説明

現像装置

【課題】高速回転する像担持体に対する第2の現像剤担持体のトレース性能を高めて対向間隔の変動を減らし、これにより現像性能を安定させて現像不良やトナーの飛散を抑制できる現像装置を提供する。
【解決手段】現像スリーブ114の両端部を回転可能に支持するホルダ115と、現像スリーブ114を中心にして回動可能な揺動ホルダ117との対向間隔にOリング121を圧縮状態で配置する。Oリング121は、ホルダ115と揺動ホルダ117との間の回転方向の振動を減衰して、感光ドラム1の表面における現像スリーブ116の走行状態を安定させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二本以上の現像剤担持体にトナーを担持させてトナー像を現像する現像装置、詳しくは一方の現像剤担持体の回転軸を中心に揺動可能な一対の揺動部材で他方の現像剤担持体を支持させる構造に関する。
【背景技術】
【0002】
像担持体に形成された静電像を、二本以上の現像剤担持体を備えた現像装置を用いて、トナー像に現像する画像形成装置が実用化されている(特許文献1)。二本以上の現像剤担持体を用いることで、高速で回転する像担持体の表面の静電像に対しても十分な現像剤を供給できるようになるため、画像形成のプロセススピードの高速化に伴う現像不良を阻止できる(特許文献2、3)。
【0003】
特許文献2には、一対の現像剤担持体(現像スリーブ)を縦に並べて配置した、一成分現像剤を用いる現像装置が示される。ここでは、上側の現像剤担持体の回転軸を中心にして揺動可能な一対の揺動部材の回動端側に、下側の現像剤担持体の回転軸を支持させることで、並列な現像剤担持体の間にねじれ方向の自由度を持たせている。一対の現像剤担持体は、現像容器の外側で回転軸の両端に配置したガイドローラを感光ドラムに当接回転させることにより、現像剤担持体の表面と感光ドラムの対向距離を所定値(200μm)に確保している。
【0004】
特許文献3には、一対の現像剤担持体(現像スリーブ)を縦に並べて配置した、二成分現像剤を用いる現像装置が示される。ここでは、現像容器に設けた回動軸を中心にして揺動可能な一対の揺動部材の上下の揺動端に現像剤担持体をそれぞれ支持させることで、感光ドラムと現像装置の位置関係が変化しても、感光ドラムに無理な負荷をかけないで済む。一対の現像剤担持体は、現像容器の外側で回転軸の両端に配置したガイドローラ(突き当て部)を、感光ドラムに当接回転させることにより、現像剤担持体の表面と感光ドラムの対向距離を所定値(300μm)に確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−171403号公報
【特許文献2】特開2002−351221号公報
【特許文献3】特開2004−151451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示される現像装置を用いてプロセススピードをさらに高める実験を行ったところ、現像不良やトナーの飛散が増えることが判明した。一対の揺動部材で支持された第2の現像剤担持体の両端の突き当てコロが、感光ドラム表面の上下動や突き当てコロの偏心量に過剰に応答して跳ね上がり、第2の現像剤担持体と像担持体との対向間隔が不安定になることが判明した。第2の現像剤担持体の両端の突き当てコロが高速移動する像担持体表面を円滑にトレースできなくなるため、第2の現像剤担持体が振動状態となることが判明した。
【0007】
第2の現像剤担持体と像担持体との対向間隔が大きくなると、現像に関わる電界が弱くなって現像効率が低下する。対向間隔が小さくなると、対向間隔での放電が増えて感光ドラムの寿命が損なわれる。対向間隔が変動すると、画像の濃度ムラが目立つようになり、トナーの飛散も増えて不都合である。
【0008】
本発明は、第1の現像剤担持体を中心に第2の現像剤担持体を揺動可能に保持する揺動部材を有する現像装置において、揺動部材の振動によって生じる不具合を抑制可能な現像装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の現像装置は、像担持体にトナー像を現像する第1の現像剤担持体と、前記像担持体にトナー像を現像する第2の現像剤担持体と、前記第1の現像剤担持体を回転可能に支持する支持部材と、前記第1の現像剤担持体を中心にして前記第2の現像剤担持体を回動可能に支持する揺動部材と、前記第2の現像剤担持体を前記像担持体に向かって付勢する付勢手段と、前記支持部材に対する前記揺動部材の振動を減衰可能な緩衝手段とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の現像装置では、支持部材と揺動部材との間の回転方向の相対振動を緩衝手段が減衰するため、前記像担持体が高速回転しても、第2の現像剤担持体の両端の突き当て部が前記像担持体から浮き上がりにくくなる。
【0011】
従って、第1の現像剤担持体を中心に第2の現像剤担持体を揺動可能に保持する揺動部材を有する現像装置において、揺動部材の振動によって生じる不具合を抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】画像形成装置の構成の説明図である。
【図2】現像装置の構成の説明図である。
【図3】現像スリーブと感光ドラムの対向間隔を設定する構造の説明図である。
【図4】現像装置の着脱の説明図である。
【図5】現像装置のガタつきの説明図である。
【図6】実施例1の現像スリーブ支持構造の構成の説明図である。
【図7】揺動ホルダの支持部分の拡大図である。
【図8】弾性部材の配置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は、像担持体から現像剤担持体を離間させる方向へ現像装置を取り出し可能である限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
【0014】
従って、帯電方式、静電像形成方式の区別無く、また、中間転写方式、記録材搬送方式、転写ベルト方式、枚葉プリント方式の区別無く磁性トナーを用いる現像装置を搭載した画像形成装置で実施できる。
【0015】
本実施形態では、トナー像の形成に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
【0016】
なお、特許文献1〜3に示される画像形成装置の一般的な事項については、図示を省略して重複する説明を省略する。
【0017】
<画像形成装置>
図1は画像形成装置の構成の説明図である。図1に示すように、画像形成装置100は、感光ドラム1に形成したトナー像を転写ベルト14に担持した記録材Pに転写するモノクロ高速プリンタである。
【0018】
像担持体の一例である感光ドラム1の周囲に、コロナ帯電器2、露光装置3、現像装置4、転写ローラ5、ドラムクリーニング装置6が配置される。感光ドラム1は、アルミニウムシリンダの外周面に感光層が形成され、700mm/secのプロセススピードで矢印R1方向に回転する。
【0019】
コロナ帯電器2は、コロナ放電に伴う荷電粒子を照射して感光ドラム1の表面を一様な負極性の電位に帯電させる。露光装置3は、入力画像を展開した走査線画像データをON−OFF変調したレーザービームを回転ミラーで走査して、帯電した感光ドラム1の表面に画像の静電像を書き込む。現像装置4は、感光ドラム1に形成された静電像をトナー像に現像する。
【0020】
転写ローラ5は、転写ベルト14の内側面を押圧して、感光ドラム1と転写ベルト14との間に転写部T1を形成する。記録材カセット11aに格納された記録材Pは、分離ローラ12aで1枚ずつに分離してレジストローラ13へ送り出される。レジストローラ13は、停止状態で記録材Pを受け入れて待機させ、感光ドラム1のトナー像にタイミングを合わせて転写部T1へ記録材Pを送り込む。
【0021】
転写ローラ5へ正極性の直流電圧が印加されることにより、感光ドラム1に担持されたトナー像が、転写ベルト14に担持されて転写部T1を通過する記録材へ転写される。トナー像を転写された記録材Pは、転写ベルト14から曲率分離して定着装置7へ送り込まれ、定着装置7で加熱加圧を受けて表面にトナー像を熱定着された後に排出ローラ15を通じて排出トレイ16へ排出される。
【0022】
ドラムクリーニング装置6は、感光ドラム1にクリーニングブレードを摺擦させて、記録材Pへの転写を逃れて感光ドラム1に残った転写残トナーを回収する。画像形成に伴ってトナーが消費されるので、トナー消費量に見合った補給トナーが現像剤ボトル10からホッパ9へ供給され、ホッパ9からバッファ8を経由して現像装置4へ補給される。
【0023】
<現像装置>
図2は現像装置の構成の説明図である。図3は現像スリーブと感光ドラムの対向間隔を設定する構造の説明図である。図4は現像装置の着脱の説明図である。図5は現像装置のガタつきの説明図である。
【0024】
図2に示すように、現像装置4は、第1の現像剤担持体の一例である現像スリーブ114と第2の現像剤担持体の一例である現像スリーブ116とに一成分現像剤を担持させて感光ドラム1にトナー像を現像する。像担持体回転方向上流側に位置する現像スリーブ114の内側には固定マグネット114Mが配置され、下流側に位置する現像スリーブ116の内側には固定マグネット116Mが配置される。固定マグネット114M、116Mは、磁束で現像剤を引き付けて現像スリーブ114、116の表面にコートする。
【0025】
層厚規制部材の一例である現像ブレード109は、現像スリーブ114に担持される現像剤の層厚を規制するとともに、一成分現像剤(磁性トナー)を摺擦して負極性に帯電させる。現像スリーブ114に担持された現像剤は、現像スリーブ114と現像スリーブ116の対向部で、現像スリーブ114から現像スリーブ116へ乗り換える。
【0026】
電源D4は、直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧を現像スリーブ114、116に印加することにより、帯電して現像スリーブ114、116に担持された現像剤を感光ドラム1へ転移させて、静電像を反転現像する。
【0027】
現像装置4の直上にトナーを補給するためのバッファ8が設けられている。バッファ8は、現像剤を貯留して現像装置4の長手方向一杯に設けられた受け入れ口106へ均等に現像剤を補給する。バッファ8の長手方向一杯に設けられたマグネットローラ8Mを回転させることにより、画像形成で消費された量に見合っただけの現像剤を切り出して現像装置4の受け入れ口106へ補給する。
【0028】
現像剤ボトル10は、不図示の回転機構によって回転されてホッパ9へ現像剤を補給する。ホッパ9は、補給スクリュー9Sを補給量に見合った角度だけ回転させて、バッファ8へ現像剤を補給する。バッファ8は、現像装置4の長手方向に均一にトナーを補給するので、現像装置4内で、現像スリーブ配置方向のトナー剤面の傾きを生じにくくなり、画像の濃度を現像スリーブ配置方向で均一に保つのに有効である。
【0029】
攪拌部材107は、受け入れ口106から補給された現像容器113内の現像剤を攪拌して流動性を保ちつつ、現像スリーブ114、116へ現像剤を供給する。トナーセンサ108は、接地電位との間に流れる交流電流量を検出して現像容器113内の現像剤量に応じた信号を出力する。
【0030】
制御部100Cは、トナーセンサ108の出力に応じて、補給スクリュー9S及びマグネットローラ106Mを制御する。駆動部112は、攪拌部材107及び現像スリーブ114、116を回転駆動する。
【0031】
図3に示すように、ホルダ115は、現像装置4に固定される一方、現像スリーブ114は、スライドガイド4Gのガタつき範囲で現像装置4が回動することにより、両端の突き当て部(114G)が感光ドラム(1)に当接する。
【0032】
現像スリーブ114の両端で定着コロ114Gが感光ドラム1に当接することで、現像スリーブ114と感光ドラム1の対向間隔(SDギャップ)が最適値に設定されている。対向間隔が大きすぎると、現像剤の移転量が不足して高濃度での転写効率が低下する。対向間隔が小さ過ぎると、現像ムラが目立つようになる。ここでは、現像スリーブ114の直径よりも400μm大きい直径の定着コロ114Gを採用して、対向間隔(SDギャップ)を200μmに設定している。
【0033】
現像スリーブ114及び定着コロ114Gは、現像容器113に固定した支持部材の一例であるホルダ115に、回転可能に支持されている。揺動部材の一例である揺動ホルダ117は、現像スリーブ114を中心にして回動可能に取り付けられ、揺動ホルダ117の回動端側には、現像スリーブ116の両端が回転可能に支持されている(図8参照)。
【0034】
揺動ホルダ117は、下スリーブ押圧機構118によって感光ドラム1側へ付勢されている。下側の現像スリーブ116は、現像容器113に設けられた下スリーブ押圧機構118により押された揺動ホルダ117によって、上側の現像スリーブ114を回転中心として揺動する。これにより、現像スリーブ116の両端で、定着コロ116Gが感光ドラム1に当接して、現像スリーブ116と感光ドラム1の対向間隔(SDギャップ)を最適値の200μmに設定している。
【0035】
図4の(a)に示すように、案内手段の一例であるスライドガイド4Gは、現像容器113、ホルダ115、揺動ホルダ117、現像スリーブ114、及び現像スリーブ116を含む現像装置4を、感光ドラム1から離間する方向へ移動可能に支持する。
【0036】
現像装置4は、内扉18に設けた押圧バネ19によって感光ドラム1へ向かって付勢されることにより、定着コロ114Gを感光ドラム1に当接させている。現像装置4は、スライドガイド4Gにより略水平に摺動可能に保持されており、押圧バネ19に付勢されて感光ドラム1に当接している。押圧バネ19にて押された現像装置4がスライドガイド4Gに沿って摺動し、保持している現像スリーブ114を押すことで、現像スリーブ(114)の端部に設けられた突き当てコロ114Gが感光ドラム1へ突き当たる。
【0037】
図4の(b)に示すように、現像装置4は、外カバー21を開いて、支軸18aを中心にして内扉18を右側へ倒すことで、感光ドラム1へ向かう現像装置4の付勢を解除できる。現像装置4は、案内手段の一例であるスライドガイド4Gに案内させて、右方向へ引き出して、画像形成装置100から着脱可能である。現像装置4が引き出される際には、図2に示すように、シャッタ8Sがバッファ8の開口部を塞ぐようになっている。
【0038】
図5に示すように、現像装置4は、ホルダ115が現像容器113に固定される。一方、現像スリーブ114は、スライドガイド(4G:図4)に支持された現像容器113がそのガタつき範囲で回転することにより、両端の突き当てコロ114Gが感光ドラム1に当接する。
【0039】
ところで、従来、特許文献2、3に示されるように、一成分現像剤/二成分現像剤のいずれにおいても、二本以上の現像スリーブを設けた現像装置を搭載した高速対応の画像形成装置が実用化されていた。
【0040】
二本以上の現像スリーブを設けた現像装置は、感光ドラムの両端の絶縁リング部あるいは感光ドラムの外側に設けた絶縁フランジに、現像スリーブ又は現像スリーブの外側の突き当てコロを当接させていた。感光ドラムと現像スリーブのギャップを確実に管理するためである。
【0041】
これにより、部品精度により像担持体と現像剤担持体のアラメントが崩れている場合でも、固定している第1の現像剤担持体に対して、第2の現像剤担持体を揺動可能に構成し、下スリーブ押圧機構により押圧することで確実にギャップを管理していた。
【0042】
しかし、第1の現像剤担持体を現像装置に固定して、第2の現像剤担持体を揺動させる構成を採用し、第1の現像剤担持体と第2の現像剤担持体とがボールベアリング等でガタを持たせて揺動部材に保持される構成では、問題がある。ガタの範囲内で第2の現像剤担持体が振動し易いため、画像に悪影響を及ぼすことがあった。
【0043】
そこで、以下の実施例では、揺動部材と第1の現像剤担持体との間に粘弾性材料の緩衝部材を挟み込んで配置してガタを取り除き、第2の現像剤担持体の振動を減衰させて、ギャップ変動を抑制するようにしている。すなわち、高速回転する像担持体に対する第2の現像剤担持体のトレース性能を高めて対向間隔の変動を減らし、これにより現像性能を安定させて現像不良やトナーの飛散を抑制できる。
【0044】
<実施例1>
図6は実施例1の現像スリーブ支持構造の構成の説明図である。図7は揺動ホルダの支持部分の拡大図である。図8は弾性部材の配置の説明図である。
【0045】
図6に示すように、第1の現像剤担持体の一例である現像スリーブ114は、両端の突き当て部(114G)で感光ドラム1との対向間隔を設定されて感光ドラム1にトナー像を現像する。第2の現像剤担持体の一例である現像スリーブ116は、一対の揺動部材(117)に支持され、両端の突き当て部(116G)で感光ドラム1との対向間隔が設定される。
【0046】
支持部材の一例であるホルダ115は、現像容器113に取り付けられて現像スリーブ114の両端部を回転可能に支持する。揺動部材の一例である揺動ホルダ117は、ホルダ115に隣接した位置で現像スリーブ114を中心にして回動可能である。
【0047】
付勢手段の一例である下スリーブ押圧機構118は、現像スリーブ116を感光ドラム1に向かって付勢する。緩衝手段の一例であるOリング121は、ホルダ115と揺動ホルダ117との対向間隔に配置されて両者間の回転方向の振動を減衰可能である。
【0048】
上側の現像スリーブ114は、現像容器113に設けられたホルダ115に、回転自在に保持されている。下側の現像スリーブ116は、上側の現像スリーブ114のスリーブ軸方向両端に揺動可能に保持された揺動ホルダ117に両端を保持されているため、上側の現像スリーブ114を回転中心として揺動可能である。
【0049】
現像スリーブ114の端部に設けられた突き当てコロ114Gが感光ドラム(1)へ突き当たることで、感光ドラム1と現像スリーブ114との間に適切なギャップが保持される。現像スリーブ116の端部に設けられた突き当てコロ116Gが感光ドラム(1)へ突き当たることで、現像スリーブ116と感光ドラム(1)との間に適切なギャップが保持される。これにより、上側の現像スリーブ114と下側の現像スリーブ116の感光ドラム1に対する位置決めがされる。
【0050】
現像スリーブ114、116が感光ドラム1へ位置決めされる場合、各部品の加工精度により、現像スリーブ114、116と感光ドラム(1)のアライメントが崩れることがある。現像スリーブ114と現像スリーブ116の各中心軸が感光ドラム(1)の中心軸に対して平行とならない場合がある。あるいは、現像スリーブ114の中心軸と現像スリーブ116の中心軸とが平行にならない場合がある。
【0051】
現像スリーブ114、116を連結する揺動ホルダ117は、現像スリーブ114、116の端部に各々設けられ、各々が別々に揺動することで、このようなアライメントの崩れを吸収可能である。アライメントが崩れた状況において、上側の現像スリーブ114は、図5に示すように、現像容器113が回動することで、感光ドラム(1)に対して適正なギャップを保持しながら位置が決まる。これに対して、現像スリーブ116は、揺動ホルダ117が各々揺動することで、感光ドラム(1)に対して適正なギャップを保持しながら位置が決まる。現像スリーブ114に対して現像スリーブ116の両端がスムーズに揺動することで、過剰な押圧力をかけることなく必要最小限の押圧力で、現像スリーブ116に適正なギャップを維持できる。
【0052】
揺動ホルダ117とホルダ115との間にゴム材料の円環状の緩衝部材であるOリング121が配置され、揺動ホルダ117とホルダ115とで挟み込んでOリング121を圧縮状態にしてある。Oリング121は、粘弾性を持つ材料の一例であるゴム材料で形成されたリング部材であって、現像スリーブ114と同軸に配置され、ホルダ115と揺動ホルダ117との間で軸方向に圧縮されている。Oリング121は、ホルダ115と揺動ホルダ117との少なくとも一方と摩擦回転が可能な範囲で圧縮されている。
【0053】
図7に示すように、ホルダ115と揺動ホルダ117の一方のリング部材当接面を平坦にする一方、他方のリング部材当接面には、回転方向について周期的な凹凸構造が形成されている。
【0054】
現像スリーブ114のホルダ115の端面には、複数箇所に軸中心に向かって傾斜している放射状の突起119が設けられている。放射状の突起119を形成することで小さな総圧力でOリング121を大きく変形させて、ねじり方向の粘弾性と摩擦による振動減衰性能を高めている。
【0055】
図8に示すように、上側の現像スリーブ114は、ホルダ115に設けたベアリング122によって、また、下側の現像スリーブ116は、揺動ホルダ117に設けたベアリング122によって、それぞれスムーズな回転が可能である。
【0056】
突起119を設けたホルダ115と対向する揺動ホルダ117の位置には、軸中心に向かって擂鉢上に後退させた傾斜突き当て面120が設けられている。突起119によって傾斜突き当て面120に押し付けられたOリング121は、縮径する方向に変形して、ホルダ115と揺動ホルダ117の内側に設けた2つのベアリング122の外輪を締め付ける。これにより、Oリング121が突起119と傾斜突き当て面120と2つのベアリング122とで囲まれた空間で圧縮されて反発力を発生している。
【0057】
現像装置4は、上下一対の現像スリーブ114、116を有し、下側の現像スリーブ116が上側の現像スリーブ114に対して揺動する。揺動板117で支持された下側の現像スリーブ116が必要に応じて揺動することで、現像装置4は、一対の現像スリーブ114、116と感光ドラム(1)との間に、適切なギャップを確保して最適な現像を行うことができる。
【0058】
しかし、現像装置4は、自身の駆動系、あるいは他のユニットを駆動するための駆動系より振動を受ける。この振動は、結果として現像を行っている現像スリーブ114、116、突き当てコロ116Gへと到達し、現像に悪影響を及ぼす。具体的には、突き当てコロ116Gが振動すると、現像スリーブ116と感光ドラム(1)との間のギャップが変動して現像ムラが発生する。あるいは、振動が現像スリーブ116の速度変動となって現像ムラを発生することもある。
【0059】
現像装置4では、揺動ホルダ117がベアリング122によって現像スリーブ114と現像スリーブ116とに乗った構成のため、揺動ホルダ117は、ベアリング122のガタ等で動きの自由度が大きく、振動が顕著に表れることがある。しかし、粘弾性と摩擦力を発揮して振動を減衰するOリング121を、ホルダ115と揺動ホルダ117の間に挟み込んで反発力を働かせているため、効果的にガタつきと振動を取り除いて現像ムラを効果的に抑制できる。
【0060】
具体的な円環状の緩衝部材(121)の効果は、以下のように実現される。
【0061】
一つ目の効果は、反発力により揺動ホルダ117を押さえて不必要な動きを規制する効果がある。上述したように、揺動ホルダ117は、現像スリーブ114と現像スリーブ116とに、ベアリング122を介して乗っている構成のため、そのままではベアリング122のガタ(約10μm)や嵌合ガタ(約10〜20μm)分は自由な動きが可能である。このようなホルダ115と揺動ホルダ117との間に円環状の緩衝部材(121)を入れることで、揺動ホルダ117は、反発力によって押さえられ、自由な動きが規制されて振動が効果的に減衰される。そして、そのような緩衝手段を、支持部材と揺動部材の対向間隔に挟み込んで配置する特徴によって、振動抑制を従来と同じ外観で達成している。
【0062】
二つ目の効果は、円環状の緩衝部材(121)の減衰性能により振動を吸収する効果がある。振動の伝わる経路の一つとして、現像容器113からホルダ115、揺動ホルダ117を経由して現像スリーブ114、116という経路がある。このとき、上側のホルダ115と揺動ホルダ117との間に弾性部材(121)を入れることで、ホルダ115から揺動ホルダ117へ伝わる振動を効果的に減衰することが可能となる。
【0063】
三つ目の効果は、円環状の緩衝部材(121)と揺動ホルダ117の間に働く摩擦力により、揺動ホルダ117が揺動方向に振動する動きを規制する効果である。Oリング121は、上側の現像スリーブ114の中心軸を中心とした円周上で揺動ホルダ117に接触しているため、揺動ホルダ117が上側の現像スリーブ114の中心軸を中心として揺動方向に振動するのを効果的に減衰できる。
【0064】
この時、円環状の緩衝部材(121)と揺動ホルダ117との間に働く摩擦力は、下スリーブ押圧機構(118:図3)が現像スリーブ116を押圧する力に比べると十分に小さい。このため、円環状の緩衝部材(121)は、現像スリーブ116を揺動させて感光ドラム(1)との間に適切なギャップを設ける妨げとはならない。
【0065】
また、Oリング121は、内側ほどOリング121から離れるように傾斜した突起119と、内側ほどOリング121から離れるように傾斜した傾斜突き当て面120と、ベアリング122とによって三方向から囲まれている。Oリング121が三方向から挟み込まれて圧縮される構成のため、ホルダ115と揺動ホルダ117とに押圧されても外側へはみ出したりすることなく、安定して反発力を発生させることができる。
【0066】
また、部品の加工精度により、ホルダ115の突起119と、揺動ホルダ117の傾斜突き当て面120とによるOリング121の押圧量(つぶし量)はばらつくことがある。しかし、ホルダ115側の押圧部を突起119としているため、全面突き当てとした場合に比べて反発力を下げることで、押圧量がばらついても反発力の変動を少なくすることができる。
【0067】
なお、実施例1では、突起119をホルダ115に設けているが、揺動ホルダ117側に設けても、同様の効果を得ることができる。
【0068】
また、図8では機能の理解を容易にするために各部材の大きさを誇張している。実際の寸法は、現像スリーブ114、116の直径は20mmで両者の間隔は500μmである。ベアリング122の外径は16mm、内径は10mmである。Oリング121の直径は1.2mm、リング内径は10mmである。
【0069】
<実施例2>
支持部材は、ホルダ115に限定されない。現像容器113の一部として一体に形成した現像スリーブ114の軸受け部であってもよい。
【0070】
突き当て部は、突き当てコロ114G、116Gには限定されない。現像スリーブの端部に設けた絶縁材料のリングであってもよい。
【0071】
緩衝部材は、Oリング121には限定されない。ホルダ115と揺動ホルダ117との間で振動を減衰可能である限りにおいて、摩擦板、粘性材料、内部摩擦を持つ材料、不織布パッド等を採用できる。
【符号の説明】
【0072】
1 感光ドラム、2 コロナ帯電器、3 露光装置、4 現像装置
4G スライドガイド、5 転写ローラ、7 定着装置
8 バッファ、9 ホッパ
13 レジストローラ、15 排出ローラ、16 トレイ
100 画像形成装置、100C 制御部
105 押圧バネ、106 受け入れ口、107 攪拌部材
108 トナーセンサ、109 現像ブレード、112 駆動部
113 現像容器、114、116 現像スリーブ
114G、116G 突き当てコロ、115 ホルダ
117 揺動ホルダ、118 下スリーブ押圧機構、119 突起
120 傾斜突き当て面、121 Oリング、122 ベアリング
P 記録材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体にトナー像を現像する第1の現像剤担持体と、
前記像担持体にトナー像を現像する第2の現像剤担持体と、
前記第1の現像剤担持体を回転可能に支持する支持部材と、
前記第1の現像剤担持体を中心にして前記第2の現像剤担持体を回動可能に支持する揺動部材と、
前記第2の現像剤担持体を前記像担持体に向かって付勢する付勢手段と、
前記支持部材に対する前記揺動部材の振動を減衰可能な緩衝手段と、を有することを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記緩衝手段は、前記支持部材と前記揺動部材の対向間隔に挟み込んで配置されることを特徴とする請求項1記載の現像装置。
【請求項3】
前記緩衝手段は、粘弾性を持つ材料で形成されていることを特徴とする請求項2記載の現像装置。
【請求項4】
前記緩衝手段は、前記第1の現像剤担持体と同軸に配置され、前記支持部材と前記揺動部材との間で軸方向に圧縮されたゴム材料のリング部材であることを特徴とする請求項3記載の現像装置。
【請求項5】
前記リング部材は、前記支持部材と前記揺動部材との少なくとも一方と摩擦回転が可能な範囲で圧縮されていることを特徴とする請求項4記載の現像装置。
【請求項6】
前記支持部材と前記揺動部材の一方のリング部材当接面を平坦にする一方、他方のリング部材当接面には、回転方向について周期的な凹凸構造が形成されていることを特徴とする請求項5記載の現像装置。
【請求項7】
前記支持部材、前記揺動部材、前記第1の現像剤担持体、及び前記第2の現像剤担持体を含む現像装置を、前記像担持体から離間する方向へ移動可能に支持する案内手段を有し、
前記支持部材が前記現像装置に固定される一方、前記第1の現像剤担持体は、前記案内手段のガタつき範囲で前記現像装置が回動することにより、両端の突き当て部が前記像担持体に当接することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−175157(P2011−175157A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39954(P2010−39954)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】