説明

物品選別装置

【課題】CPU負荷を軽減して物品選別装置のコスト低減と小型化を図るとともに、ネットワーク上の資源を有効活用可能で信頼性に優れトレーサビリティ情報の管理要求等にも柔軟に応え得るシステムを構築可能な物品選別装置を提供する。
【解決手段】物品Wが搬送される搬送路5上に検出領域11を有し、その領域を通過する物品の品質状態を表す検出信号を出力する検出手段10と、その検出信号に基づいて物品に対応する第1の識別情報とその物品の検出信号とを含む個別検出情報を生成して外部のデータ処理装置50に出力する個別検出情報出力手段22及び23と、データ処理装置50によって演算処理された個別検出情報の処理結果を第2の識別情報と共に入力する結果入力手段24と、第1の識別信号と第2の識別信号との対応を判断して判断結果を出力する判断手段21aと、前記判断結果及び処理結果を受けて選別制御信号を生成する選別制御手段21bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品が搬送される搬送路上に検出領域を有する物品選別装置、例えばその検出領域を通過する物品によるX線の吸収量や検出磁界への影響等に対応する検出信号を基に所定の合否判定処理を実行する物品選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、物品に対する異物検出、秤量又は特性検査等を行なった結果に基づき、その物品を搬送方向下流側の複数の分配経路のうちいずれかの経路に選別分配する物品選別装置がある。例えば、食品等を生産する生産ラインにおいて、複数の物品に対して異物の混入の有無を検査して、不良品を搬送路外に排出するようにしたものが知られている。また、物品検査の手法として金属検出やX線検査を採用したものが多用されており、あるいは更に物品のX線吸収特性を利用して質量計測等を行なうもののように、検出信号を基に所定の演算処理を実行して物品の合否判定を行ない、その結果に応じて下流側での選別・排出を実行するものがある。
【0003】
従来のこの種の物品選別装置としては、例えば特許文献1(特開2002−098653号公報)に記載のように、X線を用いて異物混入チェック、欠品や入り数のチェック等の状態判定を行なうために、各判断方式によるX線の検出レベルに基づく検出値を予め定めた閾値と比較して物品不良の有無を判定するようにしたものがある。このX線検査装置では、その演算CPUによってX線画像作成処理、物品不良判断処理及び表示制御処理等を実行するようになっている。
【0004】
また、特許文献2(特開平8−278256号公報)に記載のように、1次元ラインセンサカメラからの入力信号をシェーディング補正部及び2値化部を有する画像処理装置に取り込み、そこで得られた2値ラインデータ列をランレングスデータに圧縮してホストコンピュータに転送し、そこで2次元画像データを作成するようにした傷・欠陥検出用のものもある。
【特許文献1】特開2002−098653号公報
【特許文献2】特開平8−278256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のような従来の物品選別装置にあっては、内部の演算CPUによってX線画像作成処理や物品不良判断処理等といった高負荷のデータ処理を実行する必要があり、その演算CPUが高負荷となるため、高性能の演算CPUが要求され、コスト高や装置の大型化を招いていた。また、画像処理や信号処理は機器の処理速度の高速化と相俟って進化が激しく、CPU処理速度もいわゆるムーアの法則で知られるごとく常に高速化されているため、高性能の演算CPUや演算プログラムでも短期間で陳腐化してしまうという問題があった。
【0006】
一方、特許文献2に記載のような従来の物品選別装置にあっては、1次元ラインセンサカメラからの入力信号をランレングスデータにしてキューバッファを介してホストコンピュータに転送し、ホストコンピュータ側で転送データを先出し先読みしながら2次元画像データを作成するようにしていた。そのため、画像処理装置に外部インターフェースを用いて接続されるホストコンピュータは、専ら専用の演算CPUとして機能するものであり、これに安価なパーソナルコンピュータを使用できるというものに過ぎなかった。すなわち、従来の物品選別装置は、データ転送上のトラブルやホスト側のトラブル等に対して寛容性のないものであった。また、データ転送が正常になされない場合に、全体の制御が進行できなくなってしまい、選別制御を確定することができないためにライン上に不良の可能性の或る製品が残存することとなって、信頼性を低下させる原因となっていた。
【0007】
さらに、上記のいずれの物品選別装置にあっても、複数の検査ラインの検出情報を迅速・的確に把握し、近時の食品等に対するトレーサビリティ情報の管理要求に柔軟に応え得るシステムを構築するといったことが困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、高処理能力の演算CPUを不要にして物品選別装置のコスト低減と小型化・長寿命化を図る一方、ネットワーク上の他のハードウェア資源を有効活用することのできる通信機能を持たせるとともに、検出信号と処理結果が対応しているか否かの判断を行なうことにより、信頼性に優れた、トレーサビリティ情報の管理要求等にも柔軟に応え得るシステムを構築可能な物品選別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的達成のため、本発明の物品選別装置は、(1)物品が搬送される搬送路上に検出領域を有し、該検出領域を通過する物品の品質状態を表す検出信号を出力する検出手段と、前記検出手段の検出信号に基づいて、前記物品に対応する第1の識別情報とその物品の前記検出信号とを含む個別検出情報を生成して外部のデータ処理装置に出力する個別検出情報出力手段と、前記外部のデータ処理装置によって演算処理された前記個別検出情報の処理結果を該処理結果に対応する第2の識別情報と共に入力する結果入力手段と、前記第1の識別信号と前記第2の識別信号との対応を判断してその判断結果を出力する判断手段と、前記判断結果と前記処理結果とを受けて選別制御信号を生成する選別制御手段と、を備えたものである。
【0010】
この構成により、物品の検出信号と第1の識別情報を含む個別検出情報が生成され、個別検出情報出力手段から外部のデータ処理装置に出力される一方、外部のデータ処理装置で個別検出情報に基づき実行された演算処理の結果が第2の識別情報と共に結果入力手段に入力され、その処理結果と第2の識別情報とに基づいて選別制御信号が出力される。したがって、物品選別装置に高負荷処理を行なう演算CPUが要求されなくなり、小型・長寿命で低コストの物品選別装置となる。また、第1の識別情報と第2の識別情報の対応の有無が判断手段により判断され、検出手段の検出信号と外部のデータ処理装置からの処理結果との対応付けがなされるので、データ転送が多少前後したり着信順序が乱れたりしても処理結果データの再構築が確実に実行でき、確実なデータ通信が可能となって、信頼性に優れた物品選別装置となる。なお、外部のデータ処理装置で実行される演算処理は、例えば物品選別装置内で実行される処理(識別情報及び検出データの生成処理並びに通信処理等)より高負荷となるような演算処理(例えばワークごとの合否判定処理、画像処理、測定値の算出処理、統計処理等)、あるいは物品選別装置内では処理できない処理を意味する。また、ここにいう個別検出情報は、検出信号に新たに所定の第1の識別情報を付加したものでもよいし、検出信号の一部を所定の規則で第1の識別信号としてもよい。また、前記第2の識別情報は前記第1の識別情報との対応付けが可能な識別情報として外部のデータ処理装置で所定の規則に従って生成されるが、第1の識別情報と第2の識別情報とが同一の識別情報であってもよい。
【0011】
本発明においては、(2)所定のローカルエリアネットワーク上でノードを形成可能な通信インターフェース回路部を有し、前記個別検出情報出力手段から該ローカルエリアネットワーク上の他のノードである前記外部のデータ処理装置に前記個別検出情報を送信出力するとともに、該外部のデータ処理装置から前記結果入力手段に前記処理結果を入力するのが好ましい。この構成により、ネットワーク接続された外部のデータ処理装置を利用し、個別検出情報の単位で選別制御のための演算処理を実行させることができる。
【0012】
また、本発明においては、望ましくは、(3)前記個別検出情報出力手段から前記個別検出情報が出力された場合であって、該出力時点から所定時間内に前記演算処理の処理結果が前記結果入力手段に入力されないとき、前記処理結果の受信入力に失敗したことを報知する受信エラー報知手段を設けたものである。これにより、個別検出情報が出力された後の所定時間内に演算処理の処理結果が前記結果入力手段に入力されないときには、処理結果の受信入力に失敗したことが報知されるから、選別制御を確定することが可能となる。
【0013】
この場合、さらに、(4)前記受信エラー報知手段によって前記処理結果受信エラーが報知されたとき、前記選別制御手段が、前記処理結果受信エラーの報知情報に基づいて、前記物品を前記搬送路の外部に選別排出させる選別制御信号を生成するのが好ましい。これにより、選別不良が物品の搬送路上に残るような事態を確実に防止することができる。
【0014】
本発明においては、(5)前記個別検出情報出力手段から前記個別検出情報が出力された場合であって、該出力時点から該出力に関わる物品が前記搬送路上の所定の選別位置に到達するまでの間に前記演算処理の処理結果が前記結果入力手段に入力されないとき、前記処理結果の受信入力に失敗したことを報知する受信エラー報知手段を設けることもできる。この構成により、個別検出情報が出力された後、その物品が選別位置に到達するまでの間に、演算処理の処理結果が前記結果入力手段に入力されないときには、処理結果の受信入力に失敗したことが報知されるから、選別制御を確定することが可能となる。
【0015】
あるいは、本発明においては、(6)前記物品が前記搬送路上で前記検出手段の検出領域より上流側の所定位置に達したことを検知する物品検知手段を備え、前記物品が該物品検知手段に検知されてから、前記物品が前記搬送路上の所定の選別位置に到達するまでの間に前記演算処理の処理結果が前記結果入力手段に入力されないとき、前記処理結果の受信入力に失敗したことを報知する受信エラー報知手段を設けてもよい。この構成により、物品が物品検知手段に検知された後、その物品が選別位置に到達するまでの間に、演算処理の処理結果が前記結果入力手段に入力されないときには、処理結果の受信入力に失敗したことが報知されるから、選別制御を確定することが可能となる。また、処理結果を受信するための待機期間を明確にかつ容易に設定可能となる。
【0016】
また、(7)前記個別検出情報出力手段は、前記個別検出情報を前記外部のデータ処理装置に送信出力することが必要な場合には、該外部のデータ処理装置に対して応答要求信号を送出し、該応答要求信号に対応する応答信号を受信したときにのみ、前記個別検出情報を前記外部のデータ処理装置に送信出力するのがよい。これにより、通信路が確立されていることを確認した上で、データ通信を開始することができる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、物品の検出信号と第1の識別情報を含む個別検出情報を生成して個別検出情報出力手段から外部のデータ処理装置に出力する一方、その個別検出情報に対応して外部のデータ処理装置で実行される演算処理の結果を第2の識別情報と共に結果入力手段に入力させ、その処理結果と、第1及び第2の識別情報の対応を判断した判断結果とに基づいて物品を搬送路の外部に選別排出するか否かの選別制御を実行するようにしているので、高処理能力の演算CPUを不要にして物品選別装置のコスト低減と小型・長寿命化を図ることができるとともに、データ転送順序が乱れたりしても検出手段の検出信号とその演算処理結果とを確実に対応付けることができ、信頼性に優れた、トレーサビリティ情報の管理要求等にも柔軟に応え得るシステムを構築可能な物品選別装置を提供することができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、ネットワーク接続された外部のデータ処理装置を利用して、物品の選別制御のための演算処理を実行することができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、個別検出情報が出力された後の所定時間内に演算処理の処理結果が前記結果入力手段に入力されないときには、処理結果の受信入力に失敗したことを報知するので、選別制御を確定することができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、前記受信エラー報知手段によって前記処理結果受信エラーが報知されたときには搬送路外への排出指令となる選別制御信号を生成するので、選別不良が物品の搬送路上に残るような事態を確実に防止することができる。
【0021】
請求項5の発明によれば、個別検出情報が出力された後、その物品が選別位置に到達するまでの間に演算処理の処理結果が前記結果入力手段に入力されないときには処理結果の受信入力に失敗したことが報知されるので、選別制御を確定することができる。
【0022】
請求項6の発明によれば、物品が物品検知手段に検知された後、その物品が選別位置に到達するまでの間に演算処理の処理結果が前記結果入力手段に入力されないときには、処理結果の受信入力に失敗したことが報知されるから、選別制御を確定することができ、しかも、処理結果を受信するための待機期間を明確にかつ容易に設定することができる。
【0023】
請求項7の発明によれば、通信路が確立されていることを確認した上で、確実なデータ通信を開始することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
[第1の実施の形態]
図1及び図2は本発明に係る物品選別装置の第1の実施の形態を示す図であり、本発明をX線異物検出方式の装置に適用した例を示している。
【0026】
まず、その構成を説明する。
【0027】
図1に概略のブロック構成図で示すように、本実施形態の物品選別装置1は、物品であるワークWを搬送するコンベア搬送路5上に検出領域11を有し、この検出領域11を通過するワークWの品質状態を表す検出信号を出力する検出手段10と、この検出手段10の検出動作を制御する制御手段20と、検出領域11より下流側のコンベア搬送路5上の所定位置(以下、選別位置という)に達したワークWを選択的にコンベア搬送路5上から外部に排出させることができる公知の選別機40と、を具備している。
【0028】
コンベア搬送路5は、例えばベルトコンべアからなる。このコンベア搬送路5は、例えば食品や医薬品等のような個体(定形のものでも柔軟な不定形のものでもよい)のワークWをその品種に対応する所定の一定搬送速度で搬送するとともに、その搬送途中でワークWを検出領域11に通すようになっている。
【0029】
検出手段10は、例えばコンベア搬送路5を上下に挟む筐体(詳細は図示していない)によってその内部に検出領域11を形成しており、この検出領域11を通過するワークWにX線を照射するX線源12と、検出領域11を挟んでX線源12とは反対側に位置するX線検出部14とを有している。
【0030】
X線源12は、例えば陰極フィラメントからの熱電子をその陰極と陽極の間の高電圧により陽極ターゲットに衝突させてX線を発生させるX線管を有しており、発生したX線を下方のX線検出部14に向けて不図示のスリットによりコンベア搬送路5の幅員方向(搬送方向と直交する方向)に広がる扇形のビームに整形して照射するようになっている。すなわち、X線源12は、X線検出部14と共に、いわゆるX線ファンビーム光学系を構成している。
【0031】
X線検出部14は、検出領域11内でコンベア搬送路5の幅員方向に隣り合う複数の透過領域のそれぞれについて、ワークWを透過したX線を検出し各透過領域における所定時間毎の累積透過量のデータを検出信号として出力するようになっている。このX線検出部14は、詳細を図示しないが、例えばX線ラインセンサで構成されている。このX線ラインセンサは、蛍光体であるシンチレータとフォトダイオード若しくは電荷結合素子とからなる検出素子をコンベア搬送路5の幅員方向にアレイ状に所定ピッチで配設した公知のもので、所定解像度でのX線検出を行なうことができる。
【0032】
コンベア搬送路5、検出手段10及び選別機40は、それぞれ所定のタイミングで動作するよう制御手段20の検査・選別制御部21によって制御される。この検査・選別制御部21は、コンベア搬送路5による搬送制御及び検出手段10の動作制御を司る制御機能に加えて、X線検出部14からの検出信号を一時的に保持するデータ記憶部としての機能を有している。さらに、検査・選別制御部21は、後述する外部での処理結果情報を用いた検査結果判断をなすための判断部21a(判断手段)と、その結果に対応する選別制御信号を生成する選別制御部21b(選別制御手段)とに相当する、制御プログラム及びメモリ等を含んでいる。
【0033】
具体的には、検査・選別制御部21は、例えばCPU、ROM、RAM及びI/Oインターフェースを有するマイクロコンピュータを含んで構成されており、ROMに格納された所定のプログラムに従ってX線ラインセンサの複数の検出素子からのX線検出信号をそれぞれA/D変換するとともに、それら検出素子の配設ピッチに対応する所定の単位搬送時間毎に、搬送路幅員方向の全n(nは正の整数、例えば640)個の透過領域について、その単位時間内の累積の透過X線量(以下、単に透過量という)のデータを、例えば0から1023までの階調を表す透過量レベルの検出信号としてデータ書き込みする動作(以下、ライン走査という)を実行することができ、そのためのA/D変換器やメモリ等(いずれも図示していない)を有している。
【0034】
制御手段20は、また、検査・選別制御部21の他に、第1のID生成部22、送信処理部23、受信処理部24、検査情報蓄積部25、通信ポート部26、エラー報知部27、検出駆動部28及び選別駆動部29を備えており、さらに、制御手段20には、各種設定パラメータや品種の切替え操作等を行なう設定操作部31と、検出領域11内へのワークWの進入を検知するワーク検知センサ33(物品検知手段)とが、それぞれ付設されている。
【0035】
第1のID生成部22は、ワーク検知センサ33によるワーク検知ごとに、検知されたワークW(ライン走査される1ライン分がここにいうワークWの最小単位であるが、ここでは例えばワーク1個とする)の識別情報である第1のID情報(第1の識別情報)として、例えばそのワークWの先頭の検知時点の時刻情報を少なくとも含む(その先頭からのライン走査回数に対応する識別番号、検出手段10の識別番号、品種等の情報を含み得る)識別情報を生成するか、あるいは外部から通信入力される複数のワークWの識別コード情報と検知済みのワーク数及びスキャン回数とから特定される、その検知されたワークWの識別情報等を生成するようになっており、そのためのタイマやプログラム、メモリ領域等を含んでいる。第1のID生成部22で生成された第1のID情報は、検査・選別制御部21の判断部21aに取り込まれる。
【0036】
送信処理部23は、検査・選別制御部21の判断部21aと協働し、第1のID生成部22からの第1のID情報と検出手段10からの検出信号に基づいて、個々のワークWの識別情報とそのワークWの検出信号とを含む個別検出情報を生成し、通信ポート部26を介してコンピュータ等からなる外部のデータ処理装置50に出力するようになっている。すなわち、検査・選別制御部21の判断部21a、第1のID生成部22及び送信処理部23によって、個別検出情報出力手段が構成されている。ここで、通信ポート部26は、IP(Internet Protocol)ネットワークを構成する所定のローカルエリアネットワーク(構内通信網;以下、LANという)上でIPアドレスに対応する特定のノードを形成可能な通信インターフェース回路部となっており、前記個別検出情報出力手段からそのLAN上の他のノードである外部のデータ処理装置50に前記個別検出情報を送信出力することができる。
【0037】
また、受信処理部24は、前記個別検出情報に対応してワークWの識別情報ごとに外部のデータ処理装置50により実行される演算処理の処理結果を、前記第1の識別信号とデータ処理装置50から処理結果に付されて送られる後述する第2の識別信号との対応の有無とを判断した上で、その処理の単位のワークWの識別情報と共に通信ポート部26を介して入力する結果入力手段となっている。なお、後述するが、ここにいう演算処理とは、物品選別装置1内で実行される第1のID情報及び検出データの生成処理や通信処理等に対して、これらの処理よりも高負荷となるような演算処理、例えばワークごとの合否判定処理、画像処理、測定値の算出処理、統計処理等であり、あるいは物品選別装置1内のCPUでは処理できない処理である。
【0038】
また、検査・選別制御部21の判断部21aは、この受信処理部24で入力した前記演算処理の処理結果とワークWの識別情報とを基に外部のデータ処理装置50からの演算処理結果に応じた判断結果を選別制御部21bに出力し、選別制御部21bは、その判断結果を受けてワークWをコンベア搬送路5の外部に選別排出するか否かを指令する選別制御信号を生成する。
【0039】
外部のデータ処理装置50は、具体的なハードウェア構成を図示していないが、例えばCPU、ROM、RAM及びI/Oインターフェースを有し、所定の画像処理及び判定処理を実行するための制御プログラム(例えばX線画像生成、体積・質量算出、表示データ生成等の処理プログラム)を読み出し可能に記憶した補助記憶装置と、タイマー回路等とを含んで構成されており、ROM等に格納された制御プログラムに従って、CPUがRAM等との間でデータを授受しながら所定の演算処理を実行するとともに前記制御プログラムを実行するようになっている。
【0040】
このデータ処理装置50は制御手段20の通信ポート部26に有線通信(例えばイーサネット(登録商標)接続や電力線搬送通信(PLC))若しくは無線通信(例えば無線LAN)での通信接続が可能なデータ処理部51と、このデータ処理部51で受信された第1のID情報に基づきこれに1対1で対応付けられる第2のID情報(第2の識別情報)を生成する第2のID生成部52とを有している。また、データ処理装置50は、例えば前記LAN上での特定のIPアドレスに対応する特定のノードを形成する通信インターフェース回路部(詳細は図示していない)を有している。すなわち、データ処理装置50はIPアドレスにより特定でき、例えばTCP(Transmission Control Protocol)/IP通信することができる機器となっている。第2のID生成部52で生成される第2のID情報は、第1のID情報との対応付けが可能な識別情報として第2のID生成部52に予め記憶された所定の規則(例えば、第1のID情報に1を加算して第2のID情報とする規則とすると、第1のID情報の下4桁が2進数の0001のとき、第2のID情報の下4桁は0010となる。また、加算ではなく減算する規則や、一般的な文字列を操作する規則を用いてもよい。)に従って生成されるものである。また、第2のID生成部52で生成される第1のID情報と第2のID情報とが同一の識別情報であってもよい。前記個別検出情報は、検出手段10の検出信号に新たに所定の第1のID情報を付加したものでもよいし、その検出信号の一部を所定の規則で第1の識別情報としてもよい。
【0041】
また、データ処理装置50のデータ処理部51は、X線検出部14で検出され、制御手段20から送信されてきた個別検出情報を基に、所定のX線画像データの生成や異物有無判定、物理量算出処理をそれぞれ実行することができる。なお、ここで「物理量」とは、質量や体積、面積、厚さ、長さ、幅等といった大きさや質量(重量)に関わる物理量であるが、本実施形態における物理量の算出処理は一例としての質量の算出処理である。
【0042】
データ処理装置50のデータ処理部51は、具体的には、まず領域抽出処理部として機能し、X線検出部14からの検出信号のうち一部を抽出し、少なくともワークWのX線画像の背景に相当する部分を除いた測定領域のX線画像を領域抽出する手段となっており、そのためのプログラム及び作業メモリ(図示していない)を有している。また、データ処理部51は、物品選別装置1からの濃度データのうち所定濃度レベル範囲となる一部の濃度データのみを抽出し、X線画像の背景に相当する部分を除いた測定領域の濃度データを取り出すようになっており、少なくとも前記X線画像の濃度データを所定の閾値でノイズカット処理し、ワークWにX線が照射されるときの背景、本実施形態においてはワークWが載置される搬送ベルトの質量測定値がゼロとなるようにするプログラム及び作業メモリ領域を有している。さらに、データ処理部51は、領域抽出された濃度データを所定時間毎に取り込み、各ワークWの全域分の透過量データに対応するX線画像であって、ワークWが無くX線の透過量の値が最大でワークWによるX線吸収量がゼロとなる部位で最小濃度値となり、X線の透過量の値が最小でワークWによるX線吸収量が最大となる部位で最大濃度となるディジタルX線画像を各ワークWごとに生成する画像生成手段となっている。ワークWについての混入異物の有無の判定は、例えばこのX線画像のライン走査ごとのピーク濃度値を所定の判定閾値の濃度レベルと比較することで実行可能である。
【0043】
また、データ処理部51は、濃度データ変換、体積測定及び質量換算の各処理機能を有しており、その濃度データ変換機能によって、X線画像における背景の濃度値と、X線画像における前景(質量測定領域に対応する画像)の代表濃度と、等価厚画像の最大濃度とをそれぞれ内部の設定値メモリ(図示していない)に記憶させ、その設定値に基づいてワークWの各透過領域におけるX線画像の濃度データPから等価厚画像の濃度データQ(P)への変換処理を実行するようになっている。なお、等価厚画像とは、X線の透過量データから生成される濃度データによってワークWの厚さを等価的に示すようにした画像である。X線検出部14の受光量IをI=Iexp(−α・t)と考えると、α・tは、X線が発生源から出てX線測定部により検出されるまでに透過した物質によるX線吸収量を直接的に示す等価厚の値であり、例えばこれを画像の濃度値に対応付けることで、X線吸収率の高い物質あるいはX線透過方向の厚さの厚い部位ほど濃度値の大きな等価厚画像を作成することができる。そして、データ処理部51は、体積測定処理プログラムを有し、領域抽出処理部から質量測定領域のX線画像の濃度データを取り込むことで質量測定の対象領域についてのみ体積演算を実行するようになっており、ワークWの搬送方向の先端から後端までの毎回のライン走査で得られる等価厚画像の濃度データQ(P)(スライスデータ)のうち有効なデータを合算することにより各ワークWの体積Vを算出するようになっている。
【0044】
データ処理部51は、さらに、図示しない品種パラメータファイルから読み込まれるワークWの質量換算係数等を記憶する係数保持メモリ領域と、体積測定された透過領域毎の体積測定値を予め設定された所定の換算比で質量単位の換算値に換算する換算処理プログラムとを有しており、上述のように体積測定された各ワークWの体積測定値Vを質量値に換算することができる。
【0045】
一方、物品選別装置1の検査・選別制御部21は、送信処理部23から前記個別検出情報が出力された場合であって、その出力時点から所定の選別遅延時間Td内に前記演算処理の処理結果が受信処理部24に入力されないとき、前記処理結果の受信入力に失敗したことを示す処理結果受信エラーの報知情報を生成するようになっており、この報知情報を基にエラー報知部27により少なくともランプ表示若しくは警告音等によってその受信エラーの状態を報知するようになっている。すなわち、前記検査・選別制御部21及びエラー報知部27は、受信エラー報知手段を構成している。
【0046】
また、本実施形態においては、エラー報知部27によって前記処理結果受信エラーが報知されたとき、検査・選別制御部21はエラー報知のために生成した処理結果受信エラーの報知情報に基づいて、選別制御部21bにワークWをコンベア搬送路5の外部に選別排出させる選別制御信号を生成するようになっている。
【0047】
より具体的には、本実施形態においては、ワークWがコンベア搬送路5上で検出手段10の検出領域11より上流側の所定位置に達したことを検知するワーク検知センサ33が設けられているので、ワークWがこのワーク検知センサ33に検知されてから、ワークWが選別機40付近の所定位置であるコンベア搬送路5上の所定の選別位置に到達するまでの間に前記演算処理の処理結果が受信処理部24に入力されないときには、前記処理結果の受信入力に失敗したことを示す処理結果受信エラーを報知する報知情報が生成されるようになっている。
【0048】
もっとも、検査・選別制御部21は、送信処理部23から前記個別検出情報が出力された場合であって、例えばその出力時点からその出力に関わるワークWが選別機40付近の所定位置であるコンベア搬送路5上の所定の選別位置に到達するまでの間に、前記演算処理の処理結果が受信処理部24に入力されないとき、前記処理結果受信エラーを報知する報知情報を生成するものであってもよい。
【0049】
物品選別装置1の送信処理部23は、また、前記個別検出情報を外部のデータ処理装置50に送信出力することが必要な場合には、外部のデータ処理装置50との間で通信ポート部26を通し接続開始のためのネゴシエーションを実行して相互の現在のステータスを把握した上で、パケットサイズ(最大セグメントサイズ)等を決定するとともにコネクション(相互のアプリケーション同士を結ぶ仮想的な通信路)を確立し、フロー制御するようになっており、これを例えばTCP(Transmission Control Protocol)の通信プログラムにより達成するようになっている。従って、送信処理部23は外部のデータ処理装置50に対して確認応答の要求信号(例えばシーケンス番号)を送出し、この応答要求信号に対応する確認応答の信号(例えば送信先から送信元に送られるACK(Acknowledgement)番号)を受信したときにのみ、前記個別検出情報を外部のデータ処理装置50に送信出力するようになっている。
【0050】
また、外部のデータ処理装置50は、上述したワークWごとのX線画像や異物有無の判定結果、質量計測結果の合否(許容質量範囲内か否か)等といった演算処理の結果データを物品選別装置1に送信するときには、物品選別装置1の通信ポート部26を通し受信処理部24との間で接続開始のためのネゴシエーションを実行して相互の現在のステータスを把握した上で、パケットサイズ(最大セグメントサイズ)等を決定するとともにコネクションを確立するようになっており、これを例えばTCP通信プログラムにより達成する。従って、外部のデータ処理装置50は、確認応答の要求信号(例えばシーケンス番号)を物品選別装置1に送出し、この応答要求信号に対応する確認応答の信号(例えば物品選別装置1から外部のデータ処理装置50に送られるACK番号)を受信したときにのみ、前記演算処理の結果データを物品選別装置1に送信出力するようになっている。
【0051】
検査・選別制御部21は、外部のデータ処理装置50からの演算処理の結果データを受信処理部24で受信したとき、その演算処理の結果データをハードディスク等の検査情報蓄積部25に蓄積することができる。なお、前記演算処理の結果データは、データ処理装置50側で複数台の物品選別装置1について集中管理するように蓄積し、近時のトレーサビリティの要求に十分に応え得るようにしておき、データ処理装置50側から物品選別装置1側へは選別排出の要否を決定するのに要するワークWごとの合否判定結果のみ送るようにしてもよい。
【0052】
次に、その動作について説明する。
【0053】
まず、X線源12の照射強度を特定する管電圧及び管電流がワークWの品種に併せて適切なレベルに設定された後、無搬送のコンベア搬送路5上の幅員方向全域で、ベルト面のみでの各透過領域でのX線の透過量が等しい値になるようX線検出部14の検出感度が調整され、次いで、無搬送時のコンベア搬送路5のベルト面を体積測定のゼロ点基準面とする設定がなされる。
【0054】
次いで、必要に応じてノイズカット閾値等が設定され、例えば質量既知のマスターワークの体積測定を行なうことで、質量換算係数が算出され設定される。これらの初期設定データは、検査・選別制御部21のメモリに、例えば品種パラメータファイルの一部として書き込まれ、品種を指定する入力がなされたときに読み込まれることになる。
【0055】
このような設定が済んだ品種については、後述する一連の検査制御プログラムが実行され、検査対象のワークWの品種を指定する入力がなされると、必要な選択操作入力の後、X線検査が行なわれる。このX線検査においては、まず、最初に設定済みの各設定パラメータが品種パラメータファイルから読み出され、次いで、測定開始を指示するスタートボタン等の操作入力があると、コンベア搬送路5によるワークWの搬送が開始される。
【0056】
次いで、ワークWがワーク検知センサ33で検知されると、検査・選別制御部21により、ワーク検知センサ33の検知状態の変化からワークWの長さに相当する搬送区間と、搬送方向前後に隣り合うワークWの間隔に相当する無搬送区間とがそれぞれ特定され、X線検出部14の繰返し走査を行なうサンプリング期間が決定される。
【0057】
次いで、ワーク検知後の所定のタイミングでX線検出部14からの検出信号の前記画像入力部への取り込みが開始され、ワークWの長さ分だけ前記単位搬送時間毎のライン走査が繰り返されるとともに、X線検出部14のデータ記憶部として機能する検査・選別制御部21のメモリ領域にX線ラインセンサの検出素子数n個分の透過量のデータが順次格納される。
【0058】
なお、このとき、各スライスデータ中の最大濃度のデータ(同図中にA/Dで示す)を所定の閾値と比較してX線吸収率が特に大きい金属異物等の混入の有無が判定されるようにしてもよいが、本実施形態では物品選別に要するほとんどの処理を外部のデータ処理装置50に実行させる。
【0059】
一方、検査・選別制御部21では、毎回の走査で得られたスライスデータとしてのX線画像の濃度データPが生成され、第1のID生成部22で生成された第1のID情報と共に個別検出情報とされて、送信処理部23でTCP/IP送信のためのデータセグメントに加工され、送信処理部23から外部のデータ処理装置50に送信される。
【0060】
このとき、送信されるデータは、例えば図2に示すように、ワーク検知センサ33の検知信号の立上りから一定の検査期間内にX線検出部14から出力される。
【0061】
同図においては、ワークWが箱状のもので、ワーク検知センサ33の検知信号の立上り直後に、まず、その識別情報として少なくとも日付と時刻を含む第1のID情報(同図中の12−22 11:06:23.156)が生成され、これと併せて、このワークWのID情報及び検出データからなる個別検出情報が例えばイーサパケットである送信フレームに分解される。さらに、最初のデータ送信フレームに先立ってデータ開始フラグ(同図中のSTART)が設定され、例えば1フレーム=1500オクテット(バイト)の送信サイズで、スライスごとのX線ラインセンサの検出素子数n個分の透過量のデータ(図2中に部分的に示す「100,110,90,80,60,・・・」、「150,160,170,180,・・・」、「200,210,・・・」等)が順次送信フレーム化され、そのワークWの後端に相当する最終スライスデータの後に、このワークWのデータ終了フラグ(同図中のEND)が設定される。そして、送信フレームにはIPヘッダ等が付加されて、そこに記述された宛先IPアドレスで指定された外部のデータ処理装置50に送信される。なお、図示はしないが、ここでの各1個のワークWについてのSTARTからENDまでのデータ送信フレームにはワークWの識別情報と一連のシーケンス番号が付されており、他のワークWについてのデータ送信フレームと識別可能になっている。
【0062】
このとき、外部のデータ処理装置50のデータ処理部51では、TCP/IP通信の処理手順に従って受信パケットから各ワークWごとの個別検出情報を再構築した後、背景である搬送ベルト面の質量測定値がゼロとなるように物品選別装置1からの濃度データのうち所定濃度レベル範囲の濃度データを抽出しながら各ワークWのディジタルX線画像を生成し、更に、濃度データ変換、異物有無判定、体積測定及び質量換算の各処理を実行する。すなわち、ワークWの搬送方向の先端から後端までの複数回の走査で得られたデータを基に各ワークWについての混入異物の有無を判定する一方、等価厚画像の濃度データに変換したうち有効なデータを合算することで各ワークWの体積Vを算出するとともに、その体積測定値Vを質量値に換算して、それらの処理の結果を物品選別装置1側に送信する。
【0063】
この結果送信に際しては、データ処理部51での演算処理中又はその処理完了直後に、今回の演算処理の対象となった個別検出情報の第1のID情報に基づいて、その第1のID情報に対応する第2のID情報が第2のID生成部52によって生成される。すなわち、第2のID生成部52内に予め記憶・保持された所定の規則に従って、第1のID情報と同一の第2のID情報が、あるいは、第1のID情報が示す特定のワークWの検出信号(スライスデータ)に対応する検出信号の処理結果であることを一意に表す第2のID情報が生成される。例えば、第2のID情報が、第1のID情報に含まれる当該検出信号のスライスデータの日付と時刻を含むように生成され、これとワークWのID情報及び処理結果のデータを合せた処理結果情報が生成されて、この処理結果情報が例えばイーサパケットである送信フレームに分解される。さらに、最初のデータ送信フレームに先立ってデータ開始フラグ(例えばSTART)が設定され、例えば1フレーム=1500オクテット(バイト)の送信サイズで、スライスごとのX線ラインセンサの検出素子数n個分の透過量のデータを検出信号としたときの、その検出信号に基づく選別制御のための所定の演算処理の結果のデータが、順次送信フレーム化され、そのワークWの後端に相当する最終スライスデータの後に、このワークWの検出信号データの演算処理の終了フラグ(例えばEND)が設定される。そして、送信フレームにはIPヘッダ等が付加されて、そこに記述された宛先IPアドレスで指定された物品選別装置1に送信される。
【0064】
上述のような相互のデータ通信に際しては、物品選別装置1側の送信処理部23では、送信出力が必要な場合に外部のデータ処理装置50との間でまずネゴシエーションを実行し、外部のデータ処理装置50に対して確認応答の要求信号を送出して、この応答要求信号に対応する確認応答の信号を受信したときにのみ、前記個別検出情報を外部のデータ処理装置50に送信出力する。
【0065】
一方、外部のデータ処理装置50側でも、演算処理の結果データを物品選別装置1に送信するときには、確認応答の要求信号を物品選別装置1に送出し、これ対応する確認応答の信号を受信したときにのみ前記演算処理の結果データを物品選別装置1に送信出力する。したがって、物品選別装置1と外部のデータ処理装置50の間の確実なデータ通信路が確保され、物品選別装置1自体は高処理能力のCPUを搭載することなく簡素かつ低コストにしながらも、外部のデータ処理装置50で常時最新の処理プログラムやハードウェア資源を用いて処理される演算処理の結果を基に、X線画像に基づく高度な検査・判定の結果、体積・質量の計算結果等を得ることができる。
【0066】
また、物品選別装置1と外部のデータ処理装置50の間のデータ通信に際しては、物品選別装置1の検査・選別制御部21が、送信処理部23から前記個別検出情報が出力された場合であってその出力時点から所定の選別遅延時間、すなわちワーク検知センサ33により先端検知された位置からそのワーク先端が選別位置に達するまでの搬送距離/その間のワーク搬送速度)内に前記演算処理の処理結果が受信処理部24に入力されないとき、前記処理結果の受信入力に失敗したことを示す処理結果受信エラーの報知情報を生成し、選別制御手段としての検査・選別制御部21がその報知情報に基づいてワークWをコンベア搬送路5の外部に選別排出させる選別制御信号を生成する。
【0067】
したがって、何らかの理由で外部のデータ処理装置50側での演算処理ができないか、通信ができないような事態に陥ったとしても、物品選別装置1側でその処理結果受信エラーを把握し、選別制御に即座に反映させることができ、不良の可能性のあるワークWが合格品の搬送領域に混入してしまうようなことがない。また、検査・選別制御部21は、通常の検査ライン毎の管理データとして必要なものについては検査情報蓄積部25に蓄積することができ、更に長期間にわたる統計データや関連する生産地情報、各ワークWごとの各種の検査データ等を外部のデータ処理装置50側で蓄積し、集中管理、一元管理することができ、近時のトレーサビリティの要求に十分に応えることができる。
【0068】
このように、本実施形態の物品選別装置1では、ワークWの検出信号と識別情報を含む個別検出情報が生成されて外部に出力される一方、この個別検出情報に対応してワークWの識別情報ごとに実行される演算処理の処理結果が識別情報と共に入力され、その処理結果と前記識別情報とに基づいて、ワークWをコンベア搬送路5の外部に選別排出するか否かの選別指令が実行されるので、高処理能力のCPUを要しない小型、長寿命で低コストの物品選別装置となる。しかも、処理結果を受信したとき、第1のID情報と第2のID情報との対応の有無を判断部21aで判断することにより、検出手段10の検出信号とその演算処理結果との対応付けを確実に実行できるので、データ転送が多少前後したり着信順序が乱れたりしても、両識別情報を基に処理結果データの再構築が確実に実行でき、確実なデータ通信が可能であるから、信頼性に優れた物品選別装置となる。
【0069】
また、物品選別装置1が、所定のローカルエリアネットワーク上でノードを形成可能な通信ポート部26を有し、送信処理部23からそのローカルエリアネットワーク上の他のノードである外部のデータ処理装置50に前記個別検出情報を送信出力するとともに、外部のデータ処理装置50から受信処理部24に前記演算処理の処理結果をその識別を可能にする第2のID情報と共に入力するので、ネットワーク接続された外部のデータ処理装置50によりワークWごとの検出信号の演算処理を確実に実行でき、かつ、複数台の物品選別装置1についての検出データを並行して演算処理したりその結果を集中管理及び一元管理したりすることができる。
【0070】
さらに、本実施形態においては、送信処理部23から前記個別検出情報が出力された場合であって、その出力時点から所定時間内に演算処理の処理結果が受信処理部24に入力されないとき、検査・選別制御部21がエラー報知部27によって前記処理結果の受信入力に失敗したことを報知させるので、ユーザーに受信エラーを知らせることができ、それに基づいて搬送停止したり、選別制御を排出側に設定したりすることも可能となる。
【0071】
しかも、本実施形態では、受信エラー報知時には、ワークWをコンベア搬送路5の外部に選別排出させる選別制御信号を生成するので、不良品の可能性があるワークWがコンベア搬送路5上に残るような事態を確実に防止することができ、選別作業の信頼性を確実に担保できる。付言すれば、判定結果等の情報がワーク搬送に要する所定の遅延時間を外れて入力されるような場合には、物品選別装置1側では、ワークWの検出データを出力した順序とは異なる順序で判定処理結果を受け取ることとなり得るが、判定処理結果は各ワークWごとの識別情報を含むので、物品選別装置1側では選別位置までの搬送時間に相当する所定の遅延時間という比較的長い(通常のデータ再送実行期間に対し十分長い)期間を超えるような判定処理結果の遅延、あるいは前後のワークWについて判定結果の受信完了時点の逆転といった事態が生じたとしても、各ワークWの識別情報に基づいて確実にワークWごとの判定結果を確実に把握でき、しかも所定の遅延時間を区切って選別制御を確定するので、的確な選別制御を確実に実行することができることになる。
【0072】
また、本実施形態においては、ワークWがワーク検知センサ33に検知されてからコンベア搬送路5上の所定の選別位置に到達するまでの間に、あるいは、前記個別検出情報の出力時点からその出力に関わるワークWがコンベア搬送路5上の所定の選別位置に到達するまでの間に、前記演算処理の処理結果が受信処理部24に入力されない場合に、前記処理結果の受信入力に失敗したことを報知するので、選別遅延時間内に演算処理の処理結果が入力されないときには、処理結果受信エラーによって選別制御を確定することが可能となる。
【0073】
さらに、送信処理部23は前記個別検出情報を外部のデータ処理装置50に送信出力することが必要な場合には、外部のデータ処理装置50に対して応答要求信号を送出し、その応答要求信号に対応する応答信号を受信したときにのみ、個別検出情報を外部のデータ処理装置50に送信出力するので、通信路(コネクション)が確立されていることを確認した上で、データ通信を開始することができ、データ通信の信頼性を確保できる。
【0074】
以上のように、本実施形態によれば、高処理能力の演算CPUを不要にして装置構成を簡素にし物品選別装置1のコスト低減と小型・長寿命化を図ることができ、ネットワーク上の他のハードウェア資源を有効活用することのできる通信及びデータ識別機能を持たせ、データ転送が多少前後したり着信順序が乱れたりしても、処理結果データの再構築が確実に実行できる信頼性に優れた物品選別装置を提供することができる。その結果、信頼性に優れた、トレーサビリティ情報の管理要求等にも柔軟に応え得る検査システムを構築可能な物品選別装置を提供することができる。
【0075】
なお、上述した実施形態においては、X線異物検出を行なうものとしたが、本発明はX線検査を行なう物品選別装置に限定されるものではない。また、上述の実施形態においては、ワークWが箱状の個体であったが、本発明はワークWがいわゆるばら状のものや練り物等であっても適用できる。
【0076】
[第2の実施の形態]
図3は本発明に係る物品選別装置の第2の実施の形態を示す図であり、本発明をいわゆるばら状のワークを検査する装置に適用した例を示している。
【0077】
本実施形態は、物品選別装置1の装置構成自体は上述の実施形態とほぼ同様であり、その制御手段20の構成の一部のみが上述とは相違するものであるので、各構成要素については上述の実施形態と同一の符号を用いて、主に上述との相違点について説明する。
【0078】
物品選別装置1の送信処理部23から外部のデータ処理装置50に送信されるデータは、図3に示すように、搬送開始時には、ワーク検知センサ33の検知信号の立上りから一定の検査期間内にX線検出部14から出力される。同図においては、ワークWはいわゆるばら状、すなわち、粒状物や切片状物など小さい個体の集合からなり、コンベア搬送路5上に連続した帯状に、あるいは間欠的な塊状に載置されて搬送されるものであり、ワーク検知センサ33の検知信号が立ち上がっている間の所定時間毎、例えば500ms(ミリ秒)ごとにワーク検知センサ33を通過する所定搬送時間の単位でワークWとして識別される。そして、その所定搬送時間単位のワークWの識別情報として、少なくとも検査ラインのIDコード、日付、時刻等を含む第1のID情報(第1の識別情報;同図中の12−22 11:06:23.156)の生成と併せて、データ開始フラグ(同図中のSTART)が設定され、例えば1フレーム=1500オクテット(バイト)の送信サイズで、スライスごとのX線ラインセンサの検出素子数n個分の透過量のデータ(図3中に部分的に示す「100,110,90,80,60,・・・」、「150,160,170,180,・・・」、「200,210,・・・」等)が順次送信フレーム化され、そのワークWの後端に相当する約500ms後の最終スライスデータの後に、このワークWのデータ終了フラグ(同図中のEND)が設定される。そして、このワークWの第1のID情報及び検出データからなる個別検出情報の送信フレーム(例えば1500オクテットのイーサパケット)群にそれぞれIPヘッダ等が付加されて、そこに記述された宛先IPアドレスで指定された外部のデータ処理装置50に送信される。ここでも、詳細は図示しないが、各1個のワークW(とみなされたばら状ワークの所定搬送時間単位)についてのSTARTからENDまでのデータ送信フレームにはワークWの第1の識別情報と一連のシーケンス番号が含まれており、前後する他のワークWについてのいずれのデータ送信フレームとも識別可能になっている。
【0079】
本実施形態においても、物品選別装置1と外部のデータ処理装置50の間でワークWの識別情報を基に選別位置への搬送までの遅延時間内で例えばTCP/IP通信等によるデータ通信が実行され、物品選別装置1自体は高処理能力のCPUを搭載することなく簡素かつ低コストにしながらも、外部のデータ処理装置50で常時最新の処理プログラムやハードウェア資源を用いて処理される演算処理の結果を基に、X線画像に基づく高度な判定処理の結果、体積・質量といった物理量計算結果等を得ることができ、上述の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0080】
[第3の実施の形態]
図4及び図5は本発明に係る物品選別装置の第3の実施の形態を示す図であり、本発明を金属検出機に適用した例を示している。
【0081】
図4に示す本実施形態の金属検出機61(物品選別装置)においては、ワークWはコンベア搬送路65によって所定方向に搬送され、その搬送速度はワークWの製造ラインの搬送速度に応じて設定されている。ワークWの搬送方向の所定区間は、ワークW中への金属異物(金属からなる異物又は金属成分を含んだ異物、欠品検出の場合は異物でなく構成要素となる)の検出を行なう検出領域71となっており、この検出領域の入り口付近にはワークWの検出領域71への進入を検知する例えば光学式のワーク検知センサ73(物品検知手段)が設置されている。
【0082】
検出領域71の近傍にはワークW中の金属異物を検出する検出部70が設けられている。この検出部70は、予め設定された振幅及び周波数の送信信号を発生する信号発生部81と、信号発生部81からの信号により送信コイルを電流駆動する磁界発生部82と、差動検出器等で構成される磁界検出部83とを含んで構成されている。
【0083】
詳細は図示しないが、信号発生部81は、ワーク検知センサ73に応動する基準信号発生器、測定期間を特定するためのタイマー、電力増幅器、同調回路等を有しており、ワークWが検出領域71を通過するとき、設定周波数の送信信号を発生して磁界発生部82の送信コイルを電流駆動する。また、磁界発生部82の送信コイルは、コンベア搬送路65の近傍に配置され、信号発生部81からの電流駆動により励磁されたとき、前記送信信号の設定周波数に対応する交番磁界を検出領域71中に発生させることができる。
【0084】
磁界検出部83は、信号発生部81及び磁界発生部82と協働して複数のワークWについて、そのワークW中の金属異物を検出するようになっており、差動接続された一対の受信コイル、同調回路及び増幅器等からなる公知のものである。この磁界検出部83は、磁界発生部82からの交番磁界のみに対しては一対の受信コイルの誘起電圧が等しく平衡し、両者の差動出力がゼロになるように調整されている。
【0085】
磁界中を通過する磁性金属には磁束密度の大きさに比例してより多くの磁束が引き寄せられ、磁界中を通過する非磁性金属にはその移動による磁束密度の変化を打ち消すような向きでうず電流が生じ、ジュール熱が消費されるという性質がある。したがって、コンベア搬送路65上のワークWが検出領域71を通過するとき、磁界検出部83の受信コイル間の出力の平衡状態がくずれる。
【0086】
磁界検出部83は、このようにコンベア搬送路65上のワークWの移動により両受信コイル間の出力平衡状態がくずれたとき、その磁界の変化に応じた検出信号を出力する公知のもので、その検出信号は、磁界発生部82側からの交番磁界に対応して前記送信信号の設定周波数を有する交流信号成分に、ワークWの磁界通過により変化する低周波信号成分が重畳したような信号形態となる。
【0087】
磁界検出部83の検出信号は検出制御部84(個別検出情報出力手段、結果入力手段)に取り込まれるようになっており、この検出制御部84は、詳細は図示しないが、直交検波を行なう一対の同期検波器、移相器、バンドパスフィルタ、増幅器及びA/D変換器等によって構成された信号測定部84aを有している。
【0088】
この信号測定部84aの一対の同期検波器は、直交検波のために前記基準信号を位相調整した信号を取り込み、検出信号から送信信号相当の高周波成分を取り除いた検波出力を生成する。なお、前記直交検波の出力は、例えば、磁束密度変化が大きいほど外部磁界変化を引き起こす非磁性金属の影響が大きい検出信号と、磁束密度が大きいほど外部磁界変化を引き起こす磁性金属の影響の大きい検出信号となる。
【0089】
検出制御部84は、また、第1のID生成部84b、通信処理部84c、記憶部84d、判断部84e及び通信ポート部84fを有しており、信号測定部84aにて前記検波出力に更にフィルタによるノイズ除去及びA/D変換を施した検出データを、第1のID生成部84bで生成した第1のID情報(第1の識別情報)と共に送信フレーム化した個別検出情報を通信処理部84cで作成することができる。そして、この送信フレームを、通信処理部84cと共に通信処理手段を構成する通信ポート部84f(通信インターフェース回路部)を介して、これら通信ポート部84fと同一LAN内のノードを形成する外部のデータ処理装置90に送信する。前記検出制御部84の判断部84e、第1のID生成部84b及び通信処理部84cは、個別検出情報出力手段を構成しており、通信処理部84cはデータ処理装置90からの処理結果を入力する結果入力手段ともなっている。また、記憶部84dは、通信バッファ及び検出データ記憶メモリとして、更に必要な設定値情報等の記憶手段として機能する。
【0090】
外部のデータ処理装置90は、検出部70の検出信号及び図示しない操作器からのユーザーの操作入力に基づいて所定の制御プログラムに従った演算処理を実行し、検出制御部84にその判定結果や所定の条件パラメータ(例えば検出位相、検出周波数、フィルタ定数、判定閾値)等を送信出力するデータ処理部91と、所定の規則の処理プログラムを予め記憶したメモリを含んで構成され金属検出機61側で生成された第1のID情報との対応付けが可能な第2のID情報を前記所定の規則に従って生成する第2のID生成部92と、データ処理部91での処理結果や図示しない操作入力部から入力されあるいは外部からの通信入力されたワークWに関する情報等を蓄積する蓄積部93とを具備している。データ処理部91は、例えばCPU、RAM、ROM及びI/Oインターフェースを含むマイクロコンピュータで構成されたもので、ROM内に格納された判定制御プログラム、位相制御プログラム、ワーク影響を抑える周波数選定プログラム、閾値算出プログラム等をRAMとの間でデータの授受を行ないながらCPUにより実行し、検出制御部84からの検出データに基づいて異物の混入の有無判定を実行したり、設定されたワークWの品種等に応じて磁界発生部82と磁界検出部83の間の設定位相や直交検波のための移相量、検出周波数、判定閾値等の演算、統計計算等といった演算処理を実行するようになっており、少なくとも検出領域71に搬送された各ワークWの検出信号レベルを予め定めた閾値レベルと比較して、ワークW中に金属異物が含まれているか否か、すなわち製品としての合否を公知の判定方法で判定することができる。
【0091】
一方、検出制御部84の判断部84eは、外部のデータ処理装置90からの判定処理結果を基に不良品か否か、すなわち搬送路5の外への選別排出の要否を決定し、その判断結果を基に、良品であれば非排出とするための選別制御信号を、不良品であればコンベア搬送路5外への選別排出とするための選別制御信号を選別制御部87(選別制御手段)から出力させ、検出領域71より下流側に設けられた選別機88に不良品を良品と分けて搬送路外に排出させるようになっている。
【0092】
ここで、金属検出機61の検出制御部84と外部のデータ処理装置90との間の通信処理は、TCP/IP通信等のLAN内の所定の通信プロトコルに従ってなされる。また、金属検出機61の検出制御部84と外部のデータ処理装置90とに、金属検出機61の検出パラメータを外部のデータ処理装置90側からリモート設定するためのプログラムを搭載してもよい。
【0093】
次に、動作について説明する。
【0094】
ユーザーが図示しない運転キーを押すと、金属検出機61の運転動作に入り、製品である多数のワークWの製造ライン上での検査が実行される。そして、異物が検出されると、選別機88が選別排出動作するよう制御され、不良品が搬送路の外に排出される。
【0095】
この状態においては、金属検出機61の検出制御部84から外部のデータ処理装置90に検出データが送信される。
【0096】
具体的には、図5に模式的に示すように、ワーク検知センサ33の検知信号の立上りから一定期間Td内に、検出制御部84では、測定データが生成される一方、その測定データと共にワークWの識別情報が少なくとも金属検出機61の識別記号、日付、時刻等を含む第1のID情報として生成され、その第1のID情報とそれに対応するワークWの検出データとを含む個別検出情報が、例えば1フレーム=1500オクテット(バイト)の送信サイズで順次送信フレーム化されて、IPヘッダ等を付され、通信ポート部84fから前記LAN内に送信される。
【0097】
したがって、宛先IPアドレスで指定された外部のデータ処理装置90にワークWの識別情報を含む送信フレームが送られ、外部のデータ処理装置90において前記演算処理が実行されて各ワークWについての判定処理等の処理結果の情報が生成され、その処理結果が金属検出機61の検出制御部84に送信される。
【0098】
このとき、例えば図5(a)に示すように、特定のワークWについてのワーク検知信号P1の立上り時点(検出部70の検出信号dw1の出力時点でもよい)から所定の遅延時間Td内に外部のデータ処理装置90からの良品判定結果(同図中のOK)の情報が入力されれば、選別機88は良品のワークWが選別位置を通過するのを許容する非排出動作位置とされる。したがって、良品判定結果の通信パケットが標準的な受信時期より送れたものの所定の遅延時間Td内に到着した場合、選別機88は良品をそのまま下流側に通過させる。
【0099】
また、特定のワークWについてのワーク検知信号P、例えば同図(b)に示す次のワークWのワーク検知信号P2の立上り時点(検出信号dw2の出力時点でもよい)から所定の遅延時間Td内に外部のデータ処理装置90からの不良品判定結果(同図中のNG)の情報が入力されれば、選別機88は不良品のワークWが選別位置を通過するのを阻止する選別排出動作位置とされる。したがって、不良品判定結果の通信パケットが標準的な受信時期より前後したものの所定の遅延時間Td内に到着した場合、選別機88は不良品を選別位置で排出させる。
【0100】
また、同図(c)に示すように、例えば更に次のワークWについて、ワーク検知信号P3の立上り時点(検出信号dw3の出力時点でもよい)から所定の遅延時間Tdを外れて(超えて)外部のデータ処理装置90からの良品判定結果(OK)の情報が入力されたような場合にも、選別機88はワークWが選別位置を通過するのを阻止する選別排出動作位置に制御される。すなわち、所定の遅延時間Td内に良品の判定結果を受信できなかった場合には、金属検出機61の検出制御部84は良品か不良品か不明なワークWを選別排出させる選別制御信号を選別制御部87から出力させ、選別機88にワークWを搬送路外に排出させる。したがって、ワーク検知信号P2の立上り時点から所定の遅延時間Tdを外れて(超えて)外部のデータ処理装置90からの不良品判定結果(NG)の情報が入力された場合も、同様に、検出制御部84は、良品か不良品か不明なワークWを選別排出させる選別制御信号を選別制御部87から出力させ、選別機88はそのワークWを搬送路外に排出することになる。
【0101】
ところで、上述のように良品判定結果(OK)や不良品判定結果(NG)の情報がワーク検知信号Pの立上り時点から所定の遅延時間Tdを外れて入力されるような場合、例えば外部のデータ処理装置90から金属検出機61への送信フレームの転送経路の一部でトラフィック量が大きく低下したりデータの衝突等の頻発により送信フレームの一部再送が繰り返されるといったことが生じるような場合、あるいは、外部のデータ処理装置90側で何らかの異常が発生したような場合、金属検出機61側では、ワークWの検出データを出力した順序とは異なる順序で判定処理結果を受け取ることとなり得る。しかし、判定処理結果は各ワークWごとの識別情報を含んでいるので、金属検出機61側では選別位置までの搬送時間に相当する所定の遅延時間Tdという比較的長い期間を超えるような判定処理結果の遅延、あるいは前後のワークWについて判定結果の受信完了時点の逆転といった事態が生じても、各ワークWの識別情報に基づいて確実にワークWごとの判定結果を確実に把握でき、しかも所定の遅延時間Tdを区切って選別制御を確定するので、的確な選別制御を確実に実行することができる。
【0102】
一方、新規の品種が指定されると、例えばワークWを検出領域71に通して検査したときの検査出力データを採取したときの検査出力データとを基に、判定のためのしきい値や他のパラメータの設定値が算出され、外部のデータ処理装置90から金属検出機61の検出制御部84に送信され、新品種に対する自動設定処理が可能となる。
【0103】
このように本実施形態においても、ワークWの識別情報と共に金属検出機61の検出データをTCP/IPネットワークである同一LAN内の外部のデータ処理装置90に送信し、金属検出機61自体は高処理能力のCPUを搭載することなく簡素かつ低コストにしながらも、外部のデータ処理装置90で常時最新の処理プログラムやハードウェア資源を用いて処理される演算処理の結果を基に、金属検出機61の検出データに基づく高度な検査・判定の結果を得ることができ、上述の実施形態と同様な効果を得ることができる。さらに、本実施形態では、検出条件に関する設定パラメータの変更等をも外部のデータ処理装置90側の算出データを用いて行なうことができる。
【0104】
[第4の実施の形態]
図6は本発明に係る物品選別装置の第4の実施の形態を示す図であり、本発明を重量選別機に適用した例を示している。なお、本実施形態は、ワークの品質状態を重量としているので検出手段が大きく異なるが、その他の構成は第1の実施の形態と同一又は類似する構成であるので、そのような構成要素については第1の実施の形態と同一の符号を用いて、主に相違点について説明する。
【0105】
図6に示す本実施形態の重量選別機100(物品選別装置)は、コンベア搬送路5上の検出領域11を通過するワークWの品質状態として重量を検出し、その重量値を表す検出信号を出力する重量検出方式の検出手段110と、この検出手段110の検出動作を制御する制御手段120と、上述した選別機40と、を具備している。そして、コンベア搬送路5、検出手段110及び選別機40は、それぞれ所定のタイミングで動作するよう制御手段120の検査・選別制御部121によって制御される。
【0106】
検出手段110は検出領域11の下方側に位置する少なくとも1つの重量センサからなる重量検出部114を有しており、重量検出部114は重量センサがコンベア搬送路5によって検出領域11内に搬送されたワークWから荷重を受けたとき、その荷重に応じた重量(品質状態)の検出信号を制御装置120に出力する。なお、重量検出部114を複数の重量センサで構成する場合は、センサ個々には検出領域11を搬送方向に通過するワークWの部分重量を表わす検出信号を生成し、全センサでワークWの全体重量を算出可能な検出信号を出力する。
【0107】
検査・選別制御部121は、コンベア搬送路5による搬送制御及び検出手段110の動作制御を司る制御機能に加えて、重量検出部114からの重量検出信号をA/D変換してそのデータを一時的に保持するデータ記憶部としての機能を有しており、第1の実施形態と同様にマイクロコンピュータを含んで構成されている。なお、重量検出部114が複数の重量センサで構成される場合は、それら重量センサからの検出信号を入力可能なマルチプレクサ及びA/D変換器と、入力した検出信号をそのセンサ位置(座標)と関連付けて記憶するメモリとを有する。
【0108】
検査・選別制御部121は、さらに、外部のデータ処理装置50からの処理結果情報を用いた検査結果判断をなすための判断部121a(判断手段)と、その結果に対応する選別制御信号を生成する選別制御部121b(選別制御手段)とに相当する、制御プログラム及びメモリ等を含んでいる。
【0109】
一方、本実施形態におけるデータ処理装置50のデータ処理部51では、少なくともワークWの重量が予め設定された下限重量以上かつ上限重量以下であるか否かを判定する処理(複数の重量センサからの検出情報を基にした荷重領域の検出及び有効荷重を担持する重量センサ群からの部分荷重の合算等を行なう演算処理でもよい)を実行し、更には検出情報の統計処理等を実行する。勿論、ここでの演算処理は、重量選別機100内で実行される第1のID情報及び検出データの生成処理や通信処理等に対して、これらの処理よりも高負荷となるような演算処理であり、あるいは重量選別機100内のCPUでは処理できない処理である。
【0110】
また、上述の第1の実施の形態と同様に、制御手段120には、検査・選別制御部121の他に、第1のID生成部22、送信処理部23、受信処理部24、検査情報蓄積部25、通信ポート部26、エラー報知部27、検出駆動部28及び選別駆動部29が具備されるとともに、設定操作部31及びワーク検知センサ33がそれぞれ付設されている。
【0111】
送信処理部23は、検査・選別制御部121の判断部121aと協働し、第1のID生成部22からの第1のID情報と検出手段10からの検出信号に基づいて、個々のワークWの識別情報とそのワークWの検出信号とを含む個別検出情報を生成し、通信ポート部26を介してコンピュータ等からなる外部のデータ処理装置50に出力する。すなわち、検査・選別制御部121の判断部121a、第1のID生成部22及び送信処理部23によって、個別検出情報出力手段が構成されている。
【0112】
また、前記個別検出情報に対応してワークWの識別情報ごとに外部のデータ処理装置50により実行される演算処理の処理結果は、受信処理部24により、前記第1の識別信号と第2の識別信号との対応の有無とを判断した上で、その処理の単位のワークWの識別情報と共に通信ポート部26を介して入力される。
【0113】
そして、受信処理部24で入力した前記演算処理の処理結果を基に、検査・選別制御部121の判断部121aからは、外部のデータ処理装置50からの演算処理結果に応じた判断結果が選別制御部121bに出力され、選別制御部121bでは、その判断結果を受けてワークWをコンベア搬送路5の外部に選別排出するか否かを指令する選別制御信号が生成される。
【0114】
また、検査・選別制御部121は、第1の実施の形態の検査・選別制御部21と同様に、送信処理部23から前記個別検出情報が出力された場合であって、その出力時点から所定の選別遅延時間Td内に前記演算処理の処理結果が受信処理部24に入力されないとき、前記処理結果の受信入力に失敗したことを示す処理結果受信エラーの報知情報を生成するようになっており、検査・選別制御部121及びエラー報知部27は、受信エラー報知手段を構成している。そして、エラー報知部27によって前記処理結果受信エラーが報知されたとき、選別制御部121bは、ワークWをコンベア搬送路5の外部に選別排出させる選別制御信号を生成するようになっている。
【0115】
本実施形態においても、高処理能力の演算CPUを不要にしてその装置構成を簡素にした重量選別機100とし、そのコスト低減と小型・長寿命化を図ることができる。しかも、外部のデータ処理装置50のようなネットワーク上の他のハードウェア資源を有効活用することができる通信処理を行なうことで、データ転送が多少前後したり着信順序が乱れたりしても複雑・高度な演算処理の処理結果データを確実に再構築できる信頼性に優れた重量選別機を提供することができる。その結果、信頼性に優れた、トレーサビリティ情報の管理要求等にも柔軟に応え得る物品検査システムを構築可能な重量選別機を提供することができる。
【0116】
なお、上述の各実施の形態においては、1台の外部のデータ処理装置50又は90に対して1台の物品選別装置1、金属検出機61又は重量選別機100をネットワーク接続可能にしたものであったが、1台の外部のデータ処理装置50又は90に対して複数台の物品選別装置1、金属検出機61又は重量選別機100を接続することもでき、例えば複数台の物品選別装置1、金属検出機61又は重量選別機100を同一品種のワークWを生産する複数の平行なラインに設置し、その品種について検査結果の算出や管理を一括して処理することができるのはいうまでもない。また、1台又は複数台の物品選別装置1、金属検出機61又は重量選別機100に対して、複数台の外部のデータ処理装置50又は90を準備して複数種の処理やデータ蓄積等を分担させることも考えられる。この場合、処理ごとの識別情報をワークの識別情報と併用するのがよい。
【産業上の利用可能性】
【0117】
以上説明したように、本発明は、高処理能力の演算CPUを不要にして物品選別装置のコスト低減と小型・長寿命化を図ることができるとともに、ネットワーク上のハードウェア資源を有効活用することのできる通信及びデータ識別機能を持たせ、データ転送が多少前後したり着信順序が乱れたりしても識別情報の対応付けにより処理結果データの再構築が確実に実行できる信頼性に優れた物品選別装置を提供することができ、その結果、信頼性に優れた、トレーサビリティ情報の管理要求等にも柔軟に応え得るシステムを構築可能な物品選別装置を提供することができるものであり、搬送路上に検出領域を有する物品選別装置、例えば物品によるX線の吸収量や検出磁界への影響等に対応する検出信号を基に所定の合否判定処理を実行する物品選別装置全般に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明に係る物品選別装置の第1の実施の形態の概略構成を示すそのブロック図である。
【図2】本発明に係る物品選別装置の第1の実施の形態におけるデータ送信処理の概要を示す説明図である。
【図3】本発明に係る物品選別装置の第2の実施の形態におけるデータ送信処理の概要を示すその説明図である。
【図4】本発明に係る物品選別装置の第3の実施の形態の概略構成を示すそのブロック図である。
【図5】本発明に係る物品選別装置の第3の実施の形態におけるデータ送信処理の概要を示すその説明図である。
【図6】本発明に係る物品選別装置の第4の実施の形態の概略構成を示すそのブロック図である。
【符号の説明】
【0119】
1 物品選別装置
5、65 コンベア搬送路(搬送路)
10、110 検出手段
11、71 検出領域
12 X線源
14 X線検出部
20、120 制御手段
21、121 検査・選別制御部
21a、84e、121a 判断部(判断手段、個別検出情報出力手段)
21b、87、121b 選別制御部(選別制御手段)
22、84b 第1のID生成部(第1の識別情報生成手段、個別検出情報出力手段)
23 送信処理部(個別検出情報出力手段)
24 受信処理部(結果入力手段)
25 検査情報蓄積部
26、84f 通信ポート部(通信インターフェース回路部)
27 エラー報知部(受信エラー報知手段)
28 検出駆動部
29 選別駆動部
31 設定操作部
33、73 ワーク検知センサ(物品検知手段)
40、88 選別機
50、90 外部のデータ処理装置
51 データ処理部
52 第2のID生成部(第2の識別情報生成手段)
61 金属検出機(物品選別装置)
70 検出部(検出手段)
81 信号発生部
82 磁界発生部
83 磁界検出部
84 検出制御部
84c 通信処理部(個別検出情報出力手段、結果入力手段)
100 重量選別機(物品選別装置)
114 重量検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品(W)が搬送される搬送路(5;65)上に検出領域(11;71)を有し、該検出領域を通過する物品の品質状態を表す検出信号を出力する検出手段(10;70;110)と、
前記検出手段の検出信号に基づいて、前記物品に対応する第1の識別情報とその物品の前記検出信号とを含む個別検出情報を生成して外部のデータ処理装置(50;90)に出力する個別検出情報出力手段(22及び23;84b及び84c)と、
前記外部のデータ処理装置によって演算処理された前記個別検出情報の処理結果を該処理結果に対応する第2の識別情報と共に入力する結果入力手段(24;84c)と、
前記第1の識別信号と前記第2の識別信号との対応を判断してその判断結果を出力する判断手段(21a;84e;121a)と、
前記判断結果と前記処理結果とを受けて選別制御信号を生成する選別制御手段(21b;87;121b)と、を備えた物品選別装置。
【請求項2】
所定のローカルエリアネットワーク上でノードを形成可能な通信インターフェース回路部(26;84f)を有し、前記個別検出情報出力手段から該ローカルエリアネットワーク上の他のノードである前記外部のデータ処理装置に前記個別検出情報を送信出力するとともに、該外部のデータ処理装置から前記結果入力手段に前記処理結果を入力することを特徴とする請求項1に記載の物品選別装置。
【請求項3】
前記個別検出情報出力手段から前記個別検出情報が出力された場合であって、該出力時点から所定時間内に前記演算処理の処理結果が前記結果入力手段に入力されないとき、前記処理結果の受信入力に失敗したことを報知する受信エラー報知手段(21及び27;121及び27)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の物品選別装置。
【請求項4】
前記受信エラー報知手段によって前記処理結果受信エラーが報知されたとき、前記選別制御手段が、前記処理結果受信エラーの報知情報に基づいて、前記物品を前記搬送路の外部に選別排出させる選別制御信号を生成することを特徴とする請求項3に記載の物品選別装置。
【請求項5】
前記個別検出情報出力手段から前記個別検出情報が出力された場合であって、該出力時点から該出力に関わる物品が前記搬送路上の所定の選別位置に到達するまでの間に、前記演算処理の処理結果が前記結果入力手段に入力されないとき、前記処理結果の受信入力に失敗したことを報知する受信エラー報知手段(21及び27;121及び27)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の物品選別装置。
【請求項6】
前記物品が前記搬送路上で前記検出手段の検出領域より上流側の所定位置に達したことを検知する物品検知手段を備え、
前記物品が該物品検知手段に検知されてから、前記物品が前記搬送路上の所定の選別位置に到達するまでの間に、前記演算処理の処理結果が前記結果入力手段に入力されないとき、前記処理結果の受信入力に失敗したことを報知する受信エラー報知手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の物品選別装置。
【請求項7】
前記個別検出情報出力手段は、前記個別検出情報を前記外部のデータ処理装置に送信出力することが必要な場合には、該外部のデータ処理装置に対して応答要求信号を送出し、該応答要求信号に対応する応答信号を受信したときにのみ、前記個別検出情報を前記外部のデータ処理装置に送信出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の物品選別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−237069(P2007−237069A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62731(P2006−62731)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】