説明

画像形成装置及びその制御方法

【課題】柔軟性の高い装置構成や機能構成を実現することによって、技術の多様化やユーザの利用形態の多様化に対応することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る画像形成装置は、記録紙に画像を印刷する第1の画像印刷モジュールと、前記記録紙と同じ記録紙に印刷する場合は、前記第1の画像印刷モジュールに対して直列な給紙系列により印刷可能であり、前記記録紙と異なる記録紙に印刷する場合は、前記第1の画像印刷モジュールに対して並列な給紙系列により前記第1の画像印刷モジュールと同時並行的に印刷可能である第2の画像印刷モジュールと、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及びその制御方法に係り、特に、複数の機能を一台で実現することができる画像形成装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、異なった種類の画像形成方式を組み合わせた画像形成装置、例えば電子写真方式とインクジェット方式とを組み合わせた画像形成装置、に関する技術が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、原稿に付加情報を加えて画像を形成することが可能な複写機において、電子写真方式によって画像を形成する第1の画像形成手段と、付加情報に関する画像を形成することが可能な電子写真方式以外の方式(例えばインクジェット方式)による第2の画像形成手段とを備える技術が開示されている。
【0004】
また、近時は、1つの装置にコピー機能、プリンタ機能、FAX機能、スキャン機能、画像データ保存機能等、様々な機能が集約された多機能装置が普及してきている。この多機能装置はMFP(Multi-Functional Peripheral)と呼ばれる。ユーザはMFPが提供する種々の機能を目的に応じて使い分け、業務効率の改善を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−22546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、情報処理技術の進展に伴って所謂電子文書が増加し、印刷する対象物も従来の紙文書だけでなく電子文書と紙文書が混在する状態が一般的となってきている。これに伴って、セキュリティの強化等の高度な情報管理技術が画像形成装置に求められている。
【0007】
また、印刷の品質に関するユーザの要望も多様化してきている。単に美しい印刷を追及するだけではなく、ユーザの多様な利用形態にマッチした品質やサービスが求められている。
【0008】
他方、印刷速度に関するユーザの要望も多様化傾向にある。単純に高速化を追求すると装置の大型化や高価格化となり、結果的には特定のユーザにしか受け入れてもらえない装置となりかねない。
【0009】
このように、1台の装置で予め定められた画一的な機能を実現する従来からの装置形態では、上記のような技術の多様化やユーザの利用形態の多様化に十分対応しきれない状況になってきている。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、柔軟性の高い装置構成や機能構成を実現することによって、技術の多様化やユーザの利用形態の多様化に対応することができる画像形成装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る画像形成装置は、記録紙に画像を印刷する第1の画像印刷モジュールと、前記記録紙と同じ記録紙に印刷する場合は、前記第1の画像印刷モジュールに対して直列な給紙系列により印刷可能であり、前記記録紙と異なる記録紙に印刷する場合は、前記第1の画像印刷モジュールに対して並列な給紙系列により前記第1の画像印刷モジュールと同時並行的に印刷可能である第2の画像印刷モジュールと、を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る画像形成装置は、記録紙に画像を印刷する第1の画像印刷モジュールと、前記記録紙と同じ記録紙に印刷する場合は、前記第1の画像印刷モジュールに対して直列な給紙系列により印刷可能であり、前記記録紙と異なる記録紙に印刷する場合は、前記第1の画像印刷モジュールに対して並列な給紙系列により前記第1の画像印刷モジュールと同時並行的に印刷可能である第2の画像印刷モジュールと、を備え、前記第1の画像印刷モジュールと前記第2の画像印刷モジュールは夫々異なる画像形成方式によって画像を印刷する、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る画像形成装置の制御方法は、第1の画像印刷モジュールを用いて記録紙に画像を印刷し、第2の印刷モジュールを用いて、前記記録紙と同じ記録紙に印刷する場合は、前記第1の画像印刷モジュールに対して直列な給紙系列により第2の印刷モジュールを用いて印刷し、前記記録紙と異なる記録紙に印刷する場合は、前記第1の画像印刷モジュールに対して並列な給紙系列により前記第1の画像印刷モジュールと同時並行的に印刷する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る画像形成装置及びその制御方法によれば、柔軟性の高い装置構成や機能構成を実現することによって、技術の多様化やユーザの利用形態の多様化に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の構成例を示す図。
【図2】第1の画像形成装置の制御方法の処理例を示すフローチャート。
【図3】第1の実施形態に係る画像形成装置における記録紙の搬送経路(給紙系列)を示す図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置の構成例を示す図。
【図5】第2の実施形態に係る画像形成装置における記録紙の搬送経路(給紙系列)を示す図。
【図6】第1又は第2の実施形態に係る画像形成装置において着脱可能な画像印刷モジュールの構成例を示す図。
【図7】第2の実施形態に係る画像形成装置における地紋印刷を説明する図。
【図8】第2の実施形態に係る画像形成装置における透かし印刷(隠し情報印刷)を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
(1)第1の実施形態
図1は、第1の実施形態に係る画像形成装置1の構成例を模式的に示す図である。画像形成装置1は、例えば、複写機、MFP、プリンタ等のように記録紙に画像形成(画像印刷)する機能を有する装置である。図1では、主に画像印刷に関係する構成品を抽出して図示しており、画像印刷以外の機能に関する構成品、例えば複写機におけるスキャナ部や画像処理部は図示を省略している。
【0018】
画像形成装置1は複数の画像印刷モジュールを具備しており、例えば図1に例示したように、第1の画像印刷モジュール10aと、第2の画像印刷モジュール10bの2つの画像印刷モジュールを有している。
【0019】
また、第1の画像印刷モジュール10aに対応して、未印刷の記録紙を収容する複数の給紙トレイ43a、44a、45aを有し、印刷済みの記録紙を排紙するための排紙トレイ30aを有している。
【0020】
同様に、第2の画像印刷モジュール10bに対応して、未印刷の記録紙を収容する複数の給紙トレイ43b、44b、45bを有し、印刷済みの記録紙を排紙するための排紙トレイ30bを有している。
【0021】
第1の実施形態に係る画像形成装置1では、2つの画像印刷モジュール10a、10bはいずれも同種の画像印刷方式を用いており、図1は夫々電子写真方式を用いた画像印刷モジュールの構成を示している。
【0022】
各画像印刷モジュール10a、10bは、カラー印刷可能なタンデム型の構成となっており、シアン色(C)に対応するトナーモジュール11a、11bと感光ドラム12a、12b、マゼンタ色(M)に対応するトナーモジュール13a、13bと感光ドラム14a、14b、イエロー色(Y)に対応するトナーモジュール15a、15bと感光ドラム16a、16b、及びブラック色(K)に対応するトナーモジュール17a、17bと感光ドラム18a、18bを夫々備えている。
【0023】
各トナーモジュールは、帯電部、露光部、現像部、除電部等(いずれも図示せず)を有しており、これらは各感光ドラムの円周方向に配設されている。
【0024】
また、各画像印刷モジュールは、中間転写ベルト19a、19bを有しており、各中間転写ベルト19a、19bは駆動ローラ20a、20bと転写ローラ22a、22bの間で連続回転可能に構成されている。
【0025】
さらに、各画像印刷モジュールは、転写ローラ22a、22bと対になる転写ローラ21a、21bを有するほか、定着ローラ対23a、24a、及び23b、24bを夫々具備している。
【0026】
各トナーモジュールによって、各感光ドラムの表面にC、M、Y、Kの各色に対応したトナー画像が形成される。各色のトナー画像は、中間転写ベルト19a、19bの上に位置ずれが発生しないように重ねて中間転写され、フルカラーのトナー画像が中間転写ベルト19a、19b上に形成される。
【0027】
一方、給紙トレイ(例えば給紙トレイ43a及び43b)に収容されている記録紙はピックアップローラ41a、42a、及び41b、42bによって取り出され、図示しない搬送機構によって転写ローラ21a、22a、及び転写ローラ21b、22bの各ニップ部に導かれる。
【0028】
各ニップ部では、中間転写ベルト19a、19b上のトナー画像が記録紙に夫々転写される。その後記録紙は定着ローラ対23a、24a、及び23b、24bのニップ部に搬送され、ニップ部における加熱と加圧によりトナー画像が記録紙に定着される。
【0029】
このように、第1の実施形態に係る画像形成装置1では、同じ電子写真方式を用いた画像印刷モジュール10a、10bが並列に配置された構成となっている。
【0030】
次に、上記のように構成された画像形成装置1の制御方法について説明する。図2は、画像形成装置1の制御方法、とくに2つの画像印刷モジュール10a、10bによる印刷処理の例を示すフローチャートである。
【0031】
まず、ステップST1にて、ユーザによって設定された印刷モードの入力を行う。印刷モードとは、例えば片面印刷モード或いは両面印刷モードのことである。片面印刷モードの場合には(ステップST2のYES)、ステップST3及びステップST4へ進む。一方、両面印刷モードの場合には(ステップST2のNO)、ステップST5乃至ステップST8へ進む。
【0032】
図3(a)は、片面印刷モードの場合における記録紙の流れを太い矢印で示した図である。片面印刷モードにて印刷が開始されると、第1の画像印刷モジュール10aには、第1の給紙トレイ43a(又は44a、45a)に収容されている記録紙がピックアップローラ41a、42aによって取り出され、第1の搬送経路100aによって第1の画像印刷モジュール10a内を搬送される。この記録紙には、転写ローラ21a、22aによってトナー画像が中間転写ベルト19aから転写され、定着ローラ23a、24aによってトナー画像が記録紙に定着される。
【0033】
一方、この処理と同時並行的に、第2の画像印刷モジュール10bには、第2の給紙トレイ43b(又は44b、45b)に収容されている記録紙がピックアップローラ41b、42bによって取り出され、第2の搬送経路100bによって第2の画像印刷モジュール10b内を搬送される。この記録紙には、転写ローラ21b、22bによってトナー画像が中間転写ベルト19bから転写され、定着ローラ23b、24bによってトナー画像が記録紙に定着さる。(ステップST3)。
【0034】
このように、第1、及び第2の画像印刷モジュール10a、10bで同時並行に片面印刷された記録紙は、その後、第1の排紙トレイ30aと第2の排紙トレイ30bに夫々排紙される(ステップST4)。
【0035】
これに対して、図3(b)は、両面印刷モードの場合における記録紙の流れを太い矢印で示した図である。両面印刷モードにて印刷が開始されると、まず、第1の画像印刷モジュール10aには、第1の給紙トレイ43a(又は44a、45a)に収容されている記録紙がピックアップローラ41a、42aによって取り出され、両面印刷用の搬送経路200によって第1の画像印刷モジュール10a内を搬送される。この記録紙には、転写ローラ21a、22aによってトナー画像が中間転写ベルト19aから転写されるが、このとき記録紙の表面に転写される。その後表面のトナー画像は定着ローラ23a、24aによって記録紙に定着される(ステップST5)。
【0036】
両面印刷用の搬送経路200は、定着ローラ23a、24aから、第2の画像印刷モジュール10bに向かうように構成されている。より具体的には、第2の画像印刷モジュール10b内の転写ローラ21b、22bのニップ部に向かう(ステップST6)。このニップ部で、第2の中間転写ベルト19bに形成されているトナー画像が記録紙に転写される。第1の画像印刷モジュール10aから第2の画像印刷モジュール10bに搬送される間に記録紙は反転されるため、転写ローラ21b、22bのニップ部では、記録紙の裏面にトナー画像が転写されることになる(ステップST7)。記録紙の裏面に転写されたトナー画像は定着ローラ23b、24bによって定着され、第2の排紙トレイに両面印刷された記録紙が排紙される(ステップST8)。
【0037】
上述した第1の実施形態に係る画像形成装置の構成によって例えば次のような利点が得られる。
【0038】
まず、高速な印刷を高い信頼性で実現することができる。通常、1つの印刷経路で高速印刷を行おうとするとプロセス速度を上げざるを得ない。例えば60ppm(papers per minutes)の印刷速度を1つの印刷経路の構成で得るためには、プロセス速度自体を60ppmにする必要がある。プロセス速度が60ppm程度の装置は一般に高速機と呼ばれ、技術的には実現可能であるが、中速機(プロセス速度が30ppm程度の装置)に比べると開発難易度が高く、使用する部品にも高い信頼性が求められる。このためプロセス速度が30ppm程度の画像形成装置(中速機)に比べると高速機の取得コストは高くなる。また、高速機の印刷品質を維持するためのメインテナンス費も一般的に中速機に比べると高くなる。
【0039】
これに対して、第1の実施形態に係る画像形成装置では、2つの画像印刷モジュール10a、10bを並列に配設し、同時並行的に印刷するこが可能な構成となっているため、ここの画像印刷モジュール10a、10bのプロセス速度を中速機程度(例えば30ppm)としつつも、全体としては高速機並みの印刷速度(例えば60ppm)を得ることができる。即ち、開発難易度が比較的低く、長い使用実績によって裏付けられた信頼性の高い中速機技術を用いて高速機と同等の高速印刷を実現することができる。
【0040】
片面印刷の場合は図3(a)からわかるように完全な同時並列印刷が可能であるが、両面印刷の場合においても、最終処理の一部を除いて画像印刷モジュール10a、10bによる並列なプロセス処理が可能である。つまり、30rpmの両面印刷を1系列の画像印刷モジュールで行おうとした場合、60rpmの画像形成プロセスを表面と裏面で2回繰り返すことになる。これに対して、第1の実施形態に係る画像形成装置1によれば、図3(b)からわかるように2つの画像印刷モジュール10a、10bを用いてほぼ並列に画像形成プロセスを実施し、裏面の転写から排紙に到る処理のみが直列となっている。このため、それぞれの画像印刷モジュール10a、10bのプロセス速度が中速機並みの30rpmであったとしても、全体としてもほぼ30rpmに近い速度で両面印刷をすることが可能である。
【0041】
上述したように、2つの画像印刷モジュール10a、10bを用いることによって全体として高速印刷が可能となるが、この他、以下に示すような各種の利点が得られる。
【0042】
まず、2つの画像印刷モジュール10a、10bのうちのいずれかを冗長系と利用することが可能であるため、完全なシステムダウンをほぼ排除することができる。例えば、1つの画像印刷モジュールで月に1回故障が発生すると仮定すると、故障率(1日あたり)は1/30となる。これに対して、第1の実施形態に係る画像形成装置1では、2つの画像印刷モジュール10a、10bが同時に故障する(完全なシステムダウンが発生する)故障率(1日あたり)は、1/900にまで低減される。
【0043】
また、2つの画像印刷モジュール10a、10bが存在することによって、印刷のジョブ待ちが発生する確率を低減することができる。例えば、毎分4枚程度の印刷ジョブが発生すると仮定した場合、他人の使用によって待たされる確率は、高速機(例えば60ppm)が1系統の場合、約6.3%となる。これに対して、本実施形態のように中速機(例えば30ppm)を2系列設けて同時並列に印刷する場合には、約0.8%までに低減される。
【0044】
さらに、印刷可能となるまでのウォームアップ時間も短縮される。一般に高速機の場合には、定着等のプロセス時間が中速機に比べて短くなるため必要となる温度に達するまでの時間も長くなるが、中速機を2系列設けた構成とすることにより、個々の画像印刷モジュール10a、10bのウォームアップ時間は高速機1系列の場合に比べると短縮される。
【0045】
上記の利点に加えて、各画像印刷モジュール10a、10bを装置本体に対して着脱可能なモジュールとして構成することにより次のような利点もある。
【0046】
例えば、画像形成装置1を最初に取得するときには一方の画像印刷モジュールのみ10aが装着された形態の装置を取得する。その後、画像形成装置1の利用状況が変化し、より高速な装置が必要となってきた場合には新たにもう1つの画像印刷モジュール10bを取得し装着する。このように各画像印刷モジュール10a、10bを着脱可能に構成することによって、ユーザの実際の要求に即した装置形態を提供することができる。
【0047】
また、カラー印刷用の画像印刷モジュールとモノクロ印刷用の画像印刷モジュールとをユーザの要求に応じて適宜組み合わせて構成することもできる。図2では、画像印刷モジュール10a、10bの双方にC、M、Y、及びKの4色に対応した4つの感光ドラムと4つのトナーモジュールを具備するカラー印刷用の構成とした例を示している。しかしながら、画像印刷モジュール10a、10bのいずれか一方を1つの黒色(K)用の感光ドラムと1つのトナーモジュールを具備するモノクロ印刷用の画像印刷モジュールとすることもできる。また、画像印刷モジュール10a、10bの双方をモノクロ印刷用の画像印刷モジュールとすることもできる。さらに、装置の最初の取得の段階では画像印刷モジュール10a、10bの双方をモノクロ印刷用の画像印刷モジュールとし、利用途中で、いずれか一方、又は双方をカラー印刷用の画像印刷モジュールにグレードアップすることも可能である。
【0048】
このように、本実施形態に係る画像形成装置1では、ユーザの多様な要望に適応したシステム構成が可能となる。
【0049】
(2)第1の実施形態の変形例
第1の変形例は、2つの画像印刷モジュール10a、10bを夫々異なったセキュリティレベルに設定可能とする形態である。例えば、いずれか一方の画像印刷モジュールは、認証情報を入力しなければ印刷できないように設定し、他方の印刷モジュールは認証情報の入力がなくても印刷できるように設定する。
【0050】
昨今の情報処理技術の発達に伴って、画像形成装置、例えばMFPでは、外部のパーソナルコンピュータ等からネットワークを介して印刷するプリンタ機能を有しているものが普及してきている。ネットワークに接続された装置では、種々のセキュリティ強化が重要な課題となっている。プリンタ機能を有する画像形成装置においては、遠隔で印刷指示した記録紙の取り忘れによる第三者への秘密情報の漏洩を防止することも重要なセキュリティ技術の1つである。このため、例えばプライベート印刷と呼ばれるセキュリティ技術では、パーソナルコンピュータから遠隔で印刷指示を行った本人がMFP等の傍まで行って、MFPのコントロールパネルから認証情報等を入力することによって初めて印刷物が出力されるようになっている。プライベート印刷では、認証情報の入力によってセキュリティレベルは向上するものの、ユーザ本人の操作負担は大きくなる。また、誤った操作をした場合には逆に業務効率を大きく落としかねないこともある。
【0051】
そこで、第1の変形例に係る画像形成装置1では、一方の画像印刷モジュールを他方の画像印刷モジュールと異なるセキュリティレベルに設定しておき、機密文書等を印刷するときには必ずセキュリティレベルの高い方の画像印刷モジュールで印刷するようにし、逆に通常の文書はもう一方の画像印刷モジュールで印刷する仕組みを設ける。例えば、ユーザが文書のセキュリティレベルを設定することによって、プリンタドライバが自動的に(或いは半自動的に)セキュリティレベルの高い方の画像印刷モジュールを選択するようにすればよい。また、文書の種類によって自動的にセキュリティレベルの高い方の画像印刷モジュールを選択するようにしてもよい。セキュリティレベルの高い方の画像印刷モジュールを選択した場合には、ユーザ本人による認証情報の入力によってはじめて印刷が可能となるため高いセキュリティが確保できる一方、他方の画像印刷モジュールが選択された場合には、通常の文書をだれでも自由に印刷できるため使い勝手がよい。
【0052】
第2の変形例は、2つの画像印刷モジュール10a、10bを夫々異なった解像度に設定可能とする形態である。今日のMFPでは、様々な解像度の画像を扱っている。例えば、通信規格によって解像度が定められているFAX画像、低解像度で読み取ったスキャナ画像、プリンタ用の高解像度画像、各種デジタルカメラ画像、コピー画像等、扱う画像によって種々の解像度を有している。一般にMFPで印刷する場合には、MFP内部で種々のデータフォーマット変換やこれに伴う解像度変換を行っている。これらの解像度変換の種類や回数を低減すべく、第2の変形例に係る画像形成装置1では、基本解像度の異なる複数(例えば2つ)の画像印刷モジュールを備え、MFPで選択される機能に応じてこれらの画像印刷モジュールを切り替える構成としている。
【0053】
例えば、400dpiの基本解像度を有する画像印刷モジュールと、600dpiの基本解像度を有する画像印刷モジュールとを具備させる。そして、印刷しようとする画像に近い方の解像度、或いは印刷しようとする画像への変換が容易な解像度(例えば、整数倍や整数分の1の解像度)をもつ画像印刷モジュールを選択して印刷する。この結果、解像度変換を全く行わずに、或いは画像品質を保持した解像度変換によって印刷を行うことが可能となる。
【0054】
この他、FAX機能が選択されたときは一方の画像印刷モジュールを選択し、他の機能が選択されたときは他方の画像印刷モジュールを自動的に選択するようにしてもよい。また、画像の解像度をモニタし、高解像度の画像を印刷するときは一方の画像印刷モジュールを選択し、低解像度の画像を印刷するときは他方の画像印刷モジュールを自動的に選択するようにしてもよい。
【0055】
(3)第2の実施形態
図4は、第2の実施形態に係る画像形成装置1aの構成例を示す図である。第2の実施形態に係る画像形成装置1aは、異なる画像印刷方式の画像印刷モジュールを複数備える形態である。例えば、図4に示す画像形成装置1aは、インクジェット方式による画像印刷モジュール50と、電子写真方式による画像印刷モジュール10bの2つの画像印刷モジュールを備えている。
【0056】
インクジェット方式の画像印刷モジュール50には、4色或いはこれ以上の(図4の例では、6色の)インクジェットモジュールが設けられている。画像印刷モジュール50の下方にある給紙トレイ43aから取り出された記録紙は、搬送ローラ対(60、61)、(62、63)、(64、65)や、ベルトローラ58、59によって駆動される搬送ベルト57によって下方から上方に向かう経路を搬送される。搬送ベルト57によって記録紙が搬送される間にインクジェットモジュール51乃至56によってカラー画像がインクジェット方式で印刷される。
【0057】
一方、電子写真方式による画像印刷モジュール10bには、C、M、Y、Kの基本4色のトナーモジュールや感光ドラムが設けられている。一般に電子写真方式によって基本4色より多くの色を用いて多色印刷しようとすると製造コストが高くなる。これに対してインクジェット方式は、安価なインクジェットモジュールによる多色化が比較的容易である。
【0058】
そこで、第2の実施形態に係る画像形成装置1bでは、C、M、Y、Kの基本4色のカラー印刷は電子写真方式を用いた画像印刷モジュール10bで行い、C、M、Y、K以外の有彩色を含むカラー印刷をインクジェット方式の画像印刷モジュール50で行うようにしている。C、M、Y、K以外の有彩色としての色には、CMYKの組み合わせによって実現できる2色成分のBlue、Green、Redではなく、例えば、コーポレートカラー、パントーン、Duoトーン、金色、銀色等のCMYKの組み合わせでは実現できない所謂特色がある。第2の実施形態に係る画像形成装置1bでは、通常の電子写真方式では実現の難しい特色の印刷であっても、ユーザの要望に応じて実現することができる。
【0059】
また、C、M、Y、K以外の有彩色としてライトシアンやライトマゼンタを付加して組み合わせることにより、C、M、Y、Kのみで実現できる色再現性の範囲を超えた広い範囲の色再現性を実現できる他、粒状感の少ない滑らかな画質の画像を印刷することができる。
【0060】
図5(a)及び図5(b)は、第2の実施形態における画像形成装置1bにおける記録紙の流れの例を示した図である。第1の実施形態と同様に画像印刷モジュール10bと画像印刷モジュール50を用いて同時並行的に印刷する形態(図5(a))と、画像印刷モジュール50によってインクジェット方式の印刷を行った後、その印刷面に重ねてトナー画像を電子写真方式で印刷する形態(図5(b))を例示している。
【0061】
(4)第2の実施形態の変形例
電子写真方式による画像印刷モジュール10bと、インクジェット方式による画像印刷モジュール50は、いずれも装置本体に対して着脱可能に構成されており、ユーザの要望に応じてその構成を変形することが可能である。
【0062】
図6(a)は、黒色(K)のみを電子写真方式で印刷する画像印刷モジュール10cの構成を示している。このモジュールは、例えばCMYKの4色の画像印刷モジュール10bに換えて装着されるものである。
【0063】
一般にMFPのビジネスモデルでは、カラー印刷時とモノクロ印刷時では異なる課金制度となっている。当然カラー印刷時の方がトナー代が嵩むためかなり割高な設定となっている。一方、高付加価値機能として2色印刷モードというものが最近では開発されている。これは、基本的に1色は黒で、他の1色を任意の色に選択できるものであり、2色で印刷はするが、課金はモノクロ料金でといったユーザメリットのある付加価値機能である。ただし2色と言っても電子写真方式の構造上、特に画像印刷モジュール10bのようにタンデム型の場合は、4色全てのプロセス動作を独立に行わなければならない。また、タンデム型以外の方式であっても単色よりも複雑な制御が必要になる。このため、機構品の消耗やこれに伴う故障率は単色印刷に比べると不利である。そこで、第2の実施形態における変形例として、画像印刷モジュール10cを装着した形態では、2色印刷における黒の印刷は電子写真方式による画像印刷モジュール10cで行い、他のカラー色をインクジェット方式による画像印刷モジュール50で印刷する。これにより電子写真の高価なカラープロセスを用いずに低コストで2色印刷を実現できる。
【0064】
図6(b)は、電子写真方式による黒色の両面印刷が可能な画像印刷モジュール10dの構成例を示す図である。この画像印刷モジュール10dを装置本体に装着することにより、黒色の両面印刷と、インクジェット方式によるカラー印刷を同時並行に実施することができる。また、黒色で両面印刷された一方の面にインクジェット方式でカラー印刷を重ねることもできる。
【0065】
図6(c)は、インクジェット方式によるカラー印刷と、電子写真方式による黒色印刷が1つの記録紙の搬送経路にて印刷可能な画像印刷モジュール50aの構成を例示した図である。画像印刷モジュール50aを装着することにより、1つの画像印刷モジュールで安価な2色印刷を行うことができる。
【0066】
(5)第2の実施形態のその他の変形例
インクジェット方式による印刷と電子写真方式による印刷を同一面に重ねて行うことのより、上記以外の特殊な印刷も実現することができる。
【0067】
例えば、セキュリティ印刷の中に地紋印刷という技術がある。これは正規の原稿に同程度の濃度の異なるパターンが記録され、視覚には均一に見えるものが、複写した時点で、残るドットと消えるドットに区別され、消えるドット部分の情報が浮き出るというものである。この地紋印刷技術は、原理は簡単であるが、実際に実現するにはかなりの困難が伴う。これは、複写機の種類によって、画像の読取デバイスの特性差や固体差があること、また、画処理方法或いは画処理パラメータに差があることに起因している。この他、機種毎に異なる下地調整の差や複写モード毎に異なる微妙な画処理の差も上記困難さの要因となっている。またこれらを回避するため、あまりに地紋パターンの濃度を高くすると視覚に不快感が生じる他、トナー、インクの消費コストが無視できなくなる。
【0068】
そこで、第2の実施形態に係る画像形成装置1bの変形例では、図7に例示したように、残るドット(粗いドット)を電子写真方式による画像印刷モジュールで印刷し、消えるドット(密なドッド)をインクジェット方式による画像印刷モジュールで印刷するようにしている。この結果、スキャンした時の残るドットと消えるドットのパターンの区別を容易にすることが可能となると共に、淡い状態で両パターンを形成できるため、パターン濃度を上げることによるトナー、インクの無駄な消費を防止することが出来る。現在の技術ではインクジェット方式の方がより極小のドットを安定に再現することが出来るため、消えるドットをインクジェット方式で印刷するようにしている。なお記録紙の種類によってはインクが滲んでしまうことも考えられるため、この様な場合にはインク用の表面コート材を記録紙に塗布する様な方法を取ってもよい。
【0069】
また、他のセキュリティ印刷の中に透かし印刷(或いは隠し情報印刷)という技術がある。
【0070】
図8は、透かし印刷(或いは隠し情報印刷)を説明するための記録紙の断面図を示している。
【0071】
一般的な印刷原理から、図8に示すように、電子写真方式の色材料であるトナーは、記録紙の表面上にトナー像が形成され、インクジェット方式では記録紙の内部に染み込んでインク像を形成する。この原理を利用して、隠し情報をインクジェット方式による画像印刷モジュールで印刷して記録紙の内部にインク像を形成し、その上から電子写真方式による画像印刷モジュールによって通常画像のトナー像を形成することにより、機密情報であるインク像の全部、或いは一部を上から覆ったトナー像で視覚認識できないようにする事が出来る。
【0072】
隠し情報の読み出しには、インクの成分を検出できる光源を具備した装置で読み込むことにより、通常の光源では視覚で識別できない情報を比較的簡単に認識することが出来る。なおこの時インク像の面積が大きく、トナー像からはみ出していても、完全に情報が読み取れないといった実用上の問題がなければ構わない。
【0073】
ここまでは、電子写真方式同士の組み合わせや、電子写真方式とインクジェット方式の組み合わせについて説明したが、これらの印刷方式に限定されるものではなく、例えば熱転写方式による画像印刷モジュールを組み合わせる方式としてもよい。また、組み合わせる画像印刷モジュールの数も上述した2つに限定されるものではなく、3以上の画像印刷モジュールを組み合わせてもよい。
【0074】
以上説明してきたように、上記の各実施形態や変形例に係る画像形成装置及びその制御方法によれば、柔軟性の高い装置構成や機能構成を実現することによって、技術の多様化やユーザの利用形態の多様化に対応することができる。
【0075】
なお、本発明は上記の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0076】
1 画像形成装置
10a 第1の画像印刷モジュール
10b 第2の画像印刷モジュール
11a、11b トナーモジュール(シアン)
12a、12b 感光ドラム(シアン)
13a、13b トナーモジュール(マゼンタ)
14a、14b 感光ドラム(マゼンタ)
15a、15b トナーモジュール(イエロー)
16a、16b 感光ドラム(イエロー)
17a、17b トナーモジュール(ブラック)
18a、18b 感光ドラム(ブラック)
19a、19b 中間転写ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙に画像を印刷する第1の画像印刷モジュールと、
前記記録紙と同じ記録紙に印刷する場合は、前記第1の画像印刷モジュールに対して直列な給紙系列により印刷可能であり、前記記録紙と異なる記録紙に印刷する場合は、前記第1の画像印刷モジュールに対して並列な給紙系列により前記第1の画像印刷モジュールと同時並行的に印刷可能である第2の画像印刷モジュールと、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の画像印刷モジュールはいずれも電子写真方式による画像印刷モジュールである、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の画像印刷モジュールは、一方はカラー画像印刷モジュール、他方はモノクロ画像印刷モジュールである、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記直列な給紙系列により印刷する場合は、前記記録紙に両面印刷が可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1の画像印刷モジュールと前記第2の画像印刷モジュールは、少なくとも一方が着脱可能に構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1の画像印刷モジュールと前記第2の画像印刷モジュールとは、それぞれ異なるセキュリティレベルに設定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記異なるセキュリティレベルは、一方が印刷のために認証を必要とするセキュリティレベルであり、他方が印刷のために認証を必要としないセキュリティレベルである、
ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第1の画像印刷モジュールの基本解像度と、前記第2の画像印刷モジュールの基本解像度はそれぞれ異なっている、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項9】
本装置は印刷解像度の異なる複数の機能を選択可能に具備しており、
前記第1の画像印刷モジュールと前記第2の画像印刷モジュールは、選択された前記機能に応じて切り替えられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記第1の画像印刷モジュールと前記第2の画像印刷モジュールは夫々異なる画像形成方式によって画像を印刷する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記第1の画像印刷モジュールは電子写真方式による画像印刷モジュールであり、前記第2の画像印刷モジュールは、インクジェット方式による画像印刷モジュールである、
ことを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記第1の画像印刷モジュールは、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックの4色を用いた電子写真方式による画像印刷モジュールであり、
前記第2の画像印刷モジュールは、前記4色以外の有彩色を用いた印刷が可能なインクジェット方式による画像印刷モジュールである、
ことを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記第1の画像印刷モジュールは、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックの4色を用いた電子写真方式による画像印刷モジュールであり、
前記第2の画像印刷モジュールは、非標準の特色が印刷可能なインクジェット方式による画像印刷モジュールである、
ことを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記第2の画像印刷モジュールは、前記記録紙に地紋を形成するための印刷が可能である、
ことを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記第2の画像印刷モジュールは、特殊な光源によって視認可能なインクを用いて印刷が可能である、
ことを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項16】

第1の画像印刷モジュールを用いて記録紙に画像を印刷し、
第2の印刷モジュールを用いて、前記記録紙と同じ記録紙に印刷する場合は、前記第1の画像印刷モジュールに対して直列な給紙系列により第2の印刷モジュールを用いて印刷し、前記記録紙と異なる記録紙に印刷する場合は、前記第1の画像印刷モジュールに対して並列な給紙系列により前記第1の画像印刷モジュールと同時並行的に印刷する、
ことを特徴とする画像形成装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−190404(P2009−190404A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31582(P2009−31582)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】