説明

画像形成装置及び画像形成方法

【課題】1次転写部で感光体の放電痕発生を防止したり、感光体メモリよる影響を低減しゴーストなどの画像欠陥を防止したりする画像形成装置及び画像形成方法を提供する。
【解決手段】感光体10Yと、感光体10Yを帯電するコロナ帯電器11Yと、コロナ帯電器11Yで帯電された感光体10Yに潜像を形成する露光ユニット12Yと、露光ユニット12Yで形成された感光体10Yの潜像を現像剤で現像し画像を形成する現像ローラ20Yと、現像ローラ20Yで現像された感光体10Yに光を照射する第1除電用光源部140Yと、第1除電用光源部140Yで照射された感光体10Y上の前記画像を転写媒体40に転写する転写部と、前記転写部で転写された感光体10Yに、第1除電用光源部140Yより長波長側に波長強度特性のピークを有する光を照射する第2除電用光源部170Yと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体上に形成した潜像をトナー及びキャリアからなる液体現像剤によって現像する現像し、これによる現像剤をさらに記録紙などの媒体に転写して、転写された媒体上のトナー像を融着し定着して画像形成する画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体溶媒中に固体成分からなるトナーを分散させた高粘度の液体現像剤を用いて潜像を現像し、静電潜像を可視化する湿式画像形成装置が種々提案されている。この湿式画像形成装置に用いられる現像剤は、シリコンオイルや鉱物油、食用油等からなる電気絶縁性を有し高粘度の有機溶剤(キャリア液)中に固形分(トナー粒子)を懸濁させたものであり、このトナー粒子は、粒子径が1μm前後と極めて微細である。このような微細なトナー粒子を使用することにより、湿式画像形成装置では、粒子径が7μm程度の粉体トナー粒子を使用する乾式画像形成装置に比べて高画質化が可能である。
【0003】
ところで、上記のような液体現像剤を用いた画像形成装置においても、帯電プロセスの前段に、感光体表面を除電することが一般的に行われている。例えば、特許文献1(特開2006−30501号公報)には、画像形成装置において、1次転写後、感光体上に残留した残留電位が、除電ランプにより除去された後、さらに感光体上に残留した残留トナーを、感光体クリーニング装置により除去して、次の工程に備えられるようにすることが開示されている。
【特許文献1】特開2006−30501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、出願人らがこれまでに提案してきた液体現像剤を用いる画像形成装置の構成の概略について説明する。図9は従来の画像形成装置における画像形成部の主要構成要素を示した断面図である。図9において、10は感光体、11はコロナ帯電器、12は露光ユニット、13は第1感光体スクイーズローラ、13’は第2感光体スクイーズローラ、20は現像ローラ、40は転写媒体、51は1次転写バックアップローラ、190は除電用光源をそれぞれ示している。
【0005】
また、図9において四角で囲まれた図は、感光体10表面の断面を模式的に示す図である。感光体10表面の断面は概略(0)に示すように基材層と、その上に設けられた障壁層、さらにこの障壁層上に設けられたアモルファスシリコン感光材料を用いた感光層とからなっている。
【0006】
上記のような感光体10表面断面の画像プロセス進行状況に伴う変化について説明する。(1)はコロナ帯電器11によって感光体10の表面が帯電された状態を示している。(2)は上記のような帯電された表面に対して露光ユニット12の露光光源によって光を照射し、感光層にマイナスのキャリアを発生させた状態を示している。(3)は、発生したキャリアによって表面の帯電状態が打ち消されたことを模式的に示している。また、前記露光光源の照射によって感光層にマイナスキャリアがトラップされている状態が示されている。(4)は現像ローラ20によって現像され、露光された表面にトナー粒子がのった状態を示している。(5)はトナー粒子が転写媒体40に転写された後に残留した帯電電荷を除電する状況を示している。ここでは除電用光源190の照射によって、感光層でマイナスのキャリアを発生させている。(6)は、発生させたキャリアで表面の電荷を打ち消した状態を示している。ところで、除電用光源190は感光層の比較的浅い部分でマ
イナスキャリアを発生させるため、比較的に深い部分にトラップされているマイナスキャリアには変化を与えていない。(7)は再びコロナ帯電器11によって感光体10の表面が帯電された状態を示している。このとき、感光層の比較的に深い部分にトラップされていたマイナスキャリアは、コロナ帯電器11で帯電された豊富な電荷によって表面に引きつけられて、プラスの電荷と打ち消し合う。このようにトラップされていたキャリアが帯電時に作用すると、図示するように感光体10の表面の帯電状態が一様でなくなってしまう。
【0007】
このように感光体10感光層にキャリアトラップが発生する(感光体メモリが発生する)と、上記のように帯電時に、帯電状態が均一でなくなってしまうこととなり、この帯電状態の非均一性によって、ゴーストと呼ばれる画像欠陥が発生する、という問題があった。
【0008】
一方、従来の画像形成装置では次のような問題もあった。画像形成部においては、コロナ帯電器11により、感光体10を一様に帯電させ、露光ユニット12により、入力された画像信号に基づいて、制御を行い、帯電された感光体10上に静電潜像を形成する。形成された静電潜像部は、現像ローラ20によって、キャリアとトナー粒子とを含む液体現像剤により現像され、画像が形成される。感光体10上で、この現像剤が存在する箇所を画像部、存在しない箇所を非画像部と称する。第1感光体スクイーズローラ13と第2感光体スクイーズローラ13’とからなるスクイーズ装置は、キャリア及び本来不要なカブリトナーを回収し、現像剤中のトナー粒子比率を上げる機能を有する。
【0009】
さらに画像形成プロセスにおいて、第1感光体スクイーズローラ13及び第2感光体スクイーズローラ13’を経た感光体10表面は、転写媒体40に当接して、ここで1次転写バックアップローラ51に印加される転写バイアスVtの作用によって、感光体10上のトナー像は転写媒体40側に転写される。例えば、第2感光体スクイーズローラ13’を経た直後で、1次転写前の感光体10表面においては、トナー粒子がのった画像部は約+50Vの表面電位を有しており、トナー粒子がのっっていない非画像部は約+600Vの表面電位を有している。また、1次転写バックアップローラ51には、転写バイアスVtとして、−300Vが印加されている。
【0010】
そうすると、1次転写部における、画像部でのΔVは350Vとなり、非画像部でのΔVは900Vとなる。なお、Vsが1次転写直前の感光体表面電位であり、Vtが転写バイアス電圧であるときに、ΔV=|Vs−Vt|であるものと定義する。
【0011】
ΔVが1000V程度に近づくと、1次転写部で放電が発生する可能性が高まる。すなわち、ΔVがおよそ900Vである非画像部での放電の可能性が非常に高くなってしまうこととなる。このようにΔVが大きいと、1次転写部における放電発生率が高まり、放電が発生すると、感光体10に放電痕が発生したり、感光体10の劣化が促進したりするという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記のような問題を解決するために、本発明に係る画像形成装置は、感光体と、前記感光体を帯電する帯電部と、前記帯電部で帯電された前記感光体に潜像を形成する露光部と、前記露光部で形成された前記感光体の前記潜像を現像剤で現像し現像像を形成する現像部と、前記現像部で現像された前記感光体に光を照射する第1除電用光源部と、前記第1除電用光源部で照射された前記感光体上の前記現像像を転写媒体に転写する転写部と、前記転写部で転写された前記感光体に、前記第1除電用光源部より長波長側に波長強度特性のピークを有する光を照射する第2除電用光源部と、を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る画像形成装置は、前記露光部の波長強度特性でピークを与える波長は、前記第1除電用光源部の波長強度特性でピークを与える波長より、前記第2除電用光源部の波長強度特性でピークを与える波長に近い。
【0014】
また、本発明に係る画像形成装置は、前記第1除電用光源部の光量が、前記第2除電用光源部の光量より大きい。
【0015】
また、本発明に係る画像形成装置は、前記第2除電用光源部の波長強度特性の分布が、前記第1除電用光源部の波長強度特性の分布より広い。
【0016】
また、本発明に係る画像形成装置は、前記感光体の感光材料がアモルファスシリコンである。
【0017】
また、本発明に係る画像形成方法は、感光体を帯電部によって帯電し、前記帯電部で帯電された前記感光体に露光部によって潜像を形成し、前記露光部で形成された前記感光体の前記潜像を現像部によって現像剤で現像し現像像を形成し、前記現像部で現像された前記感光体に第1除電用光源部によって光を照射し、前記第1除電用光源部で照射された前記感光体上の前記現像像を転写部によって転写媒体に転写し、前記転写部で転写された前記感光体に、第2除電用光源部によって、前記第1除電用光源部より長波長側に波長強度特性のピークを有する光を照射することを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る画像形成方法は、前記露光部の波長強度特性でピークを与える波長は、前記第1除電用光源部の波長強度特性でピークを与える波長より、前記第2除電用光源部の波長強度特性でピークを与える波長に近い。
【0019】
また、本発明に係る画像形成方法は、前記第1除電用光源部の光量が、前記第2除電用光源部の光量より大きい。
【0020】
以上、本発明の画像形成装置及び画像形成方法によれば、1次転写前における第1除電用光源部による光照射によって、特に非画像部における感光体上での放電発生率を低減させることができ、感光体における放電痕発生を防止したり、感光体の劣化を遅延させたりすることが可能となる。また、1次転写後において、前記第1除電用光源部より長波長側に波長強度特性のピークを有する光を照射する第2除電用光源部で光照射することによって、キャリアトラップに基づく感光体メモリよる影響を低減し、帯電時に均一な帯電状態を得ることができ、ゴーストなどの画像欠陥を防止することが可能となる。
【0021】
また、本発明の画像形成装置及び画像形成方法は、露光部の波長強度特性でピークを与える波長が、第2除電用光源部の波長強度特性でピークを与える波長に近いので、これによれば、効果的に感光体メモリによるゴースト発生を抑制することができる。
【0022】
また、本発明の画像形成装置及び画像形成方法は、前記第1除電用光源部の光量が、前記第2除電用光源部の光量より大きいので、これによれば、感光体上での放電発生率を極限まで低減することが可能となる。特に、液体現像剤を用いたときには、前記第1除電用光源部の光量を大きくしやすい。これは、1次転写前に感光体上の帯電状況が大きく変化したとしても、液体現像剤の濡れ性によってトナー粒子が散逸しにくいからである。
【0023】
また、本発明の画像形成装置及び画像形成方法は、前記第2除電用光源部の波長強度特性の分布が、前記第1除電用光源部の波長強度特性の分布より広いので、これによれば、より効率的にキャリアトラップに基づく感光体メモリよる影響を低減し、帯電時に均一な
帯電状態を得ることができ、ゴーストなどの画像欠陥を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施の形態に係る画像形成装置を構成する主要構成要素を示した図である。画像形成装置の中央部に配置された各色の画像形成部に対し、現像装置30Y、30M、30C、30Kは、画像形成装置の下部に配置され、転写媒体40、2次転写部(2次転写ユニット)60は、画像形成装置の上部に配置されている。
【0025】
画像形成部は、感光体10Y、10M、10C、10K、コロナ帯電器11Y、11M、11C、11K、不図示の露光ユニット12Y、12M、12C、12K等を備えている。露光ユニット12Y、12M、12C、12Kは、有機EL素子アレイ(或いはLEDアレイ)、ドライバIC、配線基板を有し、コロナ帯電器11Y、11M、11C、11Kにより、感光体10Y、10M、10C、10Kを一様に帯電させ、露光ユニット12Y、12M、12C、12Kにより、入力された画像信号に基づいて、制御を行い、帯電された感光体10Y、10M、10C、10K上に静電潜像を形成する。
【0026】
現像装置30Y、30M、30C、30Kは、概略、現像ローラ20Y、20M、20C、20K、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)からなる各色の液体現像剤を貯蔵する現像剤容器(リザーバ)31Y、31M、31C、31K、これら各色の液体現像剤を現像剤容器31Y、31M、31C、31Kから現像ローラ20Y、20M、20C、20Kに塗布する塗布ローラであるアニロックスローラ32Y、32M、32C、32K等を備え、各色の液体現像剤により感光体10Y、10M、10C、10K上に形成された静電潜像を現像する。
【0027】
転写媒体40は、エンドレスのベルトであり、駆動ローラ41とテンションローラ42、52、53に張架され、1次転写部50Y、50M、50C、50Kで感光体10Y、10M、10C、10Kと当接しながら駆動ローラ41により回転駆動される。1次転写部50Y、50M、50C、50Kは、感光体10Y、10M、10C、10Kと転写媒体40を挟んで1次転写ローラ51Y、51M、51C、51Kが対向配置され、感光体10Y、10M、10C、10Kとの当接位置を転写位置として、現像された感光体10Y、10M、10C、10K上の各色のトナー像を転写媒体40上に順次重ねて転写し、フルカラーのトナー像を形成する。
【0028】
2次転写ユニット60は、2次転写ローラ61が転写媒体40を挟んでベルト駆動ローラ41と対向配置され、さらに2次転写ローラクリーニングブレード62からなるクリーニング装置が配置される。そして、2次転写ローラ61を配置した転写位置において、転写媒体40上に形成された単色のトナー像やフルカラーのトナー像をシート材搬送経路Lにて搬送される用紙、フィルム、布等の記録媒体に転写する。
【0029】
さらに、経路シート材搬送経路Lの下流には、不図示の定着ユニットが配置され、用紙等の記録媒体上に転写された単色のトナー像やフルカラーのトナー像を用紙等の記録媒体に融着させ定着させる。
【0030】
また、テンションローラ42は、ベルト駆動ローラ41と共に転写媒体40を張架しており、転写媒体40のテンションローラ42に張架されている箇所で、転写媒体クリーニングローラ46からなるクリーニング装置が当接・配置されている。
【0031】
次に、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の画像形成部及び現像装置について説明する。図2は画像形成部及び現像装置の主要構成要素を示した断面図である。各色の画像
形成部及び現像装置の構成は同様であるので、以下、イエロー(Y)の画像形成部及び現像装置に基づいて説明する。
【0032】
画像形成部は、感光体10Yの外周の回転方向に沿って、感光体クリーニングローラ16Y、感光体クリーニングブレード18Y、コロナ帯電器11Y、露光ユニット12Y、現像装置30Yの現像ローラ20Y、第1感光体スクイーズローラ13Y、第2感光体スクイーズローラ13Y’が配置されている。
【0033】
感光体クリーニングローラ16Yはウレタンゴム表層を有するローラであり、感光体10Yに当接しつつ反時計回りに回転することによって、感光体10Y上の転写残り液体現像剤や未転写液体現像剤をクリーニングする。感光体クリーニングローラ16Yには、液体現像剤中のトナー粒子を誘引するようなバイアス電圧が印加される。このため、感光体クリーニングローラ16Yで回収されるのは、トナー粒子が多く含まれる液体現像剤となる。このような感光体クリーニングローラ16Yで回収された固形分リッチな液体現像剤は、感光体クリーニングローラ16Yに当接する感光体クリーニングローラクリーニングブレード17Yによって掻き取られ、鉛直下方に落下する。
【0034】
これに対して、感光体クリーニングローラ16Yの下流側において、感光体10Yと当接している感光体クリーニングブレード18Yは、感光体10Y上のキャリア成分リッチな液体現像剤を、クリーニングブレード保持部材73Yを通じて下方に落下させる。
【0035】
なお、固形分リッチとは、現像装置30Yに補給される液体現像剤と比較して固形分を多く含む液体現像剤の状態のことをいう。これに対して、キャリア成分リッチとは、現像装置30Yに補給される液体現像剤と比較してキャリア成分を多く含む液体現像剤の状態のことをいう。また、液体現像剤(トナー)は、固形分(トナーの粒子)がキャリア中に分散しているものとして定義することができる。
【0036】
クリーニングブレード保持部材73Yには、感光体クリーニングローラクリーニングブレード17Yから落下した固形分リッチな液体現像剤と、感光体クリーニングブレード18Yで掻き取られたキャリア成分リッチな液体現像剤の双方が混ざり合うことによって搬送性がよくなる。また、このような搬送性の向上は、装置の小型化にも寄与することができる。
【0037】
感光体回収貯留部80Yは、感光体クリーニングローラクリーニングブレード17Yで掻き取られた固形分リッチな液体現像剤、感光体クリーニングブレード18Yで掻き取られたキャリア成分リッチな液体現像剤、の双方を受ける凹状部を有している。
【0038】
感光体回収貯留部80Yの凹状部には、回収スクリュー81Yが設けられており、この回収スクリュー81Yが回転することによって、そのスパイラル羽根が凹状部で受けた液体現像剤を回収スクリュー81Y回転軸方向へと搬送する。回収スクリュー81Yで搬送された液体現像剤は、不図示の回収機構へと送り出される。
【0039】
70Y、71Y、72Y、73Yは各クリーニングブレードを保持するクリーニングブレード保持部材である。
【0040】
現像装置30Yにおける現像ローラ20Yの外周には、クリーニングブレード21Y、アニロックスローラ32Y、コンパクションコロナ発生器22Yが配置されている。アニロックスローラ32Yには、現像ローラ20Yへ供給する液体現像剤の量を調整する規制ブレード33Yが当接している。75Yは規制ブレード33Yを保持するブレード保持部材である。液体現像剤容器31Yの中にはオーガ34Y、回収スクリュー321Yが収容
されている。
【0041】
また、転写媒体40に沿って、感光体10Yと対向する位置に1次転写部の1次転写ローラ51Yが配置されている。
【0042】
感光体10Yは、現像ローラ20Yの幅より広く、外周面に感光層が形成された円筒状の部材からなる感光体ドラムであり、例えば図2に示すように時計回りの方向に回転する。該感光体10Yの表層の感光層は、アモルファスシリコン感光体で構成される。コロナ帯電器11Yは、感光体10Yと現像ローラ20Yとのニップ部より感光体10Yの回転方向の上流側に配置され、図示しない電源装置から電圧が印加され、感光体10Yをコロナ帯電させる。露光ユニット12Yは、コロナ帯電器11Yより感光体10Yの回転方向の下流側において、コロナ帯電器11Yによって帯電された感光体10Y上に光を照射し、感光体10Y上に潜像を形成する。露光ユニット12Yで用いられる露光源である有機EL素子アレイは、後述する波長強度特性を有している。
【0043】
なお、画像形成プロセスの始めから終わりまでで、より前段に配置されるローラなどの構成は、後段に配置されるローラなどの構成より上流にあるものと定義する。
【0044】
現像装置30Yは、コンパクション作用を施すコンパクションコロナ発生器22Y、キャリア内にトナーを概略重量比20%程度に分散した状態の液体現像剤を貯蔵する現像剤容器31Yを有する。この現像剤容器31Yには、アニロックスローラ32Yに供給されなかった液体現像剤などを回収する回収スクリュー321Yも備えられている。
【0045】
また現像装置30Yは、前記の液体現像剤を担持する現像ローラ20Y、液体現像剤を現像ローラ20Yに塗布するための塗布ローラであるアニロックスローラ32Yと、現像ローラ20Yに塗布する液体現像剤量を規制する規制ブレード33Yと、液体現像剤を攪拌、搬送しつつアニロックローラ32Yに供給するオーガ34Y、現像ローラ20Yに担持された液体現像剤をコンパクション状態にするコンパクションコロナ発生器22Y、現像ローラ20Yのクリーニングを行う現像ローラクリーニングブレード21Yを有する。76Yは現像ローラクリーニングブレード21Yを保持するクリーニングブレード保持部材である。
【0046】
現像剤容器31Yに収容されている液体現像剤は、従来一般的に使用されているIsopar(商標:エクソン)をキャリアとした低濃度(1〜2wt%程度)かつ低粘度の、常温で揮発性を有する揮発性液体現像剤ではなく、高濃度かつ高粘度の、常温で不揮発性を有する不揮発性液体現像剤である。すなわち、本発明における液体現像剤は、熱可塑性樹脂中へ顔料等の着色剤を分散させた平均粒径1μmの固形子を、有機溶媒、シリコンオイル、鉱物油又は食用油等の液体溶媒中へ分散剤とともに添加し、トナー固形分濃度を約20%とした高粘度(30〜10000mPa・s程度)の液体現像剤である。
【0047】
液体現像剤容器31Yの中にオーガ34Yはアニロックスローラ32Yと離間するように設けられているが、このオーガ34Yが図2で反時計回りに回転することによって液体現像剤がアニロックスローラ32Yに供給されるようになっている。
【0048】
現像容器31Y内の空間は仕切り部330Yによって2つに分け隔てられている。この仕切り部330Yによって分けられる空間の一方は、液体現像剤を供給するための供給貯留部310Yとして利用され、他方は液体現像剤を回収するための回収貯留部320Yとして利用される。供給貯留部310Yと回収貯留部320Yは、互いに軸方向に並列するように仕切り部330Yにより隔てられる。
【0049】
供給貯留部310Yには、オーガ34Yが回転可能に設けられており、このオーガ34Yが装置動作時に回転することで、供給貯留部310Yに溜まっている液体現像剤がアニロックスローラ32Yに供給される。供給貯留部310Yと液体現像剤供給管370Yは連結しており、供給貯留部310Yに対する液体現像剤の供給は液体現像剤供給管370Yにより行われる。
【0050】
また、回収貯留部320Yには回収スクリュー321Yが回転可能に設けられており、回収スクリュー321Yが装置動作時に回転することで、現像に利用されなかった液体現像剤や、感光体スクイーズローラクリーニングブレード14Y、14Y’などのクリーニングブレードから滴下したキャリアなどを回収する。
【0051】
回収貯留部320Yと液体現像剤回収管371Yとは連結されており、回収スクリュー321Yが回転することで、液体現像剤回収管371Yが連結されている回収貯留部320Yの一方端に液体現像剤を搬送するようになっている。このようにして回収貯留部320Yで回収された液体現像剤は、液体現像剤回収管371Yによって不図示の液体現像剤リサイクル機構へと導かれる。
【0052】
アニロックスローラ32Yは、現像ローラ20Yに対して液体現像剤を供給し、塗布する塗布ローラとして機能するものである。このアニロックスローラ32Yは、円筒状の部材であり、表面に現像剤を担持し易いように表面に微細且つ一様に螺旋状に彫刻された溝による凹凸面が形成されたローラである。このアニロックスローラ32Yにより、現像剤容器31Yから現像ローラ20Yへと液体現像剤が供給される。装置動作時においては、図2に示すように、オーガ34Yが時計回り回転し、アニロックローラ32Yに液体現像剤を供給し、アニロックローラ32Yは反時計回りに回転して、現像ローラ20Yに液体現像剤を塗布する。
【0053】
規制ブレード33Yは、表面に弾性体を被覆して構成した弾性ブレードであり、アニロックスローラ32Yの表面に当接するウレタンゴム等からなるゴム部と、該ゴム部を支持する金属等の板で構成される。そして、アニロックスローラ32Yによって担持搬送されてきた液体現像剤の膜厚、量を規制、調整し、現像ローラ20Yに供給する液体現像剤の量を調整する。
【0054】
現像ローラクリーニングブレード21Yは、現像ローラ20Yの表面に当接するゴム等で構成され、現像ローラ20Yが感光体10Yと当接する現像ニップ部より現像ローラ20Yの回転方向の下流側に配置されて、現像ローラ20Yに残存する液体現像剤を掻き落として除去するものである。
【0055】
コンパクションコロナ発生器22Yは、現像ローラ20Y表面の帯電バイアスを増加させる電界印加手段であり、現像ローラ20Yによって搬送される液体現像剤は、図2に示すようにコンパクションコロナ発生器22Yによって、コンパクション部位でコンパクションコロナ発生器22Y側から現像ローラ20Yに向かって電界が印加される。
【0056】
なお、このコンパクションのための電界印加手段は、図2に示すコロナ放電器のコロナ放電に代えて、コンパクションローラなどを用いても良い。このようなコンパクションローラは、円筒状の部材とし、現像ローラ20Yと同様に弾性体を被覆して構成した弾性ローラの形態とし、金属ローラ基材の表層に導電性の樹脂層やゴム層を備えた構造とし、例えば現像ローラ20Yと反対方向の時計回りに回転させるようにするとよい。
【0057】
一方、現像ローラ20Yに担持されてコンパクションされた現像剤は、現像ローラ20Yが感光体10Yに当接する現像ニップ部において、所望の電界印加によって、感光体1
0Yの潜像に対応して現像される。なお、現像ローラ20Yによって、液体現像剤により現像された感光体10上において、この現像剤(現像像)が存在する箇所を画像部、存在しない箇所を非画像部と称する。
【0058】
現像残りの現像剤は、現像ローラクリーニングブレード21Yによって掻き落として除去され現像剤容器31Y内の回収部に滴下して再利用される。尚、このようにして再利用されるキャリア及びトナーは混色状態ではない。
【0059】
1次転写の上流側に配置される感光体スクイーズ装置は、感光体10Yに対向して現像ローラ20Yの下流側に配置して感光体10Yに現像されたトナー像の余剰現像剤を回収するものであり、図2に示すように表面に弾性体を被覆して感光体10Yに摺接して回転する弾性ローラ部材から成る第1感光体スクイーズローラ13Y、第2感光体スクイーズローラ13Y’と、該第1感光体スクイーズローラ13Y、第2感光体スクイーズローラ13Y’に押圧摺接して表面をクリーニングするクリーニングブレード14Y、14Y’とから構成され、感光体10Yに現像された現像剤から余剰なキャリア及び本来不要なカブリトナーを回収し、顕像内のトナー粒子比率を上げる機能を有する。1次転写前の感光体スクイーズ装置として、本実施形態では複数の感光体スクイーズローラ13Y、13Y’を設けているが、ひとつの感光体スクイーズローラによって構成しても良い。また、液体現像剤の状態などに応じて、複数の感光体スクイーズローラ13Y、13Y’のうち一方が当離接するように構成しても良い。なお、感光体スクイーズローラ13Y、13Y’には、所定のバイアス電圧が印加されている。
【0060】
上記の第1感光体スクイーズローラ13Y、第2感光体スクイーズローラ13Y’からなるスクイーズ装置を経た感光体10Y表面は、第1除電用光源部140Yからの照射光を受けて、その帯電状態が緩和される。この第1除電用光源部140Yは、ローラ類の軸方向に延びる第1基台141Yと、この第1基台141Y上に前記軸方向に適当な間隔をもって配されるLEDなどの第1除電用光源142Yとから構成されるものである。上記のように配置された第1除電用光源142Yによって感光体10Y表面上が軸方向で均一に照射される。
【0061】
このような1次転写部50Yの前段での第1除電用光源部140Yの照射により、(特に非画像部における)表面電位が低減され、1次転写バックアップローラ51Yとの電位差が小さくなるので、1次転写部における放電の発生を抑制することができ、画質の悪化や、感光体の劣化を防止することが可能となる。
【0062】
このように本実施形態においては、1次転写前における第1除電用光源部140Yによる光照射によって、特に非画像部における感光体10上での放電発生率を低減させることができ、感光体10における放電痕発生を防止したり、感光体10の劣化を遅延させたりすることが可能となる。
【0063】
また、第2感光体スクイーズローラ13Y’の鉛直方向上側には、第1遮光部材130Yが配置されており、第1除電用光源部140Yの第1除電用光源142Yからの照射光が、第2感光体スクイーズローラ13Y’と感光体10Yとがなすニップ部に進入することを防止している。この第1遮光部材130Yは、図示する断面形状でローラ類軸方向に延びる部材である。第1遮光部材130Yは、光を吸収しやすい素材で作製されたり、光を吸収しやすい塗料などが塗られたりしていることが望ましい。特に、この第1遮光部材130Yの鉛直方向上面側の図示(T)の面は、光吸収面であることが好ましい。また、本実施形態では、この第1遮光部材130Yに対して、第1除電用光源部140Yが取り付けられる構造となっており、製造時における取り付けが簡単となるようになっている。
【0064】
本発明ではこのような第1遮光部材130Yによって、感光体スクイーズローラ13Y、13Y’と感光体10Yとがなすスクイーズニップ部に入射する光を低減することができ、感光体上の非画像部とスクイーズローラ間で適切な電位差を維持することができるので、非画像部において不要なカブリトナーを効率よく除去でき、用紙の白色部における白色度が落ちて画質を損なうことがない。
【0065】
1次転写部50Yでは、感光体10Yに現像された現像剤像を1次転写ローラ51Yにより転写媒体40へ転写する。この1次転写部においては、1次転写バックアップローラ51に印加される転写バイアスVtの作用によって、感光体10上のトナー像は転写媒体40側に転写される。ここで、感光体10Yと転写媒体40は等速度で移動する構成であり、回転及び移動の駆動負荷を軽減するとともに、感光体10Yの顕像トナー像への外乱作用を抑制している。
【0066】
上記の1次転写部50Yを経た感光体10Y表面は、第2除電用光源部170Yからの照射光を受けて、その帯電状態が緩和される。この第2除電用光源部170Yは、ローラ類の軸方向に延びる第2基台171Yと、この第2基台171YY上に前記軸方向に適当な間隔をもって配されるLEDなどの第2除電用光源172Yとから構成されるものである。上記のように配置された第2除電用光源172Yによって感光体10Y表面上が軸方向で均一に照射される。第2除電用光源部170Y近傍には、第2遮光部材160Yが配置されており、第2除電用光源172Yからの照射光が、第2除電用光源172Yより下流のプロセス部を照射したり、他の色の現像ユニット部の方を照射したりすることを防止している。なお、第2遮光部材160Yは第2基台171Yと一体的に設けることもでき、このような一体構造によれば、製造工程を簡略化することができる。
【0067】
このような1次転写部50Yの後段での第2除電用光源部170Yの照射により、キャリアトラップに基づく感光体メモリよる影響を低減し、帯電時に均一な帯電状態を得ることができ、ゴーストなどの画像欠陥を防止することが可能となる。
【0068】
転写媒体40はイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)各色の1次転写部50のニップを通過し、各色の感光体上の現像剤(現像像)が転写され、色重ねされて2次転写ユニット60のニップ部に進入する。
【0069】
2次転写ユニット60を経た転写媒体40は、再び1次転写部50で転写像を受けるために周回するが、1次転写部50が実行される上流側において転写媒体40は、転写媒体クリーニングローラ46などによってクリーニングが実施される。
【0070】
転写媒体40は、ポリイミド基層上にポリウレタンの弾性中間層を設け、さらにその上にPFA表層が設けられている三層構造となっている。このような転写媒体40では、ポリイミド基層側において駆動ローラ41、テンションローラ42、52、53で張架され、PFA表層側においてトナー像が転写されるようにして用いられる。このように形成された弾性を有する転写媒体40は、記録媒体表面への追従性、応答性がよいために、2次転写時において、特に粒子径が小さいトナー粒子を記録媒体の凹部に対して送り込み転写させるのに有効である。
【0071】
次に、第1除電用光源部140や第1遮光部材130Yの理想的なレイアウトなどについて説明する。図3は本発明の実施形態に係る画像形成装置における第1除電用光源部周辺のレイアウト関係を説明する図である。
【0072】
図3において、V−V’は第2感光体スクイーズローラ13Y’と感光体10YとがなすスクイーズニップNを通る鉛直方向の面であり、H−H’は第1除電用光源142Yの
発行部の中心を通る水平面である。また、(S)は第1遮光部材130Yの延長方向で上側面である。(X)、(Y)は、反射防止部材150Yの端部を示している。また、O−O’は、第1除電用光源142Yの光軸を示している。
【0073】
本実施形態においては、第1除電用光源部140Yの発光部(第1除電用光源142Yの発光部)は、第2感光体スクイーズローラ13Y’と感光体10Yのニップを通る鉛直方向の平面V−V’より感光体10Y側に配置されることが好ましい。このような配置によれば、スクイーズニップ部は、第1除電用光源142Yの発光部に対する死角に隠れるような配置となるため、スクイーズニップ部に入射する光を低減することができることとなる。これによって、スクイーズニップ部で適切な電位差を維持することができ、カブリトナー除去を適切に行うことが可能となる。
【0074】
また、本実施形態においては、第1除電用光源142Yの光軸O−O’が、水平面H−H’に対して、正の仰角を持つように第1除電用光源142Yを配置する。第1除電用光源142Yから、直接的にスクイーズニップ部に入射する光を低減することができる。そして、スクイーズニップ部で適切な電位差を維持することができ、カブリトナー除去を適切に行うことが可能となる。
【0075】
また、本実施形態においては、第1遮光部材130Yの面(S)を光吸収面として構成することが好ましい。面(S)を光吸収面とするためは、黒色の合成樹脂材料などで第1遮光部材130Yを構成したり、或いは、第1遮光部材130Yの面(S)に黒色塗料を塗布したりする方法がある。また、光吸収面を粗面で形成することも好ましい実施形態の一つである。
【0076】
第1遮光部材130Yの面(S)を光吸収面とすることにより、第1遮光部材130Yの面(S)での光の乱反射などを防ぐことができ、スクイーズニップ部に入射する光を低減することができることとなる。これによって、スクイーズニップ部で適切な電位差を維持することができ、カブリトナー除去を適切に行うことが可能となる。
【0077】
ここで、露光ユニット12で用いる露光源、第1除電用光源142及び第2除電用光源172の光学的な特性について説明する。図4は本発明の実施形態に係る画像形成装置で用いる各光源の波長強度特性を示す図であり、図5は本発明の実施形態に係る画像形成装置で用いるアモルファスシリコン感光体の波長−感度特性を示す図であり、図6は本発明の実施形態に係る画像形成装置における画像プロセス進行状況に伴う感光体の変化を説明する図である。
【0078】
本実施形態においては、図4に示すように、露光ユニット12で用いる露光源、第1除電用光源142及び第2除電用光源172として、それぞれ異なる光学的特性を有するものを使用している。図4に示すように、(第1除電用光源142が波長強度特性でピークを与える波長)<(露光ユニット12露光源が波長強度特性でピークを与える波長)<(第2除電用光源172が波長強度特性でピークを与える波長)の関係を有するものとなっている。
【0079】
ところで、アモルファスシリコン感光材料を用いた感光体10は、第1除電用光源142の波長強度特性で照射されたときには、感光層の浅いところでキャリアを発生させて、第2除電用光源172の波長強度特性で照射されたときには、感光層の深いところでキャリアを発生させる性質を有している。また、露光ユニット12で用いる露光源に基づくキャリアトラップは、感光層の深いところで形成される。
【0080】
このような関係があるために、1次転写前に、大きな光量をもって第1除電用光源14
2によって、感光層の浅いところでキャリアを発生させて感光体10上での放電発生率を低減させるための除電を行い、1次転写後に、少ない光量で第2除電用光源172によって深いところでキャリアを発生させてキャリアトラップの影響を低減されるための除電を行う。
【0081】
これによれば、1次転写前における第1除電用光源142による光照射によって、特に非画像部における感光体10上での放電発生率を低減させることができ、感光体10における放電痕発生を防止したり、感光体10の劣化を遅延させたりすることが可能となる。また、1次転写後において、前記第1除電用光源部より長波長側に波長強度特性のピークを有する光を照射する第2除電用光源172部で光照射することによって、キャリアトラップに基づく感光体メモリよる影響を低減し、帯電時に均一な帯電状態を得ることができ、ゴーストなどの画像欠陥を防止することが可能となる。
【0082】
また、露光ユニット12露光源が波長強度特性でピークを与える波長は、第1除電用光源142が波長強度特性でピークを与える波長より、第2除電用光源172が波長強度特性でピークを与える波長に近い、という関係を有している。この関係は図4において、b<aとして示されるものである。このような関係によれば、効果的に感光体メモリによるゴースト発生を抑制することができる。
【0083】
また、これは、波長強度特性とは関連するものではないが、第1除電用光源142の光量は、第2除電用光源172の光量より大きく設定されている。このような光量の関係によれば、感光体10上での放電発生率を極限まで低減することが可能となる。特に、液体現像剤を用いたときには、前記第1除電用光源部の光量を大きくしやすい。これは、1次転写前に感光体10上の帯電状況が大きく変化したとしても、液体現像剤の濡れ性によってトナー粒子が散逸しにくいからである。
【0084】
第2除電用光源172の波長強度特性の分布が、第1除電用光源142の波長強度特性の分布より広いものとすることで、より効率的にキャリアトラップに基づく感光体メモリよる影響を低減し、帯電時に均一な帯電状態を得ることができ、ゴーストなどの画像欠陥を防止することが可能となる。
【0085】
次に、上記のような構成による感光体10表面断面の画像プロセス進行状況に伴う変化について説明する。図6は本発明の実施形態に係る画像形成装置における画像プロセス進行状況に伴う感光体の変化を説明する図である。図6において、(1)はコロナ帯電器11によって感光体10の表面が帯電された状態を示している。(2)は上記のような帯電された表面に対して露光ユニット12の露光源によって光を照射し、感光層にマイナスのキャリアを発生させた状態を示している。(2)に示すように露光ユニット12の露光源によれば、キャリアは感光層の深いところにおいて生成される。
【0086】
(3)は、発生したキャリアによって表面の帯電状態が打ち消されたことを模式的に示している。また、前記露光光源の照射によって感光層の比較的深いところにマイナスキャリアがトラップされている状態が示されている。(4)は現像ローラ20によって感光体10が現像され、露光された感光体10表面部にトナー粒子がのった状態を示している。
【0087】
(5)は第1除電用光源142による大光量照射で、感光層の浅いところでキャリアを発生させた状態を示している。また、(6)は発生させたキャリアで感光体10表面の電荷を打ち消した状態を示している。本発明によれば、このような第1除電用光源142による大光量照射で、感光体10上の帯電状態を軽減することでき、特に非画像部における感光体10上での放電発生率を低減させることができ、感光体10における放電痕発生を防止したり、感光体10の劣化を遅延させたりすることが可能となる。また、液体現像剤
を用いた画像形成装置では、1次転写前に感光体10上の帯電状況が大きく変化したとしても、液体現像剤の濡れ性によってトナー粒子が散逸しにくいので、第1除電用光源142によって大光量照射を行い、帯電状況を大きく変化させても問題とはならない。
【0088】
(7)はトナー粒子が転写媒体40に転写された後に残留した帯電電荷を除電する状況を示している。ここでは第2除電用光源172の照射によって、感光層でマイナスのキャリアを発生させている。この第2除電用光源172の光学的特性と、第1除電用光源142の光学的特性とを比較すると、(第1除電用光源142が波長強度特性でピークを与える波長)<(第2除電用光源172が波長強度特性でピークを与える波長)の関係となっており、第2除電用光源172は感光体10感光層の深いところでキャリアを発生させるようになっている。
【0089】
(8)は発生させたキャリアで感光体10表面の電荷を打ち消した状態を示している。前述のように第2除電用光源172による光照射は感光層の比較的深い部分でマイナスキャリアを発生させるものでおり、露光の際に発生したキャリアトラップに加えて、新たなキャリアトラップが発生することとなる。しかしながら、ここで発生するキャリアトラップは、(3)の段階で発生したキャリアトラップとは異なり、感光体10感光層の全体に一様に発生するものであり、局所的な感光体メモリとはならず、一様な感光体メモリとなるためにゴーストの発生を抑制することが可能となる。すなわち、1次転写後において、上記のような第2除電用光源172部で光照射することで、キャリアトラップに基づく感光体メモリよる影響を低減し、帯電時に均一な帯電状態を得ることができ、ゴーストなどの画像欠陥を防止することが可能となる。
【0090】
(9)は再びコロナ帯電器11によって感光体10の表面が帯電された状態を示している。このとき、感光層の比較的に深い部分で、一様にトラップされていたマイナスキャリアは、コロナ帯電器11で帯電された豊富な電荷によって表面に引きつけられて、プラスの電荷と打ち消し合う。トラップキャリアは感光層全体に存在しているので、図示するように感光体10の表面の帯電状態は一様となる。このような一様な帯電状態を再現できるために、本実施形態によれば、ゴーストなどの画像欠陥を防止することが可能となるのである。
【0091】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図7は本発明の他の実施形態に係る画像形成装置における第1除電用光源部周辺のレイアウト関係を説明する図である。本実施形態が先の実施形態と相違する点は、転写媒体40の略直下で、転写媒体40と第1除電用光源部140Yとの間には、反射防止部材150Yが配置されている点である。この反射防止部材150Yによれば、キャリアオイルを含む液体現像剤が付着する転写媒体40からの反射光を、この反射防止部材150Yによって遮ることができる。この反射防止部材150Yは、ローラ類軸方向に延びる板状部材である。反射防止部材150Yは、光を吸収しやすい素材で作製したり、光を吸収しやすい塗料などが塗られていることが望ましい。
【0092】
本発明ではこのような反射防止部材150Yによって、感光体スクイーズローラ13Y、13Y’と感光体10Yとがなすスクイーズニップ部に入射する光を低減することができ、感光体上の非画像部とスクイーズローラ間で適切な電位差を維持することができるので、非画像部において不要なカブリトナーを効率よく除去でき、用紙の白色部における白色度が落ちて画質を損なうことがない。
【0093】
次に、第1除電用光源部140や、反射防止部材150など理想的なレイアウトについて説明する。図7において、V−V’は第2感光体スクイーズローラ13Y’と感光体10YとがなすスクイーズニップNを通る鉛直方向の面であり、H−H’は第1除電用光源
142Yの発行部の中心を通る水平面である。また、(S)は第1遮光部材130Yの延長方向で上側面である。また、(T)は反射防止部材150Yの転写媒体40と対向する方の面であり、(B)は反射防止部材150Yの転写媒体40と対向しない方の面である。(X)、(Y)は、反射防止部材150Yの端部を示している。また、O−O’は、第1除電用光源142Yの光軸を示している。
【0094】
本実施形態においては、反射防止部材150Yは、少なくとも第2感光体スクイーズローラ13Y’と感光体10Yのニップを通る鉛直方向の平面V−V’と交差するように配置されている。より好ましくは、反射防止部材150Yの一端(X)は、第1除電用光源142Yの発光部からの回り込みの光が届かない範囲まで延在させ、反射防止部材150Yのもう一端(Y)は、一転転写部50Yにおけるニップ部付近にまで延在するようにするとよい。
【0095】
また、本実施形態においては、反射防止部材150Yの転写媒体40と対向しない面(B)を光吸収面として構成することが好ましい。面(B)を光吸収面とするためは、黒色の合成樹脂材料などで反射防止部材150Yを構成したり、或いは、反射防止部材150Yの面(B)に黒色塗料を塗布したりする方法がある。また、光吸収面を粗面で形成することも好ましい実施形態の一つである。
【0096】
このように転写媒体40と対向しない面(B)を光吸収面とすることにより、反射防止部材150Yの面(B)での光の反射を防ぐことができ、スクイーズニップ部に入射する光を低減することができることとなる。これによって、スクイーズニップ部で適切な電位差を維持することができ、カブリトナー除去を適切に行うことが可能となる。
【0097】
次に、第1除電用光源部140、第1遮光部材130Yなどの部材を画像形成装置に取り付けるときにおけるその方法について説明する。図8は本発明の他の実施形態に係る画像形成装置で用いるスクイーズユニット、クリーニングユニットを説明する図である。本実施形態においては、スクイーズ装置、クリーニング装置を構成するローラ類がユニット化された構造となっている。このようにスクイーズ装置、クリーニング装置がユニット化されている場合には、第1除電用光源部140Y、第1遮光部材130Yや第2除電用光源部170Y、第2遮光部材160Yなどの部材もこのユニットに含めて、一体化しておくと好ましい。
【0098】
より具体的には、スクイーズユニット120Yは、第1感光体スクイーズローラ13Y、第2感光体スクイーズローラ13Y’感光体スクイーズローラクリーニングブレード14Y、14Y’、クリーニングブレード保持部材70Y、71Yの各構成がスクイーズユニット側板121Yによって、軸方向両端から挟持されるような構造とされる。また、スクイーズユニット120Yは、これらローラ類、ブレード類の少なくとも鉛直上方部を第1遮光部材130Yにて覆うような構造とされている。そして、この第1遮光部材130Yに対して、第1除電用光源部140Yが一体的に取り付けられた構造とされる。なお、これらの部品以外のものを感光体ユニットとして一体化することもできる。
【0099】
このように、第1除電用光源部140Yと第1遮光部材130Yとが、スクイーズユニットとしてその他の部品類と共に一体化された構成となっているので、製造時の取り扱いがし易い、メンテナンスが簡便である、などのメリットを享受することができる。
【0100】
また、感光体クリーニングユニット165Yは、感光体クリーニングローラ16Y、クリーニングブレード保持部材72Yの各構成がクリーニングユニット側板166Yによって、軸方向両端から挟持されるような構造とされる。感光体クリーニングユニット165Yは、ローラ類、ブレード類の少なくとも鉛直上方部を第2遮光部材160Yにて覆うよ
うな構造とされている。そして、この第2遮光部材160Yに対して、第2除電用光源部170Yが一体的に取り付けられた構造とされる。なお、これらの部品以外のものを感光体ユニットとして一体化することもできる。
【0101】
このように、第2除電用光源部170Yと第2遮光部材160Yとが、感光体クリーニングユニット165Yとしてその他の部品類と共に一体化された構成となっているので、製造時の取り扱いがし易い、メンテナンスが簡便である、などのメリットを享受することができる。
【0102】
次に、本発明の画像形成装置の実施例について説明する。装置としては、これまで説明した構成を用いた。すなわち、液体現像剤を用い、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4つ作像部を有しし、転写媒体40上で色を重ねるタンデム方式のカラー画像形成装置を用いた。
【0103】
また、露光ユニット12の露光源としては、図4に示す波長分布を持った有機EL素子を用いた。第1除電用光源142、第2除電用光源172も、それぞれ図4に示す波長分布を持ったLED光源を用いた。
【0104】
感光体10としては、図5に示す波長感度特性を持つアモルファスシリコン感光材料を用いたものを用いた。
【0105】
また、画像形成における印加電圧等の県警としては以下の通りとした。
帯電電位:600V
現像バイアス:500V
感光体スクイーズローラ13バイアス:450V
感光体スクイーズローラ13Y’バイアス:400V
一次転写バイアス:―400V
二次転写バイアス:―1000V
また、実施例1と実施例2における露光量の関係を表1に示す。
【0106】
【表1】

以上のような設定の実施例1及び実施例2よって得られた結果を表2に示す。
【0107】
【表2】

上記の装置と画像形成条件で、露光量と除電光量を変化させながら、課題である感光体メモリ(ゴースト発生の有無)とハーフの転写性、文字のぼやけの評価を行った。また、
除電光量を変化させるとき、入力電圧で可変できる範囲以上に光量を増やすときは、LEDを増設することで対応した。
評価方法としては、ゴースト発生については図11に示すようなパターンを印字し、ゴースト画像の有無を確認した。ハーフの転写性は、感光体上の残りトナーの重量を測定した。文字のぼやけは印字で確認した。
【0108】
実施例1では、第2除電用光源172のピークを与える波長が第1除電用光源142よりも長波であり、ゴーストは発生しなかった。また、露光源の波長分布が第2除電用光源172の波長特性に近いため、ゴーストを効果的に抑制できていると考えられる。しかし、第1除電用光源142の光量が小さいせいか、ハーフの転写効率は期待していたほど向上していない。また文字のぼやけは液体現像剤を使っていることによって発生していない。
【0109】
実施例2では、第1除電用光源142の光量をLEDの増設により大きくした。その結果、ハーフの転写効率を向上することができた。またゴーストは発生せず、文字のぼやけは液体現像剤を使っていることによって発生していないことが確認できた。
【0110】
なお、本明細書においては、種々の実施の形態について説明したが、それぞれの実施の形態の構成を適宜組み合わせて構成された実施形態も本発明の範疇となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置を構成する主要構成要素を示した図である。
【図2】画像形成部の主要構成要素を示した断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画像形成装置における第1除電用光源部周辺のレイアウト関係を説明する図である。
【図4】本発明の実施形態に係る画像形成装置で用いる各光源の波長強度特性を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る画像形成装置で用いるアモルファスシリコン感光体の波長−感度特性を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る画像形成装置における画像プロセス進行状況に伴う感光体の変化を説明する図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る画像形成装置における第1除電用光源部周辺のレイアウト関係を説明する図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る画像形成装置で用いるスクイーズユニット、クリーニングユニットを説明する図である。
【図9】従来の画像形成装置における画像形成部の主要構成要素を示した断面図である。
【図10】従来の画像形成装置における画像形成部の主要構成要素を示した断面図である。
【図11】実施例の評価のために用いたテスト用パターンを示す図である。
【符号の説明】
【0112】
10Y、10M、10C、10K・・・感光体、11Y、11M、11C、11K・・・コロナ帯電器、12Y、12M、12C、12K・・・露光ユニット、13Y・・・第1感光体スクイーズローラ、13Y’・・・第2感光体スクイーズローラ、14Y、14Y’・・・感光体スクイーズローラクリーニングブレード、16Y・・・感光体クリーニングローラ、17Y・・・感光体クリーニングローラクリーニングブレード、18Y・・・感光体クリーニングブレード、20Y、20M、20C、20K・・・現像ローラ、21Y・・・現像ローラクリーニングブレード、22Y・・・コンパクションコロナ発生器、
30Y、30M、30C、30K・・・現像装置、31Y、31M、31C、31K・・・現像剤容器、32Y、32M、32C、32K・・・アニロックスローラ、31Y、31M、31C、31K・・・現像剤容器、33Y・・・規制ブレード、34Y・・・オーガ(供給ローラ)、40・・・転写媒体、41・・・ベルト駆動ローラ、42・・・テンションローラ、45・・・現像剤回収部、46・・・転写媒体クリーニングローラ、47・・転写媒体クリーニングローラクリーニングブレード、49・・・転写媒体クリーニングブレード、50Y、50M、50C、50K・・・1次転写部、51Y、51M、51C、51K・・・1次転写バックアップローラ、52、53・・・テンションローラ、55Y・・・第21次転写バックアップローラ、60・・・2次転写ユニット、61・・・2次転写ローラ、62・・・2次転写ローラクリーニングブレード、70Y、71Y、72Y、73Y、74、76Y・・・(クリーニング)ブレード保持部材、75Y・・・規制ブレード保持部材、77、78・・・クリーニングブレード保持部材、80Y・・・感光体回収貯留部、81Y・・・回収スクリュー、85・・・2次転写ユニット回収貯留部、86・・・回収スクリュー、87・・・転写媒体回収貯留部、88・・・回収スクリュー、120・・・スクイーズユニット、121・・・スクイーズユニット側板、130(Y)・・・第1遮光部材、140(Y)・・・第1除電用光源部、141(Y)・・・第1基台、142(Y)・・・第1除電用光源、150(Y)・・・反射防止部材、160(Y)・・・第2遮光部材、165(Y)・・・感光体クリーニングユニット、166(Y)・・・クリーニングユニット側板、170(Y)・・・第2除電用光源部、171(Y)・・・第2基台、172(Y)・・・第2除電用光源、190・・・除電用光源、310Y・・・供給貯留部、320Y・・・回収貯留部、321Y・・・回収スクリュー、330Y・・・仕切り部、360Y・・・液体現像剤供給部材、365Y・・・液体現像剤供給口、370Y・・・液体現像剤供給管、371Y・・・液体現像剤回収管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像を形成される潜像担持体と、
前記潜像担持体を帯電する帯電部と、
前記帯電部で帯電された前記潜像担持体に前記潜像を形成する露光部と、
前記露光部で形成された前記潜像を現像剤で像を現像する現像部と、
前記現像部で現像された前記潜像担持体に光を照射する第1除電用光源部と、
前記第1除電用光源部で照射された前記潜像担持体の前記像を転写媒体に転写する転写部と、
前記転写部で転写された前記潜像担持体に、前記第1除電用光源部より長波長側に波長強度特性のピークを有する光を照射する第2除電用光源部と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記露光部の発光波長のピーク値は、前記第1除電用光源部の発光波長のピーク値より、前記第2除電用光源部の発光波長のピーク値に近い値である請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1除電用光源部の発光光量は、前記第2除電用光源部の発光光量より大きい請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2除電用光源部の波長強度特性の分布は、前記第1除電用光源部の波長強度特性の分布より広い請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記潜像担持体はアモルファスシリコン感光体である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
潜像担持体を帯電部によって帯電し、
前記帯電部で帯電された前記潜像担持体に露光部によって潜像を形成し、
前記露光部で形成された前記潜像担持体の前記潜像をトナーとキャリア液とを含む液体現像剤を用いて現像する現像部で現像し、
前記現像部で現像された前記潜像担持体に第1除電用光源部によって光を照射し、
前記第1除電用光源部で照射された前記潜像担持体の前記像を転写部によって転写媒体に転写し、
前記転写部で転写された前記潜像担持体に、第2除電用光源部によって、前記第1除電用光源部より長波長側に波長強度特性のピークを有する光を照射することを特徴とする画像形成方法。
【請求項7】
前記露光部の発光波長のピーク値は、前記第1除電用光源部の発光波長のピーク値より、前記第2除電用光源部の発光波長のピーク値に近い値である請求項6に記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記第1除電用光源部の発光光量は、前記第2除電用光源部の発光光量より大きい請求項6又は請求項7に記載の画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−128236(P2010−128236A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303583(P2008−303583)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】