しかも、このものでは、一次の射出工程でレンズ部2とハウジング部4とを成型し、バルブ3を組み込んで成膜工程を実施することで、バルブ先端部3bとハウジング部内側面4aとに反射面5が成膜される。この場合に、成膜工程では、バルブ3の基端側部位3cが成膜されないよう、バルブ3にマスキング部材10を設けて成膜する構成としたので、成膜装置9に成膜方向の直進性が強い成膜手段に限らず、どのような成膜手段を用いたとしても、バルブ3の基端側部位3cが成膜されてバルブ3としての機能が損なわれるようなことが回避できるばかりでなく、ハウジング部内側面4aやバルブ先端部3bにムラなく反射面5を成膜することができ、高い性能を備えた信頼性のあるサイドウインカー1を、作業性よく、かつ、歩留まりよく成型することができる。
【0018】
このように、本発明が実施されたサイドウインカー1は、ハウジング部内側面4aとともにバルブ3の先端部3bにのみ反射面5が成膜されるものであるが、この場合に、バルブ基端側部位3cをマスキングするためのマスキング部材10は、成膜装置9を構成するターゲット室11aの開口部11bに支持されていて、一次の射出工程の後に、バルブ3の組み込みをするだけで成膜工程に移行することができて、マスキング部材10を別途組み込んだり、取り外したりする工程を設ける必要がないようにでき、一層作業性よくサイドウインカー1を成型することができ、作業時間の短縮を図れてコスト低下に寄与できる。
【0019】
しかも、このものにおいて、マスキング部材10は、円板体10bをバルブ3の先端部にフランジ状に設けることで、バルブ基端側部位3cをマスキングするように構成したので、バルブ3への着脱をバルブ3等に大きな負荷を与えることなく、容易に行うことができる。
【0020】
尚、本発明は前記実施の形態に限定されないことは勿論であって、図7に示す第二の実施の形態のようにすることもできる。
前記第二の実施の形態において、マスキング部材15以外の構成は前記第一の実施の形態と同様の構成であり、第一の実施の形態と同様の符号を付すことで構成の説明は省略する。ハウジング部4に組み込まれたバルブ3の先端部が貫通する貫通孔15aが中央に形成された円板体15bと、該円板体15bの外周縁部から上方に延出する支持片15cとにより構成されており、前記支持片15cを、マグネトロンスパッタリング装置9aのターゲット14に固定することにより、予め成膜装置9側に固定されるように構成されている。そして、第二の実施の形態においても、フランジ状の円板体15bによるバルブ基端側部位3cのマスキングを行なうことができ、しかも、マスキング部材15を、一次の射出工程から成膜工程への過程で組み込む作業、成膜工程から二次の射出工程への過程で取り外す作業を省略することができて、作業性よく信頼性の高いサイドウインカーを短時間で成型することができて、コスト低下に寄与できる。
【0021】
また、図8に示す第三の実施の形態のようにすることもでき、ここでのマスキング部材16は円板体で構成され、ハウジング部4に組み込まれたバルブ3の先端部が貫通する貫通孔16aが中央に形成されている。このものでは、ハウジング部4にバルブ3を組み込む前の段階で、予めバルブ3にマスキング部材16を組み込んでおき、一次の射出工程から成膜工程への過程で、マスキング部材16が組み込まれたバルブ3をハウジング部4に組み込み、成膜工程の後にマスキング部材16のみを取り外し、その後、二次の射出工程を実施することでサイドウインカーを成型することができる。そして、この場合でも、フランジ状の円板体16によるバルブ基端側部位3cのマスキングを行なうことができ、作業性よく信頼性の高いサイドウインカーを短時間で形成することができて、コスト低下に寄与できる。
【0022】
さらに、図9、図10(A)、(B)、(C)に示す第四、第五、第六、第七の各実施の形態のマスキング部材17、18、19、20は、それぞれバルブ基端側部位3cを覆うべく筒孔17a、18a、19a、20aがそれぞれ形成されたものとなっており、これらの場合でも、ハウジング部4にバルブ3を組み込む前の段階で、予めバルブ3にマスキング部材17、18、19、20を選択して組み込んでおき、一次の射出工程から成膜工程への過程で、マスキング部材17、18、19、20が組み込まれたバルブ3をハウジング部4に組み込み、成膜工程の後にマスキング部材17、18、19、20のみを取り外し、その後、二次の射出工程を実施することで、バルブ3の基端側部位3cがマスキングされた信頼性の高いサイドウインカーを作業性よく成型することができて、作業時間の短縮を図れてコスト低下に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】サイドウインカーの断面図である。
【図2】サイドウインカーの成型手順を説明する概略図である。
【図3】図3(A)、(B)はそれぞれサイドウインカーの成型手順を説明する概略図である。
【図4】図4(A)、(B)はそれぞれサイドウインカーの成型手順を説明する概略図である。
【図5】サイドウインカーの成型手順を説明する概略図である。
【図6】図6(A)、(B)はそれぞれサイドウインカーの成型手順を説明する概略図である。
【図7】第二の実施の形態におけるマスキング部材を説明する概略図である。
【図8】第三の実施の形態におけるマスキング部材を説明する概略図である。
【図9】第四の実施の形態におけるマスキング部材を説明する概略図である。
【図10】図10(A)、(B)、(C)はそれぞれ第五、第六、第七の実施の形態におけるマスキング部材を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0024】
1 サイドウインカー
2 レンズ部
2a 内側面
3 バルブ
3b 先端部
3c 基端側部位
4 ハウジング部
4a 内側面
5 反射面
6 第一金型
7 第二金型
9 成膜装置
9a マグネトロンスパッタリング装置
10 マスキング部材
10b 円板体
11a ターゲット室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の金型を用いた型移動を伴う一次の射出工程によりレンズ部とハウジング部とを成型し、一方の金型に支持され、光源の基端部が挿入固定されたるハウジング部を、他方の金型に設けられる成膜装置により成膜し、その後、レンズ部とハウジング部とを突き合わせ、二次の射出工程により一体化して燈体を成型するよう構成するにあたり、成膜装置による成膜工程では、光源にマスキング部材を設けて成膜するようにした燈体における成膜方法。
【請求項2】
成膜装置は、一方の金型側が開口する開口部が形成されたターゲット室を備えて構成されるものとし、マスキング部材は、ターゲット室の開口部に設けられている請求項1に記載の燈体における成膜方法。
【請求項3】
マスキング部材は、光源の先端部に外嵌する貫通孔を備えた円板体で構成されている請求項1または2に記載の燈体における成膜方法。
【請求項4】
マスキング部材は、光源の先端から基端部までを覆う筒状体で形成されている請求項1または2に記載の燈体における成膜方法。
【請求項5】
一対の金型を用いた型移動を伴う一次の射出工程によりレンズ部とハウジング部とを成型し、一方の金型に支持され、光源の基端部が挿入固定されたるハウジング部を、他方の金型に設けられる成膜装置により成膜し、その後、レンズ部とハウジング部とを突き合わせ、二次の射出工程により一体化して燈体を成型するよう構成するにあたり、前記成膜装置は、一方の金型側が開口する開口部が形成されたターゲット室を備えて構成され、該ターゲット室に、光源の先端部に装着して基端側部位をマスキングするマスキング部材が設けられている燈体における成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−284796(P2008−284796A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132546(P2007−132546)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(000149468)株式会社大嶋電機製作所 (89)
【Fターム(参考)】