説明

物体の表面を光学的に検査するための装置

【課題】自動的に、素早く、信頼性良く、高い精度で物体の表面を光学検査するための装置および方法を提案する。
【解決手段】物体(56)の表面(58)を光学検査するための装置(10)は、空間的な第1周期を有する空間的な第1強度分布(31)を形成する、多数の明るい領域および暗い領域(29,30)を有するパターン(28)と、第1強度分布が表面にあたるように、表面を有する物体をパターンに対して位置決めする収容部(54)と、表面(58)に対して所定の変位距離だけ第1強度分布を変位し、表面が、変位距離に沿って第1強度分布に対して異なる多数の位置をとるようにする制御ユニット(20)と、表面を第1強度分布と共に異なる位置で示す多数の画像を撮影する撮像ユニット(50)と、画像に関係して表面特性を決定する評価ユニット(46)とを有する。測定装置(48)は、物体に対して第1強度分布の現在位置を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の表面を光学的に検査するための装置において、
第1の空間的周期を有する空間的な第1強度分布を形成する、多数の明るい領域および暗い領域を有するパターンと、
第1強度分布が表面にあたるように、表面を有する物体をパターンに対して相対的に位置決めするための収容部と、
表面に対して相対的に所定の変位距離だけ第1強度分布を変位し、前記表面が、変位距離に沿って第1強度分布に対して相対的な異なる多数の位置をとるようにする制御ユニットと、
画像により、表面を第1強度分布と共に異なる位置で示す多数の画像を撮影するための少なくとも1つの撮像ユニットと、
画像に関係して表面の特性を決定するための評価ユニットと
を有する装置に関する。
【0002】
さらに本発明は、物体の表面を光学的に検査するための方法であって、
空間的な第1周期を有する空間的な第1強度分布を形成する、多数の明るい領域および暗い領域を有するパターンを準備するステップと、
前記第1強度分布が前記表面にあたるように、表面を有する前記物体を前記パターンに対して相対的に位置決めするステップと、
前記表面に対して相対的に所定の変位距離だけ前記第1強度分布を変位し、前記表面が、変位距離に沿って前記第1強度分布に対して相対的な異なる多数の位置をとるようにするステップと、
前記表面を前記第1強度分布と共に異なる位置で示す多数の画像を撮影するステップと、
画像に関係して前記表面の特性を決定するステップと
を含む方法に関する。
【背景技術】
【0003】
このような装置およびこのような方法は、例えば国際公開第2009/007130号(特許文献1)により公知である。
【0004】
製品を工業生産する場合、近年では製品の品質がますます重要となっている。一方では設計された安定性のある生産プロセスによって高品質を達成することができる。他方では、製品の品質パラメータをできるだけ信頼性良く完全に制御し、品質的な欠陥を早期に検出する必要がある。多くの場合、表面の品質は製品特性の重要な部分である。この場合、装飾を施す表面、例えば自動車における塗装面、または技術的な表面、例えば、微細加工した金属ピストンの表面または支承部が問題となる。
【0005】
このような表面を自動的に検査するための多数の提案および概念が既に存在する。偏向測定法は、少なくとも部分的に反射する表面に対して多大に成果が見込まれる概念であり、明るい領域と暗い領域とを有するパターンを検査表面にわたって観察する。パターンは表面に対して相対的に変位される。観察領域が反射により受ける変化に基づいて反射表面を光学的に検査することが可能である。例えば、表面箇所の局所的な傾斜を、パターンの相対位置が異なる少なくとも3つの画像から測定することができる。局所的な傾斜に基づいて、次いでひっかき傷、凸部、凹部、孔およびその他の寸法上の欠陥を検出することができる。表面の輝度および散乱特性を偏向測定法によって決定することができる。
【0006】
冒頭に挙げた特許文献1は、物体の少なくとも部分的に反射する表面を光学的に検査するための装置および方法について記載しており、この場合、偏向測定法によって表面を検査する。特許文献1に開示した偏向測定評価についての詳細な記載内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。公知の装置はトンネルを有し、トンネルの内壁にストライプパターンが設けられおり、ストライプパターンは正弦状の強度分布を形成している。検査表面を有する物体、この場合、自動車がトンネルを通過させられる。その間に複数のカメラにより検査すべき表面を撮影する。パターンに対する表面の相対移動により、強度分布はカメラの視界から表面に移動する。この方法を実施した場合、パターンに対して相対的な少なくとも4つの異なる位置でそれぞれの検査表面箇所を撮影すると有利であり、この場合、少なくとも4つの異なる位置は、強度分布のちょうど1つの周期を覆う。このことは、特許文献1によれば、トンネル内における自動車の移動速度を、トンネル内におけるパターンの幾何学的比率に正確に適合させることにより達成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2009/007130号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような技術を背景とした本発明の課題は、広範囲に自動に、素早く、信頼性良く、かつ高い精度で表面を検査するための代替的な装置および代替的な方法を提案することである。この場合、装置および方法は万能に使用可能であり、安価に実施できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、本発明の一態様によれば、冒頭に挙げた形式の装置において、物体に対して相対的な第1強度分布の現在位置を決定するように構成された測定装置を有する装置により解決される。
【0010】
本発明の別の一態様によれば、この課題は、冒頭に挙げた方法において、物体に対して相対的な第1強度分布の現在位置を決定する方法により解決される。
【0011】
新規の装置および新規の方法は、適切に構成された測定ユニットによって、表面に対して相対的な強度分布の現在位置を決定する。換言すれば、表面に対して相対的な強度分布の相対位置を、個別の状態に関係した測定値に基づいて、多数の異なる現在位置について決定する。好ましくは、新規の装置および新規の方法においても表面を偏向測定式に検査し、これにより、現在位置は、例えば三角法における評価の場合とは異なり、表面検査のためには不要となる。しかしながら、実際の状況に関係した現在位置は付加的な情報として準備し、特に撮像を簡易化する。偏向測定式の評価のためには現在位置はパラメータとしては不要である。しかしながら、画像はできるだけ一様な間隔をおいて撮影することが望ましい。間隔の総和は強度分布の周期に相当する。このことは、測定ユニットによって、従来技術によるよりも簡単かつ安価に確保することができる。さらに新規の装置および新規の方法は、使用および作動条件の変化に容易に適合させることができる。これにより、新規の装置および新規の方法は、既知の装置および既知の方法よりも柔軟に使用することができる。
【0012】
表面に対して相対的にパターンを変位させた場合に同期変動を補償するために表面位置を特に極めて有利に用いることができる。これにより、新規の装置および新規の方法は、付加的な測定ユニットが設けられているのにもかかわらず、より簡単な駆動装置によって相対変位を行うことができるので安価な実施を可能にする。特に有利な実施例では、パターンは、例えば薄膜または別のパターン担体に印刷され、あらかじめ規定された不変の(受動的な)パターンであり、この場合、支持体を表面に対して機械的に移動する。さらに、支持体に描かれた、または支持体にエッチングした受動的なパターンも考えられる。
【0013】
特許文献1に記載のように、物体の移動により表面に対して相対的なパターンの変位を行うことができる。しかしながら、特に有利にはパターン担体の移動によりパターンの変位を行うこともできる。この場合、有利には検査表面は定置であるか、または物体の移動に対して付加的に同様に移動することもできる。偏向測定的な検査においては、パターンと表面との間の相対運動が重要である。移動はいずれの場合にも線形移動または回転移動であってよい。線形移動は、物体をトンネル内の定置のパターンに沿って移動させる搬送ベルトを用いて、極めて安価に、特に大きい物体の場合には、実施することができる。現在位置の検出により、画像の撮影時(撮像時点)および評価時に搬送ベルトの同期変動を考慮することができる。回転移動は、物体を中心として回転するパターン担体、例えば長手方向軸線を中心として回転する円筒状のトンネルによって極めて有利に実施することができる。有利には、内周面にパターンを設けた円形管がパターン担体としての役割を果たすことができる。現在位置の検出により、撮像の開始および画像の評価時の回転式担体の同期変動をも考慮することができる。
【0014】
現在位置を検出するためには、表面を有する物体に対して定置に配置した少なくとも1つのセンサの使用が有利である。しかしながら、センサをパターンに対して定置に配置し、これにより、センサが強度分布を有するパターンに対して相対的な表面の現在位置を検出することも可能である。両方の可能性を組み合わせ、1つのセンサを表面に対して定置に配置し、別のセンサをパターンに対して定置に配置した場合、特に信頼性が高く、柔軟である。この場合、センサを相互に直接に通信させることもでき、これにより、現在位置のさらに確実および/または正確な決定が可能となる。
【0015】
現在位置を測定技術的に決定する場合の別の利点は、出願人による同日出願の並行した特許出願明細書に詳細が記載されている。これによれば、撮像ユニットにより検出される光線量または光強度は、実際に決定した現在位置に関係して制御および変更される。例えば、周辺照明の光度は、実際に決定した現在位置によって変更される。露光時間中の光強度の変更によって、フィルタ処理の強度分布を操作することができる。特にこのようにして低域フィルタ処理により、正確に正弦状ではない強度分布から正弦状の強度分布を生成することができ、このことは、正確な偏向測定的な検査のために有利である。実際に決定した現在位置によって、パターンの相対移動を正確に同期して行うことができる。
【0016】
現在位置に基づいて、パターンの不都合な領域だけを簡単に素早く同定することもできる。不都合な領域は、例えば、パターンの複数の部分が互いに突き合わされるエッジである。このような領域では、突き合わせエッジ自体または突き合わせエッジにおけるパターンの移行が、表面特性を決定する場合にエラーをもたらす場合がある。不都合な領域の素早く安価な検出により補正手段の簡単な使用が可能となる。これにより、安価で自動的にさらに高度な検査精度を達成することができる。
【0017】
従って上記課題は完全に解決された。
【0018】
本発明の有利な構成では、測定ユニットは少なくとも1つの光学センサを有している。
【0019】
この構成では、現在位置は光学的に検出される。このことは、非接触式に、摩耗なしに現在位置を突き止めることができるという利点を有している。これにより、老朽化による不都合な作用および温度変動に基づく測定精度に対して装置の堅牢性が得られる。光学センサは、有利には反射型ライトバリアであってもよい。さらに付加的な撮像ユニットまたは既に提供されている撮像ユニットを光学センサとして用いることも可能である。
【0020】
別の構成では、測定ユニットは、パターンに定置に接続された少なくとも1つのマーキング領域を有している。
【0021】
この構成では、特にマーキング領域が設けられており、このマーキング領域を用いて、第1強度分布の現在位置を検出する。マーキング領域とパターンとの固定的な関係に基づいて、マーキング領域の位置を用いて強度分布の現在位置を極めて簡単に素早く決定することができる。別々のマーキング領域は、常に所定の局所的な領域の内部で測定を行うことができ、これにより、この領域の内部に測定のための最適条件を設定することができるという利点を有する。これは、表面検査のための条件とは無関係に行うことができ、これにより、有利には現在位置の検出を表面検査とは無関係に行うことができる。マーキング領域が、表面と第1強度分布の間の相対移動を行う方向に延在している場合、特に有利である。マーキング領域を第1強度分布内に、または第1強度分布にわたって配置することも可能である。パターン内またはパターンにマーキング領域を配置した場合、表面の光学検査に影響を及ぼさないか、または極わずかにしか影響を及ぼさないようにマーキング領域を設計することが可能である。
【0022】
別の構成では、パターンはマーキング領域を形成する縁部領域を有している。
【0023】
この構成では、パターン自体がマーキング領域を含む。現在位置は、有利には縁部領域で検出される。このことは、センサをパターンの縁部領域に配置することができ、これにより表面検査が測定ユニットによる影響を受けないか、または本質的には影響を受けないという利点を有する。縁部領域に沿って、相対移動方向に、パターンは特徴的な構造を形成する。これにより、縁部領域の長さ方向のパターンの移動を検出し、ひいては、第1強度分布の現在位置を検出することができる。縁部領域が、相対移動に対して横方向に十分な幅を有している場合、縁部領域の長さに対して横方向の運動も測定することができる。
【0024】
別の構成では、マーキング領域はパターンの縁部に隣接している。
【0025】
この構成では、マーキング領域はパターンの外部に位置している。この場合、パターンの実施とは無関係にマーキング領域を構成することができることが有利である。同時に、パターンの縁部に隣接するマーキング領域は、パターンに付加的に取り付けられた縁部領域を形成しているので、上記構成の利点が生じる。マーキング領域がパターンを制限するように、マーキング領域とパターンとの重畳も考えられる。
【0026】
別の構成では、補助パターンがマーキング領域に配置されている。
【0027】
この構成では、付加的なパターン、補助パターンがマーキング領域に配置されている。これにより、第1強度分布の現在位置を簡単に検出することができる。この場合、補助パターンを必要に応じてパターンよりも荒く、またはパターンよりも細かく構成できることは有利である。絶対値の形で実際の現在位置のコードを含む補助パターンは有利である。これにより、現在位置の変化のみならず、現在位置の絶対値を直接に検出することができる。代替的には、現在位置の変化の検出を可能とする、補助パターンよりも単純な増分式パターンも考えられる。
【0028】
この構成では、補助パターンは矩形パターンである。
【0029】
この構成では、第1強度分布の現在位置を検出するために矩形パターンが使用される。この場合、矩形パターンは、明るい領域と暗い領域とを飛躍的または段階的に連続させることにより技術的に極めて簡単に実施することができる。有利には、明るい領域と暗い領域とはマーキング領域の延在方向に同じ長さで構成されており、これにより、矩形パターンの強度の変化のそれぞれの検出を、第1強度分布が変位された所定の距離と同等とみなすことができる。現在位置を検出するための高い解像度が、高い高周波数を有する矩形パターンの使用により得られる。補助パターンに沿って互いにずらして配置した多数のセンサを使用することも可能である。これにより、有利には変位時の中間値を現在位置として検出することができる。
【0030】
別の構成では、支持素子はパターンとマーキング領域とを有している。
【0031】
この構成では、支持素子はパターンとマーキング領域とを有しており、この場合、パターンとマーキング領域とは支持素子で定置に相互に結合されており、マーキング領域をパターンに対して変位させることなしに簡単に装置に配置できることが有利である。このようにして、パターンに対するマーキング領域の特に正確な配置が得られる。支持素子としては、例えば薄膜または紙が考えられる。しかしながら、支持素子の構成は、装置の構成に関係しており、支持素子としてトンネル壁、または例えばプラスチックプレートも考慮される。パターンおよびマーキング領域を、異なる形態で支持素子に配置してもよい。例えば、これらは支持素子に描くか、印刷するかまたは接着することができる。パターンとマーキング領域とを支持素子に投影することも可能である。さらに、支持素子として透過性または反射性の表面も考えられ、これらの表面は光学特性を部分的に変更することによりパターンおよびマーキング領域を形成する。このような変更は、例えば支持素子のエッチング、部分的な研磨によって施すことができる。特に有利には、必要に応じて装置において交換することができる交換可能な支持素子の使用も有利である。これにより、素早く簡単に、かつ安価にパターンを構成し、同時にパターンに対するマーキング領域の定置を保持することができる。このようにして、測定ユニットの精度がコスト的利点を伴って高められる。
【0032】
別の構成では、パターンおよびマーキング領域は管素子に配置されており、マーキング領域は、管素子の周方向に延在している。
【0033】
この構成では、管素子は、パターンおよびマーキング領域が1つの支持素子に配置されている場合にパターンおよびマーキング領域のための保持装置を形成しているか、または支持素子自体を形成している。表面に対するパターンの変位は、長手方向軸線を中心とした管素子の回転により得ることができる。このことは、パターンの適宜な選択を前提とする。このようにして、長手方向軸線を中心とした管素子の移動を極めて簡単に検出することができる。管素子の使用は、表面に対する第1強度分布の変位を管素子の回転によって極めて簡単に行うことができるという利点を有する。このことは、全体として極めて簡単でコンパクトな装置が得られるという構成における利点をさらにもたらす。同時に、パターンを「無制限に」表面に沿って変位させることができる。同時に、第1強度分布の現在位置を常に検出することができる。特に有利には、光学センサに関連して管素子を使用した場合、複数の光学センサを互いに角度をずらしてマーキング領域に沿って配置することが有利であり、これにより、現在位置の検出時の解像度が高められる。パターンおよびマーキング領域はいずれも管素子の外周面または管素子の内周面に位置していてよい。さらに透光性の管素子を使用することも可能であり、これにより、管素子の内部領域を外部から照明することができるか、または管素子の外部領域を管素子の内部から照明することができる。
【0034】
別の構成では、制御ユニットは測定ユニットに関係して第1強度分布を変位させる。
【0035】
この構成では、第1強度分布の現在位置は、第1強度分布の変位を監視または調整するために用いられる。第1強度分布を変位する場合のエラーが最小化されるか、または完全に防止される。同時に連続的で一定な移動が保証される。好ましい実施形態では、測定ユニットと制御ユニットとは、第1強度分布の変位のための移動調整器を形成している。
【0036】
別の構成では、撮像ユニットは、測定ユニットに関連して画像を撮影する。
【0037】
この構成では、撮像ユニットは、測定技術的に決定した第1強度分布の現在位置に関係して制御される。この場合、始動時点、すなわち、撮影を開始する時点も、有利には現在位置に関係して制御することができる。終了時点、すなわち、撮像が終了する時点も、有利には現在位置に関係して制御することができる。代替的には、始動時点のみを現在位置に関係してトリガすることができ、露光時間は一定に設定されている。2つのパラメータの少なくとも1つの位置に関係した制御により、撮像を極めて正確に強度分布に適合させることができる。パターンの所定領域を意図的に省略することができる。さらに、パターンの所望の現在位置が提供されている場合に、撮像ユニットを正確に、すなわち同期的に始動することができる。これにより、撮像時に誤った現在位置が生じ、各画像に波状の欠陥が生じることを防止できる。露光時間の制御、すなわち、撮像ユニットのシャッターの開閉により、第1強度分布の移動を所定時間にわたって検出することが可能となる。これにより、経時的な強度分布の強度についての中間値が画像に部分的に生じる。換言すれば、強度分布はより長い露光時間にわたって「塞がれる」。この作用により、連続的な柔軟なパターンを画像に生成することが可能となる。このようにして、例えばディザーリング印刷法によって作製され、実際に走査されたパターンから対応した柔軟で連続的なパターンが画像に生成される。これにより、特に印刷技術的な障害が完全に除去されるか、または少なくとも広範囲に除去される。
【0038】
別の構成では、評価ユニットは、測定ユニットに関係して表面特性を決定する。
【0039】
この構成では、画像を評価するために第1強度分布の現在位置を用いる。この場合、第1強度分布が不都合に変位されたか、または全く変位されなかったかを検出できることが有利である。パターンの所定領域を同定することもでき、これにより、パターンのこの領域に関連して生じた画像を適合させて評価するか、または全く評価しない可能性が生じる。
【0040】
上述した特徴およびさらに後述する特徴はそれぞれに説明した組み合わせのみならず、本発明の請求の範囲から離れることなしに他の組み合わせで、または単独で用いることもできることは自明である。
【0041】
本発明の実施例を図示し、以下に詳細に説明する。
【発明の効果】
【0042】
本発明による物体の表面を光学的に検査するための装置および方法により、広範囲に自動に、素早く、信頼性良く、かつ高い精度で表面を検査するための代替的な装置および代替的な方法が得られ、本発明による装置および方法は万能に使用可能であり、安価に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】測定ユニットによって物体の表面を光学的に検査するための本発明の装置の実施例の概略的な側面図である。
【図2】図1に示した装置の上面図である。
【図3】図1に示した装置における表面の光学的検査時の側面図である。
【図4】本発明の装置の別の実施例の概略図である。
【図5】パターンを有する支持素子の実施例を示す部分図である。
【図6】パターンを有する支持素子の別の実施例を示す部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1、図2、図3および図4には、全体に符号10を付す本発明の装置が示されている。
【0045】
図1は装置10の側面図を示す。この装置10はベースプレート12を有し、ベースプレート12には保持部14および16が配置されている。保持部16は駆動部を有し、ライン18によって制御ユニット20に接続している。図1は部分的に断面した側面図を示しており、従って、保持部14および16の側面図のみが示されている。保持部14および16は、長手方向軸線24を有する管素子22を支持している。長手方向軸線24はベースプレート12に対して平行に配向されている。保持部14および16は、管素子22を外周面で支持している。この支持は、ここでは管素子22が長手方向軸線24を中心として回転できるように実施されている。この場合、管素子22の内周面に薄膜26が配置されている。薄膜26は、パターン28のための担体としての役割を果たす。パターン28は、暗い領域29と明るい領域30とを有している。連続するこれらの領域29,30は、互いに横方向に延在したそれぞれ所定の周期を有する2つの周期的な強度分布31,32を形成している。一実施例では、明るい領域29および暗い領域30は、矩形の強度分布31,32を有するパターンを形成している。領域29,30は、ここではそれぞれ周期の場所33で飛躍的に相互に移行している。他の実施例では、強度分布は、正弦状、鋸歯状または連続的な他の移行部をもって形成されていてもよい。図示のパターン28は、相互に直行して交差する2つのストライプ群により生じる。ストライプ群の延び方に対して直行してパターン28のための第1および第2の強度分布31,32が生じる。ストライプ群は相互に異なるストライプ幅を有していてもよい。パターン28は、ここでは、縁部34は、長手方向軸線24を中心として周方向に管素子22の内周面に沿って延在する縁部34で終了している。縁部34では、それぞれ1つのマーキング領域35がストライプ28に隣接している。他の実施例では、個々のマーキング領域35を縁部34に設けてもよい。
【0046】
マーキング領域35は、図1〜図4では、明確化のために、詳細なマーキングなしに示されている。マーキング領域35は、この場合パターン28と共に薄膜26に取り付けられている。これにより、パターン28とマーキング領域とは、互いに堅固な(定置の)空間的関係にある。マーキング領域35は、ここでは光学センサ38と協働する。ここでは、1つのマーキング領域35は2つの光学センサ38を備え、別のマーキング領域35は1つの光学センサ38を備える。光学センサ38は、ライン40,42および44によって評価ユニット46に接続されている。評価ユニット46は、センサ38によって供給された情報を評価し、これにより、強度分布31,32の現在位置を決定する。センサ38は、ここではマーキング領域35と共に測定ユニット48を形成し、この測定ユニット48により、強度分布31,32の現在位置を決定することができる。物体の表面を光学検査するために、撮像ユニット(カメラ)50は、管素子の内部空間を見るように配置されている。カメラ50は、ライン52によって評価ユニット46に接続されている。評価ユニット46は、表面を検査するためにカメラ50の画像を評価する。
【0047】
さらに装置10は収容部54を有し、収容部54には、ここでは検査すべき表面58を有する物体56が配置されている。収容部54の下方には光源62が取り付けられており、光源62は、光学検査時に十分な光強度を提供する役割を果たす。さらに管素子22の上方には、代替的または付加的な光源62′が示されている。この光源62′は、管素子22の透光性の材料と共に、管素子22の内部に十分な照明をもたらす。収容部54は、矢印64の方向に移動させることができ、これにより物体を管素子22の内部に移動させる。
【0048】
図2は、図1の装置10の上面図を示す。管素子22はさらに破断して示されている。保持部14および16をより良く示すために、パターン28を部分的にのみ示す。保持部16は、管素子22の外周面に当接し、管素子22を回転させる駆動ローラ66を有している。保持素子14は、管素子22を外周面で支持する支承ローラ68を有している。駆動ローラ66は保持部16で、そして支承ローラ62は保持部14で、それぞれ回転可能に支承されている。カメラ50およびライン52は、見やすくするために点線で示す。
【0049】
図3は、図1および図2に示した装置10における物体56の表面58の光学的検査時の側面図を示す。光学的検査のために、収容部48は物体56と共に矢印64の方向に管素子22の内部へ移動された。表面58の検査時に、管素子22は長手方向軸線24を中心として回転し、これにより、薄膜26を移動させる。パターン28の構成に基づき、回転により、第1強度分布34と第2強度分布36とは表面52に対して変位される。
【0050】
制御ユニット20は、管素子22が長手方向軸線24を中心として回転するように保持部16の駆動装置を制御する。十分な照明により表面58を検査することを可能にするために、光源62は、光円錐体70を生成するようにスイッチオンされる。代替的または付加的に、光源62′は、十分な照明を得るために使用することもできる。この場合、管素子22が透光性の材料から作製されていると有利である。
【0051】
表面58を検査するために撮像ユニット50により複数の画像を次々に撮影し、この場合に強度分布31,32は表面58に対して異なる位置に位置している。好ましくは、それぞれの検査表面箇所は少なくとも4回撮影され、表面箇所は、少なくとも4つの画像のそれぞれに強度分布31,32に対して異なる相対位置を有している。さらに、少なくとも4つの画像が強度分布のちょうど1つの周期をカバーする場合、有利である。この場合、例えば冒頭に挙げた特許文献1に記載のように、画像は既知の「4バケット方式」によって極めて簡単に偏向測定式に評価することができる。
【0052】
表面58の検査は、検査すべき表面58を検出する撮影領域70の内部で行われる。撮影領域70の内部では完全に検出することができない表面は、物体を長手方向軸線24に沿って変位させることにより、部分毎に検査することができる。カメラ50により撮影した画像は、評価のために評価ユニット46に伝達される。
【0053】
管素子22の回転移動は測定ユニット48により検出され、同様に評価ユニット46に伝達される。測定ユニット48によって供給された測定値に基づいて、パターン、ひいては強度分布31,32が表面58に対して変位されたかどうか、およびどの程度変位されたかを突き止めることができる。さらにパターン28の領域、例えば突き合わせ縁部36がカメラ50によって検出されたかどうかを突き止めることができる。一実施例では、評価ユニット46は、測定ユニットによって決定された現在位置に基づいて、制御ユニット20によって管素子22の移動を制御する。さらに評価ユニット46は、この好ましい実施例では、管素子22の現在位置に関係して、ひいては強度分布31,32の現在位置に関係して、カメラ50を始動し、これにより、現在位置に基づいてカメラ50による撮影時点を決定する。
【0054】
図4は、装置10の別の実施例を示す。図4の実施例は、収容部54として搬送ベルトを使用していることにより図1の実施例とは異なる。この場合、光源62はベースプレート12に対して定置に搬送ベルトに固定されている。これにより、光源62は、回転する管素子22の内部で常に同じ空間位置をとり、これにより一定の照明が得られる。収容部54として搬送ベルトを使用することにより、多数の物体56を素早く次々に検査できるという利点が得られる。さらにこの実施例は、既存の生産ラインへの装置10の極めて簡単な組込を可能にする。
【0055】
図5は、薄膜26の一部の実施例を示す。パターン28は、マーキング領域35にまで延在しており、従って、パターン28の縁部領域78はマーキング領域25を形成している。この実施例は、パターン28が管素子の内面全体にわたって延在していてもよいという利点を提供する。強度分布31,32の現在位置は、ここでは周期的な交互の明-暗に基づいて縁部領域78で検出することができる。
【0056】
図6は、薄膜26の別の実施例を示す。この実施例では、パターン28は薄膜26の中央に配置されており、2つの縁部34を有している。縁部34には、ここでそれぞれ1つの別の矩形パターン84が隣接している。矩形パターン84はマーキング領域35を形成している。マーキング領域35は、管素子の長手方向軸線24に対して垂直方向の平面に、ここでは実質的に管素子22の内周全体にわたって延在している。この実施例では、マーキング領域35に、パターン28とは異なる固有のパターン、いわば補助パターンが設けられていることが有利である。特に有利な実施例では、補助パターンは光学センサ38と共に増分センサを形成しており、この増分センサにより、長手方向軸線24を中心とした管素子22の回転運動を極めて簡単に追跡することができる。しかしながら、原理的には補助パターンは、所定のスタート位置に対する管素子の絶対位置を表していてもよい。補助パターンは、パターン28よりも本質的に簡単に構成されていてもよい。有利には、補助パターンは、強度分布の周期に比べて短い周期を有する矩形パターンとして実施されている。周期が短くなると、それだけ現在位置は微細に決定される。図示の実施例とは異なり、装置は1つのみのマーキング領域35により構成されていてもよい。さらにパターン28原則的に1つのみの強度分布31を有していてもよいし、または2つ以上の強度分布31,32を有していてもよい。
【0057】
本発明の別の実施例では、特許文献1により既知のように、強度分布31,32を定置とし、検査表面を移動させることもできる。この場合、センサ38を表面58に対して不動の位置に(定置に)配置し、表面と共にパターン28に対して相対的に変位させると有利である。
【符号の説明】
【0058】
10 装置
20 制御ユニット
26 支持素子
28 パターン
29,30 領域
31 強度分布
35 マーキング領域
38 センサ
46 評価ユニット
48 測定ユニット
50 撮像ユニット
56 物体
58 表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体(56)の表面(58)を光学的に検査するための装置(10)において、
空間的な第1周期を有する空間的な第1強度分布(31)を形成する、多数の明るい領域および暗い領域(29,30)を有するパターン(28)と、
前記第1強度分布(31)が前記表面(58)にあたるように、表面(58)を有する前記物体(56)を前記パターン(28)に対して相対的に位置決めするための収容部(54)と、
前記表面(58)に対して相対的に所定の変位距離だけ前記第1強度分布(31)を変位し、前記表面(58)が、変位距離に沿って前記第1強度分布(31)に対して相対的な異なる多数の位置をとるようにする制御ユニット(20)と、
前記表面(58)を前記第1強度分布(31)と共に異なる位置で示す多数の画像を撮影するための少なくとも1つの撮像ユニット(50)と、
画像に関係して前記表面(58)の特性を決定するための評価ユニット(46)と
を有する装置において、
前記物体(56)に対して相対的な前記第1強度分布(31)の現在位置を検出するように構成された測定ユニット(48)を備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置(10)において、
前記測定ユニット(48)が少なくとも1つの光学センサ(38)を有している装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の装置において、
前記測定ユニット(48)が、前記パターン(28)に定置に結合した少なくとも1つのマーキング領域(35)を有している装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置(10)において、
前記パターン(28)が、前記マーキング領域(35)を形成する縁部領域(78)を有している装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の装置(10)において、
前記マーキング領域(35)が、前記パターン(28)の縁部(82)に隣接している装置。
【請求項6】
請求項3から5までのいずれか一項に記載の装置において、
補助パターン(84)が前記マーキング領域(35)に配置されている装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置において、
前記補助パターン(84)が矩形パターン(84)である装置。
【請求項8】
請求項3から7までのいずれか一項に記載の装置(10)において、
支持素子(26)が、前記パターン(28)と前記マーキング領域(35)とを有している装置。
【請求項9】
請求項3から8までのいずれか一項に記載の装置(10)において、
前記パターン(28)および前記マーキング領域(35)が管素子(22)に配置されており、前記マーキング領域(35)が、前記管素子(22)の周方向に延在している装置。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項に記載に記載の装置(10)において、
前記制御ユニット(20)が、前記測定ユニット(48)に関係して前記第1強度分布(31)を変位させる装置。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一項に記載の装置(10)において、
前記撮像ユニット(50)が、前記測定ユニット(48)に関係して画像を撮影する装置。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか一項に記載の装置(10)において、
前記評価ユニット(46)が、前記測定ユニット(48)に関係して前記表面(58)の特性を決定する装置。
【請求項13】
物体(56)の表面(58)を光学的に検査するための方法であって、
空間的な第1周期を有する空間的な第1強度分布(31)を形成する、多数の明るい領域および暗い領域(29,30)を有するパターン(28)を準備するステップと、
前記第1強度分布(31)が前記表面(58)にあたるように、表面(58)を有する前記物体(56)を前記パターン(28)に対して相対的に位置決めするステップと、
前記表面(58)に対して相対的に所定の変位距離だけ前記第1強度分布(31)を変位し、前記表面(58)が、変位距離に沿って前記第1強度分布(31)に対して相対的な異なる多数の位置をとるようにするステップと、
前記表面(58)を前記第1強度分布(31)と共に異なる位置で示す多数の画像を撮影するステップと、
画像に関係して前記表面(58)の特性を決定するステップと
を含む方法において、
前記物体(56)に対して相対的な前記第1強度分布(31)の現在位置を決定することを特徴とする方法。
【請求項14】
プログラムコードを有し、データ担体に記憶されており、請求項1から12までのいずれか一項に記載の装置のコンピュータ上で実施した場合に、請求項13に記載の方法の全てのステップを実施することを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−243495(P2010−243495A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87387(P2010−87387)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(510044084)カール ツァイス オーアイエム ゲーエムベーハー (6)
【Fターム(参考)】