説明

物体搬出システム、露光装置、フラットパネルディスプレイの製造方法、デバイス製造方法、及び物体の搬出方法

【課題】物体保持装置に保持された物体を迅速に搬出する。
【解決手段】 基板ホルダ30の上面上に載置された基板Pを該基板ホルダ30から搬出する基板Pの搬出方法は、前記基板ホルダ30に予め保持された基板トレイ60に前記基板Pを下方から支持させることと、前記基板トレイ60に前記基板Pを吸着保持させることと、前記基板ホルダ30から前記基板Pに対して気体を噴出することと、前記基板Pが前記基板トレイ60に吸着保持され、且つ前記基板Pに対して前記気体が噴出された状態で前記基板トレイ60を前記基板ホルダ30の上面に平行な方向に沿って相対移動させることにより、前記基板Pを前記基板ホルダ30から搬出することと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体搬出システム、露光装置、フラットパネルディスプレイの製造方法、デバイス製造方法、及び物体の搬出方法に係り、更に詳しくは、物体を物体保持装置から搬出する物体搬出システム及び方法、前記物体搬出システムを含む露光装置、前記露光装置を用いたフラットパネルディスプレイの製造方法及びデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示素子、半導体素子(集積回路等)等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(いわゆるステッパ)、あるいはステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが用いられている。
【0003】
この種の露光装置では、露光対象物であるガラスプレート、あるいはウエハ(以下、基板と総称する)が基板ステージ装置上に載置され、その基板にマスク(あるいはレチクル)を介してエネルギビームが照射されることにより、マスクに形成された回路パターンが転写される。そして、露光装置では、基板に対する露光処理が終了すると、その露光済みの基板が基板ステージ装置から搬出されるとともに、別の基板が基板ステージ装置に搬入されることにより、複数の基板に対して連続して露光処理が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このため、複数の基板に連続して露光処理を行う場合の総合的なスループットを向上するためには、基板ステージ装置上からの基板の搬出動作を迅速に行うことが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/065589号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の事情の下でなされたもので、第1の観点からすると、物体を下方から支持し、該物体を吸着保持可能な物体支持部材と、前記物体が載置される物体載置面と、前記物体が前記物体載置面上に載置された状態で前記物体支持部材を保持する保持部とを有し、前記物体載置面上に載置された前記物体に対して気体を噴出可能な物体保持装置と、前記物体支持部材に吸着保持された前記物体に対して前記気体が噴出された状態で、前記物体保持装置に対して前記物体支持部材を前記物体載置面に平行な所定の搬出方向に沿って相対移動させることにより、前記物体を前記物体保持装置から搬出する物体搬出装置と、を備える物体搬出システムである。
【0007】
これによれば、物体が支持部材に吸着保持され、且つ該物体に対して気体が噴出された状態で物体支持部材が搬出方向に移動するため、物体と物体保持装置との摩擦が低減された状態で物体を搬出することができる。したがって、物体を物体保持装置から迅速に搬出できる。
【0008】
本発明は、第2の観点からすると、本発明の第1の観点にかかる物体搬出システムと、
前記物体保持装置に保持された前記物体にエネルギビームを用いて所定のパターンを形成するパターン形成装置と、を備える露光装置である。
【0009】
本発明は、第3の観点からすると、本発明の第2の観点にかかる露光装置を用いて前記物体を露光することと、露光された前記物体を現像することと、を含むフラットパネルディスプレイの製造方法である。
【0010】
本発明は、第4の観点からすると、本発明の第2の観点にかかる露光装置を用いて前記物体を露光することと、露光された前記物体を現像することと、を含むデバイス製造方法である。
【0011】
本発明は、第5の観点からすると、所定の物体保持装置の物体載置面上に載置された物体を該物体保持装置から搬出する物体の搬出方法であって、前記物体保持装置に予め保持された物体支持部材に前記物体を下方から支持させることと、前記物体支持部材に前記物体を吸着保持させることと、前記物体保持装置から前記物体に対して気体を噴出させることと、前記物体が前記物体支持部材に吸着保持され、且つ前記物体に対して前記気体が噴出された状態で、前記物体保持装置に対して前記物体支持部材を前記物体載置面に平行な所定の搬出方向に沿って相対移動させることにより、前記物体を前記物体保持装置から搬出することと、を含む物体の搬出方法である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態に係る液晶露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図2(A)は、図1の液晶露光装置において基板の搬送に用いられる基板トレイの平面図であり、図2(B)は、図2(A)の基板トレイの側面図である。
【図3】図3(A)は、図1の液晶露光装置が有する基板ホルダの平面図であり、図3(B)は、図3(A)の3B−3B線断面図である。
【図4】図4(A)は、基板が載置された状態の基板ホルダ、及び基板搬出装置を示す平面図であり、図4(B)は、図4(A)の4B−4B線断面図である。
【図5】図5(A)は、基板ホルダからの基板の搬出動作を説明するための図(その1)であり、図5(B)は、図5(A)の5B−5B線断面図である。
【図6】図6(A)は、基板ホルダからの基板の搬出動作を説明するための図(その2)であり、図6(B)は、図6(A)の6B−6B線断面図である。
【図7】基板の搬出が終了した状態の基板ホルダ、及び基板搬出装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、一実施形態について、図1〜図7を用いて説明する。
【0014】
図1には、一実施形態に係る液晶露光装置10の構成が概略的に示されている。液晶露光装置10は、例えば液晶表示装置(フラットパネルディスプレイ)などに用いられる矩形(角型)のガラス基板P(以下、単に基板Pと称する)を露光対象物とするステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。
【0015】
液晶露光装置10は、照明系IOP、マスクMを保持するマスクステージMST、投影光学系PL、表面(図1で+Z側を向いた面)にレジスト(感応剤)が塗布された基板Pを保持する基板ステージ装置PST、基板ステージ装置PSTに保持された基板Pの搬出に用いられる基板搬出装置40、基板ステージ装置PSTに対する基板Pの搬入に用いられる基板搬入装置50、及びこれらの制御系等を含む。以下、露光時にマスクMと基板Pとが投影光学系PLに対してそれぞれ相対走査される方向をX軸方向とし、水平面内でX軸に直交する方向をY軸方向、X軸及びY軸に直交する方向をZ軸方向として説明を行う。
【0016】
照明系IOPは、例えば米国特許第5,729,331号明細書などに開示される照明系と同様に構成されている。照明系IOPは、露光用の照明光ILをマスクMに照射する。照明光ILとしては、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)などの光(あるいは、上記i線、g線、h線の合成光)が用いられる。
【0017】
マスクステージMSTには、所定の回路パターンが形成されたマスクMが、例えば真空吸着により固定されている。マスクステージMSTは、例えばリニアモータを含むマスクステージ駆動系(不図示)により走査方向(X軸方向)に所定の長ストロークで駆動されるとともに、Y軸方向、及びθz方向に適宜微少駆動される。マスクステージMSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転量情報を含む)は、不図示のレーザ干渉計を含むマスク干渉計システムにより計測される。
【0018】
投影光学系PLは、マスクステージMSTの下方に配置されている。投影光学系PLは、例えば米国特許第6,552,775号明細書に開示された投影光学系と同様に構成されている。すなわち、投影光学系PLは例えば両側テレセントリックな等倍系で正立正像を形成する鏡筒を複数含む、いわゆるマルチレンズ投影光学系であり、Y軸方向を長手方向とする長方形状の単一のイメージフィールドを持つ投影光学系と同等に機能する。
【0019】
このため、照明系IOPからの照明光ILによってマスクM上の照明領域が照明されると、マスクMを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介してその照明領域内のマスクMの回路パターンの投影像が、基板P上の照明領域に共役な照明光ILの照射領域に形成される。そして、照明領域(照明光IL)に対してマスクMが走査方向に相対移動されるとともに、露光領域(照明光IL)に対して基板Pが走査方向に相対移動されることで、基板P上の1つのショット領域にマスクMに形成されたパターンが転写される。
【0020】
基板ステージ装置PSTは、定盤12、XY粗動ステージ20、微動ステージ21、及び基板Pを保持する基板ホルダ30を含む。
【0021】
定盤12は、平面視で(+Z側から見て)矩形の板状部材から成り、防振装置(不図示)を含む架台13を介してクリーンルームの床11上に設置されている。
【0022】
XY粗動ステージ20は、X軸方向に所定の長ストロークで移動可能なX粗動ステージと、X粗動ステージ上に搭載され、X粗動ステージ上でY軸方向に所定の長ストロークで移動可能、且つX粗動ステージとともにX軸方向に所定の長ストロークで移動可能なY粗動ステージ(X粗動ステージ及びY粗動ステージはそれぞれ不図示)とを備える、いわゆるガントリ型の二軸ステージ装置である。
【0023】
微動ステージ21は、XY粗動ステージ20の上方に配置されている。微動ステージ21は、不図示の複数のリニアモータ(例えば、ボイスコイルモータ)により、XY粗動ステージ20に対して6自由度方向(X軸、Y軸、Z軸、θx、θy、θz方向)に適宜微少駆動される。また、微動ステージ21は、上記複数のリニアモータが発生する推力を用いてXY粗動ステージ20に誘導されることにより、X軸方向、及び/又はY軸方向に長ストロークで移動する。上記XY粗動ステージ20、及び微動ステージ21を含む粗微動構成の基板ステージ装置の詳細については、例えば米国特許出願公開第2010/0018950号明細書に開示されている。
【0024】
基板ホルダ30は、平面視矩形の板状(あるいは高さの低い直方体状)の部材から成り、その上面(+Z側の面部)に基板Pが載置される。基板ホルダ30の上面(以下、基板載置面と称する)には、微少な孔部が複数形成されている。基板ホルダ30には、基板ステージ装置PSTの外部に設置された不図示の真空吸引装置が不図示の配管部材を介して接続されており、基板載置面上に載置された基板Pを吸着保持することができるようになっている。また、基板ホルダ30には、基板ステージ装置PSTの外部に設置された不図示の加圧気体供給装置が不図示の配管部材を介して接続されており、基板載置面上に載置された基板Pに対して加圧気体(例えば、空気)を噴出することにより、基板Pを基板載置面から浮上させることができるようにもなっている。なお、気体の噴出と吸引とが同時に行われることがなければ、上記気体吸引用の孔部と気体噴出用の孔部とは、同一であっても良い。
【0025】
基板搬出装置40は、基板ホルダ30に保持された基板Pに対する露光処理が終了した後、該基板Pを基板ホルダ30上から搬出する装置であり、基板ステージ装置PSTの+X側に配置されている。基板Pの搬出時において、基板ステージ装置PSTは、XY粗動ステージ20が制御されることにより、基板ホルダ30を基板搬出装置40に対して−X側に隣接する位置(以下、基板交換位置と称する)に位置決めする。基板搬出装置40の構成については後述する。
【0026】
基板搬入装置50は、露光予定の基板P(未露光の基板を含む)を基板交換位置に位置した基板ホルダ30に搬送する装置である。基板搬入装置50の構成については後述する。
【0027】
ここで、液晶露光装置10において、基板ホルダ30への基板Pの搬入、及び基板ホルダ30からの基板Pの搬出は、基板Pを図2(A)に示される基板トレイ60と称される部材上に載置した状態で行われる。
【0028】
基板トレイ60は、複数(本実施形態では、例えば9本)の支持部材61、連結部材62、複数(本実施形態では、例えば9本)の補剛部材63を有しており、基板Pを下方から支持する。
【0029】
複数の支持部材61は、それぞれX軸方向に延びるYZ断面矩形の棒状部材から成り、Y軸方向に所定間隔で互いに平行に配置されている。支持部材61は、中空に形成されており(あるいは内部に配管部材を有しており)、+X側及び−X側それぞれの端部が開口している。支持部材61の長手方向の寸法は、基板PのX軸方向の寸法よりも幾分長く設定されている。支持部材61の上面には、不図示の微少の孔部(貫通孔)が複数形成されている。
【0030】
連結部材62は、Y軸方向に延びるXZ断面矩形の棒状部材から成る。本実施形態の基板トレイ60では、連結部材62の下面と、上記複数の支持部材61それぞれの+X側の端部近傍の上面とが互いに接続されており、これにより複数の支持部材61が一体的に接続されている。連結部材62は、中空の部材から成り(あるいは内部に配管部材を有しており)、複数の支持部材61それぞれの内部空間は、連結部材62を介して連通している。なお、複数の支持部材61は、それぞれの内部空間が必ずしも互いに連通されていなくてもよい。その場合、連結部材62は、中空の部材、あるいは内部に配管等を備える部材に限定されず、内部に空間が設けられていない部材であってもよい。
【0031】
複数の補剛部材63は、それぞれY軸方向に延びる板状(厚さの薄い棒状)の部材から成り、X軸方向に所定間隔で互いに平行に配置されている。複数の補剛部材63は、例えば9本の支持部材61それぞれの上面にX軸方向に所定間隔で形成された複数の凹部に嵌め込まれている。補剛部材63の厚さは、支持部材61に形成された上記凹部の深さと概ね一致しており、補剛部材63の上面(+Z側の面)が支持部材61の上面よりも+Z側に突き出さないようになっている(図2(B)参照)。
【0032】
複数の支持部材61それぞれの−X側の端部には、+X側から−X側に向けて細くなるテーパ面を有するテーパ部材64(円錐台状の部材)が取り付けられている。支持部材61の−X側の端部の開口は、テーパ部材64により閉じられている。また、複数の支持部材61それぞれの+X側の端部には、−X側から+X側に向けて細くなるテーパ面を有するテーパ部材65(円錐台状の部材)が取り付けられている。支持部材61の+X側の端部の開口は、テーパ部材65により閉じられている。
【0033】
ここで、例えば9つのテーパ部材65のうち、例えば中央のテーパ部材65には、X軸方向に貫通する貫通孔(不図示)が形成されている。これにより、例えば中央のテーパ部材65を介して上記複数の支持部材61それぞれの内部空間内の気体を基板トレイ60の外部から吸引することが可能となっている。上記複数の支持部材61を含み、基板トレイ60は、例えばCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)などの材料により形成されており、軽量かつ剛性(撓み剛性、捻れ剛性等)が高い。
【0034】
これに対し、図3(A)に示されるように、基板ホルダ30の上面には、X軸に平行な溝部31がY軸方向に所定の間隔で複数(例えば、9本)形成されている。溝部31は、基板ホルダ30の+X側及び−X側それぞれの側面(端面)に開口している。複数の溝部31のY軸方向に関する間隔は、図2(A)に示される基板トレイ60の複数の支持部材61のY軸方向に関する間隔と概ね一致している。そのため、図4(B)に示されるように、基板Pが基板ホルダ30上に載置された状態で、基板ホルダ30は、溝部31内に基板トレイ60の支持部材61を収容することができる。溝部31の深さは、溝部31内に支持部材61が収容された状態で、支持部材61の上面が基板ホルダ30の上面よりも+Z側に付き出さないように設定されている。また、図4(A)に示されるように、基板ホルダ30のX軸方向に関する全長は、基板トレイ60のX軸方向に関する全長よりも短く設定されている。そのため、支持部材61が溝部31内に収容された状態で、連結部材62、テーパ部材64、65それぞれは、基板ホルダ30の外側に配置される。
【0035】
図3(A)に戻り、基板ホルダ30の上面には、Y軸方向に延びる溝部32がX軸方向に所定間隔で複数(例えば、9本)形成されている。溝部32は、基板ホルダ30の+Y側及び−Y側それぞれの側面(端面)に開口している。図3(B)に示されるように、溝部32の深さは、溝部31よりも浅く設定されている。また、複数の溝部32のX軸方向に関する間隔は、図2(A)に示される基板トレイ60の複数の補剛部材63のX軸方向に関する間隔と概ね一致している。そのため、図4(B)に示されるように、基板Pが基板ホルダ30上に載置された状態で、基板ホルダ30は、溝部32内に基板トレイ60の補剛部材63を収容することができる。溝部32の深さは、溝部32内に補剛部材63が収容された状態で、補剛部材63の上面(+Z側の面)が基板ホルダ30の上面よりも+Z側に付き出さないように設定されている。
【0036】
前述した基板搬入装置50は、図1に示されるように、複数のテーパ部材64を保持可能な保持部材51と複数のテーパ部材65を保持可能な保持部材52とを用いて基板トレイ60を保持する。保持部材51、52は、X走行ガイド53に沿って互いにX軸方向に関する位置が独立に制御可能、且つ同期してZ軸方向に移動可能となっている。基板搬入装置50は、露光予定の基板Pを下方から支持した基板トレイ60を保持部材51、52により保持した状態で、基板搬出装置40の上方の領域から基板交換位置に位置した基板ホルダ30の上方の領域に水平面に沿って搬送した後、保持部材51、52を下降駆動することにより、図4(B)に示されるように、基板トレイ60の支持部材61を溝部31に、補剛部材63を溝部32にそれぞれ挿入する。これにより、基板Pが基板ホルダ30に受け渡される。基板搬入装置50の構成、及び動作の詳細については、例えば米国特許出願公開第2010/0018950号明細書に開示されている。
【0037】
図3(A)に戻り、溝部31内には、トレイガイド33が複数(例えばひとつの溝部31につき3つ)収容されている。トレイガイド33は、図3(B)に示されるように、Zリニアアクチュエータ34(例えばエアシリンダ)によりZ軸方向に所定のストロークで駆動される。トレイガイド33は、平面視でほぼ正方形の板状部材から成り、図4(B)に示されるように、支持部材61が溝部31に挿入された状態で、支持部材61を下方から支持する。支持部材61を下方から支持した状態で、トレイガイド33をその可動範囲の最も−Z側に位置させると、基板Pの下面と支持部材61の上面とが離間する。基板Pに対する露光動作などは、基板Pの下面と支持部材61の上面とが離間した状態で行われる。
【0038】
これに対し、基板ホルダ30から基板Pを搬出する際には、図5(B)に示されるように、補剛部材63の下面が基板ホルダ30の上面よりも+Z側に位置するように、トレイガイド33が上昇駆動される。基板搬出装置40(図5(B)では不図示。図1参照)は、図5(B)に示される状態の基板トレイ60を基板ホルダ30に対して水平面に沿って移動させることにより基板Pの搬出を行う。
【0039】
基板搬出装置40は、図4(A)に示されるように、X走行ガイド41、トレイ保持部材42、及び一対のトレイガイド43を備えている。X走行ガイド41、及び一対のトレイガイド43は、図1に示されるように、床11上に設置された架台44上に搭載されている(図1では、一対のトレイガイド43のうちの一方はX走行ガイド41の紙面奥側に隠れている)。
【0040】
X走行ガイド41は、図4(A)に示されるように、X軸方向に延びる部材から成り、上記一対のトレイガイド43は、一方がX走行ガイド41の+Y側に、他方がX走行ガイド41の−Y側に配置されている。トレイ保持部材42は、不図示のリニアアクチュエータ(例えばリニアモータ、送りねじ装置など)によりX走行ガイド41上でX軸方向に所定のストロークで駆動される。トレイ保持部材42の−Y側の面部には、Y軸方向に所定間隔で基板トレイ60のテーパ部材65に対応する凹部42aが複数(本実施形態では、例えば5つ)形成されている。また、トレイ保持部材42は、−Y側の面部に基板トレイ60の連結部材62を吸着保持する不図示の吸着パッドを有している。トレイ保持部材42は、上記複数の凹部42a内に対応するテーパ部材65が挿入された状態で、連結部材62を、例えば真空吸着により保持する。
【0041】
トレイ保持部材42には、不図示の気体吸引装置が不図示の配管部材を介して接続されており、テーパ部材65が凹部42a内に挿入された状態で、上述した中央のテーパ部材65を介して複数の支持部材61内部の気体を吸引することができるようになっている。前述のように、支持部材61の上面には、不図示の微少の孔部(貫通孔)が複数形成されているので、支持部材61の内部の気体を吸引させることにより、基板トレイ60に基板Pを吸着保持させることができる。
【0042】
トレイガイド43は、複数(本実施形態では、例えば4つ)のエアベアリング45を有している。複数のエアベアリング45は、それぞれX軸方向に延びる部材から成り、Y軸方向に所定の間隔(基板トレイ60の隣接する支持部材61間の間隔に対応する間隔)で互いに平行に配置されている。複数のエアベアリング45は、互いのZ位置が同じとなるように、架台46上に搭載されている(図1参照)。
【0043】
上述のようにして構成された液晶露光装置10(図1参照)では、不図示の主制御装置の管理の下、不図示のマスクローダによって、マスクステージMST上へのマスクMのロード、及び基板搬入装置50によって、基板ホルダ30上への基板Pの搬入(ロード)が行なわれる。その後、主制御装置により、不図示のアライメント検出系を用いてアライメント計測が実行され、アライメント計測の終了後、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行なわれる。この露光動作は従来から行われているステップ・アンド・スキャン方式の露光動作と同様であるので、その詳細な説明は省略するものとする。そして、露光済みの基板Pは、基板搬出装置40により基板ホルダ30上から搬出(アンロード)され、その基板ホルダ30上には、新たな基板Pが基板搬入装置50により搬入(ロード)される。液晶露光装置10では、上記基板Pのロード、及びアンロードが繰り返して行われることにより、複数枚の基板Pに連続して露光処理が行われる。
【0044】
以下、基板搬出装置40を用いた露光済みの基板Pの搬出動作について説明する。露光動作が完了すると、基板ホルダ30が図4(A)に示される基板交換位置に位置するように基板ステージ装置PSTが制御される。
【0045】
基板ホルダ30が基板交換位置に位置すると、基板ホルダ30による基板Pの吸着保持が解除された後、図5(B)に示されるように、複数のトレイガイド33が上昇駆動される。これにより、基板トレイ60が上昇し、基板Pを下方から支持する。また、基板Pの下面は、基板ホルダ30の基板載置面から離間する。この際、複数のトレイガイド33の上面のZ位置と、基板搬出装置40が有する複数のエアベアリング45(図5(B)では不図示。図5(A)参照)のZ位置とが、ほぼ同じとなるようにエアベアリング45のZ位置が予め設定されている(あるいは基板ホルダ30のZ位置が制御される)。
【0046】
次いで、図5(A)に示されるように、基板搬出装置40のトレイ保持部材42が−X方向に駆動され(図5(A)の黒塗り矢印参照)、基板トレイ60を吸着保持する。また、基板トレイ60は、トレイ保持部材42から供給される真空吸引力により、基板Pを吸着保持する。
【0047】
この後、図6(A)に示されるように、トレイ保持部材42が+X方向に駆動され(図6(A)の黒塗り矢印参照)、これにより、基板トレイ60が基板ホルダ30に対して+X方向に移動する(支持部材61が溝部31から引き抜かれる)。この際、基板ホルダ30の基板載置面からは、図6(B)に示されるように、加圧気体が基板Pの下面に対して噴出される。基板Pは、上記基板ホルダ30から噴出される加圧気体の静圧により、基板ホルダ30上に微少なクリアランスを介して浮上する。すなわち、基板ホルダ30がエアベアリングとして機能する。
【0048】
ここで、基板トレイ60が基板Pを吸着保持していることから、基板Pが上記加圧気体の静圧により基板ホルダ30上で浮上すると、基板トレイ60がトレイガイド33から浮上する。また、基板搬出装置40が有する複数のエアベアリング45(図6(A)参照)からは、支持部材61(ただし中央の支持部材61を除く)の下面に対して加圧気体が噴出される。したがって、基板トレイ60を基板ホルダ30に対して移動させる際の摩擦を実質的に無視することができ、高速かつ低発塵で基板Pの搬出動作を行うことができる。
【0049】
基板トレイ60の搬出後、図7に示されるように、基板トレイ60は、基板搬出装置40のトレイガイド43に下方から支持され、この状態で露光済みの基板Pが液晶露光装置10(図1参照)内から外部装置(例えばコータデベロッパ装置)に搬出される。この後、基板トレイ60には、別の基板(不図示)が載置され、該別の基板が基板トレイ60とともに基板搬入装置50(図1参照)により基板ホルダ30に向けて搬送される。
【0050】
以上説明したように、本実施形態の液晶露光装置10によると、基板トレイ60と基板Pとが真空吸着されている状態で、加圧気体が基板ホルダ30から基板Pの下面に向けて噴出されるので、基板Pと基板トレイ60とを浮上させた状態で基板ホルダ30から搬出することができる。従って、発塵、及び基板Pの下面の摩耗、損傷を防止できる。また、基板搬出装置40は、基板トレイ60を弱い力で基板ホルダ30から搬出することができ効率が良い。
【0051】
また、基板ホルダ30から噴出される気体は、基板P、隣接する一対の支持部材61、及び隣接する一対の補剛部材63により形成される下側に開口した箱状の空間内に噴出される。したがって、基板Pに対して効率良く(気体の漏れが少なく)浮上力(+Z方向の力)を作用させることができる。
【0052】
また、基板Pが基板トレイ60に吸着保持されるので、基板Pの搬出時に基板Pの位置が基板トレイ60上でずれることを防止できる。
【0053】
なお、本実施形態の構成は、一例であって、適宜変更することが可能である。例えば、基板トレイ60において、支持部材61、及び補剛部材63の数は、特に限定されず、適宜変更可能である。また、例えば支持部材61のみで十分な剛性を確保できれば、基板トレイ60は、補剛部材63を有さなくても良い(すなわち、複数の棒状の部材のみにより基板Pを下方から支持しても良い)。また、支持部材61の長手方向に直交する断面形状は、基板Pと接する上面が水平面に平行(基板Pに平行)であれば、矩形に限られず、例えば多角形状(例えば三角形、五角形)などであっても良いし、複数のパッドを支持部材の上面に配置することで、支持部材の断面形状を円形、菱形などにしても良い。その他、基板トレイ60の変形例については、例えば米国特許出願公開第2010/0018950号明細書に開示されている。また、基板トレイ60は基板Pを真空吸着により吸着保持したが、基板Pを吸着保持できれば、これに限られず、例えば静電吸着などにより吸着保持しても良い。
【0054】
また、基板搬出装置40は、基板ホルダ30から基板トレイ60(基板P)を搬出する際に、エアベアリング45を用いて基板トレイ60を浮上させた(非接触状態とした)が、これに限られず、接触状態で搬出することとしても良く、例えばトレイガイド43にボール、ころなどの転動体部材を配置しても良い。その他、基板搬出装置40の変形例については、例えば米国特許出願公開第2010/0018950号明細書に開示されている。
【0055】
また、基板搬出装置40は、基板ステージ装置PSTの外部に配置されたが、基板Pを基板ホルダ30上から搬出する装置は、基板ステージ装置PSTが有していても良い(例えば、基板ステージ装置PST側から基板トレイ60を押し出す装置)。
【0056】
また、照明光は、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。また、照明光としては、例えばDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、固体レーザ(波長:355nm、266nm)などを使用しても良い。
【0057】
また、上記実施形態においては、光透過型マスクが用いられたが、これに限られず、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているような電子マスクを用いても良い。
【0058】
また、投影光学系PLが複数本の光学系を備えたマルチレンズ方式の投影光学系である場合について説明したが、投影光学系の本数はこれに限らず、1本以上あれば良い。また、マルチレンズ方式の投影光学系に限らず、オフナー型の大型ミラーを用いた投影光学系などであっても良い。また、投影光学系PLとしては、拡大系、又は縮小系であっても良い。
【0059】
また、基板ステージ装置PSTが粗微動構成のXY2軸ステージ装置である場合について説明したが、これに限られず、微動ステージを有さなくても良い。また、基板ステージ装置PSTとしては、一軸ステージ装置であっても良いし、固定型のステージ装置であっても良い。
【0060】
また、露光装置の用途としては角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置に限定されることなく、例えば半導体製造用の露光装置、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるマスク又はレチクルを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも適用できる。
【0061】
また、露光対象となる物体はガラスプレートに限られず、例えばウエハ、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。また、露光対象物がフラットパネルディスプレイ用の基板である場合、その基板の厚さは特に限定されず、例えばフィルム状(可撓性を有するシート状の部材)のものも含まれる。なお、本実施形態の露光装置は、一辺の長さ、又は対角長が500mm以上の基板が露光対象物である場合に特に有効である。
【0062】
液晶表示素子(あるいは半導体素子)などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたマスク(あるいはレチクル)を製作するステップ、ガラス基板(あるいはウエハ)を製作するステップ、上述した各実施形態の露光装置、及びその露光方法によりマスク(レチクル)のパターンをガラス基板に転写するリソグラフィステップ、露光されたガラス基板を現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ガラス基板上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上説明したように、本発明の物体搬出システム及び物体の搬出方法は、物体を物体保持装置から搬出するのに適している。また、本発明の露光装置は、物体に所定のパターンを形成するのに適している。また、本発明のフラットパネルディスプレイの製造方法は、フラットパネルディスプレイの生産に適している。また、本発明のデバイス製造方法は、マイクロデバイスの生産に適している。
【符号の説明】
【0064】
10…液晶露光装置、30…基板ホルダ、31…溝部、40…基板搬出装置、41…X走行ガイド、42…トレイ保持部材、45…エアベアリング、60…基板トレイ、61…支持部材、62…連結部材、63…補剛部材、P…基板、PST…基板ステージ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を下方から支持し、該物体を吸着保持可能な物体支持部材と、
前記物体が載置される物体載置面と、前記物体が前記物体載置面上に載置された状態で前記物体支持部材を保持する保持部とを有し、前記物体載置面上に載置された前記物体に対して気体を噴出可能な物体保持装置と、
前記物体支持部材に吸着保持された前記物体に対して前記気体が噴出された状態で、前記物体保持装置に対して前記物体支持部材を前記物体載置面に平行な所定の搬出方向に沿って相対移動させることにより、前記物体を前記物体保持装置から搬出する物体搬出装置と、を備える物体搬出システム。
【請求項2】
前記物体支持部材は、前記搬出方向に平行な方向に延びる第1棒状部材と第2棒状部材とを有する請求項1に記載の物体搬出システム。
【請求項3】
前記物体支持部材は、前記第1棒状部材と前記第2棒状部材との間に架設された架設部材を更に有する請求項2に記載の物体搬出システム。
【請求項4】
前記架設部材は、前記搬出方向に直交する方向に所定間隔で複数設けられる請求項3に記載の物体搬出システム。
【請求項5】
前記物体支持部材は、前記物体を真空吸着保持する請求項1〜4のいずれか一項に記載の物体搬出システム。
【請求項6】
前記物体搬出装置は、前記物体支持部材に対して接続、及び離間可能に設けられ、
前記物体支持部材が前記物体を吸着保持するための吸引力は、前記物体搬出装置と前記物体支持部材とが接続された状態で前記物体搬出装置から前記物体支持部材に供給される請求項5に記載の物体搬出システム。
【請求項7】
前記保持部は、前記物体載置面に形成された溝部である請求項1〜6のいずれか一項に記載の物体搬出システム。
【請求項8】
前記物体保持装置は、前記保持部に保持する前記物体支持部材を前記物体載置面に交差する方向に駆動する駆動装置を更に有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の物体搬出システム。
【請求項9】
前記物体保持装置は、前記物体が前記物体載置面上に載置され、且つ前記保持部に前記物体支持部材を保持した状態で水平面に沿って移動可能である請求項1〜8のいずれか一項に記載の物体搬出システム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の物体搬出システムと、
前記物体保持装置に保持された前記物体にエネルギビームを用いて所定のパターンを形成するパターン形成装置と、を備える露光装置。
【請求項11】
前記物体は、フラットパネルディスプレイ装置に用いられる基板である請求項10に記載の露光装置。
【請求項12】
前記基板は、少なくとも一辺の長さ又は対角長が500mm以上である請求項11に記載の露光装置。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の露光装置を用いて前記物体を露光することと、
露光された前記物体を現像することと、を含むフラットパネルディスプレイの製造方法。
【請求項14】
請求項10に記載の露光装置を用いて前記物体を露光することと、
露光された前記物体を現像することと、を含むデバイス製造方法。
【請求項15】
所定の物体保持装置の物体載置面上に載置された物体を該物体保持装置から搬出する物体の搬出方法であって、
前記物体保持装置に予め保持された物体支持部材に前記物体を下方から支持させることと、
前記物体支持部材に前記物体を吸着保持させることと、
前記物体保持装置から前記物体に対して気体を噴出させることと、
前記物体が前記物体支持部材に吸着保持され、且つ前記物体に対して前記気体が噴出された状態で、前記物体保持装置に対して前記物体支持部材を前記物体載置面に平行な所定の搬出方向に沿って相対移動させることにより、前記物体を前記物体保持装置から搬出することと、を含む物体の搬出方法。
【請求項16】
前記吸着させることでは、前記物体を真空吸着保持させる請求項15に記載の物体の搬出方法。
【請求項17】
前記吸着させることでは、前記物体保持装置とは異なる所定の前記物体搬出装置と前記物体支持部材とを接続することと、前記物体搬出装置から前記物体を吸着保持するための吸引力を前記物体支持部材に供給することと、を含む請求項16に記載の物体の搬出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−50504(P2013−50504A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186994(P2011−186994)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】