説明

画像処理装置および方法

【課題】カラー画像上における色の違いがグレーの濃淡に適切に反映されかつ色の欠落がないグレースケール画像を生成することができる画像処理装置および方法を実現する。
【解決手段】カラー画像をグレースケール画像に変換する画像処理装置1は、カラー画像についての、RGB色空間におけるR(赤)、G(緑)およびB(青)の各要素の明度の値を取得する取得手段11と、RGBの各要素別にグレー濃淡の階調の範囲が画定されたグレースケール上において、取得手段11によって取得したRGBの各要素の明度に、当該要素に割り当てられたグレー濃淡の階調の範囲内のグレー濃淡の階調を対応付けることで、グレースケール画像に関するデータを生成する生成手段12と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー画像をグレースケール画像に変換する画像処理装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー画像からグレースケール画像を生成する場合、当該カラー画像についてのRGB(Red、Green、Blue)表色系の色空間(以下、単に「RGB色空間」と称する。)におけるRGBの各要素の明度を取得し、取得したRGBの3つの要素の明度それぞれを、もしくは取得したRGBの3つの要素の明度のうちの1つを、グレースケール上におけるグレー濃淡の階調に変換する。
【0003】
このような画像処理は、例えば半導体プロセスにおける検査装置において、検査対象物を撮像したカラー画像に基づき、検査対象物の欠陥を検査したり、検査対象物の外観を検査するのに用いられる(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
検査対象物が例えばプリント基板である場合、検査対象物上の配線パターン、レジストおよび各種部品などはそれ自身固有の色をそれぞれ有している。この場合、演算処理量を低減するために、検査対象物を撮像したカラー画像上で行われるのではなく、グレースケール画像に一旦変換した上で行われる。具体的には、撮像された検査対象物についてのカラー画像をグレースケール画像に一旦変換し、これを、同じくグレースケール画像として表わされた検査基準となるマスター画像と比較することで、検査対象物上の欠陥を見つけ出したり、検査対象物上の配線パターン、レジストもしくは各種部品などの外観を検査する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−237580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の「カラー画像について取得したRGBの3つの要素の明度それぞれを、もしくは取得したRGBの3つの要素の明度のうちの1つを、グレースケール上におけるグレー濃淡の階調に変換する」ことによりグレースケール画像を生成した場合、カラー画像では別個の色として存在した部分がグレースケール画像においては同じグレーの明度(濃淡度)で表わされてしまったり、カラー画像では存在していたはずの部分がグレースケール画像においては欠落してしまったりすることがある。
【0007】
図10は、カラー画像を例示する図(その1)である。また、図11は、図10に示されたカラー画像を従来の方法によりグレースケール画像に変換した場合を示す図である。なお、これ以降の図面のうちカラー画像を表わすものとした図面においては、色の違いを「点々」や「斜線」などのハッチングの種類の違いで表現することにする。
【0008】
図10に示すような、グレーの背景に赤(R)、緑(G)および青(B)の3つの円が表わされたカラー画像について従来の方法に従って実際に演算処理を実行してグレースケール画像に変換した場合、図11に示すようになる。すなわち、図10に示すカラー画像における赤(R)、緑(G)および青(B)の3つの円は、図11に示すグレースケール画像において円R”、G”およびB”にそれぞれ変換される。これらの図より、カラー画像においては赤(R)および緑(G)の別個の色として存在した2つの円が、グレースケール画像においては円R”およびG”として同じグレーの明度(濃淡度)で表わされてしまっていることが分かる。このことは、カラー画像上では本来は別個の色として存在した部分が、グレースケール画像に変換すると色の区別ができなくなってしまうことを意味する。
【0009】
図12は、カラー画像を例示する図(その2)である。また、図13は、図12に示されたカラー画像を従来の方法によりグレースケール画像に変換した場合を示す図である。図12に示すような、白色の背景に赤(R)、緑(G)および青(B)の3つの円が表わされたカラー画像について従来の方法に従って実際に演算処理を実行してグレースケール画像に変換した場合、図13に示すようになる。すなわち、図12に示すカラー画像における赤(R)、緑(G)および青(B)の3つの円は、図13に示すグレースケール画像において円R”、G”およびB”にそれぞれ変換される。これらの図より、カラー画像においては赤(R)および緑(G)の別個の色として存在した2つの円が、グレースケール画像においては円R”およびG”として同じグレーの明度(濃淡度)で表わされてしまっていることがわかる。またさらに、カラー画像では存在していた青(B)の円が、グレースケール画像においては欠落して背景の白色と同化してしまっていることが分かる。このことは、カラー画像で存在した部分が、グレースケール画像に変換すると欠落してしまうことを意味する。
【0010】
カラー画像をグレースケール画像に変換するときに生じ得る上述の色の欠落や重なりは、画像処理を用いた検査装置において大きな影響を及ぼす。すなわち、検査対象物を撮像したカラー画像をグレースケール画像に変換することで、検査対象物上の欠陥部分の画像が周囲の配線や他の部品の画像に埋もれてしまったり欠落してしまう可能性があり、また、検査対象物の外観を正確に検出することができない可能性がある。
【0011】
また、従来の方法では、例えば、カラー画像の或る特定の色をグレースケール画像上において強調するといったような調整は容易ではない。したがって、例えば半導体プロセスにおける検査装置において欠陥や外観の検出精度を上げるために、カラー画像をグレースケールに変換する処理について調整を行うことは、容易ではない。
【0012】
従って本発明の目的は、上記問題に鑑み、カラー画像上における色の違いがグレーの濃淡に適切に反映されかつ色の欠落がないグレースケール画像を生成することができる画像処理装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を実現するために、本発明においては、カラー画像をグレースケール画像に変換する画像処理装置は、カラー画像についての、RGB色空間におけるR(赤)、G(緑)およびB(青)の各要素の明度の値を取得する取得手段と、RGBの各要素別にグレー濃淡の階調の範囲が画定されたグレースケール上において、取得手段によって取得したRGBの各要素の明度に、当該要素に割り当てられたグレー濃淡の階調の範囲内のグレー濃淡の階調を対応付けることで、グレースケール画像に関するデータを生成する生成手段と、を備える。
【0014】
本発明によれば、演算処理装置によりカラー画像をグレースケール画像に変換する画像処理方法は、カラー画像についての、RGB色空間におけるR(赤)、G(緑)およびB(青)の各要素の明度の値を取得する取得ステップと、RGBの各要素別にグレー濃淡の階調の範囲が画定されたグレースケール上において、取得ステップにおいて取得したRGBの各要素の明度に、当該要素に割り当てられたグレー濃淡の階調の範囲内のグレー濃淡の階調を対応付けることで、グレースケール画像に関するデータを生成する生成ステップと、を備える。
【0015】
なお、上述の画像処理装置における各手段および画像処理方法における各ステップは、コンピュータ等の演算処理装置が実行することができるコンピュータプログラムの形式で実現される。以上の処理を実施する装置や、以上の処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムを作成することは、以下の説明を理解した当業者には容易に実施できる事項である。また、以上の処理をコンピュータにより実行させるコンピュータプログラムを記録媒体に格納するという事項も当業者には自明である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、カラー画像をグレースケール画像に変換したとき、カラー画像上における色の違いをグレースケール画像上においてグレーの濃淡に適切に反映させることができ、また、色の欠落が生じることもない。
【0017】
本発明によれば、カラー画像上における色の違いが、グレースケール画像上においても十分に認識できる程度のグレーの濃淡の度合いとして表わすことができるので、カラー画像をグレースケール画像に変換することによる画像そのものの視覚的変化を減らすことができる。
【0018】
したがって、本発明による画像処理を、例えば半導体プロセスにおける検査装置に用いれば、検査対象物上の欠陥の検出や、あるいは検査対象物上の配線パターン、レジストもしくは各種部品などの外観の検出についての精度を上げることができる。
【0019】
また、本発明によれば、カラー画像の或る特定の色をグレースケール画像上において強調するといったような調整も容易に行うことができる。したがって、例えば画像処理を用いた半導体プロセスにおける検査装置において、検査対象物上の欠陥の検出精度を上げる調整も容易である。また、検査対象物上の配線パターン、レジストおよび各種部品などはそれ自身固有の色をそれぞれ有しているので、或る特定の色に着目することで、検査対象物上の配線パターン、レジストもしくは各種部品のうちの所望の部材の外観を強調したグレースケール画像を生成することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例による画像処理装置の概略的なブロック図である。
【図2】本発明の実施例において設定されるグレースケールの定義の第1の具体例を説明する図である。
【図3】図10に示されたカラー画像を本発明の実施例の第1の具体例による画像処理装置によりグレースケール画像に変換した場合を示す図である。
【図4】図12に示されたカラー画像を本発明の実施例の第1の具体例による画像処理装置によりグレースケール画像に変換した場合を示す図である。
【図5】本発明の実施例において設定されるグレースケールの定義の第2の具体例を説明する図である。
【図6】本発明の実施例において設定されるグレースケールの定義の第3の具体例を説明する図である。
【図7】本発明の実施例において設定されるグレースケールの定義の第4の具体例を説明する図である。
【図8】記録媒体に格納されたプログラムにより動作する本発明の実施例による画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施例による画像処理装置を用いた検査装置を説明する図である。
【図10】カラー画像を例示する図(その1)である。
【図11】図10に示されたカラー画像を従来の方法によりグレースケール画像に変換した場合を示す図である。
【図12】カラー画像を例示する図(その2)である。
【図13】図12に示されたカラー画像を従来の方法によりグレースケール画像に変換した場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の実施例による画像処理装置の概略的なブロック図である。本発明の実施例によれば、カラー画像をグレースケール画像に変換する画像処理装置1は、カラー画像についての、RGB色空間におけるR(赤)、G(緑)およびB(青)の各要素の明度の値を取得する取得手段11と、RGBの各要素別にグレー濃淡の階調の範囲が画定されたグレースケール上において、取得手段11によって取得したRGBの各要素の明度に、当該要素に割り当てられたグレー濃淡の階調の範囲内のグレー濃淡の階調を対応付けることで、グレースケール画像に関するデータを生成する生成手段12と、を備える。
【0022】
本発明の実施例による画像処理装置1における取得手段11および生成手段12は、コンピュータ等の演算処理装置が実行することができるコンピュータプログラムの形式で実現され、すなわち、本発明による画像処理は、コンピュータ等の演算処理装置によって実行される。
【0023】
本発明印も実施例による画像処理を実行する前に、カラー画像に関するデータを、本発明による画像処理を実行するコンピュータすなわち画像処理装置1に入力する。
【0024】
まず第1のステップとして、画像処理装置1内の取得手段11は、カラー画像についての、RGB色空間におけるR(赤)、G(緑)およびB(青)の各要素の明度の値を取得する。取得されたデータは、コンピュータのハードディスク等の記憶装置に記憶され、次段の生成手段12による演算処理時にはコンピュータの作業メモリに適宜ロードされる。
【0025】
続く第2のステップでは、画像処理装置1内の生成手段12は、RGBの各要素別にグレー濃淡の階調の範囲が画定されたグレースケール上において、取得手段11によって取得したRGBの各要素の明度に、当該要素に割り当てられたグレー濃淡の階調の範囲内のグレー濃淡の階調を対応付けることで、グレースケール画像に関するデータを生成する。グレースケールの定義および生成手段12による処理の具体例については後述する。
【0026】
生成手段12により生成されたグレースケール画像に関するデータは、画像処理装置1内のもしくは画像処理装置1外の記憶装置に記憶される。例えば半導体プロセスにおける検査装置に用いる場合、本発明の実施例による画像処理装置により生成されたグレースケール画像と、同じくグレースケール画像として表わされた検査基準となるマスター画像と比較し、検査対象物上の欠陥を見つけ出したり、検査対象物上の配線パターン、レジストもしくは各種部品などの外観を検査する。
【0027】
また、本発明の実施例による画像処理装置1は、ディスプレイ13を備えてもよい。本発明の実施例による画像処理装置1では、後述するようにグレースケールの定義を適宜設定することによりグレースケール画像のグレーの濃淡やその分布の程度などをカスタマイズすることができるが、生成されたグレースケール画像をディスプレイ13に表示させれば、ユーザは画像処理装置1による処理結果をすぐに確認することができるので、カラー画像の或る特定の色をグレースケール画像上において強調するといったような調整も容易に行うことができる。なお、ディスプレイについては、画像処理装置1内に必ずしも設ける必要はなく、画像処理装置1に外付けするようなものであっても良い。
【0028】
また、本発明の実施例による画像処理装置1により生成されたグレースケール画像に関するデータは、画像処理装置1内のもしくは画像処理装置1外の記憶装置に記憶しておいて後日利用できるようにしてもよい。
【0029】
次に、本発明の実施例による画像処理装置1におけるグレースケールの定義および生成手段12による処理について説明する。本発明の実施例では、グレースケールの定義内容については適宜設定することができるが、以下、いくつか具体例を挙げて説明する。
【0030】
図2は、本発明の実施例において設定されるグレースケールの定義の第1の具体例を説明する図である。RGB色空間における色は、R(赤)、G(緑)およびB(青)の各要素がどれだけ含まれているかによって表現することができる。以下、RGBの各要素の明度を、一例として0から255までの256段階の階調で表現することにする。同様にグレースケールのグレー濃淡の階調(明度)を、一例として0から255までの256段階の階調で表現することにする。なお、これらの階調数自体は本発明を限定するものではなく、例えばこの階調数を減らすことによってコンピュータの演算処理量を低減してもよく、あるいは、この階調数を増やすことによって解像度をより高めても良い。
【0031】
図2(a)に示すように、一例として、カラー画像の或る色についての、RGB色空間におけるR(赤)の明度が「219」、G(緑)の明度が「150」、B(青)の明度が「60」である場合を考える。
【0032】
RGBの各要素別に、グレースケール上におけるグレー濃淡の階調の範囲が画定される。第1の具体例では、図2(b)に示すように、RGBの各要素別に対応するグレースケール上の各グレー濃淡の階調の範囲を、グレースケール上のグレー濃淡の階調全体(すなわち0から255)を3で分割する。すなわち、第1の具体例では、グレースケール上において、明度が0から85までの範囲をR(赤)の要素に、明度が86から170までの範囲をG(緑)の要素に、明度が171から255までの範囲をB(青)の要素に、それぞれ割り当てる。これらグレースケール上に割り当てられた各範囲を「R’」、「G’」および「B’」と称する。このように、グレースケール上のR’、G’およびB’には、それぞれ86段階の階調が存在する。
【0033】
第1の具体例では、カラー画像におけるRGBの各要素の明度は256段階の階調でそれぞれ表わされるが、グレースケール上では86段階の階調で表わされるので、RGB色空間におけるRGBの各要素の明度を、3分の1に圧縮する。別の例として、カラー画像におけるRGBの各要素の明度は256段階の階調でそれぞれ表わしたときにグレースケール上では縦オアb1536段階の階調で表わすものとすると、RGB色空間におけるRGBの各要素の明度を、2倍に拡大する。
【0034】
グレースケール上におけるR’、G’およびB’の各範囲は、それぞれ、「0〜85」、「86〜170」および「171〜255」に画定されるので、上記圧縮された各値に、「0」、「85」および「170」をオフセット分として加算する。このようにオフセット分を加算するので、カラー画像におけるRGBの各要素の明度が、グレースケール上において同一の明度に対応付けられることはない。第1の具体例の場合、R(赤)の明度「219」は「73」に圧縮された上でオフセット分「0」が加算されるので、グレースケール上では明度が「73」の階調に対応付けられる。G(緑)の明度「150」は「50」に圧縮された上でオフセット分「85」が加算されるので、グレースケール上では明度が「135」の階調に対応付けられる。B(青)の明度「60」は「20」に圧縮された上でオフセット分「170」が加算されるので、グレースケール上では明度が「190」の階調に対応付けられる。このように、カラー画像におけるRGBの各要素の明度「219」、「150」および「60」は、グレースケール画像においては、図2(c)に示すように、「0〜85」で画定されるR’の範囲に収まる「73」に、「86〜170」で画定されるG’の範囲に収まる「135」に、「171〜255」で画定されるB’の範囲に収まる「190」に、各成分の階調としてそれぞれ対応付けられることになる。
【0035】
このようにグレースケール上のR’、G’およびB’の各範囲内の値に対応付けられた各成分の階調は合成され、グレースケール上における明度が確定する。この合成の方法としては、例えば、R’、G’およびB’の各範囲内の値に対応付けられた各成分の階調を加算し、加算した結果を2で割る方法がある。このように加算した結果を「2で割る」理由は、オフセット分としてGについては「85」をBについては「170」を加算しており、つまりは合計「255」がオフセット分として、もともとの階調数「255」に対して余分に加算されているからである。第1の具体例についてこの合成方法を採用すれば、グレースケール上における明度は、「(73+135+190)÷2」を計算することによって得れる「199」となる。他の合成方法の例としては、R’、G’およびB’の各範囲内の値に対応付けられた各成分の階調のうち、最大値を採用する方法がある。第1の具体例についてこの合成方法を採用すれば、グレースケール上における明度は、「190」となる。さらに他の合成方法の例としては、R’、G’およびB’の各範囲内の値に対応付けられた各成分の階調のうち、最小値を採用する方法がある。第1の具体例についてこの合成方法を採用すれば、グレースケール上における明度は、「73」となる。このように、合成方法如何によって、得られるグレースケールの明度が変わるので、ユーザは、所望のグレー濃淡度が得られるよう、合成方法を適宜選択すればよい。
【0036】
図3は、図10に示されたカラー画像を本発明の実施例の第1の具体例による画像処理装置によりグレースケール画像に変換した場合を示す図である。図10に示すような、グレーの背景に赤(R)、緑(G)および青(B)の3つの円が表わされたカラー画像について、本発明の実施例の第1の具体例による画像処理装置により実際に演算処理を実行してグレースケール画像に変換した場合、図3に示すようになる。すなわち、図10に示すカラー画像における赤(R)、緑(G)および青(B)の3つの円は、図3に示すグレースケール画像において円R”、G”およびB”にそれぞれ変換される。
【0037】
また、図4は、図12に示されたカラー画像を本発明の実施例の第1の具体例による画像処理装置によりグレースケール画像に変換した場合を示す図である。図12に示すような、グレーの背景に赤(R)、緑(G)および青(B)の3つの円が表わされたカラー画像について、本発明の実施例の第1の具体例による画像処理装置により実際に演算処理を実行してグレースケール画像に変換した場合、図3に示すようになる。すなわち、図12に示すカラー画像における赤(R)、緑(G)および青(B)の3つの円は、図4に示すグレースケール画像において円R”、G”およびB”にそれぞれ変換される。
【0038】
以上の図より、本発明の実施例によれば、カラー画像においては赤(R)、緑(G)および青(B)の別個の色として存在した3つの円が、グレースケール画像においては円R”、G”およびB”として異なるグレーの明度(濃淡度)で表わすことができていることが分かる。このことは、本発明の実施例によれば、カラー画像上における色の違いをグレースケール画像上においてグレーの濃淡に適切に反映させることができ、また、色の欠落が生じることもないことを意味する。
【0039】
本発明の実施例では、RGBの各要素別に、グレースケール上におけるグレー濃淡の階調の範囲が画定されるが、グレースケール上において、各グレー濃淡の階調の範囲は、R(赤)、G(緑)およびB(青)の各要素のいずれかを任意に割り当て可能である。上述の第1の具体例では、グレースケール上における明度が0から85までの範囲をR(赤)の要素に、明度が86から170までの範囲をG(緑)の要素に、明度が171から255までの範囲をB(青)の要素に、それぞれ割り当てた。次に説明する第2の具体例は、このRGBの各要素の割り当ての順番を変えたものである。
【0040】
図5は、本発明の実施例において設定されるグレースケールの定義の第2の具体例を説明する図である。図5(a)に示すように、一例として、カラー画像の或る色についての、RGB色空間におけるR(赤)の明度が「219」、G(緑)の明度が「150」、B(青)の明度が「60」である場合を考える。すなわち、図5(a)は、図2(a)と同じ図である。
【0041】
第2の具体例では、グレースケール上におけるRGBの各要素の割り当てについて、図5(b)に示すように、グレースケール上における明度が0から85までの範囲をG(緑)の要素に、明度が86から170までの範囲をB(青)の要素に、明度が171から255までの範囲をR(赤)の要素に、それぞれ割り当てる。
【0042】
このとき、R(赤)の明度「219」は「73」に圧縮された上でオフセット分「170」が加算されるので、グレースケール上では明度が「243」の階調に対応付けられる。G(緑)の明度「150」は「50」に圧縮された上でオフセット分「0」が加算されるので、グレースケール上では明度が「85」の階調に対応付けられる。B(青)の明度「60」は「20」に圧縮された上でオフセット分「85」が加算されるので、グレースケール上では明度が「105」の階調に対応付けられる。このように、図5(a)に示すカラー画像におけるRGBの各要素の明度「219」、「150」および「60」は、グレースケール画像においては、図5(c)に示すように、「170〜255」で画定されるR’の範囲に収まる「243」に、「0〜85」で画定されるG’の範囲に収まる「50」に、「85〜170」で画定されるB’の範囲に収まる「105」に、各成分の階調としてそれぞれ対応付けられることになる。このようにグレースケール上のR’、G’およびB’の各範囲内の値に対応付けられた各成分の階調は合成され、グレースケール上における明度が確定する。この合成の方法としては、例えば、R’、G’およびB’の各範囲内の値に対応付けられた各成分の階調を加算し、加算した結果を2で割る方法を採用すると、グレースケール上における明度は、「(243+50+105)÷2」を計算することによって得られる「199」となる。
【0043】
上述の第1および第2の具体例では、グレースケール上の各グレー濃淡の階調の範囲に属する階調数を、RGBの各要素均等に割り当てた。次に説明する第3の具体例は、RGBの各要素の割り当てられるグレースケール上の各グレー濃淡の階調の範囲に属する階調数を、RGBの各要素について、任意に設定したものである。
【0044】
図6は、本発明の実施例において設定されるグレースケールの定義の第3の具体例を説明する図である。図6(a)に示すように、一例として、カラー画像の或る色についての、RGB色空間におけるR(赤)の明度が「219」、G(緑)の明度が「150」、B(青)の明度が「60」である場合を考える。すなわち、図6(a)は、図2(a)もしくは図5(b)と同じ図である。
【0045】
第3の具体例では、グレースケール上におけるRGBの各要素の割り当てについて、図6(b)に示すように、グレースケール上における明度が0から127までの範囲をR(赤)の要素に、明度が128から213までの範囲をG(緑)の要素に、明度が214から255までの範囲をB(青)の要素に、それぞれ割り当てる。図6(a)に示すように、RGBの各要素の明度は256段階の階調でそれぞれ表わされるが、グレースケール上では、図6(b)に示すように、R’については127段階の階調で表わされ、G’については86段階の階調で表わされ、G’については43段階の階調で表わされるので、Rの明度を2分の1に圧縮し、Gの明度を3分の1に圧縮し、Bの明度を6分の1に圧縮する。グレースケール上におけるR’、G’およびB’の各範囲は、それぞれ、「0〜127」、「128〜213」および「214〜255」に画定されるので、上記圧縮された各値に、「0」、「127」および「213」をオフセット分として加算する。すなわち、図6(b)に示すように、R(赤)の明度「219」は「110」に圧縮された上でオフセット分「0」が加算されるので、グレースケール上では明度が「110」の階調に対応付けられる。G(緑)の明度「150」は「50」に圧縮された上でオフセット分「127」が加算されるので、グレースケール上では明度が「177」の階調に対応付けられる。B(青)の明度「60」は「10」に圧縮された上でオフセット分「213」が加算されるので、グレースケール上では明度が「223」の階調に対応付けられる。このように、図6(a)に示すカラー画像におけるRGBの各要素の明度「219」、「150」および「60」は、グレースケール画像においては、図6(c)に示すように、「0〜127」で画定されるR’の範囲に収まる「110」に、「128〜213」で画定されるG’の範囲に収まる「177」に、「214〜255」で画定されるB’の範囲に収まる「223」に、各成分の階調としてそれぞれ対応付けられることになる。このようにグレースケール上のR’、G’およびB’の各範囲内の値に対応付けられた各成分の階調は合成され、グレースケール上における明度が確定する。
【0046】
上述の第1〜第3の具体例では、グレースケール上を3分割し、これら3つの範囲をRGBの各要素にそれぞれ割り当てた。次に説明する第4の具体例は、グレースケール上の各前記グレー濃淡の階調の範囲は、前記グレースケール上のグレー濃淡の階調全体を「3」以外の「3の倍数値」で分割することで画定するものである。
【0047】
図7は、本発明の実施例において設定されるグレースケールの定義の第4の具体例を説明する図である。第4の具体例では一例として、グレースケール上を6つの領域に分割する。なお、第4の具体例では6つの領域に範囲することにしたが、分割する範囲の個数は3の倍数個であればよい。
【0048】
第4の具体例では、図7に示すように、グレースケール上における明度が「0〜43」および「128〜170」の範囲をR(赤)の要素に、明度が「44〜85」および「171〜213」の範囲をG(緑)の要素に、明度が「86〜127」および「214〜255」の範囲をB(青)の要素に、それぞれ割り当てる。なお、割り当てるべきRGBの順番はこれに限定されるものではなく、第2の具体例において説明したように、このRGBの各要素の割り当ての順番を任意に入れ替えても良い。
【0049】
本発明の実施例によれば、RGBの各要素別に、グレースケール上におけるグレー濃淡の階調の範囲が画定されるが、第1〜第4の具体例で説明したように、グレースケールの定義内容については適宜設定することができる。上述した第1〜第4の具体例は適宜組み合わせて実行してもよい。グレースケールの定義を適宜設定することにより、生成されるグレースケール画像のグレーの濃淡やその分布の程度などをカスタマイズすることができる。
【0050】
上述した本発明の実施例による画像処理装置は、コンピュータを用いて実現される。図8は、記録媒体に格納されたプログラムにより動作する本発明の実施例による画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【0051】
本発明による画像処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムは、図8に示すように、記憶媒体(フレキシブルディスク、CD−ROM等の外部記憶媒体)110に格納されており、例えば、次に説明するような構成によるコンピュータにインストールされて画像処理装置として動作する。
【0052】
CPU111は、画像処理装置全体を制御する。このCPU111に、バス112を介してROM113、RAM114、HD(ハードディスク装置)115、マウスやキーボード等の入力装置116、外部記憶媒体ドライブ装置117およびLCD、CRT、プラズマディスプレイ、有機EL等の表示装置118が接続されている。CPU111の制御プログラムはROM113に格納されている。
【0053】
本発明による画像処理を実行するコンピュータプログラム(画像処理プログラム)は、記憶媒体110からHD115にインストール(記憶)される。また、RAM114には、画像処理をCPU111が実行する際の作業領域や、画像処理を実行するコンピュータプログラムの一部が記憶される領域が確保されている。また、HD115には、入力データ、最終データ、さらにOS(オペレーティングシステム)等が予め記憶される。
【0054】
まず、コンピュータの電源を投入すると、CPU111がROM110から制御プログラムを読み出し、さらにHD115からOSを読み込み、OSを起動させる。これによりコンピュータは画像処理プログラムを記憶媒体110からインストール可能な状態となる。
【0055】
次に、記憶媒体110を外部記憶媒体ドライブ装置117に装着し、入力装置116から制御コマンドをCPU111に入力し、記憶媒体110に格納された画像処理プログラムを読み取ってHD115等に記憶する。つまり画像処理プログラムがコンピュータにインストールされる。
【0056】
その後は、画像処理プログラムを起動させると、コンピュータは画像処理装置として動作する。オペレータは、表示装置118に表示される対話形式による作業内容と手順に従って、入力装置116を操作することで、上述した画像処理を実行することができる。処理の結果得られた「グレースケール画像に関するデータ」は、例えば、HD115に記憶しておいて後日利用できるようにしたり、あるいは、処理結果を表示装置118に視覚的に表示するのに用いてもよい。
【0057】
なお、図8のコンピュータでは、記憶媒体110に記憶されたコンピュータプログラムをHD115にインストールするようにしたが、これに限らず、LAN等の情報伝送媒体を介して、コンピュータにインストールされてもよいし、コンピュータに内蔵のHD115に予めインストールされておいてもよい。
【0058】
図9は、本発明の実施例による画像処理装置を用いた検査装置を説明する図である。本発明の実施例による画像処理装置1を、半導体プロセスにおける検査装置200に用いる場合、本発明の実施例による画像処理装置1(例えばコンピュータ)は、ディジタルカメラ2で撮像した検査対象物3のカラー画像を、上述のようにグレースケール画像に変換する。そして、画像処理装置1により生成されたグレースケール画像のデータと、同じくグレースケール画像として表わされた検査基準となるマスター画像データと比較し、検査対象物上の欠陥を見つけ出したり、検査対象物上の配線パターン、レジストもしくは各種部品などの外観を検査し、処理結果を検査結果データとして出力する。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、カラー画像をグレースケール画像に変換する画像処理およびこれを利用する検査装置に利用することができる。本発明によれば、カラー画像上における色の違いが、グレースケール画像上においても十分に認識できる程度のグレーの濃淡の度合いとして表わすことができるので、本発明による画像処理を、例えば半導体プロセスにおける検査装置に用いれば、検査対象物上の欠陥の検出や、あるいは検査対象物上の配線パターン、レジストもしくは各種部品などの外観の検出についての精度を上げることができる。
【0060】
また、本発明によれば、カラー画像の或る特定の色をグレースケール画像上において強調するといったような調整も容易に行うことができる。したがって、例えば画像処理を用いた半導体プロセスにおける検査装置において、検査対象物上の欠陥の検出精度を上げる調整も容易である。また、検査対象物上の配線パターン、レジストおよび各種部品などはそれ自身固有の色をそれぞれ有しているので、或る特定の色に着目することで、検査対象物上の配線パターン、レジストもしくは各種部品のうちの所望の部材の外観を強調したグレースケール画像を生成することも可能となる。
【符号の説明】
【0061】
1 画像処理装置
2 ディジタルカメラ
3 検査対象物
11 取得手段
12 生成手段
13 ディスプレイ
110 記録媒体
111 CPU
112 バス
113 ROM
114 RAM
115 ハードディスク装置
116 入力装置
117 外部記憶媒体ドライブ装置
118 表示装置
200 検査装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラー画像をグレースケール画像に変換する画像処理装置であって、
カラー画像についての、RGB色空間におけるR(赤)、G(緑)およびB(青)の各要素の明度の値を取得する取得手段と、
RGBの各要素別にグレー濃淡の階調の範囲が画定されたグレースケール上において、前記取得手段によって取得したRGBの各要素の明度に、当該要素に割り当てられた前記グレー濃淡の階調の範囲内のグレー濃淡の階調を対応付けることで、グレースケール画像に関するデータを生成する生成手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記グレースケール上の各前記グレー濃淡の階調の範囲において、当該範囲に属する階調の個数を任意に設定可能である請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記グレースケール上の各前記グレー濃淡の階調の範囲は、前記グレースケール上のグレー濃淡の階調全体を3の倍数値で分割することで画定される請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記グレースケール上において、各前記グレー濃淡の階調の範囲は、R(赤)、G(緑)およびB(青)の各要素のいずれかを任意に割り当て可能である請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記生成手段は、
前記取得手段によって取得したRGBの各要素の明度の値を、当該要素に割り当てられた前記グレー濃淡の階調の範囲に属する階調の個数に応じて、圧縮もしくは拡大し、これを当該要素に割り当てられた前記グレー濃淡の階調の範囲内のグレー濃淡の階調に対応付ける請求項2または3に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記グレースケール画像に関するデータに基づいて、前記グレースケール画像を表示するディスプレイをさらに備える請求項1〜5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
演算処理装置によりカラー画像をグレースケール画像に変換する画像処理方法であって、
カラー画像についての、RGB色空間におけるR(赤)、G(緑)およびB(青)の各要素の明度の値を取得する取得ステップと、
RGBの各要素別にグレー濃淡の階調の範囲が画定されたグレースケール上において、前記取得ステップにおいて取得したRGBの各要素の明度に、当該要素に割り当てられた前記グレー濃淡の階調の範囲内のグレー濃淡の階調を対応付けることで、グレースケール画像に関するデータを生成する生成ステップと、
を備えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
前記グレースケール上の各前記グレー濃淡の階調の範囲において、当該範囲に属する階調の個数を任意に設定可能である請求項7に記載の画像処理方法。
【請求項9】
前記グレースケール上の各前記グレー濃淡の階調の範囲は、前記グレースケール上のグレー濃淡の階調全体を3の倍数値で分割することで画定される請求項7に記載の画像処理方法。
【請求項10】
前記グレースケール上において、各前記グレー濃淡の階調の範囲は、R(赤)、G(緑)およびB(青)の各要素のいずれかを任意に割り当て可能である請求項7に記載の画像処理方法。
【請求項11】
前記生成ステップは、
前記取得ステップにおいて取得したRGBの各要素の明度の値を、当該要素に割り当てられた前記グレー濃淡の階調の範囲に属する階調の個数に応じて、圧縮もしくは拡大し、これを当該要素に割り当てられた前記グレー濃淡の階調の範囲内のグレー濃淡の階調に対応付ける請求項8または9に記載の画像処理方法。
【請求項12】
前記グレースケール画像に関するデータに基づいて、前記グレースケール画像をディスプレイに表示する表示ステップをさらに備える請求項7〜11のいずれか一項に記載の画像処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−247689(P2011−247689A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119594(P2010−119594)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】